JP2016183333A - 樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の製造方法、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液、樹脂粒子含有ポリイミドフィルム、多孔質ポリイミドフィルムの製造方法、及び多孔質ポリイミドフィルム - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献2には、ポリイミドからなる孔を有する有機多孔体と、孔内にカチオン成分とアニオン成分とを含有する電解質材料を保持したイオン伝導体が記載されている。
特許文献3には、ポリアミド酸若しくはポリイミド、シリカ粒子及び溶媒を混合してワニスを製造する、又はシリカ粒子が分散した溶剤中でポリアミド酸若しくはポリイミドを重合してワニスを製造するワニス製造工程、ワニス製造工程で製造されたワニスを基板に製膜後、イミド化を完結させて、ポリイミド−シリカ複合膜を製造する複合膜製造工程、及び、複合膜製造工程で製造されたポリイミド−シリカ複合膜のシリカを除去するシリカ除去工程を有する多孔質ポリイミド膜の製造方法が記載されている。
特許文献4には、シリカ粒子を充填後、焼結して、多孔質シリカ製鋳型を得る多孔質シリカ製鋳型の製造工程、多孔質シリカ製鋳型の製造工程で得られた多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリイミドを充填するポリイミド充填工程およびポリイミドが充填された多孔質シリカ製鋳型からシリカを除去して、多孔質ポリイミドを得るシリカ除去工程を有する多孔質ポリイミドの製造方法が記載されている。
特許文献6には、ポリイミド等の耐熱性樹脂、ポリオキシアルキレン樹脂を含有する加熱消滅性樹脂粒子、及び、溶媒を混合し、フィルム用樹脂組成物を調製する工程、フィルム用樹脂組成物を製膜する工程、及び、製膜されたフィルム用樹脂組成物を加熱する工程を有する多孔質樹脂フィルムの製造方法が記載されている。
水性溶剤に樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液中で、有機アミン化合物の存在下、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリイミド前駆体を形成する樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の製造方法である。
前記樹脂粒子分散液が、前記水性溶剤中で樹脂粒子を造粒した樹脂粒子分散液である請求項1に記載の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の製造方法である。
前記有機アミン化合物が、3級アミン化合物である請求項1又は請求項2に記載の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の製造方法である。
前記有機アミン化合物が、窒素を含有する複素環構造を有するアミン化合物である請求項1又は請求項2に記載の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の製造方法である。
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の製造方法により得られた樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液である。
請求項5に記載の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、
塗膜を加熱して得られた樹脂粒子含有ポリイミドフィルムである。
請求項5に記載の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記樹脂粒子を含む被膜を形成する第1の工程と、
前記被膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する第2の工程であって、前記樹脂粒子を除去する処理を含む第2の工程と、
を有する多孔質ポリイミドフィルムの製造方法である。
前記第2の工程において、前記ポリイミド前駆体のイミド化を行う過程又はイミド化後、且つ、前記樹脂粒子を除去する処理よりも前で、前記樹脂粒子を露出させる処理を行う請求項7に記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法である。
前記樹脂粒子を除去する処理が、前記樹脂粒子を溶解する有機溶剤により除去する処理である請求項7又は請求項8に記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法である。
前記樹脂粒子を除去する処理が、加熱により除去する処理である請求項7又は請求項8に記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法である。
請求項7〜請求項10のいずれか一項に記載された多孔質ポリイミドフィルムの製造方法によって製造された多孔質ポリイミドフィルムである。
本実施形態に係る樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の製造方法は、水性溶剤に分散された樹脂粒子分散液中で、有機アミン化合物の存在下、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリイミド前駆体を形成する方法である。
一方、高極性有機溶剤に溶解したポリイミド前駆体溶液に樹脂粒子を混合する場合、一般的な樹脂粒子(例えば、ポリスチレン樹脂粒子等)では、高極性有機溶剤により、樹脂粒子が溶解する場合があり、このポリイミド前駆体溶液中において、樹脂粒子の分散性は低い。また、例えば、高極性有機溶剤に溶解し難い樹脂粒子を乳化重合等により作製した場合には、高極性有機溶剤に溶解したポリイミド前駆体溶液と混合するために、高極性有機溶剤に置換する場合がある。この場合、高極性有機溶剤に置換するために、樹脂粒子の分散液から樹脂粒子を取り出す場合があり、取り出された樹脂粒子は、凝集することがあり、分散性が低い場合がある。
