JP4029598B2 - 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴム強化スチレン系樹脂本来の優れた機械特性を損なうことなく、難燃性、耐光性、さらには透明性に優れた難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ゴム強化スチレン系樹脂などに代表されるスチレン系樹脂は、優れた機械的性質、成形加工性および電気絶縁性などを有することから、家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品をはじめとする広範な分野で使用されている。しかしながら、用途によっては安全性の問題で、難燃性が必要になり、この難燃化に関し種々の技術が提案されてきた。
【0003】
一般的には、難燃化効率の高い臭素化合物などのハロゲン系難燃剤と酸化アンチモンを樹脂に配合して難燃化する方法が採用されているが、この方法は燃焼の際の発煙量が多いなどの問題点を有していた。
【0004】
そこで、近年これらのハロゲン系難燃剤の欠点を克服するためにハロゲンを全く含まない難燃性樹脂の実現が強く望まれるようになった。
【0005】
非ハロゲン系難燃剤としては、燐系難燃剤が知られており、代表的なものとして燐酸エステルが従来からよく使用されている。このような燐系難燃剤を使用する従来例としては、例えば熱可塑性樹脂にポリホスフェートを添加する方法(特開昭59−24736号公報)、ゴム強化スチレンに特定構造を有する燐酸エステルを添加する方法(特開平11−140270号公報)、およびスチレン系樹脂に液状燐酸エステルを添加する方法(特開平11−5869号公報)などがすでに提案されている。
【0006】
しかしながら、スチレン系樹脂に代表されるような本来的に燃えやすい熱可塑性樹脂の場合には、燐酸エステルによる難燃化効果は極めて低く、上記特開昭59−24736号公報、特開平11−140270号公報、および特開平11−5869号公報記載の方法で得られる組成物において、熱可塑性樹脂に難燃性を付与するためには、燐酸エステルを多量に配合しなければならず、そのために樹脂の機械特性が低下するばかりか、燐酸エステルがブリードアウトしたり、成形時に金型汚染が発生するといった問題や成形時にガスが発生するという問題があった。
【0007】
上記の問題を解決する方法としては、難燃剤としてヒドロキシル基含有燐酸エステルを使用する方法が、特開平5−247315号公報に開示されている。
【0008】
しかしながら、ヒドロキシル基含有燐酸エステルもまた、難燃化効果が極めて低いことから、上記の問題を効果的に解決することは困難であった。
【0009】
このように、燐酸エステルでは難燃化効果が低いため、本出願人は、その難燃性をさらに向上させることを目的として検討した結果、燐酸エステルと共に難燃助剤としてメラミンシアヌール酸塩を用いることによって、難燃性の向上効果が得られることを先に知見したが、この場合には、熱可塑性樹脂本来の機械的特性、耐衝撃性および成形加工性が損なわれるという問題点についてまでは解決することができなかった。
【0010】
また、さらに難燃性を向上させるために、ヒドロキシル基含有燐酸エステルにと共に、炭化層形成ポリマーとしてノボラックフェノール樹脂、さらにトリアジン骨格を含有する化合物を添加する方法が、特開平7−70448号公報に開示されている。
【0011】
しかしながら、この技術もまた、熱可塑性樹脂本来の機械的特性、耐衝撃性および成形加工性が損なわれるという問題点についてはいまだに十分解決できるものではなく、しかもフェノール樹脂は耐光性が極めて劣る材料であるため、得られる樹脂組成物の耐光性が低下するという問題点をも有していた。
【0012】
上記したように、上記の従来技術に記載されるいずれの方法においても、得られる樹脂組成物の難燃性はいまだに不十分であり、しかもこれら従来技術においては、樹脂の透明性の改良についてまでは何らの考慮もはらわれていなかった。
【0013】
つまり、透明性を付与するためにゴム強化スチレン系樹脂に不飽和カルボン酸アルキルエステルを共重合すると、燃焼性が一層高まるばかりか、これに上記各従来技術に記載の難燃剤を添加すると、透明性を維持することが困難になることから、難燃性と透明性の両立については技術的に確立されていなかったのが実情である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0015】
したがって本発明の目的は、ゴム強化スチレン系樹脂に対し、ハロゲン系有機化合物を用いることなく高度な難燃性を有すると同時に、ゴム強化スチレン系樹脂本来の優れた機械特性を損なうことなく、耐光性、さらには透明性に優れた難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ゴム強化スチレン系樹脂に、変性フェノール系樹脂、および燐系難燃剤を配合することにより、高度な難燃性を有すると同時に、ゴム強化スチレン系樹脂本来の優れた機械特性を損なうことなく、耐光性、さらには透明性に優れた難燃性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0017】
すなわち、本発明の難燃性樹脂組成物は、ゴム質重合体10〜80重量部の存在下に、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a)、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(d)からなる単量体混合物20〜90重量部を共重合したグラフト共重合体(A−1)20〜60重量部と、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a)、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(d)からなるビニル系共重合体(A−2)40〜80重量部とからなるゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対して、下記一般式(1)で表される変性フェノール系樹脂(B)0.1〜10重量部、および燐系難燃剤(C)1〜30重量部を含有させ、かつハロゲン系難燃剤は含有させず、23℃で測定した全光線透過率が60%以上であることを特徴とする。
