JP2002020611A - 難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形品

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JP2002020611A
JP2002020611A JP2001126879A JP2001126879A JP2002020611A JP 2002020611 A JP2002020611 A JP 2002020611A JP 2001126879 A JP2001126879 A JP 2001126879A JP 2001126879 A JP2001126879 A JP 2001126879A JP 2002020611 A JP2002020611 A JP 2002020611A
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JP2001126879A
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Hideki Matsumoto
英樹 松本
Masafumi Koyama
雅史 小山
Koji Yamauchi
幸二 山内
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】熱可塑性樹脂の機械的特性を損なうことなく、
優れた難燃性、滞留安定性を有する熱可塑性樹脂を得
る。 【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂10〜90重
量%、(B)ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体を含
む単量体混合物をグラフト重合してなるグラフト(共)
重合体80〜5重量%、(C)芳香族ビニル系単量体ま
たは単量体混合物を重合して得られるビニル系(共)重
合体1〜85重量%からなる樹脂組成物(イ)100重
量部に対して、(D)燐系難燃剤1〜30重量部を含有
する難燃性樹脂組成物であって、かつ(B)グラフト
(共)重合体のpH値が7.5以下であることを特徴と
する難燃性樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱可塑性樹脂本来の
機械的特性(耐衝撃性、耐熱性)を損なうことなく、ま
た燃焼時の有害ガスの発生もなく、難燃性、滞留安定
性、流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリカーボネート樹脂とABS樹
脂とを含有する樹脂組成物(以下、PC/ABSアロイ
と略す)はすぐれた機械的性質、成形加工性、電気絶縁
性によって家庭電気機器、OA機器、自動車などの各部
品を始めとする広範な分野で使用されている。しかしな
がら、用途によっては安全性の問題で、難燃性が必要に
なり、この難燃化に対し種々の技術が提案されてきた。
【0003】一般的には、難燃化効率の高い臭素化合物
などのハロゲン系難燃剤と酸化アンチモンを樹脂に配合
して難燃化する方法が採用されている。しかしながら、
この方法は燃焼の際の発煙量が多い等の問題点を有して
いる。
【0004】そこで、近年これらのハロゲン系難燃剤の
欠点を克服するためにハロゲンを全く含まない難燃性樹
脂が強く望まれるようになった。
【0005】塩素および臭素系難燃剤を使わずに熱可塑
性樹脂を難燃化する方法としては、特開平2−1152
62号公報には、PC/ABSアロイに燐酸エステルを
配合する方法、特開平8−302175号公報には、グ
ラフト共重合体中に残存する金属量を低減したPC/A
BSアロイに燐化合物およびフェノール樹脂などを配合
する方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】特開平2−11526
2号公報記載の組成物では、高度な難燃性レベルを達成
するためには、PC樹脂あるいは燐酸エステルを多量に
添加しなければならず、流動性や耐熱性の低下、衝撃強
度の厚み依存性の増加等の問題点を有していた。さらに
該組成物は滞留安定性に劣るため、リサイクル使用が困
難であるといった問題点を有していた。また、特開平8
−302175号公報記載の組成物では、難燃性の向上
効果は見られるが、とりわけフェノール樹脂を併用した
場合、滞留時にポリマーがゲル化し、著しく滞留安定性
に劣るといった問題点を有していた。
【0007】本発明はかかる問題点を解決し、熱可塑性
樹脂に燃焼時の有害ガス発生を抑制しながら高度な難燃
性を付与すると同時に、機械特性、耐熱性、流動性、滞
留安定性に優れる樹脂組成物を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決すべく鋭意検討した結果、ポリカーボネート樹脂、グ
ラフト共重合体、ビニル系共重合体および燐系難燃剤を
含有する樹脂組成物において、グラフト共重合体のpH
を制御することにより、優れた難燃性が付与できること
に加え、特異的に滞留安定性が改善され、かつ機械特
性、耐衝撃性、耐熱性に優れることを見い出したもので
ある。
【0009】すなわち本発明は、(A)ポリカーボネー
ト樹脂10〜90重量%、(B)ゴム質重合体に芳香族
ビニル系単量体を含む単量体混合物をグラフト重合して
なるグラフト(共)重合体80〜5重量%、(C)芳香
族ビニル系単量体または単量体混合物を重合して得られ
るビニル系(共)重合体1〜85重量%からなる樹脂組
成物(イ)100重量部に対して、(D)燐系難燃剤1
〜30重量部を含有する難燃性樹脂組成物であって、か
つ(B)グラフト(共)重合体のpH値(ここで、pH
値はグラフト(共)重合体を10重量%水スラリーと
し、pHメーターで測定した値を示す)が7.5以下で
あることを特徴とする難燃性樹脂組成物を提供する。
【0010】また、上記難燃性樹脂組成物を溶融混練す
ることにより製造した後、(B)成分のpHに関係な
く、該樹脂組成物から抽出し得られたポリカーボネート
(A’)のガラス転移温度が140℃以上であること、
(D)燐系難燃剤が特定の芳香族ホスフェートであるこ
と、樹脂組成物(イ)100重量部に対して、(E)フ
ェノール系樹脂またはフェノキシ系樹脂から選ばれる1
種以上を0.1〜20重量部さらに配合してなること、
樹脂組成物(イ)100重量部に対して、(F)フッ素
系樹脂および/またはシリコーン系化合物0.01〜3
重量部をさらに配合してなること、上記の難燃性樹脂組
成物を成形してなる成形品、および、その成形品が電気
・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、ま
たは家電機器のハウジングおよびそれらの部品であるこ
とも本発明の好ましい実施態様である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に本発明の樹脂組成物につい
て具体的に説明する。
【0012】本発明に使用される(A)ポリカーボネー
ト樹脂は、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲン、
または炭酸ジエステルとを反応させることにより得られ
る。該芳香族ホモまたはコポリカーボネート樹脂は、粘
度平均分子量が10000〜1000000の範囲のも
のが好ましい。ここで二価フェノール系化合物として
は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパ
ン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル
フェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)
メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタ
ン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)
ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエ
チルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキ
シ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビ
ス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フ
ェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタ
ン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用
することができる。中でも、二価フェノール系化合物と
して2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
を使用したポリカーボネートが好ましく使用することが
できる。
【0013】また、(A)ポリカーボネート樹脂の内、
ガラス転移温度が145℃以上のものが耐熱性、難燃性
の面で好ましく使用でき、とりわけ150℃以上のもの
が好ましい。なお、ここでいうガラス転移温度とは、示
差熱量測定装置(セイコー電子工業社製、ロボットDS
C)において、窒素雰囲気中、室温から300℃まで2
0℃/分の昇温条件で昇温した後、300℃で5分間保
持した後、50℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却
