JP5343343B2 - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置においては、電源がオンされてから複写やプリントが可能となるまでの時間(ウォームアップ時間)の短縮化や消費電力の低減化への要求が高い。そのため、画像形成装置に搭載される定着装置には、トナー像を熱溶融して用紙に定着する発熱部材として、熱容量が従来のロール状部材よりも小さいベルト部材を用いるものが開発されている。
例えば特許文献1には、トナー像を熱溶融する発熱部材として、電磁誘導発熱するシームレスフィルムで構成した加熱装置に関する技術が記載されている。また、例えば特許文献2には、固定の加熱体に内面が対向圧接されて移動するエンドレスの耐熱性フィルムを発熱部材として用いる加熱装置に関する技術が記載されている。
特開平9−171889号公報 特開平4−44075号公報
ここで一般に、トナー像を用紙に定着する発熱部材としてベルト部材を用いる定着装置では、例えば加圧ロールのような加圧部材がベルト部材と圧接するように配置され、用紙を通過させるニップ部を形成している。そのために、ベルト部材の全体を定着可能温度まで一様に高める際に、ニップ部にて熱容量の大きな加圧部材に熱を奪われ、定着可能温度に上昇させるまでのウォームアップ時間を遅延させる要因となっている。
本発明は、トナー像を用紙に定着する発熱部材としてベルト部材を用いる定着装置において、加圧部材に奪われる熱を低減してベルト部材を定着可能温度に上昇させるまでの時間を短縮することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、電磁誘導加熱される導電層を有してベルト状に形成され、外部からの駆動力を受けることで回転移動するように支持されたベルト部材と、前記ベルト部材に対して予め定められた位置にて対向して設けられ、当該ベルト部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材を有して当該ベルト部材を加熱する加熱部材と、前記ベルト部材に対して移動することで接触する位置と離隔した位置との間を移動可能に構成され、当該ベルト部材と接触する位置に設定されることで当該ベルト部材の外周面に接触して記録材が通過するニップ部を形成するとともに当該ベルト部材を回転駆動する第1の回転駆動部材と、前記ベルト部材の外周面または内周面と接触するように配置され、前記第1の回転駆動部材が当該ベルト部材に対して接触する位置に設定された場合および離隔した位置に設定された場合の双方にて当該ベルト部材を回転駆動する第2の回転駆動部材と、前記第1の回転駆動部材から前記第2の回転駆動部材に対して当該第1の回転駆動部材の回転駆動力を伝達する駆動伝達手段と、を備え、前記第2の回転駆動部材は、前記第1の回転駆動部材からの回転駆動力を受けて回転している時の周速が当該第1の回転駆動部材の周速よりも遅く設定されるとともに、前記駆動伝達手段は、当該第2の回転駆動部材の周速が、当該第1の回転駆動部材からの回転駆動力を受けて回転している前記ベルト部材の周速より速くなった場合に、当該第1の回転駆動部材から当該第2の回転駆動部材への回転駆動力の伝達を停止する回転伝達制限部材を含むことを特徴とする定着装置である。
請求項2に記載の発明は、前記第2の回転駆動部材は、前記ベルト部材の幅方向における画像形成領域の外側に配置されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置である。
請求項に記載の発明は、前記駆動伝達手段は、前記第1の回転駆動部材の移動に対応して、当該第1の回転駆動部材から前記第2の回転駆動部材に対して当該第1の回転駆動部材の回転駆動力を伝達する位置に移動することを特徴とする請求項1または2記載の定着装置である。
請求項に記載の発明は、前記第2の回転駆動部材が配置された位置の前記ベルト部材を挟んで対向する位置に配置され、当該ベルト部材との摩擦力を低減する摩擦低減部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2記載の定着装置である。
請求項に記載の発明は、トナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着手段とを有し、前記定着手段は、電磁誘導加熱される導電層を有してベルト状に形成され、外部からの駆動力を受けることで回転移動するように支持されたベルト部材と、前記ベルト部材に対して予め定められた位置にて対向して設けられ、当該ベルト部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材を有して当該ベルト部材を加熱する加熱部材と、前記ベルト部材に対して移動することで接触する位置と離隔した位置との間を移動可能に構成され、当該ベルト部材と接触する位置に設定されることで当該ベルト部材の外周面に接触して記録材が通過するニップ部を形成するとともに当該ベルト部材を回転駆動する第1の回転駆動部材と、前記ベルト部材の外周面または内周面と接触するように配置され、前記第1の回転駆動部材が当該ベルト部材に対して接触する位置に設定された場合および離隔した位置に設定された場合の双方にて当該ベルト部材を回転駆動する第2の回転駆動部材と、前記第1の回転駆動部材から前記第2の回転駆動部材に対して当該第1の回転駆動部材の回転駆動力を伝達する駆動伝達手段と、を備え、前記第2の回転駆動部材は、前記第1の回転駆動部材からの回転駆動力を受けて回転している時の周速が当該第1の回転駆動部材の周速よりも遅く設定されるとともに、前記駆動伝達手段は、当該第2の回転駆動部材の周速が、当該第1の回転駆動部材からの回転駆動力を受けて回転している前記ベルト部材の周速より速くなった場合に、当該第1の回転駆動部材から当該第2の回転駆動部材への回転駆動力の伝達を停止する回転伝達制限部材を含むことを特徴とする画像形成装置である。
請求項に記載の発明は、前記定着手段は、前記第2の回転駆動部材が前記加熱部材により加熱された前記ベルト部材の外周面に接し、当該ベルト部材の幅方向における画像形成領域よりも外側に配置されることを特徴とする請求項記載の画像形成装置である。
