JP2019131709A - 多孔質ポリイミド成形体及び多孔質ポリイミド成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献2には、「平均気泡径が5μm以下の気泡を有し、空孔率が40%以上であり、周波数1GHzにおける比誘電率が2.00以下であることを特徴とする、多孔質樹脂成型体。」が開示されている。また、この多孔質樹脂成型体は、「ポリイミド樹脂又はポリエーテルイミド樹脂からなること」が開示されている。
<3> 前記(長径/短径)が1.5を超える空孔の割合が10%未満である<2>に記載の多孔質ポリイミド成形体。
<4> 有機アミン化合物を含有する<1>〜<3>のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド成形体。
<5> 前記有機アミン化合物が、3級アミン化合物である<4>に記載の多孔質ポリイミド成形体。
<6> 前記有機アミン化合物が、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−メチルピペリジン、及びN−エチルピペリジンからなる群から選択される少なくとも1種である<5>に記載の多孔質ポリイミド成形体。
<7> 有機アミン化合物の含有量が前記多孔質ポリイミド成形体の全体に対し0.001質量%以上である<4>〜<6>のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド成形体。
<8> ポリイミド樹脂以外の樹脂を含有する<1>〜<7>のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド成形体。
<9> ポリイミド樹脂以外の樹脂の含有量が前記多孔質ポリイミド成形体の全体に対し0.005質量%以上1.0質量%以下である<8>に記載の多孔質ポリイミド成形体。
<10> 回路基板用である<1>〜<9>のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド成形体。
<4>、<5>、<6>、<7>に係る発明によれば、多孔質ポリイミド成形体の膜厚が550μm未満である場合に比べ、引張強度が向上し、比誘電率の面内ムラの発生が抑制される、有機アミン化合物を含有する多孔質ポリイミド成形体が提供される。
<8>、<9>に係る発明によれば、多孔質ポリイミド成形体の膜厚が550μm未満である場合に比べ、引張強度が向上し、比誘電率の面内ムラの発生が抑制される、ポリイミド以外の樹脂を含有する多孔質ポリイミド成形体が提供される。
<10>に係る発明によれば、多孔質ポリイミド成形体の膜厚が550μm未満である場合に比べ、引張強度が向上し、比誘電率の面内ムラの発生が抑制される、回路基板用である多孔質ポリイミド成形体が提供される。
本実施形態に係る多孔質ポリイミド成形体は、膜厚が550μm以上3000μm以下である。また、水銀圧入法によって測定される細孔径分布において、数基準で、細孔の小径側から累積した16%になるときの細孔径D16に対する細孔の小径側から累積した84%になるときの細孔径D84の割合の平方根((D84/D16)1/2)(以下、「細孔径分布指標」と称する場合がある。)が1.2以上1.6以下である。さらに、1MHzにおける比誘電率が1.8以下であり、誘電正接が0.01以下である。
−膜厚−
本実施形態に係る多孔質ポリイミド成形体は、膜厚が550μm以上3000μm以下である。引張強度が向上し、比誘電率の面内ムラの発生がより抑制される点で、膜厚の下限は、600μm以上であることがよく、800μm以上であることがよく、1000μm以上であることがよい。また、膜厚の上限は、2800μm以下であってもよく、2600μm以下であってもよい。
細孔径分布指標は、水銀圧入法によって測定される細孔径分布において、数基準で、細孔の小径側から累積した16%になるときの細孔径D16に対する細孔の小径側から累積した84%になるときの細孔径D84の割合の平方根((D84/D16)1/2)によって算出される。本実施形態に係る多孔質ポリイミド成形体の細孔径分布指標は、1.2以上1.6以下である。引張強度が向上し、比誘電率の面内ムラの発生がより抑制される点で、細孔径分布指標は、1.25以上1.55以下であることがよく、1.3以上1.5以下であることが好ましい。
本実施形態に係る多孔質ポリイミド成形体の1MHzにおける比誘電率は、1.8以下である。比誘電率は、1.6以下であることがよく、1.5以下であることが好ましい。比誘電率の下限値は特に特定されないが、空気の比誘電率である1より大きい。
測定機器は、LCRメータ(エヌエフ回路設計ブロック社製、ZM2372」)によって、多孔質ポリイミド成形体の対抗平行板の試験片(8mm幅×8mm長)を用いて測定した。
本実施形態の多孔質ポリイミド成形体の引張強度は、優れた引張強度とする点で、65MPa以上であることがよく、70MPa以上であることが好ましい。引張強度の上限値は特に限定されず、例えば、300MPa以下であってもよい。
