JP2001049064A - 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品

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JP2001049064A JP2000154651A JP2000154651A JP2001049064A JP 2001049064 A JP2001049064 A JP 2001049064A JP 2000154651 A JP2000154651 A JP 2000154651A JP 2000154651 A JP2000154651 A JP 2000154651A JP 2001049064 A JP2001049064 A JP 2001049064A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ハロゲン系有機化合物を用いることなくスチ
レン系樹脂に高度な難燃性を付与させ、かつ機械的物
性、耐衝撃性および成形加工性に優れた難燃性樹脂組成
物およびそれからなる成形品を提供する。 【解決手段】 スチレン系樹脂(A)100重量部、燐
酸エステル系化合物(B)1〜30重量部、特定の構造
を含有した亜燐酸エステル系化合物(C)0.1〜10
重量部からなる難燃性樹脂組成物およびそれからなる成
形品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スチレン系樹脂組
成物およびそれからなる成形品に関し、さらに詳しく
は、ハロゲン系有機化合物を用いることなく高度な難燃
性を有すると同時に、機械的特性、耐衝撃性および成形
加工性に優れた難燃性スチレン系樹脂組成物およびそれ
からなる成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ゴム強化スチレン系樹脂などに代表され
るスチレン系樹脂は、優れた機械的性質、成形加工性お
よび電気絶縁性などを有することから、家庭電気機器、
OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な
分野で使用されている。
【0003】しかしながら、スチレン系樹脂は本来易燃
性であるため、安全性の観点から、種々の難燃化技術が
従来から提案されてきた。
【0004】そして、スチレン系樹脂の難燃化技術とし
ては、一般的には、難燃化効率の高い臭素化合物などの
ハロゲン系難燃剤と酸化アンチモンを樹脂に配合して難
燃化する方法が採用されているが、この方法により得ら
れる難燃性樹脂組成物は、燃焼の際に発煙量が多いなど
の問題点を有していた。
【0005】そこで、近年これらのハロゲン系難燃剤の
欠点を克服するために、ハロゲンを全く含まない難燃性
樹脂が強く望まれるようになった。
【0006】非ハロゲン系難燃剤として、燐系難燃剤が
あり、代表的なものとして燐酸エステルが従来からよく
使用されている。例えばスチレン系樹脂にポリホスフェ
ートを添加する方法(特開昭59−24736)、ゴム
強化スチレンに特定構造を有する燐酸エステルを添加す
る方法(特開平11−140270)、スチレン系樹脂
に液状燐酸エステルを添加する方法(特開平11−58
69)などがすでに開示されている。
【0007】しかしながら、スチレン系樹脂は極めて燃
えやすい樹脂であるため、燐酸エステルでは難燃化効果
が極めて低く、上記特開昭59−24736、特開平1
1−140270、特開平11−5869記載の方法で
得られる組成物においては、スチレン系樹脂に難燃性を
付与するためには、燐酸エステルを多量に配合しなけれ
ばならず、そのため機械特性が低下するばかりか、燐酸
エステルがブリードアウトしたり、成形時に金型汚染が
発生するといった問題点や成形時にガスが発生するとい
う問題点を有していた。
【0008】上記問題点を解決する方法として、ヒドロ
キシル基含有燐酸エステルを使用する方法が、特基平5
−247315に開示されている。
【0009】しかしながら、ヒドロキシル基含有燐酸エ
ステルもまた、難燃化効果が極めて低く、上記問題点を
解決することは困難であった。
【0010】燐酸エステルでは難燃化効果が低いため、
難燃性を向上させるために、我々は燐酸エステルに、さ
らに難燃助剤としてメラミンシアヌール酸塩を用いるこ
とで、難燃性が向上することを見いだしたが、スチレン
系樹脂本来の機械的特性、耐衝撃性および成形加工性が
損なわれるという問題点を解決することができなかっ
た。
【0011】またさらに難燃性を向上させるために、ヒ
ドロキシル基含有燐酸エステルに炭化層形成ポリマーと
して、ノボラックフェノール樹脂、さらにトリアジン骨
格を含有する化合物を添加する方法が特開平7−704
48に開示されている。
【0012】本技術もまた、スチレン系樹脂本来の機械
的特性、耐衝撃性および成形加工性が損なわれるという
問題点を解決できるものではなかった。さらにフェノー
ル樹脂は耐光性に極めて劣る材料であるため、得られる
樹脂組成物の耐光性が低下するという問題点も有してい
た。
【0013】また非ハロゲン難燃剤として、難燃化効果
の高い赤燐を使用し、難燃助剤として炭化層形成能を有
するフェノール樹脂を添加する方法が特開平6−157
866に開示されている。
【0014】本技術により難燃性は付与できるものの、
スチレン系樹脂本来の機械特性、耐衝撃性および成形加
工性が損なわれる。さらに赤燐により成形品が赤燐色に
着色するという問題点を有していた。
【0015】一方、燐酸エステルと類似構造を有する亜
燐酸エステルを用いた技術として、スチレン系樹脂にハ
ロゲン系難燃剤と亜燐酸エステルを添加し、熱安定性を
向上させる方法(特開昭49−80159)、黄変しや
すいアクリロニトリル含量の高いABSに亜燐酸エステ
ルを添加し、着色性を防止させる方法(特開昭54−9
4548)、変性PPEとスチレン系アロイに分子量が
1500以上の亜燐酸エステルを添加し、着色性を防止
させる方法(特開昭58−174439)、スチレン系
樹脂に特定のハロゲン含有化合物と亜燐酸エステルを添
加し、熱安定性を向上させる方法(特開平4−8805
0)などがすでに提案されている。しかしながら、これ
らの技術は、熱安定性の向上や着色防止を目的とした技
術であり、難燃性を付与することを目的とした技術では
ない。
【0016】我々はスチレン系樹脂に亜燐酸エステルを
難燃剤として使用したところ、樹脂組成物の着色防止性
や熱安定性は確かに向上するものの、燃えやすいスチレ
ン系樹脂に配合することで、むしろ難燃性は低下し、多
量に配合しても難燃性を付与することは困難であった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる問題点
