JP2000204464A - 表面処理歯車とその製造方法、製造装置 - Google Patents

表面処理歯車とその製造方法、製造装置

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JP2000204464A
JP2000204464A JP11005694A JP569499A JP2000204464A JP 2000204464 A JP2000204464 A JP 2000204464A JP 11005694 A JP11005694 A JP 11005694A JP 569499 A JP569499 A JP 569499A JP 2000204464 A JP2000204464 A JP 2000204464A
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gear
hardness
quenching
temperature range
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Naoharu Hamasaka
直治 浜坂
Takemori Takayama
武盛 高山
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Komatsu Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低歪みで、実用上十分な強度を有する表面処
理歯車とその製造方法、製造装置を得る。 【解決手段】 素材調質および機械加工が施された鋼部
材を加熱装置2内で850〜900℃のオーステナイト
温度域まで加熱し、その温度域で1時間以上保持し、そ
の保持中に浸炭性ガスのみ、あるいは浸炭性ガスとアン
モニアとの混合ガスを炉内に導入し、この保持後に例え
ばプレスクエンチ装置3により焼入れ硬化させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面処理歯車とそ
の製造方法および製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、歯車部材は熱処理を施されるこ
とが多く、この熱処理によって表面部や内部の金属組織
を強靭化するとともに、硬さを向上させてその耐久性を
確保するようにされている。特に、浸炭焼入れ処理は、
部材表面からの炭素の浸入により表面近傍の炭素量を増
加させて焼入れ処理が行われることから、硬いマルテン
サイト組織による表面硬化が達成され、高い耐摩耗性と
曲げ疲労強度などが得られることから、従来から広く利
用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記浸
炭処理には以下に示すような焼入れ歪みの問題および表
面品質上の問題がある。 (1)焼入れ歪み 浸炭焼入れ処理では、部材表面部に0.8wt%程度の
炭素を含んだマルテンサイト変態を伴うため、変態膨張
もしくは焼入れ時の熱収縮などにより部材が変形し、炭
素量の増加とともにその変形量も大きくなる傾向にあ
る。また、浸炭処理は、通常、930℃以上の高温で数
時間以上処理されることが多いため、高温の炉内に保持
されることに伴う部材の変形の問題もある。なお、この
ような熱処理歪みを少なくするためには、金型にて部材
を拘束しながら焼入れを行うプレスクエンチ工程を併用
することも行われているが、このようにした場合には、
浸炭工程と再加熱プレスクエンチ工程とが必要となって
生産性が悪くなるという問題点がある。 (2)表面品質 一般に良く利用されているガス浸炭処理ではブルドワ
(Boudouard)のガス反応(2CO⇔C+CO
)に従い、浸入炭素が供給されるが、そのガス雰囲気
中には酸化性ガスであるCOや水蒸気が混在してお
