JP6988208B2 - 粒子分散ポリイミド前駆体溶液、多孔質ポリイミドフィルムの製造方法、および多孔質ポリイミドフィルム - Google Patents

粒子分散ポリイミド前駆体溶液、多孔質ポリイミドフィルムの製造方法、および多孔質ポリイミドフィルム Download PDF

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Description

本発明は、粒子分散ポリイミド前駆体溶液、多孔質ポリイミドフィルムの製造方法、および多孔質ポリイミドフィルムに関する。
ポリイミド樹脂は、機械的強度、化学的安定性、および耐熱性に優れた特性を有する材料であり、これらの特性を有する多孔質のポリイミドフィルムが注目されている。
例えば、特許文献1には、気孔率が45体積%以上95体積%以下、平均気孔径10nm以上1000nm以下である、オキシアルキレンユニットを含むポリイミドからなる多孔質ポリイミドフィルムが記載されている。その製法は、ポリイミド前駆体に対する良溶媒と貧溶媒の混合溶媒からなるポリイミド前駆体溶液を塗布、乾燥することによる相分離を利用して多孔質化する、乾式相分離法と呼ばれるものである。
例えば、特許文献2には、シリカ粒子を鋳型として、空孔率が60%以上で、空孔が三次元規則配列構造を有し、空孔が互いに連結された空孔を有する多孔質樹脂膜をリチウム二次電池用セパレータとして利用することが報告されている。
また、特許文献3および特許文献4には、無機粒子や有機樹脂粒子を分散したポリイミド前駆体溶液を用いて多孔質ポリイミドフィルムを作製し、二次電池用セパレータとして利用することが報告されている。
また、特許文献5および特許文献6には、樹脂粒子を分散したポリイミド前駆体溶液を用いて多孔質ポリイミドフィルムを作製する方法が報告されている。
特許第5944613号公報 特許第5331627号公報 特許第5605566号公報 国際公開2014/196656号 特開2016−183273号公報 特開2016−183333号公報
例えば、粒子を用いて多孔質ポリイミドフィルムを形成する場合など、粒子を含むポリイミド前駆体溶液を用いて塗膜を形成する前に、粒子を含むポリイミド前駆体溶液に脱泡処理を施す場合がある。そして、粒子を含むポリイミド前駆体溶液を脱泡したときに気泡が残存する場合があることが分かってきた。
例えば、アルキレン基、アルキレンオキシ基及びシロキサン基のいずれの連結基も有さないテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを、それぞれ1種ずつのみ用いて合成した従来のポリイミド前駆体では、脱泡したときに、溶存した空気が排出されにくく、気泡が残存しやすくなると考えられる。
本発明の課題は、粒子を含むポリイミド前駆体溶液において、ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体が、テトラカルボン酸二無水物として3,3,4’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のみ、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミンのみを用いて合成したポリイミド前駆体、又は、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物のみ、ジアミン化合物として4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのみを用いて合成したポリイミド前駆体である場合に比べ、脱泡したときの気泡の残存が抑制される粒子分散ポリイミド前駆体溶液を提供することである。
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。

媒、下記式(I)で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体、及び粒子を含む粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
Figure 0006988208
式(I)中、Aは4価の有機基、Bは2価の有機基であり、かつ、下記条件(1)および(2)の少なくとも一方を満たす。
(1):Aは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する4価の有機基A1と前記A1以外の4価の有機基A2とのモル比(A1/A2)が0.5/99.5以上20/80以下である。
(2):Bは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する2価の有機基B1と前記B1以外の2価の有機基B2とのモル比(B1/B2)が0.5/99.5以上20/80以下である。

記(1)及び前記(2)の少なくとも一方の条件を満たし、前記A1/A2のモル比が1/99以上15/85以下、及び前記B1/B2のモル比が1/99以上15/85以下である記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。

記(1)の条件を満たすとき下記(I−2)で示される条件を満足し、前記(2)の条件を満たすとき下記(I−1)で示される条件を満足する又はに記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
(I−1)A1/A2のモル比が0/100、かつB1/B2のモル比が1/99以上15/85以下
(I−2)A1/A2のモル比が1/99以上15/85以下、かつB1/B2のモル比が0/100

記A1および前記B1の少なくとも一方は、下記の有機基であるのいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
A1:シロキサン基の連結基を有する4価の有機基
B1:シロキサン基の連結基を有する2価の有機基

記A1を構成する原料単量体のテトラカルボン酸二無水物の重量平均分子量、および前記B1を構成する原料単量体のジアミン化合物の重量平均分子量が、それぞれ1000以下であるのいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。

記A2を構成する原料単量体のテトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸二無水物または3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、前記B2を構成する原料単量体のジアミン化合物が、p−フェニレンジアミンまたは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルであるのいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。

記粒子が樹脂粒子であるのいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。

らに有機アミン化合物を含有し、全溶媒中の水の占める割合が50質量%以上であるのいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。

