JP4804354B2 - クロロシラン類の反応装置 - Google Patents

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Description

本発明は、カーボン材で形成された反応管の上部側に設けられたガス供給口からクロロシラン類と水素とを反応管へ供給し、反応が起こる温度以上に加熱された該反応管におけるシリコンが付着した内面にクロロシラン類と水素とを接触させることによりクロロシラン類を反応させるクロロシラン類の反応装置に関する。
従来、半導体、太陽光発電用電池などの原料として使用されるシリコンを製造するための種々の方法が知られており、これらのうちで、幾つかの方法は既に工業的に実施されている。
例えば、その一つはジーメンス法と呼ばれる方法であり、この方法では、通電によりシリコンの析出温度に加熱したシリコン棒をベルジャーの内部に配置し、このシリコン棒にトリクロロシラン(SiHCl3)や四塩化ケイ素(SiH4)を、水素等の還元性ガスとともに接触させてシリコンを析出させる。
この方法では高純度のシリコンが得られ、一般的な方法として工業的に実施されているが、バッチ式でシリコンの析出を行うため、種となるシリコン棒の設置、シリコン棒の通電加熱、析出、冷却、取り出し、ベルジャー洗浄などの一連の過程を、バッチごとに繰り返す必要があり、煩雑な操作を要する。
一方、連続的に多結晶シリコンを製造可能な方法として、図1に示した装置による方法が提案されている(特許文献1、2)。このシリコン製造装置は、密閉容器1内に、カーボン材で形成された反応管2と、この反応管2の上部側に設置され、クロロシラン類と水素とを反応管2の内部へ供給する原料ガス供給口5と、反応管2の外周に設置した高周波加熱コイル7とを備えている。
反応管2は、その外周側に設置された高周波加熱コイル7からの電磁波で加熱され、反応管2の下端部2aから所定高さまでの部分(図中二点鎖線で囲った領域:反応部3a)はシリコンが析出可能な温度に加熱される。
そして、この加熱された反応管2の内面へ、原料ガス供給口5から供給されたクロロシラン類を接触させて反応部3aの内面にてシリコンを析出させる。
同図の装置では、反応部3aをシリコンが析出可能な融点未満の温度として、一度シリコンを固体として析出させた後、反応部3aをシリコンの融点以上に加熱して、析出物の一部または全部を溶融させて下端部2aの開口から落下させ、落下方向に設置された冷却回収室(図示せず)で回収する。
また、反応管2の内面をシリコンの融点以上の温度にしてシリコンを溶融状態で析出させ、シリコン融液を反応管2の下端部2aの開口から連続的に落下させて回収する方法もある。
密閉容器1内において、反応管2の内面以外の領域でシリコンが析出すると運転阻害等の要因となるため、シリコン析出を防止する必要がある領域、例えば反応管2の下端部2a近傍などには、例えばシールガス供給口8を設けて水素や不活性ガス等のシールガスを供給し、シリコン析出を防止している。
また、図1と同様の装置が、クロロシラン類と水素とを水素還元反応により反応させるクロロシラン類の反応装置として他の用途にも用いられている。例えば、多結晶シリコン製造のための原料ガスを回収する等の目的で、四塩化ケイ素をトリクロロシランに還元するために図1と同様の装置が用いられている。
この場合にも、高周波加熱コイル7からの電磁波で水素還元反応が起こる温度に加熱された反応部3aにはシリコンが析出される。そして、このシリコンが付着した反応部3aの内面へ、原料ガス供給口5から供給された四塩化ケイ素と水素とを接触させて反応させ、トリクロロシランに還元する。反応後のガスは、反応管2の下端部2aの開口を通じて密閉容器1の外部へ回収する。
特開2003−2627号公報 特開2002−29726号公報
図1に示したようなシリコン製造装置において、反応管2はカーボン材で形成されている。反応部3aの内面ではシリコンがカーボン面を被覆し、あるいはシリコンとカーボンとの反応により形成された炭化珪素膜がカーボン面を被覆しているが、反応部3aの上部側の非反応部3b(図中一点鎖線で囲った領域)では多孔性のカーボン面が露出している。
