JP2682959B2 - エプスタイン・バーウィルス初期抗原(拡散)に関連する合成ポリペプチドおよび抗体 - Google Patents

エプスタイン・バーウィルス初期抗原(拡散)に関連する合成ポリペプチドおよび抗体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明はエプスタイン・バーウィルスおよ
びその初期抗原(拡散)の関連する疾患の治療および診
断に有用な抗体、検定方法および診断キットに関する。
【0002】
【発明の背景】エプスタイン・バーウィルス(EBV)
は世界中で個体の80〜100%に感染している非常に
普通の環境因子である。それはヒトにおける感染性単核
症(IM)の原因因子であり、EBVはまたバーキット
リンパ腫(BL)、鼻咽喉癌(NPC)、および免疫抑
制患者に生ずるBリンパ球腫瘍の病原論に関係づけられ
た。情況証拠はまたヒト自己免疫疾患例えば慢性関節リ
ウマチおよびシエーグレン症候群中のこのウィルスの可
能な役割を示した。初期または一次EBV感染は急性ま
たは潜在性であることができる。急性ウィルス感染は特
異核抗原(EBNA−IおよびEBNA−IIと称され
る)、「初期抗原」(EA)複合体、ウィルスカプシド
抗原(VCA)および他のウィルス関連分子の生成を生
ずる。これは次に長期間の間EBV感染が循環血液、リ
ンパ節、脾臓および唾液腺中に存在するBリンパ球中に
潜伏する。潜伏感染はウィルスが未発現または部分発現
状態で細胞内に存在するものである。潜伏性ウィルス感
染は再活性化することができる。生体内潜伏を制御する
宿主因子は十分は理解されていないけれども、1つまた
はそれ以上の免疫機構の不全が重要な因子であることを
示唆する若干の証拠がある。
【0003】EBVによる一次感染に続く血清学的細胞
仲介免疫応答がよく示され、感染の過程中に発現される
ウィルスの免疫原決定基に対する宿主の応答を表わす。
自生ウィルスタンパク質の関係において、免疫原決定基
は全自生タンパク質が免疫原として使用されるときの抗
体応答を誘出するタンパク質の部分である。これらの免
疫原決定基は分子上の若干の部位に制限されると思われ
る。一方、抗体が結合できるタンパク質分子の領域は抗
原決定基として示される。組織中のウィルス抗原決定基
の検出並びにウィルス免疫原決定基に対する患者の応答
のプロフィルはEBV関連疾患の診断に非常に有用にな
っている。EA複合体は、この複合体に対する抗体がし
ばしばEBV関連疾患を有する患者中に、潜在的に感染
したがしかし発病しない対照集団とは対照的に高い力価
で存在するので重要である。すなわち、エプスタイン・
バーウィルス(EBV)に急性感染したヒトは拡散初期
抗原(EA−D)に対する抗体を生ずる。次にウィルス
が潜伏期に入ると抗EA−D抗体が消滅し、ウィルスが
再活性化されるまで再び表われない。
【0004】EA錯体は現在EBV感染細胞中の免疫螢
光染色の分布に基いて拡散(D)および制限(R)を示
す2つの異なるタンパク質抗原からなると知られてい
る。EA−Dに対する抗体はアセトン固定およびメタノ
ール固定細胞の両方において核および細胞質の拡散染色
を生ずる。対照的にEA−R染色はアセトン固定細胞中
の細胞質に制限され、メタノール固体細胞中には存在し
ない。IMおよびNPCを有する患者の血清の抗EA活
性は主にEA−Dを指向するが、BLを有する患者の血
清中の免疫反応性は主にEA−Rを指向する。さらに、
EA錯体に対する抗体は、抗体力価が疾患過程で変化す
る傾向があるので、EBV関連悪性を有する患者に重要
である。従って、EA−DおよびEA−D抗体の両方の
存在についての検定は若干の共通の臨床情況に重要であ
る。
【0005】抗EA−D抗体はこれまでEBV感染細胞
から得たEA−D抗原を用いて検定されている。ヘンレ
(Henle) ほか、サイエンス(Science)、169、188
〜190(1970)の免疫螢光法は抗原精製のない全
細胞調製物を用いる。しかし、そのような粗調製物の作
用は血清が哺乳動物の核および細胞質抗原に対する抗体
もまた含む患者に対し偽陽性結果を生ずる。より最近に
はルカ(Luka)ほか、ジャーナル・オブ・イムノロジカ
ル・メソーズ(J. Immunol. Meth.)、67、145〜1
56(1984)がイムノアフィニティークロマトグラ
フィーによりEBV感染細胞から精製したEA−D標的
抗原を用いる抗EA−D抗体に対する酵素結合抗体免疫
吸着検定(ELISA)の開発を報告した。ルカ(Luk
a)ほかの方法は全細胞調製物の使用に関連する偽陽性
の問題を減少するけれども、それはなお感染物質の生成
および取扱いを必要とする。従って、疾患中のEBV連
座の診断並びに伝染性単核症(IM)のような疾患の段
階の診断を可能になし、感染細胞培養の取扱いを制限
し、回避するために体試料中のEA−Dおよび抗EA−
D抗体の存在について検定する改良された試薬および方
法の開発が望まれる。
【0006】最近の研究はタンパク質の主アミノ酸残基
配列の短線状セグメントに相当する化学合成ポリペプチ
ドを用いて自生タンパク質と免疫反応する抗体を誘発で
きることが示された、ラーナー(Lerner)ほか、ネーチ
ャー(Nature) 、299、592(1982)およびス
トクリフ(Sutcliffe)ほか、サイエンス(Science)、2
19、260(1983)。さらに、若干の研究は、合
成ポリペプチドが自生タンパク質により誘発された抗体
と免疫反応できることを示した、ロウズ(Rhodes) ほ
か、ジャーナル・オブ・イムノロジー(J. Immunol.)、
134、211(1985)。従って、若干の合成ポリ
ペプチドは自生タンパク質の免疫原および抗原の決定基
を免疫学的に模擬できる。しかしよく知られているよう
に、合成ポリペプチド技術の適用はなお若干の欠点に悩
まされる。例えば自生タンパク質上の抗原決定基を模擬
できるペプチドの確認は、中でもタンパク質のアミノ酸
残基配列を知ることを必要とする。アミノ酸残基配列が
タンパク質をコードする遺伝子の核酸配列から予想でき
るが、そのような予想は、遺伝子の正しい読み枠が知ら
れれば行なうことができるにすぎない。
【0007】EBVゲノムの核酸配列はベール(Baer)
ほか、ネーチャー(Nature) 、310、207(198
4)の論文の公表以来知られてきた。しかし、EA−D
タンパク質遺伝子もその読み枠からこれまでウィルスゲ
ノムで確認されなかった。さらに、タンパク質のアミノ
酸残基配列が知られたとしても、免疫原および抗原の決
定基を構成するタンパク質中の部位を確認する方法は事
実上経験的であり、予測できる結果を生じない。これに
は少なくとも2つの理由がある。第1に、タンパク質の
三次元構造が知られなければタンパク質の線状セグメン
トを宿主の免疫系に利用できる信頼できる測定法がな
い。第2に、三次元構造が知られ、または知られなくて
も、短線状ポリペプチドがしばしば適当な免疫原決定基
および抗原決定基の構成に必要な二次および三次配座構
造を模擬する能力を有しないと思われる、タイナー(Ta
iner)ほか、ネーチャー(Nature) 、312、127
(1984)。
【0008】
【発明の概要】本発明の1観点はEBV EA−Dタン
パク質のアミノ末端から位置350〜位置362のアミ
ノ酸残基配列に相当するアミノ酸残基配列を有し、かつ
13〜40個のアミノ酸残基、より好ましくは13〜2
5個の残基を有する合成ポリペプチドを意図する。核合
成ポリペプチドはEA−Dにより誘発された抗体を免疫
結合する能力を有する。殊に好ましいポリペプチドは、
左から右へ、アミノ末端からカルボキシ末端へ、式、 H−PARPETSPAIPA−OH により表わされる配列を有する。本発明の他の観点は
3〜40個のアミノ酸残基の、少くとも2つの単位が前
記合成ポリペプチドである複数の結合した合成ポリペプ
チド反復単位を含む合成ポリペプチドオリゴマーを意図
する。
【0009】本発明のなお他の観点は、ポリペプチド結
合以外により互いに結合された複数の合成ポリペプチド
反復単位を含み、約100個以上のアミノ酸残基を含む
合成ポリペプチドを意図する。反復単位は前記合成ポリ
ペプチドである。本発明のなお他の観点は、検定する体
液試料および前記合成ポリペプチドを準備する段階を含
む体液試料をEA−Dに対する抗体の存在について検定
する方法を意図する。体液試料およびポリペプチドを混
合して免疫反応混合物を形成する。混合物を生物検定条
件下に、試料中に存在する抗EA−D抗体がポリペプチ
ドを免疫結合して免疫反応体を形成する十分な予定時間
維持する。次いで混合物中に形成された免疫反応体の存
在を測定する。本発明の観点は、検定する体試料および
前記合成ポリペプチドにより誘発された抗体又はその抗
結合部位を含む部分(以下、単に「受容体」ともい
う)を準備する段階を含む体試料EA−Dの存在につい
て検定する方法を意図する。体試料を受容体と混合して
免疫反応混合物を形成する。その混合物を生物検定条件
下に、試料中に存在するEADが受容体により免疫結合
されて免疫反応体を形成する十分な予定時間維持する。
次いで混合物中に形成された免疫反応体の存在を測定す
る。
【0010】本発明のなお他の観点は、体液試料中の抗
EA−D抗体の存在について検定する診断キットを意図
する。キットは、好ましくは個々の容器中に、前記合成
ポリペプチドおよびポリペプチドと抗EA−D抗体との
免疫反応をシグナルする標識された特異結合剤を含む。
前記合成ポリペプチドに対して生成され、EA−Dタン
パク質と免疫反応できる受容体もまた意図される。他の
観点において、本発明は体試料、好ましくは溶解抹消血
リンパ球、中のEA−Dの存在について検定する方法を
意図する。体試料を前記受容体と混合して免疫反応混合
物を形成する。混合物を生物検定条件下に、試料中に存
在するEA−Dが受容体と免疫反応して免疫反応体を形
成する十分な予定時間維持する。次いで混合物中に形成
された免疫反応体を測定する。
【0011】本発明の他の観点は、体試料中のEA−D
の存在について検定する診断キットである。キットは、
好ましくは個々のパッケージ中に、前記受容体および受
容体とEA−Dタンパク質との免疫反応をシグナルする
標識された特異結合剤を含む。本発明により提供される
利点の1つはEBV EA−Dに関連する抗原および受
容体を感染生物質を扱うことなく生成させる能力であ
