JP5506463B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
従って、上記の多角形状のブロックを単純にトレッド接地面内の全体に一律に配置してしまうと、複数の多角形状ブロックの中でも、特に、ショルダー領域に位置する多角形状ブロックに摩耗が生じてしまうことが懸念される。
そして、多角形状のブロックをトレッド接地面に一律に配置するだけではなく、上記事実及びトレッド接地面の領域ごとの特性を鑑みたうえで、タイヤ車両装着の際の使用目的に応じて、この多角形状のブロックをトレッド接地面内の最適な位置に配置することによって、タイヤ全体として、タイヤに必要な種々の性能をバランス良く兼ね備えたより有効なトレッドパターンを実現させようとする着想を得た。
トレッド接地幅内の2本の周方向主溝間に、細溝により区画形成した複数の五角形以上の多角形状ブロックであって、各々の実接地面積が50mm 2 〜250mm 2 である多角形ブロックを少なくとも2列の縦列及び複数の横列に配置してなる多角形状ブロック群が設けられ、前記縦列は、隣接する縦列を構成する多角形状ブロック同士のタイヤ周方向における位相が相互に異なるように配置され、 前記多角形状ブロック群のタイヤ幅方向中心は、タイヤ赤道面を中心として前記トレッド接地幅の50%の幅を有する領域内に位置することを特徴とする空気入りタイヤである。
ここで、「車両への装着の向きが定められており」とは、タイヤの外面上に、使用者に対して、車両への装着の向きを示す文字、図形、模様等のインジケータが付されていることを言う。
ここで言う「幅方向横溝」とは、幅方向最外側の多角形状ブロックの、幅方向外側に形成される周方向の細溝と、周方向主溝とに交差する横溝のことを言う。
ここで、「多角形状ブロック群及び側ブロック列のタイヤ幅方向長さ」とは、タイヤ幅方向断面において、側ブロックを区画形成する二本の周方向主溝の、各多角形状ブロック群側の点を結ぶ線分の長さのことを言う。
S=a/(PL×GbW×(1−N/100))
で与えられる前記多角形状ブロック群の単位実接地面積当りのブロック個数密度Sは、0.003個/mm2以上0.04個/mm2以下の範囲内であることが好ましい。
ここで「底上げブロック」とは溝内に形成されるブロックであって、幅方向の一方側が側ブロックと連結しており、側ブロックよりもブロック高さが低いブロックのことを言う。
ここで、第1の細溝3aとは、多角形状ブロック間の略幅方向の溝のことを言い、第2の細溝3bとはこの第1の細溝3aに交差する溝のことを言う。これらの溝は、隣接する多角形状ブロック同士が相互に完全に拘束されることがなく、各ブロックが個々に可動となる程度の幅を有しており、好ましくは、0.7mm〜3mmの幅である。
ここで50mm2〜250mm2の範囲とするのは、50mm2よりも小さくしてしまうと、ブロック表面積に対してブロックの高さが高く(すなわち溝が深く)なり、ブロックの曲げ剛性の低下により倒れ込みが生じ、ドライ性能/ウェット性能/氷上性能/雪上性能のハンドリングが悪化してしまうからである。また、250mm2よりも大きくしてしまうと、上述のように、比較的小さなブロックにすることによって氷雪上性能の向上を図ることができないからである。また、個々のブロックを大きくしてしまうと、ウェット路面走行時に、多角形状ブロックによる排水抵抗が大きくなってしまい、ハイドロプレーニング性能が悪化してしまうからである。
S=a/(PL×GbW×(1−N/100))
で与えられる、該多角形状ブロック群Gbの単位実接地面積当りのブロック個数密度Sが、0.003個/mm2以上0.04個/mm2以下の範囲内にあることが好ましい。
周方向主溝を直線状に形成することで、排水性を高めることができることに加え、氷雪上での直進安定性を向上させることができるからである。一方で、多角形状ブロック群Gb側では多角形状ブロック4の形状に合わせて溝を形成することで、多角形状ブロック4と側ブロック9の間にも、多角形状ブロック4の周囲の溝(すなわち、細溝3a及び3b)と同形状同幅の溝を確保することができるので、側ブロックに隣接する多角形状ブロックにおいても、他の多角形状ブロックと同様の効果を得ることができるからである。
