JP4934891B2 - 難燃性樹脂組成物、その製造方法および難燃性成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高度な難燃性を有すると共に、耐衝撃性および耐熱性に優れた難燃性樹脂組成物、その製造方法および難燃性成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリスチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂は、すぐれた機械的性質、成形加工性および電気絶縁性などの特性を生かして、従来から家庭電気機器、OA機器および自動車などの各部品を始めとする広範な分野で使用されている。
【0003】
しかしながら、熱可塑性樹脂は、用途によっては安全性の問題から難燃性が必要になり、この難燃化に対して種々の技術が提案されてきた。
【0004】
熱可塑性樹脂の難燃化技術としては、難燃化効率の高い臭素化合物などのハロゲン系難燃剤と酸化アンチモンを樹脂に配合して難燃化する方法が一般的に採用されている。しかしながら、この方法は、燃焼の際の発煙量が多いことなどの問題点を有していた。
【0005】
そこで、近年では、これらのハロゲン系難燃剤の欠点を克服するために、ハロゲンを全く含まない難燃性樹脂または難燃性樹脂組成物の実現が強く望まれている。
【0006】
塩素および臭素系難燃剤を使用せずに熱可塑性樹脂を難燃化する方法としては、例えば特開平2−115262号公報に、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とからなる樹脂組成物に対し、燐酸エステルを配合する方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、特開平2−115262号公報に記載の難燃性樹脂組成物では、高度な難燃性レベルを達成するために、ポリカーボネート樹脂あるいは燐酸エステルを多量に添加しなければならず、この結果として流動性や耐熱性の低下や、衝撃強度の厚み依存性の増加などが招かれるばかりか、組成物の滞留安定性に劣るため、リサイクル使用が困難であるという問題点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果、達成されたものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、高度な難燃性を有すると共に、耐衝撃性および耐熱性に優れた難燃性樹脂組成物、その製造方法および難燃性成形品を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、スチレン系樹脂と、特定の加熱重量減量特性を有する熱可塑性樹脂とを、特定の割合で配合して得られる樹脂組成物において、その樹脂相分離構造を制御することにより、優れた難燃性が付与できることに加え、かつ機械特性、耐衝撃性、耐熱性に優れることを見い出したものである。
【0011】
すなわち、本発明の難燃性樹脂組成物は、(A)ABS樹脂からなるポリスチレン系樹脂60〜80容量%および(B)空気中での加熱試験(昇温速度40℃/分)による600℃での重量減量が80%未満のポリカーボネート樹脂およびポリアリレート樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂40〜20容量%からなり、かつ下記一般式(1)を満たす樹脂組成物であって、さらに電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において、前記熱可塑性樹脂(B)がマトリックス相(連続相)、前記ポリスチレン系樹脂(A)が分散相となる相構造を形成していることを特徴とする。
【数1】
(ここで、溶融粘度は、温度、ずり速度、オリフィスなどの測定条件を同一としてキャピログラフィーで測定した値であり、また測定温度は(A)成分と(B)成分およびその他の添加剤を混練する温度を示す。)
【0013】
また、本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法は、前記ポリスチレン系樹脂(A)および前記熱可塑性樹脂(B)を溶融混合するに際し、前記ポリスチレン系樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)の各溶融粘度を、前記一般式(1)を満たす溶融粘度比に制御することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の難燃性成形品は、前記の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とし、特に機械機構部品、電気電子部品または自動車部品として有用である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の難燃性樹脂組成物、その製造方法および難燃性成形品について具体的に説明する。
【0016】
本発明で使用する(A)ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体およびゴム変性スチレン系樹脂などが挙げられる。
【0017】
ここで、ゴム変性スチレン系樹脂とは、ビニル芳香族系重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が分散してなるグラフト重合体を意味し、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル系単量体および必要に応じてこれと共重合可能なビニル系単量体を加えた単量体混合物を、公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合または乳化重合に供することにより得られるポリマである。