を解決し、高度な難燃性を有すると同時に、機械的特
性、耐衝撃性および成形加工性に優れた難燃性樹脂組成
物の提供を目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意検討した結果、スチレン系樹脂に対
し、難燃剤として特定の燐酸エステル系化合物と特定の
亜燐酸エステル系化合物を特定割合で配合することによ
り、高度な難燃性を有すると同時に、機械的強度、耐衝
撃性および成形加工性に優れた難燃性樹脂組成物が得ら
れることを見出し、本発明に到達した。
【0019】すなわち、本発明の難燃性樹脂組成物は、
スチレン系樹脂(A)100重量部、下記一般式(1)
で表される燐酸エステル系化合物(B)の1種または2
種以上1〜30重量部、および下記一般式(2)で表さ
れる構造を有し、かつ分子中に連続した炭素数が9以上
の長鎖アルキル基を含有する亜燐酸エステル(C)の1
種または2種以上0.1〜10重量部からなることを特
徴とする。
【0020】
【化6】
【0021】
【化7】 (上記式中、R1 〜R8 は、水素原子または炭素数1〜
5のアルキル基を表し、相互に同一または相異なってい
てもよい。Y1 は直接結合、O、S、SO2 、C(CH
3 2 、CH2 またはCHPhのいずれかを表し、Ph
はフェニル基を表す。Ar1 〜Ar4 はフェニル基ある
いはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニ
ル基のいずれかを表し、相互に同一または相異なってい
てもよい。また、nは0以上の整数、k、mはそれぞれ
0以上2以下で、かつk+mが0以上2以下となる整数
である。) また、本発明の成形品は、上記の難燃性樹脂組成物から
なることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の難燃性樹脂組成物
およびそれからなる成形品について具体的に説明する。
【0023】本発明で使用するスチレン系樹脂(A)と
は、芳香族ビニル系単量体を主たる構成成分として含む
重合体である。この芳香族ビニル系単量体としてはスチ
レンをはじめ、α−メチルスチレン、p−メチルスチレ
ン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレンおよびo−エ
チルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンやα−
メチルスチレンが好ましく用いられる。これらは1種ま
たは2種以上を併用しても良い。
【0024】また、スチレン系樹脂に耐薬品性、耐熱性
などの特性を付与する目的で、芳香族ビニル系単量体と
共重合可能な他のビニル系単量体を共重合しても良い。
これらのビニル系単量体としては、アクリロニトリル、
メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリル、(メ
タ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)
アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、
(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t
−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)
アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリル
グリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテ
ル、p−グリシジルスチレン(メタ)アクリル酸2−ヒ
ドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプ
ロピル、(メタ)メタクリル酸3−ヒドロキシプロピ
ル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒ
ドロキシヘキシル、(メタ)メタクリル酸2,3,4,
5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,
3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、マレイン酸、
無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタ
コン酸、無水イタコン酸、フタル酸、N−メチルマレイ
ミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレ
イミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メ
タクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシ
メチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミ
ド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミ
ノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタク
リル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルア
ミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチ
ル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルア
ミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルア
リルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル
−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アク
ロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリ
ンなどが挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましく用
いられる。
【0025】スチレン系樹脂(A)は、その主たる構成
成分である芳香族ビニル系単量体の共重合割合が、樹脂
組成物の成形加工性、耐薬品性などの諸物性バランスの
観点から、50〜99重量%、好ましくは60〜90重
量%であることが望ましい。共重合成分としてシアン化
ビニル系単量体を用いる場合は、この共重合成分の共重
