JP3477361B2 - 熱転写記録媒体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【０００１】 【発明の属する技術分野】本発明は、熱転写記録媒体に
関し、特に印字品質、耐オイル性に優れた熱転写記録媒
体に関するものである。 【０００２】 【従来の技術】近年、バーコード像は、例えば食品や雑
貨の分野において、流通・コスト管理に欠かせないもの
となっている。このようなバーコード像を作成するに
は、熱転写記録媒体を使用した感熱記録法が最も良く知
られている。 【０００３】熱転写記録媒体は、ポリエステルフィルム
上に、比較的融点又は軟化点の低いワックスを主体とし
たインク層を形成した構造のものが主流であり、かかる
熱転写記録媒体においては、プリンタ内に設けられたサ
ーマルヘッドの熱を利用することによって、上記インク
層がラベル、紙、タグ等のシートに転写される。 【０００４】 【発明が解決しようとする課題】ところで、従来、バー
コード像を印字したラベルを、オイル及び化学薬品の容
器の管理に使用したり、あるいはオイル及び薬品を大量
に使用する製造工程において使用したいという要求があ
る。 【０００５】しかし、このような用途に使用するには、
取り扱いの際にオイルが容器からこぼれたり、また製造
工程中にオイル等が飛散してバーコード像を汚染するこ
とが頻繁にあることから、耐オイル性及び耐薬品性のよ
いバーコード像であることが必要である。 【０００６】このような要求に応えるため、従来、いく
つかの熱転写記録媒体が検討されている。例えば、特開
平２−３８０９４号公報には、剥離層、保護層、着色層
及び接着層からなる転写シートが記載され、転写後に硬
化反応させることにより耐溶剤性に優れた転写画像が得
られることが記載されている。 【０００７】また、特開平３−１６６９９３号公報に
は、剥離層、電離放射線硬化性樹脂からなる保護層を順
次形成してなる熱転写シートが記載され、転写後に積極
的に電離放射線を照射することによって耐溶剤性の優れ
た印字物が得られることが記載されている。 【０００８】本発明者らの調査によれば、上述した熱転
写記録媒体は、確かに印字物の耐溶剤性を高めることに
成功している。しかし、上記従来例においては印字物を
硬化する手段が必要になるとともに、印字後直ちに使用
することができないという欠点がある。 【０００９】また、印字対象物の種類によっては、加熱
等により変性するおそれがあるため印字後に硬化処理を
行うことができないものも存在する。 【００１０】一方、特開平２−１６０５８４号公報に
は、着色剤と熱可塑性ポリオール及び硬化剤からなるイ
ンク層を有する感熱転写記録媒体が記載され、この感熱
転写記録媒体によれば、画像の耐薬品性が著しく改善さ
れたことが記載されている。 【００１１】本発明者らの調査によれば、上記の熱転写
記録媒体は、確かに画像の耐薬品性を向上させることに
成功している。 【００１２】しかし、ここで使用される硬化剤は、（エ
チルアセトアセテート）アルミニウム−ジイソプロピネ
ート等のいわゆるアルミニウムキレート化合物であり、
このようなキレート化合物は、空気中の水分あるいはイ
ンク層を形成時に使用される溶剤中の水分によっても容
易に反応が進行するため、上記熱転写記録媒体において
長尺にわたってインク層を連続的に塗布形成しようとす
ると、インクが硬化して塗布形成ができなくなるという
致命的な欠点があった。 【００１３】一方、オイル等の種類に目を向けると、ブ
レーキオイル等の高吸湿性で不揮発性のオイルに対する
十分な耐溶剤性を有する熱転写記録媒体は、上記の熱転
写記録媒体のみならず、他の従来の技術においても案出
されていない。 【００１４】本発明は、このような従来の技術の課題を
解決するためになされたもので、その目的とするところ
は、印字後直ちに使用した場合であっても十分な耐オイ
ル性を有し、しかも印字対象物の種類によらず転写が可
能な熱転写記録媒体を提供することにある。 【００１５】また、本発明の他の目的は、ブレーキオイ
ル等の高吸湿性で不揮発性のオイルによっても、バーコ
ード像が汚染されることがない熱転写記録媒体を提供す
ることにある。 【００１６】さらに、本発明の他の目的は、インク層が
急激に反応せず長尺にわたって安定に製造することが可
能な熱転写記録媒体を提供することにある。 【００１７】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、剥離層上に形成し
