JP2004043562A - 難燃性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】剛性、耐衝撃性、成形品表面外観、耐熱性、及び難燃性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ゴム質重合体(a)存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及びこれと共重合可能な他のビニル単量体(b)90〜30重量%をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂5〜97重量%;(B)ゴム質重合体非存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及びこれと共重合可能な他のビニル単量体を重合してなるスチレン系樹脂0〜92重量%;並びに(C)有機リン系難燃剤3〜20重量%の合計100重量部と、(D)アルミナ及び/又はホウ酸カルシウム0.1〜20重量部とを含有する難燃性樹脂組成物。該組成物は(E)芳香族ポリカーボネート樹脂または熱可塑性ポリエステル樹脂を含有してもよい。
【選択図】 なし。
【解決手段】(A)ゴム質重合体(a)存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及びこれと共重合可能な他のビニル単量体(b)90〜30重量%をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂5〜97重量%;(B)ゴム質重合体非存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及びこれと共重合可能な他のビニル単量体を重合してなるスチレン系樹脂0〜92重量%;並びに(C)有機リン系難燃剤3〜20重量%の合計100重量部と、(D)アルミナ及び/又はホウ酸カルシウム0.1〜20重量部とを含有する難燃性樹脂組成物。該組成物は(E)芳香族ポリカーボネート樹脂または熱可塑性ポリエステル樹脂を含有してもよい。
【選択図】 なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、剛性、耐衝撃性、成形品表面外観、耐熱性及び難燃性に優れた熱可塑性樹脂組成物、および、該熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂および耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)などで代表されるゴム変性スチレン系樹脂、さらにこれとポリカーボネート樹脂との組成物を難燃化した難燃性樹脂組成物は、機械的特性、物理的特性、電気的特性等に優れることから、電気・電子分野、OA・家電分野、車輌分野、サニタリー分野等で幅広く使用されている。
【0003】
上記ゴム変性スチレン系樹脂、及び該ゴム変性スチレン系樹脂とポリカーボネート樹脂との組成物の難燃化には、ハロゲン系難燃剤、有機リン系難燃剤等が使用される。
近年の環境問題等から、ハロゲン系難燃剤を使用した材料よりも、有機リン系難燃剤を使用した材料が好まれる傾向にある。しかし、有機リン系難燃剤を用いた材料は、ハロゲン系難燃剤を用いた材料に比較し、剛性、耐熱性等が低下する傾向にある。当該性能の低下を改良することを目的として、ガラス繊維、炭素繊維等の無機充填材等を配合する方法があるが、成形品表面外観、耐衝撃性等が低下し、使用用途が制限される等の問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ゴム変性スチレン系樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、剛性、耐熱性、耐衝撃性、成形品表面外観に優れた難燃性樹脂組成物および該難燃性樹脂組成物からなる成形品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記構成の難燃性樹脂組成物及び成形品が提供されて、本発明の上記目的が達成される。
すなわち、本発明の一局面によれば、
(A)ゴム質重合体(a)10〜70重量%存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体(b)90〜30重量%をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂 5〜97重量%;
(B)ゴム質重合体非存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体を重合してなるスチレン系樹脂 0〜92重量%;
(C)有機リン系難燃剤 3〜20重量%;
前記(A)、(B)及び(C)成分の合計100重量部と、
(D)アルミナ及び/又はホウ酸カルシウム 0.1〜20重量部と、
を含有してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物(以下「樹脂組成物(1)」と記載することもある)が提供される。なお、樹脂組成物(1)において、(A)、(B)及び(C)成分の配合率(重量%)の合計は100重量%である。
【0006】
また、本発明の他の局面によれば、
(A)ゴム質重合体(a)10〜70重量%存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体(b)90〜30重量%をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂 5〜95重量%;
(B)ゴム質重合体非存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体を重合してなるスチレン系樹脂 0〜90重量%;
(C)有機リン系難燃剤 2〜20重量%;
(E)芳香族ポリカーボネート樹脂および熱可塑性ポリエステル樹脂から選ばれた少なくとも1種 3〜93重量%;
前記(A)、(B)、(C)及び(E)成分の合計100重量部と、
(D)アルミナ及び/又はホウ酸カルシウム 0.1〜20重量部と、
を含有してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物(以下「樹脂組成物(2)」と記載することもある)が提供される。なお、樹脂組成物(2)において、(A)、(B)、(C)及び(E)成分の配合率(重量%)の合計は100重量%である。
【0007】
さらに、本発明のさらに他の局面によれば、前記樹脂組成物(1)または前記樹脂組成物(2)からなる成形品が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)成分は、ゴム質重合体(a)10〜70重量%存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体(b)90〜30重量%をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂である。
ここで使用されるゴム質重合体(a)としては、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体等のジエン系(共)重合体、これらのジエン系(共)重合体の水素添加物、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、エチレン−ブテン−1−(非共役ジエン)共重合体、ポリウレタンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうち、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及びこれらのブタジエン部位の水素添加物、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、アクリル系ゴム並びにシリコーンゴムが好ましい。
【0009】
上記(a)成分存在下に重合される、(b)成分の芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、メチル−α−メチルスチレン、臭素化スチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
(b)成分で使用できる、上記芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、不飽和酸、不飽和酸無水物、マレイミド化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0010】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルが好ましい。
不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。
不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0011】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。または、無水マレイン酸を(共)重合させた後、イミド化してマレイミドを(A)成分に導入しても良い。
エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
水酸基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
【0012】
本発明の(b)成分の好ましい例は、芳香族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物との組み合わせ、芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせ、芳香族ビニルとシアン化ビニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせであり、更に好ましくは、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物との組み合わせ、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせ、芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせである。
【0013】
本発明の(A)成分中の上記ゴム質重合体(a)の量は、10〜70重量%であり、好ましくは、20〜65重量%、更に好ましくは、30〜60重量%、特に好ましくは、35〜55重量%である。この量が10重量%未満では、耐衝撃性が劣り、70重量%を超えると成形品表面外観、耐衝撃性及び難燃性が劣る。なお、このゴム質重合体(a)の量は、成分(b)との合計を100重量%とした場合の値である。
【0014】
本発明の(A)成分は、公知の重合法である乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及びこれらを組み合わせた重合法で重合することができる。本発明の目的を達成する上で特に好ましいものは、乳化重合で得たものである。尚、成分(a)全量の存在下に、成分(b)を一括添加して重合してもよく、または分割もしくは連続添加して重合してもよい。又、これらを組合わせた方法で重合してもよい。更に、成分(a)の全量又は一部を、重合途中で添加して重合しても良い。
本発明の(A)成分を乳化重合で製造する際、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤及び水が用いられる。これらは、公知のものが全て使用できる。
