JP6904109B2 - ポリイミド前駆体溶液、及び多孔質ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents

ポリイミド前駆体溶液、及び多孔質ポリイミドフィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリイミド前駆体溶液、多孔質ポリイミドフィルムの製造方法、及び多孔質ポリイミドフィルム
に関する。
ポリイミド樹脂は、機械的強度、化学的安定性、耐熱性に優れた特性を有する材料であり、これらの特性を有する多孔質のポリイミドフィルムが注目されている。
例えば、特許文献1には、空孔率が60%以上で、空孔が三次元規則配列構造を有し、空孔が互いに連なって連結された多孔質ポリイミド樹脂膜からなるリチウム二次電池用セパレーターが記載されている。
特許文献2には、ポリイミドからなる孔を有する有機多孔体と、孔内にカチオン成分とアニオン成分とを含有する電解質材料を保持したイオン伝導体が記載されている。
特許文献3には、ポリアミド酸若しくはポリイミド、シリカ粒子及び溶媒を混合してワニスを製造する、又はシリカ粒子が分散した溶剤中でポリアミド酸若しくはポリイミドを重合してワニスを製造するワニス製造工程、ワニス製造工程で製造されたワニスを基板に製膜後、イミド化を完結させて、ポリイミド−シリカ複合膜を製造する複合膜製造工程、及び、複合膜製造工程で製造されたポリイミド−シリカ複合膜のシリカを除去するシリカ除去工程を有する多孔質ポリイミド膜の製造方法が記載されている。
特許文献4には、シリカ粒子を充填後、焼結して、多孔質シリカ製鋳型を得る多孔質シリカ製鋳型の製造工程、多孔質シリカ製鋳型の製造工程で得られた多孔質シリカ製鋳型の空隙にポリイミドを充填するポリイミド充填工程およびポリイミドが充填された多孔質シリカ製鋳型からシリカを除去して、多孔質ポリイミドを得るシリカ除去工程を有する多孔質ポリイミドの製造方法が記載されている。
また、特許文献5には、正極と、負極と、平均細孔径が5μm以下であり、ポリイミドあるいはポリイミド前駆体の溶液塗布後、相分離によって多孔質膜化した多孔質ポリイミド膜を含むセパレータ層と、を有する非水電解液二次電池が記載されている。
特許文献6には、ポリイミド等の耐熱性樹脂、ポリオキシアルキレン樹脂を含有する加熱消滅性樹脂粒子、及び、溶媒を混合し、フィルム用樹脂組成物を調製する工程、フィルム用樹脂組成物を製膜する工程、及び、製膜されたフィルム用樹脂組成物を加熱する工程を有する多孔質樹脂の製造方法によって得られた多孔質ポリイミドフィルムが記載されている。
特許文献7には、ポリイミド前駆体溶液に、水溶性のポリエチレングリコールなどの樹脂を溶解した溶液を用いて膜状にしたのち、水などの貧溶剤と接触させ、ポリアミック酸を析出、多孔化を促進し、イミド化する方法も記載されている。
特許5331627号公報 特開2008−034212号公報 特開2012−107144号公報 特開2011−111470号公報 特開平10−302749号公報 特開2010−024385号公報 特開2014−240189号公報
従来から、セパレータ、分離膜等の用途に多孔質ポリイミドフィルムが用いられている。しかし、この多孔質ポリイミドフィルムの製造に用いられるポリイミド前駆体溶液において、溶液中に分散された樹脂粒子が凝集し、この凝集に伴って樹脂粒子の沈降が生じることがあった。
本発明は、粒子径分布曲線において極大を一つだけ有する樹脂粒子のみを含有する場合に比べ、樹脂粒子の沈降が抑制されたポリイミド前駆体溶液を提供することを課題とする。
上記課題は、以下の本発明によって解決される。即ち、
に係る発明は、
水性溶媒と、粒子径分布曲線において、より小径側に存在する極大[P]及びより大径側に存在する極大[P]の少なくとも2つの極大を有する樹脂粒子と、ポリイミド前駆体と、を含有するポリイミド前駆体溶液。
に係る発明は、
前記極大[P]における粒子径に対する、前記極大[P]における粒子径の比(%)が10%以上60%以下の範囲であるに記載のポリイミド前駆体溶液。
に係る発明は、
前記樹脂粒子の全体の体積平均粒子径が100nm以上1000nm以下である又はに記載のポリイミド前駆体溶液。
に係る発明は、
前記極大[P]を有するピークに含まれる粒子の量[V]と、前記極大[P]を有するピークに含まれる粒子の量[V]と、の比[ /V ]が体積比で1/4以上2/3以下であるのいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
に係る発明は、
前記極大[P]における粒子径が10nm以上200nm以下、前記極大[P]における粒子径が300nm以上500nm以下であるのいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
に係る発明は、
前記極大[P]を有するピークに含まれる粒子の変動係数、及び前記極大[P]を有するピークに含まれる粒子の変動係数が、いずれも15%以下であるのいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
に係る発明は、
前記樹脂粒子の含有量が、前記ポリイミド前駆体の固形分100質量部に対して、20質量部以上600質量部以下であるのいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
に係る発明は、
前記水性溶媒中における水の含有量が50質量%以上100質量%以下であるのいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
に係る発明は、
に記載のポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記樹脂粒子を含む皮膜を形成する第1の工程と、
前記皮膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化しポリイミドフィルムを形成すると共に、前記樹脂粒子を除去する処理を施す第2の工程と、
を有する多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
10に係る発明は、
前記樹脂粒子を除去する処理が、前記樹脂粒子を有機溶剤に溶解することで除去する処理であるに記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
11に係る発明は、
前記樹脂粒子を除去する処理が、前記樹脂粒子を加熱により除去する処理であるに記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
12に係る発明は、
孔径分布曲線において、より小径側に存在する極大[P]及びより大径側に存在する極大[P]の少なくとも2つの極大を有する多孔質構造を備える多孔質ポリイミドフィルム。
、又はに係る発明によれば、粒子径分布曲線において極大を一つだけ有する樹脂粒子のみを含有する場合に比べ、樹脂粒子の沈降が抑制されたポリイミド前駆体溶液が提供される。
に係る発明によれば、極大[P]における粒子径に対する極大[P]における粒子径の比が10%未満である場合に比べ、樹脂粒子の沈降が抑制されたポリイミド前駆体溶液が提供される。
に係る発明によれば、極大[P]を有するピークに含まれる粒子の量[V]と極大[P]を有するピークに含まれる粒子の量[V]との比[ /V ]が体積比で2/3未満である場合に比べ、樹脂粒子の沈降が抑制されたポリイミド前駆体溶液が提供される。
に係る発明によれば、極大[P]を有するピークに含まれる粒子の変動係数、及び極大[P]を有するピークに含まれる粒子の変動係数の少なくとも一方が15%超えである場合に比べ、樹脂粒子の沈降が抑制されたポリイミド前駆体溶液が提供される。
10、又は11に係る発明によれば、粒子径分布曲線において極大を一つだけ有する樹脂粒子のみを含有するポリイミド前駆体溶液を用いて多孔質ポリイミドフィルムを製造する場合に比べ、多孔質ポリイミドフィルムにおける樹脂粒子の残存が抑制された多孔質ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
12に係る発明によれば、孔径分布曲線において極大を一つだけ有する多孔質構造を備えた場合に比べ、樹脂粒子の残存が抑制された多孔質ポリイミドフィルムが提供される。
樹脂粒子の粒子径分布曲線の一例を概略的に示すグラフである。 樹脂粒子の粒子径分布曲線の他の一例を概略的に示すグラフである。 樹脂粒子の粒子径分布曲線の他の一例を概略的に示すグラフである。
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
<ポリイミド前駆体溶液>
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液は、水性溶媒と、樹脂粒子と、ポリイミド前駆体と、を含有する。
そして、樹脂粒子が、粒子径分布曲線において、より小径側に存在する極大[P]及びより大径側に存在する極大[P]の少なくとも2つの極大を有する。
従来から、例えばリチウム電池等の電池セパレータ、電解コンデンサー用のセパレータ、燃料電池等の電解質膜、電池電極材、気体又は液体の分離膜、低誘電率材料、ろ過膜等の用途に、多孔質ポリイミドフィルムが用いられている。そして、多孔質ポリイミドフィルムを製造するための溶液として、水性溶媒とポリイミド前駆体とを含有しかつ樹脂粒子が分散されたポリイミド前駆体溶液が用いられている。なお、樹脂粒子が分散されたポリイミド前駆体溶液による多孔質ポリイミドフィルムの製造は、例えば、ポリイミド前駆体溶液を塗布、乾燥して皮膜を形成し、さらにこの皮膜をイミド化してポリイミドフィルムを形成すると共に、樹脂粒子を除去することで空孔を形成して行われる。
しかし、溶液中に分散された樹脂粒子が凝集し、この凝集に伴って樹脂粒子の沈降が生じることがあった。樹脂粒子の沈降が発生した溶液を用いて多孔質ポリイミドフィルムを製造した場合、粒径の大きな凝集塊がフィルム中で、他の樹脂粒子と連結した構成を取らずに孤立して存在し、その結果樹脂粒子を除去する工程でも樹脂粒子の凝集塊が除去されずに残存することがあった。また、樹脂粒子の凝集塊がフィルムから溶出することでフィルムにひびが入ることもあった。
これに対し、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液によれば、上記の構成を有する樹脂粒子を含有することで、樹脂粒子の凝集に伴う沈降が抑制される。
その理由は、以下のように推察される。
本実施形態では、樹脂粒子が、粒子径分布曲線において、より小径側に存在する極大[P]及びより大径側に存在する極大[P]の少なくとも2つの極大を有する。極大[P]及び極大[P]を有することは、大粒径側の樹脂粒子(大径粒子)と小粒径側の樹脂粒子(小径粒子)との、粒子径の異なる少なくとも2種の樹脂粒子が含まれていることを表す。粒子径の異なる2種以上の樹脂粒子が含まれていることにより、大径粒子のみが凝集して非常に大きな凝集塊となることが抑制され、つまり大径粒子と共に小径粒子も凝集することで、凝集塊が大きくなり過ぎることが抑制されるものと考えられる。その結果、溶液中での樹脂粒子の分散性が向上する。
以上の点から、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液は、樹脂粒子の沈降が抑制されるものと推察される。
