JP3967822B2 - 反射防止膜およびそれを用いた画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低屈折率層を有する反射防止膜およびそれを用いた画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
反射防止膜は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置に設けられている。眼鏡やカメラのレンズにも反射防止膜が設けられている。
反射防止膜としては、金属酸化物の透明薄膜を積層させた多層膜が従来から普通に用いられている。複数の透明薄膜を用いるのは、様々な波長の光の反射を防止するためである。金属酸化物の透明薄膜は、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法により形成されている。金属酸化物の透明薄膜は、反射防止膜として優れた光学的性質を有しているが、蒸着による形成方法は、生産性が低く大量生産に適していない。
【0003】
蒸着法に代えて、無機微粒子の塗布により反射防止膜を形成する方法が提案されている。
特公昭60−59250号公報は、微細空孔と微粒子状無機物とを有する反射防止層を開示している。反射防止層は、塗布により形成される。微細空孔は、層の塗布後に活性化ガス処理を行ない、ガスが層から離脱することによって形成される。
特開昭59−50401号公報は、支持体、高屈折率層および低屈折率層の順に積層した反射防止膜を開示している。同公報は、支持体と高屈折率層の間に中屈折率層を設けた反射防止膜も開示している。低屈折率層は、ポリマーまたは無機微粒子の塗布により形成されている。
【0004】
特開平2−245702号公報は、二種類以上の超微粒子(例えば、MgF2 とSiO2 )を混在させて、膜厚方向にその混合比を変化させた反射防止膜を開示している。混合比を変化させることにより屈折率を変化させ、上記特開昭59−50401号公報に記載されている高屈折率層と低屈折率層を設けた反射防止膜と同様の光学的性質を得ている。超微粒子は、エチルシリケートの熱分解で生じたSiO2 により接着している。エチルシリケートの熱分解では、エチル部分の燃焼によって、二酸化炭素と水蒸気も発生する。特開平2−245702号公報の第1図に示されているように、二酸化炭素と水蒸気が層から離脱することにより、超微粒子の間に間隙が生じている。
特開平5−13021号公報は、上記特開平2−245702号公報記載の反射防止膜に存在する超微粒子間隙をバインダーで充填することを開示している。
特開平7−48527号公報は、多孔質シリカよりなる無機微粉末とバインダーとを含有する反射防止膜を開示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、無機微粒子の塗布により形成する低屈折率層について、研究を進めた。本発明者の研究により、無機微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより微粒子間にミクロボイドを形成すると、層の屈折率が低下することが判明した。微粒子間にミクロボイドを形成することで、屈折率が非常に低い低屈折率層が得られる。特開平2−245702号公報に記載の反射防止膜では、積み重なった超微粒子の間に間隙が生じている。ただし、同公報は、間隙を第1図に示唆しているだけであって、間隙の光学的機能については全く記載していない。また、空隙を有する低屈折率層は、強度が弱いとの問題がある。低屈折率層は、画像表示装置の表示面やレンズの外側表面に配置される。そのため、低屈折率層には一定の強度が要求されている。特開平2−245702号公報に記載の反射防止膜は、実質的に無機化合物のみで構成されており、硬いが非常に脆い膜になっている。
特開平5−13021号公報に記載されているように、微粒子間の空隙をバインダーで充填すれば、強度の問題は解消できる。しかし、本発明者の研究によれば、微粒子間の空隙をバインダーで充填すると、層の屈折率を低下させる間隙の光学的機能が失われる。
【0006】
本発明の目的は、大量生産に適した反射防止膜を提供することである。
また、本発明の目的は、屈折率が非常に低い低屈折率層を有する反射防止膜を提供することでもある。
さらに、本発明の目的は、強度が優れた低屈折率層を有する反射防止膜を提供することでもある。
さらにまた、本発明の目的は、有効な手段で反射が防止された画像表示装置を提供することでもある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記(1)〜(8)の反射防止膜および下記(9)の画像表示装置により達成された。
(1)平均粒径が0.5乃至200nmの無機微粒子を50乃至95重量%およびポリマーを5乃至50重量%含み、該無機微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより微粒子間にミクロボイドが形成されており、該無機微粒子が分子内に二重結合を有するシランカップリング剤により表面処理され、さらに、該ポリマーがエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得られると共に、シランカップリング剤の二重結合の反応によりシランカップリング剤とポリマーとが結合している低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
(2)低屈折率層が、3乃至50体積%の空隙率を有する(1)に記載の反射防止膜。
(3)低屈折率層が、1.20乃至1.55の屈折率を有する(1)に記載の反射防止膜。
(4)上記ポリマーが無機微粒子の周囲に形成されているシェルポリマーである(1)に記載の反射防止膜。
(5)ミクロボイドが、無機微粒子およびポリマーにより閉じている(1)に記載の反射防止膜。
(6)上記ポリマーが無機微粒子間のバインダーポリマーである(1)に記載の反射防止膜。
(7)モノマーが二以上のエチレン性不飽和基を有する(6)に記載の反射防止膜。
(8)シランカップリング剤が前記式(VIIa)または(VIIb)で表される(1)に記載の反射防止膜:
[式中、R11およびR15は、それぞれ独立に、水素原子またはメチルであり、R16は、炭素原子数が1乃至10のアルキル基、炭素原子数が6乃至10のアリール基、炭素原子数が2乃至10のアルケニル基、炭素原子数が2乃至10のアルキニル基または炭素原子数が7乃至10のアラルキル基であり、R12、R13、R14、R17およびR18は、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至6のアルキル基または炭素原子数が2乃至6のアシル基であり、L1およびL2は二価の連結基である]。
(9)平均粒径が0.5乃至200nmの無機微粒子を50乃至95重量%およびポリマーを5乃至50重量%含み、該無機微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより微粒子間にミクロボイドが形成されており、該無機微粒子が分子内に二重結合を有するシランカップリング剤により表面処理され、さらに、該ポリマーがエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得られると共に、シランカップリング剤の二重結合の反応によりシランカップリング剤とポリマーとが結合している低屈折率層を有する反射防止膜を、表示面に配置したことを特徴とする画像表示装置。
【0008】
【発明の効果】
本発明の反射防止膜は、塗布により簡単に製造することができ、大量生産に適している。そして、無機微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより微粒子間にミクロボイドが形成されているため、屈折率が非常に低い低屈折率層が形成されている。さらに、ポリマーにより無機微粒子が接着されているため、低屈折率層の強度も優れている。ミクロボイドはポリマーにより充填されていないため、ミクロボイドの屈折率低下機能も損なわれていない。
以上のような反射防止膜を用いることで、画像表示装置の画像表示面における光の反射を有効に防止することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の反射防止膜の基本的な構成を図面を引用しながら説明する。
