JP5629235B2 - 高絶縁性フィルム - Google Patents
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Description
また、特許文献1〜6に開示されているシンジオタクチックポリスチレン系フィルムは、コンデンサーの絶縁体として使用されるものであるが、例えば、近年のハイブリッドカーに搭載されるコンデンサーのようなより高性能なコンデンサーにおいては、絶縁破壊電圧等の電気的特性および耐熱性により優れたフィルムが要求されており、性能が不十分な場合がある。特許文献7に開示されているシンジオタクチックポリスチレン系フィルムは、ハイブリッドカー等のコンデンサー用として好適に用いられるものであるが、さらなる耐熱性および絶縁破壊電圧の向上が求められている。
そこで本発明は、さらに優れた電気的特性を有する高絶縁性フィルムを得ること、耐熱性を有し、高温においても優れた電気特性を有する高絶縁性フィルムを得ること、巻き取り性および加工性等の取り扱い性に優れた高絶縁性フィルムを得ることを、望ましい課題とする。
(1) シンジオタクチック構造のスチレン系重合体を主たる構成成分とする厚み方向の屈折率が1.575以上1.635以下の二軸延伸フィルムと、
その少なくとも片面に設けられた、表面の水接触角が85°以上、120°以下である塗布層とを有する高絶縁性フィルム。
(2) 二軸延伸フィルムは、DSCによるガラス転移温度Tgが130℃以上である重合体Yを、二軸延伸フィルムの質量に対して5質量%以上48質量%以下含有する上記(1)に記載の高絶縁性フィルム。
(3) 二軸延伸フィルムは、酸化防止剤を、二軸延伸フィルムの質量に対して0.1質量%以上8質量%以下含有する上記(1)または(2)に記載の高絶縁性フィルム。
(4) 二軸延伸フィルムは、DSCによるガラス転移温度Tgが130℃以上である重合体Yを、二軸延伸フィルムの質量に対して5質量%以上48質量%以下含有し、
酸化防止剤を、二軸延伸フィルムの質量に対して0.1質量%以上8質量%以下含有し、
重合体Yと酸化防止剤の含有量比(重合体Yの含有量/酸化防止剤の含有量)が1〜100である上記(1)に記載の高絶縁性フィルム。
(5) 前記塗布層が、塗布層の質量を基準として41質量%以上、94質量%以下の、ワックス成分、シリコーン成分およびフッ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
(6) 前記ワックス成分が、ポリオレフィン系ワックスである上記(5)に記載の高絶縁性フィルム。
(7) 重合体Yが、下記式で表わされるポリフェニレンエーテルである上記(2)または(4)に記載の高絶縁性フィルム。
(8) 酸化防止剤の熱分解温度が250℃以上である上記(3)または(4)に記載の高絶縁性フィルム。
(9) 二軸延伸フィルムは、平均粒径が0.05μm以上3.0μm以下の不活性微粒子を、該二軸延伸フィルムの質量に対して0.05質量%以上3質量%以下含有する上記(1)〜(8)のいずれかに記載の高絶縁性フィルム。
(10) 厚みが0.4μm以上6.5μm未満である上記(1)〜(9)のいずれかに記載の高絶縁性フィルム。
(11) 上記(1)〜(10)のいずれかに記載の高絶縁性フィルムを用いたコンデンサー。
また、本発明の好ましい態様によれば、電気的特性、耐熱性、取り扱い性に優れた高絶縁性フィルムを提供することができる。特に高い絶縁破壊電圧を有する高絶縁性フィルムを得ることができる。従って、本発明によって得られた高絶縁性フィルムはコンデンサーの絶縁体として好適に用いることができる。
本発明におけるスチレン系重合体は、シンジオタクチック構造のスチレン系重合体であり、すなわち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して、側鎖であるフェニル基や置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものである。一般にタクティシティーは、同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量され、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッド等によって示すことができる。本発明においては、シンジオタクチック構造のスチレン系重合体とは、ラセミダイアッド(r)で75%以上、好ましくは85%以上、あるいはラセミペンタッド(rrrr)で30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、あるいはこれらのベンゼン環の一部が水素化された重合体やこれらの混合物、またはこれらの構造単位を含む共重合体を指称する。なお、ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(プロピルスチレン)、ポリ(ブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)、ポリ(アセナフチレン)等がある。また、ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フロオロスチレン)等がある。また、ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等がある。これらのうち、特に好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−t−ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、またスチレンとp−メチルスチレンとの共重合体が挙げられる。