る。本発明はまた、天然に存在する核および細胞質抗原
により生ずる偽陽性結果を実質的に含まない高免疫特異
性を有する抗原および受容体を提供するので有利であ
る。本発明の他の利点は再活性化した潜伏EBV感染の
早期検出を与えることである。本発明のなお他の利点は
次の説明から当業者に明らかであろう。
【0012】本発明の開示の一部を形成する図面中、図
1はEA−D遺伝子核酸配列〔ベール(Bear)ほか、ネー
チャー(Nature)、310、207(1984)により公
表されたEBVゲノム核酸残基79899〜8111
0〕から翻訳し、1文字アミノ酸残基略号を用いて、左
から右へ、アミノ末端からカルボキシ末端の方向にEA
−Dタンパク質の完全なアミノ酸残基配列を示す。この
研究に用いたポリペプチドのアミノ酸残基配列の位置は
配列の下の破線により示され、末端残基は末端残基の直
下の「+」記号により示される。破線は表示K5、K
6、K7、K8およびK9により中断され、それらの表
示がそれらのポリペプチドの参照に利用される。
【0013】図2には、実施例5に記載されるポリペプ
チドK7を固相標的とした抗EA−D抗体ELISA を用い
た正常固体(正常)および感染性単核症患者(急性I
M)の血清中の、それぞれ抗EA−D IgM、IgG
およびIgA抗体に対する検定の結果を示す3つのグラ
フが含まれる。血清試料は急性IMを有する44患者
(実バー)およびEBVに対する先行暴露を有しない4
0個体を含む194健康正常個体(白抜きバー)から得
た。検定中に各試料により生じた490ナノメートル
(nm)における光学濃度(OD490)は最も近い1
/10単位に丸められ、各グラフの横軸である。各バー
は示したOD490を生じた試料の数を表わす。パネル
AのデータはポリペプチドK7により模擬されたEA−
Dエピトープに免疫結合する(免疫反応体形成)IgM
抗体の頻度が正常個体中より急性IM患者中で大きいこ
とを示す。パネルBおよびCのデータはそれぞれIgG
およびIgA抗体応答に対する同様の結果を示す。
【0014】図3は鼻咽頭癌(NPC)、シェーグレン
症候群(SS)、サイトメガロウィルス(CMV)感染
を有する患者および正常提供者の血清を検定するために
実施例5のポリペプチドK7ELISA を用いて得られた結
果を示すヒストグラムである。ポリペプチドK7と免疫
反応した各血清試料中の抗EA−D抗体の量はOD49
0値として示され、ヒストグラム上の点により示され
る。図4には実施例5に記載されるポリペプチドK7を
固相標的とした抗EA−D抗体ELISAを用いて抗E
A−D抗体について急性IMを有する4患者の一連の血
清試料を検定した結果を示す2つのグラフパネルが含ま
れる。各患者の血清のデータは異なる記号により表わさ
れ、同一記号は各グラフパネル中の同一患者に使用され
る。パネルAのデータは抗EA−DIgM抗体を、症候
発症の1週後のIM患者中に検出できることを示す。パ
ネルBのデータはロウズ(Rhodes) ほか、ジャーナル・
オブ・イムノロジー(J. Immunol.)、134、211
(1985)に記載された抗EBNA−1 ELISA
を用いた血清試料中の抗EBNA−1抗体の増加の検出
による同一患者中のIM診断の確認の例示である。
【0015】図5には固相標識としてK7を用いた抗E
A−D IgM抗体ELISAで得られた結果に対する
血清希釈およびポリペプチド濃度の影響を示す2つのグ
ラフパネルが含まれる。パネルAのデータはIM患者
(IM)並びに血清がEBVカプシドタンパク質抗原に
対する抗体を含まなかった正常個体(VCA- )および
血清がこれらの抗原に対する抗体を有した患者(VCA
+ )および血清試料中の抗EA−D IgM抗体を検定
する抗EA−D抗体ELISAの能力に対するミクロタ
イタープレートウェルに付着したK7ポリペプチドの量
を変える影響を示す。ミクロタイタープレートウェルは
実施例5に記載するようにポリペプチドK7でコートし
たが、ウェル壁に対するK7の付着に用いたポリペプチ
ドK7含有溶液の濃度はミクログラム毎ミリリットル
(μg/ml)で示したように変動させた。試験した血清
はすべて用いる前に1:20に希釈した。パネルBのデ
ータは合成ポリペプチドK7と免疫反応するヒトIgM
抗体の検出に対する血清希釈の影響を示す。ミクロタイ
タープレートウェル壁は実施例5に記載されるように1
0μg/ml溶液を用いてK7でコートした。IM、NP
CおよびSSを有する患者、並びにVCA- およびVC
+ 正常固体の血清を次に抗EA−D ELISAで、示した
希釈で検定した。
【0016】A.定義 「抗体」という語は抗原と特異的に結合できる免疫グロ
ブリンと称される1群のグリコシル化タンパク質の一員
である分子を示す。「抗体結合部位」は抗原を特異的に
結合する重鎖および軽鎖可変領域からなる抗体分子の構
造部分である。「抗原」という語は歴史的に抗体により
結合されるエンティティーを示すため、また抗体の生成
を誘発するエンティティーを示すために用いられた。よ
り最近の用法は抗原の意味を抗体により結合されるエン
ティティーに制限し、「免疫原」という語は抗体生成を
誘発するエンティティーに対して使用される。ここに論
議するエンティティーは免疫原および抗原の両方である
場合に一般に抗原と称される。「抗原決定基」は抗原結
合部位により免疫結合される抗原の真の構造部分を示
す。その語はまた「エピトープ」と同義に使用される。
【0017】「抗原関連変異体」という語はここに、少
くとも1つの抗原決定基の一部を共有し、従って免疫的
に交差反応性である全体のアミノ酸残基配列の異なるポ
リペプチドを示すために使用される。すなわち、抗原関
連変異体のポリペプチド配列が異なるが、しかし各変異
体に対して生成された抗体は他と免疫反応する。「生物
活性」という語は、少くとも受容体の適当なリガンドを
少くとも特異的に結合する能力を示すが、しかし他の一
般またはエフエクター能力もまた存在することができ
る。用いた「複合体」という語は、特異的結合因子が標
的リガンドに結合したときに形成される生成物を示す。
典型的な複合体は免疫反応体、抗体に結合したプロテイ
ンAなど、である。
【0018】用いた「保存的置換」という語は、1アミ
ノ酸残基が他の生物学的に類似の残基により置換された
ことを示す。保存的置換基の例には1つの疎水性残基例
えばイソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニン
を他に代える置換、あるいは1つの極性残基を他に代え
る、例えばアルギニンとリシンとの間、グルタミン酸と
アスパラギン酸との間、またはグルタミンとアスパラギ
ンとの間などの置換、が含まれる。「保存的置換」とい
う語にはまた、ポリペプチドに対して生じた抗体もまた
非置換アミノ酸を有する相当するポリペプチドと免疫反
応すれば非置換親アミノ酸の代りに置換アミノ酸を用い
ることが含まれる。ペプチド配列に関して用いた種々の
文法形態における「相当する」という語は、アミノ末端
およびカルボキシ末端のいずれかまたは両方で3個まで
のアミノ酸残基を加えまたは減じた、ポリペプチド配列
に沿って特定アミノ酸残基中に保存的置換のみを含むペ
プチドを意味する。
【0019】「ELISA」は固相に結合した抗体また
は抗原並びに酵素−抗原または酵素−抗体結合体を用い
て試料中に存在する抗原または抗体の量を検定し定量す
る酵素結合抗体免疫吸着検定を示す。ELISA法の説
明はランゲ・メディカル・パブリケーションズ(Lange
Medical Publications、Los Altos 、CA)により198
2年に発行されたサイテス(D. P. Sites)ほかによる
「基礎および臨床免疫学(Basic and Clinical Immunol
ogy)、4版、22章、米国特許第 3,654,090号、第 3,8
50,752号および第 4,016,043号中に見出され、それらは
すべてここに参照される。「酵素」は、しばしば特異的
である基質中の若干の変化を触媒作用により促進するか
または生成することができるタンパク質を示す。「エピ
トープ」は抗体結合部位により特異的に結合されて免疫
反応体を形成する分子の部分を示す。それはまた決定基
または抗原決定基として示される。
【0020】「免疫学的に模擬する」という語は、本発
明のポリペプチドが、1)自生タンパク質により誘発さ
れた抗体により免疫結合されることができ、2)誘発ポ
リペプチドおよび自生タンパク質に結合する抗体の生成
を誘発できることを意味するために使用される。種々の
形態における「免疫反応する」という語はリガンドとし
ての抗原と、受容体としての抗体結合部位を含む分子例
えば全抗体またはその一部との間の結合を意味する。用
いた「免疫反応体」という語は免疫反応の生成物、すな
わちリガンドが受容体分子により免疫結合されるときに
生ずるエンティティーを示す。
【0021】「標識手段」、「指示基」または「標識」
は同義に使用され、免疫反応体の存在を示す検出可能な
シグナルの生成に直接または間接に含まれる単個原子ま
たは分子が含まれる。任意の標識手段を受容体に結合ま
たは取込ませ、あるいは個々に使用することができ、そ
れらの原子または分子は単独または他の試薬とともに使
用できる。そのような指示基または標識自体は免疫化学
においてよく知られ、それらは他の新規受容体、方法お
よび(または)系で使用される限り本発明の一部を構成
する。「リガンド」は特異的受容体により結合される構
造部分を含む分子を示す。「ペプチド」および「ポリペ
プチド」という語は、ペプチド結合により互いに結合し
た既知配列のアミノ酸残基と同義に使用される。
【0022】用いた「薬学的に許容できる塩」という語
は製薬工業に使用される非毒性アルカリ金属、アルカリ
土類金属およびアンモニウム塩を示し、よく知られた方
法により製造されるナトリウム、カリウム、リチウム、
カルシウム、マグネシウムおよびアンモニウム塩などが
含まれる。その語にはまた、本発明の化合物と適当な有
機または無機酸との反応により一般に製造される非毒性
酸付加塩が含まれる。代表的な塩には塩酸塩、臭化水素
酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草
酸塩、オレイン酸塩、ラウリン酸塩、ボラート(vorat