記有機アミン化合物が、3級アミン化合物であるに記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
10
らに非プロトン性極性溶剤を、ポリイミド前駆体溶液中の粒子とポリイミド前駆体の合計量に対して3質量%以上50質量%以下で含有する又はに記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
11
記粒子の体積平均粒径が、0.1μm以上0.5μm以下である10のいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
12
記粒子分散ポリイミド前駆体溶液中の粒子の体積粒度分布指標が、1.30以下である11のいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
13
記粒子の含有量が、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して30質量%以上85質量%以下である12のいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
14
らに、前記ポリイミド前駆体において、前記A1、前記A2、前記B1、および前記B2を構成する各原料単量体成分のうち、最も含有量の少ない成分(ゼロを除く)の前記粒子に対する比率が0.002mmol/g以上であり、前記各原料単量体成分のうち、最も含有量の多い成分の前記粒子に対する比率と前記最も含有量の少ない成分(ゼロを除く)の前記粒子に対する比率との差が9mmol/g以下である13のいずれかに記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
15
14いずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記粒子を含む被膜を形成する第1の工程と、
前記被膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する第2の工程であって、前記粒子を除去する処理を含む第2の工程と、を有する球状の空孔を備えている多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
16
記式(III)で示される繰り返し単位を有するポリイミドを含有する球状の空孔を備えている多孔質ポリイミドフィルム。
Figure 0006988208
式(III)中、Aは4価の有機基、Bは2価の有機基であり、かつ、下記条件(1)および(2)の少なくとも一方を満たす。
(1):Aは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する4価の有機基A1と前記A1以外の4価の有機基A2とのモル比(A1/A2)が0.5/99.5以上20/80以下である。
(2):Bは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する2価の有機基B1と前記B1以外の2価の有機基B2とのモル比(B1/B2)が0.5/99.5以上20/80以下である。
17
記(1)及び前記(2)の少なくとも一方の条件を満たし、式(III)中、前記A1/(前記A1+前記A2)のモル比が1モル%以上15モル%以下、及びB1/(B1+B2)のモル比が1モル%以上15モル%以下である16に記載の多孔質ポリイミドフィルム。
18
記A1および前記B1の少なくとも一方は、下記の有機基である16又は17に記載の多孔質ポリイミドフィルム。
A1:シロキサン基の連結基を有する4価の有機基
B1:シロキサン基の連結基を有する2価の有機基
19
らに、ポリイミド以外の樹脂を、前記多孔質ポリイミドフィルム全体に対して0.005質量%以上1質量%以下で含有する1618のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミドフィルム。
に係る発明によれば、粒子を含むポリイミド前駆体溶液において、ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体が、テトラカルボン酸二無水物として3,3,4’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のみ、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミンのみを用いて合成したポリイミド前駆体、又は、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物のみ、ジアミン化合物として4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのみを用いて合成したポリイミド前駆体である場合に比べ、脱泡したときの気泡の残存が抑制される粒子分散ポリイミド前駆体溶液が提供される。
に係る発明によれば、ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体として、式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体のうち、Aがアルキレン基の連結基を有する4価の有機基A1とA1以外の4価の有機基A2とのモル比(A1/A2)が10/90であり、Bが4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのみに由来する基である場合に比べ、つづら折り状に折り畳んで保持したときの破損が抑制される多孔質ポリイミドフィルムが得られる粒子分散ポリイミド前駆体溶液が提供される。
に係る発明によれば、ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体として、式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体のうち、A1を構成する原料単量体のテトラカルボン酸二無水物の重量平均分子量、およびB1を構成する原料単量体のジアミン化合物の重量平均分子量が、それぞれ1000を超える場合に比べ、耐熱性が向上する多孔質ポリイミドフィルムが得られる粒子分散ポリイミド前駆体溶液が提供される。
に係る発明によれば、ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体が、テトラカルボン酸二無水物として3,3,4’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のみ、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミンのみを用いて合成したポリイミド前駆体、又は、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物のみ、ジアミン化合物として4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのみを用いて合成したポリイミド前駆体である場合に比べ、A2を構成する原料単量体のテトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸二無水物または3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、およびB2を構成する原料単量体のジアミン化合物が、p−フェニレンジアミンまたは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルであり、脱泡したときの気泡の残存が抑制される粒子分散ポリイミド前駆体溶液が提供される。
に係る発明によれば、粒子がシリカ粒子である場合に比べ、ポリイミド前駆体溶液の保管後の粘度変化が抑制される粒子分散ポリイミド前駆体溶液が提供される。
10に係る発明によれば、ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体が、テトラカルボン酸二無水物として3,3,4’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のみ、ジアミン化合物としてp−フェニレンジアミンのみを用いて合成したポリイミド前駆体、又は、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物のみ、ジアミン化合物として4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのみを用いて合成したポリイミド前駆体である場合に比べ、有機アミン化合物を含有し、全溶媒中の水の占める割合が50質量%以上であり、脱泡したときの気泡の残存が抑制される粒子分散ポリイミド前駆体溶液が提供される。
11に係る発明によれば、粒子の体積平均粒径が、0.1μm未満または0.5μmを超える場合に比べ、保管後の粘度変化が抑制される粒子分散ポリイミド前駆体溶液が提供される。
12に係る発明によれば、粒子分散ポリイミド前駆体溶液中の粒子の体積粒度分布指標が、1.30以下である場合に比べ、保管後の粘度変化が抑制される粒子分散ポリイミド前駆体溶液が提供される。
13に係る発明によれば、粒子の含有量が粒子分散ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して85質量%を超える場合に比べ、脱泡性の向上とともに保管後の粘度変化も抑制できる粒子分散ポリイミド前駆体溶液が提供される。
14に係る発明によれば、式(I)で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体において、A1、A2、B1、およびB2を構成する各原料単量体成分のうち、最も含有量の少ない成分(ゼロを除く)の粒子に対する比率が0.002mmol/g未満である場合、又は、A1、A2、B1、およびB2を構成する各原料単量体成分のうち、最も含有量の多い成分の粒子に対する比率と、最も含有量の少ない成分(ゼロを除く)の粒子に対する比率との差が9mmol/gを超える場合に比べ、脱泡性が向上する粒子分散ポリイミド前駆体溶液が提供される。
15に係る発明によれば、粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記粒子を含む被膜を形成する第1の工程と、前記被膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する第2の工程であって、前記粒子を除去する処理を含む第2の工程と、を有する多孔質ポリイミドフィルムの製造方法において、ポリイミド前駆体が、テトラカルボン酸二無水物として、3,3,4’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のみ、ジアミン化合物として、p−フェニレンジアミンのみを用いて合成したポリイミド前駆体、又は、テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物のみ、ジアミン化合物として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのみを用いて合成したポリイミド前駆体である場合に比べ、つづら折り状に折り畳んで保持したときの破損が抑制される多孔質ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
1617に係る発明によれば、式(III)で示される繰り返し単位を有するポリイミドを含む多孔質ポリイミドフィルムにおいて、ポリイミドが、テトラカルボン酸二無水物として、3,3,4’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のみ、ジアミン化合物として、p−フェニレンジアミンのみを用いて合成したポリイミド、又は、テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物のみ、ジアミン化合物として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのみを用いて合成したポリイミドである場合に比べ、つづら折り状に折り畳んで保持したときの破損が抑制される多孔質ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
18に係る発明によれば、ポリイミドが、テトラカルボン酸二無水物として、3,3,4’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のみ、ジアミン化合物として、p−フェニレンジアミンのみを用いて合成したポリイミド、又は、テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物のみ、ジアミン化合物として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのみを用いて合成したポリイミドである場合に比べ、A1がシロキサン基の連結基を有する4価の有機基、及びB1がシロキサン基の連結基を有する2価の有機基の少なくとも一方であり、つづら折り状に折り畳んで保持したときの破損が抑制される多孔質ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
19に係る発明によれば、ポリイミドが、テトラカルボン酸二無水物として、3,3,4’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のみ、ジアミン化合物として、p−フェニレンジアミンのみを用いて合成したポリイミド、又は、テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物のみ、ジアミン化合物として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルのみを用いて合成したポリイミドである場合に比べ、ポリイミド以外の樹脂を、多孔質ポリイミドフィルム全体に対して0.005質量%以上1質量%以下で含有し、つづら折り状に折り畳んで保持したときの破損が抑制される多孔質ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
多孔質ポリイミドフィルムの折れ曲げ耐性試験を表す模式図である。
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
<粒子分散ポリイミド前駆体溶液>
本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液は、溶媒、上記の式(I)(一般式(I))で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体、及び粒子を含む。
溶媒は、ポリイミド前駆体を溶解し、粒子を溶解しない溶媒である。また、粒子はポリイミド前駆体溶液中で分散されている状態となっている。
従来、多孔質ポリイミドフィルムは、例えば、特許文献1に開示されるように、相分離により多孔質化を行う方法で得られることが知られている。この技術では、ポリイミド主鎖中にオキシアルキレンユニットを導入することで、高い気孔率と小さい平均気孔径を有する多孔質ポリイミドフィルムを実現している。しかし、多孔質ポリイミドフィルムの空孔は非球状であり、空孔径の分布も広くなる。
一方で、このような空孔の形状および空孔径の分布が不均一な多孔質ポリイミドフィルムではなく、空孔が球状に近い形状を有し、かつ空孔径が均一に近い多孔質ポリイミドフィルムを、粒子を用いて作製する技術が開発されている。
このような、空孔が球状に近く、かつ空孔径が均一に近い多孔質ポリイミドフィルムは、相分離法で作製された不均一な多孔質ポリイミドフィルムと比較し、多くの産業用途で利点を有する。
その利点としては、例えば、リチウムイオン二次電池のセパレータに適用した場合に、充放電中のイオンの移動が均一に近くなることで、リチウムの結晶(デンドライト)の形成抑制および局所的な疲労抑制などにより、電池の安定性向上や寿命向上に大きな効果を有することが挙げられる。また、例えば、フィルターに適用した場合には、ろ過速度を低下させずに、ろ過効率を向上させることが可能となることが挙げられる。
ところで、球状に近い粒子および非球状の粒子のいずれの粒子を用いた場合でも、多孔質ポリイミドフィルムの作製は可能である。
しかし、例えば、粒子を用いて、均一に近い空孔を有する多孔質ポリイミドフィルムを作製する場合に、粒子を含むポリイミド前駆体溶液に対し脱泡処理を施す場合がある。そして、粒子を含むポリイミド前駆体溶液を脱泡したときに、粒子を含むポリイミド前駆体溶液中に、気泡が残存する場合があることが分かってきた。
例えば、ポリイミド前駆体の化学構造の主鎖中に、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基のいずれの連結基も有さない従来のポリイミド前駆体(つまり、アルキレン基、アルキレンオキシ基及びシロキサン基のいずれの連結基も有さない、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンを、それぞれ1種ずつのみ用いて合成した従来のポリイミド前駆体)は、ポリイミド前駆体の剛直性が高い。そのため、ポリイミド前駆体溶液中では、ポリイミド前駆体の高い剛直性によって、ポリイミド前駆体が移動し難くなると考えられる。その結果、従来の粒子を含むポリイミド前駆体溶液では、脱泡したときに、溶存した空気が排出されにくく、気泡が残存しやすくなると考えられる。
これに対し、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液は、上記構成により、脱泡したときの気泡の残存が抑制される。この理由は定かではないが、以下のように推測される。
本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液では、ポリイミド前駆体の化学構造の主鎖中に存在する4価の有機基および2価の有機基の少なくとも一方に、アルキレン基、アルキレンオキシ基、シロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を含む。そのため、ポリイミド前駆体溶液中で、ポリイミド前駆体の剛直性が緩和され、ポリイミド前駆体が移動しやすくなると考えられる。その結果、脱泡したときに気泡が抜けやすくなるため、脱泡したときの気泡の残存が抑制されると考えられる。
以上の理由から、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液は、脱泡したときの気泡の残存が抑制されると推測される。
なお、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液は、従来の粒子を含むポリイミド前駆体溶液に比べ、室温(25℃)保管中に粒子分散ポリイミド前駆体溶液の粘度上昇が抑制されやすくなる。これは、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液では、ポリイミド前駆体同士の微視的な凝集および粒子同士の微視的な凝集が抑制されるためと考えられる。
一方、ポリイミド前駆体の化学構造の主鎖中に、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基のいずれの連結基も有さない従来のポリイミド前駆体を使用した場合、ポリイミド前駆体の剛直性が高いため、粒子との親和性が低い。そのため、室温保管中にポリイミド前駆体同士が微視的に凝集しやすくなり、また粒子同士が微視的に凝集しやすくなると考えられる。これによって、粒子分散安定性が低下するほどではない場合でも、ポリイミド前駆体溶液の粘度が上昇しやすくなる場合がある。
また、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液を脱泡処理する場合、従来の粒子を含むポリイミド前駆体溶液では、液面の最表面で少量の溶媒が揮発し、局所的に濃度が上昇しやすい。そして、ポリイミド前駆体が剛直であることにより、ポリイミド前駆体同士の凝集とともに粒子同士の凝集が進みやすくなるため、粒子析出が発生しやすくなる場合がある。
(ポリイミド前駆体)
ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して得られる。式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂(ポリアミック酸)である。
Figure 0006988208
式(I)中、Aは4価の有機基、Bは2価の有機基であり、かつ、下記条件(1)および(2)の少なくとも一方を満たす。
(1):Aは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する4価の有機基A1と前記A1以外の4価の有機基A2とのモル比(A1/A2)が0.5/99.5以上20/80以下である。
(2):Bは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する2価の有機基B1と前記B1以外の2価の有機基B2とのモル比(B1/B2)が0.5/99.5以上20/80以下である。
つまり、式(I)中、AとBとは、上記(1)の条件のみ、又は上記(2)の条件のみを満足していてもよい。上記(1)の条件を満たしていれば、Bは特に限定されない。また、上記(2)の条件を満たしていれば、Aは、特に限定されない。
さらに、上記(1)の条件を満たしていれば、Bは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する2価の有機基B1を含んでいてもよい。同様に、上記(2)の条件を満たしていれば、Aは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する4価の有機基A1を含んでいてもよい。そして、AとBとは、上記(1)の条件および上記(2)の条件のいずれの条件を満足していてもよい。
以下、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する4価の有機基、並びに、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する2価の有機基について説明する。
アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する4価の有機基は、化学構造中に、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有するテトラカルボン酸二無水物から、4つのカルボキシ基を除いた残基を表す。
また、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する2価の有機基は、化学構造中に、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有するジアミン化合物から、2つのアミノ基を除いた残基を表す。
ここで、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有するテトラカルボン酸二無水物は、例えば、以下の式(A−1)で表される。
式(A−1):O(CO)11(CO)
11は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、又はシロキサン基の連結基を有する4価の有機基を表す。式(A−1)で表されるテトラカルボン酸二無水物が、芳香族である場合、A11は、例えば、ph−L11−phで表される基でもよい。phは置換されてもよいフェニル基を表す。L11はアルキレン基、アルキレンオキシ基、又はシロキサン基の連結基を表す。
また、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有するジアミン化合物は、例えば、以下の式(B−1)で表される。
式(B−1):HNB21NH
21は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、又はシロキサン基の連結基を有する2価の有機基を表す。式(B−1)で表されるジアミン化合物が、芳香族である場合、B21は、例えば、ph−L21−phで表される基でもよい。phは置換されてもよいフェニル基を表す。L21はアルキレン基、アルキレンオキシ基、又はシロキサン基の連結基を表す。
これら連結基の主鎖を構成する原子の総数(連結基がアルキレン基の場合、主鎖中の炭素原子の総数、連結基がアルキレンオキシ基の場合、主鎖中の炭素原子および酸素原子の総数、連結基がシロキサン基の場合、主鎖中のケイ素原子および酸素原子の総数)は、2以上50以下であることがよく、3以上40以下であることが好ましく、4以上30以下であることがより好ましい。
連結基は、分岐上、直鎖状のいずれにも限定されないが、直鎖状の連結基であることが好ましい。なお、連結基の主鎖とは、例えば、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有するテトラカルボン酸二無水物またはジアミン化合物が、上記式(A−1)または式(B−1)で表される場合、ph−L11−ph、またはph−L21−phで表される基のうち、phとphとを連結しているL11またはL21の連結鎖を表す。
A1およびB1の少なくとも一方は、多孔質ポリイミドフィルムを作製した場合の多孔質ポリイミドフィルムの熱安定性の観点から、下記の有機基であることが好ましい。
A1:シロキサン基の連結基を有する4価の有機基
B1:シロキサン基の連結基を有する2価の有機基
つまり、A1およびB1中のアルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基は、シロキサン基であることが好ましい。シロキサン基の連結基のうち、ケイ素原子上に置換する置換基としては、具体的にはメチル基、エチル基、nプロピル基、nブチル基などの炭素数10未満のアルキル基、フェニル基、4−メチルフェニル基などのアリール基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基が挙げられる。このうち、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
A1を構成する原料単量体のテトラカルボン酸二無水物の重量平均分子量、およびB1を構成する原料単量体のジアミン化合物の重量平均分子量が、それぞれ2000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましい。
A1を構成する原料単量体であるテトラカルボン酸二無水物としては、以下のものが挙げられる。
アルキレン基連結のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、具体的には、エチレンビスアンヒドロトリメリテート(エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート)、トリメチレンビスアンヒドロトリメリテート、テトラメチレンビスアンヒドロトリメリテート、ペンタメチレンビスアンヒドロトリメリテート、ヘキサメチレンビスアンヒドロトリメリテート、ヘプタメチレンビスアンヒドロトリメリテート、オクタメチレンビスアンヒドロトリメリテート、ノナメチレンビスアンヒドロトリメリテート、デカメチレンビスアンヒドロトリメリテート、N,N’−エチレンビスアンヒドロトリメリットアミド、N,N’−トリメチレンビスアンヒドロトリメリットアミド、N,N’−テトラメチレンビスアンヒドロトリメリットアミド、N,N’−ペンタメチレンビスアンヒドロトリメリットアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアンヒドロトリメリットアミド、N,N’−ヘプタメチレンビスアンヒドロトリメリットアミド、N,N’−オクタメチレンビスアンヒドロトリメリットアミド、N,N’−ノナメチレンビスアンヒドロトリメリットアミド、N,N’−デカメチレンビスアンヒドロトリメリットアミドなどが挙げられる。
