JP2009012648A - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、ブロックに設けたサイプによって区画されるブロック分割部分の大きな倒れ込み変形を有効に抑制し、併せて、サイプの狭窄変形を効果的に防止することによって、氷雪路面上での駆動性能および制動性能に優れるとともに、一般路面上での操縦安定性にも優れる空気入りラジアルタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド踏面1に、複数本の周溝2と、複数本の横溝3とを配設することによりブロック4を区画し、そのブロック4に、複数本のサイプ5を設けたものにおいて、サイプ5の底部に、サイプ5の対向溝壁を一体的に連結する、少なくとも一個の上向き突起7を設けることを特徴とする。
【選択図】図3

Description

本発明は、空気入りラジアルタイヤ、特に氷雪路面上での駆動性能および制動性能に優れるとともに、一般路面上での操縦安定性にも優れる空気入りラジアルタイヤに関するものである。
氷雪路面上を走行するための空気入りラジアルタイヤとしては、いわゆるスタッドレスタイヤが多く用いられている。スタッドレスタイヤは、通常、トレッド踏面に多数個のブロックを区画形成し、そのブロックに、多くは、トレッド幅方向に延びる複数本のサイプを設けてなる。
ブロックに形成されるサイプとしては、トレッド踏面への開口が、例えば、波形やジグザグ状、直線状等の形態で延在し、深さ方向のどの位置にても延在形態がトレッド踏面でのそれと同一となる、いわゆる二次元サイプまたは、深さ方向にもまた固有の波形やジグザグ状等の形態を持って延在する、いわゆる三次元サイプが一般的である。
これらのサイプは、サイプエッジが氷雪路面に食い込んで、トレッド踏面と路面との摩擦力を高める、いわゆるエッジ効果をもたらすので、サイプの延在方向と直交する方向の駆動力および制動力等の増加をもたらすことができる。
また、サイプそれ自身は、タイヤの負荷転動に伴って、氷が解けて氷雪路面上に発生した薄い水膜を、サイプの内部に吸引除去して、路面とブロック表面、ひいてはトレッド踏面との接地面積を増加させることによって、駆動性能、制動性能及び操縦安定性を向上させるべく機能することができる。
したがって、スタッドレスタイヤは、サイプ開口縁のエッジ効果と、サイプそれ自身の水膜除去効果との両者の効果を併せ持つことで、氷雪路面上での優れた走行性能を発揮することができる。
ここで、サイプをもって水膜を有効に吸引除去するためには、トレッド踏面、より直接的にはブロック表面に大きな力が作用した時でも、サイプの溝容積を十分に維持することが必要である。これがためには、サイプで区画されたそれぞれのブロック分割部分が撓み変形等した場合であっても、サイプが、局部的または全体的に狭窄変形等されることのない程度の剛性を各ブロック分割部分に付与することが必要となる。
この一方で、トレッド踏面と氷雪路面との間のエッジ効果を大きくするべく、ブロック表面へのサイプの形成本数を増やすと、サイプで区画されたブロック分割部分の剛性が低下して、各ブロック分割部分の倒れ込み変形量が多くなることに起因して、ブロック全体としての、接地面積が減少することになるため、かえって操縦安定性等の低下が惹起されてしまうおそれがある。
なお、サイプの形成態様に関し、三次元サイプを形成したときには、ブロック分割部分の、外力の作用下での撓み変形に当り、二次元サイプに比べて、サイプの深さ方向でのジグザグ状等の凸凹が相互に支え合うことで、ブロックの剛性が高まり、ブロックの接地面積の低下が抑えられるとともに、接地性が均一になることで、操縦安定性等の低下がある程度は防げるものの、トレッド踏面、直接的にはブロックに大きな力が作用したときには、ブロック分割部分の大きな倒れ込み変形のおそれは依然として残り、サイプが狭窄変形されるおそれもあった。
また、特許文献1には、サイプの両溝壁に、円柱状の突部を対向させて設けて、各ブロック分割部分の撓み変形に際し、両溝壁の、対向する突部同士の当接下でブロック分割部分を支え合うことで、サイプ容積を確保して効率的な貯水、排水を可能にする技術が記載されている。