また、樹脂粒子を用いることにより、空孔の形状、空孔径等はバラつきが抑制されやすいと考えられる。これは、ポリイミド前駆体のイミド化工程において、残留応力の緩和に有効に寄与しているためであると考えられる。
さらに、水性溶剤に、ポリイミド前駆体を溶解させているため、ポリイミド前駆体溶液の沸点は100℃程度になる。そのため、ポリイミド前駆体と樹脂粒子とを含む被膜を加熱するに伴って、速やかに溶剤が揮発した後、イミド化反応が進行する。そして、被膜中の樹脂粒子が熱による変形が生じる前に、流動性を失うとともに有機溶剤に不溶となる。そのため、空孔の形状が保持されやすくなるためとも考えられる。
本実施形態の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の製造方法は、まず、水性溶剤に樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する。その後、前記樹脂粒子分散液中で、有機アミン化合物の存在下、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリイミド前駆体を形成する。
樹脂粒子分散液準備工程は、水性溶剤に、樹脂粒子が分散している樹脂粒子分散液が得られるのであれば、その方法は特に限定されない。
例えば、ポリイミド前駆体溶液に溶解しない樹脂粒子、樹脂粒子分散液用の水性溶剤、をそれぞれ計量し、これらを混合、攪拌して得る方法が挙げられる。樹脂粒子と水性溶剤とを混合、攪拌する方法は特に制限されない。例えば、水性溶剤を攪拌しながら樹脂粒子を混合する方法などが挙げられる。また、樹脂粒子の分散性を高める点で、例えば、イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との少なくとも一方を混合してもよい。
次に、樹脂粒子分散液中で、有機アミン化合物の存在下、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(ポリイミド前駆体)を生成してポリイミド前駆体溶液を得る。
この方法によれば、水性溶剤を適用するため、生産性も高く、ポリイミド前駆体溶液が1段階で製造される点で工程の簡略化の点で有利である。
水性溶剤は、樹脂粒子分散液中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合する際に、樹脂粒子分散液の作製に用いた樹脂粒子分散液中の水性溶剤をそのまま利用してもよい。また、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合する際に、水性溶剤を重合に適するように調製してもよい。
上記水溶性の有機溶剤としては、後述の樹脂粒子が溶解しないものが好ましい。この理由は、例えば、水と水溶性の有機溶剤とを含む水性溶剤とした場合に、樹脂粒子分散液中で樹脂粒子を溶解していなくても、製膜の過程で樹脂粒子が溶解してしまう懸念があるためである。
樹脂粒子としては、ポリイミド前駆体溶液に溶解しないものであれば、特に限定されない。例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の重合性単量体を重縮合して得られた樹脂粒子、ビニル樹脂、オレフィン樹脂、フッ素樹脂等の重合性単量体をラジカル重合して得られた樹脂粒子が挙げられる。ラジカル重合して得られた樹脂粒子としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン・(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂の樹脂粒子等が挙げられる。
これらの中でも、樹脂粒子としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン・(メタ)アクリル樹脂、及びポリスチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
また、樹脂粒子は、架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよい。ポリイミド前駆体のイミド化工程において、残留応力の緩和に有効に寄与する点で、架橋されていない樹脂粒子が好ましい。さらに、樹脂粒子分散液は、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を製造する工程を簡略化する点で、乳化重合によって得られたビニル樹脂粒子分散液であることがより好ましい。
その他の単量体として、酢酸ビニルなどの単官能単量体、エチレングリコールジメタクリレート、ノナンジアクリレート、デカンジオールジアクリレートなどの二官能単量体、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能単量体を併用してもよい。
また、ビニル樹脂は、これらの単量体を単独で用いた樹脂でもよいし、2種以上の単量体を用いた共重合体である樹脂であってもよい。
樹脂粒子の平均粒径としては、特に限定されない。例えば、2.5μm以下であることがよく、望ましくは、2.0μm以下、より望ましくは1.0μm以下である。下限としては特に限定されないが、0.001μm以上であることがよく、望ましくは0.005μm以上、より望ましくは0.01μm以上である。
なお、樹脂粒子の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。
また、架橋されていない樹脂粒子としては、ポリメタクリル酸メチル(MB−シリーズ、積水化成品工業社製)、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体(FS−シリーズ:日本ペイント社製)等が挙げられる。
ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して得られる。具体的には、ポリイミド前駆体一般式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂(ポリアミック酸)である。
一方、Bが表す2価の有機基としては、原料となるジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基である。
