JP2006113486A - 液浸系顕微鏡対物レンズ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 物体側から順に第1レンズ群G1と第2レンズ群G2と第3レンズ群G3とを配置し、第1レンズ群に含まれる平凸レンズ11とメニスカスレンズ12との接合面11bの曲率半径r1、平凸レンズの中心厚d1、平凸レンズの平面から物体面までの距離dA、カバーガラスの厚さdB、平凸レンズの屈折率n1、メニスカスレンズの屈折率n2、全体の焦点距離f、第3レンズ群の焦点距離f3が、次の条件式を満足するように構成する。
√[|r1|2−(|r1|−d1)2]−[5.13×(dA−dB)+0.775] >0
|r1|+16.67×(n1−n2)/n1/n2 <0
0.10<|f/f3|<0.16
【選択図】 図1
Description
また、液浸系顕微鏡対物レンズを用いた全反射照明蛍光検鏡も知られている(例えば特許文献1を参照)。これは、液浸系顕微鏡対物レンズと浸液とカバーガラスとを介して標本側に染み出たエバネッセント光により標本を照明し、標本からの蛍光を取り込むことによって、標本を観察する方法である。エバネッセント光は、標本とカバーガラスとの境界面で光を全反射させたときに発生する微弱光である。エバネッセント光を発生させるためには、標本とカバーガラスとの境界面に大きな角度(つまり臨界角以上)で照明光を入射させる必要があり、開口数NAの大きな液浸系顕微鏡対物レンズが必要である。この全反射照明蛍光検鏡によれば、標本の境界面付近の情報のみを効率よく得ることができる。
|r1|+16.67×(n1−n2)/n1/n2 <0 …(2)
0.10<|f/f3|<0.16 …(3)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液浸系顕微鏡対物レンズにおいて、前記液浸系顕微鏡対物レンズの開口数NAは、浸液の屈折率n0に対して、次の条件式(4)を満足するものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の液浸系顕微鏡対物レンズにおいて、前記第2レンズ群と前記第3レンズ群とは、光軸方向に沿って一体的に移動可能な補正用のレンズ群であり、前記液浸系顕微鏡対物レンズの焦点距離fと、前記補正用のレンズ群の焦点距離fbとは、次の条件式(5)を満足するものである。
(第1実施形態)
第1実施形態の液浸系顕微鏡対物レンズ10は、図1に示す通り、物体側(図の左方)から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、負の屈折力を有する第3レンズ群とが配置された3群構成の光学系である。
また、この接合レンズ(11,12)よりも像側には、像側に凸面を向けた正のメニスカスレンズ13と、正の屈折力を有する3つの接合レンズ(14,15),(16,17),(18,19)とが配置されている。接合レンズ(14,15)は、負のレンズ14と正のレンズ15とを貼り合わせたものであり、像側に凸面を向けている。接合レンズ(16,17)は、負のメニスカスレンズ16と正のレンズ17とを貼り合わせたものである。接合レンズ(18,19)は、物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズ18と正のレンズ19とを貼り合わせたものである。
第3レンズ群G3は、負の屈折力を有する2つの接合レンズ(22,23),(24,25)を含む。物体側の接合レンズ(22,23)は、正のレンズ22と負のレンズ23とを貼り合わせた接合メニスカスレンズであり、像側に強い凹面を向けている。像側の接合レンズ(24,25)は、負のレンズ24と正のレンズ25とを貼り合わせた接合メニスカスレンズであり、物体側に強い凹面を向けている。第3レンズ群G3は、ガウスタイプのレンズ群である。
また、カバーガラス10Aと液浸系顕微鏡対物レンズ10の先端(平凸レンズ11の物体側の平面11a)との間は、浸液10Bで満たされる。浸液10Bは、通常のオイルである。通常のオイルは、d線(587nm)に対する屈折率nd=1.515(23℃)であり、自家蛍光の最も少ない油浸液である。