e)、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシラート、ク
エン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒
石酸塩などが含まれる。「受容体」という語は抗原に
(または抗原と)免疫結合する抗体結合部位からなる生
物活性分子を示すために使用される。具体的には、本件
においては、抗体又はその抗体結合部位を含有する部分
をいう。そのような結合は典型的には約105 〜約10
10リットル毎分子の親和性で生じ、抗原のエピトープと
受容体の抗体結合部位との特異的相互作用である。
【0023】受容体の生物活性は、免疫反応体を形成す
る水性媒体中の混合物で少くとも生理学的pH値および
イオン強度における受容体とその抗原リガンドとの免疫
反応により立証される。好ましくは、生物活性は生物検
定条件下に生ずる。すなわち、その条件で、本発明の受
容体は約5〜約9のpH値範囲内で、例えば蒸留水ない
し約1モルの塩化ナトリウムのイオン強度で抗原リガン
ドに結合する。受容体は抗原に特異的に結合できる抗原
結合部位を含む。受容体には抗体のFab、Fab′、F
(ab′)2およびF(v)ポリペプチド部分、並びに抗体
および実質的な全抗体が含まれる。抗体のFabおよびF
(ab′)2部分はよく知られ、よく知られた方法による実
質上無傷の抗体の、それぞれパパインおよびペプシンの
タンパク質分解反応により製造される例えばセオフロ
ポラウスほか(Theofilopolous and Dixon)に対する米
国特許第 4,342,566号参照。Fab′抗体タンパク質もま
たよく知られ、F(ab′)2部分から、次に2重鎖タンパ
ク質を結合するジスルフィド結合の例えばメルカプトエ
タノールにより還元し、次いで生じたタンパク質メルカ
プタンを試薬例えばヨードアセトアミドによりアルキル
化することにより生成される。無傷完全抗体が好まし
く、本発明の単クローン性または他の受容体の例として
利用される。
【0024】「分泌する」および「生成する」という語
はしばしば抗体分子が得られる細胞に関して同義に使用
される。しかし、抗体を生ずる細胞はその環境中へそれ
らの分子を分泌しない。関心のハイブリドーマ細胞はそ
れらの環境中へ単クローン性抗体を分泌する。しかし、
そのような細胞はしばしば「抗体生成」細胞として示さ
れ、それらの抗体は技術的に利用される用語に従って
「生成された」と示される。用いた「合成」という語は
ポリペプチド分子またはポリペプチド反復単位が、生物
手段により例えば遺伝子工業技術により製造されるより
むしろ化学的手段すなわち化学合成により作られたこと
を意味する。従って、本発明の態様である合成ポリペプ
チドは天然存在タンパク質およびそのフラグメントを含
まない。
【0025】B.合成ポリペプチド 本発明の合成ポリペプチドは、図1およびベール(Bae
r) ほか、ネーチャー(Nature) 、310、207(1
984)のゲノム配列に帰属される位置を用いてそのア
ミノ末端から位置350位置362のEBV EA−
Dタンパク質のアミノ酸残基配列に相当するアミノ酸残
基配列を有する13〜40個のアミノ酸残基、より好ま
しくは13〜24個の残基から実質的になる。該合成ポ
リペプチドはEA−Dにより誘発された抗体を免疫結合
する能力を有する。好ましい実施において、ポリペプチ
ドは、結合体として免疫担体例えばキーホールリンペッ
トヘモシアニン(KLH)に結合させ、水性希釈剤中で
有効量を宿主哺乳動物例えばラット、マウス、ラビット
またはモルモット中へ導入すると結合体のポリペプチド
と免疫反応するだけでなく、また変性状態におけるEA
−Dと免疫反応する抗体の分泌を誘発できる。より好ま
しくは、それらの誘発された抗体は自生状態におけるE
A−Dと免疫反応する。従って、好ましい態様において
本発明のポリペプチドは自生EA−Dタンパク質の免疫
原および抗原の決定基を免疫学的に模擬することができ
る。
【0026】自生状態における典型的なEA−Dは体液
例えば急性IMの患者の血漿中に認められるタンパク質
である。変性状態における典型的なEA−Dは、SDS
−PAGEおよびウェスタンブロット分析に使用される
ような2−メルカプトエタノールで還元した後のタンパ
ク質である。好ましいアミノ酸残基配列には左から右
へ、アミノ末端からカルボキシ末端の方向にとって、式 −PARPETPSPAIPS− により表わされる配列、その薬学的に許容できる塩、お
よびその抗原関連変異体が含まれる。アミノ酸残基配列
の初めまたは末端におけるダッシュはそれぞれアミノ末
端およびカルボキシ末端における基例えばHおよびO
H、あるいは、さらにポリペプチド鎖中の合計40個ま
でのアミノ酸残基の1つまたはそれ以上のアミノ酸残基
の配列に対する結合を示している。
【0027】さらに、アミノ末端から位置350位置
362のEA−Dタンパク質のアミノ酸残基配列に相当
する少くとも13個のアミノ酸残基配列に加えて、ポリ
ペプチド中に存在できるアミノ酸残基の配列が、EA−
Dにより誘発された抗体に対する免疫結合におけるポリ
ペプチドの実質的特性が実質的に損なわなければ無関係
であることができることが理解される。より好ましく
は、ポリペプチドおよび前記の少くとも変性されたEA
−Dと免疫反応する抗体の誘発における特有免疫原性も
また実質的に損なわれない。最も好ましくは、ポリペプ
チドはEA−Dタンパク質分子の前記位置に等しい1つ
またはその以上のアミノ酸残基配列から実質的になる。
前記EA−Dの配列に等しい複数のアミノ酸残基配列を
含む最も好ましいポリペプチドはここに「ポリペプチド
オリゴマー」として示される群内にあり、以下に論議さ
れる。
【0028】殊に好ましいポリペプチドは左から右へ、
アミノ末端からカルボキシ末端の方向にとって、式、 H−PARPETPSPAIPS−OH により表わされる配列、その薬学的に許容できる塩およ
びその抗原関連変異体に相当するアミノ酸配列を有す
る。図1を参照することにより知見できるように、前記
ポリペプチドはベール(Baer) ほかのゲノム配列を基に
したEA−Dの位置350〜362の配列に等しいアミ
ノ酸残基配列を有する。
【0029】本発明のポリペプチドはポリペプチド当業
者に知られている任意の技術により合成することができ
る。そのように利用できる多くの技術の優れた概要はス
チュワードほか、(J. M. Steward and J. D. Young)、
「固相ペプチド合成(SolidPhase Peptide Synthesi
s)、W. H. フリーマン社(W. H. Freeman Co., San Fra
ncisco) 、1969;固相ペプチド合成に対するマイン
ホーフェル(Meinhofer)、「ホルモンタンパク質および
ペプチド(Hormonal Proteins and Peptides) 」、2
巻、46頁、アカデミック・プレス(Academic Press、
New York)、1973;および古典的溶液合成に対する
シュローダーほか、(E. Schroder and K. Kubke)、「ペ
プチド(The Peptides) 、1巻、アカデミック・プレス
(Academic Press、New York)、1965、に見出すこ
とができる。一般に、これらの方法は1つまたはそれ以
上のアミノ酸または適当に保護したアミノ酸の成長ペプ
チド鎖に対する逐次的付加を含む。通常、第1アミノ酸
残基のアミノ基またはカルボキシ基は適当な選択的に除
去できる保護基により保護される。異なる選択的に除去
できる保護基が反応性基を含むアミノ酸例えばリシンに
利用される。
【0030】例として固相合成を用いると、保護または
誘導体化したアミノ酸をその非保護カルボキシルまたは
アミノ基により不活性固体支持体に結合させる。アミノ
またはカルボキシル基の保護基を次に選択的に除去し、
適当に保護された相補性(アミノまたはカルボキシル)
基を配列中に有する次のアミノ酸を混合し、既に固体支
持体に結合した残基とアミド結合の形成に適する条件下
に反応させる。次いでアミノ基またはカルボキシル基の
保護基をこの新たに加えたアミノ酸残基から除去し、次
いで同様に次のアミノ酸(適当に保護された)を付加さ
れる。所望のアミノ酸をすべて適当な配列に結合させた
後、残存端および側基保護基(並びに固体支持体)を逐
次または同時に除去すると最終ポリペプチドが得られ
る。確認された全アミノ酸残基は天然のL配置にある。
標準ポリペプチド命名法〔ジャーナル・オブ・バイオロ
ジカル・ケミストリー、243、3557〜59(19
69)〕に従って、アミノ酸残基に対する略号は次の対
応表に示されるとおりである。
【0031】
【表1】 対 応 表 記 号 アミノ酸 1文字 3文字 Y Tyr L−チロシン G Gly L−グリシン F Phe L−フェニルアラニン M Met L−メチオニン A Ala L−アラニン S Ser L−セリン I Ile L−イソロイシン L Leu L−ロイシン T Thr L−トレオニン V Val L−バリン P Pro L−プロリン K Lys L−リシン H His L−ヒスチジン Q Gln L−グルタミン E Glu L−グルタミン酸 Z Glx L−グルタミン酸またはL−グルタミン W Trp L−トリプトファン R Arg L−アルギニン D Asp L−アスパラギン酸 N Asn L−アスパラギン B Asx L−アスパラギン酸またはL−アスパラギン C Cys L−システイン
【0032】C.ポリペプチド重合体本発明では 、少くとも2つの反復単位が前記本発明のポ
リペプチドである複数の結合した合成ポリペプチド反復
単位を含む合成ポリペプチドオリゴマーとしてもよい
そのようなオリゴマーは合計13〜40個のアミノ酸残
基、より好ましくは25〜40個の残基を含む。個々の
反復単位は、2つのポリペプチド反復単位が存在する場
合に長さで13〜34残基であることができ。前記の
ように、より好ましくはすべての反復単位が本発明のポ
リペプチドであるだけでなく、またアミノ酸残基配列が
EA−Dの配列に等しいポリペプチドである。本発明の
ポリペプチドオリゴマーはまたEA−Dにより誘発され
た抗体に免疫結合する能力を有することに特徴がある。
より好ましくはポリペプチドオリゴマーは、さらに免疫
原担体例えばKLHに結合させ、水性希釈組成物で前記
宿主哺乳動物中へ導入するとEA−Dに免疫結合する抗
