JP4090375B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリンタ等においてトナー画像を記録紙に定着させるために用いられる定着装置、及びこの定着装置を有する画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ等の画像形成装置においてトナー画像を記録紙に定着させるために使用される定着装置には、無端状ベルトを用いたいわゆるベルト方式の定着装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−249569号公報(第5頁、図1)
【特許文献2】
特開2001−194946号公報(第6−7頁、図1)
【特許文献3】
特開平7−36306号公報(第4頁、図4)
【0004】
ベルト方式の定着装置は、ゴムローラ等からなる定着ローラと、熱源を内蔵した加熱ローラと、これら定着ローラ及び加熱ローラに張設された無端状ベルトと、無端状ベルトを介して定着ローラに対向配置された加圧ローラとを備えている。加圧ローラは無端状ベルトを挟んで定着ローラに押圧され、加圧ローラと無端状ベルトとによりニップ部が形成される。
【0005】
ベルト方式の定着装置では、無端状ベルトが定着ローラと加圧ローラとに挟まれた状態が長時間持続すると、無端状ベルトに加圧ローラ等の痕跡(圧痕)が残る。このような圧痕は、無端状ベルトの寿命を短くするだけでなく、トナー画像の一部が記録紙に定着されないオフセット現象を引き起こし、あるいは無端状ベルトの走行を不安定にするため、定着むらの原因ともなる。また、定着ローラ及び加圧ローラにもニップ痕と呼ばれる痕跡が残り、このニップ痕が無端状ベルトに転移して、無端状ベルトの寿命をさらに短くすることもある。そこで、加圧ローラを定着ローラから離間可能に構成した定着装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の定着装置では、加圧ローラは熱源を有さず、無端状ベルト等を介した熱伝達により間接的に加熱されるようになっている。従って、無端状ベルト及び各ローラ(定着ローラ、加熱ローラ及び加圧ローラ)の加熱は、無端状ベルトが定着ローラと加圧ローラとで挟み込まれた状態(ニップ状態とする。)で行う必要がある。無端状ベルト及び各ローラを均一に加熱するためには、無端状ベルトを移動させながら加熱を行うことが好ましいが、ニップ状態では無端状ベルト又は加圧ローラにトナーが付着したまま凝固している可能性があるため、無端状ベルト等に傷が付かないよう、トナーが溶融してから無端状ベルトの移動を開始する必要がある。そのため、無端状ベルト及び各ローラの温度が均一になるまでに時間がかかるという問題がある。
【0007】
加えて、無端状ベルト及び各ローラの温度が相互に影響し合うことから、無端状ベルト及び各ローラの温度制御が複雑になり、それぞれが所定の温度に達するまでに時間がかかるという問題もある。
【0008】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的は、無端状ベルト及び各ローラの長寿命化を図り、定着むらの発生を防止し、且つ無端状ベルト及び各ローラの迅速な温度制御を可能にすることができる定着装置及び画像形成装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る定着装置は、少なくとも一つの熱源を有するローラを含む定着ローラ群と、前記定着ローラ群に張設された無端状ベルトと、前記定着ローラ群のうち熱源を有さない第1定着ローラに前記無端状ベルトを挟んで対向して配置され、前記無端状ベルトとの間にニップ部を形成する加圧ローラとを備えた定着装置において、前記加圧ローラは熱源を有し、前記第1定着ローラを前記加圧ローラから離間する方向に変位させる変位手段と、当接部材を備え、第2定着ローラを前記第1定着ローラから離間する方向に押圧して前記無端状ベルトに張力を付与する張力付与ばねとを備え、前記変位手段により前記第1定着ローラが前記加圧ローラから離間する方向に変位したときに、前記張力付与ばねの前記当接部材に当接し、前記張力付与ばねによる前記無端状ベルトへの張力付与を解除するストッパをさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
第1の実施の形態.
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る定着装置1を含む画像形成装置の基本構成を示す図である。この画像形成装置は、電子写真法を利用したものであり、記録紙S上にトナー像を形成する画像形成部8と、この画像形成部8により記録紙S上に形成されたトナー像を定着させる定着装置1とを備えている。図1において、記録紙Sは、左から右に搬送されるものとする。
【0011】
画像形成部8は、静電潜像を担持する感光体ドラム81を有している。感光体ドラム81の周囲には、感光体ドラム81の回転方向(図中反時計回り)に沿って、帯電ローラ82、露光装置83及び現像装置84が配置されている。感光体ドラム81の下側には、感光体ドラム81との間で記録紙Sを挟み込むように転写器87が設けられている。帯電ローラ82は、感光体ドラム81の表面の感光層を一様に帯電させる。露光装置83は、一様に帯電した感光体ドラム81の感光層を画像情報に応じて選択的に露光し、静電潜像を形成する。現像装置84は、トナー収容室85内のトナーを、現像ローラ86により感光体ドラム81の静電潜像に付着させてトナー像とする。転写器87は、バイアス電圧が印加されたローラ状の部材であり、感光体ドラム81のトナー像を記録紙Sに転移させる。
【0012】
記録紙Sの搬送は、画像形成部8の上流側に設けられたローラ対91、定着装置1の下流側に設けられたローラ対92、及び画像形成部8のローラ状の転写器87等によって行われる。
【0013】
図2及び図3は、第1の実施の形態に係る定着装置1の構成を示す側面図及び斜視図である。図2に示すように、定着装置1は、定着ローラ(第1のローラ)11と、加熱ローラ12と、これら定着ローラ11及び加熱ローラ12に張設された無端状ベルト13と、定着ローラ11との間で無端状ベルト13を挟み込むように設けられた加圧ローラ(第2のローラ)14とを有している。
【0014】
加圧ローラ14は、熱源としてのハロゲンランプ14hを内蔵している。また、この加圧ローラ14は、図示しない軸受により回転可能に支持された主軸14aを有し、この主軸14aには、歯車22が取り付けられている。歯車22は、図示しない動力伝達機構を介してローラ駆動モータ23(図9)に連結されている。また、加圧ローラ14の外周面近傍の層は、定着ローラ11の外周面近傍の層よりも硬度の高い材料により構成されている。
【0015】
定着ローラ11は、加圧ローラ14の上方に、この加圧ローラ14と平行に配置されている。定着ローラ11の外周面近傍の層は、ゴム等の弾性体により構成されている。定着ローラ11の主軸11aには、加圧ローラ14の歯車22と係合可能な歯車21が取り付けられている。また、定着ローラ11の主軸11aは、軸受11bを介して、加圧ローラ14の上方に設けられた揺動レバー(支持部材)15に支持されている。この揺動レバー15は、ほぼ水平で且つ定着ローラ11の軸方向と直交する方向に延在し、その長手方向一端(図中左端)に設けられた支点15aを中心として上下に揺動可能に支持されている。揺動レバー15の長手方向他端(図中右端)は、引張りばねであるレバー用ばね16により、下方に付勢されている。揺動レバー15において、レバー用ばね16が作用する点をばね作用点15cとする。揺動レバー15の長手方向における略中心部には、定着ローラ11の主軸11aを支持する軸受11bが取り付けられた支持部15dが形成されている。
【0016】
揺動レバー15の下側で、且つ定着ローラ11とレバー用ばね16との間には、揺動レバー15を駆動するためのカム18が設けられている。カム18は、略円板状であり、その中心から偏心した位置に回動軸18aを有している。図1に実線で示す状態では、カム18の外周端面は揺動レバー15に当接していないが、図1に破線Cで示すようにカム18が回動軸18aを中心として所定角度回動すると、カム18の外周端面が揺動レバー15に当接し、揺動レバー15を上方に押し上げる。これら揺動レバー15及びカム18は、定着ローラ11を加圧ローラ14から離間させる方向に変位させる変位機構1aを構成している。
【0017】
加熱ローラ12は、熱源としてのハロゲンランプ12hを内蔵しており、定着ローラ11の斜め上方(図2における左上)に、この定着ローラ11と平行に配置されている。加熱ローラ12は、定着ローラ11に対してほぼ接近及び離間する方向、すなわち図中に矢印Aで示す方向に変位可能に支持されており、張力付与ばね(付勢手段)17により、定着ローラ11から離間する方向に付勢されている。図4は、加熱ローラ12を支持するための構成の一例を示す側面図である。加熱ローラ12の主軸12aを支持する軸受12bは、支持ブロック12cに取り付けられており、この支持ブロック12cは、ガイド部材(支持手段)12dに形成されたガイド溝12eにより、定着ローラ11に対してほぼ接近及び離間する方向に摺動可能に支持されている。張力付与ばね17は、ガイド溝12eの底部とブロック12cとの間に設けられた圧縮ばねである。
【0018】
定着ローラ11と加熱ローラ12との間に張設された無端状ベルト13は、図3に示すように、定着ローラ11の軸方向において、記録紙Sの幅以上の長さを有している。
