JP2012203185A - 定着装置および画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】用紙Pにトナー像を定着する定着ベルト61と、定着ベルト61の外周面に圧接することで定着ベルト61との間に未定着トナー像を保持した用紙Pが通過するためのニップ部Nを形成する加圧ロール62と、を備え、加圧ロール62は、回転中心部に配されるコア621と、コア621の外周に配される圧縮性の弾性層622と、弾性層622の外周に配され、加圧ロール62の形状を保持するための形状保持層623と、を備えることを特徴とする定着ユニット60。
【選択図】図3
Description
E1<E2 …(1)
(E2×T2)/(E1×D)≧15 …(2)
請求項3に記載の発明は、前記定着部材および前記加圧部材の少なくとも一方の表面を形成し、当該定着部材および前記加圧部材の少なくとも一方から記録材を離型させるための離型層を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置である。
請求項4に記載の発明は、前記弾性層および前記形状保持層を備える前記定着部材および前記加圧部材の少なくとも一方は、軸方向において中央部より両端部の外径が大きいことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の定着装置である。
請求項5に記載の発明は、前記加圧部材を回転させることで前記定着部材を回転させる駆動源を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の定着装置である。
E1<E2 …(1)
(E2×T2)/(E1×D)≧15 …(2)
請求項2の発明によれば、弾性層と形状保持層の特性の関係から記録材にしわが生じにくくするための条件を導出することができる。
請求項3の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、離型層を設ける場合に、離型層をより変形しにくくすることができる。
請求項4の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、定着部材や加圧部材について記録材にしわを生じにくくするための形状を維持しやすくなる。
請求項5の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、加圧部材が駆動源であった場合でも、記録材にしわを生じにくくすることができる。
請求項6の発明によれば、本構成を採用しない場合に比較して、より良好な画質を得ることができる画像形成装置を提供することができる。
請求項7の発明によれば、弾性層と形状保持層の特性の関係から、より良好な画質を得ることができるための条件を導出することができる。
<画像形成装置の説明>
図1は本実施の形態の定着装置が適用される画像形成装置の構成例を示した図である。図1に示す画像形成装置1は、所謂タンデム型のカラープリンタであり、画像データに基づき画像形成を行う画像形成部10、画像形成装置1全体の動作を制御する制御部31を備えている。さらには、例えばパーソナルコンピュータ(PC)3や画像読取装置(スキャナ)4等との通信を行って画像データを受信する通信部32、通信部32にて受信された画像データに対し予め定めた画像処理を施す画像処理部33を備えている。
画像形成ユニット11各々は、現像器15に収納されるトナーを除いて略同様に構成され、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
一方、一次転写後に感光体ドラム12に付着しているトナー(一次転写残トナー)、および二次転写後に中間転写ベルト20に付着しているトナー(二次転写残トナー)は、それぞれドラムクリーナ16、およびベルトクリーナ25によって除去される。
このようにして、画像形成装置1での画像形成処理がプリント枚数分のサイクルだけ繰り返し実行される。
次に、本実施の形態の定着ユニット60について説明する。
図2および図3は本実施の形態の定着ユニット60の構成を示す図であり、図2は正面図、図3は図2におけるIII−III断面図である。
まず、断面図である図3に示すように、定着ユニット60は、交流磁界を生成するIH(Induction Heating)ヒータ80、IHヒータ80により電磁誘導加熱されて用紙Pにトナー像を定着する定着部材の一例としての定着ベルト61、定着ベルト61に対向するように配置される加圧部材の一例としての加圧ロール62、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧される押圧パッド63を備えている。加圧ロール62は、定着ベルト61の外周面に圧接することで定着ベルト61との間に未定着トナー像を保持した用紙Pが通過するためのニップ部N(定着加圧部)を形成する。