しかるに、特許文献1に記載されたタイヤによってもまた、例えば、大きな力の作用によってブロック分割部分が大きく撓み変形したときは、サイプの両溝壁の、相互に対向するそれぞれの突部の位置ずれが生じることになって、突部相互の支え合いに基く効果を期待し難くなる場合がある。
これに対し、上述したような突部相互の位置ずれが生じない場合にあっても、ブロックへの入力が大きくなったときは、その力を突部のみでは支えきれず、ブロック分割部分が大きく変形して、サイプに、所期した機能を発揮させない場合もあり、また、操縦安定性の低下のおそれもあった。
ところで、スタッドレスタイヤは、氷雪路面のみならずドライ路面やウェット路面等の一般路面上でも使用される機会が多いので、氷雪路面上での駆動性能および制動性能等だけに着目してサイプの配設本数を増やすと、ブロック全体の剛性が不足して、ドライ路面やウェット路面上での、各ブロック分割部分の倒れ込み変形が過大となる結果、接地面積が減少し、操縦安定性の低下をまねくおそれがある。
特開2007−55285公報
そこで、本発明は、ブロックに設けたサイプによって区画されるブロック分割部分の大きな倒れ込み変形を有効に抑制し、併せて、サイプの狭窄変形を効果的に防止することによって、氷雪路面上での駆動性能および制動性能に優れるとともに、一般路面上での操縦安定性にも優れる空気入りラジアルタイヤを提供する。
本発明に係る空気入りラジアルタイヤは、トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周溝と、これらの周溝に交差してトレッド幅方向に延びる複数本の横溝とを配設することによりブロックを区画し、そのブロック、好ましくは全てのブロックに、傾向的にトレッド幅方向に延びる複数本のサイプを設けたものにおいて、サイプの底部に、サイプの対向溝壁を一体的に連結する、少なくとも一個の上向き突起を設けることを特徴とするものである。
なおここにおける、周溝および横溝は、直線状の延在形態のみならず、ジグザグ状、波形状、クランク状等の形態で延在させることもでき、複数本の周溝と横溝で構成されるブロックの展開平面部の形状は、正方形、平行四辺形等の他、多角形異形状とすることもでき、ブロックの大きさ、配設個数等は所要に応じて適宜選択することができる。
上向き突起とは、直線状に上向きに延びる突起のみならず曲線状に上向きに伸びる突起でもよい。また、突起の先端は直線状でも曲線状でもよい。
また、サイプは、直線状の延在形態とすることはもちろんであるが、ジグザグ状、波形状、クランク状等の形態で延在させることができ、二次元サイプ、三次元サイプのいずれでも構成することもできる。
サイプは、周溝および横溝に両端が開口しているもののみならず、周溝および横溝に両端が開口していないものや片端のみが開口しているものでもよい。
ここで、サイプにつき、傾向的にトレッド幅方向に延びるとは、トレッド幅方向に延在するサイプエッジ成分が、トレッド周方向に延びるサイプエッジ成分より大きい場合を言うものとする。
また、突起の、サイプ底に沿う長さとは、サイプ底の幅中心線に沿う長さを言うものとする。
そして、突起上端とは、突起の頂面形状等のいかんにかかわらず、サイプ溝壁と一体的連結に寄与する部分の上端縁構造をいうものとする。
このようなタイヤにおいて好ましくは、各突起の、サイプ底に沿う長さを0.2〜2.0mm、ブロック表面から測定した突起上端の深さを、サイプ深さの20〜80%の範囲である。
より好ましくは、ブロックの、最も踏み込み側および、最も蹴り出し側の少なくとも一方に位置するサイプ内の突起の個数、例えば双方のサイプ内の突起の個数を、ブロックの中間部に位置するサイプ内の突起の個数より多くする。
ここで、ブロックの中間部に位置するサイプとは、最も踏み込み側のサイプおよび最も蹴り出し側のサイプとの中点に最も近くに存在するサイプをいうものとする。
好ましくは、ブロックの、最も踏み込み側および、最も蹴り出し側の少なくとも一方に位置するサイプ内の突起の個数に対する、ブロックの中間部に位置するサイプ内の突起の個数の比を、1:0.2〜1:1とする。