【0019】
次に、定着ローラ11と加圧ローラ14との開閉動作について説明する。図2に示したように、カム18の外周端面が揺動レバー15に当接していないときには、揺動レバー15はレバー用ばね16の付勢力により下方に付勢され、定着ローラ11は無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧される。無端状ベルト13と加圧ローラ14との間には、記録紙の加圧及び加熱を行うニップ部19が形成される。定着ローラ21の外周面近傍の層は、加圧ローラ14に比較して硬度が低いため、加圧ローラ14の外周面に沿って変形する。すなわち、加圧ローラ14の外周面により、記録紙の搬送路が規定される。なお、軸受11bの最上部を、揺動レバー15が定着ローラ11の軸受11bに作用する点(ローラ作用点15bとする。)とすると、定着ローラ11の加圧ローラ14に対する押圧力は、支点15aからばね作用点15cまでの距離と支点15aからローラ作用点15bまでの距離との比、及びレバー用ばね16の付勢力により決定される。
【0020】
図5は、カム18が回動軸18aを中心として所定角度回動し、揺動レバー15を押し上げた状態を示す側面図である。カム18がレバー用ばね16の付勢力に抗して揺動レバー15を押し上げると、定着ローラ11は上方に変位し、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から所定量離間する。
【0021】
図6は、定着ローラ11の変位に伴う歯車21,22との係合状態の変化を示す拡大図である。定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧されている状態では、図6(A)に示すように、定着ローラ11の歯車21及び加圧ローラ14の歯車22は、互いに係合している。すなわち、歯車21,22のピッチ円P1,P2が互いに接触している。これにより、加圧ローラ14の回転が、がたつきを生じることなく定着ローラ11に伝達される。
【0022】
一方、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間した状態では、図6(B)に示すように、歯車21,22のピッチ円P1,P2は互いに離間するが、歯先円H1,H2は交差している。すなわち、歯車21,22は、互いの歯先部分において回転を伝達可能な位置関係にある。従って、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間した状態でも、加圧ローラ14の回転は定着ローラ11に伝達される。このような係合状態は、例えば歯車21,22のモジュールを1mmとした場合、定着ローラ11と加圧ローラ14とのギャップを1mm以下とすることにより実現することができる。
【0023】
図7は、定着ローラ11の変位に伴う無端状ベルト13の張力の変化を説明するための模式図である。上述したように、加熱ローラ12は、圧縮ばねである張力付与ばね17により、定着ローラ11から離間する方向に付勢されている。定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧されているときの張力付与ばね17の長さをb1とする。カム18により揺動レバー15が押し上げられ、定着ローラ11が上方に変位すると、これに伴って加熱ローラ12が定着ローラ11から離間する方向に変位する。このとき、図7に破線で示すように、張力付与ばね17の長さが上記のb1よりも長いb2となるため、無端状ベルト13にかかる張力が減少する。
【0024】
図8は、張力付与ばね17の長さbと、無端状ベルト13に生じる張力Tとの関係を表すグラフである。定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間しているとき(すなわち、張力付与ばね17の長さがb2のとき)には、無端状ベルト13に生じる張力Tが大きすぎると、定着ローラ11及び加熱ローラ12に長時間接触することにより無端状ベルト13に圧痕が残る。無端状ベルト13の張力Tがこれより大きくなると無端状ベルト13に圧痕が残るという限界の張力を、T3とする。一方、無端状ベルト13に生じる張力Tが小さすぎると、定着ローラ11が回転した際に、無端状ベルト13が定着ローラ11及び加熱ローラ12に対して滑りを生じる。無端状ベルト13の張力Tがこれより小さくなると滑りが生じるという限界の張力を、T4とする。張力付与ばね17は、長さb2のときに、無端状ベルト13に生じる張力T2が、上記の張力T3以上で且つ張力T4以下(すなわち、T3≧T2≧T4)となるよう、ばね定数及び寸法が決定されている。
【0025】
一方、定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧されているとき(すなわち、張力付与ばね17の長さがb1のとき)には、無端状ベルト13にかかる張力Tが小さすぎると、ニップ部19に記録紙Sを挟んで回転した際に、無端状ベルト13が定着ローラ11に対して滑りを生じる。無端状ベルト13の張力Tがこれより小さくなると滑りが生じるという限界の張力をT5とする。張力付与ばね17は、長さb1のときに、張力T5以上の張力T1(T1≧T5)が無端状ベルト13に生じるよう、ばね定数及び寸法が決定されている。
【0026】
図9は、この定着装置1を含む画像形成装置の制御システムを示すブロック図である。定着装置1の制御を司る機構制御部10は、加熱ローラ12内のハロゲンランプ12h、加圧ローラ14内のハロゲンランプ14h、加圧ローラ14を回転させるためのローラ駆動モータ23、及びカム18を回転させるためのカム駆動モータ24を駆動制御する。また、機構制御部10には、加熱ローラ12の近傍に設けられたサーミスタ25及び加圧ローラ14の近傍に設けられたサーミスタ26から、加熱ローラ12及び加圧ローラ14の表面温度のデータがそれぞれ入力される。画像形成装置全体の制御を司る全体制御部20は、機構制御部10のほか、ローラ対91,92(図1)を含む記録紙の搬送機構9及び画像形成部8を制御する。全体制御部20には、また、ローラ対91の上流側に設けられた記録紙センサ90から、記録紙の先端又は後端を検知したことを示す検知信号が入力される。
【0027】
次に、以上のように構成された画像形成装置の動作について説明する。定着動作を行う前の待機状態では、図5に示すように、カム18が揺動レバー15を押し上げた状態にあり、定着ローラ11及び無端状ベルト13は加圧ローラ14から離間している。また、無端状ベルト13には、定着ローラ11等との接触による圧痕が生じず、かつ定着ローラ11等との間で滑りを生じない範囲の張力T2(図8)が付与されている。全体制御部20は、画像形成部8において実行すべき画像形成ジョブが生じた場合、また、加熱ローラ12及び加圧ローラ14の待機温度を維持するために加熱が必要と判断した場合には、ウォーミングアップ動作を行うよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、全体制御部20からの指示に基づき、ローラ駆動モータ23の回転を開始する。これにより加圧ローラ14が回転し、歯車21,22の係合により定着ローラ11が回転する。定着ローラ11の回転により、無端状ベルト13が移動し、加熱ローラ12が回転する。
【0028】
機構制御部10は、さらに、サーミスタ25により検出される加熱ローラ12の表面温度に基づいてハロゲンランプ12hの通電制御を行い、サーミスタ26により検出される加圧ローラ14の表面温度に基づいてハロゲンランプ14hの通電制御を行う。定着ローラ11及び無端状ベルト13は、加熱ローラ12からの熱伝達により加熱される。無端状ベルト13を移動しながら加熱を行うため、無端状ベルト13を均一に加熱することができる。
【0029】
全体制御部20は、記録紙センサ90からの検知信号に基づき、記録紙の先端がニップ部19に到達する時間を算出し、その到達時間に合わせてニップ部19を閉鎖するよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、全体制御部20からの指示に基づき、カム駆動モータ24を駆動する。これによりカム18が所定角度回動し、カム18の外周端面が揺動レバー15から離れ、揺動レバー15がレバー用ばね16の付勢力により下方に揺動する。その結果、図2に示すように、定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧される。定着ローラ11が下方に変位すると、加熱ローラ12も下方に変位し、張力付与ばね17が圧縮される。これにより、無端状ベルト13には、定着動作の際に定着ローラ11との間で滑りを生じないような張力T1(図8)が付与される。
【0030】
画像形成部8によりトナー像が転写された記録紙は、トナー像が形成された面を上側(無端状ベルト13側)に向けて、無端状ベルト13と加圧ローラ14との間のニップ部19に挿入される。記録紙は、無端状ベルト13と加圧ローラ14との間で加圧及び加熱され、これによりトナー像が記録紙の表面に定着する。ニップ部19を通過した記録紙は、定着装置1の下流側に配置されたローラ対92により画像形成装置の外部に排出される。
【0031】