し、再度20℃/分の昇温条件で300℃まで測定した
際に観測されるガラス転移温度を意味するものである。
【0014】さらに、本発明の効果を発現させるために
は、(B)成分のpHに関係なく、溶融混練による樹脂
組成物製造後の任意の方法により抽出したポリカーボネ
ート樹脂(A’)成分のガラス転移温度の低下を抑制す
ることが重要であり、とりわけ該抽出後のポリカーボネ
ート樹脂(A’)のガラス転移温度が140℃以上を有
する場合、良好な難燃性、滞留安定性を有することが明
らかとなった。
【0015】ここで、溶融混練後の樹脂組成物からポリ
カーボネート樹脂(A’)成分を抽出する方法として
は、特に制限はないが、例えば配合成分の各種溶媒に対
する溶解性の違いを利用し、適当な溶媒を用いて可溶部
と不溶部に分離し、本操作を1回あるいは2回以上繰り
返すことにより配合成分を単離抽出することが可能であ
る。
【0016】本発明に使用される(B)グラフト(共)
重合体とは、ゴム質重合体5〜80重量部に芳香族ビニ
ル系単量体を20重量%以上含有する単量体または単量
体混合物95〜20重量部をグラフト重合して得られる
ものが好ましく、かつ(B)グラフト(共)重合体のp
H値(ここで、pH値はグラフト(共)重合体を10重
量%水スラリーとし、pHメーターで測定した値を示
す)が7.5以下であることを特徴とする。
【0017】上記ゴム質重合体としては、ガラス転移温
度が0℃以下のものが好適であり、ジエン系ゴムが好ま
しく用いられる。具体的にはポリブタジエン、スチレン
−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン
共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、
アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などのジエン系
ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴム、ポ
リイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン系三元共
重合体などが挙げられる。なかでもポリブタジエンまた
はブタジエン共重合体が好ましい。
【0018】ゴム質重合体のゴム粒子径は特に制限され
ないが、ゴム粒子の重量平均粒子径が0.15〜0.6
μm、特に0.2〜0.55μmのものが耐衝撃性に優
れ好ましい。中でも、0.20〜0.25μmと0.5
0〜0.65μmとの重量比が90:10〜60:40
のものが耐衝撃性、薄肉成形品の落錘衝撃が著しく優れ
好ましい。
【0019】なお、ゴム粒子の平均重量粒子径は「Ru
bber Age Vol.88p.484〜490
(1960)by E.Schmidt, P.H.B
iddison」記載のアルギン酸ナトリウム法(アル
ギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタ
ジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した
重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率よ
り累積重量分率50%の粒子径を求める)により測定す
ることができる。
【0020】芳香族ビニル系単量体としてはスチレン、
α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチ
レン、p−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特
にスチレンが好ましい。
【0021】芳香族ビニル系単量体以外の単量体として
は、一層の耐衝撃性向上の目的で、シアン化ビニル系単
量体が、靭性、色調の向上の目的で、(メタ)アクリル
酸エステル系単量体が好ましく用いられる。シアン化ビ
ニル系単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニ
トリル、エタクリロニトリルなどが挙げられるが、特に
アクリロニトリルが好ましい。(メタ)アクリル酸エス
テル系単量体としてはアクリル酸およびメタクリル酸の
メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチルに
よるエステル化物などが挙げられるが、特にメタクリル
酸メチルが好ましい。
【0022】また必要に応じて、他のビニル系単量体、
例えばマレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニ
ルマレイミドなどのマレイミド系単量体などを使用する
こともできる。
【0023】(B)グラフト(共)重合体において用い
る単量体または単量体混合物は、樹脂組成物の耐衝撃性
の観点から、芳香族ビニル系単量体20重量%以上が好
ましく、より好ましくは50重量%以上である。シアン
化ビニル系単量体を混合する場合には、樹脂組成物の成
形加工性の観点から60重量%以下、さらに50重量%
以下が好ましく用いられる。また(メタ)アクリル酸エ
ステル系単量体を混合する場合には、靱性、対衝撃性の
観点から80重量%以下が好ましく、さらに75重量%
以下が好ましく用いられる。単量体また単量体混合物に
おける芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体
および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の配合量の
総和が95〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは
90〜30重量%である。
【0024】(B)グラフト(共)重合体を得る際のゴ
ム質重合体と芳香族単量体を含む単量体混合物との割合
は、樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、全グラフト共重
合体100重量部中、ゴム質重合体5重量部以上が好ま
しく、より好ましくは10重量部以上、また樹脂組成物
の耐衝撃性および成形品の外観の観点から、80重量部
以下が好ましく、より好ましくは70重量部以下が用い
られる。また単量体または単量体混合物は95重量部以
下、好ましくは90重量部以下、また20重量部以上、
好ましくは30重量部以上である。
【0025】(B)グラフト(共)重合体は公知の重合
法で得ることができる。例えばゴム質重合体ラテックス
の存在下に単量体および連鎖移動剤の混合物と乳化剤に
溶解したラジカル発生剤の溶液を連続的に重合容器に供
給して乳化重合する方法などによって得ることができ
る。
【0026】(B)グラフト(共)重合体は、ゴム質重
合体に単量体または単量体混合物がグラフトした構造を
とった材料の他に、グラフトしていない共重合体を含有
したものである。グラフト(共)重合体のグラフト率は
特に制限がないが、耐衝撃性および光沢が均衡して優れ
る樹脂組成物を得るために20〜80重量%、特に25
〜50重量%が好ましい。ここで、グラフト率は次式に
より算出される。 グラフト率(%)=(ゴム質重合体にグラフト重合した
ビニル系共重合体量/グラフト共重合体のゴム含有量)
×100 グラフトしていない(共)重合体の特性としては特に制
限されないが、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度
[η](30℃で測定)が、0.25〜0.6dl/
g、特に0.25〜0.5dl/gの範囲が、優れた耐
衝撃性の樹脂組成物が得られるため、好ましく用いられ
る。
【0027】さらに本発明に使用される(B)グラフト
(共)重合体のpH値(ここで、pH値はグラフト
(共)重合体を10重量%水スラリーとし、pHメータ
ーで測定した値を示す)が7.5以下であることが必須
である。また、好ましくは3.0〜7.0、さらに好ま
しくは5.0〜7.0である。(B)グラフト(共)重
合体のpH値が本発明の範囲内である場合、高度な難燃
性付与が可能になるだけでなく、ポリカーボネート樹
脂、グラフト(共)重合体、ビニル系(共)重合体から
なる樹脂組成物本来の優れた滞留安定性を保持できるこ
とを見出した。特にポリカーボネート樹脂、グラフト
(共)重合体、ビニル系(共)重合体からなる樹脂組成
物にフェノール系樹脂またはフェノキシ系樹脂を配合し
た際に、本発明のグラフト共重合体を使用することによ
り、滞留によるゲル化が顕著に抑制されることを見出し
た。
【0028】一方、(B)グラフト(共)重合体のpH
値が7.5を越える場合、十分な難燃性が得られず、さ
らに滞留安定性が損なわれる傾向があるためため好まし
くない。
【0029】上記の(B)グラフト(共)重合体のpH
値を調整する方法としては、特に制限はないが、例えば
公知の方法で得られたグラフト共重合体を、任意量の酸
またはアルカリでpH調整し、水洗浄、濾過、乾燥して
得ることができる。
【0030】ここで酸またはアルカリとしては、任意の
ものが使用することができる。例えば酸としては硫酸、
塩酸、炭素数2〜10の有機カルボン酸または酸無水物
などが好ましく使用できる。またアルカリとしては、ア
ルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物などが
好ましく使用できる。
【0031】また前述したように、本発明の効果を発現
させるためには、(B)成分のpHに関係なく、溶融混
