JP3972396B2 - ランデルコア型回転電機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランデル型ポールコアを用いた回転子を有するランデルコア型回転電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用交流発電機は、それぞれが複数の爪部を有するランデル型ポールコアを用いた回転子を備えており、この回転子を高速に回転させることにより発電を行っている。特に最近では、車両の電気負荷の増加に伴い、車両用交流発電機の高出力化が要求されており、ポールコアの各爪部間に漏洩磁束を減じる方向に着磁された永久磁石を挿入する手法が知られている。例えば、特開平7−312854号公報、特開平3−150055号公報、特開昭61−85045号公報に開示された交流発電機の回転子は、ポールコアの各爪部間に漏洩磁束を減じる方向に着磁された永久磁石が挿入されており、発電機の高出力化が図られている。
【0003】
また、上述した各公報に開示された交流発電機の回転子は、ポールコアの各爪部間に複数個の分離した永久磁石を別々に挿入しているため組付けが容易ではなく、これを改善したものとして、特開平7−123664号公報および特開平3−265450号公報が知られている。
【0004】
特開平7−123664号公報に開示された回転電機の回転子は、樹脂により蛇行周回して冠状に形成された磁石保持器に16個の永久磁石を挟み込んで、これをポールコアの各爪部間に形成されたつば部を利用して、あるいは磁石保持器の回転方向の断面を台形形状にして係止しており、永久磁石を挟み込んだ磁石保持器の状態で回転子の組み付けが行われる。また、特開平3−265450号公報に開示された車両用交流発電機の回転子は、ポールコアの各爪部間を埋めるようなほぼ円筒形状の非磁性体リングの内周側に凹部を形成し、この凹部に永久磁石を配設しており、非磁性体リングに永久磁石を配設した状態で回転子の組付けが行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した特開平7−123664号公報に開示された回転子に含まれる磁石保持器や特開平3−265450号公報に開示された車両用交流発電機の回転子に含まれる非磁性体リングは、いずれも外周側形状をポールコアの各爪部裏側および側面の形状に合わせている。このため、ポールコアや磁石の寸法誤差あるいはポールコアの組み付け誤差が大きいと永久磁石に不必要な応力が加わって、最悪の場合には永久磁石が割れたり欠けたりするおそれがあり、交流発電機の出力低下やステータ巻線等の破損を招くことになる。
【0006】
また、上述した磁石保持器や非磁性体リングは、複雑な形状を有しており、樹脂等の非磁性体材料で形成しようとした場合に製造が容易ではない。例えば、特開平7−123664号公報の図5に示された磁石保持器は、二方向型を用いて簡単に形成することはできず、製造コストの増大につながることになる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的はポールコアの寸法精度や組み付け精度などに起因して永久磁石へ加わる部分的な応力の集中を緩和することができるランデルコア型回転電機を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、ポールコアの各爪部間に挿入する永久磁石の保持構造の製造が容易なランデルコア型回転電機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のランデルコア型回転電機の回転子は、緩衝構造が一体形成された磁石保持器を備えており、ポールコアの加工精度や組み付け精度等に起因して生じた過度の応力が緩和されるため、永久磁石に加わる応力が低減され、割れや欠けを防止することができる。上述した緩衝構造は、永久磁石や爪部に部分的に当接して組み付け時に変形するものであり、具体的には、箱形形状を有する収納部の側面に形成された波形形状であって、いずれも磁石保持器の組み付け時に永久磁石に割れや欠けが生じる前に変形し、永久磁石へ加わる応力を低減することができる。
【0010】