タイヤ負荷時には、コーナリングやリムからの荷重負荷によってショルダー側のブロックの倒れ込みが生じ、タイヤ幅方向外側から内側に向かって力が掛かることで、トレッド中央部のブロックにも負荷が掛かることが考えられる。この際に、上記の通り多角形状ブロック群Gbを囲うようにして周方向に形成される側ブロック9の接地面積を大きくしてブロックの剛性を高くすれば、この側ブロック9がタイヤ幅方向外側から掛かる力を吸収するので、側ブロック9よりもトレッド中央部寄りに位置する多角形状ブロック4に対して幅方向外側から掛かる力を、抑制することができる。その結果、この側ブロック9、9の間に位置する多角形状ブロック4を良好な状態で接地させることができるので、上述のような氷雪上性能を効果的に発揮することができるからである。
上述のように、タイヤ負荷時には、コーナリングやリムからの荷重負荷によってショルダー側のブロックの倒れ込みが生じ、タイヤ幅方向外側に位置するブロックほど、タイヤ幅方向外側から内側に向かう力を受けやすい。従って、多角形状ブロック群Gbを挟む両側ブロックのうち、タイヤ幅方向外側に位置する側ブロックの実接地面積を大きくすることが好ましい。側ブロックのブロック剛性を高めることで、タイヤ幅方向内側に位置する多角形状ブロックへの横力負荷を軽減させることができるからである。タイヤ幅方向内側に位置する(反対側の)側ブロックの実接地面積は、タイヤ幅方向外側に位置する側ブロックの実接地面積よりも小さくすることが好ましい。多角形状ブロックの両側とも大きなブロックを配置してしまうと、これら大きなブロック間に挟まれた多角形状ブロックが柔軟に可動することができず、上述の氷雪上性能等の効果を充分に発揮させることができなくなってしまう。従って、一方の側ブロックを小さくすることでブロックのエッジ成分が増加させ、隣接する多角形状ブロックと同様に、氷雪上トラクション性能やブレーキ性能を向上させることができるからである。
タイヤに荷重を負荷した際にリムから踏面に対して垂直方向の力が加わるが、この垂直方向の力は、ビード部、サイドウォール部を経た後、ショルダー領域を介して略タイヤ幅方向内側に向かって、トレッド部中央への横力として伝達される。この横力が伝達されると、トレッド部のブロックは幅方向内側向きの力を受けることになり、トレッド部のブロックの中でも、タイヤ幅方向外側に位置する路面近傍のブロック(すなわちショルダー領域のブロック)で、最もせん断変形が生じることになる。また、荷重負荷時だけでなくコーナリング時においても、タイヤ幅方向外側に位置するショルダー領域のブロック、特に接地端から近い領域に位置するブロックが最も変形を生じやすい。
そしてまた、トレッド部の中心であるタイヤ赤道面Cは、路面に対して垂直に走行する場合もコーナリング等の傾斜角を有する場合も、路面と接触する確率が高い領域内に含まれる。従って、多角形状ブロック群Gbのタイヤ幅方向中心GbCがタイヤ赤道面Cを中心としてトレッド接地幅TWの50%の幅を有する領域内に位置する構成とすれば、多角形状ブロック群Gbはタイヤ赤道面C寄りに配置されることになるので、トレッド中央領域における氷雪上性能や路面追従性等を効果的に発揮することができる。
すなわち、ネガティブキャンバーの場合には、車両装着内側となるトレッド部が路面に強く接地し、車両装着外側となるトレッド部では逆に路面から浮き上がる傾向にある。反対にポジティブキャンバーの場合には、車両装着外側となるトレッド部が路面に強く接地し、車両装着内側となるトレッド部では逆に路面から浮き上がる傾向にある。
また逆に、路面への接地頻度が低いトレッド領域にまで多角形状ブロックを密集させてしまうと、タイヤ全体としての剛性が低くなって、全体の接地性を良好に維持できない可能性がある。また、入り組んだ形である多角形状ブロックを全体に多く配置し過ぎてしまうと、排水性が不利となって、ハイドロプレーニング性能を良好に維持できない可能性がある。