また好ましくは、ブロックの、最も踏み込み側および、最も蹴り出し側の少なくとも一方に位置するサイプ内の突起の総断面積を、ブロックの中間部に位置するサイプ内の突起の総断面積より多くする。
ここで、断面積とは、突起のサイプ底からの平均高さと、突起のサイプに沿って延びる平均幅から求めることができ、それらの合計が総断面積となる。
より好ましくは、ブロックの、最も踏み込み側および、最も蹴り出し側の少なくとも一方に位置するサイプ内の突起の総断面積に対する、ブロックの中間部に位置するサイプ内の突起の総断面積の比を、1:0.1〜1:1とする。
そしてまた好ましくは、以上に述べたいずれかのラジアルタイヤにおいて、複数本の周溝と、複数本の横溝とで区画される複数のブロック列中のそれぞれのブロックのうち、トレッドの最外側に位置する少なくとも一方側のブロックの、サイプ内の突起の総個数を、トレッド中央域のブロック、より好ましくは両側のブロックの、サイプ内の突起の総個数より多くする。
ここにおいて、トレッド中央域のブロックとは、パターンセンターの最も近くに位置するブロックをいうものとする。
そしてより好ましくは、トレッドの最外側に位置する少なくとも一方側のブロックの、サイプ内の突起の総個数に対する、トレッド中央域のブロックの、サイプ内の突起の総個数の比を、1:0.2〜1:1とする。
ところで、複数本の周溝と、複数本の横溝とで区画される複数のブロック列中のそれぞれのブロックのうち、トレッドの最外側に位置する少なくとも一方側のブロックの、サイプ内の突起の総断面積を、トレッド中央域のブロックの、サイプ内の突起の総断面積より大きくすることが好ましい。
そして好ましくは、トレッドの最外側に位置する少なくとも一方側のブロックの、サイプ内の突起の総断面積に対する、トレッド中央域のブロックの、サイプ内の突起の総断面積の比を、1:0.1〜1:1とする。
本発明に係る空気入りラジアルタイヤでは、氷雪路面上でのタイヤの負荷転動に当り、トレッド踏面に形成されて、トレッド周方向に延びる複数本の周溝および、これらの周溝に交差してトレッド幅方向に延びる複数本の横溝のそれぞれが、それらの溝縁の作用下で、耐横滑り性並びに、駆動性能および制動性能のそれぞれの向上に寄与する。
またここでは、周溝と横溝とによって区画されるブロックに、傾向的にトレッド幅方向に延びるサイプを形成することで、氷雪面面上での車両の駆動および制動に当って、ブロック内のサイプの、路面に対する作用であるエッジ効果によって、駆動力および制動力の増加を担保することができる。
そして、このタイヤでは、ブロックに複数本形成される、上述したようなサイプの底部に、サイプの対向溝壁を一体的に連結する、少なくとも一個、好ましくは複数個の上向き突起を設け、それぞれのサイプにて区画されるそれぞれのブロック分割部分を、その突起を持って相互に連結させ、それぞれのブロック分割部分相互の、常に確実な支え合いを可能とすることにより、ブロック分割部分の撓み変形を、それらの相互によって抑制することができる。
従って、サイプ開口縁のエッジ効果によって、駆動力および制動力等の増加をもたらし得ることはもちろん、その突起による、それぞれのブロック分割部分相互の常に確実な支え合いの下で、サイプで区画されたブロック分割部分の剛性を確保することにより、ブロックの、接地面積の減少を防止して、操縦安定性等の増加をもたらすことができる。
さらにまた、ブロック分割部分の撓み変形に当っても、それら相互の拘束下で、サイプ間隔を保ち、所要のサイプ容積を十分に確保することができるので、効率的な除水効果を得ることができる。
この一方で、ドライ路面やウェット路面等の一般路面上でのタイヤの負荷転動に当っても、サイプ内の突起によって、それぞれのブロック分割部分の倒れ込み変形が有利に抑制されることから、ブロック全体の高い剛性、ひいては十分な接地面積を確保することができ、これにより、操縦安定性を、従来タイヤに比べても向上させることができる。
以下に、図面を参照しながら本発明の空気入りラジアルタイヤを詳細に説明する。
図1は、本発明の空気入りラジアルタイヤの一の実施形態を示すトレッドパターンの部分展開図であり、図2は、図1に示すトレッドパターン中のブロックを示す部拡大斜視図である。
