JP2011132523A - スチレン系樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐衝撃性、耐熱性、流動性、耐薬品性、外観に優れ、さらに容易に難燃性付与が可能なスチレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(r)ゴム質重合体の存在下で、(a1)スチレン系単量体、(a2)シアン化ビニル系単量体、およびこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体からなる単量体混合物をグラフト重合してなる(A−1)グラフト共重合体と、(a1)スチレン系単量体、(a2)シアン化ビニル系単量体、およびこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体からなる単量体混合物を重合してなる(A−2)スチレン系重合体とからなる(A)スチレン系樹脂50〜99重量部、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂1〜50重量部を含むスチレン系樹脂組成物であり、(A)成分または(B)成分が、平均粒子径0.001〜0.99μmで分散しているスチレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】(r)ゴム質重合体の存在下で、(a1)スチレン系単量体、(a2)シアン化ビニル系単量体、およびこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体からなる単量体混合物をグラフト重合してなる(A−1)グラフト共重合体と、(a1)スチレン系単量体、(a2)シアン化ビニル系単量体、およびこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体からなる単量体混合物を重合してなる(A−2)スチレン系重合体とからなる(A)スチレン系樹脂50〜99重量部、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂1〜50重量部を含むスチレン系樹脂組成物であり、(A)成分または(B)成分が、平均粒子径0.001〜0.99μmで分散しているスチレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、耐衝撃性、耐熱性、流動性、耐薬品性、外観に優れ、さらに難燃剤を添加した場合には容易に難燃性付与が可能なスチレン系樹脂組成物およびそれからなる成形品に関するものである。
スチレン系樹脂は、耐衝撃性等の機械的性質、流動性、外観に優れることから、家電製品、OA機器のみならず、自動車部品、建材など広範な分野で用いられているが、耐熱性や耐薬品性などの特性は未だ不十分であり、特性向上が強く求められている。
一方、ポリフェニレンエーテルは耐熱性、耐薬品性、電気的性質等に優れているが、成形加工性、耐衝撃性が低いという欠点を有しており、これら欠点を改良するため他のポリマーとアロイ化する方法がとられてきた。
なかでもスチレン系樹脂(ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)など)とポリフェニレンエーテル樹脂からなるアロイは機械特性、成形加工性、耐熱性に優れることから多数提案されている。
例えばポリスチレンやハイインパクトポリスチレン等のポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂とのアロイは相溶性に優れることが知られており、自動車用途を中心に多く使用されているが、未だ剛性や耐薬品性は十分と言えるものではなかった。
上記剛性や耐薬品性を改良する手法として、ABSとポリフェニレンエーテル樹脂をアロイ化する方法が開示されている。しかしながら、アクリロニトリルを含むABSはポリフェニレンエーテルとの相溶性に劣るため、耐衝撃性の低下や、外観不良などの不具合が発生する。
上記剛性や耐薬品性を改良する手法として、ABSとポリフェニレンエーテル樹脂をアロイ化する方法が開示されている。しかしながら、アクリロニトリルを含むABSはポリフェニレンエーテルとの相溶性に劣るため、耐衝撃性の低下や、外観不良などの不具合が発生する。
この不具合を改良する方法として、ポリフェニレンエーテルポリマーとスチレン−アクリロニトリルポリマーとコポリマー相溶化剤からなるポリマーブレンド組成物(特許文献1)、ポリフェニレンエーテル樹脂とゴム状弾性体とアクリロニトリル含有量の異なる共重合体2種併用する方法(特許文献2)、ポリフェニレンエーテル系樹脂にシアン化ビニル化合物が含まれた共重合体とシアン化ビニル化合物が含まれないゴム変性スチレン系樹脂からなる組成物(特許文献3)、シアン化ビニル化合物が0〜18重量%含む単量体混合物をゴム質重合体に含浸後、グラフト重合して得られる耐衝撃性補強材をポリフェニレンエーテルと混合する方法(特許文献4)などが開示されている。主にポリフェニレンエーテルと相溶性に劣るアクリロニトリル(シアン化ビニル化合物)の割合を低くすることで、相溶しやすくしているため剛性や耐薬品性等が低下するのは避けられないのが実状であった。
さらにポリフェニレンエーテルは燃焼時に炭化層を形成するなど高い難燃性を有することから、スチレン系樹脂とポリフェニレン系樹脂のアロイは難燃用途にも使用される。例えば、シアン化ビニル化合物が0〜18重量%含む単量体混合物をゴム質重合体にグラフト重合して得られる耐衝撃性補強材をポリスチレンとポリフェニレンエーテルと難燃剤を含有する耐衝撃性ポリフェニレンエーテル(特許文献5)、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂からなるポリフェニレンエーテル系樹脂にコアシェル型シリコン樹脂微粒子と芳香族燐酸エステル系難燃剤を含有する難燃ポリフェニレンエーテル樹脂組成物(特許文献6)が開示されている。ポリフェニレンエーテルの少ない組成では難燃性を発現するために難燃剤を多量に添加しなければならず、物性の低下を招いてしまう。一方ポリフェニレンエーテルの多い組成では少量の難燃剤の添加で良好な難燃性を発現可能であるが機械特性や流動性の低下など満足のいく特性をバランス良く発現できていないのが実状であった。
またスピノーダル分解によって構造周期0.001〜0.1μmの両相連続構造を形成後、さらに構造周期0.01〜0.1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.01μm〜1μmの分散構造まで発展せしめることにより、優れた機械特性を活かした構造材料や、優れた規則性を活かして機能材料として有用なポリマーアロイを得る方法(特許文献7)が開示されている。しかしながら該公報にはポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂を配合してなる熱可塑性樹脂組成物に関しては例示がなく、また該熱可塑性樹脂組成物が優れた機械特性や耐熱性を発現することについては一切開示されていない。
本発明は、上記課題を解決し、耐衝撃性、耐熱性、流動性、耐薬品性、外観に優れ、さらに難燃剤を添加した場合には容易に難燃性付与が可能なスチレン系樹脂組成物を提供することをその課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、スチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂を特定の割合で含むスチレン系樹脂組成物とすることで上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1)(r)ゴム質重合体5〜80重量%の存在下で、(a1)スチレン系単量体20〜80重量%、(a2)シアン化ビニル系単量体20〜60重量%、およびこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体0〜60重量%からなる単量体混合物20〜95重量%をグラフト重合してなる(A−1)グラフト共重合体0〜95重量部と、(a1)スチレン系単量体20〜80重量%、(a2)シアン化ビニル系単量体20〜60重量%、およびこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体0〜60重量%からなる単量体混合物を重合してなる(A−2)スチレン系重合体5〜100重量部とからなる(A)スチレン系樹脂50〜99.9重量部(ただし(a1)〜(a3)の合計をそれぞれ100重量%とする)、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂0.1〜50重量部を含むスチレン系樹脂組成物であり、該スチレン系樹脂組成物中で(A)成分または(B)成分が、平均粒子径0.001〜0.99μmで分散しているスチレン系樹脂組成物。