空孔の形状は、球状である。本明細書中において、空孔における「球状」とは、球状、及びほぼ球状(球状に近い形状)の両者の形状を包含するものである。球状は、具体的には、長径と短径の比(長径/短径)が1以上1.5以下である粒子の割合が80%を超えて存在することを意味する。長径と短径の比(長径/短径)が1以上1.5以下である粒子の割合は、90%以上であることが好ましい。つまり、本実施形態に係る多孔質ポリイミド成形体は、球状の空孔を有し、長径と短径の比(長径/短径)が1.5を超える粒子の割合が20%以下であることがよい。また、長径と短径の比(長径/短径)が1.5を超える粒子の割合は10%未満であることが好ましい。なお、長径と短径の比が1に近づくほど真球状に近くなる。
「空孔の最大径と最小径の比率」とは、空孔の最大径を最小径で除した値(つまり、空孔径の最大値/最小値)で表される比率である。
なお、多孔質ポリイミド成形体に含有する有機アミン化合物の量は、例えば、後述の多孔質ポリイミド成形体の製造工程の第1工程における有機アミン化合物の使用量、第2工程における加熱温度の温度などによって制御し得る。
多孔質ポリイミド成形体に含有するポリイミド樹脂以外の樹脂の存在状態は、特に限定されない。例えば、多孔質ポリイミド成形体の内部、多孔質ポリイミド成形体の表面(多孔質ポリイミド成形体の空孔の表面を含む)の少なくとも一方に存在していればよい。
多孔質ポリイミド成形体中の有機アミン化合物及びポリイミド以外の樹脂の存在、並びにそれらの含有量は、例えば、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)によって検出される成分を、分析および定量することで測定することができる。具体的には、以下のように測定する。
多孔質ポリイミド成形体中の含有成分を、落下型の熱分解装置(フロンティアラボ社製:PY−2020D)を設置したガスクロマトグラフ質量分析計(島津社製GCMS QP−2010)により分析する。
有機アミン化合物は、多孔質ポリイミド成形体の0.40mgを精確に秤量し、熱分解温度400℃で測定する。
ポリイミド以外の樹脂の成分については、多孔質ポリイミド成形体0.20mgを精確に秤量し、熱分解温度600℃で測定する。ポリイミド以外の樹脂については、熱分解温度400℃と熱分解温度600℃のクロマトグラムを比較し、例えば、ポリスチレンの解重合によるスチレンモノマーが熱分解温度400℃よりも熱分解温度600℃で多く検出されることでポリマー由来であることを確認できる。
熱分解装置:フロンティアラボ社製:PY−2020D
ガスクロマトグラフ質量分析計:島津社製GCMS QP−2010
熱分解温度:400℃、600℃
ガスクロマト導入温度:280℃
Inject方法:スプリット比1:50
カラム:フロンティアラボ社製:Ultra ALLOY−5,0.25μm、0.25μm ID、30m
ガスクロマト温度プログラム:40℃→20℃/min→280℃・10min保持
マスレンジ:EI、m/z=29−600(ポリイミド樹脂以外の樹脂の含有量)
本実施形態の多孔質ポリイミド成形体が適用される用途としては、例えば、リチウム電池等の電池セパレータ;電解コンデンサー用のセパレータ;燃料電池等の電解質膜;電池電極材;気体又は液体の分離膜;低誘電率材料;ろ過膜;等が挙げられる。
ここで「層」とは、平面的に連続的に存在する部分のみではなく、断続的に存在する部分、及び点在するように存在する部分も含む概念である。
以下、本実施形態に係る多孔質ポリイミド成形体の好ましい製造方法について説明する。なお、以下の製造方法の説明において、参照する図中では、同じ構成部分には、同じ符号を付している。各図の符号において、1は樹脂粒子、2は結着樹脂、3は基板、4は剥離層、5はポリイミド前駆体溶液、7は空孔、61はポリイミド前駆体のイミド化を行う過程の被膜(ポリイミド膜)、及び62は多孔質ポリイミド成形体を表す。
第1の工程は、水性溶剤に、ポリイミド前駆体と有機アミン化合物とが溶解しているポリイミド前駆体溶液と、前記ポリイミド前駆体溶液に溶解しない樹脂粒子とを含む塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記樹脂粒子を含む被膜を形成する工程である。
第2の工程は、前記被膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド成形体を形成する第2の工程であって、前記樹脂粒子を除去する処理を含む工程である。
なお、樹脂粒子を除去する処理が、樹脂粒子を溶解する有機溶剤により樹脂粒子を除去する場合、樹脂が架橋しているために除去性が低いときであっても、加熱により除去することができる。
ここで、「ポリイミド前駆体溶液に溶解しない樹脂粒子」とは、25℃において、樹脂粒子がポリイミド前駆体溶液に実質的に溶解しない樹脂粒子であることを意味し、樹脂粒子がポリイミド前駆体溶液に対して溶解しないことに加え、3質量%以下の範囲内で溶解することも含む。
第1の工程は、まず、水性溶剤に、ポリイミド前駆体及び有機アミン化合物が溶解しているポリイミド前駆体溶液を準備する。
次に、基板上に、ポリイミド前駆体溶液と、このポリイミド前駆体溶液に溶解しない樹脂粒子とを含む塗膜を形成する。そして、基板上に形成された塗膜を乾燥して、ポリイミド前駆体及び前記樹脂粒子を含む被膜を形成する。
なお、以下の説明において、樹脂粒子は、ポリイミド樹脂以外の樹脂からなる樹脂粒子である。
