JP5439897B2 - 画像形成装置、定着装置およびプログラム - Google Patents

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Description

本発明は、画像形成装置、定着装置、およびプログラムに関する。
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置に搭載する定着装置として、電磁誘導加熱方式を用いたものが知られている。
例えば特許文献1には、発熱層を有する定着ベルトを介して磁界発生装置と対向して配置して、キュリー点を持つ感温磁性金属材料を含んで構成される発熱制御部材を設け、この発熱制御部材を構成する感温磁性金属材料のキュリー点を境とする磁性・非磁性化を利用し、発熱層の発熱を制御する定着装置が記載されている。
また特許文献2には、定着ベルトの内周側に、磁界の作用により発熱する発熱体であって、磁界発生装置に対し定着ベルトを介して対向すると共に定着ベルトの内周面に接触して発熱体を設け、この発熱体を厚みが表皮深さを超え且つ磁性金属材料を含んで構成させる定着装置が記載されている。
特開2008−152247号公報 特開2008−129517号公報
ここで一般に、電磁誘導コイルにより加熱される定着部材を熱容量の小さいベルト部材で構成することにより、定着部材を定着可能温度まで上昇させる時間(ウォームアップタイム)が短縮される。ところが、記録材を定着部材に圧接しつつ回転駆動することにより定着を行なう定着加圧部材を備える定着装置においては、定着加圧部材に対し記録材が巻付く場合がある。その結果、記録材に定着される定着画像に乱れが生じ、良好な画像を形成できないことがあった。
本発明は、定着加圧部材に対し記録材が巻付いた場合でも、迅速にこの巻付きを検知する画像形成装置等を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、トナー像を形成するトナー像形成手段と、前記トナー像形成手段によって形成された前記トナー像を記録材上に転写する転写手段と、導電層を有し当該導電層が電磁誘導加熱されることで記録材にトナーを定着する定着部材と、当該定着部材の当該導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、当該定着部材の外周面に圧接することで当該定着部材との間に未定着画像を保持した記録材を挿通するための定着加圧部を形成する定着加圧部材と、当該定着部材が従動回転する当該定着加圧部材を回転させる駆動部と、従動回転する当該定着部材の回転数を検知する回転検知部と、を備える定着手段と、前記回転検知部により検知した前記定着部材の回転数に基づき当該定着部材の回転数を予め定められた規定回転数にするために前記駆動部の回転数の算出を行なう回転数算出部と、前記回転数算出部により算出した前記駆動部の回転数に基づき前記記録材の前記定着加圧部材への巻付きを検知する巻付き検知部と、を備え、前記巻付き検知部は、前記回転数算出部により算出した前記駆動部の回転数と予め定められた温度における前記定着加圧部材の径の値に対応して定められる回転下限値とを比較することで前記記録材の当該定着加圧部材への巻付きを検知することを特徴とする画像形成装置である。
請求項に記載の発明は、導電層を有し、当該導電層が電磁誘導加熱されることで記録材にトナーを定着する定着部材と、前記定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、前記定着部材の外周面に圧接することで当該定着部材との間に未定着画像を保持した記録材を挿通するための定着加圧部を形成する定着加圧部材と、前記定着加圧部材を回転させることで前記定着部材を従動して回転させる駆動部と、前記定着部材の回転数を検知する回転検知部と、前記回転検知部により検知した前記定着部材の回転数を出力する回転数出力部と、前記回転数出力部により出力した前記定着部材の回転数を基にして算出される前記駆動部の回転数を取得する回転数取得部と、予め定められた温度における前記定着加圧部材の径の値に対応して定められる前記駆動部の回転下限値を取得する回転下限値取得部と、前記回転数取得部により取得した前記駆動部の回転数と前記回転下限値取得部により取得した回転下限値とを比較することで前記記録材の前記定着加圧部材への巻付きを検知する巻付き検知部と、を備えることを特徴とする定着装置である。
請求項に記載の発明は、コンピュータに、回転検知部により検知した定着部材の回転数に基づき当該定着部材の回転数を予め定められた規定回転数にするために駆動部の回転数の算出を行なう回転数算出機能と、算出した前記駆動部の回転数に基づき記録材の定着加圧部材への巻付きを検知する巻付き検知機能と、を実現し、前記巻付き検知機能は、前記回転数算出機能により算出した前記駆動部の回転数と予め定められた温度における前記定着加圧部材の径の値に対応して定められる回転下限値とを比較することで前記記録材の当該定着加圧部材への巻付きを検知することを特徴とするプログラムである。
請求項1の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、定着加圧部材に対し記録材が巻付いた場合でも、迅速に巻付きを検知することができる画像形成装置が提供できる。また本発明を採用しない場合に比べ、記録材の定着加圧部材への巻き付きをより簡単な構成で検知することができる。
請求項の発明によれば、本発明を採用しない場合に比べ、定着加圧部材に対し記録材が巻付いた場合でも、定着装置内部で巻付きを検知することができる。
請求項の発明によれば、定着加圧部材に対し記録材が巻付いた場合に、巻付きをより迅速に検知することができる機能をコンピュータにより実現できる。また本発明を採用しない場合に比べ、駆動部の回転下限値をより容易に算出することができる。
本実施の形態の定着装置が適用される画像形成装置の構成例を示した図である。 本実施の形態の定着ユニットの構成を示す正面図である。 図2における定着装置のXX断面図である。 定着ベルトの断面層構成図である。 IHヒータの構成を説明する断面図である。 定着ベルトの温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合の磁力線の状態を説明する図である。 移動機構により加圧ロールを定着ベルトから離間させた状態を説明した図である。 用紙の加圧ロールへの巻付きを検知するための制御部の構成について説明した図である。 用紙の加圧ロールへの巻付きを検知するための動作の流れを説明したフローチャートである。 用紙の加圧ロールへの巻付きを検知するための巻付き検知部を定着ユニット側に設置した場合の定着ユニットの構成を示す正面図である。 巻付き検知部を定着ユニット側に設置した場合の制御部の構成を示す図である。 巻付き検知部を定着ユニット側に設置した場合に用紙の加圧ロールへの巻付きを検知するための動作の流れを説明したフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<画像形成装置の説明>
