JP4397598B2 - 固定子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機や発電機等の回転電機に使用される固定子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電動機や発電機等の回転電機に使用される固定子として、環状に配置される複数のティース鉄心と、隣合うティース鉄心間に設けられる複数のコアバック鉄心とを備え、これらのティース鉄心の側面に固定子巻線を巻きつけて形成される固定子が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−236149号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記固定子を他の部材に装着する等のために、前記ティース鉄心やコアバック鉄心の外周側に外周保持リングを設ける場合がある。しかしながら、ティース鉄心やコアバック鉄心の位置決めが適切に行われていないと、前記ティース鉄心やコアバック鉄心の外周面から外周保持リングを圧入する際に、ティース鉄心やコアバック鉄心の位置がずれて外周保持リングが変形してしまい、成形精度が悪化する虞があるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ティース鉄心またはコアバック鉄心の位置決め精度を高めることができ、成形精度を向上することができる固定子を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る発明は、所定円周上に所定間隔で配置される複数のティース鉄心と、隣合うティース鉄心間に設けられる複数のコアバック鉄心とを備え、前記ティース鉄心の背面には前記所定円周の軸方向に貫通する溝(例えば、後述する実施の形態における溝43)が形成され、前記コアバック鉄心にはその外周端から内周側に向かって略L字状に屈曲して前記溝に嵌合する嵌合片(例えば、後述する実施の形態における嵌合片44、45)が形成され、前記嵌合片は、前記コアバック鉄心の外周の両側に一対設けられ、その先端の幅を前記溝よりも小さく形成され、隣合うコアバック鉄心の嵌合片の側面を互いに当接させて前記溝に嵌合することを特徴とする固定子である。
この発明によれば、前記ティース鉄心に形成された前記溝に、前記コアバック鉄心が備える前記嵌合片を嵌合させることにより、ティース鉄心およびコアバック鉄心の位置決め精度を高めることができ、成形精度を向上することができる。
また、前記一対の嵌合片を設けることにより、コアバック鉄心の両側でティース鉄心に対する位置決めを行うことができ、また、隣合うコアバック鉄心の嵌合片の側面を互いに当接させて前記溝に嵌合することにより、隣合うコアバック鉄心同士の位置決めを行うことができるため、位置決め精度を高めることができる。
【0019】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のものであって、前記嵌合片は、隣合う嵌合片と当接する側面に凹部(例えば、後述する実施の形態における凹部48、49)を備え、隣合うコアバック鉄心の嵌合片の側面を互いに当接させて前記凹部同士によりリベット挿入穴(例えば、後述する実施の形態におけるリベット挿入穴50)を形成することを特徴とする固定子である。
【0020】
この発明によれば、前記溝に嵌合される嵌合片の側面の凹部同士により形成されるリベット挿入穴に、リベットを挿入することで、位置決め精度を高めた状態で、隣合うコアバック鉄心同士や、ティース鉄心との締結力を高めることができ、成形精度を向上させることができる。
【0021】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のものであって、前記嵌合片は、隣合う嵌合片に当接する一方の側面に凸部(例えば、後述する実施の形態における係合凸部46)を備えるとともに、他方の側面に前記凸部と係合する凹部(例えば、後述する実施の形態における係合凹部47)を備えることを特徴とする固定子である。
【0022】
この発明によれば、隣合う嵌合片に当接する一方の側面に備える前記凸部と、前記他方の側面に備える凹部とを係合させて、これらの嵌合片同士を前記溝に嵌合させることで、位置決め精度を高めた状態で、隣合うコアバック鉄心同士や、ティース鉄心との締結力を高めることができ、成形精度を向上させることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態における固定子を図面と共に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における固定子を示す概略平面図である。本実施の形態による固定子10は、同図に示されるように、所定円周上に所定間隔で放射状に配置された複数のティース鉄心11と、隣合うティース鉄心11、11間に配置されたコアバック鉄心12とを備えている。
【0024】
ティース鉄心11は、固定子10の中心軸線A(図3参照)と平行な方向に所定の厚さを有しており、固定子巻線13(図3参照)が巻装される内周側の巻線部と、コアバック鉄心12が挿入される外周側の継鉄部とを備えて構成されている。また、ティース鉄心11の端部には周方向の外側に向かって突出する係止部17が設けられている。
