JP2011173261A - ガスバリアフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

ガスバリアフィルムおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の方式、構成では不十分であった、密着性、ガスバリア性、耐久性が改善されたガスバリアフィルムを提供すること。
【解決手段】基材となる高分子フィルム1の片面もしくは両面に、表面がOH基で覆われかつ表面の算術平均粗さ(Ra)が3nm以下である密着層2を形成し、その上に原子層堆積法(ALD法)によってセラミック膜3を形成し、さらにその上に膨潤性能を有した保護層4が形成されていることを特徴とするガスバリアフィルムとその製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子ペーパー、LCD、有機ELや太陽電池のバックシート、フロントシート等に用いられるガスバリアフィルムおよびその製造方法に関するものである。
次世代のFPDとして期待される電子ペーパー、有機EL等の開発が進むなかで、これらFPDのフレキシブル化を達成するため、ガラス基板を高分子フィルムに置き換えたいという要求が高まっている。ガラス基板は環境由来の酸素や水蒸気による内部素子の劣化を抑制するため必要とされるガスバリア性が備わっている。しかし、従来から存在している包装材料用のガスバリアフィルムはそのバリアレベルには達しておらず、高分子フィルムが適用され得る電子ペーパー、有機EL等では、食品包材用バリアフィルムの100倍から1万倍のガスバリア性が必要とも言われている。
太陽電池バックシート、フロントシートは太陽電池モジュールの起電部分であるパターニングされたシリコン薄膜の湿度による劣化を防止するために、太陽電池の裏側または表側に配置されており、酸素や水蒸気といったガスを遮断し、同時に屋外等の過酷な状況下で使用されてもガスバリア性能が劣化しない耐久性能が求められる。
高分子フィルムからなる包装体としては、従来、高分子の中では比較的ガスバリア性能に優れるポリビニルアルコール(PVA)、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル(PAN)等の樹脂フィルムや或いはこれらの樹脂をラミネートまたはコーティングした高分子フィルム等が好んで用いられてきた。しかしながら、これらのフィルムは、温度依存性が高く、高温または高湿度下においてガスバリア性能に劣化が見られる。また、PVDC系の高分子樹脂組成物を用いたガスバリア性積層体は、湿度依存性は低いものの温度依存性がある上に、高いガスバリア性能(例えば、1cc/m・day・atm以下)を得ることができない。
また、PVDCやPAN等は廃棄、焼却の際に有害物質が発生する危険性が高いため、高防湿性を有し、かつ高度のガスバリア性能を要求される包装体については、アルミニウム等の金属箔等にてガスバリア性能を担保せざるを得なかった。しなしながら、金属箔は不透明であるため、電子ペーパー、有機EL等のFPDに用いることはできない。また、太陽電池のバックシート、フロントシート等に用いた場合は、その導電性が太陽電池性能に影響を及ぼす恐れがあるので、例えば250μmのペットフィルム等でバリアフィルムを挟み込み絶縁性を持たせなければならない。
また、酸化アルミニウム、酸化珪素等のセラミック膜でガスバリア性能を担保させた場合、透明性保つことができる上、金属箔と違いペットフィルム等でバリアフィルムを挟み込み絶縁性を持たせる必要もない。しかし、屋外等の過酷な条件下に長期間曝した場合、高分子フィルムとセラミック膜との間で層間剥離が発生し包装体としての機能を損なう問題があり、さらには、セラミック膜そのもののガスバリア性能が保持されなければならず、屋外等で使用される高耐久性を有するガスバリア包装体を得るには鋭意工夫が求められる。
耐久性を付与するための手段の一つとして、従来から大気圧環境下において塗布方式による密着層を設ける試みがなされている。しかしながら、高分子フィルムと密着層との剥離を防ぐことができたとしても、セラミック膜そのもののガスバリア性能を保持させるためには更なる鋭意工夫が求められる。
セラミック膜そのもののガスバリア性能を保持させるために、従来から大気圧環境下において塗布方式による保護層を設ける試みがなされている。しかしながら、保護層にも限界がありセラミック膜の初期におけるガスバリア性能を向上させる工夫が必要とされる。
なお、ポリマー上にAl2O3膜を原子層堆積法により形成する技術は、下記非特許文献1および2に開示されている。
Gas Diffusion Barriers on Polymers Using Al2O3 Atomic Layer Deposition (2005 Society of Vacuum Coaters 505/856-7188) Plasma-Assisted Atomic Layer Deposition of Al2O3 on Polymers (2006 Society of Vacuum Coaters 505/856-7188)
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、密着性、ガスバリア性、耐久性を改善したガスバリアフィルムおよびその製造方法を提供することにある。
請求項1記載の発明は、基材の少なくとも片面に、表面がOH基で覆われかつ表面の算術平均粗さ(Ra)が3nm以下である密着層と、セラミック膜と、保護層とを、この順に設けてなることを特徴とするガスバリアフィルムである。