さらに、定着ユニット60は、押圧パッド63等の構成部材を支持するホルダ65、IHヒータ80にて生成された交流磁界を誘導して磁路を形成する感温磁性部材64、感温磁性部材64を通過した磁力線を誘導する誘導部材66、定着ベルト61からの用紙Pの剥離を補助する剥離補助部材70を備えている。
定着ベルト61は、原形が円筒形状の無端のベルト部材で構成され、例えば原形(円筒形状)時の直径が30mm、幅方向長が370mmに形成されている。また、図4(定着ベルト61の断面層構成図)に示したように、定着ベルト61は、基材層611、基材層611の上に積層された導電発熱層612、トナー像の定着性を向上させる弾性層613、最上層に被覆された表面離型層614からなる多層構造のベルト部材である。
具体的には、基材層611として、例えば、厚さ30〜200μm(好ましくは50〜150μm)の非磁性ステンレススチール等の非磁性金属や、厚さ60〜200μmの樹脂材料等が用いられる。
通常、IHヒータ80に交流電流を供給する励磁回路(後段の図5も参照)の電源として、安価に製造できる汎用電源が使用される。そのため、IHヒータ80により生成される交流磁界の周波数は、一般に、汎用電源による20kHz〜100kHzとなる。それにより、導電発熱層612は、周波数20kHz〜100kHzの交流磁界が侵入し通過するように構成される。
そのため、導電発熱層612の厚さは、周波数20kHz〜100kHzの交流磁界が導電発熱層612を侵入し通過するように、(3)式で規定される導電発熱層612の表皮深さ(δ)よりも薄層に構成される。また、導電発熱層612を構成する材料として、例えば、Au,Ag,Al,Cu,Zn,Sn,Pb,Bi,Be,Sb等の金属や、これらの金属合金が用いられる。
また、定着ベルト61が定着設定温度まで加熱されるまでに要する時間(以下、「ウォームアップタイム」)を短縮する観点からも、導電発熱層612は、薄層に構成するのが好ましい。
表面離型層614は、用紙P上に保持された未定着トナー像と直接接触するため、離型性の高い材質が使用される。例えば、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、シリコーン共重合体、またはこれらの複合層等が用いられる。表面離型層614の厚さとしては、薄すぎると、耐摩耗性の面で充分でなく、定着ベルト61の寿命を短くする。その一方で、厚すぎると、定着ベルト61の熱容量が大きくなりすぎ、ウォームアップタイムが長くなる。そこで、表面離型層614の厚さとして、耐摩耗性と熱容量とのバランスを考慮し、1〜50μmが好適である。
押圧パッド63は、シリコーンゴム等やフッ素ゴム等の弾性体で構成され、加圧ロール62と対向する位置にてホルダ65に支持される。そして、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧される状態で配置され、加圧ロール62との間でニップ部N(定着加圧部)を形成する。
また、押圧パッド63は、ニップ部Nの入口側(用紙Pの搬送方向上流側)のプレニップ領域63aと、ニップ部Nの出口側(用紙Pの搬送方向下流側)の剥離ニップ領域63bとで異なるニップ圧が設定されている。すなわち、プレニップ領域63aでは、加圧ロール62側の面がほぼ加圧ロール62の外周面に倣う円弧形状に形成され、より均一で幅の広いニップ部Nを形成する。また、剥離ニップ領域63bでは、剥離ニップ領域63bを通過する定着ベルト61の曲率半径が小さくなるように、加圧ロール62表面から局所的に大きなニップ圧で押圧されるように形成される。それにより、剥離ニップ領域63bを通過する用紙Pに定着ベルト61表面から離れる方向のカール(ダウンカール)を形成して、用紙Pに対する定着ベルト61表面からの剥離を促進させている。
次に、感温磁性部材64は、定着ベルト61の内周面に倣った円弧形状で形成され、定着ベルト61の内周面とは予め定めた間隙(例えば、0.5〜1.5mm)を有するように近接させるが、非接触で配置される。感温磁性部材64を定着ベルト61と近接させて配置するのは、感温磁性部材64の温度が定着ベルト61の温度に対応して変化する、すなわち、感温磁性部材64の温度が定着ベルト61の温度と略同じ温度となるように構成するためである。また、感温磁性部材64を定着ベルト61と非接触で配置するのは、画像形成装置1のメインスイッチがオンされ、定着ベルト61が定着設定温度まで加熱される際に、定着ベルト61の熱が感温磁性部材64に流入するのを抑制して、ウォームアップタイムの短縮を図るためである。