そして、上記の基板上に形成された樹脂粒子層の樹脂粒子間に、予め準備したポリイミド前駆体溶液を含浸させる。樹脂粒子層の樹脂粒子間にポリイミド前駆体溶液を含浸させることにより、樹脂粒子層の樹脂粒子間に形成された空隙には、ポリイミド前駆体溶液が充填される。充填を促進するため、ポリイミド前駆体溶液と樹脂粒子が接触した状態で減圧し、空隙間のガス成分を除去することも好ましい。その後、この塗膜を乾燥して、ポリイミド前駆体及び樹脂粒子を含む被膜が基板上に形成される(図1(B)参照)。
また、結着樹脂は、予め上記の有機溶剤に溶解させてもよく、樹脂粒子と有機溶剤と混合して溶解させてもよい。溶剤としては、樹脂粒子を溶解しない観点から、アルコール系溶剤が好ましく、水を含んでもよい。
ここで、「樹脂粒子が溶解しない有機溶剤」とは、25℃において、対象となる樹脂粒子が実質的に溶解しない有機溶剤であることを意味し、対象となる樹脂粒子が溶解しないことに加え、3質量%以下の範囲内で溶解することも含む。
樹脂粒子としては、後述する第2工程で行う樹脂粒子の除去の点から、ポリイミド樹脂を溶解しない溶剤に可溶な樹脂粒子であることが好ましい。多孔質ポリイミド成形体に含有するポリイミド以外の樹脂は、具体的には、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル、アセトンなどの有機溶剤に可溶な樹脂であることが好ましい。
また、これらの中でも、樹脂粒子としては、粒子形状の制御、除去性の観点から、ラジカル重合性のモノマーを用いた樹脂が好ましく、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン・(メタ)アクリル樹脂、及びポリスチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
ここで「有機溶剤に可溶」とは、25℃において、対象となる樹脂粒子が対象となる有機溶剤に対して質量基準で10%以上溶解することを意味する。
その他の単量体として、酢酸ビニルなどの単官能単量体、エチレングリコールジメタクリレート、ノナンジアクリレート、デカンジオールジアクリレートなどの二官能単量体、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能単量体を併用してもよい。
また、ビニル樹脂は、これらの単量体を単独で用いた樹脂でもよいし、2種以上の単量体を用いた共重合体である樹脂であってもよい。
なお、樹脂粒子の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。
基板上に形成した樹脂粒子層の上からポリイミド前駆体溶液を塗布する方法としては、例えば、スプレー塗布法、回転塗布法、ロール塗布法、バー塗布法、スリットダイ塗布法、インクジェット塗布法等の各種の方法が挙げられる。また、樹脂粒子層を形成した樹脂粒子間に、ポリイミド前駆体溶液を含浸させる点で、樹脂粒子層の上からポリイミド前駆体溶液を塗布した後、減圧して、樹脂粒子間にポリイミド前駆体溶液を充填させる真空含浸充填法が挙げられる。この真空含浸充填法を採用すると、樹脂粒子間の空隙へポリイミド前駆体溶液が効率よく含浸されるため好適である。
例えば、具体的には、次の方法が挙げられる。まず、水性溶剤に、ポリイミド前駆体及び有機アミン化合物が溶解しているポリイミド前駆体溶液を準備する。次に、このポリイミド前駆体溶液とポリイミド前駆体溶液に溶解しない樹脂粒子とを混合して、樹脂粒子が分散されたポリイミド前駆体溶液(以下、「樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液」とも称する)とする。そして、この樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布し、ポリイミド前駆体溶液と樹脂粒子とを含む塗膜を形成する。この塗膜中の樹脂粒子は、凝集が抑制された状態で分布している(図3(A)参照)。その後、この塗膜を乾燥して、ポリイミド前駆体及び樹脂粒子を含む被膜が基板上に形成される。
樹脂粒子層を形成した樹脂粒子間に、ポリイミド前駆体溶液を含浸させ、樹脂粒子層が埋没するように塗膜を形成させると、樹脂粒子層の厚み以上の領域にポリイミド前駆体溶液が存在する(図1(B)参照)。
第2の工程は、第1の工程で得られたポリイミド前駆体及び樹脂粒子を含む被膜を加熱して、ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド成形体を形成する工程である。そして、第2の工程には、樹脂粒子を除去する処理を含んでいる。樹脂粒子を除去する処理を経て、多孔質ポリイミド成形体が得られる。
なお、本実施形態において、ポリイミド前駆体をイミド化する過程とは、第1の工程で得られたポリイミド前駆体及び樹脂粒子を含む被膜を加熱して、イミド化を進行させ、イミド化が完了した後のポリイミド成形体となるよりも前の状態となる過程を示す。
この樹脂粒子の除去は、例えば、熱による分解除去のみで行ってもよく、加熱による分解除去と樹脂粒子を溶解する有機溶剤による除去とを併用してもよく、樹脂粒子を溶解する有機溶剤により除去のみで行ってもよい。
なお、樹脂粒子を溶解する有機溶剤により除去した後に、さらに加熱を行い、除去率を上げることも効果的である。
