JP2009114390A - エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、及びその硬化物 Download PDF

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Abstract

【課題】無色透明で、強度、耐熱性、耐光性、耐熱劣化性、及び耐熱衝撃性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のエポキシ樹脂組成物は、25℃における粘度が1000mPa・s以下の脂環式エポキシ樹脂Aと、25℃で固体の脂環式エポキシ樹脂Bとを、A/B(重量比)=35/65〜95/5の割合で含む混合物であって、45℃における粘度が60000mPa・s以下である脂環式エポキシ樹脂混合物と、25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物とジカルボン酸を含有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物、より具体的には、25℃で液体の脂環式エポキシ樹脂と、25℃で固体の脂環式エポキシ樹脂とを特定の割合で含有する脂環式エポキシ樹脂混合物であって、45℃において特定の粘度を有する脂環式エポキシ樹脂混合物と、酸無水物、及び、ジカルボン酸を含有するエポキシ樹脂組成物、及びその硬化物に関する。前記エポキシ樹脂組成物及びその硬化物は、コーティング材料、接着剤、光硬化性材料、及びLED(発光ダイオード)、CCD(電荷結合素子)のような受光素子などの光半導体関連の電気・電子用封止材料などの用途を含む様々な方面で有用である。
各種の屋内、屋外表示板、画像読み取り用光源、交通信号、大型ディスプレイ用ユニットなどに実用化されている光半導体などの発光装置は、主に、エポキシ樹脂封止によって発光体の周辺が保護されている。封止剤として使用されているエポキシ樹脂としては、一般に、ビスフェノールAなどの芳香族エポキシ樹脂であり、硬化剤として脂環式酸無水物が広く使用されている。
近年、LED素子の高出力化及び青色化、白色化が急激に展開され、比較的短波長で、且つ、高出力な発光が行われるようになってきており、上述の芳香族エポキシ樹脂で封止すると芳香環が短波長の光を吸収することで、封止剤として使用した樹脂の劣化が起こり、黄変により輝度低下の問題や、変色が発生するという問題が起こっている。
そこで、環状オレフィンを酸化して得られる液状の脂環式エポキシ樹脂を使用して封止したLEDが提案されている(特許文献1、2参照)。しかし、この脂環式エポキシ樹脂の硬化物は各種応力に弱く、冷熱サイクル(加熱と冷却を繰り返すこと)などによってクラック(ひび割れ)を生じやすいため耐熱衝撃性が低く、液状の脂環式エポキシ樹脂単独では、LED素子を封止する用途に不向きであった。
そこで、芳香環を水添した液状の核水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主体とし、脂環式エポキシ樹脂及びリン系酸化防止剤を配合し、無水メチルヘキサヒドロフタル酸を硬化剤として使用して封止したLEDが提案されている(特許文献3参照)。しかし、前記脂環式エポキシ樹脂は無色透明性に優れるものの、硬化物の強度が不足しており、耐熱衝撃性)が低く、LED素子の封止剤としては適しているとは言えない。
一方、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の封止材料としての特性は、硬化物が着色すること以外は優れており、この特性を生かすため、エポキシ当量の高い核水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂が提案されている(特許文献4参照)。しかし、前記エポキシ樹脂は、25℃で固体であり、封止剤として使用するには困難である。更に、硬化物のガラス転移温度が低く、高輝度の青色又は白色LEDに使用するには不適であった。
特開平9−213997号公報 特開2000−196151号公報 特開2003−12896号公報 特開2005−120357号公報
従って、本発明の目的は、無色透明で、強度、耐熱性、耐光性、耐熱劣化性、及び耐熱衝撃性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することにある。更に本発明の他の目的は、該エポキシ樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物、該エポキシ樹脂組成物を封止剤として使用した光半導体装置、該エポキシ樹脂組成物からなる接着剤を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の構造を有し、且つ、25℃における粘度が1000mPa・s以下を示す液体状の脂環式エポキシ樹脂と、25℃において固体状の脂環式エポキシ樹脂とを特定の割合で含み、45℃における粘度が60000mPa・s以下を示す脂環式エポキシ樹脂混合物と、酸無水物と、ジカルボン酸とを含有するエポキシ樹脂組成物は、硬化することにより、無色透明で、強度、耐熱性、耐光性、耐熱劣化性、及び耐熱衝撃性に優れた硬化物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記式(1)
Figure 2009114390
[式中、Yは単結合、メチルメチレン基(−CH(CH3)−)、エチレン基(−CH2CH2−)、メチルエチレン基(−CH2CH(CH3)−)、プロピレン基(−CH2CH2CH2−)、炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基、−C(=O)O−、−CO−、又は、2価の炭化水素基の1又は2以上と−C(=O)O−、−CO−、又は−O−のうち少なくとも1つが結合した2価の複素環基を示す。また、シクロヘキサン環にはアルキル基が結合していてもよい]
で表される脂環式エポキシ樹脂、又は、分子内に環状脂肪族骨格及び2つ以上のエポキシ基を有し、且つ、2つ以上のエポキシ基のうち、1つのみが環状脂肪族骨格を構成する2つの炭素原子を含有している脂環式エポキシ樹脂であって、25℃における粘度が1000mPa・s以下の脂環式エポキシ樹脂Aと、芳香族エポキシ樹脂を核水素化して得られる25℃で固体の脂環式エポキシ樹脂Bとを、A/B(重量比)=35/65〜95/5の割合で含む混合物であって、45℃における粘度が60000mPa・s以下である脂環式エポキシ樹脂混合物と、25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物とジカルボン酸を含有するエポキシ樹脂組成物を提供する。
前記ジカルボン酸としては、下記式(2)
Figure 2009114390
(式中、R1〜R8は、同一又は異なって、水素原子、メチル基、又は、エチル基を示す。Xは、炭素数2〜20の2価の直鎖状、分岐鎖状、若しくは、炭素数3〜20の2価の環状炭化水素基、又はこれらの2以上が酸素原子を介して若しくは介することなく結合した総炭素数が4〜22の2価の基を示す)
で表される環状脂肪族骨格を有するジカルボン酸が好ましい。
前記エポキシ樹脂組成物は、酸化防止剤及び/又は紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
更に、本発明は、前記エポキシ樹脂組成物を使用して封止した光半導体装置を提供する。
更にまた、本発明は、前記エポキシ樹脂組成物からなる接着剤を提供する。
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化することにより、無色透明で、強度、耐熱性、耐光性、耐熱劣化性、及び耐熱衝撃性に優れた硬化物を得ることができるため、前記エポキシ樹脂組成物は、光半導体関連の電気・電子用封止材料などの用途を含む様々な方面で好適に使用することができる。
[エポキシ樹脂組成物]
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、前記式(1)で表される脂環式エポキシ樹脂、又は、分子内に環状脂肪族骨格及び2以上のエポキシ基を有し、且つ、2以上のエポキシ基のうち、1つのみが環状脂肪族骨格を構成する2つの炭素原子を含んで形成されている脂環式エポキシ樹脂であって、25℃における粘度が1000mPa・s以下の脂環式エポキシ樹脂Aと、芳香族エポキシ樹脂を核水素化して得られる25℃で固体の脂環式エポキシ樹脂Bとを、A/B(重量比)=35/65〜95/5の割合で含む混合物であって、45℃における粘度が60000mPa・s以下である脂環式エポキシ樹脂混合物と、25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物と、ジカルボン酸を含有する。
前記脂環式エポキシ樹脂Aは、前記式(1)で表される脂環式エポキシ樹脂、又は、分子内に環状脂肪族骨格及び2以上のエポキシ基を有し、且つ、2以上のエポキシ基のうち、1つのみが環状脂肪族骨格を構成する2つの炭素原子を含有している脂環式エポキシ樹脂であって、25℃における粘度が1000mPa・s以下を示す。
