JP2014226881A - 金属蒸着用二軸延伸フィルム - Google Patents

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西山 公典
Kiminori Nishiyama
公典 西山
小野 光正
Mitsumasa Ono
光正 小野
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Abstract

【課題】耐熱性および電気絶縁性、絶縁特性の耐久性に優れた二軸延伸フィルムの提供。
【解決手段】熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂を主たる成分とし、200℃で10分間処理した時の熱収縮率が縦方向・横方向ともに6.0%以下であり、厚みが0.3μm以上7.0μm以下である金属蒸着用二軸延伸フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂を主たる成分とする金属蒸着用二軸延伸フィルムに関する。
近年、電子機器の小型化が進み、それに伴いコンデンサーなどの電子部品の小型化が進んでいる。一方で、取り扱う電力の増大により、電子機器自体の発熱が大きくなり、またハイブリッド自動車や電気自動車等の進展もあり、高温多湿環境下で使用することができる電子部品が求められている。そのため、コンデンサーに用いられるフィルムとしては、高い電気絶縁性や、高い耐熱性・耐湿性が必要とされてきている。
電気絶縁性材料、とりわけコンデンサーの絶縁体として用いられる電気絶縁性フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等からなるフィルムがよく知られている。さらに近年においては、コンデンサーの耐熱性を高める等の目的で、他の樹脂を用いる検討や、これらの樹脂を改質する検討が行われている。例えば、特許文献1〜3においては、耐熱性に優れた熱可塑性ポリエーテルケトンフィルムを、コンデンサーなどの電気絶縁用途に用いることが検討されている。
特開昭57−137116号公報 特開昭61−37419号公報 特開平1−205511号公報
本発明者らは、上記熱可塑性ポリエーテルケトンフィルムによる検討を進めたところ、耐熱性には優れるものの、コンデンサー用として高温多湿環境下で用いた場合、アルミ蒸着などの導電の為の金属層(導電層)が腐食しやすく、結果として静電容量が小さくなってしまう問題が潜在していたことを新たに見出した。
そのため、本発明の目的は、上記課題を解決し、高温高湿環境下においても、優れた金属蒸着膜に対する耐腐食性を有する二軸延伸フィルムを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、主たる成分として熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂を用いた二軸延伸フィルムにおいて、その厚みを極めて薄くしつつ、さらに200℃での熱収縮率を極めて小さくするような製膜の条件を採用することにより、金属蒸着膜に対する耐腐食性を有する二軸延伸フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
かくして、本発明によれば、
(1)熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)を主たる構成成分とし、200℃で10分間処理した時の直交する2方向の熱収縮率が縦方向・横方向ともに6.0%以下であり、厚みが0.3μm以上7.0μm以下である金属蒸着用二軸延伸フィルムが提供される。
また、本発明の好ましい態様として、上記(1)の金属蒸着用二軸延伸フィルムに、
(2)ポリエーテルケトン樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂であること、
(3)二軸延伸フィルムのジフェニルスルホンの含有量Dfが130μm/g以下であること、
(4)縦方向および横方向において、25℃におけるF525値と、100℃におけるF5100値との比F5100値/F525値が0.85以上であること、
(5)1質量%減量温度が280℃以上である酸化防止剤(C)を、二軸延伸フィルムの質量を基準として、0.5質量%以上7質量%以下含有すること、
(6)二軸延伸フィルム中に無機粒子を含むこと、
(7)コンデンサーに用いられること、
のうち、少なくともいずれか1つの態様をさらに具備する金属蒸着用二軸延伸フィルムも提供される。
本発明によれば、コンデンサーとして用いる場合の金属薄膜の耐腐食性に優れ 耐久性も良好であり、さらに 高温環境下における絶縁破壊電圧特性に優れた高絶縁性フィルムを提供することができる。このような特性を有する本発明の高絶縁性フィルムは、高温環境下において用いられる電気絶縁用として好適に用いることができ、とりわけ移動体用、特に自動車移動体、例えばハイブリッド自動車、電気自動車などのコンデンサー用として好適に用いることができ、その工業的価値は極めて高い。
以下、本発明を詳しく説明する。
[二軸延伸フィルム]
本発明における二軸延伸フィルムは、熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂を主たる成分とするものである。ここで「主たる」とは、二軸延伸フィルムを基準として81質量%以上、好ましくは86質量%以上、より好ましくは91質量%以上、さらに好ましくは94質量%以上、特に好ましくは97質量%以上が熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂であることを表わす。
<熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)>
本発明における熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)は、構成単位
Figure 2014226881
または
Figure 2014226881
を単独で、あるいは該単位と他の構成単位からなるポリマーである。
かかる他の構成単位としては、例えば
Figure 2014226881
等が挙げられる。上記構成単位において、Aは直接結合、酸素、−CO−、−SO−または二価の低級脂肪族炭化水素基であり、Q及びQ’は同一であっても相違してもよく、−CO−または−SO−であり、nは0または1である。これらポリマーは、特公昭60−32642号公報、特公昭61−10486号公報、特開昭57−137116号公報等に記載されている。
