JP3940037B2 - 陽イオン交換クロマトグラフィーを介する薬理学的に活性なタンパク質の精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の条件下における固体マトリクスでの陽イオン交換クロマトグラフィーの使用に基づく薬理学的に活性なタンパク質の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大部分の生物医学的科学は、それ自体、抽出技術によって得られる天然起源の、および組換えDNA技術によって得られる合成起源の、両方の薬理学的に活性なタンパク質の使用に基づく。目的の産物の純度レベルは両方の場合において重要である。なぜなら、薬理学的に活性なタンパク質の活性の理解は、生物学的効果と固定量のそのタンパク質の存在とが厳密に結びつく可能性によって決定されるからである。
【0003】
この文脈において、製造されたタンパク質の純度は、医薬品に含まれる活性素因または賦形剤が関係する場合に顕著な重要性があると仮定されるので、薬理学的に活性なタンパク質の精製方法は、重要な割合を占める。治療中に毒性効果が起こる可能性および/または副作用が生じる可能性は、登録および認可を担う権限を実際に推し進める。さらにより厳重な規定を導入するために、タンパク質に基づく医薬品市場に対するこの規定は、市販の医薬品に含まれるタンパク質起源の活性素因の品質および製造一貫性を決定するためのものである。
【0004】
タンパク質の精製方法の前記重要性から、薬理学的に活性なタンパク質は常に多くの他のタンパク質と一緒になった複合混合物の状態である、という実際に存在する主な問題が明らかに現われる。
【0005】
この事実は、天然供給源および組換えDNA技術の両方にあてはまり、天然供給源(たとえば、血液、動物または植物の器官からの抽出物など)の場合は、薬理学的に活性なタンパク質を抽出するために使用され、そして組換えDNA技術の場合は、タンパク質がそれらの起源から独立して由来するそのタンパク質間で類似の化学物理学的特性を示すので使用される。
【0006】
したがって、前記から、薬理学的に活性なタンパク質の精製の場合、類似の特性を有する他のタンパク質と混合したタンパク質、そして、しばしば非常に多量の目的のタンパク質が高純度で単離されなければならないことになる。
【0007】
この課題は厳密であり、そしていくつかの精製工程は、通常、目的の純度を得るために使用される。精製方法は、この場合、非常に複雑となり、そしてタンパク質の工業的製造の成功は、本質的にその精製方法の効率と結びついている。なぜなら、後者は、製造費用を充分に決定するからである。
【0008】
多くの技術(たとえば、水性溶媒または有機溶媒における、あるいはカオトロピック剤を用いる選択的な沈殿;濾過および/または透析による分離;適切な抗体を用いる免疫沈澱方法;クロマトグラフィー法など)が、タンパク質を精製するために使用される。この技術のうちクロマトグラフィー法は、近年、主に、J.Chromatogr.418,115−143,(1987)でRegnier F.E.により報告されたように要求された純度を得ることを可能にするので非常に重要になっている。
【0009】
多くの技術は、科学文献に列挙され、そしてタンパク質を分離するのに適用される作用機構に基づいて分類され得る。これらの技術としては、たとえば、分子量に基づく分離、通常、固定相ともいわれる極性マトリクスへの吸着、逆固定相といわれる非極性マトリクスへの吸着、銅、亜鉛、鉄および白金のような重金属、ブリリアントブルーなどの化学色素、プロテインAおよびプロテインGなどのタンパク質、多糖およびグルコサミノグリカンなどの糖質などの不活性マトリクスに結合するリガンドとの選択的親和性による吸着、不活性マトリクスに結合する特定抗体との免疫親和性による吸着、不活性マトリクスに結合する静電気的に荷電したリガンドとのイオン相互作用による吸着などがあげられる。
【0010】
選択性、すなわち、目的タンパク質を選択的に認識する能力、費用および工業的レベルで使用される可能性が、種々のクロマトグラフィー技術の性能を評価するためのパラメータとして使用される。
【0011】
これらのパラメータに基づくと、免疫アフィニティクロマトグラフィーが、高度な選択性を保証すると考えられる。しかし、抗体は動物起源であるので、使用費用が高い、抗体が変性する危険性および精製産物の最終安全性に結びつく危険性などの欠点を示す。
【0012】
イオン交換クロマトグラフィーともいわれるイオン相互作用を使用するクロマトグラフィーは、タンパク質の薬理学的な活性を保持するための、危険性のより少ない技術であると考えられ、そして低い管理費用により容易に工業的な様式で実施されるが、選択性が乏しいという欠点を示す。
【0013】
したがって、イオン交換クロマトグラフィの選択性を上昇させる、その実施の条件を見出し、その結果、得られた産物の純度の観点からイオン交換クロマトグラフィーを他の技術より優位にすることは、非常に好都合である。
【0014】
イオン交換クロマトグラフィーは、通常、不変の条件または特定の条件下で静電的に荷電する化学基を含む固体マトリクスで充填された種々のサイズのカラムを用いることによって実施される。
【0015】
イオン交換カラムに充填される化合物は、そのマトリクスに結合する電荷で、クーロン引力/反発により相互作用する。混合物に含まれる種々の化合物は、その化合物が有する荷電量の作用によって固定相にそれら自体を結合することができ、そして結果として、その化合物は多かれ少なかれ保持され、荷電量の作用が、カラムの出口での化合物の分離を規定する。
【0016】
クロマトグラフィーは、マトリクスの電荷が陰性である場合、陽イオンが保持されるので陽イオン交換クロマトグラフィーといわれる。一方、マトリクスの電荷が陽性である場合、陰イオン交換クロマトグラフィーといわれる。
【0017】