このようなシンジオタクチック構造のスチレン系重合体は、従来のアタクチック構造のスチレン系重合体に比べて耐熱性が格段に優れている。
本発明の高絶縁性フィルムは、下記の酸化防止剤を含有することが好ましい。
本発明における酸化防止剤としては、生成したラジカルを捕捉して酸化を防止する一次酸化防止剤、あるいは生成したパーオキサイドを分解して酸化を防止する二次酸化防止剤のいずれであってもよい。一次酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤が挙げられ、二次酸化防止剤としてはリン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤が挙げられる。
酸化防止剤は、その熱分解温度が250℃以上であることが好ましい。熱分解温度が高いと、高温における絶縁破壊電圧の向上効果が高くなる。熱分解温度が低すぎる場合は、溶融押出時に酸化防止剤自体が熱分解してしまい、工程を汚染してしまう、ポリマーが黄色く着色してしまう等の問題が生じやすくなる傾向にあり好ましくない。このような観点から、酸化防止剤の熱分解温度は、より好ましくは280℃以上、さらに好ましくは300℃以上、特に好ましくは320℃以上である。本発明における酸化防止剤は、熱分解しにくい方が好ましく、熱分解温度は高い方が好ましいが、現実的には、その上限は500℃以下程度である。
本発明の高絶縁性フィルムは、二軸延伸フィルムが下記の重合体Yを含有することが好ましい。
本発明における重合体Yは、DSC(示差走査熱量計)により求められるガラス転移温度Tgが130℃以上の重合体である。また、重合体Yは、前述のスチレン系重合体のガラス転移温度より高いTgを有することが好ましい。スチレン系重合体にこのような重合体Yを配合すると、混合体としてのガラス転移温度Tgが高くなるだけでなく、耐熱性が向上し、高温における絶縁破壊電圧が高くなる。また、高絶縁性フィルムの熱寸法安定性が良好となる。このような観点から、重合体Yのガラス転移温度Tgは、150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがさらに好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。配合する重合体Yのガラス転移温度Tgが高いほど、熱寸法安定性等の上記効果の向上効果が大きくなる。溶融押出等を考慮すると、実質的な上限は好ましくは350℃、より好ましくは300℃である。
本発明の高絶縁性フィルムは、二軸延伸フィルムが平均粒径0.05μm以上3.0μm以下の不活性微粒子を、二軸延伸フィルムの質量を基準として、0.05〜3質量%の範囲で含有することが好ましい。
(不活性微粒子A)
本発明の高絶縁性フィルムは、二軸延伸フィルムが平均粒径および粒径の相対標準偏差が特定の数値範囲にある不活性微粒子Aを含有することが好ましい。
不活性微粒子Aの平均粒径は、0.05μm以上1.5μm以下である。不活性微粒子Aの平均粒径を上記数値範囲とすることによって、高い絶縁破壊電圧を保ったまま、フィルムのエアー抜け性を良好なものとすることができ、巻き取り性に優れた高絶縁性フィルムを得ることができる。不活性微粒子Aの平均粒径が小さすぎる場合は、十分なエアー抜け性が得られなくなる傾向にあり、巻き取り性に劣るものとなる。このような観点から、不活性微粒子Aの平均粒径は、好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.15μm以上、特に好ましくは0.2μm以上である。他方、平均粒径が大きすぎる場合は、フィルム中のボイドの大きさが増大する傾向にあり、絶縁破壊電圧の向上効果が低くなる。このような観点から、不活性微粒子Aの平均粒径は、好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.6μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。
本発明の高絶縁性フィルムは、二軸延伸フィルムが、上記不活性微粒子Aの他に、平均粒径および粒径の相対標準偏差が特定の数値範囲にある不活性微粒子Bを含有することが好ましい。
さらに、不活性微粒子Bは、前述の不活性微粒子Aと同様の観点から、粒径比が1.0以上1.3以下の球状粒子であることが好ましく、さらに好ましくは1.0以上1.2以下、特に好ましくは1.0以上1.1以下である。
