JP2004002138A - シリコンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】トリクロロシラン(TCS)と水素との反応によるシリコンの製造方法において、シリコン析出反応によって生成するテトラクロロシラン(STC)の処理を工業的に極めて有利に行うことが可能なシリコンの製造方法を提供する。
【解決手段】トリクロロシランと水素とを1300℃以上の温度で反応させてシリコンを生成せしめるシリコン析出工程、上記シリコン析出工程での反応後のガスを原料シリコンと接触せしめて該排ガス中に含有される塩化水素とシリコンとの反応によりトリクロロシランを生成せしめるトリクロロシラン生成工程および該トリクロロシラン生成工程での反応後のガスよりトリクロロシランを分離し、シリコン析出工程に循環するトリクロロシラン第一循環工程より成る。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコンの新規な製造方法に関する。詳しくは、トリクロロシラン(以下、TCSともいう。)と水素との反応によるシリコンの製造方法において、シリコン析出反応によって生成するテトラクロロシラン(以下、STCともいう。)の処理を工業的に極めて有利に行うことが可能なシリコンの製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
TCSを原料とした高純度シリコンは、TCSと水素との反応によって製造することができる。工業的には、ロッドの表面を加熱し、これにTCSを水素と共に供給することにより、ロッド上にシリコンを析出せしめて成長した多結晶シリコンロッドを得る、いわゆるシーメンス法が知られている。
【0003】
上記析出反応は、安定してシリコンの析出を行うため、通常900〜1250℃、実質的には900〜1150℃の温度で析出が行われており、析出反応に伴い、STCと塩化水素とが副生する。
【0004】
上記シーメンス法で採用される前記温度下においては、シリコンの析出反応によって生成するSTCと塩化水素の量は、STCが圧倒的に多く生成する。
【0005】
因みに、前記シーメンス法では、高純度シリコンを1t製造する場合にSTCは15〜25tの量で生成され、これに対して塩化水素は、0.1〜1t程度の量で生成される。
【0006】
かかるシリコンの析出反応によって副生するSTCはTCSと比較して化学的に極めて安定な化合物であり、下記反応式に示すように、STCがTCSに混入する比率が増えるほどシリコン析出反応速度が遅くなるばかりでなく、平衡阻害要因も加わって、シリコン析出反応の効率は著しく低下する。
【0007】
・析出反応速度の遅延
TCS+H → Si+HCl+DCS+TCS+STC  (1)
STC+H → Si+HCl+DCS+TCS+STC  (2)
(式中、DCSは、ジクロロシランを示す。)
同一反応条件下でのSi収率は、式(1):式(2)=5:1
・平衡阻害
TCS+H → Si+HCl+DCS+TCS+STC
上記式において、生成系のSTCを原料系に存在させると平衡は左に偏る。
(Le Chatelier(ルシャトリエ)の原理)
そのため、工業的にシリコンの析出反応を行う設備においては、シリコン析出反応時に大量に生成するSTCの一部または全部を、近接または遠隔の処理設備(以下、STC処理設備という。)に排出せざるを得ないのが現状であった。
【0008】
上記STC処理設備の例としては、STCを酸水素炎にて加水分解してヒュームドシリカや石英を製造する設備、またはシリコンウェハー等のエピタキシャル設備が挙げられる。
【0009】
しかし、上記STC処理設備におけるSTCの消費量は、それを原料とするヒュームドシリカ等の需要量によって左右され、それらの需要が減少すると、処理しきれない余剰のSTCを廃棄せざるを得ない。このように、シリコンの生産とSTCの需要は微妙なバランスの上に成り立っており、前記大量に生成するSTCの対策において根本的な解決には至っていない。
【0010】
上記問題に対して、STCの生成量を減らし、STCを排出しない自立型のプロセスとして、クローズドシステムが提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。しかし、これらの方法は、いずれも、理想系の上にのみ成り立つ方法である。例えば、特許文献1に記載の方法は、シリコンの析出に供するガス組成を特定し、これを900〜1250℃の析出温度でシリコンを析出させることにより、STCの副生を抑えたクローズド化技術を提供するものであるが、その実施例に見られるように、供給するガス量を反応面積に対して極めて小さくすることにより、シリコンの析出反応系を平衡状態に近い条件(理想系)に調整している。このような条件は、工業的に有効な生産量を確保することが困難である。また、生産量を確保するため、上記組成の原料ガスの供給量を増大した場合はTCSの反応率が著しく低下し、やはり工業的な実施は困難である。
【0011】
そして、上記析出温度におけるシリコンの生産を工業的に有利な生産量で実施するためには、ガス組成の水素の比率を低下させてTCSの反応率を向上せざるを得ず、それに伴ってSTCの副生量が急激に増加する。
【0012】
従って、1250℃以下の比較的低温度でのシリコンの析出を工業的に実施するためには、前記したように、大量のSTCの副生を余儀なくされ、クローズドシステムを工業的に実施する技術は未だ完成されるに至っていないのが現状である。
【0013】