さらに、第1実施形態の液浸系顕微鏡対物レンズ10では、その開口数NAを1.45より大きくするため、平凸レンズ11とメニスカスレンズ12との接合面11b(図1)の曲率半径r1を大きくすることにより、接合面11bを緩い形状とする。ちなみに、開口数NAはn×sinθで決まる。通常のオイル(n=1.515)では屈折率nが大きくないため、角度θを大きくする必要がある。角度θを大きくした場合、周縁部の光線がケラれないようにするためには、接合面11bを緩い形状とする。具体的には、上記の作動距離d0(=dA−dB)と平凸レンズ11の中心厚d1に対し、接合面11bの曲率半径r1が、次の条件式(1)を満足するように構成する。
条件式(1)を満足しない場合には、平凸レンズ11の平面11aにおいて、大きなNAの光束の有効径を確保することができなくなってしまう。条件式(1)を満足するのであれば、接合面11bを緩い形状とすることによって、大きなNAの光束の有効径を確保できる。この条件式(1)は、接合面11bの曲率半径r1の下限値を決めるためのものである。なお、条件式(1)の左辺は0.2よりも大きい値とすることが好ましい。
そこで、接合面11bの曲率半径r1の上限値を決めるため、第1実施形態の液浸系顕微鏡対物レンズ10では、平凸レンズ11の屈折率n1とメニスカスレンズ12の屈折率n2とに対し、曲率半径r1が、次の条件式(2)を満足するように構成する。
条件式(2)を満足しない場合、接合面11bの曲率半径r1が大きくなり過ぎてペッツバール和を十分に減少させることができず、その不足分を第3レンズ群G3の負の屈折力によって補うこともできない。条件式(2)を満足するのであれば、接合面11bを緩い形状とすることによって、ペッツバール和を全体的に低減可能となる。なお、条件式(2)の左辺は−0.2よりも小さい値とすることが好ましい。
0.10<|f/f3|<0.16 …(3)
第3レンズ群G3の負の屈折力が小さくて条件式(3)を満足しない場合には、上記の接合面11bで十分に減少できなかったペッツバール和を補うことができず、ペッツバール和が全体的に大きくなってしまう。逆に、第3レンズ群G3の負の屈折力が大きくて条件式(3)を満足しない場合は、色のコマ収差やサジタル方向のコマ収差が悪化してしまう。条件式(3)を満足するのであれば、ペッツバール和を全体的に低減しつつ、コマ収差を良好な状態に保つこともできる。
NA≧0.965×n0 …(4)
つまり、条件式(4)を満足するような液浸系顕微鏡対物レンズ10では、浸液10Bとして通常のオイル(屈折率nd=1.515)を使用する場合でも、その開口数NAを1.45より大きくすることができる。そして、条件式(4)を満足するような大きなNAの軸上光束をケラれることなく透過させることができる。全反射照明蛍光検鏡(TIRFM)による標本の観察では、条件式(4)を満足するような大きなNAの軸上光束が標本に対する照明光として用いられる。
このとき、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との合成の焦点距離(すなわち補正環(G2,G3)の焦点距離fb)が、液浸系顕微鏡対物レンズ10の全体の焦点距離fに対して次の条件式(5)を満足する範囲で、補正環(G2,G3)を動かすことが好ましい。条件式(5)は、補正環(G2,G3)の適切な屈折力を規定するものである。
条件式(5)を満足しない場合には、補正環(G2,G3)を動かしたときに、ピント位置の変動が大きくなってしまう。条件式(5)を満足するのであれば、ピント位置の変動を小さく抑えつつ、補正環(G2,G3)を動かすことができる。補正環(G2,G3)を動かす際、第1レンズ群G1は固定しておく。このため、補正環(G2,G3)の移動に応じて、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間の空気間隔dHを変え、液浸系顕微鏡対物レンズ10の収差の変動を補正することができる。
上記の焦点距離,曲率半径,面間隔、その他の長さの単位は、一般に[mm]である。しかし、光学系は比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、長さの単位は[mm]に限られるものではない。
(1)の左辺 = 0.23
(2)の左辺 =−0.42
(3)|f/f3| = 0.13