【0015】
重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシモノカーボネート等が挙げられる。
連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、テトラエチルチウラムスルフィド、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコール等が挙げられる。
【0016】
乳化重合の際に使用する乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、ロジン酸塩、リン酸塩等のアニオン系界面活性剤、さらに、公知のノニオン系界面活性剤も使用できる。
乳化重合では、通常、凝固剤により凝固して得られる粉末を水洗後、乾燥することによって、ゴム変性スチレン系樹脂の粉末が得られる。この際の凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機塩、または硫酸、塩酸、酢酸等の酸を用いることができる。本発明において、特に好まし凝固剤は、硫酸である。
又、本発明の(A)成分を塊状重合、溶液重合、懸濁重合で製造する際、各種溶媒、懸濁剤、重合開始剤、連鎖移動剤等が使用されるが、何れも公知のものが使用される。
【0017】
本発明の(A)成分中に分散するゴム質重合体(a)の平均ゴム粒子径は、500Å〜30000Åの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、1000Å〜20000Å、特に好ましくは、1500Å〜8000Åである。
乳化重合で本発明の(A)成分を得る場合、乳化重合で得たゴム質重合体(a)を使用する場合が多いが、その場合、ゴム質重合体(a)中のゲル含率は、通常、98重量%以下であり、40〜98重量%であることが好ましく。更に好ましくは、50〜95重量%、特に好ましくは、60〜90重量%である。ゲル含率が40〜98重量%において、特に優れた耐衝撃性、ウエルド強度、及び成形品表面外観に優れた成形品を与える熱可塑性樹脂組成物を得るこができる。
【0018】
尚、上記ゲル含率は、トルエン100mlにゴム質重合体1gを投入し、室温で48時間静置した後、100メッシュ金網(重量W1)で濾過してトルエン不溶分と金網を80℃で6時間真空乾燥して秤量(重量W2)し、次式により算出される値である。
ゲル含率(%)=[{W2(g)−W1(g)}/1(g)]×100
ゲル含率は、ゴム質重合体の製造時に、分子量調整剤の種類及び量、重合時間、重合温度、重合転化率などを適宜設定することにより調整することができる。
【0019】
本発明の上記(A)成分のグラフト率は、好ましくは20〜200重量%、更に好ましくは30〜150重量%、特に好ましくは40〜120重量%である。このグラフト率(%)は、次式により求められる。
グラフト率(%)={(T−S)/S}×100
上記式中、Tはアセトン20mlに(A)成分1gを投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23000rpm)で60分遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の重量(g)であり、Sは(A)成分1gに含まれるゴム質重合体の重量(g)である。
【0020】
又、(A)成分のアセトン可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、0.2〜1.2dl/gが好ましく、更に好ましくは0.2〜1dl/g、特に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
【0021】
本発明の(B)成分は、ゴム質重合体非存在下に芳香族ビニル化合物、又は芳香族ビニル化合物及びこの芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体を重合してなるスチレン系樹脂である。
ここで使用される芳香族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては上記(A)成分に関して記載したものを全て使用できる。好ましくは、芳香族ビニル化合物とビニルシアン化合物及び/又は(メタ)アクリル酸エステルを50重量%以上含有するものである。
【0022】
本発明の(B)成分は、乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合又はこれらを組み合わせた重合法等で得ることができる。これらに使用される乳化剤、溶媒、懸濁剤、重合開始剤、連鎖移動剤等は、公知のものが全て使用できる。
本発明の(B)成分のメチルエチルケトンを溶媒として30℃で測定した極限粘度[η]は、好ましくは、0.2〜1.2dl/g、更に好ましくは0.2〜1dl/g、特に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
【0023】
本発明における(C)成分である有機リン系難燃剤としては、下記一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)のそれぞれで表される化合物が好ましく用いられる。
【0024】
【化1】
【0025】
【化2】
【0026】
【化3】
【0027】
【化4】
【0028】
一般式(I)で表される化合物は、2種以上の芳香族基を有するポリホスフェート類である。これらは、芳香族二価ヒドロキシ化合物と、オキソ塩化リンと、芳香族一価ヒドロキシ化合物との反応により生成する化合物であり、式中R1およびR2は芳香族基、Aは芳香族二価ヒドロキシ化合物の残基、nは1〜20の整数である。
上記芳香族二価ヒドロキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSが用いられる。上記芳香族一価ヒドロキシ化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、ナフトール等がある。R1およびR2は同一であっても、又は異なってもよい。
【0029】
一般式(II)において、R4およびR5は、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R4およびR5は、同一であっても、又は異なってもよい。Xは1〜4の整数である。R3は、水素原子または下記一般式(V)〜(IX)のそれぞれで示される基である。
【0030】
【化5】
【0031】
(一般式(V)において、R21は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基または低級アルキル基であり、Yは1〜5の整数である。)
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,3−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等が挙げられる。
これらのうちでは、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドおよび10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドが特に好ましい。
【0037】
一般式(III)および(IV)において、n′およびn″は0〜15、好ましくは1〜10の整数である。R6〜14およびR15〜20は、同一分子内においてそれぞれ同一であっても、又は異なってもよく、アルキル基、アリル基、アルコキシル基、アリロキシル基、アミノ基またはヒドロキシル基である。これらの基は、可能であれば、アルコキシル基、アリロキシル基、アルキル基、アリル基、アミノ基およびヒドロキシル基などのそれぞれで置換されていてもよい。
一般式(III)または(IV)で表されるフォスファゼン化合物の具体例としては、プロポキシホスファゼン、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシホスファゼン、アミノホスファゼン、フルオロアルキルホスファゼン等が挙げられる。又、その合成方法及び入手のし易さなどから、フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
【0038】
更に同一分子内のR6〜14またはR15〜20は、全て同種の置換基であってもよいし、各々が2種以上の異なった置換基であってもよい。このような置換ホスファゼン化合物の具体例としては、分子内の一部をフェノキシ基で置換し、その後にプロポキシ基で置換したホスファゼン、即ち、フェノキシプロポキシホスファゼンなどが挙げられる。
【0039】
更に、本発明の有機リン系難燃剤として、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(o−フェニルフェニル)ホスフェート、トリス(p−フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート等のモノホスフェート類も使用できる。
【0040】
上記本発明の有機リン系難燃剤は、1種単独で使用することもできるが、2種以上混合して使用することもできる。本発明において、上記モノホスフェート類は、成形加工時に成形品表面に出やすく、成形品表面外観を損なう可能性があることから、上記した他の難燃剤と併用することが好ましい。
本発明で使用される上記難燃剤において、好ましいものは、一般式(I)および一般式(II)で示されたもの、並びにその併用系である。一般式(I)および(II)の難燃剤を併用する場合、難燃剤全量の50重量%以上一般式(I)の難燃剤を使用することが、衝撃強さの観点から好ましい。
【0041】
本発明の(D)成分であるアルミナとしては、酸化アルミニウムが挙げられ、特にその水和物が好ましい。形状としては、板状、短冊状、六角板状、針状、蝶ネクタイ状、扇状、円板状のものが全て使用できる。粒径は、0.1〜10μmのものが好ましく、アスペクト比は、3〜300の範囲にあるものが好ましい。水和物の脱水温度は、400℃以上のものが好ましい。又、層間に有機物をインターカレートしたものも好ましく使用できる。
【0042】
本発明の(D)成分であるホウ酸カルシウムとしては、その水和物を用いることが好ましい。該ホウ酸カルシウムの粒径は20μm以下であることが好ましい。一般に、ホウ酸カルシウムは、自然界から産出されるためCaO、Fe2O3、MgO、Na2O、K2O等の不純物を含む。好ましいものは、ホウ酸カルシウムを30重量%以上含有し、Fe2O3、Na2O、K2Oの含有量が1%以下のものであり、また、脱水温度が300℃以上のものが更に好ましい。
また、本発明の(D)成分として、アルミナ及びホウ酸カルシウムをそれぞれチタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤等で表面処理したものを用いることもできる。
【0043】
本発明の(E)成分は、芳香族ポリカーボネート樹脂および熱可塑性ポリエステル樹脂から選ばれた少なくとも1種である。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、種々のヒドロキシアリール化合物とホスゲンとの界面重縮合によって得られるもの、又はジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネート等のカーボネート化合物とのエステル交換反応(溶融重縮合)によって得られるもの等、公知の重合法によって得られたものが全て使用できるが、ウエルド強度の面から溶融重合法で得られたものが好ましい。
