JP2011029198A - 伸縮電線及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】伸縮に大きな力(エネルギーロス)を要さず、駆動電力用の大きな電流を流すことができる、小荷重での伸縮性と小さな電気抵抗を有する伸縮電線を提供すること。
【解決手段】少なくとも、芯部、導体部及び被覆部からなる構造を有し、該芯部が弾性体とその外周を被覆する中間層とからなる弾性円筒体であり、該導体部が細線の集合線からなる導体線を含み、かつ該導体線が該弾性円筒体の外周に捲回および/または編組されており、該被覆部が該導体部の外周を被覆する絶縁体からなる外部被覆層であることを特徴とする伸縮電線。
【選択図】図1

Description

本発明は、ロボット分野を初めとするあらゆる工業分野で有用な伸縮電線に関し、特にヒューマノイドロボットおよび工業用ロボットに有用な伸縮電線に関する。
電線は、一般的には銅線を芯にし、その外周が絶縁体で被覆された構造になっており、伸縮性がない。伸縮性のあるものの代表例としては、固定電話機などに用いられているカールコードが挙げられるが、一般的に太くて重い。
一方、伸縮電線に関する技術として、特公昭64−3967号公報には、弾性長繊維を芯にし、その周りに金属線を捲回する方法が開示されている。この特公昭64−3967号公報には、弾性長繊維の換算直径(Ld)と金属線の換算直径(Lm)の関係はLd/Lm≧3を満足する必要があり(換算直径の定義および算出方法については後述する)、この範囲を逸脱すると伸縮性が発現しないか安定なループの形成ができず、満足な伸縮線を得ることができないと記載されている。
また特許第3585465号公報には、弾性長繊維のまわりに金属線を編組し、その外周に絶縁繊維を編組して被覆する技術が開示されている。その用途として、この伸縮コードを用いて、ヘッドホン等の電気信号の伝送が行えることが記載されている。即ち、微弱電流の伝送を行うものである。詳しく内容をみると、直径0.8mm程度の弾性長繊維に、直径0.06mm程度の金属線を用いて編組することが例示されている。何本の金属線を用いて編組したかは開示されていないが、この特許公報中の図を参考にして16本使用された場合で計算すると、金属線の換算直径は0.24mmとなり、弾性長繊維の換算直径と金属線の換算直径の関係(Ld/Lm)は、Ld/Lm=0.8/0.24=3.3となり、3を超えていることがわかる。
更に特開2004−134313号公報には、伸縮自在な芯材の外周に導電線を螺旋状に巻き付けたものを複数本纏めて紐状に被覆する技術が開示されている。この特許公報の開示例によると、840デニールのポリウレタン弾性長繊維に直径0.03mmのエナメル線を複数本撚ってなる導電線を螺旋状に巻き付けると記載されている。840デニールのポリウレタン弾性長繊維の換算直径は、ポリウレタンの比重を1.2とするとLd=0.03mmとなる。そして、直径0.03mmのエナメル線が9本使用されたと仮定するとエナメル線の換算直径は0.09mmとなり、この特許公報でも弾性長繊維の換算直径Ldと金属線の換算直径Lmの関係は、Ld/Lm=0.32/0.09=3.6となり、3を超えていることが分かる。また、この特許公報の発明の目的は様々な信号線に適用できる伸縮電線と記載されており、微弱電流を取り扱う伸縮電線であることが分かる。
これらの特許公報で開示されている技術はいずれも、実質的に弾性長繊維に直接導体線が捲回されており、Ld/Lm≧3を満足しない限り、導体線の剛性に対して伸縮性を発現させることができないか、もしくは、弾性長繊維が捲回時張力に抗しきれずに、安定に捲回できなかったり、均質なループ形態を形成できないという問題があった。弾性長繊維に絶縁繊維を被覆する技術も開示されているが、この被覆は金属線の切断を防ぐための補強を目的としており、捲回径を大きくする目的でなされたものではない。
一方、電力用配線に求められる必須要件は、抵抗が小さく、大きな電流を流しても発熱が少ないことである。抵抗値は、素材が決まると断面積に反比例する関係にあり、電力用の伸縮電線をつくるためには大きな断面積の導体線を用いることが必要となる。
上記特公昭64−3967号公報に開示の技術に従って作製することで、所望の電流を流すことが可能な伸縮電線を作ることができる。しかしながら、大きな電流を流すためには、換算直径の大きな導体線を用いる必要があり、最も汎用的な導体線である銅線を用いた場合でも、Ld/Lm≧3を満足させる必要があり、換算直径の大きな弾性長繊維を用いることが必須であった。
換算直径の大きな弾性長繊維は、その断面積が大きく強い弾性を発現するために、このような弾性長繊維からは強い力で引っ張らないと伸びることができない伸縮電線しか得られなかった。
一方、近年、ロボットの発展が著しく、多彩な動きをするロボットが登場しつつある。これらのロボットの配線は、大きく余裕を持たせて配線する必要があり、このことが装置設計上及び実用上障害となるケースが多い。
また、最先端のヒューマノイドロボットにおいては、多自由度関節を経由して末端のモータを動かすためのパワー電流の配線を行っており、多自由度関節における配線の自由度を高めたいというニーズがある。
さらに、工業用ロボットにおいても、ロボットハンドなどの開発が盛んで、小さな電流はもとより、末端のモータを動かすための大きな電流を流すことができ、工場での高温環境下でも長期に使用できる耐熱性の伸縮電線が求められている。
伸縮性の電線やコードは、上記の特許公報以外に、例えば特開2002−313145号公報および特開昭61−290603号公報にも開示されている。さらには、電気伝導性弾性複合糸として特表2006−524758号公報には弾性繊維と金属線の複合技術が開示されている。これらはいずれも、ポリウレタン弾性繊維に代表される有機弾性繊維を用いた技術であり、室温環境下で微弱電流を流す用途に適したものであった。
他方、工業用ロボットケーブルに関しては、屈曲性を高めることを目的として、巻き癖に関する実公昭63−30096号公報、銅線の組成および屈曲性と強度に関する特公平3−25494号公報、ポリエーテルまたはポリカーボネート系ポリウレタンエラストマー被覆に関する特開平5−47237号公報、およびポリアミド/ポリウレタンからなる多芯撚り線に関する特許第3296750号公報などの技術があるが、伸縮性は無く、多彩な動きをするロボットの関節部の配線に対しては満足できるものではなかった。
特公昭64−3967号公報 特許第3585465号公報 特開2004−134313号公報 特開2002−313145号公報 特開昭61−290603号公報 特表2006−524758号公報 実公昭63−30096号公報 特公平3−25494号公報 特開平5−47237号公報 特許第3296750号公報
本発明の目的は、伸縮に大きな力(エネルギーロス)を要さず、駆動電力用の大きな電流を流すことができる、小荷重での伸縮性と小さな電気抵抗を有する伸縮電線を提供することである。
本発明者は、小荷重での伸縮性と小さな電気抵抗を有する伸縮電線を得るために鋭意検討した結果、少なくとも、芯部、導体部及び被覆部からなる構造を有し、該芯部が弾性体とその外周を被覆する中間層とからなる弾性円筒体であり、該導体部が細線の集合線からなる導体線を含み、かつ該導体線が該弾性円筒体の外周に捲回および/または編組されており、該被覆部が該導体部の外周を被覆する絶縁体からなる外部被覆層であることを特徴とする伸縮電線が、伸縮に大きな力(エネルギーロス)を要さず、駆動電力用の大きな電流を流すことができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は以下のとおりである。