(2)(A)スチレン系樹脂と(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を含むスチレン系樹脂組成物100重量部に対して、さらに(C)リン系難燃剤1〜30重量部を含む(1)に記載のスチレン系樹脂組成物。
(3)前記(B)ポリフェニレンエーテル樹脂が、クロロホルムを溶媒として用い、30℃で測定した固有粘度が、0.05〜0.40dl/gである(1)または(2)に記載のスチレン系樹脂組成物。
(4)前記スチレン系樹脂組成物からなる射出成形品を、UL94に従って評価した垂直燃焼試験が、V−2以上である(1)〜(3)のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
(5)(A)スチレン系樹脂、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を溶融混練する(1)〜(4)のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
(6)前記溶融混練において、E値が下記式(1)を満たす条件で行うことを特徴とする(5)に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
0.01<E値<0.1 ・・・(1)
E=Q/Ns×(27000/D3) ・・・(2)
Q:溶融混練時の吐出量(kg/hr)
Ns:スクリュー回転数(rpm)
D:スクリュー直径(mm)
(7)前記溶融混練において、混練部の少なくとも一箇所以上で下記式(3)を満たす温度(T)(℃)領域が存在する条件下で溶融混練することを特徴とする(5)および(6)のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
T=((TA+100)×(WA/100))+((TB+100)×(WB/100))・・・(3)
TA:(A)スチレン系樹脂のガラス転移温度(℃)
TB:(B)ポリフェニレンエーテル樹脂のガラス転移温度(℃)
WA:(A)スチレン系樹脂の配合量(重量%)
WB:(B)ポリフェニレンエーテル樹脂の配合量(重量%)
(8)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物からなる成形品。
(1)(r)ゴム質重合体5〜80重量%の存在下で、(a1)スチレン系単量体20〜80重量%、(a2)シアン化ビニル系単量体20〜60重量%、およびこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体0〜60重量%からなる単量体混合物20〜95重量%をグラフト重合してなる(A−1)グラフト共重合体0〜95重量部と、(a1)スチレン系単量体20〜80重量%、(a2)シアン化ビニル系単量体20〜60重量%、およびこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体0〜60重量%からなる単量体混合物を重合してなる(A−2)スチレン系重合体5〜100重量部とからなる(A)スチレン系樹脂50〜99.9重量部(ただし(a1)〜(a3)の合計をそれぞれ100重量%とする)、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂0.1〜50重量部を含むスチレン系樹脂組成物であり、該スチレン系樹脂組成物中で(A)成分または(B)成分が、平均粒子径0.001〜0.99μmで分散しているスチレン系樹脂組成物。
(2)(A)スチレン系樹脂と(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を含むスチレン系樹脂組成物100重量部に対して、さらに(C)リン系難燃剤1〜30重量部を含む(1)に記載のスチレン系樹脂組成物。
(3)前記(B)ポリフェニレンエーテル樹脂が、クロロホルムを溶媒として用い、30℃で測定した固有粘度が、0.05〜0.40dl/gである(1)または(2)に記載のスチレン系樹脂組成物。
(4)前記スチレン系樹脂組成物からなる射出成形品を、UL94に従って評価した垂直燃焼試験が、V−2以上である(1)〜(3)のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
(5)(A)スチレン系樹脂、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を溶融混練する(1)〜(4)のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
(6)前記溶融混練において、E値が下記式(1)を満たす条件で行うことを特徴とする(5)に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
0.01<E値<0.1 ・・・(1)
E=Q/Ns×(27000/D3) ・・・(2)
Q:溶融混練時の吐出量(kg/hr)
Ns:スクリュー回転数(rpm)
D:スクリュー直径(mm)
(7)前記溶融混練において、混練部の少なくとも一箇所以上で下記式(3)を満たす温度(T)(℃)領域が存在する条件下で溶融混練することを特徴とする(5)および(6)のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
T=((TA+100)×(WA/100))+((TB+100)×(WB/100))・・・(3)
TA:(A)スチレン系樹脂のガラス転移温度(℃)
TB:(B)ポリフェニレンエーテル樹脂のガラス転移温度(℃)
WA:(A)スチレン系樹脂の配合量(重量%)
WB:(B)ポリフェニレンエーテル樹脂の配合量(重量%)
(8)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物からなる成形品。
本発明により、耐衝撃性、耐熱性、流動性、耐薬品性、外観に優れ、さらに難燃剤を添加した場合には容易に難燃性付与が可能なスチレン系樹脂組成物およびそれからなる成形品を得ることができるようになった。
以下に本発明の樹脂組成物について具体的に説明する。
本発明で用いる(A)スチレン系樹脂とは、(r)ゴム質重合体5〜80重量%の存在下で、(a1)スチレン系単量体20〜80重量%、(a2)シアン化ビニル系単量体20〜60重量%、およびこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体0〜60重量%からなる単量体混合物20〜95重量%をグラフト重合してなる(A−1)グラフト共重合体0〜95重量部と、(a1)スチレン系単量体20〜80重量%、(a2)シアン化ビニル系単量体20〜60重量%、およびこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体0〜60重量%からなる単量体混合物を重合してなる(A−2)スチレン系重合体5〜100重量部からなるものである。
(A−1)グラフト共重合体に用いる(r)ゴム質重合体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、例えば、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴムなどであり、具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソブチレン)、ポリ(エチレン−アクリル酸メチル)などが挙げられる。これらの(r)ゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用される。これらの(r)ゴム質重合体のうち、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、エチレン−プロピレンラバーが耐衝撃性の点で特に好ましく用いられる。
本発明の(A−1)グラフト共重合体に用いる単量体としては、(a1)スチレン系単量体および(a2)シアン化ビニル系単量体を必須成分とし、任意成分としてこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体が挙げられる。
(a1)スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン、t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく使用される。