【0044】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるジヒドロキシアリール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホン、ヒドロキノン、レゾルシン等があり、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用される。特に好ましいものは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)である。上記芳香族ポリカーボネートは、上記原料より得られた各種ポリカーボネートを1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
本発明で使用される上記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、13000〜32000が好ましく、更に好ましくは、17000〜31000、特に好ましくは、18000〜30000である。又、粘度平均分子量の異なる芳香族ポリカーボネートを併用することもでき、特に、粘度平均分子量13000〜19000(E1)のものと20000〜32000(E2)のものを(E1)/(E2)=10/90〜50/50重量%の割合で併用した場合、耐衝撃性と流動性のバランスに優れるものが得られる。
【0046】
尚、芳香族ポリカーボネート樹脂と粘度平均分子量は、塩化メチレンを溶媒として、20℃、濃度〔0.7g/100ml(塩化メチレン)〕で測定した比粘度(ηsp)を次式に挿入して算出することができる。
粘度平均分子量=([η]×8130)1.205
(式中、[η]=〔(ηsp×1.12+1)1/2−1〕/0.56Cである。)
【0047】
本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂において、界面重縮合で得られたものは、各種塩素化合物を含む場合がある。この塩素化合物は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の熱安定性に悪影響を及ぼす場合があるため、芳香族ポリカーボネート樹脂の塩素化合物含有量は少ない程、好ましいが、塩素原子として300ppm以下であることが好ましく、更に好ましくは、100ppm以下である。
【0048】
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸またはそのエステルもしくはエステル形成誘導体とジオール成分とを公知の方法により重縮合させて得られたもの等が挙げられる。
上記ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等が挙げられ、これらのエステル形成誘導体も、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂の成分として用いることができる。又、p−ヒドロキシ安息香酸も単独で、またはジオール成分、ジカルボン酸成分と併用して使用できる。
ジオール成分の例としては、2〜6の炭素数を有するポリメチレングリコール(例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール)、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ヒドロキノン及びこれらのエステル形成誘導体等が挙げられ、上記ジカルボン酸成分、上記ジオール成分等は、単独で、または2種以上併用して使用できる。
【0049】
好ましい熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等であり、更に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、及びポリブチレンテレフタレートである。本発明で使用される熱可塑性ポリエステル樹脂の極限粘度は特に規定されず、公知のものが全て使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレートの場合、テトラクロルエタン/フェノールの等量混合溶媒中、25℃で測定した極限粘度[η](単位dl/g)は、好ましくは0.5〜2dl/g、更に好ましくは0.5〜1.5dl/gの範囲である。ポリブチレンテレフタレートの場合、o−クロロフェノールを溶媒として、25℃で測定した極限粘度[η](単位dl/g)は、0.4〜2.0の範囲であることが好ましい。
【0050】
本発明の(A)成分または(B)成分と(E)成分との親和性を向上させる目的から、相溶化剤を用いることができる。相溶化剤としては、スチレン/(アクリロニトリル)共重合体ブロックと前記(メタ)アクリル酸エステル重合体ブロックとからなる重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体のようなエチレンと前記エポキシ基含有不飽和化合物との共重合体(以下「エチレン−エポキシ基含有不飽和化合物系共重合体」、ここでエポキシ基含有不飽和化合物の共重合量は、3〜50重量%の範囲が好ましい)、更に、このエチレン−エポキシ基含有不飽和化合物系共重合体に前記芳香族ビニル化合物と前記ビニルシアン化合物、前記芳香族ビニル化合物と前記(メタ)アクリル酸エステル化合物、又、前記(メタ)アクリル酸エステル化合物の重合体がグラフト重合したもの、更にカルボン酸及び/又は酸無水物で変性されたエチレン系重合体等が挙げられる。これらは、単独で、又は、2種以上組み合わせて使用できる。
上記相溶化剤は、(A)成分、(B)成分及び(E)成分の合計100重量部に対して、1〜40重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0051】
本発明の樹脂組成物(1)において、(A)成分の使用量は、5〜97重量%、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは10〜70重量%である。(A)成分の使用量が5重量%未満では、耐衝撃性が劣り、97重量%を超えると難燃性が劣る。(B)成分の使用量は、0〜92重量%、好ましくは16〜86重量%、更に好ましくは25〜85重量%である。(C)成分の使用量は、3〜20重量%であり、好ましくは、4〜18重量%、更に好ましくは5〜18重量%である。(C)成分の使用量が3重量%未満では、難燃性が得られず。20重量%を超えると剛性及び熱変形温度が劣る。
【0052】
本発明の樹脂組成物(2)において、(A)成分の使用量は、5〜95重量%であり、好ましくは7〜87重量%、更に好ましくは10〜85重量%である。(A)成分の使用量が5重量%未満では、耐衝撃性が劣り、95重量%を超えると難燃性が劣る。(B)成分の使用量は、0〜90重量%であり、好ましくは0〜87重量%、更に好ましくは0〜75重量%である。(B)成分の使用量が90重量%を超えると耐衝撃性及が劣る。(C)成分の使用量は、2〜20重量%であり、好ましくは、3〜18重量%、更に好ましくは5〜18重量%である。(C)成分の使用量が2重量%未満では、難燃性が得られず、20重量%を超えると剛性及び熱変形温度が劣る。(E)成分の使用量は、3〜93重量%、好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは10〜85重量%である。(E)成分の使用量が3重量%未満では、耐衝撃性が劣り、93重量%を超えると耐衝撃性及び耐熱性が劣る。
【0053】
本発明の(D)成分の使用量は、樹脂組成物(1)においては(A)、(B)及び(C)成分の合計100重量部に対し、樹脂組成物(2)においては(A)、(B)、(C)及び(E)成分の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部である。(D)成分の使用量が0.1重量部未満では、難燃性が劣り、20重量部を超えると耐衝撃性、成形品表面外観が劣る。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、プレス成形、シート押出成形、真空成形、異形押出成形、発泡成形等の公知の成形法により、成形品を得る事ができる。
かかる成形品としては、下記のものが例示される:
【0055】
各種ギア、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシー、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;
【0056】
VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品;
【0057】
オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具関連部品;
便座、タンクカバー、ケーシング、台所回りの部品、洗面台関連部品、浴室関連パーツ等のサニタリー関連部品;
窓枠、家具、床材、壁材等の住宅・住設関連部品;
顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器・精密機器関連部品;
【0058】
オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気各種バルブ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウオーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイパーハーネス、ウインドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローラー、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース;
【0059】
パソコン、プリンター、ディスプレイ、CRTディスプレイ、ノートパソコン、携帯電話、PHS、DVDドライブ、PDドライブ、フレキシブルディスクドライブなどの記憶装置のハウジング、シャーシー、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子機器部品、自動車部品、その他各種用途。
【0060】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、他の無機充填剤、例えば、ガラス繊維、ガラス繊維のミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素繊維のミルドファイバー、酸化亜鉛ウイスカー、マイカ、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー等を配合することができる。
又、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、耐候(光)剤、耐電防止剤、酸化防止剤、滑剤、シリコーンオイル、可塑剤、着色剤、染料、抗菌剤等を適宜配合することができる。
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、他の重合体であるポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、POM(ポリアセタール)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、LCP(液晶ポリマー)等を適宜配合して使用することができる。