合割合が1〜50重量%、好ましくは10〜40重量%
であることが望ましい。また、これらと共重合可能な他
のビニル系単量体の共重合割合は、50重量%以下の範
囲とすることが可能である。
【0026】スチレン系樹脂(A)の特性には特に制限
はないが、メチルエチルケトン溶媒で30℃で測定した
極限粘度が0.3〜0.7dl/g、好ましくは0.4
〜0.6dl/g、またN,N−ジメチルホルムアミド
溶媒で30℃測定した極限粘度が0.3〜0.8dl/
g、好ましくは0.4〜0.7dl/gであることが、
優れた耐衝撃性、成形加工性を有する樹脂組成物が得ら
れることから好適である。
【0027】スチレン系樹脂(A)の製造方法には特に
制限はなく、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊
状−懸濁重合法および溶液−塊状重合法など通常の方法
を用いることができる。
【0028】さらに、スチレン系樹脂の耐衝撃性などの
特性を飛躍的に向上させることを目的とする場合には、
芳香族ビニル系重合体よりなるマトリックス中にゴム質
重合体が分散したゴム変性スチレン系樹脂とすることが
好ましい。
【0029】上記ゴム質重合体としては、ポリブタジエ
ン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル
−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロッ
ク共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体な
どのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリ
ル系ゴム、ポリイソプレンおよびエチレン−プロピレン
−ジエン系三元共重合体などが挙げられるが、なかでも
ポリブタジエンまたはブタジエン共重合体が好ましく用
いられる。
【0030】ゴム質重合体のゴム粒子径は特に制限され
ないが、ゴム粒子の重量平均粒子径が0.15〜0.6
μm、特に0.2〜0.55μmのものが耐衝撃性の観
点から好ましい。なお、ゴム粒子の平均重量粒子径は
「Rubber Age、Vol.88、p.484〜
490、(1960)、by E.Schmidt,
P.H.Biddison」記載のアルギン酸ナトリウ
ム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリー
ム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用し
て、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃
度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求
める方法により測定することができる。
【0031】ここで、ゴム質重合体とマトリックスであ
るスチレン系樹脂とは非相容であるため、ゴム質重合体
にマトリックスと相溶する成分をグラフトさせる場合に
は、耐衝撃性をより一層向上させることができる。すな
わち、ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル系単量体ま
たは単量体混合物をグラフト重合したグラフト重合体を
用いることが好ましい。グラフト重合に用いる単量体と
しては、上記のマトリックスである芳香族ビニル系重合
体と同様の成分を同様の割合で使用することが好まし
く、組成、グラフト量については特に制限はないが、ゴ
ム質重合体の分散性を損なわないような組成とグラフト
量に調整することが好ましい。
【0032】具体的には、ゴム質重合体に芳香族ビニル
系単量体を含有する単量体または単量体混合物をグラフ
ト重合して得られるグラフト重合体(a)と、芳香族ビ
ニル系単量体を含有する単量体または単量体混合物を重
合して得られるスチレン系重合体(b)とを溶融混練し
てゴム強化スチレン系樹脂を製造する方法が、工業的、
経済的に好適に用いられる。
【0033】グラフト重合体(a)を得る際のゴム質重
合体と単量体または単量体混合物との割合は、ゴム質重
合体10〜80重量%、好ましくは20〜70重量%で
あることが望ましい。ゴム質重合体の割合が10重量%
未満では、樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、80重量%
を越える場合は、樹脂組成物の耐衝撃性および成形品の
外観が損なわれる場合がある。
【0034】上記グラフト重合体(a)は、乳化重合や
塊状重合などの公知の重合法により得ることができる。
なかでも、ゴム質重合体ラテックスの存在下に、単量体
または単量体混合物、ラジカル発生剤および連鎖移動剤
の混合物を、連続的に重合容器に供給して乳化重合する
方法などが操業上好適である。
【0035】また、グラフト重合体(a)を製造する工
程において、単量体または単量体混合物がグラフト成分
として重合する一方で、グラフトしない重合体も同時に
生成する。ここで、グラフトしない重合体の特性につい
ては特に制限はないが、メチルエチルケトン可溶分を3
0℃で測定した極限粘度が0.20〜0.60dl/
g、またN,N−ジメチルホルムアミド溶媒で30℃で
測定した極限粘度が0.25〜0.75dl/gの範囲
であることが、優れた耐衝撃性と表面外観を有する樹脂
組成物が得られる点で望ましい。
【0036】なお、スチレン系重合体(b)について
は、上記のスチレン系樹脂(A)と同様の方法で製造す
ることができる。
【0037】ここで、本発明で使用されるゴム強化スチ
レン系樹脂は、ゴム質重合体の含有量を10重量%以上
となるように、グラフト重合体(a)とスチレン系重合
体(b)を溶融混練することにより得られたものである
場合に、耐衝撃性を十分に高めることができて好適であ
る。
【0038】このようなゴム変性スチレン系樹脂の具体
例としては、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂、透明
ABS樹脂、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリル
ゴム−スチレン共重合体)およびAES樹脂(アクリロ
ニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合
体)などが挙げられる。
【0039】なお、スチレン系樹脂(A)は上記の方法
で得た1種または2種以上を併用しても良い。
【0040】本発明で難燃剤として使用される燐酸エス
テル系化合物(B)は、上記式(1)で表されるもので
ある。
【0041】まず、上記式(1)で表される燐酸エステ