そして、図3は、図2のIII-III線に沿う断面斜視図である。
図1中1はトレッド踏面を、2は、トレッド踏面1に、トレッド周方向に延在させて設けた複数本の円環状の周溝を、3は、各周溝2と交差してトレッド幅方向に伸びる複数本の横溝を、4は、複数本の周溝2と複数本の横溝3とにより区画されるブロックを、そして5は、各ブロック4に傾向的にトレッド幅方向に延在させて設けた複数本のサイプをそれぞれ示す。
図1に示すところでは、トレッド踏面1に、トレッド周方向に直線状に延びる四本の周溝2を、幅を5.0〜8.0mm、深さを8〜9mmで設けるとともに、これらの周溝2に交差してトレッド幅方向に延びる複数本の横溝3を、幅を3.0〜7.0mm、深さを7〜9mで設けることができ、これらの溝2、3と、トレッド側縁との間に五列のブロック列6を区画する。
またここでは、傾向的にトレッド幅方向に延在させて四本ずつサイプ5を、それぞれのブロック列6内のそれぞれのブロック4に、例えば、幅が5〜40mm、深さが6.0〜10.0mmの範囲の、いわゆる三次元形態で形成する。サイプ5は、トレッド幅方向にジグザグ状の形態で延在し、深さ方向にジグザグ状の形態で延在する三次元サイプである。
さらに、このタイヤでは、図3および図4に示すように、各サイプ5の底部に、サイプ5の対向溝壁を一体的に連結する、少なくとも一個の上向き突起7を設ける。
この場合、各突起7は、サイプ底に沿う長さを0.2〜2.0mmの範囲としブロック表面から測定した突起上端の深さを、サイプ深さの20〜80%の範囲とする。
各突起7の、サイプ底に沿う長さを0.2〜2.0mmとすることにより、氷路上のみならずドライ路面やウェット路面等の一般路面上でも、各ブロック分割部分8の倒れ込みを抑制して接地面積を確保することができる。さらに、サイプ内に除水することもできる。その結果、操縦安定性を向上させることができる。
その長さが0.2mm未満では、各ブロック分割部分8の倒れ込みを抑制することができず、接地面積が低下することで氷路上の操縦安定性が低下する傾向があり、一方、2.0mmを超えるとサイプ5に取り込み可能な水量が減り、除水機能が低下することで、操縦安定性が低下する傾向がある。
そしてさらに、ブロック表面から測定した突起上端の深さを、サイプ深さの20〜80%の範囲とすることにより、新品タイヤ等として氷路で使用するときに、各ブロック分割部分8が適度に倒れ込みエッジ効果と水膜除去効果との両者の効果を併せ持つことができる。
その深さが20%未満では、各ブロック分割部分8の倒れ込みを抑制することができず、接地面積が低下し氷路上の操縦安定性が低下する傾向があり、一方、80%を超えるとサイプ5に取り込み可能な水量が減り、除水機能が低下することで、氷雪路での制動性能および駆動性能が低下する傾向がある。
図4は、図2のIV−IV線に沿う断面図である。図5は、図1のトレッド踏面に構成したブロックのトレッド周方向断面図と、サイプ内に設けられた突起の個数を示した図である。
ブロック単体で見たときの好適例では、ブロック4の最も踏み込み側に位置する踏み込み側サイプ5a内および、最も蹴り出し側に位置する蹴り出し側サイプ5b内の突起7の個数を、ブロック4の中間部に位置するサイプ内の突起7の個数より多く設ける。
各ブロック4では、ブロック4の中間部付近の各ブロック分割部分8は、そこへの外力の作用に際し、隣接して存在するブロック分割部分8等による支持によって、倒れ込み量が必然的に少なくなるも、最も踏み込み側および、最も蹴り出し側に存在するブロック分割部分8は、隣接部に支え合うブロック分割部分8が全くもしくはほとんど存在しないため、ブロック4に大きな力が作用するとブロック分割部分8の倒れ込み量が多くなって、接地面積が低下するおそれがある。
これがためここでは、ブロック4の、踏み込み側サイプ5aおよび、蹴り出し側サイプ5bの少なくとも一方のサイプ内、図では双方のサイプ内の突起7の個数を、ブロック4の中間部に位置するサイプ内の突起7の個数より多くすることにより、特に撓み変形に対する、ブロック4の最も踏み込み側および最も蹴り出し側に存在するブロック分割部分8の支え合う力、すなわち、倒れ込み拘束力を強化することができる。これにより、接地面積の減少が有効に防止されることになって、氷雪路での、駆動性能および制動性能が向上し、一般路での操縦安定性も向上されることになる。