また、樹脂粒子の沈降が抑制されることで、多孔質ポリイミドフィルムを製造した際に、粒径の大きな凝集塊が孤立して存在することが抑制され、フィルム中に樹脂粒子の凝集塊が残存することが抑制され、かつ樹脂粒子の凝集塊がフィルムから溶出することで生じるフィルムにおけるひびの発生も抑制される。
さらに、小径粒子が存在することで、樹脂粒子の凝集塊同士の間を埋めるようにこの小径粒子が入り込むため、フィルムにおいては空孔の連結が良好に形成される。よって、この観点からも、凝集塊が孤立して存在することが抑制される。
ここで、極大[P]及び極大[P]について説明する。
(態様1)
本実施形態では、樹脂粒子の粒子径分布曲線において、より小径側に存在する極大[P]と、より大径側に存在する極大[P]と、の少なくとも2つの極大を有する。
こうした粒子径分布曲線の一態様として、例えば、図1に示す粒子径分布曲線ように、極大(P)を最高点とするピーク(P1)と、極大(P)を最高点とするピーク(P1)とが存在し、かつこの両ピークが底T1を挟んで別々に存在している態様が挙げられる。
なお、図1では、ピーク(P1)のピーク面積は底T1より粒子径が小さい側の領域におけるピーク部分の面積を指し、かつピーク(P1)のピーク面積は底T1より粒子径が大きい側の領域におけるピーク部分の面積を指す。
(態様2)
また、図2に示す粒子径分布曲線ように、極大(P)を最高点とするピーク(P2)と極大(P)を最高点とするピーク(P2)とが存在するが、この両ピークが極小点T2を挟んで繋がっている場合態様が挙げられる。
なお、図2では、ピーク(P2)のピーク面積は極小点T2より粒子径が小さい側の領域におけるピーク部分の面積を指し、かつピーク(P2)のピーク面積は極小点T2より粒子径が大きい側の領域におけるピーク部分の面積を指す。
(態様3)
また、図3に示す粒子径分布曲線ように、極大(P)を最高点とするピーク(P3)と極大(P)を最高点とするピーク(P3)とが存在するが、この両ピークの間にも高さが低い極大が1つ又は複数存在した態様が挙げられる。
なお、図3では、ピーク(P3)とピーク(P3)との境界が明確でないため、極大(P)と極大(P)との中間点(T3)をピークの境界とする。つまり、ピーク(P3)のピーク面積は中間点T3より粒子径が小さい側の領域におけるピーク部分の面積を指し、かつピーク(P3)のピーク面積は中間点T3より粒子径が大きい側の領域におけるピーク部分の面積を指す。
なお、極大(P)及び極大(P)以外にも他の極大を有していてもよい(つまり極大を3つ以上有していてもよい)。
・極大[P]と極大[P]との粒子径の比
極大[P]における粒子径に対する、極大[P]における粒子径の比(%)は、10%以上60%以下が好ましく、20%以上50%以下がより好ましく、25%以上40%以下がさらに好ましい。
上記粒子径の比が10%以上であることで、小径粒子と大径粒子との粒子径が十分に離れており、沈降がより抑制され易くなる。
上記粒子径の比が60%以下であることで、小径粒子と大径粒子との粒子径が離れ過ぎず、粒子間の隙間を埋めやすくなる点で優れる。
・極大[P]と極大[P]とのピーク面積の比
極大[P]を有するピークに含まれる粒子の量(つまりピーク面積)[V]と、前記極大[P]を有するピークに含まれる粒子の量(つまりピーク面積)[V]と、の比[ /V ]は、体積比で1/4以上2/3以下が好ましく、1/3以上1/2以下がより好ましく、1.1/3以上0.95/2以下がさらに好ましい。
上記ピーク面積の比が1/4以上2/3以下であることで、小径粒子と大径粒子との一方のみが多く存在し過ぎることが抑制され、沈降がより抑制され易くなると共に、多孔質ポリイミドフィルムにおける空孔が良好に形成される。
・小径粒子の極大[P]の粒子径
極大[P]は、粒子径10nm以上200nm以下の範囲に存在していることが好ましく、30nm以上150nm以下がより好ましく、50nm以上100nm以下がさらに好ましい。
小径粒子の極大[P]の粒子径が10nm以上200nm以下であることで、適度な粒子径の小径粒子が存在することで、沈降がより抑制され易くなる。
・変動係数
大径粒子の極大[P]を有するピークに含まれる粒子の変動係数、及び小径粒子の極大[P]を有するピークに含まれる粒子の変動係数は、いずれも15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましく、0%に近いほど好ましい。
大径粒子及び小径粒子における変動係数がいずれも15%以下であることで、どちらの粒子もその粒度分布がシャープであることを表し、沈降がより抑制され易くなる。
・全体の体積平均粒子径
樹脂粒子の全体の体積平均粒子径は、100nm以上1000nm以下であることが好ましく、150nm以上500nm以下がより好ましく、200nm以上400nm以下がさらに好ましい。
全体の体積平均粒子径が100nm以上1000nm以下であることで、適度な粒子径の樹脂粒子が存在し、多孔質ポリイミドフィルムにおける空孔が良好に形成される。
なお、樹脂粒子の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引いて粒子径分布曲線が得られる。なお、粒子径分布曲線は、50nm刻みで粒子の数を数えて分布曲線を描く。また、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒子径D50vとする。
次いで、ポリイミド前駆体溶液について、その製造方法を含めて説明する。
<ポリイミド前駆体溶液の製造方法>
ポリイミド前駆体溶液には、水性溶剤及びポリイミド前駆体を含み、さらに有機アミン化合物を含んでいてもよい。また、多孔質構造を形成するために、前記の構成を有する樹脂粒子を含有するが、樹脂粒子は表面に酸性基を有する樹脂粒子であってもよい。
樹脂粒子として表面に酸性基を有する樹脂粒子を用いることで、表面に酸性基を有さない樹脂粒子を用いる場合に比べて、樹脂粒子の分散性が向上する。この理由は、以下のように推測される。
ポリイミドフィルムは、例えば、有機溶剤に溶解したポリイミド前駆体溶液(例えば、N−メチルピロリドン(以下、「NMP」と称することがある)や、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」と称することがある)等の高極性有機溶剤に溶解した状態のポリイミド前駆体溶液を塗布したのち、加熱成形して得られる。
ポリイミドフィルムは、目的に応じて、無機粒子や、樹脂粒子等の粒子を含有させる場合があり、この場合、粒子を混合したポリイミド前駆体溶液が使用される。例えば、高極性有機溶剤に溶解したポリイミド前駆体溶液に無機粒子を混合して、粒子分散ポリイミド前駆体溶液を作製した場合、このポリイミド前駆体溶液中において、無機粒子の分散性は低い。
一方、高極性有機溶剤に溶解したポリイミド前駆体溶液に樹脂粒子を混合する場合、一般的な樹脂粒子(例えば、ポリスチレン樹脂粒子等)では、高極性有機溶剤により、樹脂粒子が溶解する場合があり、このポリイミド前駆体溶液中において、樹脂粒子の分散性は低い。また、例えば、高極性有機溶剤に溶解し難い樹脂粒子を乳化重合等により作製した場合には、高極性有機溶剤に溶解したポリイミド前駆体溶液と混合するために、高極性有機溶剤に置換する場合がある。この場合、高極性有機溶剤に置換するために、樹脂粒子の分散液から樹脂粒子を取り出す場合があり、取り出された樹脂粒子は、凝集することがあり、分散性が低い場合がある。また、表面に酸性基を有さない樹脂粒子を、水性溶剤のポリイミド前駆体溶液に分散する場合、ポリイミド前駆体を水性溶剤に溶解するために有機アミン等の多量の塩基性物質と塩を形成させる必要があるため、樹脂粒子の粒径や濃度によっては分散性が低い場合がある。
これに対し、本実施形態においてポリイミド前駆体溶液に表面に酸性基を有する樹脂粒子を用いることで、樹脂粒子の分散性が向上する。これは、樹脂粒子の表面に存在する酸性基が、ポリイミド前駆体を水性溶剤に溶解するために用いた有機アミン化合物等の塩基と塩を形成し、水系溶剤への分散性が高まるためと考えられる。また、表面に酸性基を有する樹脂粒子を取出し、乾燥する必要がないため、乾燥時の樹脂粒子の凝集を抑制した状態でポリイミド前駆体を形成するためであると考えられる。さらに、水性溶剤中のポリイミド前駆体に存在する、未反応のアミン末端が、樹脂粒子の表面酸性基と対を形成し、樹脂粒子の分散剤として機能し、樹脂粒子の分散性が向上するものと考えられる。
以上から、本実施形態において表面に酸性基を有する樹脂粒子を用いることで、ポリイミド前駆体溶液が、表面に酸性基を有さない樹脂粒子とポリイミド前駆体溶液から形成された場合に比べて、樹脂粒子の分散性が向上すると推測される。
また、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液の製造方法では、予め樹脂粒子を分散させた樹脂粒子分散液中で、ポリイミド前駆体を形成することが好ましい。これにより、ポリイミド前駆体溶液は、樹脂粒子分散液の作製からポリイミド前駆体溶液の作製まで、一つの系内(例えば、一つの容器内)で得られるため、ポリイミド前駆体溶液を製造する工程が簡略化される。
なお、上記方法によって得られるポリイミド前駆体溶液は、樹脂粒子の分散性が向上している。そのため、このポリイミド前駆体溶液から得られた樹脂粒子含有ポリイミドフィルムは、樹脂粒子の分布のバラつきが抑制されやすい。
さらに、表面に酸性基を有する樹脂粒子を含むポリイミド前駆体溶液を用いて、塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させて皮膜を形成し、この皮膜を加熱してイミド化し、かつ樹脂粒子を除去することによって多孔質ポリイミドフィルムが形成される。この方法によって形成された多孔質ポリイミドフィルムは、空孔の分布のバラつきが抑制されやすい。また、空孔の形状、空孔径等のバラつきが抑制されやすい。この理由は、以下のように推測される。
本実施形態において表面に酸性基を有する樹脂粒子を含むポリイミド前駆体溶液は分散性が向上しているため、樹脂粒子を除去した後の多孔質ポリイミドフィルムは、空孔の分布のバラつきが抑制されやすいと考えられる。
また、表面に酸性基を有する樹脂粒子を用いることにより、空孔の形状、空孔径等はバラつきが抑制されやすいと考えられる。これは、ポリイミド前駆体のイミド化工程において、残留応力の緩和に有効に寄与しているためであると考えられる。
さらに、水性溶剤に、ポリイミド前駆体を溶解させているため、ポリイミド前駆体溶液の沸点は100℃程度になる。そのため、ポリイミド前駆体と樹脂粒子とを含む皮膜を加熱するに伴って、速やかに溶剤が揮発した後、イミド化反応が進行する。そして、皮膜中の樹脂粒子が熱による変形が生じる前に、流動性を失うとともに有機溶剤に不溶となる。そのため、空孔の形状が保持されやすくなるためとも考えられる。
また、表面に酸性基を有する樹脂粒子を含むポリイミド前駆体溶液を用いて、樹脂粒子含有ポリイミド皮膜を形成し、樹脂粒子を除去して形成された多孔質ポリイミドフィルムは、亀裂の発生が抑制されやすい。これは、表面に酸性基を有する樹脂粒子を用いることにより、ポリイミド前駆体のイミド化工程において、残留応力の緩和に有効に寄与しているものと推測される。
なお、多孔質ポリイミドフィルムを形成する方法としては、例えば、シリカ粒子を分散させたポリイミド前駆体溶液を使用して皮膜を形成し、この皮膜を焼成した後に、シリカ粒子を除去して形成する方法等が挙げられる。しかしながら、この方法によれば、シリカ粒子を除去する処理において、フッ酸等の薬品を使用する必要がある。そのため、これらの製造方法では、生産性が低く、高コストである。