また、上述した磁石保持器は、各爪部間の収納部が連結部によって連結されており、複数の収納部をまとめて一つの部品として扱うことができるため、容易に組み付けを行うことができる。このように、複数の収納部を連結する場合には、環状に連結することが望ましく、さらには、最初から環状に配置して磁石保持器を製造する場合の他、最初は帯状に配置して帯状体とし、これを湾曲変形させて製造することもできる。本発明によると、型成形等によって各収納部が連結部を介して帯状に配置された帯状体として磁石保持器を製造し、これを湾曲させて環状に配置した後、ポールコアの爪間への組み付けが行われることで製造上の有利さが得られる。各収納部が帯状に配置された磁石保持器は、平面上に置いて作業ができ、しかも形状が単純であるため、例えば二方向型を用いて容易に製造することができるなど、工程の簡略化やコストダウンが可能となる。
【0011】
また、上述したように各収納部が帯状に配置された磁石保持器を湾曲変形させて環状に配置して組み付けを行う際に、帯状の両端に形成された連結部同士を機械的に接合させることにより環状の部品としてもよい。また、帯状の両端に位置する収納部に支持部を形成しておけば、この支持部を持って上述した変形を行うことができるため変形作業が容易となり、この変形作業を自動化した場合に組み付け装置のアーム部分が収納部内の永久磁石によって磁化されることを防止することができる。
【0012】
また、上述した箱形形状を有する収納部のどの方向に開口面を形成するかによって、組付けのどのタイミングで永久磁石を各収納部に挿入するかがきまってくる。すなわち、環状に変形した際に内径側(回転軸側)にくるように開口面を形成した場合には、回転子の組み付けを行う前に、各収納部に永久磁石を挿入しておく必要がある。各収納部が帯状に配置された磁石保持器を環状に変形して用いる場合には、各収納部が帯状に配置された状態で永久磁石の挿入が行えるため、永久磁石の組み付け作業が容易となる。また、環状に変形した際に回転軸に沿った方向にくるように開口面を形成した場合には、回転子の組付けが終了した後に回転軸方向にポールコアの各爪部間から各収納部に永久磁石を挿入することもできるため、工程の自由度が増す。
【0013】
また、上述した各収納部をポールコアの各爪部の外周面に形成したつば部に部分的に接触させて、遠心方向の押さえを行うこともできる。各収納部を直方体の箱形形状に形成しただけでは遠心方向に拘束するものがないため、遠心方向に何らかの拘束手段が必要であり、各爪部に形成したつば部と組み合わせて用いることは特に有効な方法ということができる。
【0014】
なお、上述した本発明の磁石保持器は各収納部が緩衝構造を有するものであったが、この緩衝構造がなく、単に各収納部を連結部を挟んで帯状に配置して製造し、その後環状に変形するようにしてもよい。このような磁石保持器についても上述した工程の簡略化やコストダウンなどの利点がある。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明を適用した回転電機の一種である車両用交流発電機(以後、「オルタネータ」と称する)は、回転子であるロータの各爪部間に永久磁石が挿入されており、この永久磁石を保持する磁石保持器に、永久磁石に対する応力の集中を分散させる緩衝構造を持たせたことに特徴がある。また、本発明を適用したオルタネータは、永久磁石を保持する磁石保持器を、あらかじめ帯状に展開したような形状で製造しておいて、ポールコアと組み合わせる前に湾曲させて環状になるように配置して、ロータの組み付けを行うことに特徴がある。以下、本発明を適用した一の実施形態のオルタネータについて、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0016】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明を適用した一実施形態のオルタネータの部分的な構成を示す断面図であり、ランデル型のロータとこれに組み合わされるステータを抜き出して示したものである。同図に示すロータ1は、同期発電機であるオルタネータの回転子であって、絶縁処理された銅線をボビン10に円筒状かつ同心状に巻き回したフィールドコイル12と、それぞれが中心のコア部14、16に連続する外周部において回転軸方向に折れ曲がった6極の爪部18、20を有する一対のポールコア22、24と、隣接する爪部18、20間に挿入される12個の収納部26を後述する連結部28によって回転方向に連結した帯状体を湾曲変形させてなる磁石保持器30と、各収納部26に挿入される12個の永久磁石32と、回転軸となるシャフト34とを含んで構成されている。永久磁石32としては、例えばフェライト磁石、ネオジ磁石、希土類磁石等が用いられる。