体の分泌を誘発する能力を有することに特徴がある。
【0033】殊に好ましいポリペプチドオリゴマーは、
複数の、左から右へ、アミノ末端からカルボキシ末端の
方向に、式、 −PARPETPSPAIPS− により表わされるアミノ酸残基配列を有する本発明の殊
に好ましい合成ポリペプチドを含む。対応表の3文字略
号を用いると、上記ポリペプチドはまた式、 −ProAlaArgProGluThrProSerProAlaIleProSer− により表わすことができる。従って、本発明のオリゴマ
ーポリペプチドはそれらの成分ポリペプチドと同様に、
ヒト抗EA−D抗体に対して抗原性であり、前記のよう
に、より好ましくは免疫原性である。従って、それらの
オリゴマーポリペプチドは後記診断法および系に有用で
ある抗EA−D抗体の生成の誘発に使用することがで
き、また適当な診断法および系中に抗原として使用する
ことができる。
【0034】全オリゴマーポリペプチド中に約35個よ
り少いアミノ酸残基を含むオリゴマーは、典型的には免
疫原として使用するために免疫原担体例えばKLHに結
合させる。合計約35個以上のアミノ酸残基を含むオリ
ゴマーポリペプチドは典型的には担体なく使用するのに
十分な免疫原性である。オリゴマーポリペプチドは前記
固相法を用いて頭−尾のように合成ポリペプチド単量体
を互いに結合させることにより製造することができ、す
なわち、1つの完全なポリペプチド配列を樹脂上に、次
いで1つまたはそれ以上の同一または異なるポリペプチ
ド配列を合成し、その後全オリゴマー単位を樹脂から開
裂してここに記載したように用いる。このような頭−尾
ポリペプチド多量体は、好ましくは約2〜約5個のポリ
ペプチド反復単位を含む。あるいは、ポリペプチドオリ
ゴマーを次に詳細に記載するように単量体、すなわち反
復単位、として用いた合成ポリペプチドの重合体として
製造することができる。そのような目的に対する典型的
な連鎖停止剤は2−メルカプトエタノール、チオグリコ
ール酸およびチオプロピオン酸である。
【0035】D.ポリペプチド重合体 用いた「ポリペプチド重合体」という語は種々の文法形
態で複数の本発明の合成ポリペプチドを反復単位として
含む分子として示される。それらのポリペプチド反復単
位はポリペプチド結合以外により互いに結合され、その
重合体は約100個以上のアミノ酸残基を含む。し違っ
て、本発明の重合体は、水性組成物中に約5〜約9のpH
値で、好ましくは約6.5〜約7.5のpHで分散性であれ
ば、約10,000またはそれ以上の見掛け分子質量、M
r、を有する。ポリペプチド反復単位は同一かまたは異
なることができ、重合体中に存在する他のポリペプチド
がEA−Dにより誘発された抗体と重合体との免疫反応
を実質的に妨害または異なるような抑制をしない、すな
わち重合体の抗原性を妨害しない限り、本発明のアミノ
酸残基配列以外の1つまたはそれ以上の他の配列を含む
ことができる。重合体中の本発明のポリペプチド以外の
ポリペプチドの存在もまた、好ましくは重合体の免疫原
性を実質的に抑制しない。
【0036】ポリペプチド重合体(合成多量体)は、典
型的には高い免疫原性および抗原性である利点を有す
る。さらに、重合体免疫原を用いるとき典型的には担体
を必要としない。異なるポリペプチド単量体を重合体の
製造に用いる場合には、若干のEA−D抗原決定基に対
する抗体と免疫反応する能力が得られる。なお他の利点
は、接種材料中に用いるとEA−Dの若干の抗原決定基
を免疫反応する抗体を誘発する重合体の能力である。本
発明の典型的な重合体は、アミノ末端およびカルボキシ
末端の両方に付加したシステイン残基を含む本発明のポ
リペプチド単量体(ジCysポリペプチド)を用いて合成
することができる。ジCysポリペプチド単量体は酸化操
作を用いる分子内、ポリペプチド間システインジスルフ
ィド結合により互いに結合させ、免疫原性、抗原性重合
体を形成させることができる。そのように製造されたポ
リペプチド単量体は複数の、本発明の合成ポリペプチド
を反復単位として含む。それらの反復単位は前記酸化さ
れたシステイン(シスチン)残基により互いに結合され
る。
【0037】担体にポリペプチドを結合させる目的、ま
たはポリペプチド重合体の製造に対する本発明のポリペ
プチド中の1つまたは2つの末端Cys残基の存在は本発
明のポリペプチドのアミノ酸残基配列を変えるとは解さ
れない。殊に好ましいポリペプチド重合体は、左から右
へ、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に、式、 −PARPETPSPAIPS− により表わされるアミノ酸残基配列を有する本発明の殊
に好ましい合成ポリペプチドを複数含む。従って、本発
明の合成多量体ポリペプチドは、それらの成分ポリペプ
チドと同様に、ヒト抗EA−D抗体に対して抗原性であ
り、前記のように一層好ましい免疫原性である。従っ
て、それらの合成多量体ポリペプチドは、後に論議する
診断法および診断系に有用な抗EA−D抗体の生成の誘
発に使用でき、また適当な診断法および診断系中に抗原
として使用できる。
【0038】E.接種物 もう1つの実施態様に於て、本発明のポリペプチドを薬
剤学的に受容可能な水性希釈剤組成物中で用いて、有効
量で投与するときEA−Dと免疫反応する抗体を誘発す
る能力のある接種物を形成する。種々の文法上の形に於
ける“接種物(inoculum)”という用語は、本明細書中
ではEA−Dに対する抗体の調製に用いられる活性成分
として本発明のポリペプチドを含む組成物を記載するた
めに用いられる。ポリペプチドを抗体の誘導に用いる場
合、ポリペプチドは免疫原担体に結合させて、あるいは
担体なしまたは担体に結合させたオリゴマーポリペプチ
ドとして、あるいはポリペプチドとして用いることがで
きるが、表現が容易なために本明細書中では本発明のポ
リペプチドの種々の実施態様を一括的に“ポリペプチ
ド”およびその種々の文法上の形で呼ぶと理解されるべ
きである。約35個より少ないアミノ酸残基を含むポリ
ペプチドでは、既述のような抗体産生を誘導するために
免疫原担体を用いることが好ましい。
【0039】これはまた既述したように、1個以上の追
加のアミノ酸残基を合成ポリペプチドのアミノ末端また
はカルボキシ末端へ付加してポリペプチドの担体への結
合を助けることができる。合成ポリペプチドのアミノ末
端またはカルボキシ末端に付加されたシステイン残基は
ジスルフィド結合によるポリマーの生成に特に有用であ
ることが見いだされた。しかし、結合物調製のための技
術上公知の他の方法を用いることもできる。典型的な付
加結合方法はミカエル(Michael)付加反応生成物、グル
タルアルデヒドのようなジアルデヒドの使用、クリプス
タイン(Klipstein)ら、J. Infec. Dis., 147、31
8326(1983)など、あるいは前に論じたように
複数のポリペプチドを一緒に結合して合成マルチマーを
生成させるため、免疫原担体へアミド結合を生成するた
めに水溶性カルボジイミドの使用に於けるようなカルボ
ジイミド技術の使用を含む。
【0040】有用な免疫原担体は技術上公知であり、一
般に蛋白質自体である。かかる担体の典型例はスカシガ
イのヘモシアニン(KLH)、エデスチン、チログロブ
リン、牛血清アルブミン(BSA)またはヒト血清アル
ブミン(HSA)のようなアルブミン、羊赤血球(SR
BC)のような赤血球、テナヌストキソイド、コレラト
キソイドならびにポリ(D−リシン:D−グルタミン
酸)のようなポリアミノ酸である。これはまた技術上公
知であるように、合成ポリペプチドを中間結合基によっ
てその担体へ結合させることがしばしば便利である。し
かし、システインを用いる場合、中間結合基は本明細書
中で用いたように好ましくはm−マレイミドベンゾイル
−N−ヒドロキシスクシンイミド(MBS)である。
【0041】さらに、リウ(Liu)ら、Biochem.、80、
690(1979)によって記載されているようにエス
テル−アミド交換反応によってMBSを最初に担体へ付
加させることができる。その後で、この付加の次にアレ
イミド二重結合にわたってチオール酢酸(CH3COSH)のよ
うな封鎖メルカプト基の付加を行うことができる。アシ
ル封鎖基の分離後、脱封鎖結合基メルカプタンと合成ポ
リペプチドの付加システイン残基のメルカプタンとの間
にジスルフィドを結合を生成させる。担体の選択は免疫
原の抗原決定基部分よりも免疫原の最終使用の方により
依存しており、本発明に特別に含まれてはいない基準に
基づいている。例えば特別な非ヒト宿主(受容体)動物
に不都合な反応を生じない担体を選ぶべきである。
【0042】本発明の接種物は、本発明のポリペプチド
の有効免疫原量を、オリゴマーポリペプチドとして、あ
るいは酸化されたポリペプチド末端システイン残基によ
って一緒に結合された個々のポリペプチドのポリペプチ
ドポリマーとして、あるいは担体へ結合された結合物と
して含む。単位用量当たりのポリペプチドの有効量は、
特に、接種される動物の種、動物の体重および技術上公
知のように選ばれた接種方法に依存する。接種物は1回
の接種(量)につき約10μg−約500μgのポリペ
プチド濃度を含む。ここに挙げたポリペプチド量は、担
体を用いる場合には、担体の重量を含まないポリペプチ
ドの重量を意味する。特別な典型的接種物は、担体+ポ
リペプチド(結合物)の重量が示される下文に記載され
る。“単位用量”という用語は動物に対する1回投与量
として適当な物理的に別個の単位を意味し、各単位は所
望の治療効果を生ずるように計算された活性物質の所定
量を、所要な希釈剤、すなわち担体またはビヒクルと共
に含む。本発明の新規単位用量の規格は、本明細書中で
詳細に記載したような、かつこれらが本明細書の特徴で
ある(a) 活性物質の独特な特性および達成されるべき特
別な免疫学的効果と、(b) かかる活性物質を動物に於け
る免疫学的使用のために配合する技術に固有の制限によ
って指令されかつこれらに直接依存する。
【0043】接種物は、典型的には乾燥固体ポリペプチ
ド−結合物は、オリゴマーポリペプチドまたはポリペプ
チドポリマーから、ポリペプチド−結合物またはポリペ
プチドポリマーを、公知のように水、食塩水、燐酸塩緩
衝食塩水などのような生理学的に許容できる(受容可能
な)希釈剤中に分散させて水性組成物を生成させること
によって調製される。接種物は希釈剤の部分としてアジ