そして、シリカ粒子を用いた場合には、イミド化工程において、体積収縮を吸収し難いため、イミド化後の多孔質ポリイミドフィルムに亀裂が生じやすいと考えられる。また、シリカ粒子を用いた場合には、フッ酸等の薬品を使用するために、イオンが不純物として残留しやすくなると考えられる。
これに対し、シリカ粒子ではなく樹脂粒子を用いる方法で得られた多孔質ポリイミドフィルムは、樹脂粒子の除去にフッ酸を使用することがないため、イオンが不純物として残留することが抑制される。
ポリイミド前駆体溶液の製造方法は、以下の方法が挙げられる。
まず、水性溶剤に、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する。その後、前記樹脂粒子分散液中で、有機アミン化合物の存在下、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリイミド前駆体を形成する。
具体的には、水性溶剤に樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(以下「樹脂粒子分散液準備工程」と称することがある。)と、樹脂粒子分散液に対し、有機アミン化合物、テトラカルボン酸二無水物、及び、ジアミン化合物を混合して、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリイミド前駆体を形成する工程(以下、「ポリイミド前駆体形成工程」と称することがある。)とを有する。
(樹脂粒子分散液準備工程)
樹脂粒子分散液準備工程は、水性溶剤に、樹脂粒子が分散している樹脂粒子分散液が得られるのであれば、その方法は特に限定されない。
例えば、ポリイミド前駆体溶液に溶解しない樹脂粒子、樹脂粒子分散液用の水性溶剤、をそれぞれ計量し、これらを混合、攪拌して得る方法が挙げられる。樹脂粒子と水性溶剤とを混合、攪拌する方法は特に制限されない。例えば、水性溶剤を攪拌しながら樹脂粒子を混合する方法などが挙げられる。また、樹脂粒子の分散性を高める点で、例えば、イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との少なくとも一方を混合してもよい。
また、樹脂粒子分散液は、前記水性溶剤中で樹脂粒子を造粒した樹脂粒子分散液であってもよい。水性溶剤中で樹脂粒子を造粒する場合、水性溶剤中で単量体成分を重合して形成された樹脂粒子分散液を作製してもよい。この場合、公知の重合法によって得られた分散液であってもよい。例えば、樹脂粒子が、ビニル樹脂粒子である場合には、公知の重合法(乳化重合、ソープフリー乳化重合、懸濁重合、ミニエマルション重合、マイクロエマルション重合等のラジカル重合法)が適用され得る。
例えば、ビニル樹脂粒子の製造に乳化重合法を適用する場合、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤を溶解させた水中に、スチレン類、(メタ)アクリル酸類等のビニル基を有する単量体を加え、さらに必要に応じてドデシル硫酸ナトリウム、ジフェニルオキサイドジスルホン酸塩類等の界面活性剤を添加し、攪拌を行いながら加熱することにより重合を行い、ビニル樹脂粒子が得られる。そして、単量体成分として酸性基を有する単量体を用いることで、表面に酸性基を有するビニル樹脂となる。
なお、樹脂粒子分散液形成工程では、上記方法に限られず、水性溶剤に分散された市販品の樹脂粒子分散液を準備してもよい。また、市販品の樹脂粒子分散液を用いる場合、目的に応じて、水性溶剤で希釈等の操作を行ってもよい。さらに、分散性に影響のない範囲で、有機溶剤に分散している樹脂粒子分散液を水性溶剤に置換してもよい。
(ポリイミド前駆体形成工程)
次に、樹脂粒子分散液中で、有機アミン化合物の存在下、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(ポリイミド前駆体)を生成してポリイミド前駆体溶液を得る。
この方法によれば、水性溶剤を適用するため、生産性も高く、ポリイミド前駆体溶液が1段階で製造される点で工程の簡略化の点で有利である。
具体的には、樹脂粒子分散液準備工程で準備した樹脂粒子分散液に、有機アミン化合物、テトラカルボン酸二無水物、及びジアミン化合物を混合する。そして、有機アミン化合物の存在下で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して、樹脂粒子分散液中で、ポリイミド前駆体を形成する。なお、樹脂粒子分散液に、有機アミン化合物、テトラカルボン酸二無水物、及びジアミン化合物を混合する順序は特に限定されるものではない。
樹脂粒子を分散させた樹脂粒子分散液中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合する際に、樹脂粒子分散液中の水性溶剤をそのまま利用してポリイミド前駆体を形成してもよい。また、必要に応じて、水性溶剤を新たに混合してもよい。水性溶剤を新たに混合する場合、水性溶剤は、非プロトン性極性溶剤を少量含む水性溶剤であってもよい。また、目的に応じて、その他の添加剤を混合してもよい。
以上の工程により、水性溶剤、樹脂粒子(好ましくは表面に酸性基を有する樹脂粒子)、有機アミン化合物、及びポリイミド前駆体を含有している、樹脂粒子が分散したポリイミド前駆体溶液が得られる。
次に、ポリイミド前駆体溶液を構成する材料について説明する。
(水性溶剤)
水性溶剤は、樹脂粒子分散液中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合する際に、樹脂粒子分散液の作製に用いた樹脂粒子分散液中の水性溶剤をそのまま利用してもよい。また、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合する際に、水性溶剤を重合に適するように調製してもよい。
水性溶剤は、水を含む水性溶剤である。具体的には、水性溶剤は、全水性溶剤に対して水を50質量%以上含有する溶剤であることがよい。水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。
水の含有量は、全水性溶剤に対して、50質量%以上100質量%以下が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましく、80質量%以上100質量%以下が更に好ましい。
樹脂粒子分散液を作製する際に用いる水性溶剤は、水を含む水性溶剤である。具体的には、樹脂粒子分散液用の水性溶剤は、全水性溶剤に対して水を50質量%以上含有する水性溶剤であることがよい。水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。また、水以外の溶性の有機溶剤を含む場合には、例えば、水溶性アルコール系溶剤を用いてもよい。なお、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
水性溶剤が水以外の溶剤を含む場合、水以外の溶剤としては、例えば、水溶性有機溶剤、非プロトン性極性溶剤が挙げられる。水以外の溶剤としては、ポリイミド層の透明性、機械的強度等の点から、水溶性の有機溶剤が好ましい。特に、透明性、機械的強度に加え、耐熱性、電気特性、耐溶剤性等のポリイミド層の諸特性向上の点から、水性溶剤は、非プロトン性極性溶剤を含ませてもよい。この場合、ポリイミド前駆体溶液中の樹脂粒子の溶解、膨潤を防ぐため、全水性溶剤に対して40質量%以下、好ましくは30質量%以下であることがよい。また、ポリイミド前駆体溶液を乾燥し、層形成する際の樹脂粒子の溶解、膨潤を防ぐため、ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体固形分に対し、5質量%以上300質量%以下、好ましくは、5質量%以上250質量%以下、より好ましくは、5質量%以上200質量%以下で用いることがよい。ここで、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
上記水溶性の有機溶剤は、1種単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。
上記水溶性の有機溶剤としては、後述の樹脂粒子が溶解しないものが好ましい。この理由は、例えば、水と水溶性の有機溶剤とを含む水性溶剤とした場合に、樹脂粒子分散液中で樹脂粒子を溶解していなくても、製膜の過程で樹脂粒子が溶解してしまう懸念があるためであるが、製膜の過程で樹脂粒子の溶解、膨潤が抑制できる範囲で使用してもよい。
水溶性エーテル系溶剤は、一分子中にエーテル結合を持つ水溶性の溶剤である。水溶性エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トリオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、水溶性エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンが好ましい。
水溶性ケトン系溶剤は、一分子中にケトン基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの中でも、水溶性ケトン系溶剤としては、アセトンが好ましい。
水溶性アルコール系溶剤は、一分子中にアルコール性水酸基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性アルコール系溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールのモノアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。これらの中でも、水溶性アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールのモノアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。
水性溶剤として水以外の非プロトン性極性溶剤を含有する場合、併用される非プロトン性極性溶剤は、沸点150℃以上300℃以下で、双極子モーメントが3.0D以上5.0D以下の溶剤である。非プロトン性極性溶剤として具体的には、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド(HMPA)、N−メチルカプロラクタム、N−アセチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられる。
なお、水性溶剤として水以外の溶剤を含有する場合、併用される溶剤は、沸点が270℃以下であることがよく、好ましくは60℃以上250℃以下、より好ましくは80℃以上230℃以下である。併用される溶剤の沸点を上記範囲とすると、水以外の溶剤がポリイミド層に残留し難くなり、また、機械的強度の高いポリイミド層が得られ易くなる。
ここで、ポリイミド前駆体が溶剤に溶解する範囲は、水の含有量、有機アミン化合物の種類及び量によって制御される。水の含有量が低い範囲では、有機アミン化合物の含有量が少ない領域でポリイミド前駆体は溶解し易くなる。逆に、水の含有量が高い範囲では、有機アミン化合物の含有量が多い領域でポリイミド前駆体は溶解し易くなる。また、有機アミン化合物が水酸基を有するなど親水性が高い場合は、水の含有量が高い領域でポリイミド前駆体は溶解し易くなる。