【0017】
また、図1において、ロータ1の外周側に配置されたステータ2は、オルタネータの固定子であって、絶縁処理された3相のステータコイル90がステータコア92に巻き回されている。
【0018】
図2は、図1に示した磁石保持器30の外観斜視図であり、ロータ1の組み付け前に12個の収納部26を環状に配置した状態が示されている。また、図3は1つの収納部26を抜き出して示した図であり、各収納部26とこれに挿入する永久磁石32との位置関係が示されている。
【0019】
これらの図に示すように、磁石保持器30は、永久磁石32を保持する12個の収納部26と、隣接する収納部26の側面同士を部分的に連結する変形可能な連結部28を有しており、帯状体を形成している。それぞれの収納部26は、直方体形状を有する永久磁石32を挿入するための開口面を有する箱形形状(カップ形状)を有しており、ロータ1に組み付けて回転したときにこの開口面が内径側となるように配置されている。これら収納部26は、磁石保持器30が後述するような帯状の状態でもその箱形形状の中に永久磁石32が圧入保持されるよう形成されている。また、各連結部28は、磁石保持器30をロータ1に組み付けたときに、各爪部18、20の裏面側に隙間なく当接し、ロータ1の回転時に磁石保持器30を径方向に拘束する機能を有している。
【0020】
また、連結部28が形成された側の収納部26の対向する2つの側面は、波形形状に形成されている。図3に示すように、永久磁石32を挿入したときに、この波形形状の側面26−1と26−2の一部が永久磁石32に接触するようになっており、この接触部分を押し開いて収納部26内に永久磁石32を挿入することにより、永久磁石32が保持される。
【0021】
永久磁石32は、ポールコア22、24の各爪部18、20間の漏洩磁束を少なくする方向に着磁されており、この方向を維持するように磁石保持器30のそれぞれの収納部26に挿入されている。また、各爪部18、20間の漏洩磁束を少なくするために、磁石保持器30を構成する各収納部26および連結部28は、非磁性体材料によって形成されている。例えば、ナイロンやPPS等の可とう性のある樹脂材料、あるいはステンレスやアルミニウム等の金属材料が用いられており、磁石保持器30を通って漏洩磁束が増加しないようになっている。
【0022】
図4は、各収納部26を連結部28により連結し帯状に配置した帯状体を平面上に展開した状態を示す図であり、磁石保持器30を型成形等によって製造した直後の状態が示されている。同図に示すように、磁石保持器30は、まず12個の収納部26を帯状に配置して、それらの間を連結部28によって連結した形状に成形される。帯状に配置された各収納部26と連結部28は、永久磁石32の挿入部となる開口面が同一方向を向いているため、二方向型を用いて容易に製造することができる。
【0023】
上述したように磁石保持器30の各収納部26を帯状に配置した状態で製造した後、各収納部26の開口面が内周側になるように湾曲させ、全体を環状に変形する。図2等に示すように、各収納部26の間を連結している連結部28は、変形しやすい平板状に形成されており、帯状の両端に位置する収納部26を持って磁石保持器30の全体を環状に丸め、両端の連結部28同士を機械的に接合することにより、図2に示した環状の磁石保持器30が一つの部品として形成される。
【0024】
上述した両端の連結部28同士の接合は、図4に示すように、一方端の連結部28に凸部80を形成するとともに、他方端の連結部28に凹部82を形成しておいて、この凹部82に凸部80を圧入することにより行っている。但し、機械的な接合の方法についてはこれに限らず、例えば熱溶着による方法や接着剤を用いる方法等、連結部28同士を機械的に連結可能な種々の方法を用いることができる。
【0025】