タンパク質は、アミノ酸の異種ポリマーによって構成される10,000ダルトンより大きな高分子量を有する化合物である。いくつかのアミノ酸は、それらの側鎖に、陰性様式(酸性アミノ酸)において、または陽性様式(塩基性アミノ酸)において溶液のpHの作用によってイオン化され得る官能基を有し、したがって、すべてのタンパク質は、多数の負電荷および正電荷を有する。タンパク質の等電点pIは、負電荷の寄与が正電荷の寄与と等しいので、そのタンパク質が中性であるpHである。pIの電場あるタンパク質は、その電場のいずれの極性からも引き付けられない。
【0018】
負電荷の数は、pIよりも高いpHで上昇し、そしてそのタンパク質は、正味の負電荷を増す。一方、その反対のことが、pIよりも低いpHで起こり、そしてそのタンパク質は、正味の正電荷を増す。すべてのタンパク質は、そのタンパク質自体に特徴的なpIを有する。その特徴的なpIは、等電点で不溶化される傾向にある他のタンパク質およびいくつかのタンパク質からそのタンパク質を区別する。
【0019】
Regnier F.E.,Science,238,319−323,(1987)によって、およびYamamoto S.ら、Chromatographic Science Series,43,(1988),MarcelDekker,Inc.Publisher,New Yorkによって報告されたように、タンパク質がpIよりも低いpHの溶液にある場合、そのタンパク質は、正味の正電荷を有し、したがって、負に荷電したマトリクスと相互作用し得、そして陽イオン交換クロマトグラフィーに供され得るが、一方、そのタンパク質が、そのタンパク質のpIよりも高いpHでは、陰イオン交換クロマトグラフィーに供され得る。
【0020】
これに反して、本発明者らは予測せずに、タンパク質の相当するpIよりも高いpHであって、そのタンパク質が、陽イオン交換クロマトグラフィーのマトリクスに吸着したままであるpH値の範囲を見出すことが可能であることを見出し、その結果、陽イオン交換クロマトグラフィーを実施することがなお可能であることを見出した。そして本発明の目的は、この事実に基づく。このような状況は、これらの条件下で得られるタンパク質間の高選択性のために、および、そのような精製の高効率性を生じる有意な分離を得るために充分となるタンパク質間のpIの非常に小さな差のためにも、とくに重要である。
【0021】
後者の理由は、組換えタンパク質の精製方法においてとくに重要である。ここで、目的の産物は、しばしば、相関した不純物(すなわち、その産物の非常に小さな構造変化、たとえば、異なる酸化状態、アセチル化、アミド基の欠失などから作られる不純物)をともなう。この種類の不純物は、多くの場合、抗体がこれらの不純物を区別することができないので、免疫アフィニティクロマトグラフィーによっても除かれることが非常に困難である。
【0022】
この見出された現象を説明し得る機構は、そのタンパク質の外表面の電荷の分布が単一ではなく、その結果、pHがpIよりも少し高く、そしてそのタンパク質が全体として正味の負電荷を有する場合、負固定相と相互作用し得るその分子に位置するいくつかの正電荷がなお存在しているという事実に基づく。
【0023】
この機構を効果的にするために、過剰な負電荷が過度に強調されないことが重要であり、そうでないと、負電荷で創られた電場は高く、タンパク質全体と負に電荷したクロマトグラフィーマトリクスとの相互作用を防止する。
【0024】
さらに、高イオン強度は、タンパク質を保護する効果を有し、そのタンパク質と固定相との相互作用を防止するので、溶離液として使用されるこの溶液のイオン強度は、適切に制御されることが必要である。
【0025】
Lampson G.P.ら、Anal.Biochem.,11,374−377,(1965)において、小さなpH変動があるが、0.1Mリン酸溶液によって与えられる過度に高いイオン強度を保持する、ヒトガンマグロブリン、リボヌクレアーゼ、ヘモグロビン、デルタキモトリプシン、グロビンおよびリゾチームなどのタンパク質の場合は、陽イオン交換クロマトグラフィーにおける溶出が、pIよりも常に0.4単位低いpHで起こったことが報告された。
【0026】
本発明が基づく前記のような原理は、以前は、タンパク質の効果的な精製方法を実施するための発明者の知識の範囲にはなかった。
【0027】
Kontturi A.K.ら、Acta Chem.Scand.,50(2),102−106,(1996)によって記載される精製方法を最適化するために、タンパク質の等電点の差異を使用する可能性は、実際には、イオン交換クロマトグラフィーの慣用的な使用をいう。ここで、陽イオン交換クロマトグラフィーは、常にそのタンパク質の等電点よりも低いpHで実施されるが、一方、陰イオン交換クロマトグラフィーは、その等電点よりも高いpHで実施される。本特許出願に記載の方法は、反対に、陽イオン交換クロマトグラフィーがそのタンパク質の等電点よりも高いpHで実施される方法である。
【0028】
本特許出願に記載される方法は、報告された例において示される一般的な性質が考慮され得る。この例において、天然起源のタンパク質および組換えDNA由来のタンパク質の両方に対して、本出願に記載される方法が、首尾よく適用可能であることを実証した。タンパク質間の差異は、目的のタンパク質の精製に有用である、pIよりも高いpHの範囲にある。実際には、たとえば、以下の例において示されるように、このような範囲は、インターフェロンタンパク質の場合は、約0.2pH単位であるが、一方、アルブミンの場合は、約1pH単位である。
【0029】
Thatcher D.およびPanayotatos N.,Methods Enzymol.119,166−177,(1986)によって報告された、組換えα型インターフェロン(rIFNα)(等電点は、5.9である)の精製への本発明の適用は、その例の中で報告され、そしてpH6.1での陽イオン交換において、本発明の適用がrIFNαを精製するのを可能にし、そして精製するのに好都合であることを示す。さらに、その例は、Rylatt D.B.ら、J.Chromatogr.,865,145−153(1999)によって報告された、ヒト血清アルブミン(pIが4.9である)を示し、そしてpH6.0での陽イオン交換クロマトグラフィーにおいてヒト血清アルブミンを精製するのを可能にし、そして精製するのに好都合であることを示す。