(樹脂粒子)
樹脂粒子としては、粒子径分布曲線において、より小径側に存在する極大[P]及びより大径側に存在する極大[P]の少なくとも2つの極大を有する樹脂粒子が用いられる。具体的には、平均粒径の異なる2種以上の樹脂粒子を準備して用いる方法が挙げられる。
樹脂粒子としては、水性溶剤に溶解せず、ポリイミド前駆体溶液に溶解しないものであれば、特に限定されないが、ポリイミド以外の樹脂からなる樹脂粒子である。例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の重合性単量体を重縮合して得られた樹脂粒子、ビニル樹脂、オレフィン樹脂、フッ素樹脂等の重合性単量体をラジカル重合して得られた樹脂粒子が挙げられる。ラジカル重合して得られた樹脂粒子としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン・(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂の樹脂粒子等が挙げられる。
これらの中でも、樹脂粒子としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン・(メタ)アクリル樹脂、及びポリスチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
また、樹脂粒子は、架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよい。ポリイミド前駆体のイミド化工程において、残留応力の緩和に有効に寄与する点で、架橋されていない樹脂粒子が好ましい。さらに、樹脂粒子分散液は、ポリイミド前駆体溶液を製造する工程を簡略化する点で、乳化重合によって得られたビニル樹脂粒子分散液であることがより好ましい。
なお、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」のいずれをも含むことを意味するものである。
樹脂粒子がビニル樹脂粒子である場合、単量体を重合して得られる。ビニル樹脂の単量体としては、以下に示す単量体が挙げられる。例えば、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン等)、ハロゲン置換スチレン(例えば2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン等)、ビニルナフタレン等のスチレン骨格を有するスチレン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)等のビニル基を有するエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ビニルスルホン酸等の酸類;エチレンイミン、ビニルピリジン、ビニルアミン等の塩基類;等の単量体を重合体させたビニル樹脂単位が挙げられる。
その他の単量体として、酢酸ビニルなどの単官能単量体、エチレングリコールジメタクリレート、ノナンジアクリレート、デカンジオールジアクリレートなどの二官能単量体、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能単量体を併用してもよい。
また、ビニル樹脂は、これらの単量体を単独で用いた樹脂でもよいし、2種以上の単量体を用いた共重合体である樹脂であってもよい。
樹脂粒子の表面に有する酸性基は、特に限定されるものではないが、カルボキシ基、スルホン酸基、フェノール性水酸基からなる群から選ばれる少なくも一つであることがよい。これらの中でも、カルボキシ基が好ましい。
樹脂粒子の表面に酸性基を有するための単量体としては、酸性基を有する単量体であれば特に限定されない。例えば、カルボキシ基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、フェノール性水酸基を有する単量体、及びそれらの塩が挙げられる。
具体的には、例えば、p−スチレンスルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体;4−ビニルジヒドロケイヒ酸、4−ビニルフェノール、4−ヒドロキシ−3−メトキシ−1−プロペニルベンゼン等のフェノール性水酸基を有する単量体;アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、3−メチルクロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチルイソクロトン酸、2,4−ヘキサジエン二酸、2−ペンテン酸、ソルビン酸、シトラコン酸、2−ヘキセン酸、フマル酸モノエチル等のカルボキシ基を有する単量体;及びそれらの塩;が挙げられる。これら酸性基を有する単量体は、酸性基を有さない単量体と混合して重合してもよいし、酸性基を有さない単量体を重合、粒子化した後に、表面に酸性基を有する単量体を重合してもよい。また、これらの単量体は1種単独、又は2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、3−メチルクロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチルイソクロトン酸、2,4−ヘキサジエン二酸、2−ペンテン酸、ソルビン酸、シトラコン酸、2−ヘキセン酸、フマル酸モノエチル等、及びそれらの塩のカルボキシ基を有する単量体が好ましい。カルボキシ基を有する単量体は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
つまり、表面に酸性基を有する樹脂粒子は、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、3−メチルクロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチルイソクロトン酸、2,4−ヘキサジエン二酸、2−ペンテン酸、ソルビン酸、シトラコン酸、2−ヘキセン酸、フマル酸モノエチル等、及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一つのカルボキシ基を有する単量体に由来する骨格を持つことが好ましい。
酸性基を有する単量体と、酸性基を有さない単量体を混合して重合する場合、酸性基を有する単量体の量は特に限定されるものではないが、酸性基を有する単量体の量が少なすぎると、ポリイミド前駆体溶液での樹脂粒子の分散性が低下する場合があり、酸性基を有する単量体の量が多すぎると、乳化重合するときに、重合体の凝集体が発生する場合がある。そのため、酸性基を有する単量体は、単量体全体の0.3質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.7質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
一方、酸性基を有さない単量体を乳化重合した後に、さらに酸性基を有する単量体を追加して、重合する場合、同様の点で、酸性基を有する単量体の量は、単量体全体の0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上7質量%以下がより好ましく、0.07質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
前述のように、樹脂粒子は架橋されていないほうが好ましいが、樹脂粒子を架橋する場合、単量体成分の少なくとも一部として架橋剤を用いる場合には、全単量体成分に占める架橋剤の割合は、0質量%以上20質量%以下が好ましく、0質量%以上5質量%以下がより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
ビニル樹脂粒子を構成する樹脂に使用される単量体がスチレンを含有する場合、全単量体成分に占めるスチレンの割合は20質量%以上100質量%以下が好ましく、40質量%以上100質量%以下が更に好ましい。
なお、樹脂粒子は、市販品の表面にさらに酸性基を有するモノマーを重合したものでもよい。具体的には、架橋された樹脂粒子としては、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル(MBX−シリーズ、積水化成品工業社製)、架橋ポリスチレン(SBX−シリーズ、積水化成品工業社製)、メタクリル酸メチルとスチレンの共重合架橋樹脂粒子(MSX−シリーズ、積水化成品工業社製)等が挙げられる。
また、架橋されていない樹脂粒子としては、ポリメタクリル酸メチル(MB−シリーズ、積水化成品工業社製)、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体(FS−シリーズ:日本ペイント社製)等が挙げられる。
ポリイミド前駆体溶液において、樹脂粒子の含有量としては、ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体固形分100質量部に対して、20質量%以上600質量%以下(好ましくは25質量%以上550質量%以下、より好ましくは30質量%以上500質量%以下)の範囲であることがよい。
(ポリイミド前駆体)
ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して得られる。具体的には、ポリイミド前駆体一般式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂(ポリアミック酸)である。
Figure 0006904109

(一般式(I)中、Aは4価の有機基を示し、Bは2価の有機基を示す。)
ここで、一般式(I)中、Aが表す4価の有機基としては、原料となるテトラカルボン酸二無水物より4つのカルボキシ基を除いたその残基である。
一方、Bが表す2価の有機基としては、原料となるジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基である。
つまり、一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体である。
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も挙げられるが、芳香族系の化合物であることがよい。つまり、一般式(I)中、Aが表す4価の有機基は、芳香族系有機基であることがよい。
芳香族系テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
これらの中でも、テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物がよく、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、更に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、特に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がよい。
なお、テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又は脂肪族テトラカルボン酸を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせてもよい。
