JP6028753B2 - 画像形成装置 - Google Patents
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Description
定着部の消費電力を削減するための技術としてはたとえば次のものが知られている。「定着処理の不要な動作モードにおいて、または定着処理の不要なシートを通紙する間、定着部に昇温動作と温調動作とをいずれも停止させる。」これらの動作が停止している間、定着部材の温度は降下するので、この技術においては、定着部に昇温動作を再開させる時期を正確に決めることが重要である。昇温動作の再開が遅れれば、次に定着処理を行うべき時刻が到来しても定着部材の温度が、その定着処理中に維持されるべき値まで到達しない。その結果、トナー像の熱定着が不完全になれば、その像が擦れる等、印刷品質が低下する危険性が生じる。
これらの技術では、昇温曲線の推定が、実際の印刷動作に先立って行われる実験または測定に基づいている。具体的には、昇温曲線の推定される形状、特に昇温曲線を直線で近似する場合には、その直線の傾きである昇温速度の予測値が実験から求められる。特許文献2にはまた、画像形成装置の起動時に定着部材の昇温速度を測定してその測定値を予測値に設定する技術も開示されている。
不完全な熱定着に起因する印刷品質の低下を防ぎつつ、定着部の消費電力を更に削減するには、たとえば昇温曲線の推定の正確性を更に向上させることにより、昇温動作を更に的確な時期に再開させればよい。
本発明の目的は上記の課題を解決することであり、特に、実際の印刷時における定着部の状態を定着部材の昇温速度の予測に反映させてその予測の正確性を向上させることにより、不完全な熱定着に起因する印刷品質の低下を防ぎ、かつ、定着部の昇温動作に要する消費電力を更に削減することのできる画像形成装置を提供することにある。
この画像形成装置は、昇温動作に必要な電力を定着部へ供給する電源部、を更に備えていてもよい。この場合、指示部は、定着部に対して昇温動作の停止を指示する際、電源部に定着部への電力供給を遮断させる。
[画像形成装置の構造の概略]
図1は、本発明の実施形態による画像形成装置の構造を示す模式的な正面図である。図1にはこの画像形成装置100の内部の要素が、あたかも筐体の前面を透かして見えているように描かれている。
図1を参照するに、給送部10は、収容トレイ11、繰り出しローラー12、搬送ローラー13、およびタイミングローラー14を備えている。収容トレイ11は画像形成装置100の下部に内蔵され、複数枚のシートSHTを収容可能である。シートSHTの材質はたとえば紙である。繰り出しローラー12はそれらのシートSHTのうち、最も上に位置するシートSH1を搬送ローラー13へ向けて繰り出す。そのシートSH1は更に、その搬送ローラー13によってタイミングローラー14へ搬送される。タイミングローラー14はその搬送の開始時点では一般に停止しており、制御部50からの駆動信号に応じて回転を開始する。それにより、搬送ローラー13から送られたシートSH2は、その駆動信号が示すタイミングで、タイミングローラー14から作像部20へ送り出される。
図1を参照するに、作像部20は、4つの作像ユニット21Y、21M、21C、21K、4本の1次転写ローラー22Y、22M、22C、22K、中間転写ベルト23、および2次転写ローラー24を備えている。作像ユニット21Y、…、21Kは水平方向に沿って所定の間隔で配置されている。1次転写ローラー22Y、…、22Kはそれぞれ、作像ユニット21Y、…、21Kの1つと垂直方向で対向するように配置されている。中間転写ベルト23は2本のローラー23L、23Rに掛け渡されて、それらの回転と共に回転する。中間転写ベルト23のうち、水平方向に張られている部分は作像ユニット21Y、…、21Kと1次転写ローラー22Y、…、22Kとの間を通る。中間転写ベルト23が回転すると、その表面の各部が1次転写ローラー22Y、…、22Kに順番に接触する。2次転写ローラー24は、中間転写ベルト23が掛け渡された2本のローラーの一方23Rと平行に設置され、そのローラ23Rとの間に中間転写ベルト23を挟んでいる。中間転写ベルト23と2次転写ローラー24との接触部、すなわちニップに、タイミングローラー14から送り出されたシートSH2が通紙される。
定着部30は、定着ローラー31、加圧ローラー32、温度センサー34、および環境温度測定部(図1には示されていない。)を含む。定着ローラー31と加圧ローラー32とは互いに平行に配置されて接触している。それらの間の接触部、すなわち定着ニップには、作像部20から送り出されたシートSH2が通紙される。温度センサー34は定着ローラー31の軸方向の中央部の近傍に設置され、環境温度測定部は定着部30の内部または近傍に設置されている。