図1は、反射防止膜の低屈折率層の断面模式図である。図1の反射防止膜の上側が表面であり、下側に画像表示装置またはレンズがある。
図1に示すように、低屈折率層(1)は多孔質層である。低屈折率層(1)内では、平均粒径が0.5乃至200nmの無機微粒子(11)が少なくとも2個以上(図1では3個)積み重なっている。そして、無機微粒子(11)の間に、ミクロボイド(12)が形成されている。低屈折率層(1)は、さらにポリマー(13)を5乃至50重量%の量で含む。ポリマー(13)は、無機微粒子(11)を接着しているが、ミクロボイド(12)を充填していない。図1に示すように、ミクロボイド(12)は、ポリマー(13)と無機微粒子(11)により閉じている(開口ではない)ことが好ましい。
【0010】
図2は、反射防止膜の様々な層構成を示す断面模式図である。
図2の(a)に示す態様は、透明支持体(3)、ハードコート層(2)、そして低屈折率層(1)の順序の層構成を有する。
なお、ガラスのような硬い物質の表面(CRTの画像表面や眼鏡やカメラのレンズ表面)に、反射防止膜を設ける場合は、透明支持体(3)なしで、低屈折率層(1)やハードコート層(2)を直接、画像表示面あるいはレンズ表面に形成してもよい。
図2の(b)に示す態様は、透明支持体(3)、ハードコート層(2)、高屈折率層(4)、そして低屈折率層(1)の順序の層構成を有する。
(b)のように、高屈折率層(4)と低屈折率層(1)とを有する反射防止膜では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、高屈折率層が下記式(I)、低屈折率層が下記式(II)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0011】
【数1】
【0012】
式中、mは正の整数(一般に1、2または3)であり、n1は高屈折率層の屈折率であり、そして、d1は高屈折率層の層厚(nm)である。
【0013】
【数2】
【0014】
式中、nは正の奇数(一般に1)であり、n2は低屈折率層の屈折率であり、そして、d2は低屈折率層の層厚(nm)である。
図2の(c)に示す態様は、透明支持体(3)、ハードコート層(2)、中屈折率層(5)、高屈折率層(4)、そして低屈折率層(1)の順序の層構成を有する。
(c)のように、中屈折率層(5)、高屈折率層(4)と低屈折率層(1)とを有する反射防止膜では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記式(III)、高屈折率層が下記式(IV)、低屈折率層が下記式(V)をそれぞれ満足することが好ましい。
【0015】
【数3】
【0016】
式中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、n3は中屈折率層の屈折率であり、そして、d3は中屈折率層の層厚(nm)である。
【0017】
【数4】
【0018】
式中、jは正の整数(一般に1、2または3)であり、n4は高屈折率層の屈折率であり、そして、d4は高屈折率層の層厚(nm)である。
【0019】
【数5】
【0020】
式中、kは正の奇数(一般に1)であり、n5は低屈折率層の屈折率であり、そして、d5は低屈折率層の層厚(nm)である。
【0021】
[無機微粒子]
無機微粒子の平均粒径は、0.5乃至200mmである。粒子径が増大すると前方散乱が増加し、200nmを越えると散乱光に色付きが生じる。平均粒径は、1乃至100nmであることが好ましく、3乃至70nmであることがさらに好ましく、5乃至40nmの範囲であることが最も好ましい。無機微粒子の粒径は、なるべく均一(単分散)であることが好ましい。
無機微粒子は、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物または金属ハロゲン化物からなることがさらに好ましく、金属酸化物または金属フッ化物からなることが最も好ましい。金属原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。二種類の金属を含む無機化合物を用いてもよい。
特に好ましいい無機化合物は、アルカリ金属フッ化物(例、NaF、KF)、アルカリ土類金属フッ化物(例、CaF2 、MgF2 )および二酸化ケイ素(SiO2 )である。
【0022】
無機微粒子は、非晶質であることが好ましい。
無機微粒子は、ゾル−ゲル法(特開昭53−112732号、特公昭57−9051号の各公報記載)または析出法(APPLIED OPTICS、27、3356頁(1988)記載)により、分散物として直接合成することができる。また、乾燥・沈澱法で得られた粉体を、機械的に粉砕して分散物を得ることもできる。市販の無機微粒子(例えば、二酸化ケイ素ゾル)を用いてもよい。
無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)およびケトン(例、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)が好ましい。
無機微粒子の量は、低屈折率層全量の50乃至95重量%である。無機微粒子の量は、50乃至90重量%であることが好ましく、60乃至90重量%であることがさらに好ましく、70乃至90重量%であることが最も好ましい。
【0023】
[ミクロボイド]
低屈折率層では、無機微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより微粒子間にミクロボイドが形成されている。低屈折率層の空隙率は、3乃至50体積%であることが好ましく、5乃至35体積%であることがさらに好ましい。
なお、粒径が等しい(完全な単分散の)球状微粒子を最密充填すると、微粒子間に26体積%の空隙率のボイドが形成される。粒径が等しい球状微粒子を単純立方充填すると、微粒子間に48体積%の空隙率のボイドが形成される。実際の低屈折率層では、微粒子の粒径にある程度の分布が存在するため、空隙率は上記よりも低めの値となる。
空隙率(ミクロボイドの大きさ)を増加させると、低屈折率層の屈折率が低下する。本発明では、無機微粒子を積み重ねてミクロボイドを形成するため、無機微粒子の粒径を調整することで、ミクロボイドの大きさも適度の(光を散乱せず、低屈折率層の強度に問題が生じない)値に容易に調節できる。さらに、無機微粒子の粒径を均一にすることで、ミクロボイドの大きさも均一である光学的に均一な低屈折率層を得ることができる。これにより、低屈折率層は微視的にはミクロボイド含有多孔質膜であるが、光学的あるいは巨視的には均一な膜にすることができる。
【0024】
ミクロボイドを形成することにより、低屈折率層の巨視的屈折率は、低屈折率層を構成する微粒子とポリマーとの総屈折率和よりも低い値になる。層の屈折率は、層の構成要素の体積当りの屈折率の和になる。微粒子とポリマーの屈折率は1よりも大きな値であるのに対して、空気の屈折率は1.00である。そのため、ミクロボイドを形成することによって、屈折率が非常に低い低屈折率層を得ることができる。
ミクロボイドは、無機微粒子およびポリマーによって低屈折率層内で閉じていることが好ましい。閉じている空隙は、低屈折率層表面に開かれた開口と比較して、低屈折率層表面での光の散乱が少ないとの利点がある。
【0025】
[ポリマー]
低屈折率層は、5乃至50重量%の量のポリマーを含む。ポリマーは、無機微粒子を接着し、ミクロボイドを含む低屈折率層の構造を維持する機能を有する。ポリマーの使用量は、ミクロボイドを充填することなく低屈折率層の強度を維持できるように調整する。ポリマーの量は、低屈折率層の全量の10乃至30重量%であることが好ましい。
ポリマーで無機微粒子を接着するために、(1)無機微粒子の表面処理剤にポリマーを結合させ、(2)無機微粒子をコアとして、その周囲にポリマーシェルを形成するか、あるいは(3)無機微粒子間のバインダーとして、ポリマーを使用することが好ましい。
【0026】
(1)の表面処理剤に結合させるポリマーは、(2)のシェルポリマーまたは(3)のバインダーポリマーである。(2)のポリマーは、低屈折率層の塗布液の調製前に、無機微粒子の周囲に重合反応により形成することが好ましい。(3)のポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に、重合反応により形成することが好ましい。(1)〜(3)を二種類または三種類組み合わせて、実施することが好ましく、(1)と(3)の二種類の組み合わせ、または(1)〜(3)の三種類の組み合わせで実施することが特に好ましい。
