JP3953644B2 - 回転電機の回転子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、隣り合う爪状磁極間に爪状磁極間の磁束の漏洩を減少するために配設された磁性子を備えた回転電機の回転子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図13は従来の車両用交流発電機の側断面図、図14は図13の回転子の斜視図であり、この交流発電機は、アルミニウム製のフロントブラケット1及びリヤブラケット2から構成されたケース3と、このケース3内に設けられ一端部にプーリ4が固定されたシャフト6と、このシャフト6に固定されたランデル型の回転子7と、回転子7の両側面に固定されたファン5と、ケース3の内壁面に固定されたステータ8と、シャフト6の他端部に固定され回転子7に電流を供給するスリップリング9と、スリップリング9に摺動する一対のブラシ10と、このブラシ10を収納したブラシホルダ11と、ステータ8に電気的に接続されステータ8で生じた交流を直流に整流する整流器12と、ブラシホルダ11に嵌着されたヒートシンク17と、このヒートシンク17に接着されステータ8で生じた交流電圧の大きさを調整するレギュレータ18とを備えている。
【0003】
回転子7は、電流を流して磁束を発生する回転子コイル13と、この回転子コイル13を覆って設けられその磁束によって磁極が形成されるポールコア14とを備えている。ポールコア14は一対の交互に噛み合った第1のポールコア体21及び第2のポールコア体22とから構成されている。第1のポールコア体21及び第2のポールコア体22は鉄製で、かつ爪形状の爪状磁極23、24をそれぞれ有している。隣り合う各爪状磁極23、24には、これらの爪状磁極23、24間の磁束の漏洩を減少する向きに着磁された断面台形状の磁石19が接着剤により固着されている。
ステータ8は、ステータコア15と、このステータコア15に導線が巻回され回転子7の回転に伴い回転子コイル13で生じた磁束の変化で交流が生じるステータコイル16とを備えている。
【0004】
上記構成の車両用交流発電機では、バッテリ(図示せず)からブラシ10、スリップリング9を通じて回転子コイル13に電流が供給されて磁束が発生し、第1のポールコア体21の爪状磁極23にはN極が着磁され、第2のポールコア体22の爪状磁極24にはS極が着磁される。一方、エンジンによってプーリ4は駆動され、シャフト6によって回転子7が回転するため、ステータコイル16には回転磁界が与えられ、ステータコイル16には起電力が生じる。この交流の起電力は、整流器12を通って直流に整流されるとともに、レギュレータ18によりその大きさが調整されて、バッテリに充電される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の車両用交流発電機の回転子7では、爪状磁極23、24に接着剤で磁石19が固着されているが、次のような問題点があった。
イ.回転子7の回転に伴い、各磁石19には大きな遠心力を受け、この遠心力に対しては図15に示すように爪状磁極23、24のテーパ面23a、24aで支えられているが、磁石19には均一な荷重を受けず、磁石19が破損しやすい。つまり、磁石19に均一な荷重を受けないのは、磁石19は回転子7の軸線Zに沿って平行に配設されてなく、図16に示すように磁石19の箇所によって軸線Zとの間の距離(r1、r2)が異なり、遠心力が異なるからである。
ロ.爪状磁極23と爪状磁極24との間には磁石19が接着剤を介して密着して固定されているので、それだけ爪状磁極23、24には加工精度が要求され、そのため素材から鍛造で爪状磁極23、24を形成した後、切削加工が必要となり、製造工程が複雑で、製造コストが高くなる。また、爪状磁極23、24と磁石19との間には隙間がないので、爪状磁極23と爪状磁極24との間に磁石19を圧入する際に脆弱な磁石19が破損するおそれがある。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解決することを課題とするものであって、遠心力による荷重または組立途中で磁性子が破損することなく、また製造コストが低減された回転電機の回転子を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る回転電機の回転子は、電流を流して磁束を発生する回転子コイルと、この回転子コイルを覆って設けられ、前記磁束により着磁されるとともに交互に噛み合った爪形状の爪状磁極をそれぞれ有する第1のポールコア体及び第2のポールコア体と、隣り合う各前記爪状磁極間全てに蛇行周回して設けられた磁性体とを備え、前記磁性体は、前記爪状磁極間の磁束の漏洩を減少する向きに着磁された磁性子およびこの磁性子を覆った樹脂からなる覆い部で構成された柱状の介在部を有しており、またこの介在部と前記爪状磁極との間で隙間が形成され、前記磁性子を長手方向に沿って切断した断面形状は、対向する前記爪状磁極の側面同士が重なる領域内に収まる形状であり、前記断面形状は台形である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の車両用交流発電機の回転子について説明するが、図13および図14と同一または相当部分は同一符号を付して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の車両用交流発電機の回転子の斜視図、図2は図1の磁性体の斜視図、図3は図1の図III−III線に沿う断面図、図4は図1のIV−IV線に沿う断面図、図5は爪状磁極の部分斜視図、図6は図1の磁性体の正面図、図7は図1の磁性体に埋設された磁性子の斜視図である。