(1)少なくとも、芯部、導体部及び被覆部からなる構造を有し、該芯部が弾性体とその外周を被覆する中間層とからなる弾性円筒体であり、該導体部が細線の集合線からなる導体線を含み、かつ該導体線が該弾性円筒体の外周に捲回および/または編組されており、該被覆部が該導体部の外周を被覆する絶縁体からなる外部被覆層であることを特徴とする伸縮電線。
(2)弾性体が伸度100%以上の弾性長繊維または伸度50%以上のコイルバネであることを特徴とする上記1項に記載の伸縮電線。
(3)中間層の厚さが0.1Ld(Ld:弾性長繊維の換算直径またはコイルバネの外径)または0.1mmのいずれか小さい方から10mmの範囲であることを特徴とする上記1または2項に記載の伸縮電線。
(4)弾性円筒体の50%伸長応力が1〜500cN/mm2であることを特徴とする上記1〜3項のいずれか一項に記載の伸縮電線。
(5)導体線が、比抵抗が10-4Ω×cm以下の電気伝導体からなることを特徴とする上記1〜4項のいずれか一項に記載の伸縮電線。
(6)細線の直径(Lt)が1mm以下であることを特徴とする上記1〜5項のいずれか一項に記載の伸縮電線。
(7)導体線が銅またはアルミニウムを80%以上含有することを特徴とする上記1〜6項のいずれか一項に記載の伸縮電線。
(8)導体線が細線毎に厚さ1mm以下の絶縁性被覆層を有するか、または、集合線全体として厚さ2mm以下の絶縁性被覆層を有することを特徴とする上記1〜7項のいずれか一項に記載の伸縮電線。
(9)導体線が、芯部に一体化するための一体化層を有し、該一体化層が伸度50%以上の弾性体からなることを特徴とする上記1〜8項のいずれか一項に記載の伸縮電線。
(10)30%伸張荷重が5000cN以下であることを特徴とする上記1〜9項のいずれか一項に記載の伸縮電線。
(11)導体部が複数の導体線からなることを特徴とする上記1〜10項のいずれか一項に記載の伸縮電線。
(12)1本の導体線の電気抵抗が弛緩時に10Ω/m以下であることを特徴とする上記1〜11項のいずれか一項に記載の伸縮電線。
(13)少なくとも、芯部、導体部及び被覆部からなる構造を有し、該芯部が弾性体とその外周を被覆する中間層とからなる弾性円筒体であり、該導体部が細線の集合線からなる導体線を含み、かつ該導体線が該弾性円筒体の外周に捲回および/または編組されており、該被覆部が該導体部の外周を被覆する絶縁体からなる外部被覆層であることを特徴とする伸縮電線の製造方法であって、下記の各工程からなることを特徴とする伸縮電線の製造方法。
1)該弾性体を伸張した状態で、その外周に絶縁繊維を編組および/または捲回することによって、該弾性円筒体を形成する工程、
2)得られた該弾性円筒体を伸張した状態で、その外周に該導体線を捲回および/または編組することによって、該導体部を形成する工程、および
3)得られた該弾性円筒体及び該導体部からなる構造体又は更に一体化処理がなされた該構造体を伸張した状態で、その外周に絶縁繊維を編組および/または絶縁樹脂を被覆することによって、該外部被覆層を形成する工程。
(14)上記1〜12項のいずれか一項に記載の伸縮電線の複数本を伸張した状態で、まとめて1本の細幅弾性テープ形状としたことを特徴とする細幅弾性テープ形状の伸縮電線。
本発明の伸縮電線は、30%伸張時の荷重が5000cN以下であり、電気抵抗が10Ω/m以下であるから、伸縮に大きな力(エネルギーロス)を要さず、駆動電力用の大電流を流すことができ、実用に適した伸縮電線である。従って、本発明の伸縮電線は特にロボット分野での使用に最適である。
弾性体に弾性長繊維を用いた場合の本発明の伸縮電線を説明する図である。 弾性体に弾性長繊維を用いた場合の本発明の伸縮電線の横断面の模式図である。 弾性体にコイルバネを用いた場合の本発明の伸縮電線を説明する図である。 弾性体にコイルバネを用いた場合の本発明の伸縮電線の横断面の模式図である。 捲回角度を説明するための図である。 繰り返し伸張性測定装置の模式図である。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の伸縮電線は、図1および図2に示すように、弾性長繊維の外層に配置された伸縮性の中間層を有する弾性円筒体に、細線の集合線からなる導体線を捲回および/または編組してなるか、または、図3および図4に示すようにコイルバネの外層に配置された伸縮性の中間層を有する弾性円筒体に、細線の集合線からなる導体線を捲回および/または編組してなることを基本構造としている。なお、これらの図において、1は弾性長繊維であり、2は中間層であり、3は導体線であり、4は外部被覆層であり、6は弾性円筒体であり、10はコイルバネである。また、図1および3では最外周の絶縁繊維を被覆してなる外部被覆層は図示していない。
本発明で用いる名称と記号を次のように定める。
(1)Ld(mm):弾性長繊維の換算直径またはコイルバネの外径
(2)Lc(mm):中間層の厚み
(3)Lm(mm):導体線の換算直径
(4)Lt(mm):細線(導体単線)の直径
なお、換算直径の定義と算出方法は後述する。
本発明の伸縮電線は、少なくとも芯部、導体部および被覆部を有している。
芯部は、弾性体とその外周を被覆する中間層からなる弾性円筒体であることが重要である。
弾性体には、100%以上の伸度を持つ弾性長繊維または50%以上の伸度を持つコイルバネを用いることができる。
弾性体として用いる弾性長繊維は、100%以上の伸度を有することが好ましい。伸度が100%未満の場合は、伸縮性能が乏しく、低い応力で伸び縮みする伸縮電線を作ることが困難となる。300%以上の伸度の弾性長繊維を用いることがさらに好ましい。
本発明で用いる弾性長繊維は、伸度100%以上で伸縮性に富むものであればよく、ポリマーの種類は特に限定されない。例えば、ポリウレタン系弾性長繊維、ポリオレフィン系弾性長繊維、ポリエステル系弾性長繊維、ポリアミド系弾性長繊維、天然ゴム系弾性長繊維、合成ゴム系弾性長繊維および天然ゴムと合成ゴムの複合ゴム系弾性長繊維等をあげることができる。
ポリウレタン系弾性長繊維は、伸びが大きく、耐久性にもすぐれるため本発明の弾性長繊維として最適である。
天然ゴム系長繊維は、断面積あたりの応力が他の弾性長繊維に対比して小さく、中間層を薄くすることができ、目標の弾性円筒体を得やすいという利点がある。しかし、劣化しやすいため、長期にわたり伸縮性を保持することが難しい。従って、短期の使用を目的とする用途に好適である。
合成ゴム系弾性長繊維は、耐久性にはすぐれるが、伸びの大きな物が得にくい。従って、あまり大きな伸びを要求しない用途に好適である。
弾性長繊維は、モノフィラメントでもマルチフィラメントでも良い。
弾性長繊維の換算直径(Ld)は0.01〜10mmの範囲が好ましい。より好ましくは0.02〜5mmである。さらに好ましくは0.03〜3mmである。Ldが0.01mm以下の場合、伸縮性が得られず、Ldが10mmを超えると、伸張させるのに大きな力が必要となる。
弾性長繊維をあらかじめ、双糸もしくは多子撚りとしたもの、または、弾性長繊維を芯にしてその回りに別の弾性長繊維を捲回したものとすることで、厚みの大きい中間層と弾性長繊維との一体化(弾性長繊維と中間層が別々に動かないようにすること)を容易にすることができる。
本発明において弾性体として用いるコイルバネは、金属からなることが好ましい。金属のコイルバネは高温下でも劣化せず、高温環境下で使用される用途に適する。金属以外のコイルバネを用いることもできるが、金属のコイルバネに比較して、繰り返し変形や耐熱性の点で劣る。コイル形状のバネは、コイリングマシーンの選定と選定したコイリングマシーンの条件設定で任意に設計できる。