図1は本実施の形態の定着装置が適用される画像形成装置の構成例を示した図である。図1に示す画像形成装置1は、所謂タンデム型のカラープリンタであり、画像データに基づき画像形成を行う画像形成部10、画像形成装置1全体の動作を制御する制御部31を備えている。さらには、例えばパーソナルコンピュータ(PC)3や画像読取装置(スキャナ)4等との通信を行って画像データを受信する通信部32、通信部32にて受信された画像データに対し予め定めた画像処理を施す画像処理部33を備えている。
画像形成部10は、一定の間隔を置いて並列的に配置されるトナー像形成手段の一例である4つの画像形成ユニット11Y,11M,11C,11K(「画像形成ユニット11」とも総称する)を備えている。各画像形成ユニット11は、静電潜像を形成してトナー像を保持する像保持体の一例としての感光体ドラム12、感光体ドラム12の表面を予め定めた電位で一様に帯電する帯電器13、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を各色画像データに基づき露光するLED(Light Emitting Diode)プリントヘッド14、感光体ドラム12上に形成された静電潜像を現像する現像器15、転写後の感光体ドラム12表面を清掃するドラムクリーナ16を備えている。
画像形成ユニット11各々は、現像器15に収納されるトナーを除いて略同様に構成され、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
また、画像形成部10は、各画像形成ユニット11の感光体ドラム12にて形成された各色トナー像が多重転写される中間転写ベルト20、各画像形成ユニット11にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト20に順次転写(一次転写)する一次転写ロール21を備えている。さらに、中間転写ベルト20上に重畳して転写された各色トナー像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写ロール22、二次転写された各色トナー像を用紙P上に定着させる定着手段(定着装置)の一例としての定着ユニット60を備えている。なお、本実施の形態の画像形成装置1では、中間転写ベルト20、一次転写ロール21、および二次転写ロール22により転写手段が構成される。
本実施の形態の画像形成装置1では、制御部31による動作制御の下で、次のようなプロセスによる画像形成処理が行われる。すなわち、PC3やスキャナ4からの画像データは通信部32にて受信され、画像処理部33により予め定めた画像処理が施された後、各色毎の画像データとなって各画像形成ユニット11に送られる。そして、例えば黒(K)色トナー像を形成する画像形成ユニット11Kでは、感光体ドラム12が矢印A方向に回転しながら帯電器13により予め定めた電位で一様に帯電され、画像処理部33から送信されたK色画像データに基づきLEDプリントヘッド14が感光体ドラム12を走査露光する。それにより、感光体ドラム12上にはK色画像に関する静電潜像が形成される。感光体ドラム12上に形成されたK色静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上にK色トナー像が形成される。同様に、画像形成ユニット11Y,11M,11Cにおいても、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色トナー像が形成される。
各画像形成ユニット11の感光体ドラム12に形成された各色トナー像は、一次転写ロール21により矢印B方向に移動する中間転写ベルト20上に順次静電転写(一次転写)され、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。中間転写ベルト20上の重畳トナー像は、中間転写ベルト20の移動に伴って二次転写ロール22が配置された領域(二次転写部T)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部Tに搬送されると、そのタイミングに合わせて用紙保持部40から用紙Pが二次転写部Tに供給される。そして、重畳トナー像は、二次転写部Tにて二次転写ロール22が形成する転写電界により、搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写(二次転写)される。
その後、重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、定着ユニット60まで搬送される。定着ユニット60に搬送された用紙P上のトナー像は、定着ユニット60によって熱および圧力を受け、用紙P上に定着される。そして、定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置1の排出部に設けられた用紙積載部45に搬送される。
一方、一次転写後に感光体ドラム12に付着しているトナー(一次転写残トナー)、および二次転写後に中間転写ベルト20に付着しているトナー(二次転写残トナー)は、それぞれドラムクリーナ16、およびベルトクリーナ25によって除去される。
このようにして、画像形成装置1での画像形成処理がプリント枚数分のサイクルだけ繰り返し実行される。
<定着ユニットの構成の説明>
次に、本実施の形態の定着ユニット60について説明する。
図2および図3は本実施の形態の定着ユニット60aの構成を示す図であり、図2は正面図、図3は図2におけるXX断面図である。
まず、断面図である図3に示すように、定着ユニット60aは、交流磁界を生成する磁界生成部材の一例としてのIH(Induction Heating)ヒータ80、IHヒータ80により電磁誘導加熱されてトナー像を定着する定着部材の一例としての定着ベルト61、定着ベルト61に対向するように配置された定着加圧部材の一例としての加圧ロール62、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧される押圧パッド63を備えている。