一方、ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物である。ジアミン化合物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も挙げられるが、芳香族系の化合物であることがよい。つまり、一般式(I)中、Bが表す2価の有機基は、芳香族系有機基であることがよい。
ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
これらの中でも、ジアミン化合物としては、芳香族系ジアミン化合物がよく、具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンがよく、特に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンがよい。
なお、ジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族ジアミン化合物、又は脂肪族ジアミン化合物を各々併用しても、芳香族ジアミン化合物と脂肪族ジアミン化合物とを組み合わせてもよい。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、1000以上150000以下であることがよく、より好ましくは5000以上130000以下、更に好ましくは10000以上100000以下である。
ポリイミド前駆体の数平均分子量を上記範囲とすると、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性の低下が抑制され、製膜性が確保され易くなる。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される。
・カラム:東ソーTSKgelα−M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
ポリイミド前駆体の含有量(濃度)は、ポリイミド前駆体溶液に対して、0.1質量%以上40質量%以下であることがよく、好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、より好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
(有機アミン化合物)
有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体(そのカルボキシ基)をアミン塩化して、その水性溶剤に対する溶解性を高めると共に、イミド化促進剤としても機能する化合物である。具体的には、有機アミン化合物は、分子量170以下のアミン化合物であることがよい。有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体の原料となるジアミン化合物を除く化合物であることがよい。
なお、有機アミン化合物は、水溶性の化合物であることがよい。水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
有機アミン化合物としては、1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物が挙げられる。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、2級アミン化合物、及び3級アミン化合物から選択される少なくとも一種(特に、3級アミン化合物)がよい。有機アミン化合物として、3級アミン化合物又は2級アミン化合物を適用すると(特に、3級アミン化合物)、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなり、またポリイミド前駆体溶液の保存安定性が向上し易くなる。
また、有機アミン化合物としては、1価のアミン化合物以外にも、2価以上の多価アミン化合物も挙げられる。2価以上の多価アミン化合物を適用すると、ポリイミド前駆体の分子間に疑似架橋構造を形成し易くなり、またポリイミド前駆体溶液の保存安定性が向上し易くなる。
1級アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、2−エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、などが挙げられる。
2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、モルホリンなどが挙げられる。
3級アミン化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
ポリイミド前駆体溶液のポットライフ、層膜厚均一性の観点で、3級アミン化合物が好ましい。この点で、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジンからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
ここで、有機アミン化合物としては、製膜性の点から、窒素を含有する複素環構造を有するアミン化合物(特に、3級アミン化合物)も好ましい。窒素を含有する複素環構造を有するアミン化合物(以下、「含窒素複素環アミン化合物」と称する)としては、例えば、イソキノリン類(イソキノリン骨格を有するアミン化合物)、ピリジン類(ピリジン骨格を有するアミン化合物)、ピリミジン類(ピリミジン骨格を有するアミン化合物)、ピラジン類(ピラジン骨格を有するアミン化合物)、ピペラジン類(ピペラジン骨格を有するアミン化合物)、トリアジン類(トリアジン骨格を有するアミン化合物)、イミダゾール類(イミダゾール骨格を有するアミン化合物)、モルホリン類(モルホリン骨格を有するアミン化合物)、ポリアニリン、ポリピリジン、ポリアミンなどが挙げられる。
含窒素複素環アミン化合物としては、製膜性の点から、モルホリン類、ピリジン類、ピペリジン類、およびイミダゾール類よりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、モルホリン類(モルホリン骨格を有するアミン化合物)であることがより好ましい。これらの中でも、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、ピリジン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、およびピコリンよりなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましく、N−メチルモルホリンであることがより好ましい。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、沸点が60℃以上(好ましくは60℃以上200℃以下、より好ましくは70℃以上150℃以下)の化合物であることがよい。有機アミン化合物の沸点を60℃以上とすると、保管するときに、ポリイミド前駆体溶液から有機アミン化合物が揮発するのを抑制し、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性の低下が抑制され易くなる。
有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体のカルボキシ基(−COOH)に対して、50モル%以上500モル%以下で含有することがよく、好ましくは80モル%以上250モル%以下、より好ましくは90モル%以上200モル%以下で含有することである。
有機アミン化合物の含有量を上記範囲とすると、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなる。また、ポリイミド前駆体溶液の保存安定性も向上し易くなる。
上記の有機アミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
(樹脂粒子とポリイミド前駆体との割合)
ポリイミド前駆体溶液において、樹脂粒子とポリイミド前駆体との割合としては、ポリイミド前駆体溶液の固形分を100とした場合の質量比で、ポリイミド前駆体溶液固形分:樹脂粒子=100:20以上100:600以下の範囲であることがよい。100:25以上100:550以下の範囲であることが好ましく、100:30以上100:500以下の範囲であることがより好ましい。この比率を調整することで、開孔率を任意に設定できる。
(その他の添加剤)
ポリイミド前駆体溶液には、イミド化反応促進のための触媒や、製膜品質向上のためのレベリング材などを含んでもよい。
イミド化反応促進のための触媒には、酸無水物など脱水剤、フェノール誘導体、スルホン酸誘導体、安息香酸誘導体などの酸触媒などを使用してもよい。
また、ポリイミド前駆体溶液には、使用目的に応じて、例えば、導電性付与のために添加される導電材料(導電性(例えば、体積抵抗率10Ω・cm未満)もしくは半導電性(例えば、体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下))を含有していてもよい。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック(例えばpH5.0以下の酸性カーボンブラック);金属(例えばアルミニウムやニッケル等);金属酸化物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等);イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等);等が挙げられる。これら導電材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、ポリイミド前駆体溶液には、使用目的に応じて、機械強度向上のため添加される無機粒子を含有していてもよい。無機粒子としては、シリカ粉、アルミナ粉、硫酸バリウム粉、酸化チタン粉、マイカ、タルクなどの粒子状材料が挙げられる。
<多孔質ポリイミドフィルムの製造方法>
次いで、本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、例えば下記工程を有する製造方法によって製造される。
・皮膜形成工程
基板上に、前記ポリイミド前駆体溶液を用いて皮膜を形成する皮膜形成工程
・イミド化工程
前記皮膜を加熱してイミド化するイミド化工程
・樹脂粒子除去工程
前記皮膜から樹脂粒子を除去する樹脂粒子除去工程
なお、本明細書中において、「溶解しない」とは、25℃において、対象物質が対象液体に対して3質量%以下の範囲内で溶解することも含む。
以下、各工程について説明する。
・皮膜形成工程
皮膜形成工程は、基板上に、ポリイミド前駆体溶液によって皮膜を形成する工程である。そして、皮膜形成工程後、樹脂粒子を除去する工程を行う。樹脂粒子を除去する工程を経て、多孔質ポリイミドフィルムが得られる。
まず、ポリイミド前駆体溶液を上述の基板上に塗布する。
基板としては、特に制限されない。例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂製基板;ガラス製基板;セラミック製基板;鉄、ステンレス鋼(SUS)等の金属基板;これらの材料が組み合わされた複合材料基板等が挙げられる。また、基板には、必要に応じて、例えば、シリコーン系やフッ素系の剥離剤等による剥離処理を行って剥離層を設けてもよい。