ュバントをも含むことができる。フロイントの完全なア
ジュバント(CFA)、フロイントの不完全アジュバン
ト(IFA)および明礬のようなアジュバントが技術上
公知であり、幾つかの供給源から市販されている。
【0044】F.レセプター 本発明のポリペプチドによって誘導される(に対して産
生される)抗体および実質的に全部の抗体ならびにかか
る抗体から調製される抗体結合部位は本発明のさらにも
う1つの実施態様を構成する。これらの分子を本明細書
中では一括的にレセプターと称する。レセプターは、上
で説明した接種物を用いる免疫処置によってマウス、ウ
サギ、ヤギ、モルモット、ウマなどのような哺乳類宿主
中で産生される。モノクローン形の適当なレセプター、
典型的には全抗体は、ナイマン(Niman)ら、Proc. Nat
l. Sci. U.S.A. 、80、4949−4953(198
3)によって記載(この記載は参照文として本明細書に
含まれるものとする)されたハイブリドーマ技術を用い
て調製することもできる。要するに、モノクローンレセ
プターがそれから産生されるハイブリドーマを生成させ
るために、骨髄腫または他の自己永続性細胞系を本発明
のポリペプチドで過免疫処置された哺乳動物の脾臓から
得られるリンパ球と融合させる。
【0045】骨髄腫細胞系はリンパ球と同じ動物種から
のものであることが好ましい。典型的には、株129G
lX′のマウスが好ましい哺乳動物である。本発明に用い
るために適当なマウス骨髄腫はアメリカンタイプカルチ
ャーコレクション(AmericanType Culture Collectio
n)、(メリーランド州ロックビル市)からそれぞれC
RL1580およびCRL1581の名称で入手できる
ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン−感受性
(HAT)細胞系P3×63−Ag 8.653およびSp
2/0 −Ag 14を含む。典型的には、ポリエチレングリ
コール(PEG)1500を用いて脾細胞を骨髄腫細胞
と融合させる。融合したハイブリッドをそのHATに対
する感受性で選択する。本発明のハイブリドーマ分泌レ
セプター分子は本明細書中で説明した酵素結合免疫吸着
剤検定(ELISA)を用いて同定される。レセプター
としてのモノクローン抗体はハイブリドーマ上澄液から
得られる必要があるばかりでなく、所望のハイブリドー
マをその中へ導入してある哺乳動物の腹水から一般によ
り濃厚な形で得ることもできる。腹水を用いるモノクロ
ーン抗体の調製は公知であるので、ここではそれ以上取
り扱わないことにする。
【0046】本発明のレセプターはレセプターがそれに
対して産生されたポリペプチドへ結合すると共に、本発
明のポリペプチドが免疫学的に模倣する対応するEA−
D抗原決定部位にも結合する。かくして、本発明のポリ
ペプチドは免疫原と抗原との両方であることができる。
本発明のポリペプチドによって誘導され、かつオリゴマ
ーポリペプチドおよびポリペプチドポリマーを含む本発
明のレセプターは、無傷のEA−Dによって模倣される
エピトープに比べて比較的少ないエピトープを有する免
疫原(比較的小さいポリペプチド)に対して産生される
ので、天然産多クローン性抗体に比べてオリゴクローン
性であるとして記載することができる。結局、本発明の
レセプターはポリペプチドのエピトープに結合するが、
全EA−D分子に対して産生される天然産抗体はEA−
D分子全体にわたるエピトープに結合し、多クローン性
であると言われる。
【0047】F.検定方法およびキット 1.抗EA−D抗体の検定 本発明の合成ポリペプチドは、血液、血清または血漿の
ような液体試料中の抗EA−D抗体の存在および量の検
定のために特に有用である。1つの実施態様に於て、本
発明は下記工程からなる抗EA−D抗体の存在について
の体液試料の検定方法を意図する。 (a) 被検定体液試料を提供する工程。典型的にはかかる
試料は既知量の血液として、より好ましくは血清または
血漿として提供される。血液、血漿および血清試料を提
供する方法は技術上公知であり、ここではこれ以上論じ
ない。 (b) EA−D蛋白質の350位から362位までのEA
−D蛋白質のアミノ酸残基配列にほぼ相当するアミノ酸
残基配列を有する本質的に13−40個のアミノ酸残基
からなる合成ポリペプチドであって、EA−Dによって
誘導される抗体によって免疫学的に結合される能力を有
する合成ポリペプチドを提供する工程。
【0048】(c) 該体液試料を該ポリペプチドと混合し
て免疫反応混合物を生成する工程。 (d) 試料中に存在する抗EA−D抗体がポリペプチドと
免疫学的に結合して第1免疫反応体(immunoreactant)
を生成するのに十分な約4℃−約45℃の温度に於て約
10分から約16−20時間までのような所定時間生物
学的検定条件下で混合物を保持する工程。生物学的検定
条件とは本発明のポリペプチド分子および検定しようと
する抗EA−D抗体の生物活性を保持する条件であっ
て、約4℃−約45℃の温度範囲、約5−9のpH値範囲
および蒸留水から約1モルの塩化ナトリウムまでにわた
るイオン強度を含む。かかる条件の最適化方法は技術上
公知である。 (e) 生成された免疫反応体(immunoreactant)の存在、
それによって免疫反応混合物中に於ける抗EA−D抗体
の存在を検定する工程。抗EA−D含有免疫反応体の存
在の直接または間接的検定は技術上公知の検定技術で達
成される。例えば、米国特許第 4,536,479号、第 4,23
3,401号、第 4,233,402号、第 3,996,345号に記載(こ
れらの記載は参照文として本明細書に含まれるものとす
る)されているような均一検定システムを用いることが
できる。
【0049】好ましい実施態様に於ては、工程(e) によ
る検定のために、工程(d) の第1免疫反応体は下記の工
程によってさらに調製される。 (i)第1免疫反応体中に存在するヒト免疫グロブリン
に結合する生物学的に活性な標識された特異結合剤、好
ましくは受容体を混合して複合体、好まし くは標識さ
れた第2免疫反応体を生成させる工程。より好ましく
は、標識され た特異結合剤は免疫グロブリンクラス特
異性であり、すなわち結合剤は以下に 説明するよう
に、IgG、IgMまたはIgAクラスの免疫グロブリ
ンと特異 的に免疫反応する能力がある。標識された特
異結合剤は複合体中の特異結合剤 の存在を信号で知ら
せる能力がある。 (ii) こうして生成された標識された特異結合剤/第1
免疫反応体混合物を、標識された特異結合剤が第1免疫
反応体として存在するEA−D抗体と複合体を生成する
のに十分な所定時間の間生物学的検定条件下に保持する
工程。
【0050】抗EA−D抗体を含む第2免疫反応体の部
分として結合される標識された特異結合剤の存在の検定
は試料中の抗EA−D抗体の存在の決定を提供する。好
ましい実施態様に於ては、複合体の部分として結合され
た標識された第2特異接合剤の量が測定され、それによ
って試料中の抗EA−D抗体の量が決定される。その量
は零であることがあり、それによって検知され得る限界
内で試料中に抗EA−D抗体が存在しないことを示すこ
とがあり得る。標識された特異結合剤の存在および量の
検定方法を用いられる標識に依存し、かかる標識および
検定方法は技術上公知である。全抗体の形の受容体のよ
うな蛋白質特異結合剤の標識は技術上公知である。例え
ば、ハイブリドーマによって産生される受容体は組織培
地中の成分として提供される放射性同位体含有アミノ酸
の代謝的結合によって標識され得る。例えばガルフレ
(Galfre) ら、Meth. Enzymol.73、3−46(198
1)参照。活性化官能基による蛋白質結合(conjugatio
n)またはカップリングの技術は特に適用可能である。例
えば、アウラミーズ(Aurameas) ら、Scand. J. Immuno
l. Vol. 8、Suppl.7、7−23(1978)および米
国特許第 4,493,795号(これらの記載は参照文として本
明細書に含まれるものとする)参照。さらに、標識が第
受容体とその標的抗原との免疫反応をほとんど妨害し
ないように部位指示カップリング(site-directed coupl
ing)反応を行うことができる。例えば、ロッドウエル
(Rodwell)ら、Biotech.3、889−894(198
5)参照。
【0051】標識手段は抗体または抗原にそられを変性
することなく化学的に結合して有用な免疫螢光トレーサ
ーである螢光色素(染料)を生成する螢光標識剤である
ことができる。適当な螢光標識剤はフルオレッセインイ
ソシアネート(FIC)、フルオレッセインイソチオシ
アネート(FITC)、5−ジメチルアミン−1−ナフ
タレンスルホニルクロリド(DANSC)、テトラメチ
ルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、リサ
ミン、ローダミン8200スルホニルクロリド(RB
200SC)などのような螢光色素である。免疫螢光分
析技術の説明はマーチャロニス(Marchalonis)ら編著、
アンティボディアズアトゥール(Antibody As A Tool)
〔ジョンウィリーアンドサンズ(John Wiley & Sons)、
Ltd.、pp189−231(1982)〕中のデルカ(De
Luca)、“免疫螢光分析(Immuno-Fluorescence Analysi
s)”中に記載されている(この記載は参照文として本明
細書に含まれるものとする)。
【0052】好ましい実施態様に於て、指示基はワサビ
大根ペルオキシダーゼ(HRP)、ブドウ糖酸化酵素な
どのような酵素である。主指示基がHRPまたはブドウ
糖酸化酵素のような酵素である場合には、受容体−配位
子複合体(免疫反応体)が生成した事実を目に見えるよ
うにするため追加試薬が所要である。HRP用のかかる
追加試薬には過酸化水素およびジアミノベンジジンのよ
うな酸化染料前駆物質が含まれる。ブドウ糖酸化酵素に
ついて有用な追加試薬は2,2′−アジノジ−(3−エ
チルベンズチアゾリンG−スルホン酸)(ABTS)で
ある。放射性元素も有用な標識剤であり、ここに実例的
に用いられる。典型的な放射性標識剤はγ線放出を生ず
る放射性元素である。それ自体がγ線を放出する
124I、 125I、 128I、 131I、 132I、51Crはγ