(a2)シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく使用される。
また、必要に応じて使用される(a1)成分、(a2)成分と共重合可能な(a3)他のビニル系単量体としては、靭性および色調の向上を目的とする場合にはアクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル化物などの(メタ)アクリル酸エステル系単量体、また耐熱性および難燃性の向上を目的とする場合にはマレイミド、N−メチルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体が好ましく用いられる。
本発明の(A−1)グラフト共重合体に用いられる(r)ゴム質重合体の割合は、(A−1)グラフト共重合体中5〜80重量%であり、好ましくは15〜75重量%、さらに30〜70重量%が耐衝撃性の観点より最も好ましい。 また(A−1)グラフト共重合体に用いられる単量体混合物の割合は、(a1)〜(a3)成分の合計を100重量%として、(a1)スチレン系単量体が20〜80重量%であり、好ましくは25〜70重量%、さらに30〜60重量%が耐衝撃性、流動性の観点より最も好ましい。(a2)シアン化ビニル系単量体は20〜60重量%であり、好ましくは20〜50重量%、さらに20〜40重量%が成形加工性の観点から最も好ましい。さらに(a3)他のビニル系単量体を共重合する場合には、0〜60重量%であり、好ましくは0〜50重量%、さらに0〜40重量%が最も好ましい。なお(A−1)グラフト共重合体中における(a1)スチレン系単量体、(a2)シアン化ビニル系単量体および(a3)他のビニル系単量体からなる単量体混合物の割合は、(A−1)グラフト共重合体中20〜95重量%であり、好ましくは25〜85重量%、さらに70〜30重量%の範囲が成形加工性、外観の観点より最も好ましい。((r)ゴム質重合体と、単量体混合物の合計を100重量%とする。)
本発明の(A−1)グラフト共重合体は、公知の重合法で得ることができる。例えば、ゴム質重合体ラテックスの存在下に単量体混合物および連鎖移動剤の混合物と乳化剤に溶解したラジカル発生剤の溶液を連続的に重合容器に供給して乳化重合する方法などによって得ることができる。
(A−1)グラフト共重合体は、(r)ゴム質重合体に単量体混合物がグラフト共重合した構造をとったグラフト共重合体の他に、グラフト共重合していない共重合体を含有したものである。(A−1)グラフト共重合体のグラフト率は特に制限はないが、耐衝撃性および光沢が均衡してすぐれる樹脂組成物を得るためには、20〜80重量%、さらに25〜60重量%、特に30〜50重量%の範囲であることが好ましい。ここで、グラフト率は次式により算出される値である。
グラフト率(%)=[<ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量>/<グラフト共重合体のゴム含有量>]×100
グラフト率(%)=[<ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量>/<グラフト共重合体のゴム含有量>]×100
上述のグラフト共重合していない共重合体の特性は特に制限されないが、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度[η](30℃で測定)が、0.20〜1.00dl/g、さらに0.25〜0.80dl/g、特に0.30〜0.60dl/gの範囲で、優れた耐衝撃性、外観を得るために好ましい条件である。
本発明の(A−2)スチレン系重合体に用いる単量体としては、(a1)スチレン系単量体および(a2)シアン化ビニル系単量体を必須成分とし、任意成分としてこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体が挙げられる。
(a1)スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン、t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく使用される。
(a2)シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく使用される。
また、必要に応じて使用される(a1)成分、(a2)成分と共重合可能な(a3)他のビニル系単量体としては、靭性および色調の向上を目的とする場合にはアクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル化物などの(メタ)アクリル酸エステル系単量体、また耐熱性および難燃性の向上を目的とする場合にはマレイミド、N−メチルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体が好ましく用いられる。
本発明の(A−2)スチレン系重合体に用いられる単量体混合物の割合は、(a1)〜(a3)成分の合計を100重量%として、(a1)スチレン系単量体が20〜80重量%であり、好ましくは25〜70重量%、さらに30〜60重量%が耐衝撃性の観点より最も好ましい。(a2)シアン化ビニル系単量体は、20〜60重量%であり、好ましくは20〜50重量%、さらに20〜40重量%が成形加工性、流動性、耐薬品性の観点から最も好ましい。さらに(a3)他のビニル系単量体を共重合する場合には、0〜60重量%であり、好ましくは0〜50重量%、さらに0〜40重量%が成形加工性、外観の観点より最も好ましい。
本発明の(A−2)スチレン系重合体の製造法には特に制限がなく、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状−懸濁重合法および溶液−塊状重合法など公知の重合法で得ることができる。
(A−2)スチレン系重合体の特性は特に制限はないが、メチルエチルケトン溶媒を用いて、30℃で測定したメチルエチルケトン可溶分の極限粘度[η]が、0.20〜2.00dl/g、さらに0.25〜1.50dl/g、特に0.30〜1.00dl/gの範囲で、優れた耐衝撃性、成形加工性、外観が得られることから好ましい。
本発明での(A)スチレン系樹脂を構成する成分の組成は、(A−1)成分、(A−2)成分の合計量を100重量部として、(A−1)グラフト共重合体が0〜95重量部であり、好ましくは10〜85重量部、さらに15〜70重量部の範囲が耐衝撃性の観点より最も好ましい。また(A−2)スチレン系重合体は、5〜100重量部であり、好ましくは15〜90重量部、さらに30〜85重量部の範囲が成形加工性の観点より最も好ましい。
本発明の(B)ポリフェニレンエーテル樹脂とは、下記構造式で表される繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。かかるポリフェニレンエーテル樹脂は、フェノール化合物の1種または2種以上と酸化カップリング触媒を用い、酸素または酸素含有ガスの存在下で酸化重合して得る事が出来る。
(式中、R1、R2、R3、R4、はそれぞれ同一でも異なっていても良く、水素、ハロゲン、炭化水素、および置換炭化水素から選ばれるいずれかであり、このうち少なくとも1つは水素である)。
上記一般式におけるR1、R2、R3、R4の具体例としては、水素、塩素、臭素、フッ素、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、フェニル、クロロエチル、ヒドロキシエチル、フェニルエチル、ベンジル、ヒドロキシメチル、カルボキシエチル、メトキシカルボニルエチル、シアノエチル、クロロフェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、アリルなどが挙げられる。
具体的な例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,6−、2,5−、2,4−または3,5−ジメチルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,3,5−、2,3,6−または2,4,6−トリメチルフェノール、3−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−メチル−6−アリルフェノールなどが挙げられる。また、これらのフェノール類を酸化重合してポリフェニレンエーテル樹脂を製造する場合には上記一般式以外のフェノール化合物、例えばビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、レゾルシン、ハイドロキノン、ノボラック樹脂のような多価ヒドロキシ芳香族化合物と、上記一般式のフェノール化合物との共重合でも良い。
