以下に本発明の樹脂組成物について具体的に説明する。
本発明で用いる(A)スチレン系樹脂とは、(a1)スチレン系単量体、(a2)シアン化ビニル系単量体を必須成分として特定割合で重合して得られるスチレン系共重合体、上記成分にさらにこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体を特定割合で重合して得られるスチレン系共重合体である。
(a1)スチレン系単量体としては、スチレンが好ましく使用されるが、溶融混練時の剪断下での自由体積減少による相溶性向上の観点から、炭素数1〜4のアルキル基により置換された変性スチレン系単量体の1種以上を用いるか、これとスチレンを併用することが好ましい。変性スチレン系単量体としては、例えばα−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン、t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にα−メチルスチレン、o−メチルスチレン、t−ブチルスチレンが好ましく使用される。
(a2)シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく使用される。これらは1種または2種以上を用いることができる。
また、必要に応じて使用される(a1)成分および(a2)成分と共重合可能な(a3)他のビニル系単量体としては、靭性および色調の向上を目的とする場合には(メタ)アクリル酸エステル系単量体、樹脂組成物の耐熱性向上を目的とする場合にはマレイミド系単量体が好ましく用いられる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体の具体例としては、アクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル化物などが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましく使用される。
マレイミド系単量体の具体例としては、マレイミド、N−メチルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドなどが挙げられるが、特にN−フェニルマレイミドが好ましく使用される。
また、本発明においては、(A)成分と(B)成分のさらなる相溶性の向上の観点から上記(a1)成分および(a2)成分と共重合可能な(a3)他のビニル系単量体として、例えばカルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基およびオキサゾリン基から選ばれた少なくとも一種の官能基を含有するビニル系単量体を共重合することができる。このような官能基を含有するビニル系単量体を共重合することにより得られるスチレン系共重合体(以下変性スチレン系共重合体と称する場合もある)を好ましく用いることができる。
この変性スチレン系共重合体としては、上記(a1)スチレン系単量体、(a2)シアン化ビニル系単量体、および上記官能基を含有するビニル系単量体を含む(a3)その他のビニル系単量体を共重合して得られる共重合体が挙げられ、さらには(a3)その他のビニル系単量体として、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、マレイミド系単量体を共重合することができる。
これらの官能基を含有するビニル系単量体の含有量については制限されないが、特に変性スチレン系共重合体100重量%中、0.01〜20重量%の範囲であることが好ましい。
変性スチレン系共重合体中にカルボキシル基を導入する方法には特に制限はないが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸などのカルボキシル基または無水カルボキシル基を有するビニル系単量体を(a1)成分、(a2)成分を含む所定のビニル系単量体と共重合する方法、γ,γ´−アゾビス(γ−シアノバレイン酸)、α,α´−アゾビス(α−シアノエチル)−p−安息香酸および過酸化サクシン酸などのカルボキシル基を有する重合開始剤および/またはチオグリコール酸、α−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプト−イソ酪酸および2,3または4−メルカプト安息香酸などのカルボキシル基を有する重合度調節剤を用いて、(a1)成分、(a2)成分を含む所定のビニル系単量体を(共)重合する方法、およびメタクリル酸メチルやアクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体とスチレン系単量体、シアン化ビニル系単量体との共重合体をアルカリによってケン化する方法などを用いることができる。
上記ヒドロキシル基を導入する方法についても特に制限はないが、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4,4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体を、(a1)成分、(a2)成分を含む所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