コイル直径Dと伸線(コイルを形成する線材のこと)直径dが24>D/d>4であることが好ましい。D/dが24以上の場合は、安定な形態のバネが得られず、変形しやすく好ましくない。好ましくはD/dが、16以下である。一方D/dが4以下では、コイルを形成することが困難となると同時に、伸縮性が発現しにくい。好ましくは6以上である。
伸線の直径dは3mm以下であることが好ましい。3mm以上となると、バネが重くなり、伸縮応力もコイル直径も大きくなるため好ましくない。一方、伸線の直径が0.01mm以下となると、形成できるバネが弱すぎて、横から力が加わると変形しやすく、実用的ではない。
コイルのピッチ間隔は1/2D以下であることが望ましい。これ以上の間隔であってもコイル状のバネを形成することはできるが、コイル外周への中間層の形成が困難となる。さらに、伸縮性が低下するとともに、外力により変形しやすくなるので好ましくない。好ましくは1/10D以下である。
ピッチ間隔をほぼゼロとしたものは、伸縮性を最も高くすることができ、バネそのものがからまりにくく、巻き取ったバネを引き出しやすいという特徴があり、外力による変形にも強いという利点があり、好ましい。
コイルバネの外径(Ld)は0.02〜30mmの範囲が好ましい。より好ましくは0.05〜20mmであり、さらに好ましくは0.1〜10mmである。外径が0.02mm以下のコイルバネは製造が困難であり、30mmを越えると、伸縮電線の外径が大きくなりすぎ、好ましくない。
コイルバネの材料は、公知の伸線から任意に選ぶことができる。線材の材料は、ピアノ線、硬鋼線、ステンレス鋼線、オイルテンパー線、燐青銅線、ベリウム銅線および洋白線などがある。耐食性および耐熱性に優れ、かつ入手しやすい点から、ステンレス鋼線が望ましい。
連続したコイル形状のバネは、伸線をコイリングマシーンにてコイリングを行い、必要に応じて焼き入れ及び冷却を行うことによって得ることができる。
巻き取ったコイルバネを次の工程で使用するときに、コイルが重なりあうことがあり、引出しづらい場合がある。このような場合は、コイルバネに細幅テープを重ねて巻き取ることにより容易に対応できる。
弾性体として弾性長繊維またはコイルバネのいずれを用いた場合も、弾性体の周囲に絶縁繊維からなる中間層と呼ぶ層を有することが必要である。
中間層を形成することで、導体線の捲回直径を大きくすることができ、太い導体線を捲回できるようにすることができる。また、弾性体としてコイルバネを用いる場合は、コイルの隙間に導体線が挟まることを防ぐことができ、導体線を捲回することが可能となる。
いずれの場合も、中間層を形成した状態での弾性円筒体として、50%伸張応力が1〜500cN/mm2であることが好ましく、より好ましくは1〜200cN/mm2である。さらに好ましくは5〜100cN/mm2であり、特に好ましくは10〜50cN/mm2である。50%伸張応力が、この範囲にあると、小応力での伸縮性が良好であり、1cN/mm2以下の場合は、伸縮性が発現しにくく、500cN/mm2を超えると、伸張させるために、大きな力が必要となり実用上好ましくない。
中間層を構成する絶縁繊維(以後、絶縁繊維Iと言う)は、マルチフィラメントでも紡績糸でもよい。弾性長繊維の伸縮性を阻害しにくく、絶縁性があれば、伸縮電線の用途や使用条件に応じて公知のものから任意に選ぶことができる。軽くバルキー性があるという観点からは、バルキー性マルチフィラメント(例えばウーリーナイロンやエステルウーリー)、各種バルキー加工糸(例えば仮撚り加工糸やアクリルバルキーヤーン)および各種紡績糸(例えばエステル紡績糸)が挙げられる。軽さを追求する場合には、ポリエチレン繊維またはポリプロピレン繊維を用いることもできる。難燃性を重視する場合は、サラン繊維、フッ素繊維、耐炎化アクリル繊維、ポリスルホン繊維、または難燃加工された難燃ポリエステル繊維、難燃ナイロン繊維または難燃アクリル繊維などを用いることもできる。価格を優先する場合は、汎用のポリエステル繊維、ナイロン繊維またはアクリル繊維などを用いることもできる。
弾性体としてコイルバネを用いる場合は、絶縁繊維Iは、コイルバネと導体線の間にあるので、磨耗性に優れた素材が好ましい。耐熱性が高く、磨耗性にも優れている点から、フッ素繊維を用いることが好ましい。しかし、これに限定されるものではなく、実用上は、用途に応じて、実用性能及び価格を考慮し、上記の絶縁繊維から任意に選ぶことができる。
例えば、耐熱性に優れるものとして、アラミド繊維およびポリフェニレンサルファイド繊維が挙げられる。汎用性を重視する場合は、ナイロン繊維とポリエステル繊維が挙げられる。耐火性を求める場合は、ガラス繊維、無機繊維、フッ素繊維、耐炎化アクリルおよびサラン繊維を挙げることができる。
また、弾性体としてコイルバネを用いる場合は、上記絶縁繊維Iからなる芯部編組被覆はバルキー性があることが好ましい。編組被覆の内側と外側の双方が、硬い材質(金属)で構成されるため、緩衝材としての役目を果たす。また、バルキー性を持つ編組被覆は、その上に捲回する導体線をずれにくくする効果も得ることができる。
バルキー性を持つ編組被覆は、バルキー性のあるマルチフィラメント又は紡績糸を用い、締付けすぎることのないように編組することにより得られる。あまり粗い編み組では、被覆が不十分となり好ましくない。
バルキー性のあるマルチフィラメント又は紡績糸は、公知の方法により得ることができる。例えば、マルチフィラメントを1種類以上引きそろえ、仮撚り加工するか、コンジュゲート糸のマルチフィラメントを用いることもできる。また、紡績糸においては、1種類以上の短繊維を混合して紡績することで、バルキー性が得られる。特に、熱収縮率の異なる短繊維を混合し、紡績し、熱処理することにより、バルキー性の高い紡績糸を得ることができる。
汎用性があり、耐磨耗性およびバルキー性が良好な絶縁繊維としては、ウーリーナイロンやエステルウーリー糸があげられる。また、耐磨耗性に優れる絶縁繊維とバルキー性のある絶縁繊維を組み合わせる(混合紡績するか、合糸するか、多重に被覆する)こともできる。
中間層は、その厚みLcが、10mm>Lc≧0.1Ldまたは0.1mmのいずれか小さい方の範囲であることが必要である。好ましくは10mm>Lc≧0.3Ldまたは0.1mmのいずれか小さい方の範囲である。伸縮性を阻害せずにこの範囲の厚みを確保できれば、中間層の製造方法は特に限定されるものではない。中間層の厚みは10mm未満が望ましく、これ以上の厚みを持たせると、最終的に出来上がった伸縮電線の外径が大きくなり、太い電線となり実用上好ましくない。また、中間層の厚みが0.1Ldまたは0.1mmのいずれか小さい方より小さくなると、導体線の捲回径を大きくする効果が乏しく、換算直径の大きな導体線を捲回することが困難となる。
中間層は、弾性長繊維またはコイルバネを伸張した状態で、好ましくは50%以上伸張した状態で、これを芯にして組み紐状の絶縁繊維で1回以上被覆して中間層を形成するか、絶縁繊維のフィラメントまたは紡績糸を2回以上捲回して中間層を形成するか、又は、絶縁繊維のフィラメントまたは紡績糸を1回以上捲回した後、さらに組み紐状の絶縁繊維で1回以上被覆して中間層を形成することにより、得ることができる。