しかし、トリクロロシラン等のクロロシラン類は粘性抵抗が非常に大きい分子であるため、従来ではこのようなクロロシラン類が反応管2の非反応部3bにおける管壁を透過して外部へ漏れ出すとは当業者には全く考えられていなかった。実際、従来ではそのような現象は起こっていなかった。
ところが、原料ガス中における水素のモル比を増やすとトリクロロシランが効率良く分解してシリコンの析出効率が向上することから、トリクロロシランに対する水素のモル比を増やしていったところ、水素量があるモル比を超えたときに、トリクロロシランが水素と共に反応管の管壁を透過して外部へ漏れ出すという現象が起きた。
上記のシリコン製造装置では、反応管の内径を中間部で狭めたり、反応管の内部形状を複雑にしたりすることによって、反応管内部にオリフィスや曲管部のようなガス流抵抗変化部位を設け、反応部(図1の符号3a)における上部側の入口と下端部側の出口との間で差圧を形成することにより、原料ガスの接触効率が向上して反応を促進することができる。
しかし、トリクロロシラン等のクロロシラン類が水素と共に反応管の管壁を透過して外部へ漏れ出すという上記の現象は、特に、反応管の内部に差圧を形成した場合に引き起こされる傾向が高い。
反応管へ供給されたクロロシラン類が管壁を透過して外部へ漏れ出すと、反応管の外面や、反応管の外側に設置された保温部材などが劣化を起こす。さらに、その他の部材、機器等にシリコンが析出する場合もある。
本発明は、上記したような問題点を解決するためになされたものであり、反応管内部へ供給されたクロロシラン類の原料ガスが、反応管の管壁を透過して外部へ漏れ出すことを充分に抑制可能なクロロシラン類の反応装置を提供することを目的としている。
本発明のクロロシラン類の反応装置は、カーボン材で形成された反応管の上部側に設けられたガス供給口からクロロシラン類と水素とを前記反応管へ供給し、該反応管における下端部から所定高さまでの部分からなりその内面にシリコンが付着した反応部を反応が起こる温度以上に加熱し、該反応部の内面にクロロシラン類と水素とを接触させることによりクロロシラン類を反応させるクロロシラン類の反応装置であって、
前記反応管における前記反応部よりも上部側の非反応部の内面および/または外面に、前記反応管へ供給されたクロロシラン類が該反応管の管壁を透過することを抑止するガス透過抑止処理が施されていることを特徴とする。
前記非反応部における前記反応管の内面から外面へのガス透過率は、1×10-3cm2/S以下であることが好ましい。
本発明のクロロシラン類の反応装置によれば、反応管内部へ供給されたクロロシラン類の原料ガスが、反応管の管壁を透過して外部へ漏れ出すことを充分に抑制することができる。
図1は、カーボン材で形成された反応管の上部側に設けられたガス供給口からクロロシラン類と水素とを反応管へ供給し、加熱された反応管の内面にシリコンを析出させるシリコン製造装置を示した断面図である。 図2は、ガス透過率の測定装置を説明する図である。
符号の説明
1 密閉容器
2 反応管
2a 下端部
3a 反応部
3b 非反応部
5 原料ガス供給口
6 原料ガス供給口
7 高周波加熱コイル
8 シールガス供給口
9 ガス排出口
21 フランジ
22 カーボン板
23 チャンバ
24 圧力計
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。なお、本発明は、図1に示したシリコン製造装置の他、同様の装置構成を備えたクロロシランの反応装置、例えば四塩化ケイ素の還元炉などにも適用できるが、以下では本発明をシリコン製造装置に適用した例を説明する。
図1のシリコン製造装置は、密閉容器1内に筒状の反応管2を備えている。この反応管2の上部側に配置された原料ガス供給口5からクロロシラン類を供給することにより、高周波加熱コイル7で加熱された反応管2の内壁にシリコンが析出される。