このようにして得られるポリフェニレンエーテル樹脂の中で好ましいものとしては、2,6−ジメチルフェノール単独重合体、2,6−ジメチルフェノールと少量の3−メチル−6−t−ブチルフェノールあるいは2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル樹脂は、上記単独重合体または共重合体に他の重合体をグラフト変性したものであっても良い。例えばEPDMゴムの存在下に前記フェノール類を酸化重合したもの、ポリスチレン系樹脂の存在下に前記フェノール類を酸化重合したもの、上記フェノール類の単独重合体または共重合体の存在下にスチレン及び/または他のビニルモノマーをラジカル開始剤と共に溶融混練したものなどを使用することができる。これらの中ではポリスチレン系樹脂の存在下に前記フェノール類を酸化重合したものが好ましい。ポリフェニレンエーテル樹脂は他の重合体成分と共に用いることができる。このような他の重合体成分としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリ塩化ビニルなどを使用することができる。これらの中でも特にポリスチレン系樹脂が好ましい。
本発明の(B)ポリフェニレンエーテル樹脂の、クロロホルムを溶媒として用い、30℃で測定した固有粘度(極限粘度)が、0.05〜1.00dl/g、さらに0.05〜0.80dl/g、特に0.05〜0.60dl/g、最も好ましくは0.05〜0.40dl/gの範囲のものが流動性、機械特性の観点より好ましい。
またスチレン系樹脂組成物に難燃性を付与する場合には、前記固有粘度が0.05〜0.30dl/g、さらに0.05〜0.20dl/g、特に0.05〜0.15dl/gの範囲にある低分子量の(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を用いることにより、燃焼時に表面の炭化層形成が促進され燃焼時間短縮や火炎を抑制できるため好ましく用いることができる。さらに前記低分子量の(B)ポリフェニレンエーテルは、(A)スチレン系樹脂との相溶性に優れ、本願規定の微細な分散形態をとりやすく、その結果、耐衝撃性、耐熱性、外観に優れた組成物が得られる。
本発明のスチレン系樹脂組成物を構成する成分の組成は、(A)成分、(B)成分の合計量を100重量部として、(A)スチレン系樹脂が50〜99.9重量部であり、好ましくは60〜95重量部、さらに70〜90重量部の範囲が耐衝撃性、成形品外観、耐薬品性の観点より最も好ましい。(B)ポリフェニレンエーテル樹脂は0.1〜50重量部であり、好ましくは5〜40重量部、さらに10〜30重量部の範囲が耐衝撃性、成形加工性の観点より最も好ましい。
またスチレン系樹脂組成物に難燃性を付与する場合には、(A)成分、(B)成分の合計量を100重量部として、(A)スチレン系樹脂が50〜99.9重量部であり、好ましくは60〜99重量部、さらに65〜98重量部、特に70〜95重量部の範囲が成形品外観、耐薬品性の観点より最も好ましい。(B)ポリフェニレンエーテル樹脂は0.1〜50重量部であり、好ましくは1〜40重量部、さらに2〜35重量部、特に5〜30重量部の範囲が、組成中での分散性に優れるため、燃焼時の炭化層形成効果が高く耐衝撃性、成形加工性の観点より最も好ましい。
本発明におけるスチレン系樹脂組成物は、(A)スチレン系樹脂と、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を配合してなる樹脂組成物であり、該スチレン系樹脂組成物中で(A)成分または(B)成分が、平均粒子径0.001〜0.99μmとなることが必要であり、このような平均粒子径となることで、特異的に靭性や耐薬品性が向上、難燃剤を添加した場合には容易に難燃性付与が可能となる。
また、該スチレン系樹脂組成物の構造は海島構造を形成し、且つ海成分が(A)スチレン系樹脂であることが、耐衝撃性、流動性、耐薬品性、外観に優れる点から好ましい。
前記の平均粒子径の観察方法としては、例えば、ペレット、プレス成形品、あるいは射出成形品などから切削した試料を光学顕微鏡や透過型電子顕微鏡により観察することができる。例えば、ペレット状の樹脂組成物から切削した試料を透過型電子顕微鏡の倍率10000倍で観察して観察部位を写真に撮った場合、その写真において(A)スチレン系樹脂成分と(B)ポリフェニレンエーテル樹脂成分は濃淡により識別される。ここでいう平均粒子径は、電子顕微鏡写真から求めた長径の数平均粒子径であり画像解析により求めることができる。また、写真から直接粒子の長径を50個以上測定し、その数平均値を求めることもできる。
本発明では、(A)スチレン系樹脂と(B)ポリフェニレンエーテル樹脂からなるスチレン系樹脂組成物100重量部に対して、さらに(C)リン系難燃剤を好ましく用いることができる。リン系難燃剤としては、リンを含有する有機または無機化合物であれば特に制限はなく、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリホスファゼン、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネートおよびホスフィンオキシドなどが挙げられる。中でも、ポリホスファゼンおよびホスフェートが好ましく、芳香族ホスフェートが特に好ましく使用できる。
(C)リン系難燃剤を配合する場合は、一般に(A)成分、(B)成分の合計100重量部に対して、1〜30重量部の範囲で用いられる。好ましくは3〜25重量部の範囲であり、特に好ましい範囲としては5〜20重量部の範囲にある場合である。1重量部以上添加することで難燃効果を発揮させることができ、30重量部以下とすることで、樹脂組成物の機械的強度、耐熱性を低下させることがないので好ましい。
本発明のスチレン系樹脂組成物からなる射出成形品を、UL94に従って評価した垂直燃焼試験が、V−2以上であることが好ましい。ここでいうV−2以上とは、V−2、V−1、V−0のいずれかの基準に適合するものであり、V−0ほど難燃性に優れることを意味している。また試験片の厚みに関しては1.5〜3.0mm厚みの範囲において、上記基準に適合するものであればよい。
本発明のスチレン系樹脂組成物のように、平均粒子径を0.001〜0.99μmの範囲に制御することにより、難燃剤を添加した場合には従来よりも難燃性向上効果が大きく、難燃剤や燃焼時の炭化層形成効果の高い(B)ポリフェニレンエーテル樹脂の添加量を低減することができるため、機械特性、耐熱性、流動性の低下を抑制可能となるばかりか、高価な難燃剤を低減できるためコストダウンにも有効である。
本発明のスチレン系樹脂組成物においては、難燃性を高めるためにさらに難燃剤に滴下防止剤を併用すると効果的である。滴下防止剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のパーフルオロアルカンポリマー、シリコンゴム、およびこれらをビニル系化合物でグラフト重合したグラフト重合体、高分子量アクリロニトリル−スチレン、高分子量PMMA等の高分子量ビニル系共重合体、ガラス繊維、カーボン繊維等が挙げられるが、特にポリテトラフルオロエチレンをアクリル変性したものが好ましく用いられる。
滴下防止剤を配合する場合は、一般に(A)成分、(B)成分の合計100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲で好ましく用いられる。特に好ましい範囲としては0.05〜3重量部の範囲にある場合である。0.01重量部以上配合することで、燃焼時の滴下防止効果を得ることができ、高い難燃性を有する樹脂組成物を得ることができ、5重量部以下の配合量とすることで、流動性、および剛性等の機械的強度を低下させることがないので好ましい。
平均粒子径0.001〜0.99μmとなる(A)ポリスチレン系樹脂と(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を配合してなるスチレン系樹脂組成物を得る方法としては、そのような組成物が得られる限りにおいて特に制限はないが、共通溶媒に溶解後、この溶液から噴霧乾燥、凍結乾燥、非溶媒物質中の凝固、溶媒蒸発によるフィルム生成等の方法により得られる溶媒キャスト法や、溶融混練法が挙げられる。中でも溶媒を用いないドライプロセスである溶融混練法が、実用上好ましく用いられる。
しかし、従来の溶融混練法では平均粒子径0.001〜0.99μmとなるスチレン系樹脂組成物を得ることは困難であったが、溶融混練においてE値が下記式(1)を満たす条件で行うことにより、安定的に平均粒子径0.001〜0.99μmのスチレン系樹脂組成物が得られ、特異的に耐衝撃性や外観、耐薬品性が向上し、優れた特性が得られる。