た転写性インク層にイソシアネート化合物及びこのイソ
シアネート化合物と反応可能な塩化ビニル系樹脂を含有
させると、耐オイル性が向上することを見出し、本発明
を完成するに至った。 【００１８】かかる知見に基づいてなされた本発明は、
基材上に、剥離層及び転写性インク層を順次形成した熱
転写記録媒体において、上記転写性インク層が、少なく
とも着色剤（Ａ）、イソシアネート化合物（ｂ）及び該
イソシアネート化合物と反応可能な塩化ビニル系樹脂
（ｃ）を含むことを特徴とする。 【００１９】 【発明の実施の形態】以下、本発明に係る熱転写記録媒
体の実施の形態を詳細に説明する。本発明の熱転写記録
媒体は、基材上に、剥離層及び転写性インク層を順次形
成した構成を有し、この転写性インク層が、少なくとも
着色剤（Ａ）、イソシアネート化合物（ｂ）及びこのイ
ソシアネート化合物と反応可能な塩化ビニル系樹脂
（ｃ）を含むものである。 【００２０】本発明において、基材は、従来の熱転写記
録媒体に用いられているものを使用することができ、例
えば、コンデンサ紙や硫酸紙のような紙からなる基材
や、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、
ポリカーボネートフィルム等のプラスチックからなる基
材を好適に使用することができる。 【００２１】ここで、基材の厚みは、フィルムの強度及
び熱伝導の観点からは、２〜１２μｍとすることが好ま
しく、さらに好ましくは３．５〜６μｍである。 【００２２】本発明の剥離層は、熱転写時においては転
写性インク層（以下「インク層」という。）の転写性を
向上させるとともに、平時（非熱転写時）においては基
材及びインク層に対し良好に接着して、インク層の箔落
ち現像を防止する役割がある。 【００２３】剥離層の材料としては、例えば、カルナバ
ワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、パ
ラフィンワックス、ポリエチレン等のワックス類や、Ｅ
ＶＡ（エチレン−酢酸ビニル共重合体）、ポリエステル
樹脂、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することが
できる。 【００２４】剥離層の厚みは、他の構成要素、例えば基
材やインク層の材料や印字条件等を考慮して種々選択す
ることができるが、印字のエネルギー、塗工性及び印字
品質の観点からは、０．２〜１．５ｇ／ｍ²とすること
が好ましい。 【００２５】本発明のインク層は、少なくとも着色剤
（Ａ）と、イソシアネート化合物（ｂ）と、このイソシ
アネート化合物（ｂ）と反応する塩化ビニル系樹脂
（ｃ）を含有している。 【００２６】本発明における着色剤は、従来より熱転写
記録媒体に用いられているものを使用することができ、
例えば、カーボンブラックや、カラー顔料、具体的に
は、カーミンＢ（マゼンダ）、イエローＧＬ（イエロ
ー）、ブルー４０４０（シアン）、オレンジＧ（オレン
ジ）等を好適に使用することができる。 【００２７】上述の着色剤は、インク層中の構成材料を
１００重量部としたときに、５〜７０重量部の範囲で使
用することができるが、インク層の転写性を考慮する
と、４０〜６０重量部の範囲で使用することが好まし
い。 【００２８】本発明に使用されるイソシアネート化合物
は、硬化剤として広く使用されているものでよい。例え
ば、トリレジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタ
ンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘ
キサメチレンジイソシアネート、水酸化4,4′−ジフェ
ニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネ
ート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の
ジイソシアネート、あるいはこれらジイソシアネートの
アダクト体を使用することができる。 【００２９】本発明においては、上記イソシアネート化
合物と反応する塩化ビニル系樹脂が使用される。ここ
で、イソシアネート化合物と反応させるには、塩化ビニ
ル系樹脂中の分子中の主鎖又は側鎖に、ヒドロキシル
基、アミノ基、カルボキシル基等の官能基を導入すれば
良い。 【００３０】なお、本発明の塩化ビニル系樹脂は、市販
品として入手可能なものである。例えば、ＭＲ１１０、
