JP3894635B2 - 浸炭部材とその製造方法並びに浸炭処理システム - Google Patents

浸炭部材とその製造方法並びに浸炭処理システム Download PDF

Info

Publication number
JP3894635B2
JP3894635B2 JP32048297A JP32048297A JP3894635B2 JP 3894635 B2 JP3894635 B2 JP 3894635B2 JP 32048297 A JP32048297 A JP 32048297A JP 32048297 A JP32048297 A JP 32048297A JP 3894635 B2 JP3894635 B2 JP 3894635B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carburizing
gas
temperature
cementite
carbon
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP32048297A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH11117059A (ja
Inventor
武盛 高山
直治 浜坂
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Komatsu Ltd
Original Assignee
Komatsu Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Komatsu Ltd filed Critical Komatsu Ltd
Priority to JP32048297A priority Critical patent/JP3894635B2/ja
Priority to US09/131,776 priority patent/US6258179B1/en
Publication of JPH11117059A publication Critical patent/JPH11117059A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3894635B2 publication Critical patent/JP3894635B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C8/00Solid state diffusion of only non-metal elements into metallic material surfaces; Chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive gas, leaving reaction products of surface material in the coating, e.g. conversion coatings, passivation of metals
    • C23C8/06Solid state diffusion of only non-metal elements into metallic material surfaces; Chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive gas, leaving reaction products of surface material in the coating, e.g. conversion coatings, passivation of metals using gases
    • C23C8/08Solid state diffusion of only non-metal elements into metallic material surfaces; Chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive gas, leaving reaction products of surface material in the coating, e.g. conversion coatings, passivation of metals using gases only one element being applied
    • C23C8/20Carburising
    • C23C8/22Carburising of ferrous surfaces
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C8/00Solid state diffusion of only non-metal elements into metallic material surfaces; Chemical surface treatment of metallic material by reaction of the surface with a reactive gas, leaving reaction products of surface material in the coating, e.g. conversion coatings, passivation of metals
    • C23C8/80After-treatment