これらの中でも、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類;ベンゼン、トルエン等の芳香族類が好ましく、テトラヒドロフラン、トルエンを用いることがさらに好ましい。
樹脂粒子を溶解する際に水性溶剤が残留している場合には、水性溶剤が非架橋樹脂粒子を溶解する溶剤中に溶解し、ポリイミド前駆体が析出し、いわゆる湿式相転換法と類似の状態となり、空孔径の制御が困難となる場合があるため、残留している水性溶剤量は、ポリイミド前駆体質量に対して20質量%以下、好ましくは10質量%以下に低減した後に有機溶剤で非架橋樹脂粒子を溶解除去することが好ましい。
ポリイミド膜中のポリイミド前駆体のイミド化率が10%未満であるとき(すなわち、ポリイミド膜が水に溶解できる状態)に樹脂粒子を露出させる処理を行う場合、上記のポリイミド膜中に埋没している樹脂粒子を露出させる処理としては、拭き取る処理、水に浸漬する処理等が挙げられる。
例えば、機械的に切削する場合には、ポリイミド膜に埋没している樹脂粒子層の上部の領域(つまり、樹脂粒子層の基板から離れた側の領域)に存在する樹脂粒子の一部分が、樹脂粒子の上部に存在しているポリイミド膜とともに切削され、切削された樹脂粒子がポリイミド膜の表面から露出される(図2(C)参照)。
一部がイミド化したポリイミド前駆体は、例えば、下記一般式(I−1)、下記一般式(I−2)、及び下記一般式(I−3)で表される繰り返し単位を有する構造の前駆体が挙げられる。
・ポリイミド前駆体試料の作製
(i)測定対象となるポリイミド前駆体溶液を、シリコーンウェハー上に、膜厚1μm以上10μm以下の範囲で塗布して、塗膜試料を作製する。
(ii)塗膜試料をテトラヒドロフラン(THF)中に20分間浸漬させて、塗膜試料中の溶剤をテトラヒドロフラン(THF)に置換する。浸漬させる溶剤は、THFに限定されることなく、ポリイミド前駆体を溶解せず、ポリイミド前駆体溶液に含まれている溶剤成分と混和し得る溶剤より選択できる。具体的には、メタノール、エタノールなどのアルコール溶剤、ジオキサンなどのエーテル化合物が使用できる。
(iii)塗膜試料を、THF中より取り出し、塗膜試料表面に付着しているTHFにN2ガスを吹き付け、取り除く。10mmHg以下の減圧下、5℃以上25℃以下の範囲にて12時間以上処理して塗膜試料を乾燥させ、ポリイミド前駆体試料を作製する。
(iv)上記(i)と同様に、測定対象となるポリイミド前駆体溶液をシリコーンウェハー上に塗布して、塗膜試料を作製する。
(v)塗膜試料を380℃にて60分間加熱してイミド化反応を行い、100%イミド化標準試料を作製する。
(vi)フーリエ変換赤外分光光度計(堀場製作所製、FT−730)を用いて、100%イミド化標準試料、ポリイミド前駆体試料の赤外吸光スペクトルを測定する。100%イミド化標準試料の1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab’(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab’(1780cm−1))の比I’(100)を求める。
(vii)同様にして、ポリイミド前駆体試料について測定を行い、1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab(1780cm−1))の比I(x)を求める。
・式: ポリイミド前駆体のイミド化率=I(x)/I’(100)
・式: I’(100)=(Ab’(1780cm−1))/(Ab’(1500cm−1))
・式: I(x)=(Ab(1780cm−1))/(Ab(1500cm−1))
ポリイミド前駆体溶液は、水性溶剤に、ポリイミド前駆体および有機アミン化合物が溶解しているポリイミド前駆体溶液であることが好ましい。
ポリイミド前駆体は、一般式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂(ポリアミック酸)である。
一方、Bが表す2価の有機基としては、原料となるジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基である。
また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又は脂肪族テトラカルボン酸を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせてもよい。
ポリイミド前駆体の数平均分子量を上記範囲とすると、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性の低下が抑制され、製膜性が確保され易くなる。
・カラム:東ソーTSKgelα−M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体(そのカルボキシル基)をアミン塩化して、その水性溶剤に対する溶解性を高めると共に、イミド化促進剤としても機能する化合物である。具体的には、有機アミン化合物は、分子量170以下のアミン化合物であることがよい。有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体の原料となるジアミン化合物を除く化合物であることがよい。