請求項2記載の発明は、前記基材が、高分子フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルムである。
請求項3記載の発明は、前記密着層の厚みが、10nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリアフィルムである。
請求項4記載の発明は、前記セラミック膜が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素のうちの1種類からなる膜、もしくはこれらの積層膜であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムである。
請求項5記載の発明は、前記保護層が、金属アルコキシドであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムである。
請求項6記載の発明は、基材の少なくとも片面に、表面がOH基で覆われかつ表面の算術平均粗さ(Ra)が3nm以下である密着層を塗布方式により形成する工程と、前記密着層の表面に、原子層堆積法によりセラミック膜を形成する工程と、前記セラミック膜の表面に、保護層を塗布方式により形成する工程とをこの順に具備することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法である。
請求項7記載の発明は、前記基材が、高分子フィルムであることを特徴とする請求項6に記載のガスバリアフィルムの製造方法である。
請求項8記載の発明は、前記密着層の厚みが、10nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項6または7に記載のガスバリアフィルムの製造方法である。
請求項9記載の発明は、前記セラミック膜が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素のうちの1種類からなる膜、もしくはこれらの積層膜であることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法である。
請求項10記載の発明は、前記保護層が、金属アルコキシドであることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法である。
請求項11記載の発明は、前記セラミック膜が、前駆体としてトリスジメチルアミノシラン、テトラクロロシラン、テトラエトキシシラン、ビスターシャリィブチルアミノシランのうちからいずれか1種類が選択され、反応剤として酸素、オゾン、水、過酸化水素、アンモニア、窒素、亜酸化窒素のうちから1種類のガスもしくはこれらの混合ガスを用い、パージガスとしてアルゴン、窒素のうちいずれか1種類のガスを用いて形成されることを特徴とする請求項6から10のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法である。
請求項12記載の発明は、前記セラミック膜を形成する工程が、減圧環境下で行われることを特徴とする請求項6から11のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法である。
請求項13記載の発明は、前記原子層堆積法が、プラズマを用いたプラズマ原子層堆積法であることを特徴とする請求項6から12のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法である。
請求項14記載の発明は、前記プラズマ原子層堆積法を用いる際、周波数13.56MHz以上の電源を用いることを特徴とする請求項13に記載のガスバリアフィルムの製造方法である。
上記発明によれば、密着性、ガスバリア性、耐久性を改善したガスバリアフィルムを提供することができる。
表面がOH基で覆われかつ表面の算術平均粗さ(Ra)が3nm以下である密着層を高分子フィルム上に形成することで、化学的な結合がより多く生じ、密着性を向上させるものと考えられる。
バリア性を向上させる作用としては、セラミック膜を原子層堆積法(ALD法)、好適にはプラズマ原子層堆積法(PEALD法)で形成することで、より密度の高い膜を形成することで可能になると考えられる。
耐久性を向上させる作用としては、好適には膨潤性能を有した保護層を形成することで、セラミック膜や、各界面に対する水蒸気等の浸透を鈍化させることで可能になると考えられる。
本発明のガスバリアフィルムの一実施形態の断面図である。
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のガスバリアフィルムを説明する断面図である。基材として高分子フィルム1上に密着層2、セラミック膜3、保護層4が順次形成された構成になっている。密着層2、セラミック膜3、保護層4は、基材の両面に形成してもよく、保護層4の上にさらに密着層2、セラミック膜3、保護層4を形成し、多層構成にしても良い。
高分子フィルム1は特に制限を受けるものではなく公知のものを使用することが出来る。例えば、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリアミド系(ナイロン―6、ナイロン―66等)、ポリスチレン、エチレンビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエーテルスルホン、アクリル、セルロース系(トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース等)等が挙げられるが特に限定されない。しかし、FPD用途に用いる場合は透明フィルムを用いる必要性がある。また、厚さに関しても特に制限を受けるものではなく、ガスバリアフィルムを形成する場合の耐熱性および加工性やハンドリング性を考慮すると、実用的には50〜125μmの範囲が好ましい。