本発明の請求項1によれば、トナー像を用紙に定着するベルト部材を用いる定着装置において、本発明を採用しない場合に比べて、加圧部材に奪われる熱を低減してベルト部材を定着可能温度に上昇させるまでの時間を短縮することができる。また、第2の回転駆動部材がベルト部材に接触した状態で第1の回転駆動部材によりベルト部材を回転させても、第2の回転駆動部材との接触によってベルト部材にて生じるストレスを低減することができる。
本発明の請求項2によれば、ベルト部材における画像形成領域の熱が第2の回転駆動部材によって奪われることを低減することが可能になる。
本発明の請求項によれば、第1の回転駆動部材がベルト部材に対して接離しても、第1の回転駆動部材の回転駆動力を第2の回転駆動部材に伝達することができる。
本発明の請求項によれば、本発明を採用しない場合に比べて、第2の回転駆動部材によるベルト部材の回転駆動を円滑に行うことができる。
本発明の請求項によれば、トナー像を用紙に定着するベルト部材を用いる定着装置を搭載した画像形成装置において、本発明を採用しない場合に比べて、電源をオンしてから画像の形成が可能となるまでの時間を短縮することができる。また、第2の回転駆動部材がベルト部材に接触した状態で第1の回転駆動部材によりベルト部材を回転させても、第2の回転駆動部材との接触によってベルト部材にて生じるストレスを低減することができる。
本発明の請求項によれば、ベルト部材における画像形成領域の熱が第2の回転駆動部材によって奪われることを低減することが可能になる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置1の全体構成を示した図である。図1に示す画像形成装置1は、所謂タンデム型のカラープリンタであり、各色の画像データに対応して画像形成を行う画像形成プロセス部10、画像形成装置1全体の動作を制御する制御部30、例えばパーソナルコンピュータ(PC)3や画像読取装置4等といった外部装置に接続され、これらから受信された画像データに対して所定の画像処理を施す画像処理部35、各部に電力を供給する主電源38を備えている。
画像形成プロセス部10には、一定の間隔を置いて並列的に配置されるトナー像形成手段の一例である4つの画像形成ユニット11Y,11M,11C,11K(「画像形成ユニット11」とも総称する)が備えられている。各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する像保持体の一例としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を所定電位で一様に帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を画像データに基づいて露光するLEDプリントヘッド14、感光体ドラム12上に形成された静電潜像を現像する現像器15、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するクリーナ16を備えている。
また、各画像形成ユニット11は、現像器15に収納されるトナーを除いて、略同様に構成される。そして、各画像形成ユニット11は、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
さらに、画像形成プロセス部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色トナー像が多重転写される中間転写ベルト20、各画像形成ユニット11にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト20に順次転写(一次転写)する一次転写ロール21、中間転写ベルト20上に重畳して転写された各色トナー像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ロール22、二次転写された各色トナー像を用紙P上に定着させる定着手段(定着装置)の一例である定着装置60を備えている。なお、本実施の形態の画像形成装置1では、中間転写ベルト20、一次転写ロール21、および二次転写ロール22により転写手段が構成される。
本実施の形態の画像形成装置1において、PC3や画像読取装置4から入力された画像データは、画像処理部35によって所定の画像処理が施された後、不図示のインターフェースを介して各画像形成ユニット11に送られる。そして、例えば黒(K)色トナー像を形成する画像形成ユニット11Kでは、感光体ドラム12が矢印A方向に回転しながら、帯電器13により所定電位で一様に帯電され、画像処理部35から送信された画像データに基づいてLED(Light Emitting Diode)アレイが発光するLEDプリントヘッド14により走査露光される。それにより、感光体ドラム12上には、黒(K)色画像に関する静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム12上に形成された静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上には黒(K)色トナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11Y,11M,11Cにおいても、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナー像が形成される。
各画像形成ユニット11で形成された各色トナー像は、矢印B方向に移動する中間転写ベルト20上に、一次転写ロール21により順次静電吸引されて、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。中間転写ベルト20上の重畳トナー像は、中間転写ベルト20の移動に伴って二次転写ロール22が配置された領域(二次転写部T)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部Tに搬送されると、重畳トナー像が二次転写部Tに搬送されるタイミングに合わせて用紙保持部40から用紙Pが二次転写部Tに供給される。そして、重畳トナー像は、二次転写部Tにて二次転写ロール22が形成する転写電界の作用により、搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される。