【0018】
【化5】
(上記式中、R1 は炭素数1〜10の有機残基を、R2 は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を、nは1〜16の整数を、それぞれ表す。)
なお、本発明の難燃性樹脂組成物においては、下記(イ)〜(ニ)が好ましい条件として挙げられる。
(イ)エポキシ基を含有するビニル系単量体で変性されたスチレン系相溶化剤(D)をゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜50重量部配合すること、
(ロ)前記ゴム強化スチレン系樹脂(A)が、ゴム質重合体10〜80重量部の存在下に、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a)、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(d)からなる単量体混合物20〜90重量部を共重合せしめたグラフト共重合体(A−1)10〜100重量部と、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a)、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(d)からなるビニル系共重合体(A−2)0〜90重量部とからなること、
(ハ)前記変性フェノール系樹脂(B)が、下記一般式(2)で表される変性フェノール系樹脂であること、
【0019】
【化6】
(上記式中、R3 は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を、nは1〜12の整数を、それぞれ表す。)
(ニ)前記燐系難燃剤(C)が、下記一般式(3)で表される芳香族ホスフェートであること、
【0020】
【化7】
(上記式中、Ar1 、Ar2 、Ar3 、Ar4 は同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。また、Xは、
【0021】
【化8】
のいずれかの基であり、ここで、R4 〜R11は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表し、Yは直接結合、O、S、SO2 、C(CH3 )2 、CH2 、CHPhのいずれかを表し、Phはフェニル基を表す。また、nは0以上の整数であり、異なるnの混合物でもよい。またk、mはそれぞれ0以上2以下の整数であり、かつ(k+m)は0以上2以下の整数である。)
また、本発明の成形品は、上記難燃性樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品について具体的に説明する。
【0023】
本発明におけるゴム強化スチレン系樹脂(A)とは、スチレン単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体にグラフトした構造をとったものと、スチレン単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体に非グラフトした構造をとったもを含むものである。
【0024】
このようなゴム強化スチレン系樹脂(A)としては、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)、およびAES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)などが挙げられる。
【0025】
具体的には、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体からなる単量体混合物を共重合せしめたグラフト共重合体(A−1)と、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体からなるビニル系共重合体(A−2)とからなるものである。
【0026】
本発明のゴム強化スチレン系樹脂(A)において、グラフト共重合体(A−1)に用いられるゴム質重合体には特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴムなどが使用できる。これらゴム質重合体の具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体などが挙げられる。これらのゴム質重合体のうちでは、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体およびアクリロニトリル−ブタジエン共重合体が、特に耐衝撃性の観点から好ましく用いられる。
【0027】
これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能であるが、2種以上の混合物で使用する場合には、透明性の観点から、アッベ屈折計を用いて測定した屈折率差が0.03以下となるように、2種以上のゴム質重合体を選択することが好ましい。
【0028】
本発明におけるグラフト共重合体(A−1)を構成するゴム質重合体の重量平均粒子径には特に制限はないが、0.1〜0.5μm、特に0.15〜0.4μmの範囲であることが好ましい。ゴム質重合体の重量平均粒子径を0.1μm〜0.5μm未満の範囲とすることによって、耐衝撃性と透明性の両立を図ることができる。
【0029】
なお、ゴム質重合体の重量平均粒子径は、「Rubber Age、Vol.88、p.484〜490、(1960)、by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法、つまりアルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める方法により測定することができる。
【0030】
本発明におけるグラフト共重合体(A−1)およびビニル系共重合体(A−2)に用いる不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a)には特に制限はないが、炭素数1〜6のアルキル基または置換アルキル基を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが好適である。
