JP3446313B2 - 回転電機の回転子 - Google Patents

回転電機の回転子

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JP3446313B2 JP15367994A JP15367994A JP3446313B2 JP 3446313 B2 JP3446313 B2 JP 3446313B2 JP 15367994 A JP15367994 A JP 15367994A JP 15367994 A JP15367994 A JP 15367994A JP 3446313 B2 JP3446313 B2 JP 3446313B2
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    • H—ELECTRICITY
    • H02—GENERATION; CONVERSION OR DISTRIBUTION OF ELECTRIC POWER
    • H02K—DYNAMO-ELECTRIC MACHINES
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    • H02K1/06—Details of the magnetic circuit characterised by the shape, form or construction
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  • Power Engineering (AREA)
  • Synchronous Machinery (AREA)
  • Permanent Magnet Type Synchronous Machine (AREA)
  • Permanent Field Magnets Of Synchronous Machinery (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】この発明は、例えばランデル型ポ
ールコアの隣合う２つの爪状磁極の側面間に配された永
久磁石を樹脂製保持部材で保持するようにした交流発電
機や電動機などの回転電機の回転子に関するものであ
る。
【０００２】
【従来の技術】従来より、例えば交流発電機の回転子に
おいては、ランデル型ポールコアの隣合う２つの爪状磁
極の側面間に永久磁石を挿入して、複数の爪状磁極間で
磁束の漏洩を減少すると共に永久磁石の磁束をフィール
ドコイル（界磁巻線）に向かわせることにより、フィー
ルドコイルの起磁力に対してステータコイル（電機子巻
線）の出力効率、つまり発電効率を向上させるようにし
た技術が知られている。
【０００３】なお、永久磁石にはランデル型ポールコア
が回転すると、遠心力が働く方向に応力が発生するの
で、従来より永久磁石が隣合う２つの爪状磁極の側面間
から飛び出さないようにすることが必要である。例えば
特開平４−１６５９５０号公報には、回転子の外側面、
すなわちランデル型ポールコアの複数の爪状磁極の外周
面および永久磁石の外側面を、アルミニウム等の金属製
の非磁性保持部材で覆うようにした技術が記載されてい
る。
【０００４】また、特開平３−２６５４５０号公報に
は、ランデル型ポールコアの爪状磁極間に、円環状に周
回する金属もしくは樹脂で形成された非磁性体リングを
設け、この非磁性体リングにより永久磁石を保持するよ
うにした技術が記載されている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前者の技術
においては、回転子の外周面を非磁性保持部材で覆う構
造としているため、ランデル型ポールコアの外周面とス
テータコアの内周面とのエアギャップが拡大してしま
い、その増加分だけフィールドコイルの起磁力に対して
ステータコイルの出力効率、つまり発電効率が低下して
しまうという問題点がある。
【０００６】また、金属製の非磁性保持部材と永久磁石
とはフィールドコイルの起磁力を受けるランデル型ポー