練による樹脂組成物製造後の任意の方法により抽出した
ポリカーボネート樹脂(A’)成分のガラス転移温度の
低下を抑制することが重要であり、とりわけ該抽出後の
ポリカーボネート樹脂(A’)のガラス転移温度が14
0℃以上を有する場合、良好な難燃性、滞留安定性が達
成できる。
【0032】本発明のpH値を有する(B)グラフト
(共)重合体を用いて、本発明の難燃性樹脂組成物を溶
融混練し製造することにより、製造後抽出したポリカー
ボネート樹脂(A’)成分のガラス転移温度の低下を抑
制することが可能となることを見出した。
【0033】本発明に使用される(C)ビニル系(共)
重合体としては芳香族ビニル系単量体を必須とする共重
合体である。芳香族ビニル系単量体としてはスチレン、
α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチル
スチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレンなどが
挙げられるが、特にスチレンが好ましい。これらは1種
または2種以上を用いることができる。
【0034】芳香族ビニル系単量体以外の単量体として
は、一層の耐衝撃性向上の目的で、シアン化ビニル系単
量体が好ましく用いられる。靭性、色調の向上の目的
で、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく用
いられる。シアン化ビニル系単量体としてはアクリロニ
トリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなど
が挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としてはアクリル
酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n
−ブチル、i−ブチルによるエステル化物などが挙げら
れるが、特にメタクリル酸メチルが好ましい。
【0035】また、必要に応じてこれらと共重合可能な
他のビニル系単量体としてはマレイミド、N−メチルマ
レイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系
単量体を用いることがてきる。
【0036】(C)ビニル系(共)重合体の構成成分で
ある芳香族ビニル系単量体の割合は樹脂組成物の耐衝撃
性の観点から、全単量体に対し20重量%以上が好まし
く、より好ましくは50重量%以上である。シアン化ビ
ニル系単量体を混合する場合には、耐衝撃性、流動性の
観点から60重量%以下が好ましく、さらに好ましくは
50重量%以下である。また(メタ)アクリル酸エステ
ル系単量体を混合する場合には、靭性、耐衝撃性の観点
から80重量%以下が好ましく、さらに75重量%以下
が好ましく用いられる。また、これらと共重合可能な他
のビニル系単量体を混合する場合には、60重量%以下
が好ましく、さらに50重量%以下が好ましい。
【0037】ビニル系(共)重合体の特性に制限はない
が、極限粘度[η](メチルエチルケトン溶媒、30℃
測定)が、0.4〜0.65dl/g、特に0.45〜
0.55dl/gの範囲のものが、またN,N−ジメチ
ルホルムアミド溶媒、30℃測定した場合には0.35
〜0.85dl/g、特に0.45〜0.7dl/gの
範囲のものが、優れた耐衝撃性、成形加工性の樹脂組成
物が得られ、好ましい。
【0038】ビニル系(共)重合体の製造法は特に制限
がなく、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状−
懸濁重合法、溶液−塊状重合法など通常の方法を用いる
ことができる。
【0039】また本発明においては、必要に応じてカル
ボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、
オキサゾリン基から選ばれた少なくとも一種の官能基を
含有する変性ビニル系重合体(以下、変性ビニル系重合
体と略称する。)を更に加えることもできる。 変性ビ
ニル系重合体としては、一種または二種以上のビニル系
単量体を重合または共重合して得られる構造を有し、か
つ分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ
基、アミノ基、オキサゾリン基から選ばれた少なくとも
一種の官能基を含有する重合体である。これらの官能基
を含有する化合物の含有量に関しては、制限されない
が、特に変性ビニル系重合体100重量部当たり0.0
1〜20重量%の範囲が好ましい。
【0040】変性ビニル系重合体中にカルボキシル基を
導入する方法は特に制限はないがアクリル酸、メタクリ
ル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無
水マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸などのカルボ
キシル基または無水カルボキシル基を有するビニル系単
量体を所定のビニル系単量体と共重合する方法、γ,γ
´−アゾビス(γ−シアノバレイン酸)、α,α´−ア
ゾビス(α−シアノエチル)−p−安息香酸および過酸
化サクシン酸などのカルボキシル基を有する重合発生剤
および/またはチオグリコール酸、α−メルカプトプロ
ピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプ
ト−イソ酪酸および2,3または4−メルカプト安息香
酸などのカルボキシル基を有する重合度調節剤を用い
て、所定のビニル系単量体を(共)重合する方法、およ
びメタクリル酸メチルやアクリル酸メチルなどの(メ
タ)アクリル酸エステル系単量体と芳香族ビニル系単量
体、必要に応じてシアン化ビニル系単量体との共重合体
をアルカリによってケン化する方法などを用いることが
できる。
【0041】ヒドロキシル基を導入する方法についても
特に制限はないが、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエ
チル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸
3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシ
プロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒド
ロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペ
ンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−
テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,
5−テトラヒドロキシペンチル、3−ヒドロキシ−1−
プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒ
ドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2
−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペ
ン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−
5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4−ジヒドロキシ−2
−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体
を所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いる
ことがてきる。
【0042】エポキシ基を導入する方法についても特に
制限はないが、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリ
ル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸
グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p
−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレンなどの
エポキシ基を有するビニル系単量体を所定のビニル系単
量体と共重合する方法などを用いることがてきる。
【0043】アミノ基を導入する方法についても特に制
限はないが、例えばアクリルアミド、メタクリルアミ
ド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリ
ルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸
アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタ
クリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルア
ミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メ
タクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジ
エチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミ
ン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−
アミノスチレンなどのアミノ基、およびその誘導体を有
するビニル系単量体を所定のビニル系単量体と共重合す
る方法などを用いることがてきる。
【0044】またオキサゾリン基を導入する方法につい
ても特に制限はないが、例えば2−イソプロペニル−オ
キサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイ
ル−オキサゾリン、2−スチリル−オキサゾリンなどの
オキサゾリン基を有するビニル系単量体を所定のビニル
系単量体と共重合する方法などを用いることがてきる。
【0045】変性ビニル系重合体の特性に制限はない
が、極限粘度[η](メチルエチルケトン溶媒、30℃
測定)が、0.2〜0.65dl/g、特に0.35〜
0.6dl/gの範囲のものが、またN,N−ジメチル
ホルムアミド溶媒、30℃測定した場合には0.3〜
0.9dl/g、特に0.4〜0.75dl/gの範囲
のものが、優れた難燃性、耐衝撃性、成形加工性の樹脂
組成物が得られ、好ましい。
【0046】(A)ポリカーボネート樹脂、(B)グラ
フト(共)重合体、(C)ビニル系(共)重合体からな
る樹脂組成物(イ)の配合割合(重量%)は、(A)成
分:(B)成分:(C)成分=10〜90:80〜5:
1〜85であり、好ましくは15〜85:70〜10:
5〜75である。
【0047】本発明に使用される(D)燐系難燃剤と
は、燐を含有する有機または無機化合物であれば特に制
限はなく、例えば赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、ポリホ
スファゼン、(ポリ)ホスフェート、(ポリ)ホスホネ
ート、(ポリ)ホスフィネートおよび(ポリ)ホスフィ
ンオキシドなどが挙げられる。中でも赤燐、ポリホスフ
ァゼンおよび(ポリ)ホスフェートが好ましく、赤燐、
芳香族(ポリ)ホスフェートが特に好ましく使用でき
る。
【0048】本発明で使用される(D)燐系難燃剤の
内、芳香族(ポリ)ホスフェートとは、下記一般式
(1)で表されるものである。
【0049】
【化2】 まず前記式(1)で表される難燃剤の構造について説明
する。前記式(1)の式中nは0以上の整数であり、異
なるnの混合物でもよい。またk、mは、それぞれ0以
上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の
整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以
下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0050】また前記式(1)の式中、R1〜R8は同一
または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を
表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例として
は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピ
ル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブ
チル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基
が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
【0051】またAr1、Ar2、Ar3、Ar4は同一ま
たは相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない
有機残基で置換されたフェニル基を表す。具体例として
は、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、
メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基
などが挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル
基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル
基、トリル基、キシリル基が好ましい。
【0052】またYは直接結合、O、S、SO2、C
(CH32、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル
基を表す。
【0053】上記芳香族(ポリ)ホスフェートの使用量
はポリカーボネート樹脂(A)、グラフト(共)重合
体、ビニル系(共)重合体からなる樹脂組成物(イ)1
00重量部に対して1〜30重量部であり、好ましくは
2〜20重量部、さらに好ましくは3〜10重量部であ
る。
【0054】本発明で使用される(D)燐系難燃剤の
内、赤燐は、そのままでは不安定であり、また、水に徐
々に溶解したり、水と徐々に反応する性質を有するの
で、これを防止する処理を施したものが好ましく用いら
れる。このような赤燐の処理方法としては、特開平5−
229806号公報に記載の赤燐の粉砕を行わず、赤燐
表面に水や酸素との反応性が高い破砕面を形成させずに
赤燐を微粒子化する方法、赤燐に水酸化アルミニウムま
たは水酸化マグネシウムを微量添加して赤燐の酸化を触
媒的に抑制する方法、赤燐をパラフィンやワックスで被
覆し、水分との接触を抑制する方法、ε−カプロラクタ
ムやトリオキサンと混合することにより安定化させる方
法、赤燐をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不
飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆すること
により安定化させる方法、赤燐を銅、ニッケル、銀、
鉄、アルミニウムおよびチタンなどの金属塩の水溶液で
処理して、赤燐表面に金属リン化合物を析出させて安定
化させる方法、赤燐を水酸化アルミニウム、水酸化マグ
ネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆する方
法、赤燐表面に鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ス
ズなどで無電解メッキ被覆することにより安定化させる
方法およびこれらを組合せた方法が挙げられるが、好ま
しくは、赤燐の粉砕を行わず、赤燐表面に破砕面を形成
させずに赤燐を微粒子化する方法、赤燐をフェノール
系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系な
どの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方
法、赤燐を水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、
水酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆することにより安
定化させる方法であり、特に好ましくは、赤燐表面に破
砕面を形成させずに赤燐を微粒子化する方法、赤燐をフ
ェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエス
テル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化
させる方法、およびこれらを組み合わせた方法である。
これらの熱硬化性樹脂の中で、フェノール系熱硬化性樹
脂、エポキシ系熱硬化性樹脂で被覆された赤燐が耐湿性
の面から好ましく使用することができ、特に好ましくは
フェノール系熱硬化性樹脂で被覆された赤燐である。
【0055】また、樹脂に配合される前の赤燐の平均粒
径は、成形品の難燃性、機械的強度や表面外観性の点か
ら50〜0.01μmのものが好ましく、さらに好まし
くは、45〜0.1μmのものである。
【0056】また、本発明で使用される赤燐の熱水中で
抽出処理した時の導電率(ここで導電率は赤リン5gに
純水100mLを加え、例えばオートクレーブ中で、1
21℃で100時間抽出処理し、赤燐ろ過後のろ液を2
50mLに希釈した抽出水の導電率を測定する)は、得
られる成形品の耐湿性、機械的強度、耐トラッキング
性、および表面性の点から通常0.1〜1000μS/
cmであり、好ましくは0.1〜800μS/cm、さ
らに好ましくは0.1〜500μS/cmである。
【0057】また、本発明で使用できる赤燐のホスフィ
ン発生量(ここでホスフィン発生量は、赤燐5gを窒素
置換した内容量500mLの例えば試験管などの容器に
入れ、10mmHgに減圧後、280℃で10分間加熱
処理し、25℃に冷却し、窒素ガスで試験管内のガスを
希釈して760mmHgに戻したのちホスフィン(リン
化水素)検知管を用いて測定し、つぎの計算式で求め
る。ホスフィン発生量(ppm)=検知管指示値(pp
m)×希釈倍率)は、得られる組成物の発生ガス量、押
出し、成形時の安定性、溶融滞留時機械的強度、成形品
の表面外観性、成形品による金属端子腐食などの点から
通常100ppm以下のものが用いられ、好ましくは5
0ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下であ
る。
【0058】好ましい赤燐の市販品としては、燐化学工
業社製“ノーバエクセル”140、“ノーバエクセル”
F5などが挙げられる。