本発明における熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)としては、上記式[化2]を含む態様が好ましく、その含有量は、熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)の質量を基準として、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、このような態様とすることによって耐熱性を維持したまま、電気絶縁性の向上効果を高くすることができ、高温環境下における絶縁破壊電圧特性をより優れたものとすることができる。そのような観点から、本発明における熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が好ましい。なお、熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)は、上述の通り、それ自体公知であり、且つそれ自体公知の方法で製造することができる。
また、本発明における熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)は、温度380℃、見かけの剪断速度1000sec−1の条件における見かけの溶融粘度が500〜10000ポイズ、さらには1000〜5000ポイズの範囲にあるものが、製膜性に優れるため好ましい。
<酸化防止剤(C)>
本発明においては、前記熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)を主たる構成成分とする二軸延伸フィルムが特定の量の酸化防止剤(C)を含有することが好ましく、これによって、電気的特性をより高いものとすることができる。
かかる酸化防止剤としては、生成したラジカルを捕捉して酸化を防止する一次酸化防止剤、あるいは生成したパーオキサイドを分解して酸化を防止する二次酸化防止剤のいずれであってもよく、一次酸化防止剤としてはフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤があげられ、二次酸化防止剤としてはリン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤があげられる。
本発明における酸化防止剤は、特に耐腐食性により優れ、絶縁破壊電圧の向上効果をより高めることができるという観点から、一次酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤がさらに好ましい。
本発明における酸化防止剤(C)は、1質量%減量温度が280℃以上であることが好ましい。これにより、フィルムの厚み斑をより良好なものとすることができ、電気絶縁性の面内バラツキを抑制でき、単に酸化防止剤を添加するよりも電気絶縁性を優れたものとすることができ、すなわち絶縁破壊電圧を高くすることができる。1質量%減量温度が低すぎる場合は、溶融押出時に熱分解してしまう酸化防止剤の量が多くなり、かかる熱分解物によって工程を汚染する、ポリマーが黄色く着色する等の問題が生じやすくなる傾向にある。そして、このような劣化物がダイリップ部に付着、堆積しやすくなり、これによりフィルム上にスジ状の凹凸欠点が生じやすくなり、厚み斑が低くなる傾向にあり、それにより電気絶縁性に劣る傾向にある。また、延伸性も低下する傾向にある。このような観点から、酸化防止剤(C)の1質量%減量温度は、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは320℃以上、特に好ましくは340℃以上である。本発明における酸化防止剤は、1質量%減量温度が高い方が好ましいが、現実的には、その上限は500℃以下程度である。
また、本発明における酸化防止剤(C)の融点は、90℃以上であることが好ましい。融点が低すぎる場合は、溶融押出時に酸化防止剤がポリマーより早く融解してしまい、押出機のスクリュー供給部分においてポリマーがスリップしてしまう傾向にある。それによって、ポリマーの供給が不安定となり、フィルムの厚み斑が悪くなる等の問題が生じる。このような観点から、酸化防止剤(C)の融点の下限は、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上、特に好ましくは140℃以上である。他方、酸化防止剤(C)の融点が高すぎる場合は、溶融押出時に酸化防止剤(C)が融解しにくくなり、ポリマー内での分散が悪くなってしまう傾向にある。それにより、酸化防止剤(C)の添加効果が局所的にしか発現しない等の問題が生じる。このような観点から、酸化防止剤(C)の融点の上限は、好ましくは450℃以下、より好ましくは400℃以下、さらに好ましくは380℃以下、特に好ましくは360℃以下である。
以上のような酸化防止剤(C)としては、市販品をそのまま用いることもできる。市販品としては、例えば、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピリオ[5−5]ウンデカン(住友化学社製:商品名SUMILIZER GA−80)、ペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名IRGANOX1010)、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名IRGANOX1024)、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド〕(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:商品名IRGANOX1098)等が好ましく例示される。
本発明における二軸延伸フィルムは、上記酸化防止剤(C)を、二軸延伸フィルムの質量を基準として0.5質量%以上7質量%以下含有することが好ましい。酸化防止剤(C)の含有量を上記数値範囲とすることによって、絶縁破壊電圧に優れる。酸化防止剤(C)の含有量が少なすぎる場合は、酸化防止剤の添加効果が十分でなく、絶縁破壊電圧の向上効果が低下する傾向にある。このような観点から、酸化防止剤(C)の含有量の下限は、0.7質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましく、1.5質量%以上が特に好ましい。他方、含有量が多すぎる場合は、フィルム中において酸化防止剤が凝集しやすくなる傾向にあり、酸化防止剤に起因する欠点が増加する傾向にあり、絶縁破壊電圧の向上効果が乏しくなる。また、含有量が多すぎると、高温の溶融押出し時に押出しダイリップ部に酸化防止剤の劣化物が付着、堆積しやすくなり、この影響でフィルム上に筋状の凹凸欠点が発生し、厚み斑が悪くなり、それも絶縁破壊電圧の向上効果が乏しくなる要因となる。また、延伸性も低下する傾向にある。このような観点から、酸化防止剤(C)の含有量の上限は、6質量%以下が好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