線放出生起性放射性元素指示基の1つのクラスを示す。
125Iが特に好ましい。有用な標識手段のもう1つの群
は、それら自体が陽電子を放出する11C、18F、15O、
13Nのような元素である。そのように放出された陽電子
は動物体内に存在する電子と遭遇するときγ線を生成す
る。 111Inまたは 3Hのようなβ線放出体も有用であ
る。
【0053】本発明の検定方法およびキットは固体担体
を形成するための固体マトリックスに結合された本発明
の抗原または受容体を利用することができる。抗原また
受容体は、典型的には水性媒質すら吸着によって固体
マトリックスへ結合されるが、幾つかの吸着様式ならび
に当業者に公知の他の結合様式を用いることができる。
かかる様式の典型例は架橋されたデキストロースまたは
セルロースのようなブドウ糖含有マトリックスと臭化シ
アンとの反応によって生成される反応性カルボキシル官
能基と受容体または抗原との反応、ラテックス粒子と共
に後述するようなグルタルアルデヒド結合などである。
有用な固体マトリックスは技術上公知である。かかるマ
トリックスには、ファーマシアファインケミカルズ(Ph
armacia Fine Chemicals)(米国ニュージャージー州ピ
スカタウェイ市)からセファデックス(SEPHADEX)の商
標で発売されている架橋デキストラン;アガロース(ag
orse);米国イリノイス州ノースシカゴのアボットラボ
ラトリーズ(Abbott Laboratories)から発売されている
直径約1μm−約5mmのポリスチレンビーズ;シート、
ストリップまたはパドルのようなポリ塩化ビニル、ポリ
スチレン、架橋ポリアクリルアミド、ニトロセルロース
またはナイロン−ベースのウェブ;ガラス;あるいはポ
リスチレンまたはポリ塩化ビニル製のようなミクロタイ
タープレートの管、プレートまたはウェルが含まれる。
【0054】凝集型検定に有用なラテックス粒子も有用
な固体マトリックスである。かかる物質は日本合成ゴム
会社(Japan Synthetic Rubber Company of Tokyo, Jap
an)から発売されており、陰イオン性石けん中に分散さ
れたカルボキシ官能性粒子として記載されている。かか
る粒子の典型的なロットは0.308μmの平均直径を有
し、カルボキシ基1個につき約15−約30A2 の平均
カルボキシ官能基分布を有する。使用する前に、粒子を
1,3−ジアミノ−3−プロパノールのようなジアミン
と反応させて遊離アミノ基を保持しながら粒子カルボキ
シ基と複数のアミド結合を生成させる。その後で、遊離
アミンをグルタルアルデヒドのようなジアルデヒドおよ
受容体または抗原と反応させてシッフ塩基反応生成物
を生成させる。その後で、シッフ塩基反応生成物を硼水
素化ナトリウムのような水溶性還元剤で還元して有用な
固体担体を提供する。本発明で利用することができる数
多くの免疫検定法があることを当業者は理解するであろ
う。しかし、抗EA−D抗体と本発明のポリペプチドと
の反応によって与えられる信号をもたらすどんな方法で
も意図される。
【0055】さらに、特に記載した検定キットおよび方
法は固相を利用するが、本発明はそれに限定されるもの
ではない。これらの検定方法のおのおのは指示手段が免
疫反応、かつそれによって検定されるべき抗体と本発明
のポリペプチドとの結合の信号を出すために利用され
る。模範的な技術はマギオ(Maggio)、エンザイムイムノ
アッセイ(Enzyme Immunoassay) CRCプレス(米国オ
ハイオ州クリーブラント市)(1981)、およびゴー
ルドマン(Goldman)、フルオレッセントアンティボディ
メソッド(Fluorescent Antibody Methods)、アカデミ
ックプレス(Academic Press)(米国ニューヨーク州ニ
ューヨーク市)(1988)中に説明されている。
【0056】2.抗EA−D抗体を検定するための診断
キット 本発明の抗EA−D抗体検定法を行うために有用な診断
キットは、別個の包装で(a) EBA EA−D蛋白質の
アミノ末端から350位から362位までのEBV E
A−D蛋白質のアミノ酸残基配列に実質的に相当するア
ミノ酸残基配列を有しかつ13−40個のアミノ酸残基
を有する合成ポリペプチドと(b) 該ポリペプチドと抗E
A−D抗体の免疫反応の信号を出すための標識された特
異結合剤とを含む。好ましくは、標識された特異結合剤
は酵素に結合した受容体である。好ましい実施態様に於
ては、キットはポリペプチドがそれに結合して固体支持
体を形成する固体マトリックスをも含む。有用な固体マ
トリックスは既に記載してある。しかし、好ましくは、
固体マトリックスはミクロタイタープレートのウェルで
ある。最も好ましくは、固体支持体は固体マトリックス
に結合した既知量のポリペプチドで提供される。
【0057】好ましい実施態様に於ては、陽性の対照と
して用いるための本発明のポリペプチドに対して産生さ
れる抗体をも含む。既知量のポリペプチドおよび標識さ
れた特異結合剤が提供される。これらの量は1回の検定
を行うために少なくとも十分な量である。ポリペプチド
および標識された特異結合剤は、典型的には、以下に記
載されるように、水、食塩水または緩衝液で所定容量に
希釈するように設計される形および量で提供される。
ットは追加の包装をも含むことができる。かかる包装は
(i)乾燥形または液状の緩衝塩(ii)o−フェニレン
ジアミンのような酵素基質などを含むことができる。
【0058】3.EA−Dの検定 本発明は体試料中に於けるEA−Dの存在の検定方法を
も意図している。一般に、アセトンまたはメタノール固
定によって溶解された溶解末梢血液リンパ球(PBL)
のような被検体試料が提供される。試料は本発明の合成
ポリペプチドによって誘導される抗体結合部位を含む
容体と混合される。混合物は、受容体が体試料中に存在
するEA−Dと免疫反応するために十分な所定時間生物
学的検定条件下に保持される。次に、免疫反応の量(す
なわち生成した免疫反応体の量)を測定して被検体試料
中にEA−D分子が存在していたか不在だったかを決定
する。
【0059】4.EA−D検定用診断キット 上記検定方法を実施するために有用な診断キットは、別
個の包装で、(a) EA−Dと免疫反応する本発明の受容
と(b) 本発明の受容体とEA−Dとの免疫反応を信号
で示すための標識された特異結合剤とを含む。好ましい
実施態様に於ては、キットは、別個の包装で、受容体
反応するモルモット補体のような補体、抗免疫グロブリ
ン抗体またはS.アウレウス(S. aureus)コワン(cowa
n)株蛋白質Aのような増幅用試薬をも含む。これらの実
施態様では、増幅手段が本発明の受容体に結合すると
き、増幅手段に特異的に結合する能力がある。
【0060】ここで記載した診断キット受容体分子と
別個の指示手段ならびに上記増幅用試験は、溶液で、あ
るいは液状分散体として、あるいは実質的に乾燥した粉
末、例えば凍結乾燥形粉末として提供されることができ
る。指示手段が増幅用試薬とは別個の分子である場合に
は、指示手段を別個に包装することが好ましい。指示手
段が酵素である場合には、酵素の基質もキットの別個の
包装で提供することができる。前述の顕微鏡スライドの
ような固体マトリックス、1種以上の緩衝剤、アセトン
もこの診断検定キットの別個包装要素として含むことが
できる。診断キットに関連してここで述べた包装は診断
キットに於て通常用いられる包装である。かかる包装は
ガラスおよびプラスチック(例えばポリエチレン、ポリ
プロピレン、ポリカーボネート)のびん、バイアル、プ
ラスチックおよびプラスチック箔積層封筒などを含む。
【0061】本発明の最良の実施形式 下記の実施例は本発明を説明するためのものであって、
限定するためのものではない。 実施例1: ポリペプチドの合成 EA−D遺伝子を位置決定し、その解読枠を決定するた
め、EA−D蛋白質のアミノ末端の一部分を親和性精製
EA−Dを用いて順序付け(sequence)した。かくして
得られたアミノ酸残基配列をEBVゲノムの可能なアミ
ノ酸残基配列翻訳と、そっくりのものが見いだされるま
で比較し、それによって推定EA−Dおよびその解読枠
を同定した。その解読枠に基づいてEA−D蛋白質遺伝
子の翻訳されたアミノ酸残基配列を、ベール(Baer)ら、
ネーチャー(Nature) 301、207(1984)によ
って利用されたEBV株に対して図1に示す。上で得た
アミノ酸残基配列を用いて、翻訳された遺伝子の部分に
対応する一連の短い合成ポリペプチドを合成し、それら
の自生のEA−Dの抗原決定基を模倣する能力を試験し
た。これらのポリペプチドのアミノ酸残基配列およびE
A−D蛋白質中に於けるアミノ末端からのその配列の位
置を、下記第1表中に、アミノ末端からカルボキシ末端
への方向に、左から右へ示してある。
【0062】
【表2】 第 1 表 EA−D分子から誘導された合成ポリペプチド 名称 配 列 位 置1 K7 PARPETPSAIPSC2 350−362 K6 RKRTSSEARQKQKC2 379−391 K5 PKKVKQAFNPLIC2 393−404 K8 TVSPSPSPPPPPRTPC2 331−345 K9 SVAADSLAAALSLC 242−255 ─────────────────────1 ベール(Baer)ら、ネーチャー(Nature)、310、2
07(1984)に報告されているゲノム配列データか
ら翻訳、推定されたEA−D分子のアミノ末端からの位
置。2 カップリングの目的で付加されたカルボキシ末端シス
テインは同族EA−D蛋白質アミノ酸残基配列中には存
在しない。
【0063】上記の第1表中に示したポリペプチドはメ
リフィールド(Merrifield)ら、J.Am. Chem. Soc. 、
85、2149−2154(1963)およびホートン
(Houghton)ら、 Int. J. Pept. Prot. Res. 16、3
11−320(1980)中に記載されている固相法に
よって化学的に合成された。ポリペプチド合成の固相法
はベガバイオテクノロジーズ社(Vega Biotechnologie
s, Inc.,Tucson, Az)から市販されているベガモデル
250Cポリペプチドシンセサイザー(Vega Model 250
C Polypeptide Synthesizer)を用いて実施された。K9