アルキレンオキシ基連結のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、具体的には、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテートなどが挙げられる。
ここで、エチレンオキシ基やプロピレンオキシ基の総数(繰り返し数)は、連結基の主鎖を構成する原子(アルキレンオキシ基の場合、主鎖中の炭素原子と酸素原子)の総数が、上述した数字になるものが好ましいものとして挙げられる。
シロキサン基連結のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、具体的には、信越化学工業社製のX−22−168AS、X−22−168A、X−22−168B、X−22−168−P5−Bが挙げられる。
また、上記以外では、例えば、後述するB1を構成する原料単量体のジアミン化合物と無水トリメリット酸クロリドとの反応物も挙げられる。
A1を構成する原料単量体のテトラカルボン酸二無水物としては、エチレンビスアンヒドロトリメリテート(エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート)、トリメチレンビスアンヒドロトリメリテート、テトラメチレンビスアンヒドロトリメリテート、ペンタメチレンビスアンヒドロトリメリテート、ヘキサメチレンビスアンヒドロトリメリテート、ヘプタメチレンビスアンヒドロトリメリテート、オクタメチレンビスアンヒドロトリメリテート、ノナメチレンビスアンヒドロトリメリテート、デカメチレンビスアンヒドロトリメリテート、N,N’−エチレンビスアンヒドロトリメリットアミド、N,N’−トリメチレンビスアンヒドロトリメリットアミド、N,N’−テトラメチレンビスアンヒドロトリメリットアミド、N,N’−ペンタメチレンビスアンヒドロトリメリットアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアンヒドロトリメリットアミドなどのアルキレン連結のテトラカルボン酸二無水物;ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートなどのアルキレンオキシ基連結のテトラカルボン酸二無水物;X−22−168AS、X−22−168Aなどのシロキサン基連結のテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
B1を構成する原料単量体のジアミン化合物としては、以下のものが挙げられる。
アルキレン基連結のジアミン化合物としては、例えば、具体的には、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,2−ビス(4−アミノフェノキシ)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェノキシ)デカンなどが挙げられる。
アルキレンオキシ基連結のジアミン化合物としては、例えば、具体的には、ポリエチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(2−アミノプロピル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(4−アミノフェニル)エーテルなどが挙げられる。
ここで、エチレンオキシ基やプロピレンオキシ基の繰り返し数は、連結基の主鎖を構成する原子(アルキレンオキシ基の場合、主鎖中の炭素原子と酸素原子)の総数が、上述した数字になるものが挙げられる。
これらのポリ(アルキレンオキシ)ジアミン化合物の多くは、ハンツマン社製のジェファーミンシリーズとして入手可能である。例えば、ジェファーミンD−230、ジェファーミンD−400、ジェファーミンD−2000、ジェファーミンD−4000、ジェファーミンHK−511、ジェファーミンED−600、ジェファーミンED−900、ジェファーミンED−2003、ジェファーミンEDR−148、ジェファーミンEDR−176などが挙げられる。
シロキサン基連結のジアミン化合物としては、例えば、具体的には、信越化学工業社製のPAM−E、KF−8010、X−22−161A、X−22−161B、KF−8012、X−22−1660B−3、X−22−9409、α,ω−ビスアミノポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンに代表されるα,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(10−アミノデカメチレン)テトラメチルジシロキサン、ビス(3−アミノフェノキシメチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリメチルフェニルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリ(ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン)コポリマーなどが挙げられる。
ここで、シロキサンの繰り返し数は、連結基の主鎖を構成する原子(シロキサンの場合、主鎖中のケイ素原子と酸素原子)の総数が、上述した数字になるものが挙げられる。
B1を構成する原料単量体のジアミン化合物としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,2−ビス(4−アミノフェノキシ)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタンなどのアルキレン基連結のジアミン化合物;ポリエチレングリコールビス(2−アミノエチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテルの、ハンツマン社製のジェファーミンD−230、ジェファーミンD−400、ジェファーミンHK−511、ジェファーミンED−600、ジェファーミンED−900、ジェファーミンEDR−148、ジェファーミンEDR−176などのアルキレンオキシ基連結のジアミン化合物;信越化学工業社製のPAM−E、KF−8010、X−22−161A、X−22−9409、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサンなどのシロキサン基連結のジアミン化合物が好ましい。
次に、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する4価の有機基A1以外の4価の有機基A2について説明する。
A2が表す4価の有機基としては、原料となるテトラカルボン酸二無水物より4つのカルボキシル基を除いたその残基である。ただし、A1を構成する原料単量体のテトラカルボン酸二無水物を除く。
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族、脂肪族いずれの化合物も挙げられるが、芳香族の化合物であることがよい。つまり、一般式(I)中、Aが表す4価の有機基は、芳香族の有機基であることがよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。また、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等のテトラカルボン酸二無水物等も挙げられる。
これらの中でも、テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物がよく、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、更に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、特に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がよい。
なお、A2を構成する原料単量体のテトラカルボン酸二無水物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又は脂肪族テトラカルボン酸二無水物を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせてもよい。
次に、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する2価の有機基B1以外の2価の有機基B2について説明する。
B2が表す2価の有機基としては、原料となるジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基である。ただし、B1を構成する原料単量体のジアミン化合物を除く。
ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物である。ジアミン化合物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も挙げられるが、芳香族系の化合物であることがよい。つまり、一般式(I)中、B2が表す2価の有機基は、芳香族系有機基であることがよい。
ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン化合物;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン化合物;1,1−メタキシリレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン化合物及び脂環式ジアミン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、ジアミン化合物としては、芳香族ジアミン化合物がよく、具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホンがよく、特に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンがよい。
なお、ジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族ジアミン化合物、又は脂肪族ジアミン化合物を各々併用しても、芳香族ジアミン化合物と脂肪族ジアミン化合物とを組み合わせてもよい。
ここで、前記式(I)で示されるポリイミド前駆体は、上記のA1/A2(モル比)及びB1/B2(モル比)の少なくとも一方が、0.5/99.5以上20/80以下である。また、上記のA1/A2(モル比)及びB1/B2(モル比)の少なくとも一方は、1/99以上15/85以下の範囲であることが好ましい。
A1/A2(モル比)及びB1/B2(モル比)の少なくとも一方が、0.5/99.5未満の範囲であると、A1又はB1のモル比が少なすぎる。0.5/99.5以上であると、ポリイミド前駆体の剛直性が緩和され、ポリイミド前駆体が移動しやすくなると考えられる。そのため、A1/A2(モル比)およびB1/B2(モル比)の少なくとも一方が0.5以上の範囲を満足していると、脱泡したときに気泡が抜けやすくなり、気泡の残存が抑制される。
同様の点で、前記式(I)で示されるポリイミド前駆体は、前記(1)の条件を満たすとき下記(I−2)で示される条件を満足し、前記(2)の条件を満たすとき、下記(I−1)で示される条件を満足することが好ましい。
(I−1):A1/A2のモル比が0/100、かつB1/B2のモル比が1/99以上15/85以下
(I−2):A1/A2のモル比が1/99以上15/85以下、かつB1/B2のモル比が0/100
また、前記ポリイミド前駆体は、下記の条件(3)を満たすことがよい。
条件(3)としては、前記ポリイミド前駆体において、A1、A2、B1、およびB2を構成する各原料単量体成分のうち、最も含有量の少ない成分(ゼロを除く)の粒子に対する比率は、0.002mmol/g以上であることがよい。この比率は、0.005mmol/g以上が好ましく、0.02mmol/g以上がより好ましい。この比率が0.002mmol/g以上であると、粒子の量に対して該各原料単量体の含有比率が低すぎることがなく、脱泡性が向上しやすい。
なお、「ゼロを除く」は、上記A1、A2、B1、およびB2を構成する各原料単量体成分のうち、含有しない成分を除くことを表す。
また、上記の各原料単量体成分のうち、最も含有量の多い成分の粒子に対する比率と最も含有量の少ない成分(ゼロを除く)の粒子に対する比率との差は、9mmol/g以下であることがよい。この両者の差は、7mmol/g以下が好ましく、5mmol/g以下がより好ましく、3mmol/g以下が最も好ましい。この値が9mmol/g以下であると、粒子の量に対してポリイミド前駆体の繰り返し単位の規則性が大きくなりすぎることがなく、脱泡性が向上しやすくなる。
なお、粒子分散ポリイミド前駆体溶液から、ポリイミド前駆体中の、上記A1、A2、B1、およびB2を分析する方法としては、以下の方法が挙げられる。
まず、測定対象となる粒子分散ポリイミド前駆体溶液から、粒子を分離する。次に、粒子を分離したポリイミド前駆体溶液に対して、メタノールを加えて、ポリイミド前駆体の再沈物を得る。この再沈殿物を耐圧容器に入れて、1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、100℃で2時間処理を行い、ポリイミド前駆体の加水分解物を得る。次に、この加水分解物をクロロホルムで抽出作業を行い、クロロホルム相の濃縮液から、赤外分光法、核磁気共鳴分光法、及びガスクロマトグラフィー法によって分析し、ジアミン化合物由来の成分の構造および量を測定する。また、この加水分解物のクロロホルム不溶相である水相を中和し、凍結乾燥後、乾燥固形分を得る。これにメタノールによる抽出作業を行い、その溶解物を、赤外分光法、核磁気共鳴分光法、及びガスクロマトグラフィー法によって分析し、テトラカルボン酸二無水物由来の成分の構造および量を測定する。
なお、ポリイミドフィルム中のA1、A2、B1、およびB2は、ポリイミドフィルムを、赤外分光法、核磁気共鳴分光法、及びガスクロマトグラフィー法によって分析する。
この測定結果から、ポリイミド前駆体中のモル比(A1/A2)およびモル比(B1/B2)を算出する。
また、分離した粒子から、粒子分散ポリイミド前駆体溶液に含まれる粒子の固形分含有量を測定する。そして、粒子の含有量の測定結果と、上記A1、A2、B1、およびB2の測定結果とから、単位粒子質量当たりに対する上記A1、A2、B1、およびB2の各原料単量体成分のうちの0(ゼロ)を除く最も含有量の少ないモル量の比と、単位粒子質量当たりに対する上記A1、A2、B1、およびB2の各原料単量体成分のうちの最も含有量の多いモル量の比を下記式1および下記式2にしたがって算出する。また、最も含有量の多い成分の粒子に対する比率と最も含有量の少ない成分(ゼロを除く)の粒子に対する比率との差を下記式3にしたがって算出する。
式1:各原料単量体成分のうち0を除く最も含有量の少ない成分のモル量/粒子の質量
式2:各原料単量体成分のうち最も含有量の多い成分のモル量/粒子の質量
式3:(上記の各原料単量体成分のうち最も含有量の多い成分のモル量/粒子の質量)−(上記の各原料単量体成分のうち0を除く最も含有量の少ない成分のモル量/粒子の質量)
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、1000以上150000以下であることがよく、5000以上130000以下であることが好ましく、10000以上100000以下であることがより好ましい。ポリイミド前駆体の数平均分子量を上記範囲であると、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性の低下が抑制され、製膜性が良化し易くなる。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される。
・カラム:東ソーTSKgelα−M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
ポリイミド前駆体の含有量(濃度)は、全ポリイミド前駆体溶液に対して、0.1質量%以上40質量%以下であることがよく、好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、より好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
(粒子)
粒子は、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液中に、粒子が溶解せず分散している状態であり、さらに、多孔質ポリイミドフィルムを作製するときに、後述する粒子除去工程で除去可能であれば、粒子の材質は特に限定されない。粒子は、後述する樹脂粒子および無機粒子に大別される。
ここで、本明細書中において、「粒子が溶解しない」とは、25℃において、粒子が、対象となる液体に対して溶解しないことに加え、3質量%以下の範囲内で溶解することも含む。
粒子の体積平均粒径D50vは、特に限定されない。粒子の体積平均粒径D50vは、例えば、0.1μm以上0.5μm以下であることがよく、0.25μm以上0.5μm以下であることが好ましく、0.25μm以上0.48μm以下であることが好ましく、0.25μm以上0.45μm以下であることがより好ましい。粒子の平均粒径が、この範囲であると、凝集性が抑制されやすくなる。また、粒子が樹脂粒子である場合、樹脂粒子の生産性が向上しやすくなる。
また、粒子の体積粒度分布指標(GSDv)は、1.30以下が好ましく、1.25以下がより好ましく、1.20以下が最も好ましい。粒子の体積粒度分布指標は、粒子分散ポリイミド前駆体溶液中の粒子の粒度分布から、(D84v/D16v)1/2として算出される。
本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液中の粒子の粒度分布は、次のようにして測定する。測定対象となる溶液を希釈してコールターカウンターLS13(ベックマン・コールター社製)を用いて、液中の粒子の粒度分布を測定する。測定される粒度分布を基にして、分割された粒度範囲(チャンネル)に対して、小径側から体積累積分布を描いて粒度分布を測定する。
そして、小径側から描いた体積累積分布のうち、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積84%となる粒径を体積粒径D84vとする。
なお、本実施形態の粒子分散ポリイミド前駆体溶液中の粒子の体積粒度分布が、上記方法で測定し難い場合、動的光散乱法等の方法にて測定される。
粒子の形状は球状であることがよい。球状の粒子を用いて、多孔質ポリイミドフィルムを作製すると、球状の空孔を備えた多孔質ポリイミドフィルムが得られる。
なお、本明細書中において、粒子における「球状」とは、球状、及びほぼ球状(球状に近い形状)の両者の形状を包含するものである。具体的には、長径と短径の比(長径/短径)が1以上1.5以下である粒子の割合が90%以上存在することを意味する。長径と短径の比が1に近づくほど真球状に近くなる。
粒子としては、樹脂粒子および無機粒子のいずれを用いてもよいが、樹脂粒子を使用することが好ましい。
樹脂粒子は、後述するように乳化重合などの公知の製造法により、球状に近い粒子を作製しやすくなる。さらに、樹脂粒子およびポリイミド前駆体は有機材料なので、無機粒子を使用する場合と比較し、塗膜中の粒子分散性やポリイミド前駆体との界面密着が向上しやすくなる。また、多孔質ポリイミドフィルムを作製するときに、空孔および空孔径がより均一に近い多孔質ポリイミドフィルムが得られやすくなる。これらの理由で樹脂粒子を用いることが好ましい。
無機粒子としては、例えばシリカ粒子が挙げられる。シリカ粒子は、球状に近い粒子であるものが入手可能である点で好適な無機粒子である。例えば、球状に近いシリカ粒子を用いた粒子分散ポリイミド前駆体溶液を用いて、空孔が球状に近い状態となるである多孔質ポリイミドフィルムを得ることができる。しかし、粒子として、シリカ粒子を用いた場合、イミド化工程において、体積収縮を吸収し難いため、イミド化後のポリイミドフィルムに細かな亀裂が生じやすい傾向がある。この点でも、粒子としては樹脂粒子を用いることが好ましい。
本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液において、粒子の含有量としては、溶液中の固形分100質量部に対して、20質量%以上90質量%以下(好ましくは25質量%以上87質量%以下、より好ましくは30質量%以上85質量%以下)の範囲であることがよい。
以下、樹脂粒子および無機粒子の具体的な材料について説明する。
−樹脂粒子−
樹脂粒子としては、具体的には、例えば、ポリスチレン類、ポリ(メタ)アクリル酸類、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテルなどに代表されるビニル系ポリマー;ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミドなどに代表される縮合系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエンなどに代表される炭化水素系ポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルフルオリドなどに代表されるフッ素系ポリマー;などの樹脂粒子が挙げられる。
ここで、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」のいずれをも含むことを意味する。また、(メタ)アクリル酸類とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドを含む。
樹脂粒子は、架橋されていても架橋されていなくてもよい。架橋する場合は、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ノナンジアクリレート、デカンジオールジアクリレートなどの二官能単量体、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能単量体を併用してもよい。
樹脂粒子がビニル樹脂粒子である場合、単量体を重合して得られる。ビニル樹脂の単量体としては、以下に示す単量体が挙げられる。例えば、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン等)、ハロゲン置換スチレン(例えば2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン等)、ビニルナフタレン等のスチレン骨格を有するスチレン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ビニルスルホン酸等の酸類;エチレンイミン、ビニルピリジン、ビニルアミン等の塩基類;等の単量体を重合体させたビニル樹脂単位が挙げられる。
その他の単量体として、酢酸ビニルなどの単官能単量体を併用してもよい。
また、ビニル樹脂は、これらの単量体を単独で用いた樹脂でもよいし、2種以上の単量体を用いた共重合体である樹脂であってもよい。
樹脂粒子としては、製造性、後述する粒子除去工程の適応性の観点から、ポリスチレン類、ポリ(メタ)アクリル酸類の樹脂粒子であることが好ましい。具体的には、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸類共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸類の樹脂粒子がさらに好ましく、ポリスチレンおよびポリ(メタ)アクリル酸エステル類の樹脂粒子が最も好ましい。これらの樹脂粒子は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂粒子は、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液の作製の過程、および多孔質ポリイミドフィルムを作製するときのポリイミド前駆体溶液の塗布、塗膜の乾燥(樹脂粒子除去の前)の過程で粒子の形状が保持されていることが好ましい。この観点から、樹脂粒子のガラス転移温度としては、60℃以上であることがよく、70℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
−無機粒子−
無機粒子としては、例えば、具体的には、シリカ(二酸化ケイ素)粒子、酸化マグネシウム粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、炭酸カルシウム粒子、酸化カルシウム粒子、二酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化セリウム粒子などの無機粒子が挙げられる。粒子の形状は、上述した通り、球状であることがよい。この観点で、無機粒子としては、シリカ粒子、酸化マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、酸化マグネシウム粒子、アルミナ粒子の無機粒子が好ましく、シリカ粒子、酸化チタン粒子、アルミナ粒子の無機粒子がより好ましく、シリカ粒子がさらに好ましい。これらの無機粒子は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、無機粒子のポリイミド前駆体溶液の溶媒への濡れ性および分散性が不十分である場合は、必要に応じて、無機粒子の表面を修飾してもよい。表面修飾の方法としては、例えば、シランカップリング剤に代表される有機基を有するアルコキシシランで処理する方法;シュウ酸、クエン酸、乳酸などの有機酸でコーティングする方法;などが挙げられる。
(溶媒)
溶媒は、粒子分散ポリイミド前駆体溶液中で、ポリイミド前駆体が溶解し、かつ粒子が溶解せずに分散している状態となるのであれば、特に限定されるものではない。溶媒は、有機系溶媒および水系溶媒のいずれでもよい。溶媒は、ポリイミド前駆体は溶解し、粒子は溶解せずに分散している状態に応じて選択すればよい。
溶媒は、以下に示す有機系溶媒または水系溶媒が挙げられる。溶媒として、水系溶媒を適用した場合は、ポリイミド前駆体を溶解させるために、後述する有機アミン化合物を添加することが好ましい。
溶媒としては、環境、コストの観点で水系溶媒が好ましい。特に、粒子として樹脂粒子を用いる場合は、ポリイミド前駆体に溶解し、さらに、樹脂粒子が溶解せずに分散している状態が得られるため、水系溶媒を用いることが好ましい。
−有機系溶媒−
有機系溶媒は、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液中において、ポリイミド前駆体は溶解し、粒子は溶解せず分散している状態が得られるように選択される。有機系溶媒を選択する場合、ポリイミド前駆体に対する良溶媒(S1)と、良溶媒(S1)以外の溶媒(S2)との混合溶媒が好ましい。