上記のような酸化防止剤(C)は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種類以上を併用する場合は、2種類以上の一次酸化防止剤を用いる態様でもよいし、2種類以上の二次酸化防止剤を用いる態様でもよいし、1種類以上の一次酸化防止剤と1種類以上の二次酸化防止剤を併用してもよい。例えば、一次酸化防止剤と二次酸化防止剤との2種類の酸化防止剤を併用することによって、一次酸化および二次酸化の両方の酸化を防止することが期待できる。本発明においては、中でも一次酸化防止剤を単独で用いる態様、あるいは2種類以上の一次酸化防止剤を用いる態様が、絶縁破壊電圧の向上効果をより高くすることができるという観点から好ましく、特にフェノール系酸化防止剤を単独で用いる態様、あるいは2種類以上のフェノール系酸化防止剤を用いる態様が好ましい。
<不活性粒子>
本発明における二軸延伸フィルムは、高絶縁性フィルムでの取り扱い性を向上させるため、発明の効果を損なわない範囲で不活性粒子を含有することが好ましい。フィルムが不活性粒子を含有する態様とするためには、例えば熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂にあらかじめ重合段階で不活性粒子を含有させることが挙げられ、好ましい。その他、熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂を溶融押出する工程において不活性粒子を添加するなど、公知の方法を採用することができる。
かかる不活性粒子としては、例えば、周期律表第IIA、第IIB、第IVA、第IVBの元素を含有する無機粒子(例えば、カオリン、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素(シリカ)など)や、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、架橋アクリル樹脂等のごとき耐熱性の高いポリマーよりなる有機粒子等を例示することができる。これらのうち、耐熱性が高い等の理由により無機粒子が好ましく、特にシリカ粒子が好ましい。
かかる不活性粒子の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上3μm以下、さらに好ましくは0.05μm以上2μm以下、特に好ましくは0.1μm以上1μm以下である。含有量は、二軸延伸フィルムの質量を基準として、好ましくは0.01質量%以上3.0質量%以下、さらに好ましくは0.03質量%以上2.0質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以上1.0質量%以下である。上記のような平均粒径および含有量の態様とすることによって、取り扱い性をより効率的に向上させることができ、また二軸延伸フィルムの機械特性(破断強度、破断伸度、ヤング率等)や電気的特性(絶縁破壊電圧等)を低下させすぎることがない。
また、本発明における不活性粒子は、その形状が球状であることが好ましく、不活性粒子の長径と短径との比(長径/短径)を粒径比としたときに、かかる粒径比は、好ましくは1.20以下、さらに好ましくは1.10以下、特に好ましくは1.05以下であり、取り扱い性をさらに優れたものとすることができる。
このような不活性粒子は、種類や平均粒径の異なるものを2種以上併用することができ、ハンドリング性向上の観点から好ましい。また、そのような態様とした方が取り扱い性と絶縁破壊電圧との両立が容易となる。
<その他の添加剤>
本発明における熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂には、流動性改良などの目的でポリアリーレンポリエーテル、ポリスルフォン、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂成分(B)をブレンドしても良い。また、耐熱性、他の特性向上などの目的で、ガラス転移温度(Tg)の高い樹脂成分(B)、例えばポリイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂等をブレンドしても良い。また、安定剤、紫外線吸収剤等の如き添加剤を含有させても良い。
<金属層>
本発明の金属蒸着用二軸延伸フィルムは、例えば少なくとも片面に金属層を蒸着によって積層することでコンデンサーとなる。金属層の材質については、特に制限はないが、例えばアルミニウム、亜鉛、ニッケル、クロム、錫、銅およびこれらの合金が挙げられる。さらにこれらの金属層は若干量酸化されていてもよい。
また金属層には、ヒューズ効果を持たせるためエッチングまたはレーザー等の処理により微細なスリットを持たせてもよい。
この金属層を、本発明の二軸延伸フィルムの面上に設けるにあたって、二軸延伸フィルムと金属層との間に塗布層を設けても良い。塗布層としては適度な接着力を有し、フィルムコンデンサー製造において巻回などの加工を施す場合には金属層の剥離がなく、コンデンサーとしての機能が発揮されるものであれば制限されない。また、塗布層を設ける場合、二軸延伸フィルムと塗布層と金属層との接着性を適度に制御することで、具体的には放電が起こっても、先に表面エネルギーの小さい塗布層がフィルムから剥離し、金属層の破壊面積が極小化され、セルフヒーリング性と絶縁破壊電圧の向上効果を高くすることができる。
[二軸延伸フィルムの製造方法]
本発明の二軸延伸フィルムは、機械軸方向(以下、縦方向、長手方向またはMDと呼称する場合がある。)と、機械軸方向及び厚み方向に直交する方向(以下、横方向、幅方向またはTDと呼称する場合がある。)の二軸方向に延伸された二軸延伸フィルムである。
このように二軸延伸することにより機械特性(破断強度、破断伸度、ヤング率等)が向上し、また電気絶縁用、とりわけコンデンサー用の電気絶縁用としての高い耐熱性および電気絶縁性を発現することができ、高温環境下において高い絶縁破壊電圧を発現することができる。かかる二軸延伸は、同時二軸延伸、逐次二軸延伸の何れでも良いが、厚み斑をより良好にできるという観点から、逐次二軸延伸が好ましく、延伸の順序は、先に縦延伸を実施し、次いで横延伸を実施するのが、厚み斑をより良好にでき、また生産性の点からも好ましい。
以下、本発明における二軸延伸フィルムの製造方法について説明する。
<押出工程>
熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)のペレットを押出機に投入し、(Tm+20)℃以上(Tm+90)℃以下の温度で加熱溶融し、シート状に押し出した後、冷却ロールに接触させる等により冷却固化して未延伸フィルムを得る。ここでTmは、示差走査熱量計(DSC)により求められる熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)の組成物の融点(単位:℃)を表わす。
なお、フィルムが酸化防止剤(C)や不活性粒子他の添加剤を含有する態様とするためには、例えば、ペレットを押出機に投入する前に熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂にあらかじめ酸化防止剤(C)や不活性粒子他の添加剤を含有させる方法が挙げられ、好ましい。その他、ペレットを押出機に投入した後に熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂を溶融押出する工程において酸化防止剤他を添加するなど、公知の方法を採用することができる。
<延伸工程>
次いで、得られた未延伸フィルムを縦方向および横方向の二軸に延伸する。
縦方向の延伸(以下、縦延伸と呼称する場合がある。)は、温度(Tg−10)℃以上(Tg+45)℃以下、倍率1.5倍以上5.0倍以下で延伸する。延伸温度は、好ましくは(Tg)℃以上(Tg+30)℃以下であり、延伸倍率は、好ましくは2.0倍以上、さらに好ましくは2.3倍以上である。なお、延伸倍率を高くすると、延伸中にフィルム内に含有されていた不純物が放出されやすくなる為か、フィルム上に金属膜が設けられた際に腐食が起きにくくなり、好ましい。他方、延伸倍率を過度に高くし過ぎると、延伸中に破断が起き易くなる。このような観点から、延伸倍率は4.5倍以下が好ましく、4.0倍以下がより好ましく、3.5倍以下がさらに好ましい。
なお、本発明においては、後述のように、未延伸シート、かかる未延伸シートを、好ましくは縦方向に一軸延伸した一軸延伸フィルムに、塗布層を形成するための塗液を塗布することで、塗布層を形成することも可能である。
横方向の延伸(以下、横延伸と呼称する場合がある。)は、温度(Tg+10)℃以上(Tg+40)℃以下、倍率2.1倍以上5.0倍以下で延伸する。延伸温度は、好ましくは(Tg+15)℃以上(Tg+30)℃以下であり、延伸倍率は、好ましくは2.5倍以上であり、より好ましくは2.8倍以上であり、さらに好ましくは3.2倍以上である。
また、横延伸倍率の上限は、好ましくは4.5倍以下、より好ましくは4.0倍以下、さらに好ましくは3.5倍以下である。ここでTgは、DSCにより求められる熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)のガラス転移温度(単位:℃)を表わす。
縦方向および横方向の延伸条件(延伸温度および延伸倍率)を上記のような態様とすることによって、耐腐食性、耐熱性および電気絶縁性の向上効果を高くすることができる。また、高温環境下における絶縁破壊電圧をより高くすることができる。また、厚み斑をより良好な範囲とすることができる。なお、延伸倍率を上げると、耐腐食性・耐熱性および電気絶縁性が高くなる傾向にあり、厚み斑も良化する傾向にある。また、延伸温度が低すぎるとフィルム破断が生じ易くなる傾向にあり、また厚み斑が悪くなる傾向にあり、他方、延伸温度が高すぎると、いわゆるフロー延伸する傾向にあり、厚み斑が悪くなる傾向にあり、電気絶縁性に劣る傾向にある。
ここで本発明においては、電気絶縁性をより良好なものとするために、横延伸を複数の温度領域に分けて実施することが好ましく、この第1領域の温度と最終領域の温度とで、3℃以上60℃以下の温度差をつけることが好ましい。温度差は大きすぎても小さすぎても電気絶縁性の向上効果は低くなる傾向にある。かかる温度差が小さすぎると、例えば横延伸温度が中程度にある場合は、延伸開始部で延伸応力が低く、延伸終了部(最終領域)で延伸応力が高くなる傾向であり、延伸応力の差が大きくなりバラツキが出やすくなるためか、フィルムの厚み斑が悪くなる傾向にあり、電気絶縁性の向上効果が低くなる傾向にある。他方、温度差が大きすぎる場合は、近接している領域で温度が大きく変化している為か、局所的な温度斑や温度のバラツキが生じやすくなるようであり、厚み斑が悪くなる傾向にあり、電気絶縁性の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、温度差の下限は、5℃以上がより好ましく、10℃以上がさらに好ましく、17℃以上が特に好ましく、温度差の上限は、50℃以下がより好ましく、40℃以下がさらに好ましく、30℃以下が特に好ましく、より好ましい電気絶縁性とすることができる。
横延伸工程において、第1領域と最終領域との温度差をつけるには、1つの延伸ゾーンの中でゾーンの入口(第1領域)と出口(最終領域)とで温度差をつけてもよいし、温度の異なる2以上の連続した延伸ゾーンを設けて最初の延伸ゾーン(第1領域)と最後の延伸ゾーン(最終領域)とで温度差をつけてもよい。ここでゾーンとは、テンター等においてシャッター等で区切られた1つの領域を示す。いずれの場合も、第1領域と最終領域の間をさらに分割し、第1領域から最終領域に向かって温度を上昇させるのが好ましく、特にその勾配が直線的となるように上昇させると良い。例えば、温度の異なる2以上の連続した延伸ゾーンの場合は、最初の延伸ゾーンと最後の延伸ゾーンの間に、さらに1以上の延伸ゾーンを設けることが好ましく、1以上10以下の延伸ゾーンを設けることがさらに好ましい。延伸ゾーンの合計を13以上とすることは、設備コストの面から不利である。
延伸倍率は、最終領域を出た直後のフィルム幅を、第1領域に入る直前のフィルム幅で除した値が目標の延伸倍率となるようにすればよく、段階的にフィルム幅を増加させることが好ましく、特にその勾配が直線的となるように増加させると良い。縦方向と横方向を同時に延伸する場合においても、同様に延伸の温度を複数段階に分け、この第1段階の温度と最終段階の温度とで温度差をつけるようにする。
さらに本発明においては、上記のような延伸条件において、面積延伸倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)を5倍以上とすることが好ましく、6倍以上にすることがより好ましく、7倍以上とすることがさらに好ましく、厚み斑をさらに良好にすることができる。面積延伸倍率が高すぎるとフィルムが破断しやすくなる傾向にあり、その上限は、好ましくは25倍以下、さらに好ましくは20倍以下、特に好ましくは15倍以下である。
<熱固定工程>
次いで、上記にて二軸延伸されたフィルムに熱処理を施し、熱固定する。