さらに、定着ユニット60aは、押圧パッド63等の構成部材を支持するホルダ65、IHヒータ80にて生成された交流磁界を誘導して磁路を形成する感温磁性部材64、感温磁性部材64を通過した磁力線を誘導する誘導部材66、定着ベルト61からの用紙Pの剥離を補助する剥離補助部材70を備えている。また詳しくは後述するが、加圧ロール62は、定着を行なうときには定着ベルト61の外周面に圧接することで定着ベルト61との間に未定着画像を保持した用紙Pを挿通するためのニップ部N(定着加圧部)を形成し、定着を行なわないときには定着ベルト61から離間するように移動する移動機構200を備える。
<定着ベルトの説明>
定着ベルト61は、原形が円筒形状の無端のベルト部材で構成され、例えば原形(円筒形状)時の直径が30mm、幅方向長が370mmに形成されている。また、図4(定着ベルト61の断面層構成図)に示したように、定着ベルト61は、基材層611、基材層611の上に積層された導電発熱層612、トナー像の定着性を向上させる弾性層613、最上層に被覆された表面離型層614からなる多層構造のベルト部材である。
基材層611は、薄層の導電発熱層612を支持するとともに、定着ベルト61全体としての機械的強度を形成する耐熱性のシート状部材で構成される。また、基材層611は、IHヒータ80にて生成された交流磁界が感温磁性部材64まで作用するように、磁界を通過させる物性(比透磁率、固有抵抗)を持った材質、厚さで形成される。一方、基材層611自身は、磁界の作用により発熱しないか、または発熱し難く構成される。
具体的には、基材層611として、例えば、厚さ30〜200μm(好ましくは50〜150μm)の非磁性ステンレススチール等の非磁性金属や、厚さ60〜200μmの樹脂材料等が用いられる。
導電発熱層612は、導電層の一例であって、IHヒータ80にて生成される交流磁界によって電磁誘導加熱される電磁誘導発熱体層である。すなわち、導電発熱層612は、IHヒータ80からの交流磁界が厚さ方向に通過することにより、渦電流を発生させる層である。
通常、IHヒータ80に交流電流を供給する励磁回路(後段の図5も参照)の電源として、安価に製造できる汎用電源が使用される。そのため、IHヒータ80により生成される交流磁界の周波数は、一般に、汎用電源による20kHz〜100kHzとなる。それにより、導電発熱層612は、周波数20kHz〜100kHzの交流磁界が侵入し通過するように構成される。
導電発熱層612に交流磁界が侵入できる領域は、交流磁界が1/eに減衰する領域である「表皮深さ(δ)」として規定され、次の(1)式から導かれる。(1)式において、fは交流磁界の周波数(例えば、20kHz)、ρは固有抵抗値(Ω・m)、μは比透磁率である。
そのため、導電発熱層612の厚さは、周波数20kHz〜100kHzの交流磁界が導電発熱層612を侵入し通過するように、(1)式で規定される導電発熱層612の表皮深さ(δ)よりも薄層に構成される。また、導電発熱層612を構成する材料として、例えば、Au,Ag,Al,Cu,Zn,Sn,Pb,Bi,Be,Sb等の金属や、これらの金属合金が用いられる。
Figure 0005439897
具体的には、導電発熱層612として、厚さ2〜20μm、固有抵抗2.7×10−8Ω・m以下の例えばCu等の非磁性金属(比透磁率が概ね1の非磁性体)が用いられる。
また、定着ベルト61が定着設定温度まで加熱されるまでに要する時間(以下、「ウォームアップタイム」)を短縮する観点からも、導電発熱層612は、薄層に構成するのが好ましい。
次に、弾性層613は、シリコーンゴム等の耐熱性の弾性体で構成される。定着対象となる用紙Pに保持されるトナー像は、粉体である各色トナーが積層して形成されている。そのため、ニップ部Nにおいてトナー像の全体に均一に熱を供給するには、用紙P上のトナー像の凹凸に倣って定着ベルト61表面が変形することが好ましい。そこで、弾性層613には、例えば厚みが100〜600μm、硬度が10°〜30°(JIS−A)のシリコーンゴムが好適である。
表面離型層614は、用紙P上に保持された未定着トナー像と直接接触するため、離型性の高い材質が使用される。例えば、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、シリコーン共重合体、またはこれらの複合層等が用いられる。表面離型層614の厚さとしては、薄すぎると、耐摩耗性の面で充分でなく、定着ベルト61の寿命を短くする。その一方で、厚すぎると、定着ベルト61の熱容量が大きくなりすぎ、ウォームアップタイムが長くなる。そこで、表面離型層614の厚さとして、耐摩耗性と熱容量とのバランスを考慮し、1〜50μmが好適である。
<押圧パッドの説明>
押圧パッド63は、シリコーンゴム等やフッ素ゴム等の弾性体で構成され、加圧ロール62と対向する位置にてホルダ65に支持される。そして、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧される状態で配置され、加圧ロール62との間でニップ部N(定着加圧部)を形成する。
また、押圧パッド63は、ニップ部Nの入口側(用紙Pの搬送方向上流側)のプレニップ領域63aと、ニップ部Nの出口側(用紙Pの搬送方向下流側)の剥離ニップ領域63bとで異なるニップ圧が設定されている。すなわち、プレニップ領域63aでは、加圧ロール62側の面がほぼ加圧ロール62の外周面に倣う円弧形状に形成され、均一で幅の広いニップ部Nを形成する。また、剥離ニップ領域63bでは、剥離ニップ領域63bを通過する定着ベルト61の曲率半径が小さくなるように、加圧ロール62表面から局所的に大きなニップ圧で押圧されるように形成される。それにより、剥離ニップ領域63bを通過する用紙Pに定着ベルト61表面から離れる方向のカール(ダウンカール)を形成して、用紙Pに対する定着ベルト61表面からの剥離を促進させている。
なお、本実施の形態では、押圧パッド63による剥離の補助手段として、ニップ部Nの下流側に、剥離補助部材70を配置している。剥離補助部材70は、剥離バッフル71が定着ベルト61の回転移動方向と対向する向き(所謂カウンタ方向)に定着ベルト61と近接する状態でホルダ72によって支持される。そして、押圧パッド63の出口にて用紙Pに形成されたカール部分を剥離バッフル71により支持することで、用紙Pが定着ベルト61方向に向かうことを抑制する。
<感温磁性部材の説明>
次に、感温磁性部材64は、定着ベルト61の内周面に倣った円弧形状で形成され、定着ベルト61の内周面とは予め定めた間隙(例えば、0.5〜1.5mm)を有するように近接させるが、非接触で配置される。感温磁性部材64を定着ベルト61と近接させて配置するのは、感温磁性部材64の温度が定着ベルト61の温度に対応して変化する、すなわち、感温磁性部材64の温度が定着ベルト61の温度と略同じ温度となるように構成するためである。また、感温磁性部材64を定着ベルト61と非接触で配置するのは、画像形成装置1のメインスイッチがオンされ、定着ベルト61が定着設定温度まで加熱される際に、定着ベルト61の熱が感温磁性部材64に流入するのを抑制して、ウォームアップタイムの短縮を図るためである。