ルコアに取り付けられている。このため、シャフトが回
転することによってランデル型ポールコアが回転したと
きにそのランデル型ポールコアから伝わる振動によっ
て、爪状磁極と非磁性保持部材との間で金属衝突音を原
因とする高周波衝撃磁気音が発生するという問題点があ
る。
【０００７】さらに、後者の技術においては、非磁性体
リングが一定幅の円環状に形成されており、非磁性体リ
ングと爪状磁極との間に熱膨張差が生じた際、非磁性体
リングを径方向内側に変形させる応力が発生するので、
非磁性体リングを変形させたり、破損させたりする問題
点がある。この発明は、エアギャップの拡大を防止する
ことにより性能の低下を防止し、且つ高周波衝撃磁気音
の発生を防止することにより低騒音化を図ることが可能
な回転電機の回転子の提供を目的とする。また、この発
明は、磁石保持部材に働く応力を吸収して緩和し、磁石
保持部材の変形や破損を防止し永久磁石を安定して保持
できる回転電機の回転子の提供を目的とする。
【０００８】
【課題を解決するための手段】請求項１に記載の発明で
は、外周側に形成された複数の爪状磁極が互いに噛み合
うように組み付けられ、回転軸と一体になって回転する
ポールコアと、前記ポールコアの隣合う２つの爪状磁極
間に配置され、これらの爪状磁極間の磁束の漏洩を減少
する向きに着磁された複数の永久磁石と、前記永久磁石
を保持するために前記隣合う２つの爪状磁極の側面間に
嵌め合わされた樹脂製保持部材とを備え、前記樹脂製保
持部材は、蛇行しながら周回する冠形状を成しており、
かつ前記樹脂製保持部材は、前記複数の永久磁石の内側
面に当接する基板部と、前記永久磁石の軸方向の移動を
規制する台座部と、前記永久磁石の径方向の移動を規制
する係止部とを有すると共に、前記爪状磁極の側面に対
向する対向面を開放して、前記永久磁石の側面を前記爪
状磁極の側面に当接させた状態で、前記複数の永久磁石
の各々を保持することを特徴としている。これにより、
樹脂製保持部材への永久磁石の組み付けが容易となり、
且つ、爪状磁極側面に永久磁石が当接された状態で組み
付けられるので、磁束が爪状磁極へ通過し易くなる。
【０００９】
【００１０】
【００１１】
【００１２】
【００１３】
【００１４】請求項２に記載の発明では、外周側に形成
された複数の爪状磁極が互いに噛み合うように組み付け
られ、回転軸と一体になって回転するポールコアと、前
記ポールコアの隣合う２つの爪状磁極間に配置され、こ
れらの爪状磁極間の磁束の漏洩を減少する向きに着磁さ
れた複数の永久磁石と、前記永久磁石を保持するために
前記隣合う２つの爪状磁極の側面間に嵌め合わされた樹
脂製保持部材とを備え、前記樹脂製保持部材は、蛇行し
ながら周回する冠形状を成しており、かつ樹脂製保持部
材は、周回後に両端部を連接しないことを特徴としてお
り、複数の爪状磁極と樹脂製保持部材との寸法差の吸収
が容易となる。請求項３に記載の発明では、回転電機は
交流発電機であり、前記回転子はランデル型ポールコア
を有することを特徴としており、永久磁石を保持した樹
脂製保持部材を良好に介在でき、永久磁石により発電効
率を向上できる。請求項４に記載の発明では、外周側に
形成された複数の爪状磁極が互いに噛み合うように組み
付けられ、回転軸と一体になって回転するポールコア
と、前記ポールコアの隣合う２つの爪状磁極間に配置さ
れ、これらの爪状磁極間の磁束の漏洩を減少する向きに
着磁された複数の永久磁石と、前記永久磁石を保持する
ために前記隣合う２つの爪状磁極の側面間に嵌め合わさ
れた樹脂製保持部材とを備え、前記樹脂製保持部材は、
Ｖ字状に繰り返しながら周回する冠形状を成しているこ
とを特徴とする技術手段を採用した。
【００１５】
【作用】本発明によれば、ポールコアの隣合う２つの爪
状磁極の側面間に嵌め合わされた樹脂性保持部材によっ
て、複数の永久磁石を保持するようにしているため、回
転子の外周面と固定子の内周面との隙間、つまりエアギ
ャップが拡大することはないので、回転電機の性能が低
下せず、また、ポールコアより永久磁石に伝わる振動を