かかる熱固定について、最高の熱固定温度の下限は、255℃以上であることが好ましく、270℃以上がより好ましく、290以上がさらに好ましく、305℃以上が特に好ましく、熱固定温度の上限は(Tm)℃以下が好ましく、(Tm−15)℃以下がより好ましく、(Tm−30)℃以下が特に好ましい。
また熱固定の時間は0.1分以上10分以下が好ましく、0.2分以上6分以下がより好ましく、0.4分以上〜4分以下がさらに好ましく、0.5分以上〜3分以下が特に好ましい。熱固定は、二軸延伸フィルム製膜時の延伸工程の後に連続して行われる熱処理と、二軸延伸フィルム製膜後、別途に行われる熱処理とに分けるなど、2回以上に分離して実施してもよい。なおこの場合には熱固定の時間は合計の時間で表す。
熱固定条件(熱固定温度および熱固定時間)を上記のような態様とすることによって、耐腐食性、耐熱性および電気絶縁性の向上効果を高くすることができる。また、厚み斑をより良好な範囲とすることができる。また、熱収縮率を上記数値範囲とすることが容易になる。熱固定温度が高すぎると耐熱性および電気絶縁性の向上効果が低くなる傾向にあり、また厚み斑が悪くなる傾向にあり、他方、熱固定温度が低すぎると耐腐食性が損なわれ、熱収縮率も高くなる傾向にある。なお、このような高温での熱固定を、前述のような二軸延伸した極めて薄いフィルムに行うことで、耐腐食性が向上する理由は定かではないが、ポリエーテルケトン樹脂に含有される不純物、具体的にはポリエーテルケトン樹脂が製造される際に使用される溶媒(ジフェニルスルフォンなど)をより少なくすることができ、耐腐食性が向上するものと考えられる。なお、ジフェニルスルフォンは製造後の洗浄処理によってある程度除去されるが、生産性を考慮した洗浄処理では完全に除去できずに残留している。
<熱弛緩処理>
次いで、上記にて熱固定されたフィルムについて、熱収縮率を調整するために幅方向に熱弛緩処理を行うことが好ましく、具体的には温度180℃以上320℃以下で、弛緩率1%以上7%以下の熱弛緩処理を行うことが好ましい。弛緩率が高すぎると、熱収縮率は低くなる傾向にあるが、フィルムの平面性に劣る傾向にある。他方、低すぎると、熱収縮率が高くなる傾向にある。このような観点から、弛緩率は、さらに好ましくは2%以上6%以下である。
[二軸延伸フィルムの特性]
<フィルム厚み>
本発明の二軸延伸フィルムの厚みは、好ましくは0.3μm以上7.0μm以下である。フィルム厚みが薄すぎる場合は、製膜時に破断が生じ易くなり生産効率が悪くなる傾向にある。他方、フィルム厚みが厚くなる場合は、延伸応力が高くなる傾向にあり、延伸倍率を高くすることが困難となり、熱固定温度の効果も低下するため耐腐食性の向上効果が発現されなくなる。
また、耐熱性および電気絶縁性の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、高絶縁性フィルム厚みの下限は、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは0.8μm以上、特に好ましくは1.2μm以上である。他方、高絶縁性フィルム厚みの上限は、好ましくは6μm以下、より好ましくは4.5μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下、特に好ましくは2.0μm以下である。
<ガラス転移温度(Tg)>
本発明における二軸延伸フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が135℃以上170℃未満であることが好ましい。Tgが上記数値範囲にあると、高温環境下においてもフィルムの剛性を維持することが容易となり、自動車用のコンデンサー用としてより好適に用いることができる。また、耐熱性の向上効果が高くなり、結果として高温環境下における絶縁破壊電圧を高くすることができる。このような観点から、Tgの下限は、より好ましくは140℃以上であり、さらに好ましくは142℃以上であり、また、Tgの上限は160℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましく、147℃以下が特に好ましい。特に前述の樹脂成分(B)を含有させる場合は、Tgの下限は、144℃以上、さらに146℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は、ポリエーテルケトンの種類、純度や樹脂成分(B)の種類、配合量を調整することなどにより達成される。
<ジフェニルスルホン量>
本発明の二軸延伸フィルムのジフェニルスルフォン含有量は130μg/g以下であることが好ましい。ポリエーテルケトン樹脂の製造の際には各種の溶媒(ジフェニルスルフォンなど)、無機塩(無水炭酸カリウムなど)、およびその他の添加物が使用されることが知られており、これらは製造後の洗浄処理によっても残留している可能性があり、不純物として樹脂内に存在していることが考えられる。(特公昭61−10486、特公昭60−32642.公開技報RD−216001,公開技報RD−202016,など参照)これらの内、ジフェニルスルフォンの含有量がコンデンサーとした時の金属蒸着層の腐食性と関連があることが判ってきた。
二軸延伸フィルム中のジフェニルスルフォン含有量が多い場合には、金属蒸着膜の変化(腐食)が起り易く、ジフェニルスルフォン含有量が少なくなると金属蒸着膜の変化(腐食)が起り難くなる。これらの観点から、ニ軸延伸フィルム中のジフェニルスルフォン含有量は120μg/g以下が好ましく、100μg/g以下がより好ましく、60μg/g以下がさらに好ましく、20μg/g以下が特に好ましく、10μg/g以下が非常に好ましい。このようなジフェニルスルフォン量は、前述のような二軸延伸した極めて薄いフィルムに前述の高温での熱固定を行うことなどで、調整できる。
<絶縁破壊電圧>
本発明の二軸延伸フィルムは、25℃における絶縁破壊電圧(BDV25)が330kV/mm以上であることが好ましい。BDV25が上記数値範囲にあると、ハイブリッド型自動車のコンデンサー用として好適に用いることができる。BDV25が低い場合は、ハイブリッド型自動車のコンデンサー用として用いた場合において、大電流によりコンデンサー内における短絡が生じ、コンデンサーが破壊されるなどの問題が生じ易くなる。このような観点から、BDV25は、350kV/mm以上がより好ましく、380kV/mm以上がさらに好ましく、410kV/mm以上が特に好ましい。