【0020】
この回転子30は、電流を流して磁束を発生する回転子コイル13と、この回転子コイル13を覆って設けられその磁束によって磁極が形成されるポールコア14と、回転子コイル13を覆った磁性体31とを備えている。
ポールコア14は一対の交互に噛み合った第1のポールコア体21及び第2のポールコア体22とから構成されている。第1のポールコア体21及び第2のポールコア体22は鉄製で、かつ爪形状の爪状磁極23、24をそれぞれ有している。
【0021】
磁性体31は、爪状磁極23の裏面に形成された段部23aに当接する段部32aを有しかつ半径方向に変位可能な弾性を有する円筒状の支持部32と、この支持部32上に蛇行周回した磁性部33とを有している。磁性部33は隣り合う各爪状磁極23、24間に設けられた柱状の介在部34と、介在部34同士を接続したつなぎ部35とを有している。介在部34は、図7に示した磁石36と、この磁石36を覆った覆い部37とから構成されている。覆い部37内の磁石36はN極に着磁される爪状磁極23に磁石36のN極面が対面し、S極に着磁される爪状磁極24に磁石36のS極面が対面するように配設されている。この介在部34は隣接した爪状磁極23、24との間で隙間aが形成されている。
この磁性体31は、磁石36を金型内に配置した状態で金型内にポリアミド系樹脂を射出したインサートモールド成形により、支持部32と磁性部33とが一体化されて形成されている。
【0022】
ステータ8は、ステータコア15と、このステータコア15に導線が巻回され回転子7の回転に伴い回転子コイル13で生じた磁束の変化で交流が生じるステータコイル16とを備えている。
【0023】
上記構成の車両用交流発電機の回転子30は、回転子コイル13が予め支持部32内に収められた状態で、蛇行周回した磁性部33を挟むようにして磁性体31の両側から爪状磁極23、24を押し込むようにして組み立てられる。爪状磁極23、24と介在部34との間には隙間aが形成されているので、爪状磁極23、24の押し込み時に介在部34に衝突して磁石36が破損するようなことは防止される。
【0024】
上記構成の車両用交流発電機では、バッテリ(図示せず)からブラシ10、スリップリング9を通じて回転子コイル13に電流が供給されて磁束が発生し、第1のポールコア体21の爪状磁極23にはN極が着磁され、第2のポールコア体22の爪状磁極24にはS極が着磁される。一方、エンジンによってプーリ4は駆動され、シャフト6によって回転子30が回転するため、ステータコイル16には回転磁界が与えられ、ステータコイル16には起電力が生じる。この交流の起電力は、整流器12を通って直流に整流されるとともに、レギュレータ18によりその大きさが調整されて、バッテリに充電される。
【0025】
回転子30の回転に伴い、爪状磁極23、24とともに、磁石36には遠心力が作用するが、この荷重に対しては主に円筒形状の支持部32で支持され、磁石36には荷重が加わらず、遠心力により磁石36が破損するようなことはない。また、回転子30の組立時に磁性体31の支持部32は爪状磁極23、24により内側に押される結果、磁性体31の支持部32は半径内側方向に微小変位しているが、回転子30の回転時には遠心力により支持部32は半径外側方向に変位する結果、組立時に磁性体31の支持部32に生じた残留応力は低減される。
【0026】
なお、上記の実施の形態1の磁性体31では支持部32を有しているが、磁性部の介在部と爪状磁極との間に隙間を有し、蛇行周回した弾性を有する磁性部のみで磁性体を構成してもよい。
【0027】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2の車両用交流発電機の回転子の磁性体の正面図であり、実施の形態1の回転子30と磁石の形状が異なる。
実施の形態1の磁石36は全体形状が楔形状であるのに対して、この磁性体40の磁石41は、図9に示すように磁石41を長手方向に沿って切断した断面形状が台形形状である。
爪状磁極23、24間の漏洩磁束量は隣接した爪状磁極23、24の側面23a、24aが重なり合った領域で決定され、この領域を越えた大きさの断面形状の磁石36の場合、領域を越えた磁石36の部分は爪状磁極23、24間の磁束の漏洩を減少させる働きが少ない。
この実施の形態2の磁性体40の磁石41の場合、隣接した爪状磁極23、24の側面23a、24aが重なり合った領域内に収まった形状、つまり台形形状であり、高価な磁石41の使用量が必要最低限に抑えられている。
また、図10に示すように中心軸Aを中心に磁石41は対象形状であるので、例えば金型内に磁石41を配置して、インサートモールド成形により磁性体40を形成する際の配置自由度が高くなり、磁性体40の製造作業性がよい。
【0028】
実施の形態3.
