JP2006299073A - 光半導体封止用樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 基板上に搭載された複数の光半導体素子を一括樹脂封止して得た光半導体素子搭載基板の反りを小さく抑え、個別の素子にカットすることを可能とし、且つ速い反応性を有する光半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決の手段】 基板上に搭載された複数の光半導体素子を一括して樹脂封止し、その後、個別の素子にカットする製造方法に用いる封止用樹脂組成物であって、環状オレフィンをエポキシ化して得られる脂環式エポキシ樹脂、可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂、及び、カチオン重合開始剤を含有してなり、25℃で液状であり、150℃における熱板ゲルタイムが30秒以下であり、硬化後のガラス転移温度が25〜80℃であり、かつ、硬化後の650nmの光透過率が80%以上である組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、基板上に搭載された複数の光半導体素子を一括して樹脂封止し、その後、個別の素子にカットする光半導体製造方法に用いる光半導体封止用樹脂組成物に関し、詳細には、硬化後、一括封止された光半導体素子を搭載する基板の反りを小さく抑え、個別の素子にカットすることを可能とする光半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関する。
従来、光半導体の封止は、一般的に、透明性に優れた液状エポキシ樹脂組成物を用いて、個別の素子にカットされた光半導体(すなわちチップ)をそれぞれ個別に封止する方法が採用されてきた。例えば、砲弾型発光素子は、カットされた個別の素子である発光部のベアチップをリードフレームにダイボンディング又はワイヤボンディングした後に封止樹脂で封止して樹脂パッケージが形成される。しかしながら、この方法においては、樹脂封止工程を個別の素子毎に行うので、生産効率を上げにくい。
そこで近年、生産効率を向上させるため、多数の光半導体素子を基板上で樹脂により一括封止した後、封止樹脂の硬化後、一括封止された多数の光半導体素子を搭載する基板を、個別の素子にカットする製造方法が提案されている。しかし、このように多数の素子を基板上で一括封止する場合、樹脂の封止面積が大きくなり、封止用樹脂組成物と光半導体素子や基板との熱膨張量の差がより顕著になり、その結果、基板の反りを生じる。この基板の反りは、封止後の素子を個別の素子にカットする工程を困難にする。また、一括封止工程の生産効率を向上させるためには樹脂の速い反応性が求められる。
光半導体封止用エポキシ樹脂組成物としては、例えば、オニウム塩を使用したエポキシ樹脂組成物(例えば、特許文献1、2参照。)が知られている。しかしながら、特許文献1及び2記載の組成物は、具体的に言及されているものはすべて高Tgのものばかりであり、トランスファー成形又は射出成形への適用が予定されている。また、カチオン重合開始剤を使用したエポキシ樹脂組成物(例えば、特許文献3〜5参照。)が知られている。しかしながら、特許文献3記載の組成物は、具体的に言及されているものは高Tgであるか、又は、可塑剤成分を含有し、しかも、成形時間が長く反応性が不充分であり、特許文献4記載の組成物は、高Tgのものであり、しかも、成形時間が長く反応性が不充分であり、特許文献5記載の組成物は、カットされた素子であるチップの封止に使用することを予定されており、しかも、具体的に言及されているカチオン重合開始剤を使用した液状組成物はカルボン酸変性エポキシ樹脂に高Tgタイプの脂環式エポキシ樹脂を配合した高Tgのものであり、さらに、成形時間が長く反応性が不充分である。そして、後述するように、高Tgのエポキシ樹脂を使用すると基板の反りが一層大きくなることが、本発明者により確認されている。よって硬化後、基板の反りを極力抑えることができ、且つ速い反応性を有し、透明である封止用樹脂組成物が求められている。
特開平10−135522号公報 特開平9−246435号公報 特開2002−69155号公報 特開2002−338659号公報 特開2003−277473公報
上述の現状に鑑み、本発明は、基板上に搭載された複数の光半導体素子を一括樹脂封止して得た光半導体素子搭載基板の反りを小さく抑え、個別の素子にカットすることを可能とし、且つ速い反応性を有する光半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定種類のエポキシ樹脂とカチオン重合開始剤とを使用することにより、反応性、透明性を確保することができること、エポキシ樹脂硬化物のTgを一定範囲にすることにより、基板の反りを抑えることができること、を見出すとともに、光半導体素子の一括樹脂封止を高い生産効率で実施可能とするための樹脂の他の特性を見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
すなわち、本発明は、基板上に搭載された複数の光半導体素子を一括して樹脂封止し、その後、個別の素子にカットする光半導体製造方法に用いる光半導体封止用樹脂組成物であって、(A)環状オレフィンをエポキシ化して得られる脂環式エポキシ樹脂及び可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂成分、並びに、(B)カチオン重合開始剤を含有してなり、25℃で液状であり、150℃における熱板ゲルタイムが30秒以下であり、硬化後のガラス転移温度が25〜80℃であり、かつ、硬化後の650nmの光透過率が80%以上である光半導体封止用樹脂組成物(以下、本発明の組成物ともいう)である。
(1)本発明の組成物は上述の構成により、可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂を含むことによりTgを調整して基板上に搭載された複数の光半導体素子を一括して樹脂封止しても基板の反りを抑えることができ、個別の素子にカットすることが可能である。
(2)本発明の組成物は上述の構成により、脂環式エポキシ樹脂による充分な反応性を確保でき、反応性を上げるために開始剤の添加量を増やして透明性を低下させるということがない。
(3)本発明の組成物にはビスフェノールA型エポキシ樹脂をさらに使用することにより、さらに高い透明性を確保することができる。