高分子フィルム1上は、塗布方式で形成された密着層2の表面がOH基で覆われていることが望ましく、そうすることで、セラミック層を成膜する際使用する前駆体と密着層との反応基が増え、その後の成長における始発点を増やすことができるため、より高密度なセラミック膜を形成することが可能となると共に、密着性の向上も実現することができる。また、密着層2の表面における算術平均粗さ(Ra)は3nm以下であることが望ましく、これは表面の算術平均粗さ(Ra)が3nmを超える場合、例えば5nmを超える場合は、平滑でない表面にガスバリア層を形成することになり、均一な膜形成ができず、優れたガスバリア性が発現しないためである。さらには、原子層堆積法(ALD法)およびプラズマ原子層堆積法(PEALD法)は、従来シリコンウェハー上での成膜を目的として開発された成膜方法であり、高分子フィルム上に成膜する場合は、表面粗さや表面の化学状態といった表面状態を可能な限りシリコンウェハーに近づけることで、より高密度、高密着、高ガスバリア性能を有したセラミック膜を成膜することができる。
高分子フィルム1上に密着層2を形成する場合、塗布方式を用いることが有効である。塗布方式を用いることで、当初から高分子フィルム1上に存在している凸凹を埋めることが可能となる。塗布方式としては、ディップ、エアナイフ、ブレード、スピン、順転ロール、逆転ロール、グラビア、ロッド、マイクログラビア、エクストルージョン、カーテンが挙げられるが、より精密な塗工が可能なマイクログラビア方式または表面を制御しやすいディップ方式を用いることが好ましい。
高分子フィルム1上に塗布方式で形成された密着層2の厚み、およびセラミック膜3上塗布方式で形成された保護層4の厚みは、共に10〜1000nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。ただし、その厚さが10nm未満の場合は、均一な膜厚を得ることが困難であったり、膜厚が不十分なために要求通りの密着性や耐久性を得ることができなかったりすることがある。また、膜厚が1000nmを超える場合は、膜厚が厚すぎるために、密着層2の場合は高分子フィルム1との密着性が、保護層4の場合はセラミック膜3との密着性が得られない恐れがある。より好ましくは、密着層は50nm〜100nm、保護層は300nm〜500nm程度とすることである。
密着層2は複数層にしても差し支えない。表面を制御すると高分子フィルムとの密着が得られない場合があるので、密着層と表面制御層を積層することができる。密着させるための材料としてはアクリル、ウレタン、エポキシ樹脂等が挙げられる。
密着層2の表面を制御する方法としては疎水基と親水基を持った材料でディップコーティングによるLB(Langmuir−Blodgett)膜やグラビア、マイクログラビア塗工によるシラン化合物の塗工等が挙げられる。これにより、密着層の表面がOH基で覆われる。なお、これらの方法により層の表面をOH基で覆うことは、当業界で公知である。また、シラン化合物の場合は膜質に柔軟性を持たせるため、アクリル酸、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ウレタン化合物、ポリエステル化合物等を混合してもよい。
密着層2の表面にはコロナ処理やプラズマ処理、フレーム処理等表面官能基を生成させる処理を施して、密着層表面にOH基を導入してもよい。
密着層2の上に形成されたセラミック膜3は、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素のうちの1種類からなる膜、もしくはこれらの積層膜であることが望ましい。酸化アルミニウムや酸化チタニウム等と比較して耐久性に優れた膜を成膜することが出来る。
セラミック膜3を形成する方法としては種々在り、通常の原子層堆積法(ALD法)により形成することができる。また、その他の形成方法であるスパッタリング法、真空蒸着法、プラズマ化学的気相成長法(PECVD法)等を用いることも可能である。ただし、スパッタリング法では、膜厚が厚くなっていくに従い、膜の内部応力によるクラック等に起因するガスバリア性能の上げ留まりが生じてしまい、真空蒸着法は生産性に最も優れる反面優れたガスバリア性を発揮することが困難となってしまう。また、プラズマ化学的気相成長法(PECVD法)は、例えば、プラズマ励起用電源に13.56MHzの電源を用い、原料ガスにシラン、アンモニア、水素を用いることで、高性能なガスバリア膜を得ることができるが、装置の大型化や生産効率に難点がある。
原子層堆積法(ALD法)によりセラミック膜3を形成する際、前駆体としてトリスジメチルアミノシラン、テトラクロロシラン、テトラエトキシシラン、ビスターシャリィブチルアミノシランのうちからいずれか1種類が選択され、反応剤として酸素、オゾン、水、過酸化水素、アンモニア、窒素、亜酸化窒素のうちから1種類のガスもしくはこれらの混合ガスを用い、パージガスとしてアルゴン、窒素のうちいずれか1種類のガスを用いていることで、成膜時の温度を低温(例えば100℃以下)にすることができ、高分子フィルムへの成膜が可能となる。