また、感温磁性部材64は、その磁気特性の透磁率が急変する温度である「透磁率変化開始温度」(後段参照)が各色トナー像が溶融する定着設定温度以上であって、定着ベルト61の弾性層613や表面離型層614の耐熱温度よりも低い温度範囲内に設定された材質で構成される。すなわち、感温磁性部材64は、定着設定温度を含む温度領域において強磁性と非磁性(常磁性)との間を可逆的に変化する特性(「感温磁性」)を有する材質で構成される。そして、感温磁性部材64は、強磁性を呈する透磁率変化開始温度以下の温度範囲において磁路形成部材として機能し、IHヒータ80にて生成され定着ベルト61を透過した磁力線を内部に誘導して、感温磁性部材64の内部を通過する交流磁界(磁力線)の磁路を形成する。それにより、感温磁性部材64は、定着ベルト61とIHヒータ80の励磁コイル82(後段の図5参照)とを内部に包み込むような閉磁路を形成する。一方、透磁率変化開始温度を超える温度範囲においては、感温磁性部材64は、IHヒータ80にて生成され定着ベルト61を透過した磁力線を、感温磁性部材64の厚さ方向に横切るように透過させる。それにより、IHヒータ80にて生成され定着ベルト61を透過した磁力線は、感温磁性部材64を透過し、誘導部材66の内部を通過してIHヒータ80に戻る磁路を形成する。
なお、ここでの「透磁率変化開始温度」とは、透磁率(例えば、JIS C2531で測定される透磁率)が連続的に低下を開始する温度であり、例えば感温磁性部材64等の部材を透過する磁束量(磁力線の数)が変化し始める温度点をいう。したがって、透磁率変化開始温度は、物質の磁性が消失する温度であるキュリー点に近い温度となるが、キュリー点とは異なる概念を有するものである。
感温磁性部材64に用いる材質としては、透磁率変化開始温度が例えば140(定着設定温度)〜240℃の範囲内に設定された例えばFe−Ni合金(パーマロイ)等の二元系感温磁性合金やFe−Ni−Cr合金等の三元系の感温磁性合金等が用いられる。例えば、Fe−Niの二元系感温磁性合金においては約Fe64%、Ni36%(原子数比)とすることで225℃前後に透磁率変化開始温度を設定することができる。このようなパーマロイや感温磁性合金等の金属合金等は、成型性や加工性に優れ、熱伝導性も高く安価である等の理由から、感温磁性部材64に適する。その他の材質としては、Fe,Ni,Si,B,Nb,Cu,Zr,Co,Cr,V,Mn,Mo等からなる金属合金が用いられる。
また、感温磁性部材64は、IHヒータ80により生成された交流磁界(磁力線)に対する表皮深さδ(上記(1)式参照)よりも厚い厚さで形成される。具体的には、例えばFe−Ni合金を用いた場合には50〜300μm程度に設定される。
<ホルダの説明>
押圧パッド63を支持するホルダ65は、押圧パッド63が加圧ロール62からの押圧力を受けた状態での撓み量が一定量以下となるように、剛性の高い材料で構成される。それにより、ニップ部Nにおける長手方向の圧力(ニップ圧)の均一性を維持している。さらに、本実施の形態の定着ユニット60aでは、電磁誘導を用いて定着ベルト61を加熱する構成を採用していることから、ホルダ65は、誘導磁界に影響を与えないか、または与え難い材料であり、かつ、誘導磁界から影響を受けないか、または受け難い材料で構成される。例えば、ガラス混入PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂や、例えばAl,Cu,Ag等の非磁性金属材料等が用いられる。
<誘導部材の説明>
誘導部材66は、感温磁性部材64の内周面に倣った円弧形状で形成され、感温磁性部材64の内周面とは予め定めた間隙(例えば、1.0〜5.0mm)を有する非接触に配置される。また、誘導部材66は、例えばAg,Cu,Alといった固有抵抗値が比較的小さい非磁性金属で構成される。そして、感温磁性部材64が透磁率変化開始温度以上の温度に上昇した際に、IHヒータ80により生成された交流磁界(磁力線)を誘導して、定着ベルト61の導電発熱層612よりも渦電流Iが発生し易い状態を形成する。それにより、誘導部材66の厚さは、渦電流Iが流れ易いように、表皮深さδ(上記(1)式参照)よりも充分に厚い予め定められた厚さ(例えば、1.0mm)で形成される。
<IHヒータの説明>
続いて、定着ベルト61の導電発熱層612に交流磁界を作用させて電磁誘導加熱するIHヒータ80について説明する。
図5は、本実施の形態のIHヒータ80の構成を説明する断面図である。図5に示したように、IHヒータ80は、例えば耐熱性樹脂等の非磁性体から構成される支持体81、交流磁界を生成する励磁コイル82を備えている。また、励磁コイル82を支持体81上に固定する弾性体で構成された弾性支持部材83、励磁コイル82にて生成された交流磁界の磁路を形成する磁心84を備えている。さらには、磁界を遮蔽するシールド85、磁心84を支持体81側に加圧する加圧部材86、励磁コイル82に交流電流を供給する励磁回路88を備えている。
支持体81は、断面が定着ベルト61の表面形状に沿って湾曲した形状で形成され、励磁コイル82を支持する上部面(支持面)81aが定着ベルト61表面と予め定めた間隙(例えば、0.5〜2mm)を保つように形成されている。また、支持体81を構成する材質としては、例えば、耐熱ガラス、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂、またはこれらにガラス繊維を混合した耐熱性樹脂等の耐熱性のある非磁性材料が用いられる。
励磁コイル82は、相互に絶縁された例えば直径0.17mmの銅線材を例えば90本束ねたリッツ線が長円形状や楕円形状、長方形状等の中空きの閉ループ状に巻かれて構成される。そして、励磁コイル82に励磁回路88から予め定めた周波数の交流電流が供給されることにより、励磁コイル82の周囲には、閉ループ状に巻かれたリッツ線を中心とする交流磁界が生成される。励磁回路88から励磁コイル82に供給される交流電流の周波数は、一般に、上記した汎用電源により生成される20kHz〜100kHzが用いられる。