この場合、好ましくは、ブロック4の、中間部から、踏み込み側および蹴り出し側へ、サイプ内の突起7の個数を徐々に増加させることにより、ブロック端の倒れ込みを防止しつつ、ブロック中央の除水機能は確保する効果を得ることができる。その結果、接地面積が増加され、氷雪路での、駆動性能および制動性能が向上し、一般路での操縦安定性も向上されることになる。
ところで、図5に示すところでは、また、ブロック4の、踏み込み側サイプ5a内および蹴り出し側サイプ5b内のそれぞれに設けた突起7の数をともに同数としているが、それらの突起7の個数は相互に相違させることも可能である。
ブロック4の、踏み込み側サイプ5aおよび、蹴り出し側サイプ5bの少なくとも一方のサイプ内の突起7の個数に対する、ブロック4の中間部に位置するサイプ内の突起7の個数の比が、1:0.2〜1:1とし、特に1:0.5とすることで、踏み込み側サイプ5aおよび、蹴り出し側サイプ5bのブロック分割部分8の倒れ込みを抑制するとともに、除水機能を確保する傾向がある。
そして、ブロック4の、踏み込み側サイプ5aおよび、蹴り出し側サイプ5bの少なくとも一方のサイプ5内の突起7の総断面積を、ブロック4の中間部に位置するサイプ内の突起7の総断面積より多くすることで、踏み込み側サイプ5aおよび、蹴り出し側サイプ5bのブロック分割部分8の倒れ込みを抑制するとともに、除水機能を確保する傾向がある。
好ましくは、ブロック4の、中間部から、踏み込み側サイプ5aおよび蹴り出し側サイプ5bへ、サイプ内の突起7の総断面積を徐々に増加させることにより、ブロック端の倒れ込みを防止しつつ、ブロック中央の除水機能を確保する効果を得ることができる。その結果、接地面積が増加し、氷雪路での、駆動性能および制動性能が向上し、一般路での操縦安定性も向上されることになる。
また、ブロック4の、踏み込み側サイプ5a内と蹴り出し側サイプ5b内にそれぞれに設けた突起7の総断面積は、同一でも相違していても良い。
特に、ブロック4の、踏み込み側サイプ5aおよび、蹴り出し側サイプ5bの少なくとも一方のサイプ内の突起7の総断面積に対する、ブロック4の中間部に位置するサイプ5内の突起7の総断面積の比率を、1:0.1〜1:1とし、特に好ましくは1:0.5とすることで、踏み込み側サイプ5aおよび、蹴り出し側サイプ5bのブロック分割部分8の倒れ込みを抑制するとともに、除水機能を確保する傾向がある。
ところで、図4に示すところでは、ブロック4に形成した四本のサイプ5の総てに突起7を設けているが、ブロック4に形成したサイプ5のうち、一部のもののみに突起7を設けることも可能である。
図6は、図1に示すトレッドパターンの五列のブロック列のそれぞれを示す展開平面図および、それらのそれぞれのブロックに設けたサイプ内の突起の総個数を示した図である。
トレッドパターン全体で見たときの好適例では、トレッドの最外側に位置する少なくとも一方側の側部域ブロック、図では両側の側部域ブロック4aの、それぞれのサイプ5内の突起7の総個数を、トレッド中央域のブロックである中央域ブロック4bのそれぞれのサイプ5内の突起7の総個数より多く設けることが好ましい。
さらにまた、トレッドパターンにおいて、側部域ブロック4aは主に制動性能やコーナーリング性、中央域ブロック4bは主に制動性能および駆動性能に影響する。
そこで、複数本の周溝2と、複数本の横溝3とで区画される複数のブロック列中のそれぞれのブロック4のうち、トレッドの最外側に位置する側部域ブロック4aの少なくとも一方側のブロック、図では両側の側部域ブロック4aの、サイプ5内の突起7の総個数を、中央域ブロック4bの、サイプ5内の突起7の総個数より多くすることで、特に撓み変形における、ブロック分割部分8の倒れ込み変形を抑制することによって接地面積の低下を防止することができる。その結果、側部域ブロック4aのブロック分割部分8を突起7による支え合うことにより剛性を確保し、氷雪路の制動性能および一般路での操縦安定性を向上することができる。