【0030】
本発明の方法目的の利点は、科学文献および/またはα型インターフェロンの精製に関する特許およびヒト血清アルブミンの精製に関する特許に記載される方法、3つ以上の連続処理を通常必要とする方法の結果、高い工業的費用および収率の減少が生じる事実と比較した場合、非常に顕著であった。ThatcherD.およびPanayotatos、N.Methods Enzymol.,119,166−177,(1986)は、以下の5つの連続的な処理を通じるヒト組換えα型インターフェロンrIFN−α2の精製を記載する:a)陽イオン交換クロマトグラフィー;b)陰イオン交換クロマトグラフィー;c)重金属用アフィニティークロマトグラフィー;d)硫酸アンモニウムの飽和溶液による処理;e)分子排除クロマトグラフィー。
【0031】
欧州特許第0108585号は、インターフェロンの精製を記載している。この精製は、以下の3つの型のクロマトグラフィーの連続使用を含む:a)免疫−アフィニティ;b)陽イオン交換;c)分子排除。インターフェロン精製についての米国特許第4765903号は、4つの型のクロマトグラフィーの連続使用を記載している:a)モノクロナール抗体を用いる免疫−アフィニティ;b)逆相;c)陽イオン交換;d)分子排除。
【0032】
欧州特許第0679718号は、以下の4つのクロマトグラフィー工程を認識するα型インターフェロン産生用方法を記載している:a)金属キレート;b)陽イオン交換;c)陰イオン交換;d)ゲル濾過。
【0033】
他の刊行物および特許(たとえば、米国特許第4732683号、国際特許出願WO8604067およびKhan F.R.およびRai V.R.,Bioprocess Technol.,7,161−169,(1990)による刊行物)は、インターフェロンタンパク質の精製のために必要な3つ以上の処理を記載している。
【0034】
この引用した例は、一般的に、インターフェロンの精製およびとくにα型インターフェロンの精製について報告されたほとんどの関連事項を網羅する。これらの例は、後者の精製がとくに困難であることを示し、そして多くの精製工程が必要であることを示す。さらに、高精製レベルは、とくに、マウス起源のモノクロナール抗体を用いることによる免疫アフィニティクロマトグラフィーによって得られることは、強調するべきである。しかし、ヒトにおける医薬用途のための有効成分の製造を目的とする工業的産生方法内のこのようなクロマトグラフ技術の存在は、マウス起源のウイルスに由来する潜在的なウイルス汚染の危険性および工業的観点からクロマトグラフィーマトリクスを有効にすることの困難さを生じる。ウイルス汚染の危険性は、最終産物におけるマウスイムノグロブリンから生じる潜在的な免疫原性フラグメントの存在のために生じる。
【0035】
さらに、簡単に例示した例から、陽イオン交換クロマトグラフィーは、広範に使用されるが、独特な分離技術として使用されかった。なぜなら陽イオン交換クロマトグラフィーの性能は、精製レベルの上昇に関して限定されるからである。
【0036】
Babu K.R.ら、Appl.Microbiol.Biotechnol.,53(6),665−660,(2000)およびBouyon R.ら、Biotecnologia Aplicada,14,189−192,(1997)の刊行物は、塩化ナトリウム勾配におけるイオン交換クロマトグラフィーによる一工程でのα型インターフェロンの精製方法を記載する。しかし、これらの両方の場合において、充分に純粋な産物を得るためにその著者は、α型インターフェロンが含まれているクロマトグラフィー画分のいくつかのみを単離しなければならなく、その結果、非常に低い収率(最小で7.5%まで)となる。さらに、この記載された塩化ナトリウム勾配におけるクロマトグラフィーの精製方法は、工業的レベルで使用される傾向にない。
【0037】
クロマトグラフィー精製の多くの技術は、ヒト血清を画分化することから始まって、または組換えDNA技術によって得られたアルブミンの調製、複雑でかつ工業レベルにはほとんどできない調製、ヒトアルブミンの場合においても記載されており、このことは、天然起源、および組換え起源の両方のヒトアルブミンの有効な精製に関する問題がまだ存在しているということを確かにする。
【0038】
米国特許第6150504号および同第5521287号は、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用によるアルブミンの精製を記載する。米国特許第6034221号に記載されるこの精製スキームは、2つのクロマトグラフィー工程、1度の限外濾過そして2つのさらなるクロマトグラフィー精製によるアルブミン精製を認識する。
【0039】
流動層における陰イオン交換クロマトグラフィーまたはStreamline(登録商標)のマトリクスなどの市販のマトリクス、あるいは、改質化ジルコニウムの粒子またはペルフルオロハイドロカーボンのエマルジョンなどを適切に調製したマトリクスと相互作用するアフィニティクロマトグラフィーが使用されるアルブミン精製のあまり慣用的ではない方法は、米国特許第5962649号において、およびSumi A.ら、Bioseparation,8(1−5),195−200,(1999),Mullick A.およびFlickinger M.C.,Biotechnol.Bioeng.,65(3),282−290,(1999)およびMc Creath G.E.ら、J.Chromatogr.597(1−2),189−196,(1992)による刊行物において記載されている。
【0040】
重金属についてのアルブミンの精製の最近の技術はまた、Yang L.ら、Sheng Wu Kung Cheng Hsueh Pao,16(1),74−77,(2000)によっても記載されている。そしてCibacronBlue F3Gなどの色素の分子が結合するマトリクスについてのアフィニティー技術は、Compagnini A.ら、J.Chromatogr.A,736(1−2),115,(1996)によって記載されている。