このように、本実施形態のオルタネータのロータ1に含まれる磁石保持器30は、12個の収納部26を帯状に展開し、それらの間を平板状の連結部28で連結した状態で製造され、永久磁石32の挿入後にこれを環状に変形した状態で組み付けに用いられる。したがって、製造には安価な二方向型を用いることができ、製造工程の簡略化およびこれに伴ってコスト低減が可能となる。
【0026】
また、磁石保持器30の各収納部26は、ポールコア22、24の各爪部18、20に接触する側の側面が波形形状になっており、ポールコア22、24の加工精度や組み付け精度が悪い場合であっても、組み付け時にこの波形部分が変形する緩衝構造となっており、永久磁石32に部分的に過大な応力が加わって永久磁石32が割れたり部分的に欠けたりするといったことがない。
【0027】
図5は、永久磁石を保持する磁石保持器の変形例を示す図であり、各収納部の緩衝構造を変更した磁石保持器の外観斜視図が示されている。また、図6は図5に示した磁石保持器に含まれる各収納部を帯状に配置した状態を示す図であり、磁石保持器を型成形等により製造した直後の状態が示されている。なお、これらの図に示す磁石保持器が組み付けられるロータの構造は、図1に示したものと同じであり、磁石保持器以外の部品については図1に示した各部品の符号を用いて説明を行うものとする。
【0028】
図5に示す磁石保持器40は、永久磁石32を保持する12個の収納部42と、隣接する収納部42の側面同士を部分的に連結する連結部44を有している。磁石保持器40を構成する収納部42と連結部44のそれぞれは、可とう性のある非磁性体の樹脂材料、例えばナイロンやPPS等で形成されている。また、図2に示した収納部26と同様に、それぞれの収納部42は、永久磁石32を挿入するための開口面を有する箱形形状を有しており、ロータに組み付けて回転させたときにこの開口面が内径側となるように配置されている。
【0029】
連結部44が形成された側の収納部42の2つの側面には、その内壁側に永久磁石32の挿入方向に平行な複数本(例えば4本)の凸部46が形成されている。各収納部42に対する永久磁石32の挿入は、相対する2つの側面に形成された凸部46間に永久磁石32を圧入することにより行われ、永久磁石32が保持される。また、この凸部46は、ポールコア22、24の加工精度や組み付け精度が悪い場合の緩衝構造としても機能する。収納部42の横幅よりも隣接する爪部18、20間の回転方向の間隔が狭い場合には、収納部42が横方向から押されて凸部46に応力が集中するが、この凸部分46は可とう性のある樹脂材料でできているため変形しやすく、永久磁石32に加わる応力が緩和される。
【0030】
また、上述した磁石保持器40は、図2に示した磁石保持器30と同様に、各収納部42を連結部44を挟んで帯状に配置して型成形等によって製造した後、各収納部42の開口面から永久磁石32を圧入し、さらに各収納部42の開口面が内径側になるように全体を環状に変形する。そして、この環状に変形した状態でロータへの組み付けが行われる。
【0031】
上述した磁石保持器40の製造は、図2に示した磁石保持器30と同様に二方向型を用いて容易に行うことができ、しかも組み付け時にポールコア22、24の加工精度や組み付け精度に起因して磁石保持器40に過度の応力が加わっても、これを凸部46の変形によって吸収することができるため、永久磁石32が割れたり部分的に欠けたりすることはない。
【0032】
図7は、磁石保持器を組み付け時に環状に丸めるための支持部である取っ手を設けた変形例を示す図である。上述した磁石保持器40自体は非磁性体材料で形成されているが、環状に変形する前に各収納部42に圧入される永久磁石32は磁性を帯びている。したがって、図6の両端に位置する収納部42を組み付け装置の鉄製のアームでつかむとこのアームが磁化されてしまい、鉄等でできた異物がアームに吸引される不具合が生じる。このような不具合を改善するために、図7に示す磁石保持器40Aには、両端に位置する収納部42Aの一部に回転軸方向に延びた取っ手48、50が一体的に形成されている。組み付け装置のアームでこれらの取っ手48、50をつかんで磁石保持器40Aの全体を環状に変形させることができ、この場合であっても組み付け装置のアームが収納部42A内の永久磁石32によって磁化されることはない。
【0033】
なお、上述した図7では図6に示した磁石保持器40の両端の収納部42に取っ手を付けた場合を例に取って説明したが、図4に示した磁石保持器30の両端の収納部26に取っ手を付ける場合や後述する各種の磁石保持器に取っ手を付けるようにしてもよい。