一方、中央域ブロック4bに設けられたサイプ5には突起7の総個数を少なくすることで、突起7による支え合いが少なくなり、ブロック分割部分8が適度の撓み変形が実現されることになるので、サイプエッジのエッジ効果の一層の増加がもたらされることになり、氷雪路での制動性能、加速性能を向上させることができる。
したがって、このパターン内で突起7の総個数の適正な分布変化により、制動性能、加速性能および操縦安定性の各性能を同時に向上させることができる。
好ましくは、中央域ブロック4bから、側部域ブロック4aへ、ブロック4に設けられたサイプ5内の突起7の総個数を徐々に増加させることで、中央域ブロック4bに近づくにつれて突起7の個数が少なくなり、エッヂ効果が上昇することができる。その結果、氷雪路での、駆動性能および制動性能が向上する。一方、側部域ブロック4aに近づくにつれて突起7の個数が多くなり、剛性を確保することができる。その結果、一般路での操縦安定性も向上されることになる。
また、図6に示すところでは、それぞれの、側部域ブロック4aに設けたそれぞれの突起7の総個数は、同数としているが、それらの突起7の個数は相互に相違させることも可能である。
少なくとも一方の側部域ブロック4aの、サイプ5内の突起7の総個数に対する、中央域ブロック4bの、サイプ5内の突起7の総個数の比を、1:0.2〜1:1とし、特に好ましくは1:0.25とすることで、加速時に主に用いるセンター部のエッジ効果とともに、コーナーリング時のショルダー部の剛性を確保することができる傾向がある。
そして、少なくとも一方の側部域ブロック4aの、サイプ5内の突起7の総断面積を、中央域ブロック4bの、サイプ5内の突起7の総断面積より大きくすることで、主に加速時に用いるセンター部のエッジ効果とともに、コーナーリング時のショルダー部の剛性を確保することができる傾向がある。
好ましくは、中央域ブロック4bから、側部域ブロック4aへ、ブロック4に設けられたサイプ5内の突起7の断面積を徐々に増加させることで、中央域ブロック4bに近づくにつれて、突起7の断面積が少なくなり、エッヂ効果が上昇することができる。その結果、氷雪路での、駆動性能および制動性能が向上する。一方、側部域ブロック4aに近づくにつれて、突起の断面積が多くなり、剛性を確保することができる。その結果、一般路での操縦安定性も向上されることになる。
また、ブロック4の、側部域ブロック4aのそれぞれに設けた突起7の断面積は、同一でも相違していても良い。
特に、少なくとも一方の側部域ブロック4aの、サイプ5内の突起7の総断面積に対する、中央域ブロック4bの、サイプ5内の突起7の総断面積の比を、1:0.1〜1:1とし、特に好ましくは、1:0.25とすることで、主に加速時に用いるセンター部のエッジ効果とともに、コーナーリング時のショルダー部の剛性を確保することができる傾向がある。
ところで、本発明に係る空気入りラジアルタイヤでは、ブロック4の表面に開口するサイプ5の延在形状は、ジグザグ状のみならず、直線状、クランク状、その他の所要形状とすることができ、サイプ5の一端又は両端がブロック4内に終了することもできる。また、そのサイプ5の形成態様は、二次元形態を有するものまたは三次元形態を有するものとすることができる。
したがって、図では、サイプ5を三次元サイプとしているも、それを二次元サイプとすることも可能である。
図7は、加硫モールドに装着されて、サイプ5およびサイプ5内の突起7を形成するのに用いることができるブレードを例示する断面斜視図であり、図8は、図7に示すブレードの正面図である。
本発明でいう、突起7を設けたサイプ5は、加硫モールドを持って生タイヤを加硫成型するに当って、ブレード11のスリットは、内に入り込んだゴム部分によって、各突起7が形成されることになり、ブレード11それ自身によるゴムの押し退けによってサイプ5が形成されることになる。
次に、図1、図9および図10に示すような構造を有する、サイズが195/65R15、56ピッチのサイズのラジアルタイヤを試作し、それぞれの諸元を変化させた実施例タイヤ1〜実施例タイヤ3、比較例タイヤ1とのそれぞれにつき、氷雪路での加速性能を測定した。