なお、有機アミン化合物は、水溶性の化合物であることがよい。水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、2級アミン化合物、及び3級アミン化合物から選択される少なくとも一種(特に、3級アミン化合物)がよい。有機アミン化合物として、3級アミン化合物又は2級アミン化合物を適用すると(特に、3級アミン化合物)、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなり、また、ポリイミド前駆体溶液の保存安定性が向上し易くなる。
2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、モルホリンなどが挙げられる。
3級アミン化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジンなどが挙げられる。
ポリイミド前駆体溶液のポットライフ、フィルム膜厚均一性の観点で、3級アミン化合物が好ましい。この点で、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
含窒素複素環アミン化合物としては、例えば、イソキノリン類(イソキノリン骨格を有するアミン化合物)、ピリジン類(ピリジン骨格を有するアミン化合物)、ピリミジン類(ピリミジン骨格を有するアミン化合物)、ピラジン類(ピラジン骨格を有するアミン化合物)、ピペラジン類(ピペラジン骨格を有するアミン化合物)、トリアジン類(トリアジン骨格を有するアミン化合物)、イミダゾール類(イミダゾール骨格を有するアミン化合物)、モルホリン類(モルホリン骨格を有するアミン化合物)、ポリアニリン、ポリピリジン、ポリアミンなどが挙げられる。
有機アミン化合物の含有量を上記範囲とすると、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなる。また、ポリイミド前駆体溶液の保存安定性も向上し易くなる。
水性溶剤は、水を含む水性溶剤である。具体的には、水性溶剤は、全水性溶剤に対して水を50質量%以上含有する溶剤であることがよい。水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。
本実施形態に係る多孔質フィルムの製造方法において、ポリイミド前駆体溶液には、イミド化反応促進のための触媒や、製膜品質向上のためのレベリング材などを含んでもよい。
イミド化反応促進のための触媒には、酸無水物など脱水剤、フェノール誘導体、スルホン酸誘導体、安息香酸誘導体などの酸触媒などを使用してもよい。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック(例えばpH5.0以下の酸性カーボンブラック);金属(例えばアルミニウムやニッケル等);金属酸化物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等);イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等);等が挙げられる。これら導電材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
ポリイミド前駆体溶液の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す製造方法が挙げられる。
この方法によれば、水性溶剤を適用するため、生産性も高く、ポリイミド前駆体溶液が1段階で製造される点で工程の簡略化の点で有利である。
(PMMA粒子分散液−1の作製)
メタクリル酸メチル670質量部、界面活性剤Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)25.0質量部、イオン交換水670質量部を混合し、ディゾルバーにより、1,500回転で30分間攪拌、乳化を行い、モノマー乳化液を作製した。続いて、Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)1.10質量部、イオン交換水1500質量部を反応容器に投入した。窒素気流下、75℃に加熱した後、モノマー乳化液のうち75質量部を添加した後に、過硫酸アンモニウム15質量部をイオン交換水98質量部に溶解させた重合開始剤溶液を10分かけて滴下した。滴下後50分間反応させた後に、残りのモノマー乳化液を220分かけて滴下し、さらに50分間反応させた後、冷却して、樹脂粒子の分散液であるPMMA粒子分散液−1を得た。固形分濃度は22.8質量%であった。この樹脂粒子の平均粒径は0.42μmであった。
PMMA粒子分散液−1:樹脂粒子分散水溶液438.6g(粒子:100g、水:338.6g)に、イオン交換水:40.66g、N−メチルピロリドン:2.14g、ジアミン−1(信越化学工業製、KF−8010 分子量860):0.39g(0.0004565モル)、p−フェニレンジアミン(分子量108.14):9.82g(0.0908435モル)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):26.86g(0.0913モル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。ついで、N−メチルモルホリン(有機アミン化合物):27.7g(0.2739モル)を、ゆっくりと添加し、反応温度60℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、水系の粒子分散ポリイミド前駆体溶液(A1)を得た。粒子の質量/(全固形分の質量)は0.74、固形分濃度:25質量%。得られた粒子分散ポリイミド前駆体溶液(A1)を水で希釈し、既述の方法により粒度分布を測定したところ、PMMA粒子分散液−1と同様に平均粒径は0.42μmの単一のピークを持ち、良好な分散状態であった。また、既述の方法により算出した体積粒度分布指標(GSDv)は1.18であった。