【0041】
すべてのこれらの技術は、具現化の複雑さおよび高費用の種々の様式の問題において示され、容易かつ効果的な工業的実現の可能性ならびに経済的利点の両方で、薬理学的に活性なタンパク質の新規な精製方法を個別化する問題は、解決されていない。
【0042】
以下に記載した本発明は、容易な工業的活用の、および顕著な経済的利点により低費用の、薬理学的に活性なタンパク質の精製方法を提供することによってこれらの重要な必要性に対する答えを提供する。
【0043】
【発明が解決しようとする課題】
薬理学的に活性なタンパク質の精製の場合、類似の特性を有する他のタンパク質と混合したタンパク質、そして、しばしば非常に多量の目的のタンパク質が高純度で単離されなければならないことになる。
【0044】
この課題は厳密であり、そしていくつかの精製工程は、通常、目的の純度を得るために使用される。精製方法は、この場合、非常に複雑となり、そしてタンパク質の工業的製造の成功は、本質的にその精製方法の効率と結びついている。なぜなら、後者は、製造費用を充分に決定するからである。
【0045】
したがって、本発明は、薬理学的に活性なタンパク質、主にインターフェロンタンパク質およびアルブミンタンパク質の精製に有用な新規な方法を提供することを目的とする。
【0046】
【課題を解決するための手段】
本発明は、薬理学的に活性なタンパク質の精製方法であって、精製される該タンパク質の等電点pIに相当するpHよりも塩基性のpHであって、該タンパク質がなお吸着しているpHにおいて、固体マトリクスで陽イオン交換クロマトグラフィーを実施する工程、ならびに溶離液のイオン強度および/またはpHを上昇させることによって該タンパク質を溶出させる工程からなる精製方法に関する。
【0047】
前記陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる溶離液が、pHが2と11とのあいだである緩衝水溶液から作製されることが好ましい。
【0048】
さらに、前記緩衝水溶液のpHが、4と8.5とのあいだであることが好ましい。
【0049】
前記緩衝水溶液が、5〜100mMの以下の緩衝混合液:リン酸二水素カリウムおよび第二リン酸ナトリウム、フタル酸二水素カリウムおよび水酸化ナトリウム、第二クエン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム、クエン酸および第二リン酸ナトリウム、イミダゾールおよび塩酸を含むことが好ましい。
【0050】
前記緩衝液が、該緩衝液のイオン強度を変更しやすい、1〜100mMの有機塩または無機塩を含み得ることが好ましい。
【0051】
前記薬理学的に活性なタンパク質が、インターフェロンタンパク質およびアルブミンタンパク質であることが好ましい。
【0052】
前記インターフェロンタンパク質が、α型、β型、γ型、δ型、ω型、τ型、白血球由来の天然のα型、組換えα−2bインターフェロンおよびコンセンサスインターフェロンであり、そしてアルブミンタンパク質は、天然のヒトアルブミンおよび組換えヒトアルブミンであることが好ましい。
【0053】
また、本発明は、組換えα−2bインターフェロン(rIFNα−2b)の精製方法であって、1Mの酢酸ナトリウム溶液を加え、そして酢酸でpH5.5にしたrIFNα−2bの培養による製造から生じるタンパク質混合物を、20mMの酢酸ナトリウム溶液によってpH5.5に調整した強陽イオン交換樹脂を充填したカラムに充填し、その結果、1mlの固定相あたりに、6mgと8mgとのあいだのタンパク質が存在する工程、該カラムを2回の洗浄サイクルに供する工程であって、まず、5mMと15mMとのあいだの濃度のpH6.1の緩衝溶液を用い、ついで、2mMの塩化カリウムを添加した該同一の緩衝液を用いる工程、ならびに、最後に、15mMと25mMとのあいだの濃度で塩化カリウムを含む、5mMと15mMとのあいだの濃度のpH6.1の緩衝液を用いることによって該カラムから純粋なrIFNα−2bを溶出する工程、からなる方法に関する。
【0054】
使用した前記樹脂が、ムスタング(Mustang)(登録商標)Sであり、そして緩衝液混合物が、リン酸二水素カリウムおよび第二リン酸ナトリウム、フタル酸二水素カリウムおよび水酸化ナトリウム、第二クエン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム、クエン酸および第二リン酸ナトリウム、イミダゾールおよび塩酸から作製される緩衝液混合物から選択されることが好ましい。
【0055】
また、本発明は、ヒト血清アルブミンの精製方法であって、クエン酸によってpH3にしたヒト血清アルブミンを含む溶液を、20mMのクエン酸溶液を用いてpH3に調整した強陽イオン交換樹脂を充填したカラムに充填し、その結果、1mlの固定相あたりに、6mgと8mgとのあいだのタンパク質が存在する工程、20mMの酢酸ナトリウム溶液を用いて該カラムを2回の洗浄サイクルに供し、その結果、pH値を5.5および5.8にする工程、ついで、5mMと100mMとのあいだの濃度のリン酸二水素カリウムおよび第二リン酸ナトリウムの混合液から作製されるpH6.0の緩衝液によって該カラムから純粋なヒト血清アルブミンを溶出する工程、からなる方法に関する。
【0056】
また、本発明は、薬理学的に活性なタンパク質に基づく医薬品に含まれる活性素因を製造する前記方法の使用に関する。
【0057】
前記活性素因が、インターフェロンタンパク質であることが好ましい。
【0058】
前記インターフェロンタンパク質が、組換えα−2bインターフェロンであることが好ましい。
【0059】
前記活性素因が、アルブミンタンパク質であることが好ましい。
【0060】
前記アルブミンタンパク質が天然ヒト血清アルブミンまたは組換えヒト血清アルブミンであることが好ましい。
【0061】
【発明の実施の形態】