0.01<E値<0.1 ・・・(1)
E=Q/Ns×(27000/D3) ・・・(2)
Q:溶融混練時の吐出量(kg/hr)
Ns:スクリュー回転数(rpm)
D:スクリュー直径(mm)。
0.01<E値<0.1 ・・・(1)
E=Q/Ns×(27000/D3) ・・・(2)
Q:溶融混練時の吐出量(kg/hr)
Ns:スクリュー回転数(rpm)
D:スクリュー直径(mm)。
上記式中のQ/Nsは、二軸押出機の運転条件において滞留時間や剪断速度などを任意に変更させた場合の影響を比較できるパラメーターとして広く用いられているものである。通常Q(吐出量)を高くした場合、滞留時間は短縮するがシリンダー内の樹脂充満率は高くなり混練性は向上する。一方Ns(スクリュー回転数)を高くした場合には高剪断付与が可能となり樹脂の分散性を向上させるが、発熱などにより劣化を招く恐れもある。このように溶融混練時の各種影響を把握する手法としてQ/Nsは広く用いられており、スケールアップさせる場合の拡大則にも用いられるパラメーターである。
次に(27000/D3)は、スケールアップなどによりスクリュー直径が変化した場合でも同様に比較できるための補正値であり、ラボ機であるφ30mmスクリュー押出機を基準とした数値である。例えばφ30mm押出機においてQ=30kg/hr、Ns=200rpmとした場合、Q/Ns=0.15となる。これを生産機等のφ50mm押出機へスケールアップを考えた場合、一般的な拡大則はスクリュー径の2.3乗則よりQ=97kg/hr、Ns=140rpmとなり、Q/Ns=0.69となる。このようにスクリュー径によりQ/Nsは変動するため、D=50を代入し補正すると、0.69×(27000×503)=0.15と同様の数値を得ることができる。
本発明のE値は、Q/Nsより求められる値であり、ラボ〜生産機を含め通常は0.1以上で行うことが多い。特に近年は短時間で吐出量を多くする傾向であり、本発明はこれらとは反するものである。このように従来よりも滞留時間を延長させ、材料に与える剪断回数(総剪断エネルギー量)を増やすことにより、平均粒子径0.001〜0.99μmとなるスチレン系樹脂組成物が得られることを見出したものである。
E値が本発明の範囲よりも低い場合には、樹脂温度が高くなり、ポリマー分子鎖の切断による溶融粘度の低下や、充満率低下による剪断回数不足を招くため好ましくない。一方E値が本発明の範囲よりも高い場合には、滞留時間が短くなり剪断回数が減少するため本発明の平均粒子径0.001〜0.99μmを安定的に発現できなくなるため好ましくない。
さらに本発明では、前記溶融混練において、混練部の少なくとも一箇所以上で下記式(3)を満たす温度(T)(℃)領域が存在する条件下で溶融混練することにより安定的に平均粒子径0.001〜0.99μmのスチレン系樹脂組成物が得られ、特異的に耐衝撃性や外観、耐薬品性が向上する。
T=((TA+100)×(WA/100))+((TB+100)×(WB/100)) ・・・(3)
TA:(A)スチレン系樹脂のガラス転移温度(℃)
TB:(B)ポリフェニレンエーテル樹脂のガラス転移温度(℃)
WA:(A)スチレン系樹脂の配合量(重量%)
WB:(B)ポリフェニレンエーテル樹脂の配合量(重量%)。
T=((TA+100)×(WA/100))+((TB+100)×(WB/100)) ・・・(3)
TA:(A)スチレン系樹脂のガラス転移温度(℃)
TB:(B)ポリフェニレンエーテル樹脂のガラス転移温度(℃)
WA:(A)スチレン系樹脂の配合量(重量%)
WB:(B)ポリフェニレンエーテル樹脂の配合量(重量%)。
本発明の溶融混練においては、原料を投入してポリマーを可塑化する可塑化ゾーン、溶融したポリマーを混練する混練ゾーン、混練されたポリマーを前方へ送る搬送ゾーンからなっており、特にポリマーを混練する混練ゾーンにおいて、上記の温度(T)(℃)領域を設けることが好ましい。該温度は混練ゾーンにおいて一貫して満足する必要ではなく、少なくとも1ヵ所以上で該温度が存在する条件で溶融混練すれば良く、押出機を用いて溶融混練する際には、通常最も剪断速度が高くなる箇所、例えば逆フルフライトやニーディングブロックによる樹脂滞留箇所で該温度領域が存在するようにすることが好ましい。
該温度領域において混練することにより、溶融粘度の異なる(A)スチレン系樹脂と(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を効率よく混練可能となり、本発明の平均粒子径0.001〜0.99μmとなるスチレン系樹脂組成物を容易に得ることができるため好ましく用いられる。
さらに本発明の平均粒子径0.001〜0.99μmとなるスチレン系樹脂組成物を容易に得る方法としては、特に制限はないが、例えば(イ)溶融混練温度の低下による樹脂粘度の向上、(ロ)目的の溶融粘度となるような分子量のポリマーを選択する、(ハ)逆フルフライト、ニーディングブロック導入などのスクリューアレンジ変更による樹脂滞留、(ニ)バレル内のポリマー充満率を上げる、(ホ)スクリュー回転数を上げる、(へ)任意の添加剤を混合することによる樹脂粘度の向上、(ト)炭酸ガス導入などの超臨界状態などが挙げられる。
さらに本発明においては、強度及び寸法安定性等を向上させるため、必要に応じて充填材を好ましく用いることができる。充填材の形状としては繊維状であっても非繊維状であってもよく、繊維状の充填材と非繊維状充填材を組み合わせて用いてもよい。かかる充填材としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状および/または非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
強度及び寸法安定性等を向上させるため、かかる充填材を用いる場合、その配合量は特に制限はないが、通常(A)成分、(B)成分の合計100重量部に対して0.1〜200重量部配合される。
本発明のスチレン系樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物、などの離型剤、防食剤、着色防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
これらの添加剤は、本発明のスチレン系樹脂組成物を製造する任意の段階で配合することが可能であり、例えば、少なくとも2成分の樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、予め2成分の樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めに片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法が挙げられる。
本発明において、得られたスチレン系樹脂組成物は、通常公知の射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などの任意の方法で成形することができ、あらゆる形状の成形品として広く用いることができる。成形品とは、フィルム、シート、繊維・布、不織布、射出成形品、押出し成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、または他の材料との複合体などである。
本発明におけるスチレン系樹脂組成物は、優れた耐衝撃性、耐熱性、流動性、耐薬品性、外観をいかして、構造材料として有用に用いることができ、例えば自動車用資材、電機・電子機器用資材、農業用資材、園芸用資材、漁業用資材、土木・建築用資材、文具、医療用品、便座、雑貨、またはその他の用途に好適に使用することができる。