以外のポリペプチドの場合には、システイン残基のカル
ボキシ末端へ付加して下記のように蛋白質担体へのカッ
プリングを助けた。全ポリペプチドの組成はアミノ酸分
析で確認した。上記固相法で本発明の合成ポリペプチド
を製造する場合、アミノ酸残基をカルボキシ末端残基か
らエステル結合によって樹脂(固相)に結合させた。ポ
リペプチドをCys残基によって担体へ結合させようとす
る場合あるいは末端Cys残基を経て重合させようとする
場合には、樹脂にエステル結合しているカルボキシ末端
残基としてそのCys残基を利用するのが便利である。
【0064】典型的には各付加アミノ酸のα−アミノ基
を第三ブトキシカルボニル(t−BOC)で保護した
後、成長しつつあるポリペプチド鎖中へ次のアミノ酸を
付加する。次に、そのt−BOC基を除去した後、成長
しつつあるポリペプチド鎖へ次のアミノ酸を付加する。
ポリペプチドの合成中には、反応性アミノ酸側鎖も保護
した。残りのアミノ酸残基のために次のような通常の側
鎖保護基を用いた。チロシンのためにはo−(p−ブロ
モベンジルオキシカルボニル);スレオニン、セリン、
アスパラギン酸、グルタミン酸のためにはo−ベンジ
ル;システインのためにはs−メトキシベンジル;ヒス
チジンのためにはジニトロフェニル;リシンのためには
2−クロロベンゾキシカルボニル;アルギニンのために
はトシル。
【0065】使用する前に、保護されたアミノ酸を適当
な溶媒から再結して薄層クロマトグラフィーで単一スポ
ットとする。カップリングは、典型的には初期N−末端
アミノ酸のミリ当量数より10倍モル過剰の保護アミノ
酸とジシロクヘキシルカルボジイミドの両方を用いて行
われた。両方の反応剤の2モル過剰も用いることができ
る。アスパラギンの場合には、等モル量のN−ヒドロキ
シ−ベンゾトリアゾールを保護アミノ酸へ付加し、ジメ
チルホルムアミドを溶媒として用いた。カップリング反
応はすべて、ギシン(Gisin)、Anal. Chem.Acta. 5
8、248−249(1972)のピクリン酸試験によ
って99%以上完全であった。所望のポリペプチドの製
造後、得られた保護ポリペプチドの一部分(約1g)を
2mlのアニソールで処理し、ドライアイス温度に於ける
反応器中へ約20mlの無水弗化水素を凝縮させた。得ら
れた混合物を4℃に於て約1時間攪拌して保護基を分離
し、ポリペプチドを樹脂から除去した。温度4℃に於
て、N2 流で弗化水素を蒸発させた後、残留物を無水ジ
エチルエーテルで3回抽出してアニソールを除去し、残
留物を真空乾燥した。真空乾燥物を5%酢酸水溶液(5
0ml3回)で抽出して遊離ポリペプチドを樹脂から分離
した。抽出物含有溶液を凍結乾燥してモノマー末酸化ポ
リペプチドを提供した。
【0066】実施例2: オリゴマーの製造 本発明の合成オリゴマーは、1つのポリペプチドのカル
ボキシ末端残基と第2のポリペプチドのアミノ末端残基
との間のアミド結合によって一緒に端−端(頭−尾)結
合される複数の本発明のポリペプチドの固相合成によっ
て製造することができる。かかる合成オリゴマーは好ま
しくは単一の長いポリペプチドオリゴマーとして合成さ
れるが、個々のポリペプチドとして合成し、これらをそ
の個々の合成の後で、1−(3−ジメチルアミノプロピ
ル)−3−エチル−カルボジイミド塩酸塩水溶液のよう
なカルボジイミド反応剤を用いて一緒に結合させること
ができる。単一ポリペプチド鎖として製造されたオリゴ
マー中に含まれるアミノ酸残基の全数は、約6個までの
本発明のポリペプチドが単一のポリペプチドとして合成
される単一の頭−尾オリゴマー鎖に結合され得るよう
に、好ましくは約40未満である。より好ましくは合成
頭−尾オリゴマーは結合した本発明の合成ポリペプチド
2−約4ブロックおよび全部で約40未満のアミノ酸残
基を含む。
【0067】実施例3: ポリマーの製造 本発明のポリペプチドポリマー(合成マルチマー)は、
実施例A記載のようにして、かつアミノ末端とカルボキ
シ末端の両方にシステイン残基を含む本発明のポリペプ
チドを合成して未酸化、還元形の“ジCys末端”ポリペ
プチドを生成することによって製造することができる。
合成後、典型的な実験室製造では10mgのジCysポリペ
プチド(未酸化形でシスティン残基を含む)を250ml
の0.1モル(M)炭酸アンモニウム緩衝液に溶解する。
この溶解したジCysポリペプチドを、次に、得られた溶
液を包囲常温で空気中で約18時間おだやかに攪拌する
ことにより、あるいはエルマン(Ellman) 試験〔エルマ
ン(Ellman),Arch. Biochem. Biophys.,82、70−7
7(1959)。〕で遊離メルカプタンが検出されなく
なるまで空気酸化する。かくして製造されたポリマーは
酸化システイン(シスチン)残基によって一緒に結合さ
れた合成ポリペプチド反復単位を複数個含む。かかるポ
リマーは、典型的に、頭−尾方式ならびに頭−頭および
尾−尾方式で一緒に結合したポリペプチド反復単位を含
む。すなわち2個のポリペプチド反復単位のアミノ末端
は、両ポリペプチド末端に於ける結合基は等しいので、
2個のカルボキシル末端ができるように単一シスチン残
基によって一緒に結合されることができる。
【0068】実施例4: 担体へのカップリング 合成ポリペプチドを、リウ(Liu)ら、Biochem.、80、
690(1979)に記載されている方法によって免疫
原性担体としてのスカシガイのヘモシアニン〔Keyhole
Limpet Hemocyanin(KLH)〕にカップリングさせた。要す
るに、4mgの担体を0.51mgのm−マレイミドベンゾイ
ル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルで活性化
し、次に5mgのポリペプチドとアミノ末端システインま
たはカルボキシ末端システインによって反応させて約1
0−約35重量%のポリペプチドを含む結合物を提供し
た。
【0069】 実施例5: 抗EA−D抗体のELISA検定 種々のEBV関連臨床症状を有する患者からの血清試料
を、下記のELISAを用いて抗EA−D抗体の存在に
ついて検定した。被検血清は、臨床的特徴と羊赤血球凝
集陽性(すなわちヘテロフィル)とに基づいて急性伝染
性単核症(IM)をもつと診断された患者からのもので
あった。IM診断を確かめるために、これらの患者から
の回復期血清を抗EBNA−1抗体および抗VCA(V
CA′)抗体について試験し、これらの抗体を含むこと
を発見した。異好性VCAおよびEBNA−1抗原に対
して指向される抗体が陰性である健康な個人から正常成
人血清を得た。VCA陰性(VCA- ) と呼ぶこの群は
多分一次EBV感染を受けていない。健常供給者の第2
群を陽性抗VCAおよび抗EBNA−1抗体力価をもっ
ていた。この第2対照群はVCA陽性(VCA+ )と呼
ばれ、多分以前にEBA暴露を受けている。
【0070】増加した回復期抗CMV抗体力価によって
決定される急性サイトメガロウィルス(CMV)感染を
有する患者からの血清も試験した。ショーグレン症候群
(SS)を有する患者から試験した血清は乾性角結膜
炎、口内乾燥症、陽性小唾液腺生検(スケールI−IVで
等級IV)、ならびに抗核抗原およびリウマトイド因子を
含む上昇した自己抗体力価を有していた。リウマトイド
関節炎(RA)を有するが関連したSS症状が無い患者
の血清も評価した。
【0071】合成ポリペプチドを、マトリックスとして
ミクロタイタープレートウェル(microtiter platewel
l)〔イムノロン(Immunolon)II;ダイナテクラボラト
リーズ社(Dynatech Laboratories. Inc., Alexandria,
VA)〕の壁に、各ウェルに10μg/mlのポリペプチド
を含む硼酸塩緩衝食塩水(BBS;200mM硼酸ナト
リウム、160mM NaCl、pH8.0)0.050mlを混合
することによって結合させた。この混合物を4℃に於て
約16時間保持した。プレートを転倒して振ることによ
って未結合ポリペプチドをウェルから分離した。残留非
特異結合部位を、次に、0.200mlの封鎖用溶液〔10
%の正常ヤギ血清(NGS)を含むPBS(10mMリ
ン酸ナトリウム、150mM、NaCl、pH7.3)〕を各ウ
ェル中で混合することよって封鎖した。かくして生成し
た混合物を吸湿チャンバー内で37℃に約90分間保持
した。次に、封鎖用溶液を、ウェルを転倒して振ること
によってウェルから除去し、かくして生成した固体支持
体を空気中で37℃に於て約1時間乾燥させた。
【0072】ポリペプチド被覆ウェル(固体支持体)の
おのおのに封鎖用溶液で1:20に希釈した0.200ml
の血清を混合して固−液相免疫反応混合物を形成させ
た。この混合物を25℃に於て約1時間保持した。次
に、0.05%のトゥイーン(Tween)20〔ポリオキシエ
チレン(30)ソルビタンモノラウレート〕〔シグマ
(Sigma)〕を含むBBSで3回洗浄することによって、
未結合物をウェルから分離した。生成した固相結合免疫
反応体の量を、10% NGSを含むBBSで1:10
00に希釈したワサビ大根ペルオキシダーゼ(HRP)
に結合したヒト免疫グロブリンクラス特異性抗体0.20
0mlを混合して第2固−液相混合物を形成することによ
って測定した。IgG抗体およびIgM抗体を検出する
ため、HRP結合マウス抗ヒトIgG抗体およびマウス
抗ヒトIgMモノクローン抗体〔それぞれオルトディア
グノスティックス社(Ortho Diagnostics, Raritan, N
J)〕を用いた。IgA抗体を検出するためには、HR
P結合ヤギ抗ヒトIgA〔キレガードアンドペリー社
(Kiregaard and Perry, Gaithersbury, MD)〕を用い
た。第2固/液相混合物を約25℃に於て約1時間保持
した。次に、上記のようにして5回洗浄することによっ
て未結合物を固相結合サンドイッチ(第2)免疫反応体
から分離した。
【0073】次に、HRP標識含有固相結合サンドイッ
チ(第2)免疫反応体の量を、メーカーの指示に従って
新たに調製した0.200mlのo−フェニレンジアミン
(OPD、シグマ)基質溶液を混合することによって検
出した。約25℃に於て約15−約30分間発色させ
た。次に、0.050mlの4N H2SO4 を各ウェル中に混
合することによって基質転化反応を停止させた。ダイナ
テクMR 6000(Dynatech MR6000)〔ダイナテクラ