この時、弾性体にあらかじめ中間層を形成して弾性円筒体を得た後、当該弾性円筒体を改めて伸張して導体線を捲回および/または編組することが望ましい。従来の技術では、いわゆるダブルカバー糸として、先に絶縁繊維を捲回し、引き続いてすぐに金属線を捲回する例が開示されているが、この場合は、金属線の捲回張力に対して十分な抗力が得られず、安定に捲回できなかったり、均質なループ形態を形成できないという問題がある。
本発明は、一旦中間層を形成し、弾性円筒体とした後、当該弾性円筒体を伸張して、導体線を捲回することで、導体線の捲回直径を大きくでき、かつ、導体線の捲回張力に対し、中間層も抗力を発現することができ、従来技術では不可能とされてきた、Ld/Lm<3の領域においても、安定した捲回を実現することができることを見出したものである。
中間層として大きな厚みを得るためには一般に絶縁繊維として太い糸を用いることが考えられるが、単純に太い糸を用いるだけでは、伸縮性が発現しにくいか、または、弾性体と中間層の動きが連動しにくくなる現象が起こりやすい。これを防止するためには、あらかじめ絶縁繊維によってカバーリングされた弾性長繊維を用いる方法や、複数回編組を行なって被覆する方法がある。さらに好ましくは、弾性長繊維そのものをあらかじめ双糸や、3子撚りまたは4子撚りなどの多子撚りをしたものを用いることが有効である。これは、撚りにより弾性長繊維が膨らみ、紐状の被覆を行なった場合に伸縮による紐状の内部空間の体積変化を吸収する効果があり、安定した伸縮形態を確保しやすくなるからである。
また、弾性長繊維に別の弾性長繊維を予め捲回することも有効である。弾性長繊維に別の弾性長繊維を捲回したものは、一体化した弾性体として動き、上記と同様な効果が得られる。
中間層は、上記に限定されるものではなく、他の方法でも作ることができるが、実質上円筒状であることが好ましい。いずれの場合も弾性円筒体として50%伸張応力が1〜500cN/mm2であることが好ましい。
中間層が形成された弾性円筒体の伸度は、50%以上が好ましく、100%以上であるとさらに好ましい。伸度が50%未満と低い場合は、導体線及び外部被覆層での被覆により伸びが低下し伸縮性の低い伸縮電線になる。伸度は大きいほうが好ましいが、中間層を形成することで300%以下に留まることが多い。
弾性円筒体の50%伸張応力は1〜500cN/mm2となるように設計することが重要である。1〜200cN/mm2となるように設計することがさらに好ましい。さらに好ましくは5〜100cN/mm2であり、特に好ましくは10〜50cN/mm2である。伸張応力がこのような範囲にあると、低応力で伸縮ができ、小抵抗の伸縮電線を得ることができる。
導体線は、少なくとも2本以上の細線の集合線であることが必要である。細線の集合線とすることで、導体線の柔軟性が高まり、伸縮性を阻害しにくくなる。また、実用時に断線しにくくなる。
細線を集合させるには様々な方法が知られており、本発明においても公知のどのような方法で集合させてもよい。しかし、ストレートにひきそろえるだけでは捲回しづらいため、撚り線とすることが好ましい。また、可撓性を発揮するために、集合線を絶縁繊維で捲回したものを用いることもできる。
導体線を構成する細線の単線直径Ltは1mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1mm以下であり、特に好ましくは0.08mm以下であり、最も好ましくは0.05mm以下である。単線直径が1mmを超えると、伸縮性を阻害し、かつ、伸縮により断線しやすくなる。あまり細すぎると加工時に断線し易いため、0.01mm以上が好ましい。
導体線の捲回または編組角度(以後、捲回角度で代表する)は、30度以上80度以下の範囲が好適である。捲回角度が30度未満の場合は伸縮性が発現しにくい。35度以上であればさらに好ましく、40度以上であれば特に好ましい。50度以上であれば最も好ましい。80度を超えると、単位長さあたりに捲回する導体線の長さが長くなり好ましくない。75度以下であればさらに好ましく、70度以下であれば特に好ましい。
本発明において捲回角度とは、図5に示したように、弾性円筒体の長さ方向に対する捲回または編組された導体線の角度θをいう。通常、弛緩状態での角度をいう。捲回角度は、弛緩状態で試料長20cmを切りとり、捲回されている導体線をほどいて、その長さを測定し、逆三角関数を用いて求める。なお、導体線捲回時(弾性円筒体は所定の伸張状態にある)の捲回角度を本明細書では捲回時捲回角度という。
導体線は、比抵抗が10-4Ω×cm以下であることが必要で、これを超える場合は、電気抵抗値を低くするために、大きな断面積の導体線を用いる必要が生じ、実用に適さない。好ましくは10-5Ω×cm以下である。
導体線は80wt%以上が銅からなる銅線、または80%以上がアルミニウムからなるアルミニウム線であることが望ましい。銅線は、比較的安価で電気抵抗が低いので、最も好ましい。アルミニウム線は軽量であるから、銅線に続いて好ましい。銅線は軟銅線または錫銅合金線が一般的であるが、導電性をあまり低下させずに、強力を高めた強力銅合金(例えば、無酸素銅に鉄、燐およびインジウム等を添加したもの)、錫、金、銀または白金などでメッキして酸化を防止したもの、電気信号の伝送特性を向上させるために金その他の元素で表面処理したものなどを用いることもできる。
導体線を構成する各々の細線は絶縁体で被覆されているものを用いることもできる。本発明の伸縮電線は導体線を外気から完全に遮断した構造にはなっておらず、細線に裸線を用いると、導体線表面が酸化され、劣化しやすい。従って、細線そのものが、あらかじめ絶縁性の樹脂で被覆されていることが好ましい。
細線の集合線をまとめて絶縁樹脂で被覆したものを用いることもできる。
絶縁被覆された集合線が、柔軟であり、かつ外径が小さいことが重要である。そのために、樹脂被覆は、各細線に被覆する場合は厚み1mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.1mm以下である。集合線としてまとめて絶縁被覆をする場合は厚み2mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは1mm以下である。樹脂被覆の種類は、公知の絶縁樹脂被覆から、上記の趣旨に沿ったものを任意に選ぶことができる。
各細線にあらかじめ樹脂被覆を行う場合は、例えば一般のマグネットワイヤーで用いられるいわゆるエナメル被覆として、ポリウレタン被覆、ポリウレタン−ナイロン被覆、ポリエステル被覆、ポリエステルーナイロン被覆、ポリエステルーイミド被覆およびポリエステルイミド・ポリアミドイミド被覆等が挙げられる。
また、集合線としてから樹脂被覆を行う場合は、塩ビ樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂およびエステル樹脂などを用いることもできる。
導体線を捲回するにあたり、1回で捲回する導体線の換算直径は5mm以下とすることが好ましい。より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。細線の集合線であっても、5mmより太いものは可撓性が乏しく、安定して捲回することができない。また、導体線の換算直径は、捲回または編組の作業性から、0.01mm以上必要である。好ましくは0.03mm以上、より好ましくは0.05mm以上である。特に好ましくは0.1mm以上である。
電力線として使用するために大きな換算直径を必要とする場合は、換算直径3mm以下の集合線に分割して捲回することが好ましい。逆に、換算直径を小さくし過ぎると分割数が増え、作業性が悪くなるので、10分割以下が好ましい。