本発明のスチレン系樹脂組成物の成形体は、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電機部品キャビネット、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・コンパクトディスク、DVDなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、携帯電話関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、エアフローメーター、エアポンプ、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、サーモスタットハウジング、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブ−スター部品、各種ケース、燃料関係・排気系・吸気系等の各種チューブ、各種タンク、燃料関係・排気系・吸気系等の各種ホース、各種クリップ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、各種パイプ、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、ブレーキパッド摩耗センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコンパネルスイッチ基板、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ステップモーターローター、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、スタータースイッチ、スターターリレー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、デュストリビューター、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、ホーンターミナル、ウィンドウォッシャーノズル、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、ラジエターグリル、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプソケット、ランプハウジング、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車外装材、センターコンソール、インストルメントパネル、インパネコア、インパネパッド、グローブボックス、ハンドルコラム、アームレスト、レバーパーキング、フロントピラートリム、ドアトリム、ピラートリム、コンソールボックスなどの自動車内装材、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター、ヒューズ用コネクターなどの各種コネクターなどの自動車部品;パソコン、プリンター、ディスプレイ、CRTディスプレイ、ファックス、コピー、ワープロ、ノートパソコン、携帯電話、PHS、DVDドライブ、PDドライブ、フレキシブルディスクドライブなどの記憶装置のハウジング、シャーシ、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子機器部品、機械部品、その他各種用途に有用である。また本成形品は、塗装、メッキ等を施して用いることもできる。
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中の部数および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
(A)スチレン系樹脂
[参考例1](A−1)グラフト共重合体
以下にグラフト共重合体の調製方法を示す。なおグラフト率は次の方法で求めたものである。グラフト共重合体の所定量(m)にアセトンを加え4時間還流した。この溶液を8000rpm(遠心力10,000G(約100×103 m/s2 ))30分遠心分離後、不溶分を濾過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。
グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
ここでLはグラフト共重合体のゴム含有率を意味する。
[参考例1](A−1)グラフト共重合体
以下にグラフト共重合体の調製方法を示す。なおグラフト率は次の方法で求めたものである。グラフト共重合体の所定量(m)にアセトンを加え4時間還流した。この溶液を8000rpm(遠心力10,000G(約100×103 m/s2 ))30分遠心分離後、不溶分を濾過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。
グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
ここでLはグラフト共重合体のゴム含有率を意味する。
上記アセトン溶液の濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を得た。この可溶分を、70℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml濃度のメチルエチルケトン溶液を調製し、30℃の温度条件下でウベローデ粘度計を用いて極限粘度を測定した。
(A−1−1)
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.35μm) 50重量部(固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部。
ポリブタジエン(重量平均粒子径0.35μm) 50重量部(固形分換算)
オレイン酸カリウム 0.5重量部
ブドウ糖 0.5重量部
ピロリン酸ナトリウム 0.5重量部
硫酸第一鉄 0.005重量部
脱イオン水 120重量部。
以上の物質を重合容器に仕込み、撹拌しながら65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、スチレン35重量部、アクリロニトリル15重量部、およびt−ドデシルメルカプタン0.3重量部を5時間かけて連続滴下した。並行してクメンハイドロパーオキサイド0.25重量部、オレイン酸カリウム2.5重量部および純水25重量部からなる水溶液を、7時間で連続滴下し反応を完結させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和した後、洗浄、濾過、乾燥してパウダー状として得た。得られたグラフト共重合体のグラフト率は38%、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.33dl/gであった。
[参考例2](A−2)スチレン系重合体
以下にスチレン系重合体の調製方法を示す。なお得られたポリマーを、70℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml濃度のメチルエチルケトン溶液を調製し、30℃の温度条件下でウベローデ粘度計を用いて極限粘度を測定した。
以下にスチレン系重合体の調製方法を示す。なお得られたポリマーを、70℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml濃度のメチルエチルケトン溶液を調製し、30℃の温度条件下でウベローデ粘度計を用いて極限粘度を測定した。
(A−2−1)容量が20Lで、バッフルおよびファウドラ型撹拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(特公昭45−24151号公報記載)0.05重量部をイオン交換水165重量部に溶解した溶液を添加して400rpmで撹拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質を反応系で撹拌しながら添加し、60℃に昇温し重合を開始した。
スチレン 80重量部
アクリロニトリル 20重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部。
スチレン 80重量部
アクリロニトリル 20重量部
t−ドデシルメルカプタン 0.2重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4重量部。
30分かけて反応温度を65℃まで昇温したのち、120分かけて100℃まで昇温した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行なうことにより、ビーズ状のポリマーを得た。得られたスチレン系樹脂のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.53dl/gであった。
(A−2−2)上記(A−2−1)のスチレン80重量部、アクリロニトリル20重量部を、スチレン72重量部、アクリロニトリル28重量部に変更した以外はすべて同様に懸濁重合を行った。得られたスチレン系樹脂のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.55dl/gであった。
(A−2−3)上記(A−2−1)のスチレン80重量部、アクリロニトリル20重量部を、スチレン64重量部、アクリロニトリル36重量部に変更した以外はすべて同様に懸濁重合を行った。得られたスチレン系樹脂のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.50dl/gであった。