全体制御部20は、記録紙センサ90からの検知信号に基づき、記録紙の後端がニップ部19を通過する時間を算出し、その通過時間に合わせてニップ部19を開放するよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、全体制御部20からの指示に基づき、カム駆動モータ24を駆動する。これによりカム18が所定角度回動して、レバー用ばね16の付勢力に抗して揺動レバー15を押し上げる。その結果、図5に示すように、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間する。機構制御部10は、また、ローラ駆動モータ23の回転を停止し、さらに加熱ローラ12及び加圧ローラ14のハロゲンランプ12h,14hへの通電を停止する。
【0032】
尚、全体制御部20は、定着動作中であっても、記録紙センサ90等により記録紙のジャム(詰まり)が検知されたときには、ニップ部19を開放するよう機構制御部10に指示する。これにより、機構制御部10は、カム駆動モータ24を駆動し、カム18を回動させて揺動レバー15を押し上げ、さらにローラ駆動モータ23の回転を停止し、ハロゲンランプ12h,14hへの通電を停止する。定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間するため、記録紙の除去が容易になり、また無端状ベルト13や加圧ローラ14の損傷が防止される。
【0033】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、定着を行わないときには、定着ローラ11及び無端状ベルト13を加圧ローラ14から離間させることができるため、無端状ベルト13及び各ローラ(すなわち、定着ローラ11、加熱ローラ12及び加圧ローラ14)における圧痕の発生を防止することができる。その結果、定着むらの発生を抑制すると共に、無端状ベルト13及び各ローラの長寿命化を図ることができる。
【0034】
さらに、加圧ローラ14が熱源(ハロゲンランプ14h)を有しているため、定着ローラ11及び無端状ベルト13を加圧ローラ14から離間させた状態で温度制御を行うことができる。そのため、ハロゲンランプ12hにより加熱される定着ローラ11、加熱ローラ12及び無端状ベルト13のグループと、ハロゲンランプ14hにより加熱される加圧ローラ14との間での熱の移動が少なくなり、両者を独立に温度制御することが可能になる。その結果、無端状ベルト13及び各ローラの温度制御が容易になり、迅速な温度制御が可能になる。
【0035】
また、無端状ベルト13を加圧ローラ14から離間させた状態で加熱を行うことができるため、無端状ベルト13の表面等に凝固したトナーが付着していたとしても、そのトナーを無端状ベルト13と加圧ローラ14とで挟み込むことがなく、無端状ベルト13又は加圧ローラ14の損傷が防止できる。
【0036】
さらに、定着ローラ11を加圧ローラ14から離間する方向に変位させることにより、無端状ベルト13の張力が減少するよう構成したため、高い張力が無端状ベルト13に長時間付与されることを回避することができ、無端状ベルト13をさらに長寿命化することができる。
【0037】
加えて、定着ローラ11を変位させ、加圧ローラ14を変位させない構成としたので、加圧ローラ14の表面により規定される記録紙の搬送経路を安定させることができる。また、加圧ローラ14とその温度を検出するサーミスタ26との位置関係が変化しないため、安定した温度制御を行うことができる。
【0038】
また、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間した状態でも、歯車21,22による回転伝達が可能であるため、定着ローラ11、加熱ローラ12及び無端状ベルト13を、加圧ローラ14と共通の駆動源で回転させながらウォーミングアップ動作を行うことが可能になる。
【0039】
さらに、画像形成部8での処理に時間がかかっても、定着ローラ11と加圧ローラ14とを離間させた状態で待機することができる。そのため、特に、厚紙や特殊媒体など画像形成速度を遅くしなければならない記録紙を用いた場合、又は画像形成部8においてジョブの切り替えが行われている場合であっても、無端状ベルト13と加圧ローラ14との間の熱移動を最小限に抑制でき、従って、温度制御が容易になる。
【0040】
また、記録紙のジャムが発生した場合に、定着ローラ11及び無端状ベルト13を加圧ローラ14から離間させるようにしたので、ジャムを生じた記録紙の除去が容易になる。また、記録紙が無端状ベルト13と加圧ローラ14との間に挟まれたまま放置されることがなくなるので、無端状ベルト13や加圧ローラ14の熱による損傷を防止できる。
【0041】
尚、上述した説明においては、カム18として、偏心した回動軸を有する円形カムを用いたが、回動軸から外周面までの距離が一定でない形状を有するものであればよい。図10(A)及び(B)は、カムの他の構成例を示す斜視図及び正面図である。図10(C)及び(D)は、カムのさらに別の構成例を示す斜視図及び正面図である。図10(A)及び(B)に示すカム28は、楕円形状であり、その長軸上において当該長軸の中心から偏芯した点を通る回動軸28aを有する。図10(C)及び(D)に示すカム29は、正8角形形状であり、その中心から偏心した点を通る回動軸29aを有する。
【0042】
第2の実施の形態.
図11及び図12は、第2の実施の形態に係る定着装置1の構成を示す側面図であり、定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧された状態、及び定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間した状態をそれぞれ示している。この第2の実施の形態では、張力付与ばね17による無端状ベルト13への張力付与を解除する手段が設けられている。
【0043】
図11に示すように、張力付与ばね17の先端部に固定された当接部材17aと、この当接部材17aが定着ローラ11から離間する方向に変位したときに当接するストッパ(張力付与解除手段)30とが設けられている。ストッパ30は、例えば、張力付与ばね17が取り付けられたガイド部材12d(図4)に固定されている。このストッパ30は、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間したときに張力付与ばね17に当接し、無端状ベルト13に張力が付与されないようにするためのものである。
【0044】
定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧されているときには、第1の実施の形態と同様、張力付与ばね17の先端に取り付けられた当接部材17aとストッパ30とは一定の距離dだけ離間している。この状態では、第1の実施の形態と同様、張力付与ばね17の付勢力により、無端状ベルト13に張力が付与される。
【0045】
これに対し、図12に示すように、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間し、定着ローラ11が上方に変位すると、張力付与ばね17の当接部材17aがストッパ30に当接する。当接部材17aがストッパ30に当接すると、このストッパ30が張力付与ばね17の付勢力を受けることになり、無端状ベルト13には張力が付与されないため、無端状ベルト13には弛みが生じる。尚、図13は、張力付与ばね17の当接部材17aがストッパ30から離間した状態(A)、及び張力付与ばね17の当接部材17aがストッパ30に当接した状態(B)をそれぞれ示している。
【0046】
尚、本実施の形態では、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間しているとき(すなわち、無端状ベルト13が弛んでいるとき)には、定着ローラ11の回転を行わないため、歯車21,22は互いに回転を伝達可能な位置関係にある必要はない。しかしながら、歯車21,22を係合させるときに歯先同士が当接することがないよう、図6(B)に示したように歯車21,22の歯先円H1,H2が交差していることが好ましい。これは、第1の実施の形態でも説明したように、例えば歯車21,22のモジュールを1mmとし、定着ローラ11と加圧ローラ14とのギャップを1mm以下とすることにより実現できる。
【0047】
図14は、第2の実施の形態に係る定着装置1の加熱ローラ12の構成を示す斜視図である。加熱ローラ12の軸方向両端には、加熱ローラ12よりも大きな外径を有するリングである位置規制リング(ベルト位置規制手段)32が取り付けられている。この位置規制リング32は、張力が付与されずに弛んだ無端状ベルト13が、加熱ローラ12の軸方向に位置ずれしないようにするためのものである。尚、同様の位置規制リング32は、定着ローラ11にも設けられている。
【0048】
次に、以上のように構成された画像形成装置の動作について説明する。待機状態においては、カム18が揺動レバー15を押し上げており、図12に示すように、無端状ベルト13と加圧ローラ14とが離間し、無端状ベルト13には弛みが生じている。
【0049】
全体制御部20(図9)は、画像形成部8において画像形成ジョブが生じた場合、または加熱ローラ12及び加圧ローラ14の待機温度を維持するために加熱が必要と判断した場合には、加熱動作を行うよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、サーミスタ25,26の検出温度に基づき、ハロゲンランプ12h,14hの通電制御を行う。但し、第1の実施の形態におけるウォーミングアップ動作と異なり、この加熱動作では、ローラ駆動モータ23の回転は行わない。
