以下に図を用いて本発明の実施の形態を説明するが、本発明は図示の実施の形態に限られない。
<画像形成装置>
図1は本発明の実施の形態に係る給紙装置が組み込まれた画像形成装置の全体図である。
図1の画像形成装置は電子写真方式を利用してトナー画像を用紙上に形成するもので、自動原稿送り装置1、画像読取装置2、画像形成部3、用紙収納部4、給紙搬送部5、反転排紙・再給紙部6、反転搬送部8及び給紙装置100を有している。
自動原稿送り装置1は、原稿を載置する原稿載置台11、原稿載置台11上に載置された原稿を分離する原稿分離手段12、原稿分離手段12で分離された原稿を搬送する複数のローラを含む原稿搬送手段13、原稿搬送手段13で搬送された原稿を排紙する原稿排紙手段14、原稿排紙手段14によって排紙された原稿を載置する原稿排紙台15、および、両面読取モードにおいて原稿の表裏を反転させるためのローラ対からなる原稿反転手段16を有している。
原稿載置台11上に載置された複数枚の原稿(不図示)は、原稿分離手段12によって1枚づつ分離され、原稿搬送手段13によって画像読取部に向けて搬送される。
前記画像読取部は原稿搬送手段13の下方部に設けられており、前記画像読取部に形成された画像読取装置2のスリット21を通して原稿の画像が読み取られるようになっている。
また、自動原稿送り装置1は可倒式に構成されており、この自動原稿送り装置1を起こしてプラテンガラス22上を開放し、当該プラテンガラス22上に原稿を直接載置して複写を行うこともできるように構成してある。
画像読取装置2は、原稿の画像を読み取って画像データを得るための装置であり、スリット21を介して原稿を照射するランプ231と原稿からの反射光を反射させる第1ミラー232とを一体化してなる第1ミラーユニット23と、第1ミラー232からの光を反射させる第2ミラー241と第3ミラー242とを一体化してなる第2ミラーユニット24と、当該第2ミラーユニット24からの反射光を、撮像素子であるCCDに結像させる結像レンズ25と、結像レンズ25によって結像された光像を光電変換するライン状のCCD26とを有する。
CCD26により光電変換されたアナログ信号は、アナログ処理後にA/D変換され、適宜の画像処理を施された後、画像データとして画像メモリ(図示せず)に蓄積される。
なお、自動原稿送り装置1によって送られる原稿を画像読取装置2で読み取る態様においては、第1ミラーユニット23、および、第2ミラーユニット24は、図示位置に固定される。
また、プラテンガラス22上に載置された原稿の画像の読み取りは、第1ミラーユニット23と第2ミラーユニット24とを、一定の光路長を保ちながら、プラテンガラス22に沿って移動させることにより行う。
画像形成部3は、像担持体としての光導電性感光層を表面に有する感光体ドラム31、当該感光体ドラム31の表面を一様帯電させる帯電電極を含む帯電手段32、画像処理後の画像データに基いて作動され、感光体ドラム31上を露光して静電荷潜像(単に、潜像ともいう)を形成するための露光手段である書き込み手段33、感光体ドラム31上に形成される潜像を反転現像してトナー像となす現像処理を行う現像装置34、トナー像を普通紙等からなる用紙(以下、用紙という)上に転写せしめる転写電極を含む転写手段35、トナー像が転写された用紙の裏面から、例えば、ACまたはACとDCを重畳させた電圧によるコロナ放電を行い、感光体ドラム31上からの用紙の分離を促進する分離手段36、および、転写工程終了後の感光体ドラム31を清掃するためのクリーニング手段37等を有する。
38は分離後の用紙を、定着装置、例えば、加熱ローラ型の定着装置9に向けて搬送する搬送ベルト、63は排紙ローラである。
定着装置9は、加熱源Hを内蔵し、その周囲を独立回転する定着上ローラ900と、定着上ローラ900と圧接しながら回転する定着下ローラ903からなる定着処理手段を主要素とし、定着排出ローラ61、用紙の搬送路を選択的に切り替える切替手段62等を一体的に有している。
上記構成による画像形成は、適宜の駆動手段によって矢示の方向に回転する感光体ドラム31を帯電手段32により順次帯電した後、書き込み手段33によるドット露光で原稿画像に対応した潜像を形成し、現像装置34を用いて接触現像により潜像をトナー像となし、その後、第2給紙手段としてのレジストローラ56の回転開始により給送される用紙上に、転写手段35の作用を介して転写させることで達成される。
実際には、レジストローラ56に用紙が到達している状態で、当該レジストローラ56の回転開始に伴う給紙にタイミングを合わせて、感光体ドラム31上にトナー像を形成する現像処理のためのプロセスを開始するようになっている。
そのために、書き込み手段33による感光体ドラム31上の書き込み位置から転写手段35の転写位置までの距離とレジストローラ56から転写手段35までの距離を同一に設定するとともに、感光体ドラム31、レジストローラ56、転写前ローラ57の線速度を同一に設定してある。
転写後の用紙は分離手段36の作用により感光体ドラム31上から分離され、定着装置9の加熱加圧作用を受けた後、機外に排出される。
一方、転写領域を通過した感光体ドラム31は更に回転を続け、クリーニング手段37によって残留トナーが除去されて次の画像形成への準備がなされる。
構成の説明に戻って、用紙収納部4には、用紙PAを積層状態で収納する3個の給紙トレイ40が上下方向に配列してあり、それぞれの給紙トレイ40は、引き出し可能に設けてある。
各給紙トレイ40に対応して給紙装置100が設けられ、給紙装置100により用紙PAが1枚づつ送り出され、給紙搬送部5ににより画像形成部3へと搬送される。給紙装置100については後に説明する。
55は用紙PAの搬送方向にみて給紙搬送部5と、反転搬送部8との合流部に設けられた搬送ローラである。
反転排紙・再給紙部6は、転写定着後の用紙PAを反転排紙したり、両面画像形成モードに従って用紙PAを再給紙するための機能を有し、反転搬送部8は、反転排紙・再給紙部6に送り込まれた用紙PAの表裏を反転して、レジストローラ56に向けて送り出す機能を有するが、本発明と直接関係がないので詳細な説明は省略するものとする。
TSは画像形成装置内の温度を検知する温度検知手段としての温度センサであり、図1の例では、露光部の近傍において感光体ドラム31の表面温度を検知する。
<実施の形態1>
図2〜図5を参照して実施の形態1を説明する。図2は給紙装置100の側面図である。
図2に示す通り、給紙装置100は用紙PAを収納可能な給紙トレイ40に近接して設けられ、給紙トレイ40上には多数枚の用紙PAが積み重ねられた状態で収納されている。給紙トレイ40の上方には、用紙PAを給紙装置100の内部に送り出す送り出しローラ104が配設されており、送り出しローラ104は自重により給紙トレイ40の最も上に配置された用紙PAに接触している。送り出しローラ104は図2において反時計回り方向に回転するようになっており、給紙トレイ40上で最も上に配置された用紙PAに接触した状態で回転して給紙トレイ40上の用紙PAを基本的には1枚ずつ給紙装置100の内部に送り出すようになっている。
用紙PAの送り出し方向の送り出しローラ104より下流側には、送り出しローラ104から送り出された用紙PAを次工程側に搬送する給紙ローラ105と、送り出しローラ104から複数枚の用紙PAが重なった状態で送り出された場合にそれらの用紙PAのなかから下側の用紙PAを分離する分離ローラ106とが配設されている。給紙ローラ105と分離ローラ106は互いの外周部で圧接している。給紙ローラ105は上記送り出しローラ104と同様に図2において反時計回り方向に回転するようになっており、送り出しローラ104から送り出された用紙PAを図2において左方から右方に搬送するようになっている。
分離ローラ106には、図2において給紙ローラ105の給紙方向とは逆方向に用紙PAを搬送するように反時計回り方向に回転力が伝達されるようになっている。図2において分離ローラ106の右方には、分離ローラ106に伝達する回転力を制限するトルクリミッタ107が配設されており、トルクリミッタ107を介して分離ローラ106に回転力が伝達されるようになっている。したがって、分離ローラ106には図2において反時計回り方向に制限された一定の回転、さらに給紙ローラ105と分離ローラ106とに関して、給紙ローラ105は分離ローラ106より径がやや大きくなっており、給紙ローラ105の外周部は、用紙PAに対する摩擦係数が分離ローラ106の外周部より大きな材料から構成されている。給紙装置100では、給紙ローラ105及び分離ローラ106の外周部はともにゴムから構成されており、一例として、給紙ローラ105の外周部をエチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)から構成し、分離ローラ106の外周部をウレタンゴム(U)から構成することができる。ただし、給紙ローラ105及び分離ローラ106は同じ種類のゴムから構成されてもよいし、上記の通り異なる種類のゴムから構成されてもよく、分離ローラ106の外周部が給紙ローラ105の外周部より硬いゴムから構成されているのが好ましい。
用紙PAの搬送方向の給紙ローラ105及び分離ローラ106より下流側には、給紙ローラ105から搬送された用紙PAを次工程側に搬送する搬送ローラ108と、搬送ローラ108に従動する従動ローラ109とが配設されている。搬送ローラ108と従動ローラ109は互いの外周部で接触している。搬送ローラ108は上記給紙ローラ105と同様に図2において反時計回り方向に回転するようになっており、給紙ローラ105から搬送された用紙PAを図2において左方から右方に搬送するようになっている。従動ローラ109は回転自在とされており、搬送ローラ108の回転に伴って搬送ローラ108に従動するように図2において時計回り方向に回転するようになっている。