磁心84は、例えばソフトフェライト、フェライト樹脂、非晶質合金(アモルファス合金)、やパーマロイ、感温磁性合金等の高透磁率の酸化物や合金材質で構成される強磁性体が用いられ、磁路形成手段として機能する。磁心84は、励磁コイル82にて生成された交流磁界による磁力線(磁束)を内部に誘導し、磁心84から定着ベルト61を横切って感温磁性部材64方向に向かい、感温磁性部材64の中を通過して磁心84に戻るといった磁力線の通路(磁路)を形成する。すなわち、励磁コイル82にて生成された交流磁界が磁心84の内部と感温磁性部材64の内部とを通過するように構成して、磁力線が定着ベルト61と励磁コイル82とを内部に包み込むような閉磁路を形成する。それにより、励磁コイル82にて生成された交流磁界の磁力線が定着ベルト61の磁心84と対向する領域に集中される。
ここで、磁心84は磁路形成による損失が小さい材料が望ましい。具体的には、磁心84は渦電流損を小さくする形態(スリット等による電流経路遮断や分断化、薄板束ね等)での使用が望ましく、ヒステリシス損の小さい材料で形成されることが望ましい。
また、定着ベルト61の回転方向に沿った磁心84の長さは、感温磁性部材64の定着ベルト61の回転方向に沿った長さよりも小さく構成される。それにより、磁力線のIHヒータ80周辺への漏洩が減り、力率が向上する。さらには、定着ユニットを構成する金属製部材への電磁誘導を抑え、定着ベルト61(導電発熱層612)での発熱効率を高める。
<定着ベルトが発熱する状態の説明>
引き続いて、IHヒータ80により生成された交流磁界によって定着ベルト61が発熱する状態を説明する。
まず、上記したように、感温磁性部材64の透磁率変化開始温度は、各色トナー像を定着する定着設定温度以上であって定着ベルト61の耐熱温度以下となる温度範囲内(例えば、140〜240℃)に設定されている。そして、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の状態にある場合には、定着ベルト61に近接する感温磁性部材64の温度も定着ベルト61の温度に対応して、透磁率変化開始温度以下となる。そのため、感温磁性部材64は強磁性を呈するので、IHヒータ80により生成された交流磁界の磁力線Hは、定着ベルト61を透過した後、感温磁性部材64の内部を広がり方向に沿って通過する磁路を形成する。ここでの「広がり方向」とは、感温磁性部材64の厚さ方向と直交する方向を意味する。
図6は、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合の磁力線(H)の状態を説明する図である。図6に示したように、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合には、IHヒータ80により生成された交流磁界の磁力線Hは、定着ベルト61を交差して透過し、感温磁性部材64の内部を広がり方向(厚さ方向と直交する方向)に沿って通過する磁路を形成する。そのため、定着ベルト61の導電発熱層612を横切る領域での単位面積あたりの磁力線Hの数(磁束密度)は多くなる。
すなわち、IHヒータ80の磁心84から磁力線Hが放射されて定着ベルト61の導電発熱層612を横切る領域R1,R2を通過した後、磁力線Hは強磁性体である感温磁性部材64の内部に誘導される。そのため、定着ベルト61の導電発熱層612を厚さ方向に横切る磁力線Hは感温磁性部材64の内部に進入するように集中し、領域R1,R2での磁束密度は高くなる。また、感温磁性部材64の内部を広がり方向に沿って通過した磁力線Hが再び磁心84に戻るに際しても、導電発熱層612を厚さ方向に横切る領域R3では、感温磁性部材64内の磁位の低い部分から集中して磁心84に向けて放射される。そのため、定着ベルト61の導電発熱層612を厚さ方向に横切る磁力線Hは、感温磁性部材64から集中して磁心84に向かうこととなり、領域R3での磁束密度も高くなる。
磁力線Hが厚さ方向に横切る定着ベルト61の導電発熱層612では、単位面積当たりの磁力線Hの数(磁束密度)の変化量に比例した渦電流Iが発生する。それにより、図6に示したように、磁束密度の変化量が大きい領域R1,R2および領域R3では、大きな渦電流Iが発生する。導電発熱層612に生じた渦電流Iは、導電発熱層612の固有抵抗値Rと渦電流Iの二乗の積であるジュール熱W(W=IR)を発生させる。それにより、大きな渦電流Iが発生した導電発熱層612では、大きなジュール熱Wが発生する。
このように、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合には、磁力線Hが導電発熱層612を横切る領域R1,R2や領域R3において大きな熱が発生する。それにより、定着ベルト61は加熱される。
ところで、本実施の形態の定着ユニット60aでは、定着ベルト61の内周面側において定着ベルト61に近接させて感温磁性部材64を配置している。それにより、励磁コイル82にて生成された磁力線Hを内部に誘導する磁心84と、定着ベルト61を厚さ方向に横切って透過した磁力線Hを内部に誘導する感温磁性部材64とが近接した構成を実現している。そのため、IHヒータ80(励磁コイル82)により生成された交流磁界は、磁路が短いループを形成するので、磁路内での磁束密度や磁気結合度は高まる。それにより、定着ベルト61の温度が透磁率変化開始温度以下の温度範囲にある場合、定着ベルト61にはさらに効率的に熱が発生する。
<加圧ロールの説明>
加圧ロール62は、定着ベルト61に対向するように配置され、定着ベルト61に従動して図3の矢印D方向に、例えば140mm/sのプロセススピードで回転する。そして、加圧ロール62と押圧パッド63とにより定着ベルト61を挟持した状態でニップ部Nを形成し、このニップ部Nに未定着トナー像を保持した用紙Pを通過させることで、熱および圧力を加えて未定着トナー像を用紙Pに定着する。
加圧ロール62は、例えば直径18mmの中実のアルミニウム製コア(円柱状芯金)621と、コア621の外周面に被覆された例えば厚さ5mmのシリコーンスポンジ等の耐熱性弾性体層622と、さらに例えば厚さ50μmのカーボン配合のPFA等の耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層623とが積層されて構成される。そして、例えば20kgfの荷重で定着ベルト61を介して押圧パッド63を押圧している。
このように、加圧ロール62の表面を構成する耐熱性弾性体層622と離型層623は、比較的柔らかい素材により形成されている。そのため、定着時以外においても加圧ロール62を定着ベルト61を介して押圧パッド63に圧接する状態のまま放置すると、元の形状に復元することができなくなるおそれがある。即ち、加圧ロール62は、ニップ部N(定着加圧部)により形成される形状のまま変形してしまう。その場合、ニップ部Nに押圧する圧力が設計通りとはならないため、定着を規定通りに行なうことができなくなり、定着ユニット60aそのものの性能を損なうことになる。