また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又は脂肪族テトラカルボン酸を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせてもよい。
ポリイミド前駆体の数平均分子量を上記範囲とすると、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性の低下が抑制され、製膜性が確保され易くなる。
・カラム:東ソーTSKgelα−M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)をアミン塩化して、その水性溶剤に対する溶解性を高めると共に、イミド化促進剤としても機能する化合物である。具体的には、有機アミン化合物は、分子量170以下のアミン化合物であることがよい。有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体の原料となるジアミン化合物を除く化合物であることがよい。
なお、有機アミン化合物は、水溶性の化合物であることがよい。水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、2級アミン化合物、及び3級アミン化合物から選択される少なくとも一種(特に、3級アミン化合物)がよい。有機アミン化合物として、3級アミン化合物又は2級アミン化合物を適用すると(特に、3級アミン化合物)、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなり、また、ポリイミド前駆体溶液の保存安定性が向上し易くなる。
2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、モルホリンなどが挙げられる。
3級アミン化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
有機アミン化合物の含有量を上記範囲とすると、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなる。また、ポリイミド前駆体溶液の保存安定性も向上し易くなる。
樹脂粒子ポリイミド前駆体溶液において、樹脂粒子とポリイミド前駆体との割合としては、ポリイミド前駆体溶液の固形分を100とした場合の質量比で、ポリイミド前駆体溶液固形分:樹脂粒子=100:20以上100:600以下の範囲であることがよい。100:25以上100:550以下の範囲であることが好ましく、100:30以上100:500以下の範囲であることがより好ましい。
本実施形態に係る本実施形態の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の製造方法において、ポリイミド前駆体溶液には、イミド化反応促進のための触媒や、製膜品質向上のためのレベリング材などを含んでもよい。
イミド化反応促進のための触媒には、酸無水物など脱水剤、フェノール誘導体、スルホン酸誘導体、安息香酸誘導体などの酸触媒などを使用してもよい。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック(例えばpH5.0以下の酸性カーボンブラック);金属(例えばアルミニウムやニッケル等);金属酸化物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等);イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等);等が挙げられる。これら導電材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
本実施形態に係る樹脂粒子含有ポリイミドフィルムは、本実施形態に係る樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、塗膜を加熱することで得られる。
なお、樹脂粒子含有ポリイミドフィルムは、イミド化が完了した樹脂粒子含有ポリイミドフィルムのみならず、イミド化が完了する前の部分的にイミド化された樹脂粒子含有ポリイミドフィルムも含む。
まず、上述の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を準備する。次に、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布し、塗膜を形成する。
基板としては、例えば、樹脂製基板;ガラス製基板;セラミック製基板;金属基板;これらの材料が組み合わされた複合材料基板が挙げられる。なお、基板は、剥離処理が施された剥離層を備えていてもよい。
また、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を基板に塗布する方法としては、特に制限はなく、例えば、スプレー塗布、回転塗布法、ロール塗布法、バー塗布法、スリットダイ塗布法、インクジェット塗布法等の各種の方法が挙げられる。
次に、上記の塗膜形成工程で得られた塗膜に対して、乾燥処理を行う。この乾燥処理により、被膜(乾燥したイミド化前の被膜)を形成する。
乾燥処理の加熱条件は、例えば80℃以上200℃以下の温度で10分間以上60分間以下がよく、温度が高いほど加熱時間は短くてよい。加熱の際、熱風を当てることも有効である。加熱のときは、温度を段階的に上昇させたり、速度を変化させずに上昇させてもよい。
イミド化処理の加熱条件としては、例えば150℃以上400℃以下(好ましくは200℃以上300℃以下)で、20分間以上60分間以下加熱することで、イミド化反応が起こり、ポリイミドフィルムが形成される。加熱反応の際、加熱の最終温度に達する前に、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱することがよい。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法は、本実施形態に係る樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記樹脂粒子を含む被膜を形成する第1の工程と、前記被膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する第2の工程であって、前記樹脂粒子を除去する処理を含む第2の工程と、を有する。
