JP2001293829A - ポリオレフィン系樹脂複合積層体 - Google Patents

ポリオレフィン系樹脂複合積層体

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JP2001293829A JP2001013553A JP2001013553A JP2001293829A JP 2001293829 A JP2001293829 A JP 2001293829A JP 2001013553 A JP2001013553 A JP 2001013553A JP 2001013553 A JP2001013553 A JP 2001013553A JP 2001293829 A JP2001293829 A JP 2001293829A
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孝政 福岡
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昌徳 平田
Masanori Nakamura
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 環境に優しく、柔軟性のあるポリオレフィン
系樹脂素材のみを用いて、軽くて、高い剛性を有し、腐
食せず、温度、湿度の変化に対し寸法変化せず、リサイ
クル可能であるポリオレフィン系樹脂複合積層体を提供
する。 【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマー
とを反応させて同樹脂を変性する。得られた変性樹脂に
化学発泡剤を加えて混練する。得られた発泡性樹脂組成
物をシート状に賦形する。得られた発泡性シートの片面
に、同シートを加熱発泡させる際の面内方向への発泡を
抑制しうる強度を有する面材を積層する。発泡性シート
を加熱発泡して得られる、発泡倍率が3〜20倍であ
り、圧縮弾性率が5MPa以上であるポリオレフィン系
樹脂発泡体シートの少なくとも片面に、一方向に10倍
以上に延伸された引張弾性率が5GPa以上であるポリ
オレフィン系樹脂延伸シートを積層し、ポリオレフィン
系樹脂複合積層体を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土木建設資材、建
築資材、車両用部材等に用いられるものであって、全体
的にポリオレフィン系樹脂からなり、高い剛性を有する
ポリオレフィン系樹脂複合積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】土木資材、建築資材、車両用部材等は、
耐久性に優れ、高い剛性を有するものであることが求め
られており、従来から、杉、檜等の木材製のものが用い
られていた。しかし、木材の使用は森林破壊等の環境問
題を招き、また、安定した物性を有する木材の供給が困
難であるため、木材自体から合板等の板材、パーティク
ルボード、ファイバーボード等の木質ボードへの転換が
進んできた(特開昭49−47509号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、木質ボードの
使用には以下のような問題がある。
【0004】・吸湿による寸法変化が大きい。
【0005】・吸湿により腐食が生じる。
【0006】・リサイクルが困難であり、資源保護の観
点から好ましくない。
【0007】・見かけ密度700kg/m3 以上のも
のが多く、重い。
【0008】・材料である単板、チップ、パーティクル
の接着に熱硬化性樹脂接着剤を用いるため、得られた木
質ボードからホルムアルデヒドが揮発し、アトピー性皮
膚炎等の原因となる。
【0009】・弾性領域が大きく、塑性加工がしにく
い。
【0010】これらの問題を解決すべく、軽量なプラス
チック材料を主体とした高剛性材料の開発が活発化した
が、プラスチック単体では剛性向上に限度があり、プラ
スチックの持つ大きな熱伸縮特性のため、温度変化に対
する寸法安定性が確保できない難点があった。
【0011】この問題の解決策として、無機繊維等を含
むFRP(無機繊維補強熱硬化性プラスチック)や、無
機繊維補強発泡体(ガラス繊維面材+ポリスチレン発泡
体)等が開発された(特開平10−311131号公報
参照)。しかし、これらは無機繊維を使用することが余
儀なくされるため、以下の問題を招いた。
【0012】・リサイクルおよび分別が困難である。
【0013】・製造および加工時に浮遊する無機繊維が
人体の皮膚に付着し、痛み、かゆみ、アレルギー等の問
題を引き起こす。
【0014】・剛性を向上させるために、ポリスチレン
や熱硬化性樹脂が用いられるが、ポリスチレンは耐熱性
に劣り、熱硬化性樹脂はリサイクル困難である上に、柔
軟性に乏しく、曲げ破壊を起こし易い。
【0015】本発明は、上記実状に鑑み、環境に優し
く、柔軟性のあるポリオレフィン系樹脂素材のみを用い
て、軽くて、高い剛性を有し、腐食せず、温度、湿度の
変化に対し寸法変化せず、リサイクル可能であるポリオ
レフィン系樹脂複合積層体を提供することを目的とす
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、全体的にポリ
オレフィン系樹脂素材を用いてなる複合積層体に関する
ものである。
【0017】請求項1の発明は、密度が40〜300k
g/m3 であり、圧縮弾性率が5MPa以上(通常は
100MPa以下)であるポリオレフィン系樹脂構造体
シートの少なくとも片面に、一方向の引張弾性率が5G
Pa以上(通常は50GPa以下)であるポリオレフィ
ン系樹脂シートが積層されてなるポリオレフィン系樹脂
複合積層体である。
【0018】請求項2の発明は、内在するセルのアスペ
クト比Dz/Dxyの平均値が1.1〜4.0であり、
発泡倍率が3〜20倍であり、圧縮弾性率が5MPa以
上(通常は100MPa以下)であるポリオレフィン系
樹脂発泡体シートの少なくとも片面に、一方向の引張弾
性率が5GPa以上(通常は50GPa以下)であるポ
リオレフィン系樹脂シートが積層されてなるポリオレフ
ィン系樹脂複合積層体である。
【0019】請求項3の発明は、内在するセルのアスペ
クト比Dz/Dxyの平均値が1.1〜4.0であり、
発泡倍率が3〜20倍であり、圧縮弾性率が5MPa以
上(通常は100MPa以下)であるポリオレフィン系
樹脂発泡体シートの少なくとも片面に、一方向に10倍
以上(通常は40倍以下)に延伸された引張弾性率が5
GPa以上(通常は50GPa以下)であるポリオレフ
ィン系樹脂延伸シートが積層されてなるポリオレフィン
系樹脂複合積層体である。
【0020】請求項4の発明は、ポリオレフィン系樹脂
と変性用モノマーとを反応させて同樹脂を変性し、得ら
れた変性樹脂に熱分解型化学発泡剤を加えて混練し、得
られた発泡性樹脂組成物をシート状に賦形し、得られた
発泡性シートの少なくとも片面に、同シートを加熱発泡
させる際の面内方向への発泡を抑制しうる強度を有する
面材を積層した後、発泡性シートを加熱発泡して得られ
る、発泡倍率が3〜20倍であり、圧縮弾性率が5MP
a以上(通常は100MPa以下)であるポリオレフィ
ン系樹脂発泡体シートの少なくとも片面に、一方向に1
0倍以上(通常は40倍以下)に延伸された引張弾性率
が5GPa以上(通常は50GPa以下)であるポリオ
レフィン系樹脂延伸シートが積層されてなるポリオレフ
ィン系樹脂複合積層体である。
【0021】請求項5の発明は、密度が40〜300k
g/m3 であり、曲げ座屈歪みが2%以上、好ましく
は3%以上(通常は10%以下)であり、圧縮弾性率が
5MPa以上(通常は100MPa以下)であるポリオ
レフィン系樹脂構造体シートの少なくとも片面に、一方
向に10倍以上(通常は40倍以下)延伸された引張弾
性率が5GPa以上(通常は50GPa以下)であるポ
リオレフィン系樹脂延伸シートが積層されてなるポリオ
レフィン系樹脂複合積層体である。