【0031】
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a)具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられるが、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
【0032】
本発明におけるグラフト共重合体(A−1)およびビニル系共重合体(A−2)に用いる芳香族ビニル系単量体(b)には特に制限はなく、具体例としてはスチレンをはじめ、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、なかでもスチレンおよびα−メチルスチレンが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
本発明におけるグラフト共重合体(A−1)およびビニル系共重合体(A−2)に用いるシアン化ビニル系単量体(c)には特に制限はなく、具体例としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、なかでもアクリロニトリルが好ましく用いられる。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0034】
また、本発明におけるグラフト共重合体(A−1)およびビニル系共重合体(A−2)を構成する不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a)、芳香族ビニル系単量体(b)およびシアン化ビニル系単量体(c)と共重合可能な他のビニル系単量体(d)には特に制限はないが、具体例としては(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、イタコン酸、無水イタコン酸、フタル酸、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレン、2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどを挙げることができ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。
【0035】
本発明におけるグラフト共重合体(A−1)は、ゴム質重合体10〜80重量部、好ましくは20〜70重量部、より好ましくは30〜60重量部の存在下に、上記の単量体混合物20〜90重量部、好ましくは30〜80重量部、より好ましくは40〜70重量部を共重合することによって得られる。ゴム質重合体の割合が上記の範囲未満でも、また上記の範囲を超えても、衝撃強度や表面外観が低下する場合があるため好ましくない。
【0036】
また、グラフト共重合体(A−1)およびビニル系共重合体(A−2)に用いられる単量体混合物の好ましい割合は、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a)が50〜90重量%、より好ましくは60〜80重量%、芳香族ビニル系単量体(b)が9〜49重量%、より好ましくは17〜37重量%、シアン化ビニル系単量体(c)が1〜30重量%、より好ましくは3〜10重量%であり、これらと共重合可能な他のビニル系単量体(d)を30重量%以下で使用することにより、良好な透明性、耐衝撃性および成形加工性を得ることができる。
【0037】
なお、グラフト共重合体(A−1)は、ゴム質重合体に単量体混合物をグラフト共重合させる際に生成するグラフトしていない共重合体を含んでいてもよい。ただし、衝撃強度の観点からグラフト率は10〜100%であることが好ましい。ここで、グラフト率とはゴム質重合体に対するグラフトした単量体混合物の重量割合である。また、グラフトしていない共重合体のメチルエチルケトン溶媒中、30℃で測定した極限粘度には特に制限はないが、0.1〜0.6dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性のバランスの観点から好ましく用いられる。
【0038】
本発明におけるビニル系共重合体(A−2)のメチルエチルケトン溶媒中、30℃で測定した極限粘度は特には制限はないが、0.2〜1.0dl/g、特に0.3〜0.7dl/gのものが、衝撃強度と成形加工性とのバランスの観点から好ましく用いられる。
【0039】
本発明におけるグラフト共重合体(A−1)およびビニル系共重合体(A−2)の製造方法には特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合などの公知の重合法により得ることができる。
【0040】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するグラフト共重合体(A−1)とビニル系共重合体(A−2)との混合比は、グラフト共重合体(A−1)20〜60重量部と、ビニル系共重合体(A−2)40〜80重量部との範囲である。グラフト共重合体(A−1)が上記の範囲未満では、十分な耐衝撃性を得ることができない。
【0041】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるゴム質重合体の含有量は、5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%である。ゴム質重合体の含有量を5〜30重量%の範囲とすることによって、耐衝撃性および成形加工性を十分満足することができる。
【0042】
なお、グラフト重合体(A−1)のゴムを除いた成分およびビニル系共重合体(A−2)の屈折率と、グラフト重合体(A−1)に使用されるゴム質重合体の屈折率との差を0.03以下、より好ましくは0.02以下になるように、単量体の組成比を調製することが、透明性の観点から好ましい。このようなグラフト重合体(A−1)およびビニル系共重合体(A−2)は複数種類を用いてもよい。
【0043】
本発明に使用される変性フェノール系樹脂(B)とは、下記一般式(1)で表されるものである。
【0044】
【化9】