式(1)で表される脂環式エポキシ樹脂としては、Yは単結合、メチルメチレン基(−CH(CH3)−)、エチレン基(−CH2CH2−)、メチルエチレン基(−CH2CH(CH3)−)、プロピレン基(−CH2CH2CH2−)、炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基、−C(=O)O−、−CO−、又は、2価の炭化水素基の1又は2以上と−C(=O)O−、−CO−、又は−O−のうち少なくとも1つが結合した2価の複素環基を示す。また、シクロヘキサン環にはアルキル基が結合していてもよい
炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、シクロペンチリデン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン、シクロヘキシリデン基等の2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。2価の炭化水素基の1又は2以上と−C(=O)O−、−CO−、又は−O−のうち少なくとも1つが結合した2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の直鎖状、又は、分岐鎖状の炭素数1〜18(なかでも炭素数1〜10が好ましい)のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基(特に2価のシクロアルキレン基が好ましい)等が挙げられる。また、シクロヘキサン環に結合していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜6の直鎖状、又は、分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。なかでも、メチル基が好ましい。シクロヘキサン環に結合していてもよいアルキル基の数としては、0〜3個程度である。
式(1)で表される脂環式エポキシ樹脂の代表的な例として、下記式(3a)〜(3g)で表される化合物が挙げられる。なお、下記式中、nは、1〜30の整数を示す。
Figure 2009114390
分子内に環状脂肪族骨格及び2以上のエポキシ基を有し、且つ、2以上のエポキシ基のうち、1つのみが環状脂肪族骨格を構成する2つの炭素原子を含んで形成されている脂環式エポキシ樹脂の代表的な例としては、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2009114390
脂環式エポキシ樹脂Aとしては、25℃における粘度が1000mPa・s以下(例えば、100〜1000mPa・s)であり、なかでも、200〜800mPa・sが好ましい。脂環式エポキシ樹脂Aとしては、前記式(3)又は式(4)で挙げられている脂環式エポキシ樹脂を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも脂環式エポキシ樹脂Aとしては、前記式(3b)で表される脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
脂環式エポキシ樹脂Aは、公知慣用の方法により合成することができる。例えば、脂環式エポキシ樹脂Aは、対応する脂環式オレフィン化合物(環状オレフィン化合物)を脂肪族過カルボン酸(例えば、過酢酸など)等によってエポキシ化することによって合成することができる。この場合、実質的に無水の脂肪族過カルボン酸を使用して合成されたものが高いエポキシ化率を有する点で好ましい(特開2002−275169号公報参照)。更に、脂環式エポキシ樹脂Aとしては、商品名「CEL−2021P」、「GT−401」、「GT−403」、「GT−301」、「GT−302」(ダイセル化学工業社製)等の市販品を使用することもできる。
なお、本発明においては、脂環式エポキシ樹脂Aと共に、エポキシ基が環状脂肪族骨格を構成する炭素原子を共有することなく形成されている脂環式エポキシ樹脂を使用してもよい。前記エポキシ基が環状脂肪族骨格を構成する炭素原子を共有することなく形成されている脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、商品名「YX−8000」、「YX−8034」(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名「HBE−100」(新日本理化社製)、商品名「ST−3000」(東都化成社製)等の液状核水素型エポキシ樹脂;商品名「DME−100」(新日本理化社製)等のシクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ基が環状脂肪族骨格を構成する炭素原子を共有することなく形成されている脂環式エポキシ樹脂の混合比としては、脂環式エポキシ樹脂A100重量部に対して5〜50重量部程度である。
本発明における脂環式エポキシ樹脂Bは、透明性に優れる性質脂環式エポキシ樹脂であって、芳香族エポキシ樹脂を核水素化して得られる25℃で固体の脂環式エポキシ樹脂であれば、特に限定されることはなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂又はビスフェノールF型エポキシ樹脂を核水素化して得られる脂環式エポキシ樹脂、核水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂をカルボン酸で2以上の多量体化した脂環式エポキシ樹脂が挙げられ、なかでも、核水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂をカルボン酸で2以上の多量体化した脂環式エポキシ樹脂が好ましく、特に、下記式(5)
Figure 2009114390
(式中、mは自然数を示す)
で表される芳香族エポキシ樹脂を核水素化して得られる脂環式エポキシ樹脂が好ましい。脂環式エポキシ樹脂Bは、前記脂環式エポキシ樹脂を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
脂環式エポキシ樹脂Bのエポキシ当量としては、例えば、500〜5000、好ましくは550〜4500、特に好ましくは600〜4000程度である。脂環式エポキシ樹脂Bの核水素化率は、96%以上であることが好ましく、特に光に対する安定性を要する場合は98%以上であることが好ましい。なお、核水素化率の上限は100%である。前記核水素化率が96%を下回ると、例えば、本発明に係るエポキシ樹脂を窒化物半導体のLEDの封止に使用した場合、短波長の光を吸収し経時的に樹脂の劣化が起こり、黄変により発光輝度が著しく低下する場合がある。
また、脂環式エポキシ樹脂Bの軟化温度としては、例えば、60〜150℃、好ましくは、65〜140℃程度である。軟化温度が60℃を下回ると、べたつきやすく、融着しやすくなり、作業性が低下する場合がある。一方、軟化温度が150℃を上回ると、他のエポキシ樹脂や硬化剤等と混合する際に脂環式エポキシ樹脂Bを高温で溶解する必要が生じ、作業性や経済性が低下する場合がある。脂環式エポキシ樹脂Bの軟化温度は、構成するエポキシ樹脂のエポキシ当量を調整することにより適宜調節することができる。例えば、脂環式エポキシ樹脂Bとして、エポキシ当量の大きい高分子量の芳香族エポキシ樹脂を含有すると、軟化温度をより高くすることができる。
脂環式エポキシ樹脂Bの波長400nmにおける光透過性は、例えば、脂環式エポキシ樹脂B(厚さ1mm)において、85%以上、なかでも90%以上であることが好ましい。光透過性が85%を下回ると、得られるエポキシ樹脂硬化物の透明性が低下し、光学用材料には不向きとなる場合がある。
本発明における脂環式エポキシ樹脂Bは、公知慣用の方法、例えば、特開2005−120357号公報に記載の方法により合成することができる。すなわち、エポキシ当量が500〜10000(好ましくは600〜6000)で、且つ、アルカリ金属元素及び周期表15族元素の合計含有量が10重量ppm以下の芳香族エポキシ樹脂(特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び/又はビスフェノールF型エポキシ樹脂)を、遷移元素化合物(例えば、白金化合物)を含有する触媒の存在下、核水素化することにより合成することができる。
更に、脂環式エポキシ樹脂Bとして、商品名「YL−7170」(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名「ST−4000」(東都化成社製)、下記式(6)
Figure 2009114390
(式中、Rは、水素原子、又は、炭素数1〜3のアルキル基を示し、pは、自然数を示す)