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、浸炭部材とその製造方法並びに浸炭処理システム関し、より詳しくは鋼に対する浸炭,浸炭浸窒の効率化を図る方法およびこの浸炭、浸炭浸窒方法によって鋼表面に微細なセメンタイトおよび微細なセメンタイトと微細な窒化物を均一にかつ高分率で分散析出させる方法とさらに、このセメンタイトおよび窒化物の分散を図る浸炭、浸炭浸窒方法を用いた鋼製の転動部品等の浸炭部材とその製造方法並びに浸炭処理システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般的な浸炭方法として、浸炭温度に昇温後にまず、Acm以下の炭素ポテンシャルの浸炭雰囲気で浸炭する工程と同じ温度で炭素ポテンシャルを0.7〜0.9重量%に雰囲気を調整し先に拡散浸透させた炭素をさらに深く拡散させる工程を実施した後に、約850℃に降温した後に焼き入れるか、または先の拡散工程後に一旦冷却させたものを再度約850℃で加熱した後に焼き入れる(再加熱焼き入れ)ことが実施されている。
【0003】
特に近年では、鋼に対する浸炭、浸炭浸窒の生産性を高める方法として、RXガスをキャリヤーガスとし、ブタンガスなどをエンリッチガスとして利用したRXガス浸炭を950〜1000℃の高温度で実施する高温浸炭方法か試みられている。さらに、炭化水素ガスを減圧下で分解させた還元雰囲気中で浸炭・拡散する真空浸炭方法やNガス中に炭化水素ガスを混合させて加熱分解させた雰囲気中で浸炭・拡散させる浸炭方法を高温度で実施する方法が知られている。また、RXガス浸炭方法やNベース浸炭方法では大量生産性を得るために連続浸炭炉を用いて実施していることが多い。また、上述の浸炭方法においては浸炭処理後の浸炭層表面炭素濃度は0.7〜0.9重量%の共析成分ねらいであり、浸炭層表面部に炭化物が析出していないことが一般的である。
【0004】
また、特別な浸炭方法としては、2度以上の浸炭サイクルを繰り返して、少なくともその内の1サイクル以上がAcm炭素濃度以上の炭素ポテンシャル雰囲気下で浸炭されることによって、鋼表面層中に炭化物を分散させる高炭素浸炭方法がある。これは、鋼の転動強度を高める浸炭方法として開示されている技術であり、例えばRXガス浸炭方法を用いた実施例としては、特公昭62−24499号公報に開示されているように930〜980℃の温度範囲において共析炭素濃度〜Acm以下の炭素ポテンシャルで6〜12hr予備浸炭した後に、一旦空冷あるいは焼き入れし、次いで750〜950℃の再浸炭温度まで20℃/min以下の昇温速度で再加熱した後に900℃で6hr,使用鋼材のAcm以上の炭素ポテンシャルで、表面炭素濃度が1.85重量%となるように浸炭を実施することによって、セメンタイトを浸炭表面層0.1mmにおいて30体積%以上析出させている。また、上述の浸炭技術と合わせて、30体積%以上のセメンタイトを析出させた鋼が優れた転動寿命を示すことについても報告されている。また、これらのセメンタイトを分散させる高炭素浸炭用鋼としては例えば特開平6−17225号公報に開示されているように0.5重量%以上のCr添加が必要要件となっていることが多い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のRXガス浸炭法における問題点は、CO−COガスをベースにした浸炭反応であることから、浸炭後の鋼表面層において粒界酸化層や不完全焼き入れ層の発生を防止することができず、例えば歯車においては歯元曲げ強度が劣化したり、歯車の歯面強度が劣化したりするのが避けられず、特に、近年においては、歯車減速機のコンパクト化や伝達動力の高負荷化が必要とされる場合においては浸炭雰囲気下における酸化反応を防止する浸炭方法が必要とされている。
【0006】
また、一般的には、浸炭雰囲気中のCOをコントロールしながら表面炭素濃度を精度制御する浸炭処理は、高温浸炭条件でのCOによる炭素ポテンシャル制御が非常に困難であることから、通常900〜950℃において処理され、一般的に長時間の処理が避けられない問題がある。特に大型の歯車に対しては2日以上の時間を必要とすることが多く、その処理費用が非常に高価になることは良く知られている。さらに、長時間の浸炭処理によっては粒界酸化層や不完全焼き入れ層がより深くなり、歯車によっては歯面部の研削が避けられず、歯車製造コストのさらなるアップに繋がる問題がある。
【0007】
上述のRXガスによる普通浸炭を高温度において実施する場合には、例えば1000℃での浸炭期の炭素ポテンシャル(浸炭雰囲気ガスの浸炭能力を示すもので、純鉄を浸炭したときに平衡する炭素濃度(重量%)で表すものである)1.5±0.1をコントロールするにはCO濃度を約0.035〜0.045%の範囲で制御し、かつ拡散期での表面炭素濃度(浸炭された部材表面の炭素濃度を示すもの)を0.8±0.1重量%に調節するにはCOを0.1±0.02%の範囲に調整する必要があり、1100℃での浸炭による表面炭素濃度を1.5±0.1重量%にコントロールするには、CO濃度を0.015〜0.020%に制御し、表面炭素濃度を0.8±0.1重量%に調節するにはCOを0.035〜0.05%の範囲に調整する必要があるなど、炭素ポテンシャルの制御牲に多くの問題がある。
【0008】
上述のRXガス浸炭方法の問題点とされる浸炭処理の長時間化と粒界酸化などの表面異常層の発生を防止する対策として、約10torr以下の炭化水素ガス雰囲気中で浸炭する真空浸炭方法やNベース浸炭方法が検討されている。しかし、例えば真空浸炭法においては炉内のCHガス濃度を測定,コントロールしても炭素ポテンシャルの指標として使用することができずに、浸炭時には理論量のCH濃度の数倍〜数十倍以上の添加が必要になり、実質的な炭素ポテンシャルの制御ができず、時には浸炭表面層に浸炭時にセメンタイトが粒界に粗大化して析出するようなことが防止できない問題がある。また、これらの防止策として、浸炭途中で浸炭ガスの供給を止めて所定時間の拡散処理を実施するなどの、内藤武志の参考書にもあるように、必要浸炭深さや使用鋼種に応じて、多く操業条件はノウハウに頼らざるを得ないことなどを考えた場合には、品質的な安定性や設備上のメンテナンス費用や真空トラブルの防止が困難な問題がある。また、浸炭処理後の冷却によって板状の初析セメンタイトの析出を防止するために表面炭素量を0.7〜0.9重量%に調整する場合には、一般的に浸炭時間の2〜3倍の時間を拡散時間に費すことが必要となり、特に大型の歯車類のように深い浸炭深さを必要とする部品にとっては生産性を低める大きな要因となり、問題である。
【0009】
さらに、真空浸炭法では炭化水素ガスの分解によるスーティングの問題が発生しやすくなることや大量の部品を対象とするときには10torr程度の真空下での浸炭では部品に浸炭ムラが発生し易いため、より高濃度の炭化水素ガスを必要としてよりスーティングの発生が問題となる。また、堆積されるスーティングは、連続真空浸炭処理化に対する装置的な困難性をあたえることに起因する多くの問題がある。
【0010】
また、上述のような粒界酸化性を防止する観点から、酸化性ガスを極力抑制したNベース浸炭方法が各種検討されているが、浸炭時の炭素ポテンシャルがRXガス浸炭法と同じCOガス濃度の制御によることから制御性に同じ問題がある。
【0011】
また上述のRXガス浸炭方法やNベース浸炭方法の生産性を高めるために連続浸炭炉を使用した場合が多いが、この場合は同じ浸炭条件で浸炭可能な多量の部品が存在している場合に効率的であるが、近年の多品種少量部品群への対応には逆に非効率的な浸炭手段となることが問題である。また、仮に真空浸炭方法において連続化を図った場合においても、上述の連続浸炭炉での多品種少量品に対する生産性と同じ問題点があることになる。
【0012】
さらに上述のいずれの高温浸炭方法においても、その浸炭処理中の鋼のオーステナイト結晶粒の顕著な粗大化は共通の問題であり、例えば歯車材に適用された場合には、歯元曲げ強度が顕著に劣化することが予測されるため、オーステナイト結晶粒の微細化処理が必要となり、高温浸炭方法を適用するときの問題点となっている。なお、前記オーステナイト結晶粒は、焼入れ処理によってマルテンサイト組織化するが、界面活性剤を添加した腐食方法によってオーステナイト結晶粒を検出できることから、通常オーステナイト鋼の結晶粒と区別するために旧オーステナイト結晶粒と呼ぶ。
【0013】
次に、浸炭による転動歯面強度を向上させる手段として、上述のように浸炭によるセメンタイトを30体積%以上に分散させる技術が開発されている。前述の特公昭62−24499号公報に記載されているように分散析出させるセメンタイト平均粒径を微細に制御しない場合においては、分散させた粗大セメンタイトが歯元曲げ応力の応力集中を助長して、結果的に歯車の歯元曲げ強度を劣化させることが非常に大きな問題となっている。特に、950℃以下の温度においてAcm濃度以上の炭素ポテンシャルを維持しながら浸炭して炭化物を析出させる上述の公開技術においては、最表面部でのセメンタイトが極度に粗大化し易いことや粒界に炭化物が析出したり、炭化物が粒界において凝集するため、極度の曲げ強度を劣化させるにとどまらず、面圧強度に対しても悪い影響を与えることが問題となっている。特に高速回転する歯車ほど面圧強度の劣化が顕著に現れることは問題である。
【0014】
また、上述の内藤武志の参考書に在るように浸炭表面層に炭化物(セメンタイト)を分散析出させる方法として、真空浸炭の浸炭サイクルを何回か繰り返す方法が挙げられているが、この場合においても同様に粒界にセメンタイトが優先的に析出し、かつそれらのセメンタイトが凝集して粗大なセメンタイトになるため曲げ強度が顕著に劣化することが問題である。
【0015】
これらの析出するセメンタイトを微細化するためにCr等の合金元素を多量に添加することや再浸炭温度を低めることが考えられているが、前者においては先の高温浸炭時にセメンタイトが析出することや悪戯に鋼を高価なものを使用することになる点で問題となり、また、後者の方法では再浸炭時間が必要以上に極めて長時間化し、コスト的に高価になる問題がある。
【0016】
本発明は以上の問題点に鑑みて、鋼表面層にセメンタイト粒子を均一に、かつ疲労強度に影響をほとんど与えないほどに細かく分散させるとともに旧オーステナイト結晶粒の微細化を同時に可能とする方法を高温浸炭方法とその浸炭方法に適用される鋼種成分を規定することによって実現するものである。
【0017】
さらに本発明では、上記高温浸炭方法と再浸炭方法に改善を加えることによって、より微細なセメンタイトを効率よく分散させるとともに生産性良く実施するための浸炭処理システムを提案するものである。
【0018】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
本発明の主旨である、浸炭層にセメンタイト粒子を微細に分散する手段としては、高温浸炭によって浸炭時における粗大セメンタイトの析出を防止しつつ、1.2〜2.0重量%にまで迅速に表面炭素濃度を高めて、かつ所定深さにまで炭素を浸透させ、再加熱処理によってこれら浸炭層に微細セメンタイトを多量に析出させるとともに、これら微細セメンタイト粒子を利用して旧オーステナイト結晶粒を微細化することによって転動疲労強度と曲げ疲労強度を改善するものである。さらにまた、再加熱時において、セメンタイトを粗大化させない浸炭、浸炭浸窒および/または浸窒処理を実施させることによって、さらに、セメンタイト、窒化物および/または炭窒化物を微細に析出させることと高体積濃度の残留オーステナイトを生成させることによって転動疲労強度をより高めるものである。
【0019】
上記本発明の主旨に沿ってまず、セメンタイトの析出を伴わない高温浸炭方法と使用鋼材の関係について記載する。
【0020】
上述のようにセメンタイトの析出を伴わずに、高温度RXガス浸炭法で、高炭素ポテンシャル条件での浸炭が非常に困難な理由が、COガス濃度の難制御性と高温になるほどに浸炭能がより強力になることに起因していることは先述の通りである。本発明における第1要素が、浸炭層の表面炭素量を1.2重量%以上でセメンタイトが析出しない最大の炭素固溶度以下の範囲内に浸炭することにあるので、浸炭時の表面炭素活量がほぼ1になるような条件での高温浸炭方法について検討した。その結果、プロパン、メタンなどの炭化水素ガスの熱分解雰囲気において炭素が僅かに炉気内に析出している条件で浸炭した場合には、炭素鋼表面はほぼ炭素活量が1の状態で浸炭されることと、Cr等の炭化物形成元素を含む肌焼き鋼においても、特にAlの添加量を調整することによってセメンタイトが表面に析出しないことが明らかになり、本発明では、主に浸炭肌焼き鋼に使用される各種合金元素量が配合されている各種鋼を用いて、上記のスーティング状態での高温浸炭(980〜1100℃)を実施して、セメンタイトの表面析出状況を調査し、ほぼ炭素活量が1の雰囲気下で浸炭した場合にセメンタイトの析出しない鋼中の成分条件を下記のように求めた。特に上述のようにAlの添加の影響は0.05重量%以上において認められるが、なお、好ましくは0.1重量%Al以上として、かつ各種合金元素の添加作用の総和Parが1.5以下となるように調整されるのが望ましい。
