JP2010189372A - フルオロスルホニルイミド類およびその製造方法 - Google Patents

フルオロスルホニルイミド類およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】副生成物の生成が抑制され、より安全、速やか、且つ、効率良く、フルオロスルホニルイミド類を製造する方法、および、フルオロスルホニルイミド類を提供する。
【解決手段】フルオロスルホニルイミド塩の製造方法であって、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むフッ化物と、下記一般式(I)で表される化合物とを反応させて一般式(II)で表されるフルオロスルホニルイミド塩を得る工程を含む。

上記一般式中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R3は、フッ素、塩素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、mは2又は3の整数を示す。
【選択図】なし

Description

本発明は、フルオロスルホニルイミド類、詳しくは、N−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド、ジ(フルオロスルホニル)イミド及びその塩等の誘導体、並びに、その製造方法に関する。
N−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドや、ジ(フルオロスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミド類やその誘導体は、N(SO2F)基又はN(SO2F)2基を有する化合物の中間体として有用であり、また、電解質や、燃料電池の電解液への添加物や、選択的求電子フッ素化剤、光酸発生剤、熱酸発生剤、近赤外線吸収色素等として使用されるなど、様々な用途において有用な化合物である。
上記ジ(フルオロスルホニル)イミドは、従来、フッ素化剤を使用して、ジ(クロロスルホニル)イミドをハロゲン交換反応することにより調製されてきた。例えば、非特許文献1では、三フッ化ヒ素(AsF3)、非特許文献2では、三フッ化アンチモン(SbF3)がフッ素化剤として用いられており、また、特許文献1には、KFやCsFなどの1価カチオンのイオン性フルオリドをフッ素化剤として用いて、ジ(クロロスルホニル)イミドをフッ素化する方法が記載されている。また、特許文献2には、尿素の存在下で、フルオロスルホン酸(HFSO3)を蒸留することによってジ(フルオロスルホニル)イミドを調製する方法が開示されている。
特表2004−522681号公報 特表平8−511274号公報
John K. RuffおよびMax Lustig、Inorg.Synth. 11,138-140 (1968年) Jean’ne M. Shreeveら、Inorg. Chem. 1998, 37 (24), 6295-6303
しかしながら、フッ素化剤としてAsF3を使用する場合、生成物からの分離が困難な副生成物の発生が避け難く、また、AsF3は比較的高価であるといった問題がある。なお、AsF3に換えてSbF3を用いることで副生成物の問題は解消されるが、これらAs,Sbはいずれも高い毒性を有する元素であるので、できるだけ使用を控えることが望まれている。また、特許文献2に記載の方法では、反応時にフッ化水素が生じる。フッ化水素は、毒性および腐食性が強い物質であるため、これが生成物中に含まれていると、反応装置はもとより、ジ(フルオロスルホニル)イミドを塩として各種用途に用いる際に、周辺部材を腐食させてしまう虞がある。したがって、このような物質が副生しないようなジ(フルオロスルホニル)イミド類の製造方法が求められている。
さらに、特許文献1に記載の製造方法では、反応に長時間を要するといった問題がある。
本発明は、これらの事情に着目してなされたもので、その目的は、副生成物の生成が抑制され、より安全、速やか、且つ、効率良く、N−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドやジ(フルオロスルホニル)イミド及びこれらの塩等のフルオロスルホニルイミド類を製造する方法、及び、フルオロスルホニルイミド類を提供することにある。
上記課題を解決した本発明の製造方法とは、フルオロスルホニルイミド塩の製造方法であって、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むフッ化物と、下記一般式(I)で表される化合物とを反応させて一般式(II)で表されるフルオロスルホニルイミド塩を得るところに特徴を有している。
上記一般式中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R3は、フッ素、塩素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、mは2又は3の整数を示す。
上述の方法で得られた一般式(II)の化合物をカチオン交換して下記一般式(III)で表されるフルオロスルホニルイミド塩を得る方法は本発明の好ましい態様である。
上記一般式中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R2は、HまたはR1以外の金属イオン、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、mは2又は3の整数、lは1〜3の整数を示す。
また、上述の方法で得られた一般式(II)の化合物を、オニウムカチオンを含む有機化合物と反応させて下記一般式(VI)で表されるフルオロスルホニルイミドの有機塩を得、このフルオロスルホニルイミドの有機塩(VI)をカチオン交換反応して一般式(III)で表されるフルオロスルホニルイミド塩を得る方法も、本発明の製造方法に含まれる。
上記一般式中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R2は、HまたはR1以外の金属イオン、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、R5は、有機カチオンを示し、lは1〜3の整数、mは2又は3の整数、nは有機カチオンR5の価数に相当し、1〜3の整数を示す。
さらに、上述の方法で得られた一般式(II)の化合物を、オニウムカチオンを含む有機化合物と反応させて下記一般式(VI)で表されるフルオロスルホニルイミド塩を得る方法は推奨される本発明法の態様の一つである。
上記一般式中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、R5は、有機カチオンを示し、mは2又は3の整数、nは有機カチオンR5の価数に相当し、1〜3の整数を示す。
上記方法で得られた一般式(III)の化合物を、オニウムカチオンを含む有機化合物と反応させて一般式(VI)で表されるフルオロスルホニルイミド塩を得る方法も好ましい本発明の製造方法である。
上記一般式中、R2は、HまたはR1以外の金属イオン、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、R5は、有機カチオンを示し、lは1〜3の整数、nは有機カチオンR5の価数に相当し、1〜3の整数を示す。
上記フッ化物はCu,Zn,Biよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むものであるのが好ましく、上記一般式(I)で表される化合物がR3として塩素(Cl)、一般式(II)および(III)で表される化合物がそれぞれR4としてフッ素(F)を有するものであるのが好ましい。
上記一般式(III)においてR2で示される金属イオンは、アルカリ金属であるのが好ましく、上記一般式(I)で表される化合物は、出発原料として塩化シアン(CNCl)又はアミド硫酸(HSO3NH2)を用いて得られたものであるのが望ましい。
上記製造方法により得られ、上記一般式(II)および(III)で表されるフルオロスルホニルイミド塩、および、上記一般式(VI)で表されるフルオロスルホニルイミドの有機塩も本発明に含まれる。
なお、本発明における「フルオロスルホニルイミド」との文言には、フルオロスルホニル基を2つ有するジ(フルオロスルホニル)イミドの他、フルオロスルホニル基と、フッ化アルキル基を有するN−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドが含まれる。なお、「クロロスルホニルイミド」も同様である。また、「フルオロアルキル」とは、炭素数1〜6のアルキル基において、1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されたものを意味し、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が含まれる。