導体線を複数本捲回する場合、S撚りZ撚り交互に捲回することも、1方向のみに捲回することもできる。捲回された後の導体線間の摩擦が断線の原因となるため、1方向のみに捲回することが好ましい。捲回は、1回に1本づつ数回にわけて行うことも1回に数本づつ捲回することもできる。複数本を同じ方向に捲回する場合平行性を確保することが難しいため、あらかじめ1つのボビンに複数本をひきそろえて準備し、これを1回で捲回することが好ましい。
また、識別のため、各導体線をあらかじめ色分けしておくこともできる。複数本捲回したものを、まとめて1本の電線として取り扱うことも、それぞれの導体線を別個の電線として取り扱うこともできる。
弾性体として長繊維を用いる場合、Ld/Lmは0.1以上3未満が好ましい。特に好ましくは0.5以上2.5以下である。0.1未満の場合、伸縮性が発現しなくなる。3以上の場合は伸縮に大きな力を要する電線となるか、微弱電流しか流せない電線となり実用性に乏しい。
また、弾性体としてコイルバネを用いる場合、Ld/Lmは0.1〜30の範囲が好ましい。0.5〜20の範囲が特に好ましい。0.1未満の場合、伸縮性が発現しにくく、30を超えると、導体線に対するコイルバネの外径が大きくなりすぎ、結果的に太い伸縮電線となり好ましくない。
導体線は弾性円筒体の外周に編組することもできる。複数の導体線を編組することも、絶縁繊維との組み合わせで編組することもできる。導体線の編組の方向は1方向でも双方向でもよい。伸縮により導体線同志が磨耗することを防ぐために、導体線を1方向に編組し、反対方向に絶縁繊維を編組することが好ましい。さらに、1方向に編組する複数の導体線の間に絶縁繊維を配し、反対方向にも絶縁繊維を配することもできる。この方法は伸縮により導体線同志が重なり、短絡することを低減でき、特に好ましい。
また、複数の導体線を有する伸縮電線においては、信号線を2本と電力線を2本とする場合が多い。この場合、信号線間の間隔が不均一であると、信号線間の特性インピーダンスが不均一となり、伝送ロスが大きくなる(特に高周波において)という問題がある。複数の導体線を1方向とし、反対方向に絶縁繊維を編組した構造、または、複数の導体線間に絶縁繊維を同一方向で配置し、反対方向に絶縁繊維を配置して編組したものは、伝送ロスが少なく特に好ましい。
導体線にあらかじめ絶縁繊維(以後、絶縁繊維IIと言う)を被覆したものを用いることもできる。このとき用いる絶縁繊維は、フッ素繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、サラン繊維、ガラス繊維およびポリウレタン繊維等の公知の絶縁繊維を用いることができる。導体線に絶縁繊維IIを捲回および/または編組することによって、導体線を被覆することができる。この絶縁繊維による被覆を厚くすることで、弾性円筒体に捲回する時の捲回径を実質的に大きくすることもできる。
あらかじめ絶縁繊維で被覆した導体線は、加工時に細線表層の絶縁性樹脂層が破壊されにくく、好ましい。
弾性円筒体を伸張した状態で、導体線を1本または複数本捲回または編組することが必要である。伸縮性を発現させやすくするために、弾性円筒体を30%以上伸張することが好ましく、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは100%以上である。
導体線を弾性円筒体に捲回または編組した後被覆部を設ける前に、必要に応じて、弾性体による一体化層を設けることもできる。この一体化層は、導体線と弾性円筒体とのずれ防止を主な目的としていることから、その目的を達成できる範囲であれば、必ずしも連続的な層である必要はない。
一体化層は、弾性円筒体に導体線を捲回または編組したのち、得られた構造物を弾性体の液状物中に浸漬するか、または、少なくとも捲回または編組された導体線上に弾性体の液状物を付与し、その後、必要に応じて脱液を行なった後、加熱による反応促進または乾燥を行うか、冷却による固化を行うことによって、形成することができる。
柔軟性に優れた薄い一体化層を形成するためには、弾性体の液状物の粘度が2000ポイズ以下であることが望ましい。これ以上の場合は、薄い膜形成が難しく、また、導体線と弾性円筒体の隙間に弾性体の液状物が浸透しにくくなる。
薄い膜形成のために、弾性体の液状物として、2液混合反応型のポリウレタン系弾性体、溶剤中に溶解したポリウレタン系弾性体、ラテックス状の天然ゴム系弾性体およびラテックス状の合成ゴム系弾性体を用いることができる。
弾性体による一体化層を設けることにより、導体線と弾性円筒体とが伸縮によりずれることを防ぐことができ、実用での耐久性を向上させることができる。
弾性円筒体へ導体線を捲回または編組した後、そのまま、または、上述の弾性円筒体との一体化を行った後、被覆部を形成する。
被覆部は、伸縮性を阻害せずに内部の導体線を保護することが求められる。このため、絶縁繊維(以後、絶縁繊維IIIと言う)の編み組みおよび/または伸度50%以上の絶縁樹脂の弾性チューブ状物により形成されることが望ましい。
絶縁繊維IIIとしては、マルチフィラメントまたは紡績糸を用いることができる。モノフィラメントは、被覆性が悪いため好ましくない。
絶縁繊維IIIは、伸縮電線の用途や想定される使用条件に合わせて、公知の絶縁性繊維から任意に選ぶことができる。絶縁繊維IIIは生糸のままでも良いが、意匠性や劣化防止の観点から原着糸や先染め糸を用いることもできる。仕上げ加工により、柔軟性や摩擦性の向上を図ることもできる。さらに、難燃加工、撥水加工、撥油加工、防汚加工、抗菌加工、制菌加工および消臭加工など、公知の繊維の加工を施すことにより、実用時の取り扱い性を向上させることもできる。
耐熱性と耐磨耗性を両立させる絶縁繊維IIIとしては、アラミド繊維、ポリスルホン繊維およびフッ素繊維が挙げられる。耐火性の観点からは、ガラス繊維、耐炎化アクリル繊維、フッ素繊維およびサラン繊維が挙げられる。耐磨耗性や強度の観点からは、高強力ポリエチレン繊維およびポリケトン繊維が付加される。コストと耐熱性の観点からは、ポリエステル繊維、ナイロン繊維およびアクリル繊維がある。これらに、難燃性を付与した難燃ポリエステル繊維、難燃ナイロン繊維および難燃アクリル繊維(モダクリル繊維)なども好適である。摩擦熱による局部的な劣化に対しては、非溶融繊維を用いることが好ましい。その例としては、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、コットン、レーヨン、キュプラ、ウール、絹およびアクリル繊維を挙げることができる。強度を重視する場合は、高強力ポリエチレン繊維、アラミド繊維およびポリフェニレンサルファイド繊維が挙げられる。摩擦性を重視する場合は、フッ素繊維、ナイロン繊維およびポリエステル繊維が挙げられる。
意匠性を重視する場合は、発色の良いアクリル繊維を用いることもできる。
さらに、人との接触による触感を重視する場合は、キュプラ、アセテート、コットンおよびレーヨンなどのセルロース系繊維や、絹または繊度の細い合成繊維を用いることができる。
最外層を絶縁繊維IIIで被覆するにあたっては、内部を保護する目的から、編組加工されたものが望ましい。最終形体は丸紐状でも細幅テープ状でも良い。
導体線を捲回および/または編組した弾性円筒体を複数本まとめて、周囲を絶縁繊維IIIで被覆することも、予め絶縁繊維IIIで被覆したものを複数本まとめて、さらにその周囲を絶縁繊維IIIで被覆することもできる。導体線を複数本同時に捲回して、その周囲を絶縁繊維IIIで被覆したものが、最もコンパクトにできる。
被覆部は絶縁樹脂の弾性チューブ状物により形成することもできる。