抑制して、保持部材と永久磁石との干渉を防ぐことによ
り、高周波衝撃磁気音の発生が抑えられる。さらに、樹
脂性保持部材は、蛇行しながら周回する冠形状、もしく
はＶ字状に繰り返しながら周回する冠形状を成している
ため、樹脂性保持部材全体に弾性変形力が生じ、磁石保
持部材に働く応力が吸収され緩和される。
【００１６】
【実施例】次に、この発明の回転電機の回転子を図に示
す各実施例に基づいて説明する。 〔第１実施例の構成〕図１ないし図５はこの発明の第１
実施例を示したもので、図１は自動車用交流発電機の主
要部を示した図で、図２および図３は自動車用交流発電
機の回転電機の回転子を示した図である。
【００１７】その自動車用交流発電機１は、電機子とし
て働く固定子２と界磁として働く回転子３等から構成さ
れている。固定子２は、ステータコア４とステータコイ
ル５で構成され、図示しないフレームにより支えられて
いる。ステータコア４は、薄い鋼板を重ね合わせたもの
で、その内周面には多数のスロット（図示せず）が形成
されており、それらのスロット内に３組のステータコイ
ル５が挿入されている。このステータコイル５は、回転
子３の回転に伴って交流電圧が発生する。
【００１８】回転子３は、シャフト６と一体になって回
転するもので、ランデル型ポールコア７、フィールドコ
イル８、２個のスリップリング９、１０、１６個の永久
磁石１１および磁石保持器１２等によって構成されてい
る。シャフト６は、図示しないプーリに連結され、自動
車に搭載された走行用のエンジン（図示せず）により回
転駆動される。ここで、６ａはランデル型ポールコア７
をシャフト６の外周に固定するためシャフト６に一体的
に形成されたリング状のストッパ部である。
【００１９】ランデル型ポールコア７は、シャフト６に
組み付けられた円板部１３、１４、およびこの円板部１
３、１４の外周側より互いに噛み合うように延びる８個
の爪状磁極１５、１６より構成されている。なお、ラン
デル型ポールコア７は、フィールドコイル８に電流が流
れると、一方の爪状磁極１５が全てＳ極となり、他方の
爪状磁極１６が全てＮ極となる。また、ランデル型ポー
ルコア７の中央部分には、樹脂製のボビン１７を介して
フィールドコイル８が複数回巻かれている被巻装部１
８、１９が形成されている。
【００２０】また、爪状磁極１５、１６の周方向には、
図１および図３に示したように、永久磁石１１が遠心方
向に飛び出さないようにするための鍔状部２０〜２３が
形成されている。鍔状部２０〜２３は、本発明の係止部
であって、永久磁石１１の外側面を係止している。フィ
ールドコイル８の巻き始めと巻き終りはリード線８ａ、
８ｂを介してスリップリング９、１０に接続されてい
る。なお、この実施例のフィールドコイル８は、円板部
１３の外周部分と爪状磁極１５の根元部との間に形成さ
れる谷部２３ａより注入されるエポキシ系樹脂により含
浸処理されている。この含浸処理は、フィールドコイル
８の位置ずれを防止すると共に、その位置ずれによる異
音の発生を防止するために行われる。
【００２１】２個のスリップリング９、１０は、回転し
ているフィールドコイル８に励磁電流を供給するためシ
ャフト６の一端に取り付けられている。スリップリング
９、１０の円周上には、図示しないブラシが摺動して励
磁電流を供給するようになっている。図４は１６個の永
久磁石１１と磁石保持器１２を組み立てた状態を示した
図である。１６個の永久磁石１１は、隣合う２つの爪状
磁極１５、１６の側面間に配され、隣合う２つの爪状磁
極１５、１６間の磁束の漏洩を減少する向きに着磁して
いる。また、１６個の永久磁石１１は、フェライト磁
石、ナイロン・Ｎｄ・Ｆｅ・Ｂ粉末を焼結して成形した
樹脂磁石、希土類磁石等が用いられる。
【００２２】永久磁石１１の両側面は隣合う２つの爪状
磁極１５、１６の側面にそれぞれ当接し、シャフト６側
の内側面と軸方向の両端面は磁石保持器１２に保持さ
れ、固定子２側の外側面は固定子２の内周面にエアギャ
ップＧを介して対向している。なお、この実施例の永久