よって、加圧ロール62に移動機構200を設け、定着時以外の時間帯は、加圧ロール62を、定着ベルト61から離間させる動作を行なう。即ち、加圧ロール62は、定着を行なうときには定着ベルト61の外周面に圧接することで定着ベルト61との間に未定着画像を保持した用紙Pを挿通するためのニップ部Nを形成し、定着を行なわないときには定着ベルト61から離間するように移動する。
図7は移動機構200により加圧ロール62を定着ベルト61から離間させた状態を説明した図である。
図7に示すように加圧ロール62と定着ベルト61とは離間した状態にある。その結果、加圧ロール62は、元の円形形状に形状復元がなされるため、加圧ロール62が変形し元の形状に戻らなくなるおそれが少なくなる。
なお定着を行なう際には、移動機構200により再び加圧ロール62を図3で説明した定着ベルト61と接触し、ニップ部Nを形成する位置に戻すことが可能である。
<加圧ロールと定着ベルトの駆動機構の説明>
続いて図2、図3、図7を使用して本実施の形態の定着ユニット60aにおいて、加圧ロール62と定着ベルト61の駆動機構について説明する。
ここで、まず定着ユニット60aは、図7に示すような、定着動作前の離間状態に設定されているものとする。定着動作前の待機時では、移動機構200によって、加圧ロール62は定着ベルト61から離れたウォームアップ位置に置かれる。このウォームアップ位置は、ウォームアップ時における加圧ロール62の配置位置であり、加圧ロール62が定着ベルト61とは物理的に接触しない所謂ラッチOFF状態になる。
図2に示すように、定着ユニット60aでは、駆動部の一例としての駆動モータ90からの回転駆動力が、回転軸91に固定された伝達ギヤ92と、伝達ギヤ93,94,95,96を介してシャフト97に伝達される。それにより、加圧ロール62に回転駆動力が伝わり加圧ロール62が回転駆動される。
次に、駆動モータ90からの回転駆動力は、回転軸91に伝達ギヤ92と同軸に固定された伝達ギヤ101と、回転伝達制限部材の一例としてのワンウェイクラッチ102を介してシャフト103に伝達され、シャフト103に結合された伝達ギヤ104,105から定着ベルト61の両側に配されたエンドキャップ部材67のギヤ部67bに伝達される。それによって、エンドキャップ部材67から定着ベルト61に回転駆動力が伝わり、エンドキャップ部材67と定着ベルト61とが一体となって回転駆動される。このとき、定着ベルト61が定着ベルト61の両端部から駆動力を直接受けて回転する。
次に、定着ユニット60aは、図3に示すような定着動作時には、移動機構200によって、加圧ロール62は定着ベルト61に圧接した所謂ラッチON状態に置かれる。ラッチOFF状態で加圧ロール62の表面速度に対して定着ベルト61の表面速度を遅くなるようにギヤ列の減速比を設定する。このためラッチON状態では定着ベルト61が加圧ロール62に従動するようにワンウェイクラッチ102が作動することになり、駆動モータ90からシャフト103への回転駆動力の伝達が停止する。
なお、本実施の形態の定着ユニット60aは、回転検知部の一例である回転検知計107を備え、定着ベルト61の回転数を検知する。そして回転検知計107により検知した定着ベルト61の回転数を出力する出力部の一例としての回転数出力部901を有する。この回転数出力部901は、定着ベルト61の回転数を制御部31(図1参照)に備えられた回転制御部(図示せず)に出力する。
また詳しくは後述するが、本実施の形態の定着ユニット60aは、制御部31に備えられた回転制御部により、回転検知計107により検知した定着ベルト61の回転数に基づき定着ベルト61の回転数を予め定められた規定回転数にするために駆動モータ90の回転数の算出を行なう。そして駆動モータ90の回転数を取得する回転数取得部902を備える。
そして、駆動モータ90の回転数は、モータドライバ910に送られ、モータドライバ910により駆動モータ90の回転が制御されている。
また、移動機構200(図3参照)は、位置決め駆動源としてのラッチモータ201と、回転軸202、伝達ギヤ203,204,シャフト205及びシャフト205に扁心カム206を備えている。そしてこの扁心カム206の回転により加圧ロール62が図2で見て上下方向に移動し、定着ベルト61との間で圧接、離間の動作を行なう。また移動機構200は、制御部31から圧接(離間)指示を受け取る圧接(離間)指示取得部207を備える。そして、制御部31から圧接(離間)指示を受け取ると、圧接(離間)指示取得部207は、その指示をモータドライバ210に送り、モータドライバ210によりラッチモータ201の動作が制御されている。
ここで、定着ユニット60aの定着動作中に加圧ロール62に用紙Pが巻付く場合がある。例えば、用紙Pに両面印刷を行なう場合や、いったん画像形成を行なった用紙Pの裏面を再利用する場合などは、定着されたトナーが再溶融を生じる場合がある。そしてこの再溶融したトナーにより用紙Pが加圧ロール62に貼り付き、そのため用紙Pが加圧ロール62に巻付くことになる。
用紙Pが加圧ロール62に巻付いた場合、その用紙を除去しなくても一般には定着ユニット60aは、定着を継続することができる。ただし、加圧ロール62の表面にこの巻付いた用紙Pにより凹凸が生じるため、定着画像に乱れが生じる。また紙しわが生じたり、異音が生じる場合もある。そのため用紙Pが加圧ロール62に巻付いた場合は、その発生を迅速に検知し、画像形成装置1(図1参照)を停止させ、画像形成装置1を使用しているユーザに対し警告を発信する等の処置が必要となる。
本実施の形態において、この用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知するのに、画像形成装置1の制御部31に、算出した駆動モータ90の回転数に基づき用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知する巻付き検知部を設けることでこの問題を解決する。
以下、この用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知するための構成について詳細に説明を行なう。
図8は、用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知するための制御部31の構成について説明した図である。そして図9は、用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知するための動作の流れを説明したフローチャートである。