本発明によれば、アンチモン(Sb)や砒素(As)など、毒性が高く、高価なフッ素化剤を使用しなくても、副生成物の生成が抑制され、従来法に比べて効率よく、N−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド、ジ(フルオロスルホニル)イミド、及び、これらの塩が得られる。
本発明の製造方法とは、ジ(フルオロスルホニル)イミド塩及びN−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド塩等のフルオロスルホニルイミド塩の製造方法であって、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むフッ化物と、下記一般式(I)で表される化合物とを反応させて一般式(II)で表されるフルオロスルホニルイミド塩を得るところに特徴を有する。
なお、上記一般式中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R3は、フッ素、塩素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、mは2又は3の整数を示す。
以下、本発明の製造方法について、詳細に説明する。まず、本発明の製造方法では、上記一般式(I)で表される化合物と、フッ化物とを反応させて、一般式(II)で表されるフルオロスルホニルイミド塩(反応中間体)を得る。
上記一般式(I)で表される化合物としては、R3が、フッ素(F),塩素(Cl)、又は、炭素数1〜6のフッ化アルキル基を有する化合物が挙げられる。上記フッ化アルキル基の炭素数は1〜6であるのが好ましく、より好ましくは1〜4である。具体的な炭素数1〜6のフッ化アルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、フルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、フルオロブチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロイソブチル基、ペルフルオロ−t−ブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、フルオロペンチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロイソペンチル基、ペルフルオロ−t−ペンチル基、フルオロヘキシル基、ペルフルオロ−n−ヘキシル基、ペルフルオロイソヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基が好ましく、より好ましいのはトリフルオロメチル基及びペンタフルオロエチル基である。
上記一般式(I)で表される化合物は、市販のものを用いてもよいが、塩化シアン(CNCl)を出発原料として合成することもできる(下記スキーム参照)。

式中、R3は、フッ素、塩素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基を示す。
例えば、ジ(クロロスルホニル)イミドを合成する場合、塩化シアンに、無水硫酸(SO3)とクロロスルホン酸を反応させればよい。この際、まず、塩化シアンと無水硫酸とを反応させる(化合物(IV)→化合物(V))。これら出発原料の配合割合は、1:0.5〜1:10(塩化シアン:無水硫酸、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは1:1〜1:5である。
塩化シアンと無水硫酸とを反応させる際の条件は特に限定されず、反応の進行状態に応じて適宜調整することができる。例えば、反応温度は、0℃〜100℃とするのが好ましく(より好ましくは10℃〜50℃)、反応時間は0.1時間〜48時間(より好ましくは1時間〜24時間)とするのが好ましい。反応は無溶媒で行うことが好ましいが、必要に応じて溶媒を使用してもよい。溶媒としては後述する非プロトン性溶媒が使用するのが好ましい。
次いで、得られたクロロスルホニルイソシアネート(ClSO2NCO、上記式(V))を、クロロスルホン酸と反応させることでジ(クロロスルホニル)イミド(上記式(I)、R3はCl)が得られる。クロロスルホニルイソシアネート(化合物(V))とクロロスルホン酸との配合割合は、1:0.5〜1:2(クロロスルホニルイソシアネート:クロロスルホン酸、モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:0.8〜1:1.2である。
尚、クロロスルホニルイソシアネートとクロロスルホン酸との反応は、不活性ガス雰囲気下、50℃〜200℃(より好ましくは70℃〜180℃)で、0.1時間〜48時間(より好ましくは1時間〜24時間)行えばよい。クロロスルホン酸は液状であり、合成反応中は反応溶媒としても機能し得るが、必要に応じて、他の溶媒を用いてもよい。
また、上記式(I)においてR3が炭素数1〜6のフッ化アルキル基を有するN−(クロロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドは、クロロスルホニルイソシアネートとフッ化アルキルスルホン酸との反応、あるいは、フッ化アルキルスルホニルイソシアネートとクロロスルホン酸との反応により得られる。好ましいフッ化アルキルスルホン酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸が挙げられる。
クロロスルホニルイソシアネート(化合物(V))とフッ化アルキルスルホン酸との配合比は、1:0.5〜1:2(クロロスルホニルイソシアネート:フルオロアルキル化合物、モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:0.8〜1:1.2である。反応条件は、ジ(クロロスルホニル)イミドを合成する際と同様の条件が採用できる。
なお、上記式(I)においてR3がフッ素であるN−(クロロスルホニル)−N−(フルオロスルホニル)イミドは、クロロスルホニルイソシアネートとフルオロスルホン酸との反応、あるいは、フルオロスルホニルイソシアネートとクロロスルホン酸との反応により得られる。出発原料の配合量および反応条件は、ジ(クロロスルホニル)イミドの場合と同様の条件が採用できる。
さらに、上記ジ(クロロスルホニル)イミドは、アミド硫酸と塩化チオニルとを反応させた後、さらにクロロスルホン酸を反応させることでも合成できる(例えば、Z. Anorg. Allg. Chem 2005, 631, 55-59参照)。
アミド硫酸と塩化チオニルの配合割合は、1:1〜1:20(アミド硫酸:塩化チオニル、モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:2〜1:10である。また、クロロスルホン酸の配合割合は、アミド硫酸に対して1:0.5〜1:10(アミド硫酸:クロロスルホン酸、モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:1〜1:5である。
アミド硫酸に、塩化チオニル、クロロスルホン酸を反応させる際の条件は特に限定されず、反応の進行状況に応じて適宜調整すればよい。例えば、反応温度は0℃〜200℃とするのが好ましく、より好ましくは50℃〜150℃であり、又、この温度範囲内で段階的に温度を上昇させて反応を行っても良い。反応時間は0.1時間〜100時間とするのが好ましく、より好ましくは1〜50時間である。反応は無溶媒で行うことが好ましいが、必要に応じて溶媒を用いてもよい。
次いで、得られたクロロスルホニルイミド(化合物(I))を、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むフッ化物と反応させる(化合物(I)→化合物(II))。上記フッ化物としては、上述の元素の中でも2価以上の陽イオンとなる元素を含むものが好ましい。具体的には、Cu,Zn,Sn,Pbなどの2価の陽イオンとなる元素、Biなどの3価の陽イオンとなる元素が好ましく、より好ましいフッ化物としては、CuF2、ZnF2、SnF2、PbF2およびBiF3が挙げられ、より一層好ましくはCuF2、ZnF2、BiF3であり、さらに好ましくはZnF2である。