その後、重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト20から剥離され、定着装置60まで搬送される。定着装置60に搬送された用紙P上のトナー像は、定着装置60によって熱および圧力による定着処理を受けて用紙P上に定着される。そして、定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置1の排出部に設けられた排紙積載部45に搬送される。
一方、二次転写後に中間転写ベルト20に付着しているトナー(転写残トナー)は、二次転写の終了後に中間転写ベルト20表面からベルトクリーナ25によって除去され、次の画像形成サイクルに備えられる。
このようにして、画像形成装置1での画像形成がプリント枚数分のサイクルだけ繰り返して実行される。
次に、本実施の形態の画像形成装置1に配置された定着装置60の構成を説明する。
図2は、本実施の形態の定着装置60の主要構成を示す中央部領域における側断面図である。図2に示すように、定着装置60は、交流磁界を発生させる加熱部材の一例としてのIH(Induction Heating)ヒータ80、IHヒータ80により電磁誘導加熱される定着ベルト61、定着ベルト61に対向するように配置された加圧ロール62、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧される押圧パッド65を備えている。
また、定着装置60は、押圧パッド65等を支持するホルダ63、定着ベルト61の内周面を支持するベルトガイド部材64、定着ベルト61内周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部材66、IHヒータ80による定着ベルト61に対する加熱効率を高めるためのフェライト部材67、定着ベルト61内周面と押圧パッド65との摺擦抵抗を低減する低摩擦シート68、定着ベルト61の両端部を支持するエッジガイド部材100(後段の図4参照)、定着ベルト61からの用紙Pの剥離を補助する剥離補助部材70を備えている。
定着ベルト61は、無端ベルトからなるベルト部材の一例であって、原形(円筒形状)時の直径が例えば30mmである。また、図3(定着ベルト61の断面図)に示したように、定着ベルト61は、耐熱性の高いシート状部材からなる基材層611、基材層611の上に積層された導電層612、トナー像の定着性を向上させる弾性層613、最上層に被覆された表面離型層614からなる多層ベルトで構成される。
基材層611は、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミド等といった耐熱性の高い合成樹脂からなるシート状部材で構成される。基材層611の厚さは、10〜150μmに形成される。
導電層612は、IHヒータ80にて生成される交流磁界によって電磁誘導加熱される電磁誘導発熱体層であり、厚み1〜80μmの例えば鉄、コバルト、ニッケル、銅、クロム等といった金属が用いられる。本実施の形態の定着装置60では、押圧パッド65と加圧ロール62とで形成されるニップ部Nおよびこのニップ部Nの近傍において定着ベルト61を変形させて使用する。そのため、本実施の形態では、例えば導電率の高い銅を基材層611上に厚さ10μm程度にメッキまたは蒸着等することで導電層612を形成して、定着ベルト61全体としての柔軟性・フレキシブル性を高めている。
弾性層613は、シリコーンゴム等の弾性体で構成される。定着対象となる用紙Pに保持されるトナー像は、粉体である各色トナーが積層して形成されている。そのため、ニップ部Nにおいてトナー像の全体に均一に熱を供給するには、用紙P上のトナー像の凹凸に倣って定着ベルト61表面が変形することが好ましい。そこで、本実施の形態の弾性層613では、例えば、厚みが100〜600μm、硬度が10°〜30°(JIS−A)のシリコーンゴムを用いている。
表面離型層614は、用紙P上に保持された未定着トナー像と直接接触するため、離型性の高い材質が使用される。例えば、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、シリコーン共重合体、またはこれらの複合層等が用いられる。表面離型層614の厚さとしては、薄すぎると、耐摩耗性の面で充分でなく、定着ベルト61の寿命を短くする。一方、厚すぎると、定着ベルト61の熱容量が大きくなりすぎ、定着ベルト61が定着可能温度まで上昇するまでの時間(ウォームアップタイム)が長くなる。そこで、本実施の形態の表面離型層614では、耐摩耗性と熱容量とのバランスを考慮して、厚さを1〜50μmに設定している。
次に、押圧パッド65は、加圧ロール62と対向する位置にてホルダ63に支持されている。そして、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧される状態で配置され、加圧ロール62との間でニップ部Nを形成する。押圧パッド65は、ニップ部Nの入口側(用紙Pの搬送方向上流側)に配置されたプレニップ部材651と、ニップ部Nの出口側(用紙Pの搬送方向下流側)に配置された剥離ニップ部材652とで構成される。
プレニップ部材651は、加圧ロール62側の面がほぼ加圧ロール62の外周面に倣う円弧形状に形成されたシリコーンゴム等やフッ素ゴム等の弾性体で構成される。それにより、幅の広いニップ部Nを形成する。
また、剥離ニップ部材652は、剥離ニップ部材652の配置領域を通過する定着ベルト61の曲率半径が小さくなるように、加圧ロール62表面から局所的に大きなニップ圧で押圧されるように構成される。それにより、剥離ニップ部材652の配置領域を通過する用紙Pに定着ベルト61表面から離れる方向のカールを形成して、用紙Pを定着ベルト61表面から剥離させる。
なお、本実施の形態では、押圧パッド65による剥離の補助手段として、ニップ部Nの下流側に、剥離補助部材70を配設している。剥離補助部材70は、剥離バッフル71が定着ベルト61の回転移動方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ベルト61と近接する状態でホルダ72によって支持される。そして、剥離ニップ部材652によって用紙Pに形成されたカール部分を剥離バッフル71により支持することで、用紙Pが定着ベルト61方向に向かうことを抑制する。