また、前記ティース鉄心11の背面には凹部(背面側凹部)22が設けられている。これについては、後述する。
【0025】
コアバック鉄心12は、隣合うティース鉄心11、11同士の隙間(スロット)と同等かそれより若干大きくなるようにその幅を形成され、ティース鉄心11間に挟み込まれるようにして固定される。コアバック鉄心12の厚さは、例えばティース鉄心11の厚さと同等に形成されている。
【0026】
前記コアバック鉄心12は、その背面を前記ティース鉄心11の背面よりも外周側に突出するように配置される。そして、前記コアバック鉄心12の突出する一方の側面(この場合は左側側面)には凹部(側面側凹部)19を設け、前記他方の側面(この場合は右側側面)には凸部(側面側凸部)18を設けてなる。
【0027】
そして、前記コアバック鉄心12の側面と、前記ティース鉄心11の背面との間には係合鉄心15が挿入されている。
前記係合鉄心15は、その両側面に係合用凹部20と係合用凸部21とをそれぞれ設けている。前記係合用凹部20は、前記コアバック鉄心12の側面側凸部18に対向して設けられ、前記係合用凸部21は、前記コアバック鉄心12の側面側凹部19に対向して設けられる。
また、前記係合鉄心15は、その内周面に凸部(内周面側凸部)23を設けている。前記内周面側凸部23は、前記ティース鉄心11の背面側凹部22に対向して設けられる。
【0028】
図3は図1の固定子の巻線工程を示す斜視図である。
同図に示すように、略円柱状のティース固定治具28の外周面上に、所定間隔で複数のティース鉄心11を配置する。このとき、隣合うティース鉄心11、11間には、空間部が形成される。
【0029】
次に、ティース固定治具28に固定されたティース鉄心11の巻線部間に、巻線機に設けられたノズル29によって、各ティース鉄心11側面の巻線部に固定子巻線13を巻き付ける。前記巻線機は、各周回毎に同じ相の固定子巻線13が同じティース鉄心11間に巻装されるように設定されている。例えば、3相モータの場合には、U相、V相、W相に対応して、複数本の固定子巻線13を同時に束ねた状態で供給するように構成され、それぞれの固定子巻線13が各ティース鉄心11に巻装される。
【0030】
このように、1つのノズル29から複数本の固定子巻線13を供給し、かつ、複数のノズル29を所定間隔をあけて同時にティース鉄心11、11間を周回させて固定子巻線13を巻装させるので、固定子巻線13の装着に要する時間の短縮が可能であると共に、占積率を向上させることができる。
【0031】
それから、コアバック鉄心12を各隣合うティース鉄心11、11間に前記円周の外側から挿入していく。このとき、前記コアバック鉄心12の背面を前記ティース鉄心11の背面よりも外周側に突出するように配置する。
【0032】
図2は図1の固定子の製造工程を示す斜視図である。同図に示したように、前記ティース鉄心11の背面と前記コアバック鉄心12の突出する側面との間に係合鉄心15を、例えば矢印Bのように前記所定円周の軸方向から挿入する。そして、前記係合鉄心15の内周面側凸部23を前記ティース鉄心11の背面側凹部22に係合させるとともに、前記係合鉄心15の係合用凹部20を前記コアバック鉄心12の側面側凸部18に、係合用凸部21を前記コアバック鉄心12の側面側凹部19に係合させる。これにより、ティース鉄心11とコアバック鉄心12とを係合鉄心15を介して位置決めできるため、ティース鉄心11およびコアバック鉄心12の位置決め精度を高めることができ、成形精度を向上することができる。また、このようにしたため、ティース鉄心11やコアバック鉄心12の外周側から外周保持リングを圧入する際にも、ティース鉄心11やコアバック鉄心12の位置がずれずに、外周保持リングの変形を防止することができ、成形精度が向上することができる。
【0033】
また、各ティース鉄心11やコアバック鉄心12と、各係合鉄心15とが互いに係合する部位を略同一形状に形成することができるため、製造工程を容易化することができる。
なお、本実施の形態における凹部と凸部の関係を逆にしてもよい。例えば、ティース鉄心11の背面に凸部を設けると共に、係合鉄心15の内周面に凹部を設けるようにしてもよい。
【0034】
図4は本発明の第2の実施の形態における固定子を示す要部平面図である。同図に示したティース鉄心11、コアバック鉄心12、係合鉄心15は、それぞれ珪素鋼板等の方向性を有する電磁鋼板が積層されてなる。そして、ティース鉄心11は、磁化容易方向を固定子10の径方向(矢印R)に設定されている。また、コアバック鉄心12や係合鉄心15は、磁化容易方向が固定子10の周方向(矢印P、Q)に設定されている。このようにすると、前記固定子巻線13に電流を流す等の場合に、ティース鉄心11やコアバック鉄心12、係合鉄心15で発生する磁場を強めるように、それぞれの鉄心11、12、15に用いられる方向性珪素鋼板が磁化されるため、固定子の性能を向上させることができる。
【0035】
図5は本発明の第3の実施の形態における固定子を示す要部平面図である。同図に示したティース鉄心11、コアバック鉄心12、係合鉄心15には、所定円周の軸方向(この場合は紙面に直交する方向)に突出するカシメ突起31〜35が形成されている。これらのカシメ突起31〜35をカシメ処理することにより、これらの鉄心11、12、15を構成するそれぞれの積層鋼板の締結力を高めることができ、成形精度をさらに向上することができる。