(上記式中、R1 は炭素数1〜10の有機残基を、R2 は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を、nは1〜16の整数を、それぞれ表す。)
上記式(1)の構造について説明する。上記式中、R1 は炭素数1〜10の任意の有機残基を表し、好ましくはアルキル基、アリール基、グリシジル基、−C(=O)Rが挙げられる。ここでRは炭素数1〜9のアルキル基、アリール基を表す。すなわち、フェノール系樹脂のフェノール性水酸基をエーテル化あるいはエステル化したものを好ましく使用することができる。また、R2 は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を表す。
【0045】
前記式(1)に示す変性フェノール系樹脂を製造する方法については、特に制限はないが、例えばエーテル化した変性フェノール系樹脂を製造する方法としては、ノボラック型、レゾール型および熱反応型のフェノール系樹脂と、ハロゲン化アルキル、エピハロヒドリンなどとを塩基性触媒下で反応させて製造する方法などが挙げられる。また、エステル化した変性フェノール系樹脂を製造する方法としては、ノボラック型、レゾール型および熱反応型のフェノール系樹脂と、任意の酸ハロゲン化物または酸無水物とを反応させて製造する方法などが挙げられる。
【0046】
フェノール系樹脂としては特に限定するものではなくノボラック型、レゾール型および熱反応型の市販されているものなどを用いることができるが、なかでもノボラック型が難燃性、流動性の面で好ましく使用することができる。ノボラック型フェノール樹脂の製造方法としては、フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるような比率で反応槽に仕込み、さらにシュウ酸、塩酸、硫酸、トルエンスルホン酸などの触媒を加えた後、加熱し、所定の時間還流反応を行った後、生成した水を除去するため真空脱水あるいは静置脱水し、さらに残っている水と未反応のフェノール類を除去する方法により得ることができる。これらの樹脂あるいは複数の原料成分を用いることにより、得られる共縮合フェノール樹脂は単独あるいは2種以上で用いることができる。
【0047】
ここで、フェノール類としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル−2,2−プロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル酸ベンジル、サルチル酸メチル、および2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールなどが挙げられる。これらのフェノール類は一種または二種以上を用いることができる。
【0048】
一方、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ポリオキシメチレン、およびトリオキサンなどが挙げられる。これらのアルデヒド類は必要に応じて1種または2種以上を用いることができる。
【0049】
上記一般式(1)で表される変性フェノール系樹脂の中でも、下記一般式(2)で表されるグリシジル基でエーテル化された変性フェノール系樹脂がとりわけ難燃性、耐光性の面で好ましく使用できる。
【0050】
【化10】
(上記式中、R3 は水素原子あるいは炭素数1〜5のアルキル基を、nは1〜12の整数を、それぞれ表す。)
変性フェノール系樹脂(B)の分子量は特に限定されないが、好ましくは数平均分子量で200〜2,000であり、特に400〜1,500の範囲のものが、機械的物性、流動性、および経済性に優れることから好ましい。なお変性フェノール系樹脂(B)の分子量は、テトラヒドラフラン溶液、ポリスチレン標準サンプルを使用することにより、ゲルパーミエションクロマトグラフィ法で測定することができる。
【0051】
上記の変性フェノール系樹脂(B)は、必要に応じて1種または2種以上を使用することができる。その形状については特に制限されず、粉砕品、粒状、フレーク状、粉末状、針状、および液状などいずれであっても使用できる。
【0052】
変性フェノール系樹脂(B)の添加量は、ゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部である。変性フェノール系樹脂(B)の添加量が上記の範囲未満の場合は高度な難燃性付与効果が得られず、また上記の範囲を越える場合は透明性が低下するため好ましくない。
【0053】
本発明に使用される燐系難燃剤(C)とは、燐を含有する有機または無機化合物であれば特に制限はなく、例えば、ポリ燐酸アンモニウム、ポリホスファゼン、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネートおよびホスフィンオキシドなどが挙げられる。なかでも、ポリホスファゼンおよびホスフェートが好ましく、芳香族ホスフェートが特に好ましく使用できる。
【0054】
本発明で使用される燐系難燃剤(C)の内、芳香族ホスフェートとは、下記一般式(3)で表されるものである。
【0055】
【化11】
まず、上記式(3)で表される難燃剤の構造について説明する。
【0056】
上記式(3)中、nは0以上の整数であり、異なるnの混合物でもよい。またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつ(k+m)は、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0057】
またAr1 、Ar2 、Ar3 、Ar4 は同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などが挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
またXは、
【0058】
【化12】
のいずれかであり、ここで、R4 〜R11は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。またYは直接結合、O、S、SO2 、C(CH3 )2 、CH2 、CHPhのいずれかを表し、Phはフェニル基を表す。
【0059】