【0022】請求項6の発明は、内在するセルのアスペ
クト比Dz/Dxyの平均値が1.1〜4.0であり、
発泡倍率が3〜20倍であり、曲げ座屈歪みが2%以
上、好ましくは3%以上(通常は10%以下)であり、
圧縮弾性率が5MPa以上(通常は100MPa以下)
であるポリオレフィン系樹脂発泡体シートの少なくとも
片面に、一方向に10倍以上(通常は40倍以下)に延
伸された引張弾性率が5GPa以上(通常は50GPa
以下)であるポリオレフィン系樹脂延伸シートが積層さ
れてなるポリオレフィン系樹脂複合積層体である。
【0023】始めに、本明細書で用いる用語を説明す
る。
【0024】請求項1の発明において、密度が40〜3
00kg/m3 であり、圧縮弾性率が5MPa以上で
あるポリオレフィン系樹脂構造体シート、および、請求
項5の発明において、密度が40〜300kg/m3
であり、曲げ座屈歪みが2%以上であり、圧縮弾性率が
5MPa以上であるポリオレフィン系樹脂構造体シート
をいずれも、以下「構造体シート」と略称し、請求項2
および3の発明において、内在するセルのアスペクト比
Dz/Dxyの平均値が1.1〜4.0であり、発泡倍
率が3〜20倍であり、圧縮弾性率が5MPa以上であ
るポリオレフィン系樹脂発泡体シート、および、請求項
6の発明において、内在するセルのアスペクト比Dz/
Dxyの平均値が1.1〜4.0であり、発泡倍率が3
〜20倍であり、曲げ座屈歪みが2%以上であり、圧縮
弾性率が5MPa以上であるポリオレフィン系樹脂発泡
体シートをいずれも、以下「発泡体シート」と略称す
る。請求項1および請求項2の発明において、一方向の
引張弾性率が5GPa以上であるポリオレフィン系樹脂
シートを、以下「高引張強度シート」と略称する。請求
項3から請求項6の発明において、一方向に10倍以上
に延伸された引張弾性率が5GPa以上であるポリオレ
フィン系樹脂延伸シートを、「延伸シート」と略記す
る。
【0025】まず、本発明による複合積層体を構成する
シートの材料として用いられるポリオレフィン系樹脂に
ついて説明をする。
【0026】構造体シートおよび発泡体シートの作製に
用いられるポリオレフィン系樹脂は、オレフィン系モノ
マーの単独重合体もしくは共重合体であればよく、特に
限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレ
ン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等
のポリエチレン、プロピレンホモポリマー、プロピレン
ランダムポリマー、プロピレンブロックポリマー等のポ
リプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重
合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エ
チレン−ブテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合
体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等のエチレ
ンを主成分とする共重合体などが好適に用いられるが、
なかでもポリエチレンやポリプロピレンが特に好適に用
いられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用
いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0027】また、上記ポリオレフィン系樹脂は、ポリ
オレフィン系樹脂に対し30重量%未満の他の樹脂が添
加されているポリオレフィン系樹脂組成物であっても良
い。上記他の樹脂としては、特に限定されるものではな
いが、例えば、ポリスチレンやスチレン系エラストマー
等が挙げられる。これらの他の樹脂は、単独で用いられ
ても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0028】ポリオレフィン系樹脂に対する他の樹脂の
添加量が30重量%以上であると、軽量、耐薬品性、柔
軟性、弾性等のポリオレフィン系樹脂が有する優れた特
性が阻害されることがあり、また、発泡時に必要な溶融
粘度を確保することが困難となることがある。
【0029】さらに、上記ポリオレフィン系樹脂は、変
性用モノマーが添加されているポリオレフィン系樹脂組
成物であっても良い。上記変性用モノマーとしては、特
に限定されるものではないが、例えば、ジオキシム化合
物、ビスマレイミド化合物、ジビニルベンゼン、アリル
系多官能モノマー、(メタ)アクリル系多官能モノマ
ー、キノン化合物等が挙げられる。これらの変性用モノ
マーは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用
されても良い。
【0030】請求項1および5の発明の構造体シートを
規定する密度は、見かけ密度である。見かけ密度は、ポ
リオレフィン系樹脂構造体から切り出した小片に対し
て、JIS K 7222(1985)に基づいて、計
算した数値である。構造体シートの見かけ密度が40k
g/m3 より小さいと、圧縮弾性率が小さくなりす
ぎ、所望の曲げ剛性を得ることができない。見かけ密度
が300kg/m3 より大きいと目的とする複合積層
体が重くなりすぎる。構造体シートの好ましい見掛け密
度は60〜200kg/m3 である。
【0031】構造体シートおよび発泡体シートを規定す
る圧縮弾性率は、JIS K 7220に基づいてシー
トをその厚み方向に速度1mm/分で圧縮して測定した
数値である。圧縮弾性率が5MPaより小さいと、目的
の複合積層体において所望の曲げ剛性を得ることができ
ない。また、通常、見かけ密度が300kg/m3より
小さいと、圧縮弾性率は100MPa以下である。
【0032】請求項1の発明における構造体シートは、
ポリオレフィン系樹脂を主体とする樹脂組成物からな
り、密度が40〜300kg/m3 であり、圧縮弾性
率が5MPa以上であるものであれば、特に限定されな
い。請求項5の発明における構造体シートは、ポリオレ
フィン系樹脂を主体とする樹脂組成物からなり、密度が
40〜300kg/m3 であり、曲げ座屈歪みが2%
以上であり、圧縮弾性率が5MPa以上であるものであ
れば、特に限定されない。請求項1および5の発明で用
いる構造体シートの形態は、例えば、発泡体、ハニカム
構造体、プラスチック段ボールのようなものであってよ
い。圧縮特性の均質性の観点からは、発泡体が特に好ま
しい。
【0033】つぎに、請求項2〜4および請求項6の発
明における発泡体シートについて説明をする。
【0034】一般に、ポリオレフィン系樹脂はプラスチ
ックのうちでは高い剛性を有する方ではない。ポリオレ
フィン系樹脂から作られる発泡体は、軟質であり、ソフ
トな感触を有するものになる。
【0035】請求項2および3の発明で用いられるポリ
オレフィン系樹脂発泡体シートは、内在するセルのアス
ペクト比Dz/Dxyの平均値が1.1〜4.0であ
り、発泡倍率が3〜20倍であることを特徴とし、請求
項6の発明で用いられるポリオレフィン系樹脂発泡体シ
ートは、内在するセルのアスペクト比Dz/Dxyの平
均値が1.1〜4.0であり、発泡倍率が3〜20倍で
あり、曲げ座屈歪みが2%以上であることを特徴とし、
圧縮弾性率が5MPaと飛躍的に高められる。
【0036】請求項2、3および6の発明の発泡体シー
トを規定するセルのアスペクト比(Dz/Dxy)の平
均値は、1.1〜4.0、好ましくは1.3〜2.5で
ある。
【0037】図1(a)は発泡体シートを示す斜視図で
あり、図1(b)は図1(a)中のA部の拡大図であ
る。上記アスペクト比(Dz/Dxy)の平均値とは、
図1に示す発泡体シート(1) 内部のセル(3) における定
方向最大径の比の個数(算術)平均値を意味し、以下の
方法で測定される。