上記で得た粒子分散ポリイミド前駆体溶液を、アプリケータを用いて幅200mmのガラス基材に、焼成後の膜厚が600μmとなるよう塗布し、80℃で1時間送風乾燥を行った後、80℃から昇温速度2℃/分で、400度まで昇温し、さらにその温度で90分保持した。その後、室温(25℃)まで放冷し、水に浸漬して多孔質ポリイミド成形体(PI−1)を得た。
得られた多孔質ポリイミド成形体(PI−1)の平均細孔径D50は420nmであった。
膜厚が620μmになるように多孔質ポリイミド成形体を形成した以外は、実施例1と同様にして、多孔質ポリイミド成形体(PI−2)を形成した。
得られた多孔質ポリイミド成形体(PI−2)の平均細孔径D50は420nmであった。
膜厚が650μmになるように多孔質ポリイミド成形体を形成した以外は、実施例1と同様にして、多孔質ポリイミド成形体(PI−3)を形成した。
得られた多孔質ポリイミド成形体(PI−3)の平均細孔径D50は420nmであった。
膜厚が750μmになるように多孔質ポリイミド成形体を形成した以外は、実施例1と同様にして、多孔質ポリイミド成形体(PI−4)を形成した。
得られた多孔質ポリイミド成形体(PI−4)の平均細孔径D50は420nmであった。
膜厚が900μmになるように多孔質ポリイミド成形体を形成した以外は、実施例1と同様にして、多孔質ポリイミド成形体(PI−5)を形成した。
得られた多孔質ポリイミド成形体(PI−5)の平均細孔径D50は420nmであった。
(PMMA粒子分散液−2の作製)
メタクリル酸メチル670質量部、界面活性剤Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)31.4質量部、イオン交換水670質量部を混合し、ディゾルバーにより、1,500回転で30分間攪拌、乳化を行い、モノマー乳化液を作製した。続いて、Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)1.10質量部、イオン交換水1500質量部を反応容器に投入した。窒素気流下、75℃に加熱した後、モノマー乳化液のうち75質量部を添加した後に、過硫酸アンモニウム15質量部をイオン交換水98質量部に溶解させた重合開始剤溶液を10分かけて滴下した。滴下後50分間反応させた後に、残りのモノマー乳化液を220分かけて滴下し、さらに50分間反応させた後、冷却して、樹脂粒子の分散液であるPMMA粒子分散液−2を得た。固形分濃度は23.2質量%であった。この樹脂粒子の平均粒径は0.33μmであった。
PMMA粒子分散液−2:樹脂粒子分散水溶液438.6g(粒子:100g、水:338.6g)に、イオン交換水:40.66g、N−メチルピロリドン:2.14g、ジアミン−1(信越化学工業製、KF−8010 分子量860):0.39g(0.0004565モル)、p−フェニレンジアミン(分子量108.14):9.82g(0.0908435モル)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):26.86g(0.0913モル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。ついで、N−メチルモルホリン(有機アミン化合物):27.7g(0.2739モル)を、ゆっくりと添加し、反応温度60℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、水系の粒子分散ポリイミド前駆体溶液(A2)を得た。粒子の質量/(全固形分の質量)は0.74、固形分濃度:24.3質量%。得られた粒子分散ポリイミド前駆体溶液(A2)を水で希釈し、既述の方法により粒度分布を測定したところ、PMMA粒子分散液−2と同様に平均粒径は0.33μmの単一のピークを持ち、良好な分散状態であった。また、既述の方法により算出した体積粒度分布指標(GSDv)は1.18であった。
上記で得た粒子分散ポリイミド前駆体溶液を、アプリケータを用いて幅200mmのガラス基材に、焼成後の膜厚が600μmとなるよう塗布し、80℃で1時間送風乾燥を行った後、80℃から昇温速度2℃/分で、400度まで昇温し、さらにその温度で90分保持した。その後、室温(25℃)まで放冷し、水に浸漬して多孔質ポリイミド成形体(PI−6)を得た。
得られた多孔質ポリイミド成形体(PI−6)の平均細孔径D50は330nmであった。
(PMMA粒子分散液−3の作製)