なお、製造方法の説明において、参照する図1中では、同じ構成部分には、同じ符号を付している。図1中の符号において、1は樹脂粒子、3は基板、4は剥離層、5はポリイミド前駆体溶液、7は空孔、61はポリイミド前駆体のイミド化を行う過程の被膜(ポリイミド膜)、及び62は多孔質ポリイミドフィルムを表す。
第1の工程は、まず、上述の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を準備する。次に、基板上に、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布し、ポリイミド前駆体溶液と、樹脂粒子とを含む塗膜を形成する。そして、基板上に形成された塗膜を乾燥して、ポリイミド前駆体及び前記樹脂粒子を含む被膜を形成する。
第2の工程は、第1の工程で得られたポリイミド前駆体及び樹脂粒子を含む被膜を加熱して、ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する工程である。そして、第2の工程には、樹脂粒子を除去する処理を含んでいる。樹脂粒子を除去する処理を経て、多孔質ポリイミドフィルムが得られる。
なお、本実施形態において、ポリイミド前駆体をイミド化する過程とは、第1の工程で得られたポリイミド前駆体及び樹脂粒子を含む被膜を加熱して、イミド化を進行させ、イミド化が完了した後のポリイミドフィルムとなるよりも前の状態となる過程を示す。
ポリイミド膜中のポリイミド前駆体のイミド化率が10%未満であるとき(すなわち、ポリイミド膜が水に溶解できる状態)に樹脂粒子を露出させる処理を行う場合、上記のポリイミド膜中に埋没している樹脂粒子を露出させる処理としては、拭き取る処理、水に浸漬する処理等が挙げられる。
例えば、機械的に切削する場合には、ポリイミド膜に埋没している樹脂粒子の上部の領域(つまり、樹脂粒子の基板から離れた側の領域)に存在する樹脂粒子の一部分が、樹脂粒子の上部に存在しているポリイミド膜とともに切削され、切削された樹脂粒子がポリイミド膜の表面から露出される(図1(B)参照)。
一部がイミド化したポリイミド前駆体は、例えば、下記一般式(I−1)、下記一般式(I−2)、及び下記一般式(I−3)で表される繰り返し単位を有する構造の前駆体が挙げられる。
・ポリイミド前駆体試料の作製
(i)測定対象となるポリイミド前駆体組成物を、シリコーンウェハー上に、膜厚1μm以上10μm以下の範囲で塗布して、塗膜試料を作製する。
(ii)塗膜試料をテトラヒドロフラン(THF)中に20分間浸漬させて、塗膜試料中の溶媒をテトラヒドロフラン(THF)に置換する。浸漬させる溶媒は、THFに限定されることなく、ポリイミド前駆体を溶解せず、ポリイミド前駆体組成物に含まれている溶媒成分と混和し得る溶媒より選択できる。具体的には、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒、ジオキサンなどのエーテル化合物が使用できる。
(iii)塗膜試料を、THF中より取り出し、塗膜試料表面に付着しているTHFにN2ガスを吹き付け、取り除く。10mmHg以下の減圧下、5℃以上25℃以下の範囲にて12時間以上処理して塗膜試料を乾燥させ、ポリイミド前駆体試料を作製する。
(iv)上記(i)と同様に、測定対象となるポリイミド前駆体組成物をシリコーンウェハー上に塗布して、塗膜試料を作製する。
(v)塗膜試料を380℃にて60分間加熱してイミド化反応を行い、100%イミド化標準試料を作製する。
(vi)フーリエ変換赤外分光光度計(堀場製作所製FT−730)を用いて、100%イミド化標準試料、ポリイミド前駆体試料の赤外吸光スペクトルを測定する。100%イミド化標準試料の1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab’(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab’(1780cm−1))の比I’(100)を求める。
(vii)同様にして、ポリイミド前駆体試料について測定を行い、1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab(1780cm−1))の比I(x)を求める。
・式: ポリイミド前駆体のイミド化率=I(x)/I’(100)
・式: I’(100)=(Ab’(1780cm−1))/(Ab’(1500cm−1))
・式: I(x)=(Ab(1780cm−1))/(Ab(1500cm−1))
以下、本実施形態の多孔質ポリイミドフィルムについて説明する。
本発明の多孔質ポリイミドフィルムは、特に限定されないが、空孔率が30%以上であることがよい。また、空孔率が40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。空孔率の上限は、特に限定されないが、90%以下の範囲であることがよい。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムが適用される用途としては、例えば、リチウム電池等の電池セパレータ;電解コンデンサー用のセパレータ;燃料電池等の電解質膜;電池電極材;気体又は液体の分離膜;低誘電率材料;等が挙げられる。
また、例えば、電池電極材に適用した場合には、電解液に接触する機会が増加するため、電池の容量が増えると考えられる。これは、多孔質ポリイミドフィルムに含有させた電極用のカーボンブラック等の材料が、多孔質ポリイミドフィルムの空孔径の表面や、フィルムの表面に露出する量が増加するためと推測される。
さらに、例えば、多孔質ポリイミドフィルムの空孔内に、例えば、いわゆるイオン性液体をゲル化したイオン性ゲル等を充填して電解質膜として適用することも可能である。本実施形態の製造方法により、工程が簡略化されるため、より低コストの電解質膜が得られると考えられる。
−樹脂粒子分散液(1)の調製−
