JP3364174B2 - チップフェライト部品およびその製造方法 - Google Patents

チップフェライト部品およびその製造方法

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JP3364174B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チップフェライト
部品(たとえば積層型チップインダクタおよび積層型ビ
ーズ等)に関するものであり、大電流下で安定した電磁
気特性を有するチップフェライト部品およびその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】積層型ビーズや積層型インダクタ等のチ
ップフェライト部品は、体積が小さいこと、堅牢性およ
び信頼性が高いことなどから、各種電子機器に用いられ
ている。この様なチップフェライト部品は、通常、磁性
フェライトからなる磁性層用のシートまたはペースト
と、内部電極用のペーストとを厚膜積層技術によって積
層一体化した後、焼成し、得られた焼結体外表面に外部
電極用ペーストを印刷ないし転写した後に焼き付けて製
造される。
【0003】これらチップフェライト部品が用いられる
電子機器のトレンドは軽薄小型化である。このトレンド
に伴い、内部基板上の信号回路パターンーニングは高密
度に設計され、また、近年、回路の中枢のICの低電圧
化に伴う電流値の増加、そして、電源回路部分も高密度
設計へと移行し、電源回路部分に搭載される電子部品は
小型化および大電流化が求められている。
【0004】一般に、積層型インダクタでは、内部導体
からなる積層巻線の周囲が全て磁性層からなり、磁気回
路としては閉磁路を形成している。閉磁路構造のインダ
クタでは、漏洩磁束がないため、実効透磁率が高く、導
体の巻数が少ないながら、高いL値が得られ、また、ク
ロストークが抑制され高密度実装に適しているという利
点がある。その一方で、開磁路構造のインダクタに比
べ、直流重畳時のL値の低下が大きいという欠点があ
る。
【0005】また、最近の電子機器の高周波化およびデ
ジタル化に伴い、積層型ビーズにおいてノイズ対策が求
められている。積層型ビーズでは電流の増加に伴い、イ
ンピーダンスの低下が起きる欠点がある。
【0006】従来、この種の直流重畳特性を改善したも
のとしては、実開昭57−55918号公報、特開平1
1−97256号公報および特開平11−67542号
公報に示すものが提案されている。ところが、これら公
報に示すインダクタ装置では、直流重畳特性を改善する
ために、二重のコイル構造としているために、通常の一
重コイル構造のインダクタと比べ、コイルの巻数が極端
に多くなり、電子部品の小型化の要請に反する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、積層
型ビーズや積層型インダクタ等のチップフェライト部品
は、直流重畳時、重畳した直流電流の大きさに応じてL
値およびインピーダンスが低下する問題がある。
【0008】本発明の目的は、小型化の要請に即し、し
かも大電流下で安定したL値やインピーダンスを有する
チップフェライト部品およびその製造方法を提供するこ
とである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の第1の観点に係るチップフェライト部品
は、磁性フェライト材で構成される磁性フェライト本体
と、前記磁性フェライト本体の内部に、コイルを構成す
るように埋設してある内部導体であって、前記コイルの
途中に対応する内部導体の少なくとも一部が、前記磁性
フェライト本体の外部に露出するように配置してある内
部導体と、を有する。
【0010】この場合において、前記内部導体の少なく
とも一部が前記磁性フェライト本体の外部に露出する部
分が、非磁性材料で被覆してあることが好ましい。
【0011】本発明の第2の観点に係るチップフェライ
ト部品は、磁性フェライト材で構成される磁性フェライ
ト本体と、前記磁性フェライト本体の内部に、コイルを
構成するように埋設してある内部導体であって、前記コ
イルの途中に対応する内部導体の少なくとも一部が、前
記磁性フェライト本体の外部近くに配置してある内部導
体と、を有する。
【0012】この場合において、前記内部導体の少なく
とも一部が前記磁性フェライト本体の外部近くに配置し
てある部分が、さらに非磁性材料で被覆してあることが
好ましい。
【0013】本発明において、前記磁性フェライト本体
が、Fe,NiO,CuOおよびZnOを主
成分とする磁性フェライト材料で構成してあることが好
ましい。焼成後の磁性フェライト本体の組成は、Fe
:40〜50mol%、NiO:4〜50m
ol%、CuO:4〜30mol%およびZnO:0.