(1)表面処理、(2)シェルおよび(3)バインダーについて、順次説明する。
【0027】
(1)表面処理
無機微粒子には、表面処理を実施して、ポリマーとの親和性を改善することが好ましい。表面処理は、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理と、カップリング剤を使用する化学的表面処理に分類できる。化学的表面処理のみ、または物理的表面処理と化学的表面処理の組み合わせで実施することが好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。無機微粒子が二酸化ケイ素からなる場合は、シランカップリング剤による表面処理が特に有効に実施できる。
好ましいシランカップリング剤を、下記式(VIa)および(VIb)で示す。
【0028】
【化2】
【0029】
式中、R1 、R5 およびR6 は、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至10のアルキル基、炭素原子数が6乃至10のアリール基、炭素原子数が2乃至10のアルケニル基、炭素原子数が2乃至10のアルキニル基または炭素原子数が7乃至10のアラルキル基であり、R2 、R3 、R4 、R7 およびR8 は、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至6のアルキル基または炭素原子数が2乃至6のアシル基である。
式(VIa)および式(VIb)において、R1 、R5 およびR6 は、アルキル基、アリール基、アルケニル基またはアラルキル基であることが好ましく、アルキル基、アリール基またはアルケニル基であることがさらに好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることが最も好ましい。アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基およびアラルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、グリシジル基、グリシジルオキシ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ)、メルカプト、アミノ、カルボキシル、シアノ、イソシアナトおよびアルケニルスルホニル基(例、ビニルスルホニル)が含まれる。
【0030】
式(VIa)および式(VIb)において、R2 、R3、R4 、R7 およびR8 は、アルキル基であることが好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、アルコキシ基が含まれる。
シランカップリング剤は、分子内に二重結合を有し、その二重結合の反応によりポリマーと結合させる。二重結合は、式(VIa)と式(VIb)のR1、R5 またはR6 の置換基中に存在していることが好ましい。
【0031】
特に好ましいシランカップッリング剤は、前記式 (VII a)および (VII b)で示される化合物である。
【0032】
式中、R11およびR15は、それぞれ独立に、水素原子またはメチルであり、R16は、炭素原子数が1乃至10のアルキル基、炭素原子数が6乃至10のアリール基、炭素原子数が2乃至10のアルケニル基、炭素原子数が2乃至10のアルキニル基または炭素原子数が7乃至10のアラルキル基であり、R12、R13、R14、R17およびR18は、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至6のアルキル基または炭素原子数が2乃至6のアシル基であり、L1 およびL2 は二価の連結基である。
式(VIIb)において、R16は、式(VIa)および式(VIb)のR1 、R5 およびR6 と同様の定義を有する。
式(VIIa)式(VIIb)において、R12、R13、R14、R17およびR18は、式(VIa)および式(VIb)のR2 、R3 、R4 、R7 およびR8 と同様の定義を有する。
式(VIIa)式(VIIb)において、L1 およびL2 は、アルキレン基であることが好ましく、炭素原子数が1乃至10のアルキレン基であることがさらに好ましく、炭素原子数が1乃至6のアルキレン基であることが最も好ましい。
【0033】
式(VIa)で示されるシランカップリング剤の例には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびβ−シアノエチルトリエトキシシランが含まれる。
【0034】
分子内に二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランおよびγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましく、式(VIIa)で示されるγ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランおよびγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0035】
式(VIb)で示されるシランカップリング剤の例には、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシランおよびメチルビニルジエトキシシランが含まれる。
【0036】
分子内に二重結合を有するγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシランおよびメチルビニルジエトキシシランが好ましく、式(VIIb)で示されるγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランおよびγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが特に好ましい。
【0037】
二種類以上のカップリング剤を併用してもよい。
式(VIa)および式(VIb)で示されるシランカップリング剤に加えて、他のシランカップリングを用いてもよい。他のシランカップリング剤には、オルトケイ酸のアルキルエステル(例、オルトケイ酸メチル、オルトケイ酸エチル、オルトケイ酸n−プロピル、オルトケイ酸i−プロピル、オルトケイ酸n−ブチル、オルトケイ酸sec-ブチル、オルトケイ酸t−ブチル)およびその加水分解物が含まれる。
カップリング剤による表面処理は、無機微粒子の分散物に、カップリング剤を加え、室温から60℃までの温度で、数時間から10日間分散物を放置することにより実施できる。表面処理反応を促進するため、無機酸(例、硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、オルトケイ酸、リン酸、炭酸)、有機酸(例、酢酸、ポリアクリル酸、ベンゼンスルホン酸、フェノール、ポリグルタミン酸)、またはこれらの塩(例、金属塩、アンモニウム塩)を、分散物に添加してもよい。
【0038】
(2)シェル
シェルを形成するポリマーは、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることが好ましい。フッ素原子を主鎖または側鎖に含むポリマーが好ましく、フッ素原子を側鎖に含むポリマーがさらに好ましい。ポリアクリル酸エステルまたはポリメタクリル酸エステルが好ましく、フッ素置換アルコールとポリアクリル酸またはポリメタクリル酸とのエステルが最も好ましい。
シェルポリマーの屈折率は、ポリマー中のフッ素原子の含有量の増加に伴い低下する。低屈折率層の屈折率を低下させるため、シェルポリマーは35乃至80重量%のフッ素原子を含むことが好ましく、45乃至75重量%のフッ素原子を含むことがさらに好ましい。
フッ素原子を含むポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの重合反応により合成することが好ましい。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例には、フルオロオレフィン(例、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、フッ素化ビニルエーテルおよびフッ素置換アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが含まれる。