磁石１１は、径方向の寸法が１０mm、軸方向の寸法が２
６mm、幅が８mmの直方体形状に形成されている。
【００２３】図５は磁石保持器１２を示した図である。
その磁石保持器１２は、本発明の樹脂製保持部材であっ
て、ポリ・ブチレン・テレフタレート樹脂（ＰＢＴ樹
脂）や４０％のガラス繊維入りナイロン６６などの非磁
性樹脂材料により単独で一体成形されている。この磁石
保持器１２は、永久磁石１１の側面を隣合う２つの爪状
磁極１５、１６の側面に当接させた状態で永久磁石１１
の各々を保持する１６個の基板部２４、およびこれらの
基板部２４の一部を相互に連接する連接部２５を有して
いる。この連接部２５は、磁石保持器１２全体に、ある
程度の弾力性を確保しつつ耐広がり剛性を持たせて、応
力を緩和するとともに組み付けを容易にするためのもの
である。なお、連接部２５の内周面は、略円形状となる
ように形成されている。
【００２４】１６個の基板部２４は、隣合う２つの爪状
磁極１５、１６の側面間に嵌め合わされ、蛇行しながら
周回して冠状に形成されている。そして、１６個の基板
部２４の上端面（シャフト６側に対して逆側面）には、
永久磁石１１の内側面が当接した状態で、永久磁石１１
が１個ずつ載置される。これらの基板部２４の折返し点
部分２８、２９、つまり基板部２４の軸方向の両端部か
らは、径方向外方（固定子２側）に延びる一対の台座部
２６、２７が形成されている。なお、１６個の基板部２
４の内周面は、略円弧状となるように形成されている。
【００２５】一対の台座部２６、２７は、永久磁石１１
の外側面および両側面を開放した状態で、永久磁石１１
を１個ずつ挟み込んで係止する部分である。一対の台座
部２６、２７は、永久磁石１１の両端面にそれぞれ当接
し、永久磁石１１の軸方向の移動を規制する。また、台
座部２６、２７には、永久磁石１１の径方向の移動を規
制する係止部３２〜３５が設けられている。
【００２６】台座部２６、２７は、それぞれ隣設してＶ
字状に交わる２つの基板部２４の交点となる部分で、２
つの基板部２４を区画するための三角形状の区画板３６
が連接部２５の形成位置まで突出している。台座部２６
の係止部３２、３３は、台座部２６の外側端部より永久
磁石１１の外側面に当接するように略Ｖ字状に延ばされ
ている。係止部３２、３３の間には、爪状磁極１６の先
端より逃げるための矩形状のスリット３８が形成されて
いる。
【００２７】また、台座部２７の係止部３４、３５は、
台座部２７の外側端部より永久磁石１１の外側面に当接
するように、つまり係止部３２、３３側へ向かうように
略Ｖ字状に延ばされている。係止部３４、３５の間に
は、爪状磁極１５の先端より逃げるための矩形状のスリ
ット３９が形成されている。なお、係止部３２〜３５の
内周面は先端に向かう程肉薄となるように形成され、係
止部３２〜３５の外周面は略円弧状となるように形成さ
れている。
【００２８】〔第１実施例の組付方法〕次に、この実施
例の回転子３の組付方法を図１ないし図５に基づいて簡
単に説明する。先ず、一方向抜きの成形型を用いたアン
ダーカットにより、図４に示したように、樹脂製の磁石
保持器１２を形成する。そして、この磁石保持器１２の
各一対の台座部２６、２７間に永久磁石１１を嵌め込ん
でいく。
【００２９】すると、図４に示したように、係止部３２
〜３５により永久磁石１１が強固に挟み込まれることに
よって、１６個の永久磁石１１と磁石保持器１２が組み
付けられる。このように、永久磁石１１と磁石保持器１
２との組み立て一体化を短時間でしかも容易に行うこと
ができる。次に、樹脂製のボビン１７の外周にフィール
ドコイル８を複数回巻装した後に、一方の円板部１３、
フィールドコイル８、一体化した１６個の永久磁石１１
と磁石保持器１２、および他方の円板部１４を順に組み
付ける。このとき、図２および図３に示したように、一
方の爪状磁極１５の側面と他方の爪状磁極１６の側面と
の間に永久磁石１１が配設され、且つ爪状磁極１５、１
６の鍔状部２０〜２３により永久磁石１１を係止するよ
うにする。そして、これらの軸心にシャフト６を打ち込