り、これが処理部材の表面を酸化させてしまう。特に、
浸炭用鋼の焼入れ性を確保するために配合されている合
金元素であるSi,Cr,Mnはこの酸化性ガスと反応
して容易に酸化物を生成し、それが主に結晶粒界に析出
するため、オーステナイト中のそれら焼入れ性向上成分
が不足して、最表面がマルテンサイトにならずに、不完
全焼入れ組織となって最表面に硬さの低い領域(浸炭異
常層)が20ミクロン程度生成される。この浸炭異常層
が部品強度を低下させることになる。
【0004】本発明は、このような問題点を解消するた
めになされたもので、低歪みで、しかも実用上十分な強
度を有する表面処理歯車とその表面処理歯車を簡便に得
る製造方法、製造装置を提供することを目的とするもの
である。
【0005】
【課題を解決するための手段および作用・効果】前記目
的を達成するために、第1発明(請求項1に係る発明)
による表面処理歯車の製造方法は、鋳造または鍛造によ
り製造され、素材調質および機械加工が施された鋼部材
を炉内でオーステナイト温度域まで加熱し、その温度域
で保持した後、焼入れ硬化させる表面処理歯車の製造方
法であって、前記オーステナイト温度域を850〜90
0℃とし、かつ保持時間を1時間以上とし、その保持中
に浸炭性ガスを炉内に導入することを特徴とするもので
ある。
【0006】この第1発明においては、鍛造もしくは鋳
造等により製造された鋼素材に必要に応じて調質が行わ
れ、その後例えばリングギアのような部材に機械加工さ
れる。この後、この部材がオーステナイト温度域まで加
熱され、その温度域にて1時間以上保持される。この温
度域は、材料成分系により若干異なるが、850℃以
上、900℃未満とされる。この保持温度が850℃未
満になると、低炭素鋼の場合には焼入れ処理の前提であ
るオーステナイト一層の組織にならない。一方、前記保
持温度が900℃以上になると、焼入れ歪みや保持によ
る歪み(ダレ)が大きくなり易い。また、この保持温度
が上昇するにつれて結晶粒が粗大化するが、980℃以
上ではその粗大化が特に顕著であり、これが疲労強度を
低下させる要因になる。前記温度域に加熱保持する間、
表面の焼入れ硬さを上げることを目的として、炉中には
浸炭性ガスが導入される。この浸炭性ガスとしては、炭
化水素系ガスから変成させたCOを主成分とする吸熱型
ガスや、アルコールなどを滴下してガス化したものを使
用しても良い。また、炭化水素ガスとアルコールとを併
用しても良い。前記保持時間を1時間以上としたのは、
処理温度が比較的低いために、炭素や窒素の拡散深さが
浅く、必要な歯元最表面の硬化層を確保するためであ
る。
【0007】本発明に係る表面処理歯車の製造方法によ
れば、必要とされる歯元硬さと歯面硬さとを有する歯車
を得ることができ、焼入れ性の比較的低い中炭素鋼水準
と比較しても歯元硬さを大幅に改善することができる。
また、回転曲げ疲労強度の面でも中炭素鋼品よりも高い
水準とすることができる。さらに、生産ピッチについて
も、従来の浸炭品に比べて大幅に短縮することが可能で
あり、効率的に表面硬化歯車を得ることが可能となる。
【0008】次に、第2発明(請求項2に係る発明)に
よる表面処理歯車の製造方法は、鋳造または鍛造により
製造され、素材調質および機械加工が施された鋼部材を
炉内でオーステナイト温度域まで加熱し、その温度域で
保持した後、焼入れ硬化させる表面処理歯車の製造方法
であって、前記オーステナイト温度域を850〜900
℃とし、かつ保持時間を1時間以上とし、その保持中に
浸炭性ガスとアンモニアとの混合ガスを炉内に導入する
ことを特徴とするものである。
【0009】前記第1発明においては、鋼部材を炉内で
オーステナイト温度域に保持する間、炉中に浸炭性ガス
を導入するものであるが、この第2発明においては、浸
炭性ガスとともにアンモニアを導入するものである。こ
のアンモニアは高温で瞬時に水素と窒素とに分解し、窒