【0050】
また、全体制御部20は、記録紙センサ90からの検知信号に基づき、記録紙の先端がニップ部19に到達する時間を算出し、その到達時間に合わせてニップ部19を閉鎖するよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、全体制御部20からの指示に基づき、カム駆動モータ24を駆動する。これによりカム18が所定角度回動し、カム18の外周端面が揺動レバー15から離れ、揺動レバー15がレバー用ばね16の付勢力により下方に揺動する。その結果、図11に示すように、定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧される。また、無端状ベルト13には、張力付与ばね17により、定着動作時に定着ローラ11に対して滑りを生じないような十分な張力T1(図8)が付与される。そののち、無端状ベルト13と加圧ローラ14との間のニップ部19において、実施の形態1と同様の方法で、記録紙へのトナー像の定着が行われる。
【0051】
一方、全体制御部20は、記録紙センサ90からの検知信号に基づいて、記録紙の後端がニップ部19を通過する時間を算出し、その通過時間に合わせてニップ部19を開放するよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、全体制御部20からの指示に基づき、カム駆動モータ24を駆動する。これによりカム18が所定角度回動して、レバー用ばね16の付勢力に抗して揺動レバー15を押し上げる。その結果、図12に示すように、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間する。機構制御部10は、また、ローラ駆動モータ23の回転を停止し、さらにハロゲンランプ12h,14hへの通電を停止する。これにより、定着ローラ11が上方に変位し、張力付与ばね17の当接部材17aがストッパ30に当接し、無端状ベルト13が弛む。
【0052】
尚、全体制御部20は、定着動作中であっても、記録紙センサ90等により記録紙のジャムが検知されたときには、ニップ部19を開放するよう機構制御部10に指示する。これにより、機構制御部10は、カム駆動モータ24を駆動し、カム18を回動させて揺動レバー15を押し上げ、さらにローラ駆動モータ23の回転を停止し、ハロゲンランプ12h,14hへの通電を停止する。定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間するため、記録紙の除去が容易になり、また無端状ベルト13や加圧ローラ14の熱による損傷が防止される。
【0053】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、定着ローラ11及び無端状ベルト13を加圧ローラ14から離間させたときに無端状ベルト13を弛ませるようにしたため、無端状ベルト13及び各ローラに圧痕が生じ難くなり、これらの一層の長寿命化を図ることができる。
【0054】
この第2の実施の形態は、特に、無端状ベルト13に定着ローラ11等との間で滑りを生じないような張力を長時間付与した場合に、無端状ベルト13や定着ローラ11等に圧痕が生じてしまうような場合(図8において、T3<T4となる場合)に、無端状ベルト13や各ローラの長寿命化を図る上で有効である。
【0055】
尚、上述した説明においては、定着ローラ11及び加熱ローラ12のそれぞれに、無端状ベルト13の位置を規制する位置規制リング32を設けたが、位置規制リング32の代わりに、図15に示すように、定着ローラ11と加熱ローラ12との間の無端状ベルト13の幅方向両側にほぼ当接する位置規制部材34を設けることも可能である。
【0056】
また、上述した説明においては、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間しているときには、図6に示したように歯車21,22の歯先円H1,H2が交差していることが好ましいと説明したが、その代わりに、図16に示すように、尖った歯先35a,36aを有する歯車35,36を用いてもよい。このようにすれば、図16(B)に示すように歯車35,36を互いに離間させたのち、図16(A)に示すように歯車35,36を再び係合させるときに、歯先35a,36a同士が当接することを防止することができる。
【0057】
第3の実施の形態.
図17は、第3の実施の形態に係る定着装置1の構成を示す側面図である。図18は、第3の実施の形態に係る定着装置1のカム38の動作を示す図である。この第3の実施の形態では、定着ローラ11の加熱ローラ12からの離間量を2通りに変化させることができるよう構成されている。
【0058】
本実施の形態に係る定着装置1は、第2の実施の形態と同様、レバー用ばね16の作用を規制するストッパ30と、無端状ベルト13の位置ずれを防止する位置規制リング32(図14)とを有している。また、この定着装置1は、揺動レバー15の押し上げ量が2通りに選択可能なカム38を有している。カム38は、略円板状の部材であり、その中心から偏心した位置に回動軸38aを有している。図17に示すように、カム38の外周端面のうち回動中心38aから最も距離の近い外周端面が、回動中心38aの上方に位置しているときには、カム38は揺動レバー15から離間している。このときのカム38の回動位置を、回動基準位置とする。
【0059】
カム38が揺動レバー15に当接していないときには、揺動レバー15はレバー用ばね16により下方に付勢され、定着ローラ11は無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧されている。第1の実施の形態と同様、無端状ベルト13には、張力付与ばね17により、定着動作時に定着ローラ11に対して滑りを生じないような十分な張力T1(図8)が付与されている。
【0060】
図18は、カム38の動作を拡大して示す側面図である。カム38は、上述した回動基準位置から反時計回りに約90度回動した第1の回動位置と、回動基準位置から反時計回りに約180度回動した第2の回動位置とをとりうる。カム38が第1の回動位置にあるときには、図18(A)に示すように、カム38の外周端面が揺動レバー15に当接してこれを押し上げ、無端状ベルト13と加圧ローラ14との間には間隔bが形成される。カム38が第2の回動位置にあるときには、図18(B)に示すように、カム38が揺動レバー15をさらに押し上げ、無端状ベルト13と加圧ローラ14との間には、間隔bよりも大きい間隔aが形成される。
【0061】
図19及び図20は、カム38が第1の回動位置及び第2の回動位置に回動したときの定着装置をそれぞれ示す側面図である。図19に示すように、カム38が第1の回動位置まで回動し、定着ローラ11と加圧ローラ14との間に間隔bが形成されたときには、定着ローラ11の上方への変位に伴って加熱ローラ12が定着ローラ11から離間する方向に変位し、それに伴って張力付与ばね17が一定量伸びるため、無端状ベルト13に生じる張力は減少する。このとき、無端状ベルト13には、定着ローラ11等との接触による圧痕が生じず、かつ定着ローラ11等との間で滑りを生じない範囲の張力T2(図8)が付与される。また、定着ローラ11及び加圧ローラ14の歯車21,22のピッチ円は互いに離間しているが、歯先円H1,H2(図6(B))は交差しており、互いに回転伝達が可能な位置関係にある。
【0062】
一方、図20に示すように、カム38が第2の回動位置まで回動し、定着ローラ11と加圧ローラ14との間に間隔aが形成されたときには、張力付与ばね17の当接部材17aがストッパ30に当接するため、無端状ベルト13には張力が付与されず、弛みが生じる。尚、この状態では、歯車21,22が完全に離間していてもよいが、再び係合させるときに歯先同士が当接しないよう、図6(B)に示したように歯先円H1,H2が交差していることが好ましい。
【0063】
尚、定着ローラ11及び加熱ローラ12には、無端状ベルト13に弛みが生じてもその位置がずれないようにするための位置規制リング32(図14)が設けられている。
【0064】
次に、以上のように構成された画像形成装置の動作について説明する。待機状態においては、カム38は第2の回動位置にあり、図20に示すように、無端状ベルト13と加圧ローラ14とが間隔aだけ離間し、無端状ベルト13には弛みが生じている。
【0065】
全体制御部20は、画像形成部8において実行すべき画像形成ジョブが生じた場合、また、加熱ローラ12及び加圧ローラ14の待機温度を維持するために加熱が必要と判断した場合には、ウォーミングアップ動作を行うよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、全体制御部20からの指示に基づき、カム駆動モータ24を駆動し、カム38を第1回動位置まで回動させる。揺動レバー15は、ばね18の付勢力により支軸15aを中心として下方に揺動し、図19に示すように、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14に接近し、無端状ベルト13と加圧ローラ14との間隔がbとなる。このとき、無端状ベルト13には、定着ローラ11等との接触による圧痕が生じず、かつ定着ローラ11等との間で滑りを生じない範囲の張力T2(図8)が付与される。また、歯車21,22が互いに接近し、相互の回転伝達が可能になる。機構制御部10は、さらに、ローラ駆動モータ23の回転を開始する。ローラ駆動モータ23により加圧ローラ14が回転すると、歯車21,22の係合により定着ローラ11が回転し、その結果、ベルト13が移動し、加熱ローラ12が回転する。機構制御部10は、さらに、ハロゲンランプ12h,14hに通電を開始する。これにより、定着ローラ11、加熱ローラ12、無端状ベルト13及び加圧ローラ14の均一な加熱が行われる。