ル系化合物の構造について説明する。上記式(1)の式
中nは0以上の整数、k、mは、それぞれ0以上2以下
で、かつk+mが0以上2以下となる整数であるが、好
ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好
ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0042】また上記式(1)において、R1 〜R8
水素または炭素数1〜5のアルキル基のいずれかを表
し、相互に同一または相異なっていても良い。ここで、
炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル
基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−
ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n
−イソプロピル基、ネオペンチル基、tert−ペンチ
ル基、2ーイソプロピル基、3−イソプロピル基および
ネオイソプロピル基などが挙げられるが、特に、水素、
メチル基およびエチル基が好ましく、とりわけ水素が好
ましい。
【0043】また、Y1 は直接結合、O、S、SO2
C(CH3 2 、CH2 、CHPhのいずれかを表し、
Phはフェニル基を表す。
【0044】さらに、Ar1 〜Ar4 はフェニル基ある
いはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニ
ル基のいずれかを表し、相互に同一または相異なってい
ても良い。具体例としては、フェニル基、トリル基、キ
シリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、イン
デニル基およびアントリル基などが挙げられるが、フェ
ニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基およびナフ
チル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基およびキ
シリル基が好ましい。
【0045】上記式(1)で表される燐酸エステル系化
合物(B)の使用量は、スチレン系樹脂(A)100重
量部に対して、1〜30重量部であり、好ましくは2〜
25重量部、さらに好ましくは3〜20重量部、特に好
ましくは5〜15重量部である。
【0046】燐酸エステル系化合物(B)が1重量部未
満では十分な難燃性が得られず、また30重量部を超え
ると、スチレン系樹脂(A)との溶融混練ができなくな
る場合があり、さらには成形品の機械的特性や耐熱性が
大いに損なわれる場合もあるため好ましくない。
【0047】なお、上記式(1)で表される燐酸エステ
ル系化合物(B)は、1種または2種以上を併用しても
良い。
【0048】本発明でもう一方の難燃剤として使用され
る亜燐酸エステル系化合物(C)は、上記一般式(2)
で表される構造を有するものであり、かつその分子内に
連続した炭素数9以上の長鎖アルキル基を含有するもの
である。
【0049】このような亜燐酸エステル系化合物(C)
の中でも、特に下記一般式(3)または(4)で表され
る亜燐酸エステル系化合物が、難燃性、耐衝撃性および
成形加工性の面から好ましく、さらに下記一般式(4)
で表される亜燐酸エステル系化合物特に好ましい。
【0050】
【化8】
【0051】
【化9】 上記式(3)または(4)で表される亜燐酸エステル系
化合物について説明する。
【0052】上記式(3)の式中のuは0以上の整数で
ある。またs、tは、それぞれ0以上2以下で、かつs
+tが0以上2以下となる整数である。
【0053】また、上記式(3)の式中、R9 〜R16
水素または炭素数1〜5のアルキル基のいずれかを表
し、相互に同一または相異なっていても良い。ここで、
炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル
基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−
ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n
−イソプロピル基、tert−ペンチル基、2ーイソプ
ロピル基、ネオペンチル基および3−イソプロピル基な
どが挙げられる。
【0054】Y2 は直接結合、O、S、SO2 、C(C
3 2 、CH2 、CHPhのいずれかを表し、Phは
フェニル基を表す。
【0055】ここで、Ar5 〜Ar8 およびAr9 〜A
10は、アルキル基、フェニル基あるいはハロゲンを含
有しない有機残基で置換されたアルキル基、フェニル基
のいずれかを表し、相互に同一または相異なっていても
良いが、Ar5 〜Ar8 から選択される少なくとも1
種、好ましくは1種以上、およびAr9 〜Ar10から選
択される少なくとも1種、好ましくは1種以上は、長鎖
アルキル基、あるいはハロゲンを含有しない有機残基で
置換された長鎖アルキル基を含有するものである。この
場合の長鎖アルキル基、置換された長鎖アルキル基の連
続した炭素数は、9以上、好ましくは13以上、さらに
好ましくは18以上である。このような長鎖アルキル
基、置換された長鎖アルキル基を含有しない場合は、本
発明の難燃性、耐衝撃性および成形加工性が得られない
ばかりか、逆に難燃性を低下させる場合があるため好ま
しくない。
【0056】Ar5 〜Ar8 およびAr9 〜Ar10の具
体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、
イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t
ert−ブチル基、n−イソプロピル基、ネオペンチル
基、tert−ペンチル基、2−イソプロピル基、3−
イソプロピル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ト
リデシル基、オクタデシル基、2−メチルオクチル基、
2,2−ジメチルオクチル基、4−メチル−5−エチル
オクチル基、2−ノニル−2−ブテニル基、フェニル
基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、
2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、2,6−ジ
−tert−ブチルフェニル基、ナフチル基、インデニ
ル基、アントリル基、ノニルフェニル基、トリデシルフ
ェニル基、オクタデシルフェニル基および2−ノニル−
2−ブテニルフェニル基などが挙げられるが、Ar5
Ar8 から選択される少なくとも1種およびAr9 〜A