(4)本発明の組成物は上述の構成により、基板の反りを抑えることができるのみならず、短い成形時間により高い生産効率を実現することができる。
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂成分及び(B)カチオン重合開始剤を含有してなり、25℃で液状であり、150℃における熱板ゲルタイムが30秒以下であり、硬化後のガラス転移温度が25〜80℃であり、かつ、硬化後の650nmの光透過率が80%以上である。本発明の組成物におけるエポキシ樹脂成分(A)は、環状オレフィンをエポキシ化して得られる脂環式エポキシ樹脂及び可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂からなる。
環状オレフィンをエポキシ化して得られる脂環式エポキシ樹脂としては、下記に例示する脂環式オレフィンの二重結合をエポキシ化して得られるエポキシ樹脂を挙げることができる。上記脂環式オレフィンとしては、分子中に水酸基が結合したシクロヘキサン環を少なくとも二つ有する化合物の脱水反応により得られるものが好ましく、例えば、下記に例示する水酸基を有する化合物の脱水反応により得られるものを挙げることができる:ジシクロヘキサノールメタン、ビス(ジメチルシクロヘキサノール)メタン、1,2−ビス(シクロヘキサノール)エタン、1,3−ビス(シクロヘキサノール)プロパン、1,4−ビス(シクロヘキサノール)ブタン、1,5−ビス(シクロヘキサノール)ペンタン、1,6−ビス(シクロヘキサノール)ヘキサン、α,α−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−4−(4−ヒドロキシ−α,α−ジメチルシクロヘキシル)−エチルベンゼン、3,3−ビス(シクロヘキサノール)ペンタン、5,5−ビス(シクロヘキサノール)ヘプタン等及びこれらの混合物等が挙げられる。
脂環式オレフィン化合物の二重結合のエポキシ化に使用できるエポキシ化剤としては、過ギ酸、過酢酸、過イソ酪酸、過トリフルオロ酢酸等の脂肪族過カルボン酸を用いることができる。エポキシ化反応は、一般的には、0℃以上、100℃以下であり、例えば、好ましいエポキシ化剤である過酢酸の場合は20〜70℃が好ましい。
さらに、環状オレフィンをエポキシ化して得られる脂環式エポキシ樹脂として、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビニルシクロヘキセンモノエポキシド、リモネンジエポキシド等が挙げられ、これらは、単独で、又は、2種以上を併用することができる。
上記脂環式エポキシ樹脂として好ましくは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートである。本発明においては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートとビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートとを重量比[3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート/ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート]0/1〜0.3/1で含有することが好ましい。
可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂とは、炭素−炭素一重結合、エステル結合及びエーテル結合からなる群から選択される1種又は2種以上の結合を複数連鎖してなる、例えば、C3、C4又はそれ以上の炭素−炭素一重結合(C6等の脂環式連鎖も含む)、ポリエステル、ポリエーテル、及び、それらの組み合わせ等の連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂であり、具体的には、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、テトラメチレンジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリカプロラクトングリコールジグリシジルエーテル、ポリカプロラクトントリグリシジルエーテル、またビスフェノールA型エポキシ樹脂にアルキレンオキサイドを付加したエポキシ樹脂、例えばプロピレンオキサイドを付加したビスフェノールA型エポキシ樹脂、ポリポロピレンオキサイドを付加したビスフェノールA型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で、又は、2種以上を併用することができる。
上記エポキシ樹脂成分(A)は、樹脂組成物が上記特性を満たしているかぎり、上記エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を含んでもよいが、透明性を高める観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を上記脂環式エポキシ樹脂及び可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂に加えてさらに使用することが好ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂は一般には下記式(I)で表されるものであり、式中nは0又は1以上の整数を表す。ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、nがゼロのものであってもよく、1以上の整数のものであってもよく、又は、これらいずれか複数種類のものの混合物であってもよい。
Figure 2006299073
本発明においては、上記エポキシ樹脂成分(A)は25℃で液状であるが、これには、使用するエポキシ樹脂がすべて25℃で液状である場合のみならず、複数のエポキシ樹脂を混合して25℃で液状となる場合をも含むので、必ずしも25℃で固形状のエポキシ樹脂を使用出来ないわけではなく、この意味で、上述の列挙に含まれ得る25℃で固形状のエポキシ樹脂も使用可能である。