本発明の高絶縁性フィルムは、上記のとおり、不活性微粒子Aやさらに好ましくは不活性微粒子AとBとを含有させることが好ましい。一方、ボイドを抑制する観点から、不活性微粒子AやBに変えて、一次粒子の凝集体であって、平均粒径が0.05μm以上3μm以下で、細孔容積が0.05〜2.0ml/gである不活性粒子Cを含有させることも好ましい。もちろん、不活性粒子AやBと併用しても良い。不活性粒子Cの一次粒子の平均粒径は0.01〜0.1μmの範囲が好ましい。一次粒子の平均粒径が0.01μm未満ではスラリー段階で解砕により極微細粒子が生成し、これが凝集体を生成して好ましくない。また、一次粒子の平均粒径が上限を超えると、粒子の多孔質性が失われ、その結果、ポリエステルとの親和性が失われ、ボイドが生成しやすくなる。また、細孔容積は0.05〜2.0ml/g、好ましくは0.6〜1.8ml/gの範囲にあることが好ましい。細孔容積が下限未満では粒子の多孔質性が失われ好ましくない。一方、細孔容積が上限より大きいと解砕、凝集が起こりやすく、粒径の調整を行うことが困難になりやすい。本発明で用いる不活性微粒子Cの平均粒径(二次粒子径)は0.05μm以上3μm以下、さらに0.7〜2.7μm、特に1.0〜2.5μmの範囲にあることが好ましい。平均粒径(二次粒子径)が下限未満ではフィルムの滑り性が不十分になりやすく、他方平均粒径(二次粒子径)が上限を越えるとフィルムの表面が粗くなりすぎ、コンデンサとしたときの電気特性が低下しやすい。不活性粒子Cの含有量は、二軸延伸フィルムの質量を基準として、0.05〜3重量%、好ましくは0.1〜1重量%である。添加量が下限未満ではフィルムの滑り性が不十分である。また、添加量が上限を越えるとフィルムの表面が粗くなりすぎ、コンデンサとしたときの電気特性が低下しやすい。具体的な不活性粒子Cとしては、多孔質シリカ、アルミナ、酸化チタンなどが例示でき、特に多孔質シリカが好ましい。
本発明の高絶縁性フィルムは、二軸延伸フィルムが前述のシンジオタクチック構造のスチレン系重合体からなり、不活性微粒子、酸化防止剤、および重合体Yを含有することが好ましいが、さらに成形性、力学物性、表面性等を改良するために、重合体Yとは異なる他の樹脂成分を含有することができる。
さらに、本発明の目的を阻害しない範囲で、帯電防止剤、着色剤、耐候剤等の添加剤を加えることができる。
本発明の高絶縁性フィルムは、その少なくとも片面に、表面の水接触角が85°以上、120°以下である塗布層を有することを特長とする。このような塗布層を有することにより、絶縁破壊電圧を高くすることができる。この理由は定かではないが、二軸延伸フィルムと電極の間に薄層の塗布層が存在することで、電荷集中を緩和でき、絶縁破壊電圧が向上するものと考えられる。また、さらに二軸延伸フィルムよりも表面エネルギーの小さい薄層である塗布層が存在すると、放電が発生しても、二軸延伸フィルムから塗布層が剥離し、誘電体である二軸延伸フィルムの破壊を防ぎ、結果的に絶縁破壊電圧が向上するものと考えられる。すなわち、本発明においては、塗布層表面の水接触角が上記数値範囲にあると、電圧印加して放電起こると同時に塗布層がフィルムから剥離し、かかる剥離した塗布層のみが破壊され、フィルムは破壊されず、結果的に絶縁破壊電圧が向上すると考えられる。
ワックス成分として、ポリオレフィン系ワックス、エステル系ワックスなどの合成ワックスが挙げられ、また、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等の天然ワックスが挙げられる。ポリオレフィン系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。また、エステル系ワックスとしては、例えば炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなるエステル系ワックス等が挙げられ、具体的には、ソルビタントリステアレート、ペンタエリスリットトリペヘネート、グリセリントリパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレートが例示される。かかるワックスの中でも、ポリオレフィン系ワックスを用いることが、本発明が規定する接触角を満足しやすく好ましい、。特に好ましくは、ポリエチレンワックスである。
また、塗布層中で良好な分散性を示し、それにより絶縁破壊電圧の向上効果を高くできるという観点から、ワックスは水溶性または水分散性のものが好ましい。
シリコーン成分としては、反応性基を有するシリコーン化合物から主に形成されてなるシリコーン組成物であることが好ましい。ここで「主に」とは、例えば、シリコーン成分中において70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上のことを示す。このような態様とすることにより、絶縁破壊電圧の向上効果を高くすることができる。反応性基を有しないシリコーン化合物は、シリコーン成分中に含んでいてもよいが、その含有量が多すぎる場合(例えば、シリコーン成分中において30質量%以上の場合)には、蒸着層の形成が難しくコンデンサーとしての評価ができなくなる。そのため、反応性基を有しないシリコーン化合物は、シリコーン成分中に、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
フッ素成分としては、フルオロエチレン系モノマーを用いた重合体、フッ化アルキル(メタ)アクリレート系モノマーを用いた重合体などが挙げられる。フルオロエチレン系モノマーを用いた(共)重合体として、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、モノフルオロエチレン、ジフルオロジクロロエチレン等の(共)重合体が挙げられる。
塗布層は、その他、界面活性剤、架橋剤、滑剤などを含んでいてもよい。
界面活性剤は、フィルムへの、塗布層を形成するための塗液の濡れ性を高めたり、かかる塗液の安定性を向上させる目的で使用され、例えば、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、塗布層の質量を基準として1〜60質量%含まれていることが好ましい。