1.9≧−5.6〔Si重量%〕−7.2〔Al重量%〕+1.1〔Mn重量%〕+2.1〔Cr重量%〕−0.9〔Ni重量%〕+1.1〔Mo重量%〕+0.6〔W重量%〕+4.3〔V重量%〕=Par
【0021】
この関係式に基づくとき、炭素との結びつきの強いCrを3.0重量%添加した場合においても0.6重量%のAlを添加することによって高温浸炭時においてもセメンタイトの析出が防止できることが推定され、後の微細セメンタイトの析出に有効なCrの多量添加を可能にしている。
【0022】
なお、炭化物形成元素のないNi,Al,Siの高濃度な添加はとりわけセメンタイト析出の防止に寄与することも確認されたことから、鋼材成分的にもコスト的に許容し得る範囲で添加することが好ましく、とりわけNiは5重量%以下、Alは2重量%以下の範囲において添加するのが好ましい。なお、後述のようにセメンタイトを浸炭表面に多量に析出させた再加熱状態では、焼き入れ性を高める機能をもつCr,Mo,V等の炭化物形成元素類はセメンタイトに濃縮し、母相がオーステナイト中のそれら合金元素濃度が低下して焼き入れ性が劣化するため、セメンタイトから吐き出され、母相オーステナイトに濃縮するNi,AlSiの積極的な利用は母相の焼き入れ牲を確保する意味からも好ましい。特に、Alは高温浸炭時のセメンタイ卜析出防止効果や焼き入れ性改善の点から最も効果的な機能を発揮するので、本発明では0.05重量%以上のAl添加を好ましいこととした。また、Alが高温浸炭後のガス冷却過程でのマルテンサイト変態を抑制しながら、靱性の高いベイナイト組織を優先的に析出させるとともに、冷却によるセメンタイトの析出を顕著に防止する作用が0.2重量%以上で観察され、特に0.35重量%以上で顕著となるので、ガスによる急冷で、例えば歯車の歯先コーナー部の変形や焼き割れ危険性を特に危惧する場合にはAl添加量を0.35重量%以上に調整しておくことが好ましい。
【0023】
さらに、Alの添加は高温浸炭後に冷却して、再加熱して浸炭浸窒するときにAlが雰囲気から浸透する窒素と鋼表面中において窒化物を強力に形成することによって、先の炭素活量に対するAlの作用が顕著に低減して、その結果としてCrの微細セメンタイト析出促進効果が高まる効果も期待できる。
【0024】
また、Vは上述の関係式からも理解されるように、Crよりも顕著なセメンタイト微細化効果を発揮するが、鋼中の炭素との結びつきが強すぎて炭化物を形成するため、従来の浸炭温度範囲では、多くのVを添加してもセメンタイトの微細化に効果的に作用する量が約0.2重量%程度であったが、高温浸炭法を採用することによって有効V濃度を0.6重量%まで高めることが可能となり、浸炭後の冷却、再加熱、再浸炭、浸炭浸窒時での微細セメンタイトの析出にさらにVを有効に作用させることができた。
【0025】
本発明で高温浸炭法を採用することの目的は、短時間で浸炭層の炭素濃度を1.2重量%以上でセメンタイトの析出を伴わない炭素濃度にまで最大に固溶させることと浸炭深さを深くすることにある。ほぼ炭素活量が1となる雰囲気下で、0.2重量%の炭素を含有する鋼を使って、例えば1040℃×1hrの高温浸炭では、最大固溶炭素濃度が1.7重量%になり、0.2重量%の炭素を含有する鋼での0.4重量%炭素濃度深さ位置までの距離(浸炭深さ)を比較した場合には、通常の浸炭条件930℃×1hrでの浸炭深さ(約0.5mm)と較べて2.3倍の深さに達しており、さらに、前述の意味合いの1.2重量%炭素濃度の表面からの位置を比較した場合には、930℃×1hrではほぼ0mmであるのに対して1040℃×1hrでは0.4〜0.5mmに達していることがわかる。
【0026】
上述のようにほぼ炭素活量が1となる雰囲気下で高温浸炭を実施するに当たって、浸炭雰囲気を減圧して行う真空浸炭方法や不活性なNガスをベースにして浸炭性のプロパンやメタンガスを添加して微量のスーティングを起こさせた条件をベースとして浸炭することが望ましい。例えば、減圧下で行う真空浸炭(減圧浸炭)では下記の式(1)、(2)に示すような分解によって発生するラジカルな炭素で浸炭されると考えられるため、減圧下ではル・シャトリエの法則に従ってより強力な浸炭性が高まると同時により高温側での浸炭温度を採用することによって、プロパン、メタンなどの炭化水素ガスの遅い分解反応が減圧条件で顕著に高まり、微量の炭化水素ガスによっても浸炭できることから浸炭時のガスコストを低減できることが理解できる。
Fe+C=Fe−C+4H・・・(1)
Fe+CH=Fe−C+2H ・・・(2)
【0027】
ところで、上式に従って、減圧下での水素ガス分圧とプロパンもしくはメタンガス分圧を管理して例えば水素ガス濃度を制御することによって炭素活量が管理されることが、特開昭52−66838号公報に開示されているが、先述の内藤武志の参考書にあるように実質的にはかなりの減圧下(例えば10−1torr程度)での分解反応でない限り、制御のための反応応答性が得られず、メタン平衡圧の数倍以上のメタン添加が必要となることが知られている。
【0028】
また、現実的には10torr以下の減圧下においては真空浸炭の操業上に問題を与えるようなスーティングの発生が無いことを考え合わせるとメタン、水素ガスの分圧測定による炭素活量の制御は実質的に有効性が発揮されない。なお、10torrの真空浸炭においても、ガス濃度の希薄性から浸炭部品の均一な浸炭性を保証することが困難な場合には、N等の不活性なガスを添加して雰囲気圧力を50torr以上に上げることによって顕著に改善できることは良く知られている。なお、本発明ではこれら減圧下での浸炭における浸炭実験を繰り返して確認した結果、炭素活量が1を越える浸炭雰囲気になった場合には、実質的には浸炭反応に先行するようにスーティングが発生し、炭素活量が1を越えて浸炭する能力が非常に少なく、かつ先述のように鋼材成分を調整することによって高温浸炭時の粗大セメンタイト粒子の析出が防止できることがわかった。従って、本発明では実質的なスーティング現象をコントロールすることによって炭素活量がほぼ1になるように制御できる浸炭方法を利用することが好ましい。ただし、これらの高温浸炭を連続的に長時間実施する場合には、長期間に累積されるスーティング炭素の問題を解決しておくことが好ましく、本発明では浸炭室での浸炭操業間においてCOガス類の弱酸化性ガスを添加することによって除去できるような浸炭システムを組むことによって解決した。
【0029】
なお、上述のような高温浸炭時のスーティング現象を積極的にコントロールするには、1)析出する炭素を迅速に酸化除去する、2)炭素が析出し難くするためのガス組成をコントロールする等の各手段が考えられるが、例えば、式(3)〜(5)の関係から下記のように検討した。
CO+C=2CO ・・・(3)
CH+CO=2CO+2H・・・(4)
CH+C=C+2H ・・・(5)
【0030】
1)スーティングを起こしている炭化水素ガスの分解ガス中にCOガスをパルス的に添加することによって一番迅速に式(4)が起こり、スーティング発生源のメタンガスを極めて還元性の高いCO+Hガスに変換するとともに、続いて既に発生している炭素を式(3)によってCOガスに変換させることが有効であり、式(5)に示したメタンからの炭素の析出速度を遥かに上回る速度でスーティングを除去、抑制できるようにすることが好ましい。特に既に発生している炭素をメタンからの析出速度以上の速さで除去するには、浸炭温度を少なくとも980℃以上に設定しておくことが必要であることがわかる(図1参照)。
【0031】
2)また、浸炭時のガスコストを考えた場合には、以上の議論から、式(3)のブルドア反応を減圧下で行わせることをベースとして式(4)で示されるメタンとCOの急激な酸化反応を利用してスーティングの少ない条件で上述の浸炭を実施することが極めて有効であり、かつ浸炭後の粒界酸化層の発現を抑えることができる。なお、例えば24%CO−29%H−47%NからなるRXガスの250torrにおける1000℃でのブルドア平衝で炭素活量が1の時に存在するCOは約40ppmであり、ほぼ粒界酸化性に対する危険性の無い状態にあり、さらに浸炭性の均一性が確保できる50torrにまで減圧した状態ではさらに安全になることがわかる。さらに、この状態に炭化水素ガスを極微量添加することによって過度のスーティングの発生を上記式(4)の反応性から抑制して、炭素活量をほぼ1に制御することが可能であることがわかる。なお、浸炭ガスとしてRXガスの代わりにメタノール等のアルコール類やアセテート類を使用した場合にも同じく使用できることがわかる。また、浸炭ガスとしてメタン、プロパンに限らずブタン、アセチレン等の他の炭化水素ガスを利用することも可能である。
【0032】
3)さらになお、炉内における加熱ヒーター部は常に炉内温度より高温状態にあり、浸炭ガス中のCHなどの炭化水素ガスとの直接的な接触によりヒーター部において炭素が析出しやすくなり、4)またCO等の弱酸化性ガスの添加によるヒーター部の消耗が大きくなりやすい等の設備的トラブルを発生させ易いことが問題となる。
【0033】
また本発明においては、浸炭加熱室のヒーターを例えば、図2に示すように改造することによって、例えば不慮の事故による炉内への炭素の析出が発生した場合や長期間の使用によって炭素が累積された場合においても、COによる析出炭素の酸化除去が容易に実施することができるし、浸炭サイクル終了後に次の熱処理部品を搬入する間に例えばCOによるスーティング除去処理が実施できるような構造にした。なお、ヒーター保護管内にはNガス等の不活性ガスを流せる構造とすること、保護管の一端は少なくとも固定することが無いようにすることが必要であり、両端を固定した場合には熱サイクルによる熱応力による破損が免れない欠点があるためである。
【0034】
なお、上述の浸炭ガス雰囲気のガスセンサーとしては質量分析計を使用することが好ましい。この理由は質量分析内の真空度が10−7torrオーダーであり、減圧下の炉内ガスを直接的に質量分析計内に導入することが極めて簡単であることおよび、図3に示した0.2torrのプロパンを1000℃で分解させたときのガス分析結果からわかるように、水素(2)、メタン(16)、HO(18)、炭素(12)等が極めて明確に独立して検出できることにあり、これらの結果と図1の関係からこれらのガス濃度を管理することによってスーティングを防止しながら、炭素活量がほぼ1の状態で浸炭することが可能になることがわかる。
【0035】
さらに、上述の高温浸炭中の表面炭素濃度を1.2〜2.0重量%の範囲内で調整する場合の手段としては、高温浸炭温度を調整することが最も簡便的であるが、生産性を考慮した場合にはさらに、1)高温浸炭後に浸炭雰囲気をカットして浸炭時間の1/2時間以内の拡散時間を設定して高温炭素濃度を調整して炭素活量を理想的な1から少なくとも0.8相当に制御すること、2)高温浸炭後に浸炭雰囲気中に前述のCO等の弱酸化性ガスを導入してスーティング調整する段階を組み入れることによって最表面層が非常に迅速に脱炭されること等の最表面での炭素濃度を低減する方法を講じることができる。さらに、3)高温浸炭後に浸炭雰囲気をカットもしくは調整する上述1)、2)の方法を高温浸炭温度で行うことはより効果的であり、例えば50℃以内の温度範囲において昇温させることで十分にその効果を発揮する。
【0036】
次に高温浸炭したときのオーステナイト結晶粒径について説明する。
一般的に950℃以上の高温度で加熱した場合には、オーステナイト結晶粒が顕著に粗大化することが知られており、通常Nbの微量添加による粗大化防止が図られている。しかし、1000℃を越えた加熱状態にある場合には粗大化防止効果が極めて少なくなり、例えばSNCM420H−0.05Nb処理鋼を1040℃×3hrの浸炭処理後の結晶粒半径は40〜50μmレベルに顕著に粗大化し、Nb添加のない鋼では70〜100μmに粗大化しており、先述のような強度的な観点から結晶粒の微細化が必要となるが、一旦粗大化した鋼においては微細化が困難である。
【0037】
本発明では後述のように、再加熱焼き入れによって浸炭層の結晶粒を顕著に微細化することによって高温浸炭による強度劣化を防止するとともに強度改善を積極的に果たすために、再加熱温度において1μm以下でかつ3体積%以上のセメンタイトを均一に分散析出させる炭素濃度(1.2重量%)の表面からの位置が例えば歯車においては(歯車モジュール×0.05)以上の深さにあり、再加熱・焼き入れによって旧オーステナイト結晶粒がASTM結晶粒度9以上に微細化されていることを特徴とした。例えば丸棒での曲げ応力下では、丸棒半径の約15%深さ位置に相当するまでを微細結晶粒化することに相当するが、これは表面にかかる最大応力の15%低減距離を微細強化していることを意味している。また、本方法に従うとNb添加などの高価な合金元素の添加を必ずしも必要としないことから高価な鋼材の必要性がないことにも寄与できる。