上記エポキシ基を導入する方法についても特に制限はないが、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルおよびp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有するビニル系単量体を、(a1)成分、(a2)成分を含む所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
中でも、メタクリル酸グリシジルを共重合させることによりエポキシ基を導入したエポキシ変性スチレン系共重合体は、(A)スチレン系樹脂中に含有させて使用した場合、本発明のスチレン系樹脂組成物の、衝撃強度を向上することができる。
上記アミノ基を導入する方法についても特に制限はないが、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどのアミノ基およびその誘導体を有するビニル系単量体を、(a1)成分、(a2)成分を含む所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
上記オキサゾリン基を導入する方法についても特に制限はないが、例えば2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有するビニル系単量体を(a1)成分、(a2)成分を含む所定のビニル系単量体と共重合する方法などを用いることができる。
(A)スチレン系樹脂を共重合するに際し、各成分は以下の共重合比となるよう共重合される。すなわち(a1)スチレン系単量体単位の割合は、樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、(a1)〜(a3)成分の合計量に対し20〜75重量%であり、好ましくは30〜75重量%の範囲である。(a2)シアン化ビニル系単量体単位の割合は、耐衝撃性、流動性、耐薬品性の観点から、25〜60重量%であり、好ましくは25〜50重量%の範囲である。さらにこれらと共重合可能な(a3)他のビニル系単量体単位を共重合する場合には、0〜55重量%、好ましくは0〜50重量%の範囲で好ましく用いることができる。
上記(A)スチレン系樹脂の特性には制限はないが、メチルエチルケトン溶媒を用いて、30℃で測定したメチルエチルケトン可溶分の極限粘度[η]が、0.20〜2.00dl/g、特に0.25〜1.50dl/gの範囲のものが、すぐれた耐衝撃性および成形加工性を有する樹脂組成物が得られることから好ましい。
(A)スチレン系樹脂の製造法には特に制限がなく、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状−懸濁重合法および溶液−塊状重合法など通常の方法を用いることができる。
さらに本発明で用いる(A)スチレン系樹脂は、相溶性向上、耐衝撃性の改良のため、ゴム含有グラフト共重合体を含有することが好ましい。ここでゴム含有グラフト共重合体に用いるゴム質重合体としては、ガラス転移温度が0℃以下のものが好適であり、例えば、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴムなどであり、具体例としては、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソブチレン)、ポリ(エチレン−アクリル酸メチル)などが挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用される。これらのゴム質重合体のうち、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、エチレン−プロピレンラバーが耐衝撃性の点で特に好ましく用いられる。
本発明のゴム含有グラフト共重合体に用いる単量体としては、(a1)スチレン系単量体および(a2)シアン化ビニル系単量体を必須成分とし、任意成分としてこれらと共重合可能な(a3)他のビニル単量体が挙げられる。
(a1)スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−エチルスチレン、m−エチルスチレン、o−エチルスチレン、t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレンが好ましく使用される。
(a2)シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびエタクリロニトリルなどが挙げられるが、特にアクリロニトリルが好ましく使用される。
また、必要に応じて使用される(a1)成分、(a2)成分と共重合可能な(a3)他のビニル系単量体としては、アクリル酸およびメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル化物などの(メタ)アクリル酸エステル系単量体や、マレイミド、N−メチルマレイミドおよびN−フェニルマレイミドなどのマレイミド系単量体が好ましく用いられる。