【0038】アスペクト比(Dz/Dxy)の平均値の
測定方法:発泡体シート(1) のシート厚み方向(z方向
と呼ぶ)に平行な任意の断面(2)の10倍の拡大写真を
撮り、無作為に選ばれた少なくとも50個のセル(3) の
定方向最大径を下記2方向で測定し、各アスペクト比
(Dz/Dxy)の個数(算術)平均値を算出する。
【0039】Dz:発泡体シート(1) 中のセル(3) のZ
方向に平行な最大径 Dxy:発泡体シート(1) 中のセル(3) のシート幅方向
またはシート長さ方向、即ち、z方向に垂直な面方向
(xy方向と呼ぶ)に平行な最大径
【0040】上記アスペクト比(Dz/Dxy)の平均
値を1.1〜4.0(好ましくは1.3〜2.5)とす
ることにより、発泡体シート(1) 中のセル(3) は発泡体
シート(1) の厚み方向に長軸を有する紡錘形のセル(3)
となる。従って、発泡体シート(1) が厚み方向に圧縮力
を受けた場合、圧縮力は紡錘形のセル(3) の長軸方向に
負荷されることになるので、発泡体シート(1) は厚み方
向に高い圧縮強度(圧縮弾性率)を発現し得るものとな
る。
【0041】上記アスペクト比(Dz/Dxy)の平均
値が1.1未満であると、セル(3)の形状がほぼ球形と
なって、上記紡錘形のセル(3) に起因する圧縮強度(圧
縮弾性率)向上効果が十分に得られないので、本発明の
目的である複合積層体の曲げ剛性が小さくなる。逆に上
記アスペクト比(Dz/Dxy)の平均値が4.0を超
えると、発泡性樹脂はz方向にのみ、相当量の伸長歪み
を受けることになり、発泡の制御が困難となり、均質な
発泡体の製造がしにくい。
【0042】また、発泡体シート(1) 内部のセル(3) の
Dxyの平均値は、特に限定されるものではないが、好
ましくは500μm以上、より好ましくは800μm以
上である。
【0043】一般的に、セル径が小さいとセル壁の厚み
が薄くなって発泡体シートが座屈を生じ易くなるため、
発泡体シート(1) 上に重量物を置いた場合、へたり現象
や凹み等が発生し易くなるが、発泡体シート(1) 内部の
セル(3) のDxyの平均値を500μm以上とすること
により、上記座屈に起因するへたり現象や凹み等の発生
を効果的に抑制することができる。
【0044】請求項2〜4および請求項6の発明におい
て発泡体シートを規定する発泡倍率は3〜20倍であ
る。この発泡倍率は以下の方法で測定される。
【0045】発泡倍率の測定方法;発泡体シートよりシ
ート状の試料をカッターで切り出した後、JIS K−
6767「ポリエチレンフォーム試験方法」に準拠し
て、見かけ密度を測定し、その逆数を発泡倍率とする。
【0046】発泡体シートの発泡倍率が3倍未満である
と、目的の複合積層体が重くなる上にコスト高となって
実用性が低下し、逆に発泡体シートの発泡倍率が20倍
を超えると、セル壁の厚みが薄くなって、圧縮強度(圧
縮弾性率)が不十分となる。
【0047】つぎに、発泡体シートの製法について、説
明をする。
【0048】上記のような紡錘形のセルを持つ発泡体シ
ートを製造するには、特に限定されないが、リサイクル
性、生産性の観点から以下の方法が好適に用いられる。
【0049】一般に、ポリオレフィン系樹脂組成物から
成る発泡体は、化学発泡法によって得られる発泡体と物
理発泡法によって得られる発泡体とに大別される。本発
明においては上記いずれの発泡体であっても良いが、発
泡操作の容易な化学発泡法によって得られる発泡体が好
ましい。
【0050】化学発泡法による発泡体シートは、加熱に
より分解ガスを発生する熱分解型化学発泡剤を予めポリ
オレフィン系樹脂組成物中に分散させておき、同組成物
を一旦シート状の発泡性原反に賦形した後、加熱して上
記発泡剤より発生するガスによりポリオレフィン系樹脂
組成物を発泡させる方法で製造され得る。
【0051】上記熱分解型化学発泡剤としては、特に限
定されるものではないが、例えば、アゾジカルボンアミ
ド(ADCA)、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニ
トロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニル
ヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニル
ヒドラジド)等が好適に用いられるが、なかでもADC
Aがより好ましい。これらの熱分解型化学発泡剤は、単
独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良
い。
【0052】物理発泡法による発泡体シートは、高圧下
でポリオレフィン系樹脂組成物中に物理発泡剤を一旦溶
解し、同組成物を常圧下に戻したときに発生するガスに
よりポリオレフィン系樹脂組成物を発泡させる方法で製
造され得る。
【0053】上記物理発泡剤としては、特に限定される
ものではないが、例えば、水、二酸化炭素、窒素、有機
溶剤などが好適に用いられる。これらの物理発泡剤は、
単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても
良い。
【0054】発泡体シートを製造するより具体的な方法
は下記の通りである。主成分としてのポリオレフィン系
樹脂と前述した変性用モノマーや他の樹脂とを溶融混練
して得られる変性ポリオレフィン系樹脂組成物100重
量部に、上記熱分解型化学発泡剤2〜20重量部を添加
分散させ、同組成物を一旦シート状に賦形して発泡性シ
ートを作製した後、この発泡性シートを熱分解型化学発
泡剤の分解温度以上の温度まで加熱して発泡させる方法
を採ることにより、所望の発泡体シートを成形すること
ができる。
【0055】ポリオレフィン系樹脂を変性用モノマーで
変性することにより、賦形された発泡性シートは、架橋
度が低いにも拘らず、常圧で発泡し得るものとなる。
尚、ここで言う架橋度とはゲル分率を意味し、架橋度が
低いとはゲル分率が25重量%以下であることを言う。
上記ゲル分率は、試料の初期重量に対する、試料を12
0℃の熱キシレン中で24時間溶解させた後の未溶解分
(ゲル分)の乾燥重量の百分率で求められる。
【0056】上記発泡性シートは、電子線で架橋させた
架橋シートや熱分解型化学架橋剤で架橋させた架橋シー
トに比較して、架橋度(ゲル分率)が低く且つ常圧で加
熱発泡するため、発泡体のセルが上記架橋シートから得
られる発泡体のセルに比べて大きくなり、セル壁が厚く
なる。従って、圧縮強度や耐座屈性等の機械的物性に優
れる発泡体シートとなる。
【0057】また、発泡体シートは、架橋度が小さいこ
とから、加熱することで再溶融が可能であり、リサイク
ル性に富むものである。このことにより、材料の再利
用、転用が可能となる。
【0058】発泡性シートの賦形方法は、特に限定され
るものではなく、押出成形法、プレス成形法、ブロー成
形法、カレンダリング成形法、射出成形法等のプラスチ
ックの成形加工で一般的に行われている成形方法のいず
れであっても良いが、なかでも例えばスクリュー押出機
より吐出されるポリオレフィン系樹脂組成物を直接シー
ト状に賦形する押出成形法が生産性に優れていることか
ら好ましい。この方法により、一定寸法幅の連続した発
泡性シートを得ることができる。
【0059】上記発泡性シートから化学発泡法によって
発泡体シートを作製する方法は、通常、熱分解型化学発
泡剤の分解温度以上の温度からポリオレフィン系樹脂の
熱分解温度未満の温度までの温度範囲で行われる。
【0060】上記発泡は連続式発泡装置を用いて行われ
ることが好ましい。連続式発泡装置を用いて発泡を行う
方法としては、特に限定されるものではないが、例え
ば、加熱炉の出口側で発泡体シートを引取りながら連続
的に発泡性シートを発泡させる引取り式発泡機、ベルト
式発泡機、縦型もしくは横型発泡炉、熱風恒温槽等を用
いて発泡を行う方法や、オイルバス、メタルバス、ソル
トバス等の熱浴中で発泡を行う方法等が挙げられる。