【0061】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等により、各成分を混練することにより調製することができる。好ましい製造法は、押出機又はバンバリーミキサーを用いる方法である。更に、各々の成分を混練するに際しては、それらの成分を一括して混練してもよく、または、押出機、バンバリーミキサー等で多段、分割配合し混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練したあと、押出機によりペレット化することもできる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例中、部及び%は、特に断らない限り重量基準である。又、実施例中の各種評価は、次のようにして測定したものである。
【0063】
(1)評価方法
(1−1)剛性
ISO試験法178に準拠して、曲げモジュラス(MPa)を測定した。
(1−2)耐衝撃性
ISO試験法179に準拠して、ノッチ付きシャルピー衝撃強さ(KJ/
m2)を測定した。
(1−3)成形品表面外観
平板を成形し、成形品表面外観を下記評価基準に準じて、目視評価した。
評価基準:
○:外観良好、
△:少し劣る、
×:劣る。
(1−4)熱変形温度
ISO試験法75に準拠して荷重たわみ温度(℃)を測定した。
(1−5)燃焼性
UL−94Vテストに準拠して、試験片厚み1.8mmで試験した。表中、BNは、バーニングを示す。
【0064】
(1−6)ゴム質重合体の平均粒子径
ゴム質重合体分散粒子の平均粒子径は、予め乳化状態で合成したラテックス粒子径がそのまま樹脂中の分散粒子の粒子径を示すことを電子顕微鏡で確認しており、ラテックス中の分散粒子の粒子径を光散乱法で測定した。測定機器は、大塚電子(株)社製、LPA−3100を使用し、70回積算でキュムラント法を用い、粒子径を測定した。
(1−7)(A)成分のグラフト率、(A)成分のアセトン可溶部及び(B)成分の極限粘度[η]、(E)成分である芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量、ならびに、(E)成分であるポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートの極限粘度[η]は、それぞれ、上記記載の方法で測定した。
【0065】
(2)熱可塑性樹脂組成物の成分
(2−A)ゴム変性スチレン系樹脂((A)成分)
製造例A−1
攪拌機を備えた内容積7Lのガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンラテックス(平均粒径;3500Å、ゲル含率;85%)40部(固形分)、スチレン15部、アクリロニトリル5部を加え、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始し、1時間重合させた後、更にイオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、t−ドデシルメルカプタン0.05部及びクメンハイドロパーオキシド0.01部を3時間かけて連続的に添加し、更に、1時間重合させて、2,2´−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し重合を完結した。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗したのち、乾燥してゴム変性スチレン系樹脂A1(表1では A1 と記載する)を得た。このゴム変性スチレン系樹脂A1のグラフト率は72%、アセトン可溶部の極限粘度[η]は0.47dl/gであった。
【0066】
製造例A−2
製造例A−1で用いたポリブタジエンラテックス40部(固形分)の代わりに、ポリブタジエンラテックス(平均粒径;2700Å、ゲル含率;90%)32部(固形分)、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス(スチレン含率;25%、平均粒径5500Å、ゲル含率45%)8部(固形分)を用いた以外は、製造例A−1と同一の条件で重合し、ゴム変性スチレン系樹脂A2(表1では A2と記載する)を得た。このゴム変性スチレン系樹脂A2のグラフト率は64%、アセトン可溶部の極限粘度[η]は0.45dl/gであった。
【0067】
製造例A−3
製造例A−1で用いたポリブタジエンラテックスの使用量、第1段目のスチレン、アクリロニトリル、t−ドデシルメルカプタン、及びクメンハイドロパーオキサイドの各使用量、第2段目のスチレン、アクリロニトリル、t−ドデシルメルカプタン及びクメンハイドロパーオキサイドの各使用量を下記の如くした以外は、製造例A−1と同一の条件で重合し、ゴム変性スチレン系樹脂A3(表1では A3 と記載する)を得た。
第1段目成分 使用量(部)
ポリブタジエンラテックス 80(固形分)
スチレン 5
アクリロニトリル 1.7
t−ドデシルメルカプタン 0.03
クメンハイドロパーオキサイド 0.025
第2段目成分
スチレン 10
アクリロニトリル 3.3
t−ドデシルメルカプタン 0.017
クメンハイドロパーオキサイド 0.005
このゴム変性スチレン系樹脂A3のグラフト率は15%、アセトン可溶部の極限粘度[η]は、0.42dl/gであった。
【0068】
製造例A−4
製造例A−1で用いたポリブタジエンラテックスの使用量、第1段目のスチレン、アクリロニトリル、t−ドデシルメルカプタン、及びクメンハイドロパーオキサイドの各使用量、第2段目のスチレン、アクリロニトリル、t−ドデシルメルカプタン及びクメンハイドロパーオキサイドの各使用量を下記の如くした以外は、製造例A−1と同一の条件で重合し、ゴム変性スチレン系樹脂A4(表1では A4 と記載する)を得た。
第1段目成分 使用量(部)
ポリブタジエンラテックス 5(固形分)
スチレン 23.8
アクリロニトリル 7.9
t−ドデシルメルカプタン 0.159
クメンハイドロパーオキサイド 0.111
第2段目成分
スチレン 47.5
アクリロニトリル 15.8
t−ドデシルメルカプタン 0.079
クメンハイドロパーオキサイド 0.016
このゴム変性スチレン系樹脂A4のグラフト率は84%、アセトン可溶部の極限粘度[η]は、0.49dl/gであった。
【0069】
(2−B)スチレン系樹脂(成分(B))
製造例B−1
スチレン75部、アクリロニトリル25部を用いて、塊状重合でスチレン系樹脂B1(表1では B1 と記載する)を得た。このものの極限粘度[η]は、0.45dl/gであった。
【0070】
製造例B−2
スチレン75部、アクリロニトリル20部、グリシジルメタクリレート5部を用いて、塊状重合でスチレン系樹脂B2(表1では B2 と記載する)を得た。このものの極限粘度[η]は、0.43dl/gであった。
【0071】
製造例B−3
スチレン60部、N−フェニルマレイミド40部を用いて溶液重合し、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体(表1では B3 と記載する)を得た。このものの極限粘度は、0.35dl/gであった。
【0072】
(2−C)有機リン系難燃剤(成分(C))
C−1:下記式(X)で表される縮合リン酸エステル化合物:「アデカフタブFP−700(商品名:旭電化社製)」(表1では C1 と記載する)
【0073】
【化10】
【0074】
C−2:下記式(XI)で表される縮合リン酸エステル化合物:「アデカフタブFP−500(商品名:旭電化社製)」(表1では C2 と記載する)
【0075】
【化11】
【0076】
C−3:下記式(XII)で表されるリン化合物:「サンコー HCA−HQ(商品名:三光社製)」(表1では C3 と記載する)
【0077】
【化12】
【0078】
(2−D)アルミナ及び/又はホウ酸カルシウム(成分(D))
D−1:河合石灰工業製ベーマイト(アルミナ水和物)BMI(表1では D1と記載する)。この物性は次のとおりである。形状:針状、粒径:4〜7μm、脱水温度:462℃。
D−2:キンセイマティック製 UBP(ホウ酸カルシウム水和物)(表1では
D2 と記載する)。この物性は次のとおりである。平均粒径:6μm。
D−3:河合石灰工業製ベーマイト(アルミナ水和物)BMM(表1では D3と記載する)。この物性は次のとおりである。形状:板状、粒径:0.8〜1.5μm、脱水温度:520℃。
【0079】
(2−E)芳香族ポリカーボネート樹脂または熱可塑性ポリエステル樹脂(成分(E))
製造例E−1
ビスフェノールAとホスゲンを用いて界面重縮合し、粘度平均分子量22000の芳香族ポリカーボネート樹脂(表1では E1 と記載する)を得た。
【0080】
製造例E−2
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートを用いて加熱溶融重縮合を行い、粘度平均分子量22000の芳香族ポリカーボネート樹脂E2(表1では E2と記載する)を得た。
【0081】
製造例E−3
日本ユニペット(株)製ポリエチレンテレフタレートRT523C(極限粘度0.72dl/g)(表1では E3 と記載する)を用いた。
【0082】
製造例E−4
テレフタル酸とブタンジオールの重縮合で得た、極限粘度0.8dl/gのポリブチレンテレフタレート(表1では E4 と記載する)を用いた。
【0083】
(2−F)その他の成分
F−1;ポリテトラフルオロエチレンとしてダイキン工業社製 ダイフロン F201L(商品名)(表1では F1 と記載する)を用いた。
【0084】
(3)熱可塑性樹脂組成物の製造
実施例1〜16及び比較例1〜7
表1に記載の成分を、表1に記載の配合割合でヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(池貝鉄工株式会社製、形式PCM45)を用いて、溶融混練し(混練温度220〜260℃)、ペレット化した。ついで、得られたペレットを充分に乾燥し、射出成形(成形温度200〜240℃)により評価用試験片を作製した。この試験片を用い、前記の方法で、剛性、耐衝撃性、成形品表面外観、熱変形温度(耐熱性)、及び燃焼性(難燃性)を評価した。評価結果を表2に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表2から、実施例1〜16における本発明の樹脂組成物からいずれも剛性、耐衝撃性、成形品表面外観、熱変形温度及び難燃性の全てに優れた成形品が得られることがわかる。
反面、比較例1は、本発明の(A)成分中のゴム質重合体量が発明の範囲外で多い例であり、成形品表面外観、耐衝撃性及び難燃性が劣る。
比較例2は、本発明の(A)成分中のゴム質重合体の使用量が、発明の範囲外で少ない例であり、耐衝撃性が劣る。
比較例3は、本発明の(D)成分中の使用量が、発明の範囲外で少ない例であり、難燃性が劣る。
比較例4は、比較例3で燃焼レベルがUL94V2に至らなかった事から、(C)成分の使用量を多くしV2レベルとしたものであるが剛性、耐衝撃性及び耐熱性が劣る。
比較例5は、本発明の(D)成分の使用量が発明の範囲外で多い例であり、耐衝撃性、成形品表面外観が劣る。
比較例6は、本発明の(C)成分の使用量が発明の範囲外で多い例であり、剛性、耐衝撃性、及び耐熱性が劣る。