【0038】
また、以上のような高温浸炭法は、従来の真空浸炭法やRX浸炭法、およびNベース浸炭法で実施される拡散処理を実質的に必要としていないことに相当し、一般の拡散処理が浸炭期時間の2倍以上に実施されていることを考慮する場合に、本発明で使用する浸炭法は顕著に生産性を高める結果を持っており、後述の品質改善だけでなく、浸炭コストの低減に対しても顕著に責献していることがわかる。
【0039】
なお、浸炭操業において実質的な浸炭時間が短縮化される場合には、浸炭温度までの昇温に必要とする時間が長くなり、生産性を遅らせることが問題となるが、本発明では、浸炭工程の前段階となる予加熱室を浸炭室と分離して設けて、予加熱が中性ガス雰囲気もしくは真空雰囲気下で独立した温度条件で操業できるようにして、浸炭部と連動させて浸炭操業効率を高めると同時に余加熱室、浸炭室と独立したガス冷却室を設け、高温浸炭後に熱処理部品を冷却室に移送してガス冷却する一連の工程が不活性なガスもしくは真空中で実施できるシステムとして生産性を高めた。ガス冷却室には熱交換機を備え、かつガス室が10気圧にまで加圧できる構造であることが望ましいが、実質的にはガス冷却時の冷却ガス圧力は冷却ファンを備えることによって500torr〜2気圧の範囲にあることが設備コスト的な関係から好ましい。
【0040】
次に、本発明では、高温浸炭後の表面炭素濃度が1.2〜2.0重量%に高められていることから、放冷途中においては浸炭層の粒界に板状セメンタイトが多量に析出するため、これらのセメンタイト析出を防止するため、高温浸炭工程における浸炭終了後に浸炭雰囲気をカットした状態で50℃以下の温度範囲において昇温した後に上述の冷却室に移送し、不活性がスや非酸化性ガスなどによるガス急冷を実施するのが好ましい。
【0041】
また、次工程における再加熱浸炭、浸炭浸窒処理における熱処理部品の表面清浄度を確保するためには、冷却用のガスとしては、不活性なN,Ar,He,H等の1種または2種以上のガスを使用することが望ましい。
【0042】
また、上述のようなガス冷却を行うのは、浸炭層の炭素濃度が従来の浸炭表面炭素濃度に較べて非常に高いことから、焼き入れ油を用いた場合には焼き割れの危険性が大きくなることにより、少なくとも上記の浸炭部品の芯部組織が100%マルテンサイトであることを避けて、好ましくはベイナイトが主体となるように調整されることが多くなるため、冷却能をコントロールし易くするためである。
【0043】
また、ガス急冷後の鋼浸炭層の粒界に板状,針状セメンタイトが析出する場合には、高温浸炭時に析出する粗大なセメンタイトでない限り、後工程の再加熱処理時にほぼ粒状化することができるが、前述のAlの積極的な添加や上述の冷却開始温度の調整、ガス冷却能の調整等によって粒界の板状セメンタイトの析出を防止することが好ましい。さらに、浸炭層がパーライトになる場合には、再加熱時において、A1点温度を挟んだ熱サイクルを加えることによりほぼ粒状化を図ることができるが、粒状化に必要な時間が長時間に及ぶことから、できれば鋼の成分調整によって主体組織がベイナイトおよび/またはマルテンサイトからなるように組織化を図ることが望ましい。
【0044】
次に、転動強度を改善するために、浸炭層にセメンタイトを析出させる高炭素浸炭法について説明する。
【0045】
類似の高炭素浸炭法が特公昭62−24499号公報に開示されていることは前述の通りであり、この公報中の実施例においては930〜980℃での予備浸炭後に一旦室温近くに冷却して後、Ar1〜950℃に20℃/min以下の昇温速度で再加熱した後に、使用鋼材のAcm濃度以上の炭素ポテンシャルを維持させながら再浸炭して表面から0.4mm深さにセメンタイトを30体積%以上に分散析出させる方法が開示されている。また、その実施例では、組織写真にもあるように最表面部のセメンタイトが極度に粗大化するとともにセメンタイトが凝集して長く繋がった形状になることが示されている。また、このような粗大化やセメンタイトの極度の凝集は前述のようにセメンタイトによる応力集中が原因となって極度の強度劣化を示すことが明らかであり、この点に関しては言及されておらず、例えばよりコンパクトで高強度な歯車を製造する際には歯面圧強度を高めても歯元曲げ強度を劣化させることに繋がり目的を達成することができない。また、上述のように予備浸炭後に、Acm濃度以上の炭素ポテンシャルを維持させながら再浸炭によってセメンタイトをより多く析出させるときの、最表面近傍部でのセメンタイトの粗大化メカニズムを図4を使って検討すると、Cr等の炭化物形成元素をX含有する鋼をセメンタイトの析出を伴わずに表面炭素濃度がP1Xcとなる炭素ポテンシャルで高温浸炭し、一旦冷却後、再浸炭温度に到達した時点での既にセメンタイトが分散している表面組織のオーステナイト中の表面炭素濃度Xcと炭素ポテンシャルP2Xcで再浸炭するときに平衝するオーステナイト中の表面炭素濃Xcの炭素濃度差ΔXcが小さいために、再浸炭によって表面から浸透拡散する炭素量が非常に少なくなり、かつ、浸透拡散した炭素のほとんどが表面層に先に分散するセメンタイトに吸収される傾向が顕著になり、結果としては、分散析出するセメンタイトの粒子径dθがΔXcに反比例して粗大化することがわかる。従って先述の開示技術に従う限りにおいては、原理的にセメンタイト粒子の粗大化が避けられない問題であることがわかる。なお、析出するセメンタイトを微細化するには例えば760℃で再浸炭するのが良いことが写真比較において推測されるが、現実的な再浸炭処理としては非常に長時間の処理となり、かなりの処理コストが必要となる問題や例えば一般的なRXガス浸炭法では、実質的な浸炭反応が起こらないことが危惧される。
【0046】
なお、図5に示すような従来高炭素浸炭技術で浸炭して(図5(b)の浸炭サイクル)、浸炭層に析出させたセメンタイトが粗大化したり、セメンタイトの多量析出によるセメンタイト間の凝集体が顕著になる場合には、早期の歯面損傷を起こす危険が大きいことが示唆され、特に、高速回転で使用する歯車においてはその危険性が大きくなることが容易に推定される。
【0047】
そこで本発明では、分散させるセメンタイトをより確実に微細化させるために、前述のように高温浸炭によって表面浸炭層を炭素濃度で1.2重量%〜2.0重量%に高め、ガス冷却して前述のようにベイナイト、マルテンサイトを主体とする組織にしたものを一旦A1点温度以下の状態で加熱して、十分に微細なセメンタイト(平均粒径が0.5μm以下)を均一に分散させた後に、
1)A1点温度〜900℃に再加熱した後に焼き入れることによって、平均粒径1μm以下のセメンタイトを3体積%以上の深さ位置が、歯車モジュール×0.05(最表面に働く曲げ応力が15%減じる深さ位置)の深さ以上に分散析出させ、結晶粒度をASTM9番以上に微細化させるとともに表面浸炭層深さ0.05mm以上において平均粒径1μm以下のセメンタイトを5〜20体積%分散させて転動強度を高めるとともに曲げ疲労強度の改善を図った。
2)上述1)のように結晶粒を微細化する条件と5〜20体積%の微細なセメンタイト粒子を分散させた組織に、再加熱処理温度での使用鋼材のAcm濃度を越えない炭素ポテンシャルで浸炭浸窒または浸窒することによって20〜70体積%の残留オーステナイトを生成させ、靱性改善を図るとともに、転動中の応力によって残留オーステナイトから生成されるマルテンサイトを分散セメンタイトにより微細化することによって転動強度を高めた。
3)上述2)のような再浸炭浸窒または再浸窒によって、20〜70体積%の残留オーステナイトを生成させるとともに、浸透拡散する窒素とAlを反応させて、Alを主体とする平均粒径約0.2μm以下の窒化物をさらに15体積%まで分散析出させて転動強度を高めた。
【0048】
さらに、上述1)2)3)に加えて微細なセメンタイ卜粒子の体積%を増大させる浸炭手段としては、先述のセメンタイトの粗大化メカニズムを参考にして、
4)上述1)2)3)のように結晶粒を微細化する条件に加えて、再加熱の浸炭または浸炭浸窒雰囲気を使用鋼材のAcm濃度を越える炭素ポテンシャルと越えない共析炭素濃度の炭素ポテンシャルを周期的に与えて過剰浸炭させることによって浸炭層最表面近傍におけるセメンタイトの粗大化を防止して、平均粒径が3μm以下の微細なセメンタイトを15〜35体積%およびAl窒化物を0〜15体積%範囲内になるように分散させ、かつ前述の残留オーステナイトを生成させることによって転動強度を高めるとともに曲げ疲労強度の劣化を防止した。
【0049】
なお、上述の1)、2)、3)、4)ではA1点温度以上に加熱する前にA1点温度以下で一旦加熱保持を実施しているが、この目的はフェライト中にまずセメンタイトを微細で均一で多量に(〜30体積%)分散させ、かつセメンタイト中にCr,Mn,Mo,V等の元素を迅速に極度に濃縮させてセメンタイトをより安定化させた状態にした後に再加熱温度に昇温することによってセメンタイトをより微細な状態に保持させることを目的としているので、例えば600℃〜A1温度間を5℃/min以下の緩やかな昇温速度で加熱することによっても同じ目的を達成できると考えることができる。さらに、4)のようにA1点温度から900℃の範囲で再浸炭によるセメンタイトの析出を図る場合には、通常の炭素ポテンシャル調整に加えて、アンモニアを連続的に添加または間欠的に添加させることによる浸炭浸窒雰囲気下で、窒素を多量に拡散浸透させながら、炭素ポテンシャルをより高炭素条件に高めたり、炭素ポテンシャルを変動させる方法が、さらなるセメンタイトを析出もしくは成長させるときの粗大化抑制効果を発現させるものである。
【0050】
なお、上述1)の再加熱後に焼き入れる方法では、加熱方法が脱炭作用の無い雰囲気下で実施されることが好ましい。また、上述4)の再浸炭によるさらなるセメンタイトの微細析出が浸炭雰囲気にアンモニアを添加した浸炭浸窒条件で特に有効であることは上述の通りであるが、さらに、上述の理由でNi,Si,Alを多く添加した鋼を使用する場合や、Cr,V添加量を多くする場合には、微細なセメンタイトを析出させるだけでなく、例えばAlの添加による0.2μm以下の窒化物が微細に析出することによって、転動強度の改善に極めて効果的な作用を示す。この作用は先の微細なセメンタイトを分散させる高炭素浸炭方法に、浸炭浸窒による更なる微細セメンタイトおよび/または極微細窒化物の分散析出の効果を合わせることによって極めて優れた転動強度を得ることができるとともに、表面層に窒素の固溶による焼き入れ性の改善効果や焼き入れマルテンサイト組織の顕著な微細化、複雑形状化、残留オーステナイト形成および残留オーステナイトの加工処理による圧縮残留応力の効果がさらに転動強度、曲げ強度の改善に有効に利用できる特徴が付加できる。
【0051】
なお、鋼中の合金元素の高温浸炭に対する役割については前述の通りである。以下においては再加熱焼き入れ時と高炭素浸炭時のセメンタイトの微細化に対する合金元素の影響を検討する。
【0052】
Cr:
鋼中のCrは、セメンタイトの微細化に顕著な役割を果たし、特にフェライト中に分散するセメンタイトに対しては他の合金元素に較べて最もセメンタイト中に濃縮する傾向が強く、セメンタイトを効果的に微細化するとともにセメンタイト粒の成長を抑制する作用を示す。さらに、オーステナイト中に分散するセメンタイトに対してもVについでセメンタイト中への濃縮化傾向が強く、上述と同じセメンタイトに対する効果を示す。なお、セメンタイトの微細化効果の観点からすると0.3重量%以上の添加が好ましい。また、再加熱温度において浸炭浸窒および浸窒処理を施す場合において、Crが母相中に1.5重量%以上含まれているとCr窒化物が粒界に析出しやすくなるため、上述の条件においてはCrを減量するか、0.2重量%以上のAlとVの1種以上との複合添加によって防止することが必要である。また、3.5重量%を越えて添加した場合には、表面層にCr炭化物が析出するようになるが、最表面層においては粗大セメンタイトが析出するため、転動強度や例えば曲げ疲労強度の点で好ましくない。この粗大セメンタイトの析出を防止するためには、通常浸炭時の炭素ポテンシャルを抑制する必要があるが、本発明では、前述のParの関係式において最も効果的にセメンタイトの析出を抑制するSiとAlを次の近似式の関係に従って共存させることにより制御が可能である。
5.6×〔Si重量%〕+7.2×〔Al重量%〕≧2.1×〔Cr重量%〕