用紙PAの搬送経路沿いには、用紙PAを図2において左方から右方に案内する3枚のガイド板110,111,112が配設されている。各ガイド板110,111,112はすべて図2の紙面の表側から裏側にかけて(又は裏側から表側にかけて)延在している。ガイド板110は給紙トレイ40から分離ローラ106にまで至っており、ガイド板111は分離ローラ106の近傍から用紙PAの搬送方向の従動ローラ109より下流側にまで至っており、ガイド板112はガイド板110の中途部の上方からガイド板111の端部の上方にまで至っている。本実施形態では上記送り出しローラ104、給紙ローラ105及び搬送ローラ108の回転により、用紙PAが各ガイド板110,111,112にガイドされながら給紙トレイ40から給紙ローラ105及び分離ローラ106並びに搬送ローラ108及び従動ローラ109の各接触部を通過して給紙装置100の外部に搬送されるようになっている。
さらに用紙PAの搬送経路沿いには、用紙PAの有無を検知する3個の第1〜第3センサ113,114,115が配設されている。第1センサ113は搬送ローラ108の近傍であって、用紙PAの搬送方向の搬送ローラ108より上流側に配置されている。第2センサ114は給紙ローラ105の近傍であって、用紙PAの搬送方向の第1センサ113より上流側に配置されている。第3センサ115は搬送ローラ108の近傍であって、用紙PAの搬送方向の搬送ローラ108より下流側に配置されている。特に第2センサ114では、第2センサ114から用紙の搬送経路までの最短の間隔が給紙ローラ105の半径以内の距離に収まっており、給紙ローラ105及び分離ローラ106の接触部を通過する用紙の有無を瞬時に検知することができるようになっている。
続いて図3を参照しながら給紙装置100の駆動系の構成について説明する。
図3は給紙装置100の正面図である。
給紙装置100は送り出しローラ104、給紙ローラ105及び分離ローラ106の駆動源となるモータ120を有しており、モータ120の出力軸にギヤ121が固定されている。ギヤ121には、送り出しローラ104、給紙ローラ105及び分離ローラ106のすべてのローラにモータ120の回転力を伝達するための伝達ギヤ122が噛み合っている。給紙装置100は、モータ120の回転力を伝達ギヤ122から送り出しローラ104及び給紙ローラ105に伝達して給紙トレイ40から用紙PAを送り出すための送り出し伝達機構116Aと、モータ120の回転力を伝達ギヤ122から分離ローラ106に伝達して用紙PAを給紙トレイ40に送り戻すための制限付戻し伝達機構116Bとの2つの伝達機構を有している。
送り出し伝達機構116Aでは軸心回りに回転自在なシャフト123が配設されている。図3においてシャフト123の左端部には、モータ120の回転力を送り出しローラ104及び給紙ローラ105に伝達するか否かを切り替える電磁クラッチ124が配設されており、電磁クラッチ124のクラッチギヤ125が伝達ギヤ122に噛み合っている。図3においてシャフト123の右側には給紙ローラ105が固定されている。シャフト123と送り出しローラ104の回転軸126とにはプーリ127,128がそれぞれ固定されており、各プーリ127,128間に無端のベルト129が巻回されている。
送り出し伝達機構116Aでは、モータ120が作動して回転した状態において電磁クラッチ124が通電されて作動すると、シャフト123と電磁クラッチ124とが結合してモータ120の回転力が伝達ギヤ122からクラッチギヤ125を介してシャフト123に伝達され、シャフト123が回転するようになっている。そしてシャフト123が回転すると給紙ローラ105が回転し、さらにその回転力がベルト129を介して回転軸126にも伝わり、送り出しローラ104及び給紙ローラ105が同時に同一方向に回転するようになっている。
逆にモータ120が作動した状態において電磁クラッチ124への通電が解除されて電磁クラッチ124の作動が停止すると、シャフト123と電磁クラッチ124との結合が解除されてクラッチギヤ125が空転し、シャフト123の回転が停止するようになっている。このとき伝達ギヤ122からシャフト123への回転力の伝達が遮断されるから、送り出しローラ104及び給紙ローラ105の回転も同時に停止するようになっている。つまり送り出し伝達機構116Aでは、電磁クラッチ124の作動とその停止とに基づき送り出しローラ104及び給紙ローラ105が互いに同期して動作をおこなうようになっている。
一方、制限付戻し伝達機構116B及び強制戻し伝達機構116Cでは軸心回りに回転可能な2本のシャフト130,131が配設されている。図3においてシャフト130の左側には、径の異なる2枚のギヤ132,133が互いに所定の間隔をあけた状態で固定されている。ギヤ132はギヤ133より径が大きく、伝達ギヤ122に噛み合っている。図3においてシャフト130の右側にはトルクリミッタ107が配設されている。トルクリミッタ107の左端部にはギヤ134が配設されており、ギヤ134がギヤ135に噛み合っている。また分離ローラ106の回転軸にはギヤ136が固定されており、ギヤ136がギヤ135に噛み合っている。
シャフト130を用いた制限付戻し伝達機構116Bではモータ120が作動して回転すると、モータ120の回転力が伝達ギヤ122からギヤ132を介してシャフト130に伝達され、シャフト130が回転するようになっている。そしてシャフト130が回転するとその回転力がトルクリミッタ107により制限された状態で3枚のギヤ134,135,136を介して分離ローラ106に伝達され、分離ローラ106が送り出しローラ104及び給紙ローラ105の給紙方向とは逆方向に用紙PAを搬送するように回転するようになっている。つまりシャフト130を用いた制限付戻し伝達機構116Bでは、シャフト130と分離ローラ106との間にトルクリミッタ107が介在しているため、モータ120の回転力のすべてが分離ローラ106には伝達されず、制限された一定の回転力だけがモータ120から分離ローラ106に伝達されるようになっている。
強制戻し伝達機構116Cにおいて、シャフト131の左側には、モータ120の回転力を分離ローラ106に強制的に伝達するか否かを切り替える強制戻し用電磁クラッチである電磁クラッチ137が配設されており、電磁クラッチ137のクラッチギヤ138がギヤ133に噛み合っている。図3においてシャフト131の右側にはギヤ139が配設されており、ギヤ139がトルクリミッタ107のギヤ134に噛み合っている。
シャフト131を用いた強制戻し伝達機構116Cではモータ120が作動した状態において電磁クラッチ137が通電されて作動すると、シャフト131と電磁クラッチ137とが結合してモータ120の回転力が伝達ギヤ122から各ギヤ132,133及びクラッチギヤ138を介してシャフト131に伝達され、シャフト131が回転するようになっている。そしてシャフト131が回転するとその回転力がギヤ139から3枚のギヤ134,135,136を介して分離ローラ106に伝達され、分離ローラ106が送り出しローラ104及び給紙ローラ105の給紙方向とは逆方向に用紙PAを搬送するように回転するようになっている。
逆にモータ120が作動した状態において電磁クラッチ137への通電が解除されて電磁クラッチ137の作動が停止すると、シャフト131と電磁クラッチ137との結合が解除されてクラッチギヤ138が空転し、シャフト131から分離ローラ106への回転力の伝達が遮断されるようになっている。
上記制限付戻し伝達機構116Bではモータ120からトルクリミッタ107を介して分離ローラ106に回転力が伝達され、上記強制戻し伝達機構116Cではモータ120からトルクリミッタ107を介さずに分離ローラ106に回転力が伝達されるようになっている。
さらに図2及び図3には図示しないけれども、給紙装置100には、上記送り出し伝達機構116Aと同様に、モータ120の回転力を搬送ローラ108に伝達するためのシャフト、ギヤ、電磁クラッチ141(図4参照)などの部材が別途配設されており、電磁クラッチ141の作動により搬送ローラ108が回転するようになっている。
続いて図4を参照して給紙装置100の回路構成について説明する。
図4は、給紙装置100を制御する回路の構成を示すブロック図である。
制御手段150は、汎用のCPU(Central Processing Unit)からなる制御部151,ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等の回路(図示せず)を有している。制御部151は、ROMに記録された処理プログラムをRAMに展開してCPUにより当該処理プログラムを実行するようになっている。
具体的には制御部151は上記処理プログラムにしたがい上記モータ120及び電磁クラッチ124,137,141の各部材の動作を制御するようになっている。特に給紙装置100では上記第1〜第3センサ113〜115が制御部151に接続されており、制御部151は各第1〜第3センサ113〜115の検知結果に基づき各電磁クラッチ124,137,141を制御するようになっている。