塗布する方法としては、特に限定されない。例えば、スプレー塗布法、回転塗布法、ロール塗布法、バー塗布法、スリットダイ塗布法、インクジェット塗布法等の各種の方法が挙げられる。
さらに、この塗膜に対して乾燥処理を行う。この乾燥処理により皮膜を形成する。
乾燥処理の加熱条件は、例えば30℃以上200℃以下の温度で10分間以上60分間以下がよく、温度が高いほど加熱時間は短くてよい。加熱の際、熱風を当てることも有効である。加熱のときは、温度を段階的に上昇させたり、速度を変化させずに上昇させてもよい。
・イミド化工程
次いでイミド化工程を行う。
例えば、皮膜を加熱して、イミド化を進行させる。加熱の温度や時間は、樹脂の種類、イミド化させる度合い等によって調整する。なお、イミド化が進行し、イミド化率が高くなるにしたがい、有機溶剤に溶解し難くなる。
イミド化工程における加熱方法としては、特に限定されない。例えば、2段階で加熱する方法が挙げられる。2段階で加熱する場合、具体的には、以下のような加熱条件が挙げられる。
第1段階の加熱条件としては、樹脂粒子の形状が保持される温度であることが望ましい。具体的には、50℃以上150℃以下の範囲がよく、60℃以上140℃以下の範囲が好ましい。また、加熱時間としては、10分間以上60分間以下の範囲がよい。加熱温度が高いほど加熱時間は短くてよい。
段階の加熱条件としては、例えば、150℃以上450℃以下(好ましくは200℃以上430℃以下)で、20分間以上120分間以下の条件で加熱することが挙げられる。この範囲の加熱条件とすることで、イミド化反応がさらに進行し、ポリイミド膜が形成され得る。加熱反応の際、加熱の最終温度に達する前に、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱することがよい。
なお、加熱条件は上記の2段階の加熱方法に限らず、例えば、1段階で加熱する方法を採用してもよい。1段階で加熱する方法の場合、例えば、上記の段階で示した加熱条件のみによってイミド化を完了させてもよい。
なお、多孔質ポリイミドフィルムの開孔率を高める点で、樹脂粒子を露出させる処理を行って樹脂粒子を露出させた状態とすることが好ましい。樹脂粒子を露出させる処理は、ポリイミド前駆体のイミド化する工程(イミド化工程)、又はイミド化後、且つ、樹脂粒子を除去する工程よりも前で行うことが好ましい。
樹脂粒子を露出させる処理は、例えば、皮膜が次のような状態であるときに施すことが挙げられる。
皮膜中のポリイミド前駆体のイミド化率が10%未満であるとき(すなわち、皮膜が水に溶解できる状態)に樹脂粒子を露出させる処理を行う場合、上記の皮膜中に埋没している樹脂粒子を露出させる処理としては、拭き取る処理、水に浸漬する処理等が挙げられる。
また、皮膜中のポリイミド前駆体のイミド化率が10%以上であるとき(すなわち、水、有機溶剤に溶解し難い状態)、及びイミド化が完了した皮膜となった状態であるときに樹脂粒子を露出させる処理を行う場合には、紙やすり等の工具類で機械的に切削して樹脂粒子を露出させる方法、レーザ等で分解して樹脂粒子を露出させる方法が挙げられる。
例えば、機械的に切削する場合には、皮膜に埋没している樹脂粒子の上部の領域(つまり、樹脂粒子の基板から離れた側の領域)に存在する樹脂粒子の一部分が、樹脂粒子の上部に存在している皮膜とともに切削され、切削された樹脂粒子が皮膜の表面から露出される。
・樹脂粒子を除去する工程
次いで樹脂粒子を除去する工程を行う。
なお、樹脂粒子の除去する工程は、皮膜を加熱して、ポリイミド前駆体をイミド化する工程において除去してもよく、イミド化が完了した後(イミド化工程後)の皮膜から除去してもよい。
樹脂粒子を除去する工程は、樹脂粒子の除去性等の点で、ポリイミド前駆体をイミド化する工程において、ポリイミド膜中のポリイミド前駆体のイミド化率が10%以上であるときに行うことが好ましい。イミド化率が10%以上になると、有機溶剤に溶解し難い状態となりやすく、形態を維持しやすい。
樹脂粒子を除去する工程としては、例えば、樹脂粒子を加熱により除去する方法、樹脂粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法、樹脂粒子をレーザ等による分解により除去する方法等が挙げられる。これらのうち、樹脂粒子を加熱により除去する方法、樹脂粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法が好ましい。
加熱により除去する方法としては、例えば、ポリイミド前駆体をイミド化する工程において、イミド化を進行させるための加熱によって、樹脂粒子を分解させることで除去してもよい。この場合には、溶剤により樹脂粒子を除去する操作がない点で、工程の削減に対して有利である。
一方で、樹脂粒子の種類によっては、加熱による分解ガスが発生する場合があり、破断、亀裂等の原因ともなり得る。そのため、この場合には、樹脂粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法が望ましい。
樹脂粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法としては、例えば、樹脂粒子が溶解する有機溶剤と接触(例えば、溶剤中に浸漬)させ、樹脂粒子を溶解して除去する方法が挙げられる。この状態のときに、溶剤中に浸漬すると、樹脂粒子の溶解効率が高くなる点で好ましい。
樹脂粒子を除去するための樹脂粒子を溶解する有機溶剤としては、皮膜、イミド化が完了した皮膜を溶解せず、樹脂粒子が可溶な有機溶剤であれば、特に限定されるものではない。例えば、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トルエン等の芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;が挙げられる。
なお、皮膜形成工程で使用した基板は、乾燥した皮膜となったときに剥離してもよく、皮膜中のポリイミド前駆体が、有機溶剤に溶解し難い状態となったときに剥離してもよく、イミド化が完了した皮膜になった状態のときに剥離してもよい。
以上の工程を経て、多孔質ポリイミドフィルムが形成される。また、剥離せず、基板と一体化した積層体として使用することもできる。また、多孔質ポリイミドフィルムは、目的とする用途に応じて、銅、アルミなどの導電層を形成するなど後加工が施されてもよい。
ここで、ポリイミド前駆体のイミド化率について説明する。
一部がイミド化したポリイミド前駆体は、例えば、下記一般式(I−1)、下記一般式(I−2)、及び下記一般式(I−3)で表される繰り返し単位を有する構造の前駆体が挙げられる。
Figure 0006904109
一般式(I−1)、一般式(I−2)、及び一般式(I−3)中、Aは4価の有機基を示し、Bは2価の有機基を示す。lは1以上の整数を示し、m及びnは、各々独立に0又は1以上の整数を示す。
なお、A及びBは、前述の一般式(I)中のA及びBと同義である。
ポリイミド前駆体のイミド化率は、ポリイミド前駆体の結合部(テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応部)において、イミド閉環している結合部数(2n+m)の全結合部数(2l+2m+2n)に対する割合を表す。つまり、ポリイミド前駆体のイミド化率は、「(2n+m)/(2l+2m+2n)」で示される。
なお、ポリイミド前駆体のイミド化率(「(2n+m)/(2l+2m+2n)」の値)は、次の方法により測定される。
−ポリイミド前駆体のイミド化率の測定−
・ポリイミド前駆体試料の作製
(i)測定対象となるポリイミド前駆体組成物を、シリコーンウェハー上に、膜厚1μm以上10μm以下の範囲で塗布して、塗膜試料を作製する。
(ii)塗膜試料をテトラヒドロフラン(THF)中に20分間浸漬させて、塗膜試料中の溶媒をテトラヒドロフラン(THF)に置換する。浸漬させる溶媒は、THFに限定されることなく、ポリイミド前駆体を溶解せず、ポリイミド前駆体組成物に含まれている溶媒成分と混和し得る溶媒より選択できる。具体的には、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒、ジオキサンなどのエーテル化合物が使用できる。
(iii)塗膜試料を、THF中より取り出し、塗膜試料表面に付着しているTHFにN2ガスを吹き付け、取り除く。10mmHg以下の減圧下、5℃以上25℃以下の範囲にて12時間以上処理して塗膜試料を乾燥させ、ポリイミド前駆体試料を作製する。
・100%イミド化標準試料の作製
(iv)上記(i)と同様に、測定対象となるポリイミド前駆体組成物をシリコーンウェハー上に塗布して、塗膜試料を作製する。
(v)塗膜試料を380℃にて60分間加熱してイミド化反応を行い、100%イミド化標準試料を作製する。
・測定と解析
(vi)フーリエ変換赤外分光光度計(堀場製作所製FT−730)を用いて、100%イミド化標準試料、ポリイミド前駆体試料の赤外吸光スペクトルを測定する。100%イミド化標準試料の1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab’(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab’(1780cm−1))の比I’(100)を求める。
(vii)同様にして、ポリイミド前駆体試料について測定を行い、1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab(1780cm−1))の比I(x)を求める。
そして、測定した各吸光ピークI’(100)、I(x)を使用し、下記式に基づき、ポリイミド前駆体のイミド化率を算出する。
・式: ポリイミド前駆体のイミド化率=I(x)/I’(100)
・式: I’(100)=(Ab’(1780cm−1))/(Ab’(1500cm−1))
・式: I(x)=(Ab(1780cm−1))/(Ab(1500cm−1))
なお、このポリイミド前駆体のイミド化率の測定は、芳香族系ポリイミド前駆体のイミド化率の測定に適用される。脂肪族ポリイミド前駆体のイミド化率を測定する場合、芳香環の吸収ピークに代えて、イミド化反応前後で変化のない構造由来のピークを内部標準ピークとして使用する。
<多孔質ポリイミドフィルム>
上記の方法により、孔径分布曲線において、より小径側に存在する極大[P]及びより大径側に存在する極大[P]の少なくとも2つの極大を有する多孔質構造を備える多孔質ポリイミドフィルムを製造し得る。
なお、多孔質ポリイミドフィルムにおける、孔径分布曲線での極大[P]及び極大[P]の好ましい態様は、前述のポリイミド前駆体溶液における、樹脂粒子の粒子径分布曲線での極大[P]及び極大[P]と同様である。
つまり、多孔質ポリイミドフィルムの空孔に関する孔径分布曲線での「極大[P]と極大[P]との孔径の比」、「極大[P]と極大[P]とのピーク面積の比」、「大孔径孔の極大[P]の孔径」、「小孔径孔の極大[P]の孔径」、「変動係数」、「全体の平均孔径」は、前述の樹脂粒子における「極大[P]と極大[P]との粒子径の比」、「極大[P]と極大[P]とのピーク面積の比」、「大径粒子の極大[P]の粒子径」、「小径粒子の極大[P]の粒子径」、「変動係数」、「全体の体積平均粒子径」と同じである。
−膜厚−
多孔質ポリイミドフィルムの平均膜厚は、特に限定されるものでないが、15μm以上500μm以下であることがよい。
−空孔−