フッ素原子を含むポリマーは、下記式(III)で示すフッ素を含む繰り返し単位を有することが特に好ましい。
【0039】
【化3】
【0040】
式中、R31は、水素原子、フッ素原子またはメチルであり、pは0または正の整数であり、nは正の整数である。
シェルを形成するポリマーは、フッ素原子を含む繰り返し単位とフッ素原子を含まない繰り返し単位からなるコポリマーであってもよい。
フッ素原子を含まない繰り返し単位は、フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの例には、オレフィン(例、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル(例、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル(例、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート)、スチレンおよびその誘導体(例、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン)、ビニルエーテル(例、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル(例、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル)、アクリルアミド(例、N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミドおよびアクリロニトリルが含まれる。
【0041】
後述する(3)のバインダーポリマーを併用する場合は、シェルポリマーに架橋性官能基を導入して、シェルポリマーとバインダーポリマーとを架橋により化学的に結合させてもよい。
シェルポリマーは、結晶性を有していてもよい。シェルポリマーのガラス転移温度(Tg)が低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、低屈折率層内のミクロボイドの維持が容易である。ただし、Tgが低屈折率層の形成時の温度よりも高いと、微粒子が融着せず、低屈折率層が連続層として形成されない(その結果、強度が低下する)場合がある。その場合は、後述する(3)のバインダーポリマーを併用し、バインダーポリマーにより低屈折率層を連続層として形成することが望ましい。
【0042】
無機微粒子の周囲にポリマーシェルを形成して、コアシェル微粒子が得られる。コアシェル微粒子中に無機微粒子からなるコアが5乃至90体積%含まれていることが好ましく、15乃至80体積%含まれていることがさらに好ましい。
ポリマーシェルは、ラジカル重合法により形成することが好ましい。ラジカル重合法については、大津隆行・木下雅悦共著、高分子合成の実験法、化学同人(1972)および大津隆行、講座重合反応論1ラジカル重合(I)、化学同人(1971)に記載がある。ラジカル重合法は、具体的には、乳化重合法または分散重合により実施することが好ましい。乳化重合については、室井宗一、高分子ラテックスの化学、高分子刊行会(1970)に記載がある。分散重合法については、Barrett, Keih E.J.、Dispersion Polymerization in Organic Media、JOHN WILLEY & SONS(1975)に記載がある。
【0043】
乳化重合法に使用する重合開始剤の例には、無機過酸化物(例、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム)、アゾニトリル化合物(例、アゾビスシアノ吉草酸ナトリウム)、アゾアミジン化合物(例、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)塩酸塩)、環状アゾアミジン化合物(例、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩)、アゾアミド化合物(例、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド)が含まれる。無機過酸化物が好ましく、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウムが特に好ましい。
【0044】
分散重合法に使用する重合開始剤の例には、アゾ化合物(例、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート)および有機過酸化物(例、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオクトエート)が含まれる。
分散重合法では、表面処理された無機微粒子にポリマー分散剤を加え、モノマーと重合開始剤を溶解し、生成するポリマーは不溶である重合媒体中で重合反応を実施することが好ましい。
重合媒体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−メトキシ−1−プロパノール、ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ネオペンタノール、シクロヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール)、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチルが含まれる。水、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールが好ましい。二種類以上の重合媒体を併用してもよい。
【0045】
乳化重合法または分散重合法において、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤の例には、ハロゲン化炭化水素(例、四塩化炭素、四臭化炭素、二臭化酢酸エチル、三臭化酢酸エチル、二臭化エチルベンゼン、二臭化エタン、二塩化エタン)、炭化水素(例、ベンゼン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン)、チオエーテル(例、ジアゾチオエーテル)、メルカプタン(例、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、チオグリセロール),ジスルフィド(例、ジイソプロピルザントゲンジスルフィド)、チオグリコール酸およびその誘導体(例、チオグリコール酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸メトキシブチル、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート))が含まれる。
二種類以上のコアシェル微粒子を併用してもよい。また、シェルのない無機微粒子とコアシェル粒子とを併用してもよい。
【0046】
(3)バインダー
バインダーポリマーは、飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。バインダーポリマーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーポリマーを得るためには、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。
【0047】
二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの例には、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ジクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが含まれる。
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキ化合物の開環重合反応により合成することが好ましい。
【0048】