カチオン重合開始剤(B)としては、活性エネルギー線によりカチオン種又はルイス酸を発生する活性エネルギー線カチオン重合開始剤及び熱によりカチオン種又はルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤のいずれも使用することができるが、加熱硬化を行う場合には熱カチオン重合開始剤が好ましい。また、活性エネルギー線カチオン重合開始剤としても使用される芳香族オニウム塩のうち、熱カチオン重合開始剤としても使用できるものがあるが、これらも使用可能である。上記カチオン重合開始剤としては、下記一般式(II)で表されるアリールスルホニウム塩が好ましい。
Figure 2006299073
上記式中、Xは−C(R3R4)−を介してイオウ原子に結合した置換又は非置換の芳香環を表し、R1、R2は、それぞれ独立に、置換又は非置換の一価の炭化水素を表す。ただし、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
R1、R2としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロヘキシル等のシクロアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;トリル、キシリル等のアルカリール基;ベンジル、2−フェニルエチル等のアラルキル基;ビニル、アリル、ブテニル等のアルケニル基;ならびにヒドロキシフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、シアノフェニル、クロロフェニル、アセトキシフェニル、プロパノイルフェニル、メトキシカルボニルフェニル、エトキシカルボニルフェニル等の1価の置換炭化水素基が例示される。
上記置換又は非置換の芳香環における芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環等を挙げることができる。また、置換芳香環における置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロヘキシル等のシクロアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;トリル、キシリル等のアルカリール基;ベンジル、2−フェニルエチル等のアラルキル基;ビニル、アリル、ブテニル等のアルケニル基;クロロメチル等の1価の置換炭化水素基;水酸基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシ等のアルコキシル基;ニトロ基;シアノ基;ならびにフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換されたベンゼン環、ナフタレン環等を挙げることができる。置換基の入る位置としては、芳香環がベンゼン環の場合を例にとると、4位が好ましい。
カチオン重合開始剤(B)としては、具体的には、例えば、ヘキサフルオロアンチモン酸ジメチルベンジルスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸ジメチル(4−メチルベンジル)スルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸ジメチル(4−メトキシベンジル)スルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸ジメチル(4−エトキシベンジル)スルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸ジメチル(4−tertt−ブトキシベンジル)スルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸ジメチル(4−ニトロベンジル)スルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸ジメチル(4−シアノベンジル)スルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸(4−クロロベンジル)スルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸メチルフェニルベンジルスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸メチル(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸メチル(4−メトキシフェニル)ベンジルスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸ジメチル(1−ナフチルメチル)スルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸メチルフェニル(1−ナフチルメチル)スルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸メチル(4−ヒドロキシフェニル)(1−ナフチルメチル)スルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸メチル(4−メトキシフェニル)(1−ナフチルメチル)スルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸ジメチル(α−メチルベンジル)スルホニウムなどが挙げられる。また、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L(三新化学工業社製)として市販されているものであってもよい。
本発明の組成物は、上記カチオン重合開始剤(B)を、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して0.1〜2重量部含有することが好ましい。2重量部より多いと、組成物が着色するおそれがあり、0.1重量部より少ないと、反応性が不充分となるおそれがある。
本発明の組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他の添加剤を使用することができる。その他の添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、ガラスビーズ、酸化防止剤、可塑剤等を挙げることができる。添加剤の配合量はその種類や目的により異なるが、例えば、シランカップリング剤は組成物中に0.5〜3重量%が好ましい。酸化防止剤は組成物中に0.01〜2重量%が好ましい。可塑剤は組成物中に1~15重量%が好ましい。