制御部31は、図2および図3で説明した定着ユニット60aの回転数出力部901から出力された定着ベルト61の回転数を取得する回転数取得部311と、回転数取得部311により取得された定着ベルト61の回転数から定着ベルト61の回転数を予め定められた規定回転数にするための駆動モータ90の回転数を算出する演算部312と、演算部312がこの算出を行なうために必要なデータを記憶するメモリ等の記憶部313と、記憶部313が記憶するデータを取得するデータ取得部314と、用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知する巻付き検知部315と、演算部312により算出された駆動モータ90の回転数を定着ユニット60aの回転数取得部902に出力する回転数出力部316とを備える。本実施の形態において、巻付き検知部315は制御部31の一部として把握している。そして、回転数取得部311、演算部312、および回転数出力部316は、定着ユニット60aに備えられた回転検知計107により検知した定着ベルト61の回転数に基づき定着ベルト61の回転数を予め定められた規定回転数にするために駆動モータ90の回転数の算出を行なう回転数算出部310として把握される。
次に、図8および図9を使用して、用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知する動作について説明を行なう。
まず。回転数取得部311が定着ベルト61の回転数を取得する(ステップ111)。そして回転数算出部310により駆動モータ90の回転数算出および出力が行なわれる(ステップ112)。この駆動モータ90の回転数算出は、まず演算部312が回転数取得部311から定着ベルト61の回転数を受け取る。そして、演算部312は、データ取得部314を介して、記憶部313から定着ベルト61の回転数に対応した駆動モータ90の回転数のデータを取得する。そしてこの回転数を駆動モータ90の回転数として回転数出力部316を介して出力する。
また回転数出力部316は、巻付き検知部315にも駆動モータ90の回転数を出力する。そして巻付き検知部315は、データ取得部314を介して、記憶部313から駆動モータ90の予め定められた回転下限値を取得する(ステップ113)。この回転下限値は、駆動モータ90の回転数として、取り得る値の最小値である。以下この回転下限値について説明を行なう。
加圧ロール62の表面は、上述したようにシリコーンスポンジ等の耐熱性弾性体層622(図3参照)や、カーボン配合のPFA等の耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による離型層623(図3参照)にて積層されて構成されているため、熱膨張率が比較的大きい。そのため加圧ロール62の温度変化によりその径が変化しやすいという特性を有する。この場合、加圧ロール62の回転数が同じ場合、径の変化に対応して加圧ロール62の外周の回転の線速度が変化することになる。その結果、定着ベルト61は、上述の通り加圧ロール62を回転駆動させることで従動回転するので、加圧ロール62の径が変化すると定着ベルト61の回転速度、つまり回転数に変化を及ぼす。例えば、定着ユニット60a内の温度が上昇し、熱膨張により加圧ロール62の径が増加すると、加圧ロール62の回転の線速度は速くなる。そうなると定着ベルト61の回転数が増加する。そのため、加圧ロール62の径が増加した場合、駆動モータ90の回転数を減少させる必要がある。よって上述した回転数算出部310により定着ベルト61の回転数に基づいて駆動モータ90の回転数をフィールドバック制御している。
しかしながら定着ユニット60a内の温度は、通常一定の温度以上には上昇しない。即ち加圧ロール62の温度も一定の温度以上には上昇しないため加圧ロール62の熱膨張による径の増大には上限が存在する。即ち、この上限の加圧ロール62の径に対応した駆動モータ90の回転数の最小値、即ち回転下限値が存在する。つまり回転下限値は、熱膨張により増大する加圧ロール62の径の値に対応して定められる。そして回転下限値は予め算出しておくことができる。
次に、巻付き検知部315は、回転数算出部310により算出した駆動モータ90の回転数と回転下限値とを比較する。
即ち、用紙Pが加圧ロール62に巻付いた状態では、見かけ上加圧ロール62の径が増大することになる。よって、その径に対応して算出される駆動モータ90の回転数と回転下限値を比較し、駆動モータ90の回転数が回転下限値未満となっているか否かを判断する(ステップ114)。そして駆動モータ90の回転数が回転下限値未満となっているときは、巻付き検知部315は、用紙Pが加圧ロール62に巻付いたと判断することができる。即ち、用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知することができる(ステップ115)。なお駆動モータ90の回転数が回転下限値以上となっているときは、ステップ111へ戻り、上記動作を繰り返す。
なお、上述した例では、巻付き検知部が制御部31の一部として組み込まれている構成について説明を行なったがこれに限られるものではなく、定着ユニット60の側に巻付き検知部を設けてもよい。
図10は、用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知するための巻付き検知部を定着ユニット側に設置した場合の定着ユニットの構成を示す正面図である。また図11は、巻付き検知部を定着ユニット側に設置した場合の制御部31の構成を示す図である。更に図12は、巻付き検知部を定着ユニット側に設置した場合に用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知するための動作の流れを説明したフローチャートである。
図10に示すように、本実施の形態の定着ユニット60bは、図2で示した定着ユニット60aに対し、用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知する巻付き検知部903と、駆動モータ90の回転下限値を取得する回転下限値取得部904とを更に備える。
以下、図10〜図12を使用して、本実施の形態における用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知する動作について説明を行なう。
まず、制御部31の回転数取得部311が定着ユニット60bの回転数出力部901から定着ベルト61の回転数を取得する(ステップ121)。そして回転数算出部310により駆動モータ90の回転数算出が行なわれる(ステップ122)。この駆動モータ90の回転数算出は、図8〜図9を使用して説明した上記の場合と同様の方法で行なうことができる。そしてこの駆動モータ90の回転数は、回転数出力部316から出力される(ステップ123)。そして定着ユニット60bの回転数取得部902が、駆動モータ90の回転数を取得する(ステップ124)。またこの駆動モータ90の回転数は、モータドライバ910を介して、駆動モータ90に送られると共に、定着ユニット60b側に設けられた巻付き検知部903にも送られる。