二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりまたはそれに加えて、架橋性基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタンも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。
また、本発明において架橋基とは、上記化合物に限らず上記官能基が分解した結果反応性を示すものであってもよい。
前記(2)のシェルポリマーと併用する場合、バインダーポリマーのガラス転移温度(Tg)は、シェルポリマーのTgよりも低いことが好ましい。バインダーポリマーのTgとシェルポリマーのTgとの温度差は、5℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。
バインダーポリマーは、低屈折率層の塗布液にモノマーを添加し、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に重合反応(必要ならばさらに架橋反応)により形成することが好ましい。重合開始剤については、前述したシェルポリマーの合成に用いる重合開始剤と同様である。低屈折率層の塗布液に、少量のポリマー(例、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリエステル、アルキド樹脂)を添加してもよい。
【0049】
[低屈折率層]
低屈折率層は、以上の微粒子およびポリマーを含み、ミクロボイド構造を有する層である。
低屈折率層の屈折率は、1.20乃至1.55であることが好ましく、1.30乃至1.55であることがさらに好ましい。
低屈折率層の層厚は、50乃至400nmであることが好ましく、50乃至200nmであることがさらに好ましい。
【0050】
[透明支持体]
反射防止膜をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止膜は透明支持体を有することが好ましい。
透明支持体としては、プラスチックフイルムを用いることが好ましい。プラスチックフイルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンが含まれる。トリアセチルセルロース、ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレートが好ましい。透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。透明支持体のヘイズは、2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。透明支持体の屈折率は、1.4乃至1.7であることが好ましい。
【0051】
[高屈折率層および中屈折率層]
図2の(b)に示すように、低屈折率層と透明支持体との間に高屈折率層を設けてもよい。また、図2の(c)に示すように、高屈折率層と透明支持体との間に中屈折率層を設けてもよい。
高屈折率層の屈折率は、1.65乃至2.40であることが好ましく、1.70乃至2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する、中屈折率層の屈折率は、1.55乃至1.70であることが好ましい。
【0052】
中屈折率層および高屈折率層は、比較的屈折率が高いポリマーを用いて形成することが好ましい。屈折率が高いポリマーの例には、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂および環状(脂環式または芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタンが含まれる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応によりポリマーを形成してもよい。
屈折率の高い無機微粒子を上記ポリマー中に分散してもよい。屈折率の高い無機微粒子を用いる場合は、比較的屈折率の低いポリマー、例えば、ビニル系ポリマー(アクリル系ポリマーを含む)、ポリエステル系ポリマー(アルキド系ポリマーを含む)、セルロース系ポリマーやウレタン系ポリマーでも、無機微粒子を安定に分散するために用いることができる。
【0053】
有機置換されたケイ素化合物を、高屈折率層または中屈折率層に添加してもよい。ケイ素化合物としては、低屈折率層の無機微粒子の表面処理に使用するシランカップリング剤またはその加水分解物が好ましく用いられる。
無機微粒子としては、金属(例、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモン)の酸化物が好ましい。無機微粒子の粉末またはコロイド状分散物を上記のポリマーまたは有機ケイ素化合物中と混合して、使用する。
無機微粒子の平均粒径は、10乃至100nmであることが好ましい。
被膜形成能を有する有機金属化合物から、高屈折率層または中屈折率層を形成してもよい。有機金属化合物は、適当な媒体に分散できるか、あるいは液状であることが好ましい。
【0054】
有機金属化合物の例には、金属アルコレート(例、チタンテトラエトキシド、チタンテトラ−i−プロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−sec-ブトキシド、チタンテトラ−tert−ブトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ−i−プロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラ−i−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−sec-ブトキシド、ジルコニウムテトラ−tert−ブトキシド)、キレート化合物(例、ジ−イソプロポキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ−ブトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ジ−エトキシチタニウムビスアセチルアセトネート、ビスアセチルアセトンジルコニウム、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムジ−n−ブトキシドモノエチルアセトアセテート、アルミニウムジ−i−プロポキシドモノメチルアセトアセテート、トリ−n−ブトキシドジルコニウムモノエチルアセトアセテート)、有機酸塩(例、炭酸ジルコニールアンモニウム)およびジルコニウムを主成分とする活性無機ポリマーが含まれる。
【0055】
アルキルシリケート類、その加水分解物および微粒子状シリカ、特にコロイド状に分散したシリカゲルを高屈折率層または中屈折率層に添加してもよい。
高屈折率層および中屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましい。
【0056】
[その他の層]
反射防止膜には、さらに、ハードコート層、防湿層、帯電防止層、下塗り層や保護層を設けてもよい。
ハードコート層は、透明支持体に耐傷性を付与するために設ける。ハードコート層は、透明支持体とその上の層との接着を強化する機能も有する。ハードコート層は、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマーやシリカ系化合物を用いて形成することができる。顔料をハードコート層に添加してもよい。
【0057】
低屈折率層の上に、保護層を設けてもよい。保護層は、滑り層または汚れ防止層として機能する。
滑り層に用いる滑り剤の例には、ポリオルガノシロキサン(例、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン)、天然ワックス(例、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ホホバ油、ライスワックス、木ろう、蜜ろう、ラノリン、鯨ろう、モンタンワックス)、石油ワックス(例、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス)、合成ワックス(例、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス)、高級脂肪脂肪酸アミド(例、ステアラミド、オレインアミド、N,N’−メチレンビスステアラミド)、高級脂肪酸エステル(例、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート)、高級脂肪酸金属塩(例、ステアリン酸亜鉛)およびフッ素含有ポリマー(例、パーフルオロ主鎖型パーフルオロポリエーテル、パーフルオロ側鎖型パーフルオロポリエーテル、アルコール変性パーフルオロポリエーテル、イソシアネート変性パーフルオロポリエーテル)が含まれる。