5〜35mol%の範囲であることが好ましい。
【0014】また、通常、本発明によって得られる前記
磁性フェライト本体の外表面には、前記コイルを構成す
る内部導体の両端部に接続される一対の外部電極端子が
装着される。
【0015】本発明では、前記内部導体で構成されるコ
イルの軸芯の略直角方向に沿って相互に反対側に位置す
る前記磁性フェライト本体の両端部に、前記一対の外部
電極端子を装着しても良い。この場合には、直方体形状
の磁性フェライト本体の対向する二側面の少なくとも一
方に、内部導体の一部が露出または近接する部分を形成
することができる。
【0016】または、前記内部導体で構成されるコイル
の軸芯方向に沿って相互に反対側に位置する前記磁性フ
ェライト本体の両端部に、前記一対の外部電極端子を装
着しても良い。この場合には、直方体形状の磁性フェラ
イト本体の対向する4側面の少なくとも一つに、内部導
体の一部が露出または近接する部分を形成することがで
きる。
【0017】本発明の第1の観点に係るチップフェライ
ト部品の第1の製造方法は、磁性フェライト層と内部導
体層とを積層し、積層体を得る工程と、前記積層体の側
面の少なくとも一部を切断し、積層体の側面から内部導
体層の一部を露出させる工程と、その後、積層体を焼成
する工程と、を有する。積層体の切断に際しては、カッ
ター、スライサーまたはダイシングソー等の切断機を用
いて行うことができる。
【0018】本発明の第1の観点に係るチップフェライ
ト部品の第2の製造方法は、磁性フェライト層と内部導
体層とを積層し、積層体を得る工程と、前記積層体を焼
成し、焼結体を得る工程と、前記焼結体の側面の少なく
とも一部を加工し、積層体の側面から内部導体層の一部
を露出させる工程と、を有する。焼結体の加工に際して
は、サンドブラストや平面研磨機器等を用いて行うこと
ができる。
【0019】本発明の第1の観点に係るチップフェライ
ト部品の第3の製造方法は、内部導体層のパターンの縁
の少なくとも一部が前記磁性フェライト層のパターンの
縁に位置するように、磁性フェライト層の上に、内部導
体層を積層し、積層体を得る工程と、その後、積層体を
焼成する工程と、を有する。
【0020】本発明の第2の観点に係るチップフェライ
ト部品の第1の製造方法は、磁性フェライト層と内部導
体層とを積層し、積層体を得る工程と、前記積層体の側
面の少なくとも一部を切断し、積層体の側面近くに、内
部導体層の一部を位置させる工程と、その後、積層体を
焼成する工程と、を有する。
【0021】本発明の第2の観点に係るチップフェライ
ト部品の第2の製造方法は、磁性フェライト層と内部導
体層とを積層し、積層体を得る工程と、前記積層体を焼
成し、焼結体を得る工程と、前記焼結体の側面の少なく
とも一部を加工し、積層体の側面近くに内部導体層の一
部を位置させる工程と、を有する。
【0022】本発明の第2の観点に係るチップフェライ
ト部品の第3の製造方法は、内部導体層のパターンの縁
の少なくとも一部が前記磁性フェライト層のパターンの
縁の近くに位置するように、磁性フェライト層の上に、
内部導体層を積層し、積層体を得る工程と、その後、積
層体を焼成する工程と、を有する。
【0023】なお、本発明において、チップフェライト
部品とは、特に限定されず、積層型チップインダクタお
よび積層型ビーズ等などのように、磁性フェライト本体
の内部にコイルを構成する内部導体が埋設してある全て
のチップフェライト部品を意味する。
【0024】
【作用】本発明の第1の観点に係るチップフェライト部
品では、コイルの途中に対応する内部導体の少なくとも
一部が、磁性フェライト本体の外部に露出するように配
置してあるので、少なくともその部分では、開磁路構造
となり、漏洩磁束が生じ、飽和磁化しずらくなる。その
結果、大電流下で安定したL値やインピーダンスを有す
るチップフェライト部品を得ることが可能になる。ま
た、このチップフェライト部品では、コイルの巻き数を
増大させる必要がないため、装置の小型化にも寄与す
る。
【0025】本発明の第1の観点に係るチップフェライ
ト部品の第1〜第3の製造方法では、このチップフェラ
イト部品を、きわめて容易に製造することができる。
【0026】本発明の第2の観点に係るチップフェライ
ト部品では、コイルの途中に対応する内部導体の少なく