反応に使用するクロロシラン類としては、例えば、トリクロロシラン(SiHCl3、以下TCSという)、四塩化ケイ素(SiCl4、以下STCという)を挙げることができ、この他、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、モノクロロシラン(SiH3Cl)、およびヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)に代表されるクロロジシラン類、さらにはオクタクロロトリシラン(Si3Cl8)に代表されるクロロトリシラン類も好適に使用できる。これらのクロロシラン類は、単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
クロロシラン類と共に析出反応に使用される水素は、例えば、原料ガス供給口5、あるいは別途の原料ガス供給口6などから供給される。
反応管2は、グラファイトなどのカーボン材で形成されており、高周波による加熱が可能であり、シリコンの融点で耐性がある。反応管2は、例えば円筒状に形成され、その下端部2aの開口から下方へ開放されている。
反応管2の下端部2aにおける開口の仕方は、ストレートに開口した態様でもよく、あるいは下方に向かって徐々に径が減少もしくは拡大するように形成した態様でもよい。開口の周縁は、水平である態様の他、周縁が傾斜するように構成するか、あるいは周縁を波状に構成するようにしてもよく、これにより開口周縁からのシリコン液滴の落下が容易となるとともに、シリコン融液の液滴が揃い、シリコン粒子の粒径をより小さく均一に調整することができる。
反応管2は、その外周の高周波加熱コイル7からの電磁波(高周波)で加熱され、反応管2の下端部2aから所定高さまでの領域(図中一点鎖線で囲った領域:反応部3a)の内面は、シリコンの融点(概ね1410〜1430℃)未満のシリコンが析出可能な温度に加熱される。反応部3aの加熱温度は、好ましくは950℃以上、より好ましくは1200℃以上、さらに好ましくは1300℃以上である。
反応管2の内面に析出したシリコンは、反応管2の反応部3aの内面に一度シリコンを固体として析出させた後、この内面をシリコンの融点以上となるまで加熱、昇温して、析出物の一部または全部を溶融させて下端部2aの開口から落下させ、落下方向に設置された冷却回収室(図示せず)で回収する。
また、反応管2の反応部3aをシリコンの融点以上の温度にして、その内面にシリコンを溶融状態で析出させ、シリコン融液を反応管2の下端部2aの開口から連続的に落下させて回収するようにしてもよい。
この反応部3aは通常、反応管2の密閉容器1内における全長に対して30〜90%の長さの部分である。原料ガス供給口5等へのシリコン析出を防止する等の点からは、反応管2の密閉容器1内における上端から前記全長に対して10%以上の部分は、シリコンが析出しない非反応部3b(図中一点鎖線で囲った領域)とされるが、反応管2の長さが長くなる場合、非反応部3bは相対的に短くなる。
高周波加熱コイル7は、図示しない電源からコイルへ通電することにより電磁波を発生して反応管2を加熱する。この電磁波の周波数は、反応管2等の加熱対象の材質もしくは形状に応じて適切な値に設定され、例えば、数十Hz〜数十GHz程度に設定される。
なお、反応管2を外部から加熱する手段としては、高周波加熱の他、電熱線を用いる方法、赤外線を用いる方法等が挙げられる。
冷却回収室に落下したシリコンは、必要に応じて、シリコン、銅、モリブテン等の固体冷却材、液体四塩化ケイ素、液体窒素等の液体冷却材、または冷却ガス供給口から供給される冷却ガスにより冷却される。
また、シリコンの冷却をより効果的に行うために、冷却回収室に冷却ジャケットを設け、水、熱媒油、アルコール等の冷媒液体を通液して冷却することができる。冷却回収室の材質としては、金属材料、セラミックス材料、ガラス材料等が使用できるが、工業装置としての頑丈さと、高純度のシリコンを回収することを両立するために、金属製回収室の内部に、シリコン、テフロン(登録商標)、石英ガラス等でライニングを施すことが好ましい。冷却回収室の底部にシリコン粒子を敷いてもよい。また、冷却回収室には、必要に応じて、固化したシリコンを連続的または断続的に抜き出す取出口を設けることも可能である。