で表される25℃で固体の脂環式エポキシ樹脂(商品名「EHPE−3150」、ダイセル化学工業社製)等の市販品を使用することもできる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、脂環式エポキシ樹脂Aと脂環式エポキシ樹脂Bの比率が、A/B(重量比)=35/65〜95/5の範囲内である脂環式エポキシ樹脂混合物を含有する。脂環式エポキシ樹脂Aと脂環式エポキシ樹脂Bの比率が、35/65を下回ると、エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度が低くなり過ぎ、耐光性、耐熱劣化性が低下する場合がある。また、脂環式エポキシ樹脂組成物が45℃において高粘度又は固体状となるため、注型材料としては不向きとなる場合がある。一方、脂環式エポキシ樹脂Aと脂環式エポキシ樹脂Bの比率が、95/5を超えると、エポキシ樹脂硬化物の耐熱衝撃性が低下し、冷熱サイクルなどによってひび割れが発生しやすくなる場合がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記本発明の脂環式エポキシ樹脂A及び脂環式エポキシ樹脂B以外のエポキシ化合物を含んでいてもよい。この場合、本発明のエポキシ樹脂組成物中の脂環式エポキシ樹脂Aと脂環式エポキシ樹脂Bの含有量としては、エポキシ樹脂組成物が含有する脂環式エポキシ樹脂全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95%以上であり、脂環式エポキシ樹脂が脂環式エポキシ樹脂Aと脂環式エポキシ樹脂Bのみで構成されていてもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する脂環式エポキシ樹脂混合物の45℃における粘度は、60000mPa・s以下、例えば、1000〜60000mPa・sの範囲内である。粘度が60000mPa・sを超えると、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎ、取扱性が低下し、注型材料としては不向きとなる場合がある。一方、粘度が1000mPa・sを下回ると、硬化するのに時間がかかり、作業性が低下する場合がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物中に含有する前記25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物は、硬化剤としての機能を有する。25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物としては、例えば、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドエチレンテトラヒドロフタル酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸等の環状脂肪族酸無水物を挙げることができる。それらのなかでも、エポキシ樹脂組成物の耐光性が向上する点で、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸等の水素化された環状脂肪族酸無水物を好適に使用することができる。なお、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物はエポキシ樹脂硬化物に着色が発生しやすいため好ましくない。25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物としては、前記環状脂肪族酸無水物を単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物の使用量としては、本発明に係るエポキシ樹脂組成物中の脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して、例えば、50〜120重量部、好ましくは、60〜110重量部程度である。脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して、50重量部を下回ると、硬化性が不十分となる場合があり、一方。脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して、120重量部を上回ると、エポキシ樹脂硬化物の色相、耐熱性、及び、耐湿性のバランスを損なう場合があるため好ましくない。
また、本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、前記25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物以外に、必要に応じて、その他の硬化剤を併用してもよい。その他の硬化剤としては、例えば、アミンのBF3錯体化合物;脂肪族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、ヨードニウム塩、及びホスホニウム塩等のブレンステッド酸塩類;アジピン酸;セバシン酸;テレフタル酸;トリメリット酸;カルボキシル基含有ポリエステル等のポリカルボン酸類等が挙げられる。なお、フェノール樹脂、レゾール類、アミン系硬化剤は、エポキシ樹脂硬化物が黄色又は赤色系の着色が発生するため好ましくない。また、ジシアンジアミド類、アジピン酸ジヒドラジドやフタル酸ジヒドラジド等の有機酸ヒドラジド類は液状の脂環式エポキシ樹脂に対して反応性が低いため好ましくない。その他の硬化剤の使用量としては、25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物100重量部に対して、例えば、1〜10重量部程度である。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、前記硬化剤と共に硬化促進剤を使用してもよい。硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−アザビシクロ[4.3.0]ノネン等の3級アミン類及びその塩類;ホスホニウム塩、イミダゾール類、有機ホスフィン化合物類又はその塩類;オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ等の金属石鹸類、アルミ又はチタンなどのキレート化合物などが挙げられる。硬化促進剤は、単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記硬化促進剤の使用量としては、本発明に係るエポキシ樹脂組成物中の脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは、0.2〜2重量部程度である。硬化促進剤の使用量が0.1重量部を下回ると、又は、5重量部を上回ると、エポキシ樹脂硬化物の色相、耐熱性、及び、耐湿性のバランスを損なうため好ましくない。
本発明に係るエポキシ樹脂組成物においては、更に、ジカルボン酸を硬化剤として添加することを特徴とする。本発明のエポキシ樹脂組成物中に含有するジカルボン酸としては、上記25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物に溶解するものであれば特に制限されることはなく、環状脂肪族骨格を有する酸無水物と2〜4官能のアルコール性水酸基を有する化合物とを反応させて合成することができる。ジカルボン酸を添加することにより、エポキシ樹脂組成物の硬化反応を緩やかに進行させることができ、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物の透明性、強度、耐熱性、耐熱劣化性、耐光性、耐熱衝撃性を向上させることができる。
前記ジカルボン酸としては、2〜4官能のジカルボン酸が好ましく、なかでも、2官能のジカルボン酸がより好ましい。本発明におけるジカルボン酸としては、上記式(2)で表される環状脂肪族骨格を有するジカルボン酸を好適に使用することができる。式(2)中、R1〜R8は、同一又は異なって、水素原子、メチル基、又は、エチル基を示す。Xは、炭素数2〜20の2価の直鎖状、分岐鎖状、若しくは、炭素数3〜20の2価の環状炭化水素基、又はこれらの2以上が酸素原子を介して若しくは介することなく結合した総炭素数が4〜22の2価の基を示す。
前記Xにおいて、炭素数2〜20の2価の直鎖状炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ウンデシレン、ペンタデシレン、オクタデシレン基等が挙げられる。
前記Xにおいて、炭素数2〜20の2価の分岐鎖状炭化水素基としては、例えば、メチルメチレン、メチルエチレン、ジメチルメチレン、2−メチルプロピレン、2,2−ジメチルプロピレン、2−メチルブチレン、2,3−ジメチルブチレン、2,2−ジメチルブチレン、2−エチル−2−メチルプロピレン、2−メチルペンチレン、2,2−ジメチルペンチレン、2,3−ジメチルペンチレン、2,4−ジメチルペンチレン、2,3,4−トリメチルペンチレン、2−エチル−2−メチルペンチレン基等が挙げられる。
前記Xにおいて、炭素数3〜20の2価の環状炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、シクロペンチリデン、1,2−シクロへキシレン、1,3−シクロへキシレン、1,4−シクロへキシレン、シクロヘキシリデン基等が挙げられる。
ジカルボン酸の合成原料である環状脂肪族骨格を有する酸無水物としては、上記25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物の例に挙げられている環状脂肪族酸無水物と同様の例を挙げることができる。本発明においては、なかでも、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸が好適に使用される。
ジカルボン酸の合成原料である2〜4官能のアルコール性水酸基を有する化合物としては、2〜4価の脂肪族アルコール、及び、環状脂肪族骨格を含む2〜4価のアルコールが挙げられる。2〜4価の脂肪族アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールプロパン等が挙げられる。環状脂肪族骨格を含む2〜4価のアルコールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等が挙げられる。本発明においては、なかでも、環状脂肪族骨格を含む2〜4価のアルコールが好適に使用される。