上記燐系難燃剤(C)の使用量は、ゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部である。
【0060】
燐系難燃剤(C)の添加量が上記の範囲未満の場合は高度な難燃性付与効果が得られず、また上記の範囲を越える場合は耐衝撃性の低下や成形品の表面外観を損なう傾向となる。
【0061】
本発明に使用されるエポキシ基を含有するビニル系単量体で変性されたスチレン系相溶化剤(D)とは、芳香族ビニル系単量体とエポキシ基を含有するビニル系単量体及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体とからなる単量体混合物を共重合してなる共重合体である。
【0062】
ここで芳香族ビニル系単量体としては、スチレン系樹脂(A)で使用される芳香族ビニル系単量体(b)の具体例から選ばれる1種もしくは2種以上を使用することができ、中でもスチレンが好ましく使用できる。
【0063】
エポキシ基を含有するビニル系単量体とは、1分子中にラジカル重合可能なビニル基とエポキシ基の両者を共有する化合物であり、具体例としては(メタ)アクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどの不飽和有機酸のグリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類、及び2−メチルグリシジルメタクリレートなどの上記の誘導体類が挙げられ、中でも(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましく使用できる。またこれらは1種または2種以上を併用しても良い。
【0064】
またこれらと共重合可能な他のビニル系単量体としては、スチレン系樹脂(A)で使用される不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a)、シアン化ビニル系単量体(c)及び共重合可能な他のビニル系単量体(d)の具体例から選ばれる1種もしくは2種以上を使用することができる。
【0065】
上記共重合成分から構成されるエポキシ基を含有するビニル系単量体で変性されたスチレン系相溶化剤(D)において、エポキシ基を含有するビニル系単量体の共重合量は、好ましくは0.001〜14重量%、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0066】
エポキシ基を含有するビニル系単量体で変性されたスチレン系相溶化剤(D)の製造方法に関しては特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、塊状重合および懸濁重合のどの方法でも製造することができる。
【0067】
本発明に使用されるエポキシ基を含有するビニル系単量体で変性されたスチレン系相溶化剤(D)の添加量は、ゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部、更に好ましくは1〜20重量部である。エポキシ基を含有するビニル系単量体で変性されたスチレン系相溶化剤(D)が0.1重量部未満では、難燃性および機械特性の向上効果は不十分であり、50重量部を超えると難燃性、流動性、滞留安定性が著しく悪化するため好ましくない。
【0068】
かくして、ゴム強化スチレン系樹脂(A)、変性フェノール系樹脂(B)および燐系難燃剤(C)を上記の割合で配合してなる本発明の難燃性樹脂組成物は、23℃で測定した全光線透過率、詳細には東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを使用し、厚み3mmの角板について23℃で測定した全光線透過率値(%)が60%以上、好ましくは70%以上であることが望ましく、かかる全光線透過率を満たすことによって優れた透明性を発現する。
【0069】
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物に対しては、本発明の目的を損なわない範囲でヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤などの酸化防止剤や熱安定剤、紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステラアマイドおよびエチレンワックスなど)、着色防止剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、フッ素系樹脂やシリコーン化合物などの燃焼時の延焼や発熱量の抑制をする難燃剤、核剤、可塑剤、帯電防止剤、および染料・顔料を含む着色剤(硫化カドミウム、フタロシアニン、酸化チタンなど)などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。
【0070】
また、本発明の難燃性樹脂組成物は通常公知の方法で製造される。例えば、ゴム強化スチレン系樹脂(A)、変性フェノール系樹脂(B)、燐系難燃剤(C)およびその他の必要な添加剤を、予備混合してまたはせずに押出機などに供給して、150℃〜350℃の温度範囲において十分溶融混練することにより調製される。この場合に例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いることができ、特にアスペクト比をコントロールすることから、スクリューにニーディングエレメントを数個挿入あるいは未挿入にすることにより使用することが好ましい。
【0071】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、難燃性だけでなく、機械特性、耐熱性、滞留安定性さらに成形加工性にも優れ、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成形、およびプレス成形などが可能であり、フィルム、管、ロッドや希望する任意の形状と大きさを持った成形品に成形して使用することができる。
【0072】
このようにして得られる本発明の難燃性樹脂組成物からなる成形品は、その優れた難燃性、耐熱性、機械特性、成形加工性、さらには透明性などの特性を活かして、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類など種々の用途に用いることができる。