【0018】
このようなゴム変性スチレン系樹脂の具体例としては、例えば、耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂、AAS樹脂(アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体)およびAES樹脂(アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン共重合体)などが挙げられる。
【0019】
このようなゴム変性スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体にグラフトした構造をとったものと、スチレン系単量体を含有する(共)重合体がゴム質重合体に非グラフトした構造をとったものを含むものである。
【0020】
具体的には、ゴム質重合体5〜80重量部に芳香族ビニル系単量体を20重量%以上含有する単量体または単量体混合物95〜20重量部をグラフト重合して得られる(a)グラフト(共)重合体5〜100重量%と、芳香族ビニル系単量体を20重量%以上含有する単量体または単量体混合物を重合して得られる(b)ビニル系(共)重合体0〜95重量%とからなるものが好適である。
【0021】
上記ゴム質重合体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、ジエン系ゴムが好ましく用いられる。具体的にはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体などのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴム、およびポリイソプレン、エチレン−プロピレン−ジエン系三元共重合体などが挙げられる。なかでもポリブタジエンまたはブタジエン共重合体が好ましく使用される。
【0022】
ゴム質重合体のゴム粒子径は特に制限されないが、ゴム粒子の重量平均粒子径が0.15〜0.6μm、特に0.2〜0.55μmのものが、耐衝撃性に優れることから好ましい。なかでも、重量平均粒子径が0.20〜0.25μmのものと、重量平均粒子径が0.50〜0.65μmのものとの重量比が、90:10〜60:40の範囲にあるゴム質重合体の使用が、耐衝撃性および薄肉成形品の落錘衝撃が著しく優れることから好ましい。
【0023】
なお、ゴム粒子の平均重量粒子径は、「Rubber Age Vol.88p.484〜490(1960)by E.Schmidt, P.H.Biddison」に記載のアルギン酸ナトリウム法(アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率より累積重量分率50%の粒子径を求める)により測定することができる。
【0024】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、o−エチルスチレンおよびp−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく使用される。
【0025】
芳香族ビニル系単量体以外の単量体としては、一層の耐衝撃性向上を目的とする場合にはシアン化ビニル系単量体が、靭性、色調の向上を目的目的とする場合には(メタ)アクリル酸エステル系単量体が、それぞれ好ましく用いられる。シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく使用される。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチルによるエステル化物などが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましく使用される。
【0026】
また、必要に応じて他のビニル系単量体、例えばマレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体などを使用することもできる。
【0027】
(a)グラフト(共)重合体において用いる単量体または単量体混合物は、樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、芳香族ビニル系単量体を20重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上含有することが好ましい。シアン化ビニル系単量体を混合する場合には、樹脂組成物の成形加工性の観点から、60重量%以下、さらに50重量%以下であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を混合する場合には、靱性、対衝撃性の観点から、80重量%以下、特に75重量%以下であることが好ましい。単量体または単量体混合物における芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および(メタ)アクリル酸エステル系単量体の配合量の総和は95〜20重量%、さらに好ましくは90〜30重量の範囲である。
【0028】
(a)グラフト(共)重合体を得る際のゴム質重合体と単量体混合物との割合は、全グラフト共重合体100重量部中に、ゴム質重合体5〜80重量部、さらに好ましくは10〜70重量部である。また、単量体または単量体混合物の割合は、95〜20重量部、さらに好ましくは80〜30重量部である。ゴム質重合体の割合が5重量部未満では、樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、80重量部を越える場合は、樹脂組成物の耐衝撃性および成形品の外観が損なわれる傾向が招かれる。