ＭＲ１１２、ＭＲ１１３、ＭＲ１０４等の商品名により
特定される日本ゼオン社製の塩化ビニル系樹脂を使用す
ることができる。 【００３１】ここで、上記したイソシアネート化合物と
塩化ビニル系樹脂の割合は、塩化ビニル系樹脂１００重
量部とした場合に、５〜６０重量部の範囲で添加するこ
とができ、さらに好ましい範囲は、１０〜２０重量部で
ある。 【００３２】ここで、イソシアネート化合物の添加量が
５重量部未満であると、本発明の効果を十分に発揮させ
ることができず、６０重量部を超えると、印字条件によ
っては転写性が低下する場合がある。 【００３３】また、本発明のインク層は、本発明の目的
を逸脱しない範囲内で、印字品質を向上させるための他
の樹脂を添加することができる。このような樹脂として
は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アク
リル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等があげられ
る。 【００３４】そして、このような構成を有する本発明の
インク層の厚みは、０.５ｇ／ｍ²〜２.５ｇ／ｍ²であ
る。 【００３５】また、本発明においては、熱転写記録媒体
の走行性を高めるために、基材のインク層を形成する側
と反対側に、公知のシリコーン共重合体やシリコーンオ
イルを用いて耐熱滑性層を形成してもよい。 【００３６】ここで、滑性層としての性能、及び巻き取
り後のインク層への転着防止の観点からは、耐熱滑性層
の厚みは、０.１ｇ／ｍ²〜０.５ｇ／ｍ²とすることが好
ましい。 【００３７】本発明の熱転写記録媒体は、常法に従って
作成することができる。すなわち、基材上に、剥離層形
成用組成物をグラビアコーティング等によって形成し、
更に、その上にインク層形成用組成物をグラビアコーテ
ィング等によって形成すればよい。 【００３８】ただし、本発明の熱転写記録媒体は、上記
インク層を形成した後に、インク層の硬化処理を行うこ
とによって得られるものが含まれる。 【００３９】この場合、インク層の硬化処理は、温度４
０〜５０℃の範囲で、１２〜３６時間程度行う。これに
よりインク層がほぼ完全に硬化する。 【００４０】一方、熱転写記録媒体を直ちに使用しない
場合においても、インク層を形成した後に常温で２００
時間以上放置することにより十分に硬化したインク層を
得ることができる。 【００４１】 【実施例】以下、本発明に係る熱転写記録媒体の実施例
を比較例とともに詳細に説明する。 ＜実施例１＞ （耐熱滑性層組成物の調製） 以下の材料を、溶剤としてＭ.Ｅ.Ｋ.(メチルエチルケト
ン）９８重量部を用いて溶解し、目的の耐熱滑性層組成
物を調製した。 アクリル変性シリコーン樹脂（サイマック308、東亜合成社製） １．３重量部 ジイソシアネートアダクト体（D110、武田薬品工業社製） ０．７重量部 【００４２】（剥離層形成組成物の調製） 以下の材料を、溶剤として加熱したトルエン９０重量部
を用いて溶解し、目的の剥離層形成組成物を調製した。 【００４３】 エステルワックス（ＯＰワックス、ヘキスト社製） ９重量部 エチレン−酢酸ビニル共重合体（ＫＡ−３１、住友化学社製） １重量部 【００４４】（インク層形成組成物の作成） 以下の材料を、溶剤としてＭ.Ｅ.Ｋ.８０重量部を用いて
溶解し、目的のインク層形成組成物を調製した。 【００４５】 塩化ビニル共重合体樹脂（ＭＲ１１０、日本ゼオン社製） ８．０重量部 イソシアネートアダクト体（Ｄ１１０、武田薬品工業社製） ０．４０重量部 カーボンブラック（Ｒｅｇａｌ ６６０、キャボット社製） １２．０重量部 【００４６】なお、この塩化ビニル共重合体樹脂には、
水酸基（−ＯＨ）を有する共重合体ユニットが約０．６
％ほど含まれている。 【００４７】（熱転写記録媒体の作成） 上記耐熱滑性層組成物を用い、グラビアコーティングに
よって厚み４．６μｍのポリエステルフィルム（Ｆ５、
帝人社製）の一方の面（裏側面）に耐熱滑性層を形成
し、その後、溶剤を揮発させた。 【００４８】次いで、上記剥離層形成組成物を用い、グ
ラビアコーティングによって上記ポリエステルフィルム
の他方の面（表側面）に剥離層を形成し、その後、溶剤
を揮発させた。 【００４９】さらに、上記インク層形成組成物を用い、
グラビアコーティングによって上記剥離層上にインク層
を形成して溶剤を揮発させた後、温度５０℃で２４時間
硬化処理を行い、目的の熱転写記録媒体を得た。 【００５０】ここで、各層の厚みは、耐熱滑性層が０．
１ｇ／ｍ²、剥離層が１．０ｇ／ｍ²、そしてインク層が