上述の関係から、(Si+Al)重量%の下限値は1重量%であることがわかる。また、上限値は、後述のSi,Al添加量の上限値を考慮して2.5重量%が好ましい。
【0053】
V:
Crと同様のことはVにおいても認められ、例えばフェライト/セメンタイト間の濃縮傾向はCr,Mnについで大きくセメンタイト中のV濃度はフェライト中のV濃度の約10倍に濃縮化され、また、オーステナイト/セメンタイト間の濃縮傾向ではCrよりも極めて顕著であり、Crの2倍程度の濃縮傾向を示し、セメンタイトの微細化、均一分散性に顕著な効果がある。ただし、VはVC特殊炭化物を形成しやすく、高温浸炭中において析出しやすくなるため、セメンタイトの微細化に作用させる添加量が制限される。本発明では従来浸炭よりも高温で浸炭させることによって有効V添加量を多くすることができているが、VCの固溶度積に関する従来の結果から類推して0.7重量%以下に抑えておくことが好ましい。なお、再加熱温度での浸炭浸窒もしくは浸窒を実施した場合には、Vは浸透してくる窒素とも反応して、より微細な平均粒径0.3μm以下の炭窒化物V(CN)を分散析出させる役割を持つことからより顕著なセメンタイト微細化効果と同時に炭窒化物析出効果による転動強度の顕著な改善が可能となる。なお、上述の効果から考えて、添加量はセメンタイトの微細化に効果を発現し始める0.1重量%以上が望ましい。
【0054】
Mo,Mn,Nb,Ti,W:
Cr、V以外にも上記の炭化物安定化元素に対しても考慮されなければならないが、Ti,Mo,Nb,W等はセメンタイトの安定性に対してさほどの影響が無いので、通常の機械構造用肌焼き鋼としての使用範囲に限定しても良いと考えられる。また、高温浸炭時の結晶粒粗大化防止の観点からNb,Tiを通常の範囲で添加することは問題とならない。
【0055】
Al,Ni,Si
多量のセメンタイトを分散析出させた状態においては、上述のCr,Mn,Mo,V等の合金元素がセメンタイトに濃縮し、オーステナイト母相中の合金元素が希薄になることによって、オーステナイトの焼き入れ性が顕著に低下するようになるため、セメンタイトよりもオーステナイト中に濃縮するNi,Al,Siの1種以上を0.1重量%以上添加することが望ましい。また、これらの添加量の上限はNiはコスト的な観点から5重量%とすることが望ましく、またAl,Siは製造上の介在物量の観点から2重量%以下とした。さらに前述のようにAlは再加熱温度での浸炭浸窒および/または浸窒処理によって、浸透する窒素と反応して平均粒径0.2μm以下の微細なAlN窒化物を多量に析出し、転動強度をさらに高める作用がある。
【0056】
なお、再加熱温度での浸炭浸窒または浸窒処理によって浸透拡散させた表面の窒素(濃度)は、表面層の焼き入れ性を顕著に高めるとともに残留オーステナイトの生成量を増す役割を果たし、前述の残留オーステナイト量を安定して確保するためには、0.2重量%以上が必要であり、より好ましい40〜60体積%の残留オーステナイトを得るには、0.4重量%以上が必要と考えられる。
さらに、Alなどの窒化物AlNを析出させる合金元素を含む場合には合金元素に見合ったNの濃化が表面層において観察されるため、窒素濃度の上限値は母相に固溶する窒素濃度(0.2〜0.8重量%)と窒化物によって固定された窒素濃度から規定されるべきものであるが、実質的窒化物形成元素であるAlの最大添加濃度から推定して、ほぼ表面窒素濃度は0.4〜2.0重量%が好ましい。
【0057】
本発明では、実質的にはA1点以下の温度においてできるだけ細かな平均粒径0.2μm以下のセメンタイトを多量に(〜30体積%)析出させたのちに、A1点温度以上の再加熱浸炭温度に加熱するときにおいてもセメンタイトが容易にオーステナイト中にとけ込むことを防止して、平衝状態でのセメンタイトの存在量3〜7体積%を実質的に上回るように分散させることによって結晶粒度を12以上に細かくするようにして、顕著な細粒浸炭層を形成させたことを特徴としており、歯面強度、曲げ疲労強度の改善を意図させることを特徴とした。さらに、再加熱浸炭工程4において、先に析出されたセメンタイト粒が微細であるほど再浸炭で析出させるセメンタイトの核数を増大させることに繋がるようにして、900℃以下の浸炭、浸炭浸窒によってさらに増大させ、平均粒径が3μm以下で、10〜35体積%に析出させ、結晶粒度が12以上に粗大化することの無いようにしながら、セメンタイト分散による面圧強度の改善を図ったことを特徴としている。なお、再加熱浸炭温度が900℃以上に高くなる場合においては析出するセメンタイト粒子サイズが3μmを越えたりセメンタイトの凝集性が高くなる結果、上述の切り欠き効果による強度低下が問題になるので900℃以下にした。さらになお、工程4に於けるA1温度以下でのセメンタイト微細化処理を実施しない場合においては再浸炭後のセメンタイト粒サイズが大きくなり、3μm以下の細粒セメンタイトを実現するには800℃以下での高炭素浸炭処理が必要になることがわかり、先の公開技術(特公昭62−24499号公報)の実施例からの結果と良く対応することがわかった。
【0058】
先の結晶粒微細化作用を実現するための必要深さは前述の通りであるが、セメンタイトが分散した再浸炭層深さや浸炭浸窒および浸窒によって窒化物が分散した浸窒層深さは、転動面のヘルツ面圧計算から求まる最大せん断応力深さ位置を考慮して通常の産業機械用歯車サイズの範囲では0.05〜0.5mmの範囲にあれば十分と考えられる。このことは高炭素浸炭に限らず、浸炭浸窒および/または浸窒によって析出する微細な窒化物層深さについても当てはまることである。
【0059】
特に、球状セメンタイトを10〜35体積%を分散させた後に焼き入れ処理を施すに当たって、Cr,Mo,V,Mnなどの合金元素がセメンタイト中に高濃度に濃縮し、母相オーステナイトの焼き入れ性が顕著に低下するようになることからセメンタイト中に濃縮しないNi,Al,Siの1種以上を0.2重量%以上添加することが望ましい。また、これらの添加量の上限はNiはコスト的な観点から5重量%とすることが望ましく、また、Alは製造上の介在物量の観点から2重量%以下とした。
【0060】
本発明においては、工程4での浸炭および浸炭浸窒によって炭化物、炭窒化物および窒化物を細かく分散析出させることが重要であるが、上述の浸炭、浸炭浸窒処理後にそれらの雰囲気をカットして50℃以下の温度範囲において昇温した後に焼き入れることは先の工程2と同じ作用を有することから好ましいことと考え、さらに、それらの雰囲気を真空状態にして、先の雰囲気から鋼中に固溶している水素ガス成分を脱水素処理することも後の遅れ破壊性低減に有効に作用することが明らかであり、特に面圧強度の改善に好ましく作用すると考えられる。
【0061】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例について、図面を参照しつつ説明する。
【0062】
1)試験片の準備
本実施例に用いた供試鋼の組成を表1に示し、本発明鋼を○印で示した。供試鋼中の炭素濃度は歯車などの肌焼き鋼の例としてよく使用される約0.2重量%範囲とした。さらに市販のSCM420H(No.3),SNCM220H(No.4),SNCM420H(No.5)をも使用した。
試験片形状は図6〜図8にそれぞれ示した炭素分析用丸棒片,回転曲げ疲労試験片,ローラピッチング試験片を用いて実施した。なお、ローラピッチング試験片用の大ローラ片にはSUJ2を焼き入れ焼き戻し、硬度をHrC64に調整して使用した。
【0063】
【表1】
【0064】
2)浸炭および浸炭浸窒の実験
本実験に使用した浸炭用熱処理炉の概略(内部構造)を図9に示した。加熱時真空度としては0.1torrまでに達することができ、最高使用加熱温度としては1250℃まで可能である。冷却は別室において、Nによる2気圧の加圧冷却が可能なようにしてある。浸炭室の炉気分析は、サンプル導入管を挿入して直接的に質量分析計によって実施した。なお、質量分析計へのガスの導入は質量分析計の測定真空度を2×10−7torrに減圧することによって実施した。
【0065】
(2−1)スーティングの発生状況確認
炭化水素ガスとしてプロパンとメタンガスを使用して、1040℃×1hrにおける雰囲気圧力とスーティング状況を試験片(No.3を使用)上への炭素の析出状況と質量分析計による炭素の計測から調査した結果を図10にまとめて示した。プロパンガスを使用した場合には10torr以上において明確なスーティングが認められ、メタンガスを利用した場合には25torr以上において認められた。何れの場合においても希薄なガス雰囲気であり、通常の実験規模での浸炭には浸炭が問題なく実施できる範囲である。図6に示した炭素分析試験片の穴部の浸炭深さを比較した場合にはメタンガス20torrよりもプロパンガス10torrの方が極めて薄いことから、メタンガス20torrにプロパンガス5torrの混合ガスの使用の方が良い結果が得られた。しかし、多量の部品量を扱う生産時においては、従来から知られているように浸炭の不均一性の発生しやすい状況にあり、また、浸炭ガス濃度の均一性を確保するために流量を大きくするなどの問題があると考えられる。特に、浸炭時のガスの攪拌が効果的に作用する200torr以上に高めることができるとこれらの問題が解決すると考えられたので、プロパン20torrにNガスを添加して50〜200torrの範囲でNガスによる圧力変動を行わせて、炉気攪拌した条件で1040℃×1hrの浸炭処理を実施した結果、上述穴部での浸炭性が顕著に改善されていることが確認できた。
【0066】
同様の観点からプロパン200torrとしてCOガスによるスーティングコントロールを実施しながら約250torr近傍での浸炭においても上述穴部浸炭性の確保が可能であることを確認した。
【0067】
さらに、プロパンを約20〜50torrの範囲で添加しながらRXガスで100〜200torrに圧力変動させ、かつCOでスーティングコントロールして浸炭した場合においても効率の良い浸炭が可能であることが確認できた。このことは例えばRXガスの代わりにメタノールおよび/またはメタノール+Nの混合気体を用いることができることは明らかである。
【0068】
次にプロパンガスを浸炭ガスとして使用した場合のスーティングコントロールができるプロパンガスの最大使用限界を、1040℃×1hrの浸炭熱処理サイクルで、No.3の浸炭試験片を使って、約350torr以上においてスーティングが多くなりすぎてコントロールし難くなり、試験片中に5μm以下の粒界酸化層が部分的に発生し始めた。コントロール性はCOガスの供給方法によって改善することができると考えられるが、現実には250torr以上に浸炭ガス量を高めることの生産的な利点や浸炭の均一性に対する利点があまりないと考えられる。従って、プロパンを浸炭ガスとして使用する際には、従来の浸炭報告と考え合わせると1〜250torrが好ましいと考えられる。さらに好ましくはNガスによって10〜50torrに相当する浸炭ガスを希釈しながら、かつNガスの流量を変更させながら炉気を攪拌して、実施することがコスト的にも最も適していると考えられる。
【0069】
上述の実施例ではスーティングコントロールにCOガスを使用しているが、図1に示したCH,CO,CO,C,HO,H,NH間のガス反応定数の関係を用いて検討すると、HOについても浸炭ガス雰囲気に過剰に含まれるCHに対する急速な分解反応性を示すことが明らかである。また同図から、約980℃以上の温度において、一旦析出した雰囲気中の炭素に対しても、メタンから析出する炭素量よりも多くCOに変換できることが明らかであり、浸炭室内の炭素の析出を防止することができる。
【0070】
また、浸炭加熱室のヒーターを図2に示すように改造することによって、例えば不慮の事故による炉内への炭素の析出が発生しても析出炭素の酸化除去を容易に実施することができるが、この点に関しても本発明範囲である。なお、ヒーター保護管内にはNガスを流せる構造とすること、保護管の一端は少なくとも固定することが無いようにすることが必要であり、両端を固定した場合には熱サイクルによる熱応力による破損が免れない欠点を防ぐためである。
【0071】
(2−2)浸炭時の炭素濃度分布実験
プロパンガスを浸炭ガス(50torr)としてさらに、Nガスを加えて200torrに雰囲気を調整して、図11に示した熱処理サイクルとしたときの炭素濃度分布を図12,図13,図14に示した。
【0072】
図12はNo.1〜13の浸炭条件1040℃×1hrでCOによるスーティングコントロールを実施しない場合の結果を示したものである。また、図中の破線は表面炭素濃度がFeに対する黒鉛の固溶度に等しいと仮定したときの計算される炭素濃度分布を示したものである。また、表面組織観察による粗大セメンタイトの析出有無を表2にまとめて示したが、明らかに、Parの値が1.9以上の鋼材に認められることがわかった。
【0073】
【表2】
【0074】