ジカルボン酸合成における環状脂肪族骨格を有する酸無水物と2〜4官能のアルコール性水酸基を有する化合物との反応は、溶媒中で行われることが好ましい。反応に使用する溶媒としては、トルエン、キシレン、プソイドクメン、クメン、ヘキサン、オクタン、ウンデカン、ドデカン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。また、上記環状骨格を有する酸無水物が液状である場合は、該酸無水物を溶媒とすることもできる。その場合は、別に溶媒を使用する必要がない。
ジカルボン酸合成における環状脂肪族骨格を有する酸無水物と2〜4官能のアルコール性水酸基を有する化合物との反応温度としては、例えば、30〜120℃、なかでも35〜100℃が好ましい。反応温度が30℃を下回ると、反応速度が低下する場合があり、一方、反応温度が120℃を超えると、急激に反応が起こり、突沸や副生成物の増加、着色などの問題が発生する場合がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含有するジカルボン酸としては、なかでも、無水ヘキサヒドロフタル酸及び/又は無水メチルヘキサヒドロフタル酸と、環状脂肪族骨格を含む2〜4価のアルコールとを反応させて得られたジカルボン酸が好ましく、なかでも、無水ヘキサヒドロフタル酸及び/又は無水メチルヘキサヒドロフタル酸と、1、4−シクロヘキサンジメタノール、又は水添ビスフェノールAとを反応させて得られたジカルボン酸が好ましく、特に、無水ヘキサヒドロフタル酸及び/又は無水メチルヘキサヒドロフタル酸と1、4−シクロヘキサンジメタノールとを反応させて得られたジカルボン酸が、耐熱黄変性(耐熱劣化性)及び強度の点で好ましい。
本発明に係るエポキシ樹脂組成物中のジカルボン酸の配合割合としては、エポキシ樹脂組成物中の脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して、例えば、1〜200重量部、好ましくは、5〜150重量部程度である。
本発明のエポキシ樹脂組成物、特に発光素子封止材料として使用するエポキシ樹脂組成物には、加熱時の酸化劣化を防止して、且つ、着色の少ないエポキシ樹脂硬化物を得ることを目的として、酸化防止剤を添加することが好ましい。前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−p−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール類;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のビスフェノール類;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が挙げられる。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2−t−ブチル−6−メチル−4−{2−(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、単独で、又は、2種以上を組み合わせて使用することができ、なかでも、フェノール系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤、又はフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤のように、2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
酸化防止剤の使用量としては、本発明に係るエポキシ樹脂組成物中の脂環式エポキシ樹脂100重量部に対して、例えば、0.008〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部程度である。酸化防止剤の使用量が脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して0.008重量部を下回ると、酸化劣化を防止できない場合があり、脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して1重量部を上回ると、硬化物が黄変、析出する場合がある。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂硬化物の紫外線照射による劣化の防止を目的として紫外線吸収剤を添加することが好ましい。前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられ、なかでも、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。紫外線吸収剤の使用量としては、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物中の脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して、3重量部以下、例えば0.01〜3重量部程度である。紫外線吸収剤の使用量が脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して0.01重量部を下回ると、紫外線による劣化を防止できない場合があり、脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して3重量部を上回ると、硬化物が着色する場合がある。
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化触媒を含有していてもよい。前記硬化触媒としては、例えば、カチオン重合開始剤などが挙げられる。カチオン重合開始剤としては、光照射によりカチオン種またはブレンステッド酸を発生する光カチオン重合開始剤、または熱によりカチオン種またはブレンステッド酸を発生する熱カチオン重合開始剤を用いることができる。カチオン重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。光カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホニウム塩系、ヨードニウム塩系、ジアゾニウム塩系、アレン−イオン錯体系等の化合物が使用できる。例えば、スルホニウム塩系の「UVACURE1590」(ダイセル・サイテック(株)製)、「DAICAT11」(ダイセル化学工業(株)製)、「CD−1011」(サートマー社製)、「SI−60L」、「SI−80L」、「SI−100L」(以上、三新化学工業(株)製)等;ヨードニウム塩系の「DAICAT12」(ダイセル化学工業(株)製)、「CD−1012」(サートマー社製);ジアゾニウム塩系の「SP−150」、「SP−170」(旭電化工業(株)製)などが挙げられる。
熱カチオン重合開始剤としては、例えば、例えば、アリールジアゾニウム塩(例えば、旭電化工業(株)製「PP−33」)、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩(例えば、スリーエム社製「FC−509」、G.E.社製「UVE1014」、旭電化工業(株)製「CP−66」、「CP−77」、三新化学工業(株)製「SI−60L」、「SI−80L」、「SI−100L」、「SI−110L」)、アレン−イオン錯体(例えば、チバガイギー社製「CG−24−61」)等が挙げられる。その他、アルミニウムやチタンなど金属とアセト酢酸エステルまたはジケトン類とのキレート化合物とシラノールまたはフェノール類との系であってもよい。上記キレート化合物としては、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスアセト酢酸エチル等がある。シラノールまたはフェノール類としては、トリフェニルシラノールやビスフェノールS等が挙げられる。
硬化触媒の使用量としては、本発明に係るエポキシ樹脂組成物中の脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して、例えば0.1〜8重量部、好ましくは0.3〜5重量部程度である。硬化触媒の使用量が脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して、0.1重量部を下回ると、硬化性が不十分となりやすく、一方、脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して、8重量部を上回ると硬化物の着色や発泡が起きる場合がある。
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物には、粘度や透明性等に悪影響を与えない範囲で各種の添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート等の2〜6官能の複素環エポキシ樹脂(脂環式エポキシ樹脂A又は脂環式エポキシ樹脂Bを除く);酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物;微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ等のケイ素化合物;ガラスビーズ等の透明フィラー;水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、二硫化モリブデン等の粉末状補強剤又は充填剤;二酸化チタン、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤、有機色素等の着色剤又は顔料;三酸化アンチモン、ブロム化合物、リン化合物等の難燃材;イオン吸着体;カップリング剤;離型剤等などのエポキシ樹脂組成物に慣用されている各種の添加剤を挙げることができる。