10から選択される少なくとも1種は、オクチル基、ノ
ニル基、デシル基、トリデシル基、オクタデシル基、2
−メチルオクチル基、2,2−ジメチルオクチル基、4
−メチル−5−エチルオクチル基、2−ノニル−2−ブ
テニル基、ノニルフェニル基、トリデシルフェニル基お
よびオクタデシルフェニル基などの長鎖アルキル基、置
換された長鎖アルキル基を含有するものである。特に、
トリデシル基、オクタデシル基、ノニルフェニル基、ト
リデシルフェニル基およびオクタデシルフェニル基が好
ましい。
【0057】上記式(2)で表される構造を有する亜燐
酸エステル系化合物(C)の使用量は、スチレン系樹脂
(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部であ
り、好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは
0.5〜3重量部である。
【0058】亜燐酸エステル系化合物(C)の使用量が
0.1重量部未満では、十分な難燃性、耐衝撃性および
成形加工性の向上が認められず、また10重量部を超え
ると、難燃性が逆に低下する場合があるため好ましくな
い。
【0059】なお、上記の亜燐酸エステル系化合物
(C)は1種または2種以上を併用しても良い。
【0060】また、本発明においては、難燃性および耐
衝撃性をさらに高める目的で、シリコーンゴムおよび/
またはシリコーン樹脂(D)を用いることが好ましい。
ここで、シリコーンゴムおよび/またはシリコーン樹脂
(D)とは、下記一般式(5)〜(8)で表される単位
およびこれらの混合物から選ばれる化学的に結合された
シロキサン単位(ここで、R17〜R22はそれぞれ飽和ま
たは不飽和一価炭化水素基、水素原子、ヒドロキシル
基、アルコキシル基、アリール基、ビニルまたはアリル
基から選ばれた基を表し、相互に同一または異なってい
てもよい。)からなるポリオルガノシロキサン樹脂状重
合体または共重合体である。
【0061】
【化10】 またこのようなポリオルガノシロキサン樹脂状重合体ま
たは共重合体は、さらに分子中あるいは分子末端に反応
性の官能基として、エポキシ基、アクリロキシ基、メタ
クリロキシ基、ビニル基、フェニル基およびN−β−
(N−ビニルベンジルアミノ)エチル−γ−アミノアル
キルヒドロクロリド基を含有したものを使用することが
できる。
【0062】また、上記シリコーンゴムおよび/または
シリコーン樹脂(D)としては、さらにシリカ充填剤を
配合したものを使用することもできる。シリコーンゴム
とシリカ充填剤の混合方法としては、通常公知の方法を
適用することができ、さらにシリコーンゴムとシリカ充
填剤からなる組成物には、アルコキシシランカップリン
グ剤を配合することもできる。
【0063】このようなシランカップリング剤として
は、分子中に炭素原子が1〜4のアルコキシ基を少なく
とも一つ、さらにエポキシ基、アクリロキシ基、メタク
リロキシ基、ビニル基、フェニル基、N−β−(N−ビ
ニルベンジルアミノ)エチル−γ−アミノアルキルヒド
ロクロリド基およびヒドロキシル基などのいずれかを含
有したシランカップリング剤を使用することができる
が、なかでもエポキシ基、アクリロキシ基およびメタク
リロキシ基のいずれかを含有したシランカップリング剤
を好ましく使用することができる。
【0064】上記シリコーンゴムおよび/またはシリコ
ーン樹脂(D)の添加量は、スチレン系樹脂100重量
部に対して0.1〜3重量部、好ましくは0.3〜2重
量部、さらに好ましくは0.5〜1重量部であり、上記
の範囲で使用することによりさらに難燃性を高めること
ができる。
【0065】なお、上記のシリコーンゴムおよび/また
はシリコーン樹脂(D)は、1種または2種以上を併用
しても良い。
【0066】さらに、本発明においてはフェノール系酸
化防止剤(E)を使用することが好ましい。これは、亜
燐酸エステル系化合物(C)との相乗効果により、一層
高い難燃性を維持することができるからである。
【0067】ここで、フェノール系の酸化防止剤(E)
は、特に限定されるものではなく、公知のものを必要に
応じて任意に1種あるいは2種以上使用することができ
る。
【0068】フェノール系酸化防止剤(E)の使用量
は、スチレン系樹脂(A)100重量部に対して0.1
〜3重量部、好ましくは0.2〜1重量部、さらに好ま
しくは0.3〜0.5重量部である。
【0069】本発明の難燃性樹脂組成物は、さらに必要
に応じて、ガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスビー
ズ、ガラスフレーク、アルミナ、アルミナ繊維、炭素繊
維、黒鉛繊維、ステンレス繊維、ウィスカ、チタン酸カ
リ繊維、ワラステナイト、アスベスト、ハードクレー、
焼成クレー、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウ
ム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウムおよび鉱物な
どの無機充填材や、ヒンダードフェノール系、ベンゾト
リアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系およ
びシアノアクリレート系の紫外線吸収剤滑剤、高級脂肪
酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコ
ールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその
塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルア
ルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの
離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、
核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの
帯電防止剤、カーボンブラックや顔料などの着色剤など
の通常の添加剤を1種以上含有することができる。
【0070】本発明の難燃性樹脂組成物は通常公知の方
法で製造される。例えば、スチレン系樹脂(A)、燐酸
エステル系化合物(B)、亜燐酸エステル系化合物
(C)およびその他の添加剤を予備混合、または個別に
押出機などに供給して、150℃〜300℃の温度範囲
において十分溶融混練することにより調製される。この
場合例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた
単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混