【0066】
全体制御部20は、さらに、記録紙センサ90からの検知信号に基づき、記録紙の先端がニップ部19に到達する時間を算出し、その到達時間に合わせてニップ部19を閉鎖するよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、全体制御部20からの指示に基づき、カム駆動モータ24を駆動してカム38を回動基準位置まで回動させる。これにより、カム38の外周端面が揺動レバー15から離れるため、揺動レバー15はレバー用ばね16の付勢力により下方に揺動する。その結果、図17に示すように、定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧される。また、無端状ベルト13には、張力付与ばね17により、定着動作時に定着ローラ11に対して滑りを生じないような十分な張力T1(図8)が付与される。そののち、無端状ベルト13と加圧ローラ14との間のニップ部19において、実施の形態1と同様の方法で、記録紙へのトナー像の定着が行われる。
【0067】
一方、全体制御部20は、記録紙センサ90からの検知信号に基づいて、記録紙の後端がニップ部19を通過する時間を算出し、その通過時間に合わせてニップ部19を開放するよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、全体制御部20からの指示に基づき、カム駆動モータ24を駆動し、カム38を回動基準位置から180度回動させて、レバー用ばね16の付勢力に抗して揺動レバー15を押し上げる。その結果、図20に示すように、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間する。機構制御部10は、また、ローラ駆動モータ23の回転を停止し、さらにハロゲンランプ12h,14hへの通電を停止する。これにより、定着ローラ11が上方に変位し、張力付与ばね17の当接部材17aがストッパ30に当接し、無端状ベルト13に弛みが生じる。
【0068】
尚、全体制御部20は、定着動作中であっても、記録紙センサ90等により記録紙のジャムが検知されたときには、ニップ部19を開放するよう機構制御部10に指示する。これにより、無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間するため、記録紙の除去が容易になる。
【0069】
以上説明したように、第3の実施の形態によれば、定着ローラ11及び無端状ベルト13と加圧ローラ14との離間量を2通りに変化させるようにし、離間量に応じて無端状ベルト13に付与される張力を変化させるようにしたので、第1の実施の形態及び第2の実施の形態の効果を共に達成することができる。すなわち、定着ローラ11及び無端状ベルト13を加圧ローラ14から離間させた状態で、無端状ベルト13を移動させながら加熱するウォーミングアップ動作を行うことができ、また、待機状態においては無端状ベルト13を弛ませることにより無端状ベルト13や各ローラを長寿命化することができる。
【0070】
尚、上述した説明においては、カム38として、偏心した回動軸を有する円形カムを用いたが、図10(A)〜(D)に示すように、回動軸から外周面までの距離が一定でない形状を有するものであればよい。また、位置規制リング32の代わりに、図15に示すように、定着ローラ11と加熱ローラ12との間の無端状ベルト13の両側端に無端状ベルト13の位置を規制する部材34を設けることも可能である。さらに、歯車21,22の代わりに、図16に示すように尖った歯先部を有する歯車35,36を用いてもよい。
【0071】
第4の実施の形態.
図21は、第4の実施の形態に係る定着装置1の側面図である。第4の実施の形態では、第1の実施の形態におけるカム38の代わりに、ソレノイド48を用いている。ソレノイド48は、揺動レバー15の上方に配置された本体48bと、この本体48bから下方に突出し、略鉛直方向に移動可能なプランジャ48aとを有している。ソレノイド48のプランジャ48aの下端は、揺動レバー15のばね作用点15cとローラ作用点15bとの間に設けられたピン48cに連結されている。ソレノイド48は、本体48b内のコイルに電流が流れている状態(オン状態とする)では、プランジャ48aに上向きの駆動力が作用し、コイルに電流が流れていない状態(オフ状態とする)では、プランジャ48aに駆動力が作用しないよう構成されている。
【0072】
ソレノイド48がオフ状態のときには、揺動レバー15はソレノイド48から何ら付勢力を受けないため、図21に示すように、レバー用ばね16の付勢力により下方に付勢され、従って定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧される。このとき、無端状ベルト13には、張力付与ばね17により、定着動作時に定着ローラ11に対して滑りを生じないような十分な張力T1(図8)が付与されている。
【0073】
図22は、ソレノイド48をオン状態にしたときの定着装置1を示す側面図である。ソレノイド48をオン状態とすると、プランジャ48aが上方に移動し、レバー用ばね16の付勢力に抗して上方に移動して揺動レバー15を引き上げ、定着ローラ11を加圧ローラ14から離間する方向に変位させる。定着ローラ11が上方に変位することにより、第1の実施の形態と同様、無端状ベルト13に付与される張力は減少する。このとき、無端状ベルト13には、定着ローラ11等との接触による圧痕が生じず、かつ定着ローラ11との間で滑りを生じない範囲の張力T2(図8)が付与される。
【0074】
図23は、第4の実施の形態に係る定着装置1を含む画像形成装置の制御システムを示すブロック図である。機構制御部10は、実施の形態1に設けられていたカム18(図2)を回動させるためのカム駆動モータ24の代わりに、ソレノイド48を駆動制御する。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0075】
第4の実施の形態に係る画像形成装置の動作は、定着ローラ11を加圧ローラ14から離間する方向に変位させる際にはソレノイド48をオン状態とし、定着ローラ11を無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧する際にはソレノイド48をオフ状態とするという点を除き、第1の実施の形態と同様である。
【0076】
以上説明したように、第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態における効果に加えて、ソレノイド48の高い応答性により、定着ローラ11及び無端状ベルト13を加圧ローラ14に押圧し、また加圧ローラ14から離間させる動作を、迅速に行うことができるという効果が得られる。
【0077】
第5の実施の形態.
図24は、第5の実施の形態に係る定着装置1の側面図である。第5の実施の形態では、第2の実施の形態におけるカム18の代わりに、上記第4の実施の形態で説明したソレノイド48を用いている。他の構成は、第2の実施の形態と同様である。
【0078】
ソレノイド48がオフ状態のとき、すなわちプランジャ48bに駆動力が作用していないときには、揺動レバー15はソレノイド48からの付勢力を受けない。そのため、揺動レバー15は、レバー用ばね16の付勢力により下方に付勢され、定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧される。無端状ベルト13には、張力付与ばね17により、定着動作時に定着ローラ11に対して滑りを生じないような十分な張力T1(図8)が付与されている。
【0079】
図25は、第5の実施の形態に係る定着装置1においてソレノイド48をオン状態にした状態を示す側面図である。ソレノイド48をオン状態とすると、プランジャ48aが上方に移動して揺動レバー15を引き上げ、定着ローラ11を加圧ローラ14から離間する方向に変位させる。定着ローラ11が上方に変位するのに伴い、第2の実施の形態と同様、張力付与ばね17に取り付けられた当接部材17aがストッパ30に当接するため、無端状ベルト13には張力が付与されず、弛みが生じる。尚、第5の実施の形態に係る画像形成装置の制御システムは、第4の実施の形態(図23)と同様である。
【0080】
第5の実施の形態に係る画像形成装置の動作は、定着ローラ11を加圧ローラ14から離間する方向に変位させる際にはソレノイド48をオン状態とし、定着ローラ11を無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧する際にはソレノイド48をオフ状態とするという点を除き、第2の実施の形態と同様である。
【0081】
以上説明したように、第5の実施の形態によれば、第2の実施の形態における効果に加えて、ソレノイド48の高い応答性により、定着ローラ11及び無端状ベルト13を加圧ローラ14に押圧し、また加圧ローラ14から離間させる動作を、迅速に行うことができるという効果が得られる。
【0082】
第6の実施の形態.