TSは図1に示した温度検知手段としての温度センサであり、画像形成装置の環境温度を検知する。図1においては感光体1の表面温度を検知するが、画像形成装置内の他の適宜の場所に設置することができる。制御部151には温度センサTSが接続されており、制御部151は温度センサTSの検知情報に基づいて電磁クラッチ137を制御するようになっている。具体的には制御部151は、第1所定温度以上のときは、電磁クラッチ137を第4所定時間だけ作動させ、前記第1所定温度未満のときは電磁クラッチ137を作動させないようになっている。
続いて図5を参照して給紙装置100の給紙動作について説明する。
図5は給紙装置100の給紙動作を複数の工程に分けて経時的に表現したフローチャートである。
制御手段150の制御部151に用紙PAの給紙を指令する信号が入力されると、モータ120が作動して回転し始める(ステップS1)。これにより第1伝達機構である制限付戻し伝達機構116Bにおいて、モータ120の回転力が伝達ギヤ122からギヤ132を介してシャフト130に伝達され、シャフト130が回転し始める。するとその回転力がトルクリミッタ107により制限された状態で3枚のギヤ134,135,136を介して分離ローラ106に伝達され、分離ローラ106が図1において反時計回り方向に回転する。このとき送り出し伝達機構116Aでは電磁クラッチ124が作動していないため、シャフト123が回転自在な状態であり、給紙ローラ105が分離ローラ106に連れ回されるように回転する。
その後、電磁クラッチ124が作動してシャフト123と電磁クラッチ124とが連結し、モータ120の回転力が伝達ギヤ122からクラッチギヤ125を介してシャフト123に伝達され、シャフト123が回転し始める。するとその回転力が送り出しローラ104及び給紙ローラ105に伝達され、送り出しローラ104及び給紙ローラ105が同時に図2において反時計回り方向に回転し始める(ステップS2)。このとき、上記の通りモータ120の回転力がトルクリミッタ107を介して分離ローラ106に伝達されているけれども、電磁クラッチ124の作動によりモータ120の回転力がそのまま給紙ローラ105に伝達されるため、給紙ローラ105の回転力が分離ローラ106のそれを上回り、圧接された分離ローラ106は給紙ローラ105に従動して回転する。
送り出しローラ104が回転し始めると、給紙トレイ40の最も上に配置された用紙PAが給紙トレイ40から給紙ローラ105と分離ローラ106との圧接部に送り出され、その用紙PAは給紙ローラ105と分離ローラ106とに挟持された状態で給紙ローラ105により搬送ローラ108側に搬送される。
その後、制御部151が第2センサ114による用紙PAの有無を判断し(ステップS3)、第2センサ114が用紙PAを検知しない場合(ステップS3:NO)には、第2センサ114が用紙PAを検知するまでステップS3の動作が繰り返される。第2センサ114が用紙PAの先端部を検知したら(ステップS3:YES)、温度センサTSにより検知された温度が第1所定温度T1以上であるか否かを制御部151が判断する(ステップS4)。
温度が第1所定温度T1以上の場合(ステップS4:YES)、電磁クラッチ137が作動してシャフト131と電磁クラッチ137とが連結し、モータ120の回転力が伝達ギヤ122から各ギヤ132,33及びクラッチギヤ138を介してシャフト131に伝達され、シャフト131が回転し始める。するとその回転力がギヤ139から3枚のギヤ134,135,136を介して分離ローラ106に伝達され、分離ローラ106が給紙ローラ105の給紙方向とは逆方向に用紙PAを搬送するように回転力を受ける(ステップS5)。
ここで電磁クラッチ137が作動する前の状態では、制限付戻し伝達機構116Bによりシャフト130の回転力がトルクリミッタ107を介して分離ローラ106に伝達されているけれども、ステップS5の動作で電磁クラッチ137が作動すると、強制戻し伝達機構116Cにより分離ローラ106が強制的に回転駆動される。したがって、ステップS5の動作で給紙ローラ105と分離ローラ106とは用紙PAに対して互いに反対方向に搬送力を作用させる。
この状態において給紙トレイ40から1枚の用紙PAが送り出されている場合には、上記の通り給紙ローラ105の外周部は用紙PAに対する摩擦係数が分離ローラ106の外周部より大きい材料から構成されているため、給紙ローラ105が用紙PAを搬送ローラ108側に搬送し続け、分離ローラ106は用紙PAに接した状態で用紙PAの下面を滑りながら回転する。これとは異なり、給紙トレイ40から複数枚の用紙PAが互いに重なった状態で送り出されている場合には、給紙ローラ105が最も上に配置された用紙PAに接触しながら図2において反時計回り方向に回転し続けてその用紙PAを搬送ローラ108側に搬送し続け、分離ローラ106は複数枚の用紙PAのなかで下側に重なった用紙PAに接触しながら図2において反時計回り方向に回転してその用紙PAを給紙トレイ40側に送り戻す。つまり、ステップS5の動作で電磁クラッチ137が作動した場合に給紙トレイ40から複数枚の用紙PAが互いに重なった状態で送り出されているときには、最も上に配置された用紙PAだけが搬送ローラ108側に搬送され、それ以外の用紙PAが最も上に配置された用紙PAから分離されて給紙トレイ40側に送り戻される。
ステップS5の動作では電磁クラッチ137が第4所定時間のあいだ作動し続け、第4所定時間経過したら電磁クラッチ137の作動が停止する(ステップS6)。するとシャフト131と電磁クラッチ137との結合が解除されてクラッチギヤ138が空転し、シャフト131から分離ローラ106への回転力の伝達が遮断される。これにより電磁クラッチ137が作動する前の状態、つまりトルクリミッタ107を介したシャフト130の回転力が分離ローラ106に伝達される状態に戻る。
なお、ステップS4において、温度が第1所定温度T1未満である場合(ステップS4:NO)には、上記ステップS5,6の動作はおこなわれずに省略される。
その後、制御部151が第1センサ113による用紙の有無を判断し(ステップS7)、第1センサ113が用紙PAを検知しない場合(ステップS7:NO)には第1センサ113が用紙PAの先端部を検知するまでステップS7の動作が繰り返される。第1センサ113が用紙PAの先端部を検知したら(ステップS7:YES)、電磁クラッチ141が作動して搬送ローラ108が図2において反時計回り方向に回転する(ステップS8)。すると給紙ローラ105及び分離ローラ106の圧接部を通過した用紙PAの先端部が搬送ローラ108と従動ローラ109との間に挟み込まれ、その用紙PAが搬送ローラ108の回転に伴い搬送ローラ108及び従動ローラ109の接触部を通過しながら給紙装置100の外部側に搬送される。
その後、電磁クラッチ124の作動が停止する(ステップS9)。するとシャフト123と電磁クラッチ124との結合が解除されてクラッチギヤ125が空転し、伝達ギヤ122から送り出しローラ104及び給紙ローラ105への回転力の伝達が遮断される。
その後、制御部151が第3センサ115による用紙PAの有無を判断し(ステップS10)、第3センサ115が用紙PAを検知しない場合(ステップS10:NO)には第3センサ115が用紙PAを検知するまでステップS10の動作が繰り返される。第3センサ115が用紙PAの先端部を検知したら(ステップS10:YES)、制御部151が再度第3センサ115による用紙PAの有無を判断する(ステップS11)。第3センサ115が用紙PAを検出しているあいだ(ステップS11:NO)はステップS11の動作が繰り返される。
第3センサ115が用紙PAを検出しなくなったら(ステップS11:YES)、つまり用紙PAの後端部が第3センサ115による用紙PAの検知箇所を通過したら、電磁クラッチ141の作動が停止する(ステップS12)。するとモータ120から搬送ローラ108への回転力の伝達も遮断される。
その後、制御部151が、用紙PAの次の給紙を指令する信号の有無を判断し(ステップS13)、制御部151に次の給紙の旨の指令信号が入力されている場合には(ステップS13:YES)、上記ステップS2〜ステップS12までの各部材の動作が繰り返され、制御部151に次の給紙の旨の指令信号が入力されていない場合には(ステップS13:NO)、モータ120の回転が停止して(ステップS14)給紙装置100における給紙動作が終了する。
以上の給紙装置100では、温度センサTSにより検知された温度が第1所定温度T1以上の場合、モータ120から制限付戻し伝達機構116Bを介して分離ローラ106に回転力が伝達される期間中に、ステップS5の動作で強制戻し伝達機構116Cの電磁クラッチ137が一時的に作動して、モータ120から強制戻し伝達機構116Cを介して分離ローラ106を強制回転させるため、給紙ローラ105と分離ローラ106との間を通過する用紙PAに一定の送り戻し力が作用している最中にそれより大きな送り戻し力が一時的にその用紙PAに作用する。したがって一定の送り戻し力では複数枚の用紙PAのなかから下側に重なった用紙PAを分離することができない場合に、その送り戻し力よりも大きな送り戻し力を分離ローラ106に接触した用紙PAに作用させることができ、複数枚の用紙PAのなかから下側に重なった用紙PAを確実に分離することができる。
高温においては、重なった用紙の分離性が低下して、給紙装置100から2枚以上重なって送り出されるダブルフィードが起きやすくなる。ステップS5において、分離ローラ106を戻し方向に強制駆動することにより、高温におけるダブルフィードが良好に防止される。ステップS4における判断の閾値は、たとえば、T1=29℃に設定される。