【0034】
図8は、収納部の形状を変更した磁石保持器の変形例を示す図であり、部分的な斜視構造が示されている。同図に示す磁石保持器52に含まれる収納部54は、側面が波形形状や凸部を有しない平面である箱形形状を有しており、この側面の一部を外側に折り曲げた切り起こし部56が形成されている。各収納部54およびこれらの隣接するもの同士を連結する連結部55は、図2に示した磁石保持器30と同様に、非磁性体の樹脂材料や金属材料で形成されている。また、収納部54の回転方向の幅が、ポールコア22、24の各爪部18、20の間隔よりも若干狭く設定されており、ロータに組み付ける際は、上述した収納部54の側面に設けられた切り起こし部56がポールコア22、24の各爪部18、20の側面に押し当てられるため、各爪部18、20の間に各収納部54が拘束される。
【0035】
また、ポールコア22、24の加工精度や組み付け精度が悪い場合であっても、それらの誤差分を各収納部54の切り起こし部56で吸収することができるため、各収納部54に圧入された永久磁石に過度の応力が加わることがない。
【0036】
上述した各種の磁石保持器は、各収納部に永久磁石を圧入するための開口面がロータの内径方向を向いているため、12個の収納部が帯状に配置された状態で各収納部に永久磁石を圧入し、この状態で全体を環状に丸めてロータの組み付けを行ったが、各収納部の開口面の位置を工夫することにより、環状に丸めてロータへの組み付けを行った後に各収納部に永久磁石の圧入を行うこともできる。
【0037】
図9は、収納部の形状を変形した磁石保持器の他の変形例を示す図であり、12個の収納部の中から1個を抜き出してその外観形状を示したものである。同図に示す磁石保持器58に含まれる収納部60は、永久磁石の挿入口となる開口面がロータの回転軸に沿った方向に形成された箱形形状を有しており、ポールコアの各爪部に対向する2つの側面がロータの径方向に波打った波形形状に形成されている。
【0038】
磁石保持器58は、上述した磁石保持器30等と同様に、図4に示すように各収納部60を帯状に配置した状態で型成形等により製造することができる。この帯状に配置された状態で両端の収納部60をつかんで丸めた後、永久磁石を圧入せずに、ロータの組付けが行われる。その後、図10に示すように、シャフトに沿った一方向から永久磁石32が各収納部60に圧入される。
【0039】
なお、図9に示した磁石保持器58は、図2に示した磁石保持器30の各収納部26の開口面の位置を変更するとともに型を抜く方向に合わせて側面の波打つ方向を変更したものであるが、それ以外の磁石保持器についても同様の変更を行うことができる。例えば、図5に示した磁石保持器40については、開口面を上部に形成するとともに、側面の凸部46をシャフト34に沿った方向に形成すればよい。
【0040】
また、上述した各種の磁石保持器は、ステータ2と対向する爪部18、20の外周面近傍につば部を有しないポールコアと組み合わせて用いる場合を例にとって説明したが、つば部を有するポールコアと組み合わせるようにしてもよい。
【0041】
図11は、つば部を有するポールコアと組み合わせた場合の磁石保持器の組み付け状態を示す図であり、一例として図5に示した磁石保持器40と一方のポールコアを抜き出してその組み付け状態を示したものである。また、図12は図11に部分的な構造を示したロータの回転軸と垂直方向の断面図である。これらの図に示すように、ポールコアの各爪部に形成されたつば部84を利用して、永久磁石が圧入された磁石保持器40等の遠心方向を押さえるようにしてもよい。
【0042】
図13は、つば部を有するポールコアと組み合わせて用いる磁石保持器の変形例を示す図であり、図12に対応した断面構造が示されている。図13に示すように、隣接する爪部間の隙間を埋めるように磁石保持器の各収納部の外周面形状を変更することにより、ロータの外周面の凹凸がなくなるため、ロータ回転時のファン音を低減することができる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