ポリイミド前駆体に対する良溶媒(S1)とは、ポリイミド前駆体溶液を作製する際に使用されるものである。良溶媒とは、本実施形態では、ポリイミド前駆体の溶解度が5質量%以上を示す溶媒を指す。具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルプロピレンウレア、ジメチルスルホキシド、γ―ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトンなどの非プロトン性極性溶剤が挙げられる。
これらの中でも、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ―ブチロラクトンが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラメチルウレア、ジメチルスルホキシド、γ―ブチロラクトンがより好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、γ―ブチロラクトンがさらに好ましい。
ポリイミド前駆体に対する良溶媒以外の溶媒(S2)としては、用いる粒子の溶解度が低いものを選択する。溶媒の選択法の例としては、例えば、対象となる溶媒に粒子を添加して、溶解量が3質量%以下のものを選択する方法が挙げられる。
ポリイミド前駆体に対する良溶媒以外の溶媒(S2)としては、例えば、n−デカン、トルエンなどの炭化水素系溶剤;イソプロピルアルコール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、フェネチルアルコールなどのアルコール系溶剤;エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤;ジグライム、トリグライム、テトラグライム、メチルセロソルブアセテートなどのエーテル系溶剤;フェノール、クレゾールなどのフェノール系溶剤;などが挙げられる。
粒子として、前述の樹脂粒子を用いる場合、溶媒(S1)は非常に極性が高いため、溶媒(S1)単独では、ポリイミド前駆体だけでなく、樹脂粒子をも溶解してしまう場合がある。そのため、溶媒(S1)と溶媒(S2)の混合比率は、ポリイミド前駆体は溶解し、樹脂粒子は溶解しないように決定すればよい。また、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の塗膜の加熱過程で樹脂粒子が溶解して、例えば空孔の形状が乱れてしまうことを抑制するため、溶媒(S2)の沸点は、溶媒(S1)よりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましい。
−水系溶媒−
本明細書において水系溶媒とは、具体的には、以下に示す水性溶剤である。
水性溶剤は、水を含む水性溶剤である。具体的には、水性溶剤は、全水性溶剤に対して水を50質量%以上含有する溶剤であることがよい。水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。
水の含有量は、全水性溶剤に対して、50質量%以上100質量%以下が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましく、80質量%以上100質量%以下が更に好ましい。
なお、水性溶剤が水以外の溶剤を含む場合、水以外の溶剤としては、例えば、水溶性有機溶剤、非プロトン性極性溶剤が挙げられる。水以外の溶剤としては、多孔質ポリイミドフィルムの機械的強度等の点から、水溶性の有機溶剤が好ましい。ここで、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
特に、多孔質ポリイミドフィルム諸特性(例えば、透明性、機械的強度、耐熱性、電気特性、耐溶剤性等)向上の点から、水性溶剤は、非プロトン性極性溶剤を含ませてもよい。この場合、粒子分散ポリイミド前駆体溶液中の粒子の溶解、膨潤を抑制するため、全水性溶剤に対して40質量%以下、好ましくは30質量%以下であることがよい。また、ポリイミド前駆体溶液を乾燥し、フィルム化する際の樹脂粒子の溶解、膨潤を抑制するため、粒子分散ポリイミド前駆体溶液中の粒子とポリイミド前駆体の含有量(固形分)に対し、3質量%以上200質量%以下、好ましくは、3質量%以上100質量%以下、より好ましくは、3質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以上50質量%以下で用いることがよい。
上記水溶性の有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
粒子として樹脂粒子を用いる場合、上記水溶性の有機溶剤としては、樹脂粒子が溶解しないものが好ましい。この理由は、例えば、水と水溶性の有機溶剤とを含む水性溶剤とした場合に、樹脂粒子分散液中で樹脂粒子を溶解していなくても、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の塗膜を得る過程で樹脂粒子が溶解してしまうことが懸念されるためである。
粒子として樹脂粒子を用い、水系溶媒として樹脂粒子を溶解する水溶性の有機溶剤を用いる場合、粒子分散ポリイミド前駆体溶液中での粒子の溶解、膨潤を抑制するため、この水溶性の有機溶剤の量は、全水性溶剤に対して40質量%以下、好ましくは30質量%以下であることがよい。また、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の塗膜を乾燥し、皮膜化する際の樹脂粒子の溶解、膨潤を抑制するため、この水溶性の有機溶剤の量は、粒子分散ポリイミド前駆体溶液中の粒子とポリイミド前駆体の合計量に対し、3質量%以上50質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下、より好ましくは、5質量%以上35質量%以下で用いることがよい。
水溶性有機溶剤の例としては、例えば、以下に示す水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、水溶性アルコール系溶剤が挙げられる。
水溶性エーテル系溶剤は、一分子中にエーテル結合を持つ水溶性の溶剤である。水溶性エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トリオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、水溶性エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンが好ましい。
水溶性ケトン系溶剤は、一分子中にケトン基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの中でも、水溶性ケトン系溶剤としては、アセトンが好ましい。
水溶性アルコール系溶剤は、一分子中にアルコール性水酸基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性アルコール系溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールのモノアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセリン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。これらの中でも、水溶性アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールのモノアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。
水性溶剤として水以外の非プロトン性極性溶剤を含有する場合、併用される非プロトン性極性溶剤は、沸点150℃以上300℃以下で、双極子モーメントが3.0D以上5.0D以下の溶剤である。非プロトン性極性溶剤として具体的には、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド(HMPA)、N−メチルカプロラクタム、N−アセチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N,N’−ジメチルプロピレン尿素、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられる。
なお、水性溶剤として水以外の溶剤を含有する場合、併用される溶剤は、沸点が270℃以下であることがよく、好ましくは60℃以上250℃以下、より好ましくは80℃以上230℃以下である。併用される溶剤の沸点を上記範囲とすると、水以外の溶剤がポリイミド成形体に残留し難くなり、また、機械的強度の高いポリイミド成形体が得られ易くなる。
ここで、溶媒として水性溶剤を用いるとき、後述の有機アミン化合物を含有し、全溶媒中に示す水の割合が50質量%以上である水性溶剤であることがよい。また、この水性溶剤に、非プロトン性極性溶剤を、粒子とポリイミド前駆体の合計量に対し3質量%以上50質量%以下含有する水性溶剤でもよい。
−有機アミン化合物−
溶媒が水系溶媒の場合、ポリイミド前駆体を溶解させるために、有機アミン化合物を添加して水溶化させる。有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体(そのカルボキシ基)をアミン塩化して、その水性溶剤に対する溶解性を高めると共に、イミド化促進剤としても機能する化合物である。具体的には、有機アミン化合物は、分子量170以下のアミン化合物であることがよい。有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体の原料となるジアミン化合物を除く化合物であることがよい。
なお、有機アミン化合物は、水溶性の化合物であることがよい。水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
有機アミン化合物としては、1級アミン化合物、2級アミン化合物、3級アミン化合物が挙げられる。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、2級アミン化合物、及び3級アミン化合物から選択される少なくとも一種(特に、3級アミン化合物)がよい。有機アミン化合物として、3級アミン化合物又は2級アミン化合物を適用すると(特に、3級アミン化合物)、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなり、また、ポリイミド前駆体溶液の保存安定性が向上し易くなる。
また、有機アミン化合物としては、1価のアミン化合物以外にも、2価以上の多価アミン化合物も挙げられる。2価以上の多価アミン化合物を適用すると、ポリイミド前駆体の分子間に疑似架橋構造を形成し易くなり、また、ポリイミド前駆体溶液の保存安定性が向上し易くなる。
1級アミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、2−エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、などが挙げられる。
2級アミン化合物としては、例えば、ジメチルアミン、2−(メチルアミノ)エタノール、2−(エチルアミノ)エタノール、モルホリンなどが挙げられる。
3級アミン化合物としては、例えば、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。
ポリイミド前駆体溶液のポットライフ、フィルム膜厚均一性の観点で、3級アミン化合物が好ましい。この点で、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジンからなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。さらに、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジンからなる群から選択される少なくとも一種であることが最も好ましい。
ここで、有機アミン化合物としては、製膜性の点から、窒素を含有する複素環構造を有するアミン化合物(特に、3級アミン化合物)も好ましい。窒素を含有する複素環構造を有するアミン化合物(以下、「含窒素複素環アミン化合物」と称する)としては、例えば、イソキノリン類(イソキノリン骨格を有するアミン化合物)、ピリジン類(ピリジン骨格を有するアミン化合物)、ピリミジン類(ピリミジン骨格を有するアミン化合物)、ピラジン類(ピラジン骨格を有するアミン化合物)、ピペラジン類(ピペラジン骨格を有するアミン化合物)、トリアジン類(トリアジン骨格を有するアミン化合物)、イミダゾー
ル類(イミダゾール骨格を有するアミン化合物)、モルホリン類(モルホリン骨格を有するアミン化合物)、ポリアニリン、ポリピリジン、ポリアミンなどが挙げられる。
含窒素複素環アミン化合物としては、製膜性の点から、モルホリン類、ピリジン類、ピペリジン類、およびイミダゾール類よりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、モルホリン類(モルホリン骨格を有するアミン化合物)であることがより好ましい。これらの中でも、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、ピリジン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、およびピコリンよりなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましく、N−メチルモルホリンであることがより好ましい。
これらの中でも、有機アミン化合物としては、沸点が60℃以上(好ましくは60℃以上200℃以下、より好ましくは70℃以上150℃以下)の化合物であることがよい。有機アミン化合物の沸点を60℃以上とすると、保管するときに、ポリイミド前駆体溶液から有機アミン化合物が揮発するのを抑制し、ポリイミド前駆体の溶剤に対する溶解性の低下が抑制され易くなる。
有機アミン化合物は、ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体のカルボキシ基(−COOH)に対して、50モル%以上500モル%以下で含有することがよく、好ましくは80モル%以上250モル%以下、より好ましくは90モル%以上200モル%以下で含有することである。
有機アミン化合物の含有量を上記範囲とすると、ポリイミド前駆体の水性溶剤に対する溶解性が高まり易くなり、製膜性が向上し易くなる。また、ポリイミド前駆体溶液の保存安定性も向上し易くなる。
上記の有機アミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
−その他の添加剤−
本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液は、イミド化反応促進のための触媒や、製膜品質向上のためのレベリング材などを含んでいてもよい。
イミド化反応促進のための触媒には、酸無水物など脱水剤、フェノール誘導体、スルホン酸誘導体、安息香酸誘導体などの酸触媒などを使用してもよい。
また、例えば、導電性付与のために添加される導電材料(導電性(例えば、体積抵抗率10Ω・cm未満)もしくは半導電性(例えば、体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下))を含有していてもよい。
導電剤としては、例えば、カーボンブラック(例えばpH5.0以下の酸性カーボンブラック);金属(例えばアルミニウムやニッケル等);金属酸化物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等);イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等);等が挙げられる。これら導電材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
−本実施形態の粒子分散ポリイミド前駆体溶液の好ましい態様−
脱泡したときの気泡の残存を抑制する点で、本実施形態の粒子分散ポリイミド前駆体溶液は、以下の態様が好ましい態様として挙げられる。
本実施形態の粒子分散ポリイミド前駆体溶液は、樹脂粒子、前述の式(I)で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体、水性溶剤を含む溶媒、及び3級アミン化合物を含む。そして、ポリイミド前駆体は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する4価の有機基A1と前記A1以外の4価の有機基A2とのモル比(A1/A2)およびアルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する2価の有機基B1と前記B1以外の2価の有機基B2とのモル比(B1/B2)が下記(I−1)および(I−2)のいずれかの条件を満たすことが好ましい。
(I−1):A1/A2のモル比が0/100、かつ、B1/B2のモル比が1/99以上15/85以下
(I−2):A1/A2のモル比が1/99以上15/85以下、かつ、B1/B2のモル比が0/100
さらに、脱泡したときの気泡の残存を抑制する点で、本実施形態の粒子分散ポリイミド前駆体溶液は、以下の態様がより好ましい態様として挙げられる。
粒子が、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つの樹脂粒子である。
前述の式(I)で示されるポリイミド前駆体のA1およびB1の少なくとも一方が、下記に示す有機基である。A1:シロキサン基の連結基を有する4価の有機基、B1:シロキサン基の連結基を有する2価の有機基。
溶媒は有機アミン化合物を含有し、全溶媒中に示す水の割合が50質量%以上である水性溶剤であることがよい。また、水性溶剤には、非プロトン性極性溶剤を、粒子とポリイミド前駆体の合計量に対し3質量%以上50質量%以下含有していてもよい。このうち、有機アミンとしては、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノプロパノール、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジンからなる群から選択される少なくとも一種を用いることが最も好ましい。
−粒子分散ポリイミド前駆体溶液を作製する方法−
本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液の作製方法としては、下記の(i)、(ii)による方法が挙げられる。
(i)ポリイミド前駆体溶液を作製した後、粒子と混合、分散する方法
(ii)粒子分散液を作製し、その分散液中でポリイミド前駆体を合成する方法
・(i)ポリイミド前駆体溶液を作製した後、粒子と混合および分散する方法
まず、粒子を分散する前のポリイミド前駆体溶液は、公知の方法を用い、溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(ポリイミド前駆体)を生成してポリイミド前駆体溶液を得る方法が挙げられる。
なお、水系溶媒の場合は、上述の水性溶剤を使用し、有機アミンの存在下で重合してポリイミド前駆体溶液が得られる。他の例としては、非プロトン性極性溶剤等(例えば、N−メチルピロリドン(NMP)等)の有機溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(ポリイミド前駆体)を生成した後、水や、アルコール等の水性溶剤に投入して樹脂(ポリイミド前駆体)を析出させる。その後、水性溶剤に、ポリイミド前駆体と有機アミン化合物とを溶解させ、ポリイミド前駆体溶液を得る方法が挙げられる。
次に、得られたポリイミド前駆体溶液と、粒子と混合および分散する。
樹脂粒子を作製する場合、例えば、樹脂粒子がビニル樹脂粒子である場合には、公知の重合法(乳化重合、ソープフリー乳化重合、懸濁重合、ミニエマルション重合、マイクロエマルション重合等のラジカル重合法)により、水性溶剤中で作製できる。
例えば、ビニル樹脂粒子の製造に乳化重合法を適用する場合、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤を溶解させた水性溶剤中に、スチレン類、(メタ)アクリル酸類等の単量体を加える。そして、さらに必要に応じて、ドデシル硫酸ナトリウム、ジフェニルオキサイドジスルホン酸塩類等の界面活性剤を添加し、攪拌を行いながら加熱することにより重合を行うことで、ビニル樹脂粒子が得られる。
水性溶剤中で、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液を作製する場合は、上記の方法によって得られた樹脂粒子の水性溶剤分散液と、上記で得られたポリイミド前駆体溶液とを混合および撹拌することで、粒子分散ポリイミド前駆体溶液が得られる。
有機系溶媒中で、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液を作製する場合は、樹脂粒子の水性溶剤分散液を、再沈や凍結乾燥など公知の方法で、樹脂粒子を粉体として取出し、上記で得られたポリイミド前駆体溶液と混合および撹拌する。または、取り出した樹脂粒子粉体を、樹脂粒子を溶解させない有機系溶媒(単独でも混合溶媒でもよい)に再分散させてから、ポリイミド前駆体溶液と混合および撹拌してもよい。
なお、混合、攪拌、及び分散の方法は特に制限されない。また、粒子の分散性を向上させるため、公知の非イオン性またはイオン性の界面活性剤を添加してもよい。
市販品の粒子(樹脂粒子または無機粒子)を使用する場合、粒子が粉体として入手可能であるときには、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の溶媒が有機系溶媒または水系溶媒を問わず、目的とする濃度で、粒子の混合および分散が可能である。粒子が、粒子の分散液で入手可能なときには、前述の粒子を作製する場合と同様の方法で、粒子の分散液と上記で得られたポリイミド前駆体溶液とを混合および分散して、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の作製を行う。
・(ii)粒子分散液を作製し、その分散液中でポリイミド前駆体を作製する方法
有機系溶媒で、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液を作製する場合は、まず、粒子が溶解せず、ポリイミド前駆体は溶解する有機系溶媒に、粒子が分散された溶液を準備する。次に、その溶液中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(ポリイミド前駆体)を生成して粒子分散ポリイミド前駆体溶液を得る。
水系溶媒(水性溶剤)で、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液を作製する場合は、まず、粒子の水性溶剤分散液を準備する。次に、その溶液中で、かつ有機アミンの存在下で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して樹脂(ポリイミド前駆体)を生成して粒子分散ポリイミド前駆体溶液を得る。
粒子として、樹脂粒子を用いる場合、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液中での分散性を向上させるため、樹脂粒子表面を、元の樹脂とは異なる化学構造の樹脂で被覆してもよい。被覆する樹脂としては、用いる溶媒やポリイミド前駆体の化学構造に応じて変更してもよい。被覆する樹脂としては、例えば、酸性基または塩基性基を有する樹脂などが挙げられる。樹脂粒子表面への樹脂を被覆する方法としては、例えば、ビニル樹脂粒子を乳化重合で作製する場合、元の樹脂粒子に由来する単量体の重合を終えた後で、さらにメタクリル酸やメタクリル酸2−ジメチルアミノエチルなどの酸性基や塩基性基を有する単量体を少量添加して重合を継続する方法が挙げられる。
これらの中でも、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液を作製する方法としては、粒子分散性をより向上できる点で、上記(ii)の方法が好ましい。
<粒子含有ポリイミドフィルム>
粒子含有ポリイミドフィルムは、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、塗膜を加熱することで得られる。
なお、粒子含有ポリイミドフィルムは、イミド化が完了した粒子含有ポリイミドフィルムのみならず、イミド化が完了する前の部分的にイミド化された粒子含有ポリイミドフィルムも含む。
具体的には、本実施形態に係る粒子含有ポリイミドフィルムは、例えば、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成する工程(以下「塗膜形成工程」称する)と、塗膜を加熱してポリイミドフィルムを形成する工程(以下「加熱工程」称する)と、を有する。
(塗膜形成工程)
まず、上述の粒子分散ポリイミド前駆体溶液を準備する。次に、粒子分散ポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布し、塗膜を形成する。
基板としては、例えば、樹脂製基板;ガラス製基板;セラミック製基板;金属基板;これらの材料が組み合わされた複合材料基板が挙げられる。なお、基板は、剥離処理が施された剥離層を備えていてもよい。
また、粒子分散ポリイミド前駆体溶液を基板に塗布する方法としては、特に制限はなく、例えば、スプレー塗布、回転塗布法、ロール塗布法、バー塗布法、スリットダイ塗布法、インクジェット塗布法等の各種の方法が挙げられる。
なお、基板は、目的とする用途に応じて、各種の基板を用いることができる。例えば、液晶素子に適用される各種基板;集積回路が形成された半導体基板、配線が形成された配線基板、電子部品及び配線が設けられたプリント基板;電線被覆材用の基板;等が挙げられる。
(加熱工程)
次に、上記の塗膜形成工程で得られた塗膜に対して、乾燥処理を行う。この乾燥処理により、被膜(乾燥したイミド化前の被膜)を形成する。
乾燥処理の加熱条件は、例えば80℃以上200℃以下の温度で10分間以上60分間以下がよく、温度が高いほど加熱時間は短くてよい。加熱するときには、熱風を当てることも有効である。加熱のときは、温度を段階的に上昇させてもよく、速度を変化させずに上昇させてもよい。
次に、乾燥したイミド化前の被膜を加熱して、イミド化処理を行う。これにより、基板上に粒子分散ポリイミドフィルムが形成される。
イミド化処理の加熱条件としては、例えば150℃以上450℃以下(好ましくは200℃以上430℃以下)で、20分間以上60分間以下加熱することで、イミド化反応が起こり、ポリイミドフィルムが形成される。加熱反応の際、加熱の最終温度に達する前に、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱することがよい。
なお、加熱温度は、式(I)で示されるポリイミド前駆体中のA1およびB1の少なくとも一方に有する連結基の種類(アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基のいずれか)が熱分解しないような温度に設定することが好ましい。
以上の工程を経て、粒子含有ポリイミドフィルムが形成される。そして、必要に応じて、粒子含有ポリイミドフィルムを基板から取り出して粒子含有ポリイミドフィルムが得られる。また、粒子含有ポリイミドフィルムは、目的とする用途に応じて、後加工が施されてもよい。
<多孔質ポリイミドフィルムの製造方法>