[制御部]
図2は、画像形成装置100の制御系統の構成を示すブロック図である。図2を参照するに、この系統では画像形成装置100内の機能部10、20、…、80がバス90を通して互いに通信可能に接続されている。制御部50はこの系統の主要部であり、CPU51、RAM52、およびROM53を含む。
[制御部による定着ローラーの温度制御]
−温度制御に利用される機能部−
図2を更に参照するに、制御部50は、降温速度算定部511、昇温速度予測部512、指示部513、および画像解析部514を含む。これらの機能部511−514は、CPU51が定着ローラー31の温度制御用のファームウェアを実行することにより、実現される。
(3)画像解析部514は続いて、モノクロのトナー像しか形成されないシートについて、それらのトナー像がイメージを含むか否かを判定する。トナー像がイメージを含む場合、画像解析部514は、そのシートに使用されるべきトナー量を「モノクロイメージのトナー像の作成に必要な値」と判定する。
図3は、定着ローラー31の温度の経時的変化の一例を示すグラフである。図3を参照するに、3つの期間PN-1、PN、PN+1のそれぞれでは、第(N−1)シート、第Nシート、第(N+1)シートが順に定着部30へ通紙される。文字Nは2以上の整数を表す。
図3では、次の場合が想定されている。「第Nシートは、その直前、直後に位置する第(N−1)シート、第(N+1)シートとは異なり、実質上白紙のまま出力される。」この場合、画像解析部514によって作成されるトナー量情報が第Nシートについて閾値未満のトナー量を示す。したがって、指示部513は、第(N−1)シート、第(N+1)シートについては目標値TN-1、TN+1を決定する一方、第Nシートについては目標値を決定しない。
昇温速度予測部512は昇温速度を予測するとき、まずROM53から降温速度と昇温速度との各基準値を読み出す。これらの基準値は、実際の印刷動作に先立って行われる実験または測定から、材質、サイズ、厚み、秤量等のシートの属性、画像形成装置100の動作モード、および環境温度等、両速度の依存するパラメータの様々な値に対して決定されている。ROM53に保存されたテーブルには、これらの基準値がパラメータの値の組み合わせ別に規定されている。
図4の(a)を参照するに、シートの種類は、その秤量が90g/m2未満である「普通紙」と、90g/m2以上である「厚紙」とに二分されている。環境温度、すなわち定着部30の内部または周囲の温度は、10℃以上である「通常」と、10℃未満である「低温」とに二分されている。この場合、シートの種類と環境温度との間には、「普通紙」と「通常」等、全部で4通りの値の組み合わせが存在する。図4の(a)にはこれらの組み合わせのそれぞれに対して昇温速度の基準値ΔTU Rが、「高速」、「中速」、「低速」の3種類のいずれかに設定されている。各種類の具体的な数値は実験によって決定され、たとえば数℃/秒〜十数℃/秒程度である。たとえば、「普通紙」と「通常」との組み合わせに対しては昇温速度の基準値ΔTU Rが最大値、「高速」に設定され、「厚紙」と「低温」との組み合わせに対しては昇温速度の基準値ΔTU Rが最小値、「低速」に設定されている。これらは、秤量の小さいシートほど熱容量が小さいので定着ローラー31から熱を奪いにくいこと、および環境温度が高いほど定着ローラー31からは熱が逃げにくいことから予想されるとおりである。
図4の(b)は、降温速度の算定値ΔTDと昇温速度の予測値ΔTUとの間の関係を模式的に示すグラフである。図4の(b)を参照するに、太い実線の傾きは降温速度の基準値−ΔTD Rと昇温速度の基準値+ΔTU Rとを表す。
図5は、制御部50による定着ローラー31の温度制御のフローチャートである。この制御は、操作部40が印刷の要求を受け付けたときに開始される。なお、以下の説明では便宜上、図3に示されているように、実質的な白紙、すなわちトナー像の形成に必要なトナー量が閾値未満のシートが、2枚以上連続して出力されることがない場合を想定する。すなわち、実質上白紙のまま出力される第Nシートの直前、直後に位置する第(N−1)シート、第(N+1)シートのいずれにも、下限値以上の面積のトナー像が形成される。
ステップS504では、昇温動作等の停止時刻が到来しているので、指示部513は電源部60に対して、定着部30内のヒーター31Aへの電力供給を遮断するように指示する。それにより、定着部30の昇温動作等が停止する。その後、処理はステップS505へ進む。