上記フッ化物を使用することにより、化合物(I)のハロゲン(塩素→フッ素)、プロトン(H→R1)、それぞれの交換反応を1段階で行うことができる。したがって、本発明法を採用すれば、工程が煩雑にならず、速やかに、所望の塩が得られる。また、予め、化合物(I)のプロトンを上記元素と交換しておくことで、プロトンのままである場合に比べて精製操作も容易となる。したがって、本発明法の特徴は、上記第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むフッ化物と、上記一般式(I)で表される化合物とを反応させる工程を含むところに特徴を有する。
なお、上記式(II)で表される化合物は、式(III)で表されるジ(フルオロスルホニル)イミド塩又はN−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド塩の反応中間体であり、当該中間体は、リチウム二次電池、キャパシタ、イオン性液体などの電解液に溶解させる電解質として、あるいは、その中間体として有用である。
一般式(I)で表される化合物と上述のフッ化物との配合比は、ジ(クロロスルホニル)イミド(化合物(I))と、2価のフッ化物とを反応させる場合であれば、1:0.8〜1:10(化合物(I):フッ化物、モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:1〜1:5であり、さらに好ましくは1:1〜1:2である。また、3価のフッ化物と反応させる場合であれば、1:0.5〜1:7とするのが好ましく、より好ましくは1:0.7〜1:3であり、さらに好ましくは1:0.7〜1:1.3である。一方、化合物(I)としてN−(クロロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドやN−(クロロスルホニル)−N−(フルオロスルホニル)イミドを用いる場合(化合物(I):フッ化物、モル比)は、2価のフッ化物と反応させる際の配合比を1:0.4〜1:5とするのが好ましく、より好ましくは1:0.5〜1:2.5であり、さらに好ましくは1:0.5〜1:1であり、3価のフッ化物と反応させる場合であれば、1:0.3〜1:3とするのが好ましく、より好ましくは1:0.3〜1:0.8であり、さらに好ましくは1:0.3〜1:0.7とするのが好ましい。
化合物(I)から化合物(II)を得る際の反応条件は、反応の進行状態に応じて適宜調整すればよいが、好ましくは、反応温度を0℃〜200℃とし(より好ましくは10℃〜100℃)、反応時間を0.1時間〜48時間(より好ましくは1時間〜24時間)とすることが推奨される。
反応溶媒は、出発原料が液状であり互いに溶解している場合には、必ずしも用いる必要はないが、例えば、非プロトン性溶媒を用いるのが好ましい。具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノン、バレロニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ニトロメタン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒が挙げられる。フッ素化反応を円滑に進行させる観点からは極性溶媒を使用することが推奨され、上記例示の溶媒の中でも、バレロニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及び酢酸ブチルが好ましい。なお、精製時の作業性からは、沸点が低く、水と2層状態を形成し得る溶媒が好ましい。
次いで、得られた化合物(II)をカチオン交換してR1をR2とすることで、化合物(III)が得られる(下記式(III))。すなわち、化合物(II)をカチオン交換して化合物(III)を得る工程を含む本発明の方法は、以下のようにも表される。
上記(III)式中、R2は、HまたはR1以外の金属イオンを示すが、R2としては、Li,Na,K,Rb,Csなどのアルカリ金属がより好ましい。また、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基を示す。ジ(フルオロスルホニル)イミド及びN−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド類のアルカリ金属塩は、リチウム二次電池、キャパシタ、イオン性液体等の電解液に溶解させる電解質として使用することができる。
化合物(II)から化合物(III)へのカチオン交換反応としては、所望のカチオンを含む塩と化合物(II)とを反応させる方法、化合物(II)を陽イオン交換樹脂と接触させる方法などが挙げられる。R2がHまたはアルカリ金属の化合物(III)を与える化合物(塩)としては、フルオロスルホン酸、クロロスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸塩、硫酸、LiOH,NaOH,KOH,RbOH,CsOH,LiOH等の水酸化物、Na2CO3,K2CO3,Rb2CO3,Cs2CO3等の炭酸塩、LiHCO3,NaHCO3,KHCO3,RbHCO3,CsHCO3等の炭酸水素化物、LiCl,NaCl,KCl,RbCl,CsCl等の塩化物、LiF,NaF,KF,RbF,CsF等のフッ化物、CH3OLi、Et2OLi等のアルコキシド化合物、及び、EtLi、BuLiおよびt−BuLi(尚、Etはエチル基、Buはブチル基を示す)等のアルキルリチウム化合物等のアルカリ金属塩が挙げられる。この際、必要に応じて溶媒を使用してもよく、溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノン、バレロニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ニトロメタン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒が好適である。精製時の作業性からは、沸点が低く、水と2層状態を形成し得る溶媒を用いるのが好ましく、上記例示の溶媒の中でも、バレロニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及び酢酸ブチルが好ましい。
化合物(II)とスルホン酸塩、硫酸またはアルカリ金属塩との配合比は、化合物(II)が2価のカチオンを有し、所望のカチオンが1価であり、これを含む塩と配合する場合であれば、1:2〜1:20(化合物(II):塩、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは1:2〜1:10であり、さらに好ましくは1:2〜1:4である。また、化合物(II)が2価カチオンを有し、所望のカチオンが2価であり、これを含む塩との配合比は、1:1〜1:10とするのが好ましい。より好ましくは1:1〜1:5であり、さらに好ましくは1:1〜1:2である。一方、化合物(II)が3価のカチオンを有し、所望のカチオンが1価であり、これを含む塩との配合比は、1:3〜1:30とするのが好ましい。より好ましくは1:3〜1:15であり、さらに好ましくは1:3〜1:6である。また、化合物(II)が3価のカチオンを有し、所望のカチオンが2価であり、これを含む塩との配合比は、1:1〜1:20とするのが好ましい。より好ましくは1:1〜1:10であり、さらに好ましくは1:2〜1:4とすることが推奨される。
反応時間および反応温度は特に限定されないが、0℃〜200℃(より好ましくは10℃〜100℃)、0.1時間〜48時間(より好ましくは1時間〜24時間)とすることが推奨される。
陽イオン交換樹脂としては、強酸性の陽イオン交換樹脂を用いるのが好ましい。展開溶媒としては、水が挙げられる。
陽イオン交換樹脂を使用する場合、まず、公知の方法で陽イオン交換樹脂のカチオンを所望のカチオンに置換した後、これをカラムに充填し、水に溶解させた上記式(II)の水溶液をカラム中に通液させることで、R1が所望のカチオンR2に交換された上記式(III)を含む水溶液が得られる。
また、上記(III)式においてR2がHの場合には、化合物(III)を、さらにLiOH,NaOH,KOH,RbOH,CsOH等の水酸化物、Na2CO3,K2CO3,Rb2CO3,Cs2CO3等の炭酸塩、LiHCO3,NaHCO3,KHCO3,RbHCO3,CsHCO3等の炭酸水素化物、LiCl,NaCl,KCl,RbCl,CsCl等の塩化物、LiF,NaF,KF,RbF,CsF等のフッ化物、CH3OLi、Et2OLi等のアルコキシド化合物、及び、EtLi、BuLiおよびt−BuLi(尚、Etはエチル基、Buはブチル基を示す)等のアルキルリチウム化合物と反応させることで、アルカリ金属をカチオンとする化合物(III)の塩が得られる(プロトンからアルカリ金属への交換反応)。