【0061】こうして得られる発泡体シートの前記アス
ペクト比(Dz/Dxy)の平均値を1.1〜4.0と
する方法としては、特に限定されるものではないが、例
えば、発泡中の発泡性シートの面内方向(xy方向)の
発泡力を抑制し得る強度を有する面材を発泡前の発泡性
シートの少なくとも片面に積層する方法が好ましい。
【0062】発泡前の発泡性シートの少なくとも片面に
上記面材を積層することにより、発泡時における発泡性
シートの面内の二次元方向(xy方向)の発泡を抑制
し、厚み方向(z方向)にのみ発泡させることが可能と
なって、得られる発泡体シート内部のセルは厚み方向に
その長軸を配向した紡錘形のセルとなる。
【0063】上記面材は、発泡性シートの発泡温度以上
の温度、即ちポリオレフィン系樹脂の融点以上の温度お
よび熱分解型化学発泡剤の分解温度以上の温度に耐え得
るものであれば良く、特に限定されるものではないが、
例えば、紙、布、木材、鉄、非鉄金属、有機繊維や無機
繊維から成る織布や不織布、寒冷紗、ガラス繊維、炭素
繊維、後述するポリオレフィン系樹脂延伸シート等が好
適に用いられる。また、例えばテフロン(登録商標)シ
ートのような離型性を有するシートを面材として用い、
発泡性シートを厚み方向に発泡させた後、上記離型性シ
ートを剥離して、発泡体シートを得ても良い。
【0064】ただし、ポリオレフィン系樹脂以外の材料
からなる面材を用いるときは、リサイクル性の観点よ
り、その使用量は最小限度に留めることが好ましい。
【0065】上記面材のなかでも、ポリオレフィン系樹
脂延伸シートを積層する際の投錨効果(アンカー効果)
に優れ、人体や環境に対して好ましくない影響を及ぼす
ことの殆どない不織布や寒冷紗がより好適に用いられ
る。
【0066】請求項5の構造体シートおよび請求項6の
発泡体シートは2%以上の曲げ座屈歪みを有することを
特徴とする。本発明では、構造体シートおよび発泡体シ
ートを曲げていく際に、図3に示すように、曲げ応力が
顕著に低下する点を曲げ座屈点と定義する。この曲げ座
屈点では、シートを曲げていく際の圧縮側で構造体シー
トおよび発泡体シートに座屈が生じる。曲げ座屈が生じ
る前に曲げ破壊を生じるものはその曲げ破壊点を曲げ座
屈点とする。また本発明でいう「曲げ座屈歪み」とは、
上記の曲げ座屈点における曲げ歪みと定義する。複合積
層体は、曲げ変形していくと、延伸シートの塑性変形領
域に達し、構造体シートまたは発泡体シートが曲げ座屈
して曲げ降伏点を迎えるまでの間、形状保持性を示す。
構造体シートおよび発泡体シートの曲げ座屈歪みが2%
より小さいと、複合積層体を曲げたときに、これが延伸
シートの塑性変形領域に達する前に、構造体シートまた
は発泡体シートの圧縮座屈が生じるので、塑性変形が不
可能となる。
【0067】したがって、曲げ座屈歪みが2%以上であ
ることが形状保持性の上で好ましい。この現象を説明す
るため、延伸シートの引張歪みと引張応力の関係のグラ
フ(図2)、発泡体シートの曲げ座屈歪みと曲げ応力の
関係のグラフ(図3)、および複合積層体の曲げ降伏歪
みと曲げ応力の関係のグラフ(図4)を示す。なお、曲
げ歪み量の計算は例えばJIS K 7171に従う。
【0068】構造体シートおよび発泡体シートの曲げ座
屈強度は、好ましくは0.5MPa以上、より好ましく
は1.0MPa以上である。曲げ座屈強度が0.5MP
a以下であると、複合発泡体を曲げた際に、これが延伸
シートの塑性領域に達する前に、構造体および発泡体シ
ートが曲げ座屈を生じることがある。
【0069】また、構造体シートおよび発泡体シートの
曲げ弾性率は、特に限定されないが、30MPa〜5G
Paであることが好ましい。曲げ弾性率が30MPa以
下であると、曲げによる座屈が特に生じやすくなり、5
GPa以上であると、非常に曲げにくくなり、複合発泡
体としての形状保持性が発現しにくくなる。
【0070】つぎに、請求項1および請求項2の複合積
層体において構造体シートまたは発泡体シートに積層さ
れる高引張強度シートについて説明をする。
【0071】高引張強度シートは、一方向の引張弾性率
が5GPa以上であることを特徴とする。引張弾性率は
JIS K 7127に基づいて測定された数値であ
る。
【0072】引張弾性率が5GPaより小さいと、目的
の複合積層体の曲げ剛性が向上しない。また、通常の延
伸成形で得られる弾性率は50GPa以下である。
【0073】ポリオレフィン系樹脂素材を用いて、引張
弾性率が大きいシートを得る方法としては、特に限定さ
れないが、延伸成形が好ましい。延伸方向も特に限定さ
れないが、引張弾性率の大幅な向上を得るには、一方向
への延伸が特に好ましい。
【0074】つぎに、請求項3〜6の発明で用いられる
延伸シートについて、説明をする。
【0075】延伸シートの作製に用いられるポリオレフ
ィン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、
例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直
鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、プロピレン
ホモポリマー、プロピレンランダムポリマー、プロピレ
ンブロックポリマー等のポリプロピレン等が挙げられ、
なかでも、延伸後の弾性率を考慮すると、理論弾性率の
高いポリエチレンがより好適に用いられ、結晶性の高い
高密度ポリエチレンが最も好適に用いられる。これらの
ポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられても良いし、
2種類以上が併用されても良い。
【0076】延伸シート作製用のポリオレフィン系樹脂
の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、
10万〜50万であることが好ましい。ポリオレフィン
系樹脂の重量平均分子量が10万未満であると、ポリオ
レフィン系樹脂自体が脆くなるため、延伸性が損なわれ
ることがあり、逆にポリオレフィン系樹脂の重量平均分
子量が50万を超えると、延伸性が悪くなって、延伸シ
ートの成形が困難となったり、高倍率の延伸が困難とな
ることがある。
【0077】上記重量平均分子量の測定方法としては、
加温した例えばo−ジクロルベンゼンのような有機溶剤
にポリオレフィン系樹脂を溶解した後、カラムに注入
し、溶出時間を測定する所謂ゲルパーミエーションクロ
マトグラフィー法(高温GPC法)が一般的であり、上
記重量平均分子量もo−ジクロルベンゼンを有機溶剤と
して用いた上記高温GPC法により測定した値である。
【0078】延伸シート作製用のポリオレフィン系樹脂
のメルトフローレート(MFR)は、特に限定されるも
のではないが、0.1〜20g/10分であることが好
ましい。ポリオレフィン系樹脂のMFRが0.1g/1
0分未満であるか、20g/10分を超えると、高倍率
の延伸が困難となることがある。尚、上記MFRは、J
IS K−7210「熱可塑性プラスチックの流れ試験
方法」に準拠して測定される。
【0079】延伸シート作製用のポリオレフィン系樹脂
としては、重量平均分子量が10万〜50万であり、か
つ、MFRが0.1〜20g/10分である高密度ポリ
エチレンが特に好適に用いられる。
【0080】また、延伸シート内部には、本発明の課題
達成を阻害しない範囲で必要に応じて、主成分であるポ
リオレフィン系樹脂以外に、架橋助剤や光ラジカル重合
開始剤等が添加されていても良い。
【0081】架橋助剤としては、例えば、トリアリルシ
アヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレー
ト、ジアリルフタレート等の多官能モノマーが挙げら
れ、また、光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベ
ンゾフェノン、チオキサントン、アセトフェノンなどが