汚れ防止層には、含フッ素疎水性化合物(例、含フッ素ポリマー、含フッ素界面活性剤、含フッ素オイル)を添加する。
保護層の厚さは、反射防止機能に影響しないようにするため、20nm以下であることが好ましい。
【0058】
[反射防止膜]
反射防止膜の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。本発明では、低屈折率層に微粒子を使用するため、図1に示すように反射防止膜の表面に凹凸が形成されている。微粒子により得られるアンチグレア機能では不充分な場合は、低屈折率層に比較的大きな粒子(粒径:50nm乃至2μm)を少量(0.1乃至50重量%)添加してもよい。
【0059】
反射防止膜のヘイズは、3乃至30%であることが好ましく、5乃至20%であることがさらに好ましく、7乃至20%であることが最も好ましい。
反射防止膜は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用する。反射防止膜が透明支持体を有する場合は、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着する。
【0060】
【実施例】
[合成例1]
(無機微粒子の表面処理)
攪拌装置、温度計および還流冷却管を装着した500mlのガラス製三口フラスコに、蒸留水300mlおよびスルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩(界面活性剤)の70重量%水溶液0.57gを入れて、混合物を攪拌した。反応液に、21.1重量%のフッ化マグネシウムコロイド液90.0g(粒子径:30.5nm)を攪拌下ゆっくり添加した。反応液のpHを、2N硫酸を用い7.5に調整した。窒素気流下で80℃に昇温した後、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン1.0gを添加し、4時間攪拌を続け、フッ化マグネシウム粒子を表面処理した。
【0061】
(ポリマーシェルの形成)
表面処理したフッ化マグネシウム粒子に、過硫酸カリウム0.128gを蒸留水8mlに溶解した溶液(重合開始剤溶液)を添加した。直ちにヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(モノマー)4.5gを3時間にわたり滴下した。モノマーの滴下終了時点で、重合開始剤溶液を再度添加し、さらにそのまま80℃で3時間加熱攪拌を続け、重合反応を完了させた。
これを室温まで冷却後、濾過して固形分6.0重量%、平均粒径40.2nmのコアシェル微粒子分散物415g(収率:98%)を得た。
【0062】
[合成例2]
(無機微粒子の表面処理)
攪拌装置、温度計および還流冷却管を装着した300mlの4口フラスコに、ドデシル硫酸ナトリウム5g、コロイダルシリカ(ST−ZL、日産化学(株)製、平均粒子径:72nm、固形分濃度:30重量%)300gおよびイオン交換水74mlを入れた。混合物のpHを2N硫酸を用い7.5に調整し、攪拌した。窒素気流下で60℃に昇温した後、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10gを添加し、4時間攪拌を続け、シリカ粒子を表面処理した。
【0063】
(ポリマーシェルの形成)
表面処理したシリカ粒子に、過硫酸アンモニウム0.5gおよび重亜硫酸ナトリウム0.2gを添加した。さらに、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート54g、グリシジルメタクリレート4.8gとアクリル酸1.2gを混合した液を3時間にわたって滴下した。滴下中の反応温度は60〜70℃の範囲に保持し、滴下終了後も同温度範囲を維持しながら2時間攪拌を続けた。この後、冷却し、分画分子量1万の透析膜を用いて3日間透析し、濾過して、固形分20.3重量%、平均粒径81.3nmのコアシェル微粒子分散物757g(収率:96%)を得た。
【0064】
[合成例3〜7]
合成例1および2に類似の乳化重合法で、下記のポリマーを無機微粒子の周囲にシェルとして形成し、第1表に示すコアシェル微粒子を合成した。
合成例1:ポリヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート
合成例2:ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(90重量部)−グリシジルメタクリレート(8重量部)−アクリル酸(2重量部)コポリマー
合成例3:ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(90重量部)−グリジシルメタクリレート(10重量部)コポリマー
合成例4:1H,1H−ペンタデカフルオロオクチルアクリレート(95重量部)−2−ヒドロキシエチルメタクリレート(5重量部)コポリマー
合成例5:ヘキサフルオロイソプロピルα−フルオロアクリレート(90重量部)−2−ヒドロキシエチルアクリレート(10重量部)コポリマー
合成例6:トリフルオロエチルアクリレート(80重量部)−グリシジルアクリレート(20重量部)コポリマー
合成例7:ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(90重量部)−アリルメタクリレート(10重量部)コポリマー
【0065】
【表1】
【0066】
[実施例1]
合成例1で調製した微粒子90重量部と、ポリメチルメタクリレートのラテックス10重量部を混合して、低屈折率層の塗布液を調製した。
塗布液をトリアセチルセルロースフイルム上に、スピンコータを用いて塗布し、90℃で90分乾燥し、厚さ100nmの低屈折率層を形成した。
得られた反射防止膜について、屈折率、空隙率、視感反射率(光波長400nm〜800nmの平均反射率値)および膜表面強度を測定した。
低屈折率層の空隙率は、層の屈折率を測定し、用いた層構成成分の組成から得られる層の屈折率の計算値と実測値の差から、空気の体積分率を計算した。膜表面強度は、指先、ティッシュ、消しゴムでそれぞれこすり、目視観察し、指先で傷付くものをD、ティッシュで傷付くものをC、消しゴムで傷付くものをB、どの方法でも傷が認められないものをAとした。結果は第2表に示す。
【0067】
[実施例2〜10および比較例1〜4]
微粒子とポリマーバインダーの組成を第2表に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、反射防止膜を作成した。反射防止膜について、実施例1と同様に測定して評価した。結果を第2表に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
(註)
混合比:重量%
NP−1:メチルメタクリレート(80重量部)−ジビニルベンゼン(25重量部)コポリマーからなる微粒子(平均粒径:52nm)
NP−2:ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(80重量部)−ジビニルベンゼン(20重量部)コポリマーをコア(70重量%)とし、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(90重量部)−グリシジルメタクリレート(10重量部)コポリマーをシェル(30重量%)とする微粒子(平均粒径:61nm)
BP1:ポリヘキサフルオロイソプロピルメタクリレートのラテックス
BP2:ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(91重量部)−ジビニルベンゼン(9重量部)コポリマーのラテックス
BP3:ポリメチルメタクリレートのラテックス
【0070】
[実施例11]