んだ後に、シャフト６の外周にスリップリング９、１０
を取り付けて回転子３を製作する。
【００３０】ここで、図１および図２に示したように、
１６個の永久磁石１１の外側面よりも磁石保持器１２の
係止部３２〜３５の外周面の外径の方が大きく、さらに
磁石保持器１２の係止部３２〜３５の外周面よりも爪状
磁極１５、１６の外周面の外径の方が大きくなってい
る。すなわち、ランデル型ポールコア７の外周面よりも
永久磁石１１や磁石保持器１２は突出していないので、
ランデル型ポールコア７の外周面とステータコア４の内
周面との間に形成されるエアギャップＧの拡大を防げ
る。
【００３１】〔第１実施例の作用〕次に、この実施例の
自動車用交流発電機１の作動を図１ないし図５に基づい
て簡単に説明する。シャフト６がエンジンによって回転
駆動されると、シャフト６と一体になって回転子３が回
転する。このため、隣合う一方の爪状磁極１５の側面と
他方の爪状磁極１６の側面との間に磁石保持器１２によ
って配設された１６個の永久磁石１１も回転するので、
これらの永久磁石１１に遠心力の働く方向に応力がかか
り、径方向に永久磁石１１を移動させようとする力が生
じる。
【００３２】ここで、磁石保持器１２の一対の台座部２
６、２７で永久磁石１１を挟み込んでおり、さらに係止
部３２〜３５が、永久磁石１１の外側面の両端部分をそ
れぞれ係止している。このため、永久磁石１１に遠心力
の働く方向に応力が加わっても永久磁石１１を磁石保持
器１２によって強固に挟持されているので、隣合う一方
の爪状磁極１５の側面と他方の爪状磁極１６の側面との
間から永久磁石１１が飛び出すことを防げる。また、磁
石保持器１２を樹脂により一体成形しているので、磁石
保持器１２と永久磁石１１間の振動が抑制され、高周波
衝撃磁気音の発生を防げる。
【００３３】また、フィールドコイル８に励磁電流が流
されるとフィールドコイル８に起磁力が発生する。この
とき、一方の爪状磁極１５がＳ極に、他方の爪状磁極１
６がＮ極に励磁される。そして、永久磁石１１の存在に
より一方の爪状磁極１５と他方の爪状磁極１６との間の
漏洩磁束を軽減すると共に、永久磁石１１自体が発生す
る磁束をステータコア４に作用する磁束に加えることに
よって３組のステータコイル５に交流電圧が発生する。
【００３４】さらに、磁石保持器１２は蛇行しながら周
回して冠状に形成されているので、磁石保持器１２全体
に、ある程度の弾力性を確保しつつ、耐広がり剛性を持
たせることができ、応力を緩和するとともに組み付けを
容易にしている。 〔第１実施例の効果〕以上のように、自動車用交流発電
機１は、隣合う一方の爪状磁極１５の側面と他方の爪状
磁極１６の側面との間から永久磁石１１が飛び出すこと
を防止できるので、隣合う一方の爪状磁極１５と他方の
爪状磁極１６との間の磁束の漏洩を確実に防止できる。
そして、永久磁石１１の両側面が爪状磁極１５、１６の
側面に直接当接するように磁石保持器１２により永久磁
石１１が保持されているので、永久磁石１１による磁束
向上効果をさらに向上することができる。
【００３５】また、磁石保持器１２を樹脂により一体成
形しているので、ランデル型ポールコア７の振動に起因
する永久磁石１１と磁石保持器１２との衝突を緩衝する
ことができ、高周波衝撃磁気音の発生を防止できる。さ
らに、磁石保持器１２は蛇行しながら周回して冠状に形
成されているので、磁石保持器１２全体に、ある程度の
弾力性が確保されるとともに、耐広がり剛性を持たせる
ことができ、熱膨張差による応力を緩和できるとともに
組み付けを容易にできる。
【００３６】また、ランデル型ポールコア７の外径より
永久磁石１１や磁石保持器１２が固定子２側に突出して
いないので、ランデル型ポールコア７の外周面とステー
タコア４の内周面との間に形成されるエアギャップＧの
拡大を防止できる。このため、自動車用交流発電機１の
フィールドコイル８の起磁力に対して３組のステータコ
イル５の出力効率、つまり発電効率が向上する。
【００３７】なお、この実施例では、１６極のランデル
型ポールコア７、１６個の永久磁石１１を持つ回転子３