スチレン770質量部、アクリル酸ブチル230質量部、ドデカンチオール15.7質量部、界面活性剤Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)19.8質量部、イオン交換水576質量部を混合し、ディゾルバーにより、1,500回転で30分間攪拌、乳化を行い、モノマー乳化液を作成した。続いて、Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)1.49質量部、イオン交換水1270質量部を反応容器に投入した。窒素気流下、75℃に加熱した後、モノマー乳化液のうち75質量部を添加した後に、過硫酸アンモニウム15質量部をイオン交換水98質量部に溶解させた重合開始剤溶液を10分かけて滴下した。滴下後50分間反応させた後に、残りのモノマー乳化液を220分かけて滴下し、さらに180分間反応させた。冷却後固形分濃度を30質量%に調整したスチレン・アクリル樹脂粒子分散液として、樹脂粒子分散液(1)を得た。この樹脂粒子は、平均粒径は0.18μmであった。
平均粒径0.1μmの非架橋スチレン・アクリル共重合体の水分散液(FS−102E:日本ペイント社製、固形分濃度21質量%)を樹脂粒子分散液(2)とした。
スチレン1000質量部、ドデカンチオール15.7質量部、界面活性剤Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)15.8質量部、イオン交換水576質量部を混合し、ディゾルバーにより、1,500回転で30分間攪拌、乳化を行い、モノマー乳化液を作成した。続いて、Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)1.49質量部、イオン交換水1270質量部を反応容器に投入した。窒素気流下、75℃に加熱した後、モノマー乳化液のうち75質量部を添加した後に、過硫酸アンモニウム15質量部をイオン交換水98質量部に溶解させた重合開始剤溶液を10分かけて滴下した。滴下後50分間反応させた後に、残りのモノマー乳化液を220分かけて滴下し、さらに180分間反応させた。冷却後固形分濃度を30質量%に調整したポリスチレン樹脂粒子分散液として、樹脂粒子分散液(3)を得た。この樹脂粒子は、平均粒径は0.21μmであった。
スチレンの代わりにメタクリル酸メチルを使用する以外は、樹脂粒子分散液(3)と同様にして、ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子分散液として、樹脂粒子分散液(4)を得た。この樹脂粒子は、平均粒径は0.23μmであった。
[樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−1)の作製]
樹脂粒子分散液(1):固形分換算で100gに、イオン交換水:350gを添加した。p−フェニレンジアミン(分子量108.14):27.28g(252.27ミリモル)と、メチルモルホリン(有機アミン化合物):50.00g(494.32ミリモル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。更に、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度40℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−1)を得た。(樹脂粒子/ポリイミド前駆体=100/100(質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:12質量%)
[樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−2)の作製]
樹脂粒子分散液(1)を樹脂粒子分散液(2)に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−2)を得た。(樹脂粒子/ポリイミド前駆体=100/100(質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:10質量%)
[樹脂粒子分散ポリイミド前駆体 有機溶剤溶液(PAA−C1)の作製]
平均粒径0.1μmの非架橋スチレン・アクリル共重合体の粉体(FS−102E:日本ペイント社製):固形分換算で100gに、NMP(N−メチルピロリドン):450gを添加した。p−フェニレンジアミン(分子量108.14):27.28g(252.27ミリモル)を添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。更に、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度40℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体 有機溶剤溶液(PAA−C1)の作製を試みた。(樹脂粒子/ポリイミド前駆体=100/100(質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:15質量%) ポリイミド前駆体が得られるまでの間に、樹脂粒子が全て溶解してしまった。
[シリカ粒子分散ポリイミド前駆体 水性溶剤溶液(PAA−C2)の作製]
スノーテックス(登録商標)ZL(シリカ粒子の水分散液 粒径70nm以上100nm以下 日産化学社製):固形分換算で100gに、イオン交換水:350gを添加した。p−フェニレンジアミン(分子量108.14):27.28g(252.27ミリモル)と、メチルモルホリン(有機アミン化合物):50.00g(494.32ミリモル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。更に、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度40℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、シリカ粒子が分散された粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−C2)を得た。(シリカ粒子/ポリイミド前駆体=100/100(質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:12質量%)