そのうえ、給紙装置100では、モータ120から分離ローラ106に回転力を伝達するのに制限付戻し伝達機構116Bを介在させるか又は強制戻し伝達機構116Cを介在させるかの2通りの簡単な構成のみで分離ローラ106に用紙PAの送り戻し力を伝達することができるため、従来のように、給紙ローラ105に対する分離ローラ106の圧接力や分離ローラ106に与える回転力を調整するための複雑な構成を必要としない。これらのことより給紙装置100では、給紙ローラ105に対する分離ローラ106の圧接力や分離ローラ106に与える回転力を調整しなくても簡単な構成で複数枚の用紙PAが重なった状態で搬送されるのを確実に防止することができる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更をおこなってもよい。
また本実施形態ではステップS5の動作で電磁クラッチ137の作動時間を第4所定時間としたけれども、用紙PAの種類に応じて適宜変更できるようにしてもよい。この場合には、キーボード,タッチパネルなどの操作で用紙PAの種類に応じた時間を設定するようにしてもよいし、用紙PAの種類に応じた時間をデータテーブルとして予め制御手段150の不揮発メモリに記憶させておき、キーボード,タッチパネルなどの操作で用紙PAの種類が決定されたら自動的に電磁クラッチ137の作動時間が決定されるような構成としてもよい。
さらに用紙PAの透過率,反射率,厚さ,サイズなどを検知するセンサを給紙装置100に配設し、このセンサの検知結果に基づき制御手段150の制御部151で用紙PAの種類を判定し、電磁クラッチ137の作動の有無と電磁クラッチ137の作動時間とを決定するような構成としてもよい。
<実施の形態2>
図6〜8を参照して実施の形態2を説明する。
本実施の形態に係る給紙装置を側面から見た形態は図2に示すとおりであるので、実施の形態1における図2に関する説明を本実施の形態に用いるが、駆動系は実施の形態1と異なる。
図6は給紙装置100の正面図である。
給紙装置100は送り出しローラ104、給紙ローラ105及び分離ローラ106の駆動源となるモータ120を有しており、モータ120の出力軸にギヤ121が固定されている。ギヤ121には、送り出しローラ104及び給紙ローラ105にモータ120の回転力を伝達するための伝達ギヤ122が噛み合っており、伝達ギヤ122の回転軸118には、モータ120の回転力を分離ローラ106に伝達する伝達ギヤ119が固定されている。給紙装置100は、モータ120の回転力を伝達ギヤ122から送り出しローラ104及び給紙ローラ105に伝達する送り出し伝達機構116Aと、モータ120の回転力を伝達ギヤ119から分離ローラ106に伝達する制限付戻し伝達機構116Bとの2つの伝達機構を有している。
送り出し伝達機構116Aでは軸心回りに回転自在なシャフト123が配設されている。図6においてシャフト123の左側には、シャフト123の回転方向を1方向に規制するワンウェイクラッチ142とモータ120の回転力を送り出しローラ104及び給紙ローラ105に伝達するか否かを切り替える電磁クラッチ124とが配設されており、電磁クラッチ124のクラッチギヤ125が伝達ギヤ122に噛み合っている。図6においてシャフト123の右側には給紙ローラ105が固定されている。シャフト123と送り出しローラ104の回転軸126とにはプーリ127,128がそれぞれ固定されており、各プーリ127,128間に無端のベルト129が巻回されている。
送り出し伝達機構116Aではモータ120が作動して回転した状態において電磁クラッチ124が通電されて作動すると、シャフト123と電磁クラッチ124とが結合してモータ120の回転力が伝達ギヤ122からクラッチギヤ125を介してシャフト123に伝達され、シャフト123が回転するようになっている。そしてシャフト123が回転すると給紙ローラ105が回転し、さらにその回転力がベルト129を介して回転軸126にも伝わり、送り出しローラ104及び給紙ローラ105が同時に同一方向に回転するようになっている。
逆にモータ120が作動した状態において電磁クラッチ124への通電が解除されて電磁クラッチ124の作動が停止すると、シャフト123と電磁クラッチ124との結合が解除されてのクラッチギヤ125が空転し、シャフト123の回転が停止するようになっている。このとき伝達ギヤ122からシャフト123への回転力の伝達が遮断されるから、送り出しローラ104及び給紙ローラ105の回転も同時に停止するようになっている。つまり送り出し伝達機構116Aでは、電磁クラッチ124の作動とその停止とに基づき送り出しローラ104及び給紙ローラ105が互いに同期して動作をおこなうようになっている。なお、シャフト123にはワンウェイクラッチ142が配設されているため、給紙ローラ105は分離ローラ106に従動して用紙PAの給紙方向と逆方向には回転しない。
一方、制限付戻し伝達機構116Bでは軸心回りに回転自在なシャフト130が配設されている。図6においてシャフト130の左端部には、モータ120の回転力を分離ローラ106に伝達するか否かを切り替えるトルクリミッタ用電磁クラッチである電磁クラッチ140が配設されており、電磁クラッチ140のクラッチギヤ132が伝達ギヤ119に噛み合っている。図6においてシャフト130の右側にはトルクリミッタ107が配設されている。トルクリミッタ107の左端部にはギヤ134が配設されており、ギヤ134がギヤ135に噛み合っている。また分離ローラ106の回転軸にはギヤ136が固定されており、ギヤ136がギヤ135に噛み合っている。
制限付戻し伝達機構116Bではモータ120が作動した状態において電磁クラッチ140が通電されて作動すると、シャフト130と電磁クラッチ140とが結合してモータ120の回転力が伝達ギヤ119からクラッチギヤ132を介してシャフト130に伝達され、シャフト130が回転するようになっている。そしてシャフト130が回転するとその回転力がトルクリミッタ107により制限された状態で3枚のギヤ134,35,36を介して分離ローラ106に伝達され、分離ローラ106が送り出しローラ104及び給紙ローラ105の給紙方向とは逆方向に用紙PAを搬送するように回転するようになっている。つまり制限付戻し伝達機構116Bでは、上記送り出し伝達機構116Aと異なり、シャフト130と分離ローラ106との間にトルクリミッタ107が介在しているため、モータ120の回転力のすべてが分離ローラ106には伝達されず、制限された一定の回転力だけがモータ120から分離ローラ106に伝達されるようになっている。
逆にモータ120が作動した状態において電磁クラッチ140への通電が解除されて電磁クラッチ140の作動が停止すると、シャフト130と電磁クラッチ140との結合が解除されてクラッチギヤ132が空転し、シャフト130の回転が停止するようになっている。このとき伝達ギヤ119からシャフト130への回転力の伝達が遮断されるから、分離ローラ106とシャフト130は給紙ローラ105に従動しながら回転するようになっている。
なお、図2及び図6には図示しないけれども、給紙装置100には、上記送り出し伝達機構116Aと同様に、モータ120の回転力を搬送ローラ108に伝達するためのシャフト、ギヤ、電磁クラッチ141(図7参照)などの部材が別途配設されており、電磁クラッチ141の作動により搬送ローラ108が回転するようになっている。
続いて図7を参照しながら給紙装置100の回路構成について説明する。
図7は、給紙装置100を制御する制御手段150の構成を示すブロック図である。
制御手段150は、汎用のCPU(Central Processing Unit)からなる制御部151,ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等の回路(図示せず)を有している。制御部151は、ROMに記録された処理プログラムをRAMに展開してCPUにより当該処理プログラムを実行するようになっている。
具体的には制御部151は上記処理プログラムにしたがい上記モータ120及び電磁クラッチ124,140、141の各部材の動作を制御するようになっている。特に給紙装置100では上記第1〜第3センサ113〜115が制御部151に接続されており、制御部151は各第1〜第3センサ113〜115の検知結果に基づき各電磁クラッチ124,140,141を制御するようになっている。
TSは環境温度を検知する温度検知手段としての温度センサであり、図1に示すように感光体1の表面温度を検知する。なお、温度センサTSは画像形成装置内における図1に示す位置以外の適宜に設置することができる。
続いて図8を参照して給紙装置100の給紙動作について説明する。
図8は給紙装置100の給紙動作を複数の工程に分けて経時的に表現したフローチャートである。
制御手段150の制御部151に用紙PAの給紙を指令する信号が入力されると、モータ120が作動して回転し始める(ステップS21)。その後、電磁クラッチ124が作動してシャフト123と電磁クラッチ124とが連結し、モータ120の回転力が伝達ギヤ122からクラッチギヤ125を介してシャフト123に伝達され、シャフト123が回転し始める。するとその回転力がシャフト123から送り出しローラ104及び給紙ローラ105に伝達され、送り出しローラ104及び給紙ローラ105が同時に図2において反時計回り方向に回転し始める(ステップS22)。送り出しローラ104が回転し始めると、給紙トレイ40の最も上に配置された用紙PAが給紙トレイ40から給紙ローラ105と分離ローラ106との圧接部に送り出され、その用紙PAは給紙ローラ105と分離ローラ106とのあいだに挟持された状態で給紙ローラ105により搬送ローラ108側に搬送される。