を用いているので、例えば１２極のポールコア、１２個
の永久磁石を持つ回転子より永久磁石１１の総断面積が
増加することにより磁束量を増加させることができる。
このため、フィールドコイル８の起磁力の低下を考慮し
ても、従来の技術よりもステータコイル５の出力効率、
つまり発電効率が向上する。
【００３８】そして、回転子３の組付時に永久磁石１１
を磁石保持器１２に挟持させるようにしているため、永
久磁石１１をモールド成形する技術よりも型管理や成形
圧等の製造管理が簡略化できると共に、永久磁石１１と
磁石保持器１２との組み立て一体化を容易に行うことが
できるので、回転子３の製造コストを低下させることが
できる。
【００３９】〔第２実施例〕図６ないし図１０はこの発
明の第２実施例を示したもので、図６は自動車用交流発
電機の主要部を示した図で、図７ないし図９は自動車用
交流発電機の回転電機の回転子を示した図である。この
実施例の自動車用交流発電機１の回転子３は、ランデル
型ポールコア７、フィールドコイル８、２個のスリップ
リング９、１０、１６個の永久磁石１１および磁石保持
器１２等によって構成されており、シャフト６と一体に
なって回転する。
【００４０】図１０に示されるこの実施例の磁石保持器
１２は、１６個の永久磁石１１をポリ・ブチレン・テレ
フタレート樹脂（ＰＢＴ樹脂）や４０％のガラス繊維入
りナイロン６６などの樹脂材料で一体モ−ルド成形した
ものである。この磁石保持器１２は、１６個の包囲部５
１、およびこれらの包囲部５１を連接する連接部５３、
５４を有している。この連接部５２は、磁石保持器１２
全体に弾力性を持たせ、爪状磁極１５、１６との熱膨張
差等を吸収するためのものである。なお、連接部５３、
５４の内周面は、略円形状となるように形成されてい
る。
【００４１】１６個の包囲部５１は、１個ずつの永久磁
石１１を包み込むように方形筒形状に形成され、隣合う
２つの爪状磁極１５、１６の側面に対向する対向面、内
側面および外側面を被覆した状態で永久磁石１１の各々
を保持する部分である。また、１６個の包囲部５１は、
隣合う２つの爪状磁極１５、１６の側面間に嵌め合わさ
れ、蛇行しながら周回して冠形状に形成されている。ま
た、１６個の包囲部５１は、１個ずつの永久磁石１１の
遠心方向への移動を規制している。
【００４２】そして、１６個の包囲部５１の軸方向の両
端部には、１６個の包囲部５１を連接する連接部５３、
５４が設けられている。一対の連接部５３、５４は、そ
れぞれ隣設してＶ字状に交わる２つの包囲部５１の交点
となる部分で、他の部分に比べて肉厚が厚くなってい
る。これらの連接部５３、５４は、爪状磁極１５、１６
に対応して独立しており、爪状磁極１５、１６と磁石保
持器１２との組付公差を個々の連接部５３、５４の変形
で吸収することができる。
【００４３】また、爪状磁極１５、１６の周方向には、
永久磁石１１を埋設成形した磁石保持器１２が回転子３
の高速回転時に遠心方向に飛び出さないようにするため
の鍔状部２０〜２３が形成されている。鍔状部２０〜２
３は、本発明の係止部であって、磁石保持器１２の１６
個の包囲部５１の外側面を係止している。この実施例で
は、１６個の永久磁石１１の周囲を樹脂材料で完全に包
囲することにより、永久磁石１１への異物侵入を防止で
き、永久磁石１１の亀裂の発生を防止できる。また、仮
に、永久磁石１１に亀裂が発生したとしても永久磁石１
１の飛散を良好に防止できる。さらに、発電時には１５
０℃〜１８０℃の高温となり発電停止時には外気温とな
る非常に過酷な冷熱サイクルによる熱衝撃、自動車の微
振動による振動衝撃を緩和する効果があり、この点から
も永久磁石１１の亀裂の発生を防止することができる。
【００４４】さらに、磁石保持器１２と爪状磁極１５、
１６との熱膨張差により、磁石保持器１２を径方向内側
へと変形させる力が生じるが、磁石保持器１２が蛇行し
ながら周回する冠形状であるため、このスプリング効果
によって上記の変形力を吸収できる。なお、回転時の遠
心力による爪状磁極の径方向への拡がりも吸収でき、磁