図26は、第6の実施の形態に係る定着装置1の側面図である。第6の実施の形態では、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加熱ローラ12から離間する際の離間量を2通りに変化させるために、揺動レバー15に連結された2つのソレノイド50,60を有している。
【0083】
ソレノイド50,60は、揺動レバー15の上方に配置された本体52,62と、これら本体52,62から下方に突出し、略鉛直方向に移動可能なプランジャ51,52とをそれぞれ備えている。プランジャ51,61の下端部に形成された連結部51a,61aには、略鉛直方向に長いスリット53,63がそれぞれ形成されている。スリット53,63には、揺動レバー15に突設されたピン54,64が摺動可能に係合している。ピン54,64は、揺動レバー15の長手方向に沿って、ローラ作用点15bとばね作用点15cとの間に形成されている。ローラ作用点15bに近い側にピン54が配置され、ばね作用点15cに近い側にピン64が配置されている。
【0084】
ソレノイド50は、本体52内のコイルに電流が流れているオン状態では、プランジャ51に上向きの駆動力が作用し、本体52内のコイルに電流が流れていないオフ状態では、プランジャ51に駆動力が作用しないよう構成されている。ソレノイド60も、ソレノイド50と同様に構成されている。
【0085】
図26に示すように、ソレノイド50,60がいずれもオフ状態にあるときには、揺動レバー15はソレノイド50,60による付勢力を受けず、従って、レバー用ばね16の付勢力により下方に揺動し、定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧される。無端状ベルト13には、張力付与ばね17により、定着動作時に定着ローラ11に対して滑りを生じないような十分な張力T1(図8)が付与される。また、定着ローラ11及び加圧ローラ14の歯車21,22のピッチ円は互いに接触している。
【0086】
図27及び図28は、図26に示した状態からソレノイド60及びソレノイド50がそれぞれ作動したときの定着装置1を示す側面図である。図27に示すように、ソレノイド50がオフ状態のままソレノイド60がオン状態になると、ソレノイド60のスリット63の下端部がピン64に下方から当接し、レバー用ばね16の付勢力に抗して揺動レバー15を上方に揺動させる。尚、もう一方のピン54は、ソレノイド50のスリット53の上端にも下端にも接していない。この状態で、定着ローラ11と加圧ローラ14との間には、間隔bが形成される。定着ローラ11の上方への変位に伴って、張力付与ばね17の長さが伸びるため、無端状ベルト13に生じる張力は減少する。このとき、張力付与ばね17の当接部材17aは、ストッパ30に当接していない。また、無端状ベルト13には、定着ローラ11等との接触による圧痕が生じず、かつ定着ローラ11等との間で滑りを生じない範囲の張力T2(図8)が付与される。定着ローラ11及び加圧ローラ14の歯車21,22は、相互に回転伝達が可能な位置関係にある。
【0087】
一方、図28に示すように、ソレノイド50をオン状態としてソレノイド60をオフ状態とすると、ソレノイド50のスリット53の下端部がピン54に下方から当接し、揺動レバー15を上方に揺動させる。尚、もう一方のピン64は、ソレノイド60のスリット63の上端にも下端にも接していない。ソレノイド50のピン54は、ソレノイド60のピン64よりも支軸15aに近い位置に配置されているため、揺動レバー15の揺動量は、ソレノイド60をオン状態とした場合(図27)よりも大きい。従って、定着ローラ11と加圧ローラ14との間には、間隔b(図27)よりも大きい間隔aが形成される。張力付与ばね17の当接部材17aがストッパ30に当接し、その結果、張力付与ばね17には張力が付与されず、弛みが生じる。尚、この状態では、歯車21,22が完全に離間していてもよいが、再び係合させるときに歯先同士が当接しないよう、図6(B)に示したように歯車21,22の歯先円H1,H2が交差していることが好ましい。
【0088】
また、定着ローラ11及び加熱ローラ12には、無端状ベルト13に弛みが生じたときに、無端状ベルト13が定着ローラ11等に対して位置ずれしないようにするための位置規制リング32が設けられている。
【0089】
図29は、第6の実施の形態に係る定着装置1を含む画像形成装置の制御システムを示すブロック図である。機構制御部10は、実施の形態1に設けられていたカム18(図2)を回動させるためのカム駆動モータ24の代わりに、ソレノイド50,60を制御する。その他の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0090】
次に、以上のように構成された画像形成装置の動作について説明する。待機状態においては、図28に示すように、ソレノイド50がオン状態で、ソレノイド60がオフ状態にある。また、定着ローラ11及び無端状ベルト13は加圧ローラ14から間隔aだけ離間しており、無端状ベルト13には弛みが生じている。
【0091】
全体制御部20は、画像形成部8において実行すべき画像形成ジョブが生じた場合、また、加熱ローラ12及び加圧ローラ14の待機温度を維持するために加熱が必要と判断した場合には、ウォーミングアップ動作を行うよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、全体制御部20からの指示に基づいて、ソレノイド60をオン状態にし、ソレノイド50をオフ状態にする。これにより、図27に示すように、揺動レバー15が下方に揺動し、無端状ベルト13と加圧ローラ14との間隔はbとなる。無端状ベルト13には、定着ローラ11等との接触による圧痕が生じず、かつ定着ローラ11等との間で滑りを生じない範囲の張力T2(図8)が付与される。歯車21,22は、互いに回転伝達可能な位置関係にある。
【0092】
機構制御部10は、さらにローラ駆動モータ23の回転を開始する。これにより加圧ローラ14が回転すると、歯車21,22の係合により定着ローラ11が回転し、その結果、定着ローラ11に巻かれたベルト13が移動し、加熱ローラ12が回転する。さらに、機構制御部10は、ハロゲンランプ12h,14hに通電を開始する。これにより、定着ローラ11、加熱ローラ12、無端状ベルト13及び加圧ローラ14が均一に加熱される。
【0093】
全体制御部20は、記録紙センサ90からの検知信号に基づき、記録紙の先端が搬送ベルト13と加圧ローラ14との間のニップ部19に到達する時間を算出し、その到達時間に合わせてニップ部19を閉鎖するよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、全体制御部20からの指示に基づき、ソレノイド50,60をオフ状態にする。揺動レバー15は、ソレノイド50,60からの付勢力を受けないため、レバー用ばね16の付勢力により下方に揺動する。その結果、図26に示すように、定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧される。無端状ベルト13には、張力付与ばね17により、定着動作時に定着ローラ11に対して滑りを生じないような十分な張力T1(図8)が付与される。そののち、無端状ベルト13と加圧ローラ14との間のニップ部19において、実施の形態1と同様の方法で、記録紙へのトナー像の定着が行われる。
【0094】
一方、全体制御部20は、記録紙センサ90からの検知信号に基づいて、記録紙の後端がニップ部19を通過する時間を算出し、その通過時間に合わせてニップ部19を開放するよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、全体制御部20からの指示に基づき、ソレノイド60をオフ状態にしたままソレノイド50をオン状態にする。これにより、ソレノイド60が揺動レバー15を上方に揺動させ、図28に示すように、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から間隔aだけ離間する。機構制御部10は、さらに、ローラ駆動モータ23の回転を停止し、ハロゲンランプ12h,14hへの通電を停止する。これにより、張力付与ばね17の当接部材17aがストッパ30に当接し、無端状ベルト13が弛む。
【0095】
尚、全体制御部20は、定着動作中であっても、記録紙センサ90等により記録紙のジャムが検知されたときには、ニップ部19を開放するよう機構制御部10に指示する。これにより、無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間し、無端状ベルト13が弛み、記録紙の除去が容易になる。また、無端状ベルト13や加圧ローラ14の熱による損傷が防止される。
【0096】
以上説明したように、第6の実施の形態によれば、第3の実施の形態の効果に加えて、ソレノイド50,60の高い応答性により、定着ローラ11及び無端状ベルト13を加圧ローラ14に押圧し、また加圧ローラ14から離間させる動作を、迅速に行うことができるという効果が得られる。
【0097】
第7の実施の形態.