化合物(III)と1価のアルカリ金属塩との配合比は、1:1〜1:10(化合物(III):アルカリ金属塩、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは1:1〜1:2である。2価のアルカリ金属塩を用いる場合の好ましい配合比は1:1〜1:5であり、より好ましくは1:1〜1:2である。
また、化合物(II)から化合物(III)へのカチオン交換反応の際には、必要に応じて溶媒を使用してもよい。使用可能な溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノン、バレロニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ニトロメタン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒が好ましく用いられる。
上記式(II)、または(III)で表されるフルオロスルホニルイミド塩類は、適当な塩と反応させることで、式(II)中、R1で示される陽イオンまたは、式(III)中、R2で示される陽イオンを交換することができる。特に、電気化学デバイスのイオン伝導体の材料として用いる場合には、陽イオンは有機カチオンであるのが好ましい(下記式(VI))。
式(VI)中、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基を示し、R5は、有機カチオンを示し、nは有機カチオンR5の価数に相当し、1〜3の整数を示す。
上記式(VI)で表されるフルオロスルホニルイミドの有機塩を構成する有機カチオンR5としては、オニウムカチオンが好適である。オニウムカチオンを含むフルオロスルホニルイミド塩は、常温で溶融した状態を安定に保つ常温溶融塩となり、長期間の使用に耐える電気化学デバイスのイオン伝導体の材料として好適なものとなる。
上記オニウムカチオンとしては、下記一般式(VII);
(式中、Lは、C、Si、N、P、S又はOを表す。Rは、同一若しくは異なって、水素、有機基であり、また互いに結合していてもよい。sは、2、3又は4であり、元素Lの価数によって決まる値である。尚、L−R間の結合は、単結合であっても良く、また二重結合であってもよい。)で表されるものが好適であり、具体的には下記一般式;
(式中、Rは、一般式(VII)と同様である。)で表されるものが好適である。このようなオニウムカチオンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、好ましいものとしては、下記のようなオニウムカチオンが挙げられる。
(1)下記一般式;

で表される9種類の複素環オニウムカチオンの内の1種。
(2)下記一般式;

で表される5種類の不飽和オニウムカチオンの内の1種。
(3)下記一般式;
で表される10種類の飽和環オニウムカチオンの内の1種。
上記一般式中、R6〜R17は、同一若しくは異なって、有機基であり、互いに結合していてもよい。
(4)Rが、水素、または、C1〜C8のアルキル基である鎖状オニウムカチオン。中でも、一般式(VII)において、LがNであるものが好ましい。例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、メトキシエチルジエチルメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム、2−メトキシエトキシメチルトリメチルアンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロエチル)アンモニウム等の第4級アンモニウム類、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジブチルメチルアンモニウム等の第3級アンモニウム類、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジブチルアンモニウム等の第2級アンモニウム類、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、オクチルアンモニウム等の第1級アンモニウム類、N−メトキシトリメチルアンモニウム、N−エトキシトリメチルアンモニウム、N−プロポキシトリメチルアンモニウム及びNH4等のアンモニウム化合物等が挙げられる。これら例示の鎖状オニウムカチオンの中でも、アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムおよびジエチルメチル(2−メトキシエチル)アンモニウムが好ましい鎖状オニウムカチオンとして挙げられる。
上記(1)〜(4)のオニウムカチオンの中でも好ましいものは、下記一般式;
(式中、R6〜R17は、上記と同様である。)で表される5種類のオニウムカチオン及び上記(4)の鎖状オニウムカチオンである。上記R6〜R17の有機基としては、直鎖、分岐鎖又は環状の炭素数1〜18の飽和又は不飽和炭化水素基、炭化フッ素基等が好ましく、より好ましくは炭素数1〜8の飽和又は不飽和炭化水素基、炭化フッ素基である。これらの有機基は、水素原子、フッ素原子、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホン基、スルフィド基や、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を含んでもよい。より好ましくは、水素原子、フッ素原子、シアノ基及びスルホン基等のいずれか1種以上を有するものである。なお、2以上の有機基が結合している場合は、当該結合は、有機基の主骨格間に形成されたものでも、また、有機基の主骨格と上述の置換基との間、あるいは、上記置換基間に形成されたものであっても良い。
上記オニウムカチオンは、上記オニウムカチオンとアニオンとからなる塩を原料とするものである。上記オニウムカチオンを含む塩のアニオンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水酸化物イオン(OH-)、炭酸イオンおよび炭酸水素イオンなどが挙げられる。
本発明に係るフルオロスルホニルイミド類の有機塩を得る際、上記式(II)または(III)で表されるフルオロスルホニルイミド塩類と、上記オニウムカチオンを含む塩との配合割合は、上記(II)または(III)の陽イオンが1価であれば、1:0.5〜1:10(モル比)とするのが好ましい。より好ましくは1:1〜1:5である。また、上記(II)または(III)の陽イオンが2価であれば、1:1〜1:20(モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:2〜1:10である。上記陽イオンが3価の場合は、1:1.5〜1:30(モル比)とするのが好ましく、より好ましくは1:3〜1:15である。有機カチオンへの交換反応は、フルオロスルホニルイミド塩類と、上記オニウムカチオンを含む塩とを、溶媒の存在下、混合すればよい。この際の温度としては、0℃〜200℃(より好ましくは10℃〜100℃)であり、0.1時間〜48時間(より好ましくは0.1時間〜24時間)反応させればよい。
溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノン、バレロニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ニトロメタン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒が好ましく用いられる。また、精製時の作業性からは、沸点が低く、水と2層状態を形成し得る溶媒が好ましく、上記例示の溶媒の中でも、バレロニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル及び酢酸ブチルが好ましい。これらの溶媒を用いることで、副生する金属塩を効率よく除去できるからである。
また、上記一般式(VI)で表されるフルオロスルホニルイミドの有機塩は、アルカリ金属化合物と反応させることで、有機カチオンR5をアルカリ金属とカチオン交換することもできる。これにより化合物(III)が得られる。なお、フルオロスルホニルイミドの有機塩は、上述のように化合物(II)をカチオン交換反応させることでも得られるが、下記スキームのように、フルオロスルホニルイミド(II)塩をカチオン交換した後、フルオロスルホニルイミドの有機塩(VI)を得、その後、さらにカチオン交換反応を行う方法でも得られる。
化合物(VI)から化合物(III)へのカチオン交換反応としては、所望のアルカリ金属イオンを含む塩と化合物(VI)とを反応させる方法、化合物(VI)を陽イオン交換樹脂と接触させる方法などが挙げられる。また、化合物(VI)を適当な塩と反応させることで、R2がHのフルオロスルホニルイミドを得ることもできる。