尚、STCよりTCSを製造する工程として、STCを水素還元によりTCSに転換し、次いで、その反応ガスの塩化水素と冶金グレードの低純度のシリコンである、冶金級シリコンとを反応させてTCSを得る方法が提案されている(特許文献3参照)が、前記したように、圧倒的にSTCの生成比率が大きい工程における問題の解決には至っていないのが現状である。
【0014】
一方、シリコンの析出反応をシリコンの融点である1410℃付近で実施する方法は、種々提案されている(例えば、特許文献4参照)が、かかる析出温度におけるガス組成についての研究は行われておらず、ましてや、工業的なプロセスについての検討は全くなされていないのが現状である。
【特許文献1】特開昭52−133022号公報
【特許文献2】特開平10−287413号公報
【特許文献3】特開昭57−156318号公報
【特許文献4】特開平11−314996号公報
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の第一の目的は、工業的に有利な生産量を確保し、且つ、副生するSTCの量を低く抑えながら、TCSの生産効率が向上したシリコンの製造技術を提供することにある。
【0015】
また、本発明の第二の目的は、副生するSTCの大掛かりな還元装置を必要とせず、また、クローズド化が可能な、自立型のシリコンの製造プロセスを提供することにある。
【0016】
また、本発明の第三の目的は、副生するSTCの量を容易に制御でき、STC処理設備を併設する場合、該処理設備に供給するSTCの量を任意に調整することが可能なシリコンの製造技術を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、TCSと水素を原料とするシリコンの析出反応を、従来、工業的に実施されたことのない特定の高温域にて実施することにより、生成するSTCの量を、シーメンス法では到底考えられなかった、極めて少ない量に抑えた工業的プロセスを構築可能であることを見出した。
【0018】
即ち、本発明の第一の目的は、トリクロロシランと水素とを1300℃以上の温度で反応させてシリコンを生成せしめるシリコン析出工程、上記シリコン析出工程での反応後のガスを原料シリコンと接触せしめて該排ガス中に含有される塩化水素とシリコンとの反応によりトリクロロシランを生成せしめるトリクロロシラン生成工程および該トリクロロシラン生成工程での反応後のガスよりトリクロロシランを分離し、シリコン析出工程に循環するトリクロロシラン第一循環工程よりなることを特徴とするシリコンの製造方法によって達成される。
【0019】
また、上記の副生したSTCは、その量が極めて少ないため、これを水素還元することにより、STCを実質的に工程外に出さない、クローズド化が可能であることを見出した。
【0020】
即ち、本発明の第二の目的は、トリクロロシランと水素とを該トリクロロシランに対する水素のモル比が10以上で、且つ、1300℃以上の温度で反応させてシリコンを生成せしめるシリコン析出工程、上記シリコン析出工程での反応後のガスを原料シリコンと接触せしめて該排ガス中に含有される塩化水素とシリコンとの反応によりトリクロロシランを生成せしめるトリクロロシラン生成工程、該トリクロロシラン生成工程での反応後のガスよりトリクロロシランを分離し、シリコン析出工程に循環するトリクロロシラン第一循環工程、トリクロロシラン第一循環工程におけるトリクロロシラン分離後の残余成分中のテトラクロロシランを水素により還元してトリクロロシランを得るテトラクロロシラン還元工程および該テトラクロロシラン還元工程での反応後のガスを前記トリクロロシラン生成工程に循環するトリクロロシラン第二循環工程よりなることを特徴とするシリコンの製造方法によって達成される。
【0021】
更に、本発明者らは、上記高温域でのシリコンの析出反応において、TCSに対する水素のモル比を変化させることにより、得られるシリコンの品質に影響を及ぼすことなく、極めて幅広い範囲でSTCの副生量を調整することができ、これにより、STC処理設備を併設する場合においても、該設備に供給するSTCの量を容易に制御できることを見出した。
【0022】
従って、本発明の第三の目的は、トリクロロシランと水素とを1300℃以上の温度で反応させてシリコンを生成せしめるシリコン析出工程、上記シリコン析出工程での反応後のガスを原料シリコンと接触せしめて該排ガス中に含有される塩化水素とシリコンとの反応によりトリクロロシランを生成せしめるトリクロロシラン生成工程、該トリクロロシラン生成工程での反応後のガスよりトリクロロシランを分離し、シリコン析出工程に循環するトリクロロシラン第一循環工程、トリクロロシラン第一循環工程におけるトリクロロシラン分離後の残余成分中のテトラクロロシランの一部を水素により還元してトリクロロシランを得るテトラクロロシラン還元工程、該テトラクロロシラン還元工程での反応後のガスを前記トリクロロシラン生成工程に循環するトリクロロシラン第二循環工程およびテトラクロロシラン還元工程に供給されるテトラクロロシランの残部を取り出し、テトラクロロシラン処理設備に供給するテトラクロロシラン取出工程を有すると共に、シリコン析出工程に供給されるトリクロロシランに対する水素のモル比を変化させることによって該取出量を調整することを特徴とするシリコンの製造方法によって達成される。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明において、シリコン析出工程は、TCSと水素とを1300℃以上、好ましくは、1300〜1700℃の温度、更に好ましくは、1350〜1700℃、最も好ましくは、シリコンの融点以上、1700℃以下の温度で反応せしめてシリコンを生成せしめる工程である。
【0024】