本発明は、特定の条件下における固体マトリクスでの陽イオン交換クロマトグラフィーの使用に基づく薬理学的に活性なタンパク質の精製方法に関する。その条件は、試料の充填後、適切なpHおよびイオン強度の溶離液でカラムを調整するような条件を含み、その結果、このタンパク質は、そのカラムに、薬理学的に活性なタンパク質の相当する等電点pIより塩基性、すなわち、より高いpHで均一に存在する。しかし、そのようなpHでは、このタンパク質は、なお陽イオン交換クロマトグラフィーに使用される固体マトリクスに吸着したままである。この調整段階の後、薬理学的に活性なタンパク質を、溶離液のイオン強度および/またはpHを上昇させることによってカラムから溶出させる。
【0062】
本発明の効果的な性能は、使用するクロマトグラフィーマトリクス、pIよりも高いpH値、およびクロマトグラフィー溶離液において使用されるイオン強度の中の正しい組み合わせの個別化を要する。なぜなら、一旦、クロマトグラフィーマトリクスが規定されると、効果的な精製は、pHおよび/またはイオン強度の限定変動、すなわち一般的には、小数点のpH単位および/または数百のμSのイオン強度の小数点の変動によって得られ得るからである。
【0063】
陽イオン交換クロマトグラフィーの固定相として、一般的に使用されるすべての機能化した固体マトリクスが使用され得る。しかし、精製されるタンパク質のpIが6よりも低いが、一方、強いおよび弱いの両方の陽イオン交換を有する固定相が、6よりも高いpIを有するタンパク質を除外しないで使用され得る場合、とくに強陽イオン交換といわれる固定相が好ましい。この固定相は、プロトンまたはアルカリ塩の両方の形態下で、スルホニル基またはカルボキシル基によって機能化されるシリカ質マトリクスまたはポリマーマトリクスを有し得る。たとえば、Source(登録商標)S(Pharmacia Biotech)、Sepharose(登録商標)SP−Fast Flow、Sepharose(登録商標)SP−High Performance、Sp Sepharose(登録商標)XL(Pharmacia Biotech)、Fractogel(登録商標)S(Merck,Darmstadt)、Mustang(登録商標)S(Pall Corporate)、CM Sepharose(登録商標)FF(Pharmacia Biotech)、Dowex(登録商標)、Bio−Rad(登録商標)AG(Bio−Rad)、Poros(登録商標)S(PerSeptive Biosystems)、Shodex(登録商標)−S、Toyopearl(登録商標)SP(Tosohass)などの市販の固定相が、首尾よく使用され得る。
【0064】
本発明が効果的に実施され得るpH値の範囲は、精製される薬理学的に活性なタンパク質の等電点に依存して非常に広く、そして2と11とのあいだのpH、好ましくは4と8.5とのあいだのpHである。
【0065】
本発明において記載された方法が適用可能であるpIよりも、高いpH値の範囲に拡大することは、薬理学的に活性なタンパク質のpIに相当するpH値からそのpIを1pH単位まで超えて変化し得、タンパク質間の顕著な差異を示す。
【0066】
たとえば、組換えα2bインターフェロン(rIFNα−2b)の場合、タンパク質のpIである5.9を0.2pH単位まで超えた陽イオン交換マトリクスへのタンパク質の吸着を得ることが可能であり、その結果、陽イオン交換クロマトグラフィーによるそのタンパク質の精製を実施することが可能であることを見出した。一方、ヒト血清アルブミンの場合は、タンパク質は、そのタンパク質のpIを1pH単位まで超えて吸着したままであることを見出した。
【0067】
効果的に使用可能な溶離液として使用される水溶液の塩化ナトリウム濃度の範囲は、精製される薬理学的に活性なタンパク質の種類に依存し、そしてその範囲が、1mMと100mMの値のあいだ、好ましくは1mMと30mMとのあいだであることを見出した。
【0068】
たとえば、組換えα2bインターフェロン(rIFNα−2b)の精製の場合、塩化ナトリウム水溶液の濃度は、1mMと30mMとのあいだ、好ましくは5mMと15mMとのあいだである。
【0069】
本発明のクロマトグラフィー目的に使用される溶離液の固定された、かつ安定なpHの必要性は、絶対に必要ではないとしても非常に有用であり、5〜100mM、好ましくは10〜20mMの緩衝化混合液を含む適切に緩衝された水溶液を使用する。2と11とのあいだのpHの範囲において緩衝力を有するすべての化学物質または化学物質の混合液は、使用され得るその溶離液のpH値が2と11とのあいだであるので、有利に使用され得る。
【0070】
以下を含む多くの緩衝水溶液が、本発明の実施において有利に使用され得る:グリシンおよび塩化ナトリウム、マレイン酸および水酸化ナトリウム、マロン酸および水酸化ナトリウム、乳酸および水酸化ナトリウム、蟻酸および水酸化ナトリウムもしくは水酸化リチウム、コハク酸および水酸化ナトリウム、N−メチルピペラジンおよび塩酸、ピペラジンおよび塩酸もしくは酢酸、L−ヒスチジンおよび塩酸、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸および水酸化ナトリウムもしくは水酸化リチウム、N−メチルジエタノールアミンおよび硫酸、N−メチルジエタノールアミンおよび硫酸、N−メチルジエタノールアミンおよび塩酸もしくは酢酸、ピリジンおよび蟻酸、第二クエン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム、リン酸二水素カリウムおよび塩酸、フタル酸二水素カリウムおよび水酸化ナトリウム、リン酸二水素カリウムおよび第二リン酸ナトリウム、ビシン(bicine)および水酸化ナトリウム、バルビタールナトリウムおよび塩酸、ホウ酸ナトリウムおよび塩酸、ホウ酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム、1,3−ジアミノプロパンおよび塩酸、クエン酸および第二リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムおよび酢酸、イミダゾールおよび塩酸、トリエタノールアミンおよび塩酸もしくは酢酸、トリス(ヒドロキシメチルアミノメタン)および塩酸、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)および炭酸ナトリウム(sodium acid carbonate)、エタノールアミンおよび塩酸、ピペリジンおよび塩酸、トリメチルアミンおよび蟻酸、ピリジンおよび酢酸、トリメチルアミンおよび酢酸、トリメチルアミンおよび塩酸、水酸化アンモニウムおよび蟻酸、水酸化アンモニウムおよび酢酸、トリメチルアミンおよび炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムおよび水酸化アンモニウム。