絶縁樹脂は、さまざまな弾性の絶縁樹脂から任意に選ぶことができ、伸縮電線の用途及び同時に使用する他の絶縁繊維IおよびIIとの相性を考慮しながら、選定することができる。
考慮すべき性能は耐磨耗性、耐熱性および耐薬品性などが挙げられ、これらの性能に優れるものとしては合成ゴム系弾性体が挙げられ、フッ素系ゴム、シリコーン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、クロロプレン系ゴムおよびブチル系ゴムが好ましい。
絶縁樹脂の弾性チューブ状物は、液体からの被覆性を高めたい場合に、好適に用いることができる。
絶縁体からなる外部被覆層は、絶縁繊維IIIにより編組されたものと弾性チューブ状物とを組み合わせることもできる。伸縮電線は、小さい力で伸縮させることを望むケースが多いが、弾性チューブ状物のみでの被覆の場合は、チューブの厚みが厚くなる傾向があり、伸縮させる力が大きくなりやすい。このような場合は、厚みの薄いチューブと、絶縁繊維IIIによる編組を組み合わせることで、被覆性と伸縮性を両立させることができる。
このようにして得られた伸縮電線は、抵抗が弛緩状態で10Ω/m以下であることが好ましい。これ以上の場合は、微弱電流を流すことができても、駆動電流を流すには適さない。さらに好ましくは1Ω/m以下である。
また、本発明の伸縮電線は30%伸張荷重が5000cN以下であることが望ましく、より好ましくは1000cN以下である。実用で求められるものは、伸張に大きな荷重(力)を要さないものであり、30%伸張荷重が5000cNを超えると、実用上支障をきたすことがある。
複数本の伸縮電線を組み込んだ、細幅弾性テープ形状にしたものも作る事ができる。
細幅弾性テープ形状とするためには、あらかじめ絶縁被覆された伸縮電線を2〜100本用いることが好ましい。汎用的なものは3〜5本用いるものであるが、電源から末端まで多数のモータやセンサーを1本のテープで配線したいという場合もあり、多数の伸縮電線をテープ状にすることもできる。伸縮電線を100本以上用いて一つのテープとすることもできるが、一部の配線に異常があっても100本まとまりになったテープを取り替える必要が生じ、好ましくない。取り扱い性から、テープの幅は20cm以下、好ましくは10cm以下であることが望ましい。
以下に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
(1)弾性長繊維の換算直径Ldおよび導体線の換算直径Lmの求め方
換算直径とは、該当する繊維または導体線を1つの円柱に見たてた場合の直径をいう。
尚、本発明で取り扱う直径や厚みは、全て張力を取り除いた状態での数値とした。
弾性長繊維の換算直径Ld(mm):
Ld=2×10(mm/cm)×√(D/(d×π×1000000(cm)))
=2×(√(D/d×π))/100
D:弾性長繊維の繊度(dtex)
d:弾性長繊維の比重(g/cm3
なお、コイルバネの外径Ldはノギスにより測定する。
導体線の換算直径Lm(mm):
Lm=2×√((π×(Lt/2)×(Lt/2)×n)/π)=Lt×√n
Lt:導体線を構成する細線の直径
n:導体線を構成する細線の集合本数
(2)中間層の厚みLcの求め方
弾性円筒体(弾性体+中間層)の外径をノギスで5箇所測定し、その平均値をLaとする。中間層の厚みLcは下記式で求める。
Lc=(La−Ld)/2
(3)加工性
導体線を捲回する場合に、片岡カバーリングマシーンにて、送り速度3m/minで所定の条件で捲回し、10分間の加工性を以下の基準で判断した。
○:10分間、異常なく、連続運転ができる。
△:10分間の間にバルーニングが不安定となり、変動する。
×:10分間、連続運転ができない。
(4)ループ形態性
捲回後のループ形態を10倍ルーペで拡大して100ループを観察し、100ループ中に他のループと比べて大きさや形の違うものが含まれる個数に基づいて、下記の基準で判断した。
×:10個以上
△:3個〜9個
○:2個以下
(5)30%および50%伸張荷重
標準状態(温度20℃、相対湿度65%)に試料を2時間以上静置したのち、標準状態下でテンシロン万能試験機((株)エーアンドディ社製)を用い、長さ100mmの試料を引張り速度500mm/minで引張り、30%および50%伸張時の荷重を求めた。
(6)50%伸長応力
標準状態(温度20℃、相対湿度65%)に試料を2時間以上静置したのち、標準状態下でテンシロン測定器を用い、長さ100mmの試料を引張り速度500mm/minで引張り、50%伸張時の荷重(XcN)を求め、当該試料の弾性円筒体の断面積(Ymm2)で除して、50%伸長応力(X/Y=ZcN/mm2)を求めた。
(7)50%伸張回復性
長さ100mmの試料をテンシロン測定機にて引張り速度500mm/minで引張り、50%伸張後リターンし、応力がゼロになる距離(Amm)を求め次式により回復率を求めた。
回復率(%)=((100−A)/100)×100
回復性は以下の基準で判断する。
○:回復率80%以上
△:回復率50%以上
×:回復率50%未満
(8)電気抵抗
弛緩状態において、長さ1mの試料を切り取り、その両端をミリオームハイテスター3540(日置電機(株))により測定した。
(9)発熱電流
室温下で、弛緩状態で長さ1mの試料の両端に、所定の電流を流し伸縮電線の外装を放射温度計(日置電機 3445)、で、30分間温度計測をし、上昇温度ΔTにより、下記の基準で区別し、△となった電流を発熱電流とした。
○:ΔT≦5℃
△:5℃<ΔT≦20℃
×:ΔT>20℃
(10)繰り返し伸張性
デマッチャー試験機((株)大栄科学精機製作所製)を用い、図6に示したように、チャック部(21)およびチャック部(22)を試料(20)の長さ20cmにセットし、その中間に直径1.27cmのステンレス棒(23)を配置する。チャック部(22)の可動位置を試料の伸張時である26cmに設定し、室温で、初期伸張11%および引っ張り時伸張40%で60回/minで所定回伸縮を繰り返した後、テスト前後の電気抵抗(40%伸張時)を測定して判断した。
○:10万回繰り返し伸張後、抵抗値に変化が無いもの
△:1万回繰り返し伸張後、抵抗値に変化が無く、10万回繰り返し伸張後、抵抗値が大きくなったもの
×:1万回繰り返し伸張で抵抗値が大きくなったもの
(11)耐熱性
試料に弛緩状態で100mmの印をつけたのち、印間を25mm引き伸ばし25%伸張状態として金枠に固定した。この伸張状態のまま、120℃に設定した乾燥機中で、16時間熱処理を行った。熱処理後、室温で15分放冷した後金枠から取り外した。この試料を室温で15分間弛緩し、印間の距離を測定した。
劣化の判定は、熱処理テスト後の長さから、次式を用いて回復率を求め、回復率から以下の基準で行なった。
回復率T(%)=100×(25−(熱処理後長さ−100)/25)
○:T≧80
△:80>T≧50
×:T<50
(12)水中絶縁性
弛緩状態で有効試料長2mの試料を準備し、中ほどの1mを10リットルの容器(SUSジョッキ)に入った10リットルの1%NaCl水溶液(25℃±2℃)中に浸漬し、両端は水面の上にまっすぐに伸ばして固定した。20分間浸漬した後、テスター(KAISEI SK−6500)の測定端子の1方を水中へ浸漬し、他方を試料の一端に接続し、電気抵抗(R)を計測した。この時、テスターの両端を塩水中に浸漬した場合の電気抵抗は60〜70KΩ/5cmであった。
以下の基準で判断する。
○:R>20MΩ
△:20MΩ≧R≧10MΩ
×:R<10MΩ