本発明におけるゴム含有グラフト共重合体に用いられるゴム質重合体の含有率は特に制限はないが、グラフト共重合体中5〜80重量%が耐衝撃性の点で好ましく、さらには30〜70重量%が好ましい。また、ゴム含有グラフト共重合体において用いる単量体混合物の割合は、樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、次の共重合比となるよう用いられる。すなわち、グラフト共重合体中、(a1)〜(a3)成分の合計に対して(a1)スチレン系単量体単位が20〜75重量%であり、好ましくは30〜75重量%である。(a2)シアン化ビニル系単量体単位の割合は、樹脂組成物の成形加工性の観点から、25〜60重量%であり、25〜50重量%が好ましく用いられる。さらに(a3)他のビニル単量体単位を共重合する場合には、0〜55重量であり、0〜50重量%の範囲が好ましく用いられる。なお、グラフト共重合体中における(a1)スチレン系単量体単位、(a2)シアン化ビニル系単量体単位および(a3)他のビニル系単量体単位の合計含有率は、95〜20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは70〜30重量%である。
ゴム含有グラフト共重合体は、公知の重合法で得ることができる。例えば、ゴム質重合体ラテックスの存在下に単量体混合物および連鎖移動剤の混合物と乳化剤に溶解したラジカル発生剤の溶液を連続的に重合容器に供給して乳化重合する方法などによって得ることができる。
グラフト(共)重合体は、ゴム質重合体に単量体混合物がグラフト共重合した構造をとったグラフト共重合体の他に、グラフト共重合していない共重合体を含有したものである。グラフト(共)重合体のグラフト率は特に制限がないが、耐衝撃性および光沢が均衡してすぐれる樹脂組成物を得るためには、20〜80重量%、特に25〜50重量%の範囲であることが好ましい。ここで、グラフト率は次式により算出される値である。
グラフト率(%)=[<ゴム質重合体にグラフト重合したビニル系共重合体量>/<グラフト共重合体のゴム含有量>]×100
グラフト共重合していない(共)重合体の特性は特に制限されないが、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度[η](30℃で測定)が、0.25〜1.00dl/g、特に0.25〜0.80dl/gの範囲であることが、すぐれた耐衝撃性の樹脂組成物を得るために好ましい条件である。
本発明の(B)スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、(A)スチレン系樹脂と本発明で規定する相構造を形成し得る熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、四フッ化ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマ、ポリアルキレンオキサイド、あるいはカルボキシル基等を含有するオレフィン系共重合体等の樹脂等を挙げることができ、これらは一種以上で用いることができるが、好ましくはポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、中でも耐衝撃性、耐熱性改良のためにはポリカーボネート樹脂を含む事、すなわちポリカーボネート樹脂単独で用いるか、これと、他の熱可塑性樹脂(好ましくはポリエステル、ポリアミドなど)を併用することが最も効果的である。
上記ポリカーボネート樹脂としては芳香族ホモポリカーボネートと芳香族共重合ポリカーボネートより選ぶことができる。製造方法としては公知の方法で製造することが可能であり、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の二官能フェノール系化合物とホスゲンを原料として界面重縮合法(いわゆるホスゲン法)、あるいは上記二官能フェノール系化合物とジフェニルカーボネートを加熱溶融下で脱フェノール反応を行いながら重合する溶融重合法(いわゆるエステル交換法)等の方法を採用することができる。
ここで、上記2官能フェノール系化合物は、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等である。本発明において、上記2官能フェノール系化合物は、単独で用いてもよいし、あるいはそれらを併用してもよい。
本発明においては、(b1)2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを重合してなる芳香族ホモポリカーボネートやこれと他の2官能フェノール系化合物を共重合してなる芳香族共重合ポリカーボネートが好ましく、これらを併用して用いることも好ましい。溶融混練時の剪断下での自由体積減少による相溶性向上の観点から、上記芳香族共重合ポリカーボネートとしては(b1)2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと(b2)2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパンなどから選ばれた少なくとも一種の2官能フェノール系化合物を共重合してなる芳香族共重合ポリカーボネートであることが好ましい。また、この芳香族共重合ポリカーボネートを含むポリカーボネート、すなわちこの芳香族共重合ポリカーボネート単独もしくはこれと他のポリカーボネート、より好ましくは上記(b1)成分を重合してなる芳香族ホモポリカーボネートと併用したポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