上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類;γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロルシラン類;γ−メルカプトトリメトキシシラン等のメルカプトシラン類;ビルニメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類等を挙げることができる。
上記酸化防止剤としては特に限定されず、公知のものを使用でき、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等のものを使用できる。
上記可塑剤としては特に限定されず、公知のものを使用でき、例えば、フタル酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤等が挙げられる。
本発明の組成物は、25℃で液状であり、150℃における熱板ゲルタイムが30秒以下であり、硬化後のガラス転移温度が25〜80℃であり、かつ、硬化後の650nmの光透過率が80%以上である。熱板ゲルタイムとは、所定温度の熱板上に樹脂組成物を一滴置いた後、目視にてゲル化が生じるまでの時間を測定した値である。また、本明細書中、ガラス転移点は、動的粘弾性によるtanδのピークを昇温速度2℃/min、周波数1Hzで測定して得た値である。
25℃で本発明の組成物が液状であることは、注型成形、LIM(LIQUID INJECTION MOLDING)、コンプレッション成形等により効率のよい成形を可能とする。
また、150℃における熱板ゲルタイムが30秒以下であることは、反応性が高いので、形成時間を短縮することができ、生産効率の向上に資する。好ましくは20秒以下であり、より好ましくは15秒以下である。
硬化後のガラス転移温度が25〜80℃であることは、硬化後の基板の反りを抑制することを可能とする。25℃未満であると耐熱性が低下し、80℃を超えると基板の反りが大きくなりすぎる。好ましくは25〜60℃であり、より好ましくは30〜60℃である。
また、硬化後の650nmの光透過率が80%以上であることは、赤色可視光に対する高い透過性を可能とする。好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。
本発明の組成物は、これらの諸特性を実現することにより、光半導体素子の一括樹脂封止を高い生産効率で実施可能とする。
本発明の組成物は、基板上に搭載された複数の光半導体素子を一括して樹脂封止し、その後、個別の素子にカットする光半導体製造方法に用いる。上記基板としては、シリコン等からなる半導体ウエハー、有機基板(ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、PPE樹脂、BT樹脂、アラミド樹脂等を用いた基板)等を挙げることができる。上記製造方法としては、例えば、(1)有機基板上に搭載された複数の光半導体素子は、通常、それぞれ、封止の前に電極とワイヤボンディング等により接続される。そして、樹脂封止の後、個別の素子にカットされて光半導体チップとなる。一方、(2)半導体ウエハー上の素子の表面にポストと言われる電極を予め形成する手法を採用する場合には、ワイヤボンディングを行う必要がない。そして、樹脂封止の後、上記ポスト上に電極を形成し、その後、個別の素子にカットされて光半導体チップとなる。
上記光半導体素子としては、受光素子であってもよく、又は、発光素子であってもよい。例えば、自動車用メーターパネルやストップランプ、液晶表示装置用バックライト、テレビ等のリモコン等に使用される各種光源用LED、屋内外フルカラーディスプレイ用の発光素子、交通又は鉄道用信号機用の発光素子、通信デバイスのIrDAの受光素子、CD、DVD用等のピックアップ用受光素子等を挙げることができる。
本発明の組成物は、上記各成分をミキサー等の混合装置を用いて充分に均一混合して得ることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の記載は専ら説明のためであって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1及び2中の略号の意味は以下のとおり。
エポキシ樹脂(1):3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート
エポキシ樹脂(2):ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート
エポキシ樹脂(3):プロピレンオキサイド付加−ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル
エポキシ樹脂(4):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(上記式(I)で表される化合物の混合物)
エポキシ樹脂(5):1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
エポキシ樹脂(6):1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル
カチオン重合開始剤:主剤:ヘキサフルオロアンチモン酸メチル(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルスルホニウム、助剤:4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムメチルサルファイト(主剤:助剤=97:3)
実施例1〜9、比較例1〜6
各実施例、比較例について、表1及び2に示す割合(重量部)で各成分を配合し、ミキサーを用いて撹拌し、目的の液状樹脂組成物を得た。これらを、それぞれ、下記の評価方法で評価した。結果を表1及び2に示した。
評価方法
1.Tg測定(DMA法)
セイコーインスツルメンツ社製DMS6100にて測定を行なった。昇温速度2℃/min、周波数1HZにてtanδのピークを求めてTgとした。
2.透過率測定
試験片サイズ1mm厚さ(硬化条件:150℃、1時間)
島津製作所社製分光光度計UV−2450にて650nmの透過率を求めた。
3.反り測定
条件:基板上に樹脂厚が0.5mmになるようにコンプレッション成型を行った。