【0059】本発明において赤燐を使用する場合、ハン
ドリング性や生産性の面から、実際に難燃性樹脂組成物
に配合されるべき赤燐量よりも赤燐濃度の高い樹脂組成
物(ロ)を製造し、使用することができる。この赤燐濃
度の高い樹脂組成物(ロ)は、ポリカーボネート樹脂
(A)またはビニル系(共)重合体(C)の一部または
全部と赤燐を一旦溶融混練して製造することができ、さ
らに残りのポリカーボネート樹脂(A)、グラフト
(共)重合体(B)、ビニル系(共)重合体(C)に赤
燐濃度の高い樹脂組成物(ロ)およびその他の添加剤を
溶融混練することにより、目的の難燃性樹脂組成物とす
ることができる。
【0060】かかる赤燐高濃度品(ロ)の赤燐配合量
は、赤燐高濃度品の製造面、赤燐の分散性の面、および
最終的に得られる樹脂組成物の難燃性、機械特性、成形
性の面から、ポリカーボネート樹脂(A)またはビニル
系(共)重合体(C)100重量部に対して、10〜3
00重量部が好ましく、特に好ましくは20〜200重
量部である。
【0061】かかる赤燐濃度の高い樹脂組成物(ロ)
は、いわゆるマスターペレットの形態で好ましく用いら
れるが、それに限定されず、いわゆるチップ状、粉末
状、あるいはそれらの混合物の形態であってもよい。ま
たかかる赤燐高濃度品(ロ)と配合する熱可塑性樹脂は
ペレット状であることが好ましいが、それに限定され
ず、いわゆるチップ状、粉末状あるいは、チップ状と粉
末状の混合物であってもよい。さらに、赤燐高濃度品
(ロ)と、それと配合する熱可塑性樹脂の形態、大き
さ、形状はほぼ同等、あるいは互いに似通っていること
が均一に混合し得る点で好ましい。樹脂組成物を製造す
るに際し、例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを
備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイ
プの混練機などを用いることができる。
【0062】また本発明では、(E)フェノール系樹脂
またはフェノキシ系樹脂から選ばれる1種以上をさらに
配合することにより、高度な難燃性付与が可能になる。
【0063】ここでフェノール系樹脂とは、フェノール
性水酸基を複数有する高分子であれば任意であり、例え
ばノボラック型、レゾール型および熱反応型の樹脂、あ
るいはこれらを変性した樹脂が挙げられる。これらは硬
化剤未添加の未硬化樹脂、半硬化樹脂、あるいは硬化樹
脂であってもよい。中でも、硬化剤未添加で、非熱反応
性であるノボラック型フェノール樹脂樹脂が難燃性、機
械特性、経済性の点で好ましい。
【0064】また、形状は特に制限されず、粉砕品、粒
状、フレーク状、粉末状、針状、液状などいずれも使用
できる。
【0065】上記フェノール系樹脂は必要に応じ、1種
または2種以上使用することができる。
【0066】フェノール系樹脂は特に限定するものでは
なく市販されているものなどが用いられる。例えば、ノ
ボラック型フェノール樹脂の場合、フェノール類とアル
デヒド類のモル比を1:0.7〜1:0.9となるよう
な比率で反応槽に仕込み、更にシュウ酸、塩酸、硫酸、
トルエンスルホン酸等の触媒を加えた後、加熱し、所定
の時間還流反応を行う。生成した水を除去するため真空
脱水あるいは静置脱水し、更に残っている水と未反応の
フェノール類を除去する方法により得ることができる。
これらの樹脂あるいは複数の原料成分を用いることによ
り得られる共縮合フェノール樹脂は単独あるいは2種以
上用いることができる。
【0067】また、レゾール型フェノール樹脂の場合、
フェノール類とアルデヒド類のモル比を1:1〜1:2
となるような比率で反応槽に仕込み、水酸化ナトリウ
ム、アンモニア水、その他の塩基性物質などの触媒を加
えた後、ノボラック型フェノール樹脂と同様の反応およ
び処理をして得ることができる。
【0068】ここで、フェノール類とはフェノール、o
−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモ
ール、p−tert−ブチルフェノール、tert−ブ
チルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−
メトキシフェノール、4,4’−ジヒドロキシフェニル
−2,2−プロパン、サルチル酸イソアミル、サルチル
酸ベンジル、サルチル酸メチル、2,6−ジ−tert
−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。これらのフ
ェノール類は一種または二種以上用いることができる。
一方、アルデヒド類とはホルムアルデヒド、パラホルム
アルデヒド、ポリオキシメチレン、トリオキサン等が挙
げられる。これらのアルデヒド類は必要に応じて1種ま
たは2種以上用いることができる。
【0069】また、本発明に使用されるフェノール系樹
脂は、空気中での示差熱熱重量同時測定装置(セイコー
電子工業社製、TG/DTA−200)を用いて、10
0〜800℃の温度領域を40℃/分の昇温速度で行っ
た加熱試験において、600℃での重量減量が好ましく
は70%以下であり、とりわけ60%以下のものが少量
添加により、高度な難燃性付与が可能になり、機械的特
性、耐熱性がより良好になるため好ましい。
【0070】フェノール系樹脂の分子量は特に限定され
ないが、好ましくは数平均分子量で200〜2,000
であり、特に400〜1,500の範囲のものが機械的
物性、流動性、経済性に優れ好ましい。なおフェノール
系樹脂はテトラヒドロフラン溶液、ポリスチレン標準サ
ンプルを使用することによりゲルパーミエションクロマ
トグラフィ法で測定できる。
【0071】またフェノキシ系樹脂とは芳香族二価フェ
ノール系化合物とエピクロルヒドリンとを各種の配合割
合で反応させることにより得られるフェノキシ樹脂ある
いはフェノキシ共重合体であり、下記一般式(2)で表
されるものである。
【0072】
【化3】 (上記式中、Xは直接結合、O、S、SO2、C(C
32、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を
表す。) 芳香族二価フェノール系化合物とエピクロルヒドリンの
配合割合により、得られるフェノキシ樹脂の分子量や末
端基に存在するエポキシ基含有量も異なる。フェノキシ
樹脂の分子量が高ければ、エポキシ基含有量も低くな
る。したがってエポキシ基含有量はフェノキシ樹脂の分
子量と相関する値である。
【0073】フェノキシ樹脂あるいはフェノキシ共重合
体の分子量は本発明の効果を発揮する範囲であれば、特
に制限はないが、数平均分子量が700〜100000
0のものであり、好ましくは数平均分子量が1000〜
50000のもの、さらに好ましくは2000〜300
00のものである。
【0074】ここで数平均分子量はテトラヒドロフラン
溶液中、ポリスチレン標準サンプルを使用することによ
りゲルパーミエションクロマトグラフィ法で測定でき
る。
【0075】ここで二価フェノール系化合物としては、
上記式(2)で表される構造を形成する二価のフェノー
ル系化合物であれば、特に制限はないが、例えば2,2
−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−
ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プ
ロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,
1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス
(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,
2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニ
ル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5
−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒ
ドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,
2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2’
−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビ
フェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビ
ス(2−ヒドロキシフェニル)メタン等が使用でき、こ
れら単独あるいは混合物として使用することができる。
【0076】また、形状は特に制限されず、粉砕品、粒
状、フレーク状、粉末状、針状、液状などいずれも使用
できるが、本発明の効果を発揮するものとして、好まし
くは、粒状、フレーク状、粉末状、針状のものであり、
特に好ましくは粒状、フレーク状、粉末状のものであ
る。
【0077】上記フェノキシ系樹脂は必要に応じ、1種
または2種以上使用することができる。
【0078】(E)フェノール系樹脂またはフェノキシ
系樹脂の添加量は、ポリカーボネート樹脂(A)、グラ
フト(共)重合体、ビニル系(共)重合体からなる樹脂
組成物(イ)100重量部に対して、通常0.1〜20
重量部、好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは
2〜10重量部である。(E)フェノール系樹脂または