(A−2−4)上記(A−2−1)のスチレン80重量部、アクリロニトリル20重量部を、スチレン85重量部、アクリロニトリル15重量部に変更した以外はすべて同様に懸濁重合を行った。得られたスチレン系樹脂のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.51dl/gであった。
(A−2−5)上記(A−2−1)のスチレン80重量部、アクリロニトリル20重量部を、スチレン90重量部、アクリロニトリル10重量部に変更した以外はすべて同様に懸濁重合を行った。得られたスチレン系樹脂のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.54dl/gであった。
(B)ポリフェニレンエーテル樹脂
(B−1)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル樹脂である“PX100F”(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)、極限粘度0.38dl/g(クロロホルム中30℃測定)を使用した。
(B−1)ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル樹脂である“PX100F”(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)、極限粘度0.38dl/g(クロロホルム中30℃測定)を使用した。
(B−2)臭化第2銅2gをジブチルアミン35g、トルエン800gに溶解させた。この触媒溶液に、2,6−ジメチルフェノール200gをトルエン500gに溶かした溶液を加えた。これらの混合液を反応器内にて、空気を供給しながら40℃で重合を2時間行った。反応停止後、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム水溶液と接触させて反応液から触媒を除去し、ポリフェニレンエーテルが均一に溶解した重合反応液を得た。この重合反応液を窒素雰囲気下常圧120℃でトルエンを蒸発除去し濃縮した。次いで往復回転式攪拌翼付きの固形化槽中にトルエン/メタノール重量比0.5とした混合溶媒を仕込み、そこへ濃縮重合反応液を送液ポンプで滴下し、ポリフェニレンエーテルを粒子化後、真空乾燥機で80℃24時間乾燥し、ポリフェニレンエーテル粒子を得た。得られた粒子は極限粘度0.10dl/g(クロロホルム中30℃測定)であった。
(C)リン系難燃剤
(C−1)芳香族ビスホスフェート“PX−200”(大八化学社製)を使用した。
(C−1)芳香族ビスホスフェート“PX−200”(大八化学社製)を使用した。
(D)ドリップ抑制剤
(D−1)ポリテトラフルオロエチレンであるポリフロンF201(ダイキン工業社製)を使用した。
(D−1)ポリテトラフルオロエチレンであるポリフロンF201(ダイキン工業社製)を使用した。
[実施例1〜13、比較例1〜7]
表1、表2に示した組成、ならびに条件で(A)スチレン系樹脂、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂、(C)リン系難燃剤、(D)ドリップ抑制剤を配合し、2軸押出機(TEX30α(日本製鋼所製、L/D=35))を用いて、シリンダ温度250℃で混練(混練ゾーンの一部は表中T(℃)に変更)し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、熱風乾燥機にて5時間乾燥したペレットを射出成形機(名機製作所社製M−50AII−SJ)に供して、各試験片を成形した。成形条件は成形温度:220〜270℃、金型温度:60℃、射出速度:100mm/秒、射出時間:10秒、冷却時間:20秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)+1MPaで行った。得られた成形品は下記の測定方法に従って評価を行った。
表1、表2に示した組成、ならびに条件で(A)スチレン系樹脂、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂、(C)リン系難燃剤、(D)ドリップ抑制剤を配合し、2軸押出機(TEX30α(日本製鋼所製、L/D=35))を用いて、シリンダ温度250℃で混練(混練ゾーンの一部は表中T(℃)に変更)し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、熱風乾燥機にて5時間乾燥したペレットを射出成形機(名機製作所社製M−50AII−SJ)に供して、各試験片を成形した。成形条件は成形温度:220〜270℃、金型温度:60℃、射出速度:100mm/秒、射出時間:10秒、冷却時間:20秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)+1MPaで行った。得られた成形品は下記の測定方法に従って評価を行った。
(1)平均粒子径
射出成形により得られた成形品から超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(HITACHI、ELECTRON MICROSCOPE H−700)にて1万倍に拡大して観察を行い、観察部位を写真に撮った。この電子顕微鏡写真からポリスチレン系樹脂中に分散したポリフェニレンエーテル樹脂粒子を任意に100個選び、各々の長径を測定し数平均値を計算することで平均粒子径を求めた。
射出成形により得られた成形品から超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(HITACHI、ELECTRON MICROSCOPE H−700)にて1万倍に拡大して観察を行い、観察部位を写真に撮った。この電子顕微鏡写真からポリスチレン系樹脂中に分散したポリフェニレンエーテル樹脂粒子を任意に100個選び、各々の長径を測定し数平均値を計算することで平均粒子径を求めた。
(2)アイゾッド衝撃強度(Izod衝撃強度)
1/8インチ厚み試験片よりノッチ付アイゾッド衝撃強度をASTM D−256に従い、23℃にて測定し衝撃強度を評価した。6本測定した平均の値とする。
1/8インチ厚み試験片よりノッチ付アイゾッド衝撃強度をASTM D−256に従い、23℃にて測定し衝撃強度を評価した。6本測定した平均の値とする。
(3)曲げ特性
ASTM D790に従い曲げ降伏強度、および曲げ弾性率を評価した。3本測定した平均の値とする。
ASTM D790に従い曲げ降伏強度、および曲げ弾性率を評価した。3本測定した平均の値とする。
(4)熱変形温度
ASTM D648(荷重:1.82MPa)に従い荷重たわみ温度を測定し、耐熱性を評価した。2本測定した平均の値とする。
ASTM D648(荷重:1.82MPa)に従い荷重たわみ温度を測定し、耐熱性を評価した。2本測定した平均の値とする。
(5)流動性
温度:250℃、荷重:98Nでのメルトインデックス(MI値)をISO−R1133法に従い測定した。2回測定した平均の値とする。
温度:250℃、荷重:98Nでのメルトインデックス(MI値)をISO−R1133法に従い測定した。2回測定した平均の値とする。
(6)表面光沢
80mm×80mm×3mm厚みの試験片中央部の表面光沢をデジタル変角光沢計(スガ試験機(株)製「UGV−5D」)を用いて、入射角60度で測定した。3回測定した平均の値とする。
80mm×80mm×3mm厚みの試験片中央部の表面光沢をデジタル変角光沢計(スガ試験機(株)製「UGV−5D」)を用いて、入射角60度で測定した。3回測定した平均の値とする。
さらに同試験片表面の凝集物(フィッシュアイ)の個数を目視で確認し、下記の3段階で評価した。
○:0〜5個
△:5〜20個
×:20個以上
○:0〜5個
△:5〜20個
×:20個以上
(7)耐薬品性
1/8インチ(約3.2mm)厚み曲げ試験片をトルエン中に23℃で1hr放置する。薬液より取り出した試験片の外観を確認後、流水洗浄、23℃、50%RHの空気中にて7日間コンディショニングし、ASTM D790に従い曲げ試験を評価し、薬液浸漬前後での曲げ弾性率保持率を求めた。
1/8インチ(約3.2mm)厚み曲げ試験片をトルエン中に23℃で1hr放置する。薬液より取り出した試験片の外観を確認後、流水洗浄、23℃、50%RHの空気中にて7日間コンディショニングし、ASTM D790に従い曲げ試験を評価し、薬液浸漬前後での曲げ弾性率保持率を求めた。
(8)難燃性
UL94に従い1/16インチ(約1.6mm)厚みでの垂直燃焼試験を評価した。
各サンプルの透過型電子顕微鏡写真から平均粒子径、さらには耐衝撃性、曲げ特性、耐熱性、流動性、表面外観、耐薬品性、難燃性の評価結果をそれぞれ表1、表2に示す。