とも一部が、磁性フェライト本体の外部に近くなる位置
に配置してあるので、少なくともその部分では、開磁路
構造に近くなり、漏洩磁束が生じ、飽和磁化しずらくな
る。その結果、大電流下で安定したL値やインピーダン
スを有するチップフェライト部品を得ることが可能にな
る。また、このチップフェライト部品では、コイルの巻
き数を増大させる必要がないため、装置の小型化にも寄
与する。
【0027】本発明の第2の観点に係るチップフェライ
ト部品の第1〜第3の製造方法では、このチップフェラ
イト部品を、きわめて容易に製造することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、図面に示す実施
形態に基づき説明する。ここにおいて、図1は本発明の
一実施形態に係るチップフェライト部品の要部斜視図、
図2は図1に示すII−II線に沿う断面図、図3(A)〜
(F)は内部導体パターンの形成方法の一例を示す説明
図、図4〜図6はそれぞれ本発明の他の実施形態に係る
チップフェライト部品の斜視図、図7は本発明の実施例
および比較例に係るチップフェライト部品における初期
L値と初期L値が30%低下した時の重畳した直流電流
量の関係を示すグラフである。
【0029】第1実施形態 (チップインダクタの構造)図1および図2に示すよう
に、チップフェライト部品としての積層型チップインダ
クタ1は、磁性フェライト材で構成される直方体形状の
磁性フェライト本体4を有し、この本体4の内部に、上
部引出導体層5、内部導体層3および下部引出導体層7
とが、磁性フェライト層2を介して交互に積層して一体
化してある。これら上部引出導体層5、内部導体層3お
よび下部引出導体層7は、磁性フェライト本体4の内部
で、スパイラル状に接続してあり、コイル状の内部導体
10を構成している。
【0030】上部引出導体層5の一端9は、図1に示す
ように、直方体形状の磁性フェライト本体4の長手方向
Xの一側面から露出しており、図2に示すように、本体
4の外表面に装着してある第1外部電極端子12に接続
してある。また、下部引出導体層7の一端11は、図1
に示すように、直方体形状の磁性フェライト本体4の長
手方向Xの他の一側面から露出しており、図2に示す第
2外部電極端子14に接続してある。
【0031】第1外部電極端子12および第2外部電極
端子14は、図1に示すコイル状内部導体10の軸芯Z
方向に対して略垂直な長手方向Xに沿って反対側に位置
する本体4の両端部外表面に装着してある。なお、図1
では、図示の容易化のために、これら端子12および1
4の図示は省略してある。
【0032】図1および図2に示すように、本実施形態
では、本体4の短手方向Yの二側面が全体に渡り切り欠
かれており、内部導体層3および引出導体層5および7
の両側端が、本体4の二側面から露出している。すなわ
ち、コイルの途中に対応する内部導体10の少なくとも
一部が、磁性フェライト本体4の側面から露出してい
る。また、その内部導体10の露出部分を保護するため
に、本体4の二側面を、非磁性材料層8で被覆すること
が好ましい。
【0033】磁性フェライト本体4を構成する磁性フェ
ライトとしては、特に限定されないが、たとえばNiC
uZn系磁性フェライトが用いられる。NiCuZn系
磁性フェライトとしては特に制限はなく、目的に応じて
種々の組成のものを選択すればよいが、焼成後のフェラ
イト焼結体中のmol%で、Fe:40〜5
0mol%、特に45〜49.7mol%、NiO:4
〜50mol%、特に5〜45mol%、CuO:4〜
30mol%、特に5〜13.5mol%、およびZn
O:0.5〜35mol%、特に2〜31mol%であ
るフェライト組成物を用いることが好ましい。
【0034】磁性フェライトの磁気特性は、組成依存性
が非常に強く、Fe、NiO、CuOおよび
ZnOの組成が上記の範囲を外れた領域では、透磁率や
品質係数Qが低く不十分なものとなる傾向にある。具体
的には、例えば、Fe 量が少な過ぎると透磁
率が小さく、化学量論組成に近づくにしたがい透磁率は
上昇し、化学量論組成付近から透磁率は急激に低下す
る。また、NiO量の減少、あるいは、ZnO量の増加
に伴って透磁率は高くなる。しかし、ZnO量が多過ぎ
ると、キュリー温度が100℃以下となり、チップイン
ダクタ装置として要求される温度特性を満足できなくな