本発明の高絶縁性フィルムは、例えば少なくとも片面に金属層を積層することでコンデンサとなる。金属層の材質については、特に制限はないが、例えばアルミニウム、亜鉛、ニッケル、クロム、錫、銅およびこれらの合金が挙げられる。さらにこれらの金属層は若干量酸化されていてもよい。また、金属層を簡便に形成できるため、金属層は蒸着法により形成された蒸着型金属層であることが好ましい。
(厚み方向の屈折率)
本発明の高絶縁性フィルムは、二軸延伸フィルムの厚み方向の屈折率が1.575以上1.635以下である。厚み方向の屈折率を上記数値範囲とすることによって、絶縁破壊電圧を高くすることができる。また、フィルム製造工程におけるフィルム破断の頻度が低下し、生産性を向上することができる。厚み方向の屈折率が高すぎる場合は、フィルム製造工程におけるフィルム破断の頻度が増加する傾向にあり、フィルムの生産性が低下する。このような観点から、厚み方向の屈折率は、好ましくは1.620以下、さらに好ましくは1.615以下、特に好ましくは1.610以下である。他方、厚み方向の屈折率が低すぎる場合は、絶縁破壊電圧が低くなる傾向にあり、電気的特性に劣るものとなる。また、コンデンサーの製造工程におけるフィルム破断の頻度が増加し、コンデンサーの生産性が低下する。さらに、フィルムの厚み斑が悪くなる傾向にあり、品質の安定したコンデンサーを得にくくなる。このような観点から、厚み方向の屈折率は、好ましくは1.580以上、さらに好ましくは1.585以上、特に好ましくは1.600以上である。
本発明の高絶縁性フィルムは、その厚みが0.4μm以上6.5μm未満であることが好ましい。さらに好ましくは0.4μm以上6.0μm未満であり、特に好ましくは0.5μm以上3.5μm未満である。フィルム厚みを上記数値範囲とすることによって、静電容量の高いコンデンサーを得ることができる。
本発明の高絶縁性フィルムは、厚み斑が10%以下であることが好ましく、電気絶縁性の向上効果を高くできる。厚み斑が悪くなると電気絶縁性の面内バラツキが大きくなる傾向にあり、結果的に電気絶縁性、絶縁破壊電圧特性の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、厚み斑は、好ましくは9%以下、より好ましくは6%以下、さらに好ましくは3%以下である。厚み斑の下限は小さいほど好ましく、理想的には厚み斑が0%であるが、実際には0.1%以上程度である。
厚み斑を上記数値範囲とするためには、延伸条件を後述した態様とすれば良い。とりわけ横延伸条件を上記した態様、すなわち複数の温度領域に分けて実施することが重要である。
本発明の高絶縁性フィルムは、120℃における絶縁破壊電圧(BDV)が350V/μm以上であることが好ましい。絶縁破壊電圧が上記数値範囲にあるということは、高温においても優れた絶縁破壊電圧を有するということを表わす。かかる絶縁破壊電圧は、より好ましくは400V/μm以上、さらに好ましくは420V/μm以上である。上記のような絶縁破壊電圧を達成するためには、前述の特定の塗布層を設け、さらに好ましくは二軸延伸フィルムの配向の態様、フィルム中の重合体Yおよび酸化防止剤の態様を本発明が好ましく規定する態様とすればよい。また、不活性微粒子の態様を適宜調整することによっても、絶縁破壊電圧を調整することができる。また、重合体Yと酸化防止剤の含有量比(重合体Yの含有量/酸化防止剤の含有量)を本発明が好ましく規定する範囲とすることも効果的である。重合体Yや酸化防止剤の添加量を少なくすると、絶縁破壊電圧は低くなる傾向にある。また、不活性微粒子の含有量を多くすると、絶縁破壊電圧は低くなる傾向にある。さらに、本発明における塗布層の表面の接触角等を適宜調整することで、絶縁破壊電圧を向上させて、上記数値範囲を達成することもできる。
本発明の高絶縁性フィルムは、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した120℃における貯蔵弾性率(E’)が600MPa以上であることが好ましい。120℃における貯蔵弾性率(E’)が上記数値範囲にあると、高温環境下におけるフィルムの機械特性に優れる。120℃における貯蔵弾性率が低すぎる場合は、高温で使用される際に機械特性(破断強度や破断伸度など)が低下する傾向にある。このような観点から、120℃における貯蔵弾性率は、650MPa以上がより好ましく、700MPa以上がさらに好ましく、750MPa以上が特に好ましい。上記のような貯蔵弾性率(E’)を達成するためには、重合体Yを採用し、その態様を本発明が好ましく規定する態様とすればよい。重合体Yの含有量を少なくすると、貯蔵弾性率(E’)は低くなる傾向にある。
本発明の高絶縁性フィルムは、動的粘弾性測定により振動周波数10Hzで測定した損失弾性率(E’’)のピーク温度が120℃以上150℃以下であることが好ましい。損失弾性率(E’’)のピーク温度が適度に高いということは、高絶縁性フィルムを加熱した際に、分子運動が活発になり始める温度が適度に高いということである。そのため、フィルムとしての耐熱性が高くなる傾向にある。このような観点から、損失弾性率(E’’)のピーク温度は、125℃以上がより好ましく、130℃以上がさらに好ましく、135℃以上が特に好ましい。一方、損失弾性率(E’’)のピーク温度が高すぎるということは、分子運動が活発になり難いということも併せ持っており、延伸時の延伸応力が高くなるためか、二軸延伸製膜時に破断が起き易くなる。このような観点からは、損失弾性率(E’’)のピーク温度は、145℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましい。上記のような損失弾性率(E’’)のピーク温度を達成するためには、重合体Yを採用し、その含有量を適宜調整すればよい。より好ましくは、重合体Yの含有量を本発明が好ましく規定する範囲とすればよい。また、重合体Yと酸化防止剤の含有量比(重合体Yの含有量/酸化防止剤の含有量)を本発明が好ましく規定する範囲とすることも効果的である。例えば、重合体Yの含有量を増やすと、損失弾性率(E’’)のピーク温度は高くなる傾向にある。重合体Yの含有量が低すぎると損失弾性率(E’’)のピーク温度は低くなりすぎる傾向にあり、120℃に達し難くなる傾向にある。