挙げられる。これらの架橋助剤や光ラジカル重合開始剤
は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用され
ても良い。
【0082】上記架橋助剤や光ラジカル重合開始剤の添
加量は、特に限定されるものではないが、ポリオレフィ
ン系樹脂100重量部に対し、架橋助剤や光ラジカル重
合開始剤1〜2重量部であることが好ましい。ポリオレ
フィン系樹脂100重量部に対する架橋助剤や光ラジカ
ル重合開始剤の添加量が1重量部未満であると、ポリオ
レフィン系樹脂の架橋や光ラジカル重合が速やかに進行
しないことがあり、逆にポリオレフィン系樹脂100重
量部に対する架橋助剤や光ラジカル重合開始剤の添加量
が2重量部を超えると、高倍率の延伸が困難となること
がある。
【0083】延伸シートの作製方法は、特に限定される
ものではなく、例えば、主成分としてのポリオレフィン
系樹脂と必要に応じて添加される上記架橋助剤や光ラジ
カル重合開始剤とから成るポリオレフィン系樹脂組成物
を押出機等により溶融混練して可塑化させた後、溶融物
をTダイを通してシート状に押出し、冷却して、ポリオ
レフィン系樹脂の延伸前シート(延伸原反)を先ず作製
する。
【0084】上記延伸前シートの厚みは、特に限定され
るものではないが、0.5〜10mmであることが好ま
しい。延伸前シートの厚みが0.5mm未満であると、
これに延伸処理を施して得られる延伸シートの厚みが薄
くなり過ぎて、強度が不十分となり、取扱い性が損なわ
れることがあり、逆に延伸前シートの厚みが10mmを
超えると、延伸処理が困難となることがある。
【0085】次いで、上記延伸前シートに延伸処理を施
すことにより延伸シートが作製される。
【0086】上記延伸処理を施す際の延伸倍率は、延伸
シートの引張弾性率が5GPa以上となるように設定す
ればよく、10〜40倍であることが好ましく、より好
ましくは20〜40倍である。上記延伸倍率が10倍未
満であると、ポリオレフィン系樹脂の種類の如何に拘わ
らず、延伸シートの引張弾性率が5GPaとならなかっ
たり、後述する平均線膨張率が小さくならなかったりし
て、目的の複合積層体において、所望の曲げ剛性、寸法
安定性が得られない。逆に延伸倍率が40倍を超える
と、延伸の制御が困難となることがある。
【0087】また、延伸処理を施す際の延伸温度は、特
に限定されるものではないが、85〜120℃であるこ
とが好ましい。上記延伸温度が85℃未満であると、延
伸シートが白化し易くなったり、高倍率の延伸が困難と
なることがあり、逆に延伸温度が120℃を超えると、
延伸前シートが切れ易くなったり、高倍率の延伸が困難
となることがある。
【0088】延伸方法についても、特に限定されるもの
ではなく、通常の一軸延伸方法で良いが、特にロール延
伸方法が好適に採用される。
【0089】上記ロール延伸方法とは、速度の異なる二
対の延伸ロール間に延伸前シートを挟み、延伸前シート
を加熱しながら引っ張る方法であり、一軸延伸方向のみ
に強く分子配向させることができる。この場合、二対の
延伸ロールの速度比が延伸倍率となる。
【0090】延伸前シートの厚みが比較的厚い場合、ロ
ール延伸方法のみでは円滑な延伸を行うのが困難となる
ことがあるが、このような場合には、ロール延伸に先立
ってロール圧延処理を施してもよい。
【0091】上記ロール圧延処理は、一対の反対方向に
回転する圧延ロール間に該圧延ロール間の間隔より厚い
延伸前シートを挿入し、延伸前シートの厚みを減少させ
ると共に長さ方向に伸長させることにより行われる。上
記ロール圧延処理が施された延伸前シートは、予め一軸
方向に配向処理されているので、次工程のロール延伸に
より、一軸方向に円滑に延伸される。
【0092】上記延伸工程において、延伸温度を好まし
い範囲(85〜120℃)とするためには、延伸前シー
トの予熱温度、延伸ロールの温度、雰囲気温度等を適宜
調節すれば良い。
【0093】こうして得られる延伸シートに対して、耐
熱性を高めるために或いは最終的に得られる複合積層体
の耐熱性や耐クリープ性を高めるために、架橋処理を施
しても良い。
【0094】上記架橋処理は、特に限定されるものでは
ないが、例えば、電子線照射や紫外線照射によって行い
得る。
【0095】電子線照射により架橋処理を行う場合の電
子線照射量は、延伸シートの組成や厚み等を考慮して適
宜設定すれば良く、特に限定されるものではないが、一
般的には1〜20Mradであることが好ましく、より
好ましくは3〜10Mradである。また、電子線照射
による架橋処理の場合、前記架橋助剤を予め延伸シート
内部に添加しておくことにより、円滑な架橋を行うこと
ができる。
【0096】紫外線照射により架橋処理を行う場合の紫
外線照射量は、延伸シートの組成や厚み等を考慮して適
宜設定すれば良く、特に限定されるものではないが、一
般的には50〜800mW/cm2 であることが好ま
しく、より好ましくは100〜500mW/cm2
ある。また、紫外線照射による架橋処理の場合、前記光
ラジカル重合開始剤や架橋助剤を予め延伸シート内部に
添加しておくことにより、円滑な架橋を行うことができ
る。
【0097】延伸シートの架橋の程度は、特に限定され
るものではないが、前記ゲル分率が50〜90重量%程
度であることが好ましい。
【0098】延伸シートは、10倍以上に延伸されたも
のであるため、温度変化に対する熱伸縮の度合いが小さ
くなる。このため、同延伸シートを請求項3〜6の構造
体シートまたは発泡体シートと積層させることにより、
延伸シートが構造体シートおよび発泡体シートの熱伸縮
を抑制し、目的の複合積層体において温度に対する寸法
安定性が確保できる。
【0099】この熱伸縮の度合いを示す数値として、平
均線膨張係数がある。
【0100】請求項3〜6の発明で用いられる延伸シー
トは、平均線膨張率5×10-5/℃以下、好ましくは3
×10-5/℃以下、より好ましくは−2×10-5〜2×
10-5/℃のものである。
【0101】平均線膨張率は、物体の寸法が温度によっ
て膨張していく割合を示す尺度である。平均線膨張率を
測定するには、TMA(機械分析)により、昇温中の物
体の寸法を順次精密に測定していく方法があるが、延伸
シートの5℃および80℃における寸法を測定し、その
差から平均線膨張率を算出することもできる。
【0102】一般に、ポリオレフィン系樹脂製の物体の
平均線膨張率は5×10-5/℃より大きいが、延伸処理
を施すことにより、平均線膨張率が5×10-5/℃以下
の延伸シートを得ることができる。また、この延伸シー
トは、延伸倍率を大きくするほど平均線膨張率が低いも
のとなる。
【0103】構造体シートおよび発泡体シートは、それ
単独ではポリオレフィン系樹脂シートの平均線膨張率が
凡そ5×10-5〜15×10-5/℃であって、熱収縮に
よる寸法変化が大きいという問題点を有するが、その少
なくとも片面に上記平均線膨張率が5×10-5/℃以下
の延伸シートを積層することにより、平均線膨張率が小
さく、熱収縮による寸法変化を起こし難い複合積層体を
得ることができる。
【0104】また、上記延伸シートでは、平均線膨張率
を5×10-5/℃以下とするために延伸倍率を大きくす
るので、延伸方向の引張強度(引張弾性率)も大きくな
り、上記構造体シートまたは発泡体シートの少なくとも
片面に上記延伸シートが積層されて成る複合積層体の曲
げ強度(曲げ弾性率)が飛躍的に向上し、相乗効果が生
じる。
【0105】つぎに、上記構造体シートまたは発泡体シ
ートに、上記高引張強度シートまたは延伸シートを積層
する方法について、説明をする。
【0106】構造体シートまたは発泡体シートの少なく
とも片面に、上記高引張強度シートまたは延伸シートを
積層して複合積層体を得る方法は、特に限定されるもの
ではなく、例えば、加熱による熱融着法であっても良い
し、粘接着剤を用いた粘接着法であっても良いが、生産
性に優れる熱融着法を採用することが好ましい。