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法は、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記粒子を含む被膜を形成する第1の工程と、前記被膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する第2の工程であって、前記粒子を除去する処理を含む第2の工程と、を有する。
ここで、本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法によれば、球状の粒子を用いることで、球状の空孔を備えている多孔質ポリイミドフィルムが得られる。
以下、本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
(第1の工程)
第1の工程は、まず、上述の粒子分散ポリイミド前駆体溶液を準備する。次に、基板上に、粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布し、ポリイミド前駆体溶液と、粒子とを含む塗膜を形成する。そして、基板上に形成された塗膜を乾燥して、ポリイミド前駆体及び前記粒子を含む被膜を形成する。
粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布する基板としては、特に制限されない。例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂製基板;ガラス製基板;セラミック製基板;鉄、ステンレス鋼(SUS)等の金属基板;これらの材料が組み合わされた複合材料基板等が挙げられる。また、基板には、必要に応じて、例えば、シリコーン系やフッ素系の剥離剤等による剥離処理を行って剥離層を設けてもよい。
基板上に、粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布する方法としては、特に限定されない。例えば、スプレー塗布法、回転塗布法、ロール塗布法、バー塗布法、スリットダイ塗布法、インクジェット塗布法等の各種の方法が挙げられる。
ポリイミド前駆体溶液及び粒子を含む塗膜を得るためのポリイミド前駆体溶液の塗布量としては、予め定められた膜厚が得られる量に設定すればよい。
ポリイミド前駆体溶液及び粒子を含む塗膜を形成した後、乾燥して、ポリイミド前駆体及び粒子を含む被膜が形成される。具体的には、ポリイミド前駆体溶液と粒子とを含む塗膜を、例えば、加熱乾燥、自然乾燥、真空乾燥等の方法により乾燥させて、被膜を形成する。より具体的には、被膜に残留する溶媒が、被膜の固形分に対して50%以下、好ましくは30%以下となるように、塗膜を乾燥させて、被膜を形成する。
(第2の工程)
第2の工程は、第1の工程で得られたポリイミド前駆体及び粒子を含む被膜を加熱して、ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する工程である。そして、第2の工程には、粒子を除去する処理を含んでいる。粒子を除去する処理を経て、多孔質ポリイミドフィルムが得られる。
第2の工程において、ポリイミドフィルムを形成する工程は、具体的に、第1の工程で得られたポリイミド前駆体及び粒子を含む被膜を加熱して、イミド化を進行させ、さらに加熱して、ポリイミドフィルムが形成される。なお、イミド化が進行し、イミド化率が高くなるにしたがい、有機溶剤に溶解し難くなる。
そして、第2の工程において、粒子を除去する処理を行う。粒子の除去は、被膜を加熱して、ポリイミド前駆体をイミド化する過程において除去してもよく、イミド化が完了した後(イミド化後)のポリイミドフィルムから除去してもよい。
なお、本実施形態において、ポリイミド前駆体をイミド化する過程とは、第1の工程で得られたポリイミド前駆体及び粒子を含む被膜を加熱して、イミド化を進行させ、イミド化が完了した後のポリイミドフィルムとなるよりも前の状態となる過程を示す。
粒子を除去する処理は、粒子の除去性等の点で、ポリイミド前駆体をイミド化する過程において、ポリイミド膜中のポリイミド前駆体のイミド化率が10%以上であるときに行うことが好ましい。イミド化率が10%以上になると、形態を維持しやすい。
次に、粒子を除去する処理について説明する。
初めに、樹脂粒子を除去する処理について説明する。
樹脂粒子を除去する処理としては、例えば、樹脂粒子を加熱により除去する方法、樹脂粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法、樹脂粒子をレーザ等による分解により除去する方法等が挙げられる。これらのうち、樹脂粒子を加熱により除去する方法、樹脂粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法が好ましい。
加熱により除去する方法としては、例えば、ポリイミド前駆体をイミド化する過程において、イミド化を進行させるための加熱によって、樹脂粒子を分解させることで除去してもよい。この場合には、溶剤により樹脂粒子を除去する操作がない点で、工程の削減に対して有利である。一方で、樹脂粒子の種類によっては、加熱による分解ガスが発生する場合がある。そして、この分解ガスに起因して、多孔質ポリイミドフィルムには、破断や亀裂等が発生する場合があり得る。そのため、この場合には、樹脂粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法を採用するほうが望ましい。
樹脂粒子を溶解する有機溶剤により除去する方法としては、例えば、樹脂粒子が溶解する有機溶剤と接触(例えば、溶剤中に浸漬)させ、樹脂粒子を溶解して除去する方法が挙げられる。この状態のときに、溶剤中に浸漬すると、樹脂粒子の溶解効率が高くなる点で好ましい。
樹脂粒子を除去するための樹脂粒子を溶解する有機溶剤としては、ポリイミド膜、及びイミド化が完了したポリイミドフィルムを溶解せず、樹脂粒子が可溶な有機溶剤であれば、特に限定されるものではない。例えば、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;トルエン等の芳香族類;アセトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;が挙げられる。
溶解除去により樹脂粒子を除去して多孔質化する場合は、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエン、酢酸エチルなどの汎用溶媒に溶解するものが好ましい。なお、使用する樹脂粒子とポリイミド前駆体によっては、水も使用可能である。
また、加熱により樹脂粒子を除去して多孔質化する場合は、塗布後の乾燥温度では分解せず、ポリイミド前駆体の皮膜をイミド化させる温度により熱分解させる。この観点から、樹脂粒子の熱分解開始温度は、150℃以上320℃以下であることがよく、180℃以上300℃以下であることが好ましく、200℃以上280℃以下であることがより好ましい。
次に、無機粒子を除去する処理について説明する。
無機粒子を除去する処理としては、無機粒子は溶解するがポリイミド前駆体またはポリイミドは溶解しない液体(以下、「粒子除去液」と称することがある)を用いて除去する方法が挙げられる。粒子除去液は、使用する無機粒子により選択される。例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ホウ酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、硝酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸などの酸の水溶液;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、上述の有機アミンなどの塩基の水溶液;が挙げられる。また、使用する無機粒子とポリイミド前駆体によっては、水単独でも使用可能である。
第2の工程において、第1の工程で得た被膜を加熱して、イミド化を進行させてポリイミドフィルムを得るための加熱方法としては、特に限定されない。例えば、2段階で加熱する方法が挙げられる。2段階で加熱する場合、具体的には、以下のような加熱条件が挙げられる。
第1段階の加熱条件としては、粒子の形状が保持される温度であることが望ましい。具体的には、例えば、50℃以上150℃以下の範囲がよく、60℃以上140℃以下の範囲が好ましい。また、加熱時間としては、10分間以上60分間以下の範囲がよい。加熱温度が高いほど加熱時間は短くてよい。
第2段階の加熱条件としては、例えば、150℃以上450℃以下(好ましくは200℃以上430℃以下)で、20分間以上120分間以下の条件で加熱することが挙げられる。この範囲の加熱条件とすることで、イミド化反応がさらに進行し、ポリイミドフィルムが形成され得る。加熱反応の際、加熱の最終温度に達する前に、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱することがよい。
なお、加熱条件は上記の2段階の加熱方法に限らず、例えば、1段階で加熱する方法を採用してもよい。1段階で加熱する方法の場合、例えば、上記の第2段階で示した加熱条件のみによってイミド化を完了させてもよい。
第2の工程において、開孔率を高める点で、粒子を露出させる処理を行って粒子を露出させた状態とすることが好ましい。第2の工程において、粒子を露出させる処理は、ポリイミド前駆体のイミド化を行う過程、又はイミド化後、且つ、粒子を除去する処理よりも前で行うことが好ましい。
この場合、例えば、粒子分散ポリイミド前駆体溶液を用いて基板上に被膜を形成する場合、粒子分散ポリイミド前駆体溶液を基板上に塗布し、粒子が埋没した塗膜を形成する。次に、塗膜を乾燥してポリイミド前駆体及び粒子を含む被膜を形成する。この方法によって形成された被膜は、粒子が埋没された状態となる。この被膜に対して、加熱を行い、粒子の除去処理を行う前に、ポリイミド前駆体をイミド化する過程、又はイミド化が完了した後(イミド化後)のポリイミドフィルムから粒子を露出させる処理を施してもよい。
第2の工程において、粒子を露出させる処理は、例えば、ポリイミド膜が次のような状態であるときに施すことが挙げられる。
ポリイミド膜中のポリイミド前駆体のイミド化率が10%未満であるとき(すなわち、ポリイミド膜が溶媒に溶解できる状態)に粒子を露出させる処理を行う場合、上記のポリイミド膜中に埋没している粒子を露出させる処理としては、拭き取る処理、溶媒に浸漬する処理等が挙げられる。その際に使用する溶媒としては、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液に用いた溶媒と同じものでも、異なるものでもよい。
また、ポリイミド膜中のポリイミド前駆体のイミド化率が10%以上であるとき(すなわち、水、有機溶剤に溶解し難い状態)、及びイミド化が完了したポリイミドフィルムとなった状態であるときに粒子を露出させる処理を行う場合には、紙やすり等の工具類で機械的に切削して粒子を露出させる方法や、粒子が樹脂粒子の場合は、レーザ等で分解して樹脂粒子を露出させる方法も挙げられる。
例えば、機械的に切削する場合には、ポリイミド膜に埋没している粒子の上部の領域(つまり、粒子の基板から離れた側の領域)に存在する粒子の一部分が、粒子の上部に存在しているポリイミド膜とともに切削され、切削された粒子がポリイミド膜の表面から露出される。
その後、粒子が露出されたポリイミド膜から、既述の粒子の除去処理により粒子を除去する。そして、粒子が除去された多孔質ポリイミドフィルムが得られる。
なお、上記では、第2の工程において、粒子を露出させる処理を施した多孔質ポリイミドフィルムの製造工程について示したが、開孔率を高める点で、第1の工程で粒子を露出させる処理を施してもよい。この場合には、第1の工程において、塗膜を得た後、乾燥して被膜を形成する過程で、粒子を露出させる処理を行って、粒子を露出させた状態にしてもよい。この粒子を露出させる処理を行うことによって、多孔質ポリイミドフィルムの開孔率が高められる。
例えば、ポリイミド前駆体溶液及び粒子を含む塗膜を得た後、塗膜を乾燥して、ポリイミド前駆体及び粒子を含む被膜を形成する過程では、前述のように、被膜は、ポリイミド前駆体が、溶媒に溶解できる状態である。被膜がこの状態のときに、例えば、拭き取る処理、又は溶媒に浸漬する処理等により、粒子を露出させることができる。具体的には、粒子層の厚み以上の領域に存在するポリイミド前駆体溶液を、例えば、溶媒で拭くことにより粒子層を露出させる処理を行うことで、粒子層の厚み以上の領域に存在していたポリイミド前駆体溶液が除去される。そして、粒子層の上部の領域(つまり、粒子層の基板から離れた側の領域)に存在する粒子が、被膜の表面から露出される。
なお、ガス分離膜のように表面に開孔していないスキン層を持つことが好ましく、この場合には粒子を露出させる処理は行わないことがよい。
なお、第2の工程において、第1の工程で使用した上記の被膜を形成するための基板は、乾燥した被膜となったときに剥離してもよく、ポリイミド膜中のポリイミド前駆体が、有機溶剤に溶解し難い状態となったときに剥離してもよく、イミド化が完了したフィルムになった状態のときに剥離してもよい。
以上の工程を経て、多孔質ポリイミドフィルムが得られる。そして、多孔質ポリイミドフィルムは、使用目的によって後加工してもよい。
なお、本実施形態の粒子分散ポリイミド前駆体溶液は、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の塗膜を形成する前に、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の脱泡処理を行う場合がある。脱泡処理を施したほうが、脱泡処理を行わない場合に比べ、粒子含有ポリイミドフィルムおよび多孔質ポリイミドフィルムとした場合の欠陥が抑制されたフィルムが得られやすくなるため好適である。脱泡処理の方法は、特に限定されず、減圧下での脱泡(減圧脱泡)でもよく、常圧下での脱泡でもよい。常圧下の脱泡処理としては、例えば、自転や公転などの遠心力をかける方法などが挙げられる。なお、常圧下の脱泡でも減圧下の脱泡でも、必要に応じて、撹拌、加熱などの処理を加えながら脱泡処理を行ってもよい。脱泡処理は、減圧下での脱泡処理が簡便であり脱泡能が大きいため好適である。脱泡処理の条件は、気泡の残存程度によって設定すればよい。
すなわち、多孔質ポリイミドフィルムの製造方法は、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記粒子を含む被膜を形成する第1の工程であって、塗膜を形成する前に、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の脱泡処理を含む第1の工程と、前記被膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する第2の工程であって、前記粒子を除去する処理を含む第2の工程と、を有するものであってもよい。
ここで、ポリイミド前駆体のイミド化率について説明する。
一部がイミド化したポリイミド前駆体は、例えば、下記一般式(V−1)、下記一般式(V−2)、及び下記一般式(V−3)で表される繰り返し単位を有する構造の前駆体が挙げられる。
Figure 0006988208
一般式(V−1)、一般式(V−2)、及び一般式(V−3)中、A、Bは式(I)中のA、Bと同義である。lは1以上の整数を示し、m及びnは、各々独立に0又は1以上の整数を示す。
ポリイミド前駆体のイミド化率は、ポリイミド前駆体の結合部(テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との反応部)において、イミド閉環している結合部数(2n+m)の全結合部数(2l+2m+2n)に対する割合を表す。つまり、ポリイミド前駆体のイミド化率は、「(2n+m)/(2l+2m+2n)」で示される。
なお、ポリイミド前駆体のイミド化率(「(2n+m)/(2l+2m+2n)」の値)は、次の方法により測定される。
−ポリイミド前駆体のイミド化率の測定−
・ポリイミド前駆体試料の作製
(i)測定対象となるポリイミド前駆体組成物を、シリコーンウェハー上に、膜厚1μm以上10μm以下の範囲で塗布して、塗膜試料を作製する。
(ii)塗膜試料をテトラヒドロフラン(THF)中に20分間浸漬させて、塗膜試料中の溶媒をテトラヒドロフラン(THF)に置換する。浸漬させる溶媒は、THFに限定されることなく、ポリイミド前駆体を溶解せず、ポリイミド前駆体組成物に含まれている溶媒成分と混和し得る溶媒より選択できる。具体的には、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒、ジオキサンなどのエーテル化合物が使用できる。
(iii)塗膜試料を、THF中より取り出し、塗膜試料表面に付着しているTHFにN2ガスを吹き付け、取り除く。10mmHg以下の減圧下、5℃以上25℃以下の範囲にて12時間以上処理して塗膜試料を乾燥させ、ポリイミド前駆体試料を作製する。
・100%イミド化標準試料の作製
(iv)上記(i)と同様に、測定対象となるポリイミド前駆体組成物をシリコーンウェハー上に塗布して、塗膜試料を作製する。
(v)塗膜試料を380℃にて60分間加熱してイミド化反応を行い、100%イミド化標準試料を作製する。
・測定と解析
(vi)フーリエ変換赤外分光光度計(堀場製作所製FT−730)を用いて、100%イミド化標準試料、ポリイミド前駆体試料の赤外吸光スペクトルを測定する。100%イミド化標準試料の1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab’(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab’(1780cm−1))の比I’(100)を求める。
(vii)同様にして、ポリイミド前駆体試料について測定を行い、1500cm−1付近の芳香環由来吸光ピーク(Ab(1500cm−1))に対する、1780cm−1付近のイミド結合由来の吸光ピーク(Ab(1780cm−1))の比I(x)を求める。
そして、測定した各吸光ピークI’(100)、I(x)を使用し、下記式に基づき、ポリイミド前駆体のイミド化率を算出する。
・式: ポリイミド前駆体のイミド化率=I(x)/I’(100)
・式: I’(100)=(Ab’(1780cm−1))/(Ab’(1500cm−1))
・式: I(x)=(Ab(1780cm−1))/(Ab(1500cm−1))
なお、このポリイミド前駆体のイミド化率の測定は、芳香族系ポリイミド前駆体のイミド化率の測定に適用される。脂肪族ポリイミド前駆体のイミド化率を測定する場合、芳香環の吸収ピークに代えて、イミド化反応前後で変化のない構造由来のピークを内部標準ピークとして使用する。
<多孔質ポリイミドフィルム>
以下、本実施形態の多孔質ポリイミドフィルムについて説明する。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、下記式(III)で示される繰り返し単位を有するポリイミドを含有する。そして、本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは球状の空孔を備えている。
Figure 0006988208
式(III)中、Aは4価の有機基、Bは2価の有機基であり、かつ、下記条件(1)および(2)の少なくとも一方を満たす。
(1):Aは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する4価の有機基A1と前記A1以外の4価の有機基A2とのモル比(A1/A2)が0.5/99.5以上20/80以下である。
(2):Bは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する2価の有機基B1と前記B1以外の2価の有機基B2とのモル比(B1/B2)が0.5/99.5以上20/80以下である。
ここで、1)A1およびA2を含む、2)B1およびB2を含む、3)A1、A2、B1およびB2を含む、のいずれかの場合であって、A1/A2(モル比)およびB1/B2(モル比)の少なくとも一方が20/80超の範囲のとき、A1又はB1のモル比が多すぎる。そのため、ポリイミドの化学構造中に柔軟性の高い部分が増加しすぎてしまい、例えば、熱軟化耐性が低下しやすくなる。また、モル比が20/80を超える場合、熱軟化耐性の低下が生じやすいこと以外にも、空孔の形状および空孔径の分布のバラつきが大きくなりやすい。そのため、A1/A2(モル比)およびB1/B2(モル比)の少なくとも一方が20/80以下の範囲を満足していると、例えば、熱軟化耐性の低下が抑制されやすくなる。また、空孔の形状および空孔径の分布のバラつきが大きくなることが抑制されやすくなる。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、上記で示される式(III)中、A1/(A1+A2)のモル比が、1モル%以上15モル%以下、又はB1/(B1+B2)のモル比が1モル%以上15モル%以下であることが好ましい。
また、本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、A1および前記B1の少なくとも一方は、下記の有機基であることが好ましい。
A1:シロキサン基の連結基を有する4価の有機基
B1:シロキサン基の連結基を有する2価の有機基
(多孔質ポリイミドフィルムの特性)
本実施形態の多孔質ポリイミドフィルムは、特に限定されないが、空孔率が30%以上であることがよい。また、空孔率が40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。空孔率の上限は、特に限定されないが、90%以下の範囲であることがよい。
空孔の形状は、球状である。本明細書中において、空孔における「球状」とは、球状、及びほぼ球状(球状に近い形状)の両者の形状を包含するものである。球状は、具体的には、長径と短径の比(長径/短径)が1以上1.5以下である粒子の割合が90%以上存在することを意味する。長径と短径の比が1に近づくほど真球状に近くなる。
また、空孔は、空孔どうしが互いに連結されて連なった形状であることが好ましい。空孔どうしが互いに連結されている部分の空孔径は、例えば、空孔の最大径の1/100以上1/2以下であることがよく、1/50以上1/3以下であることが好ましく、1/20以上1/4以下であることがより好ましい。具体的には、空孔どうしが互いに連結されて連なっている部分の空孔径の平均値は、5nm以上1500nm以下であることがよい。
空孔径の平均値としては、特に限定されないが、0.1μm以上0.5μm以下の範囲であることがよく、0.25μm以上0.48μm以下の範囲が好ましく、0.25μm以上0.45μm以下の範囲であることがより好ましい。
なお、本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、空孔の最大径と最小径の比率(空孔径の最大値と最小値の比率)が1以上2以下である。好ましくは1以上1.9以下、より好ましくは1以上1.8以下である。この範囲の中でも、1に近いほうがさらに好ましい。この範囲にあることで、空孔径のバラつきが抑制される。また、本実施形態の多孔質ポリイミドフィルムを、例えば、リチウムイオン電池の電池セパレータに適用した場合に、充放電中のイオンの移動が均一に近くになり、リチウムの結晶(デンドライト)の形成抑制や、局所的な疲労が抑えられることで、電池の安定性向上や寿命向上に大きな効果を有する。また、別の例として、フィルターに適用した場合には、ろ過速度を低下させずにろ過効率を向上させることが可能となる。
「空孔の最大径と最小径の比率」とは、空孔の最大径を最小径で除した値(つまり、空孔径の最大値/最小値)で表される比率である。
空孔径の最大値、最小値、平均値、及び空孔どうしが互いに連結されている部分の空孔径の平均値、および空孔の長径と短径は、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察及び計測される値である。具体的には、まず、多孔質ポリイミドフィルムを切り出し、測定用試料を準備する。そして、この測定用試料をキーエンス(KEYENCE)社製のVE SEMにより、標準装備されている画像処理ソフトにて観察及び計測を実施する。観察及び計測は、測定用試料断面のうち、空孔部分のそれぞれについて100個行い、それぞれの平均値と最小径、最大径、算術平均径を求める。空孔の形状が円形でない場合には、最も長い部分を径とする。また、上記の空孔部分のそれぞれについて、長径及び短径をキーエンス(KEYENCE)社製のVE SEMにより、標準装備されている画像処理ソフトにて観察及び計測を行い、長径/短径の比を算出する。
多孔質ポリイミドフィルムの膜厚は、特に限定されるものでないが、15μm以上500μm以下であることがよい。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムには、ポリイミド樹脂以外の樹脂を含有してもよい。ポリイミド樹脂以外の樹脂を少量含有することで、多孔質ポリイミドフィルムに可とう性が付与されやすくなり、折れ曲げなどの物理的負荷(ストレス)に対する膜の破損が抑制される。
多孔質ポリイミドフィルムに含まれるポリイミド樹脂以外の樹脂の含有量としては、多孔質ポリイミドフィルムの全体に対し、0.005質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.008質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上0.9質量%以下が最も好ましい。
用いる粒子を樹脂粒子にすれば、ポリイミド樹脂以外の樹脂を特別に添加しなくても、樹脂粒子由来の残留成分として、多孔質ポリイミドフィルム中にポリイミド樹脂以外の樹脂を含有させることができる。この場合、多孔質ポリイミドフィルムに含有するポリイミド樹脂以外の樹脂の量は、例えば、前述の多孔質ポリイミドフィルムの製造工程の第1工程における樹脂粒子の使用量、第2工程における樹脂粒子の除去する処理の条件などによって制御し得る。
多孔質ポリイミドフィルムに含有するポリイミド樹脂以外の樹脂の存在状態は、特に限定されない。例えば、多孔質ポリイミドフィルムの内部、多孔質ポリイミドフィルムの表面(多孔質ポリイミドフィルムの空孔の表面を含む)の少なくとも一方に存在していればよい。
−ポリイミド樹脂以外の樹脂の含有量確認法−
多孔質ポリイミドフィルム中のポリイミド以外の樹脂の存在およびその含有量は、例えば、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)によって検出される成分を分析および定量することで測定することができる。具体的には、以下のように測定する。
多孔質ポリイミドフィルム中の含有成分を、落下型の熱分解装置(フロンティアラボ社製、PY−2020D)を設置したガスクロマトグラフ質量分析計(島津社製、GCMS QP−2010)により分析する。
ポリイミド以外の樹脂の成分について、多孔質ポリイミドフィルム0.20mgを精確に秤量し、熱分解温度600℃で測定する。ポリイミド以外の樹脂については、熱分解温度400℃と熱分解温度600℃のクロマトグラムを比較し、例えば、ポリスチレンの解重合によるスチレンモノマーが熱分解温度400℃よりも熱分解温度600℃で多く検出されることでポリマー由来であることを確認できる。
熱分解装置:フロンティアラボ社製、PY−2020D
ガスクロマトグラフ質量分析計:島津社製、GCMS QP−2010