原子層堆積法(ALD法)によりセラミック膜3を形成する際、減圧環境下で行うことで、不純物が交ざりにくく、成膜環境に適した状態を維持しやすくなり、より高密度なセラミック膜を形成することが可能となる。
原子層堆積法(ALD法)によりセラミック膜3を形成する際、プラズマ原子層堆積法(PEALD法)を用いることで、高分子フィルム上に形成された前駆体の酸化および窒化反応を促進することができる。また、一部の前駆体ではプラズマを用いた場合でのみ酸化および窒化反応を実現することができる。
プラズマ原子層堆積法(PEALD法)でセラミック膜3を形成する場合、周波数13.56MHz以上の電源を用いてガスを励起させることで、13.56MHz未満の電源を用いて励起させた場合を比較して、より高密度な酸素ラジカルおよび、窒素ラジカルを生じさせることが可能であり、酸化および窒化反応をより促進させることができる。装置の大型化や実用性等を考慮すると、13.56MHzの電源を用いたICP(InductivelyCoupledPlasma)モードでの放電が望ましい。
セラミック膜3の上に保護層4を設けることで、ガスバリアフィルムの耐久性を向上させることが可能となる。これは、保護層を設けることで、ハンドリング時等に受けるダメージを緩和することができるためと考えられる。また、成膜時に生じるダングリングボンド等の化学的欠陥や、クラック等の物理的欠陥に保護層が浸透することで、ガスバリア性能の向上も実現する。
セラミック膜3上に保護層4を形成する場合、塗布方式を用いることが有効である。塗布方式を用いることで、成膜時に生じるダングリングボンド等の化学的欠陥や、クラック等の物理的欠陥を埋めることが可能となる。塗布方式としては、ディップ、エアナイフ、ブレード、スピン、順転ロール、逆転ロール、グラビア、ロッド、マイクログラビア、エクストルージョン、カーテンが挙げられるが、より精密な塗工が可能なマイクログラビア方式を用いることが好ましい。
セラミック膜3上に形成された保護層4が膨潤性能を有することで、ガスバリアフィルム表面から各界面に対する水蒸気等の浸透を鈍化させることが可能になると考えられ、更なる高ガスバリア性能の実現や密着性能の維持、耐久性の向上が期待できる。
保護層はセラミックとの密着性が良好な金属アルコキシドまたはその加水分解物を用いる塗布膜を設けることが望ましい。具体的には一般式R(M−OR)(ただしR、Rは炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子)で表されるものであり、金属原子としてはSi、Ti、Al、Zr等を挙げることができる。金属アルコキシドを用いることにより、膨潤性能を有する保護層を形成することができる。
金属MがSiであるR(Si−OR)としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等を挙げることができる。
金属MがZrであるR(Zr−OR)としては、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等を挙げることができる。
金属MがTiであるR(Ti−OR)としては、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラブトキシチタニウム等を挙げることができる。
金属MがAlであるR(Al−OR)としては、テトラメトキシアルミニウム、テトラエトキシアルミニウム、テトライソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシアルミニウム等を挙げることができる。
上記金属アルコキシドは1種類のみ用いても2種以上混合して用いても差し支えない。また、アクリル酸やポリビニルアルコール、ウレタン化合物、ポリエステル化合物を混合してもよいが、膨潤性の材料を混合することが望ましい。
以下、本発明の実施例を比較例とともに具体的に説明する。
<実施例1>
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にマイクログラビア方式で密着層を形成したのち、プラズマ原子層堆積法(PEALD法)により酸化珪素膜を形成し、最後にマイクログラビア方式で保護層を形成した。密着層、保護層の厚さはそれぞれ50nm、300nmとし、酸化珪素膜の厚みは20nmとした。酸化珪素膜を形成する際、前駆体としてはトリスジメチルアミノシランを、反応剤兼プラズマ放電ガスには酸素を、パージガスにはアルゴンをそれぞれ用いた。なおその際、それぞれのガスは独立した供給管より、成膜室に導入し、その際の処理圧力は100Paとした。プラズマガス励起用電源には13.56MHzの電源を用い、ICP(InductivelyCoupledPlasma)モードでの放電を用いた。また、成膜温度は90℃とした。
なお、密着層の塗布の際には、材料としてアクリル樹脂とテトラエトキシシランの加水分解物を用い、保護層の塗布の際には、材料としてテトラエトキシシランの加水分解物を用いた。
<比較例1>
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にプラズマ原子層堆積法(PEALD法)により酸化珪素膜のみを形成した。酸化珪素膜は実施例1と同じ条件で成膜した。
<比較例2>
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にマイクログラビア方式で密着層を形成したのち、プラズマ原子層堆積法(PEALD法)により酸化珪素膜を形成した。
保護層を形成しなかった以外は実施例1と同じ条件で成膜した。
<評価1 ガスバリア性>