従って、トレッドの各領域に対して要求される性能に応じて、各々が異なる性能を有するブロックを選択して配置することによって、種々のタイヤ性能を兼ね備えた、全体としてさらに良好な空気入りタイヤを提供することが可能となるのである。
ネガティブキャンバーの下では、タイヤ赤道面Cよりも装着内側の領域が、路面との接地直下領域になる。接地領域が車両幅方向の比較的内側に位置する場合、特に走行中の直進時の性能に影響を与えることになるが、このように、多角形状ブロック群が接地領域に在れば、前述のような氷雪上性能、路面追従性等を有する多角形状ブロックの機能によって、直進時における氷雪上でのブレーキ/トラクション性能を向上させることができる。
ポジティブキャンバーの下では、タイヤ赤道面Cよりも装着外側の領域が、路面との接地直下領域になる。接地領域が車両幅方向の比較的外側に位置する場合、特に走行中のコーナリング時の性能に影響を与えることになるが、このように、多角形状ブロック群が接地領域に在れば、前述のようにエッジ成分を多く有することによる氷雪上性能を向上させることができる。また、接地性能等を有する多角形状ブロックの機能によって、コーナリング時における、特にハンドリング性能を向上させることができる。
従って、上記事実を考慮し、氷雪上性能及びハイドロプレーニング性能の両性能をバランス良く維持するためには、多角形状ブロック群Gb及び側ブロック列SBをトレッド接地幅TWの7.5〜50%の範囲に配置するのが好適である。トレッド接地幅TWの7.5%未満としてしまうと、氷雪上性能を効果的に向上させることができないからであり、トレッド接地幅TWの50%よりも長くしてしまうと、ハイドロプレーニング性能を良好に確保することができないからである。この事は、多角形状ブロック群Gb及び側ブロック列SBをトレッド接地幅TWの15〜40%の範囲に配置した場合、さらに効果的である。
多角形状ブロック4は比較的接地面積が小さいため、側ブロック9の剛性と比較すると、多角形状ブロック4の剛性は低くなる。そこで、多角形状ブロック4を区画する第1の細溝3a及び第2の細溝3bの溝深さを周方向主溝5、6の溝深さよりも小さく形成することで、少しでも多角形状ブロック4の剛性を高めて、走行安定性を向上させることができるからである。その結果、多角形状ブロック4の接地性も安定するので、多角形状ブロックによる氷雪上性能をより効果的に機能させることができる。このように、当該第1の細溝3a及び第2の細溝3bの溝深さを小さくすることで、主にドライ性能/ウェット性能/氷上性能/雪上性能のハンドリング性能と、氷上のブレーキ性能/偏摩耗性能を向上させることができるのである。
周方向主溝:(図1の紙面左から)5mm、12mm、7mm
周方向主溝の溝深さ:9mm
多角形状ブロックの周方向長さ(BL):13.0mm
多角形状ブロックの幅方向長さ(BW):15.6mm
トレッド周方向に隣接する多角形状ブロック間距離(BGL):3.4mm
トレッド幅方向に隣接する多角形状ブロック間距離(BGW):9.5mm
多角形状ブロックの高さ(BH):7mm
基準ピッチ長(PL):32.9mm
多角形状ブロック群及び側ブロック列の幅:52.1mm
多角形状ブロック群の接地幅対比の割合:32%
側ブロック(中央側)長さ:14.9mm
側ブロック(外側)長さ:28.8mm
多角形状ブロック面積:154mm2
多角形状ブロック群の幅方向中心位置:タイヤ赤道面より車両装着内側に17.5mm(タイヤ半幅の中心位置はタイヤ赤道面より40mm)
表1中の評価は、従来例タイヤを指数100とし、数値が大きくなるほど、氷上性能又は雪上性能が向上していることを示す。