その後、制御部151が第2センサ114による用紙PAの有無を判断し(ステップS23)、第2センサ114が用紙PAを検知しない場合(ステップS23:NO)には第2センサ114が用紙PAを検知するまでステップS23の動作が繰り返される。第2センサ114が用紙PAの先端部を検知したら(ステップS23:YES)、電磁クラッチ140が作動してシャフト130と電磁クラッチ140とが連結し、モータ120の回転力が伝達ギヤ119からクラッチギヤ132を介してシャフト130に伝達され、シャフト130が回転し始める。するとその回転力がシャフト130から3枚のギヤ134,135,136を介して分離ローラ106に伝達され、分離ローラ106がモータ120から給紙ローラ105の給紙方向とは逆方向に用紙PAを搬送するように回転力を受ける(ステップS24)。
この状態において給紙トレイ40から1枚の用紙PAが送り出されている場合には、給紙ローラ105が用紙PAを搬送ローラ108側に搬送し続け、分離ローラ106はモータ120の回転力をトルクリミッタ107により制限された状態で受けているため、用紙PAに接触しながら給紙ローラ105に連れ回されるようにして回転する。これとは異なり、給紙トレイ40から複数枚の用紙PAが互いに重なった状態で送り出されている場合には、給紙ローラ105が最も上に配置された用紙PAに接触しながら図2において反時計回り方向に回転し続けてその用紙PAを搬送ローラ108側に搬送し続け、分離ローラ106は複数枚の用紙PAのなかで下側に重なった用紙PAに接触しながら図2において反時計回り方向に回転してその用紙PAを給紙トレイ40側に送り戻す。つまり給紙トレイ40から複数枚の用紙PAが互いに重なった状態で送り出されている場合には、最も上に配置された用紙PAだけが搬送ローラ108側に搬送され、それ以外の用紙PA(互いに重ねられた複数枚の用紙PAのなかで下側に重なった用紙PA)が最も上に配置された用紙PAから分離される。
その後、ステップS23の動作で第2センサ114が用紙PAの先端部を検知してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間が第1所定時間内に収まっているか否かを制御部151が判断する(ステップS25)。ここでの第1所定時間というのは、用紙PAの搬送が正常におこなわれているか否かを判断するための指標であって、制御手段150内の不揮発メモリに予め設定された値として格納されている。
第2センサ114が用紙PAの先端部を検知してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間が第1所定時間内に収まっていたら(ステップS25:YES)、つまり第1所定時間内に第1センサ113が用紙PAの先端部を検知したら、制御部151が計時を開始する(ステップS31)。
第1所定時間は、環境温度に対応して設定されており、制御手段150内の不揮発メモリに、温度に対応した第1所定時間のテーブルが格納されている。制御部151は温度センサTSの検知温度に基づいて該テーブルを参照し、第1所定時間を決定する。具体的には、第1所定時間には低温において短い時間が設定され、高温において長い時間が設定される。
低温においては、送り出しローラ104、給紙ローラ105等の搬送ローラと用紙とが滑りやすくなり、これら搬送ローラの搬送力が低下し、ノーフィードが発生しやすくなるが、低温において第1所定時間を短く設定することにより、分離ローラ106の抵抗を解除した状態での用紙送り出しを早期に実行することによって、ノーフィードが良好に防止される。
即ち、ステップS25の判断のために、環境温度に基づいた第1所定時間を設定することにより、ノーフィードを良好に防止することができる。
第1所定時間は温度に対応して連続変化してもよいし、段階的に変化してもよい。
その後、制御部151はステップS31の処理で計時を開始してから第2所定時間が経過したか否かを判断し(ステップS32)、第2所定時間が経過していないと判定したら(ステップS32:NO)、ステップS31の処理で計時を開始してから所定の時間が経過するまでステップS32の処理を繰り返す。
ステップS31の処理で計時を開始してから第2所定時間が経過したと制御部151が判定したら(ステップS32:YES)、電磁クラッチ124の作動が停止する(ステップS33)。するとシャフト123と電磁クラッチ124との結合が解除されてクラッチギヤ125が空転し、伝達ギヤ122から送り出しローラ104及び給紙ローラ105への回転力の伝達が遮断される。
その後、制御部151は用紙PAの給紙の再開を指令する信号が入力されたか否かを判断し(ステップS34)、その指令信号が入力されていないと判定したら(ステップS34:NO)、用紙PAの給紙の再開を指令する信号が入力されるまでステップS34の処理を繰り返す。用紙PAの給紙の再開を指令する信号が入力されたと制御部151が判定したら(ステップS34:YES)、電磁クラッチ141が作動して搬送ローラ108が図2において反時計回り方向に回転する(ステップS36)。
一方、第2センサ114が用紙PAの先端部を検知してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間が第1所定時間内に収まっていなかったら(ステップS25:NO)、つまり第1所定時間が経過しても第1センサ113が用紙PAの先端部を検知しなかったら、電磁クラッチ140の作動が停止する(ステップS27)。するとシャフト130と電磁クラッチ140との結合が解除されてクラッチギヤ132が空転し、伝達ギヤ119から分離ローラ106への回転力の伝達が遮断される。
この状態においては分離ローラ106の回転が停止して給紙ローラ105が回転し続けるため、給紙トレイ40から送り出された用紙PAが1枚であっても複数枚であっても、その用紙PAは分離ローラ106による作用を受けずに給紙ローラ105の作用だけを受けて搬送ローラ108側に搬送される。
その後、ステップS23で第2センサ114が用紙PAの先端部を検知してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間がエラー時間である第3所定時間内に収まっているか否かを制御部151が判断する(ステップS28)。ここでの「エラー時間」というのは、用紙PAの搬送不良が発生しているか否かを判断するための指標であって、上記第1所定時間よりも長く設定されており、上記第1所定時間と同様に制御手段150内の不揮発メモリに予め設定された値として格納されている。
第2センサ114が用紙PAの先端部を検知してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間が第3所定時間であるエラー時間内に収まっていたら(ステップS28:YES)、つまりエラー時間内に第1センサ113が用紙PAの先端部を検知したら、電磁クラッチ140が再度作動して分離ローラ106に給紙ローラ105の給紙方向とは逆方向に用紙PAを搬送するように回転力が伝達される(ステップS29)。
この状態においてはステップS24の動作後と同様に、給紙トレイ40から1枚の用紙PAが送り出されている場合には、給紙ローラ105が用紙PAを搬送ローラ108側に搬送し続け、分離ローラ106は用紙PAに接触しながら給紙ローラ105に連れ回されるようにして回転する。また、給紙トレイ40から複数枚の用紙PAが互いに重なった状態で送り出されている場合には、給紙ローラ105が最も上に配置された用紙PAを搬送ローラ108側に搬送し続け、分離ローラ106は複数枚の用紙PAのなかで下側に重なった用紙PAを給紙トレイ40側に送り戻す。
第2センサ114が用紙PAの先端部を検知してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間がエラー時間内に収まっていなかったら(ステップS28:NO)、つまりエラー時間が経過しても第1センサ113が用紙PAの先端部を検知しなかったら、制御部151が用紙PAの搬送不良を通知する処理をおこなう(ステップS30)。本実施形態では、給紙装置100の各部材の機械的な動作が停止する。ただし、給紙装置100に設けられた表示パネル(図示略)にメッセージが表示されたり、給紙装置100に設けられたブザー(図示略)が自動的に鳴ったりするようにしてもよい。
そして、ステップS29の動作の後は、上記したステップS31からステップS36までの動作がおこなわれる。ステップS36の動作で搬送ローラ108が回転すると、給紙ローラ105及び分離ローラ106の圧接部を通過した用紙PAの先端部が搬送ローラ108と従動ローラ109とのあいだに挟み込まれ、その用紙PAが搬送ローラ108の回転に伴い搬送ローラ108及び従動ローラ109の接触部を通過しながら給紙装置100の外部側に搬送される。
その後、制御部151が第3センサ115による用紙PAの有無を判断し(ステップS37)、第3センサ115が用紙PAを検知しない場合(ステップS37:NO)には第3センサ115が用紙PAを検知するまでステップS37の動作が繰り返される。第3センサ115が用紙PAの先端部を検知したら(ステップS37:YES)、制御部151が再度第3センサ115による用紙PAの有無を判断する(ステップS38)。第3センサ115が用紙PAを検出しているあいだ(ステップS38:NO)はステップS38の動作が繰り返される。