る。また、CuO量が少な過ぎると、低温焼成(930
℃以下)が困難となり、逆に多過ぎるとフェライトの固
有抵抗が低下して品質係数Qが劣化する。このため、高
い透磁率を得るには、組成を上記の範囲内で管理するこ
とが好ましい。
【0035】積層型チップインダクタ1を構成する内部
導体層3および引出導体層5および7は、特に限定され
ないが、インダクタとして実用的な品質係数Qを得るた
めに抵抗率の小さいAgを主体とした導電材を用いて形
成されることが好ましい。
【0036】外部電極端子12および14は、単層でも
複層でも良く、たとえばAgおよびガラスフリットから
成る導体などで構成してある。
【0037】非磁性材料層8としては、特に限定されな
いが、ガラスなどが用いられる。なお、外部に露出した
内部導体を保護する非磁性体層としてのガラスは、約6
00℃で焼き付けられるため、軟化点が600℃付近の
ものが望ましい。また、焼成温度が900℃と低いこと
から、非磁性体層としては、Cu−Znフェライトなど
でも良い。また、その他、焼成温度を低下させるため
に、ガラスを含有させた酸化チタン系誘電体を、非磁性
体層として用いてもよい。
【0038】積層型チップインダクタ1の本体4の外形
や寸法には特に制限はなく、用途に応じて適宜設定する
ことができ、通常、外形はほぼ直方体形状とし、寸法は
(1.0〜4.5mm×0.5〜3.2mm×0.6〜
1.9mm)程度とすることができる。また、磁性フェ
ライト層2の導体間厚みおよびベース厚みには特に制限
はなく、導体間厚み(内部導体層3、3の間隔)は10
〜100μm、ベース厚みは250〜500μm程度で
設定することができる。さらに、導体層3、5および7
の厚みは、通常、5〜30μmの範囲で設定でき、巻線
パターンのピッチは10〜100μm程度、巻数は1.
5〜20.5ターン程度とすることができる。
【0039】(チップインダクタの製造方法)次に、図
1および図2に示すチップインダクタの製造方法につい
て説明する。磁性フェライト本体4の磁性フェライト層
2を構成する磁性粉末としては、たとえば粒径0.1〜
10.0μm程度のNiO,CuO,ZnOおよびFe
の粉体などが用いられる。これら粉体をボー
ルミルを用いて湿式混合し、ついで、この湿式混合物を
スプレードライヤーにより乾燥した後、700℃にて仮
焼し、仮焼粉を得る。この仮焼粉をボールミルにて粉砕
した後、スプレードライヤーで乾燥し、比表面積8m
/g程度のNi−Cu−Znフェライト原料粉末と
する。
【0040】ついで、この原料粉末を、エチルセルロー
ス等のバインダと、テルピネオール、ブチルカルビトー
ル等の溶剤と混練してペースト化し、磁性フェライト用
ペーストを得る。この磁性フェライト用ペースト中のバ
インダおよび溶剤の含有量には制限はなく、例えば、バ
インダの含有量は1〜5重量%、溶剤の含有量は10〜
50重量%程度の範囲で設定することができる。また、
ペースト中には、必要に応じて分散剤、可塑剤、誘電
体、絶縁体等を10重量%以下の範囲で含有させること
ができる。
【0041】また、それとは別に、内部導体用ペースト
を準備する。このペーストを作製するために、平均粒径
0.8μm程度のAgをエチルセルロース等のバインダ
とテルピネオール、ブチルカルビトール等の溶剤と混練
してペースト化する。
【0042】このようにして作製された磁性フェライト
層用ペーストと内部導体用ペーストとを交互に印刷積層
し、積層型チップフェライト部品を製造する。印刷積層
に際しては、たとえば図3(A)に示すように、最初
に、磁性フェライト層用ペーストを用いて、磁性フェラ
イト層のためのユニットパターン2aを印刷し、その
後、内部導体用ペーストを用いて、引出導体パターン7
aを印刷する。次に、同図(B)に示すように、たとえ
ばユニットパターン2aの右半分に相当する半ユニット
パターン2bを、磁性フェライト層用ペーストを用いて
引出導体パターン7aの上に積層印刷する。次に、同図
(C)に示すように、その上に、内部導体用ペーストを
用いて、内部導体パターン3aを印刷する。内部導体パ
ターン3aは、ユニットパターン2aの左側にある引出
導体パターン7aに接続し、且つ、右半分の半ユニット
パターン2bの上に伸びるようなパターンである。
【0043】次に、同図(D)に示すように、ユニット