フェノキシ系樹脂の添加量が0.1重量部未満の場合は
高度な難燃性付与効果が見られないため好ましくない。
また20重量部を越える場合は耐衝撃性の低下や成形品
の表面外観を損なうので好ましくない。
【0079】また本発明の難燃性樹脂組成物はさらに
(F)フッ素系樹脂および/またはシリコーン系化合物
を添加すると、燃焼時の延燃抑制、燃焼時の発熱量の抑
制、燃焼時の液滴の落下(ドリップ)抑制、耐熱性向上
効果を付与することができる。
【0080】そのようなフッ素系樹脂としては、ポリテ
トラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレ
ン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピ
レン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフル
オロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフル
オロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロ
プロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフ
ルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共
重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロ
エチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロア
ルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエ
チレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テト
ラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリ
デンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロ
エチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重
合体が好ましい。
【0081】またシリコーン系化合物とは、シリコーン
樹脂および/またはシリコーンオイルのことである。
【0082】本発明に使用されるシリコーン樹脂とは、
下記一般式(3)〜(6)で表される単位およびこれら
の混合物から選ばれる化学的に結合されたシロキサン単
位(ここで、Rはそれぞれ飽和または不飽和一価炭化水
素基、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、ア
リール基、ビニルまたはアリル基から選ばれる基を表
す。)からなるポリオルガノシロキサンであり、室温で
約200〜300000000センチポイズの粘度のも
のが好ましいが、上記のシリコーン樹脂である限り、そ
れに限定されるものではない。
【0083】
【化4】 本発明に使用されるシリコーンオイルとは、下記一般式
(7)で表されるものである(ここで、Rはアルキル基
またはフェニル基を表し、nは1以上の整数であ
る。)。使用するシリコーンオイルは、0.65〜10
0000センチトークスの粘度のものが好ましいが、上
記のシリコーンオイルである限り、それに限定されるも
のではない。
【0084】
【化5】 本発明ではシリコーン系化合物として、シリコーン樹脂
および/またはシリコーンオイルを使用することができ
るが、難燃性、耐熱性、耐ブリードアウト特性、耐接点
汚染性、湿熱処理後の電気特性低下の面から、シリコー
ン樹脂が好ましい。
【0085】上記(F)フッ素系樹脂および/またはシ
リコーン系化合物の添加量はポリカーボネート樹脂
(A)、グラフト(共)重合体、ビニル系(共)重合体
からなる樹脂組成物(イ)100重量部に対して、0.
01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部、更に
好ましくは0.1〜1重量部である。
【0086】さらに本発明の難燃性樹脂組成物は必要に
応じて、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊
維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラステ
ナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイ
カ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタ
ンおよび酸化アルミニウムなどの充填材などを配合する
ことができる。中でもガラス繊維、炭素繊維、金属繊維
が好ましく使用することができ、最も好ましいものとし
ては炭素繊維が用いられる。これら繊維状充填材の種類
は、一般に樹脂の強化用に用いられているものならば特
に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチ
ョプドストランド、ミルドファイバーなどから選択して
用いることができる。
【0087】なお、本発明に使用する上記の繊維状、紛
状、粒状あるいは板状充填剤はその表面を公知のカップ
リング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネー
ト系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理
して用いることもできる。
【0088】また、ガラス繊維、炭素繊維はエチレン/
酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、ポリウレタン
樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは
集束されていてもよい。
【0089】さらに本発明の難燃性樹脂組成物に対して
本発明の目的を損なわない範囲でヒンダードフェノール
系、リン系、イオウ系酸化防止剤などの酸化防止剤や熱
安定剤、紫外線吸収剤(例えばレゾルシノール、サリシ
レート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、
滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエス
テル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ス
テラアマイドおよびエチレンワックスなど)、着色防止
剤(亜リン酸塩、次亜リン酸塩など)、核剤、可塑剤、
難燃剤、帯電防止剤、および染料・顔料を含む着色剤
(硫化カドミウム、フタロシアニン、酸化チタンなど)
などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。
【0090】また本発明の難燃性樹脂組成物は通常公知
の方法で製造される。例えば、ポリカーボネート樹脂
(A)、グラフト(共)重合体(B)、ビニル系(共)
重合体(C)、芳香族ホスフェート(D)およびその他
の必要な添加剤を予備混合してまたはせずに押出機など
に供給して、150℃〜350℃の温度範囲において十
分溶融混練することにより調製される。この場合例え
ば”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出
機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機など
を用いることができ、特にアスペクト比をコントロール
することから、スクリューにニーディングエレメントを
数個挿入あるいは未挿入にすることにより使用すること
が好ましい。
【0091】本発明の熱可塑性樹脂組成物は難燃性だけ
でなく、機械特性、耐熱性、滞留安定性さらに成形加工
性にも優れ、溶融成形可能であるため押出成形、射出成
形、プレス成形などが可能であり、フィルム、管、ロッ
ドや希望する任意の形状と大きさを持った成形品に成形
し使用することができる。さらに難燃性を活かして電気
・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家
電機器などのハウジングおよびそれらの部品類など種々
の用途に用いることができる。
【0092】例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサ
ー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リ
レーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、
バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子
板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、ス
ピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モータ
ー、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジン
グ、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャー
シ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、
コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部
品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライ
ヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーデ
ィオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディ
スクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エア
コン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部
品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィス
コンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミ
リ関連部品複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸
受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部
品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関
連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表され
る光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミ
ナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレータ
ー、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気
系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノー
ケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン
冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャ
ブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサ
ー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、
スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジ
ションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サ
ーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバル
ブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォ
ーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモ
ーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィ
ッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤ
ーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパ
ネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒュー
ズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、
ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリ
フレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソ
レノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置
ケース、パソコン、プリンター、ディスプレイ、CRT
ディスプレイ、ファックス、コピー、ワープロ、ノート
パソコン、携帯電話、PHS、DVDドライブ、PDド
ライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブなど
の記憶装置のハウジング、シャーシ、リレー、スイッ
チ、ケース部材、トランス部材、コイルボビンなどの電
気・電子機器部品、自動車部品、機械部品、その他各種
用途に有用である。
【0093】
【実施例】本発明をさらに具体的に説明するために、以
下、実施例および比較例を挙げて説明する。なお、実施
例中の部数および%はそれぞれ重量部および重量%を示
し、単位「”」はインチ(1インチ=2.54cm)を
意味する。 参考例1 (A)ポリカーボネート樹脂 ”ユーピロン S3000”(三菱エンジニアプラスチ
ックス社製)を使用した。 参考例2 (B)グラフト共重合体の調製 以下にグラフト共重合体の調製方法を示す。なおグラフ
ト率は次の方法で求めたものである。グラフト共重合体
の所定量(m)にアセトンを加え4時間還流した。この
溶液を8000rpm(遠心力10,000G(約10
0×103 m/s2 ))30分遠心分離後、不溶分を濾
過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、重量
(n)を測定した。
【0094】グラフト率=[(n)−(m)×L]/
[(m)×L]×100 ここでLはグラフト共重合体のゴム含有率を意味する。
【0095】ポリブタジエンラテックス(平均ゴム粒子
径0.3μm、ゲル含率85%)60部(固形分換算)
の存在下でスチレン70%、アクリロニトリル30%か
らなる単量体混合物40部を加えて乳化重合した。得ら
れたグラフト共重合体は硫酸で凝固した後、任意量の水
酸化ナトリウムでpH調整し、洗浄、濾過、乾燥してp
H値の異なる以下3種のパウダ−状のグラフト共重合体
<B−1>、<B−2>、<B−3>を調整した。ここ
で、pH値とは各グラフト(共)重合体を10重量%水
スラリーとし、pHメーターで測定した値を示す。
【0096】グラフト共重合体<B−1>のpH値:
3.0 グラフト共重合体<B−2>のpH値:7.2 グラフト共重合体<B−3>のpH値:8.4 得られたグラフト共重合体<B−1>〜<B−3>はい
ずれもグラフト率が36%であった。このグラフト共重
合体<B−1>〜<B−3>は、いずれもスチレン構造
単位70%およびアクリロニトリル30%からなる非グ
ラフト性の共重合体を18.1%含有するものであっ
た。またN,N−ジメチルホルムアミド可溶分の極限粘
度がいずれも0.48dl/gであった。 参考例3 (C)ビニル系共重合体の調製 スチレン70%、アクリロニトリル30%からなる単量
体混合物を懸濁重合してビニル系共重合体<C−1>を
調製した。得られたビニル系共重合体<C−1>はN,
N−ジメチルホルムアミド可溶分の極限粘度が0.73
であった。 参考例4 (D)燐系難燃剤 <D−1>下記式(8)で表される芳香族ビスホスフェ
ート“PX−200”(大八化学社製)を使用した。
【0097】
【化6】 <D−2>赤燐“ノーバエクセル140”(燐化学工業
社製)を使用した。 参考例5(E)フェノール系樹脂および/またはフェノ
キシ系樹脂 <E−1>ノボラック型フェノール樹脂である“スミラ
イトレジン PR53195”(住友デュレズ社製)を
使用した。 <E−2>フェノキシ樹脂である“フェノトート YP
−50”(東都化成社製)を使用した。 参考例6(F)フッ素系樹脂および/またはシリコーン
系化合物 <F−1>ポリテトラフルオロエチレンであるポリフロ
ンF201(ダイキン工業(株)製)を使用した。 <F−2>シリコーン樹脂である”DC4−7081”
(東レダウコーニングシリコーン社製)を使用した。 参考例7 炭素繊維(CF) 平均繊維長6mmの炭素繊維を使用した。 実施例1〜10、比較例1〜6 参考例で調製したポリカーボネート樹脂(A)、グラフ
ト(共)重合体(B)、ビニル系(共)重合体(C)、
芳香族ホスフェート(D)およびその他の必要な添加剤
を表に示した配合比で混合し、ベント付き30mmφ2
軸押出機(池貝鉄工社製、PCM−30)を使用し、2
70℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレッ
ト状のポリマを製造した。次いで射出成形機(住友重機
社製、プロマット40/25)により、射出圧を下限圧
+1MPaでそれぞれの試験片を成形し、次の条件で物
性を測定した。 (1)難燃性:射出成形により得た1/16”厚み難燃
性評価用試験片についてUL94に定められている評価
基準に従い、5本の試験片について難燃性を評価した。
難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>HBの順に低
下する。 (2)耐衝撃性:ASTM D256−56Aに従い耐
衝撃性を評価した。 (3)耐熱性:ASTM D648(荷重:1.82M
Pa)に従い耐熱性を評価した。 (4)流動性:メルトインデクサー(東洋精機社製)を
用いて、250℃、98N荷重条件での10分間流出量
MI値(g/10分)を測定した。このMI値が大きい