本発明の高絶縁性フィルムは、120℃、周波数1kHzにおける誘電正接(tanδ)が0.0015以下であることが好ましい。120℃における誘電正接(tanδ)が大きい場合は、該フィルムが高温(例えば120℃)で長時間使用される場合、自己発熱してしまい、損傷が生じ易くなる傾向にある。このような観点から、120℃における誘電正接(tanδ)は、0.0012以下がより好ましく、0.0009以下がさらに好ましく、0.0006以下が特に好ましい。上記のような誘電正接(tanδ)を達成するためには、重合体Yを採用し、その含有量を適宜調整すればよい。より好ましくは、重合体Yの含有量を本発明が好ましく規定する範囲とすればよい。また、重合体Yと酸化防止剤の含有量比(重合体Yの含有量/酸化防止剤の含有量)を本発明が好ましく規定する範囲とすることも効果的である。例えば、重合体Yの含有量を減らすと、誘電正接(tanδ)は低くなる傾向にある。
本発明の高絶縁性フィルムは、縦方向(機械軸方向)および横方向(機械軸方向と厚み方向とに垂直な方向)の200℃×10分の熱収縮率が6%以下であることが好ましい。熱収縮率が上記数値範囲にあると、コンデンサーの加工時(蒸着など)において生じるブロッキングを抑制することができ、品質に優れたコンデンサーを得やすくなる。熱収縮率が大きくなりすぎると、コンデンサーの加工時(蒸着など)にブロッキングを起こし易くなり、良品が得られ難くなる傾向にある。このような観点から、200℃×10分の熱収縮率は、5%以下がより好ましく、4%以下がさらに好ましく、3%以下が特に好ましい。上記のような熱収縮率を達成するためには、熱固定温度を後述の範囲とすればよい。熱固定温度を高くすると、熱収縮率は低くなる傾向にある。また、熱固定時やその後の工程において熱弛緩処理を施すことによって、より効果的に上記熱収縮率の数値範囲を達成することができる。
本発明の高絶縁性フィルムは、その少なくとも片面にある塗布層の表面の中心線平均表面粗さRaが7nm以上89nm以下であることが好ましい。中心線平均表面粗さRaを上記数値範囲とすることによって、巻き取り性の向上効果を高くすることができる。また、耐ブロッキング性が向上し、ロールの外観を良好なものとすることができる。中心線平均表面粗さRaが低すぎる場合は、滑り性が低くなりすぎる傾向にあり、巻き取り性の向上効果が低くなる。このような観点から、中心線平均表面粗さRaは、好ましくは11nm以上、さらに好ましくは21nm以上、特に好ましくは31nm以上である。他方、中心線平均表面粗さRaが高すぎる場合は、滑り性が高くなりすぎる傾向にあり、巻き取り時に端面ズレを起こしやすくなる等巻き取り性の向上効果が低くなる。このような観点から、中心線平均表面粗さRaは、より好ましくは79nm以下、さらに好ましくは69nm以下、特に好ましくは59nm以下である。
上記のようなRaおよびRzは、本願が規定する不活性微粒子を採用することで達成することができる。
本発明の高絶縁性フィルムは、一部の特別な製造方法を除けば、基本的には従来から知られている、あるいは当業界に蓄積されている方法で得ることができる。以下、本発明の高絶縁性フィルムを得るための製造方法について詳記する。
なお、上記一軸方向と垂直な方向の延伸の際には、前段階の延伸で結晶化が進んでいるためか、延伸が難しくなり、製膜中に破断が起こりやすくなる。特にフィルム厚みが3μm程度の薄いフィルムを製膜する場合において、また特に延伸倍率が3.2倍以上の領域において破断が起こりやすくなる。
本発明において塗布層は、前記した塗布層を構成する各成分を配合して得られたた塗布層を形成するための塗液を、フィルムにおいて塗布層を形成したい表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて硬化し、形成する。なお、かかる塗液は、適当な溶媒を用いて希釈し、濃度や粘度を調整することができる。かかる溶媒としては、水を用いることが、取り扱い易さの点で好ましいため、各成分は、水溶性または水分散性であることが好ましい。
(1−1)粉体の平均粒径および粒径比
試料台上に、粉体を個々の粒子ができるだけ重ならないようにうに散在させ、金スパッター装置によりこの表面に金薄膜蒸着層を厚み200〜300Åで形成した。次いで、走査型電子顕微鏡を用いて1万〜3万倍で観察し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて、少なくとも1000個の粒子についてその面積相当粒径(Di)、長径(Dli)および短径(Dsi)を求めた。