ステップS506では、定着部30の昇温動作等が停止している間、降温速度算定部511が温度センサー34の測定値から定着ローラー31の降温曲線を推定し、指示部513がこの降温曲線に基づいて、定着部30に昇温動作を再開させるべきか否かを判断する。昇温動作を再開させるべき場合、昇温速度予測部512が、降温速度算定部511によって算定された降温速度から定着ローラー31の昇温速度を予測し、指示部513がこの昇温速度から定着ローラー31の昇温曲線を推定して、この昇温曲線と降温曲線との交点が示す時刻を昇温動作の再開時刻として決める。その後、処理がステップS501から繰り返される。なお、このステップの詳細については後述する。
ステップS601では、処理対象のシートの中に、目標値がまだ決定されていないものがあるか否かを指示部513が確認する。目標値が未決定のシートが存在する場合、処理はステップS602へ進み、存在しない場合、処理は図5のフローチャートへ戻り、次のステップS502へ進む。
ステップS603では、ステップS602で抽出されたシートについて作成対象のトナー像が存在し、かつ、それらの総面積が下限値を超えている。この場合、画像解析部514は、それらのトナー像がカラーであるか否かを判定する。トナー像がカラーの部分を含む場合、処理はステップS631へ進み、含まない場合、ステップS604へ進む。
ステップS605では、ステップS602で抽出されたシートについて作成対象のトナー像がすべて、モノクロの文字または図形等、イメージ以外である。この場合、画像解析部514は、トナー濃度が100%と0%との他に、それらの中間に設定された部分をそれらのトナー像が含むか否かを判定する。トナー像がそのような部分を含む場合、処理はステップS641へ進み、含まない場合、ステップS651へ進む。
ステップS701では、降温速度算定部511は温度センサー34の測定値から、定着部30の昇温動作等が停止している期間における定着ローラー31の降温曲線を推定する。降温速度算定部511は更に、「定着部30の昇温動作等が停止したままである」という仮定の下で、実質的な白紙と見なされたシートの次のシート、たとえば第(N+1)シートが定着部30に通紙され始める時刻tS(N+1)における定着ローラー31の温度TESを降温曲線から予測する。その後、処理はステップS702へ進む。なお、このステップの詳細については後述する。
ステップS703では、指示部513は、ステップS701で求められた予測値TESを、ステップS702で取得された目標値TN+1と比較する。その予測値TESがその目標値TN+1を下回る場合、処理はステップS704へ進み、下回らない場合、処理は図5のフローチャートへ戻り、ステップS501から繰り返される。
ステップS707では、定着部30に昇温動作を再開させるべき時刻tCRが到来しているので、指示部513が電源部60に対して指示を送り、定着部30内のヒーター31Aへの電力供給を再開させる。それにより、定着部30が昇温動作を再開する。その後、処理は図5のフローチャートへ戻り、ステップS501から繰り返される。
ステップS801では、定着部30の昇温動作等が停止している間、降温速度算定部511は温度センサー34から定着ローラー31の温度の測定値を、少なくとも2回繰り返し受信する。その後、処理はステップS802へ進む。
本発明の実施形態による画像形成装置100は、上記のとおり、定着部30の昇温動作等が停止している期間中、まず温度センサー34によって測定された定着ローラー31の実際の温度からその降温速度を算定する。画像形成装置100は次に、「降温速度の算定値と基準値との間の差が昇温速度の実際の値と基準値との間の差に比例する」という前提の下で、定着部30に昇温動作を再開させた場合における定着ローラー31の昇温速度を予測する。昇温速度のこの予測値には降温速度の実測値が反映されているので、その正確性が高い。その結果、画像形成装置100は、定着部30に昇温動作を再開させるべき時期を定着ローラー31の実際の熱的状態に合わせて的確に決定できるので、不完全な熱定着に起因する印刷品質の低下を防ぎつつ、定着部30に昇温動作の継続時間を短縮させて、その昇温動作に要する消費電力を削減することができる。
(A)画像形成装置100はカラーレーザープリンターである。画像形成装置はその他に、モノクロレーザープリンター、ファクシミリ、コピー機、複合機(MFP)等、シート上のトナー像を熱定着させるもののいずれであってもよい。
(B)給送部10が扱うシートの材質は紙である。その他に、OHPフィルムのように、その材質が樹脂であってもよい。給送部10はまた、収容トレイを複数備えていてもよく、それらに、A3、A4、A5、B4等、異なるサイズのシートを収容してもよい。給送部10は更に、両面印刷のための機構を含んでいてもよい。