【0073】
本発明の成形品の具体例としては、例えば、各種カバー、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター、VTR、テレビ、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器、電子レンジ、音響機器などの部品またはハウジング、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品またはハウジング、照明、冷蔵庫、エアコン、タイプライター、ワードプロセッサーなどに代表される家庭、事務電気製品部品またはハウジング、オフィスコンピューター関連、電話機関連、ファクシミリ関連、複写機関連などの部品またはハウジング、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品またはハウジング、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、および点火装置ケースなどが挙げられ、これら各種の用途にとって極めて有用である。
【0074】
【実施例】
以下、実施例、および比較例により本発明の構成、効果をさらに詳細に説明する。
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、メタクリル酸メチル70重量部、スチレン25重量部、アクリロニトリル5重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.3重量部からなる混合物50重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25重量部、オレイン酸カリウム2.5重量部および純水25重量部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体(A−1−1)を得た。
【0075】
このグラフト共重合体(A−1−1)の所定量(m)にアセトンを加えて4時間還流し、この溶液を8,800rpm(遠心力10,000G)で40分遠心分離した後、不溶分を濾過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥後、重量(n)を測定し、グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100の計算式で算出したグラフト率は45%であった。ここでLはグラフト共重合体のゴム含有率である。
【0076】
上記アセトン溶液の濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を得た。この可溶分を、70℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml(メチルエチルケトン、30℃)に調製し、ウベローデ粘度計を用いて測定した極限粘度は0.26dl/gであった。
【0077】
また、同様の方法で、メタクリル酸メチル70重量部、スチレン25重量部、アクリロニトリル5重量部を、スチレン70重量部、アクリロニトリル30重量部に変更することにより、グラフト共重合体(A−1−2)を得た。このときのグラフト率は42%、極限粘度は0.37dl/gであった。
[参考例2]ビニル系共重合体(A−2)の製造方法
容量が20Lで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を添加して400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、60℃に昇温し重合を開始した。
【0078】
メタクリル酸メチル 70重量部
スチレン 25重量部
アクリロニトリル 5重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部
15分かけて反応温度を65℃まで昇温したのち、50分かけて100℃まで昇温した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行なうことにより、ビニル系共重合体(A−2−1)を得た。このビニル系共重合体(A−2−1)の極限粘度は0.35dl/gであった。
【0079】
また、同様の方法で、メタクリル酸メチル70重量部、スチレン25重量部、アクリロニトリル5重量部を、スチレン70重量部、アクリロニトリル30重量部に変更することにより、ビニル系共重合体(A−2−2)を得た。このビニル系共重合体(A−2−2)の極限粘度は0.48dl/gであった。
[参考例3]変性フェノール系樹脂(B)
<B−1>グリシジル基変性ノボラックフェノール樹脂“EPPN−201−H”(日本化薬社製)を使用した。
<B−2>o−クレゾールエポキシ樹脂“EOCN−104S”(日本化薬社製)を使用した。
<B−3>変性していないノボラックフェノール樹脂である“スミライトレジン
PR53195”(住友デュレス社製)を使用した。
[参考例4]燐系難燃剤(C)
<C−1>芳香族ビスホスフェート“PX−200”(大八化学社製)を使用した。
<C−2>オリゴマー型芳香族ビスホスフェート”CR733S”(大八化学社製)を使用した。
[参考例5]エポキシ基を含有するビニル系単量体で変性されたスチレン系相溶化剤(D)の製造方法
容量が20Lで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を添加して400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系を撹拌しながら添加し、60℃に昇温し重合を開始した。
【0080】
メタクリル酸メチル 70重量部
スチレン 25重量部
アクリロニトリル 5重量部
メタクリル酸グリシジル 0.3重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部
15分かけて反応温度を65℃まで昇温したのち、50分かけて100℃まで昇温した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行なうことにより、スチレン系相溶化剤(D)を得た。このスチレン系相溶化剤(D)の極限粘度は0.58dl/gであった。