上述した各種の磁石保持器は、その側面を波形に形成したり、側面に凸部や切り起こし部を形成して緩衝構造としたが、製造の容易化のみを目的とした場合には、これらの緩衝構造を除いた単純な形状にしてもよい。
【0044】
図14は、各収納部から緩衝構造を取り除いた磁石保持器の形状を示す図であり、型成形等によって製造した直後の状態が示されている。同図に示す磁石保持器70は、帯状に配置された12個の収納部72を連結部74を介して連結したものである。それぞれの収納部72は、図5に示した収納部42の側面に形成された凸部46を取り除いた箱形形状を有しており、単純な二方向型によって形成することができる。上述した各収納部72に永久磁石32を圧入した後、図15に示すように磁石保持器70の全体を環状に変形し、両端部に位置する連結部74同士を機械的に接合することにより、ロータの組み付けに用いられる環状の磁石保持器70となる。この変形は、図7に示す磁石保持器40Aと同様に、両端に位置する収納部72に一体形成した取っ手を設けることにより容易に行うことができる。
【0045】
上述した磁石保持器70は、各収納部72が連結部74を介して帯状に配置された形状で製造されるため、単純な二方向型を用いて製造することができ、製造に要する工数やコストを低減することができる。また、各収納部72が帯状に配置された磁石保持器70の全体を環状に変形してその両端の連結部74同士を接合することにより、環状の1個の部品として扱うことができ、ロータへの組み付けを容易に行うことができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した第1の実施形態の磁石保持器は、最初に帯状に形成した後に環状に変形したが、永久磁石の割れ等の防止のみを目的とする場合には緩衝構造を有すれば充分であり、この場合は最初から図2に示すように環状に形成してもよい。また、図5に示した各収納部42の凸部46は、対向する2つの側面の内側に形成したが、一方の側面のみに形成したり、各側面の外側あるいは裏表の両方に形成してもよい。また、収納部は、永久磁石を保持することが重要であって、いわゆる箱状に限らず、カゴ状あるいはクリップ状などの形態とすることができる。さらに、保持器により磁石をモールド成形してもよい。
【0046】
また、上述した各実施形態の磁石保持器は、すべての収納部と連結部とを一体的に形成したが、収納部と連結部とを別々に形成しておいて組み付け前に組み合わせるようにしてもよい。例えば、側面に貫通孔を有する12個の箱状収納部を別々に形成しておいて、永久磁石を各収納部に圧入した後、1本の連結部を各収納部側面の貫通孔に通すことにより、全体として帯状の磁石保持器が完成する。その後、上述した各磁石保持器と同様に、環状に変形してロータへの組付けを行えばよい。
【0047】
また、図16は上述した第2の実施形態の変形例を示す図である。同図において、磁石収納部分72は磁石連結部74と別体で構成されている。磁石収納部分72は、箱形形状の各単品として成形された後、永久磁石が挿入され、磁石連結部74に設けられた固定部741(図16では穴)へ磁石収納部分72に設けられた対応する固定部721を合わせて固定される。その後、全体が各爪部のつば部に合わせて円環状になるように変形され装着される。このようにすれば、永久磁石の全面を覆うことが可能となり、欠けなどが発生しても、外へ飛び出すことなく安全性も確保される。さらに、固定の締め代を隙間ばめに設定すれば、組み付け時の爪部の応力を磁石収納部分72の移動により吸収することが可能となる。
【0048】
また、すべての収納部を連結することなく、4個の収納部を連結した連結体を製造し、これを3体連結して各実施形態と同様の12個の収納部を持つ一連の環状保持器を組み立ててもよい。さらに、磁石保持器の成形にあたっては、爪部間隙間の数よりはるかに多数の収納部を連結してなる帯状体を所要の数の収納部ごとに切断して、その後環状の磁石保持器を組み立ててもよい。
【0049】
また、上述した各実施形態では、ランデルコア型回転電機の一例として車両に搭載されるオルタネータを考えたが、当然ながら回転子にスリップリングを有しないブラシレスタイプのオルタネータに適用することができるとともに、車両搭載以外の目的で使用される発電機あるいはランデルコア型の回転子を有する電動機に本発明を適用することができる。また、上述したランデルコア型といった場合には、ポールコアの各爪部が先端に行くにしたがって幅が細くなる場合の他、同一幅の爪部を有する場合も含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した一実施形態のオルタネータの部分的な構成を示す断面図である。