(D)制御部50は操作部40にLANI/F83を通してLAN上のPCから画像データIMGを受信させる。制御部50はその他に、画像形成装置100に搭載されたスキャナー81またはカメラを利用して原稿の画像を画像データIMGに変換してもよい。制御部50は更に、メモリーI/F82の含む、USBポート、メモリカードスロット等の映像入力端子を通して外部の電子機器から画像データIMGを取得してもよい。
(H)図4の(a)に示されたテーブルでは、シートの秤量が90g/m2未満であれば昇温速度の基準値ΔTU Rが「高速」または「中速」に設定され、90g/m2以上であれば「中速」または「低速」に設定されている。その他に、昇温速度予測部512に昇温速度の基準値ΔTU Rを、「定着部30へ通紙されるシートが定着ローラー31から奪う熱量はそのシートの秤量Wに比例する」ことを前提とする次式から算出させてもよい。ΔTU R=T0−k×W。ここで、定数T0と比例係数kとはいずれも正値であり、実験で決定される。
図9では図3とは異なり、次の場合が想定されている。「第Nシートから第(N+M−1)シートまでのM枚のシートは、それらの直前に位置する第(N−1)シートとは異なり、実質上白紙のまま出力される。さらに、定着ローラー31の温度制御の目標値をシートごとに決定する最初の時点では、第(N+M)シート以降のシートについてトナー量情報がまだ作成されていない。」この場合、トナー量情報は第Nシート−第(N+M−1)シートについては閾値未満のトナー量を示す。したがって、指示部513は、第(N−1)シートについては目標値TN-1を決定する一方、第Nシート−第(N+M−1)シートについては目標値を決定しない。指示部513は更に、第(N+M)シート以降のシートについては必要なトナー量が不明であるので、目標値を上限値TMAXに決定する。
定着部30の昇温動作等が停止している間、降温速度算定部511は温度センサー34の測定値から定着ローラー31の降温速度−ΔTDを算定し、この算定値−ΔTDを利用して時刻tE(N−1)以降における定着ローラー31の降温曲線の直線近似TDLを推定する。
制御部50による定着ローラー31の温度制御のフローチャートは、図5−8に示されているものとほぼ同様であり、定着部30に昇温動作を再開させるか否かを判断するステップS506の詳細が、図7に示されているものとは部分的に異なる。したがって、以下ではステップS506の相違点のみを説明し、その他の同様な点については図5−8の説明を援用する。
ステップS1001では、降温速度算定部511は温度センサー34の測定値から、定着部30の昇温動作等が停止している期間における定着ローラー31の降温曲線を推定する。降温速度算定部511は更に、「定着部30の昇温動作等が停止したままである」という仮定の下で、実質的な白紙と見なされたM枚のシートに続いて第(N+M)シートが定着部30に通紙され始める時刻tS(N+M)における定着ローラー31の温度TESを降温曲線から予測する。その後、処理はステップS1002へ進む。
ステップS1003では、指示部513が整数値変数iを“1”増やす。i=i+1。その後、処理はステップS1004へ進む。
ステップS1006では、第i=(N+M)シートについて、トナー量情報が有限のトナー量を示すので、指示部513が定着ローラー31の温度制御の目標値を、その有限のトナー量に適合する値TN+Mに決定する。その後、処理はステップS1007へ進む。
ステップS1009では、トナー量情報が第i=(N+M)シートについていずれのトナー量をも示さないので、指示部513が定着ローラー31の温度制御の目標値を上限値TMAXに決定する。その後、処理はステップS1101へ進む。
ステップS1103では、定着部30に昇温動作を再開させるべき時刻tCRが到来したか否かを指示部513が監視し、その時刻tCRが到来するまで処理を停止させる。その時刻tCRが到来していれば、処理がステップS1104へ進む。
ステップS1105では、フラグ変数FLGが“1”であるので、トナー量情報が第i=(N+M)シートについてはいずれのトナー量をも示さない状態のままである。この場合、画像解析部514は、ROM53に格納された画像データIMG等から、第i=(N+M)シートについての印刷要求の有無を確認する。その要求が有れば処理はステップS1004から繰り返され、無ければ処理は終了し、有無がまだ確認できなければ処理はステップS1106へ進む。