なお、試料は、上記(10)に記載の繰り返し伸縮を、試料中央部の20cmをチャック部21および22で把持して所定の回数行なった後、上記テストに供した。
(13)短絡性
複数の導体線を有する伸縮電線を弛緩状態で1m準備し、上記(10)に記載の繰り返し伸縮を、伸縮電線の中央部20cmをチャック部21および22で把持して所定の回数行なった後、導体線の1本と他の1本の端をテスター(KAISEI SK-6500)の両端に接続し、伸縮電線を50%伸縮させて、電気抵抗を測定した。その値によって、下記基準で判断する。
○:R>20MΩ
△:20MΩ≧R≧10MΩ
×:R<10MΩ
(14)総合判定
○:30%伸縮荷重が1000cN以下で、電気抵抗が1Ω/m以下のもの
◎:上記に加え、特に優れた性能を持つもの
×:加工性が悪く、伸縮電線が得られないもの、
導電線のループ形態が悪いもの、
電気抵抗が10Ω/m以上のもの、または
30%伸縮荷重が5000cN以上のもの
△:上記以外のもの
[実施例1〜4]
3740dt(288f)のポリウレタン弾性長繊維(旭化成せんい(株)製、商品名:ロイカ)を芯にして、伸張倍率を4.2倍下で、220dt(72f)のウーリーナイロン(黒染め糸)(東レ(株)製)を500T/Mの下撚りおよび332T/Mの上撚りで捲回し、ダブルカバー糸を得た。得られたダブルカバー糸を芯にして、3.2倍の伸張下で、8本打ちまたは16本打ちの製紐機((株)国分社製)によって、上記ウーリーナイロンを2本引き揃えた組糸を用いて編組加工を行い、伸縮性のある中間層を持った弾性円筒体を得た。
得られた弾性円筒体を芯にして、片岡カバーリングマシーンを用いて、2.6倍の伸張下で、3m/minの送り速度で、所定の銅細線集合線(導体線)をZ方向に捲回し、伸縮電線中間体を得た。
次いで、得られた伸縮電線中間体を芯にして、1.8倍の伸張下で、上記のウーリーナイロンを2本引き揃えた組糸を用い、16本打ちの製紐機によって編組加工を行い、本発明の伸縮電線を得た。得られた伸縮電線の構成と製造条件および各種の評価結果を表1に示した。
なお、用いたポリウレタン弾性長繊維の破断伸度は後述の実施例も含めていずれも750%であった。また、銅細線の比抵抗は後述の実施例も含めていずれも0.2×10-5Ω×cmであった。
[比較例1]
3740dt(288f)のポリウレタン弾性長繊維(旭化成せんい(株)製、商品名:ロイカ)を芯にして、中間層を設けずに、実施例3と同様に銅細線集合線(導体線)を捲回した。しかし、捲回はバルーニングが不安定で、連続運転できなかった。結果を表1に併せて示した。
[実施例5および比較例2]
40番の丸ゴム糸(3224dt、Ld=0.67mm)を芯にして、4倍の伸張下で、167dt(48f)のエステルウーリー(黒染糸)を、8本打ち製紐機によって編組加工して中間層を形成し、伸縮性のある中間層を有する弾性円筒体を得た。
得られた弾性円筒体を芯にして、実施例3と同様に銅細線集合線(導体線)を捲回し、伸縮電線中間体を得た。
次いで、得られた伸縮電線中間体を芯にして、1.8倍の伸張下で、330dt(72f)のエステルウーリー(黒染糸)を2本引き揃えた組糸を用い、8本打ちの製紐機によって編組加工を行い、本発明の伸縮電線を得た。得られた伸縮電線の構成と製造条件および各種の評価結果を表1に併せて示した。
また、比較のために、中間層を形成しなかったことを除いて上記と同様に伸縮電線を作製した。しかし、銅細線集合線(導体線)の捲回において、バルーニングが不安定で、連続運転できなかった。この結果も併せて表1に示した。
なお、用いた丸ゴム糸の破断伸度は800%であった。
[実施例6]
所定の伸線をコイリングマシーンSH−7(オリイメック(株))を用いてコイリングを行い、テンパーにて270℃×20分の熱処理を行い、冷却して、所定のコイルバネを得た。このコイルバネを芯にして、2.4倍伸張下で、製紐機にて440dt(50f)のフッ素繊維(東洋ポリマー(株)製)を編組加工し、伸縮性の弾性円筒体を得た。
得られた弾性円筒体を芯にして、片岡カバーリングマシーンを用いて、2.2倍の伸張下で、3m/minの送り速度で、所定の銅細線集合線(導体線)をZ方向に捲回し、伸縮電線中間体を得た。
次いで、得られた伸縮電線中間体を芯にして、2倍の伸張下で、330dt(72f)のエステルウーリーを2本引き揃えた組糸を用い、16本打ちの製紐機によって編組加工を行い、本発明の伸縮電線を得た。得られた伸縮電線の構成と製造条件および各種の評価結果を表1に併せて示した。
なお、コイルバネは、150%伸張後の回復性を調べた所、後述の実施例も含めていずれも完全に回復し、伸度が150%以上であった。
Figure 2011029198
表1において、比較例1および2はLd/Lmが2.1および2.2(<3)であるため、公知文献通り、加工性が悪く、ループ形態も悪く、伸縮性の電線を得ることができないことが分かる。ところが、同じ弾性長繊維を用いているにもかかわらず、弾性長繊維の周囲に中間層を形成し、弾性円筒体とすることで、安定した加工性が得られ、伸縮性が良好な伸縮電線を得ることができることが分かる。このことは、従来技術では達成し得なかった、小応力で伸縮することができ、大きな電流を流すことができる伸縮電線を得ることができることを示すものである。
[実施例7〜9および比較例3〜4]
銅細線集合線(導体線)を変更したことを除いて、実施例4と同様に伸縮電線を作製した。なお、比較例4は導体線を安定して捲回することができなかった。得られた伸縮電線の構成と製造条件および各種の評価結果を実施例4の結果と共に表2に示した。
[実施例10および11]
弾性長繊維、銅細線集合線(導体線)および被覆部に用いる絶縁繊維を変更したことを除いて、実施例4と同様に伸縮電線を作製した。得られた伸縮電線の構成と製造条件および各種の評価結果を表2に併せて示した。
Figure 2011029198
表2の比較例3を見ると、導体細線を単線として捲回することはできるが、電気抵抗が著しく大きく、実用性に乏しいことがわかる。実施例7と比較例4の比較により、導体線を細線の集合線とすることで、弾性円筒体に実質的に、太い導体線を捲回できることがわかる。実施例11においては、小荷重で伸張が可能であり、電気抵抗が小さく、大電流を流せることがわかる。即ち、中間層を持つ弾性円筒体を芯部とし、導体細線の集合線を捲回することで、低応力で伸縮が可能で、大電流を流すことができることがわかる。
[実施例12および13]
銅細線集合線(導体線)を変更したことを除いて、実施例6と同様に伸縮電線を作製した。得られた伸縮電線の構成と製造条件および各種の評価結果を表3に示した。
[実施例14]
コイルバネ、中間層を構成する絶縁繊維、銅細線集合線(導体線)とその本数および被覆部に用いる絶縁繊維を変更したことを除いて、実施例6と同様に伸縮電線を作製した。得られた伸縮電線の構成と製造条件および各種の評価結果を表3に併せて示した。
なお、抵抗および発熱電流値の測定は、導体線を1つにまとめて結線して行なった。
Figure 2011029198
発熱電流値から本発明の伸縮電線は、低応力で伸縮が可能で数アンペア〜数十アンペアの大電流を流すことができることが分かる。
実施例12と実施例7で得た伸縮電線を用いて、耐熱性評価を行った結果を表4に示した。実施例12は、特に過酷な条件でも使用できる伸縮電線であることがわかる。
Figure 2011029198
[実施例15および16]
導体線を複数本捲回させたことを除いて、実施例4と同様に伸縮電線を作製した。なお、複数本の導体線を捲回させるに当たり、所定の本数を1つのボビンに前巻きした後、カバーリングマシーンにて捲回した。得られた伸縮電線の構成と製造条件および各種の評価結果を実施例4の結果と併せて表5に示した。