図11はこの発明の実施の形態3の車両用交流発電機の回転子の磁性体50の正面図である。
爪状磁極23、24の側面23a、24aと対向する面である介在部51の側面Bでは磁石41が露出している点が実施の形態2と異なる。
この回転子では爪状磁極23、24の側面23a、24aと介在部51との間には覆い部が無く、爪状磁極23、24と磁石41との間の磁気抵抗が小さくなり、磁石41による漏れ磁束低減効果が大きくなり、発電効率が上昇する。
【0029】
実施の形態4.
図12はこの発明の実施の形態4の車両用交流発電機の回転子60の斜視図である。
この回転子60は実施の形態1の回転子30の隙間aに磁性体31が周方向に回転するのを防ぐ詰め部61が設けられている点を除いては実施の形態1の回転子30と同様である。
この詰め部61は、蛇行周回した磁性部33を挟むようにして磁性体31の両側から爪状磁極23、24を押し込むようにして組み立てた後、隙間aにエポキシ系接着剤樹脂を注入し、固化して形成される。
詰め部61としては、カーボン繊維にエポキシ系樹脂が含浸されたテープを用いてもよい。
【0030】
なお、上記各実施の形態では磁性子として磁石36、41を用いたが、プラスチックマグネットで構成されたものであってもよく、先に磁性子部を射出成形し、その後全体を射出成形してもよい。
また、上記各実施の形態では回転電機の回転子として車両用交流発電機の回転子について説明したが、この発明は例えば電動機の回転子にも適用することができるのは勿論である。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の回転電機の回転子によれば、電流を流して磁束を発生する回転子コイルと、この回転子コイルを覆って設けられ、前記磁束により着磁されるとともに交互に噛み合った爪形状の爪状磁極をそれぞれ有する第1のポールコア体及び第2のポールコア体と、隣り合う各前記爪状磁極間全てに蛇行周回して設けられた磁性体とを備え、前記磁性体は、前記爪状磁極間の磁束の漏洩を減少する向きに着磁された磁性子およびこの磁性子を覆った樹脂からなる覆い部で構成された柱状の介在部を有しており、またこの介在部と前記爪状磁極との間で隙間が形成されているので、磁性体の両側から爪状磁極を組み込む途中で介在部に爪状磁極が衝突して破損してしまうといったことを防止できる。また、爪状磁極の周方向の寸法精度は高い精度でなくてもよく、それだけ爪状磁極を簡単に形成できる。また、磁性子は爪状磁極間に蛇行周回した磁性体に設けられているので、磁性子に負荷される遠心力に対しては磁性体全体で支持され、遠心力により磁性子が破損されるといったことを防止できる。
【0032】
また、磁性体は、介在部を支持するとともに爪状磁極の内側に設けられた円筒形状の支持部を有しているので、磁性体の耐遠心力強度が大幅に向上する。
【0033】
また、支持部は弾性を有しているので、磁性体および爪状磁極の製作寸法誤差があっても、その誤差を吸収して磁性体の両側から爪状磁極が組み込まれる。
【0034】
また、磁性子が内在した介在部と支持部とはインサートモールド成形により一体的に形成されているので、介在部と支持部とは簡単に一体化される。
【0035】
また、支持部および覆い部はポリアミド系樹脂で構成されているので、低コストで弾性および絶縁性が優れた支持部および覆い部を得ることができる。
【0036】
また、磁性子を長手方向に沿って切断した断面形状は、対向する爪状磁極の側面同士が重なる領域内に収まる形状であるので、爪状磁極間の磁束の漏洩を防止するのに必要なだけの磁性子が用いられ、高価な磁性子の使用量を節減することができる。
【0037】
また、磁性子の断面形状は台形であり、中心軸を中心に磁性子は対象形状であるので、例えば金型内に磁性子を配置して、インサートモールド成形により磁性子を形成する際の配置自由度が高くなり、磁性体の製造作業性が向上する。
【0038】
また、磁性子は全面が覆い部で覆われているので、磁性体に対する衝撃で磁性子が破損することを防止できる。
【0039】
また、磁性子の一部が露出して爪状磁極の側面と対向しているので、爪状磁極と磁性子との間の磁気抵抗が小さくなり、磁性子による漏れ磁束低減効果が大きくなる。
【0040】