熱分解温度:400℃、600℃
ガスクロマト導入温度:280℃
Inject方法:スプリット比1:50
カラム:フロンティアラボ社製:Ultra ALLOY−5,0.25μm、0.25μm ID、30m
ガスクロマト温度プログラム:40℃→20℃/min→280℃・10min保持
マスレンジ:EI、m/z=29−600(ポリイミド樹脂以外の樹脂の含有量)
多孔質ポリイミドフィルムに含有するポリイミド樹脂以外の樹脂の量を定量する他の方法としては、ポリイミド樹脂を加水分解した後に液体クロマトグラフ(HPLC)、核磁気共鳴(NMR)等によりポリイミド樹脂以外の樹脂成分を分析する方法も挙げられる。
(多孔質ポリイミドフィルムの用途)
本実施形態の多孔質ポリイミドフィルムが適用される用途としては、例えば、リチウム電池等の電池セパレータ;電解コンデンサー用のセパレータ;燃料電池等の電解質膜;電池電極材;気体又は液体の分離膜;低誘電率材料;ろ過膜;等が挙げられる。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムを、例えば、電池セパレータに適用した場合には、充放電中のイオンの移動が均一に近い状態となり、リチウムの結晶(デンドライト)の形成抑制や、局所的な疲労が抑えられることで、電池の安定性向上や寿命向上寄与すると考えられる。
これは、本実施形態の多孔質ポリイミドフィルムの空孔の形状、空孔径のバラつきが抑制されるためと推測される。
また、例えば、電池電極材に適用した場合には、電解液に接触する機会が増加するため、電池の容量が増えると考えられる。これは、多孔質ポリイミドフィルムに含有させた電極用のカーボンブラック等の材料が、多孔質ポリイミドフィルムの空孔径の表面や、フィルムの表面に露出する量が増加するためと推測される。
さらに、例えば、多孔質ポリイミドフィルムの空孔内に、例えば、いわゆるイオン性液体をゲル化したイオン性ゲル等を充填して電解質膜として適用することも可能である。本実施形態の製造方法により、工程が簡略化されるため、より低コストの電解質膜が得られると考えられる。
また、別の例として、フィルターに適用した場合には、ろ過速度を低下させずにろ過効率を向上させることが可能となると考えられる。
なお、本実施形態に係る粒子分散ポリイミド前駆体溶液を用いて作製した多孔質ポリイミドフィルムは、熱軟化耐性が高く、さらにつづら折り状(ジグザグ状)に折り畳んだ場合の破損が抑制されやすくなる。
例えば、リチウムイオン二次電池用セパレータとして使用する場合、電池の種類によっては、セパレータをつづら折り状に折り畳んで使用することがある。本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、上記のような利点を有するため、リチウムイオン二次電池用セパレータの用途として好適に使用し得る。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムが、これらの利点が得られる理由は定かではないが、以下のように推定される。
本実施形態に係る多孔質ポリイミドフィルムは、ポリイミドの化学構造の主鎖中に、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基から選択される少なくとも一種の連結基を特定の比率で有している。このため、ポリイミドの化学構造中に剛直な部分と柔軟性の高い部分が共存することで、熱軟化耐性の低下が抑制されると考えられる。また、多孔質ポリイミドフィルムを製造する過程において、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の塗膜を形成した後のポリイミド前駆体と粒子との界面密着性が向上すると考えられる。そのため、イミド化の過程において、収縮に伴う粒子(または空孔)との界面で発生する細かな亀裂が加熱によって修復されるため、多孔質ポリイミドフィルムをつづら折り状に折り畳んで保持したときの破損を抑制することができると考えられる。
一方、ポリイミドの化学構造の主鎖中に、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基から選択される少なくとも一種の連結基を有さない従来の多孔質ポリイミドフィルムでは、ポリイミドの剛直性が高いため、熱軟化耐性は高い。
また、多孔質ポリイミドフィルムを製造する過程において、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の塗膜を形成した後のポリイミド前駆体と粒子との界面密着性が低いと考えられる。そのため、イミド化の過程において、収縮に伴う粒子(または空孔)との界面で発生する細かな亀裂が加熱によって修復され難く、多孔質ポリイミドフィルムをつづら折り状に折り畳んで保持した場合に破損が生じると考えられる。
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
(粒子分散ポリイミド前駆体溶液の保管後の粘度変化)
粒子分散ポリイミド前駆体溶液の初期粘度と、25℃で60日保管した後の粘度から、下記の式から粘度変化率(%)を算出した。この数値の絶対値が小さいほど、保管後の粘度安定性が良好であることを意味する。(||は、絶対値を示す。)
式:粘度変化率(%)=|(60日後の粘度)−(初期粘度)|/(初期粘度)×100
−評価基準−
A+: 絶対値が10%未満
A : 絶対値が10%以上15%未満
B : 絶対値が15%以上40%未満
C : 絶対値が40%以上
(減圧脱泡性)
粒子分散ポリイミド前駆体溶液を減圧下(0.05MPa)で12時間脱泡した後、溶液の内部と表面を観察し、以下の基準で評価した。A+が最も良好な特性であることを意味する。
−評価基準−
A+:液表面に粒子の析出が無く、液の内部・表面ともに気泡の残存が無い
A :液表面に粒子の析出が無いが、気泡の残存が液表面近傍に見られる
B :液表面に粒子の析出が見られ、気泡の残存が液表面近傍に見られる
C :液表面に粒子の析出が見られ、気泡の残存が液の内部・表面に見られる
(多孔質ポリイミドフィルム中のポリイミド以外の樹脂の含有量分析)
既述の方法により、GC−MSを用いて各成分の含有量を測定した。
(多孔質ポリイミドフィルムの空孔形状、空孔分布)
空孔形状の指標として、長径と短径の比率を算出し、長径と短径の比率が1以上1.5以下の割合を算出した。また、空孔分布の指標として、最大径と最小径の比率を算出した。算出は、いずれも既述の方法で行った。
−長径と短径の比率の評価基準−
A+:95%以上
A :90%以上95%未満
B :85%以上90%未満
C :85%未満
−最大径と最小径の比率の評価基準−
A+:1以上1.8以下
A :1.8超1.9以下
B :1.9超2以下
C :2を超える
(多孔質ポリイミドフィルムのガス透過性の均一性)
作製した多孔質ポリイミドフィルムを1cm角に切りだし、評価用試料を20枚採取した。試料を減圧濾過用フィルターホルダー(ADVANTEC社製、KGS−04)のファンネルとベース部との間に挟み込んでセットし、試料を挟み込んだフィルターホルダーを逆さに向けて水中に漬け、ファンネル内の予め決められた位置まで水を満たした。ベース部のファンネルとベース部とが接していない側分から0.5気圧(0.05MPas)の空気圧を負荷し、50mlの空気が通過する時間(秒)を測定し、ガス透過時間の最大値と最小値、平均値を求め、以下の式よりガス透過性のバラつきを算出した。この値が小さい方がガス透過性のバラつきが小さく、良好な特性である。
(式)ガス透過性のバラつき
=(ガス透過時間の最大値−ガス透過時間の最小値)/ガス透過時間の平均値
−評価基準−
A+:バラつきが0.3未満
A :バラつきが0.3以上0.4未満
B :バラつきが0.4以上0.5未満
C :バラつきが0.5以上
(多孔質ポリイミドフィルムの熱軟化耐性)
作製した多孔質ポリイミドフィルムをホットプレート上で、それぞれ370℃、380℃、及び390℃で、それぞれ15分加熱し、加熱後の多孔質膜について既述のSEM観察で空孔形状を観察し、以下の基準で評価した。
−評価基準−
A+:390℃加熱でも空孔形状・空孔径に変化が見られない
A :390℃加熱で空孔形状に変化が見られるが、空孔径は同等
B :380℃加熱で空孔形状に変化が見られ、空孔径が変化する
C :370℃加熱で空孔形状に変化が見られ、空孔径が変化する
(多孔質ポリイミドフィルムの折れ曲げ耐性)
作製した幅50mm、長さ180mmの多孔質ポリイミドフィルムを、長さ方向に30mm間隔で、山折および谷折を5回行い(山折3回および谷折2回)、つづら折り状(ジグザグ状)に折り畳んで試験片を作製した。そして、つづら折り状に折り畳んだ山折部および谷折部が試験片の断面方向から見て水平に沿う方向になるように置き、試験片の上面方向(山折部および谷折部方向に対して垂直に沿う方向の上面側)から200gの荷重をかけて、0℃および25℃の条件で、それぞれ1週間保持した。その後、荷重を解き、折れ曲げていた部分(山折部および谷折部)を目視で観察し、以下の基準で評価した(図1を参照。図1は、多孔質ポリイミドフィルムの折れ曲げ耐性試験を表す模式図である。図1において、Tは試験片、Fは荷重を表す。)。
−評価基準−
A+:折り曲げた跡が付かず、膜の破損も見られない
A :折り曲げた跡が付くが、膜の破損は見られない
B :折り曲げた跡が付き、折り曲げた部分の一部で膜割れが見られる
C :折り曲げた部分で膜が割れる
<合成例1>
(PMMA粒子分散液−1の作製)
メタクリル酸メチル670質量部、界面活性剤Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)25.0質量部、イオン交換水670質量部を混合し、ディゾルバーにより、1,500回転で30分間攪拌、乳化を行い、モノマー乳化液を作製した。続いて、Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)1.10質量部、イオン交換水1500質量部を反応容器に投入した。窒素気流下、75℃に加熱した後、モノマー乳化液のうち75質量部を添加した後に、過硫酸アンモニウム15質量部をイオン交換水98質量部に溶解させた重合開始剤溶液を10分かけて滴下した。滴下後50分間反応させ
た後に、残りのモノマー乳化液を220分かけて滴下し、さらに50分間反応させた後、冷却して、樹脂粒子の分散液であるPMMA粒子分散液−1を得た。固形分濃度は22.8質量%であった。この樹脂粒子の平均粒径は0.42μmであった。
<合成例2>
(PMMA粒子分散液−2の作製)
メタクリル酸メチル670質量部、界面活性剤Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)31.4質量部、イオン交換水670質量部を混合し、ディゾルバーにより、1,500回転で30分間攪拌、乳化を行い、モノマー乳化液を作製した。続いて、Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)1.10質量部、イオン交換水1500質量部を反応容器に投入した。窒素気流下、75℃に加熱した後、モノマー乳化液のうち75質量部を添加した後に、過硫酸アンモニウム15質量部をイオン交換水98質量部に溶解させた重合開始剤溶液を10分かけて滴下した。滴下後50分間反応させ
た後に、残りのモノマー乳化液を220分かけて滴下し、さらに50分間反応させた後、冷却して、樹脂粒子の分散液であるPMMA粒子分散液−2を得た。固形分濃度は23.2質量%であった。この樹脂粒子の平均粒径は0.33μmであった。
<合成例3>
(PSt粒子分散液−1の合成)
スチレン670質量部、界面活性剤Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)17.0質量部、イオン交換水670質量部を混合し、ディゾルバーにより、1,500回転で30分間攪拌、乳化を行い、モノマー乳化液を作製した。続いて、Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)1.10質量部、イオン交換水1500質量部を反応容器に投入した。窒素気流下、75℃に加熱した後、モノマー乳化液のうち75質量部を添加した後に、過硫酸アンモニウム15質量部をイオン交換水98質量部に溶解させた重合開始剤溶液を10分かけて滴下した。滴下後50分間反応させた後に、残りのモノマー乳化液を220分かけて滴下し、さらに50分間反応させた後、冷却して、PSt粒子分散液−1を得た。固形分濃度は22.8質量%であった。この樹脂粒子の平均粒径は0.4μmであった。
<合成例4>
(PSt粒子粉体−1の作製)
合成例3で得られたPSt粒子分散液−1:固形分換算で樹脂粒子100質量部(水:338.6質量部含有)を凍結乾燥し、粉体を取り出した。得られた粉体100質量部に脱イオン水20質量部を加えて撹拌した後、遠心分離にかけて粒子を沈降させ、上澄みを取り除いた。この操作を3回繰り返した後、再び凍結乾燥し、PSt粒子粉体−1を取り出した。この樹脂粒子の平均粒径は、もとの分散液中の平均粒径の場合と同じ0.4μmであった。
<実施例A1>
(既述の作製法(ii)による、水系の粒子分散ポリイミド前駆体溶液(A1)の作製)
PMMA粒子分散液−1:固形分換算で樹脂粒子100g(水:338.6g含有)に、イオン交換水:40.66g、N−メチルピロリドン:2.14g、ジアミン−1(信越化学工業製、KF−8010 分子量860):0.39g(0.0004565モル)、p−フェニレンジアミン(分子量108.14):9.82g(0.0908435モル)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):26.86g(0.0913モル)とを添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。ついで、N−メチルモルホリン(有機アミン化合物):27.7g(0.2739モル)を、ゆっくりと添加し、反応温度60℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、水系の粒子分散ポリイミド前駆体溶液(A1)を得た。粒子の質量/(全固形分の質量)は0.74、固形分濃度:25質量%。得られた粒子分散ポリイミド前駆体溶液(A1)を水で希釈し、既述の方法により粒度分布を測定したところ、PMMA粒子分散液−1と同様に平均粒径は0.42μmの単一のピークを持ち、良好な分散状態であった。また、既述の方法により算出した体積粒度分布指標(GSDv)は1.18であった。
なお、上記条件では、PMMA粒子分散液−1の添加量は、PMMA粒子(固形分)の質量/溶液の全固形分の質量が0.74となるように計算された量である。テトラカルボン酸二無水物の総量とジアミンの総量が同モルとなるように計算された量である。ジアミン−1とp−フェニレンジアミンとの添加量は、両者のモル比が0.5/99.5となるように計算された量である。N−メチルピロリドンの量は、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して15質量%となるように計算された量である。添加したイオン交換水の量は、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の固形分濃度が25質量%となるように計算された量である。添加したN−メチルモルホリンの量は、生成するポリイミド前駆体(ポリアミック酸)のカルボキシル基に対して150モル%となるように計算された量である。
<実施例A2〜A18、A20、A22〜A37、比較例A1〜A9>
用いる材料と各種比率を表1〜表3に記載した値に変更する以外は実施例A1と同様にして、水系のポリイミド前駆体溶液の作製および製膜評価を行った。
<合成例5>
(実施例A−21に使用する水系のポリイミド前駆体溶液−1の合成)
イオン交換水:36.74質量部、ジアミン−1(信越化学工業製、KF−8010 分子量860):2.58質量部、p−フェニレンジアミン(分子量108.14):7.79質量部、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(分子量294.22):21.18質量部を添加し、20℃で10分間攪拌して分散させた。ついで、N−メチルモルホリン(有機アミン化合物):21.85質量部を、ゆっくりと添加し、反応温度60℃に保持しながら、24時間攪拌して溶解、反応を行い、水系のポリイミド前駆体溶液−1を得た。
なお、上記条件では、テトラカルボン酸二無水物の総量とジアミンの総量のモル比が0.96/1となるように計算された量である。ジアミン−1とp−フェニレンジアミンの添加量は、両者のモル比(ジアミン−1/p−フェニレンジアミン)が4/96となるように計算された量である。添加したイオン交換水の量は、得られるポリイミド前駆体溶液の固形分濃度(有機アミン化合物を除く)が35質量%となるように計算された量である。添加したN−メチルモルホリンの量は、生成するポリイミド前駆体(ポリアミック酸)のカルボキシル基に対して150モル%となるように計算された量である。
<実施例A21>
(既述の作製法(i)による水系の粒子分散ポリイミド前駆体溶液(A21)の作製)
上記の合成例5で得た水系のポリイミド前駆体溶液−1:固形分換算で7.00g(溶液として20g)に、イオン交換水:0.777g、N−メチルピロリドン:4.02gを添加し、60℃に加温しながら混合した。その後、PMMA粒子分散液−1:固形分換算で樹脂粒子19.92g(水:67.46g含有)を添加し、60℃に加温した後、撹拌装置「泡取り練太郎」(シンキー製)で2000rpmで2分間、2200rpmで2分間混合撹拌した。その後、再度60℃に加温し、さらに2000rpmで2分間、2200rpmで2分間混合撹拌し、水系の粒子分散ポリイミド前駆体溶液(A21)を得た。粒子の質量/(溶液の全固形分の質量)は0.74、固形分濃度:24質量%。得られた粒子分散ポリイミド前駆体溶液(A21)を水で希釈し、既述の方法により粒度分布を測定したところ、PMMA粒子分散液−1と同様に平均粒径は0.42μmの単一のピークを持ち、良好な分散状態であった。また、既述の方法により算出した体積粒度分布指標(GSDv)は1.18であった。
なお、上記条件では、PMMA粒子分散液−1の添加量は、PMMA粒子(固形分)の質量/溶液の全固形分の質量が0.74となるように計算された量である。N−メチルピロリドンの量は、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して15質量%となるように計算された量である。添加したイオン交換水の量は、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の固形分濃度が24質量%となるように計算された量である。
<実施例A19>
用いる材料と各種比率を表2に記載した値に変更する以外は実施例A21と同様にして、水系のポリイミド前駆体溶液の作製および製膜評価を行った。
<実施例B1>
(有機系溶媒での粒子分散ポリイミド前駆体溶液(B1)の作製)
N,N−ジメチルアセトアミド:90.58質量部、ハンツマン社製ジェファーミンD−2000(分子量2000)(ジアミン−7):9.00質量部、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24):14.12質量部とを添加し、50℃で10分間攪拌して分散させた。ついで、ピロメリット酸二無水物(分子量218.12):15.70質量部を添加し、反応温度50℃に保持しながら、15時間攪拌して溶解、反応を行い、固形分濃度30質量%の有機系溶媒でのポリイミド前駆体溶液を得た。
なお、上記条件では、テトラカルボン酸二無水物の総量とジアミンの総量のモル比が0.96/1となるように計算された量である。ジェファーミンD−2000(ジアミン−7)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの添加量は、両者のモル比(ジアミン−7/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)が6/94となるように計算された量である。添加したN,N−ジメチルアセトアミドの量は、得られるポリイミド前駆体溶液の固形分濃度が30質量%となるように計算された量である。
次に、得られた有機系溶媒でのポリイミド前駆体溶液:100質量部(N,N−ジメチルアセトアミド:70質量部含有)に、N,N−ジメチルアセトアミド:59.6質量部、トリグライム:129.6質量部を添加し、撹拌装置「泡取り練太郎」(シンキー製)で2000rpmで3分間、2200rpmで3分間混合撹拌した。その後、合成例4で得られたPSt粒子粉体−1:81.1質量部、ポリオキシエチレンドデシルエーテル:0.8質量部を添加し、さらに2000rpmで5分間、2200rpmで5分間混合撹拌し、有機系溶媒での子分散ポリイミド前駆体溶液(B1)を得た。粒子の質量/(溶液の全固形分の質量)は0.73、固形分濃度:30質量%。
得られた粒子分散ポリイミド前駆体溶液(B1)を同組成の有機系溶媒で希釈し、既述の方法により粒度分布を測定したところ、PSt粒子分散液−1と同様に平均粒径は0.4μmの単一のピークを持ち、良好な分散状態であった。また、既述の方法により算出した体積粒度分布指標(GSDv)は1.17であった。
なお、上記条件では、PSt粒子粉体−1の添加量は、PMMA粒子(固形分)の質量/溶液の全固形分の質量が0.73となるように計算された量である。N,N−ジメチルアセトアミドおよびトリグライムの添加量は、固形分濃度が30質量%となり、N,N−ジメチルアセトアミド/トリグライムの質量比率が50/50となるように計算された量である。
<実施例B2〜B15、比較例B1〜B7>
用いる材料と各種比率を表4〜表5に記載した値に変更する以外は実施例B1と同様にして、有機系溶媒でのポリイミド前駆体溶液の作製および製膜評価を行った。
<多孔質ポリイミドフィルムの作製>
(熱分解により粒子を除去する場合)
上記で得た粒子含有ポリイミド前駆体溶液を、アプリケータを用いて幅50mmのガラス基材に、焼成後の膜厚が25μmとなるよう塗布し、70℃で1時間送風乾燥を行った後、窒素気流中、70℃から昇温速度5℃/分で、各表に示す温度まで昇温し、さらにその温度で30分保持した。その後、室温(25℃)まで放冷し、水に浸漬して多孔質ポリイミドフィルムを得た。
(溶解により粒子を除去する場合)
上記で得た粒子含有ポリイミド前駆体溶液を、アプリケータを用いて76mm×52mmの大きさのガラス基材に、焼成後の膜厚が25μmとなるよう塗布し、70℃で1時間送風乾燥を行った後、表1に示す溶媒に2時間浸漬した。膜を風乾した後、窒素気流中、70℃から昇温速度5℃/分で、各表に示す温度まで昇温し、さらにその温度で30分保持した。その後、室温まで放冷し、水に浸漬して多孔質ポリイミドフィルムを得た。
<参考例B1>
(空孔が球状でない多孔質ポリイミドフィルムの作製)
N,N−ジメチルアセトアミド:22.65質量部、テトラグライム:67.94質量部、ハンツマン社製ジェファーミンD−2000(分子量2000)(ジアミン−7):9.00質量部、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24):14.12質量部とを添加し、50℃で10分間攪拌して分散させた。ついで、ピロメリット酸二無水物(分子量218.12):15.70質量部を添加し、反応温度50℃に保持しながら、15時間攪拌して溶解、反応を行い、固形分濃度30質量%の有機系溶媒でのポリイミド前駆体溶液を得た。
なお、上記条件では、テトラカルボン酸二無水物の総量とジアミンの総量のモル比が0.96/1となるように計算された量である。ジェファーミンD−2000と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの添加量は、両者のモル比(ジアミン−7/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)が6/94となるように計算された量である。N,N−ジメチルアセトアミドとテトラグライムの添加量は、両社の質量比が25/75となるように計算された量である。N,N−ジメチルアセトアミドとテトラグライムの合計質量は、得られるポリイミド前駆体溶液の固形分濃度が30質量%となるように計算された量である。
得られたポリイミド前駆体溶液を、アプリケータを用いて幅50mmのガラス基材に、焼成後の膜厚が25μmとなるよう塗布し、130℃で20分間乾燥を行った後、窒素気流中、120分かけて300℃まで昇温し、300℃で60分間保持した。その後、室温まで放冷し、水に浸漬して、空孔が球状ではない多孔質ポリイミドフィルムを得た。
Figure 0006988208
Figure 0006988208
Figure 0006988208
Figure 0006988208
Figure 0006988208
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、脱泡試験の評価結果が良好であることが分かる。すなわち、脱泡したときの気泡の残存が抑制されることが分かる。
なお、表1〜表5中の略号は以下のとおりである。
・「PI」:ポリイミド
−テトラカルボン酸二無水物−
・「PMDA」:ピロメリット酸二無水物
・「BPDA」:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・「酸無水物−1」:X−22−168AS
(SiO連結 Mw1000)
・「酸無水物−2」:エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート
(アルキレン連結 Mw410.29)
−ジアミン化合物−
・「PDA」:p−フェニレンジアミン
・「ODA」:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
・「ジアミン−1」:信越化学工業製、KF−8010
(Mw860)
・「ジアミン−2」:信越化学工業製、X−22−161A
(Mw1600)
・「ジアミン−3」:ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル
(Mw220.31)
・「ジアミン−4」:ハンツマン社製、ジェファーミンD−400
(Mw430)
・「ジアミン−5」:デカメチレンジアミン
(Mw172.32)
・「ジアミン−6」:1,2−ビス(4−アミノフェノキシ)エタン
(Mw244.29)
・「ジアミン−7」: ハンツマン社製、ジェファーミンD−2000
(Mw2000)
−有機アミン化合物−
・「MMO」:N−メチルモルホリン
・「DMAEt」:ジメチルアミノエタノール
・「DMIz」:1,2−ジメチルイミダゾール
・「2E4MIz」:2−エチル−4−メチルイミダゾール
−粒子−
・「PMMA−1」:PMMA粒子分散液−1
・「PMMA−2」:PMMA粒子分散液−2
・「PSt−1」:PSt粒子分散液−1
・「PSt」:PSt粒子粉体−1
・「シリカ−1」:シリカ粒子(日本触媒製シーホスターKE−P30 球状 平均粒径0.3μm)
−溶媒−
・「NMP」:N−メチルピロリドン
・「DMAc」:N,N−ジメチルアセトアミド
・「EG」:エチレングリコール
−分散剤−
・「Dowfax」:Dowfax2A1
・「C12EO」:ポリオキシエチレンドデシルエーテル
−粒子除去のための溶剤−
・「THF」テトラヒドロフラン
・「10%HF」:10質量%濃度フッ酸
・「THF/tol」:テトラヒドロフラン/トルエン=50/50(質量比)混合溶媒