押圧パッド65と定着ベルト61との間には、低摩擦シート68が配置されている。低摩擦シート68には、定着ベルト61内周面と押圧パッド65との摺擦抵抗を低減するために、摩擦係数が小さく、耐摩耗性・耐熱性に優れた材質が用いられる。例えば、ポリイミドフィルムやフッ素樹脂を含浸させたガラス繊維シート等が用いられる。なお、低摩擦シート68は、押圧パッド65と別体に構成しても、押圧パッド65と一体的に構成しても、いずれでもよい。本実施の形態の定着装置60では、低摩擦シート68は押圧パッド65と別体に構成し、一端をホルダ63に固定して、押圧パッド65と定着ベルト61との間に挟持されるように設定される。
押圧パッド65を支持するホルダ63は、押圧パッド65が加圧ロール62からの押圧力を受けた状態での撓み量が一定量以下となるように、剛性の高い材料で構成される。それにより、ニップ部Nにおける長手方向の圧力(ニップ圧)の均一性を維持している。さらに、本実施の形態の定着装置60では、電磁誘導を用いて定着ベルト61を加熱する構成を採用していることから、ホルダ63は、誘導磁界に影響を与えないか、または与え難い材料であり、かつ、誘導磁界から影響を受けないか、または受け難い材料で構成される。例えば、ガラス混入PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂や、アルミニウム等の非磁性金属等が用いられる。
また、ホルダ63は、高透磁率の材質(例えば、フェライトやパーマロイ等)で構成され、IHヒータ80による定着ベルト61に対する加熱効率を高めるためのフェライト部材67を支持する。さらに、ホルダ63の長手方向に沿って、定着ベルト61の回転移動を定着ベルト61の内周面側から支持するベルトガイド部材64を支持する。ベルトガイド部材64には、定着ベルト61内周面との接触面積を少なくするように、定着ベルト61の移動方向に沿った複数のリブが形成されている(後段の図4参照)。
ベルトガイド部材64には、長手方向に亘って潤滑剤塗布部材66が配置される。潤滑剤塗布部材66は、定着ベルト61の内周面に接触するように設定され、潤滑剤を定着ベルト61内周面に適量供給する。それにより、定着ベルト61と低摩擦シート68との摺擦部に潤滑剤を供給し、低摩擦シート68を介した定着ベルト61と押圧パッド65との摺擦抵抗を低減する。なお、潤滑剤としては、例えば、シリコーンオイルやフッ素オイル等の液体状オイルや、固形物質と液体とを混合させた合成潤滑油グリース等、さらにはこれらを組み合わせたものが用いられる。
さらに、ベルトガイド部材64のニップ部Nの出口側には、後段で述べる低摺擦部材69が定着ベルト61の内周面と接触するように配置されている(後段の図4や図7等参照)。
また、ホルダ63の軸方向両端部には、定着ベルト61を支持するエッジガイド部材100が配置される。定着ベルト61は、両端部の内周面がエッジガイド部材100で支持されることで、所定の形状(例えば、略円形)を維持しながら回転移動する。
ここで、図4は定着ベルト61がエッジガイド部材100によって支持される構成を説明する図であり、用紙Pの搬送方向下流側(ニップ部Nの出口側)から見た定着装置60の一方の端部領域を示している。なお、図4では、定着ベルト61を支持する機構の理解を容易とするため、後段で説明する定着ベルト61を外周面から駆動する機構の記載を省いている。また、定着ベルト61を支持する機構や定着ベルト61、加圧ロール62を実線で示し、他の構成を破線で示した。
図4に示したように、エッジガイド部材100は、ニップ部Nとその近傍に対応する部分に切り欠きが形成された円筒状、すなわち断面がC形状のベルト走行ガイド部101、このベルト走行ガイド部101の長手方向外側に設けられ、定着ベルト61の外径よりも大きな外径で形成されたフランジ部102、さらにエッジガイド部材100の外側面に設けられ、エッジガイド部材100を定着装置60本体に結合するための保持部103で構成される。
そして、定着ベルト61は、定着ベルト61の幅方向両端部において、両端部の内周面がエッジガイド部材100のベルト走行ガイド部101に支持されながら、加圧ロール62に従動して回転移動する(図2の矢印D)。それにより、定着ベルト61は、IHヒータ80との間隙が所定値(例えば、0.5〜2mm)に設定される。さらに、フランジ部102によって幅方向への移動(ベルトウォーク)が制限される。
次に、加圧ロール62は、定着ベルト61に対向するように配置され、図示しない駆動モータにより矢印C方向に、例えば140mm/sのプロセススピードで回転する。この回転により定着ベルト61は加圧ロール62に従動して回転移動する(図2の矢印D)。したがって、加圧ロール62は、定着ベルト61を回転駆動する第1の回転駆動部材の一例である。そして、加圧ロール62と押圧パッド65とにより定着ベルト61を挟持した状態でニップ部Nを形成し、このニップ部Nに未定着トナー像を保持した用紙Pを通過させることで、熱および圧力を加えて未定着トナー像を用紙Pに定着する。
加圧ロール62は、例えば鉄製の直径18mmの中実の芯金621(図2参照)と、芯金621の外周面に被覆された例えば厚さ5mmのシリコーンスポンジ等の耐熱性弾性体層622と、さらに例えば厚さ50μmのPFA等の耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層623とが積層されて構成されている。そして、例えば20kgfの荷重で定着ベルト61を介して押圧パッド65を押圧している。
そして、加圧ロール62は、不図示の接離機構(リトラクト機構)により、定着ベルト61から離隔した位置(後段の図8参照)と、定着ベルト61に圧接する位置(後段の図7参照)との間を移動するように構成されている。
続いて、定着ベルト61の導電層612に交流磁界を作用させて電磁誘導加熱するIHヒータ80について説明する。
本実施の形態のIHヒータ80は、交流磁界生成部(図5の励磁コイル82)が定着ベルト61の外周面と例えば0.5〜2mmの間隙を保持して配置される(図2参照)。またIHヒータ80は、定着ベルト61の移動方向と直交する方向を長手方向とする、定着ベルト61の全幅に亘って伸びた長方形状で形成される。なお、IHヒータ80は、定着ベルト61の内周面側に配置してもよい。また、定着ベルト61の内周面側および外周面側の双方に配置してもよい。
図5は、本実施の形態のIHヒータ80の構成を説明する概略断面図である。図5に示したように、IHヒータ80は、例えば耐熱性樹脂等の非磁性体から構成される支持体81、交流磁界を生成する励磁コイル82、励磁コイル82にて生成された交流磁界の磁路を形成する磁心83、磁界を遮蔽するシールド84、励磁コイル82に交流電流を供給する励磁回路86を備えている。