上記高温領域におけるシリコンの析出を工業的に連続して実施する方法は、特に制限されないが、図1に示す装置を使用する方法が好適である。即ち、(1)下端にシリコン取出口となる開口部2を有する筒状容器1、(2)上記筒状容器1の下端から任意の高さまでの内壁をシリコンの融点以上の温度に加熱することができる加熱装置3、(3)上記筒状容器において、1300℃以上に加熱された内壁により囲まれた空間5に下方に向かって開口するように設けられ、クロロシラン類Aを供給するクロロシラン類供給管4、(4)筒状容器の内壁とクロロシラン類供給管の外壁とによって形成される間隙にシールガスBとして、水素ガスを供給するシールガス供給管6、および(5)前記筒状容器1の下方に空間を空けて設けられた冷却材9より基本的に成る装置が挙げられる。
【0025】
上記装置においては、筒状容器1から排出される排ガスの回収を効率的に行うため、筒状容器1および冷却材9を排ガスDの取出配管12を設けた密閉容器7により覆うことが好ましい。
【0026】
また、その際、筒状容器1の外壁と密閉容器7の内壁とによって形成される間隙には、シールガス供給管11を設けて、窒素、水素、アルゴン等のシールガスCを供給することが好ましい。
【0027】
また、上記装置において、筒状容器1を加熱するための加熱装置3は、高周波コイルが好適に使用される。また、筒状容器1の材質は、高周波により加熱が可能で、シリコンの融点で耐性がある材質が好適であり、一般には、カーボンが好適に使用される。また、該カーボンの表面に、炭化珪素、熱分解炭素、窒化ホウ素などを被覆したものは、筒状容器の耐久性向上およびシリコン製品の純度向上を達成するためにより好ましい。
【0028】
上記装置において、クロロシラン類供給管4より供給されるクロロシランは、水素と混合されていてもよい。クロロシランガスまたはクロロシランと水素の混合ガスは、シールガス供給管6より供給されるシールガスの水素と共に、筒状容器1の空間5に供給され、加熱装置3により内壁にシリコンが析出する。
【0029】
上記析出したシリコンは、筒状容器1をシリコンの融点以上に加熱する場合は、該筒状容器内壁でシリコン融液となり、該内壁を流下し、その開口部2より液滴14として自然落下するため、周期的な昇温操作を行わなくても筒状容器の内部は常に初期状態を保つことができる。
【0030】
また、筒状容器1を1300℃以上でシリコンの融点未満の温度に加熱する場合にはシリコンが固体で析出するが、ある程度の析出量に達したとき、加熱出力を上昇させるか、或いはガス供給量を低減して、該筒状容器をシリコンの融点温度以上に上昇させ、析出物の一部または全部を溶融させて析出物を落下回収することにより、連続して析出を行うことができる。
【0031】
即ち、本願明細書において、TCSと水素との反応上記筒状容器の析出面において起こるため、かかる反応の温度が筒状容器の加熱温度に相当する。
【0032】
尚、筒状容器1をシリコンの融点近辺に加熱する場合、一部が固体で析出する部分と溶融状態で析出する部分が混在することもあるが、上記した方法と同様に、ある程度の析出量に達したとき温度上昇を行い、固体の一部又は全部を溶融させて落下回収すればよい。
【0033】
そして、上記筒状容器より落下するシリコン融液の液滴或いは部分溶融した固体シリコンは下方の受け皿である冷却材9に落下せしめて固化、回収される。
【0034】
上記シリコンを融液として落下せしめる場合、冷却材9にシリコン落下物を受け入れる際、あるいは受け入れる前の落下中に、シリコン融液を公知の方法で微細化してもよい。
【0035】
冷却材9に落下して固化したシリコン析出物は、析出反応を一旦停止してから取出すこともできるし、より好ましくは、析出反応を継続しながら取り出すことがよい。反応を継続しながら回収を行う具体的な方法としては、筒状容器1の温度を一旦1300℃以上融点未満に調節してシリコン融液が落下することを防止し、析出反応器と回収容器の間に設置したバルブを閉じて回収部を開放する方法、または回収部に設置した破砕装置により、回収部で固化したシリコン析出物に機械的な力を付与してある程度粉砕し、冷却材9のさらに下部に位置するシリコン取出し口13からシリコンEを間欠的に取出す方法などが挙げられる。
【0036】
また、上述の図1に示す反応装置においては、筒状容器の内面に原料ガスを供給する態様を示したが、図2に示すように、該筒状容器1を下方が開放した多重構造とし、筒間の形成される空間15に上方から原料ガスAを供給するようにした反応装置も、好適に使用することができる。
【0037】
但し、上記図2に示す装置を使用する場合、シリコンの析出による上記空間の閉塞を防止するため、反応温度を融点以上に設定することが推奨される。
【0038】
また、多重の筒状容器の中心空間には、高周波発生コイル、電熱ヒーター(図示せず)等の加熱手段16を設けることにより、特に、内側の筒状容器の加熱を充分行うことができ好ましい。この場合、かかる加熱手段16を設ける空間は、密閉空間として不活性ガスを存在させることが好ましい。また、該密閉空間を真空状態としても良い。更には、加熱手段16を保護する断熱材(図示せず)を設けても良い。
【0039】
本発明の方法において、反応温度を1300℃以上で行うことが、該シリコン析出工程において生成するSTCの量を効果的に減少せしめ、該STCよりTCSの生成が容易な塩化水素の生成量を増大させるために必要である。
【0040】
図3は、TCSに対する水素のモル比が10のときの反応において、1050℃、1150℃、1350℃、1450℃の各温度におけるSTCの副生量と塩化水素の副生量との傾向を示したものである。図3より理解されるように、1300℃を境にして、これを超えた場合は、STCの副生量が著しく減少し、塩化水素の副生量が増大することが理解される。
【0041】