(K)図3の例では、指示部513が、第Nシートについては定着ローラー31の温度制御の目標値を決定しなかったので、すなわち第Nシートを実質的な白紙と見なしたので、その直前の第(N−1)シートに対する定着処理の終了時刻tE(N−1)において定着部30に対して昇温動作等の停止を指示する。指示部513は更に、連続する2枚のシートのうち、最初のシートについての目標値よりも、次のシートについての目標値が許容差以上低い場合、最初のシートに対する定着処理の終了時刻において定着部30に対して昇温動作等の停止を指示してもよい。
図12では図3とは異なり、次の場合が想定されている。「第(N−1)シート、第Nシート、第(N+1)シートのいずれの上にも、下限値以上の面積のトナー像が形成される。しかし、第Nシート上のトナー像は他のシート上のものよりも、その形成に必要なトナー量が少ない。」この場合、第Nシートについて決定される目標値TNは、第(N−1)シート、第(N+1)シートのいずれについてのものTN-1、TN+1よりも低く、いずれの差も許容差、たとえば20℃以上である。
定着部30の昇温動作等が停止している間、降温速度算定部511は温度センサー34の測定値から定着ローラー31の降温速度−ΔTDを算定し、この算定値−ΔTDを利用して時刻tE(N−1)以降における定着ローラー31の降温曲線の直線近似TDLを推定する。この降温曲線TDLからは次のことが推測される。「仮に定着部30の昇温動作等が停止したままであれば、第(N+1)シートに対する定着処理の開始時刻tS(N+1)には定着ローラー31の温度が第(N+1)シートについての目標値TN+1を下回る。」指示部513はこの推測に基づいて、昇温速度予測部512に定着ローラー31の昇温速度を予測させて、この予測値を傾きとする昇温曲線の直線近似TULを推定し、この直線TULと降温曲線TDLとの交点CRの座標が示す時刻tCRまたは温度TCRを求める。
この場合、図12に示されているように、第1時刻t1が、降温曲線と昇温曲線との交点の座標の示す時刻tCR(以下、「第2時刻」という。)よりも前であれば、または第1温度TNが、その交点の座標の示す温度TCR(以下、「第2温度」という。)よりも高ければ、指示部513は第1時刻t1において定着部30に対して温調動作の開始を指示する。それにより、第1時刻t1以降、定着部30の温度が第1温度TNに維持される。指示部513は更に、昇温曲線TUL上で第1温度、すなわち第Nシートについての目標値TNと対を成す時刻t3(以下、「第3時刻」という。)において定着部30に対して昇温動作の再開を指示する。一方、第1時刻t1が第2時刻tCR以後であれば、または第1温度TNが第2温度TCR以下であれば、指示部513は第2時刻tCRにおいて定着部30に対して昇温動作の再開を指示する。
−温度制御のフローチャート−
制御部50による定着ローラー31の温度制御のフローチャートは、図5−8に示されているものとほぼ同様であり、定着部30に昇温動作を再開させるか否かを判断するステップS506の詳細が、図7に示されているものとは部分的に異なる。したがって、以下ではステップS506の相違点のみを説明し、その他の同様な点については図5−8の説明を援用する。
ステップS1301では、降温速度算定部511は温度センサー34の測定値から、定着部30の昇温動作等が停止している期間における定着ローラー31の降温曲線を推定する。降温速度算定部511は更に、「定着部30の昇温動作等が停止したままである」という仮定の下で、第(N+1)シートが定着部30に通紙され始める時刻tS(N+1)における定着ローラー31の温度TESを降温曲線から予測する。その後、処理はステップS1302へ進む。
ステップS1303では、指示部513は、第(N+1)シートが定着部30に通紙され始める時刻tS(N+1)における定着ローラー31の温度の予測値TESを、そのシートについての目標値TN+1と比較する。その予測値TESがその目標値TN+1を下回る場合、処理はステップS1304へ進み、下回らない場合、処理は図5のフローチャートへ戻り、ステップS501から繰り返される。
ステップS1306では、指示部513は降温曲線から、定着ローラー31の温度が第Nシートについての目標値TNまで降下する時刻、すなわち第1時刻t1を求め、交点の座標の示す第2時刻tCRと比較する。第1時刻t1が第2時刻tCR以後であれば、処理はステップS1307へ進み、第2時刻tCRよりも前であればステップS1401へ進む。
ステップS1308では、指示部513が電源部60に対して指示を送って、定着部30内のヒーター31Aへの電力供給を再開させる。それにより、定着部30が昇温動作を再開する。その後、処理は図5のフローチャートへ戻り、ステップS501から繰り返される。