支持体81は、断面が定着ベルト61の表面形状に沿って湾曲した形状で形成され、励磁コイル82を支持する上部面(支持面)81aが、いずれの位置においても定着ベルト61との距離が所定値となるように形成されている。すなわち、支持面81aは、励磁コイル82と定着ベルト61との距離が所定値となる位置に設定する位置設定面を構成する。また、支持体81を構成する材質としては、例えば、耐熱ガラス、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂、またはこれらにガラス繊維を混合した耐熱性樹脂等の耐熱性のある非磁性材料が用いられる。
励磁コイル82は、表面が絶縁被覆され、所定の断面形状(後段参照)で形成された例えば銅からなる導線を例えば20本束ねたリッツ線が、長円形状や楕円形状、長方形状等の中空きの閉ループ状に巻かれて構成される。そして、励磁コイル82に励磁回路86から所定の周波数の交流電流が供給されることにより、励磁コイル82の周囲には、閉ループ状に巻かれたリッツ線を中心とする交流磁界Hが生成される。その際の励磁回路86から励磁コイル82に供給される交流電流の周波数は、例えば10〜50kHzに設定される。
励磁コイル82は、支持体81の支持面(位置設定面)81aに密着するように固定して支持される。それにより、励磁コイル82と定着ベルト61との距離が所定値に設定される。
磁心83は、例えばフェライト樹脂等の高透磁率の材質で構成される。磁心83は、励磁コイル82にて生成された交流磁界Hによる磁力線が、励磁コイル82から定着ベルト61を横切ってフェライト部材67に向かい、フェライト部材67の中を通過して励磁コイル82に戻るといった磁力線の通路(磁路)を形成する。磁心83によって磁路を形成することにより、励磁コイル82にて生成された交流磁界H(磁力線)が定着ベルト61の磁心83と対向する領域に集中される。
磁心83とシールド84とは、ともに取付部材85によって支持体81に固定される。このような取付方法の他に、例えば、磁心83とシールド84との双方に爪状の取付部を設けておき、そして支持体81側には、磁心83とシールド84との双方に設けられた爪状の取付部が嵌め込まれる溝部を設け、双方の爪状の取付部を支持体81側の溝部に嵌め込むように固定する方法等を用いてもよい。このような取付方法を用いれば、IHヒータ80の組み立て時の作業工程数が少なくなる。
ここで、図6は、交流磁界Hによって定着ベルト61が発熱する状態を説明する図である。図6に示したように、交流磁界H(磁力線)が定着ベルト61の導電層612を横切る際に、導電層612には、その交流磁界Hの変化を妨げる磁界を生成するように渦電流Iが発生する。そして、渦電流Iが導電層612を流れることによって、導電層612の抵抗値Rに比例したジュール熱W(W=IR)が発生し、定着ベルト61が加熱される。
次に、本実施の形態の定着装置60において、IHヒータ80への通電が開始され、定着ベルト61が定着可能温度まで上昇するまでの期間(ウォームアップ期間)および画像形成時において行われる定着装置60での動作と、かかる動作を実行する定着装置60の構成とについて述べる。
まず、ウォームアップ期間および画像形成時における動作を実行する定着装置60の構成について説明する。図7および図8は、定着装置60の一方の端部領域の側断面図であり、図9は、定着装置60の一方の端部領域を用紙Pの搬送方向下流側(ニップ部Nの出口側)から見た側面図である。また、図7および図9は、定着装置60がウォームアップ期間を終えた、画像形成動作が行われる状態での設定を示し、図8は、定着装置60がウォームアップ期間にある状態での設定を示している。
なお、図7〜図9は、定着装置60の一方の端部領域を示したが、他方の端部領域も同様に構成してもよい。さらには、定着装置60の一方の端部領域だけを図7〜図9に示した構成としてもよい。
図7〜図9に示したように、定着装置60の双方の端部領域には、上記の図2に示した構成に加えて、定着ベルト61を外周面側から回転駆動する第2の回転駆動部材の一例としての定着ベルト駆動ロール90、加圧ロール62からの回転駆動力を定着ベルト駆動ロール90に伝達する駆動伝達手段の一例としての第1の伝達ギヤ部材93および第2の伝達ギヤ部材95、定着ベルト駆動ロール90と対向する位置の定着ベルト61の内周面側に配置された低摺擦部材69を備えている。
定着ベルト駆動ロール90は、定着ベルト61の幅方向における画像形成領域の外側の位置に配置され、定着ベルト61を外周面側から圧接するように、回転軸92によって定着装置60本体に支持される。また、定着ベルト駆動ロール90には、回転軸92と同軸にギヤ91が設けられている。そして、ギヤ91が第1の伝達ギヤ部材93および第2の伝達ギヤ部材95を介して加圧ロール62からの回転駆動力を得ることで、定着ベルト駆動ロール90は回転する。ここで、「定着ベルト61の幅方向における画像形成領域」とは、用紙P上でのトナー像が保持される領域と対向する定着ベルト61での幅方向の領域を意味する(図9参照)。
また、定着ベルト駆動ロール90の表面は、定着ベルト61との摩擦力を高めるウレタン等のゴム層が被覆されている。それにより、定着ベルト駆動ロール90から定着ベルト61への回転駆動力の伝達効率を高めている。
第1の伝達ギヤ部材93および第2の伝達ギヤ部材95は、ともに回転軸94に同軸に固定され、回転軸94によって定着装置60本体に支持される。第1の伝達ギヤ部材93は、定着ベルト駆動ロール90のギヤ91とギヤ結合される。また、第2の伝達ギヤ部材95は、加圧ロール62の芯金621に同軸に設けられたギヤ97とギヤ結合される。それにより、加圧ロール62の回転駆動力は、加圧ロール62のギヤ97→第2の伝達ギヤ部材95→回転軸94→第1の伝達ギヤ部材93→定着ベルト駆動ロール90のギヤ91→回転軸92→定着ベルト駆動ロール90といった経路で伝達される。本実施の形態の定着装置60では、定着ベルト駆動ロール90に設けられたギヤ91と、第1の伝達ギヤ部材93と、第2の伝達ギヤ部材95と、加圧ロール62に設けられたギヤ97とのギヤ比は、定着ベルト駆動ロール90の周速が加圧ロール62の周速よりも僅かながら遅くなるように設定される。この点に関しては、後段で詳述する。