【0036】
図6は本発明の第4の実施の形態における固定子の製造工程を示す説明図である。同図に示したティース鉄心41には、所定円周の軸方向(この場合は紙面に直交する方向)に貫通する溝43がその背面に形成されている。また、コアバック鉄心42にはその外周端から内周側に向かって略L字状に屈曲する嵌合片44、45が形成されている。本実施の形態においては、前記嵌合片44、45のそれぞれの先端の幅が前記溝43よりも小さく形成され、隣合うコアバック鉄心42、42の嵌合片44、45同士を互いに当接させて前記溝43に嵌合する。
【0037】
このように、コアバック鉄心42に一対の嵌合片44、45を設けることにより、コアバック鉄心42の両側でティース鉄心41に対する位置決めを行うことができる。また、隣合うコアバック鉄心42、42の嵌合片44、45の側面を互いに当接させて前記溝43に嵌合することにより、隣合うコアバック鉄心42、42同士の位置決めを行うことができるため、位置決め精度を高めることができる。さらに、本実施の形態においては、一方の嵌合片44の先端部に径方向に突出する突出部44aを形成し、前記ティース鉄心41の溝43に前記突出部44aを収容する収容部43aを形成したため、コアバック鉄心42が径方向外側に抜け落ちることをより確実に防止することができる。また、前記コアバック鉄心42は、図6に示したように、前記所定円周の径方向(矢印S)から挿入してもよいし、軸方向から挿入してもよい。
【0038】
図7は本発明の第5の実施の形態における固定子を示す要部平面図である。同図に示したように、嵌合片44には嵌合片45に当接する側面に凸部46を備え、嵌合片45には嵌合片44に当接する側面に凹部47を備えている。前記凸部46と前記凹部47とを係合させて、これらの嵌合片44、45同士を前記溝43に嵌合させることで、位置決め精度を高めた状態で、隣合うコアバック鉄心42、42同士や、ティース鉄心41との締結力を高めることができ、成形精度を向上させることができる。
【0039】
図8は本発明の第6の実施の形態における固定子を示す要部平面図である。図9は図8に示す固定子の製造工程を示す斜視図である。これらの図に示した嵌合片44、45は、隣合う嵌合片44、45と当接する側面に凹部48、49を備え、隣合うコアバック鉄心42の嵌合片44、45の側面を互いに当接させて前記凹部48、49同士によりリベット挿入穴50を形成する。前記リベット挿入穴50に、リベット51を挿入することで、位置決め精度を高めた状態で、隣合うコアバック鉄心42、42同士や、ティース鉄心41との締結力を高めることができ、成形精度を向上させることができる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載した発明によれば、前記ティース鉄心に形成された前記溝に、前記コアバック鉄心が備える前記嵌合片を嵌合させることにより、ティース鉄心およびコアバック鉄心の位置決め精度を高めることができ、成形精度を向上することができる。
また、コアバック鉄心の両側でティース鉄心に対する位置決めを行うことができ、また、隣合うコアバック鉄心同士の位置決めを行うことができるため、位置決め精度を高めることができる。
【0047】
請求項2、請求項3に記載した発明によれば、位置決め精度を高めた状態で、隣合うコアバック鉄心同士や、ティース鉄心との締結力を高めることができ、成形精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態における固定子を示す概略平面図である。
【図2】 図1の固定子の製造工程を示す斜視図である。
【図3】 図1の固定子の巻線工程を示す斜視図である。
【図4】 本発明の第2の実施の形態における固定子を示す要部平面図である。
【図5】 本発明の第3の実施の形態における固定子を示す要部平面図である。
【図6】 本発明の第4の実施の形態における固定子の製造工程を示す説明図である。
【図7】 本発明の第5の実施の形態における固定子を示す要部平面図である。
【図8】 本発明の第6の実施の形態における固定子を示す要部平面図である。
【図9】 図8に示す固定子の製造工程を示す斜視図である。
【符号の説明】
10 固定子
11 ティース鉄心
12 コアバック鉄心
13 固定子巻線
Claims (3)
- 所定円周上に所定間隔で配置される複数のティース鉄心と、隣合うティース鉄心間に設けられる複数のコアバック鉄心とを備え、
前記ティース鉄心の背面には前記所定円周の軸方向に貫通する溝が形成され、前記コアバック鉄心にはその外周端から内周側に向かって略L字状に屈曲して前記溝に嵌合する嵌合片が形成され、
前記嵌合片は、前記コアバック鉄心の外周の両側に一対設けられ、その先端の幅を前記溝よりも小さく形成され、隣合うコアバック鉄心の嵌合片の側面を互いに当接させて前記溝に嵌合することを特徴とする固定子。 - 前記嵌合片は、隣合う嵌合片と当接する側面に凹部を備え、隣合うコアバック鉄心の嵌合片の側面を互いに当接させて前記凹部同士によりリベット挿入穴を形成することを特徴とする請求項1に記載の固定子。
- 前記嵌合片は、隣合う嵌合片に当接する一方の側面に凸部を備えるとともに、他方の側面に前記凸部と係合する凹部を備えることを特徴とする請求項1に記載の固定子。
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