比較例7は、本発明の(C)成分の使用量が発明の範囲外で少ない例であり、難燃性が劣る。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、ABS系ゴム強化樹脂と有機リン系難燃剤からなる組成物にアルミナ及び/又はホウ酸カルシウムを適量配合することで、剛性、耐衝撃性、成形品表面外観、耐熱性、及び難燃性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、剛性、耐衝撃性、成形品表面外観、耐熱性及び難燃性に優れた熱可塑性樹脂組成物、および、該熱可塑性樹脂組成物からなる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂および耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)などで代表されるゴム変性スチレン系樹脂、さらにこれとポリカーボネート樹脂との組成物を難燃化した難燃性樹脂組成物は、機械的特性、物理的特性、電気的特性等に優れることから、電気・電子分野、OA・家電分野、車輌分野、サニタリー分野等で幅広く使用されている。
【0003】
上記ゴム変性スチレン系樹脂、及び該ゴム変性スチレン系樹脂とポリカーボネート樹脂との組成物の難燃化には、ハロゲン系難燃剤、有機リン系難燃剤等が使用される。
近年の環境問題等から、ハロゲン系難燃剤を使用した材料よりも、有機リン系難燃剤を使用した材料が好まれる傾向にある。しかし、有機リン系難燃剤を用いた材料は、ハロゲン系難燃剤を用いた材料に比較し、剛性、耐熱性等が低下する傾向にある。当該性能の低下を改良することを目的として、ガラス繊維、炭素繊維等の無機充填材等を配合する方法があるが、成形品表面外観、耐衝撃性等が低下し、使用用途が制限される等の問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ゴム変性スチレン系樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物であって、剛性、耐熱性、耐衝撃性、成形品表面外観に優れた難燃性樹脂組成物および該難燃性樹脂組成物からなる成形品を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記構成の難燃性樹脂組成物及び成形品が提供されて、本発明の上記目的が達成される。
すなわち、本発明の一局面によれば、
(A)ゴム質重合体(a)10〜70重量%存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体(b)90〜30重量%をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂 5〜97重量%;
(B)ゴム質重合体非存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体を重合してなるスチレン系樹脂 0〜92重量%;
(C)有機リン系難燃剤 3〜20重量%;
前記(A)、(B)及び(C)成分の合計100重量部と、
(D)アルミナ及び/又はホウ酸カルシウム 0.1〜20重量部と、
を含有してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物(以下「樹脂組成物(1)」と記載することもある)が提供される。なお、樹脂組成物(1)において、(A)、(B)及び(C)成分の配合率(重量%)の合計は100重量%である。
【0006】
また、本発明の他の局面によれば、
(A)ゴム質重合体(a)10〜70重量%存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体(b)90〜30重量%をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂 5〜95重量%;
(B)ゴム質重合体非存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体を重合してなるスチレン系樹脂 0〜90重量%;
(C)有機リン系難燃剤 2〜20重量%;
(E)芳香族ポリカーボネート樹脂および熱可塑性ポリエステル樹脂から選ばれた少なくとも1種 3〜93重量%;
前記(A)、(B)、(C)及び(E)成分の合計100重量部と、
(D)アルミナ及び/又はホウ酸カルシウム 0.1〜20重量部と、
を含有してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物(以下「樹脂組成物(2)」と記載することもある)が提供される。なお、樹脂組成物(2)において、(A)、(B)、(C)及び(E)成分の配合率(重量%)の合計は100重量%である。
【0007】
さらに、本発明のさらに他の局面によれば、前記樹脂組成物(1)または前記樹脂組成物(2)からなる成形品が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)成分は、ゴム質重合体(a)10〜70重量%存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体(b)90〜30重量%をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂である。
ここで使用されるゴム質重合体(a)としては、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体等のジエン系(共)重合体、これらのジエン系(共)重合体の水素添加物、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、エチレン−ブテン−1−(非共役ジエン)共重合体、ポリウレタンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうち、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及びこれらのブタジエン部位の水素添加物、エチレン−プロピレン−(非共役ジエン)共重合体、アクリル系ゴム並びにシリコーンゴムが好ましい。
【0009】
上記(a)成分存在下に重合される、(b)成分の芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、メチル−α−メチルスチレン、臭素化スチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
(b)成分で使用できる、上記芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、不飽和酸、不飽和酸無水物、マレイミド化合物、エポキシ基含有不飽和化合物、水酸基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0010】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチルが好ましい。
不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。
不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0011】
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。または、無水マレイン酸を(共)重合させた後、イミド化してマレイミドを(A)成分に導入しても良い。
エポキシ基含有不飽和化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
水酸基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上組み合わせて使用できる。
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
【0012】
本発明の(b)成分の好ましい例は、芳香族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物との組み合わせ、芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせ、芳香族ビニルとシアン化ビニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせであり、更に好ましくは、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物との組み合わせ、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせ、芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせである。
【0013】
本発明の(A)成分中の上記ゴム質重合体(a)の量は、10〜70重量%であり、好ましくは、20〜65重量%、更に好ましくは、30〜60重量%、特に好ましくは、35〜55重量%である。この量が10重量%未満では、耐衝撃性が劣り、70重量%を超えると成形品表面外観、耐衝撃性及び難燃性が劣る。なお、このゴム質重合体(a)の量は、成分(b)との合計を100重量%とした場合の値である。
【0014】
本発明の(A)成分は、公知の重合法である乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及びこれらを組み合わせた重合法で重合することができる。本発明の目的を達成する上で特に好ましいものは、乳化重合で得たものである。尚、成分(a)全量の存在下に、成分(b)を一括添加して重合してもよく、または分割もしくは連続添加して重合してもよい。又、これらを組合わせた方法で重合してもよい。更に、成分(a)の全量又は一部を、重合途中で添加して重合しても良い。
本発明の(A)成分を乳化重合で製造する際、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤及び水が用いられる。これらは、公知のものが全て使用できる。
【0015】
重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシモノカーボネート等が挙げられる。
連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、テトラエチルチウラムスルフィド、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコール等が挙げられる。
【0016】
乳化重合の際に使用する乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、ロジン酸塩、リン酸塩等のアニオン系界面活性剤、さらに、公知のノニオン系界面活性剤も使用できる。
乳化重合では、通常、凝固剤により凝固して得られる粉末を水洗後、乾燥することによって、ゴム変性スチレン系樹脂の粉末が得られる。この際の凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機塩、または硫酸、塩酸、酢酸等の酸を用いることができる。本発明において、特に好まし凝固剤は、硫酸である。
又、本発明の(A)成分を塊状重合、溶液重合、懸濁重合で製造する際、各種溶媒、懸濁剤、重合開始剤、連鎖移動剤等が使用されるが、何れも公知のものが使用される。
【0017】
本発明の(A)成分中に分散するゴム質重合体(a)の平均ゴム粒子径は、500Å〜30000Åの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、1000Å〜20000Å、特に好ましくは、1500Å〜8000Åである。
乳化重合で本発明の(A)成分を得る場合、乳化重合で得たゴム質重合体(a)を使用する場合が多いが、その場合、ゴム質重合体(a)中のゲル含率は、通常、98重量%以下であり、40〜98重量%であることが好ましく。更に好ましくは、50〜95重量%、特に好ましくは、60〜90重量%である。ゲル含率が40〜98重量%において、特に優れた耐衝撃性、ウエルド強度、及び成形品表面外観に優れた成形品を与える熱可塑性樹脂組成物を得るこができる。