析出反応温度が1300℃以上の反応結果と従来提案されてきた1250℃以下の反応結果が上記のように異なる理由はまだよく解明されていないが、析出表面近傍の境膜の温度が深く関与しているものと推測される。
【0042】
即ち、高温の境膜内では供給されたTCSが十分に活性化されてシリコンへの転化率が高くなるが、低温の境膜内ではTCSの活性化が幾分か不十分であるため、2分子のTCSがジクロロシランとSTCに不均化する反応に止まり易いことによるものと推測される。実際、本発明の温度で実施される析出反応は、従来のシーメンス法よりもジクロロシランの生成量がかなり少ないという結果を得ている。
【0043】
本発明の検討過程において、本発明の目的を十分に達成する析出反応温度は、1300℃以上であることを解明した。因みに、上記温度でシリコン析出反応を行うことによって、生成するSTCの量を、従来実施されているシーメンス法の1/2以下、場合によっては1/3に減少せしめることができる。これと同時に、塩化水素の生成量は、シーメンス法の5倍以上、場合によっては、10倍に増大せしめることができる。さらに加えて、シリコン析出速度はシーメンス法の5倍以上、場合によっては10倍に増大せしめ、原料TCSの反応率もシーメンス法の1.5倍以上、場合によっては2倍に増大せしめることができるため、非常に小型の析出反応器で大量のシリコンを生産することができる。
【0044】
また、上記反応に供されるTCSと水素との比を、TCSに対する水素のモル比(H/TCS)が10以上、好ましくは、15〜30に調整することは、該シリコン析出工程において生成するSTCの量をより効果的に減少せしめる一方、塩化水素の生成量も著しく増大せしめるために好ましい。
【0045】
更に、上記反応の圧力は特に制限されないが、常圧以上の圧力であることが好ましい。
【0046】
本発明において、TCS生成工程は、シリコン析出工程での反応後のガスを原料シリコンと接触せしめて、該ガス中に含有される塩化水素とシリコンとの反応によりTCSを製造する工程である。
【0047】
シリコン析出工程での反応後のガス中には、生成物として塩化水素およびSTCを主とし、その他少量のジクロロシラン(以下、DCSともいう。)、クロロシラン類の多量体等が存在する。また、未反応のTCSも含まれる。これらの混合ガスを原料シリコンと接触せしめることにより、塩化水素が選択的に反応し、TCSを生成する。かかる反応は発熱反応であり、STCを水素により還元してTCSを製造する吸熱反応に比べ、エネルギー的に極めて有利にTCSを製造することができる。
【0048】
上記原料シリコンとしては、シリコンの製造用原料として一般に使用されている公知の冶金級シリコンが特に制限なく使用される。
【0049】
また、上記反応に使用される反応器は、原料シリコンと析出反応排ガスとが接触可能な装置が特に制限なく使用される。例えば、原料シリコン粉体をガスにより流動化させながらガスと粉体を反応させる流動層反応器が工業的実施において好適である。このとき、上記流動層反応器の温度を調節する方法は、公知の方法が制限無く使用できる。例えば、流動層の内部または外部に熱交換器を設置したり、あるいは予熱するガスの温度を調節したりする方法が挙げられる。
【0050】
トリクロロシラン生成工程において、シリコンと塩化水素が反応を開始する温度はおおむね250℃である。よって、該反応温度は250℃以上であることが必要である。また、TCSの収率を向上させるためには、400℃以下の温度で行われることが好ましい。特に、工業的に安定して反応を維持するためには、該反応温度は280〜350℃で調節されることが好ましい。
【0051】
上記トリクロロシラン生成工程の反応温度は、供給される塩化水素濃度によって変動する可能性がある。例えば、シリコン析出工程で何らかの反応条件の変動があると、該工程で発生する塩化水素濃度も変動する。そして、塩化水素濃度が変動すればトリクロロシラン生成工程での反応発熱量が変化し、反応温度も変化する。
【0052】
このような塩化水素濃度による変動を防止するため、シリコン生成工程に流入するガス中の塩化水素濃度を監視しながら、該塩化水素濃度が一定になるように調整することが好ましい。かかる塩化水素濃度の調整方法は特に制限されないが、シリコン生成工程に流入するガス中に新たな塩化水素を供給し、その供給量を調整することによって行う態様が好ましい。
【0053】
尚、上記塩化水素濃度は、ガスクロマトグラフィーや赤外線吸収法などで測定できるが、赤外線吸収法を使用する方法が、極めて短時間に分析を行いながら、その分析結果を外部に電気信号として出力することが可能であり、自動的に塩化水素濃度を調節することができるためより好ましい。
【0054】
本発明において、TCS生成工程より得られる反応後のガスは、TCS第一循環工程に送られ、該ガスに含有されるTCSを分離して前記シリコン析出工程に循環される。そのうち、シリコン析出工程に循環する水素は、該ガスより予めクロロシラン類の一部を除去することが好ましい。かかる水素とクロロシラン類の分離には公知の種々の方法が使用できるが、工業的には、ガスを冷却することによって容易に達成できる。
【0055】
ガスの冷却方法としては、単に冷却された熱交換器を通過させるだけでもよいし、あるいは凝縮され冷却された凝縮物によってガスを冷却する方法も採用できる。これらの方法をそれぞれ単独でまたは併用して採用することができる。
【0056】
上記の冷却温度は、クロロシラン類の一部が凝縮される温度であれば何℃でもよいが、水素の高純度化を図るためには10℃以下、より好ましくは−10℃以下、最も好ましくは−30℃以下がよい。このように、クロロシラン類の一部を除去する操作により、原料シリコンに含まれる不純物、例えば重金属類や、リン、ボロンなどの大部分を水素から除去でき、析出するシリコンを高純度化することができる。