ボラトリーズ社(Dynatech Laboratories, Inc.)〕ミク
ロタイタープレートリーダー(microtiter platereade
r)を用いて波長490nmに於ける混合物の光学密度を
測定した。IMおよび正常血清の抗EA−D抗体につい
ての結果を図2に示してある。固体マトリックスに結合
したポリペプチドK7を用いると、正常血清と比べてI
M患者の血清からはIgG、IgA、IgM抗体の明ら
かに高い結合が観察された。対照的に、合成ポリペプチ
ドK5、K8、K9は正常血清と比べてIM血清との増
加した免疫反応性を示さなかった。しかし、幾らかのI
M血清中にはポリペプチドK6に対する低免疫反応性が
存在した。
【0074】鼻咽頭癌(NPC)、EBV関連疾患、S
Sを有する患者からの血清も、正常血清と比べてポリペ
プチドK7との増加した免疫反応性を示した(図3)。
対照的に、乾性症状の無いRAを有する患者からの血清
は明らかな抗ポリペプチドK7活性を示さなかった。上
記ELISAを用いて時間経過研究も行った。4人のI
M患者から、患者がIM症状にかかっている期間中に得
た一連の試料を、ポリペプチドK7およびローデス(Rh
odes)ら、 J. Immunol., 134、211−16(19
85)のポリペプチドをそれぞれ固体マトリックスに結
合させて用い、抗K7抗体および抗EBNA−1抗体の
存在について試験した。図4に示したこれらの結果は、
抗EA−Dポリペプチド抗体がEBV感染の開始時に於
て抗EBNA−1抗体よりも高いレベルで生じることを
示す。かくして、本発明の検定方法はEBV関連疾患を
有する血清患者中に於ける本発明のポリペプチドに免疫
学的に結合する抗体を検出することができる。これらの
ポリペプチド反応性抗体はEBV感染の結果としてEA
−D蛋白質の対応する部分によって誘導されると考えら
れる。
【0075】実施例6: ポリペプチド濃度 ミクロタイタープレートウェル壁を被覆して固体支持体
を生成させるために用いられるポリペプチド含有溶液の
濃度を変える影響を試験した。BBS中に0.1、1.0、
10、100μg/mlのポリペプチドK7を含む溶液を
用いて、実施例5記載のようにウェル壁へポリペプチド
を結合させた。正常個人(VCA+ およびVCA- )お
よびIM患者からの血清を用い、実施例5に従って抗E
A−DIgM抗体を検出するためELISAを行った。
血清はすべて1:20希釈で用いた。この研究の結果は
図5のAに示してある。これらの結果は、試験したポリ
ペプチド濃度の範囲にわたって、各被検血清中で検出さ
れた抗EA−DIgM抗体の量はほとんど変化しないこ
とを示している。かくして、0.1μg/mlポリペプチド
のような低い濃度のポリペプチド溶液を用いて本発明の
ポリペプチドをミクロタイタープレートウェルの内壁へ
結合させて固体支持体を形成することができる。
【0076】実施例7: 試料希釈 実施例5のELISAに於ける被検体液試料の希釈の影
響を試験した。正常個人(VCA- およびVCA+ )な
らびにIM、NPC、SSを有する患者からの血清を前
述の封鎖用溶液で1:5、1:20、1:50、1:1
00に希釈し、実施例5記載のように検定した。この研
究の結果は図5のBに示してある。これらの結果は、試
料の希釈度の増加に伴う感度の減少が、約1:20の試
料希釈で横ばいになり始めることを示している。
【0077】実施例8: 抗EA−Dの検出 本発明の検定法の試料中に存在する抗EA−D免疫グロ
ブリンのクラスを識別する能力を試験した。このこと
は、第1表中に示したポリペプチドのおのおのを実施例
5のELISAに於ける固相結合抗原として用いること
によって達成された。第1表中のポリペプチドを、血清
試料中のIgG、IgM、IgA抗体と免疫反応する能
力について検定した結果を下記第2表に示す。
【0078】
【表3】 第 2 表 種々のポリペプチドへのIgG、IgM、IgA抗体の結合1 ペプチド2 試 料 K5 K6 K7 K8 K9 IgG R.S.3 0.006 0.002 0.002 0.000 0.000 22414 0.002 0.024 0.207 0.025 0.012 A.W.5 0.000 0.000 0.000 0.000 0.003 R.R.5 0.000 0.005 0.008 0.003 0.020 D.M.5 0.000 0.016 0.004 0.000 0.008 IgM R.S. 0.060 0.057 0.052 0.041 0.042 2241 0.357 0.298 0.540 0.558 0.314 A.W. 0.107 0.167 0.101 0.100 0.080 R.R. 0.144 0.083 0.070 0.081 0.047 D.M. 0.405 0.566 0.330 0.308 0.295 IgA R.S. 0.002 0.009 0.000 0.000 0.007 2241 0.015 0.018 0.296 0.021 0.021 A.W. 0.000 0.051 0.000 0.003 0.006 R.R. 0.018 0.034 0.000 0.002 0.025 D.M. 0.007 0.020 0.000 0.000 0.003 ──────────────────────
【0079】1 示した値は490nmの光の波長に於け
るBBSに対する光学密度の単位である。2 ポリペプチドK5、K6、K7、K8、K9は第1表
に示したアミノ酸残基配列を有する。3 臨床的に正常な個人からの血清で、以前にEBVに暴
露されていない(VCA- )。4 臨床的に急性EBV感染を有する患者からの血清(I
M)。5 前にEBVに暴露された臨床的に正常な個人からの血
清(VCA+ )。6 前にEBVに暴露されている(VCA+ )が上昇した
抗EA IgMレベルを有する(偽陽性)臨床的に正常
な個人からの血清。
【0080】上記の結果は、固体マトリックスに結合
(吸着などにより)して固体支持体を形成するポリペプ
チドK7は急性EBV感染を有する患者(#2241)
の血清中のIgG、IgM、IgA抗体と免疫反応する
能力があることを示す。さらに、EBVカプシド抗体に
対する抗体を含む(VCA+ )2人の臨床的に正常な個
人からの血清はK7と免疫反応せず、またEBVに対す
る前以ての検出可能な暴露が無い(VCA- )臨床的に
正常な個人からの血清もK7と免疫反応しなかった。特
殊な実施態様および実施例を含む以上の明細書は本発明
の説明のためのものであって、限定と取られるべきでは
ない。本発明の真の精神および範囲から逸脱することな
く数多くの他の種々の変化や変更を行うことが可能であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】公表されたEA−D遺伝子配列から1文字アミ
ノ酸残基略号を用いて、左から右へ、アミノ末端からカ
ルボキシ末端の方向にとったEA−Dタンパク質の完全
なアミノ酸残基配列を示す図である。
【図2】実施例5に記載されるポリペプチドK7を固相
標的として抗EA−D抗体ELISAを用いた正常固体
(正常)および感染性単核患者(急性IM)の血清中
の、それぞれ抗EA−D IgM、IgGおよびIgA
抗体に対する検定の結果を、各試料により光学濃度(O
D490)を生じた試料の数を抗体応答の頻度として示
すグラフである。
【図3】鼻咽頭癌(NPC)、シェーグレン症候群(S
S)、サイトメガロウィルス(CMV)感染患者および
正常提供者の血清の検定に実施例5のポリペプチドK7
ELISAを用いて得られた結果を示すヒストグラムで
ある。
【図4】急性IM患者の血清試料をELISAを用いて
検定した結果を示すグラフであり、Aは抗EA−D抗体
ELISAを用い、Bは抗EBNA−I ELISAを
用いた結果を示す。
【図5】抗EA−D IgM抗体ELISAにおける血
清希釈およびポリペプチド濃度の影響を示すグラフであ
り、AはペプチドK7の濃度、Bは血清希釈、のそれぞ
れの影響を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07K 14/05 C07K 14/05 (72)発明者 リチャード ホートン アメリカ合衆国 カリフォルニア州 92075ソラナ ビーチ フォード アベ ニュー 558

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.EBV EA−Dタンパク質の、そのアミノ末端か
    位置350位置362のアミノ酸残基配列に相当す
    る配列を有しかつ13〜40個のアミノ酸残基を有する
    合成ポリペプチドに対して生成され、EA−Dタンパク
    質と免疫反応できる抗体又はその抗体結合部位を含有す
    る部分。 2.溶解末梢血リンパ球から実質的になる体試料中のE
    A−Dの存在について検定する方法であって、 (a) 試料を、EBV EA−Dタンパク質の、そのアミ
    ノ末端から位置350〜 位置362のアミノ酸残基配列
    に相当する配列を有しかつ13〜40個のアミノ酸残基
    を有する合成ポリペプチドに対して生成された抗体又は
    その抗体結合 部位を含有する部分と混合して免疫反応混
    合物を形成する段階、 (b) 混合物を生物検定条件下に、試料中に存在するEA
    −Dが免疫反応体を形成する十分な予定時間維持する段
    階、および (c) 前記混合物中に形成された免疫反応体の存在につい
    て検定する段階、 を含む方法。 3.体試料中のEA−Dの存在について検定する診断
    ットであって、 (a) EBV EA−Dタンパク質の、そのアミノ末端か
    位置350〜位置36 のアミノ酸残基配列に相当す
    る配列を有しかつ13〜40個のアミノ酸残基を有する
    合成ポリペプチドに対して生成された抗体又はその抗体
    結合部位を含 有する部分であって、EA−Dタンパク質
    と免疫反応できる抗体又はその抗体 結合部位を含有する
    部分、 (b) 前記抗体又はその抗体結合部位を含有する部分とE
    A−Dタンパク質との免疫反応をシグナルする標識され
    た特異結合剤、 を個々のパッケージ中に含む診断キット
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