2がアルカリ金属の化合物(III)を与える化合物(塩)としては、LiOH,NaOH,KOH,RbOH,CsOH等の水酸化物,Na2CO3,K2CO3,Rb2CO3,Cs2CO3等の炭酸塩,LiHCO3,NaHCO3,KHCO3,RbHCO3,CsHCO3等の炭酸水素化物,LiCl,NaCl,KCl,RbCl,CsCl等の塩化物,LiF,NaF,KF,RbF,CsF等のフッ化物、CH3OLi、Et2OLi等のアルコキシド化合物、及び、EtLi、BuLiおよびt−BuLi(尚、Etはエチル基、Buはブチル基を示す)等のアルキルリチウム化合物等が挙げられる。
この際、必要に応じて溶媒を使用してもよく、溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノン、バレロニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ニトロメタン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒が好適である。これらの溶媒は、化合物(VI)を得る工程で用いる溶媒と共通しているため、化合物(III)の製造後、反応溶媒を変更することなく、化合物(VI)を得る工程へと進むことができる。
化合物(VI)とアルカリ金属塩との配合比は、化合物(VI)のオニウムカチオンR5が1価であれば、1:1〜1:10(化合物(VI):塩、モル比)とするのが好ましい。より好ましくは1:1〜1:5であり、さらに好ましくは1:1〜1:3である。
反応時間および反応温度は特に限定されないが、0℃〜200℃(より好ましくは10℃〜100℃)、0.1時間〜48時間(より好ましくは1時間〜24時間)とすることが推奨される。
反応後は、生成物の純度を高めるため精製しても良い。本発明においては、水、有機溶媒、及びこれらの混合溶媒による分液抽出法で、容易に目的物を精製することができる。このとき使用できる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシメタン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、アセトニトリル、スルホラン、3−メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノン、バレロニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、ニトロメタン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒が挙げられる。もちろん、上記溶媒による洗浄、再沈殿法、分液抽出法、再結晶法、晶析法及びクロマトグラフィーによる精製法など従来公知の方法を採用しても良い。
本発明の製法により得られるジ(フルオロスルホニル)イミド、N−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド、及び、その塩、並びに、これらの反応中間体は、リチウム二次電池、キャパシタ、イオン性液体などの電解液に溶解させる電解質あるいはその中間体などとして有用である。また、本発明のジ(フルオロスルホニル)イミド及びN−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドの有機塩は、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電/放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料として好適に用いられる。
なお、本発明に係るジ(フルオロスルホニル)イミド塩又はN−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミド塩を電解液用材料として用いる場合には、更に、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなるものであるのが好ましい。この場合において、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩は、本発明に係るジ(フルオロスルホニル)イミド又はN−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドをアニオンとする化合物であってもよいし(上記式(III)で表される化合物)、また、これとは別に添加される化合物であってもよい。このようなアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでなる電解液用材料は、電解質を含有するものとなるので、電気化学デバイスの電解液の材料として好適なものとなる。
アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好適であり、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が好適である。より好ましくは、リチウム塩である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
合成例1 クロロスルホニルイソシアネートの合成
攪拌器、温度計、還流管、ガス導入管を取り付けた200mlの反応容器に、液体無水硫酸(SO3)80.1g(1.0mol)を入れ、ここに、25℃〜35℃の温度下で、塩化シアンガス(CNCl)61.5g(0.53mol)を2時間かけて導入した後、反応溶液を25℃〜30℃に調整して、0.5時間攪拌した。反応終了後、還流管およびガス導入管を反応容器から外し、常圧で蒸留し、106℃〜107℃の留分として無色透明液体を得た(118.5g、0.83mol、収率83.7%)。
合成例2 ジ(クロロスルホニル)イミドの合成
攪拌器、温度計、還流管、滴下装置を取り付けた500mlの反応容器に、クロロスルホン酸(ClSO3H)148.7g(1.28mol)を加え、120℃まで加熱した。ついで、合成例1と同様の手法で得られたクロロスルホニルイソシアネート180.4g(1.27mol)を滴下装置から反応容器内へ2時間かけて加えた後、混合溶液を150℃に加熱し、6時間攪拌した。反応終了後、還流管および滴下装置を反応容器から外し、減圧蒸留を行い、104℃〜106℃(0.3kPa)の留分として、無色透明の液状物を得た(178.4g、0.83mol、収率65.6%)。
同定は、IR(Varian 2000 FT-IR、バリアン社製、液膜法)により行い、ジ(クロロスルホニル)イミドであることを確認した。
IR(neat):νs (N-H)3155,νas (S-O)1433,1428、νs (S-O)1183、νs (N-S)824cm-1
合成例3 ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩の合成
20mlの反応容器に、ジ(クロロスルホニル)イミド2.18g(0.01mol)、アセトニトリル4.36gを加え、攪拌した。ここに、ZnF22.63g(0.025mol)を加え、室温(25℃)で24時間反応を行った。反応溶液を濾過し、濾物をアセトニトリル5gで洗浄した後、ろ液と洗浄液とを併せた溶液を19F-NMR(「Unity plus 400型」、バリアン社製、内部標準物質:トリフルオロメチルベンゼン、積算回数:32回)で分析した。得られたチャートのピークの面積を計測し、塩素からフッ素への変換割合を定量し、反応が定量的に進行し、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が得られていることを確認した。
19F-NMR(CD3CN):δ56.0
合成例4 ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩の合成
20mlの反応容器に、ジ(クロロスルホニル)イミド2.13g(0.01mol)、アセトニトリル4.26gを加え、攪拌した。ここに、ZnF22.57g(0.025mol)を加え、室温(25℃)で1時間反応を行った。反応溶液を濾過し、濾物をアセトニトリル5gで洗浄した後、ろ液と洗浄液とを併せた溶液を、合成例3と同様にして19F-NMRで分析したところ、反応は定量的に進行しており、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した。
19F-NMR(CD3CN):δ56.0
合成例5 ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]銅塩の合成