[シリカ粒子分散ポリイミド前駆体 有機溶剤溶液(PAA−C3)の作製]
日本触媒社製の平均直径550nmの単分散の球状シリカ粒子(真球率:1.0、粒径分布指数:1.20):30質量部をNMP:30質量部に分散した。
このシリカ分散液:固形分換算で100gに、NMP(N−メチルピロリドン):350gを添加した。p−フェニレンジアミン(分子量108.14):27.28g(252.27ミリモル)を添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。更に、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度40℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、シリカ粒子が分散された粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−C3)を得た。(シリカ粒子/ポリイミド前駆体=100/100(質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:15質量%)
[樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−3)の作製]
実施例1において、イオン交換水350gを添加する代わりに、イオン交換水:290g、イソプロパノール:60gに変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−3)を得た。(樹脂粒子/ポリイミド前駆体=100/100(質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:12質量%)
[樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−4)の作製]
実施例3において、メチルモルホリン50gの代わりに1,2−ジメチルイミダゾール:47.52gを加えた以外は実施例3と同様にして、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−4)を得た。(樹脂粒子/ポリイミド前駆体=100/100(質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:12質量%)
[樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−5)の作製]
実施例2において、樹脂粒子分散液(2)の添加量(固形分換算)を100gから140gに、添加するイオン交換水を350gから160gに変更する以外は実施例2と同様にして、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−5)を得た。(樹脂粒子/ポリイミド前駆体=140/100 (質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:10質量%)
[樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−6)の作製]
実施例1において、イオン交換水350gを添加する代わりに、イオン交換水:290g、N−メチルピロリドン:60gに変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−6)を得た。(樹脂粒子/ポリイミド前駆体=100/100(質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:12質量%)
[樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−7)の作製]
樹脂粒子分散液(3):固形分換算で100gに、脱イオン水:350g、t−ブタノール:200gを添加した。4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24):13.66g(68.2ミリモル)と、メチルモルホリン(有機アミン化合物):16.23g(160.41ミリモル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。更に、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):19.66g(66.84ミリモル)を添加し、反応温度40℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−7)を得た。(樹脂粒子/ポリイミド前駆体=300/100(質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:3.6質量%)
[樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−8)の作製]
樹脂粒子分散液(1):固形分換算で100gに、脱イオン水:200g、1−プロパノール:150gを添加した。4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24):8.21g(41.0ミリモル)と、メチルモルホリン(有機アミン化合物):9.75g(96.43ミリモル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。更に、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):11.82g(40.17ミリモル)を添加し、反応温度40℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−8)を得た。(樹脂粒子/ポリイミド前駆体=500/100(質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:2.8質量%)
[樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−9)の作製]