ここでは四本の周溝の寸法を、幅5mm、深さ9mm、横溝の寸法を幅5mm、深さ9mmとした。トレッド周方向に五列で区画されたブロック列の、各ブロックに、幅30mm、深さ7mmの三次元サイプを四本形成し、各サイプには、幅0.5mm、サイプ深さの56%の突起を設けた。
パターン全体としての突起の配置個数は同じ数となるように設置した。
ところで、本発明では、トレッド踏面以外のタイヤ構造については改変を要しないため、従来のラジアルタイヤの構造とほぼ同様とした。
実施例タイヤ1では、全てのサイプに突起を均一に分布させて配置し、1本のサイプ内に7mmの間隔で三箇所の突起を設けた。実施例タイヤ2では、各ブロックの踏み込み側のおよび蹴り出し側のそれぞれのサイプ内に、5mmの間隔で四箇所に、中間部のサイプ内には10mmの間隔で二箇所に突起を配置した。実施例タイヤ3では、トレッドパターン内の、トレッド中央域に含まれるブロックに一箇所の突起,それに隣接するブロックに7mmの間隔で三箇所、両トレッド側部域のブロックに5mmの間隔で四箇所に、それぞれ突起を配置した。比較例タイヤ1は、サイプに突起を設けないものである。
(加速性能)
実施例タイヤ1〜実施例タイヤ3、比較例タイヤ1のそれぞれにつき、タイヤを6JJのリムに組み付けて、内圧を200kPaとし、FR車で、ドライバー+60kgの荷重条件で、氷路上にてタイヤが空転しない限界のアクセル状態を保持して、5→150km/hまでの加速時間を計測した。
その結果を、表1に指数で示す。比較例タイヤ1の結果を100とし、指数が大きいほど、性能が良好なことを示す。
Figure 2009012648
表1の結果から、実施例タイヤ1〜実施例タイヤ3は、比較例タイヤ1に対し、サイプ内に突起を設けることにより、氷上加速性能は良好となる。さらに、トレッド中央域のブロックの、サイプ内の突起の個数を、両トレッド側部域のブロックの、サイプ内の突起の個数より少なくすることで、エッヂ効果が良好となる。
(制動性能)
実施例タイヤ1〜実施例タイヤ3、比較例タイヤ1のそれぞれにつき、氷路上で、20→0km/hでタイヤを完全にロックしたフルブレーキ時の制動距離で計測した。
その結果を、表2に指数で示す。比較例を100とし、指数が大きいほど、性能が良好なことを示す。
Figure 2009012648
表2の結果から、実施例タイヤ1〜実施例タイヤ3は、比較例タイヤ1に対し、サイプ内に突起を設けることにより、氷上制動性能が良好となる。実施例タイヤ2は、ブロックの、最も踏み込み側および、最も蹴り出し側に位置するサイプ内の突起の個数を、ブロックの中間部に位置するサイプ内の突起の個数より多くすることにより、トレッド部の接地面積の減少が少なく、制動性能が良好である。
(コーナーリング性)
実施例タイヤ1〜実施例タイヤ3、比較例タイヤ1のそれぞれにつき、一般路面上で、コーナーリング時の車両の動きの正確性と、反応速度について10点満点で評価した。
その結果を表3に示し、数値が大きいほど、性能が良好なことを示す。
Figure 2009012648
表3の結果から、実施例タイヤ1〜実施例タイヤ3は、比較例タイヤ1に対し、サイプ内の突起がブロックを補強し、一般路コーナーリング性は良好となる。実施例タイヤ3は両トレッド側部域のブロックの剛性が最も強くなり、良好である。
表1〜表3の結果から、実施例タイヤ1〜実施例タイヤ3は、比較例タイヤ1に対し、サイプ内に突起を設けることで、氷上加速性能、氷上制動性能および一般路コーナーリング性が良好である。
また、サイプ内の突起の配置を変えることにより、コーナーリング性能重視のタイヤにも氷路制動性能重視のタイヤにも対応できる。
本発明の空気入りラジアルタイヤの一の実施形態を示すトレッドパターンの部分展開図である。 図1に示すトレッドパターン中のブロックを示す部拡大斜視図である。 図2のIII−III線に沿う断面斜視図である。 図2のIV−IV線に沿う断面図である。 図1のトレッド踏面に構成したブロックのトレッド周方向断面図と、サイプ内に設けられた突起の個数を示した図である。 図1に示すトレッドパターンの五列のブロック列のそれぞれを示す展開平面図および、それらのそれぞれのブロックに設けたサイプ内の突起の総個数を示した図である。 本発明のサイプを形成するブレードの断面斜視図である。 図7のブレードの正面図である。 実施例に用いた図2のIV−IV線に沿う断面図である。 実施例に用いた突起の断面図である。