20mlの反応容器に、ジ(クロロスルホニル)イミド1.66g(0.008mol)、アセトニトリル6.68gを加え攪拌した。ここにCuF21.97g(0.02mol)を加え、室温(25℃)で24時間反応を行った。反応溶液を濾過し、濾物をアセトニトリル5gで洗浄した後、ろ液と洗浄液とを併せた溶液を、合成例3と同様にして19F-NMRで分析したところ、反応は定量的に進行しており、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]銅塩が生成していることを確認した。
19F-NMR(CD3CN):δ55.9
合成例6 トリス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]ビスマス塩の合成
20mlの反応容器に、ジ(クロロスルホニル)イミド2.46g(10mmol)、アセトニトリル6.68gを加え、攪拌した。ここに、BiF35.10g(20mmol)を加え、室温(25℃)で24時間反応を行った。反応溶液を濾過し、濾物をアセトニトリル5gで洗浄した後、ろ液と洗浄液とを併せた溶液を、合成例3と同様にして19F-NMRで分析した結果、反応は定量的に進行しており、トリス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]ビスマス塩が得られていることを確認した。
19F-NMR(CD3CN):δ57.0
合成例7 ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩の合成
100mlの反応容器に、ジ(クロロスルホニル)イミド10.4g(48.6mmol)、アセトニトリル20.8gを加え、攪拌した。ここに、ZnF212.5g(120mmol)を加え、室温(25℃)で24時間反応を行った。反応溶液を濾過し、濾物をアセトニトリル25gで洗浄した後、ろ液と洗浄液とを併せた溶液を、合成例3と同様にして19F-NMRで分析した結果、反応は定量的に進行しており、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した。
さらに、得られた溶液からアセトニトリルを留去し、合成例8の出発原料として用いた。
19F-NMR(CD3CN):δ56.0
合成例8 ジ(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩の合成
容量100ml(径:2cm)のカラムに、強酸性イオン交換樹脂(Amberlitet IR-120B H型、オルガノ株式会社製(「アンバーライト」はローム・アンド・ハース・カンパニーの登録商標))36gを充填し、カラム内をイオン交換水で満たした。次いで、カラム上部より水酸化リチウム水溶液を加え、流出液のpHが10になるまでカラム下部より液を抜き出した。引き続き、カラム上部よりイオン交換水を加え、流出液のpHが7になるまでカラム下部から液を抜き出した。
次いで、合成例7で得られたビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩2g(4.7mmol)を、38gのイオン交換水に溶解した水溶液を、カラムにアプライし、イオン交換水で流出させた。得られた水溶液の蛍光X線分析(装置:PW-2404、フィリップス社製)を行い、亜鉛からリチウムへの交換反応が定量的に進行していること、ジ(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩が得られていることを確認した。
比較合成例1 ジ(フルオロスルホニル)イミドの合成
20mlの反応容器に、ジ(クロロスルホニル)イミド3.09g(14.4mmol)、アセトニトリル6.18gを加え、攪拌した。ここに、フッ化カリウム3.57g(61.5mmol)を加え、室温(25℃)で24時間反応を行った。反応溶液を濾過し、濾物をアセトニトリル5gで洗浄した後、ろ液と洗浄液とを併せた溶液を合成例3と同様にして19F-NMRで分析した結果、塩素からフッ素への転化率は3%であり、原料の大部分がフッ素化されず、ジ(クロロスルホニル)イミドのままであることが確認された。
19F-NMR(CD3CN):δ55.9
合成例9 ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩の合成
20mlの反応容器にジ(クロロスルホニル)イミド1.80g(0.008mol)、アセトニトリル3.59gを加え、攪拌した。ここに、ZnF20.87g(0.008mol)を加え、室温(25℃)で24時間反応を行った。その後、反応溶液をろ過し、濾物をアセトニトリル5gで洗浄した後、ろ液と洗浄液とを合わせた溶液を、合成例3と同様にして19F-NMRで分析したところ、反応は定量的に進行しており、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した。
19F-NMR(CD3CN):δ56.0
合成例10 ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩の合成
100mlの反応容器に、ジ(クロロスルホニル)イミド54.39g(0.25mol)、アセトニトリル108.9gを加え、攪拌した。ここに、ZnF226.27g(0.25mol)を加え、室温(25℃)で24時間反応を行った。その後、反応溶液をろ過し、濾物をアセトニトリル50gで洗浄した後、ろ液と洗浄液とを合わせた溶液を、合成例3と同様にして19F-NMRで分析したところ、反応は定量的に進行しており、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した。
ろ液と洗浄液とを併せた溶液から、減圧下でアセトニトリルを留去し、72.10gの固体(ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩)を得た。
19F-NMR(CD3CN):δ56.0
合成例11 ジ(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩の合成
100mlの反応容器に、合成例10で得られた固体(ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩)5.05g、オニウムカチオンを含む塩として塩化アンモニウム1.27g(0.024mol)、酢酸ブチル45g、水5gを加え、室温で1時間攪拌した。分液ロートにより有機相を分離し、水5gで洗浄する操作を4回繰り返し行った。減圧下で、得られた有機相から酢酸ブチルを留去し、ジ(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を1.53g(0.0077mol)得た。
19F-NMR(CD3CN):δ56.0
合成例12 ジ(フルオロスルホニル)イミドのトリエチルアンモニウム塩の合成
100mlの反応容器に、合成例10で得られた固体5.08g、オニウムカチオンを含む塩として塩酸トリエチルアミン3.29g(0.024mol)、酢酸ブチル45g、水5gを加え、室温で1時間攪拌した。分液ロートにより有機相を分離し、得られた有機相を水5gで洗浄する操作を4回繰り返し行った。減圧下で、得られた有機相から酢酸ブチルを留去し、ジ(フルオロスルホニル)イミドのトリエチルアンモニウム塩を3.88g(0.014mol)得た。
19F-NMR(CD3CN):δ55.9
合成例13 ジ(フルオロスルホニル)イミドのエチルメチルイミダゾリウム塩の合成
100mlの反応容器に、合成例10で得られた固体5.00g、オニウムカチオンを含む塩としてエチルメチルイミダゾリウムブロミド4.49g(0.024mol)、酢酸ブチル45g、水5gを加え、室温で1時間攪拌した。分液ロートにより有機相を分離し、有機相を水5gで洗浄する操作を4回繰り返し行った。減圧下で、得られた有機相から酢酸ブチルを留去し、ジ(フルオロスルホニル)イミドのエチルメチルイミダゾリウム塩を3.92g(0.013mol)得た。
19F-NMR(CD3CN):δ55.9
合成例14 ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩の合成
20mlの反応容器にジ(クロロスルホニル)イミド1.99g(0.0093mol)、酢酸ブチル3.98gを加え、攪拌した。ここに、ZnF20.96g(0.0093mol)を加え、室温(25℃)で24時間反応を行った。得られた反応溶液を、合成例3と同様にして19F-NMRで分析したところ、反応は定量的に進行しており、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した。
19F-NMR(CD3CN):δ56.0