素は炭素と同様に鋼材に浸入して材料の焼入れ性を向上
させる効果がある。また、アンモニアは浸炭そのものの
反応を活性化させる働きもあり、比較的低温で短時間処
理でも表面の硬さを上げる効果がある。
【0010】以上のようにオーステナイト温度域と雰囲
気に1時間以上保持した後、油等による焼入れがなされ
るが、その時、部材の歪みを低減させるために、金型に
て部材を拘束しながら焼入れを行うプレスクエンチを適
用するのが好ましい。通常の浸炭プレスクエンチ処理で
は、浸炭工程(930℃以上)−焼入れ温度まで下げる
均熱化工程(850℃程度)−プレスクエンチ工程の3
工程が必要であるが、本発明では、均熱化工程で炭素や
窒素の拡散処理を行うため2工程で良い。
【0011】前記各発明において、前記焼入れ硬化後ま
たは焼入れ焼戻し後に表面にショットピーニングが施さ
れるのが好ましい。このショットピーニングの適用によ
り表面近傍に高い圧縮残留応力が生成され、これにより
曲げ疲労強度の一層の向上が実現される。ショットピー
ニング条件には特に制限はないが、鉄系材料や超硬材料
よりなるショット材を用いてインペラ式やエアー噴射方
式でピーニングするのが望ましい。なお、その他必要に
応じて焼戻し処理や研磨などの後工程を行っても良い。
【0012】次に、第3発明(請求項5に係る発明)に
よる表面処理歯車の製造装置は、前記第1発明または第
2発明に係る製造方法の実施に直接使用される製造装置
に関わるものであって、処理品を850℃以上に加熱で
き、かつ浸炭性ガスおよびアンモニアが導入できる密閉
性に優れた加熱装置と、処理品を拘束しながら焼入れす
るプレスクエンチ装置と、前記加熱装置からプレスクエ
ンチ装置へ処理品を搬送する搬送装置を備えることを特
徴とするものである。
【0013】このような製造装置を用いることにより、
処理品をオーステナイト温度域まで加熱・保持して炭素
や窒素の拡散処理を行う工程と、処理品を拘束しながら
焼入れするプレスクエンチ工程とを連続的に行うことが
でき、所望の表面処理歯車を効率的に製造することがで
きる。
【0014】次に、第4発明(請求項6に係る発明)に
よる表面処理歯車は、前記第1発明または第2発明に係
る製造方法により製造される表面処理歯車であって、歯
元表面硬さがH500以上、歯面表面硬さがH55
0以上、歯面表面から0.2mmの範囲の硬さがH
00以上で、歯車ベース円上の肉厚中心部の硬さがH
300以上であることを特徴とするものである。
【0015】前記第1発明または第2発明に係る製造方
法を用いると、歯元表面硬さがH500以上、歯面表
面硬さがH550以上、歯面表面から0.2mmの範
囲の硬さがH500以上で、歯車ベース円上の肉厚中
心部の硬さがH300以上の表面処理歯車を得ること
ができる。なお、これらの数値にて規定される硬さは、
以下に示される3つの強度項目から見て実用上問題のな
い硬さであると言える。 歯元曲げ疲労強度 一般的なギヤにおいて歯元表面応力は70kg/mm
以下に設計されるが、図1(ギヤの噛み合い時に発生す
る歯元の曲げ応力分布を示す図)もしくは図2(図1の
応力分布を対応する硬さに換算した結果)に示されるよ
うに、歯元の曲げ応力は表面で高く、内部に行くにした
がって減衰する特性を有しており、最表面近傍(例えば
モジュール3.5の場合、最表面の0.2mm程度の範
囲)での硬さが確保されていれば表面から破損する可能
性は実用上少ない。また、材料の焼入れ性を適正にする
ことにより内部硬さがH300以上であれば内部を起
点として破損する可能性も低い。 (2)歯面せん断強度 図3には、リングギヤの噛み合い時に発生するせん断応
力分布を硬さに換算した結果(面圧150kg/m
,モジュール3.5の場合)が示されている。通常
のギヤは150kg/mm以下の面圧で設計されるも
のが最も多いが、この図3によれば、歯面表面から0.