本発明品のガスバリア性を水蒸気透過度測定装置(モダンコントロール社製 MOCON AQUATRAN 40℃90%RH雰囲気)を用い測定した。その結果、ガスバリア性は、実施例>比較例2>比較例1となった。その結果を表1に示す。
<評価2 耐久性、密着性>
本発明品の耐久性を測定するため、48時間のプレシャークッカー試験(PCT)後の密着性を、テンシロン万能試験機(ORIENTEC社製 RTC−1250)を用い測定した。その結果、ガスバリア性能は、実施例>比較例2>比較例1となり、密着性は実施例≒比較例2>比較例1となったその結果をそれぞれ表1に示す。
Figure 2011173261
<評価3 密着層膜質>
本発明品の密着層における膜質を評価するため、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製 FT−IR)赤外線で測定した。その結果OH基に起因するピークが最も強く確認され、その他のピークはほとんど確認されなかった。
<評価4 密着層表面粗さ>
本発明品の密着層における表面粗さを評価するため、原子間力顕微鏡(Veeco社製 AFM)で測定した。その結果、算術平均粗さ(Ra)は1.9nmだった。
本発明におけるガスバリアフィルムの産業上の利用可能性としては、電子ペーパー、LCD、有機ELや太陽電池のバックシート、フロントシート等に用いられるガスバリアフィルムが挙げられる。
1 高分子フィルム、2 密着層、3 セラミック膜、4 保護層。

Claims (14)

  1. 基材の少なくとも片面に、表面がOH基で覆われかつ表面の算術平均粗さ(Ra)が3nm以下である密着層と、セラミック膜と、保護層とを、この順に設けてなることを特徴とするガスバリアフィルム。
  2. 前記基材が、高分子フィルムであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
  3. 前記密着層の厚みが、10nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
  4. 前記セラミック膜が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素のうちの1種類からなる膜、もしくはこれらの積層膜であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
  5. 前記保護層が、金属アルコキシドであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
  6. 基材の少なくとも片面に、表面がOH基で覆われかつ表面の算術平均粗さ(Ra)が3nm以下である密着層を塗布方式により形成する工程と、
    前記密着層の表面に、原子層堆積法によりセラミック膜を形成する工程と、
    前記セラミック膜の表面に、保護層を塗布方式により形成する工程と
    をこの順に具備することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
  7. 前記基材が、高分子フィルムであることを特徴とする請求項6に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  8. 前記密着層の厚みが、10nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項6または7に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  9. 前記セラミック膜が、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素のうちの1種類からなる膜、もしくはこれらの積層膜であることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  10. 前記保護層が、金属アルコキシドであることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  11. 前記セラミック膜が、前駆体としてトリスジメチルアミノシラン、テトラクロロシラン、テトラエトキシシラン、ビスターシャリィブチルアミノシランのうちからいずれか1種類が選択され、反応剤として酸素、オゾン、水、過酸化水素、アンモニア、窒素、亜酸化窒素のうちから1種類のガスもしくはこれらの混合ガスを用い、パージガスとしてアルゴン、窒素のうちいずれか1種類のガスを用いて形成されることを特徴とする請求項6から10のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  12. 前記セラミック膜を形成する工程が、減圧環境下で行われることを特徴とする請求項6から11のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  13. 前記原子層堆積法が、プラズマを用いたプラズマ原子層堆積法であることを特徴とする請求項6から12のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
  14. 前記プラズマ原子層堆積法を用いる際、周波数13.56MHz以上の電源を用いることを特徴とする請求項13に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
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