【0029】
(a)グラフト(共)重合体は、公知の重合法で得ることができる。例えばゴム質重合体ラテックスの存在下に、単量体および連鎖移動剤の混合物と乳化剤に溶解したラジカル発生剤の溶液を連続的に重合容器に供給して乳化重合する方法などによって得ることができる。
【0030】
(a)グラフト(共)重合体は、ゴム質重合体に単量体または単量体混合物がグラフトした構造をとった材料の他に、グラフトしていない共重合体を含有したものである。(A)グラフト(共)重合体のグラフト率には特に制限がないが、耐衝撃性および光沢が均衡して優れる樹脂組成物を得るためには、20〜80重量%、特に25〜50重量%の範囲であることが好ましい。
【0031】
ここで、グラフト率は次式により算出される値である。
グラフト率(%)=<ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量>/<グラフト共重合体のゴム含有量>×100
この(a)グラフト(共)重合体のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度[η](30℃で測定)は、0.25〜0.6dl/g、特に0.25〜0.5dl/gの範囲であることが、またN,N−ジメチルホルムアミド溶媒、30℃測定した場合には0.25〜0.75dl/g、特に0.35〜0.7dl/gの範囲であることが、いずれも優れた耐衝撃性の樹脂組成物が得られることから好ましい。
【0032】
(b)ビニル系(共)重合体は、芳香族ビニル系単量体を必須とする共重合体である。芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエンおよびo−エチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく使用される。これらは1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
芳香族ビニル系単量体以外の単量体としては、一層の耐衝撃性向上を目的とする場合には、シアン化ビニル系単量体が好ましく用いられる。靭性、色調の向上を目的賭する場合には、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましく用いられる。シアン化ビニル系単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルの使用が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、i−ブチルによるエステル化物などが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルの使用が好ましい。
【0034】
また、必要に応じて使用されるこれらと共重合可能な他のビニル系単量体としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体が挙げられる。
【0035】
(b)ビニル系(共)重合体の構成成分である芳香族ビニル系単量体の割合は、樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、全単量体に対し20重量%以上が好ましく、さらに好ましくは50重量%以上である。シアン化ビニル系単量体を混合する場合には、耐衝撃性、流動性の観点から60重量%以下が好ましく、さらに好ましくは50重量%以下である。また(メタ)アクリル酸エステル系単量体を混合する場合には、靭性、耐衝撃性の観点から80重量%以下が好ましく、さらに75重量%以下が好ましく用いられる。また、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を混合する場合には、60重量%以下が好ましく、50重量%以下がさらに好ましい。
【0036】
(b)ビニル系(共)重合体の特性に制限はないが、極限粘度[η](メチルエチルケトン溶媒、30℃測定)が、0.4〜0.65dl/g、特に0.45〜0.55dl/gの範囲の範囲のものが、またN,N−ジメチルホルムアミド溶媒、30℃測定した場合には、0.35〜0.85dl/g、特に0.45〜0.7dl/gの範囲のものが、いずれも優れた耐衝撃性および成形加工性を有する樹脂組成物が得られることから好ましい。
【0037】
(b)ビニル系(共)重合体の製造法には特に制限がなく、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状−懸濁重合法および溶液−塊状重合法など通常の方法を用いることができる。
【0038】
また、本発明においては、必要に応じてカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびオキサゾリン基から選ばれた少なくとも一種の官能基を含有する変性ビニル系重合体(以下、変性ビニル系重合体と略称する。)を用いることもできる。
【0039】
ここでいう変性ビニル系重合体とは、一種または二種以上のビニル系単量体を重合または共重合して得られる構造を有し、かつ分子中にカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびオキサゾリン基から選ばれた少なくとも一種の官能基を含有する重合体である。これらの官能基を含有する化合物の含有量に関しては、特に制限されないが、変性ビニル系重合体中0.01〜20重量%の範囲であることが好ましい。
【0040】