また、磁性子は磁石であるので、簡単な加工で爪状磁極間の磁束の漏洩を防止する磁性子を得ることができる。
【0041】
また、磁性子はプラスチックマグネットで構成されており、先に磁性子部を射出成形し、その後全体を射出成形して、簡易、かつ、低コストで爪状磁極間の磁束の漏洩を防止する磁性子を得ることができる。
【0042】
また、隙間に設けられた詰め部により磁性体の周方向の移動が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1の車両用交流発電機の回転子の斜視図である。
【図2】 図1の磁性体の斜視図である。
【図3】 図1の図III−III線に沿う断面図である。
【図4】 図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】 図1の爪状磁極の部分斜視図である。
【図6】 図1の磁性体の正面図である。
【図7】 図1の磁性体に埋設された磁石の斜視図である。
【図8】 この発明の実施の形態2の車両用交流発電機の回転子の磁性体の正面図である。
【図9】 図8の磁性体に埋設された磁石の斜視図である。
【図10】 図9の磁石の正面図である。
【図11】 この発明の実施の形態3の車両用交流発電機の回転子の磁性体の正面図である。
【図12】 この発明の実施の形態4の車両用交流発電機の回転子の斜視図である。
【図13】 従来の車両用交流発電機の断面図である。
【図14】 図13の回転子の斜視図である。
【図15】 図14のXV−XV線に沿う断面図である。
【図16】 図14の磁石に加わる遠心力が箇所により不均一であることを説明するための図である。
【符号の説明】
13 回転子コイル、21 第1のポールコア体、22 第2のポールコア体、30,60 回転子、31,40,50 磁性体、33,磁性部、34,51介在部、35 つなぎ部、36,41 磁石、37 覆い部、61 詰め部、a 隙間。
Claims (10)
- 電流を流して磁束を発生する回転子コイルと、
この回転子コイルを覆って設けられ、前記磁束により着磁されるとともに交互に噛み合った爪形状の爪状磁極をそれぞれ有する第1のポールコア体及び第2のポールコア体と、
隣り合う各前記爪状磁極間の全てに蛇行周回して設けられた磁性体とを備え、
前記磁性体は、前記爪状磁極間の磁束の漏洩を減少する向きに着磁された磁性子およびこの磁性子を覆った樹脂からなる覆い部で構成された柱状の介在部を有しており、またこの介在部と前記爪状磁極との間で隙間が形成され、
前記磁性子を長手方向に沿って切断した断面形状は、対向する前記爪状磁極の側面同士が重なる領域内に収まる形状であり、
前記断面形状は台形である回転電機の回転子。 - 前記磁性体は、前記介在部を支持するとともに前記爪状磁極の内側に設けられた円筒形状の支持部を有している請求項1に記載の回転電機の回転子。
- 前記支持部は弾性を有している請求項2に記載の回転電機の回転子。
- 前記介在部と前記支持部とはインサートモールド成形により一体的に形成された請求項2または請求項3に記載の回転電機の回転子。
- 前記支持部、および前記磁性子を覆った前記介在部の覆い部はポリアミド系樹脂で構成された請求項2ないし請求項4の何れか1項に記載の回転電機の回転子。
- 前記磁性子は全面が覆い部で覆われた請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の回転電機の回転子。
- 前記磁性子の一部が露出して前記爪状磁極の側面と対向した請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の回転電機の回転子。
- 前記磁性子は磁石である請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の回転電機の回転子。
- 前記磁性子はプラスチックマグネットで構成された請求項1ないし請求項7の何れか1項に記載の回転電機の回転子。
- 前記隙間には磁性体の周方向の移動を防ぐ詰め部が設けられた請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載の回転電機の回転子。
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