前記添加剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物の透明性を損なわない範囲で添加することができ、2〜6官能の複素環エポキシ樹脂(脂環式エポキシ樹脂A又は脂環式エポキシ樹脂Bを除く)、金属酸化物、ケイ素化合物、透明フィラー、金属水酸化物、粉末状補強剤や、充填剤の添加量は、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物中の脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して、それぞれ100重量部以下、好ましくは、10〜100重量部程度であり、着色剤、顔料、難燃材、イオン吸着体、カップリング剤、離型剤等の添加量は、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物中の脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して、それぞれ30重量部以下、例えば0.01〜30重量部程度である。
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂硬化物の性質を改善する目的で、種々の硬化性モノマー、オリゴマー、及びエポキシ樹脂以外の合成樹脂を配合することができ、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等のジオール類、トリオール類、テトラオール類、ビニルエーテル類、オキセタン化合物、フッ素樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等を単独で、又は、2種以上を組み合わせて配合することができる。配合量としては、本発明のエポキシ樹脂組成物本来の性質を損なわない範囲内で配合することができ、例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物中の脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に対して、50重量部以下であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、公知慣用の方法で製造することができ、例えば、所定量の脂環式エポキシ樹脂Aと脂環式エポキシ樹脂B、酸無水物、ジカルボン酸、必要に応じて酸化防止剤及び/又は紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合して、真空加熱下で、気泡を排除しつつ、攪拌機を使用して撹拌、混合することにより製造することができる。撹拌、混合の際の温度としては、添加剤の種類等によって異なるが、通常、10〜60℃程度が好ましい。撹拌、混合の際の温度が10℃未満では、粘度が高すぎて均一な撹拌、混合作業が困難となる場合があり、一方、撹拌、混合の際の温度が60℃を超えると、撹拌、混合中に硬化反応が起き、正常なエポキシ樹脂組成物が得られない場合があるので好ましくない。前記攪拌機としては、減圧装置を備えた1軸または多軸エクストルーダー、ニーダー、ディソルバーのような汎用の機器を使用することができる。また、前記攪拌機による攪拌時間としては、例えば5〜60分間程度である。
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、粘着性を有し、且つ、液体形状を呈するため、また、該エポキシ樹脂組成物を硬化することにより得られるエポキシ樹脂硬化物は、透明性が高く、曲げ強度、耐熱性、耐光性、耐熱劣化性、及び耐熱衝撃性に優れるため、コーティング材料、接着剤、光硬化性材料、及びLED(発光ダイオード)、CCD(電荷結合素子)のような受光素子などの光半導体関連の電気・電子用封止材料などの用途を含む様々な方面で有用である。
[エポキシ樹脂硬化物]
本発明に係るエポキシ樹脂硬化物は、前記エポキシ樹脂組成物を硬化させることにより得られる。エポキシ樹脂組成物を硬化させる方法としては、例えば、加熱及び/又は光照射して硬化させる方法が挙げられる。
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、硬化剤として酸無水物を含有するため、加熱することにより酸無水物とエポキシ基が反応してエポキシ樹脂組成物が硬化する。加熱温度としては、例えば30〜240℃、好ましくは50〜200℃程度である。また、硬化を2段階以上に分けて行ってもよい。例えば、30〜130℃(好ましくは50〜130℃)の温度で一次硬化させた後、135〜240℃(好ましくは135〜200℃)の温度で二次硬化させることにより、透明性や耐熱性等の物性の良好な硬化物が得られる。更に、カチオン重合開始剤として、熱カチオン重合開始剤を含有する場合は、加熱することで、酸無水物が重合を開始すると共に、カチオン重合が開始してエポキシ樹脂組成物が硬化する。加熱温度としては、例えば30〜240℃、好ましくは35〜200℃である。硬化は2段階以上で行ってもよく、例えば30〜100℃(好ましくは30〜80℃)の温度で一次硬化させた後、110〜240℃(好ましくは120〜200℃)の温度で二次硬化させることにより、透明性や耐熱性等の物性の良好な硬化物が得られる。
更にまた、カチオン重合開始剤として、光カチオン重合開始剤を含有する場合は、加熱と同時に、又は、加熱の前又は後に、光を照射することにより、酸無水物が重合を開始すると共に、カチオン重合が開始してエポキシ樹脂組成物が硬化する。照射する光としては、紫外線、電子線等の活性エネルギー線などを使用できる。紫外線照射を行う際の光源としては、通常、ランプ出力80〜300W/cm程度の照射源が用いられ、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、LED等が挙げられる。照射時間は、光源の種類、光源と塗布面との距離、その他の条件により異なるが、長くとも数十秒であり、通常は数秒程度である。活性エネルギー線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。電子線照射の場合は、50〜1000KeVの範囲のエネルギーを持つ電子線を用い、2〜5Mradの照射量とすることが好ましい。
エポキシ樹脂組成物を硬化させるために要する加熱時間としては、特に限定されることはなく、エポキシ樹脂組成物を構成する成分、及びエポキシ樹脂組成物の量などにより適宜調節することができ、例えば、1〜5時間程度一次硬化させた後、1〜5時間程度二次硬化させる方法などが挙げられる。
硬化反応は、常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。硬化反応の雰囲気としては硬化を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、硬化剤としてジカルボン酸を含有するため、エポキシ樹脂組成物を硬化させる際に、硬化反応を緩やかに進行させることができ、エポキシ樹脂組成物を硬化することにより得られるエポキシ樹脂硬化物の透明性、強度、耐熱性、耐熱劣化性、耐光性、耐熱衝撃性を向上させることができる。
前記方法によりエポキシ樹脂組成物を硬化して得られた本発明に係るエポキシ樹脂硬化物は高い透明性を有する。透明性の指標としては、光線透過率を用いることができる。本発明に係るエポキシ樹脂硬化物の光線透過率としては、例えばエポキシ樹脂硬化物(厚さ3mm)の波長400nmにおける光線透過率が80〜95%程度、より好ましくは80〜90%程度である。
更に、本発明に係るエポキシ樹脂硬化物は耐熱性に優れる。耐熱性の指標としては、例えば、ガラス転移温度、平均線膨張率などを用いることができる。熱機械分析装置を使用して測定したエポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度は、130〜185℃程度、より好ましくは135〜155℃程度である。また、50℃〜100℃までのエポキシ樹脂硬化物(厚さ10mm)の平均線膨張率は、50〜80ppm、より好ましくは50〜70ppm程度である。また、前記エポキシ樹脂硬化物は曲げ強度に優れ、曲げ強度の指標として、例えば、エポキシ樹脂硬化物(厚さ4mm)の曲げ弾性率は、2075〜2750MPa、より好ましくは2350〜2750MPa程度である。
更にまた、本発明に係るエポキシ樹脂硬化物は、耐熱劣化性、耐光性、耐熱衝撃性に優れる。本発明において耐熱劣化性は、エポキシ樹脂硬化物を長時間、高温下に曝した後における光線透過率を指標とし、例えば、エポキシ樹脂硬化物(厚さ3mm)を120℃で500時間加熱処理を施した場合の波長400nmにおける光線透過率は、74〜93%程度、より好ましくは74〜85%程度である。