試料フィルム小片を走査型電子顕微鏡用試料台に固定し、日本電子(株)製スパッタリング装置(JIS−1100型イオンスパッタリング装置)を用いてフィルム表面に、0.13Paの真空下で0.25kV、1.25mAの条件でイオンエッチング処理を10分間施した。さらに、同じ装置で金スパッターを施し、走査型電子顕微鏡を用いて1万〜3万倍で観測し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて、少なくとも1000個の粒子についてその面積相当粒径(Di)、長径(Dli)および短径(Dsi)を求めた。
粉体の相対標準偏差については前記(1−1)項、フィルム中の粒子の相対標準偏差については前記(1−2)項で求められた各々の粒子の面積相当粒径(Di)および平均粒径(D)から、下記式により求めた。
(3−1)中心線平均表面粗さ(Ra)
非接触式三次元粗さ計(小坂研究所製、ET−30HK)を用いて波長780nmの半導体レーザー、ビーム径1.6μmの光触針で測定長(Lx)1mm、サンプリングピッチ2μm、カットオフ0.25mm、厚み方向拡大倍率1万倍、横方向拡大倍率200倍、走査線数100本(従って、Y方向の測定長Ly=0.2mm)の条件にて高絶縁性フィルムの塗布層の表面の突起プロファイルを測定する。その粗さ曲面をZ=f(x,y)で表わしたとき、次の式で得られる値をフィルムの中心線平均表面粗さ(Ra、単位:nm)とした。
無張力の状態で200℃の雰囲気中10分におけるフィルムの熱収縮率(縦方向および横方向)(単位:%)を求めた。
ナトリウムD線(589nm)を光源としたアッベ屈折計を用いて23℃65%RHにて測定し、厚み方向の屈折率(nZ)とした。
JIS C 2151に示される平板電極法に従って測定した。23℃相対湿度50%の雰囲気にて、直流耐電圧試験機を用い、上部電極は直径25mmの真鍮製円柱、下部電極は直径75mmのアルミ製円柱を使用し、100V/秒の昇圧速度で昇圧し、フィルムが破壊し短絡した時の電圧(単位:V)を読み取った。得られた電圧をフィルム厚み(単位:μm)で除して、絶縁破壊電圧(単位:V/μm)とした。測定は41点実施し、大きい方の10点、および小さい方の10点を除き、残り21点の中央値を絶縁破壊電圧の測定値とした。
120℃での測定は、熱風オーブンに電極、サンプルをセットし、耐熱コードで電源に接続し、オーブン投入後1分で昇圧を開始して上記と同様にして測定した。
二軸延伸フィルムを10万m製膜する間に破断の発生する回数により、以下の如く判断した。
延伸性◎ :10万mの製膜当り、破断が1回未満
延伸性○ :10万mの製膜当り、破断が1回〜2回未満
延伸性△ :10万mの製膜当り、破断が2回〜4回未満
延伸性× :10万mの製膜当り、破断が4回〜8回未満
延伸性××:10万mの製膜当り、破断が8回以上
フィルムの製造工程において、フィルムを500mm幅で9000mのロール状に140m/分の速度で巻き上げ、得られたロールの巻き姿、およびロール端面における端面ズレを次のように格付けした。
[巻き姿]
A :ロールの表面にピンプルがなく、巻き姿が良好。
B :ロールの表面に1個以上4個未満のピンプル(突起状盛り上がり)があり、巻き姿はほぼ良好。
C :ロールの表面に4個以上10個未満のピンプル(突起状盛り上がり)があり、巻き姿はやや不良であるが、製品として使用できる。
D :ロールの表面に10個以上のピンプル(突起状盛り上がり)があり、巻き姿が悪く、製品として使用できない。
[端面ズレ]
◎ :ロール端面における端面ズレが0.5mm未満であり、良好。
○ :ロール端面における端面ズレが0.5mm以上1mm未満であり、ほぼ良好。
△ :ロール端面における端面ズレが1mm以上2mm未満であり、やや劣るものであるが製品として使用できる。
× :ロール端面における端面ズレが2mm以上であり、劣るものであり製品として使用できない。
××:ロール巻き上げ中に端面ズレが大きくなり、9000mのロールが作成できない。
示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子工業社製:商品名TG/DTA220)を使用して、空気雰囲気下にて10℃/分の昇温速度で測定し、その温度/重量変化曲線より重量変化し始める温度を接線法により求め、熱分解温度(単位:℃)とした。
サンプル約20mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差走査熱量計(DSC)(TA Instruments社製:商品名DSCQ100に装着し、室温(25℃)から20℃/分の速度で280℃まで昇温させて融点を測定し、その後サンプルを急冷してから再度20℃/分の速度で昇温してガラス転移温度(単位:℃)を測定した。
動的粘弾性測定装置(オリエンテック社製、DDV−01FP)を用い、25℃から230℃まで2℃/分の速度で昇温しながら振動周波数10Hzの条件で、フィルムサンプルの貯蔵弾性率(E’)(単位:MPa)、損失弾性率(E’’)(単位:MPa)を測定した。このとき、サンプル長は、測定方向4cm×幅方向3mm(チャック間3cm)とした。上記測定結果から、損失弾性率(E’’)のピーク温度(単位:℃)、および温度120℃での貯蔵弾性率(E’)(単位:MPa)を求めた。なお、フィルムの縦方向および横方向のそれぞれについて測定を実施し、それらの平均値を算出して求めた。
また、誘電正接(tanδ)は、安藤電気製誘電体損測定機(TR−10C)を用い、温度120℃、振動周波数1kHzの条件で測定して求めた。サンプルはJIS C 2151に従ってアルミ蒸着によって作成した。なお、フィルムの縦方向および横方向のそれぞれについて測定を実施し、それらの平均値を算出して求めた。