該芳香族ポリカーボネートは粘度平均分子量が1万〜10万の範囲が好適である。
(A)スチレン系樹脂とポリカーボネート樹脂とのアロイ化においては、(a2)シアン化ビニルの共重合量を本発明から外れない範囲で低減したり、変性スチレン系共重合体を添加したり、ポリカーボネート樹脂として上記2官能フェノール系化合物併用による芳香族共重合ポリカーボネートを使用するなどの方法により、後述するような所望の相構造を得ることができる。さらにあらかじめ後述する樹脂組成および温度に対する相図を作成する事で容易に構造制御範囲を知ることが可能となる。
上記(B)成分として用い得るポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル、もしくはエステル形成誘導体と、ジオールとを、公知の方法により縮合させて得られるもの、ヒドロキシカルボン酸を縮合させて得られるもの、およびこれらの共重合体が挙げられ、芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステル、液晶ポリエステルなどが使用できる。ここで、上記芳香族ジカルボン酸としては、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられ、ヒドロキシカルボン酸としてはp−ヒドロキシ安息香酸などが挙げられ、これらのエステル形成誘導体も、ポリエステル樹脂の製造に用いることができる。上記ジオールの例としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの2〜6個の炭素原子を有するポリメチレングリコール、または1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAおよびこれらエステル形成誘導体が挙げられる。
ポリエステル樹脂の好ましい具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリビスフェノールAイソフタレートなどが挙げられる。上記ポリエステル樹脂は、o−クロロフェノール溶媒中における25℃での極限粘度(〔η〕25℃、o−クロロフェノール中で測定)が0.4〜2dl/gのものが好ましく、さらに好ましくは0.6〜1.5dl/gのものである。
(A)スチレン系樹脂とポリエステル樹脂とのアロイ化においては、両者の分子量を下げることや、上記した変性スチレン系共重合体を添加することにより相溶領域が拡大し、容易に後述する所望の相構造を得ることができる。
上記ポリアミド樹脂としては、通常、ジアミンとジカルボン酸との縮合によって製造されるものや、ラクタムの開環重合によって製造されるものなどが使用できる。
これらのポリアミド樹脂の好ましい例としては、ナイロン6,6、ナイロン6,9、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン11、ナイロン4,6などが挙げられる。また、ナイロン6/6,6、ナイロン6/6,10、ナイロン6/12、ナイロン6/6,12、ナイロン6/6,6/6,10、ナイロン6/6,6/12などの共重合ポリアミド類も使用できる。さらに、ナイロン6/6,T(T;テレフタル酸成分)、テレフタル酸、イソフタル酸のような芳香族ジカルボン酸とメタキシリレンジアミン、あるいは脂環族ジアミンから得られる半芳香族ポリアミド類、ポリエステルアミドなどを用いることもできる。上記ポリアミド樹脂は、90%ギ酸溶媒中、濃度1g/100cc、温度25℃で測定した相対粘度〔ηrel 〕が1.0〜4.0のものが好ましく、さらに好ましくは1.5〜3.5のものである。以上のポリアミド樹脂は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
(A)スチレン系樹脂とポリアミド樹脂とのアロイ化においては、(A)スチレン系樹脂中の(a2)シアン化ビニル含有量を増加させることにより、両者のSP(溶解度パラメーター)値を近似させるなどの方法により相溶領域が拡大し、容易に所望の相構造を得ることができる。
本発明でのスチレン系樹脂組成物を構成する樹脂成分の組成については特に制限がないが、スチレン系樹脂組成物を構成する樹脂成分の合計100重量%に対して、通常(A)スチレン系樹脂が20〜95重量%の範囲が好ましく用いられ、さらには25〜85重量%の範囲がより好ましく、特に30〜80重量%の範囲であれば両相連続構造が比較的得られやすいので、本発明の耐薬品性が比較的得られやすいので好ましく用いられる。
本発明のスチレン系樹脂組成物は、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を有することにより、優れた機械特性、成形加工性、外観を損なうことなく、機械特性、流動性、および耐薬品性を発現する。