【0071】
とくに、組換えα2bインターフェロン(rIFNα−2b)の精製の場合、5.9と6.1とのあいだのpHで緩衝力を示すすべての緩衝液が使用され得、好ましくは、リン酸二水素カリウムおよび第二リン酸ナトリウム、フタル酸二水素カリウムおよび水酸化ナトリウム、第二クエン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム、クエン酸および第二リン酸ナトリウム、イミダゾールおよび塩酸を含む5.9と6.1とのあいだのpHの緩衝液が使用され得、一方、ヒト血清アルブミンの精製の場合、4.9と6.0とのあいだのpHで緩衝力を示す化合物の同一の混合物を含む緩衝液が、使用され得る。
【0072】
溶離液として使用される水溶液は、そのpHを緩衝するために使用されるその化学物質に加えて、溶液のイオン強度を改変する化学物質をも含み得る。この目的を達成するために、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、一級アミン、二級アミン、三級アミンまたは芳香族アミンと塩化され得る、たとえば、カルボキシレート、アルキルスルホネート、フタラートなどの有機塩またはサルフェート、クロリド、ホスフェートなどの無機塩の両方が、有利に使用され得る。
【0073】
これらの化合物は、1mM〜100mMまでのあいだ、好ましくは、1mMと30mMとのあいだの値である濃度で有利に使用され得る。
【0074】
たとえば、組換えα2bインターフェロン(rIFNα−2b)の精製の場合、これらの化合物の濃度は、1mMと30mMとのあいだ、好ましくは、2mMと20mMとのあいだで変化し得る。
【0075】
精製効率は、薬理学的に活性なタンパク質の溶出の前に、適切なpHおよびイオン強度を有する溶離液を用いて1回以上洗浄し、そのカラムを常にpIよりも高いpHにすることによって上昇され得る。
【0076】
たとえば、pIが4.9であるヒト血清アルブミンの場合、洗浄は、5.5と5.8とのあいだであるpHの緩衝液を用いて実施され得る。一方、pIが5.9である組換えα2bインターフェロン(rIFNα−2b)の場合は、洗浄は、6.0と6.1とのあいだであるpHの緩衝液を用いて実施され得る。
【0077】
これらの洗浄中に通過する溶離液の量は、変化可能であるが、通常は、5と100カラム容量(CV)とのあいだの量である。
【0078】
たとえば、ヒト血清アルブミンの場合、達成された洗浄は、20CVと40CVとのあいだである。一方、組換えα2bインターフェロン(rIFNα−2b)の場合、10CVと80CVとのあいだである。
【0079】
カラムに供給され得る精製される産物の量は、使用されるクロマトグラフィーマトリクスに依存し、そして1mlの固定相につき、全タンパク質で最大で100mgまで達し得るが、通常は、より低量で使用されるとしても、5mg/mlと20mg/mlとのあいだである。
【0080】
溶離液は、最大値が10cm/分と等しい速度までの固定相と適合する直線速度で、カラムを通過し得る。
【0081】
前記例示した精製方法は、すべての薬理学的に活性なタンパク質に適用され得る;とくに、インターフェロンα型、β型、γ型、δ型、ω型、τ型、白血球由来の天然のα型インターフェロン、組換えα2bインターフェロンおよびコンセンサスインターフェロンに関するインターフェロンタンパク質の精製、ならびにとくに、天然起源および組換え起源の両方のヒトアルブミンに関するアルブミンの精製が、本発明の実施において好ましい。
【0082】
前記精製方法の範囲は、工業的および経済的な様式で、薬理学的に活性なタンパク質を含む医薬品の製造のために直接使用されるような純度で、薬理学的に活性なタンパク質を得ることである。
【0083】
とくに、本発明の範囲内で好ましい医薬品は、インターフェロン、なおより好ましくは組換えα2bインターフェロン(rIFNα−2b)、ならびにアルブミン、なおより好ましくは、天然起源および組換え起源の両方のヒトアルブミンを含む医薬品である。
【0084】
本発明の範囲は、薬理学的に活性なタンパク質、主にインターフェロンタンパク質およびアルブミンタンパク質の精製に有用な新規な方法を見出すことである。
【0085】
タンパク質の精製方法は、固体マトリクスでの陽イオン交換クロマトグラフィーの使用に基づき、精製されるタンパク質の等電点(pI)に相当するpHについてよりも塩基性であるが、そのタンパク質は、なお吸着したままであるpHで実施する。
【0086】
精製される薬理学的に活性なタンパク質の種類に対して、ときどき(fromtime to time)調整されるpHおよびイオン強度の値を有する緩衝液は、純粋な形態でのタンパク質の溶出のために使用される。
【0087】
本発明の方法目的のいくつかの例示的な実施例を、本発明を明らかにする1つの範囲とともに本明細書中以下に報告するが、それらは、本発明自体の何らかの制限であると考慮されるきものではない。
【0088】
【実施例】
実施例1
(組換えα2bインターフェロン(rIFNα−2b)の産生)
Escherichia coli BL21 DE3株の細胞の一部を、5ngのpET9a−IFNα−2bプラスミドを用いて形質転換した。このプラスミドは、Escherichia coliにおいてより頻繁なコドンに配列を、pET9aプラスミド(Novagen)にあてがうために適切に改変された、INFα−2bのヒト遺伝子配列を複製する合成遺伝子をクローニングすることによって得られた。