１．０ｇ／ｍ²である。 【００５１】（評価） 上述の熱転写記録場媒体を以下の評価項目に従って評価
した。その結果を表１に示す。 【００５２】 【表１】 【００５３】１．印字品質 感熱転写プリンタ（ZEBRA−140Xi、Zebra Technologies
社製）を用い、ＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）
ラベル(Select 21830、FLEXCON社製）上に２inch(５.０
８ｃｍ)／secの印字速度でバーコード像を形成した。そ
して、この印字物のかすれの有無を目視により観察し
た。 【００５４】ここでは、印字物にかすれがなく印字品質
の好ましいものを『○』、印字物に若干のかすれが観察
されるが実用上問題のないものを『△』、印字物に多数
のかすれが確認され実用上問題があるものを『×』とす
る。 【００５５】２．耐ブレーキオイル性 堅牢度染色試験機の可動台座に、上記ラベルに印字され
た直後のバーコード像を表側にして貼付し、その上から
ブレーキオイル（ポリエチレングリコールエーテル)を
湿らせた布を捲きつけた自重４００ｇ／ｃｍ²の分銅を
載せ、台座を左右に動かすことによりバーコード像の表
面を擦るとともに、このバーコード像が汚染されるまで
の台座のサイクル数を計測した。 【００５６】ここでは、サイクル数が３１回以上であっ
て耐溶剤性が特に優れているものを『◎』、サイクル数
が１２回〜３０回であって耐溶剤性が優れているものを
『○』、サイクル回数が１１回以下であって実用上適し
ていないものを『×』とする。 【００５７】（結果） 表１から明らかなように、実施例１の熱転写記録媒体
は、印字品質が優れるとともに、ブレーキオイルによっ
てもサイクル数が４５回まではバーコード像が汚染され
ることがなかった。 【００５８】＜実施例２及び実施例３＞ 実施例２及び実施例３では、実施例１で使用したイソシ
アネート化合物の重量部を変化させた以外は、実施例１
と同様の方法により熱転写記録媒体を作成した。この熱
転写記録媒体を上述の方法により評価した。その結果を
表１に示す。 【００５９】（結果） 表１から明らかなように、実施例２及び実施例３の熱転
写記録媒体は、印字品質、耐ブレーキオイル性ともに良
好であった。 【００６０】＜比較例１＞ 比較例１では、塩化ビニル系樹脂をポリエステル樹脂に
置換し、イソシアネート化合物の配合量を１．６重量部
とし、カーボンブラックの配合量を１６．０重量部とし
た。また、基材上で硬化を行なわなかったが、それ以外
は実施例１と同様の方法で熱転写記録媒体を作成した。
これらの熱転写記録媒体を上述の方法により評価した。
その結果を表１に示す。 【００６１】＜比較例２＞ 比較例２では、比較例１において、ポリエステル樹脂を
ウレタン樹脂に置換した以外（カーボンブラックの量は
若干多い）は、実施例１と同様の方法で熱転写記録媒体
を作成した。これらの熱転写記録媒体を上述の方法によ
り評価した。その結果を表１に示す。 【００６２】（結果） 表１から明らかなように、比較例１及び比較例２の熱転
写記録媒体は、印字品質は良好であるものの、ともに耐
ブレーキオイル性が極端に劣っており、実用に適してい
ないものであった。 【００６３】 【発明の効果】以上述べたように、本発明の熱転写記録
媒体によれば、印字対象物の種類によらず、印字された
直後から耐溶剤性、特に耐ブレーキオイル性が良好な熱
転写記録媒体が得られるという顕著な効果を有する。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平２−160584（ＪＰ，Ａ) 特開 平９−24673（ＪＰ，Ａ) 特開 平８−300830（ＪＰ，Ａ) 特開 平８−337056（ＪＰ，Ａ) 特開 平８−216534（ＪＰ，Ａ) 国際公開98／008690（ＷＯ，Ａ１) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B41M 5/38 - 5/40

Claims (1)

1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項１】基材上に、剥離層及び転写性インク層を順
   次形成した熱転写記録媒体において、 上記転写性インク層が、少なくとも着色剤（Ａ）、イソ
   シアネート化合物（ｂ）及び該イソシアネート化合物と
   反応可能な塩化ビニル系樹脂（ｃ）を含むことを特徴と
   する熱転写記録媒体。