【0018】
尚、上記ゲル含率は、トルエン100mlにゴム質重合体1gを投入し、室温で48時間静置した後、100メッシュ金網(重量W1)で濾過してトルエン不溶分と金網を80℃で6時間真空乾燥して秤量(重量W2)し、次式により算出される値である。
ゲル含率(%)=[{W2(g)−W1(g)}/1(g)]×100
ゲル含率は、ゴム質重合体の製造時に、分子量調整剤の種類及び量、重合時間、重合温度、重合転化率などを適宜設定することにより調整することができる。
【0019】
本発明の上記(A)成分のグラフト率は、好ましくは20〜200重量%、更に好ましくは30〜150重量%、特に好ましくは40〜120重量%である。このグラフト率(%)は、次式により求められる。
グラフト率(%)={(T−S)/S}×100
上記式中、Tはアセトン20mlに(A)成分1gを投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23000rpm)で60分遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の重量(g)であり、Sは(A)成分1gに含まれるゴム質重合体の重量(g)である。
【0020】
又、(A)成分のアセトン可溶分の極限粘度[η](溶媒としてメチルエチルケトンを使用し、30℃で測定)は、0.2〜1.2dl/gが好ましく、更に好ましくは0.2〜1dl/g、特に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
【0021】
本発明の(B)成分は、ゴム質重合体非存在下に芳香族ビニル化合物、又は芳香族ビニル化合物及びこの芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体を重合してなるスチレン系樹脂である。
ここで使用される芳香族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体としては上記(A)成分に関して記載したものを全て使用できる。好ましくは、芳香族ビニル化合物とビニルシアン化合物及び/又は(メタ)アクリル酸エステルを50重量%以上含有するものである。
【0022】
本発明の(B)成分は、乳化重合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合又はこれらを組み合わせた重合法等で得ることができる。これらに使用される乳化剤、溶媒、懸濁剤、重合開始剤、連鎖移動剤等は、公知のものが全て使用できる。
本発明の(B)成分のメチルエチルケトンを溶媒として30℃で測定した極限粘度[η]は、好ましくは、0.2〜1.2dl/g、更に好ましくは0.2〜1dl/g、特に好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
【0023】
本発明における(C)成分である有機リン系難燃剤としては、下記一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)のそれぞれで表される化合物が好ましく用いられる。
【0024】
【化1】
【0025】
【化2】
【0026】
【化3】
【0027】
【化4】
【0028】
一般式(I)で表される化合物は、2種以上の芳香族基を有するポリホスフェート類である。これらは、芳香族二価ヒドロキシ化合物と、オキソ塩化リンと、芳香族一価ヒドロキシ化合物との反応により生成する化合物であり、式中R1およびR2は芳香族基、Aは芳香族二価ヒドロキシ化合物の残基、nは1〜20の整数である。
上記芳香族二価ヒドロキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSが用いられる。上記芳香族一価ヒドロキシ化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、ナフトール等がある。R1およびR2は同一であっても、又は異なってもよい。
【0029】
一般式(II)において、R4およびR5は、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜8のアルキル基であり、R4およびR5は、同一であっても、又は異なってもよい。Xは1〜4の整数である。R3は、水素原子または下記一般式(V)〜(IX)のそれぞれで示される基である。
【0030】
【化5】
【0031】
(一般式(V)において、R21は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基または低級アルキル基であり、Yは1〜5の整数である。)
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,3−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド、10−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等が挙げられる。
これらのうちでは、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドおよび10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシドが特に好ましい。
【0037】
一般式(III)および(IV)において、n′およびn″は0〜15、好ましくは1〜10の整数である。R6〜14およびR15〜20は、同一分子内においてそれぞれ同一であっても、又は異なってもよく、アルキル基、アリル基、アルコキシル基、アリロキシル基、アミノ基またはヒドロキシル基である。これらの基は、可能であれば、アルコキシル基、アリロキシル基、アルキル基、アリル基、アミノ基およびヒドロキシル基などのそれぞれで置換されていてもよい。
一般式(III)または(IV)で表されるフォスファゼン化合物の具体例としては、プロポキシホスファゼン、フェノキシホスファゼン、メチルフェノキシホスファゼン、アミノホスファゼン、フルオロアルキルホスファゼン等が挙げられる。又、その合成方法及び入手のし易さなどから、フェノキシホスファゼンが特に好ましい。
【0038】
更に同一分子内のR6〜14またはR15〜20は、全て同種の置換基であってもよいし、各々が2種以上の異なった置換基であってもよい。このような置換ホスファゼン化合物の具体例としては、分子内の一部をフェノキシ基で置換し、その後にプロポキシ基で置換したホスファゼン、即ち、フェノキシプロポキシホスファゼンなどが挙げられる。
【0039】
更に、本発明の有機リン系難燃剤として、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(o−フェニルフェニル)ホスフェート、トリス(p−フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート等のモノホスフェート類も使用できる。
【0040】
上記本発明の有機リン系難燃剤は、1種単独で使用することもできるが、2種以上混合して使用することもできる。本発明において、上記モノホスフェート類は、成形加工時に成形品表面に出やすく、成形品表面外観を損なう可能性があることから、上記した他の難燃剤と併用することが好ましい。
本発明で使用される上記難燃剤において、好ましいものは、一般式(I)および一般式(II)で示されたもの、並びにその併用系である。一般式(I)および(II)の難燃剤を併用する場合、難燃剤全量の50重量%以上一般式(I)の難燃剤を使用することが、衝撃強さの観点から好ましい。
【0041】
本発明の(D)成分であるアルミナとしては、酸化アルミニウムが挙げられ、特にその水和物が好ましい。形状としては、板状、短冊状、六角板状、針状、蝶ネクタイ状、扇状、円板状のものが全て使用できる。粒径は、0.1〜10μmのものが好ましく、アスペクト比は、3〜300の範囲にあるものが好ましい。水和物の脱水温度は、400℃以上のものが好ましい。又、層間に有機物をインターカレートしたものも好ましく使用できる。
【0042】
本発明の(D)成分であるホウ酸カルシウムとしては、その水和物を用いることが好ましい。該ホウ酸カルシウムの粒径は20μm以下であることが好ましい。一般に、ホウ酸カルシウムは、自然界から産出されるためCaO、Fe2O3、MgO、Na2O、K2O等の不純物を含む。好ましいものは、ホウ酸カルシウムを30重量%以上含有し、Fe2O3、Na2O、K2Oの含有量が1%以下のものであり、また、脱水温度が300℃以上のものが更に好ましい。
また、本発明の(D)成分として、アルミナ及びホウ酸カルシウムをそれぞれチタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤等で表面処理したものを用いることもできる。
【0043】
本発明の(E)成分は、芳香族ポリカーボネート樹脂および熱可塑性ポリエステル樹脂から選ばれた少なくとも1種である。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、種々のヒドロキシアリール化合物とホスゲンとの界面重縮合によって得られるもの、又はジヒドロキシアリール化合物とジフェニルカーボネート等のカーボネート化合物とのエステル交換反応(溶融重縮合)によって得られるもの等、公知の重合法によって得られたものが全て使用できるが、ウエルド強度の面から溶融重合法で得られたものが好ましい。
【0044】
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるジヒドロキシアリール化合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホン、ヒドロキノン、レゾルシン等があり、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用される。特に好ましいものは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)である。上記芳香族ポリカーボネートは、上記原料より得られた各種ポリカーボネートを1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
本発明で使用される上記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、13000〜32000が好ましく、更に好ましくは、17000〜31000、特に好ましくは、18000〜30000である。又、粘度平均分子量の異なる芳香族ポリカーボネートを併用することもでき、特に、粘度平均分子量13000〜19000(E1)のものと20000〜32000(E2)のものを(E1)/(E2)=10/90〜50/50重量%の割合で併用した場合、耐衝撃性と流動性のバランスに優れるものが得られる。
【0046】
尚、芳香族ポリカーボネート樹脂と粘度平均分子量は、塩化メチレンを溶媒として、20℃、濃度〔0.7g/100ml(塩化メチレン)〕で測定した比粘度(ηsp)を次式に挿入して算出することができる。
粘度平均分子量=([η]×8130)1.205
(式中、[η]=〔(ηsp×1.12+1)1/2−1〕/0.56Cである。)
【0047】
本発明で使用される芳香族ポリカーボネート樹脂において、界面重縮合で得られたものは、各種塩素化合物を含む場合がある。この塩素化合物は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の熱安定性に悪影響を及ぼす場合があるため、芳香族ポリカーボネート樹脂の塩素化合物含有量は少ない程、好ましいが、塩素原子として300ppm以下であることが好ましく、更に好ましくは、100ppm以下である。