本発明のスチレン系樹脂組成物は、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を有することが必要である。かかる構造物を得るためには、(A)スチレン系樹脂と(B)スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂とが、一旦相溶解し、後述のスピノーダル分解によって構造形成せしめることが好ましい。さらにこの構造形成の実現のためには、(A)スチレン系樹脂と、(B)スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂とが、後述の部分相溶系や、剪断場依存型相溶解・相分解する系であることが好ましい。
一般に、2成分の樹脂からなるポリマーアロイには、これらの組成に対して、ガラス転移温度以上、熱分解温度以下の実用的な全領域において相溶する相溶系や、逆に全領域で非相溶となる非相溶系や、ある領域で相溶し、別の領域で相分離状態となる、部分相溶系があり、さらにこの部分相溶系では、その相分離状態の条件によってスピノーダル分解によって相分離する場合と、核生成と成長によって相分離する場合がある。
さらに3成分以上からなるポリマーアロイの場合は、3成分以上のいずれもが相溶する系、3成分以上のいずれもが非相溶である系、2成分以上のある相溶した相と、残りの1成分以上の相が非相溶な系、2成分が部分相溶系で、残りの成分がこの2成分からなる部分相溶系に分配される系などがある。本発明で好ましい3成分以上からなるポリマーアロイは、2成分が部分相溶系で、残りの成分がこの2成分からなる部分相溶系に分配される系であり、この場合ポリマーアロイの構造は、2成分からなる部分相溶系の構造で代替できることから、以下2成分の樹脂からなるポリマーアロイで代表して説明する。
スピノーダル分解による相分離とは、異なる2成分の樹脂組成および温度に対する相図においてスピノーダル曲線の内側の不安定状態で生じる相分離のことを指し、また核生成と成長による相分離とは、該相図においてバイノーダル曲線の内側であり、かつスピノーダル曲線の外側の準安定状態で生じる相分離のことを指す。
かかるスピノーダル曲線とは、組成および温度に対して、異なる2成分の樹脂を混合した場合、相溶した場合の自由エネルギーと相溶しない2相における自由エネルギーの合計との差(ΔGmix)を濃度(φ)で二回偏微分したもの(∂2ΔGmix
/∂φ2)が0となる曲線のことであり、またスピノーダル曲線の内側では、∂2ΔGmix/∂φ2<0の不安定状態であり、外側では∂2ΔGmix/∂φ2>0である。
またかかるバイノーダル曲線とは、組成および温度に対して、系が相溶する領域と相分離する領域の境界の曲線のことである。
ここで本発明における相溶する場合とは、分子レベルで均一に混合している状態のことであり、具体的には異なる2成分の樹脂を主成分とする相がいずれも0.001μm以上の相構造を形成していない場合を指し、また、非相溶の場合とは、相溶状態でない場合のことであり、すなわち異なる2成分の樹脂を主成分とする相が
互いに0.001μm以上の相構造を形成している状態のことを指す。相溶するか否かは、例えばPolymer Alloys and Blends, Leszek A Utracki, hanserPublishers,Munich Viema New York,P64,に記載の様に、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。
詳細な理論によると、スピノーダル分解では、一旦相溶領域の温度で均一に相溶した混合系の温度を、不安定領域の温度まで急速にした場合、系は共存組成に向けて急速に相分離を開始する。その際濃度は一定の波長に単色化され、構造周期(Λm)で両分離相が共に連続して規則正しく絡み合った両相連続構造を形成する。この両相連続構造形成後、その構造周期を一定に保ったまま、両相の濃度差のみが増大する過程をスピノーダル分解の初期過程と呼ぶ。
さらに上述のスピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λm)は熱力学的に下式のような関係がある。
Λm〜[│Ts−T│/Ts]-1/2(ここでTsはスピノーダル曲線上の温度)
ここで本発明でいうところの両相連続構造とは、混合する樹脂の両成分がそれぞれ連続相を形成し、互いに三次元的に絡み合った構造を指す。この両相連続構造の模式図は、例えば「ポリマーアロイ 基礎と応用(第2版)(第10.1章)」(高分子学会編:東京化学同人)に記載されている。
スピノーダル分解では、この様な初期過程を経た後、波長の増大と濃度差の増大が同時に生じる中期過程、濃度差が共存組成に達した後、波長の増大が自己相似的に生じる後期過程を経て、最終的には巨視的な2相に分離するまで進行するが、本発明で規定する構造を得るには、この最終的に巨視的な2相に分離する前の所望の構造周期に到達した段階で構造を固定すればよい。
また中期過程から後期過程にかける波長の増大過程において、組成や界面張力の影響によっては、片方の相の連続性が途切れ、上述の両相連続構造から分散構造に変化する場合もある。この場合には所望の粒子間距離に到達した段階で構造を固定すればよい。