2mmの範囲の硬さがH500以上あればせん断応力
による内部破損の可能性は少ないことがわかる。また、
内部の硬さも歯元同様にH300以上あれば問題ない
ことがわかる。 (3)耐ピッチング強度 歯面損傷の一つであるピッチングについては潤滑剤や表
面の面粗さなど硬さ以外の要因も影響するため、硬さだ
けで強度は決まらないが、通常の表面硬化ギヤでは歯面
の表面硬さに比例して耐ピッチング強度が向上するとさ
れているので、通常は高負荷のギヤでH700以上
(浸炭)、中低負荷のギヤでH500以上(窒化)の
硬さで実用上問題は少ない。
【0016】また、第5発明(請求項7に係る発明)に
よる表面処理歯車は、前記第2発明に係る製造方法によ
り製造される表面処理歯車であって、表面から0.1m
m以上の範囲内で窒素の浸入が認められ、旧オーステナ
イト結晶粒サイズがJIS−G0551の粒度番号9番
以上であることを特徴とするものである。
【0017】前記第2発明に係る製造方法によれば、加
熱時にアンモニア雰囲気中に保持されることにより被処
理品表面から窒素の浸入がある。この浸入した窒素は鋼
中の、窒素と親和性のある元素(例えばAl)と結合し
て化合物(例えばAlN)を生成し、その後の焼入れ時
にはこの窒化物を核としてマルテンサイト組織が生成さ
れる。すなわち、前記窒化物が多数存在することにより
多数のマルテンサイトが生じて微細化する。こうして、
表面から0.1mm以上の範囲内で窒素の浸入が認めら
れ、旧オーステナイト結晶粒サイズがJIS−G055
1の粒度番号9番以上の表面処理歯車を得ることができ
る。この結晶粒サイズは材料の靭性や疲労強度と密接な
関係があり、小さい結晶粒では亀裂の進展方向は常にジ
グザグになって亀裂が進展しにくく、結果として疲労強
度が向上することになる。これに対して粗大粒では1回
の亀裂の進展長さも長く、亀裂の方向転換の回数が少な
いため、亀裂が進展しやすい。
【0018】
【実施例】次に、本発明による表面処理歯車とその製造
方法、製造装置の具体的な実施例について、図面を参照
しつつ説明する。
【0019】最初に、本実施例で使用する鋼材について
述べる。この鋼材は、焼入れによって内部硬さをH
00以上に硬化させる必要があることから、歯車のマス
効果を考慮してCr,Mn,Si,Mo,Niなどの焼
入れ性向上成分を調整する必要がある。一方、焼入れ歪
みを低減するためには、マルテンサイト変態時の変態膨
張が少なくなるような材料成分にするか、全体の変態量
を適量にすることが肝要であり、例えば歯車の必要な表
面部は硬化されても、歯中央部は焼入れされないか、ま
たは焼入れされても歪みが少ない低炭素(0.3%以
下)にするのが好ましい。また、リングギヤは、鋼材素
材に対してロール鍛造を行い、リング形状にした後に機
械加工にてギヤ形状に加工されるが、このロール鍛造時
には丸棒や角材素材の中心部に存在する材料欠陥、例え
ば介在物や偏析、未圧着部(マイクロポリシティ)がリ
ングギヤの内面に回り込み、丁度内歯車の歯部にその欠
陥部が移動する可能性が高い。このような材料欠陥はギ
ヤの疲労強度を低下させることになるが、素材の炭素量
が減少するほど、精錬工程でこの中心部の介在物を減少
させることが可能であり、この観点からも素材炭素量を
0.3%以下にするのが望ましい。なお、他の成分につ
いては前述のようにワークのマスを元に適宜合金成分を
添加させるものとする。以下に、代表的な成分の範囲に
ついて示す。
【0020】C:0.1〜0.3% Cは、前述のように内部硬さを下げて低歪み化させると
ともに、中心部の材料欠陥を低減するために、0.3%
以下にするのが良い。また、0.1%以下では焼入れ性
に及ぼす効果が少ない。 Si:0.1〜1.0% Siは、脱酸、焼入れ性向上に有効な元素であり、0.