また、本発明の高絶縁性フィルムは、高温環境下における絶縁破壊電圧が高いことが好ましく、120℃における絶縁破壊電圧(BDV120)とBDV25との比(BDV120/BDV25)が0.7以上、さらに0.85以上であることが好ましい。かかる比が上記数値範囲にあると、高温環境下においても常温と同等の電気絶縁性を示すことを意味し、ハイブリッド型自動車のコンデンサー用として好適に用いることができる。かかる比が小さすぎる場合は、高温環境下においては電気絶縁性が低くなってしまうことを意味し、ハイブリッド自動車のコンデンサー用のごとく高温環境下で使用される用途への適用が困難となる。このような観点から、かかる比は、0.90以上であることがより好ましく、0.95以上であることがさらに好ましい。BDV120は、280kV/mm以上が好ましく、330kV/mm以上がより好ましく、390kV/mm以上がさらに好ましい。
上記のようなBDV25およびBDV120は、熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)に、本発明に規定する塗布層を設ければよく、さらに酸化防止剤(C)を添加したり、さらに前述の特定条件において延伸することで、より高めることができる。
<25℃におけるF525値と100℃におけるF5100値との比F5100値/F525値>
本発明の二軸延伸フィルムは、25℃におけるF525値と100℃におけるF5100値との比F5100値/F525値が縦方向、横方向のいずれも0.85以上であることが好ましい。
かかる比が0.85以上であることにより、高温環境下においても常温に近い機械的特性を発現できるようになり、とりわけ高温環境下において用いられるコンデンサー用等の電気絶縁用としてより好適に用いることができる。高温環境下になった際にF5100値が大きく低下するようでは、ハイブリッド自動車のコンデンサー用の如く、高温で曝される用途に用いられた場合においては、高温環境下において破壊が生じやすくなる傾向にある。
このような観点から縦方向、横方向のそれぞれにおける、F5100値/F525値の比は0.89以上であることがより好ましく、0.93以上であることがさらに好ましく、0.96以上であることが特に好ましい。上記数値を上述の範囲とするためには、延伸条件を調整することにより、また熱可塑性ポリエーテル樹脂の種類、混合される他の樹脂の種類、配合量などを調整することにより達成可能とすることができる。
<150℃熱収縮率>
本発明の二軸延伸フィルムは、温度150℃で30分間熱処理した後の縦方向および横方向の熱収縮率の絶対値がいずれも1.0%以下であることが好ましい。熱収縮率の絶対値は、さらに好ましくは0.7%以下、特に好ましくは0.5%以下である。なお、熱収縮率の下限は絶対値が上限と同じ−1.0%以上であれば特に問題ないが、通常負の値をとるほど熱収縮率を小さくするのは困難であり、0%以上であることが好ましい。熱収縮率が上記数値範囲にあると、熱寸法安定性に優れ、加工時に反り、カールなどが起りにくいなど、加工性に優れ、また取り扱い性も良好となる。
熱収縮率を上記のような態様とするには、二軸延伸フィルムを構成する主たる成分として熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)を用い、前述した製造条件によりフィルムを製造すればよい。特に、延伸倍率を高くすると熱収縮率は高くなる傾向にあり、熱固定温度を高くすると熱収縮率は低くなる傾向にあり、弛緩率を高くすると熱収縮率は低くなる傾向にあり、これらを調整することが重要である。
<200℃熱収縮率>
本発明の二軸配向フィルムは、温度200℃で10分間熱処理した後の縦方向および横方向の熱収縮率の絶対値がいずれも6.0%以下であることが好ましい。熱収縮率の絶対値は、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、特に好ましくは3.0%以下である。なお、熱収縮率の下限は絶対値が上限と同じ−5.0%以上であれば特に問題ないが、通常負の値をとるほど熱収縮率を小さくするのは困難であり、0%以上であることが好ましい。熱収縮率が上記数値範囲にあることで、前述の通り、金属層の腐食を抑制することができる。
熱収縮率を上記のような態様とするには、二軸延伸フィルムを構成する主たる成分として熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)を用い、前述した製造条件によりフィルムを製造すればよい。特に、延伸倍率を高くすると熱収縮率は高くなる傾向にあり、熱固定温度を高くすると熱収縮率は低くなる傾向にあり、弛緩率を高くすると熱収縮率は低くなる傾向にあり、これらを調整することが重要である。
<屈折率>
本発明の二軸延伸フィルムは、二軸延伸フィルムの厚み方向の屈折率の上限が1.640以下である。また、屈折率の下限は1.570以上であることが好ましい。
屈折率が上記数値範囲にあると、絶縁性の向上効果を高くすることができる。厚み方向の屈折率は、低すぎるとフィルムの延伸性に劣る傾向にあり、他方高すぎると絶縁性の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、厚み方向の屈折率の下限は、1.5
90以上がより好ましく、1.600以上がさらに好ましく、1.605以上が特に好ましく、厚み方向の屈折率の上限は、1.634以下がより好ましく、1.628以下がさらに好ましく、1.622以下が特に好ましい。厚み方向の屈折率は、延伸条件等の製膜条件を調整することで達成することができる。
<表面粗さ>
本発明の二軸延伸フィルムは、その少なくとも片面にある塗布層の表面の中心線平均表面粗さRaが7nm以上89nm以下であることが好ましい。中心線平均表面粗さRaを上記数値範囲とすることによって、巻き取り性の向上効果を高くすることができる。また、耐ブロッキング性が向上し、ロールの外観を良好なものとすることができる。中心線平均表面粗さRaが低すぎる場合は、滑り性が低くなりすぎる傾向にあり、巻き取り性の向上効果が低くなる。このような観点から、中心線平均表面粗さRaは、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上、特に好ましくは17nm以上である。他方、中心線平均表面粗さRaが高すぎる場合は、滑り性が高くなりすぎる傾向にあり、巻き取り時に端面ズレを起こしやすくなる等巻き取り性の向上効果が低くなる。このような観点から、中心線平均表面粗さRaは、より好ましくは79nm以下、さらに好ましくは69nm以下、特に好ましくは59nm以下、最も好ましくは29nm以下である。
上記のようなRaは、二軸延伸フィルムに不活性微粒子を含有させ、その含有量や粒子径を調整すればよい。
[用途]