Claims (20)

  1. 溶媒、下記式(I)で示される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体、及び粒子を含み、全溶媒中の水の占める割合が50質量%以上である粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
    Figure 0006988208



    (式(I)中、Aは4価の有機基、Bは2価の有機基であり、かつ、下記条件(1)および(2)の少なくとも一方を満たし、
    条件(1)を満たし、条件(2)を満たさない場合は、Bは芳香族ジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基であり、
    条件(2)を満たし、条件(1)を満たさない場合は、Aは芳香族テトラカルボン酸二無水物より4つのカルボキシル基を除いたその残基である。
    (1):Aは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する4価の有機基A1と前記A1以外の4価の有機基A2とのモル比(A1/A2)が0.5/99.5以上20/80以下であり、
    前記A2が芳香族テトラカルボン酸二無水物より4つのカルボキシル基を除いたその残基であり、
    前記Aは、前記有機基A1及び前記有機基A2から選択される少なくとも一つである。
    (2):Bは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する2価の有機基B1と前記B1以外の2価の有機基B2とのモル比(B1/B2)が0.5/99.5以上20/80以下であり、
    前記B2が芳香族ジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基であり、
    前記Bは、前記有機基B1及び前記有機基B2から選択される少なくとも一つである。)
  2. 前記(1)及び前記(2)の少なくとも一方の条件を満たし、前記A1/A2のモル比が1/99以上15/85以下、及び前記B1/B2のモル比が1/99以上15/85以下である請求項1記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
  3. 前記(1)の条件を満たすとき下記(I−2)で示される条件を満足し、前記(2)の条件を満たすとき下記(I−1)で示される条件を満足する請求項1又は請求項2に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
    (I−1)A1/A2のモル比が0/100、かつB1/B2のモル比が1/99以上15/85以下
    (I−2)A1/A2のモル比が1/99以上15/85以下、かつB1/B2のモル比が0/100
  4. 前記A1および前記B1の少なくとも一方は、下記の有機基である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
    A1:シロキサン基の連結基を有する4価の有機基
    B1:シロキサン基の連結基を有する2価の有機基
  5. 前記A1を構成する原料単量体のテトラカルボン酸二無水物の重量平均分子量、および前記B1を構成する原料単量体のジアミン化合物の重量平均分子量が、それぞれ1000以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
  6. 前記A2を構成する原料単量体のテトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸二無水物または3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、前記B2を構成する原料単量体のジアミン化合物が、p−フェニレンジアミンまたは4,4’−ジアミノジフェニルエーテルである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
  7. 前記粒子が樹脂粒子である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
  8. さらに有機アミン化合物を含有する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
  9. 前記有機アミン化合物が、3級アミン化合物である請求項8に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
  10. さらに非プロトン性極性溶剤を、ポリイミド前駆体溶液中の粒子とポリイミド前駆体の合計量に対して3質量%以上50質量%以下で含有する請求項8又は請求項9に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
  11. 前記粒子の体積平均粒径が、0.1μm以上0.5μm以下である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
  12. 前記粒子分散ポリイミド前駆体溶液中の粒子の体積粒度分布指標が、1.30以下である請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
  13. 前記粒子の含有量が、粒子分散ポリイミド前駆体溶液の固形分に対して30質量%以上85質量%以下である請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
  14. さらに、前記ポリイミド前駆体において、前記A1、前記A2、前記B1、および前記B2を構成する各原料単量体成分のうち、最も含有量の少ない成分(ゼロを除く)の前記粒子に対する比率が0.002mmol/g以上であり、前記各原料単量体成分のうち、前記最も含有量の多い成分の前記粒子に対する比率と最も含有量の少ない成分(ゼロを除く)の前記粒子に対する比率との差が9mmol/g以下である請求項1〜13のいずれかに記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
  15. 前記ポリイミド前駆体において、前記A2がピロメリット酸二無水物より4つのカルボキシル基を除いたその残基、且つ、前記B2が4,4’−ジアミノジフェニルエーテルより2つのアミノ基を除いたその残基、
    又は、前記A2が3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物より4つのカルボキシル基を除いたその残基、且つ、前記B2がp−フェニレンジアミンより2つのアミノ基を除いたその残基である請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液。
  16. 請求項1〜請求項15いずれか1項に記載の粒子分散ポリイミド前駆体溶液を塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜を乾燥して、前記ポリイミド前駆体及び前記粒子を含む被膜を形成する第1の工程と、
    前記被膜を加熱して、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成する第2の工程であって、前記粒子を除去する処理を含む第2の工程と、を有する球状の空孔を備えている多孔質ポリイミドフィルムの製造方法。
  17. 下記式(III)で示される繰り返し単位を有するポリイミドを含有する球状の空孔を備えている多孔質ポリイミドフィルム。
    Figure 0006988208