メタクリル酸メチル670質量部、界面活性剤Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)12.4質量部、イオン交換水670質量部を混合し、ディゾルバーにより、1,500回転で30分間攪拌、乳化を行い、モノマー乳化液を作製した。続いて、Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)1.10質量部、イオン交換水1500質量部を反応容器に投入した。窒素気流下、75℃に加熱した後、モノマー乳化液のうち75質量部を添加した後に、過硫酸アンモニウム15質量部をイオン交換水98質量部に溶解させた重合開始剤溶液を10分かけて滴下した。滴下後50分間反応させた後に、残りのモノマー乳化液を220分かけて滴下し、さらに50分間反応させた後、冷却して、樹脂粒子の分散液であるPMMA粒子分散液−3を得た。固形分濃度は18.5質量%であった。この樹脂粒子の平均粒径は0.82μmであった。
PMMA粒子分散液−3:樹脂粒子分散水溶液438.6g(粒子:100g、水:338.6g)、イオン交換水:40.66g、N−メチルピロリドン:2.14g、ジアミン−1(信越化学工業製、KF−8010 分子量860):0.39g(0.0004565モル)、p−フェニレンジアミン(分子量108.14):9.82g(0.0908435モル)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):26.86g(0.0913モル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。ついで、N−メチルモルホリン(有機アミン化合物):27.7g(0.2739モル)を、ゆっくりと添加し、反応温度60℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、水系の粒子分散ポリイミド前駆体溶液(A3)を得た。粒子の質量/(全固形分の質量)は0.74、固形分濃度:18.5質量%。得られた粒子分散ポリイミド前駆体溶液(A3)を水で希釈し、既述の方法により粒度分布を測定したところ、PMMA粒子分散液−3と同様に平均粒径は0.82μmの単一のピークを持ち、良好な分散状態であった。また、既述の方法により算出した体積粒度分布指標(GSDv)は1.18であった。
上記で得た粒子分散ポリイミド前駆体溶液を、アプリケータを用いて幅200mmのガラス基材に、焼成後の膜厚が600μmとなるよう塗布し、80℃で1時間送風乾燥を行った後、80℃から昇温速度2℃/分で、400度まで昇温し、さらにその温度で90分保持した。その後、室温(25℃)まで放冷し、水に浸漬して多孔質ポリイミド成形体(PI−7)を得た。
得られた多孔質ポリイミド成形体(PI−7)の平均細孔径D50は820nmであった。
(ポリイミド前駆体溶液の作製)
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、水:900gを充填した。ここに、p−フェニレンジアミン(分子量108.14):27.28g(252.27ミリモル)と、メチルモルホリン(有機アミン化合物):50.00g(494.32ミリモル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。更に、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度20℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、ポリイミド前駆体溶液を得た。
得られた多孔質ポリイミド成形体(RPI−1)の平均細孔径D50は360nmであった。
反応容器に脱水NMP(N−メチル−2−ピロリドン)1リットルを入れ、パラジアミノベンゼン20gを溶解したのち0℃へ冷却した。これに無水ピロメリット酸二水和物40gを添加し1時間反応させ、さらに室温下2時間反応後アニリン0.01gを添加し30分反応させ粘ちょう溶液を得た。この溶液からガラス板上に厚み約1.5mmのフィルムを作製し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を28質量%含有するNMP溶液へ導入し、ゲル状フィルムを得た。これをNMP溶媒へ浸漬した後、2.3倍の倍率で同時二軸延伸し、枠固定した後250℃で乾燥し、ポリイミド成形体を得た。上記方法で得られたポリイミド成形体100質量部とN−メチルピロリドン1.5質量部をCO2光散乱セル中に挿入し、炭酸ガス440000質量部を注入して16MPaまで加圧した。その後、CO2光散乱セルの入ったオートクレーブを250℃に上げその様子をデジタル顕微鏡で観察した。この時点でフィルムが膨潤した状態でフィルム状のポリイミド成形前駆体が形成されていることを確認した。その後、200℃/hrの速度で温度を降下させ常温、常圧にしたのち膜厚が500μmとなるように多孔質ポリイミド成形体(RPI−2)を得た。
得られた多孔質ポリイミド成形体(RPI−2)の平均細孔径D50は620nmであった。
膜厚が600μmになるように多孔質ポリイミド成形体を形成した以外は、比較例2と同様にして、多孔質ポリイミド成形体(RPI−3)を形成した。
得られた多孔質ポリイミド成形体(RPI−3)の平均細孔径D50は620nmであった。
各例で得た多孔質ポリイミド成形体について、既述の方法にしたがって、膜厚の測定を行った。
各例で得た多孔質ポリイミド成形体について、既述の方法にしたがって、細孔径分布指標の測定を行った。