変性ビニル系重合体中にカルボキシル基を導入する方法には特に制限はないが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸などのカルボキシル基または無水カルボキシル基を有するビニル系単量体を所定のビニル系単量体と共重合する方法、γ,γ´−アゾビス(γ−シアノバレイン酸)、α,α´−アゾビス(α−シアノエチル)−p−安息香酸および過酸化サクシン酸などのカルボキシル基を有する重合発生剤および/またはチオグリコール酸、α−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプト−イソ酪酸および2,3または4−メルカプト安息香酸などのカルボキシル基を有する重合度調節剤を用いて、所定のビニル系単量体を(共)重合する方法、およびメタクリル酸メチルやアクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体と芳香族ビニル系単量体、必要に応じてシアン化ビニル系単量体との共重合体をアルカリによってケン化する方法などを用いることができる。
【0041】
ヒドロキシル基を導入する方法についても特に制限はないが、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、および4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体を、所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
【0042】
エポキシ基を導入する方法についても特に制限はないが、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、およびp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体を、所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
【0043】
アミノ基を導入する方法についても特に制限はないが、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどのアミノ基、およびその誘導体を有するビニル系単量体を、所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
【0044】
またオキサゾリン基を導入する方法についても特に制限はないが、例えば2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリン、および2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体を、所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
【0045】
これら変性ビニル系重合体の特性には特に制限はないが、極限粘度[η](メチルエチルケトン溶媒、30℃測定)が、0.2〜0.65dl/g、特に0.35〜0.6dl/gの範囲のものが、またN,N−ジメチルホルムアミド溶媒、30℃測定した場合には0.3〜0.9dl/g、特に0.4〜0.75dl/gの範囲のものが、いずれも優れた難燃性、耐衝撃性および成形加工性を有する樹脂組成物が得られることから好ましい。
【0046】
また、本発明で使用する(B)空気中での加熱試験(昇温速度40℃/分)による600℃での重量減量が80%以下の熱可塑性樹脂とは、より具体的には、空気中での示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子工業社製、TG/DTA−200)を用いて、100〜800℃の温度領域を40℃/分の昇温速度で行った加熱試験において、600℃での重量減量が80%以下のものが好ましく、とりわけ600℃での重量減量が70%以下のものが好ましい。
【0047】
本発明の効果を十分に発揮する具体的な(B)熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリアリレート樹脂および液晶性ポリエステル樹脂から選ばれた1種以上の樹脂が挙げられ、ポリカーボネート樹脂およびポリアリレート樹脂が特に好ましく用いられる。
【0048】
ここで、ポリカーボネート樹脂とは、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲンまたは炭酸ジエステルとを反応させることにより得られるポリマである。ここでいう二価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンおよび1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが挙げられ、これらは単独あるいは混合物として使用することができる。
【0049】
また、ポリアリレート樹脂としては、下記式(2)で表される構造を有するものである。すなわち、芳香族ジオキシ単位と芳香族ジカルボキシ単位とからなる液晶性ポリエステル樹脂以外の熱可塑性ポリエステルである。
【0050】
【化2】
(ただし上記式中、Ar5 は、ハロゲンを含まない芳香族ジオキシ単位、Ar6 はハロゲンを含まない芳香族ジカルボキシ単位を表す。)
ここで、Ar5 としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、フェニルレゾルシノール、t−ブチルレゾルシノール、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどの1種あるいは2種以上から生成した構造単位が挙げられる。
【0051】