なお、ここでの「透磁率変化開始温度」とは、透磁率(例えば、JIS C2531で測定される透磁率)が連続的に低下を開始する温度であり、例えば感温磁性部材64等の部材を透過する磁束量(磁力線の数)が変化し始める温度点をいう。したがって、透磁率変化開始温度は、物質の磁性が消失する温度であるキュリー点に近い温度となるが、キュリー点とは異なる概念を有するものである。
また、感温磁性部材64は、IHヒータ80により生成された交流磁界(磁力線)に対する表皮深さδ(上記(3)式参照)よりも厚い厚さで形成される。具体的には、例えばFe−Ni合金を用いた場合には50〜300μm程度に設定される。
押圧パッド63を支持するホルダ65は、押圧パッド63が加圧ロール62からの押圧力を受けた状態での撓み量が一定量以下となるように、剛性の高い材料で構成される。それにより、ニップ部Nにおける長手方向の圧力(ニップ圧)の均一性を維持している。さらに、本実施の形態の定着ユニット60では、電磁誘導を用いて定着ベルト61を加熱する構成を採用していることから、ホルダ65は、誘導磁界に影響を与えないか、または与え難い材料であり、かつ、誘導磁界から影響を受けないか、または受け難い材料で構成される。例えば、ガラス混入PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂や、例えばAl,Cu,Ag等の非磁性金属材料等が用いられる。
誘導部材66は、感温磁性部材64の内周面に倣った円弧形状で形成され、感温磁性部材64の内周面とは予め定めた間隙(例えば、1.0〜5.0mm)を有する非接触に配置される。また、誘導部材66は、例えばAg,Cu,Alといった固有抵抗値が比較的小さい非磁性金属で構成される。そして、感温磁性部材64が透磁率変化開始温度以上の温度に上昇した際に、IHヒータ80により生成された交流磁界(磁力線)を誘導して、定着ベルト61の導電発熱層612よりも渦電流Iが発生し易い状態を形成する。それにより、誘導部材66の厚さは、渦電流Iが流れ易いように、表皮深さδ(上記(3)式参照)よりも充分に厚い予め定められた厚さ(例えば、1.0mm)で形成される。
続いて、定着ベルト61の導電発熱層612に交流磁界を作用させて電磁誘導加熱するIHヒータ80について説明する。
図5は、本実施の形態のIHヒータ80の構成を説明する断面図である。図5に示したように、IHヒータ80は、例えば耐熱性樹脂等の非磁性体から構成される支持体81、交流磁界を生成する励磁コイル82を備えている。また、励磁コイル82を支持体81上に固定する弾性体で構成された弾性支持部材83、励磁コイル82にて生成された交流磁界の磁路を形成する磁心84を備えている。さらには、磁界を遮蔽するシールド85、磁心84を支持体81側に加圧する加圧部材86、励磁コイル82に交流電流を供給する励磁回路88を備えている。
励磁コイル82は、相互に絶縁された例えば直径0.17mmの銅線材を例えば90本束ねたリッツ線が長円形状や楕円形状、長方形状等の中空きの閉ループ状に巻かれて構成される。そして、励磁コイル82に励磁回路88から予め定めた周波数の交流電流が供給されることにより、励磁コイル82の周囲には、閉ループ状に巻かれたリッツ線を中心とする交流磁界が生成される。励磁回路88から励磁コイル82に供給される交流電流の周波数は、一般に、上記した汎用電源により生成される20kHz〜100kHzが用いられる。
ここで、磁心84は磁路形成による損失が小さい材料が望ましい。具体的には、磁心84は渦電流損を小さくする形態(スリット等による電流経路遮断や分断化、薄板束ね等)での使用が望ましく、ヒステリシス損の小さい材料で形成されることが望ましい。
また、定着ベルト61の回転方向に沿った磁心84の長さは、感温磁性部材64の定着ベルト61の回転方向に沿った長さよりも小さく構成される。それにより、磁力線のIHヒータ80周辺への漏洩が減り、力率が向上する。さらには、定着ユニット60を構成する金属製部材への電磁誘導を抑え、定着ベルト61(導電発熱層612)での発熱効率を高める。
引き続いて、IHヒータ80により生成された交流磁界によって定着ベルト61が発熱する状態を説明する。