本発明において耐光性は、エポキシ樹脂硬化物に長時間、光照射した後における光線透過率を指標とし、例えば、エポキシ樹脂硬化物(厚さ3mm)を照射強度18mW/cm2(メタルハライドランプ使用)で、23℃、300時間光照射した場合の波長400nmにおける光線透過率は、75〜90%程度、より好ましくは80〜90%程度である。
本発明において耐熱衝撃性は、エポキシ樹脂硬化物に冷熱サイクル(加熱と冷却を繰り返すこと)を施した場合に発生するクラック(ひび割れ)の長さを指標とし、例えば、リードフレーム入りエポキシ樹脂硬化物(厚さ3mm)に熱衝撃試験器を使用して−45℃〜100℃の冷熱サイクルを500回行い、エポキシ樹脂硬化物中に発生するクラックの長さを測定することによる。
本発明のエポキシ樹脂硬化物は高い透明性を有し、且つ、長時間高温下に曝しても、また、長時間光を照射しても、高い透明性を保つことができる。更に、冷熱サイクルを施してもクラック(ひび割れ)の発生を大幅に抑制することができる。すなわち、本発明に係るエポキシ樹脂硬化物は、耐熱性、耐熱劣化性、耐光性、及び耐熱衝撃性に優れる特徴を有する。そのため、コーティング材料、接着剤、光硬化性材料、及びLED(発光ダイオード)、CCD(電荷結合素子)のような受光素子などの光半導体関連の電気・電子用封止材料などの用途を含む様々な方面で有用である。
[光半導体装置]
光半導体装置は、外部電気回路から供給される電気信号によって光半導体素子に光を励起させ、この光を透光性部材、非球面レンズ、光ファイバの順に透過させ、光ファイバを介して外部に伝送することによって、高速光通信等に使用される装置、又は、外部から光ファイバによって伝送されてくる光信号を、非球面レンズ、透光性部材を透過させ、光半導体素子に受光させて光信号を電気信号に変換することによって、高速光通信等に使用される装置である。光半導体素子の封止は、エポキシ樹脂組成物を所定の成形型内に注入し、所定の条件で加熱硬化(又は光硬化)して行う。これにより、光半導体素子が本発明のエポキシ樹脂組成物によって封止された光半導体装置が得られる。本発明に係る光半導体装置は、本発明に係るエポキシ樹脂組成物を封止剤として使用し、発光体の周辺を保護しているため、黄変による輝度の低下や変色の問題がなく、また、クラック(ひび割れ)の発生が少ない。そのため、信頼性の高い光半導体装置として有用である。
[接着剤]
本発明に係る接着剤は、本発明に係るエポキシ樹脂組成物を主成分とする接着剤であり、該エポキシ樹脂組成物の特性を損なわない限り、適宜添加物を加えることができる。本発明に係る接着剤は、例えば、LEDの発光体、受光素子等を接着する接着剤として好適に使用することができる。本発明に係る接着剤は、無色透明で、強度、耐熱性、耐光性、耐熱劣化性、及び耐熱衝撃性に優れるため、高熱環境下、光照射環境下でも被着体を強固に接着することができ、長期間の使用により接着部が黄変することがない。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、粘度(Pa・s)は、E型粘度計を使用して測定した。
合成例1
Figure 2009114390
(式中、ジカルボン酸が有するメチル基はシクロヘキサン環の3位、又は、4位に結合する)
攪拌機付きフラスコに、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸混合物(商品名「リカシッドMH−700」、新日本理化社製)100重量部、1,6−ヘキサンジオール35重量部、トルエン100重量部を仕込み、室温、窒素気流下で混合した後、80℃に昇温し、攪拌しながら6時間反応させた。その後、トルエンをエバポレーターにて減圧留去して、ジカルボン酸含有組成物134重量部を得た。
合成例2
Figure 2009114390
(式中、ジカルボン酸が有するメチル基はシクロヘキサン環の3位、又は、4位に結合する)
攪拌機付きフラスコに、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸(商品名「HN−5500E」、日立化成工業社製)100重量部、ネオペンチルグリコール31重量部、トルエン150重量部を仕込み、室温、窒素気流下で混合した後、80℃に昇温し、攪拌しながら7時間反応させた。その後、トルエンをエバポレーターにて減圧留去して、ジカルボン酸含有組成物131重量部を得た。
合成例3
Figure 2009114390
(式中、ジカルボン酸が有するメチル基はシクロヘキサン環の3位、又は、4位に結合する)
攪拌機付きフラスコに、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸(商品名「HN−5500E」、日立化成工業社製)100重量部、トリエチレングリコール44重量部、トルエン150重量部を仕込み、室温、窒素気流下で混合した後、80℃に昇温し、攪拌しながら6時間反応させた。その後、トルエンをエバポレーターにて減圧留去して、ジカルボン酸含有組成物143重量部を得た。
合成例4
Figure 2009114390
(式中、ジカルボン酸が有するメチル基はシクロヘキサン環の3位、又は、4位に結合する)
攪拌機付きフラスコに、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸混合物(商品名「リカシッドMH−700」、新日本理化社製)100重量部、シクロヘキサンジメタノール10重量部を仕込み、室温、窒素気流下で混合した後、50℃に昇温し、攪拌しながら5時間反応させて、ジカルボン酸含有組成物109重量部を得た。
合成例5
Figure 2009114390
(式中、ジカルボン酸が有するメチル基はシクロヘキサン環の3位、又は、4位に結合する)
攪拌機付きフラスコに、4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸混合物(商品名「リカシッドMH−700」、新日本理化社製)100重量部、水添ビスフェノールA12重量部を仕込み、室温、窒素気流下で混合した後、80℃に昇温し、攪拌しながら7時間反応させて、ジカルボン酸含有組成物131重量部を得た。
実施例1
攪拌機付きフラスコに、脂環式エポキシ樹脂A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:商品名「CEL−2021P」、ダイセル化学工業社製、25℃における粘度237mPa・s)55重量部、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「YL−7170」、ジャパンエポキシレジン社製)40重量部、及び、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「EHPE 3150」、ダイセル化学工業社製)5重量部を仕込み、90℃、窒素気流下で混合し、脂環式エポキシ樹脂混合物(45℃における粘度18700mPa・s)を得た。
得られた脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に、硬化剤として無水メチルヘキサヒドロフタル酸(商品名「リカシッドMH−700」、新日本理化社製、25℃における粘度53mPa・s)68重量部、合成例1で得られたジカルボン酸8重量部、硬化促進剤としてDBUオクチル酸塩(商品名「SA−102」、サンアプロ社製)0.6重量部、酸化防止剤として2,6−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部を添加して、攪拌機(商品名「泡取り錬太郎」、シンキー社製)で混合し、エポキシ樹脂組成物1を得た。
実施例2
攪拌機付きフラスコに、脂環式エポキシ樹脂A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:商品名「CEL−2021P」、ダイセル化学工業社製、25℃における粘度237mPa・s)55重量部、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「YL−7170」、ジャパンエポキシレジン社製)25重量部、及び、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「EHPE 3150」、ダイセル化学工業社製)20重量部を仕込み、90℃、窒素気流下で混合し、脂環式エポキシ樹脂混合物(45℃における粘度15600mPa・s)を得た。
得られた脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に、硬化剤として無水メチルヘキサヒドロフタル酸(商品名「リカシッドMH−700」、新日本理化社製、25℃における粘度53mPa・s)86重量部、合成例1で得られたジカルボン酸10重量部、硬化促進剤としてDBUオクチル酸塩(商品名「SA−102」、サンアプロ社製)0.7重量部、酸化防止剤として2,6−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部を添加して、攪拌機(商品名「泡取り錬太郎」、シンキー社製)で混合し、エポキシ樹脂組成物2を得た。
実施例3
攪拌機付きフラスコに、脂環式エポキシ樹脂A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:商品名「CEL−2021P」、ダイセル化学工業社製、25℃における粘度237mPa・s)55重量部、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「YL−7170」、ジャパンエポキシレジン社製)45重量部を仕込み、90℃、窒素気流下で混合し、脂環式エポキシ樹脂混合物(45℃における粘度17360mPa・s)を得た。