【0107】熱融着法による複合積層体の製造方法は、
特に限定されるものではないが、例えば前記発泡性シー
トの発泡を化学発泡法で行う場合、下記二方法に大別さ
れる。
【0108】〔I法〕 発泡性シートの少なくとも片面
に、発泡性シートの面内方向(xy方向)の発泡を抑制
し得る強度を有する前記面材を積層し、発泡性シートを
加熱発泡させた後に、得られた発泡体シートの少なくと
も片面に延伸シートを熱融着法により積層して複合積層
体とする。
【0109】〔II法〕 発泡性シートの少なくとも片面
に、延伸シートを熱融着法により積層した後に、発泡性
シートを加熱発泡させて複合積層体とする。
【0110】上記製造方法において、発泡性シートが加
熱発泡する温度で延伸シートに熱変形が生じなければ、
II法を採用し得るが、発泡性シートの発泡温度は通常1
80〜250℃程度と高いので、延伸シートが熱変形し
がちである。従って、II法よりもI法を採用する方が好
ましい。
【0111】上記I法において、発泡体シートに延伸シ
ートを熱融着させる際、発泡体シート表面もしくは延伸
シート表面に表面処理やプライマー塗工を施しても良
い。また、発泡体シートと延伸シートとの間に、延伸シ
ートが熱変形する温度以下の融点を有するポリオレフィ
ン系樹脂フィルム等を介在させて、熱融着を行っても良
い。
【0112】発泡体シートに対する延伸シートの積層方
向は、特に限定されるものではないが、延伸シートは延
伸された方向の機械的物性が特に向上しているので、複
合積層体の用途や所望の機械的物性等に応じて上記利点
を生かすべく、一方向に積層されても良いし、二方向以
上(直交または直交以外の任意の角度)に積層されても
良い。
【0113】また、発泡体シートと延伸シートとの積層
枚数や複合積層体の厚みも、複合積層体の用途や所望の
機械的物性等に応じて、適宜設定されれば良い。
【0114】さらに、延伸シートは発泡体シートの上下
面のみでなく、発泡体シートの側面にも積層されていて
も良い。こうすることにより、界面部からの曲げ破壊が
生じにくく、曲げ強度が飛躍的に向上する。
【0115】熱融着の加熱条件や加圧条件は、使用する
延伸シートの種類によっても異なるため一義的には定め
られないが、一般的には、延伸シートの主成分として用
いられているポリオレフィン系樹脂の融点未満の加熱温
度で、0.01〜1.0MPa程度の加圧下で熱融着を
行いことが好ましい。
【0116】熱融着時の加熱温度が延伸シートの主成分
として用いられているポリオレフィン系樹脂の融点以上
であると、延伸シートの熱収縮等により複合積層体の形
状や平均線膨張率が損なわれることがある。また、熱融
着時の加圧圧力が上記範囲外であると、複合積層体の形
状が損なわれることがある。
【0117】最後に、本発明による複合積層体の用途に
ついて説明をする。
【0118】本発明による複合積層体は、全体的にプラ
スチックの軽量高剛性材料で構成されており、現在、木
材、木質ボード、無機繊維強化プラスチックが使用され
ている例えば以下の用途への応用が可能となる。
【0119】・土木建設資材 足場板、コンクリート型枠パネル、枕木、受圧板、建設
下敷き板、橋桁、盛り土用嵩上げ板、遮水パネル、土止
め板、擬木(公園資材)。
【0120】・建材 デッキ材、壁パネル、床下地材、断熱パネル、遮音パネ
ル、畳芯材、フローリング裏打ち材、熱橋防止材、パー
ティション芯材、机天板、バスコア壁バックアップ、看
板用芯材。
【0121】・車両用部材 天井材、衝撃吸収部材、バンパービーム、フロアデッキ
材、アンダートレー、ボンネット裏打ち材、壁材、ドア
芯材、外板。
【0122】本発明による複合積層体の応用範囲は上記
のものに限定されず、その特徴である塑性変形による形
状保持性を活かした、現場での形状に合わせた屈曲施
工、敷き込む際の不陸性の調整等の利点から、応用範囲
の拡大が期待される。
【0123】
【作用】発泡体シートは、内在するセルのアスペクト比
(Dz/Dxy)の平均値が1.1〜4.0の範囲にあ
り、且つ発泡倍率が3〜20倍の範囲にあるものであ
る。即ち、上記発泡体シートは、厚み方向に配向した紡
錘形の形状を有するセルを内包しており、且つ、特定の
発泡倍率を有しているので、この発泡体シートは、軽量
でありながら優れた圧縮強度、圧縮弾性率、曲げ方向の
柔軟性、耐クリープ性、弾性回復力等の機械的物性を具
備する。
【0124】また、延伸シートは、10倍以上に延伸さ
れているため、その延伸方向の引張弾性率は飛躍的に向
上する上に、通常のプラスチックと異なり、温度変化に
対する熱伸縮がほとんどない。
【0125】上記構造体シートまたは発泡体シートに延
伸シートを積層させることにより、得られた複合積層体
は、下記のような作用を発現する。
【0126】・両シートともポリオレフィン系樹脂を素
材とするので、木質ボードや無機繊維複合プラスチック
等と比較し、環境負荷が少なく、リサイクル性に富む。
【0127】・延伸シートは高引張剛性を有するため、
曲げによる表面伸縮補強の役割をし、また構造体シート
または発泡体シートは軽量でありながら高圧縮剛性を有
するため、曲げによる応力伝搬の役割を果たし、結果と
して軽量で圧縮剛性、曲げ剛性に富む高強度複合積層体
が得られる。
【0128】・延伸シートの熱伸縮が非常に小さいた
め、これを発泡体シートに積層することで発泡体シート
の熱伸縮を抑制し、寸法安定性を高める。
【0129】・発泡体シートの曲げ座屈歪みが大きくな
れば、曲げ応力を受けた際、発泡体シートが曲げによる
座屈点を迎えて、複合積層体が曲げ降伏を起こす前に、
延伸シートが塑性変形を起こす。このため、複合積層体
は形状保持性を有する。
【0130】
【発明の実施の形態】本発明を実施例によってより具体
的に説明する。
【0131】(実施例1) i)ポリオレフィン系樹脂発泡体シートの調製 (1) 変性ポリオレフィン系樹脂の調製 変性用スクリュー押出機として、BT40(プラスチッ
ク工学研究所社製)同方向回転2軸スクリュー押出機を
用いた。これはセルフワイピング2条スクリューを備
え、そのL/Dは35、Dは39mmである。シリンダ
ーバレルは押出機の上流から下流側へ第1〜6バレルか
らなり、ダイは3穴ストランドダイであり、揮発分を回
収するため第4バレルに真空ベントが設置されている。
【0132】操作条件は下記の通りである。
【0133】 ・シリンダーバレル設定温度:第1バレル;180℃ 第2〜6バレル;220℃ ダイ;220℃ ・スクリュー回転数:150rpm
【0134】上記構成の変性用スクリュー押出機に、ま
ず、ポリオレフィン系樹脂を後端ホッパーから押出機内
に投入し、第3バレルから変性用モノマーと有機過酸化
物の混合物を押出機内に注入し、これらを溶融混和して
変性樹脂を得た。このとき、押出機内で発生した揮発分
は真空ベントにより真空引きした。
【0135】ポリオレフィン系樹脂はポリプロピレンラ
ンダム共重合体(日本ポリケム社製「EX6」、MF
R;1.8、密度;0.9g/cm3 )であり、その
供給量は10kg/hとした。変性用モノマーはジビニ
ルベンゼンであり、その供給量はポリオレフィン系樹脂
100重量部に対して0.5重量部とした。また、有機
過酸化物は2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチル
パーオキシ)ヘキシン−3であり、その供給量はポリオ
レフィン系樹脂100重量部に対して、0.1重量部と
した。
【0136】ポリオレフィン系樹脂、変性用モノマーお
よび有機過酸化物の溶融混和によって得られた変性樹脂
を、ストランドダイから吐出し、水冷し、ペレタイザー
で切断して、変性樹脂のペレットを得た。
【0137】(2) 発泡性樹脂組成物の調製 発泡剤混練用スクリュー押出機はTEX−44型(日本
製鋼所社製)同方向回転2軸スクリュー押出機であり、
これはセルフワイピング2条スクリューを備え、そのL
/Dは45.5、Dは47mmである。シリンダーバレ