成型条件:150℃/3min、アフターキュア:150℃/1hr
使用基板:FR−4、サイズ:100mm×150mm×0.5mm厚さ
測定機器:キーエンス社製LT−8110レーザー変位計を用いて、基板の対角線上の変位を計測し、最高値と最低値の差を反り量とした。なお、評価は、3mm未満を○、3mm以上を×とした。
4.熱板ゲルタイム
150℃の熱板上に樹脂を一滴置いた後、目視でゲル化が起こる事を確認し、その際に要した時間を確認した。
5.成形性
コンプレッション成型にて、成形時間3minにおける成形性を下記にて評価した。
○・・・脱型可能
×・・・脱系不可(固化しない)
Figure 2006299073
Figure 2006299073
実施例1〜9の組成物は、本発明の構成を有するものであり、低Tg、高透過率、小さい反り、短いゲルタイム及び成形性のすべてを充足していることが判った。ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む組成物(実施例3〜5、8及び9)は、更に良好な透明性を有することが判った。一方、比較例1は可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂を使用し低Tg、低反りであったが、脂環式エポキシ樹脂を使用しないため、ゲルタイムが長くなり、成形性に劣った。比較例2は比較例1に比べてカチオン重合開始剤の量が多くなり、反応性は多少向上したが、透過性が悪く、光素子には適さなかった。比較例3はビスフェノールA型エポキシ樹脂のみ使用しており、高い透明性を有するが、脂環式エポキシ樹脂を使用せずに、かつ可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂を使用しないため、高Tg、大きい反り、長いゲルタイム、悪い成形性となった。比較例4はビスフェノールA型エポキシ樹脂と可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂によりTgを調整したが、脂環式エポキシ樹脂を使用しないため、ゲルタイムが長くなり、成形性に劣った。比較例5は脂環式エポキシ樹脂のみ使用しており、ゲルタイムは短いが、可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂を使用しないため、高Tg、大きい反りとなった。比較例6は脂環式エポキシ樹脂と可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂を使用するものではあるが、高Tgであり、基板の反りが大きかった。
これらのことから、単に脂環式エポキシ樹脂と可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂を使用すればよいというものではなく、硬化物のTgを一定範囲にすることが必要であることが判った。そして、その範囲は、基板の反りを抑えるためには、本発明の組成物のTgの範囲内である20〜80℃、好ましくは20〜60℃であることが判った。
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、基板の反りを抑えることができるので、基板上に搭載された複数の光半導体素子を一括樹脂封止した後に個別の素子にカットすることが可能であり、光半導体素子の生産効率を向上させることができるので、コスト低減等のメリットが大きい。

Claims (8)

  1. 基板上に搭載された複数の光半導体素子を一括して樹脂封止し、その後、個別の素子にカットする光半導体製造方法に用いる光半導体封止用樹脂組成物であって、(A)環状オレフィンをエポキシ化して得られる脂環式エポキシ樹脂及び可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂成分、並びに、(B)カチオン重合開始剤を含有してなり、25℃で液状であり、150℃における熱板ゲルタイムが30秒以下であり、硬化後のガラス転移温度が25〜80℃であり、かつ、硬化後の650nmの光透過率が80%以上である光半導体封止用樹脂組成物。
  2. 硬化後のガラス転移温度が25〜60℃である請求項1記載の組成物。
  3. エポキシ樹脂成分(A)は、環状オレフィンをエポキシ化して得られる脂環式エポキシ樹脂を20〜55重量%及び可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂を45〜80重量%を含む請求項1又は2記載の組成物。
  4. 前記脂環式エポキシ樹脂は、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート及び/又はビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペートである請求項1〜3のいずれか記載の組成物。
  5. 前記可撓性連鎖を骨格に含むエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルにプロピレンオキサイドを付加させたエポキシ樹脂、1,6−ヘキサノールジグリシジルエーテル及び1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
  6. エポキシ樹脂成分(A)は、さらに、下記式(I)(ただし、式中、nは0又は1以上の整数を表す。)で表されるビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む請求項1〜5のいずれか記載の組成物。
    Figure 2006299073
  7. カチオン重合開始剤(B)は、下記一般式(II)で表されるアリールスルホニウム塩である請求項1〜6のいずれか記載の組成物。
    Figure 2006299073
    (式中、Xは−C(R3R4)−を介してイオウ原子に結合した置換又は非置換の芳香環を表し、R1、R2は、それぞれ独立に、置換又は非置換の一価の炭化水素を表す。ただし、R3、R4は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。)
  8. カチオン重合開始剤(B)を、エポキシ樹脂成分(A)100重量部に対して0.1〜2重量部含有する請求項1〜7のいずれか記載の組成物。
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