石保持器自体の破損も防止できる。
【００４５】そして、図８および図９に示したように、
包囲部５１は、永久磁石１１と爪状磁極１５、１６の側
面との間に介在し、樹脂材料が適当な永久歪（クリープ
量）を持つものを選定することによって、磁石保持器１
２と鍔状部２０〜２３との接点が点当たりしたときでも
樹脂材料のクリープにより、樹脂材料が変形して面当た
りとなり、応力が集中することなく、永久磁石１１に均
一な応力を伝え、破損を防止することができる。
【００４６】〔第３実施例〕図１１はこの発明の第３実
施例を示したもので、自動車用交流発電機の回転電機の
回転子の一部断面を示した図である。この実施例の爪状
磁極１５、１６には、軸心方向に向かって先細りとなる
ようにテーパ部６１〜６４が形成されている。これらの
テーパ部６１〜６４は、１６個の永久磁石１１をモール
ド成形した磁石保持器１２の各包囲部５１の外側面を係
止することにより、回転子３の高速回転時に磁石保持器
１２が遠心方向に飛び出さないようにしている。
【００４７】〔変形例〕上述した第２及び第３実施例で
は、永久磁石１１を樹脂にて完全に覆う構造としたが、
図１２に示すように、永久磁石１１を樹脂性保持器１２
に容易に埋設成形するために、樹脂性保持器１２に永久
磁石露出部５５を設け、永久磁石１１の一部を樹脂性保
持器１２より露出させても良い。この永久磁石露出部５
５により埋設成形時の位置決め、固定等を容易に行うこ
とができる。
【００４８】また、樹脂性保持器１２を樹脂磁石により
形成し、爪状磁極間において永久磁石１１と同方向に着
磁することにより、磁束向上を一層図ることができる。
さらに、図１３に示すように、樹脂性保持器１２に非連
接部５６を設け、樹脂性保持器１２の連接部５３の一部
が切れている形状でもよく、同一の効果を得ることがで
きる。
【００４９】また、上述した各実施例では、本発明を自
動車用交流発電機１の回転子３に用いたが、その他の交
流発電機の回転子や電動機の回転子に用いても良く、ま
た、ポールコアとしてランデル型ポールコア７を用いた
が、ポールコアとしてセントポール型ポールコアを用い
ても良い。
【００５０】
【発明の効果】本発明は、樹脂製の保持部材によって、
ポールコアの外周面より径方向外方に突出することな
く、永久磁石を保持するようにしているため、エアギャ
ップの拡大を防止できるので、回転電機の性能の低下を
防止することができる。また、樹脂製保持部材によっ
て、樹脂製保持部材と永久磁石との間の金属衝突音を抑
制することができるため、高周波衝撃磁気音の発生を防
止できるので、低騒音化を達成することができる。
【００５１】さらに、樹脂製保持部材が全体的に弾力性
を有するので、磁石保持部材に働く応力を吸収して緩和
でき、磁石保持部材の変形や破損を防止し永久磁石を安
定して保持できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の第１実施例に用いた自動車用交流発
電機の主要部を示した断面図である。
【図２】図１の自動車用交流発電機の回転子を示した斜
視図である。
【図３】図１の自動車用交流発電機の回転子の主要部を
示した断面図である。
【図４】１６個の永久磁石と磁石保持器を組み立てた状
態を示した斜視図である。
【図５】磁石保持器を示した斜視図である。
【図６】この発明の第２実施例に用いた自動車用交流発
電機の主要部を示した断面図である。
【図７】図６の自動車用交流発電機の回転子を示した斜
視図である。
【図８】図６の自動車用交流発電機の回転子の主要部を
示した断面図である。
【図９】図８の自動車用交流発電機の回転子の主要部を
示した斜視図である。
【図１０】１６個の永久磁石をモールド成形した磁石保
持器を示した斜視図である。
【図１１】この発明の第３実施例に用いた自動車用交流
発電機の回転子の主要部を示した断面図である。
【図１２】永久磁石の一部を露出した変形例を示した磁
石保持器の要部拡大図である。
【図１３】磁石保持器の一部が切れた変形例を示した斜
視図である。
【符号の説明】