ルは押出機の上流から下流側へ第1〜12バレルからな
り、成形ダイは7穴ストランドダイである。温度設定区
分は下記の通りである。
【0138】第1バレルは常時冷却 第1ゾーン;第2〜4バレル 第2ゾーン;第5〜8バレル 第3ゾーン;第9〜12バレル 第4ゾーン;ダイおよびアダプター部
【0139】発泡剤を供給するために第6バレルにサイ
ドフィーダーが設置され、揮発分を回収するため第11
バレルに真空ベントが設置されている。操作条件は下記
の通りである。
【0140】
【0141】上述のようにして得られた変性樹脂と、ホ
モタイプのポリプロピレン(日本ポリケム社製「FY
4」、MFR;5.0、密度;0.9g/cm3
を、それぞれ10kg/hの供給量で、発泡剤混練用ス
クリュー押出機に供給した。また、同押出機にそのサイ
ドフィーダーから発泡剤を供給した。発泡剤はアゾジカ
ルボンミド(ADCA)であり、その供給量は1.0k
g/hとした。こうして変性樹脂と発泡剤の混練によっ
て発泡性樹脂組成物を得た。
【0142】(3) ポリオレフィン系樹脂発泡性シートの
調製 この発泡性樹脂組成物をTダイから押し出し、幅350
mm×厚み0.5mmのポリオレフィン系樹脂発泡性シ
ートを得た。
【0143】(4) 面材付き発泡性シートの調製 このポリオレフィン系樹脂発泡性シートの両面に、面材
としてポリエチレンテレフタレート製の不織布(東洋紡
績社製、「スパンボンド エクーレ 6301A」、秤
量30g/m2 )を積層し、プレス成形機を用いて温
度180℃でプレス成形を行い、面材付き発泡性シート
を得た。
【0144】(5) 発泡 得られた面材付き発泡性シートから縁部を取り除き、一
辺300mmの正方形サンプルを得た。このサンプルを
230℃のオーブン中、約5分間加熱し、発泡性シート
を発泡させ、厚み5mmのポリオレフィン系樹脂発泡体
シートを得た。 (6) 発泡体シートの評価 得られたポリオレフィン系樹脂発泡体シートを下記の項
目について評価した。 ・見かけ密度:JIS K 6767に基づき、見かけ
密度を測定した。
【0145】・発泡倍率:複合積層体より面材をカッタ
ーで削り取った後、JIS K−6767「ポリエチレ
ンフォーム試験方法」に準拠して、見かけ密度を測定
し、その逆数を発泡倍率とした。
【0146】・セル形状(平均アスペクト比):複合積
層体シートを厚み方向(z方向)にカットし、断面の中
央部を光学顕微鏡で観察しつつ15倍の拡大写真を撮っ
た。写真に写った全てのセルのDzとDxyをノギスで
測り、セル毎にDz/Dxyを算出し、セル100個分
のDz/Dxyの個数平均を算出し、平均アスペクト比
とした。ただし測定中、Dz(実際の径)が0.05m
m以下のセル、および10mm以上のセルは除外した。
【0147】・圧縮弾性率 JIS K 7203に基づき、試験速度1mm/mi
nで測定をし、圧縮弾性率を算出した。
【0148】・曲げ座屈歪み JIS K 7171に基づき、試験速度5mm/mi
n、スパン間180mmで測定をした。曲げ応力が急激
に下がり、サンプルが曲げ座屈を生じる点を曲げ座屈点
とし、そのときの歪みを曲げ座屈歪みとした。
【0149】・線膨張係数:サンプルに約150mm間
隔の標線を記入した後、サンプルを5℃の恒温槽中で1
時間放置し、標線間距離を測定した。次いで、サンプル
を80℃の恒温槽中で1時間放置した後、同様に標線間
距離を測定した。この操作を3回繰り返し、2回目と3
回目の5℃と80℃の各標線間距離の平均を求め、下記
の式により線膨張係数を計算した。
【0150】
【数1】
【0151】ii)ポリオレフィン系樹脂延伸シートの調
製 (1) 押出シートの調製 高密度ポリエチレン(商品名:HY540、三菱化学社
製、MFR=1.0、融点133℃、重量平均分子量3
0万)100重量部に対して、ベンゾフェノン(光重合
開始剤)1重量部を配合し、この配合物を30mm二軸
押出機にて樹脂温度200℃で溶融混練し、Tダイにて
シート状に押出し、冷却ロールにて冷却し(2) 圧延・架
橋 この未延伸シートを、表面温度100℃に設定された6
インチロール(小平製作所社製)を用いて圧延倍率6倍
にロール圧延し、その後、得られた圧延シートを繰り出
し速度2m/分のロールで繰り出し、雰囲気温度85℃
に設定された加熱炉を通して、引き取り速度8m/分の
ロールで引き取り、5倍にロール延伸し、巻き取った。
ついで、得られたシートに両面より高圧水銀灯を5秒間
照射して架橋処理を施した。最後に、得られたシートに
無張力下にて130℃で1分間の緩和処理を施した。
【0152】上記操作を経て得られた延伸シートは、幅
50mm、厚み0.20mmのサイズを有し、透明であ
った。このシートの総延伸倍率は約30倍であり、線膨
張係数は、−1.5×10-5であり、この延伸シートの
融点[DSC(示差走査熱量計)におけるピーク温度]
は135℃であり、引張弾性率は12GPaであった。
【0153】(3) 延伸シートの評価 ・引張弾性率:JIS K 7113の引張試験方法に
準じて、サンプルの引張物性を測定した。
【0154】・線膨張係数:上記と同じ方法により線膨
張係数を測定した。方向性のあるサンプルはMD方向
(延伸した方向と同一方向)とTD方向(MDと直交す
る方向)で評価した。
【0155】iii ) 複合積層体の製造 (1) 積層・熱融着 先に得られたポリオレフィン系樹脂発泡体シート(11)の
両面に、図5に示すように、低密度ポリエチレンフィル
ム(厚み30μm、三菱化学社製、UF230)(14)
を、さらにその上に上記ポリオレフィン系樹脂延伸シー
ト(15)をそれぞれ配し、3種5層の積層品を得た。ハン
ドプレス成形機において、温度125℃、圧力196k
Pa(2kgf/cm2 )にて2分間プレス成形を行
い、その後水冷プレス(圧力196kPa)で水冷を行
い、厚み5mmの複合積層体を得た。
【0156】(2) 複合積層体の評価 ・曲げ弾性率 JIS K 7171に基づき、試験速度5mm/mi
n、スパン間180mmで測定を行い、曲げ弾性率を算
出した。方向性のあるサンプルはMD方向とTD方向で
評価した。
【0157】・曲げ強度 JIS K 7171に基づき、試験速度5mm/mi
nで測定を行い、曲げ強度を算出した。この場合の曲げ
強度とは曲げ最大点応力のことである。方向性のあるサ
ンプルはMD方向とTD方向で評価した。
【0158】・線膨張係数:上記と同じ方法により線膨
張係数を測定した。方向性のあるサンプルはMD方向と
TD方向で評価した。
【0159】・吸水時寸法変化 JIS A 5905に準じて、厚み方向の膨張率を評
価した。
【0160】・形状保持性 上記曲げ弾性率試験において、曲げ撓み量が3mmであ
るときに、圧子の降下を止め、サンプルの外観を観察
し、以下の基準で評価を行った。
【0161】 ○:試験前の平坦な状態に戻らず、反ったままの状態 ×:試験前の平坦な状態に戻るか、構造体が座屈し、曲
げ降伏した状態
【0162】(実施例2、3)実施例1において、発泡
倍率、延伸倍率、積層形態を表1に示すように変化させ
たこと以外、実施例1と同様の操作を行って複合積層体
を得た。得られた製品の評価結果を表1に示す。
【0163】(実施例4) i)ポリオレフィン系樹脂発泡体シートの調製 発泡性樹脂組成物の調製工程(2) において、同組成物の
原料として以下のものを用いた。
【0164】高密度ポリエチレン(日本ポリケム社製、
「JY20」、密度;951kg/m3 、MFR;
9.0g/10分)50重量部 ポリプロピレン(日本ポリケム社製、「MH8」、密
度;900kg/m3、MFR;0.3g/10分)2
5重量部 シラン変性ポリプロピレン(三菱化学社製、「XPM8
00HM」、密度;912kg/m3 、MFR;11
g/10分)25重量部 シラン架橋触媒(ジブチル錫ジラウレートのマスターバ
ッチ:三菱化学社製、「PZ−10S」)1.5重量部 熱分解型発泡剤(ADCA)4重量部