第3センサ115が用紙PAを検出しなくなったら(ステップS38:YES)、つまり用紙PAの後端部が第3センサ115による用紙PAの検知箇所を通過したら、2つの電磁クラッチ140,141の作動が停止する(ステップS39)。するとシャフト130と電磁クラッチ140との結合が解除されてクラッチギヤ132が空転し、伝達ギヤ119から分離ローラ106への回転力の伝達が遮断される。同時にモータ120から搬送ローラ108への回転力の伝達も遮断される。
その後、制御部151が、用紙PAの次の給紙を指令する信号の有無を判断し(ステップS40)、制御部151に次の給紙の旨の指令信号が入力されている場合には(ステップS40:YES)、上記ステップS22〜ステップS39までの各部材の動作が繰り返され、制御部151に次の給紙の旨の指令信号が入力されていない場合には(ステップS40:NO)、モータ120の回転が停止して(ステップS41)給紙装置100における給紙動作が終了する。
以上の給紙装置100では、ステップS24の動作で電磁クラッチ140が作動して分離ローラ106に回転力が伝達された状態において、第1所定時間内に第1センサ113が用紙PAを検知しなかったら、電磁クラッチ140の作動が停止するため、給紙ローラ105と分離ローラ106との間を通過する用紙PAには、搬送方向と逆方向の送り戻し力(負荷)が掛からなくなる。したがってこのとき、給紙ローラ105の回転力だけで用紙PAが搬送されるので、給紙ローラ105の回転力を確実に用紙PAに伝達することができ、給紙ローラ105が用紙PAとの接触面で滑るようなこともなく、用紙PAの搬送不良が生じるのを防止することができる。
また、別の観点から考えると、ステップS24の動作で電磁クラッチ140が作動して分離ローラ106に回転力が伝達された状態において、第1所定時間内に第1センサ113が用紙PAを検知しなかったら電磁クラッチ140の作動が一時停止して、その後に第1センサ113が用紙PAを検知したら電磁クラッチ140が再度作動するため、電磁クラッチ140の一時的な停止動作の前後で分離ローラ106に回転力が伝達され、給紙ローラ105及び分離ローラ106の接触部を通過する用紙PAには搬送方向と逆方向の送り戻し力が2度にわたって作用する。
したがって給紙ローラ105及び分離ローラ106の圧接部を複数枚の用紙PAが通過する場合に、例えば、先に作用した分離ローラ106の送り戻し力で複数枚の用紙PAのなかから下側に重なった用紙PAを充分に分離できなくても、後に作用した分離ローラ106の送り戻し力でその用紙PAを完全に分離することができる。これにより、複数枚の用紙PAが重なった状態で搬送されるのを確実に防止することができる。
そして、電磁クラッチ140の作動/不作動を判断する第1所定時間を温度センサTSの検知情報に基づいて設定するので、低温において用紙と搬送ローラとが滑りやすくなることが原因で起こるノーフィードが良好に防止される。
<実施の形態3>
図6、9、10及び11を参照して実施の形態3を説明する。
なお、図6、9及び10において、図2、3及び4と共通する部品、回路については前記の説明を引用し詳細な説明を省略する。また、実施の形態2の図である図6は本実施の形態の駆動系を示している。
図9は給紙装置100の側面図であり、図10は給紙装置100の回路構成を示すブロック図である。
図9に示す給紙装置100が図2に示す給紙装置100と異なるのは、図2及び図4に図示した第2センサ114が省略されているところであって、それ以外のは図2、4の給紙装置100と同様である。図10においては、2個の第1,第3センサ113,115が制御部151に接続され、制御部151が各第1,第3センサ113,115の検知結果に基づき各電磁クラッチ124,140,141を制御するようになっている。
続いて図11を参照しながら給紙装置100の給紙動作について説明する。
図11は給紙装置100の給紙動作を複数の工程に分けて経時的に表現したフローチャートである。
制御手段50の制御部151に用紙PAの給紙を指令する信号が入力されると、モータ120が作動して回転し始め(ステップS51)、その後2つの電磁クラッチ124,140が作動する(ステップS52)。電磁クラッチ124が作動すると、シャフト123と電磁クラッチ124とが連結してモータ120の回転力が送り出しローラ104及び給紙ローラ105に伝達され、送り出しローラ104及び給紙ローラ105が同時に図9において反時計回り方向に回転し始める。一方、電磁クラッチ140が作動すると、シャフト130と電磁クラッチ140とが連結してモータ120の回転力がトルクリミッタ107を介して分離ローラ106に伝達され、分離ローラ106がモータ120から給紙ローラ105の給紙方向とは逆方向に用紙PAを搬送するように回転力を受ける。
送り出しローラ104が回転し始めると、給紙トレイ40の最も上に配置された用紙PAが給紙トレイ40から給紙ローラ105と分離ローラ106との圧接部に送り出され、その用紙PAは給紙ローラ105と分離ローラ106とのあいだに挟持された状態で給紙ローラ105により搬送ローラ108側に搬送される。
この状態において給紙トレイ40から1枚の用紙PAが送り出されている場合には、給紙ローラ105が用紙PAを搬送ローラ108側に搬送し続け、分離ローラ106はモータ120の回転力をトルクリミッタ107により制限された状態で受けているため、用紙PAに接触しながら給紙ローラ105に連れ回されるようにして回転する。これとは異なり、給紙トレイ40から複数枚の用紙PAが互いに重なった状態で送り出されている場合には、給紙ローラ105が最も上に配置された用紙PAに接触しながら図9において反時計回り方向に回転し続けてその用紙PAを搬送ローラ108側に搬送し続け、分離ローラ106は複数枚の用紙PAのなかで下側に重なった用紙PAに接触しながら図9において反時計回り方向に回転してその用紙PAを給紙トレイ40側に送り戻す。
その後、ステップS52の動作で電磁クラッチ124が作動してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間が第1所定時間内に収まっているか否かを制御部51が判断する(ステップS53)。ここでの「第1所定時間」というのは、上記第1の実施形態のステップS25の動作で説明した第1所定時間と同様に、温度センサTSの検知温度に基づいて設定されるものであり、用紙PAの搬送が正常におこなわれているか否かを判断するための指標であって、環境温度に対応した値のテーブルが制御手段150内の不揮発メモリに格納されている。
電磁クラッチ124が作動してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間が第1所定時間内に収まっていたら(ステップS53:YES)、つまり第1所定時間内に第1センサ113が用紙PAの先端部を検知したら、制御部151が計時を開始する(ステップS58)。
その後、制御部151はステップS58の処理で計時を開始してから第2所定時間が経過したか否かを判断し(ステップS59)、所定の時間が経過していないと判定したら(ステップS59:NO)、ステップS58の処理で計時を開始してから所定の時間が経過するまでステップS59の処理を繰り返す。
ステップS58の処理で計時を開始してから第2所定時間が経過したと制御部151が判定したら(ステップS59:YES)、電磁クラッチ124の作動が停止する(ステップS60)。するとシャフト123と電磁クラッチ124との結合が解除されてクラッチギヤ125が空転し、伝達ギヤ122から送り出しローラ104及び給紙ローラ105への回転力の伝達が遮断される。
その後、制御部151は用紙PAの給紙の再開を指令する信号が入力されたか否かを判断し(ステップS61)、その指令信号が入力されていないと判定したら(ステップS61:NO)、用紙PAの給紙の再開を指令する信号が入力されるまでステップS61の処理を繰り返す。用紙PAの給紙の再開を指令する信号が入力されたと制御部151が判定したら(ステップS61:YES)、電磁クラッチ141が作動して搬送ローラ108が図5において反時計回り方向に回転する(ステップS62)。
一方、電磁クラッチ124が作動してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間が第1所定時間内に収まっていなかったら(ステップS53:NO)、つまり第1所定時間が経過しても第1センサ113が用紙PAの先端部を検知しなかったら、電磁クラッチ140の作動が停止する(ステップS54)。するとシャフト130と電磁クラッチ140との結合が解除されてクラッチギヤ132が空転し、伝達ギヤ119から分離ローラ106への回転力の伝達が遮断される。
この状態においては分離ローラ106の回転が停止して給紙ローラ105が回転し続けるため、給紙トレイ40から送り出された用紙PAが1枚であっても複数枚であっても、その用紙PAは分離ローラ106による作用を受けずに給紙ローラ105の作用だけを受けて搬送ローラ108側に搬送される。
その後、ステップS52の動作で電磁クラッチ124が作動してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間がエラー時間である第3所定時間内に収まっているか否かを制御部151が判断する(ステップS55)。ここでの「エラー時間」というのは、前記実施形態2のステップS28の動作で説明した第3所定時間と同様に、用紙PAの搬送不良が発生しているか否かを判断するための指標であって、上記第1所定時間よりも長く設定されており、上記第3所定時間と同様に制御手段150内の不揮発メモリに予め設定された値として格納されている。