ここで本発明にいうところの分散構造とは、片方の樹脂成分が主成分であるマトリックスの中に、もう片方の樹脂成分が主成分である粒子が点在している、いわゆる海島構造のことをさす。
本発明のスチレン系樹脂組成物は、構造周期0.001〜1μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの範囲の分散構造に構造制御されていることが必要であり、より優れた機械特性を得るためには、構造周期0.01〜0.5μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.01〜0.5μmの範囲の分散構造に制御することが好ましく、さらには、構造周期0.01〜0.4μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.01〜0.4μmの範囲の分散構造に制御することがより好ましく、極めて優れた特性を得るためには、構造周期0.01〜0.3μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.01〜0.3μmの範囲の分散構造に制御することが最も好ましい。かかる構造周期の範囲、および粒子間距離の範囲に制御することにより本発明効果である優れた機械特性や流動性、耐薬品性を有する構造物を効果的に得ることができる。
一方、上述の準安定領域での相分離である核生成と成長では、その初期から海島構造である分散構造が形成されてしまい、それが成長するため、本発明の様な規則正しく並んだ構造周期0.001〜1μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの範囲の分散構造を形成させることは困難である。
またこれらのスピノーダル分解による両相連続構造、もしくは分散構造を確認するためには、規則的な周期構造が確認されることが重要である。これは例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、両相連続構造が形成されることの確認に加えて、光散乱装置や小角X線散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れることの確認が必要である。なお、光散乱装置、小角X線散乱装置は最適測定領域が異なるため、構造周期の大きさに応じて適宜選択して用いられる。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造を持つ証明であり、その周期Λm は、両相連続構造の場合構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。またその値は、散乱光の散乱体内での波長λ、散乱極大を与える散乱角θm を用いて次式により計算することができる。
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)
上記スピノーダル分解を実現させるためには、スチレン系樹脂とスチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂を相溶状態とした後、スピノーダル曲線の内側の不安定状態とすることが必要である。
まずこの2成分以上からなる樹脂で相溶状態を実現する方法としては、共通溶媒に溶解後、この溶液から噴霧乾燥、凍結乾燥、非溶媒物質中の凝固、溶媒蒸発によるフィルム生成等の方法により得られる溶媒キャスト法や、部分相溶系を、相溶条件下で溶融混練による溶融混練法が挙げられる。中でも溶媒を用いないドライプロセスである溶融混練による相溶化が、実用上好ましく用いられる。
溶融混練により相溶化させるには、通常の押出機が用いられるが、2軸押出機を用いることが好ましい。また、樹脂の組合わせによっては射出成形機の可塑化工程で相溶化できる場合もある。相溶化のための温度は、部分相溶系の樹脂が相溶する条件である必要がある。
次に上記溶融混練により相溶状態とした樹脂組成物をスピノーダル曲線の内側の不安定状態として、スピノーダル分解せしめるに際し、不安定状態とするための温度、その他の条件は、樹脂の組み合わせによっても異なり一概にはいえないが、相図に基づき、簡単な予備実験をすることにより設定することができる。
スピノーダル分解による構造生成物を固定化する方法としては、急冷等による短時間で相分離相の一方または両方の成分の構造固定や、一方が熱硬化する成分である場合、熱硬化性成分の相が反応によって自由に運動できなくなることを利用した構造固定や、さらに一方が結晶性樹脂である場合、結晶性樹脂相を結晶化によって自由に運動できなくなることを利用した構造固定が挙げられる。
本発明において(A)スチレン系樹脂と(B)スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂とを上記スピノーダル分解により相分離させて本発明のスチレン系樹脂組成物とするには、前述したように(A)スチレン系樹脂と部分相溶系や、剪断場依存型相溶解・相分解する系である樹脂を組み合わせることが好ましい。