[実施例17]
導体線を複数本捲回させたことを除いて、実施例7と同様に伸縮電線を作製した。なお、複数本の導体線を捲回させるに当たり、所定の本数を1つのボビンに前巻きした後、カバーリングマシーンにて捲回した。得られた伸縮電線の構成と製造条件および各種の評価結果を実施例7の結果と併せて表5に示した。表5から、導体線を複数にしても、良好な伸縮電線が得られることが分かる。
Figure 2011029198
[実施例18]
実施例1と同様にして作成した弾性円筒体を、2.2倍伸長し、16本打ち製紐機で、Z方向に導体線(2USTC 30μ*90本 竜野電線製)4本とウーリーナイロン(220dt(72f)*3本引き揃え)4本を交互に配置して打ち込み、S方向にエステルウーリー(155dt(36f))を4本打ち込んで編組加工を行なって、伸縮電線中間体を得た。得られた伸縮電線中間体を1.8倍伸長下で、16本打ち製紐機にて、実施例1と同様にして外部被覆を行い、4本の導体線を有する伸縮電線を得た。
当該伸縮電線を弛緩状態で1m採取し、内部に含まれる4本の導体線の内隣り合う2本の伝送ロスを、ネットワークアナライザー(ヒューレットパッカード 8703A)を用いて調べた。250Mhz下での伝送ロスは−6dbであり、高速伝送に使用できることがわかる。実施例16で得られた伸縮電線を同様にして測定した結果、−12dbであった。
また、短絡性評価を行った結果、実施例16で得られた伸縮電線は10万回繰り返し伸縮で短絡したが、本実施例で得られた伸縮電線では、100万回伸長繰り返しでも短絡しなかった。
このように1方向に導体線を複数本配置し、反対方向に絶縁繊維を配置し編組した構造の伸縮電線は伝送特性にすぐれ、繰り返し伸縮で短絡しにくい優れた電線であることが分かる。
[実施例19]
実施例15と同様にして伸縮電線中間体を得た。得られた伸縮電線中間体を低硬度ウレタンゲル(ユニマック(株)製のランドソーバUE04#052601(主剤)とランドソーバUE04#052602(硬化剤)とを100:35の割合で混合したもの)中に浸漬し、テンションバーによる脱液を行なった後、80℃60分間の熱処理を行ない、弾性円筒体と導体線の一体化処理を行なった。得られた一体化処理品を用いて、実施例15と同様に外部被覆を行い本発明の伸縮電線を得た。得られた伸縮電線の構成と製造条件および各種の評価結果を実施例15の結果と併せて表6に示した。
Figure 2011029198
一体化処理によって、複数の導体線を有する構造でのショートの危険性を低減できることが分かる。また、水中絶縁性を向上させることもできることがわかる。
本発明の伸縮電線は、ロボット分野をはじめとして、曲げ伸ばしなどの屈曲部を有する部分への配線に最適ある。適正な弾性体を用い、適正な絶縁繊維により中間層を形成し、所望の換算直径の導体線を持ち、必要に応じて一体化処理を行い、適正な絶縁繊維で被覆を行なうことで、身体装着機器配線、衣服装着機器配線、多関節ロボット(家庭用途から工業用まで)配線など、形体変形追随性を求められる用途に最適の伸縮電線である。
また、高温下での使用条件においても使用きる伸縮電線である。
1 弾性長繊維
2 中間層
3 導体線
4 外部被覆層
6 弾性円筒体
10 コイルバネ
20 試料
21 チャック部
22 チャック部
23 ステンレス棒

Claims (14)

  1. 少なくとも、芯部、導体部及び被覆部からなる構造を有し、該芯部が弾性体とその外周を被覆する中間層とからなる弾性円筒体であり、該導体部が細線の集合線からなる導体線を含み、かつ該導体線が該弾性円筒体の外周に捲回および/または編組されており、該被覆部が該導体部の外周を被覆する絶縁体からなる外部被覆層であることを特徴とする伸縮電線。
  2. 弾性体が伸度100%以上の弾性長繊維または伸度50%以上のコイルバネであることを特徴とする請求項1に記載の伸縮電線。
  3. 中間層の厚さが0.1Ld(Ld:弾性長繊維の換算直径またはコイルバネの外径)または0.1mmのいずれか小さい方から10mmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮電線。
  4. 弾性円筒体の50%伸長応力が1〜500cN/mm2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の伸縮電線。
  5. 導体線が、比抵抗が10-4Ω×cm以下の電気伝導体からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の伸縮電線。
  6. 細線の直径(Lt)が1mm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の伸縮電線。
  7. 導体線が銅またはアルミニウムを80%以上含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の伸縮電線。
  8. 導体線が細線毎に厚さ1mm以下の絶縁性被覆層を有するか、または、集合線全体として厚さ2mm以下の絶縁性被覆層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の伸縮電線。
  9. 導体線が、芯部に一体化するための一体化層を有し、該一体化層が伸度50%以上の弾性体からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の伸縮電線。
  10. 30%伸張荷重が5000cN以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の伸縮電線。
  11. 導体部が複数の導体線からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の伸縮電線。
  12. 1本の導体線の電気抵抗が弛緩時に10Ω/m以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の伸縮電線。
  13. 少なくとも、芯部、導体部及び被覆部からなる構造を有し、該芯部が弾性体とその外周を被覆する中間層とからなる弾性円筒体であり、該導体部が細線の集合線からなる導体線を含み、かつ該導体線が該弾性円筒体の外周に捲回および/または編組されており、該被覆部が該導体部の外周を被覆する絶縁体からなる外部被覆層であることを特徴とする伸縮電線の製造方法であって、下記の各工程からなることを特徴とする伸縮電線の製造方法。
    1)該弾性体を伸張した状態で、その外周に絶縁繊維を編組および/または捲回することによって、該弾性円筒体を形成する工程、
    2)得られた該弾性円筒体を伸張した状態で、その外周に該導体線を捲回および/または編組することによって、該導体部を形成する工程、および
    3)得られた該弾性円筒体及び該導体部からなる構造体又は更に一体化処理がなされた該構造体を伸張した状態で、その外周に絶縁繊維を編組および/または絶縁樹脂を被覆することによって、該外部被覆層を形成する工程。
  14. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の伸縮電線の複数本を伸張した状態で、まとめて1本の細幅弾性テープ形状としたことを特徴とする細幅弾性テープ形状の伸縮電線。
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