図30は、第7の実施の形態に係る定着装置1の側面図である。この第7の実施の形態では、揺動レバー15の支点15aがソレノイド70のプランジャ71によって支持されている。ソレノイド(押圧力可変手段)70は、揺動レバー15の支点15aの下方に配置された本体72と、本体72から上方に突出し、略鉛直方向に移動可能なプランジャ71とを有している。このプランジャ71の上端に、揺動レバー15の支点15aをなすピンが取り付けられている。
【0098】
ソレノイド70は、本体72内のコイルに電流が流れているオン状態では、プランジャ71に下向きの駆動力が作用し、この駆動力によりプランジャ71が下端位置で保持されるよう構成されている。一方、本体72内のコイルに電流が流れていないオフ状態では、プランジャ71に駆動力が作用せず、プランジャ71は上下に移動自在となる。揺動レバー15のローラ支点15bとばね支点15cとの間には、第1の実施の形態と同様のカム18が当接可能に設けられている。カム18は、回動中心18aを中心として回動することにより、揺動レバー15を上方に付勢するものである。
【0099】
図30に示すように、カム18が揺動レバー15に当接していず、ソレノイド70がオン状態であるとき(すなわち、プランジャ71が下端位置にあるとき)には、支点15aは固定されているのと同じ状態になる。そのため、揺動レバー15はレバー用ばね16の付勢力により下方に揺動し、これにより定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に対して押圧される。また、無端状ベルト13には、張力付与ばね17により、定着動作時に定着ローラ11に対して滑りを生じないような十分な張力T1(図8)が付与される。
【0100】
図31及び図32は、図30に示した状態からカム18及びソレノイド70がそれぞれ作動したときの定着装置1を示す側面図である。図30に示した状態からソレノイド70がオン状態のままカム18が回動し、揺動レバー15を押し上げると、図31に示すように、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間する。定着ローラ11の上方への変位に伴い、加熱ローラ12が定着ローラ11から離間する方向に変位し、張力付与ばね17の長さが伸びるため、無端状ベルト13に加わる張力は減少する。このとき、無端状ベルト13には、定着ローラ11等との接触による圧痕が生じず、かつ定着ローラ11等との間で滑りを生じない範囲の張力T2(図8)が付与される。定着ローラ11及び加圧ローラ14の歯車21,22のピッチ円は互いに離間しているが、歯先円は交差している。すなわち、歯車21,22は、歯先部分において互いに接触し、回転を伝達可能な位置関係にある。
【0101】
一方、図30に示した状態からソレノイド70をオフ状態にすると、図32に示すように、プランジャ71は上下に移動自在となり、従って揺動レバー15の支点15aが上下に移動自在となる。加圧ローラ14に押圧されて弾性変形している定着ローラ11は、その弾性力により上方に変位するため、プランジャ71が上方に移動し、揺動レバー15はばね支点15cをほぼ中心として上方に揺動する。その結果、定着ローラ11は、単に無端状ベルト13を介して加圧ローラ14上に載っている状態となる。また、定着ローラ11の上方への変位に伴い、加熱ローラ12が定着ローラ11から離間する方向に変位し、張力付与ばね17の長さが伸びるため、無端状ベルト13に加わる張力が減少する。このとき、無端状ベルト13には、定着ローラ11等との接触による圧痕が生じず、かつ定着ローラ11等との間で滑りを生じない範囲の張力T2(図8)が付与される。尚、無端状ベルト13に生じる張力は、張力付与ばね17及びレバー用ばね16のばね定数及び長さ並びにプランジャ71の突出量等により決定される。
【0102】
図33は、第7の実施の形態における定着装置1を含む画像形成装置の制御システムを示すブロック図である。本実施の形態における制御システムでは、機構制御部10が、ハロゲンランプ12h,14h、ローラ駆動モータ23及びカム駆動モータ24に加えて、ソレノイド70をそれぞれ独立に駆動制御する。また、機構制御部10には、サーミスタ25,26からの信号が入力される。画像形成装置の全体制御部20は、機構制御部10のほか、画像形成部8及び搬送機構9を制御する。また、この全体制御部20には、記録紙センサ90からの記録紙の先端又は後端の検知信号も入力される。
【0103】
次に、以上のように構成された画像形成装置の動作について説明する。待機状態においては、図31に示すように、ソレノイド70がオン状態で、カム18が揺動レバー15を押し上げた状態にあり、定着ローラ11と加圧ローラ14とは離間している。また、無端状ベルト13には、定着ローラ11等との接触による圧痕が生じず、かつ定着ローラ11等との間で滑りを生じない範囲の張力T2(図8)が生じている。
【0104】
全体制御部20は、画像形成部8において実行すべき画像形成ジョブが生じた場合、また、加熱ローラ12及び加圧ローラ14の待機温度を維持するために加熱が必要と判断した場合には、ウォーミングアップ動作を行うよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、ソレノイド70をオン状態にしたまま、ローラ駆動モータ23を回転させ、これにより定着ローラ11、加熱ローラ12及び加圧ローラ14の回転及び無端状ベルト13の移動を開始する。機構制御部10は、さらに、ハロゲンランプ12h,14hに通電制御を行う。
【0105】
全体制御部20は、記録紙センサ90からの検知信号に基づき、記録紙の先端がニップ部19に到達する時間を算出し、その到達時間に合わせてニップ部19を閉鎖するよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、ソレノイド70をオン状態にしたまま、カム駆動モータ24を駆動し、カム18を所定角度回転させることにより揺動レバー15から離間させる。これにより、揺動レバー15がレバー用ばね16の付勢力により下方に揺動し、図30に示すように、定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧される。定着ローラ11が下方に変位すると、加熱ローラ12も下方に変位して張力付与ばね17が圧縮され、無端状ベルト13には、張力付与ばね17により、定着動作時に定着ローラ11に対して滑りを生じないような十分な張力T1(図8)が付与される。そののち、無端状ベルト13と加圧ローラ14との間のニップ部19において、実施の形態1と同様の方法で、記録紙へのトナー像の定着が行われる。
【0106】
一方、全体制御部20は、記録紙センサ90からの検知信号に基づき、記録紙の後端がニップ部19を通過する時間を算出し、その通過時間に合わせてニップ部19を開放するよう機構制御部10に指示する。機構制御部10は、全体制御部20からの指示に基づき、カム駆動モータ24を駆動し、カム18を所定角度回動させ、レバー用ばね16の付勢力に抗して揺動レバー15を押し上げる。その結果、図31に示すように、定着ローラ11及び無端状ベルト13が加圧ローラ14から離間する。機構制御部10は、また、ローラ駆動モータ23の回転を停止し、さらにハロゲンランプ12h,14hへの通電を停止する。
【0107】
尚、定着動作中に誤って装置電源が遮断された場合、あるいは停電等が起きた場合には、ソレノイド70のコイルに電流に流れず、プランジャ71に駆動力が作用しなくなるため、プランジャ71が上下に移動自在となる。これにより、加圧ローラ14は、その弾性変形量が小さくなるよう上方に変位し、揺動レバー15はばね支点15cをほぼ中心として上方に揺動する。定着ローラ11の上方への変位に伴って、無端状ベルト13に加わる張力も減少し、無端状ベルト13には、定着ローラ11等に長時間接触しても圧痕が残らない程度の張力が付与される。
【0108】
以上説明したように、本第7の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加えて、装置電源が遮断され、又は停電が起きた場合に、ソレノイド70がオフされ、定着ローラ11の加圧ローラ14に対する押圧力が減少するため、定着ローラ11が無端状ベルト13を介して加圧ローラ14に押圧された状態で長い時間放置されることがない。その結果、無端状ベルト13及び各ローラの長寿命化を図ることができる。
【0109】
尚、上述した第1〜第3の実施の形態では、ローラ駆動モータ23を用いてカム18,38を駆動させるようにしたが、定着ローラ11又は加圧ローラ14を回転させるための歯車と連動させてカム18,38を駆動するようにしてもよい。この場合、ワンウェイクラッチ等を利用して、定着ローラ11又は加圧ローラ14の定着動作時等の回転方向と反対方向の回転により、カム18,38を駆動することが可能である。
【0110】
また、上記第7の実施の形態では、第1の実施の形態に係る定着装置において、揺動レバー15の支点15aをソレノイド70に取り付けたが、第2〜第6の実施の形態に係る定着装置において、揺動レバー15の支点15aをソレノイド70に取り付ける構成も可能である。
【0111】
また、第1〜第7の実施の形態では、無端状ベルト13は、2本のローラ(定着ローラ11及び加熱ローラ12)に張設されているが、3本以上のローラを含むローラ群に張設されていてもよい。この場合、定着ローラと、ローラ群の他の少なくとも一つのローラとが、上述した定着ローラ11と加熱ローラ12との関係と同様の関係にあればよい。
【0112】
【発明の効果】