以後、実施の形態2における給紙装置100と同様の動作がおこなわれる。ただし、図11に示すステップS56,ステップS57,ステップS63〜ステップS68の各動作において、ステップS56の動作は上記ステップS29の動作に対応しており、ステップS57の動作は上記ステップS30の動作に対応しており、ステップS63の動作は上記ステップS37の動作に対応しており、ステップS64の動作は上記ステップS38の動作に対応しており、ステップS65の動作は上記ステップS39の動作に対応しており、ステップS66の動作は上記ステップS40の動作に対応しており、ステップS67の動作は上記ステップS41の動作に対応している。
つまり実施の形態2における給紙装置100では、ステップS25及びステップS28の動作で「第1所定時間」及び「エラー時間」が第2センサ114による用紙PAの検知から第1センサ113によるその用紙PAの検知までの時間を対象としているのに対して、実施の形態3における給紙装置100では、ステップS53及びステップS55の動作で「第1所定時間」及び「エラー時間」が電磁クラッチ124の作動から第1センサ113による用紙PAの検知までの時間を対象としており、この点で給紙装置100の動作が給紙装置1のそれと異なっている。したがって以上の給紙装置100でも、給紙装置1と同様の理由から、用紙PAの搬送不良が生じるのを防止することができる。(複数枚の用紙PAが重なった状態で搬送されるのを確実に防止することができる。)
<実施の形態4>
図2及び図12〜14を参照して実施の形態4を説明する。
本実施の形態に係る給紙装置の側面図は図2に示すものである。また、駆動系の正面図は図12に示すとおりである。
本実施の形態は、環境温度により、制限付戻し伝達機構116B又は強制戻し伝達機構116Cを選択使用するとともに、環境温度により、制限付き送り戻し用伝達機構116Bで分離ローラ106を駆動するか又は分離ローラ106をフリーにして、給紙ローラ105に従動させるかを選択するようにしたもので、実施の形態1と実施の形態2又は実施の形態3とを組み合わせて画像形成装置器組み込んだ実施の形態である。
図12に示すように本実施の形態に係る給紙装置100は、制限付送り戻し用伝達系116Bにトルクリミッタ用の電磁クラッチである電磁クラッチ140を設けた他は、図3に示す給紙装置と同じ構造である。
図12に示す給紙装置では、電磁クラッチ140が作動することにより、モータ120の駆動力がトルクリミッタ107を介して分離ローラ106に伝達されて、分離ローラ106に用紙送り方向と反対方向の駆動力が伝達され、電磁クラッチ140が停止することにより、分離ローラ106がフリーとなって、給紙ローラ105に従動する。
図13は本実施の形態における制御回路のブロック図であり、図示のように、トルクリミッタ用の電磁クラッチである電磁クラッチ140を有する他は図4の制御回路と同一である。
本実施の形態における制御の流れを示すフローチャートである図14を参照して本実施の形態における動作を説明する。
制御手段150の制御部151に用紙PAの給紙を指令する信号が入力されると、モータ120が作動して回転し始める(ステップS1)。
その後、給紙ローラ用電磁クラッチである電磁クラッチ124及びトルクリミッタ用電磁クラッチである電磁クラチ電磁クラッチ140が作動してが作動してシャフト123と電磁クラッチ124とが連結し、モータ120の回転力が伝達ギヤ122からクラッチギヤ125を介してシャフト123に伝達され、シャフト123が回転し始めるとともに、シャフト130に駆動力が伝達され、送り出しローラ104及び給紙ローラ105が同時に図2において反時計回り方向に回転し始める(ステップS2)。
このとき、上記の通りモータ120の回転力がトルクリミッタ107を介して分離ローラ106に伝達されているけれども、電磁クラッチ124の作動によりモータ120の回転力がそのまま給紙ローラ105に伝達されるため、給紙ローラ105の回転力が分離ローラ106のそれを上回り、圧接された分離ローラ106は給紙ローラ105に従動して回転する。
送り出しローラ104が回転し始めると、給紙トレイ40の最も上に配置された用紙PAが給紙トレイ40から給紙ローラ105と分離ローラ106との圧接部に送り出され、その用紙PAは給紙ローラ105と分離ローラ106とに挟持された状態で給紙ローラ105により搬送ローラ108側に搬送される。
その後、制御部151が第2センサ114による用紙PAの有無を判断し(ステップS3)、第2センサ114が用紙PAを検知しない場合(ステップS3:NO)には、第2センサ114が用紙PAを検知するまでステップS3の動作が繰り返される。第2センサ114が用紙PAの先端部を検知したら(ステップS3:YES)、温度センサTSにより検知された温度が第1所定温度T1以上であるか否かを制御部151が判断する(ステップS4)。
温度が第1所定温度T1以上の場合(ステップS4:YES)、強制戻し用電磁クラッチである電磁クラッチ137が作動してシャフト131と電磁クラッチ137とが連結し、モータ120の回転力が伝達ギヤ122から各ギヤ132,33及びクラッチギヤ138を介してシャフト131に伝達され、シャフト131が回転し始める。するとその回転力がギヤ139から3枚のギヤ134,135,136を介して分離ローラ106に伝達され、分離ローラ106が給紙ローラ105の給紙方向とは逆方向に用紙PAを搬送するように回転力を受ける(ステップS5)。
ここで電磁クラッチ137が作動する前の状態では、制限付戻し伝達機構116Bによりシャフト130の回転力がトルクリミッタ107を介して分離ローラ106に伝達されているけれども、ステップS5の動作で電磁クラッチ137が作動すると、強制戻し伝達機構116Cにより分離ローラ106が強制的に回転駆動される。したがって、ステップS5の動作で給紙ローラ105と分離ローラ106とは用紙PAに対して互いに反対方向に搬送力を作用させる。
この状態において給紙トレイ40から1枚の用紙PAが送り出されている場合には、上記の通り給紙ローラ105の外周部は用紙PAに対する摩擦係数が分離ローラ106の外周部より大きい材料から構成されているため、給紙ローラ105が用紙PAを搬送ローラ108側に搬送し続け、分離ローラ106は用紙PAに接した状態で用紙PAの下面を滑りながら回転する。これとは異なり、給紙トレイ40から複数枚の用紙PAが互いに重なった状態で送り出されている場合には、給紙ローラ105が最も上に配置された用紙PAに接触しながら図2において反時計回り方向に回転し続けてその用紙PAを搬送ローラ108側に搬送し続け、分離ローラ106は複数枚の用紙PAのなかで下側に重なった用紙PAに接触しながら図2において反時計回り方向に回転してその用紙PAを給紙トレイ40側に送り戻す。つまり、ステップS5の動作で電磁クラッチ137が作動した場合に給紙トレイ40から複数枚の用紙PAが互いに重なった状態で送り出されているときには、最も上に配置された用紙PAだけが搬送ローラ108側に搬送され、それ以外の用紙PAが最も上に配置された用紙PAから分離されて給紙トレイ40側に送り戻される。
ステップS5の動作では電磁クラッチ137が第4所定時間のあいだ作動し続け、第4所定時間経過したら電磁クラッチ137の作動が停止する(ステップS6)。するとシャフト131と電磁クラッチ137との結合が解除されてクラッチギヤ138が空転し、シャフト131から分離ローラ106への回転力の伝達が遮断される。これにより電磁クラッチ137が作動する前の状態、つまりトルクリミッタ107を介したシャフト130の回転力が分離ローラ106に伝達される状態に戻る。
このように、第1所定温度T1以上においては、分離ローラ106を用紙戻し方向に強制駆動しながら、給紙が行われる。
高温においては、重なった用紙が分離し難くなる傾向があるが、前記のように分離ローラ106を強制駆動することにより、高温における分離不良、即ち、ダブルフィードが良好に防止される。前記第1所定温度T1は、たとえば、29℃に設定され、また、前記第4所定時間は、たとえば、100msに設定される。
その後、制御部151はステップS31で計時を開始し、計時を開始してから第2所定時間が経過したか否かを判断し(ステップS32)、第2所定時間が経過していないと判定したら(ステップS32:NO)、ステップS31の処理で計時を開始してから所定の時間が経過するまでステップS32の処理を繰り返す。
ステップS31の処理で計時を開始してから第2所定時間が経過したと制御部151が判定したら(ステップS32:YES)、電磁クラッチ124の作動が停止する(ステップS33)。するとシャフト123と電磁クラッチ124との結合が解除されてクラッチギヤ125が空転し、伝達ギヤ122から送り出しローラ104及び給紙ローラ105への回転力の伝達が遮断される。
その後、制御部151は用紙PAの給紙の再開を指令する信号が入力されたか否かを判断し(ステップS34)、その指令信号が入力されていないと判定したら(ステップS34:NO)、用紙PAの給紙の再開を指令する信号が入力されるまでステップS34の処理を繰り返す。用紙PAの給紙の再開を指令する信号が入力されたと制御部151が判定したら(ステップS34:YES)、電磁クラッチ141が作動して搬送ローラ108が図2において反時計回り方向に回転する(ステップS36)。