【0165】上記5種の原料からなる混合物を、実施例
1と同様にして混練した後、図6に示す発泡剤混練用ス
クリュー押出機(10)のダイ(12)のリップ開度を2mmに
設定して、得られた混練物を穴空きロール(13)と穴なし
ロール(16)との間に通し、図7に示すように、シート基
板(23)の片面に円柱状の凸部(22)を多数有する発泡性樹
脂組成物シート(21)を得た。
【0166】発泡性樹脂組成物シート(21)の発泡を行う
前に、同シート(21)を95℃の熱湯に10時間浸漬し、
水架橋を行い、その後、実施例1の発泡工程(5) と同様
にして水架橋発泡性樹脂組成物シートを過熱発泡させ、
図8に示すように、高密度発泡部(24)と低密度発泡部(2
5)とからなるハニカム構造発泡体シート(26)を得た。
【0167】その他の点については実施例1と同様の操
作を行って複合積層体を得た。得られた製品の評価結果
を表1に示す。
【0168】(実施例5)実施例1において、発泡時間
を10分としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行
った。
【0169】(比較例1)実施例1においてポリオレフ
ィン系樹脂発泡体シートを使用せずに、ポリプロピレン
発泡体シート(積水化学工業社製「ソフトロンSP#1
005」、発泡倍率10cc/g、厚み5mm)を使用
すること以外は、実施例1と同様の操作を行い、複合積
層体を得た。得られた製品の評価結果を表1に示す。
【0170】なお、圧縮試験において、顕著な弾性領域
を確認できなかったので、ゼロ点に近い非常に初期の傾
きを圧縮弾性率とした。
【0171】また、曲げ座屈歪みについても、サンプル
が柔らかくて曲げ測定が困難であるため、省略した。
【0172】(比較例2、3)実施例1において表1に
示すような変形を行った以外、実施例1と同様の操作を
行い、本発明の範囲に属しない物性を有する複合積層体
を得た。得られた製品の評価結果を表1に示す。
【0173】(比較例4)市販のMDF中密度木質繊維
板MDF(ノダ社製「ハイベストウッドL」)につい
て、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に
示す。
【表1】
【0174】
【発明の効果】本発明によれば、環境に優しく、柔軟性
のあるポリオレフィン系樹脂素材のみを用いて、軽く
て、高い剛性を有し、腐食せず、温度、湿度の変化に対
し寸法変化せず、リサイクル可能であるポリオレフィン
系樹脂複合積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a) は発泡体シートを示す斜視図であり、
図1(b) は図1(a) 中のA部の拡大図である。
【図2】図2は延伸シートの引張歪みと引張応力の関係
のグラフである。
【図3】図3は発泡体シートの曲げ座屈歪みと曲げ応力
の関係のグラフである。
【図4】図4は複合積層体の曲げ降伏歪みと曲げ応力の
関係のグラフである。
【図5】図5は3種5層の積層品を示す分解斜視図であ
る。
【図6】図6は実施例4で用いる発泡剤混練用スクリュ
ー押出機を示す概略側面図である。
【図7】図7(a) は実施例4で得られる発泡性樹脂組成
物シートを示す側面図であり、図7(b) は同シートの平
面図である。
【図8】図8は実施例4で得られるハニカム構造発泡体
シートを示す斜視図である。
【符号の説明】
(1) :発泡体シート (2) :断面 (3) :セル (10):発泡剤混練用スクリュー押出機 (11):ポリオレフィン系樹脂発泡体シート (12):ダイ (13):穴空きロール (14):低密度ポリエチレンフィルム (15):ポリオレフィン系樹脂延伸シート (16):穴なしロール (21):発泡性樹脂組成物シート (22):凸部 (23):シート基板 (24):高密度発泡部 (25):低密度発泡部 (26):ハニカム構造発泡体シート
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B29L 9:00 B29L 9:00 (72)発明者 中村 雅則 茨城県つくば市和台32 積水化学工業株式 会社内 Fターム(参考) 4F100 AK03A AK03B AK05 AK06 AK07 AK07J AK42 AL01 AL06A AR00C BA02 BA03 BA05 BA06 BA07 BA10B BA10C BA13 DG15 DJ01A EJ37B GB08 GB33 GB90 JA13A JB02 JK01C JK07A JK07B JK13 JK20A JL00 JL03 JL04 JL16 YY00A YY00B 4F210 AA03 AG01 AG03 QA04 QG01 QG18 QW12 QW34

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 密度が40〜300kg/m3 であ
    り、圧縮弾性率が5MPa以上であるポリオレフィン系
    樹脂構造体シートの少なくとも片面に、一方向の引張弾
    性率が5GPa以上であるポリオレフィン系樹脂シート
    が積層されてなるポリオレフィン系樹脂複合積層体。
  2. 【請求項2】 内在するセルのアスペクト比Dz/Dx
    yの平均値が1.1〜4.0であり、発泡倍率が3〜2
    0倍であり、圧縮弾性率が5MPa以上であるポリオレ
    フィン系樹脂発泡体シートの少なくとも片面に、一方向
    の引張弾性率が5GPa以上であるポリオレフィン系樹
    脂シートが積層されてなるポリオレフィン系樹脂複合積
    層体。
  3. 【請求項3】 内在するセルのアスペクト比Dz/Dx
    yの平均値が1.1〜4.0であり、発泡倍率が3〜2
    0倍であり、圧縮弾性率が5MPa以上であるポリオレ
    フィン系樹脂発泡体シートの少なくとも片面に、一方向
    に10倍以上に延伸された引張弾性率が5GPa以上で
    あるポリオレフィン系樹脂延伸シートが積層されてなる
    ポリオレフィン系樹脂複合積層体。
  4. 【請求項4】 ポリオレフィン系樹脂と変性用モノマー
    とを反応させて同樹脂を変性し、得られた変性樹脂に熱
    分解型化学発泡剤を加えて混練し、得られた発泡性樹脂
    組成物をシート状に賦形し、得られた発泡性シートの少
    なくとも片面に、同シートを加熱発泡させる際の面内方
    向への発泡を抑制しうる強度を有する面材を積層した
    後、発泡性シートを加熱発泡して得られる、発泡倍率が
    3〜20倍であり、圧縮弾性率が5MPa以上であるポ
    リオレフィン系樹脂発泡体シートの少なくとも片面に、
    一方向に10倍以上に延伸された引張弾性率が5GPa
    以上であるポリオレフィン系樹脂延伸シートが積層され
    てなるポリオレフィン系樹脂複合積層体。
  5. 【請求項5】 密度が40〜300kg/m3 であ
    り、曲げ座屈歪みが2%以上であり、圧縮弾性率が5M
    Pa以上であるポリオレフィン系樹脂構造体シートの少
    なくとも片面に、一方向に10倍以上延伸された引張弾
    性率が5GPa以上であるポリオレフィン系樹脂延伸シ
    ートが積層されてなるポリオレフィン系樹脂複合積層
    体。
  6. 【請求項6】 内在するセルのアスペクト比Dz/Dx
    yの平均値が1.1〜4.0であり、発泡倍率が3〜2
    0倍であり、曲げ座屈歪みが2%以上であり、圧縮弾性
    率が5MPa以上であるポリオレフィン系樹脂発泡体シ
    ートの少なくとも片面に、一方向に10倍以上に延伸さ
    れた引張弾性率が5GPa以上であるポリオレフィン系
    樹脂延伸シートが積層されてなるポリオレフィン系樹脂
    複合積層体。
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