パターンの2aの左半分を覆うように、磁性フェライト
層用ペーストを用いて、半ユニットパターン2cを印刷
積層する。その後、同図(E)に示すように、半ユニッ
トパターン2b上の内部導体パターン3aに接続するよ
うに、且つ左半分の半ユニットパターン2cの上に伸び
るように、内部導体用ペーストを用いて、内部導体パタ
ーン3bを印刷する。
【0044】次に、同図(F)に示すように、右半分に
相当する半ユニットパターン2dを、磁性フェライト層
用ペーストを用いて、内部導体パターン3aおよび3b
の上に積層印刷する。このような積層印刷を繰り返すこ
とで、コイル状に接続された内部導体が内部に形成され
た積層体ユニットを得ることができる。
【0045】なお、図3(A)〜(F)では、単一のユ
ニットパターン2aに着目して説明したが、実際の積層
印刷に際しては、ユニットパターン2aは、行列状に多
数形成され、各ユニットパターン2aの上に、コイルパ
ターンが同時に形成され、その後、印刷積層体が切断さ
れて、図1に示す単一のコイル状内部導体10を有する
本体4の元となる積層体ユニットが得られる。
【0046】また、上述した方法では、印刷積層工法を
用いて、積層体ユニットを得ているが、シート積層工法
でも、同様な積層体ユニットを得ることができる。すな
わち、磁性フェライト粉体を、ポリビニルブチラールを
主成分としたバインダとトルエン、キシレン等の溶媒と
ともにボールミル中で混練して得たスラリーを、ポリエ
ステルフィルム等の上にドクターブレード法等で塗布し
乾燥して磁性フェライトシートを得る。この磁性フェラ
イトシートを、導体ペーストと交互に積層した後、焼成
する。なお、磁性フェライトシート中のバインダの含有
量には制限はなく、例えば、1〜5重量%程度の範囲で
設定することができる。また、磁性フェライトシート中
には、必要に応じて分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等
を10重量%以下の範囲で含有させることができる。
【0047】積層体ユニットの二側面から、コイル状内
部導体10の一部を露出させるためには、図3に示す通
常の印刷積層工法により積層体ユニットを作製した後、
積層体ユニットの二側面を、カッターなどを用いて内部
導体10が外部に露出するように切断すれば良い。ある
いは、コイル状の内部導体10を形成するための図3に
示す導体パターン7a、3a、3b…の形状を工夫して
もよい。すなわち、図3(A)〜(F)の点線で示すよ
うに、導体パターン7a、3a、3b…の縁の少なくと
も一部が、磁性フェライト層を形成するためのユニット
パターン2a、2b…のパターンの縁に位置するように
積層印刷すればよい。
【0048】切断することにより、または導体パターン
の形状を工夫することで、導体パターン7a、3a、3
b…の縁の少なくとも一部が、磁性フェライト層を形成
するためのユニットパターン2a、2b…のパターンの
縁に位置する積層体ユニットは、次に焼成される。焼成
温度は、特に限定されないが、800〜930℃、好ま
しくは850〜910℃とする。焼成温度が800℃未
満であると焼成不足となり、一方、930℃を超えると
フェライト組成物中に内部導体材料が拡散して、電磁気
特性を著しく低下させることがある。また、焼成時間は
0.05〜5時間、好ましくは0.1〜3時間の範囲で
設定することができ、大気中での焼成で良い。
【0049】焼成後には、内部導体を保護するため、露
出した内部導体の部分を、図1および図2に示すよう
に、ガラスなどで構成される非磁性層8で被覆する。次
に、積層チップフェライト部品の内部導体10の引き出
し部に外部導体ペーストを塗布し、外部導体ペーストお
よび非磁性層8を大気中において、たとえば600℃で
30分間焼き付ける。その結果、図1および図2に示す
ように、内部導体10の両端部に外部電極端子12,1
4が接続された状態の積層チップフェライト部品1を得
ることができる。
【0050】本実施形態に係るチップインダクタ装置1
では、コイルの途中に対応する内部導体10の少なくと
も一部が、磁性フェライト本体4の外部に露出するよう
に配置してあるので、少なくともその部分では、開磁路
構造となり、漏洩磁束が生じ、飽和磁化しずらくなる。
その結果、大電流下で安定したL値やインピーダンスを