UL94に従い1/16インチ(約1.6mm)厚みでの垂直燃焼試験を評価した。
各サンプルの透過型電子顕微鏡写真から平均粒子径、さらには耐衝撃性、曲げ特性、耐熱性、流動性、表面外観、耐薬品性、難燃性の評価結果をそれぞれ表1、表2に示す。
実施例1〜5より、(A)スチレン系樹脂と(B)ポリフェニレンエーテル樹脂からなる本発明のスチレン系樹脂組成物は、1μm以下の分散構造である微細な相構造を形成しており、耐衝撃性、外観、耐薬品性に優れる組成物を得ることができた。
一方、比較例1の様に、(B)ポリフェニレンエーテルの添加量が本発明の範囲よりも多い場合には目的とする構造が得られないばかりか、流動性、耐薬品性が大幅に低下することが分かる。さらに比較例2、3より、(A−2)スチレン系重合体のシアン化ビニル量が本発明の範囲よりも少ない場合には、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂との相溶性が向上し分散粒径は微細化する傾向となるが、耐熱性、耐薬品性が低下する。
次に実施例6〜13と比較例4〜7より、スチレン系樹脂組成物にリン系難燃剤を添加した場合には、相構造を本発明の平均粒子径0.001〜0.99μmに制御することにより、より高度な難燃性が得られるばかりでなく、難燃剤を減量した場合でも高度な難燃性を維持でき物性も向上させることができる。特に分子量の低い(B−2)ポリフェニレンエーテルを用いた場合には、極少量で燃焼時間の短縮や、燃焼時に表面の炭化層形成が促進されるため火炎が抑制され優れた難燃性能を発現することが分かる。
[実施例14〜22、比較例8〜10]
表3、表4に示した組成、ならびに条件で(A)スチレン系樹脂、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を配合し、2軸押出機(TEX30α(日本製鋼所製、L/D=35)、またはTEX44α(日本製鋼所製、L/D=35))を用いて、シリンダ温度250℃で混練(混練ゾーンの一部は表中T(℃)に変更)し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、熱風乾燥機にて5時間乾燥したペレットを射出成形機(名機製作所社製M−50AII−SJ)に供して、各試験片を成形した。成形条件は成形温度:220〜270℃、金型温度:60℃、射出速度:100mm/秒、射出時間:10秒、冷却時間:20秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)+1MPaで行った。得られた成形品は上記の測定方法に従って評価を行った。
表3、表4に示した組成、ならびに条件で(A)スチレン系樹脂、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を配合し、2軸押出機(TEX30α(日本製鋼所製、L/D=35)、またはTEX44α(日本製鋼所製、L/D=35))を用いて、シリンダ温度250℃で混練(混練ゾーンの一部は表中T(℃)に変更)し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、熱風乾燥機にて5時間乾燥したペレットを射出成形機(名機製作所社製M−50AII−SJ)に供して、各試験片を成形した。成形条件は成形温度:220〜270℃、金型温度:60℃、射出速度:100mm/秒、射出時間:10秒、冷却時間:20秒、成形圧力:金型に樹脂が全て充填される圧力(成形下限圧力)+1MPaで行った。得られた成形品は上記の測定方法に従って評価を行った。
各サンプルの透過型電子顕微鏡写真から平均粒子径、さらには耐衝撃性、曲げ特性、耐熱性、流動性、表面外観、耐薬品性の評価結果をそれぞれ表3、表4に示す。
実施例14〜19と比較例8、9より、(A)スチレン系樹脂と(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を、本発明の好ましい条件で溶融混練を行った場合、相構造を本発明の平均粒子径0.001〜0.99μmに容易に制御することが可能であり、優れた特性を発現することができる。また実施例20〜22、比較例10より、スケールアップをした押出機を用いた場合でも、本発明の好ましい条件で溶融混練を行った場合、相構造を本発明の平均粒子径0.001〜0.99μmに容易に制御することが可能となり、ラボ機同様に優れた特性を発現することができる。
本発明のスチレン系樹脂組成物は、電気・電子部品、家電製品、OA機器、自動車部品、機械機構部品、文具、雑貨など種々の用途に用いることができる。
Claims (8)
- (r)ゴム質重合体5〜80重量%の存在下で、(a1)スチレン系単量体20〜80重量%、(a2)シアン化ビニル系単量体20〜60重量%、およびこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体0〜60重量%からなる単量体混合物20〜95重量%をグラフト重合してなる(A−1)グラフト共重合体0〜95重量部と、(a1)スチレン系単量体20〜80重量%、(a2)シアン化ビニル系単量体20〜60重量%、およびこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体0〜60重量%からなる単量体混合物を重合してなる(A−2)スチレン系重合体5〜100重量部とからなる(A)スチレン系樹脂50〜99.9重量部(ただし(a1)〜(a3)の合計をそれぞれ100重量%とする)、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂0.1〜50重量部を含むスチレン系樹脂組成物であり、該スチレン系樹脂組成物中で(A)成分または(B)成分が、平均粒子径0.001〜0.99μmで分散しているスチレン系樹脂組成物。
- (A)スチレン系樹脂と(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を含むスチレン系樹脂組成物100重量部に対して、さらに(C)リン系難燃剤1〜30重量部を含む請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記(B)ポリフェニレンエーテル樹脂が、クロロホルムを溶媒として用い、30℃で測定した固有粘度が、0.05〜0.40dl/gである請求項1または2に記載のスチレン系樹脂組成物。
- 前記スチレン系樹脂組成物からなる射出成形品を、UL94に従って評価した垂直燃焼試験が、V−2以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
- (A)スチレン系樹脂、(B)ポリフェニレンエーテル樹脂を溶融混練する請求項1〜4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
- 前記溶融混練において、E値が下記式(1)を満たす条件で行うことを特徴とする請求項5に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
0.01<E値<0.1 ・・・(1)
E=Q/Ns×(27000/D3) ・・・(2)
Q:溶融混練時の吐出量(kg/hr)
Ns:スクリュー回転数(rpm)
D:スクリュー直径(mm) - 前記溶融混練において、混練部の少なくとも一箇所以上で下記式(3)を満たす温度(T)(℃)領域が存在する条件下で溶融混練することを特徴とする請求項5および6のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
T=((TA+100)×(WA/100))+((TB+100)×(WB/100))・・・(3)
TA:(A)スチレン系樹脂のガラス転移温度(℃)
TB:(B)ポリフェニレンエーテル樹脂のガラス転移温度(℃)
WA:(A)スチレン系樹脂の配合量(重量%)
WB:(B)ポリフェニレンエーテル樹脂の配合量(重量%) - 請求項1〜4のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物からなる成形品。
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JP2015199889A (ja) * | 2014-04-10 | 2015-11-12 | 旭化成ケミカルズ株式会社 | 成形体 |
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-
2010
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