ステップS1402では、指示部513が電源部60に対して指示を送って、定着部30内のヒーター31Aへの電力供給を再開させる。それにより、定着部30が温調動作を開始して、第1時刻t1以降、定着ローラー31の温度を第1温度、すなわち第Nシートについての目標値TNに維持する。その後、処理はステップS1403へ進む。
10 給送部
20 作像部
30 定着部
31 定着ローラー
32 加圧ローラー
34 温度センサー
50 制御部
511 降温速度算定部
512 昇温速度予測部
513 指示部
514 画像解析部
70 環境温度測定部
TN-1 第(N−1)シートについて決定された定着部材の温度制御の目標値
TN+1 第(N+1)シートについて決定された定着部材の温度制御の目標値
TDL 定着部の昇温動作が停止している期間における定着部材の降温曲線
TUL 定着部の昇温動作が再開された時点以降における定着部材の昇温曲線
ΔTD 定着部材の降温速度の算定値
ΔTD R 降温速度の基準値
ΔTU 定着部材の昇温速度の予測値
ΔTU R 昇温速度の基準値
CR 昇温曲線と降温曲線との交点
Claims (14)
- 複数枚のシートを1枚ずつ給送する給送部と、
前記給送部によって給送される各シートの上にトナー像を、画像データに基づいて形成する作像部と、
前記作像部から通紙される各シートに接触して加熱する定着部材を含み、前記作像部によって各シートの上に形成されたトナー像を、前記定着部材で熱定着させる定着部と、
前記定着部材の温度を測定する測定部と、
前記定着部に対しては昇温動作の開始と停止とを指示し、前記作像部に対しては前記画像データを提供する制御部と、
を備えた画像形成装置であり、
前記制御部は、
前記定着部の昇温動作が停止したことによって前記定着部材の温度が降下している期間中、前記測定部による測定値から前記定着部材の降温速度を算定する降温速度算定部と、
前記降温速度算定部によって算定された降温速度から、前記定着部に昇温動作を再開させた場合における前記定着部材の昇温速度を予測する昇温速度予測部と、
前記昇温速度予測部によって予測された昇温速度を利用して、前記定着部がトナー像を熱定着させる時点には前記定着部材の温度が、当該時点で維持されるべき目標値まで到達しているという条件の下で、前記定着部に昇温動作を再開させるべき時刻または前記定着部材の温度を決定し、決定された時刻に、または、決定された温度まで前記測定部による測定値が降下したときに、前記定着部に対して昇温動作の再開を指示する指示部と、
を有し、
前記降温速度算定部は、算定された降温速度を利用して、前記定着部の昇温動作が停止したことによって前記定着部材の温度が降下している期間での当該温度の経時的変化、を表す降温曲線を推定し、
前記指示部は、前記昇温速度予測部によって予測された昇温速度を利用して、前記条件が満たされたときに前記定着部の昇温動作の再開時刻と当該時刻における前記定着部材の温度との間に成立する関係、を表す昇温曲線を推定し、前記降温曲線と前記昇温曲線との交点の座標を利用して、前記定着部に昇温動作を再開させるべき時刻または前記定着部材の温度を決定し、
前記定着部の昇温動作が停止している期間中、1枚のシートが前記定着部に通紙され、かつ、前記定着部が前記1枚のシートに対する定着処理を終える時刻よりも前の第1時刻において前記定着部材の温度が、当該定着処理の際に維持されるべき第1温度まで降下することを前記降温曲線が示す場合、
前記第1時刻が、前記降温曲線と前記昇温曲線との交点の座標の示す第2時刻よりも前であれば、または、前記第1温度が、前記交点の座標の示す第2温度よりも高ければ、前記指示部は前記第1時刻において前記定着部に対して温調動作の開始を指示し、
前記第1時刻が前記第2時刻以後であれば、または、前記第1温度が前記第2温度以下であれば、前記指示部は前記第2時刻において前記定着部に対して昇温動作の再開を指示する
ことを特徴とする画像形成装置。 - 前記指示部は、前記定着部の昇温動作が停止したままであるという仮定の下で、前記定着部がトナー像を熱定着させる時点での前記定着部材の温度を前記降温曲線から予測し、予測された温度が、当該時点で維持されるべき目標値を下回れば、前記定着部に昇温動作を再開させるべき時刻または前記定着部材の温度を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。 - 前記昇温速度予測部は、前記降温速度算定部によって算定された降温速度が小さいほど昇温速度を大きく予測する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。 - 前記昇温速度予測部は、昇温速度の実際の値と昇温速度の基準値との間の差が、前記降温速度算定部によって算定された降温速度の値と降温速度の基準値との間の差に比例することを前提とする演算を、昇温速度の予想に利用する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。 - 前記制御部は、