１ 自動車用交流発電機（回転電機） ３ 回転子 ７ ランデル型ポールコア ８ フィールドコイル １１ 永久磁石 １２ 磁石保持器（非磁性保持部材） １５ 爪状磁極 １６ 爪状磁極 ２０ 鍔状部（係止部） ２１ 鍔状部（係止部） ２２ 鍔状部（係止部） ２３ 鍔状部（係止部） ２４ 基板部 ２５ 連接部 ２６ 台座部 ２７ 台座部 ５１ 包囲部 ５３ 連接部 ５４ 連接部 ５５ 永久磁石露出部 ５６ 非連接部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 猪俣 憲安 愛知県刈谷市昭和町１丁目１番地 日本 電装株式会社内 (72)発明者 入江 均 愛知県刈谷市昭和町１丁目１番地 日本 電装株式会社内 (72)発明者 石田 博士 愛知県刈谷市昭和町１丁目１番地 日本 電装株式会社内 (56)参考文献 特開 平３−265450（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−251553（ＪＰ，Ａ) 特開 平４−165950（ＪＰ，Ａ) 特開 昭62−262640（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名) H02K 21/04 H02K 19/24

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 外周側に形成された複数の爪状磁極が互
    いに噛み合うように組み付けられ、回転軸と一体になっ
    て回転するポールコアと、 前記ポールコアの隣合う２つの爪状磁極間に配置され、
    これらの爪状磁極間の磁束の漏洩を減少する向きに着磁
    された複数の永久磁石と、 前記永久磁石を保持するために前記隣合う２つの爪状磁
    極の側面間に嵌め合わされた樹脂製保持部材とを備え、 前記樹脂製保持部材は、蛇行しながら周回する冠形状を
    成しており、かつ 前記樹脂製保持部材は、前記複数の永久磁石の内側面に
    当接する基板部と、前記永久磁石の軸方向の移動を規制
    する台座部と、前記永久磁石の径方向の移動を規制する
    係止部とを有すると共に、前記爪状磁極の側面に対向す
    る対向面を開放して、前記永久磁石の側面を前記爪状磁
    極の側面に当接させた状態で、前記複数の永久磁石の各
    々を保持することを特徴とする回転電機の回転子。
  2. 【請求項２】 外周側に形成された複数の爪状磁極が互
    いに噛み合うように組み付けられ、回転軸と一体になっ
    て回転するポールコアと、 前記ポールコアの隣合う２つの爪状磁極間に配置され、
    これらの爪状磁極間の磁束の漏洩を減少する向きに着磁
    された複数の永久磁石と、 前記永久磁石を保持するために前記隣合う２つの爪状磁
    極の側面間に嵌め合わされた樹脂製保持部材とを備え、 前記樹脂製保持部材は、蛇行しながら周回する冠形状を
    成しており、かつ 前記樹脂製保持部材は、周回後に両端部を連接しない こ
    とを特徴とする回転電機の回転子。
  3. 【請求項３】 請求項１もしくは２に記載の回転電機の
    回転子において、 前記回転電機は交流発電機であり、前記回転子はランデ
    ル型ポールコアを有することを特徴とする回転電機の回
    転子。
  4. 【請求項４】 外周側に形成された複数の爪状磁極が互
    いに噛み合うように組み付けられ、回転軸と一体になっ
    て回転するポールコアと、 前記ポールコアの隣合う２つの爪状磁極間に配置され、
    これらの爪状磁極間の磁束の漏洩を減少する向きに着磁
    された複数の永久磁石と、 前記永久磁石を保持するために前記隣合う２つの爪状磁
    極の側面間に嵌め合わされた樹脂製保持部材とを備え、 前記樹脂製保持部材は、Ｖ字状に繰り返しながら周回す
    る冠形状を成していることを特徴とする回転電機の回転
    子。
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