有するチップインダクタ装置を得ることが可能になる。
また、本実施形態に係るチップインダクタ装置の製造方
法では、このチップフェライト部品1を、きわめて容易
に製造することができる。
【0051】第2実施形態 磁性フェライト本体の内部に埋没している内部導体の一
部を露出するための別の方法として、焼成後のチップの
少なくとも一側面にサンドブラス(研磨粉吹き付け)や
表面研磨機などによって、内部導体の一部を外部に露出
させる方法もある。
【0052】図4および図5は、磁性フェライト本体4
Aおよび4Bの焼成後に、研削方法によって、内部導体
10Aおよび10Bを露出させたチップインダクタ装置
1Aおよび1Bを示す。
【0053】図4に示すチップインダクタ装置1Aで
は、本体4Aの短手方向Yの両側面(または一側面)
に、長手方向Xに沿って所定幅Lで、コイルの軸芯方向
Zに貫通する切り欠き16を設け、切り欠き16の側面
から、内部導体10Aの一部を露出させている。また、
この切り欠き16には、導体の保護のために、非磁性層
8Aを埋設することが好ましい。
【0054】図5に示すチップインダクタ装置1Bで
は、本体4Bの短手方向Yの両側面(または一側面)
に、長手方向Xに沿って所定幅Lで、コイルの軸芯方向
Zに沿って深さDの切り欠き16Bを設け、切り欠き1
6Bの側面から、内部導体10Bの一部を露出させてい
る。また、この切り欠き16Bには、導体の保護のため
に、非磁性層8Bを埋設することが好ましい。
【0055】インダクタ装置として必要なL値(インダ
クタンス)およびZ値(インピーダンス)は、切り欠き
16または16Bの数、幅L、または深さDなどを調整
することにより、すなわち、露出させるコイルの積層巻
線数、または露出面積などを調整することにより得られ
る。
【0056】図4および図5に示す本実施形態のインダ
クタ装置1Aおよび1Bのその他の構成、製造方法およ
び作用効果は、図1〜図3に示す実施形態のインダクタ
装置1と同様である。
【0057】第3実施形態 図6に示す本実施形態に係る積層型チップインダクタ装
置1Cは、磁性フェライト本体4Cの内部に埋設される
内部導体10Cで構成されるコイルの軸芯方向Zに沿っ
て反対側に位置する磁性フェライト本体4Cの両端部
に、一対の外部電極端子12Cおよび14Cが装着して
ある。
【0058】このように構成されたインダクタ装置で
は、本体4の4側面のうちのいずれか一側面以上に、切
り欠き16Cを形成することができ、1〜4側面から、
内部導体10Cの一部を露出させることができる。
【0059】図6に示す本実施形態のインダクタ装置1
Aおよび1Bのその他の構成、製造方法および作用効果
は、図1〜図3に示す実施形態のインダクタ装置1と同
様である。
【0060】第4実施形態 本実施形態は、前記第1〜第3実施形態の変形である。
上述した各実施形態では、磁性フェライト本体の側面の
一部から、内部導体の一部を完全に露出させ、その部分
で、コイルを開磁路構造としている。しかしながら、磁
性フェライト本体の側面の一部から、内部導体の一部を
完全に露出させることなく、多少、磁性フェライト層の
薄い膜を残しても、コイルを実質的に開磁路構造に近い
構造とすることができ、本発明と同様な作用効果を得る
ことが期待できる。そこで、本実施形態では、前記第1
〜第3実施形態のチップインダクタ装置において、磁性
フェライト本体の側面の一部から、内部導体の一部を完
全に露出させることなく、多少、磁性フェライト層の薄
い膜を残してある。
【0061】このような本実施形態に係るチップインダ
クタ装置でも、上述した第1〜第3実施形態に係るチッ
プインダクタ装置と同様な作用効果を期待することがで
きる。
【0062】なお、本発明に係るチップフェライト部品
としては、積層型チップインダクタ、積層型ビーズに限
らず、LC複合素子などのように、磁性フェライト層と
内部導体層とが交互に積層して一体化された多層構造を
持つ全ての電子部品が含まれる。
【0063】
【実施例】以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づ
き説明するが、本発明は、これら実施例に限定されな
い。
【0064】実施例1 粉末は粒径0.1〜10μm程度のNiO,CuO,Z
nOおよびFe の粉体を用い、これらをボー