ほど流動性に優れることを示す。 (5)滞留安定性:上記メルトインデクサー中に250
℃で60分間滞留させた後、上記(4)項と同条件でM
I値(g/10分)を測定し、下記式によりMI保持率
を求め、滞留安定性の指標とした。
【0098】MI保持率(%)=(滞留後のMI値)/
(滞留なしでのMI値)×100 MI保持率が100%に近い程、滞留安定性に優れるこ
とを示し、MI保持率が100%以上の場合は滞留によ
りポリマーが分解して低分子量化していることを表し、
逆にMI保持率が100%以下の場合は滞留によりポリ
マーがゲル化していることを示している。
【0099】各サンプルの難燃性、耐衝撃性、耐熱性、
流動性、滞留安定性の測定結果を表1〜6にまとめて示
す。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】 なお、表2中に示すポリカーボネート成分の抽出後ガラ
ス転移温度とは、以下の手順、測定により得られた値で
ある。
【0102】表1に示した組成の溶融混練後の樹脂組成
物をテトラヒドロフラン中に入れ、80℃で4時間抽出
を行い、この可溶部を濃縮した残さをさらにアセトン中
に入れ80℃で4時間抽出を行った後の不溶部について
評価を行った。1H−NMR測定により該不溶部がポリ
カーボネート成分であることを確認し、DSCを用いて
ガラス転移温度を測定した。
【0103】実施例1〜5、比較例1〜3の測定結果よ
り、PC/ABSアロイにおいて、燐系難燃剤ととも
に、pH値が本発明の範囲内であるグラフト共重合体<
B−1>、<B−2>を使用した場合、燃焼時間が短縮
し、かつ耐衝撃性、耐熱性、流動性が良好で、とりわけ
滞留安定性に優れる樹脂組成物が得られることがわか
る。
【0104】また、実施例1〜5のポリカーボネート成
分を抽出した後のポリカーボネートのガラス転移温度
は、いずれも140℃以上であることが確認できる。
【0105】またフッ素系樹脂あるいはシリコーン系化
合物を添加することにより、燃焼時のドリップを抑制し
た高度な難燃性付与が可能となる。
【0106】一方、pH値が本発明の範囲を外れるグラ
フト共重合体<B−3>を使用した場合、PC成分の溶
融混練後のガラス転移温度が大きく低下し、樹脂組成物
は燃焼時間が長く難燃性に劣る。さらに滞留後にMI値
が大きく上昇することから、滞留によるポリマーの分子
量低下が著しく、滞留安定性に劣ることがわかる。
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】 実施例6〜8、比較例4〜5の測定結果より、PC/A
BSアロイにおいて、燐系難燃剤とともに、pH値が本
発明の範囲内であるグラフト共重合体<B−1>、<B
−2>を使用し、さらにフェノール系樹脂またはフェノ
キシ系樹脂を添加することにより、より高度な難燃性レ
ベルを達成することができ、かつ耐衝撃性、耐熱性、流
動性が良好で、とりわけ滞留安定性に優れる樹脂組成物
が得られることがわかる。
【0109】一方、pH値が本発明の範囲を外れるグラ
フト共重合体<B−3>を使用した樹脂組成物は、難燃
性が得られず、さらに滞留後にMI値が大きく低下する
ことから、滞留によりゲル化が起こり、著しく滞留安定
性に劣ることがわかる。
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】 実施例9〜10、比較例6の測定結果より、炭素繊維を
添加した場合も、pH値が本発明の範囲内であるグラフ
ト共重合体<B−1>、<B−2>を使用することによ
り、高度な難燃性を付与することができ、かつ耐衝撃
性、耐熱性、流動性が良好で、とりわけ滞留安定性に優
れる樹脂組成物が得られることがわかる。
【0112】一方、pH値が本発明の範囲を外れるグラ
フト共重合体<B−3>を使用した樹脂組成物は、難燃
性が得られず、さらに滞留後にMI値が大きく低下する
ことから、滞留によりゲル化が起こり、著しく滞留安定
性に劣ることがわかる。
【0113】
【発明の効果】本発明の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂の
機械的特性を損なうことなく、優れた難燃性を示し、と
りわけ滞留安定性に優れる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 5/49 C08K 5/49 C08L 25/00 C08L 25/00 27/12 27/12 51/04 51/04 61/06 61/06 71/10 71/10 83/04 83/04 Fターム(参考) 4F071 AA12X AA14X AA22 AA22X AA26 AA33X AA41 AA47 AA50 AA67 AA77 AB05 AB25 AC15 AE07 AF47 AH07 AH16 AH17 BA01 BB03 BB05 BB06 BC01 BC03 BC05 BC06 4J002 BC00Y BC08Y BC09Y BD12U BN06X BN12X BN14X BN15X BN16X CC03Z CG00W CG01W CH08Z CP03U CQ01U DA056 DH046 EW046 EW126 EW146 EW156 FD13U FD136 GM00 GN00 GQ00

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)ポリカーボネート樹脂10〜90重
    量%、(B)ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体を含
    む単量体混合物をグラフト重合してなるグラフト(共)
    重合体80〜5重量%、(C)芳香族ビニル系単量体ま
    たは単量体混合物を重合して得られるビニル系(共)重
    合体1〜85重量%からなる樹脂組成物(イ)100重
    量部に対して、(D)燐系難燃剤1〜30重量部を含有
    する難燃性樹脂組成物であって、かつ(B)グラフト
    (共)重合体のpH値(ここで、pH値はグラフト
    (共)重合体を10重量%水スラリーとし、pHメータ
    ーで測定した値を示す)が7.5以下であることを特徴
    とする難燃性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】(A)ポリカーボネート樹脂10〜98重
    量%、(B)ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体を含
    む単量体混合物をグラフト重合してなるグラフト(共)
    重合体90〜2重量%、(C)芳香族ビニル系単量体ま
    たは単量体混合物を重合して得られるビニル系(共)重
    合体1〜95重量%からなる樹脂組成物(イ)100重
    量部に対して、(D)燐系難燃剤1〜30重量部を含有
    する難燃性樹脂組成物であって、かつ該難燃性樹脂組成
    物を溶融混練することにより製造した後、該難燃性樹脂
    組成物から抽出し得られたポリカーボネート(A’)の
    ガラス転移温度が140℃以上であることを特徴とする
    難燃性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】請求項1記載の難燃性樹脂組成物を溶融混
    練することにより製造した後、該難燃性樹脂組成物から
    抽出し得られたポリカーボネート(A’)のガラス転移
    温度が140℃以上であることを特徴とする難燃性樹脂
    組成物。
  4. 【請求項4】(D)燐系難燃剤が下記一般式(1)で表
    される芳香族ホスフェートである請求項1〜3いずれか
    記載の難燃性樹脂組成物。 【化1】 (上記式中、R1〜R8は、同一または相異なる水素原子
    または炭素数1〜5のアルキル基を表す。またAr1
    Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なるフェニル基
    あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフ
    ェニル基を表す。また、Yは直接結合、O、S、S
    2、C(CH32、CH2、CHPhを表し、Phはフ
    ェニル基を表す。またnは0以上の整数であり、異なる
    nの混合物でもよい。またk、mはそれぞれ0以上2以
    下の整数であり、かつk+mは0以上2以下の整数であ
    る。)
  5. 【請求項5】上記樹脂組成物(イ)100重量部に対し
    て、(E)フェノール系樹脂またはフェノキシ系樹脂か
    ら選ばれる1種以上を0.1〜20重量部さらに配合し
    てなる請求項1〜4いずれか記載の難燃性樹脂組成物。
  6. 【請求項6】上記樹脂組成物(イ)100重量部に対し
    て、(F)フッ素系樹脂および/またはシリコーン系化
    合物0.01〜3重量部をさらに配合してなる請求項1
    〜5いずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
  7. 【請求項7】請求項1〜6いずれかに記載の難燃性樹脂
    組成物からなる成形品。
  8. 【請求項8】電気・電子部品、自動車部品、機械機構部
    品、OA機器、または家電機器のハウジングおよびそれ
    らの部品である請求項7記載の成形品。
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