【0057】
クロロシラン類の一部が分離され、回収された水素は十分に高純度であるが、分離条件によってはホウ素化合物を多少多く含有している場合がある。従って、要求されるシリコン製品の純度に応じて、該水素ガスよりホウ素化合物を除去することが望ましい。ホウ素化合物の除去方法は特に限定されないが、−NR(但し、Rは炭素数1〜10のアルキル基)、−SOH、−COOH、−OH、等の官能基を有する物質を上記水素ガスと接触させる方法が好ましい。最も簡便には、それらの官能基を有するイオン交換樹脂を使用することができる。
【0058】
上記TCS生成後のガスからのTCSの分離は、公知の方法が特に制限なく採用される。例えば、上記水素を分離する際、凝縮せしめられたガスを蒸留精製することによってTCSを分離することができる。また、かかる蒸留精製によりTCSを分離した後の残余成分は、ライトエンドとしての少量のDCSが、また、ヘビーエンドとしてのSTCおよび少量のクロロシラン類の多量体成分と重金属化合物である。
【0059】
上記ライトエンドは、TCSと特に分離する必要はないが、分離する場合には、STC還元反応においてSTCと一緒に供給したり、あるいはガス化してTCS生成工程102に再度供給することができる。また、ヘビーエンドは、特に、STCを主成分とするため、公知の方法によってSTCと重金属化合物とを分離した後、STCを後記の還元工程によりTCSに変換するか、他の処理工程で処理することによって有効に利用することができる。
【0060】
シリコン製品の要求純度に応じて、液体として回収されたクロロシラン中からホウ素化合物をさらに除去する必要がある場合には、前記した官能基を有する固体または液体の化合物とクロロシラン類を接触させた後、必要に応じて蒸留精製することによって達成される。
【0061】
該ヘビーエンドからSTCの大部分を分離回収した残りの成分は、一般に中和廃棄される。この場合、これに伴って損失する塩素については、損失分を塩化水素やクロロシラン類によって系内に補給することができる。
【0062】
尚、本発明におけるクローズド化は、上記不可避的に減少する塩素の補給を行う態様を含むものである。
【0063】
本発明において、ガスを循環するためには、循環するための駆動力が必要となるが、駆動力を発生するためのガス加圧機は公知の種類ものが採用できる。ガス加圧機の設置位置としては、TCS生成工程や水素とクロロシラン類の分離工程の機器を小型化し得るTCS生成工程の上流側か、あるいは加圧機のトラブルを誘発する物質が最も少ないシリコン析出工程の上流側がより好ましい。
【0064】
本発明のシリコンの製造方法は、1300℃以上でシリコンの析出反応を行う工程を採用し、且つ該析出反応におけるTCSに対する水素のモル比を調整することによって、それらの相乗的な効果で、該反応において生成するSTCの量を、従来実施されているシーメンス法の1/4、場合によっては、1/5という著しく少ない量に減少せしめることができる。
【0065】
従って、本発明においては、該シリコン析出工程で生成するSTCの全量をTCSに返還して再利用するクローズドシステムによるシリコンの製造方法を極めて有利に実現することができる。これに加え、TCSの高い反応率とシリコンへの高い収率により、シーメンス法によってかかる方法を実施するよりも、ガス循環させるための各機器の大きさを1/2程度或いはそれ以下の大きさとすることができる。
【0066】
図4は、上記クローズドシステムによるシリコンの製造方法を示す工程図である。図に示されるように、かかる方法は、TCSと水素とを、該TCSに対する水素のモル比が10以上で、且つ、1300℃以上の温度で反応させてシリコンを生成せしめるシリコン析出工程101、上記シリコン析出工程での反応後のガスを原料シリコンと接触せしめて該排ガス中に含有される塩化水素とシリコンとの反応によりTCSを生成せしめるTCS生成工程102、該TCS生成工程での反応後のガスよりTCSを分離し、シリコン析出工程に循環するTCS第一循環工程103、TCS第一循環工程におけるTCS分離後の残余成分中のSTCを水素により還元してTCSを得るSTC還元工程104および該STC還元工程での反応後のガスを前記TCS生成工程に循環するTCS第二循環工程105より成る。
【0067】
上記TCS生成工程102の後には、前記したように水素とクロロシラン類を凝縮により分離する水素/トリクロロシラン類分離工程201を設けることが好ましい。また、TCS第1循環工程103において、TCSの分離は上記水素/トリクロロシラン類分離工程201からの凝集液を蒸留により精製する蒸留精製工程202が該工程に採用される。
【0068】
上記態様において、STC還元工程は、前記したように、必要に応じて水素を分離後、TCSを分離後の残余成分中のSTCを水素と反応せしめてTCSに転化する工程である。反応条件は、公知の条件が特に制限なく採用されるが、TCSへの転化速度を高め、かつSTCからTCSへの転化量を向上するためには、還元反応温度を1300℃以上、好ましくは、1300〜1700℃に、最も好ましくは、1410〜1700℃に調整することが好ましい。このとき、還元反応温度が1410℃未満、即ちシリコン融点未満の場合、供給するSTCに対する水素のモル比を10以下に調整することによって、反応器に内部に固体のシリコンが析出することを抑制できる。還元反応温度が1410℃以上の場合には、シリコンが析出する条件であっても析出物は融液となって系外に排出されるため、STCと水素のモル比は特に制限されることなく調整することができる。
【0069】