(ハードコート層の形成)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを5重量%、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)を0.5重量%、および光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)を0.2重量%を含むトルエン溶液を調製した。90μmの厚さを有するトリアセチルセルロースフイルムに、溶液をワイヤーバーを用いて8μmの厚さに塗布し、乾燥した。これを100℃に加熱して12W/cmの高圧水銀灯を用いて1分間紫外線照射し架橋した。その後室温まで放冷した。
【0071】
(高屈折率層の形成)
n−ブチルメタクリレート(80重量部)−メタクリル酸(20重量部)コポリマーのラテックス(平均粒子径:71nm、固形分濃度:12.5重量%)100gに、酸化錫微粒子(石原産業(株)より入手)25gを混合した。ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート6g、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.5g、光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.2gおよび酢酸エチル20gを、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gを用いて水100gに乳化分散した。乳化物液とラテックスとを混合、攪拌して、高屈折率層の塗布液を調製した。
塗布液をハードコート層の上にワイヤーバーを用いて厚さ0.16μmに塗布し、これを乾燥後、100℃に加熱して12W/cmの高圧水銀灯を用いて1分間紫外線照射し架橋、その後室温まで放冷した。
【0072】
(低屈折率層の形成)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート6g、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.5g、光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.2gおよび酢酸エチル20gを、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gを用いて水100gに乳化分散した。乳化物液と合成例1で合成した微粒子100gとを混合、攪拌して、低屈折率層の塗布液を調製した。
塗布液を高屈折率層の上にワイヤーバーを用いて厚さ0.10μmに塗布し、これを乾燥後、100℃に加熱して12W/cmの高圧水銀灯を用いて1分間紫外線照射し架橋した。その後室温まで放冷した。
こうして得られた反射防止膜について、実施例1と同様に視感の表面反射率と膜表面強度を測定した。視感の表面反射率は0.3%、膜表面強度はAであった。
【0073】
[実施例12〜16および比較例5、6]
高屈折率層に使用したポリマーと低屈折率層に使用した微粒子を第3表に示すように変更した以外は、実施例11と同様にして、反射防止膜を作成した。なお、塗布液は、固形分濃度が実施例11と同じになるように濃度を調製した。得られた反射防止フイルムについて、視感の表面反射率と膜表面強度を測定した。結を第3表に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
(註)
HP1:n−ブチルメタクリレート(80重量部)−メタクリル酸(20重量部)コポリマー
HP2:メチルメタクリレート(65重量部)−エチルメタクリレート(25重量部)−グリシジルメタクリレート(10重量部)コポリマー
HP3:ベンジルメタクリレート(50重量部)−メチルメタクリレート(25重量部)−アリルメタクリレート(20重量部)−メタクリル酸(5重量部)コポリマー
NP−1:メチルメタクリレート(80重量部)−ジビニルベンゼン(25重量部)コポリマーからなる微粒子(平均粒径:52nm)
NP−2:ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(80重量部)−ジビニルベンゼン(20重量部)コポリマーをコア(70重量%)とし、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(90重量部)−グリシジルメタクリレート(10重量部)コポリマーをシェル(30重量%)とする微粒子(平均粒径:61nm)
【0076】
[実施例17]
実施例12で作成した反射防止フイルムを、パーソナルコンピューター(PC9821NS/340W、日本電気(株)製)の液晶ディスプレイ表面に貼り付けた。表示画像を確認したところ、周囲の風景映り込みがほとんどなく、快適な視認性が得られた。
【0077】
[実施例18]
実施例13で作成した反射防止フイルムを、パーソナルコンピューター(PC9821NS/340W、日本電気(株)製)の液晶ディスプレイ表面に貼り付けた。表示画像を確認したところ、周囲の風景映り込みがほとんどなく、快適な視認性が得られた。
【0078】
[実施例19]
実施例15で作成した反射防止フイルムを、パーソナルコンピューター(PC9821NS/340W、日本電気(株)製)の液晶ディスプレイ表面に貼り付けた。表示画像を確認したところ、周囲の風景映り込みがほとんどなく、快適な視認性が得られた。
【0079】
[比較例7]
比較例5で作成した反射防止フイルムを、パーソナルコンピューター(PC9821NS/340W、日本電気(株)製)の液晶ディスプレイ表面に貼り付けた。表示画像を確認したところ、周囲の映り込みが多く、実施例17〜19の結果と比較して視認性が劣っていた。
【0080】
[比較例8]
比較例6で作成した反射防止フイルムを、パーソナルコンピューター(PC9821NS/340W、日本電気(株)製)の液晶ディスプレイ表面に貼り付けた。表示画像を確認したところ、周囲の映り込みが多く、実施例17〜19の結果と比較して視認性が劣っていた。
【0081】
[実施例21]
(ハードコート層の形成)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)125gおよびウレタンアクリレートオリゴマー(UV−6300B、日本合成化学工業(株)製)125gを、439gの工業用変性エタノールに溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)7.5gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)5.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。混合物を攪拌した後、1μmメッシュのフィルターで濾過してハードコート層の塗布液を調製した。
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80V、富士写真フイルム(株)製)に、ゼラチン下塗り層を設け、ゼラチン下塗り層の上に、上記のハードコート層の塗布液を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥した。次に紫外線を照射して、塗布層を硬化させ、厚さ7.5μmのハードコート層を形成した。
【0082】
(低屈折率層塗布液の調製)
シリカ微粒子のメタノール分散液(R507、日産化学(株)製)200gにシランカップリング剤(KBN−803、信越シリコーン(株)製)10gおよび0.1N塩酸2gを加え、室温で5時間攪拌した後、約6日間室温で放置して、シランカップリング処理したシリカ微粒子の分散物を調製した。
分散物149gに、イソプロピルアルコール789gおよびメタノール450gを加えた。光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)3.21gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1.605gを31.62gのイソプロピルアルコールに溶解した溶液を加え、さらに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトーツヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)2.17gを78.13gのイソプロピルアルコールに溶解した溶液を加えた。混合物を20分間室温で攪拌し、1μmのメッシュのフィルターで濾過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0083】