【0089】
上記の改変されたEscherichia coli細胞から発現されたタンパク質配列は、Academic Press Inc.から発行されたEnzymology,Interferons,C部、Pestka S.編、119,3−14,(1986)の方法(Methods)において報告された配列と等しい。
【0090】
pET9a−IFNα−2bプラスミドによって形質転換されたEscherichia coli BL21 DE3株を、適切な培地(たとえば、12g/lのフィトペプトン(phytopeptone)(Phyto peptoton,BBL)、24g/lの酵母抽出物(Yeast extract,DIFCO)、4g/lのグリセロール(BDH)およびネオマイシンを含む溶液)におけるフラスコ内での培養において、37℃で、600nmでの光学密度の値が0.6〜0.8と等しくなるまで充分な時間(通常は、7〜9時間)置いた。そうして得られた培地を、ついで、51培養器に接種するために1〜100倍希釈で使用する。培養器内には、前述したフラスコの培地と等しい培地が含まれている。この培養を、培養容量について1分間に1空気容量と等しいエアレーションで37℃で14時間保持する。
【0091】
その培養が終結すると、細菌細胞を、1分あたり6000回転(rpm)で遠心することによって収集した。その細菌細胞を、遠心した細菌の湿重量のグラムあたり6ml以下の量の、1mMのジチオスレイトール(DTT)を含む適切な水溶液中に懸濁する。細菌懸濁液を、確立かつ記載された技術(たとえば、超音波破砕または水圧破砕など)によって細胞溶解に供する。
【0092】
得られた懸濁液を、遠心分離によって回収し、そして固体部分を、1mMのDTTを含む50mlの塩化ナトリウム水溶液中に懸濁し、再度、遠心分離する。
【0093】
封入体からなる固体成分を収集し、そして、室温で、6Mのグアニジン塩酸塩、50mMのTris−HCl(pH8)、および0.1mMのEDTAを含む450mlの溶液中に激しく撹拌しながら懸濁する。その懸濁液を遠心分離し、そしてその上清をタンパク質の再生に適する50mMのTris−HCl(pH8)および0.1mMのEDTA(pH8)を含む塩化ナトリウム溶液中に1〜100から1〜200の比で希釈する。再生用の溶液は、たとえばグリシンまたはアルギニンなどのアミノ酸;たとえばグルタチオン、エタノールアミン、システインなどの形成されたジスルフィド結合を有する酸化形態および還元形態で硫化物を含む化合物の混合物を含み得る。再生を、4℃でほとんど72時間、この溶液を激しく撹拌しながら実施し、ついで、この溶液を濾過し、ついで、最終濃度係数が5〜10倍になるまで、40mMのTris−HCl(pH8)によって作製された緩衝液に対して透析濾過(dia−filtration)方法によって濃縮する。この溶液の最終濃度は、通常、0.4mg/mlと1.0mg/mlとのあいだである。
【0094】
実施例2
(組換えα2b−インターフェロン(rIFNα−2b)の精製)
1Mの酢酸ナトリウム溶液を、実施例1で生じたrIFNα−2bを含むタンパク質混合物に、最終濃度が20mMになるまで添加し、そしてその混合物を、酢酸でpH5.5にする。そうして得られた溶液を、市販のクロマトグラフィーマトリクス Mustang(登録商標)S(Pall Corporate)を含む強力な陽イオン交換カラムに充填する。この陽イオン交換カラムを、20カラム容量(CV)と同量の20mM酢酸ナトリウム溶液(pH5.5)によって調整し、そののち、タンパク質溶液を充填した。
【0095】
ついで、1mlの固定相に充填されるタンパク質が10mg値の量を上回らないような量で、好ましくは6mg/mlと8mg/mlとのあいだの量で、このタンパク質溶液を充填する。
【0096】
充填後、固定相に結合する産物を、全体としての濃度が5mMと15mMとのあいだであるリン酸二水素カリウムおよび第二リン酸ナトリウムの混合液からなる塩化ナトリウム溶液(pH6.1)による洗浄の、第一サイクルに供する。この溶液の最適濃度を、伝導率が約1800μSを上回らないという事実に基づいて固定する。5CVと60CVとのあいだ、好ましくは、25CVと35CVとのあいだである溶液の全量を使用する。
【0097】
ついで、ある量の塩化カリウムを最終濃度が3mM、好ましくは2mMを上回らない濃度と同一の濃度になるように塩化カリウムが添加された第一サイクルの洗浄液と同様の溶液を用いることによって、洗浄の第二サイクルを実施する;10CVと100CVとのあいだ、好ましくは、30CVと60CVとのあいだである溶液の全量を使用する。
【0098】
この洗浄サイクルの後、溶出期を、最終濃度が10mM以上の濃度、好ましくは、15mMと25mMとのあいだである濃度の塩化カリウムを含む洗浄の第一サイクルの溶液などの溶液を用いることによって実施する。全体としての量が15CVと40CVとのあいだ、好ましくは、20CVと30CVとのあいだの溶液を、溶出のために用いる。
【0099】
すべての溶液および充填した試料は、0.1cm/分と1cm/分とのあいだ、好ましくは、0.4cm/分と0.7cm/分とのあいだである直線速度でカラムを通過させる。
【0100】
これらの条件下で、rIFNα−2bを、80%よりも高い目的産物の回収率で、98%よりも高い純度でカラムから溶出する。一方、開始溶液は、純度が約40%であった。
【0101】
カラムクロマトグラフィー精製の前後のカラムクロマトグラフィープロフィールを、図1および2に示す。
【0102】
図1は、精製前のインターフェロン溶液のクロマトグラフィープロフィールを示し、そして図2は、精製後のクロマトグラフィープロフィールを示す。
【0103】
クロマトグラフィープロフィールは、Vydac C18カラムおよび214nmに設定したUV検出器を用いる液体クロマトグラフHP 1090によるHPLCにおいて実施される。溶出は、以下の2つの溶離液からなる混合液を用いることによって1ml/分の流量で実施される;溶離液Aは、700mlの水、298mlのアセトニトリルおよび2mlのトリフルオロ酢酸からなり、そして溶離液Bは、198mlの水、800mlのアセトニトリルおよび2mlのトリフルオロ酢酸からなる。この2つの溶離液は、以下の表にしたがって溶出中に混合される:
【0104】
【表1】
【0105】
実施例3
この方法を、フタル酸二水素カリウムおよび水酸化ナトリウムからなる緩衝液を用いることによって実施例2の説明にしたがって実施する。
【0106】
実施例4
この方法を、第二クエン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムからなる緩衝液を用いることによって実施例2の説明にしたがって実施する。
【0107】
実施例5
この方法を、クエン酸および第二リン酸ナトリウムからなる緩衝液を用いることによって実施例2の説明にしたがって実施する。
【0108】
実施例6
この方法を、イミダゾールおよび塩酸からなる緩衝液を用いることによって実施例2の説明にしたがって実施する。
【0109】
実施例7
(ヒト血清アルブミンの精製)
ヒト血清アルブミン(HSA)は、Sigma(2000年のカタログ番号A1653)より購入した。このアルブミン調製物の名目上のラベルには、99.6%と記されているが、RP−HPLC分析では、実際には、アルブミン様産物を不純物とみなす場合、88%に等しいことを示す。HSA溶液を、1mg/mlに等しい最終濃度で、pH3の20mMのクエン酸溶液において調製し、そして市販のクロマトグラフィーマトリクス Mustang(登録商標)S(Pall Corporate)を含む強陽イオン交換カラムに充填した。この陽イオン交換カラムを、20カラム容量(CV)と同一の量で調整して、そののち、pH3.0の20mMのクエン酸溶液を充填した。
【0110】
充填した溶液の量は、1mlの固定相あたり、10mgの充填タンパク質の値、好ましくは、6mg/mlと8mg/mlとのあいだである量を上回らないような量である。
【0111】
充填後、固定相に結合した産物を、以下の洗浄サイクルに供する:
1.洗浄サイクル−pH5.5の20mMの酢酸ナトリウムを用いて40CV
2.洗浄サイクル−pH5.8の20mMの酢酸ナトリウムを用いて30CV
混合液の組成に依存して5mMと100mMとのあいだである濃度のリン酸二水素カリウムおよび第二リン酸ナトリウムの混合液からなるpH6.0の塩化ナトリウム溶液によって、このカラムからの目的産物の溶出を実施する。しかし、この溶液の伝導率は、140μSを上回らない。25CVと35CVとのあいだである溶液の全量を使用する。
【0112】
すべての溶液および充填した試料は、0.1cm/分と1cm/分とのあいだ、好ましくは、0.4cm/分と0.7cm/分とのあいだである直線速度でカラムを通過させる。
【0113】
これらの条件下で、HSAを、56%よりも高い目的産物の回収率とともに、99%よりも高い純度でカラムから溶出する。
【0114】
図3および4は、精製前後のHSAのHPLCクロマトグラフィープロフィールを示す。この分析は、以下の2つの溶離液の混合物を用いることによって、図1および2のために使用されたのと同一の手段で実施した;溶離液Aは、950mlの0.1%トリフルオロ酢酸および50mlのアセトニトリルからなり、そして溶離液Bは、950mlのアセトニトリルおよび50mlの0.1%トリフルオロ酢酸からなる。この溶出を、20%のBで開始し、20分間で、Bが60%に達する溶離液AおよびBの混合物の直線勾配を用いることによって1ml/分の流量で実施した。
【0115】
【発明の効果】
本発明によると、非常に多量の目的のタンパク質を高純度で単離することができる。
【0116】
また、本発明によると、精製は非常に簡潔となり、そして、タンパク質の精製費用を抑えることができ、容易かつ効果的な工業的実現を可能とする。
【0117】
本発明は、薬理学的に活性なタンパク質、主にインターフェロンタンパク質およびアルブミンタンパク質の精製に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】精製前のインターフェロン溶液のクロマトグラフィープロフィールを示す。
【図2】精製後のクロマトグラフィープロフィールを示す。
【図3】精製前後のHSAのHPLCクロマトグラフィープロフィールを示す。
【図4】精製前後のHSAのHPLCクロマトグラフィープロフィールを示す。
Claims (4)
- 組換えインターフェロンの精製方法であって、
1Mの酢酸ナトリウム溶液を加え、そして酢酸でpH5.5にした組換えインターフェロンの培養による製造から生じるタンパク質混合物を、20mMの酢酸ナトリウム溶液によってpH5.5に調整した強陽イオン交換樹脂を充填したカラムに充填し、その結果、1mlの固定相あたりに、6mgと8mgとのあいだのタンパク質が存在する工程、
該カラムを2回の洗浄サイクルに供する工程であって、まず、5mMと15mMとのあいだの濃度のpH6.1の緩衝溶液を用い、ついで、2mMの塩化カリウムを添加した該同一の緩衝液を用いる工程、ならびに
最後に、15mMと25mMとのあいだの濃度で塩化カリウムを含む、5mMと15mMとのあいだの濃度のpH6.1の緩衝液を用いることによって該カラムから純粋な組換えインターフェロンを溶出する工程、
からなる方法。 - 前記緩衝水溶液が、リン酸二水素カリウムおよび第二リン酸ナトリウム、フタル酸二水素カリウムおよび水酸化ナトリウム、第二クエン酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウム、クエン酸および第二リン酸ナトリウム、またはイミダゾールおよび塩酸から選択される請求項1記載の方法。
- インターフェロンタンパク質に基づく医薬品に含まれる組換えインターフェロンタンパク質を製造する、請求項1記載の方法の使用。
- 前記組換えインターフェロンタンパク質が、組換えα−2bインターフェロンであることを特徴とする請求項3記載の使用。
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