その後、制御部151が第3センサ115による用紙PAの有無を判断し(ステップS37)、第3センサ115が用紙PAを検知しない場合(ステップS37:NO)には第3センサ115が用紙PAを検知するまでステップS37の動作が繰り返される。第3センサ115が用紙PAの先端部を検知したら(ステップS37:YES)、制御部151が再度第3センサ115による用紙PAの有無を判断する(ステップS38)。第3センサ115が用紙PAを検出しているあいだ(ステップS38:NO)はステップS38の動作が繰り返される。
第3センサ115が用紙PAを検出しなくなったら(ステップS38:YES)、つまり用紙PAの後端部が第3センサ115による用紙PAの検知箇所を通過したら、2つの電磁クラッチ140,141の作動が停止する(ステップS39)。するとシャフト130と電磁クラッチ140との結合が解除されてクラッチギヤ132が空転し、伝達ギヤ119から分離ローラ106への回転力の伝達が遮断される。同時にモータ120から搬送ローラ108への回転力の伝達も遮断される。
その後、制御部151が、用紙PAの次の給紙を指令する信号の有無を判断し(ステップS40)、制御部151に次の給紙の旨の指令信号が入力されている場合には(ステップS40:YES)、上記ステップS22〜ステップS39までの各部材の動作が繰り返され、制御部151に次の給紙の旨の指令信号が入力されていない場合には(ステップS40:NO)、モータ120の回転が停止して(ステップS41)給紙装置100における給紙動作が終了する。
ステップS4の判断において、温度センサTSにより検知された温度Tが第1所定T1よりも低い場合、ステップ70において、制御部151は検知温度が第2所定温度T2以下か否かを判断する。
第2所定温度T2以下の場合には(ステップ70のYES)、第1所定時間を短い時間に変更し(ステップS71)、第2所定温度よりも高い場合には(ステップ70のNO)、第1所定時間を標準の設定時間として変更しない。
次に、ステップS23の動作で第2センサ114が用紙PAの先端部を検知してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間が第1所定時間内に収まっているか否かを制御部151が判断する(ステップS25)。
第1センサ113による検知時間が第1所定時間内におさまってる場合、計時を開始し(ステップS31)、制御部151は計時を開始してから第2所定時間が経過したか否かを判断し(ステップS32)、第2所定時間が経過していないと判定したら(ステップS32:NO)、ステップS31の処理で計時を開始してから所定の時間が経過するまでステップS32の処理を繰り返す。
ステップS31の処理で計時を開始してから第2所定時間が経過したと制御部151が判定したら(ステップS32:YES)、電磁クラッチ124の作動が停止する(ステップS33)。するとシャフト123と電磁クラッチ124との結合が解除されてクラッチギヤ125が空転し、伝達ギヤ122から送り出しローラ104及び給紙ローラ105への回転力の伝達が遮断される。
その後、制御部151は用紙PAの給紙の再開を指令する信号が入力されたか否かを判断し(ステップS34)、その指令信号が入力されていないと判定したら(ステップS34:NO)、用紙PAの給紙の再開を指令する信号が入力されるまでステップS34の処理を繰り返す。用紙PAの給紙の再開を指令する信号が入力されたと制御部151が判定したら(ステップS34:YES)、電磁クラッチ141が作動して搬送ローラ108が図2において反時計回り方向に回転する(ステップS36)。
一方、第2センサ114が用紙PAの先端部を検知してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間が第1所定時間内に収まっていなかったら(ステップS25:NO)、つまり第1所定時間が経過しても第1センサ113が用紙PAの先端部を検知しなかったら、電磁クラッチ140の作動が停止する(ステップS27)。するとシャフト130と電磁クラッチ140との結合が解除されてクラッチギヤ132が空転し、伝達ギヤ119から分離ローラ106への回転力の伝達が遮断される。
この状態においては分離ローラ106の回転が停止して給紙ローラ105が回転し続けるため、給紙トレイ40から送り出された用紙PAが1枚であっても複数枚であっても、その用紙PAは分離ローラ106による作用を受けずに給紙ローラ105の作用だけを受けて搬送ローラ108側に搬送される。
その後、ステップS23で第2センサ114が用紙PAの先端部を検知してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間がエラー時間である第3所定時間内に収まっているか否かを制御部151が判断する(ステップS28)。ここでの「エラー時間」というのは、用紙PAの搬送不良が発生しているか否かを判断するための指標であって、上記第1所定時間よりも長く設定されており、上記第1所定時間と同様に制御手段150内の不揮発メモリに予め設定された値として格納されている。
第2センサ114が用紙PAの先端部を検知してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間が第3所定時間であるエラー時間内に収まっていたら(ステップS28:YES)、つまりエラー時間内に第1センサ113が用紙PAの先端部を検知したら、電磁クラッチ140が再度作動して分離ローラ106に給紙ローラ105の給紙方向とは逆方向に用紙PAを搬送するように回転力が伝達される(ステップS29)。
この状態においてはステップS24の動作後と同様に、給紙トレイ40から1枚の用紙PAが送り出されている場合には、給紙ローラ105が用紙PAを搬送ローラ108側に搬送し続け、分離ローラ106は用紙PAに接触しながら給紙ローラ105に連れ回されるようにして回転する。また、給紙トレイ40から複数枚の用紙PAが互いに重なった状態で送り出されている場合には、給紙ローラ105が最も上に配置された用紙PAを搬送ローラ108側に搬送し続け、分離ローラ106は複数枚の用紙PAのなかで下側に重なった用紙PAを給紙トレイ40側に送り戻す。その後ステップS6の動作がおこなわれる。
第2センサ114が用紙PAの先端部を検知してから第1センサ113がその用紙PAの先端部を検知するまでの時間がエラー時間内に収まっていなかったら(ステップS28:NO)、つまりエラー時間が経過しても第1センサ113が用紙PAの先端部を検知しなかったら、制御部151が用紙PAの搬送不良を通知する処理をおこなう(ステップS30)。本実施形態では、給紙装置100の各部材の機械的な動作が停止する。ただし、給紙装置100に設けられた表示パネル(図示略)にメッセージが表示されたり、給紙装置100に設けられたブザー(図示略)が自動的に鳴ったりするようにしてもよい。
そして、ステップS29の動作の後は、上記したステップS31からステップS36までの動作がおこなわれる。ステップS36の動作で搬送ローラ108が回転すると、給紙ローラ105及び分離ローラ106の圧接部を通過した用紙PAの先端部が搬送ローラ108と従動ローラ109とのあいだに挟み込まれ、その用紙PAが搬送ローラ108の回転に伴い搬送ローラ108及び従動ローラ109の接触部を通過しながら給紙装置100の外部側に搬送される。
その後、制御部151が第3センサ115による用紙PAの有無を判断し(ステップS37)、第3センサ115が用紙PAを検知しない場合(ステップS37:NO)には第3センサ115が用紙PAを検知するまでステップS37の動作が繰り返される。第3センサ115が用紙PAの先端部を検知したら(ステップS37:YES)、制御部151が再度第3センサ115による用紙PAの有無を判断する(ステップS38)。第3センサ115が用紙PAを検出しているあいだ(ステップS38:NO)はステップS38の動作が繰り返される。
第3センサ115が用紙PAを検出しなくなったら(ステップS38:YES)、つまり用紙PAの後端部が第3センサ115による用紙PAの検知箇所を通過したら、2つの電磁クラッチ140,141の作動が停止する(ステップS39)。するとシャフト130と電磁クラッチ140との結合が解除されてクラッチギヤ132が空転し、伝達ギヤ119から分離ローラ106への回転力の伝達が遮断される。同時にモータ120から搬送ローラ108への回転力の伝達も遮断される。
その後、制御部151が、用紙PAの次の給紙を指令する信号の有無を判断し(ステップS40)、制御部151に次の給紙の旨の指令信号が入力されている場合には(ステップS40:YES)、上記ステップS22〜ステップS39までの各部材の動作が繰り返され、制御部151に次の給紙の旨の指令信号が入力されていない場合には(ステップS40:NO)、モータ120の回転が停止して(ステップS41)給紙装置100における給紙動作が終了する。
ステップS27からS29までの処理は分離ローラ106による戻し作用を解除して、用紙を搬送するものであり、これによりノーフィードが良好に防止される。
ステップS70、S71における第1所定時間の変更は、ステップS27〜S29を実行するか否かを判断し、ステップS27〜S29を実行する時期を低温において早期に設定するものであり、これによりノーフィードを防止している。
ステップS70の判断に用いられる第2所定温度は、たとえば、19℃であり、ステップS71では、標準の第1所定時間が、たとえば、85msに設定され、低温時に変更される第1所定時間が、例えば、80msに設定される。