得られた脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に、合成例3で得られたジカルボン酸81重量部、硬化促進剤としてDBUオクチル酸塩(商品名「SA−102」、サンアプロ社製)0.5重量部、酸化防止剤として2,6−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部を添加して、攪拌機(商品名「泡取り錬太郎」、シンキー社製)で混合し、エポキシ樹脂組成物3を得た。
実施例4
攪拌機付きフラスコに、脂環式エポキシ樹脂A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:商品名「CEL−2021P」、ダイセル化学工業社製、25℃における粘度237mPa・s)60重量部、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「YL−7170」、ジャパンエポキシレジン社製)40重量部を仕込み、90℃、窒素気流下で混合し、脂環式エポキシ樹脂混合物(45℃における粘度16040mPa・s)を得た。
得られた脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に、硬化剤として3or4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸(商品名「HN5500E」、日立化成工業社製、25℃における粘度58mPa・s)70重量部、合成例4で得られたジカルボン酸8重量部、リン系硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルスルホニウム(商品名「PX4ET」、日本化学工業社製)0.1重量部、酸化防止剤として2,6−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部を添加して、攪拌機(商品名「泡取り錬太郎」、シンキー社製)で混合し、エポキシ樹脂組成物4を得た。
実施例5
攪拌機付きフラスコに、脂環式エポキシ樹脂A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:商品名「CEL−2021P」、ダイセル化学工業社製、25℃における粘度237mPa・s)60重量部、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「YL−7170」、ジャパンエポキシレジン社製)25重量部、及び、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「EHPE 3150」、ダイセル化学工業社製)15重量部を仕込み、90℃、窒素気流下で混合し、脂環式エポキシ樹脂混合物(45℃における粘度14430mPa・s)を得た。
得られた脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に、合成例4で得られたジカルボン酸96重量部、リン系硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルスルホニウム(商品名「PX4ET」、日本化学工業社製)0.25重量部、酸化防止剤として2,6−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部を添加して、攪拌機(商品名「泡取り錬太郎」、シンキー社製)で混合し、エポキシ樹脂組成物5を得た。
実施例6
攪拌機付きフラスコに、脂環式エポキシ樹脂A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:商品名「CEL−2021P」、ダイセル化学工業社製、25℃における粘度237mPa・s)60重量部、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「ST4000」、東都化成社製)10重量部、及び、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「EHPE 3150」、ダイセル化学工業社製)30重量部を仕込み、90℃、窒素気流下で混合し、脂環式エポキシ樹脂混合物(45℃における粘度12270mPa・s)を得た。
得られた脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に、硬化剤として無水メチルヘキサヒドロフタル酸(商品名「リカシッドMH−700」、新日本理化社製、25℃における粘度53mPa・s)100重量部、合成例3で得られたジカルボン酸16重量部、リン系硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルスルホニウム(商品名「PX4ET」、日本化学工業社製)0.3重量部、酸化防止剤として2,6−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部を添加して、攪拌機(商品名「泡取り錬太郎」、シンキー社製)で混合し、エポキシ樹脂組成物6を得た。
実施例7
攪拌機付きフラスコに、脂環式エポキシ樹脂A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:商品名「CEL−2021P」、ダイセル化学工業社製、25℃における粘度237mPa・s)65重量部、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「YL−7170」、ジャパンエポキシレジン社製)35重量部を仕込み、90℃、窒素気流下で混合し、脂環式エポキシ樹脂混合物(45℃における粘度14300mPa・s)を得た。
得られた脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に、合成例5で得られたジカルボン酸81重量部、硬化促進剤としてDBUオクチル酸塩(商品名「SA−102」、サンアプロ社製)0.6重量部、酸化防止剤として2,6−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部を添加して、攪拌機(商品名「泡取り錬太郎」、シンキー社製)で混合し、エポキシ樹脂組成物7を得た。
実施例8
攪拌機付きフラスコに、脂環式エポキシ樹脂A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:商品名「CEL−2021P」、ダイセル化学工業社製、25℃における粘度237mPa・s)75重量部、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「YL−7170」、ジャパンエポキシレジン社製)20重量部、及び、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「EHPE 3150」、ダイセル化学工業社製)5重量部を仕込み、90℃、窒素気流下で混合し、脂環式エポキシ樹脂混合物(45℃における粘度12200mPa・s)を得た。
得られた脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に、硬化剤として無水メチルヘキサヒドロフタル酸(商品名「リカシッドMH−700」、新日本理化社製、25℃における粘度53mPa・s)98重量部、合成例1で得られたジカルボン酸15重量部、硬化促進剤としてDBUオクチル酸塩(商品名「SA−102」、サンアプロ社製)0.5重量部、酸化防止剤として2,6−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部を添加して、攪拌機(商品名「泡取り錬太郎」、シンキー社製)で混合し、エポキシ樹脂組成物8を得た。
実施例9
攪拌機付きフラスコに、脂環式エポキシ樹脂A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:商品名「CEL−2021P」、ダイセル化学工業社製、25℃における粘度237mPa・s)75重量部、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「ST4000」、東都化成社製)20重量部、及び、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「EHPE 3150」、ダイセル化学工業社製)5重量部を仕込み、90℃、窒素気流下で混合し、脂環式エポキシ樹脂混合物(45℃における粘度12010mPa・s)を得た。
得られた脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に、硬化剤として無水メチルヘキサヒドロフタル酸(商品名「リカシッドMH−700」、新日本理化社製、25℃における粘度53mPa・s)105重量部、合成例3で得られたジカルボン酸8重量部、硬化促進剤としてDBUオクチル酸塩(商品名「SA−102」、サンアプロ社製)0.5重量部、酸化防止剤として2,6−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部を添加して、攪拌機(商品名「泡取り錬太郎」、シンキー社製)で混合し、エポキシ樹脂組成物9を得た。