本実施形態では、空孔の形状が球状であることが好ましい。本実施形態において、空孔の形状が「球状」とは、球状、及びほぼ球状(球状に近い形状)の両者の形状を包含するものである。具体的には、長径と短径の比(長径/短径)が1以上1.5以下である空孔の割合が90%以上存在することを意味する。この空孔の存在割合が多いほど、球状の空孔の割合が増加する。長径と短径の比(長径/短径)が1以上1.5以下である空孔は、93%以上100%以下であることが好ましく、95%以上100%以下であることがさらに好ましい。また、長径と短径の比が1に近づくほど真球状に近くなる。
また、空孔は、空孔どうしが互いに連結されて連なった形状であることが好ましい。空孔どうしが互いに連結されている部分の空孔径は、例えば、空孔径の最大径の1/100以上1/2以下であることがよく、1/50以上1/3以下であることが好ましく、1/20以上1/4以下であることがより好ましい。具体的には、空孔どうしが互いに連結されて連なっている部分の空孔径の平均値は、5nm以上1500nm以下であることがよい。
空孔径の平均値としては、特に限定されないが、0.01μm以上2.5μm以下の範囲であることがよく、0.05μm以上2.0μm以下の範囲がより好ましく、0.1μm以上1.5μm以下の範囲であることが好ましく、0.15μm以上1.0μm以下の範囲であることがより好ましい。
本実施形態では、空孔の最大径と最小径の比率(空孔径の最大値と最小値の比率)は、1以上2以下であることが好ましく、より好ましくは1以上1.9以下、さらに好ましくは1以上1.8以下である。この範囲の中でも、1に近いほうがさらに好ましい。この範囲にあることで、空孔径のバラつきが抑制される。
なお、「空孔の最大径と最小径の比率」とは、空孔の最大径を最小径で除した値(つまり、空孔径の最大値/最小値)で表される比率である。
空孔径の最大値、最小値、平均値、空孔どうしが互いに連結されている部分の空孔径の平均値、及び、空孔の長径と短径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察及び計測される値である。具体的には、まず、多孔質ポリイミドフィルムを切り出し、測定用試料を準備する。そして、この測定用試料をキーエンス(KEYENCE)社製のVE SEMにより、標準装備されている画像処理ソフトにて観察及び計測を実施する。観察及び計測は、測定用試料断面のうち、空孔部分のそれぞれについて100個行い、それぞれの平均値と最小径、最大径、算術平均径を求める。空孔の形状が円形でない場合には、最も長い部分を径とする。また、上記の空孔部分のそれぞれについて、長径及び短径をキーエンス(KEYENCE)社製のVE SEMにより、標準装備されている画像処理ソフトにて観察及び計測を行い、長径/短径の比を算出する。
−空隙率−
本実施形態では、空隙率は30%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上である。なお、空隙率の上限値としては、好ましくは90%以下である。
空隙率が30%以上であることで、より低誘電率の膜とし得る。また、空隙率が90%以下であることで、より機械強度を高め易くなる。
(多孔質ポリイミドフィルムの用途)
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムが適用される用途としては、例えば、リチウム電池等の電池セパレータ;電解コンデンサー用のセパレータ;燃料電池等の電解質膜;電池電極材;気体又は液体の分離膜;低誘電率材料;ろ過膜;等が挙げられる。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムを、例えば、電池セパレータに適用した場合には、リチウムイオンのイオン流分布のバラつきが抑制される等の作用により、リチウムデンドライトの生成が抑制されると考えられる。これは、本実施形態の多孔質ポリイミドフィルムの空孔の形状、空孔径のバラつきが抑制されているためと推測される。
また、例えば、電池電極材に適用した場合には、電解液に接触する機会が増加するため、電池の容量が増えると考えられる。これは、多孔質ポリイミドフィルムに含有させた電極用のカーボンブラック等の材料が、多孔質ポリイミドフィルムの空孔径の表面や、フィルムの表面に露出する量が増加するためと推測される。
さらに、例えば、多孔質ポリイミドフィルムの空孔内に、例えば、いわゆるイオン性液体をゲル化したイオン性ゲル等を充填して電解質膜として適用することも可能である。本実施形態の製造方法により、工程が簡略化されるため、より低コストの電解質膜が得られると考えられる。
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
[ポリイミド前駆体「水」溶液(PAA−1)の作製]
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、水:900gを充填した。ここに、p−フェニレンジアミン(分子量108.14):27.28g(252.27ミリモル)と、メチルモルホリン(有機アミン化合物):50.00g(494.32ミリモル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。更に、この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度20℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、ポリイミド前駆体「水」溶液(PAA−1)を得た。
[ポリイミド前駆体「N−メチルピロリドン」溶液(RPAA−1)の作製]
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコに、N−メチルピロリドン:900gを充填した。ここに、p−フェニレンジアミン:27.28g(252.27ミリモル)を添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。この溶液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物:72.72g(247.16ミリモル)を添加し、反応温度を20℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、ポリイミド前駆体「N−メチルピロリドン」溶液(RPAA−1)を得た。
[ポリイミド前駆体「水/イソプロパノール」溶液(PAA−2)の作製]
ポリイミド前駆体「N−メチルピロリドン」溶液(RPAA−1)の500gを水:3000gに撹拌しながら滴下し、ポリイミド前駆体を析出させた。このポリイミド前駆体:30gを、水:243g、イソプロパノール:27gに加え、さらに、メチルモルホリン:15g加えて撹拌、溶解させ、ポリイミド前駆体「水/イソプロパノール」溶液(PAA−2)を得た。
[ポリイミド前駆体「水/イソプロパノール」溶液(PAA−3)の作製]
ポリイミド前駆体「N−メチルピロリドン」溶液(RPAA−1)の500gを水:3000gに撹拌しながら滴下し、ポリイミド前駆体を析出させた。このポリイミド前駆体:30gを、水:243g、イソプロパノール:27gに加え、さらに、1,2−ジメチルイミダゾール(DMIz):15g加えて撹拌、溶解させ、ポリイミド前駆体「水/イソプロパノール」溶液(PAA−3)を得た。
[ポリイミド前駆体「水/N−メチルピロリドン」溶液(PAA−4)の作製]
ポリイミド前駆体「N−メチルピロリドン」溶液(RPAA−1)の500gを水:3000gに撹拌しながら滴下し、ポリイミド前駆体を析出させた。このポリイミド前駆体:30gを、水:243g、N−メチルピロリドン:27gに加え、さらに、1,2−ジメチルイミダゾール:15g加えて撹拌、溶解させ、ポリイミド前駆体「水/N−メチルピロリドン」溶液(PAA−4)を得た。
<実施例1>
[樹脂粒子分散液の調製]
−樹脂粒子分散液(1−1)の調製−
スチレン770質量部、アクリル酸ブチル230質量部、界面活性剤Dowfax2A1(47質量%溶液、ダウ・ケミカル社製)25.0質量部、イオン交換水576質量部を混合し、ディゾルバーにより、1,500回転で30分間攪拌、乳化を行い、単量体乳化液を作製した。
続いて、Dowfax2A1(47質量%溶液、ダウ・ケミカル社製)1.10質量部、イオン交換水1270質量部を反応容器に投入した。反応容器内を、窒素気流下、75℃に加熱した後、ここに得られた単量体乳化液のうち75質量%を添加した。その後、過硫酸アンモニウム15質量部をイオン交換水98質量部に溶解させた重合開始剤溶液を10分かけて滴下した。滴下後50分間反応させた後に、残り25質量%の単量体乳化液を220分かけて滴下し、さらに180分間反応させたのち、冷却して、スチレン・アクリル樹脂粒子の分散液である樹脂粒子分散液(1)を得た。
樹脂粒子分散液(1)の固形分濃度は34.4質量%であった。また、この樹脂粒子の平均粒径は300nmであった。なお、樹脂粒子の平均粒径は、既述の方法により測定した体積平均粒径である(以下同様)。
−樹脂粒子分散液(1−2)の調製−
樹脂粒子分散液(1−1)の調製において、ディゾルバーによる回転数を下記表1に記載の数値に変更したこと以外、同様の手法で実施例1の樹脂粒子分散液(1−2)を作製した。
[多孔質ポリイミドフィルムの作製]
ポリイミド前駆体「水」溶液(PAA−1)を10倍に希釈し、これにポリイミド前駆体10部に対する割合で、樹脂粒子分散液(1−1)(体積平均粒径300nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):22部、樹脂粒子分散液(1−2)(体積平均粒径150nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):5部を加え、ウエブローター上で撹拌し、分散溶液を作製した。
これをガラス製の基板上に乾燥後の膜厚が30μmになるように形成し、室温(20℃、以下同じ)で1時間乾燥した後、ガラス製の基板からはがし、テトラヒドロフランに30分間浸漬した。90℃で1時間乾燥した後、90℃から380℃まで10℃/分の速度で昇温し、380℃で1時間保持したのち、室温に冷却して多孔質ポリイミドフィルム(PIF−1)を得た。
<実施例2>
実施例1の樹脂粒子分散液(1−1)の調製において、ディゾルバーによる回転数を下記表1に記載の数値に変更したこと以外、同様の手法で実施例2の樹脂粒子分散液(2−1)及び(2−2)を作製した。
用いた樹脂粒子を、樹脂粒子分散液(2−1)(体積平均粒径330nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):22部、及び樹脂粒子分散液(2−2)(体積平均粒径180nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):5部に変更し、かつ用いたポリイミド前駆体溶液を表2に記載のものとしたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質ポリイミドフィルムを得た。
<実施例3>
実施例1の樹脂粒子分散液(1−1)の調製において、ディゾルバーによる回転数を下記表1に記載の数値に変更したこと以外、同様の手法で実施例3の樹脂粒子分散液(3−1)及び(3−2)を作製した。