また、Ar6 としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、および4,4’ジフェニルエーテルジカルボン酸などの1種あるいは2種以上から生成した構造単位が挙げられる。
【0052】
本発明の難燃性樹脂組成物における(A)ポリスチレン系樹脂(以下、(A)成分と呼ぶことがある。)および(B)空気中での加熱試験(昇温速度40℃/分)による600℃での重量減量が80%未満の熱可塑性樹脂(以下、(B)成分と呼ぶことがある。)の配合割合は、(A)成分/(B)成分=55〜85容量%/45〜15容量%、好ましくは、(A)成分/(B)成分=60〜80容量%/40〜20容量%、さらに好ましくは(A)成分/(B)成分=65〜75容量%/35〜25容量%の範囲である。(A)成分の配合割合が上記の範囲を越えると、本発明の特徴である(B)成分が連続相を形成することが困難となり、また(A)成分の割合が上記の範囲未満になると、樹脂組成物の流動性が低下するばかりか、表面外観を損なうため好ましくない。
【0053】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(B)成分が少量成分であっても、この(B)成分が連続相(マトリックス相)を形成し、大量成分である(A)成分が分散相を形成する相構造とすることが必須である。
【0054】
しかしながら、一般的には少量成分は分散相となり、多量成分がマトリックス相になるのが通常である。
【0055】
樹脂組成物の相構造を調べるには電子顕微鏡で観察するが、不連続相の大きさは配合する熱可塑性樹脂の種類、混練状況によって異なるので、不連続相が確認できる倍率を選ぶ必要がある。例えば、ABS樹脂とポリカーボネート樹脂の場合には10μm×10μmの広さを見れば過不足なく確認することが出きる。
【0056】
そこで、本発明の難燃性樹脂組成物を製造するに際しては、この特異的な相分離構造をとるために、(A)成分/(B)成分の溶融粘度比が下記一般式(1)を満たすように、(A)成分および(B)成分の各溶融粘度を適切に制御することが重要な要件となる。
【0057】
【数2】
(ここで、溶融粘度は、温度、ずり速度、オリフィスなどの測定条件を同一としてキャピログラフィーで測定した値であり、また測定温度は(A)成分と(B)成分およびその他の添加剤を混練する温度を示す。)
(A)成分および(B)成分の溶融粘度を調整する方法としては、特に制限はないが、例えば(イ)目的の溶融粘度となる分子量のポリマーを使用する方法、(ロ)分子量の異なるポリマーを混合して目的の溶融粘度となるように調整する方法および(ハ)目的の溶融粘度となるような任意の添加剤を混合する方法などが挙げられる。
【0058】
ここで、(B)成分としてポリマ混合物を使用する場合には、ポリマ混合物の空気中での加熱試験(昇温速度40℃/分)による600℃での重量減量が80%未満であることが必要である。
【0059】
かくしてなる本発明の難燃性樹脂組成物は、上記のごとき特異的な相分離構造をとることに起因して、(A)スチレン系樹脂の優れた耐衝撃性および耐熱性を損なうことがなく、逆に向上する傾向さえ得ることができるばかりか、難燃性、特にJIS K 7021に準じて測定した限界酸素指数(LOI)が改善できるという効果を発現する。
【0060】
また、本発明の難燃性樹脂組成物は、さらに(C)非ハロゲン系難燃剤を添加することにより、より優れた難燃性を発揮することができる。
【0061】
本発明に使用される(C)非ハロゲン系難燃剤には特に制限はなく、例えば燐系難燃剤、窒素系難燃剤、金属酸化物や金属水酸化物あるいは金属水酸化物の水和物などが挙げられ、なかでも燐系難燃剤を最も好ましく用いることができる。
【0062】
本発明に使用される燐系難燃剤とは、燐を含有する有機または無機化合物であれば特に制限はなく、例えば赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、ポリホスファゼン、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネートおよびホスフィンオキシドなどが挙げられ、なかでもポリ燐酸アンモニウムおよびホスフェートが好ましく、特に下記式(1)で表される芳香族ホスフェートを最も好ましく用いることができる。
【0063】
【化3】
(ただし、上記式R1 〜R8 は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。また、Ar1 、Ar2 、Ar3 、Ar4 は、同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。Yは直接結合、O、S、SO2 、C(CH3 )2 、CH2 、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。また、nは0以上の整数、k、mはそれぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは0以上2以下の整数を表す。)
ここで、前記式(1)で表される難燃剤の構造について説明する。前記式(1)の式中nは0以上の整数である。またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0064】
また、前記式(1)の式中、R1 〜R8 は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基などが挙げられるが、水素、メチル基およびエチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
【0065】