各例で得た多孔質ポリイミド成形体について、既述の方法にしたがって、1MHzにおける比誘電率および誘電正接の測定を行った。
各例で得た多孔質ポリイミド成形体について、既述の方法にしたがって、引張強度の測定を行った。
既述の方法により、各例で得られた多孔質ポリイミド成形体について、空孔径の評価(長径/短径の比率が1.5を超える割合)を行った。
既述の方法により、各例で得られた多孔質ポリイミド成形体の発生ガス成分を熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(以下、GC−MS)により分析した。
銅箔上に厚さ600μmnの多孔質ポリイミド成形体を設けた多孔体基板を作製し、高周波回路基板に適した場合における伝送線路における伝送損失を評価した。銅によるスパッタと電界メッキを施し、厚さ8μmの銅箔層を形成させ、両面銅箔の銅張積層板を作製した。得られた両面銅箔の銅張積層板にφ75μmのスルーホール加工、メッキを施し厚さ12μmの銅箔層を形成させた。その後、東京応化工業社製フィルムレジスト(HR−130)を100℃、3kg/cm2でラミネートし、銅箔上にレジストフィルムを積層し、シングルエンドマイクロストリップ線路(MSL)[線路長(L)5cm,線路幅(W)100μm]となるマスクを装着し、超高圧水銀ランプで30mJ/cm2で露光し、0.5%Na2CO3水溶液をスプレーして現像し、片面銅箔上のレジストフィルムを加工してマスクを形成した。
次に、スプレーを用いて、和光純薬社製FeCl3/HClエッチング液をマスク面に吹き付け、銅箔をエッチングした後、配線基板を流水で1分間洗浄し、希HClに2分間浸漬し、さらに流水で1分間洗浄した。その後、2%NaOH水溶液に浸漬し、レジストフィルムを剥離させた後に流水で2分間洗浄し、120℃で60分間乾燥して伝送損失測定用サンプルを得た。
多孔体基板に基づく伝送損失測定用のサンプル10をテクトロニクス社製「デジタルサンプリングオシロスコープDSA8200、テクトロニクス社製「TDRモジュール80E04」を用いてTDR評価を行い、特性インピーダンスが50±0.5Ω以内となることを確認した。
伝送損失の評価には、アジレントテクノロジー社製「ベクトルネットワークアナライザ8722D」に、50Ω同軸ケーブルを介して基板にカスケードマイクロテック社製「プローブACP40−GSG125」によりプローブ先端をMSLの端子部分に接続した。伝送損失として路線長の異なるMSLのSパラメータ(S21)をそれぞれ測定した。10GHz、40GHzにおける伝送路の損失量(dB/cm)を算出するため、MSLの端子部分の伝送損失への影響を除去(線路長5cmの測定値−線路長3cmの測定値)し、その残りの値から単位長さ当たりの損失量(dB/cm)を算出した。
比誘電率の面内ムラを抑制することにより、10GHzの単位長当たりの損失量が−0.50[db/cm]以内になり、導電体損失が低減したことで伝送損失が向上し、良好な伝送特性を示すことがわかる。
Claims (10)
- 膜厚が550μm以上3000μm以下であり、水銀圧入法によって測定される細孔径分布において、数基準で、細孔の小径側から累積した16%になるときの細孔径D16に対する細孔の小径側から累積した84%になるときの細孔径D84の割合の平方根((D84/D16)1/2)が1.2以上1.6以下であり、1MHzにおける比誘電率が1.8以下であり、誘電正接が0.01以下である多孔質ポリイミド成形体。
- 球状の空孔を備え、長径と短径の比(長径/短径)が1.5を超える空孔の割合が20%以下である請求項1に記載の多孔質ポリイミド成形体。
- 前記(長径/短径)が1.5を超える空孔の割合が10%未満である請求項2に記載の多孔質ポリイミド成形体。
- 有機アミン化合物を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド成形体。
- 前記有機アミン化合物が、3級アミン化合物である請求項4に記載の多孔質ポリイミド成形体。
- 前記有機アミン化合物が、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−メチルピペリジン、及びN−エチルピペリジンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項5に記載の多孔質ポリイミド成形体。
- 有機アミン化合物の含有量が前記多孔質ポリイミド成形体の全体に対し0.001質量%以上である請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド成形体。
- ポリイミド樹脂以外の樹脂を含有する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド成形体。
- ポリイミド樹脂以外の樹脂の含有量が前記多孔質ポリイミド成形体の全体に対し0.005質量%以上1.0質量%以下である請求項8に記載の多孔質ポリイミド成形体。
- 回路基板用である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド成形体。
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