練機などを用いることができ、特にアスペクト比をコン
トロールするために、スクリューにニーディングエレメ
ントを数個挿入あるいは未挿入して使用することが好ま
しい。
【0071】本発明の難燃性樹脂組成物は、難燃性だけ
ではなく、機械的特性、耐衝撃性、さらに成形加工性に
も優れ、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成
形、プレス成形などが可能であり、フィルム、管、ロッ
ドや希望する任意の形状と大きさを持った成形品に成形
し使用することができる。
【0072】そして、本発明の難燃性樹脂組成物からな
る成形品は、その優れた難燃性を活かして、電気・電子
部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器
などのハウジングおよびそれらの部品類など種々の用途
に用いることができる。
【0073】本発明の難燃性樹脂組成物からなる成形品
の具体的用途としては、例えば、各種ギヤー、各種ケー
ス、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、
抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コン
デンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、
各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チュー
ナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小
型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハ
ウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシ
ャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテ
ナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電
子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアード
ライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オ
ーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクト
ディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、
エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサ
ー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフ
ィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファク
シミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイル
レス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モー
ター部品、ライター、タイプライターなどに代表される
機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代
表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーター
ターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレ
ーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・
排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルス
ノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エン
ジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、
キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水セ
ンサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサ
ー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフト
ポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン
用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロール
バルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、
ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパ
ーモーター関係部品、デュストリビュター、スターター
スィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワ
イヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコ
ンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒ
ューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁
板、ステップモーターローター、ランプソケット、ラン
プリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピスト
ン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点
火装置ケースなどが挙げられ、これら各種の用途にとっ
て極めて有用である。
【0074】
【実施例】以下、実施例により本発明の構成・効果をさ
らに詳細に説明する。ここで、部数はすべて重量部数を
表す。
【0075】また、各特性の測定方法は以下の通りであ
る。 (1)難燃性 東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温
度230℃、金型温度60℃の条件で射出成形すること
により得られた難燃性評価用試験片について、UL94
に定められている評価基準に従い難燃性を評価した。難