またAr1 、Ar2 、Ar3 、Ar4 は同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基およびアントリル基などが挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基およびナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基およびキシリル基が好ましい。
【0066】
また、Yは直接結合、O、S、SO2 、C(CH3 )2 、CH2 、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
【0067】
このような芳香族ホスフェートとしては、大八化学社製“PX−200”、“PX−201”、“CR−733S”、“CR−741”、“CR747”、”TCP”、”TXP”、”CDP”、“TPP”を使用することができる。本発明においては2種以上の芳香族ホスフェートの混合物であってもよい。
【0068】
本発明における非ハロゲン系難燃剤(C)の添加量は、(A)ポリスチレン系樹脂55〜85容量%および(B)空気中での加熱試験(昇温速度40℃/分)による600℃での重量減量が80%未満の熱可塑性樹脂45〜15容量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは3〜30重量部の範囲である。
【0069】
また、本発明の難燃性樹脂組成物に対し、さらに(D)フッ素系樹脂またはシリコーン系化合物を添加した場合には、燃焼時の延燃抑制効果、燃焼時の発熱量の抑制効果、燃焼時の液滴の落下(ドリップ)抑制効果、および耐熱性向上効果を付与することができる。
【0070】
そのようなフッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドおよび(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体などが挙げられるが、なかでもポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体およびポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレンおよび(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましく使用できる。
【0071】
またシリコーン系化合物とは、シリコーン樹脂および/またはシリコーンオイルのことである。
【0072】
本発明に使用されるシリコーン樹脂とは、下記一般式(3)〜(6)で表される単位およびこれらの混合物から選ばれる化学的に結合されたシロキサン単位(ここで、Rはそれぞれ飽和または不飽和一価炭化水素基、水素原子、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アリール基、ビニルまたはアリル基から選ばれる基を表す。)からなるポリオルガノシロキサンであり、室温で約200〜300000000センチポイズの粘度のものが好ましいが、上記のシリコーン樹脂である限り、それに限定されるものではない。
【0073】
【化4】
本発明に使用されるシリコーンオイルとは、下記一般式(7)で表されるものである(ここで、Rはアルキル基またはフェニル基を表し、nは1以上の整数である。)。使用するシリコーンオイルは、0.65〜100000センチトークスの粘度のものが好ましいが、上記のシリコーンオイルである限り、それに限定されるものではない。
【0074】
【化5】
本発明においては、シリコーン系化合物として、シリコーン樹脂および/またはシリコーンオイルを使用することができるが、難燃性、耐熱性、耐ブリードアウト特性、耐接点汚染性および湿熱処理後の電気特性低下の面から、なかでもシリコーン樹脂が好ましく使用される。
【0075】
上記(D)フッ素系樹脂またはシリコーン系化合物の添加量は、(A)ポリスチレン系樹脂55〜85容量%および(B)空気中での加熱試験(昇温速度40℃/分)による600℃での重量減量が80%未満の熱可塑性樹脂45〜15容量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部、更に好ましくは0.1〜1重量部の範囲である。
【0076】
また、本発明の難燃性樹脂組成物に対し、さらに充填材を添加することにより、強度、剛性および耐熱性などを大幅に向上させることができる。充填材の形状としては、繊維状、粒状などいずれでもよく、また両者を併用することも可能である。
【0077】
このような充填材の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタンおよび酸化アルミニウムなどが挙げられ、なかでもチョップドストランドタイプのガラス繊維が好ましく用いられる。
【0078】
さらに、本発明の目的を損なわない範囲であれば、本発明の難燃性樹脂組成物に対し、さらにヒンダードフェノール系以外のリン系、イオウ系などの酸化防止剤や熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、および染料・顔料を含む着色剤などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。
【0079】
本発明の難燃性樹脂組成物は、通常公知の方法で製造される。例えば、(A)ポリスチレン系樹脂、(B)空気中での加熱試験(昇温速度40℃/分)による600℃での重量減量が80%未満の熱可塑性樹脂、(C)非ハロゲン系難燃剤およびその他の必要な添加剤を、予備混合してまたはせずに押出機などに供給して、150℃〜350℃の温度範囲において十分溶融混練することにより調製される。この場合には、例えば”ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いることができ、特にアスペクト比をコントロールすることから、スクリューにニーディングエレメントを数個挿入あるいは未挿入にすることにより使用することが好ましい。