(5)|f/fb|= 0.13
なお、第1実施形態の液浸系顕微鏡対物レンズ10は、無限遠系のレンズである。このため、液浸系顕微鏡対物レンズ10を使用する際、その後段には、結像レンズを配置することが必要となる。結像レンズは、第2対物レンズとして機能する。このような結像レンズとしては、例えば図3に示す構成が考えられる。図3に示す結像レンズ30は、物体側から順に、正のレンズ31と負のレンズ32との接合レンズと、正のレンズ33と負のレンズ34との接合レンズとが配置された2群構成である。結像レンズ30の具体的な構成のレンズデータを表2に示す。
(第2実施形態)
第2実施形態の液浸系顕微鏡対物レンズ40は、図7に示す通り、図1の液浸系顕微鏡対物レンズ10と同様の3群構成である。
(1)の左辺 = 0.42
(2)の左辺 =−0.34
(3)|f/f3| = 0.15
(5)|f/fb|= 0.04
さらに、表3のレンズデータに基づく液浸系顕微鏡対物レンズ40の諸収差(球面収差,非点収差,倍率色収差,コマ収差)を図8〜図10に示す。図8〜図10は、上記した図4〜図6と同様であるため、その補足説明を省略する。
(変形例)
なお、上記した実施形態では、第1レンズ群G1が、最も物体側の接合レンズ(図1では接合レンズ(11,12)、図7では接合レンズ(41,42))の後段に、正のメニスカスレンズと、3つ(または2つ)の接合レンズとを配置したが、本発明はこれに限定されない。最も物体側の接合レンズの後段に配置される接合レンズ(正の屈折力)の数は4つ以上でも構わない。つまり、最も物体側の接合レンズの後段に正の屈折力を有する2つ以上の接合レンズを含む場合であれば、本発明を適用できる。さらに、正のメニスカスレンズを省略してもよいし、その代わりに他のレンズを配置してもよい。
さらに、上記した実施形態では、液浸系顕微鏡対物レンズの開口数NAが1.5の例で説明した(表1,表3)が、本発明はこれに限定されない。開口数NAが1.45より大きい場合であれば、本発明を適用できる。
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
10,40 液浸系顕微鏡対物レンズ
10A カバーガラス
10B 浸液(通常のオイル)
11b,41b 接合面
30 結像レンズ
Claims (3)
- 物体側から順に、第1レンズ群と第2レンズ群と第3レンズ群とが配置された液浸系顕微鏡対物レンズであって、
前記第1レンズ群は、物体側に平面を向けた平凸レンズと像側に凸面を向けたメニスカスレンズとの接合レンズを含み、該接合レンズよりも像側に、正の屈折力を有する2つ以上の接合レンズを含み、
前記第2レンズ群は、1つ以上の接合レンズを含み、
前記第3レンズ群は、物体側から順に、像側に強い凹面を向けた接合メニスカスレンズと、物体側に強い凹面を向けた接合メニスカスレンズとを含み、
前記第1レンズ群に含まれる前記平凸レンズと前記メニスカスレンズとの接合面の曲率半径r1、該平凸レンズの中心厚d1、該平凸レンズの前記平面から物体面までの距離dA、前記平面と前記物体面との間に配置されるカバーガラスの厚さdB、該平凸レンズの屈折率n1、該メニスカスレンズの屈折率n2、前記液浸系顕微鏡対物レンズの焦点距離f、および、前記第3レンズ群の焦点距離f3は、次の条件式を満足する
√[|r1|2−(|r1|−d1)2]−[5.13×(dA−dB)+0.775] >0
|r1|+16.67×(n1−n2)/n1/n2 <0
0.10<|f/f3|<0.16
ことを特徴とする液浸系顕微鏡対物レンズ。 - 請求項1に記載の液浸系顕微鏡対物レンズにおいて、
前記液浸系顕微鏡対物レンズの開口数NAは、浸液の屈折率n0に対して、次の条件式を満足する
NA≧0.965×n0
ことを特徴とする液浸系顕微鏡対物レンズ。 - 請求項1または請求項2に記載の液浸系顕微鏡対物レンズにおいて、
前記第2レンズ群と前記第3レンズ群とは、光軸方向に沿って一体的に移動可能な補正用のレンズ群であり、
前記液浸系顕微鏡対物レンズの焦点距離fと、前記補正用のレンズ群の焦点距離fbとは、次の条件式を満足する
|f/fb|≦0.2
ことを特徴とする液浸系顕微鏡対物レンズ。
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