また、かかる反応に使用する反応装置は、反応温度条件を達成することができる装置であれば、その構造は特に制限されないが、シリコン析出反応でも使用した、図1又は図2に示した装置を還元反応装置に転用して使用することが好ましい。即ち、クロロシラン類供給管4よりSTCが供給される。
【0070】
本発明において、上記TCS第二循環工程105は、STC還元工程104での反応後のガスを前記TCS生成工程102に循環し、含有される塩化水素を原料シリコンと反応せしめる工程である。ここで本発明者らは、本発明に示す条件下において、シリコン析出反応排ガスとSTC還元反応排ガスの組成が、非常に似通った組成になることを見出した。即ち、TCS生成工程102において、それぞれの排ガスを複数の反応器を用いて別々に処理することもできるし、同一の反応器を用いて両反応排ガスを一緒に処理しても問題ない。
【0071】
本発明のシリコン製造方法においては、前記したシリコンの析出を1300℃以上の温度で実施することによる利点に加えて、シリコン析出工程より得られるシリコンの品質を変えることなく、該工程においてTCSと水素のモル比を変化させることによって、生成するSTCの量を上述した極めて少ない量から従来のシーメンス法と同等の量まで広い範囲で任意に調整することができるという利点を有する。
【0072】
即ち、従来のシーメンス法では、TCSに対する水素のモル比が5〜10にほぼ固定化された条件下で制御されており、析出中に該モル比が変化した場合、析出物の形状や表面状態が極度に悪化して製品としての価値が低下するだけでなく、その析出途中でも部分的に激しい温度分布が発生して溶断し、もはやそれ以上析出を継続することが困難な状態に至ることが知られている。従って、該モル比の大幅な操作は工業的には事実上不可能であった。
【0073】
これに対して、本発明のシリコンの製造方法は、1300℃という溶融温度に近い高温状態でシリコンの析出を行うため、シリコンは一部が溶融した状態、或いは融点以上の温度での析出にあっては全部が溶融した状態で析出反応が進行し、また、回収においても、加熱体から析出物の一部又は全部を溶融して回収される。
【0074】
従って、前記モル比の変化により、析出表面の一部が溶融しても、本質的に、析出物の形状や表面状態を考慮する必要が無く、よって、どのような時点からでも、TCSに対する水素のモル比を任意に調整することができる。
【0075】
即ち、本発明においては、図5の工程図に示すように、トリクロロシランと水素とを1300℃以上の温度で反応せしめてシリコンを生成せしめるシリコン析出工程101、上記シリコン析出工程での反応後のガスを原料シリコンと接触せしめて該排ガス中に含有される塩化水素とシリコンとの反応によりトリクロロシランを生成せしめるトリクロロシラン生成工程102、該トリクロロシラン生成工程での反応後のガスよりトリクロロシランを分離し、シリコン析出工程に循環するトリクロロシラン第一循環工程103、トリクロロシラン第一循環工程におけるトリクロロシラン分離後の残余成分中のテトラクロロシランの一部を水素により還元してトリクロロシランを得るテトラクロロシラン還元工程104、該テトラクロロシラン還元工程での反応後のガスを前記トリクロロシラン生成工程に循環するトリクロロシラン第二循環工程105およびテトラクロロシラン還元工程に供給されるテトラクロロシランの残部を取り出し、テトラクロロシラン処理設備に供給するテトラクロロシラン取出工程106を有すると共に、シリコン析出工程に供給されるトリクロロシランに対する水素のモル比を変化させることによって該取出量を調整する方法を採用することができる。
【0076】
本発明のシリコンの製造方法においては、TCSに対する水素のモル比を小さくすれば、STCを多く生成することができ、また、該モル比を大きくすればSTCを少なくすることができる。従って、STC取出工程により取り出され、STC処理設備203で必要なSTCの量に応じてかかるモル比を制御し、シリコンの析出を行えばよい。通常、かかるTCSに対する水素のモル比は、5〜30の範囲で制御することができる。
【0077】
また、上記STC処理設備としては、STCを有効に利用できる設備が全て含まれる。代表的な設備として、前記STCを酸素水素炎で加水分解してヒュームドシリカを製造する設備、シリコンウェハーのエピタキシャル設備等が挙げられ、かかる設備は、公知のものが特に制限なく使用することができる。
【0078】
【発明の効果】
以上の説明より理解されるように、本発明の方法によれば、TCSと水素によるシリコンの析出反応を、特定の高温域にて実施することにより、生成するSTCの量を、シーメンス法では到底考えられなかった、極めて少ない量に抑えることができ、生成したSTCを工程外に出さない、クローズド化が可能である。
【0079】
また、上記高温域でのシリコンの析出反応において、TCSに対する水素の比率を変化させることにより、得られるシリコンの品質に影響を及ぼすことなく、極めて幅広い範囲でSTCの生成量を調整することができ、これにより、STC処理設備を併設する場合においても、該設備に供給するSTCの量を容易に制御でき、極めてバランスの良い生産形態を採ることが可能である。
【0080】
【実施例】
以下、本発明を更に具体的に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
実施例1
図4に示す工程に従って、下記の通りシリコンの製造を行った。
【0082】