また、第2の伝達ギヤ部材95と回転軸94との間には、回転軸94と同軸に、駆動伝達手段の一部を構成する回転伝達制限部材の一例としてのワンウェイクラッチ96が配置されている。ワンウェイクラッチ96は、定着ベルト駆動ロール90の回転トルクが加圧ロール62からの回転トルクよりも大きくなった場合に、加圧ロール62から定着ベルト駆動ロール90への回転駆動力の伝達を停止するように作用する。
なお、ワンウェイクラッチ96は、加圧ロール62のギヤ97から定着ベルト駆動ロール90への経路中のいずれに配置してもよく、例えば第1の伝達ギヤ部材93と回転軸94との間や定着ベルト駆動ロール90のギヤ91と回転軸92との間等に配置してもよい。
本実施の形態の定着装置60では、図7および図8に示したように、定着装置60がウォームアップ期間にある状態において、加圧ロール62が不図示の接離機構(リトラクト機構)により定着ベルト61から離隔した位置に移動する(図8参照)。また、定着装置60がウォームアップ期間を終え、画像形成動作が行われる状態では、加圧ロール62はリトラクト機構により定着ベルト61に圧接する位置に設定される(図7参照)。
第1の伝達ギヤ部材93および第2の伝達ギヤ部材95は、加圧ロール62のリトラクト動作に対応して、それぞれ定着ベルト駆動ロール90のギヤ91とのギヤ結合、および加圧ロール62のギヤ97とのギヤ結合を維持するように、一体的に移動する。それにより、ウォームアップ期間に加圧ロール62が定着ベルト61から離隔した位置に移動した状態、および画像形成動作時に定着ベルト61に圧接する位置に設定された状態の双方において、定着ベルト駆動ロール90は加圧ロール62からの回転駆動力を得て回転する。
本実施の形態の定着装置60において、定着装置60がウォームアップ期間にある場合には、加圧ロール62を定着ベルト61から離隔した位置に移動させることで、IHヒータ80により加熱される定着ベルト61の熱が、加圧ロール62に移動することを抑えている。すなわち、IHヒータ80への通電が開始されウォームアップが始まると、定着ベルト61の温度分布が周方向の全域でほぼ均一となるように、定着ベルト61は回転を開始するように制御される。その際に、例えば芯金621や耐熱性弾性体層622等を備えた熱容量の大きな加圧ロール62が定着ベルト61に接触した状態に設定されているとすれば、シート状部材で構成された熱容量の小さな定着ベルト61にて生成された熱は、加圧ロール62に移動し、ニップ部Nを通過しながら定着ベルト61の温度は低下する。そのため、加圧ロール62の温度が所定の温度に上昇するまでは、定着ベルト61の温度も定着可能温度まで上昇せず、ウォームアップ期間が長くなる。
そこで、本実施の形態の定着装置60においては、ウォームアップ期間には、加圧ロール62を定着ベルト61から離隔した位置に移動させる。
それにより、ウォームアップ期間に定着ベルト61にて生成された熱が加圧ロール62に移動することが抑えられる。
また、ウォームアップ期間に加圧ロール62を定着ベルト61から離隔した位置に移動させることで、ニップ部Nにおいて定着ベルト61と加圧ロール62とが圧接された状態がウォームアップ期間中は開放される。それにより、定着ベルト61および加圧ロール62へのストレスを緩和している。
さらに、ウォームアップ期間に加圧ロール62が離隔した状態で定着ベルト61が回転される。それにより、定着ベルト61と加圧ロール62との圧接状態によりニップ部Nでの形状に倣って形成された定着ベルト61の「型ぐせ」を均している。
そして、加圧ロール62を定着ベルト61から離隔した位置に移動させた状態において、定着ベルト61を回転させるために、定着ベルト61を外周面側から回転駆動する定着ベルト駆動ロール90を設けている。
定着ベルト駆動ロール90は、ウォームアップ時および画像形成時の双方において、定着ベルト61を外周面側から圧接する位置から移動しない。また、上記したように、第1の伝達ギヤ部材93および第2の伝達ギヤ部材95は、加圧ロール62のリトラクト動作に対応して、それぞれ定着ベルト駆動ロール90のギヤ91とのギヤ結合、および加圧ロール62のギヤ97とのギヤ結合を維持するように、一体的に移動する。それにより、加圧ロール62を定着ベルト61から離隔させた状態においても、定着ベルト駆動ロール90は加圧ロール62からの回転駆動力を得て、定着ベルト61を回転させる。
このように、定着ベルト駆動ロール90が移動しない構成とすることで、移動機構が不要となり、定着装置60の構成が簡素化される。しかしその一方で、画像形成時にも定着ベルト駆動ロール90は定着ベルト61に接触した状態が維持される。そのため、定着ベルト駆動ロール90は、用紙P上のトナー像の一部がオフセットする定着ベルト61の画像形成領域から外れた、画像形成領域の外側に配置される。それにより、定着ベルト61表面にオフセットしたトナーが定着ベルト駆動ロール90表面に転移して固化することを抑え、定着ベルト駆動ロール90と定着ベルト61との間の摩擦力を維持する。
また、定着ベルト駆動ロール90が移動しない構成とすることにより、定着ベルト61を駆動する部材の切り替えが行われない。すなわち、定着ベルト駆動ロール90は、ウォームアップ時および画像形成時の双方において定着ベルト61を駆動することから、例えば画像形成時に定着ベルト61を駆動する加圧ロール62から、ウォームアップ時に定着ベルト61を駆動する定着ベルト駆動ロール90への切り替えを行う必要がない。それにより、定着ベルト61が回転を停止する期間が発生しないため、定着ベルト61での周方向の温度むらが生じ難い。
また、定着ベルト駆動ロール90と対向する位置の定着ベルト61の内周面側には、摩擦低減部材の一例としての低摺擦部材69を配置している。低摺擦部材69はベルトガイド部材64によって支持されており、定着ベルト61が定着ベルト駆動ロール90から圧接された際に、定着ベルト61内周面との間の摩擦力を低減する。それにより、定着ベルト駆動ロール90への負荷を軽減している。
なお、定着ベルト61内周面との間の摩擦力を低減する構成としては、低摺擦部材69の他に、定着ベルト駆動ロール90と対向する位置の定着ベルト61の内周面側に回転ロール部材を配置する構成を採用してもよい。