    (式(III)中、Aは4価の有機基、Bは2価の有機基であり、かつ、下記条件(1)および(2)の少なくとも一方を満たし、
    条件(1)を満たし、条件(2)を満たさない場合は、Bは芳香族ジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基であり、
    条件(2)を満たし、条件(1)を満たさない場合は、Aは芳香族テトラカルボン酸二無水物より4つのカルボキシル基を除いたその残基である。
    (1):Aは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する4価の有機基A1と前記A1以外の4価の有機基A2とのモル比(A1/A2)が0.5/99.5以上20/80以下であり、
    前記A2が芳香族テトラカルボン酸二無水物より4つのカルボキシル基を除いたその残基であり、
    前記Aは、前記有機基A1及び前記有機基A2から選択される少なくとも一つである。
    (2):Bは、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基からなる群から選択される少なくとも一種の連結基を有する2価の有機基B1と前記B1以外の2価の有機基B2とのモル比(B1/B2)が0.5/99.5以上20/80以下である。
    前記B2が芳香族ジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基であり、
    前記Bは、前記有機基B1及び前記有機基B2から選択される少なくとも一つである。)
  18. 前記(1)及び前記(2)の少なくとも一方の条件を満たし、式(III)中、前記A1/(前記A1+前記A2)のモル比が1モル%以上15モル%以下、及びB1/(B1+B2)のモル比が1モル%以上15モル%以下である請求項17に記載の多孔質ポリイミドフィルム。
  19. 前記A1および前記B1の少なくとも一方は、下記の有機基である請求項17又は請求項18記載の多孔質ポリイミドフィルム。
    A1:シロキサン基の連結基を有する4価の有機基
    B1:シロキサン基の連結基を有する2価の有機基
  20. さらに、ポリイミド以外の樹脂を、前記多孔質ポリイミドフィルム全体に対して0.005質量%以上1質量%以下で含有する請求項17〜請求項19のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミドフィルム。
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