まず、上記したように、感温磁性部材64の透磁率変化開始温度は、各色トナー像を定着する定着設定温度以上であって定着ベルト61の耐熱温度以下となる温度範囲内(例えば、140〜240℃)に設定されている。そして、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の状態にある場合には、定着ベルト61に近接する感温磁性部材64の温度も定着ベルト61の温度に対応して、透磁率変化開始温度以下となる。そのため、感温磁性部材64は強磁性を呈するので、IHヒータ80により生成された交流磁界の磁力線Hは、定着ベルト61を透過した後、感温磁性部材64の内部を広がり方向に沿って通過する磁路を形成する。ここでの「広がり方向」とは、感温磁性部材64の厚さ方向と直交する方向を意味する。
このように、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合には、磁力線Hが導電発熱層612を横切る領域R1,R2や領域R3において大きな熱が発生する。それにより、定着ベルト61は加熱される。
次に図2および図3に戻り、移動機構200の説明を行なう。
詳しくは後述するが、加圧ロール62を構成する弾性層622等は、比較的柔らかい素材により形成されている。そのため、定着時以外においても加圧ロール62を定着ベルト61を介して押圧パッド63に圧接する状態のまま放置すると、元の形状に復元することができなくなるおそれがある。即ち、加圧ロール62は、ニップ部N(定着加圧部)により形成される形状のまま変形してしまう。その場合、ニップ部Nに押圧する圧力が設計通りとはならないため、定着を規定通りに行なうことができなくなり、定着ユニット60そのものの性能を損なうことになる。
図7に示すように加圧ロール62と定着ベルト61とは離間した状態にある。その結果、加圧ロール62は、元の円形形状に形状復元がなされるため、加圧ロール62が変形し元の形状に戻らなくなるおそれが少なくなる。
なお定着を行なう際には、移動機構200により再び加圧ロール62を定着ベルト61と接触させ、図3で説明したニップ部Nを形成する位置に戻すことが可能である。
続いて図2、図3、図7を使用して、本実施の形態の定着ユニット60における加圧ロール62と定着ベルト61の駆動機構について説明する。
加圧ロール62は、定着ベルト61に対向するように配置され、図3の矢印D方向に、例えば140mm/sのプロセススピードで回転する。そして、加圧ロール62と押圧パッド63とにより定着ベルト61を挟持した状態でニップ部Nを形成し、このニップ部Nに未定着トナー像を保持した用紙Pを通過させることで、熱および圧力を加えて未定着トナー像を用紙Pに定着する。
加圧ロール62は、回転中心部に配される芯部の一例としての例えば直径18mmの中実のアルミニウム製コア(円柱状芯金)621と、コア621の外周に配される弾性層622と、弾性層622の外周に配され、加圧ロール62の形状を保持するための形状保持層623とが積層されて構成される。そして本実施の形態では、加圧ロール62の表面を形成し加圧ロール62から用紙Pを離型させるための離型層624を更に備える。離型層624は、例えば厚さ50μmのカーボン配合のPFA等の耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆により形成することができる。そして、加圧ロール62は、例えば20kgfの荷重で定着ベルト61を介して押圧パッド63を押圧している。
ところが定着動作を繰り返すうちに、定着ベルト61から熱が伝導し、加圧ロール62の温度が上昇することがある。そしてこの場合、弾性層622として、耐熱性のゴム等を使用していた場合、熱膨張を生じるために加圧ロール62の外径が大きくなることがあった。しかしながら特に小サイズの用紙Pを使用して定着動作を行なう場合は、用紙Pが通る箇所(通紙する箇所)では、トナー像を定着するために熱が奪われ、加圧ロール62の温度は上昇しにくい。一方、用紙Pが通らない箇所(通紙しない箇所)では、熱が奪われないため、加圧ロール62の温度は上昇しやすい。より具体的には、用紙Pは加圧ロール62の中央部付近を通紙するため、加圧ロール62の中央部付近より、端部付近の方が加圧ロール62の温度が高くなりやすい。そしてその結果、加圧ロール62の中央部付近より、端部付近の方が加圧ロール62の外径が大きくなる現象が生じる。実際には、用紙Pが通紙する箇所と、用紙Pが通紙しなかった箇所とで加圧ロール62の外径に差異が生じることで、加圧ロール62に段差が生じる。そして加圧ロール62に段差が生じると、定着動作を行なう際に用紙Pにしわや変形が生じやすくなる。