燃性レベルはV−0>V−1>V−2>HBの順に低下
する。また、V−2以上の評価の場合は、5本のサンプ
ルの燃焼時間の合計を難燃性の指標とした。さらに、V
−2の評価であっても第一組(5本)の試験片のうち、
1本クランプまで燃焼する試験片があるものを*マーク
で示した。この場合、燃焼時間の合計は過剰に大きくな
るため記載しなかった。 (2)限界酸素指数(LOI) 限界酸素指数法:JIS K7201に従い、限界酸素
指数(LOI)を測定した。LOI値が高い程、難燃性
に優れることを示す。LOIが22以上のものを自己消
火性を有すると判断する。 (3)機械的物性 東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温
度230℃、金型温度60℃の条件で射出成形すること
により得られた1/4インチ厚みの試験片について、A
STM D−790に従い曲げ弾性率と曲げ応力を測定
した。 (4)衝撃特性 東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温
度230℃、金型温度60℃の条件で射出成形すること
により得られた1/4インチ厚みの試験片(ノッチ付)
について、ASTM D−256に従ってアイゾッド衝
撃強度を測定した。 (4)流動性 得られた樹脂ペレットを、70℃下で3時間乾燥し、I
SO−R1133に従い、200℃、5kgの条件でM
FRを測定した。この値が大きいほど、高い流動性を示
し、成形加工性が優れる。 [参考例1」本発明に用いたスチレン系樹脂(A−1)
〜(A−3)は以下の通りである。
【0076】・グラフト共重合体(a) 以下にグラフト共重合体の調製方法を示す。なおグラフ
ト率は以下の方法で求めたものである。
【0077】グラフト共重合体の所定量(m)にアセト
ンを加え4時間還流した。この溶液を8000rpm
(遠心力10,000G(約100×103 m/
2 ))30分遠心分離後、不溶分を濾過した。この不
溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定
し、グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×
L]×100の計算式で算出した。なお、ここでLはグ
ラフト共重合体のゴム含有率を意味する。
【0078】ポリブタジエンラテックス(平均ゴム粒子
径0.3μm、ゲル含率85%)50部(固形分換算)
の存在下で、スチレン70%、アクリロニトリル30%
からなる単量体混合物40部を加えて乳化重合し、フェ
ノール系酸化防止剤を固形分100重量部に対し1重量
部添加して重合を終了した。得られたグラフト共重合体
を硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和、洗浄、濾過、乾燥
してパウダー状のグラフト共重合体(a)を調製した。
得られたグラフト共重合体のグラフト率は42%であっ
た。
【0079】・スチレン系樹脂(b) 撹拌装置を備えた重合槽内でスチレン70重量部、アク
リロニトリル30重量部からなる単量体を懸濁重合し、
スチレン系樹脂(b)を調製した。得られたビーズ状樹
脂を十分乾燥した後、メチルエチルケトンに溶解し、3
0℃の恒温槽内で極限粘度の測定を行った結果、0.4
5dl/gであった。
【0080】・A−1:上記で調製したスチレン系樹脂
(b)を単独で使用した。
【0081】・A−2:上記で調製したグラフト共重合
体(a)20重量部とスチレン系樹脂(b)80重量部
をブレンドしたものを使用した。スチレン系樹脂中のゴ
ム質重合体の含量は10重量%である。
【0082】A−3:上記で調製したグラフト共重合体
(a)40重量部とスチレン系樹脂(b)60重量部を
ブレンドしたものを使用した。スチレン系樹脂中のゴム
質重合体の含量は20重量%である。 [参考例2]本発明に用いた燐酸エステル系化合物
(B)は以下の通りである。
【0083】 B−1:大八化学社製芳香族ジホスフェート「PX−2
00」 B−2:大八化学社製ポリホスフェート「CR−73
3」 [参考例3]本発明に用いた亜燐酸エステル系化合物
(C)は以下の通りである。
【0084】 C−1:旭電化工業社製「アデカスタブPEP−8」 ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト (アルキル基の連続した炭素数18) C−2:住友化学工業社製「スミライザーTNP」 トリスノニルフェニルホスファイト (アルキル基の連続した炭素数9) C−3:旭電化工業社製「アデカスタブPEP−36」 ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)
ペンタエリスリトールジホスファイト (アルキル基の連続した炭素数2) C−4:旭電化工業社製「アデカスタブ2112」 トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイ
ト (アルキル基の連続した炭素数2)。 [参考例4]本発明に用いたシリコーンゴムおよび/ま
たはシリコーン樹脂(D)は以下の通りである。
【0085】D−1:東レダウコーニング・シリコーン
社製シリコーンゴム粉末「DC4−7081」シリコー
ンゴムは反応性の官能基としてメタクリル基を含有す
る。
【0086】D−2:東芝シリコーン社製シリコーン樹
脂「トスパール2000B」 [参考例5]本発明に用いたフェノール系酸化防止剤
(E)は以下の通りである。
【0087】E:住友化学工業社製「スミライザーG
M」 [実施例1〜10、比較例1〜9]表1に示す配合割合
に従い各成分を、スクリュウ径30mm、L/Dが25
の同方向回転2軸押出機(池貝鉄工製 PCM−30)
のホッパー口より一括供給して、樹脂温度220℃、ス
クリュウ回転数150rpmで溶融押出した。得られた
ペレットを70℃で3時間乾燥後、射出成形に供し、目
的とする試験片を成形した。評価結果もあわせて表1に
記載した。
【0088】
【表1】 表1の実施例、比較例より以下のことが明らかである。
【0089】実施例1〜10のスチレン系樹脂(A)、
燐酸エステル系化合物(B)、亜燐酸エステル系化合物
(C)からなる組成物は、UL94に定めるV−2以上
の難燃性が得られる。また限界酸素指数は23〜25の
範囲であり、自己消火性(LOI>22)を示すことが
わかる。一方、比較例1〜3のように亜燐酸エステル系
化合物(C)を含有しない場合や、比較例6,7のよう
に亜燐酸エステル系化合物(C)が長鎖アルキル基を含
有しない場合には、難燃性(V−2レベル)が認められ
ない。特にこの傾向は、1.6mm厚みの試験片で顕著
である。また限界酸素指数は20〜22レベルであり、