1%未満では所望の効果が得られず、1%を超えると炭
素の浸入を阻害するので上限を1%とするのが良い。 Mn:0.3〜2% MnもSiと同様に脱酸、焼入れ性向上に有効である
が、0.3%未満ではその効果が乏しく、2%を超える
とその効果が飽和する。 P:0.03%以下 靭性の低下を防止するために0.03%を上限とするの
が良い。 S:0.1%以下 Sは特に添加の必要はないが、S添加により切削性の向
上が得られる。ただし、0.1%を超えると靭性が顕著
に低下する。 Ni:2%以下 特に添加の必要はないが、靭性向上効果がある。しか
し、2%以上ではコストが嵩む反面、効果も飽和する。 Cr:0.1〜2% 焼入れ性向上とともに、強度および靭性の向上効果があ
るため、0.1%を加減として添加するのが良い。な
お、2%を超えると効果が飽和する。 Mo:0.4%以下 Crと同様の効果があるが、0.4%を超えると切削性
の低下やコストの問題がある。 B:0.005%以下 添加しなくても良いが、焼入れ性の向上のほかに粒界を
強化する効果がある。 Ti:0.05%以下 添加しなくても良いが、炭窒化物を生成し、オーステナ
イト粒の微細化効果がある。しかし、0.05%以上で
は効果が飽和する。 V:0.1%以下 Tiと同様に微細化効果があるが、0.1%以上では効
果が飽和する。特に添加の必要はない。 Nb:0.05%以下 Ti,Vと同様な効果があるが、効果が飽和する0.0
5%以下とするのが良い。 Al:1%以下 AlはAlNによる結晶粒粗大化防止として機能する
が、1%を超えると900℃以下ではフェライト層が混
在するようになるため、1%以下とするのが良い。
【0021】(実施例1)鍛造もしくは鋳造等により製
造された鋼素材(材質SCM420H)に必要に応じて
調質を行い、その後リングギアに機械加工する。この
後、この部材を850℃(オーステナイト温度域)まで
加熱し、その温度域にて1時間以上保持する。この温度
に加熱保持する間、炉内に浸炭性ガスである吸熱型ガス
(RXガス)を導入して炉内を弱浸炭性雰囲気にする。
なお、この雰囲気を本実施例では「光輝焼入れ」と定義
している。次いで、油焼入れ処理を施し、160℃に焼
戻し処理を施す。
【0022】(実施例2)鍛造もしくは鋳造等により製
造された鋼素材(材質SCM420H)に必要に応じて
調質を行い、その後リングギアに機械加工する。この
後、この部材を850℃(オーステナイト温度域)まで
加熱し、その温度域にて1時間以上保持する。この温度
に加熱保持する間、炉内に浸炭性ガスである吸熱型ガス
(RXガス)とアンモニアとをアンモニアの体積分率で
20%になるように混合したものを導入する。次いで、
油焼入れ処理を施し、160℃に焼戻し処理を施す。
【0023】(実施例3)鍛造もしくは鋳造等により製
造された鋼素材に必要に応じて調質を行い、その後リン
グギヤに機械加工する。この後、この部材を850℃
(オーステナイト温度域)まで加熱し、その温度域にて
1時間以上保持する。この温度に加熱保持する間、炉内
に浸炭性ガスである吸熱型ガス(RXガス)とアンモニ
アとをアンモニアの体積分率で20%になるように混合
したものを導入し、次いで、油焼入れ処理を施し、16
0℃に焼戻し処理を施す。その後、直径0.8mmのス
チールショットによるショットピーニングを行う。な
お、内歯車であるリングギヤのような歯車の場合には、
内側の歯車面に均等にピーニング処理を施すことは言う
までもない。
【0024】(実施例4)実施例3と同様の条件で熱処
理を施した後、直径0.1mmのスチールショットにて
ショットピーニングする。
【0025】(比較例1)中炭素鋼(S50C)よりな
るリングギヤを850℃で1時間の光輝焼入れ焼戻し処
理を施す。
【0026】(比較例2)実施例1,2と同じ材質(S
CM420H)の鋼材よりなるリングギヤを930℃で
7時間の浸炭処理を施した後、850℃より油焼入れ処
理を施し、160℃に焼戻し処理を施す。
【0027】図4、図5には、前述の実施例1,2およ
び比較例1,2による歯元硬さ分布および歯面硬さ分布
がそれぞれ示されている。また、図6、図7には、実施
例1,2による処理品表面の金属組織および旧オーステ