加えて、上記したように、定着ベルト駆動ロール90の周速は、加圧ロール62の周速よりも僅かながら遅くなるように設定される。さらには、加圧ロール62のギヤ97から定着ベルト駆動ロール90への経路中において、定着ベルト駆動ロール90の回転トルクが加圧ロール62からの回転トルクよりも高くなった場合に、加圧ロール62から定着ベルト駆動ロール90への回転駆動力の伝達を停止するように作用するワンウェイクラッチ96を配置している。
加圧ロール62は、定着ベルト61に対向するように配置され、図示しない駆動モータにより矢印C方向に回転する。画像形成時には、この回転により定着ベルト61は加圧ロール62に従動して回転移動する(矢印D)。そして、加圧ロール62と押圧パッド65とにより定着ベルト61を挟持した状態でニップ部Nを形成し、このニップ部Nに未定着トナー像を保持した用紙Pを通過させることで未定着トナー像を用紙Pに定着する。したがって、トナー像ずれ等といった画像乱れの発生を抑えるには、ニップ部Nにおいて加圧ロール62と定着ベルト61とが等速で移動する必要がある。
その場合に、定着ベルト駆動ロール90の周速が加圧ロール62の周速と完全に一致するように構成できれば、定着ベルト61のニップ部Nでの移動速度を変動させることはない。ところが、加圧ロール62には、寸法のばらつきや耐熱性弾性体層622の硬度のばらつき等が存在する。また定着ベルト駆動ロール90にも、寸法のばらつき等が存在する。さらには、画像形成装置1の機内温度により加圧ロール62や定着ベルト駆動ロール90の寸法が変動する。そのため、一般的には、定着ベルト駆動ロール90の周速と加圧ロール62の周速とを完全に一致させることは極めて困難である。
そこで、本実施の形態の定着装置60では、定着ベルト駆動ロール90の周速が加圧ロール62の周速よりも僅かながら遅くなるように設定している。このように設定すれば、上記の寸法のばらつき等や温度による変動等が生じても、定着ベルト駆動ロール90の周速が加圧ロール62の周速よりも僅かながら遅いという設定に変動は生じない。そのため、定着ベルト駆動ロール90の周速は、常に定着ベルト61の移動速度よりも遅くなる。それにより、画像形成時には、定着ベルト駆動ロール90は定着ベルト61から駆動力を受ける状態が生じ、定着ベルト駆動ロール90の回転トルクが加圧ロール62からの回転トルクよりも高くなる。それによって、ワンウェイクラッチ96が作動し、加圧ロール62から定着ベルト駆動ロール90への回転駆動力の伝達が停止され、定着ベルト駆動ロール90は無負荷の状態となる。そのため、定着ベルト駆動ロール90は定着ベルト61に従動することとなって、定着ベルト61のニップ部Nでの移動速度への影響を極めて小さくする。
その一方で、ウォームアップ時においては、定着ベルト駆動ロール90が定着ベルト61を回転させる際には、定着ベルト駆動ロール90の周速と定着ベルト61の移動速度とは等しくなる。そのため、定着ベルト駆動ロール90の回転トルクが加圧ロール62からの回転トルクよりも高くなることはない。それにより、ワンウェイクラッチ96は作動せず、定着ベルト駆動ロール90へは加圧ロール62から常に回転駆動力が伝達される。
なお、本実施の形態の定着装置60では、定着ベルト駆動ロール90を定着ベルト61の外周面側に配置し、定着ベルト61を外周面側から回転駆動する構成について説明した。このような構成の他に、定着ベルト駆動ロール90を定着ベルト61の内周面側に配置し、定着ベルト61を内周面側から回転駆動する構成としてもよい。すなわち、定着ベルト駆動ロール90は、定着ベルト61の外周面または内周面との間で摩擦力を生むように構成されれば、定着ベルト61に対していずれの側に配置してもよい。なお、定着ベルト駆動ロール90を定着ベルト61の内周面側に配置する場合には、定着ベルト駆動ロール90と対向する定着ベルト61の外周面側に、定着ベルト駆動ロール90からの押圧力を受ける低摺擦部材や回転ロール部材が設けられる。
以上説明したように、本実施の形態の定着装置60においては、ウォームアップ期間には、加圧ロール62を定着ベルト61から離隔した位置に移動させる。また、定着ベルト61を外周面または内周面から回転駆動する定着ベルト駆動ロール90を設けている。それにより、ウォームアップ期間に定着ベルト61にて生成された熱が加圧ロール62に移動することを抑え、定着ベルト61の温度分布が周方向の全域でほぼ均一となるまでの時間の短縮化を図っている。
[実施の形態2]
実施の形態1では、定着ベルト61を加熱する手段としてIH(Induction Heating)ヒータ80を用いた構成について説明した。実施の形態2では、定着ベルト61を加熱する手段としてセラミックヒータ等の発熱源を用いる構成について説明する。なお、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
図10は、本実施の形態における定着装置110の一方の端部領域の側断面図である。なお、図10は、実施の形態1の図8と同様に、定着装置110がウォームアップ期間にある状態での設定を示している。定着装置110がウォームアップ期間を終えて、画像形成動作が行われる状態に設定された場合には、図7に示した場合と同様に、加圧ロール62は、定着ベルト61に圧接され、ニップ部Nを形成する。
図10に示すように、本実施の形態の定着装置110では、ベルト部材の一例としての定着ベルト61の内側に、加熱部材の一例としての抵抗発熱体であるセラミックヒータ165が配置され、セラミックヒータ165からニップ部Nに熱を供給するように構成している。
セラミックヒータ165は、加圧ロール62側の面がほぼフラットな平面で形成されている。そして、定着ベルト61を介して加圧ロール62に押圧される状態で配置され、ニップ部Nを形成している。
また、ニップ部Nの出口側(用紙Pの搬送方向下流側)には、剥離ニップ部材166が配置される。剥離ニップ部材166は、剥離ニップ部材166の配置領域を通過する定着ベルト61の曲率半径が小さくなるように、加圧ロール62表面から局所的に大きなニップ圧で押圧されるように構成される。それにより、剥離ニップ部材166の配置領域を通過する用紙Pに定着ベルト61表面から離れる方向のカールを形成して、用紙Pを定着ベルト61表面から剥離させる。ニップ部Nを通過した用紙Pは、ニップ部Nの出口領域(剥離ニップ部)において定着ベルト61の曲率の変化によって定着ベルト61から剥離される。