用いた樹脂粒子を、樹脂粒子分散液(3−1)(体積平均粒径500nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):22部、及び樹脂粒子分散液(3−2)(体積平均粒径190nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):6部に変更し、かつ用いたポリイミド前駆体溶液を表2に記載のものとしたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質ポリイミドフィルムを得た。
<実施例4>
実施例1の樹脂粒子分散液(1−1)の調製において、ディゾルバーによる回転数を下記表1に記載の数値に変更したこと以外、同様の手法で実施例4の樹脂粒子分散液(4−1)及び(4−2)を作製した。
用いた樹脂粒子を、樹脂粒子分散液(4−1)(体積平均粒径440nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):21部、及び樹脂粒子分散液(4−2)(体積平均粒径100nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):5部に変更し、かつ用いたポリイミド前駆体溶液を表2に記載のものとしたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質ポリイミドフィルムを得た。
<実施例5>
実施例1の樹脂粒子分散液(1−1)の調製において、ディゾルバーによる回転数を下記表1に記載の数値に変更したこと以外、同様の手法で実施例5の樹脂粒子分散液(5−1)及び(5−2)を作製した。
用いた樹脂粒子を、樹脂粒子分散液(5−1)(体積平均粒径350nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):20部、及び樹脂粒子分散液(5−2)(体積平均粒径120nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):5部に変更し、かつ用いたポリイミド前駆体溶液を表2に記載のものとしたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質ポリイミドフィルムを得た。
<実施例6>
実施例1の樹脂粒子分散液(1−1)の調製において、ディゾルバーによる回転数を下記表1に記載の数値に変更したこと以外、同様の手法で実施例6の樹脂粒子分散液(6−1)及び(6−2)を作製した。
用いた樹脂粒子を、樹脂粒子分散液(6−1)(体積平均粒径380nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):21部、及び樹脂粒子分散液(6−2)(体積平均粒径200nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):5部に変更し、かつ用いたポリイミド前駆体溶液を表2に記載のものとしたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質ポリイミドフィルムを得た。
<実施例7>
実施例1の樹脂粒子分散液(1−1)の調製において、ディゾルバーによる回転数を下記表1に記載の数値に変更したこと以外、同様の手法で実施例7の樹脂粒子分散液(7−1)及び(7−2)を作製した。
用いた樹脂粒子を、樹脂粒子分散液(7−1)(体積平均粒径250nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):21部、及び樹脂粒子分散液(7−2)(体積平均粒径145nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):5部に変更し、かつ用いたポリイミド前駆体溶液を表2に記載のものとしたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質ポリイミドフィルムを得た。
<実施例8>
実施例1の樹脂粒子分散液(1−1)の調製において、ディゾルバーによる回転数を下記表1に記載の数値に変更したこと以外、同様の手法で実施例8の樹脂粒子分散液(8−1)及び(8−2)を作製した。
用いた樹脂粒子を、樹脂粒子分散液(8−1)(体積平均粒径400nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):22部、及び樹脂粒子分散液(8−2)(体積平均粒径230nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):6部に変更し、かつ用いたポリイミド前駆体溶液を表2に記載のものとしたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質ポリイミドフィルムを得た。
<実施例9>
実施例1の樹脂粒子分散液(1−1)の調製において、ディゾルバーによる回転数を下記表1に記載の数値に変更したこと以外、同様の手法で実施例9の樹脂粒子分散液(9−1)及び(9−2)を作製した。
用いた樹脂粒子を、樹脂粒子分散液(9−1)(体積平均粒径500nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):22部、及び樹脂粒子分散液(9−2)(体積平均粒径400nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):6部に変更し、かつ用いたポリイミド前駆体溶液を表2に記載のものとしたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質ポリイミドフィルムを得た。
<比較例1>
実施例1の樹脂粒子分散液(1−1)の調製において、ディゾルバーによる回転数を下記表1に記載の数値に変更したこと以外、同様の手法で比較例1の樹脂粒子分散液(10−1)を作製した。
用いた樹脂粒子を、樹脂粒子分散液(10−1)(体積平均粒径400nmのアクリル酸ブチル・スチレン共重合体):22部に変更し、かつ用いたポリイミド前駆体溶液を表2に記載のものとしたこと以外は、実施例1と同様にして多孔質ポリイミドフィルムを得た。
〔前駆体溶液での沈降の評価〕
実施例1〜9、及び、比較例1で得た樹脂粒子分散ポリイミド前駆体溶液について、樹脂粒子の沈降の発生度合いを、以下の基準で評価した。
−評価基準−
A:粒子が高い均一性で分散され、混ざり合っていて、沈降は確認されない
B:粒子が多少沈降していて、
C:粒子が分離し、沈降している
〔空孔径の分布の評価〕
実施例1〜9、及び、比較例1で得た多孔質ポリイミドフィルムについて、空孔径の分布の評価(最大径、最小径、平均径、及び、長径と短径との比率)を行った。具体的には、既述の方法で評価を行った。
〔亀裂の評価〕
実施例1〜9、及び、比較例1で得た多孔質ポリイミドフィルムについて、亀裂の評価を行った。具体的な方法は以下のとおりである。ポリイミドフィルム1cm2角の面積を倍率500の顕微鏡で0.1mm以上を亀裂とし、有無を目視により観察した。
−評価基準−
A:亀裂なし
B:1か所以上3か所以下
C:4か所以上
Figure 0006904109
Figure 0006904109
Figure 0006904109
Figure 0006904109
以下、表2中の略称の詳細について示す。
・「PDA」 :p−フェニレンジアミン
・「BPDA」:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・「MMO」 :メチルモルホリン
・「DMIz」:1,2−ジメチルイミダゾール
・「PMMA/St」:非架橋ポリメタクリル酸メチル・スチレン共重合体
・「IPA」 :イソプロパノール
・「NMP」 :N−メチルピロリドン
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、前駆体溶液での樹脂粒子の沈降が抑制され、かつ多孔質ポリイミドフィルム中に樹脂粒子の残存が抑制されていることがわかる。

Claims (11)

  1. 水性溶媒と、粒子径分布曲線において、より小径側に存在する極大[P]及びより大径側に存在する極大[P]の少なくとも2つの極大を有する樹脂粒子と、ポリイミド前駆体と、を含有し、
    前記極大[P ]における粒子径に対する、前記極大[P ]における粒子径の比(%)が10%以上80%以下の範囲であり、
    前記樹脂粒子の全体の体積平均粒子径が100nm以上1000nm以下であり、
    前記極大[P ]を有するピークに含まれる粒子の量[V ]と、前記極大[P ]を有するピークに含まれる粒子の量[V ]と、の比[V /V ]が体積比で1/4以上35/48以下であるポリイミド前駆体溶液。
  2. 前記極大[P]における粒子径に対する、前記極大[P]における粒子径の比(%)が10%以上60%以下の範囲である請求項1に記載のポリイミド前駆体溶液。
  3. 前記樹脂粒子の全体の体積平均粒子径が100nm以上500nm以下である請求項1又は請求項2に記載のポリイミド前駆体溶液。
  4. 前記極大[P]を有するピークに含まれる粒子の量[V]と、前記極大[P]を有するピークに含まれる粒子の量[V]と、の比[ /V ]が体積比で1/4以上2/3以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
  5. 前記極大[P]における粒子径が10nm以上200nm以下、前記極大[P]における粒子径が300nm以上500nm以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
  6. 前記極大[P]を有するピークに含まれる粒子の変動係数、及び前記極大[P]を有するピークに含まれる粒子の変動係数が、いずれも15%以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
  7. 前記樹脂粒子の含有量が、前記ポリイミド前駆体の固形分100質量部に対して、20質量部以上600質量部以下である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
  8. 前記水性溶媒中における水の含有量が50質量%以上100質量%以下である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
  9. 請求項1〜請求項8に記載のポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記樹脂粒子を含む皮膜を形成する第1の工程と、
    前記皮膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化しポリイミドフィルムを形成すると共に、前記樹脂粒子を除去する処理を施す第2の工程と、
    を有する多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
  10. 前記樹脂粒子を除去する処理が、前記樹脂粒子を有機溶剤に溶解することで除去する処理である請求項9に記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
  11. 前記樹脂粒子を除去する処理が、前記樹脂粒子を加熱により除去する処理である請求項9に記載の多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
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