密閉容器1内における反応管2の下端部2a近傍、および原料ガス供給口5を成すガス供給管と反応管2との間などの、反応部3a以外の領域にシリコンが析出すると、装置運転上の障害が生じるため、シリコン析出を防止すべき領域には、シールガス供給口6,8などを設けてシールガスを供給し、シールガス雰囲気としている。
シールガスとしては、シリコンを生成せず、且つクロロシラン類が存在する領域においてシリコンの生成に悪影響を与えないガスが好適である。具体的には、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス、水素などが使用できる。
さらに、反応系内の低温部位に析出した固体シリコンと反応し得る反応試剤を反応系内に導入してシリコンを反応試剤と反応させることにより、固体シリコンが反応系内のノズル部等に析出してそれを閉塞するような不都合を回避することができる。シリコンと反応し得る反応試剤としては、例えば塩化水素(HCl)および四塩化ケイ素を挙げることができる。
図1のシリコン製造装置における製造条件は、特に制限されないが、該シリコン製造装置にクロロシラン類と水素とを供給し、該クロロシラン類からシリコンへの転化率が20%以上、好ましくは30%以上となる条件下でシリコンを生成させるように、クロロシラン類と水素との供給比率、供給量、滞在時間等を決定することが望ましい。
反応容器の大きさに対して経済的なシリコンの製造速度を得るためには、供給ガス中のクロロシラン類のモル分率は、0.1〜99.9モル%とすることが好ましく、より好ましくは5〜50モル%である。また、反応圧力は高い方が装置を小型化できるメリットがあるが、0〜1MPaG程度が工業的に実施し易い。
ガスの滞在時間については、一定容量の反応容器に対して、圧力と温度の条件によって変化するが、反応条件下において、反応管2内でのガスの平均的な滞在時間は、0.001〜60秒、好ましくは0.01〜10秒に設定すれば、充分に経済的なクロロシラン類の転化率を得ることが可能である。
以上のようなシリコン製造装置において、シリコン膜または炭化珪素膜でカーボン面が被覆されていない反応管2の非反応部3bでは、特定の条件下で、反応管2内のクロロシラン類が管壁を透過して外部へ漏れ出す。
すなわち、原料ガスにおけるクロロシラン類に対する水素のモル比が大きくなると、クロロシラン類の漏出が起きるようになる。例えば、水素とクロロシラン類との全量に対して水素量が80mol%を超えると、クロロシラン類の漏出が起きるようになる。
例えば、トリクロロシランが効率良く分解してシリコンの析出効率を向上させる点からは、トリクロロシランに対する水素のモル比H2/SiHCl3は5〜30が好ましく、より好ましくは10〜20である。しかし、このようなモル比の範囲内では、トリクロロシランが非反応部3bの管壁を透過して漏れ出す場合がある。
特に、水素のモル比を上記範囲として、さらに反応管2の内部に差圧を形成した場合にトリクロロシランの漏出が起こる傾向が高い。図1のようなシリコン製造装置では、反応管2の内径を中間部で狭めたり、反応管2の内部形状を複雑にしたりすることによって、反応管2の内部にガス流抵抗変化部位を設け、反応部3aにおける上部側の入口と下端部2a側の出口との間で差圧を形成する場合がある。このように差圧を形成することで、原料ガスの接触効率が向上して反応を促進することができる。
しかし、水素とクロロシラン類との全量に対して水素量が80mol%を超えると共に、反応管における上記の差圧が10kPaを超えると、クロロシラン類が非反応部3bの管壁を透過して漏れ出し易くなる。
本発明では、上記のような反応条件下においてクロロシラン類のガスが非反応部3bの管壁を透過して漏れ出すことを抑止するために、非反応部3bにガス透過を抑止する処理を施している。以下、このガス透過抑止処理の具体的な方法を説明する。
第1の方法では、非反応部3bの表面に被覆膜を形成することによりガス透過を抑止する。被覆膜としては、タングステン、モリブテン、シリコンなどの高融点金属、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素などのセラミックス、熱分解炭素が好ましい。