【0080】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、難燃性に優れるばかりか、機械特性、耐熱性、滞留安定性さらに成形加工性にも優れ、溶融成形可能であるため、押出成形、射出成形、プレス成形などが可能であり、フィルム、管、ロッドや希望する任意の形状と大きさを持った成形品に成形して使用することができる。さらには、優れた難燃性を活かして電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類など種々の用途に用いることができる。
【0081】
本発明の難燃性成形品の具体例としては、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、パソコン、プリンター、ディスプレイ、CRTディスプレイ、ファックス、コピー、ワープロ、ノートパソコン、携帯電話、PHS、DVDドライブ、PDドライブ、フロッピーディスクドライブなどの記憶装置のハウジング、シャーシ、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビンなどが挙げられ、これらに限らず各種の電気・電子機器部品、自動車部品、機械部品、その他各種用途に有用である。
【0082】
【実施例】
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明する。
[参考例1](A)ポリスチレン系樹脂(ABS樹脂)
<a1>グラフト共重合体の調製
以下にグラフト共重合体の調製方法を示す。なおグラフト率は次の方法で求めたものである。グラフト共重合体の所定量(m)にアセトンを加え4時間還流した。この溶液を8000rpm(遠心力10,000G(約100×103 m/s2 ))30分遠心分離後、不溶分を濾過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。
【0083】
グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
ここでLはグラフト共重合体のゴム含有率(重量%)を意味する。
【0084】
ポリブタジエンラテックス(平均ゴム粒子径0.3μm、ゲル含率85%)60重量部(固形分換算)の存在下でスチレン70重量%、アクリロニトリル30重量%からなる単量体混合物40重量部を加えて乳化重合した。得られたグラフト共重合体は硫酸で凝固し、苛性ソーダで中和、洗浄、濾過、乾燥してパウダー状のグラフト共重合体<a1>を調製した。
【0085】
得られたグラフト共重合体<a1>はグラフト率が36%であった。このグラフト共重合体<a1>は、スチレン構造単位70重量%およびアクリロニトリル30重量%からなる非グラフト性の共重合体を18.1重量%含有するものであった。またN,N−ジメチルホルムアミド可溶分の極限粘度が0.48dl/gであった。
<a2>、<a3>ビニル系共重合体の調製
スチレン70重量%およびアクリロニトリル30重量%からなる単量体混合物を懸濁重合することによりビニル系共重合体を調製した。得られたビニル系共重合体<a2>および<a3>のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は以下のとおりであった。
【0086】
<a2>:極限粘度0.95
<a3>:極限粘度0.53
[参考例2](B)空気中での加熱試験(昇温速度40℃/分)による600℃での重量減量が80%未満の熱可塑性樹脂として、下記<b−1>〜<b−4>を準備した。
<b1>
600℃での重量減量が74%、重量平均分子量が22000のポリカーボネート樹脂
<b2>
600℃での重量減量が76%、重量平均分子量が2000のポリカーボネート樹脂
<b3>
600℃での重量減量が64%、重量平均分子量が10000のポリアリレート樹脂
<b4>
600℃での重量減量が66%、重量平均分子量が5000のポリアリレート樹脂
[参考例4](C)燐系難燃剤の準備
<C−1>
下記式(8)で表される芳香族ビスホスフェート“PX−200”(大八化学社製)を使用した。
【0087】
【化6】
<C−2>
赤燐“ノーバエクセル140”(燐化学工業社製)を使用した。
[参考例5](D)フッ素系樹脂および/またはシリコーン系化合物の準備
<D−1>
ポリテトラフルオロエチレンであるポリフロンF201(ダイキン工業(株)製)を使用した。
<D−2>
シリコーン樹脂である”DC4−7081”(東レダウコーニングシリコーン社製)を使用した。
[参考例6] (A)成分および(B)成分の溶融粘度調整
表1に示した組成により(A)成分および(B)成分を溶融混合して調整することにより得られた樹脂または樹脂組成物<A−1>〜<A−2>および<B−1>〜<B−4>の溶融粘度を表1に併せて示す。なお溶融粘度は、キャピログラフィーを使用し、250℃、オリフィス厚み5mm、ダイ直径0.5mmで測定し、ずり速度1000秒-1の値を示した。
【0088】
【表1】
[実施例1〜10、比較例1〜6]
参考例で調製した<A−1>〜<A−2>成分および<B−1>〜<B−4>成分およびその他の必要な添加剤を、それぞれ表2および表3に示した配合比で混合し、ベント付き30mmφ2軸押出機(池貝鉄工社製、PCM−30)を使用し、250℃で溶融混練、押出しを行うことによって、ペレット状のポリマを製造した。