符号の説明
1 トレッド踏面
2 周溝
3 横溝
4 ブロック
4a 側部域ブロック
4b 中央域ブロック
5 サイプ
5a 踏み込み側サイプ
5b 蹴り出し側サイプ
6 ブロック列
7 突起
8 ブロック分割部分
11 ブレード
12 スリット

Claims (10)

  1. トレッド踏面に、トレッド周方向に延びる複数本の周溝と、これらの周溝に交差してトレッド幅方向に延びる複数本の横溝とを配設することによりブロックを区画し、そのブロックに、傾向的にトレッド幅方向に延びる複数本のサイプを設けた空気入りラジアルタイヤにおいて、
    サイプの底部に、サイプの対向溝壁を一体的に連結する、少なくとも一個の上向き突起を設けることを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
  2. 各突起の、サイプ底に沿う長さを0.2〜2.0mm、ブロック表面から測定した突起上端の深さを、サイプ深さの20〜80%の範囲である請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
  3. ブロックの、最も踏み込み側および、最も蹴り出し側の少なくとも一方に位置するサイプ内の突起の個数を、ブロックの中間部に位置するサイプ内の突起の個数より多くしてなる請求項1または請求項2に記載の空気入りラジアルタイヤ。
  4. ブロックの、最も踏み込み側および、最も蹴り出し側の少なくとも一方に位置するサイプ内の突起の個数に対する、ブロックの中間部に位置するサイプ内の突起の個数の比が、1:0.2〜1:1である請求項3に記載の空気入りラジアルタイヤ。
  5. ブロックの、最も踏み込み側および、最も蹴り出し側の少なくとも一方に位置するサイプ内の突起の総断面積を、ブロックの中間部に位置するサイプ内の突起の総断面積より多くしてなる請求項1〜4いずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
  6. ブロックの、最も踏み込み側および、最も蹴り出し側の少なくとも一方に位置するサイプ内の突起の総断面積に対する、ブロックの中間部に位置するサイプ内の突起の総断面積の比が、1:0.1〜1:1ある請求項5に記載の空気入りラジアルタイヤ。
  7. 複数本の周溝と、複数本の横溝とで区画される複数のブロック列中のそれぞれのブロックのうち、トレッドの最外側に位置する少なくとも一方側のブロックの、サイプ内の突起の総個数を、トレッド中央域のブロックの、サイプ内の突起の総個数より多くしてなる請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
  8. トレッドの最外側に位置する少なくとも一方側のブロックの、サイプ内の突起の総個数に対する、トレッド中央域のブロックの、サイプ内の突起の総個数の比が、1:0.2〜1:1である請求項7に記載の空気入りラジアルタイヤ。
  9. 複数本の周溝と、複数本の横溝とで区画される複数のブロック列中のそれぞれのブロックのうち、トレッドの最外側に位置する少なくとも一方側のブロックの、サイプ内の突起の総断面積を、トレッド中央域のブロックの、サイプ内の突起の総断面積より大きくしてなる請求項1〜8のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
  10. トレッドの最外側に位置する少なくとも一方側のブロックの、サイプ内の突起の総断面積に対する、トレッド中央域のブロックの、サイプ内の突起の総断面積の比が、1:0.1〜1:1である請求項9に記載の空気入りラジアルタイヤ。
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