また比較のために、図5のように多角形状ブロックを、装着時に車両内側となるショルダー領域に配置させたタイヤ(以下、比較例タイヤと呼ぶ)を用意し、ショルダー領域における偏摩耗性を評価した。偏摩耗性の評価は、ドライ状態の一般道を各種走行モードで5000km走行した際のブロック間の段差摩耗量の測定により行い、測定値は、実施例タイヤを100として指数で示した。結果を以下の表2に示す。
但し、本発明の多角形状ブロックの表面輪郭形状は、必ずしも上記の形状に限定されるわけではない。このように溝によって区画形成がされ、且つ、個々の多角形状ブロックが隣接する多角形状ブロックに拘束されることなく、接地時に柔軟性を有することができるように、自由に独立して動くことが可能であればよい。
2 接地端
3a、3b 細溝
4 多角形状ブロック
5、6 周方向主溝
7、8 幅方向横溝
9 側ブロック
10 底上げブロック
W 多角形状ブロック群Gbと側ブロック列SBのタイヤ幅方向長さ
C 赤道面
Gb 多角形状ブロック群
GbC 多角形状ブロック群のタイヤ幅方向中心
GbW 多角形状ブロック群のタイヤ幅方向長さ
SB 側ブロック列
TW トレッド接地幅
TWh トレッド接地幅TWの50%幅
Claims (8)
- トレッド接地幅内の2本の周方向主溝間に、細溝により区画形成した複数の五角形以上の多角形状ブロックであって、各々の実接地面積が50mm 2 〜250mm 2 である多角形ブロックを少なくとも2列の縦列及び複数の横列に配置してなる多角形状ブロック群が設けられ、前記縦列は、隣接する縦列を構成する多角形状ブロック同士のタイヤ周方向における位相が相互に異なるように配置され、
前記多角形状ブロック群のタイヤ幅方向中心は、タイヤ赤道面を中心として前記トレッド接地幅の50%の幅を有する領域内に位置することを特徴とする空気入りタイヤ。 - 車両への装着の向きが定められており、車両装着時において、前記多角形状ブロック群のタイヤ幅方向中心は、車両内側となるトレッド半域内に在ることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 車両への装着の向きが定められており、車両装着時において、前記多角形状ブロック群のタイヤ幅方向中心は、車両外側となるトレッド半域内に在ることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記周方向主溝、幅方向横溝、前記細溝によって区画形成した側ブロックを周方向に複数個配置してなる側ブロック列が、前記多角形状ブロック群のタイヤ幅方向両側にそれぞれ一列ずつ設けられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記多角形状ブロック群及び前記側ブロック列のタイヤ幅方向長さは、前記トレッド接地幅の7.5%〜50%であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記多角形状ブロックを区画する前記細溝の深さは、前記周方向主溝の深さよりも小さいことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記多角形状ブロックは、前記多角形状ブロック群の基準ピッチ長さをPL(mm)、前記多角形状ブロック群の幅をGbW(mm)、該基準ピッチ長さPLと該幅GbWとで区画される前記多角形状ブロック群の基準区域内に存在する前記多角形状ブロックの個数をa個、前記基準区域内のネガティブ率をN%とした場合、
S=a/(PL×GbW×(1−N/100))
で与えられる前記多角形状ブロック群の単位実接地面積当りのブロック個数密度Sは、0.003個/mm 2 以上0.04個/mm 2 以下の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。 - 前記周方向主溝の少なくとも一方は、溝内に底上げブロックを有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
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