【0048】
熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ジカルボン酸またはそのエステルもしくはエステル形成誘導体とジオール成分とを公知の方法により重縮合させて得られたもの等が挙げられる。
上記ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸等が挙げられ、これらのエステル形成誘導体も、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂の成分として用いることができる。又、p−ヒドロキシ安息香酸も単独で、またはジオール成分、ジカルボン酸成分と併用して使用できる。
ジオール成分の例としては、2〜6の炭素数を有するポリメチレングリコール(例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール)、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ヒドロキノン及びこれらのエステル形成誘導体等が挙げられ、上記ジカルボン酸成分、上記ジオール成分等は、単独で、または2種以上併用して使用できる。
【0049】
好ましい熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等であり、更に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、及びポリブチレンテレフタレートである。本発明で使用される熱可塑性ポリエステル樹脂の極限粘度は特に規定されず、公知のものが全て使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレートの場合、テトラクロルエタン/フェノールの等量混合溶媒中、25℃で測定した極限粘度[η](単位dl/g)は、好ましくは0.5〜2dl/g、更に好ましくは0.5〜1.5dl/gの範囲である。ポリブチレンテレフタレートの場合、o−クロロフェノールを溶媒として、25℃で測定した極限粘度[η](単位dl/g)は、0.4〜2.0の範囲であることが好ましい。
【0050】
本発明の(A)成分または(B)成分と(E)成分との親和性を向上させる目的から、相溶化剤を用いることができる。相溶化剤としては、スチレン/(アクリロニトリル)共重合体ブロックと前記(メタ)アクリル酸エステル重合体ブロックとからなる重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体のようなエチレンと前記エポキシ基含有不飽和化合物との共重合体(以下「エチレン−エポキシ基含有不飽和化合物系共重合体」、ここでエポキシ基含有不飽和化合物の共重合量は、3〜50重量%の範囲が好ましい)、更に、このエチレン−エポキシ基含有不飽和化合物系共重合体に前記芳香族ビニル化合物と前記ビニルシアン化合物、前記芳香族ビニル化合物と前記(メタ)アクリル酸エステル化合物、又、前記(メタ)アクリル酸エステル化合物の重合体がグラフト重合したもの、更にカルボン酸及び/又は酸無水物で変性されたエチレン系重合体等が挙げられる。これらは、単独で、又は、2種以上組み合わせて使用できる。
上記相溶化剤は、(A)成分、(B)成分及び(E)成分の合計100重量部に対して、1〜40重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0051】
本発明の樹脂組成物(1)において、(A)成分の使用量は、5〜97重量%、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは10〜70重量%である。(A)成分の使用量が5重量%未満では、耐衝撃性が劣り、97重量%を超えると難燃性が劣る。(B)成分の使用量は、0〜92重量%、好ましくは16〜86重量%、更に好ましくは25〜85重量%である。(C)成分の使用量は、3〜20重量%であり、好ましくは、4〜18重量%、更に好ましくは5〜18重量%である。(C)成分の使用量が3重量%未満では、難燃性が得られず。20重量%を超えると剛性及び熱変形温度が劣る。
【0052】
本発明の樹脂組成物(2)において、(A)成分の使用量は、5〜95重量%であり、好ましくは7〜87重量%、更に好ましくは10〜85重量%である。(A)成分の使用量が5重量%未満では、耐衝撃性が劣り、95重量%を超えると難燃性が劣る。(B)成分の使用量は、0〜90重量%であり、好ましくは0〜87重量%、更に好ましくは0〜75重量%である。(B)成分の使用量が90重量%を超えると耐衝撃性及が劣る。(C)成分の使用量は、2〜20重量%であり、好ましくは、3〜18重量%、更に好ましくは5〜18重量%である。(C)成分の使用量が2重量%未満では、難燃性が得られず、20重量%を超えると剛性及び熱変形温度が劣る。(E)成分の使用量は、3〜93重量%、好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは10〜85重量%である。(E)成分の使用量が3重量%未満では、耐衝撃性が劣り、93重量%を超えると耐衝撃性及び耐熱性が劣る。
【0053】
本発明の(D)成分の使用量は、樹脂組成物(1)においては(A)、(B)及び(C)成分の合計100重量部に対し、樹脂組成物(2)においては(A)、(B)、(C)及び(E)成分の合計100重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜15重量部、更に好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部である。(D)成分の使用量が0.1重量部未満では、難燃性が劣り、20重量部を超えると耐衝撃性、成形品表面外観が劣る。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形、プレス成形、シート押出成形、真空成形、異形押出成形、発泡成形等の公知の成形法により、成形品を得る事ができる。
かかる成形品としては、下記のものが例示される:
【0055】
各種ギア、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシー、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;
【0056】
VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品;
【0057】
オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具関連部品;
便座、タンクカバー、ケーシング、台所回りの部品、洗面台関連部品、浴室関連パーツ等のサニタリー関連部品;
窓枠、家具、床材、壁材等の住宅・住設関連部品;
顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器・精密機器関連部品;
【0058】
オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気各種バルブ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウオーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイパーハーネス、ウインドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローラー、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース;
【0059】
パソコン、プリンター、ディスプレイ、CRTディスプレイ、ノートパソコン、携帯電話、PHS、DVDドライブ、PDドライブ、フレキシブルディスクドライブなどの記憶装置のハウジング、シャーシー、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子機器部品、自動車部品、その他各種用途。
【0060】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、他の無機充填剤、例えば、ガラス繊維、ガラス繊維のミルドファイバー、ガラスフレーク、炭素繊維、炭素繊維のミルドファイバー、酸化亜鉛ウイスカー、マイカ、ホウ酸アルミニウムウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー等を配合することができる。
又、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、耐候(光)剤、耐電防止剤、酸化防止剤、滑剤、シリコーンオイル、可塑剤、着色剤、染料、抗菌剤等を適宜配合することができる。
更に、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、他の重合体であるポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、POM(ポリアセタール)、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、LCP(液晶ポリマー)等を適宜配合して使用することができる。
【0061】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等により、各成分を混練することにより調製することができる。好ましい製造法は、押出機又はバンバリーミキサーを用いる方法である。更に、各々の成分を混練するに際しては、それらの成分を一括して混練してもよく、または、押出機、バンバリーミキサー等で多段、分割配合し混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練したあと、押出機によりペレット化することもできる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例中、部及び%は、特に断らない限り重量基準である。又、実施例中の各種評価は、次のようにして測定したものである。
【0063】
(1)評価方法
(1−1)剛性
ISO試験法178に準拠して、曲げモジュラス(MPa)を測定した。
(1−2)耐衝撃性
ISO試験法179に準拠して、ノッチ付きシャルピー衝撃強さ(KJ/
m2)を測定した。
(1−3)成形品表面外観
平板を成形し、成形品表面外観を下記評価基準に準じて、目視評価した。
評価基準:
○:外観良好、
△:少し劣る、
×:劣る。
(1−4)熱変形温度
ISO試験法75に準拠して荷重たわみ温度(℃)を測定した。
(1−5)燃焼性
UL−94Vテストに準拠して、試験片厚み1.8mmで試験した。表中、BNは、バーニングを示す。
【0064】
(1−6)ゴム質重合体の平均粒子径
ゴム質重合体分散粒子の平均粒子径は、予め乳化状態で合成したラテックス粒子径がそのまま樹脂中の分散粒子の粒子径を示すことを電子顕微鏡で確認しており、ラテックス中の分散粒子の粒子径を光散乱法で測定した。測定機器は、大塚電子(株)社製、LPA−3100を使用し、70回積算でキュムラント法を用い、粒子径を測定した。