本発明の金属蒸着用二軸延伸フィルムは、耐腐食性、耐熱性および電気絶縁性に優れ、高温環境下においても優れた絶縁破壊電圧特性が要求される電気絶縁用として好適に用いることができる。特に移動体用、特にハイブリッド自動車用、電気自動車用、燃料自動車用等のコンデンサー用のごとく、より高い耐腐食性、耐久性、耐熱性および電気絶縁特性(絶縁破壊電圧)が要求される用途に好適に使用することができる。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を意味する。
(1)25℃におけるF525値と100℃におけるF5100値との比F5100値/F525
フィルムを150mm長×10mm幅に切り出した試験片を用い、オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用いて、温度25℃、湿度60%RHに調節された室内において、チャック間100mm、引張速度20mm/分、チャート速度50mm/分で引張試験を実施し、5%伸長時の応力から25℃におけるF525値を求めた。なお、縦方向のF525値とはフィルムの縦方向(MD)を測定方向としたものであり、横方向のF525値とはフィルムの横方向(TD)を測定方向としたものである。各F525値はそれぞれ10回測定し、その平均値を用いた。
また、100℃の温度雰囲気下におけるF5100値は、100℃の温度雰囲気に設定されたチャンバー内に試験片及びテンシロンのチャック部分をセットし、2分間静置後、上記の引張試験を行うことによって求めた。
これらの測定値から 25℃におけるF525値と100℃におけるF5100値との比F5100値/F525値の値を求めた。
(2)ジフェニルスルフォン含有量
前処理として、二軸延伸フィルムサンプル約2mgを10μg桁までの精度で量りとり、100μLのクロロホルムとともに5mmφガラス管に入れ、ガラス管を封じる。サンプル充填部分の周囲を150℃用強磁性金属体(パイロホイル)で包み、高周波加熱装置を用いてパイロホイル部に高周波を与えて150℃10分間加熱する。
冷却後、3000rpm程度の遠心分離により、サンプルとクロロホルム抽出液とを分離させた後、ガラス試料管をカットし、内部のクロロホルム溶液をガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)した。 詳細にはガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS HP5973:アジレント・テクノロジーズ社製)にて HP−5msカラム(液相:5%ジフェニル95%ジメチルシロキサン)を用い、キャリアガス:ヘリウム1.0ml/分にて測定した。なお、別途ジフェニルスルホン(試薬:和光純薬)をクロロホルムで希釈・分析し、検量線を作成して参考とした。
(3)ガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)
樹脂サンプルにおいてはサンプル約10mgを、フィルムサンプルにおいてはサンプル約20mgを測定用のアルミニウム製パンに封入して示差熱量計(TA Instruments社製:商品名DSC2920 Modulated)に装着し、25℃から20℃/分の速度で370℃まで昇温させ、370℃で3分間保持した後取り出し、直ちに氷の上に移して急冷した。このパンを再度示差熱量計に装着し、25℃から20℃/分の速度で昇温させてガラス転移温度(単位:℃)と融点(単位:℃)を測定した。
(4)150℃熱収縮率
温度150℃に設定されたオーブン中に、フィルムの縦方向および横方向がマーキングされ、あらかじめ正確な長さを測定した長さ30cm四方のフィルムを無荷重で入れ、30分間保持処理した後取り出し、室温に戻してからその寸法の変化を読み取る。熱処理前の長さ(L)と熱処理による寸法変化量(ΔL)より、下記式(1)から縦方向および横方向の熱収縮率をそれぞれ求めた。
熱収縮率(%)=(ΔL/L)×100 ・・・(1)
(5)200℃熱収縮率
温度200℃に設定されたオーブン中に、フィルムの縦方向および横方向がマーキングされ、あらかじめ正確な長さを測定した長さ30cm四方のフィルムを無荷重で入れ、10分間保持処理した後取り出し、室温に戻してからその寸法の変化を読み取る。熱処理前の長さ(L)と熱処理による寸法変化量(ΔL)より、下記式(1)から縦方向および横方向の熱収縮率をそれぞれ求めた。
熱収縮率(%)=(ΔL/L)×100 ・・・(1)
(6)絶縁破壊電圧(BDV)
JIS C 2151に示される方法に従って測定した。なお、サンプルはJIS C 2151に従ってアルミ蒸着によって作成した。25℃相対湿度50%の雰囲気にて、直流耐電圧試験機を用い、上部電極は直径25mmの真鍮製円柱、下部電極は直径75mmのアルミ製円柱を使用し、100V/秒の昇圧速度で昇圧し、フィルムが破壊し短絡した時の電圧を読み取った。得られた電圧をフィルム厚みで除して、25℃における絶縁破壊電圧(BDV25、単位:kV/mm)とした。
測定は41回実施し、大きい方の値10点、および小さい方の値10点を除き、21点の値の中央値を絶縁破壊電圧の測定値とした。
120℃における絶縁破壊電圧(BDV120)の測定は、熱風オーブンに電極、サンプルをセットし、耐熱コードで電源に接続し、120℃のオーブンにサンプルを投入後1分で昇圧を開始して、上記と同様にして測定した。
(7)耐腐食性
二軸延伸フィルムの片面に約10nm厚みでアルミニウムの蒸着膜を形成させた。
この蒸着されたフィルムを10×10cmのサンプルとして切り出し、121℃・湿度100RH%の下で1時間処理し、その後のサンプルの状態を観察し以下に従い評価した。
なおサンプルは7点とし、これらのうち最良品と最悪品を除き、5点の平均で表現した。
・◎ : アルミニウム蒸着膜は不変(不透明のまま)。
・○ : アルミニウム蒸着膜はやや変色している部分はあるも不透明を保つ。
・△ : アルミニウム蒸着膜は変化し、一部半透明部分も見られるが、透明部分は見られず、実用には耐えるレベル。
・× : アルミニウム蒸着膜は変化し、半透明部分が多く見られ、一部透明部もある。
・××: アルミニウム蒸着膜は変化し、透明部分が多く見られ 実用に耐えない。
(8)フィルム厚み
二軸延伸フィルムの厚みを、縦方向および横方向に電子マイクロメーターを用いて0.5mの区間をそれぞれ均等に10点測定して、平均厚み(単位:μm)を算出した。
(9)屈折率
ナトリウムD線(589nm)を光源としたアッベ屈折計を用いて、23℃65%RHにて測定し、厚み方向の屈折率をnZとした。
(10)1質量%減量温度
熱重量分析計を用いて、窒素ガス中、昇温20℃/分の条件で室温から600℃まで昇温し、質量減少量が1質量%に達した時の温度を、1質量%減量温度とした。
(11)フィルムの表面粗さ(中心線平均表面粗さ(Ra))