また、図13は上述の条件に対してCOをプロパンガスの1/5以下の範囲において常時微量添加しながらスーティングコントロールを実施した場合の炭素濃度分布を示したものであり、また同図中の破線は上述と同様の計算炭素濃度分布を示したものである。図15(a)は図13の条件で浸炭した後でNガス冷却したNo.3試験片の表面浸炭層に析出した粗大化セメンタイトと粒界セメンタイト相(セメンタイトは白く光るもの)を示したものである。また、図15(b)は図15(a)と同じ条件で処理したAlを添加したNo.10試験片の表面浸炭層の組織写真を示したものであり、上述のNo.3と異なりセメンタイトの析出がなく、かつ冷却後の組織がマルテンサイトだけでなくベイナイトを多量に含んだ特徴的な組織になっていることがわかる。粗大セメンタイトの有無は表2に示した。
【0075】
さらに、図14は図12と同じ条件で、浸炭温度を930℃,980℃および1040℃で各1hr浸炭したときのNo.3試験片についての炭素濃度分布を示したものである。
【0076】
図12と図13から、まず共通していることは浸炭後の炭素濃度分布が計算値と極めて良い一致を見ることから、従来のRXガス浸炭法に較べて界面反応律速的な浸炭遅れの要因が無く、特に、図13のスーティング防止のためにCOを微量添加することによる浸炭遅れがないだけでなく、微量のCOガスの添加によってスーティング制御した場合の方が、図15(a)に示したように図12の条件でスーティングの防止を実施しない場合に較べてSCM420H(No.3)の浸炭試験片においても粒界セメンタイトの析出が認められた。このことの原因として、より分圧の小さいCO−COガス反応が図12のCHのメタン分解反応よりも、高温浸炭条件においてより活発となり、CHだけでの直接浸炭反応よりもより強力になることを示唆している。なお、COガスを流しすぎる場合においては表面層を脱炭することは明らかであるので、特に雰囲気ガス中のCH,H,HOガス濃度を監視しながら、添加CO量を制御することが必要であり、かつパルス的に制御することが好ましいと考えられる。
【0077】
また、一般的にCr添加量の大きいNo.6,No.8,No.12においては顕著なセメンタイトの析出が認められるが、Alを複合添加させたNo.2,No.7,No.9,No.10,No.11,No.13においてセメンタイトの析出が効果的に防止されていることがわかる。
【0078】
なお、図15(a)に示したNo.3試験片の浸炭最表面部のように粗大化、凝集したセメンタイトが存在する場合には、この状態で次の工程4の再加熱浸炭、浸炭浸窒焼き入れを実施した場合においても、図5のようなセメンタイトの粗大,凝集組織が得られることは明らかである。また、本実施例では図12の高温浸炭後のガス冷却前に浸炭ガスを止めて、真空中で30℃(1070℃)昇温させて、20分間(浸炭時間の1/3)保持した後に冷却することによって、これら粗大セメンタイトの析出を防止しておくことができることを確認した。さらに、図12の高温浸炭後のガス冷却前にプロパンガスの1/3流量のCOガスを15分間流して短時間脱炭させることによって粗大セメンタイトの析出を防止できることを確認した。なおこの理由は、高温浸炭時にセメンタイトが析出する場合には、図15(a)に示されているように最表面層近傍に限定されて析出されやすく、これが先の図4でのセメンタイトの析出メカニズムで粗大セメンタイトが析出していることを意味しているためであり、非常にわずかな脱炭処理を高温浸炭後に付加することによってコスト的にも大きな負担にならない範囲で、効率的に粗大セメンタイトが除去できることを確認した。また、この最表面の脱炭層の形成は後の工程4での再浸炭,浸炭浸窒による微細セメンタイトの析出にはΔXcを大きくする効果として作用するので好都合であり、転動強度の強化の観点からも問題のないことが推定できる。ただし、この脱炭法はCr等の添加量が多くなり、前述のParが2.5以上に大きくなると粗大セメンタイトの析出範囲が深くなることと表面炭素濃度が高くなりすぎることから脱炭処理時間が長くなり、かつ粒界酸化層がより顕著になるため、Parが1.9以下の成分の鋼に適用することが好ましい。
【0079】
図14に示すように、浸炭温度を930℃,980℃および1040℃として各1時間浸炭した時の表面炭素濃度はほぼハンセンの状態図に記載されている鉄に対する黒鉛の固溶度に相当していることが明らかであり、スーティングコントロールを行わない場合の浸炭時の炭素活量がほぼ1に、930℃以上の温度領域においてコントロールされていることがわかった。また、上述の高温浸炭時にセメンタイトを析出しない鋼として表2の結果を解析することによって、下記に示した成分関係を維持させることによって防止できることを明らかにした。
【0080】
(2−3)工程4における浸炭層の結晶粒の微細化に関する確認
16に本実施例で行った熱処理サイクルを示した。試験片No.5,SNCM420Hと0.5重量%V添加鋼(No.7)を使って、高温浸炭雰囲気は20〜50torrのプロパンガスにNを添加して約250torrに管理しながら、浸炭することを基本として浸炭温度1040℃×3hrで処理した後にNガス冷却(650torr)後、650℃×1hr加熱し、その後再浸炭温度800℃,900℃,950℃×2hrN中加熱した後に油焼き入れしたものの浸炭層の旧オーステナイト結晶粒の粒径、セメンタイト粒径、セメンタイト体積分率との関係を調べた結果を表3と図17,図18に示した。Vを0.5重量%添加したNo.7では、No.5に較べて、セメンタイトおよび旧オーステナイト結晶粒が一段と微細化されていることが明らかである。また、図18からは旧オーステナイト結晶粒径と(セメンタイト粒径/セメンタイト分率)の間にほぼ直線的な関係が存在し、ASTM結晶粒番号9(オーステナイト粒径約14μm)に相当するセメンタイト粒径/セメンタイト分率の条件が明らかであり、セメンタイト粒径を1μmに制御した場合には約2.2体積%のセメンタイト量を必要とすることがわかり、さらに焼き入れ温度を850℃と仮定したときには、炭素濃度が約1.2重量%になる位置において近似的に上述の結晶粒微細化条件を満足することが理解できる。
【0082】
【表3】
【0083】
さらに、図16の熱処理サイクルにおいて650℃×1hrの工程を無くし、900℃に直接過熱したNo.5の結果を図17に併せて示したが、セメンタイトの粗大化が起こることがわかる。
【0084】
(2−4)再加熱・浸炭浸窒処理による組織変化
(2−3)と同じ高温浸炭、ガス冷却したNo.7,No.10,No.11を850℃において2hr、炭素ポテンシャル1.0の条件でアンモニアを導入して浸炭浸窒処理を施した。析出するAl窒化物は平均粒径0.1μm程度の微細なものであり、かつ表面浸炭浸窒層での窒素濃度をEPMAで分析した結果は、Al添加量の増大に従って、ほぼ全量のAlが窒化物として析出していることと、母相中に固溶する窒素濃度が約0.6重量%であることを示しており、窒化物量は最大のNo.11で約7体積%である。また、このときのセメンタイト分散量は約10体積%であった。
【0085】
(2−5)再加熱・高炭素浸炭浸窒処理による組織変化
(2−3)と同じ高温浸炭、ガス冷却したNo.1,No.3,No.7,No.13を900℃において2hr、アンモニアガスを流さない状態で炭素ポテンシャル0.9の条件を固定して、アンモニアガスを間欠的に流すことによって表面炭素濃度を最大で2.0重量%になるように調整しながら処理した。図19にはNo.1のセメンタイトの分散状況を示したが、明らかに浸炭層中でのセメンタイトの粗大化が認められないことがわかる。また、図20には析出するセメンタイトの粒子径や再浸炭温度の関係を示した。また、比較のためにNo.3試料をアンモニアガスを流さないで、表面炭素濃度2.0重量%の条件を維持させながら高炭素浸炭した時の組織も図21に示した。さらに、Cr,Vを高濃度で添加したNo.7,No.13の浸炭組織を図22,図23に示した。
【0086】
(3)転動面圧強度の調査
図8に示したローラピッチング試験片を用いて、小ロ一ラの回転数を1000rpm、滑り率40%、油温60℃の条件で転動面圧疲労強度の確認を行った。準備した試験片は、(2−5)の条件で熱処理を行ったNo.1,No.3,No.7,No.13と上述のアンモニアを流さないで高炭素浸炭したNo.3(図21,図22中のKAP)と(2−4)の条件で熱処理を行ったNo.1,No.5,No.7,No.10,No.15および(2−3)の条件で熱処理を行ったNo.1,No.5,No.7,No.15である。結果は図24に示した通りである。図中の破線は表面炭素濃度を0.8重量%に調整した従来の通常浸炭を施したSCM420H材料の転動面圧のほぼB10寿命を示したものである。この結果からまず、従来のセメンタイト粒が粗大化している高炭素浸炭品に較べてセメンタイトを微細化した水準品はすべて顕著な転動強度の改善が確認されるとともに、分散析出セメンタイトに対する残留オーステナイトの改善効果も確認できる。特にAlを添加し、浸炭浸窒を行った(2−4)の熱処理水準品においても顕著な効果が確認できる。また、Crを高濃度に添加したNo.15においても、CrとAlNの分散析出効果が確認できる。
【0087】
(4)回転曲げ疲労強度の調査
図7に示した小野式回転曲げ疲労試験片を使用して回転曲げ疲労強度の確認を行った。準備した試験片は、(3)に記載した試験片水準から選んで実施した。結果は図25に示した通りである。従来のセメンタイト粒が粗大化している高炭素浸炭品No.3の疲労強度が、表面炭素濃度を0.8重量%に調整した従来の通常浸炭を施したSCM420H材料の疲労強度(図中の破線)に較べて顕著に強度低下を示している。これに対して、セメンタイトを微細化して、かつ結晶粒を微細化した水準は強度劣化することが無く、例えば上述のNo.7(2−5)やNo.13(2−5)についても結晶粒微細化の効果が疲労強度改善効果を生んでいることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、各種ガスの分解,合成平衡定数を示すグラフである。
【図2】 図2は、浸炭加熱室のヒータを示す断面図である。
【図3】 図3は、1000℃でのプロパンの熱分解の質量分析結果を示すグラフである。
【図4】 図4は、再浸炭によるセメンタイト析出の機構説明図である。
【図5】 図5(a)は、従来の高炭素浸炭によって得られる浸炭層の金属組織を示す顕微鏡写真、図5(b)は高炭素浸炭サイクルを示す図である。
【図6】 図6は、炭素分析用試験片の形状を示す図である。
【図7】 図7は、回転曲げ疲労試験片の形状を示す図である。
【図8】 図8は、ローラピッチング試験用試験片の形状を示す図である。
【図9】 図9は、浸炭炉の概略構造図である。
【図10】 図10は、メタン,プロパンのスーティング状況を示す図である。
【図11】 図11は、浸炭熱処理サイクル例を示す図である。
【図12】 図12は、図11に示した浸炭熱処理サイクルを行った場合の炭素濃度分布を示すグラフである。
【図13】 図13は、図11に示した浸炭熱処理サイクルを行った場合の炭素濃度分布を示すグラフである。
【図14】 図14は、図11に示した浸炭熱処理サイクルを行ったときのNo.3試験片の炭素濃度分布を示すグラフである。
【図15】 図15(a),(b)は、それぞれ図13の条件で浸炭したときのNo.3,No.10試験片の表面浸炭層の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図16】 図16は、本実施例で行った熱処理サイクルを示す図である。
【図17】 図17は、浸炭層のセメンタイト粒径と再浸炭温度との関係を示すグラフである。
【図18】 図18は、旧オーステナイト粒径とセメンタイト粒径/セメンタイト分率との関係を示すグラフである。
【図19】 図19は、アンモニアの間欠添加による高炭素浸炭組織の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図20】 図20は、浸炭層表面でのセメンタイト粒径と再浸炭温度との関係を示すグラフである。
【図21】 図21は、従来の高炭素浸炭法による歯車の歯面損傷例の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図22】 図22は、Cr,Vを高濃度で添加したNo.7の浸炭組織の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図23】 図23は、Cr,Vを高濃度で添加したNo.13の浸炭組織の金属組織を示
す顕微鏡写真である。
【図24】 図24は、転動面圧強度の試験結果を示すグラフである。
【図25】 図25は、回転曲げ疲労強度の試験結果を示すグラフである。