(反射防止膜の作成)
ハードコート層の上に、低屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、低屈折率層(厚さ:0.1μm)を形成した。このようにして、反射防止膜を作成した。
得られた反射防止膜について、450〜650nmの波長における平均反射率および表面の鉛筆硬度を測定した。結果は第4表に示す。
【0084】
[実施例22]
100μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフイルムにゼラチン下塗り層を設け、ゼラチン下塗り層の上に、実施例21で用いたハードコート層の塗布液を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥した。次に紫外線を照射して、塗布層を硬化させ、厚さ7.5μmのハードコート層を形成した。
実施例21と同様に、ハードコート層の上に低屈折率層を設け、反射防止膜を作成した。
得られた反射防止膜について、450〜650nmの波長における平均反射率および表面の鉛筆硬度を測定した。結果は第4表に示す。
【0085】
[実施例23]
100μmの厚さのシンジオタクチックポリスチレンフイルムの表面にグロー放電処理を実施した。その上に、実施例21で用いたハードコート層の塗布液を、バーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥した。次に紫外線を照射して、塗布層を硬化させ、厚さ7.5μmのハードコート層を形成した。
実施例21と同様に、ハードコート層の上に低屈折率層を設け、反射防止膜を作成した。
得られた反射防止膜について、450〜650nmの波長における平均反射率および表面の鉛筆硬度を測定した。結果は第4表に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
[実施例24]
(二酸化チタン分散物の調製)
二酸化チタン(一次粒子重量平均粒径:50nm、屈折率:2.70)30重量部、下記のアニオン性モノマー(1)3重量部、下記のアニオン性モノマー(2)3重量部、下記のカチオン性モノマー1重量部およびメチルエチルケトン63重量部を、サンドグラインダーにより分散し、二酸化チタン分散物を調製した。
【0088】
【化4】
【0089】
【化5】
【0090】
【化6】
【0091】
(中屈折率層用塗布液の調製)
シクロヘキサノン172gおよびメチルエチルケトン43gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.18gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.059gを溶解した。さらに、二酸化チタン分散物15.8gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)3.1gを加え、室温で30分間攪拌した後、1μmのメッシュのフィルターで濾過して、中屈折率層用塗布液を調製した。
【0092】
(高屈折率層用塗布液の調製)
シクロヘキサノン183gおよびメチルエチルケトン46gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.085gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.028gを溶解した。さらに、二酸化チタン分散物17.9gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)1.0gを加え、室温で30分間攪拌した後、1μmのメッシュのフィルターで濾過して、高屈折率層用塗布液を調製した。
【0093】
(反射防止膜の作成)
実施例21で形成したハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(厚さ:0.081μm)を設けた。
中屈折率層の上に、高屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、高屈折率層(厚さ:0.053μm)を設けた。
高屈折率層の上に、実施例21で用いた低屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥した後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、低屈折率層(厚さ:0.092μm)を設けた。このようにして反射防止膜を作成した。
得られた反射防止膜について、450〜650nmの波長における平均反射率および表面の鉛筆硬度を測定した。さらに、指紋付着性を評価するため表面の接触角も測定した。結果は第5表に示す。
【0094】
[実施例25]
低屈折率層の厚さを0.072μmとする以外は、実施例24と同様にして、ハードコート層の上に、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を設けた。低屈折率層の上に、架橋性含フッ素ポリマーの溶液を塗布し、120℃に加熱して含フッ素ポリマーを架橋させ、厚さ0.02μmの保護層を設けた。
得られた反射防止膜について、450〜650nmの波長における平均反射率および表面の鉛筆硬度を測定した。さらに、指紋付着性を評価するため表面の接触角も測定した。結果は第5表に示す。
【0095】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【図1】反射防止膜の低屈折率層の断面模式図である。
【図2】反射防止膜の様々な層構成を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1 低屈折率層
2 ハードコート層
3 透明支持体
4 高屈折率層
5 中屈折率層
11 無機微粒子
12 ミクロボイド
13 ポリマー
Claims (9)
- 平均粒径が0.5乃至200nmの無機微粒子を50乃至95重量%およびポリマーを5乃至50重量%含み、該無機微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより微粒子間にミクロボイドが形成されており、該無機微粒子が分子内に二重結合を有するシランカップリング剤により表面処理され、さらに、該ポリマーがエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得られると共に、シランカップリング剤の二重結合の反応によりシランカップリング剤とポリマーとが結合している低屈折率層を有することを特徴とする反射防止膜。
- 低屈折率層が、3乃至50体積%の空隙率を有する請求項1に記載の反射防止膜。
- 低屈折率層が、1.20乃至1.55の屈折率を有する請求項1に記載の反射防止膜。
- 上記ポリマーが無機微粒子の周囲に形成されているシェルポリマーである請求項1に記載の反射防止膜。
- ミクロボイドが、無機微粒子およびポリマーにより閉じている請求項1に記載の反射防止膜。
- 上記ポリマーが無機微粒子間のバインダーポリマーである請求項1に記載の反射防止膜。
- モノマーが二以上のエチレン性不飽和基を有する請求項6に記載の反射防止膜。
- 平均粒径が0.5乃至200nmの無機微粒子を50乃至95重量%およびポリマーを5乃至50重量%含み、該無機微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより微粒子間にミクロボイドが形成されており、該無機微粒子が分子内に二重結合を有するシランカップリング剤により表面処理され、さらに、該ポリマーがエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得られると共に、シランカップリング剤の二重結合の反応によりシランカップリング剤とポリマーとが結合している低屈折率層を有する反射防止膜を、表示面に配置したことを特徴とする画像表示装置。
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