樹脂粒子分散液(3)を樹脂粒子分散液(4)に変更し、t−ブタノールを1−メトキシ−2−プロパノールに変更し、メチルモルホリンをジメチルアミノエタノールに変更する以外は実施例7と同様にして、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−9)を得た。(樹脂粒子/ポリイミド前駆体=300/100(質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:3.6質量%)
[樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−10)の作製]
樹脂粒子分散液(3)を樹脂粒子分散液(2)に変更し、1−プロパノールをイソプロパノールに変更し、メチルモルホリンをジエチルアミノエタノールに変更する以外は実施例7と同様にして、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−10)を得た。(樹脂粒子/ポリイミド前駆体=300/100(質量比)、ポリイミド前駆体の濃度:3.1質量%)
[樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−S1)の作製]
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、イオン交換水:900gを充填した。ここに、p−フェニレンジアミン(分子量108.14):27.28g(252.27ミリモル)と、メチルモルホリン(有機アミン化合物):50.00g(494.32ミリモル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。更に、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度40℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、ポリイミド前駆体「水」溶液を得た。このポリイミド前駆体「水」溶液を10倍に希釈して、これにポリイミド前駆体10部に対し固形分10部の割合で樹脂粒子分散液(1)を加え、ウエブローター上で攪拌し、樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−S1)を得た。
〔分散性の評価〕
実施例1〜10、比較例1〜3、及び、参考例1で得た樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液について、分散性の評価を行った。具体的な方法は以下のとおりである。
得られた樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を、それぞれ室温下(25℃)、冷蔵下(3℃)で静置して保管し、樹脂粒子の分散状態を目視で評価した(樹脂粒子の分散が悪化すると、溶液の層分離や粒子の沈降が観察できる。)。
A:保管開始後2ヵ月超でも溶液に変化なし
B:保管開始後1ヵ月超2ヵ月以内で層分離または粒子の沈降が見られる
C:保管開始後1ヵ月以内で層分離または粒子の沈降が見られる
[多孔質ポリイミドフィルム(PIF−1)の作製]
樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−1)を、ガラス製の基板上に乾燥後の膜厚が約30μmになるように形成し、90℃で1時間乾燥した後、90℃から380℃まで10℃/分の速度で昇温し、380℃で1時間保持したのち、室温(25℃、以下同じ)に冷却して多孔質ポリイミドフィルム(PIF−1)を得た。
樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−1)を、ガラス製の基板上に乾燥後の膜厚が約30μmになるように形成し、90℃で1時間乾燥した。その後、ガラス製の基板から剥離して、テトラヒドロフランに1時間浸漬した。その後、90℃から380℃まで10℃/分の速度で昇温し、380℃で1時間保持したのち、室温に冷却して多孔質ポリイミドフィルム(PIF−2)を得た。
用いる樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の種類、浸漬に使用する溶剤を表2記載のものに変更した以外は、多孔質ポリイミドフィルム(PIF−2)と同様にして、多孔質ポリイミドフィルム(PIF−3)〜(PIF−7)、(PIF−9)〜(PIF−10)を得た。ただし、表2中の「露出処理あり」の場合は、ガラス製の基板から剥離した後、紙やすりで樹脂粒子を露出させる工程を加えた。
用いる樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を(PAA−2)に変更し、また、乾燥後に紙やすりで樹脂粒子を露出させる処理を施す工程を加える以外は、多孔質ポリイミドフィルム(PIF−1)と同様にして、多孔質ポリイミドフィルム(PIF−8)を得た。
樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液(PAA−7)を、ガラス製の基板上に乾燥後の膜厚が約30μmになるように形成し、80℃で1時間乾燥した。その後、ガラス製の基板ごとテトラヒドロフランに20時間浸漬した。風乾した後、80℃から250℃まで1℃/分の速度で昇温し、250℃で1時間保持した後、室温に冷却してガラス製の基板から剥離し、多孔質ポリイミドフィルム(PIF−11)を得た。
得られた多孔質ポリイミドフィルム(PIF−11)の表面を走査型電子顕微鏡(キーエンス社製:VE-8800)にて観測した写真を図2に示す。
用いる樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の種類を表2記載のものに変更した以外は、多孔質ポリイミドフィルム(PIF−11)と同様にして、多孔質ポリイミドフィルム(PIF−12)〜(PIF−14)を得た。
用いる液を(PAA−C1)に変更する以外は(PIF−2)の作製と同様にして、多孔質ポリイミドフィルム(PIF−C1)を得た。