Claims (15)

  1. 主に浸炭肌焼き鋼に使用される各種合金元素が配合される鋼であって、
    少なくとも0.2≦〔Al重量%〕≦2.0の範囲のAlと、0.3≦〔Cr重量%〕≦3.5の範囲のCrと、0.1≦〔V重量%〕≦0.7の範囲のVを含有し、かつ1.9≧−5.6〔Si重量%〕−7.2〔Al重量%〕+1.1〔Mn重量%〕+2.1〔Cr重量%〕−0.9〔Ni重量%〕+1.1〔Mo重量%〕+0.6〔W重量%〕+4.3〔V重量%〕および1.0≦〔(Si+Al)重量%〕≦2.5の条件を満足する鋼中成分を有する鋼を用い、
    炭素ポテンシャルが1.2重量%以上の条件で浸炭した後にA1点温度以下の温度域に冷却し、再加熱処理を施すことによって、浸炭層中に平均粒径が1μm以下の微細セメンタイトが5〜20体積%の範囲において分散析出され、かつ分散析出させたセメンタイトによって浸炭層中の旧オーステナイト結晶粒がASTM9以上に微細化されている
    ことを特徴とする浸炭部材。
  2. 前記再加熱時に浸炭浸窒または浸窒処理を付加することによって、前記微細セメンタイトに加えて、平均粒径が0.2μm以下の少なくともAlNを含む微細窒化物および/または微細な炭窒化物の1種以上を分散析出させるとともに、20〜70体積%の残留オーステナイトを生成させることを特徴とする請求項1に記載の浸炭部材。
  3. 前記再加熱時に炭素ポテンシャルを使用鋼材のAcm濃度を超える炭素ポテンシャルと超えない共析炭素濃度の炭素ポテンシャルと間で変動させながら浸炭浸窒または浸炭処理を付加することによって、予め浸炭層に析出している微細セメンタイトを核として、平均粒径が3μm以下のセメンタイトを15〜35体積%分散させたことを特徴とする請求項2に記載の浸炭部材。
  4. 前記炭素ポテンシャルを使用鋼材のAcm濃度を超える炭素ポテンシャルと超えない共析炭素濃度の炭素ポテンシャルと間で変動させる調整がアンモニア添加量の調整によってなされることを特徴とする請求項3に記載の浸炭部材。
  5. 前記セメンタイトを析出させないで、表面炭素濃度を1.2〜2.0重量%に調整する浸炭温度が980℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれかに記載の浸炭部材。
  6. 歯車に用いられる浸炭部材であって、前記浸炭層における旧オーステナイト結晶粒の微細化を図る際に、浸炭層において1.2重量%になる深さ位置が歯車のモジュールMの0.05倍mm位置以上であり、この範囲内において旧オーステナイト結晶粒がASTM9以上に微細化されている
    ことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれかに記載の浸炭部材。
  7. 請求項1〜6のうちのいずれかに記載の浸炭部材の製造方法であって、
    (a)A1点温度以上に一旦予備加熱する第1工程、
    (b)炭素ポテンシャルが1.2〜2.0重量%の範囲の雰囲気下において、980℃以上で高温浸炭処理する第2工程、
    (c)一旦A1点温度以下にガス冷却媒体を用いて急速冷却する第3工程および
    (d)A1点温度以下の温度において18〜30体積%の微細なセメンタイト粒子を分散させた後に、A1点温度以上900℃までの温度範囲に再加熱し、この再加熱時に炭素ポテンシャルを使用鋼材のAcm濃度を超える炭素ポテンシャルと超えない共析炭素濃度の炭素ポテンシャルと間で変動させながら浸炭浸窒または浸炭処理を付加することによって、旧オーステナイト結晶粒の微細化をはかり、焼き入れ後に、マルテンサイト組織を主体とする浸炭層中に平均粒径がμm以下のセメンタイトを15〜35体積%分散させる第4工程
    よりなることを特徴とする浸炭部材の製造方法。
  8. 前記第4工程においては、A1点温度以下の温度において一旦ほぼ均熱化させることおよび/または600℃〜A1点温度範囲を5℃/min以下の昇温速度で加熱することによって、浸炭層に析出させたセメンタイト中にCr,Mn,V,Mo,W等の合金元素を濃縮させることによってセメンタイトを微細化させ、更にオーステナイト状態に加熱された状態においてセメンタイトの再固溶速度を遅滞させ、凝集、成長を防止することを特徴とする請求項7に記載の浸炭部材の製造方法。
  9. 前記第3工程のガス冷却は、N,Ar,He等の不活性ガスもしくはHの1種以上ガスを用いて、少なくとも浸炭、浸炭浸窒層の冷却後の組織がマルテンサイト,ベイナイトおよび/またはパーライト組織の1種以上であるようにガス急冷させる
    ことを特徴とする請求項7または8に記載の浸炭部材の製造方法。
  10. 前記第4工程において、浸炭、浸炭浸窒後に炉内雰囲気をN,Ar等の不活性ガスおよび/または真空雰囲気下に変更し、加熱することによって脱水素処理を加えることを特徴とする請求項7〜9のうちのいずれかに記載の浸炭部材の製造方法。
  11. 前記第2工程の高温浸炭における浸炭雰囲気を形成させる手段として、1種以上の炭化水素ガスの分解ガス分圧が200torr以下で浸炭処理することおよび/またはN,Ar,Heガス等の不活性ガスを添加,混合して、250torr以下の減圧下で浸炭処理するとともに、荷姿,サンプル形状による浸炭不均一性を低減させるために、不活性ガスであるN,Ar,He等を炉内に間欠的に導入して、炉内圧力を変動させることによって炉内ガスの攪拌を行いなから、浸炭温度を980℃以上に高めることによって炭化水素ガスの熱分解性を高め、わずかなスーティングの発生を制御することによって、炭素活量がほぼ1に近い条件で浸炭することを特徴とする請求項7〜10のうちのいずれかに記載の浸炭部材の製造方法。
  12. 高温浸炭雰囲気中のガス分解反応によって炭素が析出する量的な制御を、炭化水素ガスおよび/またはアンモニアガスの量的制御によって行うことおよび/またはCO ガス,アルコール類を間欠的に添加調整することによって行うことを特徴とする請求項11に記載の浸炭部材の製造方法。
  13. 前記高温浸炭操業中において、荷姿,サンプル形状による不均一性を低減させるために、不活性ガスであるN,Ar,He等を炉内に間欠的に導入して、炉内圧力を変動させることによって炉内ガスの攪拌を行うことを特徴とする請求項11または12に記載の浸炭部材の製造方法。
  14. 質量分析装置を用いて、炉内のCH,C,C,H,HO,NH,C,CO等のガス組成を計測しながら高温減圧浸炭時のスーティングの発生を抑制することができる高温浸炭室と、この高温浸炭室での浸炭工程の前段階として前記高温浸炭室と独立して設けられ、真空および/または不活性ガス,中性ガス雰囲気下で前記高温浸炭室と独立した条件で操業できる予熱室と、前記高温浸炭室と連動させて浸炭操業効率を高めるとともに前記予熱室および前記高温浸炭室と独立して設けられ、高温浸炭後に熱処理部材を冷却してガス冷却する一連の工程が不活性ガス,中性ガスもしくは真空中で実施できるガス冷却室と、前記ガス冷却室による冷却後に真空,不活性ガス,中性ガス,浸炭浸窒,浸窒のいずれかの雰囲気下における再加熱処理ができる加熱室と、この再加熱処理後に油焼き入れ処理ができる焼き入れ槽とを備えることを特徴とする浸炭処理システム。
  15. 前記高温浸炭によって高温浸炭室に累積されるスーティング炭素を、浸炭操業を中断することなく、浸炭操業間においてCOガスやCOガスを含むガスによって酸化除去することを特徴とする請求項14に記載の浸炭処理システム。
JP32048297A 1997-08-11 1997-11-05 浸炭部材とその製造方法並びに浸炭処理システム Expired - Lifetime JP3894635B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP32048297A JP3894635B2 (ja) 1997-08-11 1997-11-05 浸炭部材とその製造方法並びに浸炭処理システム
US09/131,776 US6258179B1 (en) 1997-08-11 1998-08-10 Carburized parts, method for producing same and carburizing system