自己消火性に劣ることがわかる。さらに、比較例4のよ
うに燐酸エステル系化合物(B)を過剰に使用すると、
本発明の実施条件ではコンパウンドが不能となる。ま
た、比較例4のように亜燐酸エステル系化合物(C)を
必要以上に使用すると、逆に難燃性が低下し、LOIも
低下する。また比較例8のように亜燐酸エステル系化合
物だけを配合しても難燃性、自己消火性は全く得られ
ず、比較例9のように亜燐酸エステルにシリコーン樹脂
を配合しても難燃性・自己消火性は得られない。
【0090】実施例1〜3の比較より、スチレン系樹脂
(A)にゴム質重合体を含有させることによって、V−
2を維持したまま衝撃強度を飛躍的に向上することがで
きる。ただし、ゴム質重合体の割合が高いものは難燃
性、成形加工性が低下する傾向にある。この場合、実施
例3と10の比較より、フェノール系酸化防止剤を併用
することにより若干の改善効果が期待できる。
【0091】実施例2、4、5より、燐酸エステル系化
合物(B)は併用しても、本発明の効果は認められる。
【0092】実施例2、6、7より、亜燐酸エステル系
化合物(C)は2種併用しても、本発明の効果は認めら
れ、かつより長鎖のアルキル基を含有する方が、難燃
性、耐衝撃性および成形加工性の面で有利である。
【0093】実施例2、8、9の比較より、シリコーン
ゴムおよび/またはシリコーン樹脂の使用により難燃性
が向上しているのが明確である。
【0094】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
ハロゲン系有機化合物を用いることなくスチレン系樹脂
に高度な難燃性を付与させ、かつ機械的強度、耐衝撃性
および成形加工性に優れた樹脂組成物を得ることができ
る。
【0095】そして、本発明で得られる難燃性樹脂組成
物およびそれからなる成形品は、家電機器、OA機器や
自動車の部品およびハウジングなどの用途に好適であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 5/5415 C08K 5/5415 Fターム(参考) 4F071 AA22 AC11 AC15 AC16 AF47 AH07 AH12 AH13 BA01 BB03 BB05 BB06 BC01 BC05 BC06 BC07 4J002 BC021 BC031 BC061 BC081 BC091 CP032 EJ018 EW046 EW067 EW087 FD010 FD078 FD090 FD100 FD136 FD160 GM00 GQ00

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スチレン系樹脂(A)100重量部、下
    記一般式(1)で表される燐酸エステル系化合物(B)
    の1種または2種以上1〜30重量部、および下記一般
    式(2)で表される構造を有し、かつ分子中に連続した
    炭素数が9以上の長鎖アルキル基を含有する亜燐酸エス
    テル系化合物(C)の1種または2種以上0.1〜10
    重量部からなる難燃性樹脂組成物。 【化1】 【化2】 (上記式中、R1 〜R8 は、水素原子または炭素数1〜
    5のアルキル基を表し、相互に同一または相異なってい
    てもよい。Y1 は直接結合、O、S、SO2 、C(CH
    3 2 、CH2 またはCHPhのいずれかを表し、Ph
    はフェニル基を表す。Ar1 〜Ar4 はフェニル基ある
    いはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニ
    ル基のいずれかを表し、相互に同一または相異なってい
    てもよい。また、nは0以上の整数、k、mはそれぞれ
    0以上2以下で、かつk+mが0以上2以下となる整数
    である。)
  2. 【請求項2】 上記一般式(2)で表される亜燐酸エス
    テル系化合物(C)が、下記一般式(3)または(4)
    で表される亜燐酸エステル系化合物である請求項1に記
    載の難燃性樹脂組成物。 【化3】 【化4】 (上記式中、R9 〜R16は水素原子または炭素数1〜5
    のアルキル基を表し、相互に同一または相異なっていて
    もよい。Y2は直接結合、O、S、SO2 、C(C
    3 2 、CH2 、CHPhのいずれかを表す。Ar5
    〜Ar8 およびAr 9 〜Ar10はアルキル基、フェニル
    基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換された
    アルキル基、フェニル基のいずれかを表し、同一または
    相異なっていてもよいが、Ar5 〜Ar8 の少なくとも
    1種は連続した炭素数が13以上の長鎖アルキル基を含
    有し、Ar9 〜Ar10 の少なくとも1種は連続した炭
    素数が9以上の長鎖アルキル基を含有する。また、uは
    0以上の整数、s、tはそれぞれ0以上2以下で、かつ
    s+tが0以上2以下となる整数である。)
  3. 【請求項3】 上記一般式(2)で表される亜燐酸エス
    テル系化合物(C)が、下記一般式(4)で表される亜
    燐酸エステル系化合物である請求項1に記載の難燃性樹
    脂組成物。 【化5】 (上記式中、Ar9 〜Ar10 はアルキル基、フェニル
    基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換された
    アルキル基、フェニル基のいずれかを表し、同一または
    相異なっていてもよいが、少なくとも1種は連続した炭
    素数が9以上の長鎖アルキル基を含有する。また、uは
    0以上の整数、s、tはそれぞれ0以上2以下で、かつ
    s+tが0以上2以下となる整数である。)
  4. 【請求項4】 上記スチレン系樹脂(A)が、ゴム強化
    スチレン系樹脂である請求項1〜3のいずれか1項に記
    載の難燃性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 さらにシリコーンゴムおよび/またはシ
    リコーン樹脂(D)0.1〜3重量部を含有する請求項
    1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 さらにフェノール系酸化防止剤(E)
    0.1〜3重量部を含有する請求項1〜5のいずれか1
    項に記載の難燃性樹脂組成物。
  7. 【請求項7】 上記請求項1〜6いずれか記載の難燃性
    樹脂組成物からなる成形品。
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