(PAA−C2)を、ガラス製の基板上に乾燥後の膜厚が約30μmになるように形成し、120℃で1時間加熱した後、ガラス製の基板より剥離し、室温から380℃まで10℃/分のスピードで昇温し、380℃で1時間保持したのち、室温に冷却してシリカ−ポリイミド複合膜を得た。そのシリカ−ポリイミド複合膜を10質量%フッ化水素水に浸し、6時間かけてシリカを溶解除去し、十分に水洗、乾燥して多孔質ポリイミドフィルム(PIF−C2)を得た。
用いる液を(PAA−C3)に変更する以外は(PIF−C2)の作製と同様にして、多孔質ポリイミドフィルム(PIF−C3)を得た。
実施例1A〜14A、及び、比較例1A〜3Aで得た樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を用いて作製した多孔質ポリイミドフィルムについて、亀裂の評価を行った。具体的な方法は以下のとおりである。ポリイミドフィルム1cm2角の面積を倍率500の顕微鏡で0.1mm以上を亀裂とし、有無を目視により観察した。
A:亀裂なし
B:1か所以上3か所以下
C:4か所以上
実施例1A〜14A、及び、比較例1A〜3Aで得た樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を用いて作製した多孔質ポリイミドフィルムについて、空孔径の分布(最大径、最小径、及び平均径)について評価を行った。具体的には、既述の方法で評価を行った。
・(1): 前述の樹脂粒子分散液(1) 平均粒径0.18μm
・(2): 前述の樹脂粒子分散液(2) 平均粒径0.1μm
・(3): 前述の樹脂粒子分散液(3) 平均粒径0.21μm
・(4): 前述の樹脂粒子分散液(4) 平均粒径0.23μm
・シリカ(1):スノーテックス(登録商標)ZL
(粒径70〜100nm 日産化学社製)
・シリカ(2):平均直径550nmの単分散の球状シリカ粒子
(日本触媒社製、真球率:1.0、粒径分布指数:1.20)
・「PDA」 :p−フェニレンジアミン
・「ODA」 :4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
・「BPDA」:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・「MMO」 :メチルモルホリン
・「DMAEt」:ジメチルアミノエタノール
・「DEAEt」:ジエチルアミノエタノール
・「DMIz」:1,2−ジメチルイミダゾール
・「IPA」 :イソプロパノール
・「NMP」 :N−メチルピロリドン
・「THF」 :テトラヒドロフラン
・「Tol」 :トルエン
・「NPA」 :1−プロパノール
・「TBA」 :t−ブタノール
・「1M2PA」:1−メトキシ−2−プロパノール
・シリカ(1):比較例2で使用したシリカ粒子の分散液
・シリカ(2):比較例3で使用したシリカ粒子の分散液
なお、表1および表2の比較例1および1Aの粒子分散液番号欄において、(2)という表記は、比較例1および1Aが樹脂粒子分散液(2)の樹脂粒子粉体を使用しており、便宜上、上記のように記載している。
Claims (11)
- 水性溶剤に樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液中で、有機アミン化合物の存在下、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリイミド前駆体を形成する樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の製造方法。
- 前記樹脂粒子分散液が、前記水性溶剤中で樹脂粒子を造粒した分散液である請求項1に記載の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の製造方法。
- 前記有機アミン化合物が、3級アミン化合物である請求項1又は請求項2に記載の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の製造方法。
- 前記有機アミン化合物が、窒素を含有する複素環構造を有するアミン化合物である請求項1又は請求項2に記載の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液の製造方法。
- 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の製造方法により得られた樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
- 請求項5に記載の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、
塗膜を加熱して得られた樹脂粒子含有ポリイミドフィルム。 - 請求項5に記載の樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記樹脂粒子を含む被膜を形成する第1の工程と、
前記被膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する第2の工程であって、前記樹脂粒子を除去する処理を含む第2の工程と、
を有する多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。 - 前記第2の工程において、前記ポリイミド前駆体のイミド化を行う過程又はイミド化後、且つ、前記樹脂粒子を除去する処理よりも前で、前記樹脂粒子を露出させる処理を行う請求項7に記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
- 前記樹脂粒子を除去する処理が、前記樹脂粒子を溶解する有機溶剤により除去する処理である請求項7又は請求項8に記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
- 前記樹脂粒子を除去する処理が、加熱により除去する処理である請求項7又は請求項8に記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
- 請求項7〜請求項10のいずれか一項に記載された多孔質ポリイミドフィルムの製造方法によって製造された多孔質ポリイミドフィルム。
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