即ち本実施の形態では、弾性層622を圧縮性の弾性体により構成する。このようにすれば、加圧ロール62に上述したような温度差が生じても、温度が相対的に高くなりやすい箇所において加圧ロール62が定着ベルト61に圧接する際に加圧ロール62の収縮が生ずる。その結果、温度が相対的に高い箇所と低い箇所との段差が生じにくくなる。対して従来弾性層622として使用していたシリコーンゴム等の耐熱性のゴムは、非圧縮性であるためこのような段差を解消するように弾性層622が収縮するようなことが生じにくい。
一方、弾性層622に使用するためには、上記特性に加えて耐熱性を有することが好ましい。つまり本実施の形態では、弾性層622として圧縮性と耐熱性を兼ね備えた弾性体を使用することが好ましい。より具体的には、発泡性ゴムを使用することが好ましく、中でも発泡シリコーンゴム等を使用することがより好ましい。
つまり本実施の形態では、弾性層622を圧縮性の弾性体により構成し、更に弾性層622の外周に形状保持層623を設けることで、加圧ロール62の温度が上昇しても加圧ロール62の段差がさらに生じにくくなる。さらに加圧ロール62の外径が大きくなりにくくなる。そのため定着ベルト61の線速度の変化が生じにくくなり、定着を行なう際の用紙Pの搬送速度に変化が生じにくくなる。さらにニップ部Nの用紙搬送方向における幅が変化しにくい。結局、安定した定着動作が行ないやすくなる。
さらに形状保持層623は、離型層624のベース層としての機能を有する。つまり形状保持層623を離型層624のベース層とすることで、離型層624が過度に変形することを抑制することができる。そのため離型層624の摩耗や汚れの付着を抑制でき、加圧ロール62の使用寿命を長くすることができる。
(E2×T2)/(E1×D)≧15 …(2)
(実施例A1〜A6、B1〜B6、C1〜C6)
図2〜図7で説明を行なった定着ユニット60を使用した図1の画像形成装置1により画像形成をする試験を行なった。
定着ユニット60の加圧ロール62としては、図3で示すようなコア621、弾性層622、形状保持層623、離型層624を備えたものを用いた。このとき加圧ロール62の外径D、弾性層622のヤング率E1、形状保持層623の材質、ヤング率E2、厚さT2を表1で示すようにそれぞれ変更したものを使用した。なお表1中で、弾性層622の材質としてPFAは、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル重合体を意味する。またPIは、ポリアミドを、SUSは、ステンレススチールを意味する。そして弾性層622としては、圧縮性の弾性体である発泡シリコーンゴムを使用した。
また加圧ロール62の外径が5.00E−02m(50φ)のものについては、弾性層622の厚さを、8mmとした。そして定着ベルト61が170℃であり、加圧ロール62の通紙箇所が、85℃、非通紙箇所が、130℃となる温度で、60ppmの速度で画像形成を行なった。このときのニップ部Nの用紙搬送方向の長さは、10mmであった。
更に加圧ロール62の外径が1.00E−01m(100φ)のものについては、弾性層622の厚さを、10mmとした。そして定着ベルト61が175℃であり、加圧ロール62の通紙箇所が、90℃、非通紙箇所が、140℃となる温度で、100ppmの速度で画像形成を行なった。このときのニップ部Nの用紙搬送方向の長さは、15mmであった。
表1に示すように形状保持層623を設けなかったこと以外は、実施例A1〜A6、B1〜B6、C1〜C6と同様の加圧ロール62を使用して、画像形成を行なった。そしてそれぞれについて比較例A−1、B−1、C−1とした。
実施例A1〜A6、B1〜B6、C1〜C6、比較例A−1、B−1、C−1のそれぞれについて、実際に画像形成を行なった。そして紙しわが生じなかったものを○、若干の紙しわが生じることがあるが、ほぼ問題がなかったものを△、許容限度以上の紙しわが生じたものを×として3段階で評価を行なった。また用紙Pが通紙した箇所と、通紙しなかった箇所とで加圧ロール62の半径を測定し、これから加圧ロール62に生じた段差を算出した。
結果を表1に示す。
表1に示すように加圧ロール62の弾性層622として、圧縮性の弾性体である発泡シリコーンゴムを使用するとともに、形状保持層623を設けた実施例A1〜A6、B1〜B6、C1〜C6は、何れも紙しわの評価が○か△であり、良好な結果となった。一方、形状保持層623を設けなかった比較例A−1、B−1、C−1については、紙しわの評価が×であった。実施例A1〜A6、B1〜B6、C1〜C6中では、上記(1)式および(2)式を満たす実施例A−3〜A−6、実施例B−4〜B−6、実施例C−4〜C−6については、満たさない実施例A−1〜A−2、実施例B−1〜B−3、実施例C−1〜C−3に比較して紙しわの評価がより良好な結果となった。