【0089】
次いで、射出成形機(住友重機社製、プロマット40/25)により、射出圧を下限圧+1MPaとした条件でそれぞれの試験片を成形し、次の条件で物性を測定した。
(1)難燃性(UL評価):射出成形により得た1/16”厚み難燃性評価用試験片についてUL94に定められている評価基準に準じて、5本の試験片について難燃性を評価した。難燃性レベルはV−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
(2)難燃性(LOI):JIS K 7021に準じて限界酸素指数(LOI)を評価した。
(3)耐衝撃性:ASTM D256−56Aに準じて耐衝撃性を評価した。
(4)耐熱性:ASTM D648(荷重:1.82MPa)に準じて耐熱性を評価した。
【0090】
各サンプルの配合組成および一連の結果を表2、表3に示す。また、相分離構造を評価した電子顕微鏡写真に基づく模式図をそれぞれ図1(実施例1)および図2(比較例1)に示す。図1、図2の画面は約10μm×10μmである。
【0091】
【表2】
表2の結果における実施例1、2と比較例1〜6の比較、および図1と図2の比較から、本発明の特徴である空気中での加熱重量減量が80%以下の熱可塑性樹脂相((B)成分)がマトリックス相となった特定の相分離構造に制御することにより、難燃性(LOI)が特異的に向上するとともに、耐衝撃性および耐熱性が向上していることがわかる。
【0092】
すなわち、図1に示した実施例1の組成物において、小さい粒子状のものがグラフト共重合体成分(3)であり、これを含む相がABS樹脂相(1)であり、その他の連続なマトリックスを形成しているのがポリカーボネート樹脂相(2)である。ABS樹脂/ポリカーボネート樹脂=65容量%/35容量%の配合割合において、少量成分であるポリカーボネート樹脂相がマトリックス相(連続相)、大量成分であるABS樹脂が分散相となる相構造を形成している。
【0093】
また、図2に示した比較例1の組成物において、同様に小さい粒子状のものがグラフト共重合体成分(3)であり、これを含む連続の相がABS樹脂相(1)であり、不連続の島を形成しているのがポリカーボネート相(2)である。ABS樹脂/ポリカーボネート樹脂=65容量%/35容量%の配合割合において、大量成分であるABS樹脂相がマトリックス相(連続相)、少量成分であるポリカーボネート樹脂が分散相となる一般的な相構造を形成しているため、本発明が目的とする効果を発現し得ない。
【0094】
【表3】
実施例3〜6と比較例7〜12の比較から、表2の組成に非ハロゲン系難燃剤((C)成分)を添加することにより、難燃性がさらに向上し、UL評価で高度な難燃性付与が可能になることがわかる。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の難燃性樹脂組成物およびその製造方法によれば、ポリスチレン系樹脂と特定の加熱重量減量を有する熱可塑性樹脂との溶融粘度比を制御することにより、特定の相分離構造を達成でき、その結果、高度な難燃性付与が可能になるばかりか、優れた耐衝撃性および耐熱性の発現を期待することができる。
【0096】
そして、本発明の難燃性樹脂組成物から得られる成形品は、上記の優れた特徴を活かして機械部品、電気電子部品および自動車部品などとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた組成物の相分離構造を示す電子顕微鏡写真をもとにした模式図である。
【図2】比較例1で得られた組成物の相分離構造を示す電子顕微鏡写真をもとにした模式図である。
【符号の説明】
1 ABS樹脂相
2 ポリカーボネート樹脂相
3 グラフト共重合体成分
Claims (8)
- (A)ABS樹脂からなるポリスチレン系樹脂60〜80容量%および(B)空気中での加熱試験(昇温速度40℃/分)による600℃での重量減量が80%未満のポリカーボネート樹脂およびポリアリレート樹脂から選ばれる熱可塑性樹脂40〜20容量%からなり、かつ下記一般式(1)を満たす樹脂組成物であって、さらに電子顕微鏡で観察される樹脂相分離構造において、前記熱可塑性樹脂(B)がマトリックス相(連続相)、前記ポリスチレン系樹脂(A)が分散相となる相構造を形成していることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
- ポリスチレン系樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)からなる樹脂組成物100重量部に対して、(C)非ハロゲン系難燃剤0.1〜50重量部をさらに含有してなることを特徴とする請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- ポリスチレン系樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)からなる樹脂組成物100重量部に対して、(D)フッ素系樹脂またはシリコーン系化合物0.01〜3重量部をさらに含有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(B)がポリカーボネート樹脂であり、電子顕微鏡で観察する際の観察画面の大きさが10μm×10μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする難燃性成形品。
- 成形品が、機械機構部品、電気電子部品または自動車部品であることを特徴とする請求項7に記載の難燃性成形品。
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