実施例10
攪拌機付きフラスコに、脂環式エポキシ樹脂A(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:商品名「CEL−2021P」、ダイセル化学工業社製、25℃における粘度237mPa・s)75重量部、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「YL−7170」、ジャパンエポキシレジン社製)5重量部、及び、脂環式エポキシ樹脂B(商品名「EHPE 3150」、ダイセル化学工業社製)20重量部を仕込み、90℃、窒素気流下で混合し、脂環式エポキシ樹脂混合物(45℃における粘度11600mPa・s)を得た。
得られた脂環式エポキシ樹脂混合物100重量部に、合成例5で得られたジカルボン酸96重量部、リン系硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルスルホニウム(商品名「PX4ET」、日本化学工業社製)0.25重量部、酸化防止剤として2,6−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部を添加して、攪拌機(商品名「泡取り錬太郎」、シンキー社製)で混合し、エポキシ樹脂組成物10を得た。
比較例1
脂環式エポキシ樹脂A(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂:商品名「エピコート 828」、ジャパンエポキシレジン社製、25℃における粘度9100mPa・s)100重量部に、硬化剤として3or4−メチル−ヘキサヒドロ無水フタル酸(商品名「HN5500E」、日立化成工業社製、25℃における粘度62mPa・s)89重量部、リン系硬化促進剤としてテトラ−n−ブチルスルホニウム(商品名「PX4ET」、日本化学工業社製)0.1重量部、酸化防止剤として2,6−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部を添加して、攪拌機(商品名「泡取り錬太郎」、シンキー社製)で混合し、エポキシ樹脂組成物11を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物11を、一次硬化として、80℃、4時間、続いて、二次硬化として、150℃、3時間硬化させて、エポキシ樹脂硬化物11を得た。
[物性の測定方法及び効果の評価方法]
(1)耐熱性試験(エポキシ樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)及び平均線膨張率(ppm))
実施例及び比較例において得られたエポキシ樹脂組成物1〜11を一次硬化として、80℃、4時間、続いて、二次硬化として、150℃、3時間熱硬化させて試験片(長さ4mm、幅4mm、厚さ10mm)とし、ガラス転移温度(Tg)及び平均線膨張率(ppm)を測定し、耐熱性の指標とした。
得られた試験片1〜11をTMA(熱機械測定装置)を使用して昇温速度5℃/minで昇温し、ガラス転移点Tg(℃)の測定を行った。
平均線膨張率は、前記試験片1〜11の長さL0(mm)を測定し、続いて、常圧下、TMA(熱機械測定装置)を使用して、前記エポキシ樹脂硬化物を昇温速度5℃/minで加熱して、50℃から100℃に昇温する際の、50℃における試験片の長さL1(mm)と、100℃における試験片の長さL2(mm)を測定し、前記試験片の寸法変化の平均値を下記式により求めた。なお、TMA(熱機械測定装置)は、「TMA/SS6100」(セイコーインスツルメンツ社製)を用いた。
平均線膨張率(ppm)=(L2−L1/L0×50)×106
(2)光線透過性試験(光線透過率(%))
実施例及び比較例において得られたエポキシ樹脂組成物1〜11を一次硬化として、80℃、4時間、続いて、二次硬化として、150℃、3時間熱硬化させて、厚さ3mmのエポキシ樹脂硬化物を作製し、試験片とした。
上記試験片を、波長400nmにおける光線透過率(%)を、商品名「UV−2450」(島津製作所製)を使用して測定した。
(3)曲げ強度試験(曲げ弾性率)
実施例及び比較例において得られたエポキシ樹脂組成物1〜11を一次硬化として、80℃、4時間、続いて、二次硬化として、150℃、3時間熱硬化させて、厚さ4mmのエポキシ樹脂硬化物を作製し、試験片とした。
上記試験片を、商品名「RTC−1350A」(オリエンテック社製)を使用し、JIS K7171に準拠して、曲げ速度1mm/分で行い、曲げ弾性率(MPa)を測定した。
(4)耐熱劣化性
上記光線透過性試験で得られた試験片を、120℃で、500時間熱処理(熱劣化試験)し、その後、波長400nmにおける光線透過率(%)を、商品名「UV−2450」(島津製作所製)を使用して測定した。
(5)耐光性
上記光線透過性試験で得られた試験片を、商品名「スーパーウインミニ」(ダイプラウインテス社製)を使用して、照射強度18mW/cm2(メタルハライドランプ使用)、温度23℃で300時間紫外線を照射し、その後、波長400nmにおける光線透過率(%)を、「UV−2450」(島津製作所製)を使用して測定した。
(6)耐熱衝撃性
実施例及び比較例において得られた各エポキシ樹脂組成物1〜11を、LEDのリードフレーム(商品名「EME2003−ver2」、エノモト社製)がエポキシ樹脂硬化物の中心付近に位置するように、型枠に注型し、一次硬化として、80℃、4時間、続いて、二次硬化として、150℃、3時間硬化させて、リードフレーム入りの試験片1〜11(厚さ3mm)を得た。
得られた試験片について、−45℃の雰囲気下に曝し、続いて100℃の雰囲気下に曝すヒートサイクルを500回行い、リードフレームから発生する試験片中のクラック(ひび割れ)の長さを測定し、以下の基準に従って評価した。なお、クラックの長さは、リードフレームの先端から発生したものとして測定した。
評価基準
試験片11中に発生したクラックの長さを基準として、各リードフレーム入りの試験片について、試験片中に発生したクラックの長さが50%を超えない場合を「○」とした。
実施例、及び、比較例で得られたエポキシ樹脂硬化物1〜11の物性及び評価について、下記表1、2にまとめて示す。
Figure 2009114390
Figure 2009114390
前記表1、2より、実施例により得られたエポキシ樹脂硬化物1〜10は、良好な曲げ強度、耐熱劣化性、耐光性を有する。また、実施例により得られたエポキシ樹脂組成物1〜10は含有する25℃における粘度が1000mPa・s以下の脂環式エポキシ樹脂Aと、芳香族エポキシ樹脂を核水素化して得られる25℃で固体の脂環式エポキシ樹脂Bが、A/B(重量比)=35/65〜95/5の範囲内であり、それにより、得られたエポキシ樹脂硬化物は良好な耐熱衝撃性を有する。

Claims (6)

  1. 下記式(1)
    Figure 2009114390
    [式中、Yは単結合、メチルメチレン基(−CH(CH3)−)、エチレン基(−CH2CH2−)、メチルエチレン基(−CH2CH(CH3)−)、プロピレン基(−CH2CH2CH2−)、炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基、−C(=O)O−、−CO−、又は、2価の炭化水素基の1又は2以上と−C(=O)O−、−CO−、又は−O−のうち少なくとも1つが結合した2価の基を示す。また、シクロヘキサン環にはアルキル基が結合していてもよい]
    で表される脂環式エポキシ樹脂、又は、分子内に環状脂肪族骨格及び2つ以上のエポキシ基を有し、且つ、2つ以上のエポキシ基のうち、1つのみが環状脂肪族骨格を構成する2つの炭素原子を含んで形成されている脂環式エポキシ樹脂であって、25℃における粘度が1000mPa・s以下の脂環式エポキシ樹脂Aと、芳香族エポキシ樹脂を核水素化して得られる25℃で固体の脂環式エポキシ樹脂Bとを、A/B(重量比)=35/65〜95/5の割合で含む混合物であって、45℃における粘度が60000mPa・s以下である脂環式エポキシ樹脂混合物と、25℃における粘度が500mPa・s以下の酸無水物とジカルボン酸を含有するエポキシ樹脂組成物。
  2. ジカルボン酸が、下記式(2)
    Figure 2009114390
    (式中、R1〜R8は、同一又は異なって、水素原子、メチル基、又は、エチル基を示す。Xは、炭素数2〜20の2価の直鎖状、分岐鎖状、若しくは、炭素数3〜20の2価の環状炭化水素基、又はこれらの2以上が酸素原子を介して若しくは介することなく結合した総炭素数が4〜22の2価の基を示す)
    で表される環状脂肪族骨格を有するジカルボン酸である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. 酸化防止剤及び/又は紫外線吸収剤を含有する請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3の何れかの項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物。
  5. 請求項1〜3の何れかの項に記載のエポキシ樹脂組成物を使用して封止した光半導体装置。
  6. 請求項1〜3の何れかの項に記載のエポキシ樹脂組成物からなる接着剤。
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