合成例14では、溶媒として酢酸ブチルを使用している。したがって、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩の製造に続けて、溶媒を変更することなく、また、特別な精製処理を行うことなく、オニウムカチオンとの陽イオン交換反応を行うことができた。
合成例15 クロロスルホニル(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの合成
攪拌器、温度計、還流管及び滴下装置を取り付けた500mlの反応容器に、トリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)190.6g(1.27mol)を加え、120℃まで加熱した。次いで、合成例1と同様の手法で得られたクロロスルホニルイソシアネート179.7g(1.27mol)を滴下装置から反応容器内へ2時間掛けて加えた後、混合溶液を150℃に加熱し、6時間攪拌した。反応終了後、還流管、滴下装置を反応容器からはずし、減圧蒸留を行い、無色透明の液状物を得た(212.9g、0.86mol、収率67.7%)。
NMR測定により、生成物がN−(クロロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)イミドであることを確認した。
合成例16 ビス[N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)イミド]亜鉛塩の合成
20mlの反応容器に、合成例15で得られたN−(クロロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)イミド2.00g(8.1mmol)と、酢酸ブチル18gを加え、攪拌した。ここにZnF20.44g(4.3mmol)を加え、室温(25℃)で24時間反応を行った。得られた反応溶液を濾過し、合成例3と同様にして洗浄し、ろ液と洗浄液とを合わせた溶液を19F-NMRで分析したところ、反応は定量的に進行しており、ビス[N−(フルオロスルホニル)−N−(トリフルオロメチルスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した。
合成例17 ジ(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩の合成
3Lの反応容器にジ(クロロスルホニル)イミド240.00g(1.12mol)、酢酸ブチル2160gを加え、攪拌した。ここに、ZnF2121.72g(1.18mol)を加え、室温(25℃)で3時間反応を行った。得られた反応溶液を濾過し、合成例3と同様にして洗浄した後、ろ液と洗浄液とを合わせた溶液を19F-NMRで分析したところ、反応は定量的に進行し、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した(19F-NMR (CD3CN):δ56.0)。
次いで、反応溶液を5Lの分液ロートに移し、ここにトリエチルアミンの塩酸塩308.68g(2.24mol)を蒸留水214gに溶解した水溶液を加え、混合し、水相を除去した。さらに蒸留水214gを加え混合した後、水相を除去する分液操作を4回繰返し行った。得られた有機相を乾燥した後、19F-NMRで分析し、ジ(フルオロスルホニル)イミドトリエチルアンモニウム塩170.18g(0.60mol)が生成していることを確認した(19F-NMR (CD3CN):δ56.0)。
さらに、得られたジ(フルオロスルホニル)イミドトリエチルアンモニウム塩を5Lの分液ロートに移し、ここに水酸化リチウム一水和物75.88g(1.81mol)を蒸留水455gに溶解した水溶液を加え、混合し、分液操作により水相を除去した。得られた有機相を蒸発乾固することで、ジ(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩90.20g(0.48mol)を得た。目的物の生成は19F-NMRと1H-NMRによる分析でトリエチルアンモニウム由来のピークが消失したことにより確認した。
19F-NMR (CD3CN):δ56.0
合成例18 ジ(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩の合成
100mlの反応容器にジ(クロロスルホニル)イミド2.00g(9.3mmol)、バレロニトリル18gを加え、攪拌した。ここに、ZnF21.01g(9.8mmol)を加え、室温(25℃)で3時間反応を行った。得られた反応溶液を合成例3と同様にして19F-NMRで分析したところ、反応は定量的に進行しており、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した(19F-NMR (CD3CN):δ56.0)。
次いで、100mlの分液ロートに反応溶液を移し、ここにトリエチルアミンの塩酸塩2.57g(18.7mmol)を蒸留水1.8gに溶解した水溶液を加え、混合し、分液操作により水相を除去した。さらに蒸留水1.8gを加え、混合した後、水相を除去する分液操作を4回繰り返し行った。得られた有機相を乾燥した後、19F-NMR分析し、ジ(フルオロスルホニル)イミドのトリエチルアンモニウム塩2.02g(7.2mmol)が生成していることを確認した(19F-NMR (CD3CN):δ56.0、1H-NMR(CD3CN):δ3.1(6H)、1.2(9H))。
さらに、得られたジ(フルオロスルホニル)イミドのトリエチルアンモニウム塩を100mlの分液ロートに移し、ここに水酸化リチウム一水和物0.91g(21.6mmol)を蒸留水5.5gに溶解した水溶液に加え、混合した。分液操作により、水相を除去した。同様の分液操作を2回繰り返し行った。得られた有機相を蒸発乾固することで、ジ(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩0.75g(4.0mmol)を得た。なお、目的物の生成は、19F-NMR及び1H-NMRの分析で、トリエチルアンモニウム由来のピークが消失したことにより確認した。
19F-NMR (CD3CN):δ56.0
合成例19 ジ(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩の合成
合成例18と同様の手法で得られたトリエチルアンモニウムジ(フルオロスルホニル)イミドを、酢酸ブチルに溶解させて、濃度を7.7%に調製した溶液を1688g量り取り(0.46mol)、これを3Lの分液ロートに加えた。ここに、348gの超純水に溶解した水酸化リチウム58g(1.38mol)を加え、混合した後、水相を除去した。目的物の生成は、19F-NMR及び1H-NMRの分析で、トリエチルアンモニウム由来のピークが消失したことにより確認した。
次いで、反応溶液を50℃に加熱して溶媒を蒸発し乾固させた後、減圧乾燥して、リチウムジ(フルオロスルホニル)イミド80g(0.43mol)を得た。
合成例20 ジ(クロロスルホニル)イミドの合成
攪拌器、温度計、還流管を取り付けた500mlの反応容器に、アミド硫酸48.5g(0.5mol)、塩化チオニル178.5g、クロロスルホン酸58.3g(0.5mol)を加え、この混合溶液を、攪拌下、70℃で4時間、130℃で20時間反応させた。反応終了後、還流管を反応容器から外し、減圧蒸留を行い、104℃〜105℃の留分として無色透明の液状物を得た(102.7g、0.48mol、収率96%)。
同定は、IR(Varian 2000 FT-IR、バリアン社製、液膜法)により行い、ジ(クロロスルホニル)イミドであることを確認した。
IR(neat):νs (N-H)3155,νas (S-O)1433,1428、νs (S-O)1183、νs (N-S)824cm-1
合成例21 ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩の合成
20mlの反応容器に、合成例20で得られたジ(クロロスルホニル)イミド0.50g(2.01mmol)、酢酸ブチル4.5gを加え、攪拌した。ここに、ZnF20.25g(2.5mmol)を加え、室温(25℃)で3時間反応を行った後、19F-NMR分析を行った。得られたチャートのピークの面積を計測し、塩素からフッ素への変換割合を定量した結果より、反応が定量的に進行し、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が得られていることを確認した。
19F-NMR(CD3CN):δ56.0
合成例22 オニウム塩及びリチウム塩の合成