ナイトの結晶粒界を示す顕微鏡写真がそれぞれ示されて
いる。なお、図6、図7において(a)は実施例1、
(b)は実施例2をそれぞれ示している。
【0028】これらの図から明らかなように、実施例
1,2では、浸炭品(比較例2)ほど深い領域まで硬化
されていないが、必要な歯元硬さ(歯元表面硬さがH
500以上)、歯面硬さ(歯面表面硬さがH550以
上で、歯面表面から0.2mmの範囲の硬さがH50
0以上)が得られていることがわかる。また、焼入れ性
の比較的低い中炭素鋼水準(比較例1)と比較しても歯
元硬さが大幅に改善されていることがわかる。なお、実
施例2のもの(アンモニアを同時に導入したもの)は、
実施例1のもの(浸炭ガスのみのもの)に比べて高い表
面硬さが得られていることがわかる。
【0029】実施例2においては、加熱時にアンモニア
雰囲気中に保持されることにより被処理品表面から窒素
が浸入する。この浸入した窒素は鋼中の窒素と親和性の
ある元素(例えばAl)と結合して窒化物(例えばAl
N)を生成し、その後の焼入れ時にその窒化物を核とし
てマルテンサイト組織が生成される。すなわち、この窒
化物が多数存在することにより多数のマルテンサイトが
生じて微細化する。図7(b)に示されている顕微鏡写
真において、表面部にグレー色に見える部分が、この微
細化によって明確な結晶粒が見えにくくなった結果であ
る。この結晶粒サイズは材料の靭性や疲労強度と密接な
関係にあり、小さい結晶粒では亀裂の進展方向が常にジ
グザグになって亀裂が進展しにくく、結果として疲労強
度が向上する。これに対して、粗大粒では1回の亀裂の
進展長さも長く、亀裂の方向転換の回数も少ないため、
亀裂が進展し易い。
【0030】図8には、実施例1,2,3,4および比
較例1,2のもの(但し平滑材)についての回転曲げ疲
労試験の結果(10回疲労限強度)が示されている。
この図から明らかなように、実施例1,2では、比較例
1の中炭素鋼品よりも高い強度が得られていることがわ
かる。特にアンモニアを導入した実施例2では比較例2
(浸炭品)に近い強度が得られている。また、実施例
3,4のようにアンモニアを導入して焼入れ焼戻しを施
した後にショットピーニングを適用した場合には、比較
例2の浸炭を超える強度が得られていることがわかる。
【0031】図9には、実施例1,2,3,4の回転曲
げ疲労試験片の断面の残留応力分布が比較例1,2と比
較して示されている。この図から明らかなように、実施
例3,4では高い圧縮残留応力が生成され、特に実施例
4では亀裂の発生位置である最表面部に非常に高い圧縮
残留応力が生成されていることがわかる。この最表面部
の高い圧縮残留応力が疲労亀裂の進展抑制に効果があ
り、これにより表面部が高強度化したものと考えられ
る。
【0032】また、薄肉のリングギヤについて焼入れ
(プレスクエンチ)後の楕円歪みを比較したところ、中
炭素鋼(0.5%C鋼)の850℃×1時間浸炭では最
大歪みが0.3mmであるのに対し、本実施例における
0.2%C低炭素鋼の850℃×1時間浸炭では1/3
の0.1mm以下の精度が得られることが確認され、浸
炭と比較しても同等以下の歪み量に低減することができ
た。
【0033】また、生産ピッチに関しても、従来の浸炭
品が7時間程度要していたのに対し、本実施例では2時
間未満で加熱から焼入れまでを完了させることができ、
表面硬化歯車が効率的に得られることも確認できた。
【0034】図10には、実施例2の焼入れ方法として
プレスクエンチを適用した場合の連続式浸窒プレス焼入
れ装置の構成例が示されている。この装置においては、
処理前ストッカ1、加熱装置2、プレスクエンチ装置3
および処理後ストッカ4が搬送装置5,6,7により連
結され、加熱装置2内でアンモニアまたはアンモニアと
窒素ガス、アンモニアと浸炭性ガスが導入されるように
構成されている。なお、図中符号8にて示されるのはア
ンモニア分析計である。ここで、搬送装置5,6,7と
しては、チェーン式のものまたはローラハース式のもの
が用いられる。このほかに、ロボット等によるハンドリ
ングを用いても良い。また、加熱装置2とプレスクエン
チ装置3とは処理品が窒素雰囲気中で移動するように一