カーボン材表面への被覆膜の形成には、公知の方法を用いることができる。その具体例としては、溶射法、CVD(化学気相蒸着法)、融液の塗布などを挙げることができ、被覆膜の形成材質に応じて適宜選択される。溶射法は、被覆膜として高融点金属等の材質を使用する場合に好適であり、CVDは、被覆膜としてセラミックス、熱分解炭素等の材質を使用する場合に好適である。
また、シリコンの被覆膜を形成する場合では、上記以外の好ましい方法として、カーボン材表面にクロロシラン類と水素との混合ガスを接触させ、シリコン生成温度(約500℃)以上の温度、好ましくはシリコンの溶融温度以下の温度でシリコンを析出させる方法を挙げることができる。
なお、シリコンによる被覆膜を形成する場合、シリコンとカーボンとの反応により被覆膜界面に炭化珪素が生成するが、この炭化珪素も被覆膜として作用するため、何ら問題なく使用することができる。
第2の方法では、反応管2のカーボン材の細孔を閉塞する程度の大きさの微粒子をカーボン材に塗布する。このような微粒子としては、使用環境下で分解、蒸発等により消失しないものでれば特に限定されないが、工業的に入手が容易な微粒子としては、例えば、カーボン微粒子、窒化ホウ素微粒子、酸化珪素微粒子が挙げられる。
また、塗布の方法としては、例えば、上記微粒子を適当な分散媒、例えば有機溶媒、樹脂溶液等に分散させた分散液の状態とし、該分散液を刷毛塗り、スプレーなどの方法によってカーボン材の表面に付着させる方法、カーボン材を分散液中に浸漬させる方法が挙げられる。
微粒子分散液をカーボン材へ塗布した後、分散媒は、自然蒸発またはカーボン材を加熱することによる蒸発もしくは分解により除去される。微粒子がカーボンである場合等には、分散媒を除去した後さらに加熱を行い、該微粒子をカーボン材に固着させることも好ましい態様である。
上記のガス透過抑止処理は、非反応部3bの内面、外面もしくはこれらの両面に対して施すことができる。このように、非析出部3bにカーボン面を被覆する被覆面を形成するか、あるいはカーボン細孔を微粒子で閉塞することによって、反応管2の外周側への原料ガスの透過を抑制することができる。
前述したような水素モル比および反応管2の差圧の条件下で、クロロシラン類が非反応部3bの管壁を透過して外部へ漏れ出すことを有効に防止するためには、非反応部3bにおける反応管2の内面から外面へのガス透過率(後述の実施例による測定方法で得た値)が1×10-3cm2/S以下となるように上記のような処理を施すことが好ましい。なお、上記のような処理をしていないカーボン面が露出した反応管2は、一般に1×10-1cm2/Sのガス透過率を有している。
上記のガス透過抑止処理は、実質的に、非反応部3bの少なくともいずれかの面における全面に施すことが好ましい。また、反応部3aの少なくとも一部にも上記の処理が施されていてもよい。特に、ガス透過抑止処理を外面のみに行う場合には、非反応部3bを含むできるだけ広い範囲、好ましくは外面全面に処理を施すことが望ましい。
なお、従来技術として、反応管2の耐性向上、シリコン製品の純度向上などの目的で、シリコンの融液に対して比較的耐性の高い材質によってシリコンが析出する領域を被覆することが知られているが、これは析出シリコンが管壁面へ付着する部位へ、シリコンの析出に対応してなされるものであって、本発明のように、シリコンが析出しない部位である非反応部3bに対して行う処理とは目的および対象とする位置が相違している。
実施例
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において、ガス透過率は図2に示した装置を用いて次の方法により測定した。ステンレス製のフランジ21の間に実施例1〜9および比較例1,2のカーボン板22を挟み、カーボン板22とフランジ21との接触部はOリングおよびフッ素樹脂ペーストで被覆した。