(1−7)(A)成分のグラフト率、(A)成分のアセトン可溶部及び(B)成分の極限粘度[η]、(E)成分である芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量、ならびに、(E)成分であるポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートの極限粘度[η]は、それぞれ、上記記載の方法で測定した。
【0065】
(2)熱可塑性樹脂組成物の成分
(2−A)ゴム変性スチレン系樹脂((A)成分)
製造例A−1
攪拌機を備えた内容積7Lのガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンラテックス(平均粒径;3500Å、ゲル含率;85%)40部(固形分)、スチレン15部、アクリロニトリル5部を加え、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点で、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始し、1時間重合させた後、更にイオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、t−ドデシルメルカプタン0.05部及びクメンハイドロパーオキシド0.01部を3時間かけて連続的に添加し、更に、1時間重合させて、2,2´−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し重合を完結した。反応生成物のラテックスを硫酸水溶液で凝固、水洗したのち、乾燥してゴム変性スチレン系樹脂A1(表1では A1 と記載する)を得た。このゴム変性スチレン系樹脂A1のグラフト率は72%、アセトン可溶部の極限粘度[η]は0.47dl/gであった。
【0066】
製造例A−2
製造例A−1で用いたポリブタジエンラテックス40部(固形分)の代わりに、ポリブタジエンラテックス(平均粒径;2700Å、ゲル含率;90%)32部(固形分)、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス(スチレン含率;25%、平均粒径5500Å、ゲル含率45%)8部(固形分)を用いた以外は、製造例A−1と同一の条件で重合し、ゴム変性スチレン系樹脂A2(表1では A2と記載する)を得た。このゴム変性スチレン系樹脂A2のグラフト率は64%、アセトン可溶部の極限粘度[η]は0.45dl/gであった。
【0067】
製造例A−3
製造例A−1で用いたポリブタジエンラテックスの使用量、第1段目のスチレン、アクリロニトリル、t−ドデシルメルカプタン、及びクメンハイドロパーオキサイドの各使用量、第2段目のスチレン、アクリロニトリル、t−ドデシルメルカプタン及びクメンハイドロパーオキサイドの各使用量を下記の如くした以外は、製造例A−1と同一の条件で重合し、ゴム変性スチレン系樹脂A3(表1では A3 と記載する)を得た。
第1段目成分 使用量(部)
ポリブタジエンラテックス 80(固形分)
スチレン 5
アクリロニトリル 1.7
t−ドデシルメルカプタン 0.03
クメンハイドロパーオキサイド 0.025
第2段目成分
スチレン 10
アクリロニトリル 3.3
t−ドデシルメルカプタン 0.017
クメンハイドロパーオキサイド 0.005
このゴム変性スチレン系樹脂A3のグラフト率は15%、アセトン可溶部の極限粘度[η]は、0.42dl/gであった。
【0068】
製造例A−4
製造例A−1で用いたポリブタジエンラテックスの使用量、第1段目のスチレン、アクリロニトリル、t−ドデシルメルカプタン、及びクメンハイドロパーオキサイドの各使用量、第2段目のスチレン、アクリロニトリル、t−ドデシルメルカプタン及びクメンハイドロパーオキサイドの各使用量を下記の如くした以外は、製造例A−1と同一の条件で重合し、ゴム変性スチレン系樹脂A4(表1では A4 と記載する)を得た。
第1段目成分 使用量(部)
ポリブタジエンラテックス 5(固形分)
スチレン 23.8
アクリロニトリル 7.9
t−ドデシルメルカプタン 0.159
クメンハイドロパーオキサイド 0.111
第2段目成分
スチレン 47.5
アクリロニトリル 15.8
t−ドデシルメルカプタン 0.079
クメンハイドロパーオキサイド 0.016
このゴム変性スチレン系樹脂A4のグラフト率は84%、アセトン可溶部の極限粘度[η]は、0.49dl/gであった。
【0069】
(2−B)スチレン系樹脂(成分(B))
製造例B−1
スチレン75部、アクリロニトリル25部を用いて、塊状重合でスチレン系樹脂B1(表1では B1 と記載する)を得た。このものの極限粘度[η]は、0.45dl/gであった。
【0070】
製造例B−2
スチレン75部、アクリロニトリル20部、グリシジルメタクリレート5部を用いて、塊状重合でスチレン系樹脂B2(表1では B2 と記載する)を得た。このものの極限粘度[η]は、0.43dl/gであった。
【0071】
製造例B−3
スチレン60部、N−フェニルマレイミド40部を用いて溶液重合し、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体(表1では B3 と記載する)を得た。このものの極限粘度は、0.35dl/gであった。
【0072】
(2−C)有機リン系難燃剤(成分(C))
C−1:下記式(X)で表される縮合リン酸エステル化合物:「アデカフタブFP−700(商品名:旭電化社製)」(表1では C1 と記載する)
【0073】
【化10】
【0074】
C−2:下記式(XI)で表される縮合リン酸エステル化合物:「アデカフタブFP−500(商品名:旭電化社製)」(表1では C2 と記載する)
【0075】
【化11】
【0076】
C−3:下記式(XII)で表されるリン化合物:「サンコー HCA−HQ(商品名:三光社製)」(表1では C3 と記載する)
【0077】
【化12】
【0078】
(2−D)アルミナ及び/又はホウ酸カルシウム(成分(D))
D−1:河合石灰工業製ベーマイト(アルミナ水和物)BMI(表1では D1と記載する)。この物性は次のとおりである。形状:針状、粒径:4〜7μm、脱水温度:462℃。
D−2:キンセイマティック製 UBP(ホウ酸カルシウム水和物)(表1では
D2 と記載する)。この物性は次のとおりである。平均粒径:6μm。
D−3:河合石灰工業製ベーマイト(アルミナ水和物)BMM(表1では D3と記載する)。この物性は次のとおりである。形状:板状、粒径:0.8〜1.5μm、脱水温度:520℃。
【0079】
(2−E)芳香族ポリカーボネート樹脂または熱可塑性ポリエステル樹脂(成分(E))
製造例E−1
ビスフェノールAとホスゲンを用いて界面重縮合し、粘度平均分子量22000の芳香族ポリカーボネート樹脂(表1では E1 と記載する)を得た。
【0080】
製造例E−2
ビスフェノールAとジフェニルカーボネートを用いて加熱溶融重縮合を行い、粘度平均分子量22000の芳香族ポリカーボネート樹脂E2(表1では E2と記載する)を得た。
【0081】
製造例E−3
日本ユニペット(株)製ポリエチレンテレフタレートRT523C(極限粘度0.72dl/g)(表1では E3 と記載する)を用いた。
【0082】
製造例E−4
テレフタル酸とブタンジオールの重縮合で得た、極限粘度0.8dl/gのポリブチレンテレフタレート(表1では E4 と記載する)を用いた。
【0083】
(2−F)その他の成分
F−1;ポリテトラフルオロエチレンとしてダイキン工業社製 ダイフロン F201L(商品名)(表1では F1 と記載する)を用いた。
【0084】
(3)熱可塑性樹脂組成物の製造
実施例1〜16及び比較例1〜7
表1に記載の成分を、表1に記載の配合割合でヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(池貝鉄工株式会社製、形式PCM45)を用いて、溶融混練し(混練温度220〜260℃)、ペレット化した。ついで、得られたペレットを充分に乾燥し、射出成形(成形温度200〜240℃)により評価用試験片を作製した。この試験片を用い、前記の方法で、剛性、耐衝撃性、成形品表面外観、熱変形温度(耐熱性)、及び燃焼性(難燃性)を評価した。評価結果を表2に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表2から、実施例1〜16における本発明の樹脂組成物からいずれも剛性、耐衝撃性、成形品表面外観、熱変形温度及び難燃性の全てに優れた成形品が得られることがわかる。
反面、比較例1は、本発明の(A)成分中のゴム質重合体量が発明の範囲外で多い例であり、成形品表面外観、耐衝撃性及び難燃性が劣る。
比較例2は、本発明の(A)成分中のゴム質重合体の使用量が、発明の範囲外で少ない例であり、耐衝撃性が劣る。
比較例3は、本発明の(D)成分中の使用量が、発明の範囲外で少ない例であり、難燃性が劣る。
比較例4は、比較例3で燃焼レベルがUL94V2に至らなかった事から、(C)成分の使用量を多くしV2レベルとしたものであるが剛性、耐衝撃性及び耐熱性が劣る。
比較例5は、本発明の(D)成分の使用量が発明の範囲外で多い例であり、耐衝撃性、成形品表面外観が劣る。
比較例6は、本発明の(C)成分の使用量が発明の範囲外で多い例であり、剛性、耐衝撃性、及び耐熱性が劣る。
比較例7は、本発明の(C)成分の使用量が発明の範囲外で少ない例であり、難燃性が劣る。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、ABS系ゴム強化樹脂と有機リン系難燃剤からなる組成物にアルミナ及び/又はホウ酸カルシウムを適量配合することで、剛性、耐衝撃性、成形品表面外観、耐熱性、及び難燃性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる。
Claims (3)
- (A)ゴム質重合体(a)10〜70重量%存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体(b)90〜30重量%をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂 5〜97重量%;
(B)ゴム質重合体非存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体を重合してなるスチレン系樹脂 0〜92重量%;
(C)有機リン系難燃剤 3〜20重量%;
前記(A)、(B)及び(C)成分の合計100重量部と、
(D)アルミナ及び/又はホウ酸カルシウム 0.1〜20重量部と、
を含有してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。 - (A)ゴム質重合体(a)10〜70重量%存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体(b)90〜30重量%をグラフト重合してなるゴム変性スチレン系樹脂 5〜95重量%;
(B)ゴム質重合体非存在下に芳香族ビニル化合物、又は、芳香族ビニル化合物及び該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他のビニル単量体を重合してなるスチレン系樹脂 0〜90重量%;
(C)有機リン系難燃剤 2〜20重量%;
(E)芳香族ポリカーボネート樹脂および熱可塑性ポリエステル樹脂から選ばれた少なくとも1種 3〜93重量%;
前記(A)、(B)、(C)及び(E)成分の合計100重量部と、
(D)アルミナ及び/又はホウ酸カルシウム 0.1〜20重量部と、
を含有してなることを特徴とする難燃性樹脂組成物。 - 請求項1または2の難燃性樹脂組成物からなる成形品。
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