【図2】図1に示した磁石保持器の外観斜視図である。
【図3】図2に示した磁石保持器から1つの収納部を抜き出して示した図である。
【図4】各保持器を帯状に配置して製造した状態を示す図である。
【図5】永久磁石を保持する磁石保持器の変形例を示す図である。
【図6】図5に示した磁石保持器に含まれる各収納部を帯状に配置して製造した状態を示す図である。
【図7】帯状の磁石保持器を組み付け時に環状に変形するための取っ手を設けた変形例を示す図である。
【図8】収納部の形状を変更した磁石保持器の変形例を示す図である。
【図9】収納部の形状を変形した磁石保持器の他の変形例を示す図である。
【図10】図9に示す磁石保持器をロータに組み付けた後に永久磁石を圧入する場合の一例を示す図である。
【図11】つば部を有するポールコアと組み合わせた場合の磁石保持器の組み付け状態を示す図である。
【図12】図11に部分的な構造を示したロータの回転軸と垂直方向の断面図である。
【図13】図11に示した磁石保持器の変形例の断面形状を示す図である。
【図14】収納部から緩衝構造を取り除いた磁石保持器の形状を示す図である。
【図15】図14に示した磁石保持器の全体を環状に変形した図である。
【図16】図14に示した磁石保持器の変形例を示す図である。
【符号の説明】
1 ロータ
2 ステータ
18、20 爪部
22、24 ポールコア
26 収納部
28 連結部
30 磁石保持器
32 永久磁石
Claims (8)
- それぞれに複数の爪部が形成された一対のポールコアと、前記爪部間に配置された複数の永久磁石とを含む回転子を有するランデルコア型回転電機において、
前記永久磁石および前記爪部の少なくとも一方に部分的に当接するとともに組み付け時に変形して前記永久磁石に加わる応力を緩和する緩衝構造が一体形成された磁石保持器を備え、
前記磁石保持器は、隣接する前記爪部間に挿入されて前記永久磁石を収納する箱形形状の複数の収納部を有しており、
前記緩衝構造は、前記収納部の側面(26−1,26−2)を波形形状に形成したものであって、この側面の一部が前記永久磁石に接触するようになっており、かつこの波形形状の側面が前記ポールコア(22,24)の前記爪部(18,20)に接触するようになっていることを特徴とするランデルコア型回転電機。 - 請求項1において、
前記磁石保持器は、前記複数の収納部間を連結する連結部をさらに有することを特徴とするランデルコア型回転電機。 - 請求項1もしくは2において、
前記磁石保持器は、前記複数の収納部間を連結する連結部をさらに有しており、前記連結部により複数の前記収納部を連結して帯状に形成された帯状体を湾曲変形させてなることを特徴とするランデルコア型回転電機。 - 請求項3において、
前記磁石保持器は、前記帯状体の両端に位置する前記連結部を機械的に接合させてなることを特徴とするランデルコア型回転電機。 - 請求項3または4において、
前記帯状の両端に位置する前記収納部には一体的な支持部が形成されており、前記支持部を持って前記磁石保持器を湾曲させることを特徴とするランデルコア型回転電機。 - 請求項3〜5のいずれかにおいて、
前記複数の収納部は、前記永久磁石の挿入口となる前記箱形形状の開口面を前記回転子の内周側に有しており、前記永久磁石を前記収納部に組み付け前に挿入して組み付けを行うことを特徴とするランデルコア型回転電機。 - 請求項3〜5のいずれかにおいて、
前記複数の収納部は、前記永久磁石の挿入口となる前記箱形形状の開口面を前記回転子の回転軸に沿った方向に有しており、前記爪部間に前記磁石保持器を組み付けた状態で前記永久磁石を前記収納部に挿入することを特徴とするランデルコア型回転電機。 - 請求項3〜7のいずれかにおいて、
前記爪部には前記回転子の外周面に沿った位置につば部が形成されており、環状に配置された前記収納部の外周面を部分的に前記つば部に接触させることを特徴とするランデルコア型回転電機。
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