20mlの反応容器に、合成例21で得られたビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩を含む反応溶液を加え、ここに、酢酸ブチル5gに溶解した1,4−ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン0.53g(4.7mmol)混合しながら加えた。混合溶液を室温(25℃)下で攪拌した後、析出した白色固体を濾取した。得られた固体を重DMSOに溶解し、1H-NMR及び19F-NMRで分析し、1,4−ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタンジ(フルオロスルホニル)イミドが生成していることを確認した。
得られた固体0.35g(1.2mmol)を、水酸化リチウム一水和物0.15g(3.6mmol)を蒸留水2gに溶解した水溶液と混合したところ、カチオン交換反応が進行し、リチウムジ(フルオロスルホニル)イミドが生成していることを確認した。
合成例23
50mlの反応容器にジ(クロロスルホニル)イミド3.01g(14.1mmol)とバレロニトリル27.09gを加え、攪拌した。ここにZnF21.53g(14.8mmol)を加え、室温(25℃)で4時間反応を行った。得られた反応溶液を合成例3と同様に19F-NMRで分析したところ、反応は定量的に進行しており、ビス[ジ(フルオロスルホニル)イミド]亜鉛塩が生成していることを確認した。
19F-NMR (CD3CN):δ56.0
次いで、50mlの分液ロートに反応溶液を移し、ここに塩化リチウム0.60g(14.1mmol)を蒸留水2.71gに溶解した水溶液を加え、混合し、水相を除去した。この分液操作を4回繰り返し行った。得られた有機相を乾燥した後、19F-NMR、ICP発光分析(「ICPE−9000型」、島津製作所社製)で分析し、Znイオン由来のピークが消失し、Liイオンに由来するピークが存在していることより、ジ(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩が生成していることを確認した(収量:1.29g、6.4mmol)。
19F-NMR (CD3CN):δ56.0
本発明によれば、アンチモン(Sb)や砒素(As)など、毒性が高く、高価なフッ素化剤を使用しなくても、副生成物の生成が抑制され、従来法に比べて効率よく、N−(フルオロスルホニル)−N−(フルオロアルキルスルホニル)イミドやジ(フルオロスルホニル)イミド及びその有機塩ならびに金属塩類が得られる。また、本発明法により得られるフルオロスルホニルイミド類は、一次電池、リチウム(イオン)二次電池や燃料電池等の充電/放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池・エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスを構成するイオン伝導体の材料として好適に用いられると考えられる。

Claims (13)

  1. フルオロスルホニルイミド塩の製造方法であって、
    第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むフッ化物と、下記一般式(I)で表される化合物とを反応させて一般式(II)で表されるフルオロスルホニルイミド塩を得ることを特徴とするフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。

    上記一般式中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R3は、フッ素、塩素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、mは2又は3の整数を示す。
  2. 請求項1に記載の方法で得られた一般式(II)の化合物をカチオン交換して下記一般式(III)で表されるフルオロスルホニルイミド塩を得る請求項1に記載のフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。

    上記一般式中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R2は、HまたはR1以外の金属イオン、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、mは2又は3の整数、lは1〜3の整数を示す。
  3. 請求項1に記載の方法で得られた一般式(II)の化合物を、オニウムカチオンを含む有機化合物と反応させて下記一般式(VI)で表されるフルオロスルホニルイミドの有機塩を得、このフルオロスルホニルイミドの有機塩(VI)をカチオン交換反応して一般式(III)で表されるフルオロスルホニルイミド塩を得る請求項1または2に記載のフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。

    上記一般式中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R2は、HまたはR1以外の金属イオン、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、R5は、有機カチオンを示し、lは1〜3の整数、mは2又は3の整数、nは有機カチオンR5の価数に相当し、1〜3の整数を示す。
  4. 請求項1に記載の方法で得られた一般式(II)の化合物を、オニウムカチオンを含む有機化合物と反応させて下記一般式(VI)で表されるフルオロスルホニルイミド塩を得る請求項1に記載のフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。

    上記一般式中、R1は、第11族〜第15族、第4周期〜第6周期の元素(但し、砒素およびアンチモンは除く)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、R5は、有機カチオンを示し、mは2又は3の整数、nは有機カチオンR5の価数に相当し、1〜3の整数を示す。
  5. 請求項2または3に記載の方法で得られた一般式(III)の化合物を、オニウムカチオンを含む有機化合物と反応させて一般式(VI)で表されるフルオロスルホニルイミド塩を得る請求項2または3に記載のフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。

    上記一般式中、R2は、HまたはR1以外の金属イオン、R4は、フッ素又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、R5は、有機カチオンを示し、lは1〜3の整数、nは有機カチオンR5の価数に相当し、1〜3の整数を示す。
  6. 上記フッ化物がCu,Zn,Biよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むものである請求項1〜5のいずれかに記載のフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
  7. 上記一般式(I)においてR3が塩素、一般式(II)及び一般式(III)においてR4がフッ素である請求項1〜6のいずれかに記載のフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
  8. 上記一般式(III)中、R2で示される金属イオンが、アルカリ金属である請求項2、3または5のいずれかに記載のフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
  9. 上記一般式(I)で表される化合物が、出発原料として塩化シアンを用いて得られたものである請求項1〜8のいずれかに記載のフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
  10. 上記一般式(I)で表される化合物が、出発原料としてアミド硫酸を用いて得られたものである請求項1〜8のいずれかに記載のフルオロスルホニルイミド塩の製造方法。
  11. 上記一般式(II)で表され、請求項1に記載の製造方法により得られることを特徴とするフルオロスルホニルイミド塩。
  12. 上記一般式(III)で表され、請求項2または3に記載の製造方法により得られることを特徴とするフルオロスルホニルイミド塩。
  13. 上記一般式(VI)で表され、請求項4または5に記載の製造方法により得られることを特徴とするフルオロスルホニルイミドの有機塩。
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