非接触式三次元粗さ計(小坂研究所製、ET−30HK)を用いて波長780nmの半導体レーザー、ビーム径1.6μmの光触針で測定長(Lx)1mm、サンプリングピッチ2μm、カットオフ0.25mm、厚み方向拡大倍率1万倍、横方向拡大倍率200倍、走査線数100本(従って、Y方向の測定長Ly=0.2mm)の条件にて高絶縁性フィルムの塗布層の表面の突起プロファイルを測定する。その粗さ曲面をZ=f(x,y)で表わしたとき、次の式で得られる値をフィルムの中心線平均表面粗さ(Ra、単位:nm)とした。
Figure 2014226881
[実施例1]
熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂(A)としてのポリエーテルエーテルケトン樹脂(ビクトレックス社製:ポリエーテルエーテルケトン381G、Tg:142℃、Tm:343℃)を用意し、これに酸化防止剤(C)SUMILIZER GA−80:2質量部(得られる二軸延伸フィルム100質量%中にとして2質量%となる)を添加した。そして、この混合物に、不活性微粒子Aとして、平均粒径0.3μm、相対標準偏差0.16、粒径比1.09の球状シリカ粒子を0.4質量部(得られる二軸延伸フィルム100質量%中に0.4質量%となる)と、不活性微粒子Bとして、平均粒径0.8μm、相対標準偏差0.17、粒径比1.11の球状シリカ粒子を0.1質量部(得られる二軸延伸フィルム100質量%中に0.1質量%となる)とを配合し、160℃で4時間乾燥した後、押出機により380℃で溶融押出し、80℃に保持したキャスティングドラム上へキャストして、未延伸フィルムを作成した。
次いで、次に示す条件で縦方向、次いで横方向に逐次二軸延伸を行い、更に熱固定および熱弛緩処理することにより、厚さ3μmの二軸延伸フィルムを得た。
未延伸フィルムを155℃で縦方向(機械軸方向)に2.3倍延伸し、続いてテンターに導いた後、予熱開始部分の温度95℃、予熱終了部分の温度(延伸開始部分の温度)140℃の工程で20秒間予熱し、続いて、横方向(機械軸方向と厚み方向とに垂直な方向)に2.6倍延伸した。その際横方向の延伸速度は5000%/分とした。また、横方向の延伸の温度は、第1段階の温度を140℃、第2段階の温度を150℃、第3段階(最終段階)の温度を160℃とした。その後290℃で30秒間熱固定をし、さらに180℃まで冷却する間に横方向に3%弛緩処理をして、厚み3.0μmの二軸延伸フィルムを得てロール状に巻き取った。
得られた二軸延伸フィルムの特性を表1に示す。
[実施例2〜3]
実施例1において熱固定温度を変更すること以外は同様な操作を繰り返した。結果を表1に示す。
いずれも耐腐食性は実用上に耐えるレベルで、熱固定温度が高くなるに従い、200℃熱収縮率が低くなり、耐腐食性も良くなる傾向であった。
[実施例4]
実施例1において、用いる酸化防止剤をIRGANOX1010に変更した以外は同様な操作を繰り返した。絶縁破壊電圧はやや低くはなるが、室温から高温(120℃)での絶縁破壊電圧の低下は小さく、また耐腐食性も良好であり、実用上は問題なく使用できるレベルであった。
[実施例5]
実施例1において、酸化防止剤を用いないものに変更した以外は同様な操作を繰り返した。絶縁破壊電圧はやや低くはなるが、温から高温(120℃)での絶縁破壊電圧の低下は小さく、また耐腐食性も良好であり、実用上は問題なく使用できるレベルであった。
[比較例1]
実施例1において、熱固定・熱処理条件を表1に示す通り変更した以外は同様な操作を繰り返した。熱固定温度の低い比較例1では、150℃熱収縮率は低いものの200℃熱収縮率が高く、耐腐食性は劣る。
[実施例6]
比較例1の二軸延伸フィルムを、さらに320℃の再熱処理を施した。結果を表1に示す。200℃熱収縮率も低く、耐腐食性も良好であった。
[実施例7]
実施例1において、フィルム厚みを6μmに変更すること以外は同様とした。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例2において、フィルム厚みを12μmに変更すること以外は同様としたものであり、蒸着金属の耐腐食性が劣っていた。結果を表1に示す。
Figure 2014226881
表1中の、PEEKはポリエーテルエーテルケトン樹脂(ビクトレックス社製:ポリエーテルエーテルケトン381G)、GA−80は酸化防止剤(SUMILIZER製、商品名:GA−80)、IR1010は酸化防止剤(商品名:IRGANOX 1010)を意味する。また、表1中の「*1」は横延伸における各ゾーンの延伸倍率は、各ゾーンにおいて、その入り口幅に対する出口幅を示す。
本発明の二軸延伸フィルムは、電気絶縁性に優れるとともに耐腐食性・耐熱性にも優れ、高い絶縁破壊電圧を示し、絶縁特性の耐久性にも優れ、移動体の電気絶縁用、特にハイブリッド自動車用のコンデンサー用フィルムとして好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 熱可塑性ポリエーテルケトン樹脂を主たる成分とし、200℃で10分間処理した時の熱収縮率が縦方向・横方向ともに6.0%以下であり、厚みが0.3μm以上7.0μm以下である金属蒸着用二軸延伸フィルム。
  2. ポリエーテルケトン樹脂が、ポリエーテルエーテルケトン樹脂である請求項1に記載の金属蒸着用二軸延伸フィルム。
  3. ジフェニルスルホンの含有量が以下の式を満足する請求項1または2のいずれか1項に記載の金属蒸着用二軸延伸フィルム。
    Df≦130μg/g
    Df : 二軸延伸フィルムに含まれるジフェニルスルホン量
  4. 縦方向および横方向において、25℃におけるF525値と100℃におけるF5100値との比F5100値/F525値が0.85以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属蒸着用二軸延伸フィルム。
  5. 二軸延伸フィルムが、1質量%減量温度が280℃以上である酸化防止剤(C)を、二軸延伸フィルムの質量を基準として、0.5質量%以上7質量%以下含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属蒸着用二軸延伸フィルム。
  6. 二軸延伸フィルム中に無機粒子を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属蒸着用二軸延伸フィルム。
  7. コンデンサーに用いられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の金属蒸着用二軸延伸フィルム。
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