前記画像データを解析して、前記作像部が前記画像データに基づいてトナー像を形成するのに必要なトナーの量、をシートごとに示すトナー量情報を作成する画像解析部、
を更に有し、
前記指示部は、前記トナー量情報に基づいて、前記定着部がトナー像を熱定着させる時点で前記定着部材の温度が維持されるべき目標値を、カラーのトナー像が形成されるシート、モノクロイメージのトナー像が形成されるシート、モノクロ2値のトナー像が形成されるシートの順に高く決定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記制御部は、
前記画像データを解析して、前記作像部が前記画像データに基づいてトナー像を形成するのに必要なトナーの量、をシートごとに示すトナー量情報を作成する画像解析部、
を更に有し、
前記指示部は、前記トナー量情報に基づいて、前記定着部がトナー像を熱定着させる時点で前記定着部材の温度が維持されるべき目標値を、トナー像の形成に必要なトナー量が多いシートほど高く決定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記指示部は、前記トナー量情報に基づいて、前記複数枚のシートの中から、トナー像の形成に必要なトナー量が閾値以上であるシートから、前記閾値未満であるシートへと移行する境目を検出し、前記境目の直前に位置するシートに対して前記定着部が定着処理を終えた時点において前記定着部に対して昇温動作の停止を指示する
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の画像形成装置。 - 前記指示部は、前記複数枚のシートの中で連続する2枚のシートのうち、最初のシートについて決定された目標値よりも、次のシートについて決定された目標値が許容差以上低い場合、前記定着部が前記最初のシートに対して定着処理を終えた時点において前記定着部に対して昇温動作の停止を指示する
ことを特徴とする請求項5から請求項7までのいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記指示部は、前記複数枚のシートのうち、前記トナー量情報にトナー量が規定されてていないという理由で目標値をまだ決定していないシートについては、前記トナー量情報が更新されるまで、目標値を前記定着部材の温度の許容上限値に決定する
ことを特徴とする請求項5から請求項8までのいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記定着部の内部または周囲の温度を測定する環境温度測定部、
を更に備え、
前記昇温速度予測部は昇温速度の予測に、前記環境温度測定部による測定値を更に利用する
ことを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記昇温速度予測部は昇温速度の予測に、前記定着部に通紙されるシートの属性を更に利用する
ことを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記定着部は、
通紙されるシートを加圧して前記定着部材へ押し当てる加圧部と、
前記加圧部の温度を検出する検出部と、
を有し、
前記昇温速度予測部は昇温速度の予測に、前記検出部による検出値を更に利用する
ことを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 昇温動作に必要な電力を前記定着部へ供給する電源部、を更に備え、
前記指示部は、前記定着部に対して昇温動作の停止を指示する際、前記電源部に前記定着部への電力供給を遮断させる
ことを特徴とする請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の画像形成装置。 - 前記定着部材は、前記定着部内を移動するシートに接触する第1位置と、接触しない第2位置との間で変位可能であり、
前記定着部は、定着処理の不要な動作モードにおいて、または定着処理の不要なシートを通紙する間に、前記指示部から昇温動作の停止を指示された場合、前記定着部材を前記第2位置へ移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の画像形成装置。
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