【0081】
[実施例1〜4、比較例1〜8]
なお、以下の実施例、比較例においては、上記の参考例から調製したゴム強化スチレン系樹脂(A)、変性フェノール系樹脂(B)、燐系難燃剤(C)、スチレン系相溶化剤(D)およびその他の必要な添加剤を表1に示した配合比で混合し、ベント付き30mmφ2軸押出機(池貝鉄工社製、PCM−30)を使用し、220〜270℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状のポリマを製造した。
【0082】
次いで、東芝機械製IS55EPN射出成形機を用いて、成形温度230℃、金型温度60℃の条件で射出成形することにより得られた試験片について、各特性を以下の測定方法にて評価した。
[難燃性]:
射出成形により得た1.6mm厚みまたは0.8mm厚みの難燃性評価用試験片について、UL94に定められている評価基準に従い、5本の試験片について難燃性を評価した。難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
[耐衝撃性]:
ASTM D256−56Aに従い耐衝撃性を評価した。
[耐熱性]:
ASTM D648(荷重:1.82MPa)に従い耐熱性を評価した。
[耐光性]:
キセノン耐光試験機Ci35W型(アトラス社製)を用いて、55℃、0.7W/m2 、フィルター(内側:石英、外側:ソーダライム)の条件で100時間照射した。照射前後の色相を色相色差計(スガ試験機社製)にて測定し、ΔΔE*(照射後のΔE*−照射前のΔE*)を求めた。このΔΔE*が小さいほど耐光性に優れることを示す。
[透明性]:
東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを使用して、23℃で厚み3mmの角板の全光線透過率値(%)を測定した。
【0083】
各サンプルの難燃性、耐衝撃性、耐熱性、全光線透過率および耐光性の測定結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
実施例1〜3の測定結果から明らかなように、ゴム強化スチレン系樹脂に対して、燐系難燃剤<C−1>または<C−2>と共に、変性フェノール系樹脂<B−1>または<B−2>を添加することにより、難燃性が向上し、かつ耐衝撃性、耐熱性、耐光性、透明性が良好な難燃性樹脂組成物が得られる。
【0085】
さらに実施例4のように、スチレン系相溶化剤を添加することにより、ゴム強化スチレン系樹脂と変性フェノール樹脂との相溶性が向上し、難燃性、耐熱性、全光線透過率を維持したまま耐衝撃性が大幅に向上する。
【0086】
一方、比較例1のようにグラフト共重合体含量が本発明の範囲より低すぎる場合は、衝撃性、成形加工性の面でも著しく物性バランスを損なう。また、比較例2のように、屈折率が特定範囲から外れるABS樹脂を用いた場合は、全光線透過率が60%未満となり透明性を著しく損なうことになる。
【0087】
また、比較例3のように、変性フェノール樹脂を添加しない場合は、難燃性は発現されず、比較例4のように、過剰な変性フェノール樹脂を添加した場合は、難燃性は向上するが、ゴム強化スチレン系樹脂本来の優れた機械特性、耐熱性、を悪化させるばかりか、透明性も低下する。さらに、比較例5のように、変性していないフェノール樹脂を使用した場合は、難燃性の向上は見られるものの、耐光性が著しく低下する。
【0088】
比較例6のように、燐系難燃剤を添加しない場合には、難燃性を全く示さず、比較例7のように、過剰な燐系難燃剤を添加した場合は、組成物自体の脆性化が著しくなって良好な成形品を得ることができない。
【0089】
比較例8のように、過剰なスチレン系相溶化剤を添加すると、耐衝撃性は向上するものの、難燃性が大きく低下する。
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品は、ゴム強化スチレン系樹脂本来の優れた機械特性を損なうことなく、難燃性、耐光性、さらには透明性に優れており、その優れた特性を活かして、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類など種々の用途に用いることができる。
Claims (5)
- ゴム質重合体10〜80重量部の存在下に、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a)、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(d)からなる単量体混合物20〜90重量部を共重合したグラフト共重合体(A−1)20〜60重量部と、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(a)、芳香族ビニル系単量体(b)、シアン化ビニル系単量体(c)およびこれらと共重合可能な他のビニル系単量体(d)からなるビニル系共重合体(A−2)40〜80重量部とからなるゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対して、下記一般式(1)で表される変性フェノール系樹脂(B)0.1〜10重量部、および燐系難燃剤(C)1〜30重量部を含有させ、かつハロゲン系難燃剤は含有させず、23℃で測定した全光線透過率が60%以上であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
- さらにエポキシ基を含有するビニル系単量体で変性されたスチレン系相溶化剤(D)をゴム強化スチレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜50重量部配合することを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- 前記燐系難燃剤(C)が、下記一般式(3)で表される芳香族ホスフェートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物からなることを特徴とする成形品。
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