また紙しわの評価結果と加圧ロール62に生じた段差の間には、相関関係があり、加圧ロール62に生じた段差が小さいほど紙しわの評価が良好となった。
図8では、表1の結果を基にして、実施例A1〜A5、B1〜B5、C1〜C5についてプロットを行なっている。図8に示すように(2)式の左辺の値が15以上である場合に上述した紙しわの評価が○となる。一方、(2)式の左辺の値が15未満である場合に上述した紙しわの評価が△または×となる。
ここで図9(a)は、加圧ロール62の外径が30φの場合である。また図9(b)は、加圧ロール62の外径が50φの場合であり、図9(c)は、加圧ロール62の外径が100φの場合である。そして図9(a)中、上から比較例A−1、実施例A−1、実施例A−2、実施例A−3、実施例A−4、実施例A−5、実施例A−6の場合について図示している。また図9(b)中、上から比較例B−1、実施例B−1、実施例B−2、実施例B−3、実施例B−4、実施例B−5、実施例B−6の場合について図示している。さらに図9(c)中、上から比較例C−1、実施例C−1、実施例C−2、実施例C−3、実施例C−4、実施例C−5、実施例C−6の場合について図示している。
Claims (7)
- 記録材にトナー像を定着する回転可能な定着部材と、
前記定着部材の外周面に圧接することで当該定着部材との間に未定着トナー像を保持した記録材が通過するための定着加圧部を形成する回転可能な加圧部材と、
を備え、
前記定着部材および前記加圧部材の少なくとも一方は、
回転中心部に配される芯部と、
前記芯部の外周に配される圧縮性の弾性層と、
前記弾性層の外周に配され、前記定着部材および前記加圧部材の少なくとも一方の形状を保持するための形状保持層と、
を備えることを特徴とする定着装置。 - 前記定着部材および前記加圧部材の少なくとも一方の前記弾性層のヤング率をE1、前記形状保持層のヤング率をE2、前記形状保持層の厚さをT2、外径をDとしたときに、以下の(1)式および(2)式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
E1<E2 …(1)
(E2×T2)/(E1×D)≧15 …(2) - 前記定着部材および前記加圧部材の少なくとも一方の表面を形成し、当該定着部材および前記加圧部材の少なくとも一方から記録材を離型させるための離型層を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
- 前記弾性層および前記形状保持層を備える前記定着部材および前記加圧部材の少なくとも一方は、軸方向において中央部より両端部の外径が大きいことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の定着装置。
- 前記加圧部材を回転させることで前記定着部材を回転させる駆動源を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の定着装置。
- トナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像を記録材に転写する転写手段と、
記録材にトナー像を定着する回転可能な定着部材と、当該定着部材の外周面に圧接することで当該定着部材との間に未定着トナー像を保持した記録材が通過するための定着加圧部を形成する回転可能な加圧部材とを備える定着手段と、
を備え、
前記定着手段の前記定着部材および前記加圧部材の少なくとも一方は、
回転中心部に配される芯部と、
前記芯部の外周に配される圧縮性の弾性層と、
前記弾性層の外周に配され、前記定着部材および前記加圧部材の少なくとも一方の形状を保持するための形状保持層と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。 - 前記定着部材および前記加圧部材の少なくとも一方の前記弾性層のヤング率をE1、前記形状保持層のヤング率をE2、前記形状保持層の厚さをT2、外径をDとしたときに、以下の(1)式および(2)式を満たすことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
E1<E2 …(1)
(E2×T2)/(E1×D)≧15 …(2)
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