フィルムの塗布層表面において、(株)協和界面科学性接触角計(形式:CA−A)を用いて、5回測定を行い、その平均値をもって水接触角(°)とした。
なお、測定は、塗布層表面に5mmの高さから0.2mLの蒸留水をシリンジにてゆっくりと滴下し、30秒間放置後、その接触角(塗布層表面と液滴の接線が成す角)をCCDカメラで観察して測定した。そして、同様の操作を5回繰り返し、平均値を用いた。
フィルムの厚みを、縦方向および横方向に電子マイクロメーターを用いて0.5mの区間をそれぞれ均等に10点を測定して、平均厚み(単位:μm)を算出した。またかかる測定長のうち最高厚さ(単位:μm)と最低厚さ(単位:μm)との差の、平均厚み(単位:μm)に対する比(百分率)を求め、厚み斑(単位:%)として求めた。縦方向および横方向の厚み斑を測定値とした。
窒素吸着法で測定し,BET式で算出した
フィルム1mgにHFIP:クロロホルム(1:1)0.5mlを加えて溶解(一晩)させ、測定直前にクロロホルムを9.5mlを加えて、メンブレンフィルター0.1μmでろ過しGPC分析を行った。測定機器、条件は以下の通りである。
GPC:HLC−8020 東ソー製
検出器:UV−8010 東ソー製
カラム:TSK−gelGMHHR・M×2 東ソー製
移動相:HPLC用クロロホルム
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出器:UV(254nm)
注入量:200μl
較正曲線用試料:ポリスチレン(Polymer Laboratories製EasiCal“PS−1”)
塗液1の調整として、以下の離形成分、界面活性剤、および架橋剤を、表1に示す重量比で、固形成分の重量が5質量%となるように水に分散させ、エマルジョン水溶液を作成した。
・離型成分: ポリエチレンワックス(高松油脂株式会社製 商品名:U3、ポリエチレン系ワックスのエマルジョンであり、エマルジョン中のポリエチレン系ワックス量が、表1における離型成分の含有量となるように記載した。)
・界面活性剤: ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ライオン株式会社製 商品名L950)・架橋剤: 炭酸ジルコニルアンモニウム
表1に示すとおり、ポリエチレンワックスの含有量を変更し、さらに下記組成のバインダー樹脂aを表1に示す含有量となるように変更したほかは、参考例1と同様な操作を繰り返した。
<バインダー樹脂a>:アクリル変性ポリエステル
・ポリエステル成分: テレフタル酸50モル%/イソフタル酸45モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%/エチレングリコール75モル%/ジエチレングリコール25モル%
・アクリル成分: メチルメタクリレート90モル%/グリシジルメタクリレート10モル%
ポリエステル樹脂成分/アクリル樹脂成分の繰り返し単位のモル比=3/7
塗工液5の調整として、以下の離形成分、界面活性剤、および架橋剤を、固形成分の重量が5重量%となるように水に分散させ、エマルジョン水溶液を作成した。なお、シリコーン化合物については、予め界面活性剤と先に混合してから、塗工液に添加した。
・離型成分: カルボキシ変性シリコーン(信越化学工業株式会社製 商品名X22−3701E)
・界面活性剤: ポリオキシエチレン(n=8.5)ラウリルエーテル(三洋化成株式
会社製 商品名ナロアクティーN−85)・架橋剤: オキサゾリン(株式会社日本触媒製 商品名エポクロスWS−300)
重量平均分子量3.0×105であり、13C−NMR測定でほぼ完全なシンジオタクチック構造であることが観察されるポリスチレン99.5質量部と、不活性微粒子Aとして、平均粒径0.3μm、相対標準偏差0.16、粒径比1.09の球状シリカ粒子を0.4質量部(得られる二軸延伸フィルム100質量%中に0.4質量%となる)と、不活性微粒子Bとして、平均粒径1.2μm、相対標準偏差0.15、粒径比1.10の球状シリコーン樹脂粒子を0.1質量部(得られる二軸延伸フィルム100質量%中に0.1質量%となる)とを配合し、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を120℃で7時間乾燥し、次いで押出機に供給し、300℃で溶融し、ダイスリットから押出し後、50℃に冷却されたキャスティングドラム上で冷却固化し、未延伸シートを作成した。
比較例1で作成した未延伸シートを115℃で縦方向(機械軸方向)に3.2倍延伸し、次いで縦延伸後フィルムの一方の面に表1に記載の成分を含有する塗液1(5質量%水分散性塗液)を、最終的に得られる塗布層としての厚みが40nmとなるように塗布し、続いてテンターに導いた後、予熱開始部分の温度95℃、予熱終了部分の温度(延伸開始部分の温度)103の工程で6秒間塗液を乾燥しつつ予熱し、続いて、横方向(機械軸方向と厚み方向とに垂直な方向)に3.5倍延伸した。その際横方向の延伸速度は5000%/分とした。また、横方向の延伸の温度は、第1段階の温度を103℃、最終段階の温度を121℃とした。その後240℃で9秒間熱固定をし、さらに180℃まで冷却する間に横方向に5%弛緩処理をして、厚み3.0μmの二軸延伸フィルムを得てロール状に巻き取った。得られたフィルムの特性を表2および3に示す。