ルミルを用いて湿式混合し、ついで、この湿式混合物を
スプレードライヤーにより乾燥し700℃にて仮焼し、
これをボールミルにて粉砕した後、スプレードライヤー
で乾燥し、比表面積8m/gのNi−Cu−Znフ
ェライト原料粉末とした。
【0065】ついでこの原料粉末100重量部に対し
て、エチルセルロース2.5重量部、テルピネオール4
0重量部を加え、3本ロールにて混練して磁性フェライ
トペーストを調製した。
【0066】一方、平均粒径0.8μmのAg100重
量部に対して、エチルセルロース2.5重量部、テルピ
ネオール40重量部を加え、3本ロールにて混練して、
導体用ペーストを調製した。
【0067】このような磁性フェライト用ペーストと導
体用ペーストとを、図3に示すように、交互に印刷積層
した後、積層体の対向する2側面を切断し、導体用ペー
ストにより印刷された導体パターンの縁部を積層体側面
から露出させた。その後、この積層体について、900
℃で2時間の焼成を行って、図1および図2に示される
ような積層型チップインダクタを得た。得られた積層型
チップインダクタのタイプは、2012タイプであり、
その外形寸法は2.1mm×1.2mm×1.5mmで
あった。
【0068】焼成後、内部導体保護のため露出した内部
導体の部分を図1および図2に示すようにガラスから成
る非磁性体層8で被覆した。次に、積層チップインダク
タの内部導体の引き出し部に外部導体ペーストを塗布
し、外部導体およびガラスを大気中において600℃で
30分間焼き付け、コイル状内部導体10の両端部に外
部電極端子12および14が接続形成された状態の積層
チップインダクタを形成した。
【0069】このチップインダクタに対し、測定周波数
100kHz、測定電流0.1mAの条件で、LCRメ
ーター(ヒューレットパッカード(株)製)を用いてイ
ンダクタンスLを測定し、重畳する直流電流量を大きく
していき、L値の変化を求めた。図7中の○が、本実施
例におけるチップフェライト部品における初期L値と初
期L値が30%低下した時の重畳した直流電流量の関係
を示す。
【0070】比較例1 磁性フェライト用ペーストと導体用ペーストとを、図3
に示すように、交互に印刷積層した後、積層体の側面を
切断せず、導体用ペーストにより印刷された導体パター
ンの縁部を積層体側面から露出させなかった以外は、実
施例1と同様にしてチップインダクタを製造した。この
インダクタについて、実施例1と同様にして、インダク
タンスLを測定し、重畳する直流電流量を大きくしてい
き、L値の変化を求めた。図7中の●が、比較例1にお
けるチップフェライト部品における初期L値と初期L値
が30%低下した時の重畳した直流電流量の関係を示
す。
【0071】評価 図7に示すように、本実施例1と比較例1とを比較する
ことで、コイルを開磁路構造にした場合、直流重畳特性
が明らかに向上することが判明した。
【0072】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明によれ
ば、小型化の要請に即し、しかも大電流下で安定したL
値やインピーダンスを有するチップフェライト部品およ
びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の一実施形態に係るチップフェ
ライト部品の要部斜視図である。
【図2】 図2は図1に示すII−II線に沿う断面図であ
る。
【図3】 図3(A)〜(F)は内部導体パターンの形
成方法の一例を示す説明図である。
【図4】 図4は本発明の他の実施形態に係るチップフ
ェライト部品の斜視図である。
【図5】 図5は本発明の他の実施形態に係るチップフ
ェライト部品の斜視図である。
【図6】 図6は本発明の他の実施形態に係るチップフ
ェライト部品の斜視図である。
【図7】 図7は本発明の実施例および比較例に係るチ
ップフェライト部品における初期L値と初期L値が30
%低下した時の重畳した直流電流量の関係を示すグラフ
である。
【符号の説明】