次に定着ユニット60bの回転下限値取得部904が、制御部31の記憶部313からデータ取得部314を介し、回転下限値を取得する(ステップ125)。そして、巻付き検知部903が、回転数取得部902により受け取った駆動モータ90の回転数とこの回転下限値とを比較する。そして、駆動モータ90の回転数が回転下限値未満となっているか否かを判断する(ステップ126)。そして駆動モータ90の回転数が回転下限値未満となっているときは、巻付き検知部903は、用紙Pが加圧ロール62に巻付いたと判断し、巻付きを検知する(ステップ127)。そして巻付き検知部903は、巻付き検知を制御部31の巻付き検知受付部317に出力する(ステップ128)。そして巻付き検知を受け取った巻付き検知受付部317は、画像形成装置1の停止指示を出力する等の処理を行なう。なお駆動モータ90の回転数が回転下限値以上となっているときは、ステップ121へ戻り、上記動作を繰り返す。
なお上述した例では、駆動モータ90の回転数と回転下限値を比較することで、巻付き検知を行なっていたが、これに限られるものではない。即ち、用紙Pが加圧ロール62に巻付いたときには、加圧ロール62の見かけ上の径が急速に増加する。この場合、回転数算出部310により算出される駆動モータ90の回転数が急速に減少することになる。よって、例えば、演算部312が一定の時間間隔をおいて算出される駆動モータ90の回転数の差分を計算し、それが一定以上となった場合、用紙Pが加圧ロール62に巻付いたと判断し、巻付き検知を行なってもよい。
また本実施の形態では、記憶部313は、制御部31の内部に配置されていたが、必ずしも制御部31の内部に配置する必要はなく、制御部31の外部であって、画像形成装置1の内部である箇所に配置してもよい。更に、画像形成装置1の外部に配置してもよい。この場合は、記憶部313に記憶されているデータは、予め定められた通信手段を介して、データ取得部314が取得することになる。
なお本実施の形態は、定着ユニット60(60a,60b)や制御部31に組み込まれたコンピュータ用のプログラムとして把握することもできる。即ち、コンピュータに、回転検知計107により検知した定着ベルト61の回転数に基づき定着ベルト61の回転数を予め定められた規定回転数にするために駆動モータ90の回転数の算出を行なう回転数算出機能と、算出した駆動モータ90の回転数に基づき用紙Pの加圧ロール62への巻付きを検知する巻付き検知機能と、を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。
1…画像形成装置、31…制御部、60,60a,60b…定着ユニット、61…定着ベルト、62…加圧ロール、64…感温磁性部材、66…誘導部材、80…IHヒータ、82…励磁コイル、90…駆動モータ、107…回転検知計、200…移動機構、310…回転数算出部、315,903…巻付き検知部、612…導電発熱層、901…回転数出力部、902…回転数取得部、904…回転下限値取得部

Claims (3)

  1. トナー像を形成するトナー像形成手段と、
    前記トナー像形成手段によって形成された前記トナー像を記録材上に転写する転写手段と、
    導電層を有し当該導電層が電磁誘導加熱されることで記録材にトナーを定着する定着部材と、当該定着部材の当該導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、当該定着部材の外周面に圧接することで当該定着部材との間に未定着画像を保持した記録材を挿通するための定着加圧部を形成する定着加圧部材と、当該定着部材が従動回転する当該定着加圧部材を回転させる駆動部と、従動回転する当該定着部材の回転数を検知する回転検知部と、を備える定着手段と、
    前記回転検知部により検知した前記定着部材の回転数に基づき当該定着部材の回転数を予め定められた規定回転数にするために前記駆動部の回転数の算出を行なう回転数算出部と、
    前記回転数算出部により算出した前記駆動部の回転数に基づき前記記録材の前記定着加圧部材への巻付きを検知する巻付き検知部と、
    を備え
    前記巻付き検知部は、前記回転数算出部により算出した前記駆動部の回転数と予め定められた温度における前記定着加圧部材の径の値に対応して定められる回転下限値とを比較することで前記記録材の当該定着加圧部材への巻付きを検知することを特徴とする画像形成装置。
  2. 導電層を有し、当該導電層が電磁誘導加熱されることで記録材にトナーを定着する定着部材と、
    前記定着部材の前記導電層と交差する交流磁界を生成する磁界生成部材と、
    前記定着部材の外周面に圧接することで当該定着部材との間に未定着画像を保持した記録材を挿通するための定着加圧部を形成する定着加圧部材と、
    前記定着加圧部材を回転させることで前記定着部材を従動して回転させる駆動部と、
    前記定着部材の回転数を検知する回転検知部と、
    前記回転検知部により検知した前記定着部材の回転数を出力する回転数出力部と、
    前記回転数出力部により出力した前記定着部材の回転数を基にして算出される前記駆動部の回転数を取得する回転数取得部と、
    予め定められた温度における前記定着加圧部材の径の値に対応して定められる前記駆動部の回転下限値を取得する回転下限値取得部と、
    前記回転数取得部により取得した前記駆動部の回転数と前記回転下限値取得部により取得した回転下限値とを比較することで前記記録材の前記定着加圧部材への巻付きを検知する巻付き検知部と、
    を備えることを特徴とする定着装置。
  3. コンピュータに、
    回転検知部により検知した定着部材の回転数に基づき当該定着部材の回転数を予め定められた規定回転数にするために駆動部の回転数の算出を行なう回転数算出機能と、
    算出した前記駆動部の回転数に基づき記録材の定着加圧部材への巻付きを検知する巻付き検知機能と、
    を実現し、
    前記巻付き検知機能は、前記回転数算出機能により算出した前記駆動部の回転数と予め定められた温度における前記定着加圧部材の径の値に対応して定められる回転下限値とを比較することで前記記録材の当該定着加圧部材への巻付きを検知することを特徴とするプログラム。
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