つの部屋にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ギヤの噛み合い時に発生する歯元の曲
げ応力分布を示す図である。
【図2】図2は、曲げ疲労強度確保に必要な硬さ分布を
示す図である。
【図3】図3は、ギヤの噛み合い時に発生するせん断応
力分布を硬さに換算した値を示す図である。
【図4】図4は、実施例および比較例の歯元硬さ分布を
示す図である。
【図5】図5は、実施例および比較例の歯面硬さ分布を
示す図である。
【図6】図6は、実施例1,2による処理品表面の金属
組織を示す顕微鏡写真である。
【図7】図7は、実施例1,2による旧オーステナイト
結晶粒界の金属組織を示す顕微鏡写真である。
【図8】図8は、実施例および比較例の回転曲げ疲労強
度を示す図である。
【図9】図9は、実施例および比較例の残留応力分布を
示す図である。
【図10】図10は、連続式浸窒プレス焼入れ装置の構
成例を示す図である。
【符号の説明】
1 処理前ストッカ 2 加熱装置 3 プレスクエンチ装置 4 処理後ストッカ 5,6,7 搬送装置 8 アンモニア分析計
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C21D 9/32 C21D 9/32 A

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋳造または鍛造により製造され、素材調
    質および機械加工が施された鋼部材を炉内でオーステナ
    イト温度域まで加熱し、その温度域で保持した後、焼入
    れ硬化させる表面処理歯車の製造方法であって、前記オ
    ーステナイト温度域を850〜900℃とし、かつ保持
    時間を1時間以上とし、その保持中に浸炭性ガスを炉内
    に導入することを特徴とする表面処理歯車の製造方法。
  2. 【請求項2】 鋳造または鍛造により製造され、素材調
    質および機械加工が施された鋼部材を炉内でオーステナ
    イト温度域まで加熱し、その温度域で保持した後、焼入
    れ硬化させる表面処理歯車の製造方法であって、前記オ
    ーステナイト温度域を850〜900℃とし、かつ保持
    時間を1時間以上とし、その保持中に浸炭性ガスとアン
    モニアとの混合ガスを炉内に導入することを特徴とする
    表面処理歯車の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記焼入れが、プレスクエンチにより行
    われる請求項1または2に記載の表面処理歯車の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記焼入れ硬化後または焼入れ焼戻し後
    に表面にショットピーニングが施される請求項1〜3の
    いずれかに記載の表面処理歯車の製造方法。
  5. 【請求項5】 処理品を850℃以上に加熱でき、かつ
    浸炭性ガスおよびアンモニアが導入できる密閉性に優れ
    た加熱装置と、処理品を拘束しながら焼入れするプレス
    クエンチ装置と、前記加熱装置からプレスクエンチ装置
    へ処理品を搬送する搬送装置を備えることを特徴とする
    表面処理歯車の製造装置。
  6. 【請求項6】 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方
    法により製造される表面処理歯車であって、歯元表面硬
    さがH500以上、歯面表面硬さがH550以上、
    歯面表面から0.2mmの範囲の硬さがH500以上
    で、歯車ベース円上の肉厚中心部の硬さがH300以
    上であることを特徴とする表面処理歯車。
  7. 【請求項7】 請求項2または3に記載の製造方法によ
    り製造される表面処理歯車であって、表面から0.1m
    m以上の範囲内で窒素の浸入が認められ、旧オーステナ
    イト結晶粒サイズがJIS−G0551の粒度番号9番
    以上であることを特徴とする表面処理歯車。
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