1,1A,1B,1C… 積層型チップインダクタ 2… 磁性フェライト層 3… 内部導体層 4,4A,4B,4C… 磁性フェライト本体 5,7… 引出導体層 8,8A,8B… 非磁性体層 10,10A,10B,10C… コイル状内部導体 12,14… 外部電極端子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭60−226109(JP,A) 特開 平6−77022(JP,A) 特開 平9−129447(JP,A) 特開 平6−36214(JP,A) 特開 平10−27712(JP,A) 特開2000−133521(JP,A) 実開 昭61−188320(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 17/04 H01F 1/34 H01F 27/29 H01F 30/00 H01F 41/04

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁性フェライト材で構成される磁性フェ
    ライト本体と、 前記磁性フェライト本体の内部に、コイルを構成するよ
    うに埋設してある内部導体であって、前記コイルの途中
    に対応する内部導体の一部が、前記磁性フェライト本体
    の外部に露出するように配置してある内部導体と、を有し、 インダクタ装置として必要なインダクタンスおよびイン
    ピーダンスとなるように、前記内部導体における前記磁
    性フェライト本体の外部に露出する露出面積が調整して
    あることを特徴とする チップフェライト部品。
  2. 【請求項2】 前記内部導体の少なくとも一部が前記磁
    性フェライト本体の外部に露出する部分が、非磁性材料
    で被覆してある請求項1に記載のチップフェライト部
    品。
  3. 【請求項3】 前記内部導体における前記磁性フェライ
    ト本体の外部に露出する部分は、前記磁性フェライト本
    体の側面に形成される切断面または切り欠きにより形成
    されることを特徴とする請求項1または2に記載のチッ
    プフェライト部品。
  4. 【請求項4】 前記磁性フェライト本体が、Fe
    ,NiO,CuOおよびZnOを主成分とする磁性
    フェライト材料で構成してあることを特徴とする請求項
    〜3のいずれかに記載のチップフェライト部品。
  5. 【請求項5】 前記磁性フェライト本体の外表面には、
    前記コイルを構成する内部導体の両端部に接続される一
    対の外部電極端子が装着してある請求項1〜4のいずれ
    かに記載のチップフェライト部品。
  6. 【請求項6】 前記内部導体で構成されるコイルの軸芯
    方向に沿って相互に反対側に位置する前記磁性フェライ
    ト本体の両端部に、前記一対の外部電極端子が装着して
    ある請求項5に記載のチップフェライト部品。
  7. 【請求項7】 磁性フェライト層と内部導体層とを積層
    し、積層体を得る工程と、インダクタ装置として必要なインダクタンスおよびイン
    ピーダンスとなるように、 前記積層体の側面の一部を
    断し、積層体の側面から内部導体層の一部を露出させる
    工程と、 その後、積層体を焼成する工程と、 を有するチップフェライト部品の製造方法。
  8. 【請求項8】 磁性フェライト層と内部導体層とを積層
    し、積層体を得る工程と、 前記積層体を焼成し、焼結体を得る工程と、 前記焼結体の側面の一部を加工し、インダクタ装置とし
    て必要なインダクタンスおよびインピーダンスとなるよ
    うに、積層体の側面から内部導体層の一部を露出させる
    工程と、 を有するチップフェライト部品の製造方法。
  9. 【請求項9】 磁性フェライト層と内部導体層とを積層
    し、積層体を得る工程と、インダクタ装置として必要なインダクタンスおよびイン
    ピーダンスとなるように、 前記積層体の側面の一部を
    断し、積層体の側面近くに、内部導体層の一部を位置さ
    せる工程と、 その後、積層体を焼成する工程と、 を有するチップフェライト部品の製造方法。
  10. 【請求項10】 磁性フェライト層と内部導体層とを積
    層し、積層体を得る工程と、 前記積層体を焼成し、焼結体を得る工程と、 前記焼結体の側面の少なくとも一部を加工し、積層体の
    側面近くに内部導体層の一部を位置させる工程と、 を有するチップフェライト部品の製造方法。
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