次いで、ステンレス製のチャンバ23内に窒素ガスを充填し、常温下で容器内部を400kPaGまで加圧した。チャンバ23の外部は大気開放系であるため0kPaGの一定値として下記の計算を行った。
チャンバ23内の窒素ガスがカーボン板22の細孔を通過することによりチャンバ23内が降圧し始めた後の、チャンバ23内における圧力変化を圧力計24で測定し、単位時間におけるチャンバ23内の圧力降下速度を直線と近似してガス透過量Qを式:Q[cm3・Pa/s]=V×((P2−P1)/(T2−T1))により求めた(V:チャンバ23、圧力計24および配管内部の総容積、P1:降圧開始から時間T1後におけるチャンバ23内の圧力(T1は0s近傍である。)、P2:降圧開始から時間T2後におけるチャンバ23内の圧力)。
得られたガス透過率Qを用いて、ガス透過率K[cm2/s]を、式:K=Q・L/(ΔP・A)により求めた(L[cm]:カーボン板22のガス透過厚み、ΔP[Pa]:カーボン板22の厚みL間における差圧、A[cm2]:窒素ガス透過面積)。
本実施例では、チャンバ23、圧力計24および配管内部の総容積Vが427cm3であり、カーボン板22における窒素ガス透過面積Aは46.6cm3であった。なお、カーボン板22が円盤状であるため、窒素ガス透過面積Aは、円盤の外周部の面積と外面の面積との総和とした。
[実施例1]
上述したシリコン製造装置の反応管に使用されるカーボン材(市販品、密度1.82g/cm3の高密度等方性カーボン)からなる外径60mm、厚さ5mmの円盤状のカーボン板を用意し、このカーボン板の片面に金属タングステンを溶射し、厚み1μmのタングステン金属膜を形成した。このカーボン板について、上記の方法でガス透過率を測定した。
また、上記と同様のカーボン材を用いた反応管(外径100mm、内径70mm、全長1500mm、反応部長さ1000mmであって、管内部にガス流抵抗変化部位を設けたもの)を用いて、該反応管の反応部よりも上部側の内面に、上記と同様にして厚み1μmのタングステン金属膜を形成し、この反応管をシリコン製造装置に設置した。
次いで、トリクロロシラン20kg/Hと水素40Nm3/Hとの混合ガスを、反応部における上部側の入口と下端部側の出口との間の差圧が10kPaとなる条件下で反応管内部に流通させ、反応管を1500℃に加熱し、100時間運転を行った。運転後、反応管の外壁に設置したカーボン断熱材(外径170mm、内径100mm、長さ1000mm、カーボン密度0.16g/cm3)の重量を測定し、重量減少速度(断熱材劣化速度)を算出した。ガス透過率および断熱材劣化速度の測定結果を表1に示した。
[実施例2]
上述したシリコン製造装置の反応管に使用されるカーボン材(市販品、密度1.82g/cm3の高密度等方性カーボン)からなる外径60mm、厚さ5mmの円盤状のカーボン板を用意し、このカーボン板の片面をシリコン生成温度(500℃)に加熱し、この表面にモル分率50%からなるトリクロロシランと水素とを供給することにより、厚み1μmの炭化珪素膜を形成した。このカーボン板についてガス透過率を測定した。その測定結果を表1に示した。
[実施例3]
上述したシリコン製造装置の反応管に使用されるカーボン材(市販品、密度1.82g/cm3の高密度等方性カーボン)からなる外径60mm、厚さ5mmの円盤状のカーボン板を用意し、このカーボン板の片面を、溶融したシリコンと接触させ、厚み1μmの炭化珪素膜を形成した。このカーボン板についてガス透過率を測定した。
また、上記と同様のカーボン材を用いた反応管(外径100mm、内径70mm、全長1500mm、反応部長さ1000mmであって、管内部にガス流抵抗変化部位を設けたもの)を用いて、該反応管の反応部よりも上部側の内面に、上記と同様にして厚み1μmの炭化珪素膜を形成し、この反応管をシリコン製造装置に設置した。
次いで、トリクロロシラン20kg/Hと水素40Nm3/Hとの混合ガスを、反応部における上部側の入口と下端部側の出口との間の差圧が10kPaとなる条件下で反応管内部に流通させ、反応管を1500℃に加熱し、100時間運転を行った。運転後、反応管の外壁に設置したカーボン断熱材(外径170mm、内径100mm、長さ1000mm、カーボン密度0.16g/cm3)の重量を測定し、重量減少速度(断熱材劣化速度)を算出した。ガス透過率および断熱材劣化速度の測定結果を表1に示した。