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9-230389 1997-08-11
JP23038997 1997-08-11
JP32048297A JP3894635B2 (ja) 1997-08-11 1997-11-05 浸炭部材とその製造方法並びに浸炭処理システム

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH11117059A JPH11117059A (ja) 1999-04-27
JP3894635B2 true JP3894635B2 (ja) 2007-03-22

Family

ID=26529316

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP32048297A Expired - Lifetime JP3894635B2 (ja) 1997-08-11 1997-11-05 浸炭部材とその製造方法並びに浸炭処理システム

Country Status (2)

Country Link
US (1) US6258179B1 (ja)
JP (1) JP3894635B2 (ja)

Families Citing this family (58)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3909902B2 (ja) * 1996-12-17 2007-04-25 株式会社小松製作所 高耐面圧用鋼部品およびその製造方法
DE19758140A1 (de) * 1997-12-19 1999-07-08 Mannesmann Ag Verfahren zum Erzeugen von Metallprodukten aus Verbundwerkstoff
JP2000336469A (ja) * 1999-05-28 2000-12-05 Nachi Fujikoshi Corp 真空浸炭方法及び装置
IT1309928B1 (it) * 1999-12-01 2002-02-05 Bundy S P A Tubo per impianti di alimentazione di fluidi a pressione, inparticolare per l'alimentazione di carburante nei motori diesel,
KR20020047659A (ko) * 2000-12-13 2002-06-22 이계안 차량용 엔진의 hla 제조방법
FR2821362B1 (fr) * 2001-02-23 2003-06-13 Etudes Const Mecaniques Procede de cementation basse pression
US20030075244A1 (en) * 2001-05-17 2003-04-24 Nissan Motor Co., Ltd. Bearing pressure-resistant member and process for making the same
JP5428031B2 (ja) * 2001-06-05 2014-02-26 Dowaサーモテック株式会社 浸炭処理方法及びその装置
US7033446B2 (en) * 2001-07-27 2006-04-25 Surface Combustion, Inc. Vacuum carburizing with unsaturated aromatic hydrocarbons
US6991687B2 (en) 2001-07-27 2006-01-31 Surface Combustion, Inc. Vacuum carburizing with napthene hydrocarbons
DE10152204B4 (de) * 2001-10-23 2004-01-22 Schwäbische Härtetechnik Ulm GmbH Vorrichtung und Verfahren zum Messen und/oder Regeln der Aufkohlungsatmophäre in einer Vakuumaufkohlungsanlage
US6942739B2 (en) 2001-10-26 2005-09-13 Exxonmobil Research And Engineering Company Reactive heat treatment to form pearlite from an iron containing article
JP3854851B2 (ja) * 2001-11-09 2006-12-06 中外炉工業株式会社 鋼材部品の浸炭方法
US7438477B2 (en) * 2001-11-29 2008-10-21 Ntn Corporation Bearing part, heat treatment method thereof, and rolling bearing
US20050173026A1 (en) * 2001-12-25 2005-08-11 Takao Taniguchi Carburized and quenched member and method for production thereof
US7468107B2 (en) * 2002-05-01 2008-12-23 General Motors Corporation Carburizing method
JP4812220B2 (ja) * 2002-05-10 2011-11-09 株式会社小松製作所 高硬度高靭性鋼
DE10221605A1 (de) * 2002-05-15 2003-12-04 Linde Ag Verfahren und Vorrichtung zur Wärmebehandlung metallischer Werkstücke
JP2004076125A (ja) * 2002-08-21 2004-03-11 Komatsu Ltd 転動部材
ES2259176T3 (es) * 2002-10-17 2006-09-16 Ntn Corporation Seguidor de leva de rodillo para un motor.
WO2004059029A1 (ja) * 2002-12-25 2004-07-15 Aisin Aw Co., Ltd. 浸炭焼入部材およびその製造方法
US7334943B2 (en) * 2003-02-28 2008-02-26 Ntn Corporation Differential support structure, differential's component, method of manufacturing differential support structure, and method of manufacturing differential's component
JP4718781B2 (ja) * 2003-02-28 2011-07-06 Ntn株式会社 トランスミッションの構成部品および円錐ころ軸受
JP4390576B2 (ja) * 2003-03-04 2009-12-24 株式会社小松製作所 転動部材
JP4912385B2 (ja) * 2003-03-04 2012-04-11 株式会社小松製作所 転動部材の製造方法
JP4390526B2 (ja) 2003-03-11 2009-12-24 株式会社小松製作所 転動部材およびその製造方法
JP2004301321A (ja) * 2003-03-14 2004-10-28 Ntn Corp オルタネータ用軸受およびプーリ用軸受
JP4152283B2 (ja) * 2003-08-29 2008-09-17 Ntn株式会社 軸受部品の熱処理方法
US7169238B2 (en) * 2003-12-22 2007-01-30 Caterpillar Inc Carbide method and article for hard finishing resulting in improved wear resistance
US7594762B2 (en) 2004-01-09 2009-09-29 Ntn Corporation Thrust needle roller bearing, support structure receiving thrust load of compressor for car air-conditioner, support structure receiving thrust load of automatic transmission, support structure for continuously variable transmission, and support structure receivin
JP2005200695A (ja) * 2004-01-14 2005-07-28 Onex Corp ガス浸炭方法
JP4540351B2 (ja) * 2004-01-15 2010-09-08 Ntn株式会社 鋼の熱処理方法および軸受部品の製造方法
FR2869246A1 (fr) * 2004-04-27 2005-10-28 Renault V I Sa Procede de fabrication de pieces d'un couple conique
US20050274215A1 (en) * 2004-06-15 2005-12-15 Geoff Bishop Worm gear assembly having improved physical properties and method of making same
WO2006127037A2 (en) * 2004-11-05 2006-11-30 Dana Corporation Atmospheric pressure processing using microwave-generated plasmas
JP2007046717A (ja) * 2005-08-10 2007-02-22 Ntn Corp ジョイント用爪付き転動軸
JP5034194B2 (ja) * 2005-09-13 2012-09-26 株式会社豊田中央研究所 シミュレーション方法
EP1889929B1 (en) * 2005-09-26 2013-01-02 Aisin Aw Co., Ltd. Method for the manufacture of carburized steel members .
JP4971751B2 (ja) * 2006-11-06 2012-07-11 本田技研工業株式会社 高濃度浸炭鋼の製造方法
US20080149227A1 (en) * 2006-12-26 2008-06-26 Karen Anne Connery Method for oxygen free carburization in atmospheric pressure furnaces
US20080149225A1 (en) * 2006-12-26 2008-06-26 Karen Anne Connery Method for oxygen free carburization in atmospheric pressure furnaces
JP5198765B2 (ja) * 2006-12-28 2013-05-15 株式会社小松製作所 転動部材及びその製造方法
CA2678616C (en) * 2007-04-18 2015-12-22 Industrie De Nora S.P.A. Electrodes with mechanically roughened surface for electrochemical applications
JP5191710B2 (ja) * 2007-08-31 2013-05-08 株式会社小松製作所 歯車及びその製造方法
JP5305820B2 (ja) * 2008-10-08 2013-10-02 アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 浸炭部品の製造方法及び鋼部品
JP5169724B2 (ja) * 2008-10-22 2013-03-27 新日鐵住金株式会社 摺動部品
JP5650739B2 (ja) 2009-08-07 2015-01-07 スウエイジロク・カンパニー 低真空下での低温浸炭
EP2739761B1 (en) 2011-06-02 2017-05-24 Aktiebolaget SKF Carbo-nitriding process for martensitic stainless steel and stainless steel article having improved corrosion resistance
FR2978969B1 (fr) * 2011-08-09 2013-09-13 Ascometal Sa Acier pour la fabrication de pieces cementees, piece cementee realisee avec cet acier et son procede de fabrication
US9617632B2 (en) 2012-01-20 2017-04-11 Swagelok Company Concurrent flow of activating gas in low temperature carburization
JP5786764B2 (ja) * 2012-03-06 2015-09-30 新日鐵住金株式会社 高炭素クロム軸受鋼の製造方法
JP5830586B1 (ja) 2014-07-23 2015-12-09 株式会社Ihi 浸炭装置
JP6497208B2 (ja) * 2015-05-19 2019-04-10 大同特殊鋼株式会社 高濃度浸炭鋼の製造方法
JP6788817B2 (ja) * 2015-10-14 2020-11-25 大同特殊鋼株式会社 真空浸炭窒化部品の製造方法
JP6922759B2 (ja) 2018-01-25 2021-08-18 トヨタ自動車株式会社 鋼部材の製造方法
US11624106B2 (en) * 2020-03-18 2023-04-11 Caterpillar Inc. Carburized steel component and carburization process
CN114962460A (zh) 2021-02-25 2022-08-30 斯凯孚公司 经热处理的滚子轴承圈
CN113640183B (zh) * 2021-08-05 2024-01-12 常州天山重工机械有限公司 一种氧化法检验渗碳钢奥氏体晶粒的方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4288062A (en) * 1979-08-09 1981-09-08 Holcroft Apparatus for control and monitoring of the carbon potential of an atmosphere in a heat-processing furnace
JPS6224499A (ja) 1985-07-24 1987-02-02 Mitsubishi Electric Corp 半導体装置
JPH0617224A (ja) 1992-07-01 1994-01-25 Kobe Steel Ltd 高温転動疲労性に優れた浸炭軸受部品
JPH0617225A (ja) 1992-07-01 1994-01-25 Kobe Steel Ltd 転動疲労性に優れた浸炭軸受部品
JP3033349B2 (ja) 1992-07-10 2000-04-17 株式会社神戸製鋼所 耐ピッチング性に優れた浸炭鋼部品
JP3895000B2 (ja) * 1996-06-06 2007-03-22 Dowaホールディングス株式会社 浸炭焼入焼戻方法及び装置
JP3909902B2 (ja) 1996-12-17 2007-04-25 株式会社小松製作所 高耐面圧用鋼部品およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH11117059A (ja) 1999-04-27
US6258179B1 (en) 2001-07-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3894635B2 (ja) 浸炭部材とその製造方法並びに浸炭処理システム
JP4390576B2 (ja) 転動部材
JP4965001B2 (ja) 焼戻し軟化抵抗性に優れた鋼部品
JPH10176219A (ja) 高耐面圧用鋼部品およびその製造方法
US4921025A (en) Carburized low silicon steel article and process
JP2005163173A (ja) 歯車部材およびその製造方法
JP5632454B2 (ja) ばね用鋼および鋼材の表面処理方法
JP3385722B2 (ja) 浸炭焼入方法
JP4350968B2 (ja) 減圧浸炭用鋼及び減圧浸炭部品の製造方法
JP2010222636A (ja) 鋼材の表面処理方法
JP4912385B2 (ja) 転動部材の製造方法
JP2012062536A (ja) 肌焼鋼およびその製造方法
JP4681160B2 (ja) 高温浸炭用鋼の製造方法及びその方法により製造された高温浸炭用鋼
JP2000204464A (ja) 表面処理歯車とその製造方法、製造装置
JP2004107709A (ja) 転動部材とその製造方法
JPS6224499B2 (ja)
JPH10147814A (ja) 熱処理歪みの少ない肌焼鋼製品の製法
JP5016172B2 (ja) 高疲労強度・高剛性鋼およびその製造方法
CA1300472C (en) Carburized low silicon steel article and process
JP3940322B2 (ja) 機械構造用鋼部品の製造方法および機械構造用鋼部品
JPH0559527A (ja) 耐摩耗性及び転動疲労性に優れた鋼の製造法
JPH10204534A (ja) 履帯ブッシュおよびその製造方法
JPH09302411A (ja) 無脱炭・耐摩耗性球状黒鉛鋳鉄鋳物部品の製造方法
JP4149576B2 (ja) 高温浸炭用鋼の製造方法および該方法により得られる高温浸炭用鋼材
CN111876564B (zh) 六角合金工具钢s2的球化退火工艺

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040325

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20040610

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20051122

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060123

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060307

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060508

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20061114

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20061115

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20061212

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20061212

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091222

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101222

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101222

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111222

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111222

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121222

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131222

Year of fee payment: 7

EXPY Cancellation because of completion of term