本実施の形態の定着装置110においても、図10に示したように、ウォームアップ期間には、加圧ロール62を定着ベルト61から離隔した位置に移動させる。また、定着ベルト61を外周面側から回転駆動する定着ベルト駆動ロール90を設けている。それにより、ウォームアップ期間にセラミックヒータ165から定着ベルト61に供給された熱が加圧ロール62に移動することを抑え、定着ベルト61の温度分布が周方向の全域でほぼ均一となるまでの時間の短縮化を図っている。
本発明が適用される画像形成装置の全体構成を示した図である。 実施の形態1の定着装置の主要構成を示す中央部領域における側断面図である。 定着ベルトの断面図である。 定着ベルトがエッジガイド部材によって支持される構成を説明する図である。 実施の形態1のIHヒータの構成を説明する概略断面図である。 交流磁界によって定着ベルトが発熱する状態を説明する図である。 画像形成動作が行われる状態の定着装置の一方の端部領域の側断面図である。 ウォームアップ期間にある状態の定着装置の一方の端部領域の側断面図である。 画像形成動作が行われる状態の定着装置の一方の端部領域を用紙の搬送方向下流側から見た側面図である。 実施の形態2の定着装置の一方の端部領域の側断面図である。
符号の説明
1…画像形成装置、60,110…定着装置、61…定着ベルト、62…加圧ロール、67…フェライト部材、69…低摺擦部材、80…IHヒータ、82…励磁コイル、90…定着ベルト駆動ロール、91,97…ギヤ、93…第1の伝達ギヤ部材、95…第2の伝達ギヤ部材、96…ワンウェイクラッチ、165…セラミックヒータ

Claims (6)

  1. 電磁誘導加熱される導電層を有してベルト状に形成され、外部からの駆動力を受けることで回転移動するように支持されたベルト部材と、
    前記ベルト部材に対して予め定められた位置にて対向して設けられ、当該ベルト部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材を有して当該ベルト部材を加熱する加熱部材と、
    前記ベルト部材に対して移動することで接触する位置と離隔した位置との間を移動可能に構成され、当該ベルト部材と接触する位置に設定されることで当該ベルト部材の外周面に接触して記録材が通過するニップ部を形成するとともに当該ベルト部材を回転駆動する第1の回転駆動部材と、
    前記ベルト部材の外周面または内周面と接触するように配置され、前記第1の回転駆動部材が当該ベルト部材に対して接触する位置に設定された場合および離隔した位置に設定された場合の双方にて当該ベルト部材を回転駆動する第2の回転駆動部材と
    前記第1の回転駆動部材から前記第2の回転駆動部材に対して当該第1の回転駆動部材の回転駆動力を伝達する駆動伝達手段と、を備え、
    前記第2の回転駆動部材は、前記第1の回転駆動部材からの回転駆動力を受けて回転している時の周速が当該第1の回転駆動部材の周速よりも遅く設定されるとともに、前記駆動伝達手段は、当該第2の回転駆動部材の周速が、当該第1の回転駆動部材からの回転駆動力を受けて回転している前記ベルト部材の周速より速くなった場合に、当該第1の回転駆動部材から当該第2の回転駆動部材への回転駆動力の伝達を停止する回転伝達制限部材を含むことを特徴とする定着装置。
  2. 前記第2の回転駆動部材は、前記ベルト部材の幅方向における画像形成領域の外側に配置されたことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  3. 前記駆動伝達手段は、前記第1の回転駆動部材の移動に対応して、当該第1の回転駆動部材から前記第2の回転駆動部材に対して当該第1の回転駆動部材の回転駆動力を伝達する位置に移動することを特徴とする請求項記載の定着装置。
  4. 前記第2の回転駆動部材が配置された位置の前記ベルト部材を挟んで対向する位置に配置され、当該ベルト部材との摩擦力を低減する摩擦低減部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2記載の定着装置。
  5. トナー像を形成するトナー像形成手段と、
    前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、
    前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着手段とを有し、
    前記定着手段は、
    電磁誘導加熱される導電層を有してベルト状に形成され、外部からの駆動力を受けることで回転移動するように支持されたベルト部材と、
    前記ベルト部材に対して予め定められた位置にて対向して設けられ、当該ベルト部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材を有して当該ベルト部材を加熱する加熱部材と、
    前記ベルト部材に対して移動することで接触する位置と離隔した位置との間を移動可能に構成され、当該ベルト部材と接触する位置に設定されることで当該ベルト部材の外周面に接触して記録材が通過するニップ部を形成するとともに当該ベルト部材を回転駆動する第1の回転駆動部材と、
    前記ベルト部材の外周面または内周面と接触するように配置され、前記第1の回転駆動部材が当該ベルト部材に対して接触する位置に設定された場合および離隔した位置に設定された場合の双方にて当該ベルト部材を回転駆動する第2の回転駆動部材と
    前記第1の回転駆動部材から前記第2の回転駆動部材に対して当該第1の回転駆動部材の回転駆動力を伝達する駆動伝達手段と、を備え、
    前記第2の回転駆動部材は、前記第1の回転駆動部材からの回転駆動力を受けて回転している時の周速が当該第1の回転駆動部材の周速よりも遅く設定されるとともに、前記駆動伝達手段は、当該第2の回転駆動部材の周速が、当該第1の回転駆動部材からの回転駆動力を受けて回転している前記ベルト部材の周速より速くなった場合に、当該第1の回転駆動部材から当該第2の回転駆動部材への回転駆動力の伝達を停止する回転伝達制限部材を含むことを特徴とする画像形成装置。
  6. 前記定着手段は、前記第2の回転駆動部材が前記加熱部材により加熱された前記ベルト部材の外周面に接し、当該ベルト部材の幅方向における画像形成領域よりも外側に配置されることを特徴とする請求項記載の画像形成装置。
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