[実施例4]
上述したシリコン製造装置の反応管に使用されるカーボン材(市販品、密度1.82g/cm3の高密度等方性カーボン)からなる外径60mm、厚さ5mmの円盤状のカーボン板を用意し、このカーボン板の片面に、炭化珪素をCVD(化学気相蒸着法)により蒸着させた。このカーボン板についてガス透過率を測定した。その測定結果を表1に示した。
[実施例5]
上述したシリコン製造装置の反応管に使用されるカーボン材(市販品、密度1.82g/cm3の高密度等方性カーボン)からなる外径60mm、厚さ5mmの円盤状のカーボン板を用意し、このカーボン板の片面に、カーボン微粒子(フェノール樹脂含有ペースト:カーボン平均粒子径1μm、カーボン成分割合20%)を塗布し、含浸させた。その後、200℃の温度でこの液状カーボン材に含まれる液体成分を除去し、カーボンを加熱固着させた。このカーボン板についてガス透過率を測定した。
また、上記と同様のカーボン材を用いた反応管(外径100mm、内径70mm、全長1500mm、反応部長さ1000mmであって、管内部にガス流抵抗変化部位を設けたもの)を用いて、該反応管の反応部よりも上部側の内面を、上記と同様にして液状カーボン材で処理し、この反応管をシリコン製造装置に設置した。
次いで、トリクロロシラン20kg/Hと水素40Nm3/Hとの混合ガスを、反応部における上部側の入口と下端部側の出口との間の差圧が10kPaとなる条件下で反応管内部に流通させ、反応管を1500℃に加熱し、100時間運転を行った。運転後、反応管の外壁に設置したカーボン断熱材(外径170mm、内径100mm、長さ1000mm、カーボン密度0.16g/cm3)の重量を測定し、重量減少速度(断熱材劣化速度)を算出した。ガス透過率および断熱材劣化速度の測定結果を表1に示した。
[実施例6]
上述したシリコン製造装置の反応管に使用されるカーボン材(市販品、密度1.82g/cm3の高密度等方性カーボン)からなる外径60mm、厚さ5mmの円盤状のカーボン板を用意し、このカーボン板の片面に、窒化ホウ素の微粒子(平均粒子径0.1μm)の分散液をスプレー塗布により含浸させた。このカーボン板についてガス透過率を測定した。その測定結果を表1に示した。
[実施例7]
上述したシリコン製造装置の反応管に使用されるカーボン材(市販品、密度1.82g/cm3の高密度等方性カーボン)からなる外径60mm、厚さ5mmの円盤状のカーボン板を用意し、このカーボン板の片面に、酸化珪素の微粒子を含有する液状物(平均粒子径0.1μm、酸化珪素割合20%)を塗布し、その後1500℃でこの液状物に含まれる液体成分を除去して酸化珪素微粒子を加熱固着させた。このカーボン板についてガス透過率を測定した。
また、上記と同様のカーボン材を用いた反応管(外径100mm、内径70mm、全長1500mm、反応部長さ1000mmであって、管内部にガス流抵抗変化部位を設けたもの)を用いて、該反応管の反応部よりも上部側の内面を、上記と同様にして酸化珪素の微粒子を含有する液状物で処理し、この反応管をシリコン製造装置に設置した。
次いで、トリクロロシラン20kg/Hと水素40Nm3/Hとの混合ガスを、反応部における上部側の入口と下端部側の出口との間の差圧が10kPaとなる条件下で反応管内部に流通させ、反応管を1500℃に加熱し、100時間運転を行った。運転後、反応管の外壁に設置したカーボン断熱材(外径170mm、内径100mm、長さ1000mm、カーボン密度0.16g/cm3)の重量を測定し、重量減少速度(断熱材劣化速度)を算出した。ガス透過率および断熱材劣化速度の測定結果を表1に示した。
[実施例8]
上述したシリコン製造装置の反応管に使用されるカーボン材(市販品、密度1.82g/cm3の高密度等方性カーボン)からなる外径60mm、厚さ5mmの円盤状のカーボン板を用意し、このカーボン板の片面に、熱分解炭素被覆膜をCVDによって形成した。このカーボン板についてガス透過率を測定した。