析出工程101では、図1に示す装置(析出表面積約400cm)を使用し、TCSと水素とを該TCSに対する水素のモル比が表1に示すモル比となるように供給し、筒状容器1の内壁を1450℃に加熱してシリコンを生成せしめた。この際、TCSは水素の一部と混合してクロロシラン類供給管より供給し、残りの水素ガスはシールガス供給管6よりシールガスとして、合計の水素量が表1に示す量になるように供給した。また、シールガス供給管11からはシールガスとして水素を少量供給した。反応圧力は50kPaGとした。
【0083】
表1に、シリコン析出工程でのシリコン析出量、STC生成量、塩化水素生成量を示す。なお、このときのSTC生成量および塩化水素生成量は、シリコン析出反応の排ガスをガスクロマトグラフによって分析して算出したものである。
【0084】
上記シリコン析出工程での反応後のガスを加圧機で約700kPaGに加圧し、加熱してTCS生成工程102に供給した。該TCS生成工程では、原料シリコンである冶金級シリコンの流動層反応器を用いた。TCS生成工程の反応条件は、温度350℃、圧力700kPaGとし、原料シリコンを約10kg充填した。該原料シリコンは、平均粒径約200μm、純度は98%であり、主な不純物として鉄、アルミ、チタン、カルシウム等の金属類の他、カーボン、リン、ボロンを含有していた。
【0085】
また、TCS生成工程102には、乾燥した塩化水素ガスを供給した。該塩化水素ガスの供給量は系内の塩素分保有量を保つための量であり、表1に示す量であった。この量は、蒸留精製系で抜き出されるヘビーエンド、および場合によっては余剰分として抜き出されるSTCなど、系外に排出されるクロロシラン中の塩素分にバランスする。
【0086】
該TCS生成工程102では、シリコン析出工程101及び後述するSTC還元工程104で生成する塩化水素、及びこれに加えて、系内保有量を保つために供給した塩化水素が原料シリコンと反応し、主生成物であるTCSと副生成物であるSTCを生成する。
【0087】
TCS生成工程102から排出されるガスは、該ガスに同伴される原料シリコンの微粉をフィルターで除去した後、水素/クロロシラン分離工程201に供給し、該ガスを−30℃に冷却することによりクロロシラン類の一部を凝縮し、水素ガスを分離した。分離された水素ガスは、前記シリコン析出工程101および後記するSTC還元工程104に分配して供給した。
【0088】
ここで、上記クロロシラン類の一部を分離した水素ガスを、−N(CHの置換基を持つ十分乾燥させたイオン交換樹脂10リッターを充填した容器に通過させたところ、シリコン析出物の純度はP型50Ω・cmとなった。ちなみに、イオン交換樹脂を使用しない場合のシリコン析出物の純度はP型1Ω・cmであった。
【0089】
一方、凝縮したクロロシラン類は、TCS第1循環工程103の蒸留精製塔に供給し、TCS、STC、および重金属類を含有するヘビーエンドに分離した。
【0090】
また、TCS第1循環工程103にて分離精製されたTCSおよびSTCはそれぞれ気化され、表1および表2に示す量になるように、TCSはシリコン析出工程へ、STCはSTC還元工程に供給した。該STC還元工程104では、上記STCに対して水素のモル比を10に設定して還元反応を行った。なお、このとき水素の供給量は、加圧機の制限により、シリコン析出工程101とSTC還元工程104に供給する合計量が約50Nm/Hを上限とした。STC還元反応の反応器は、前記図1に示す反応器と同様な装置を用い、クロロシラン類供給管4からはSTCと水素の混合ガスを供給した。その他の操作条件は、シリコン析出反応と同様にした。
【0091】
表2に、STC還元反応の反応条件とその反応によって生成したTCSの量を示す。なお、このときのTCS生成量は、STC還元反応の排ガスをガスクロマトグラフによって分析して算出したものである。
【0092】
該STC還元工程から排出されるガスは、TCS第二循環工程105により前記TCS生成工程102に供給した。
【0093】
表3には、上述したクローズドシステムの効果および経済性を評価するための、余剰STC量、シリコン生産量1kg当たりの余剰STC量、析出反応とSTC還元反応の合計の水素供給量、およびシリコン生産量1kg当たりの該水素供給量を示す。
【0094】
なお、余剰STCとは、STC還元反応に供給可能な最大量のSTCを供給してもなお、シリコン析出反応等により生成するSTCがさらに多いために、図5に示すようにSTC取出工程106によって系外に排出しなければならないSTCをいう。
【0095】
上記のように、本発明によれば、シリコン析出工程101において、STCの生成を抑えることが可能であり、小規模のSTC還元反応設備でも、余剰STCを生成させないクローズドシステムにすることが可能であることが理解される。
【0096】
実施例2、3
実施例1において、シリコン析出工程101における、TCSに対する水素のモル比を表1に示すように変えた以外は、同様な工程によりシリコンの製造を実施した。
【0097】
各工程における生成物の生成量等を実施例1と同様な表示で、表1〜3に示す。
【0098】
実施例1と同様に、経済的なクローズドシステムを実施可能であることが理解される。
【0099】
実施例4
実施例1において、シリコン析出工程101における、TCSに対する水素のモル比を5に変化させた結果、表3に示すように、15.6kg/Hの余剰STCを生成させることができた。これはシリコン生産1kg当たり、14.9kgの余剰STC量であると計算され、後述するシーメンス法の余剰STC量と同程度のSTCを得ることができた。
【0100】
実施例5、6
実施例1において、シリコン析出工程101における析出反応温度を1350℃、TCSに対する水素のモル比を表1に示すようにそれぞれ変え、またSTC還元工程104の還元反応温度も表2に示すように1350℃に変えて実施した。なおこのとき、1時間に1回5分程度、筒状容器の内壁温度を1450℃以上に上昇させ、析出物を断続的に溶融落下させながら反応を継続させた。