塗液1を、表1に示す塗液2、3、4、5にそれぞれ表2の通り変更したほかは、実施例1とどうような操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表2に示す。
ポリスチレン99.5質量部を、表3に示すとおり、ポリスチレンと、重合体Yと酸化防止剤との混合物に変更し、さらに表3に示すとおり、製膜条件を変更し得られたフィルムおよび塗膜層の厚みが、それぞれ3μmと40nmになるように押出量と塗布量を調整したほかは、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表3に示す。なお、実施例8については、得られたフィルムの特性を表4にも示す。
実施例8において、塗液1をそれぞれ表3に示すとおり、表1に示す塗液2または3に変更した他は同様な操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表3に示す
PPE:ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル(クロロホルム中で測定された固有粘度が0.32dl/g、ガラス転移温度が210℃)
PC:ビスフェノールA型ポリカーボネート(出光石油化学製 出光ポリカーボネートA300、ガラス転移温度が145℃)
C1:ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名IRGANOX1010、融点120℃、熱分解温度335℃)
C3:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名IRGANOX1076、融点52℃、熱分解温度230℃)
実施例8において、不活性粒子AおよびBの種類および含有量を表4に示すとおり変更した他は同様な操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表4に示す。
実施例8において、製膜条件を表5に示すとおり変更し、得られたフィルムおよび塗膜層の厚みが、それぞれ3μmと40nmになるように押出量と塗布量を調整したほかは同様な操作を繰り返した。得られたフィルムの特性を表5に示す。なお、比較例4については破断が多く、破断したものから厚み方向の屈折率のみ測定し、そのほかは測定を中止した。
また、得られた高絶縁性フィルムを用いて、以下のようにコンデンサーを作成した。
まず、高絶縁性フィルムの片面(塗布層の表面)にアルミニウムを500Åの厚みとなるように真空蒸着した。その際、8mm幅の蒸着部分と1mm幅の非蒸着部分との繰り返しからなる、縦方向のストライプ状に蒸着した。得られた蒸着フィルムを、蒸着部分と非蒸着部分のそれぞれ幅方向の中央部でスリットし、4mm幅の蒸着部分と0.5mm幅の非蒸着部分とからなる、4.5mm幅のテープ状に巻き取りリールにした。次いで、2本のリールを、非蒸着部分がそれぞれ反対側の端面となるように重ね合わせ巻回し、巻回体を得た後、150℃、1MPaで5分間プレスした。プレス後の巻回体の両端面にメタリコンを溶射して外部電極とし、メタリコンにリード線を溶接して巻回型フィルムコンデンサーを作成した。
Claims (11)
- シンジオタクチック構造のスチレン系重合体を主たる構成成分とする厚み方向の屈折率が1.575以上1.635以下の二軸延伸フィルムと、
その少なくとも片面に設けられた、表面の水接触角が85°以上、120°以下である塗布層とを有する高絶縁性フィルム。 - DSCによるガラス転移温度Tgが130℃以上である重合体Yを、二軸延伸フィルムの質量に対して5質量%以上48質量%以下含有する請求項1に記載の高絶縁性フィルム。
- 酸化防止剤を、二軸延伸フィルムの質量に対して0.1質量%以上8質量%以下含有する請求項1または2に記載の高絶縁性フィルム。
- 二軸延伸フィルムは、該二軸延伸フィルムの質量を基準として、DSCによるガラス転移温度Tgが130℃以上である重合体Yを、5質量%以上48質量%以下含有し、
酸化防止剤を、0.1質量%以上8質量%以下含有し、
重合体Yと酸化防止剤の含有量比(重合体Yの含有量/酸化防止剤の含有量)が1〜100である請求項1に記載の高絶縁性フィルム。 - 前記塗布層が、塗布層の質量を基準として41質量%以上、94質量%以下の、ワックス成分、シリコーン成分およびフッ素化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- 前記ワックス成分が、ポリオレフィン系ワックスである請求項5に記載の高絶縁性フィルム。
- 酸化防止剤の熱分解温度が250℃以上である請求項3または4のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- 二軸延伸フィルムは、平均粒径が0.05μm以上3.0μm以下の不活性微粒子を、該二軸延伸フィルムの質量に対して0.05質量%以上3質量%以下含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- 厚みが0.4μm以上6.5μm未満である請求項1〜9のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルム。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の高絶縁性フィルムを用いたコンデンサー。
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