また、上記と同様のカーボン材を用いた反応管(外径100mm、内径70mm、全長1500mm、反応部長さ1000mmであって、管内部にガス流抵抗変化部位を設けたもの)を用いて、該反応管の反応部よりも上部側の内面に熱分解炭素被覆膜を形成し、この反応管をシリコン製造装置に設置した。
次いで、トリクロロシラン20kg/Hと水素40Nm3/Hとの混合ガスを、反応部における上部側の入口と下端部側の出口との間の差圧が10kPaとなる条件下で反応管内部に流通させ、反応管を1500℃に加熱し、100時間運転を行った。運転後、反応管の外壁に設置したカーボン断熱材(外径170mm、内径100mm、長さ1000mm、カーボン密度0.16g/cm3)の重量を測定し、重量減少速度(断熱材劣化速度)を算出した。ガス透過率および断熱材劣化速度の測定結果を表1に示した。
[実施例9]
上述したシリコン製造装置の反応管に使用されるカーボン材(市販品、密度1.82g/cm3の高密度等方性カーボン)からなる外径60mm、厚さ5mmの円盤状のカーボン板を用意し、このカーボン板の両面に、熱分解炭素被覆膜をCVDによって形成した。このカーボン板についてガス透過率を測定した。
また、上記と同様のカーボン材を用いた反応管(外径100mm、内径70mm、全長1500mm、反応部長さ1000mmであって、管内部にガス流抵抗変化部位を設けたもの)を用いて、該反応管の反応部よりも上部側の内面および外面に熱分解炭素被覆膜を形成し、この反応管をシリコン製造装置に設置した。
次いで、トリクロロシラン20kg/Hと水素40Nm3/Hとの混合ガスを、反応部における上部側の入口と下端部側の出口との間の差圧が10kPaとなる条件下で反応管内部に流通させ、反応管を1500℃に加熱し、100時間運転を行った。運転後、反応管の外壁に設置したカーボン断熱材(外径170mm、内径100mm、長さ1000mm、カーボン密度0.16g/cm3)の重量を測定し、重量減少速度(断熱材劣化速度)を算出した。ガス透過率および断熱材劣化速度の測定結果を表1に示した。
[比較例1,2]
上述したシリコン製造装置の反応管に使用されるカーボン材(比較例1:市販品、密度1.82g/cm3の高密度等方性カーボン、比較例2:市販品、密度1.77g/cm3の汎用等方性カーボン)からなる外径60mm、厚さ5mmの円盤状のカーボン板を用意し、このカーボン板についてガス透過率を測定した。
また、上記と同様のカーボン材を用いた反応管(外径100mm、内径70mm、全長1500mm、反応部長さ1000mmであって、管内部にガス流抵抗変化部位を設けたもの)をシリコン製造装置に設置した。
次いで、トリクロロシラン20kg/Hと水素40Nm3/Hとの混合ガスを、反応部における上部側の入口と下端部側の出口との間の差圧が10kPaとなる条件下で反応管内部に流通させ、反応管を1500℃に加熱し、100時間運転を行った。運転後、反応管の外壁に設置したカーボン断熱材(外径170mm、内径100mm、長さ1000mm、カーボン密度0.16g/cm3)の重量を測定し、重量減少速度(断熱材劣化速度)を算出した。ガス透過率および断熱材劣化速度の測定結果を表1に示した。
Figure 0004804354

Claims (1)

  1. カーボン材で形成された反応管の上部側に設けられたガス供給口からクロロシラン類と水素とを前記反応管へ供給し、該反応管における下端部から所定高さまでの部分からなりその内面にシリコンが付着した反応部を反応が起こる温度以上に加熱し、該反応部の内面にクロロシラン類と水素とを接触させることによりクロロシラン類を反応させるクロロシラン類の反応装置であって、
    前記反応管における前記反応部よりも上部側の非反応部の内面および/または外面に、前記反応管へ供給されたクロロシラン類が該反応管の管壁を透過することを抑止するガス透過抑止処理が施されていることを特徴とするクロロシラン類の反応装置。
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