【0101】
その結果、表3に示すように、実施例1と同様にクローズドシステムを実施可能であった。
【0102】
上記実施例1〜6に示したように、本発明によれば、シリコン析出工程101における析出反応温度を1300℃以上にすることによって、また、TCSに対する水素のモル比を変化させることにより、同一規模の設備によって完全なクローズドシステムから大量の余剰STC取得に至るまで、極めて広範囲な運転が可能であることが理解される。即ち、なわち、本発明によれば、シリコン生成のための設備規模を変化させることなく、STC処理設備の需要量の変化に対して極めて柔軟に対応できる。
【0103】
比較例1
実施例1のシリコン析出工程101およびSTC還元工程104において、シーメンス法で一般的に用いられているベルジャータイプの反応器(析出表面積約1200cm)を使用した。このときの析出反応温度および還元反応温度は従来のシーメンス法において工業的に実施可能な上限温度である1150℃とし、反応圧力は実施例1と同様に50kPaGとした。
【0104】
尚、この場合、シリコン析出工程101において、TCSに対する水素のモル比は、シリコン析出物の形状をスムーズにして安定な析出反応を維持するための工業的上限が10程度であるため、10を採用した。
【0105】
その他の工程は実施例1と同様な条件のもとで、運転を行った。
【0106】
【表1】
Figure 2004002138
【表2】
Figure 2004002138
【表3】
Figure 2004002138
上記比較例より、シリコン析出を融点以下の温度、特に従来のシーメンス法で実施する場合、多量の余剰STCが生成することが理解される。
【0107】
また、実施例4との比較において理解されるように、同規模の設備でもシリコン生産量は実施例4の方が約4倍多くなっており、本発明による方法は極めて優れた経済性をもつことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の実施に好適に使用されるシリコン析出のための装置の概略図
【図2】本発明の方法の実施に好適に使用される他のシリコン析出のための装置の概略図
【図3】析出温度におけるSTCと塩化水素との生成量の傾向を示すグラフ
【図4】本発明の代表的な態様を示す工程図
【図5】本発明の他の代表的な態様を示す工程図
【符号の説明】
1 筒状容器
3 加熱装置
4 クロロシラン類供給管
5 シールガス供給管
6 シールガス供給管
7 密閉容器
8 シリコン
9 冷却材
11 シールガス供給管11
12 取出配管
15 空間
16 加熱手段

Claims (5)

  1. トリクロロシランと水素とを1300℃以上の温度で反応させてシリコンを生成せしめるシリコン析出工程、上記シリコン析出工程での反応後のガスを原料シリコンと接触せしめて該排ガス中に含有される塩化水素とシリコンとの反応によりトリクロロシランを生成せしめるトリクロロシラン生成工程および該トリクロロシラン生成工程での反応後のガスよりトリクロロシランを分離し、シリコン析出工程に循環するトリクロロシラン第一循環工程より成ることを特徴とするシリコンの製造方法。
  2. シリコン析出工程において、トリクロロシランに対する水素のモル比が10以上である請求項1記載のシリコンの製造方法。
  3. トリクロロシランと水素とを該トリクロロシランに対する水素のモル比が10以上で、且つ、1300℃以上の温度で反応させてシリコンを生成せしめるシリコン析出工程、上記シリコン析出工程での反応後のガスを原料シリコンと接触せしめて該排ガス中に含有される塩化水素とシリコンとの反応によりトリクロロシランを生成せしめるトリクロロシラン生成工程、該トリクロロシラン生成工程での反応後のガスよりトリクロロシランを分離し、シリコン析出工程に循環するトリクロロシラン第一循環工程、トリクロロシラン第一循環工程におけるトリクロロシラン分離後の残余成分中のテトラクロロシランを水素により還元してトリクロロシランを得るテトラクロロシラン還元工程および該テトラクロロシラン還元工程での反応後のガスを前記トリクロロシラン生成工程に循環するトリクロロシラン第二循環工程よりなることを特徴とするシリコンの製造方法。
  4. トリクロロシランと水素とを1300℃以上の温度で反応せしめてシリコンを生成せしめるシリコン析出工程、上記シリコン析出工程での反応後のガスを原料シリコンと接触せしめて該排ガス中に含有される塩化水素とシリコンとの反応によりトリクロロシランを生成せしめるトリクロロシラン生成工程、該トリクロロシラン生成工程での反応後のガスよりトリクロロシランを分離し、シリコン析出工程に循環するトリクロロシラン第一循環工程、トリクロロシラン第一循環工程におけるトリクロロシラン分離後の残余成分中のテトラクロロシランの一部を水素により還元してトリクロロシランを得るテトラクロロシラン還元工程、該テトラクロロシラン還元工程での反応後のガスを前記トリクロロシラン生成工程に循環するトリクロロシラン第二循環工程およびテトラクロロシラン還元工程に供給されるテトラクロロシランの残部を取り出し、テトラクロロシラン処理設備に供給するテトラクロロシラン取出工程を有すると共に、シリコン析出工程に供給される水素に対するトリクロロシランのモル比を変化させることによって該取出量を調整することを特徴とするシリコンの製造方法。
  5. テトラクロロシラン還元工程における反応温度が1300℃以上である請求項3又は4に記載のシリコンの製造方法。
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