本発明によれば、ニップ部において記録紙に定着を行うとき以外は、第1のローラ及び無端状ベルトを第2のローラから離間させることができるため、第1のローラと第2のローラとの間で無端状ベルトが長時間押圧されることを防止し、これにより無端状ベルト及び各ローラに圧痕が生じることを防止することができる。そのため、無端状ベルト及び各ローラの長寿命化を図ると共に、定着むらの発生を防止することができる。さらに、第2のローラが熱源を有しているため、第1のローラ及び無端状ベルトを第2のローラから離間させた状態で、無端状ベルト及び各ローラの加熱を行うことができる。そのため、第1のローラと第2のローラとの間の熱移動を抑制でき、また無端状ベルトを移動させながら温度制御することも可能になるため、短時間で効率のよい温度制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係る定着装置を含む画像形成装置を示す側面図である。
【図2】 本発明の第1の実施の形態に係る定着装置を示す側面図である。
【図3】 本発明の第1の実施の形態に係る定着装置を示す斜視図である。
【図4】 本発明の第1の実施の形態に係る定着装置の動作を示す側面図である。
【図5】 本発明の第1の実施の形態に係る定着装置における歯車の噛み合い状態を示す拡大図である。
【図6】 本発明の第1の実施の形態に係る定着装置における加熱ローラの支持構造を示す概略図である。
【図7】 本発明の第1の実施の形態に係る定着装置における定着ローラ、加熱ローラ及び無端状ベルトの位置関係を模式的に示す図である。
【図8】 本発明の第1の実施の形態に係る定着装置における各ばねの設定を示すグラフである。
【図9】 本発明の第1の実施の形態に係る定着装置を含む画像形成装置の制御システムを示すブロック図である。
【図10】 本発明の第1の実施の形態に係る定着装置におけるカムの他の構成例を示す図である。
【図11】 本発明の第2の実施の形態に係る定着装置を示す側面図である。
【図12】 本発明の第2の実施の形態に係る定着装置の動作を示す側面図である。
【図13】 本発明の第2の実施の形態に係る定着装置におけるばねとストッパとの当接状態を示す図である。
【図14】 本発明の第2の実施の形態に係る定着装置における無端状ベルトの位置規制リングを示す斜視図である。
【図15】 本発明の第2の実施の形態に係る定着装置における無端状ベルトの位置を規制する部材を示す斜視図である。
【図16】 本発明の第2の実施の形態に係る定着装置における歯車の噛み合い状態の一例を示す図である。
【図17】 本発明の第3の実施の形態に係る定着装置の側面図である。
【図18】 本発明の第3の実施の形態に係る定着装置におけるカムの動作状態を示す側面図である。
【図19】 本発明の第3の実施の形態に係る定着装置の第1の動作を示す側面図である。
【図20】 本発明の第3の実施の形態に係る定着装置の第2の動作を示す側面図である。
【図21】 本発明の第4の実施の形態に係る定着装置の側面図である。
【図22】 本発明の第4の実施の形態に係る定着装置の動作を示す側面図である。
【図23】 本発明の第4の実施の形態に係る定着装置を含む画像形成装置の制御システムを示すブロック図である。
【図24】 本発明の第5の実施の形態に係る定着装置を示す側面図である。
【図25】 本発明の第5の実施の形態に係る定着装置の動作を示す側面図である。
【図26】 本発明の第6の実施の形態に係る定着装置を示す側面図である。
【図27】 本発明の第6の実施の形態に係る定着装置の第1の動作を示す側面図である。
【図28】 本発明の第6の実施の形態に係る定着装置の第2の動作を示す側面図である。
【図29】 本発明の第6の実施の形態に係る定着装置の制御システムを示す側面図である。
【図30】 本発明の第7の実施の形態に係る定着装置を示す側面図である。
【図31】 本発明の第7の実施の形態に係る定着装置の第1の動作を示す側面図である。
【図32】 本発明の第7の実施の形態に係る定着装置の第2の動作を示す側面図である。
【図33】 本発明の第7の実施の形態に係る定着装置を含む画像形成装置の制御システムを示すブロック図である。
【符号の説明】
10 画像形成部、 11 定着ローラ、 12 加熱ローラ、 12h ハロゲンランプ、 13 無端状ベルト、 14 加圧ローラ、 14h ハロゲンランプ、 15 揺動レバー、 16,17 ばね、 18,38 カム、 23 ローラ駆動モータ、 24 カム駆動モータ、 25,26 サーミスタ、 17a プレート、 30 ストッパ、 90 記録紙センサ、 48,50,60,70 ソレノイド。

Claims (16)

  1. 少なくとも一つの熱源を有するローラを含む定着ローラ群と、
    前記定着ローラ群に張設された無端状ベルトと、
    前記定着ローラ群のうち熱源を有さない第1定着ローラに前記無端状ベルトを挟んで対向して配置され、前記無端状ベルトとの間にニップ部を形成する加圧ローラと
    を備えた定着装置において、
    前記加圧ローラは熱源を有し、
    前記第1定着ローラを前記加圧ローラから離間する方向に変位させる変位手段と、
    当接部材を備え、第2定着ローラを前記第1定着ローラから離間する方向に押圧して前記無端状ベルトに張力を付与する張力付与ばね
    を備え、
    前記変位手段により前記第1定着ローラが前記加圧ローラから離間する方向に変位したときに、前記張力付与ばねの前記当接部材に当接し、前記張力付与ばねによる前記無端状ベルトへの張力付与を解除するストッパをさらに備えたことを特徴とする定着装置。
  2. 前記変位手段は、前記第1定着ローラを、前記加圧ローラから所定量離間した第1の離間位置と、前記第1の離間位置よりもさらに前記加圧ローラから離間した第2の離間位置とに変位させることが可能であり、
    前記第1定着ローラが前記第2の離間位置に変位したときに、前記ストッパが前記張力付与ばねの前記当接部材に当接することにより、前記張力付与ばねによる前記無端状ベルトへの張力付与を解除することを特徴とする請求項に記載の定着装置。
  3. 前記無端状ベルトの前記定着ローラ群に対する位置を、少なくとも前記無端状ベルトの幅方向において規制するベルト位置規制手段をさらに有することを特徴とする請求項又はに記載の定着装置。
  4. 前記変位手段は、
    前記第1定着ローラを回転可能に支持する支持部材と、
    前記支持部材を、前記第1定着ローラを前記加圧ローラに対して接近及び離間させる方向に駆動する駆動手段と
    を有することを特徴とする請求項1からまでのいずれかに記載の定着装置。
  5. 前記駆動手段は、カム又はソレノイドを有することを特徴とする請求項に記載の定着装置。
  6. 前記第1定着ローラ及び前記加圧ローラには、互いに係合可能な第1の歯車及び第2の歯車がそれぞれ取り付けられており、
    前記第1の歯車及び前記第2の歯車は、前記変位手段により前記第1定着ローラが前記加圧ローラから離間する方向に変位したときに、互いに歯先部分で回転伝達可能な位置関係にあることを特徴とする請求項1からまでのいずれかに記載の定着装置。
  7. 前記第1定着ローラ及び前記加圧ローラには、互いに係合可能な第1の歯車及び第2の歯車がそれぞれ取り付けられており、
    前記第1の歯車及び前記第2の歯車は、いずれも尖った歯先を有することを特徴とする請求項1からまでのいずれかに記載の定着装置。
  8. 前記第1定着ローラを、前記無端状ベルトを介して前記加圧ローラに押圧する押圧手段と、
    前記押圧手段が前記第1定着ローラを押圧する押圧力を変化させる押圧力可変手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1からまでのいずれかに記載の定着装置。
  9. 前記押圧手段は、前記第1定着ローラを支持する揺動レバーを有し、前記押圧力可変手段は、前記揺動レバーの支点を移動させることにより前記押圧力を変化させることを特徴とする請求項に記載の定着装置。
  10. 前記押圧力可変手段は、電源遮断時に、前記押圧手段による前記第1定着ローラの押圧力を低下させることを特徴とする請求項又はに記載の定着装置。
  11. 記録紙にトナー画像を形成する画像形成手段と、
    前記画像形成手段により記録紙上に形成されたトナー画像を定着するための請求項1から10までのいずれかに記載の定着装置と、
    前記画像形成手段及び前記定着装置を制御する制御手段と
    を備えた画像形成装置。
  12. 前記制御手段は、前記第1定着ローラが前記変位手段により前記加圧ローラから離間する方向に変位した状態で、前記定着ローラ群に属するいずれかのローラを回転させることにより前記無端状ベルトを移動させ、且つ前記定着ローラ群のうち熱源を有するローラ及び前記加圧ローラの各熱源を加熱することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
  13. 記録紙の通過を検知し、検知信号を出力する検知手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記検知信号に基づいて前記定着装置の前記変位手段を駆動制御することを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
  14. 前記定着装置は、請求項に記載の定着装置であって、
    前記制御手段は、前記画像形成手段において実行すべきジョブが無い場合には、前記変位手段により前記第1定着ローラを前記第2の離間位置に変位させ、前記無端状ベルトに弛みを生じさせることを特徴とする請求項11から13までのいずれかに記載の画像形成装置。
  15. 前記制御手段は、前記画像形成手段において実行すべきジョブが生じた場合、又は前記定着ローラ群のうち熱源を有するローラ及び前記加圧ローラの加熱が必要と判断した場合には、前記第1定着ローラを前記第1の離間位置に変位させ、且つ前記定着ローラ群のうち熱源を有するローラ及び前記加圧ローラの各熱源を加熱することを特徴とする請求項14に記載の画像形成装置。
  16. 前記制御手段は、記録紙ジャムを検知した場合には、前記第1定着ローラを前記第2の離間位置に変位させることを特徴とする請求項14又は15に記載の画像形成装置。
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