一般に部分相溶系には、同一組成において低温側で相溶しやすくなる低温相溶型相図を有するものや、逆に高温側で相溶しやすくなる高温相溶型相図を有するものが知られている。この低温相溶型相図における相溶と非相溶の分岐温度で最も低い温度を、下限臨界共溶温度(lower critical solution temperature略してLCST)と呼び、高温相溶型相図における相溶と非相溶の分岐温度で最も高い温度を、上限臨 界共溶温度(upper critical solution temperature略してUCST)と呼ぶ。
部分相溶系を用いて相溶状態となった2成分以上の樹脂は、低温相溶型相図の場合、LCST以上の温度かつスピノーダル曲線の内側の温度にすることで、また高温相溶型相図の場合、UCST以下の温度かつスピノーダル曲線の内側の温度にすることでスピノーダル分解を行わせることができる。
またこの部分相溶系によるスピノーダル分解の他に、非相溶系においても溶融混練によってスピノーダル分解を誘発すること、例えば溶融混練時等の剪断下で一旦相溶し、非剪断下で再度不安定状態となり相分解するいわゆる剪断場依存型相溶解・相分解によってもスピノーダル分解による相分離が可能であり、この場合においても、部分相溶系の場合と同じくスピノーダル分解様式で分解が進行し規則的な両相連続構造を有する。さらにこの剪断場依存型相溶解・相分解は、スピノーダル曲線が剪断場により変化し、不安定状態領域が拡大するため、スピノーダル曲線が変化しない部分相溶系の温度変化による方法に比べて、その同じ温度変化幅においても実質的な過冷却度(│Ts−T│)が大きくなり、その結果、上述の関係式におけるスピノーダル分解の初期過程における構造周期を小さくすることが容易となるためより好ましく用いられる。かかる溶融混練時の剪断下により相溶化させるには、通常の押出機が用いられるが、2軸押出機を用いることが好ましい。また、樹脂の組合わせによっては射出成形機の可塑化工程で相溶化できる場合もある。この場合における相溶化のための温度、初期過程を形成させるための熱処理温度、および初期過程から構造発展させる熱処理温度や、その他の条件は、樹脂の組み合わせによっても異なり一概にはいえないが、種々の剪断条件下での相図に基づき、簡単な予備実験をすることにより条件を設定することができる。また上記射出成形機の可塑化工程での相溶化を確実に実現させる方法として、予め2軸押出機で溶融混練し相溶化させ、吐出後氷水中などで急冷し相溶化状態で構造を固定させたものを用いて射出成形する方法などが好ましい例として挙げられる。
また、本発明を構成するスチレン系樹脂組成物に、さらにポリマーアロイを構成する成分を含むブロックコポリマーやグラフトコポリマーやランダムコポリマーなどのコポリマーである第3成分を添加することは、相分解した相間における界面の自由エネルギーを低下させるため、両相連続構造における構造周期や、分散構造における分散粒子間距離の制御を容易にするため好ましく用いられる。この場合通常、かかるコポリマーなどの第3成分は、それを除く2成分の樹脂からなるポリマーアロイの各相に分配されるため、2成分の樹脂からなるポリマーアロイ同様に取り扱うことができる。
本発明で用いる(A)スチレン系樹脂、および(B)熱可塑性樹脂とを含むスチレン系樹脂組成物は、極性の高いシアン化ビニル系単量体の量が多いため、従来の方法で溶融加工しようとすると溶融加工性が悪化し、得られる組成物の機械特性を大きく低下させていた。しかしながら溶融混練を樹脂圧力2.0MPa以上の高剪断下で行えば、上述の特異的な相分離構造を実用的な成形加工条件下で安定して得ることができる。
本発明の製造方法における樹脂圧力とは、溶融混練装置に取り付けた樹脂圧力計で測定した値であり、ゲージ圧を樹脂圧力とする。
上記溶融混練時の樹脂圧力とは、一貫して2.0MPa以上が必要ではなく、溶融混練時に少なくとも1ヵ所以上もしくは一時的に樹脂圧力が2.0MPa以上となる領域もしくは時間が存在すれば良く、押出機を用いて溶融混練する際には、通常最も樹脂圧力が高くなる箇所、例えば逆フルフライトやニーディングブロックによる樹脂滞留箇所で樹脂圧力が2.0MPa以上となるようにすることが好ましい。本発明では、(A)スチレン系樹脂と(B)スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂を溶融混練する際に少なくとも1カ所以上樹脂圧力が2.0MPa以上となる領域が存在すればよい。溶融混練装置の中で逆フルフライトやニーディングブロックによる樹脂滞留箇所が樹脂圧力が高くなる傾向があるため、これらの樹脂滞留箇所における樹脂圧力を測定し、樹脂圧力が2.0MPa以上となるような条件で溶融混練すればよい。また、本発明では、溶融混練する際に一時的に樹脂圧力が2.0MPa以上となる時間が存在すればよい。ここで、樹脂圧力が2.0MPa以上となる時間は1秒以上であることが好ましく、逆フルフライトやニーディングブロックによる樹脂滞留箇所に樹脂が1秒以上滞留することで、一時的に樹脂圧力が2.0MPa以上になる時間が存在することになる。樹脂圧力が2.0MPa以上になる時間は、さらに好ましくは、5秒から5分程度である。
溶融混練時の樹脂圧力は2.0MPa以上であれば機械的性能が許す限り特に制限はないが、好ましくは2.0〜10.0MPaの範囲で用いられ、さらには2.0〜7.0MPaの範囲がより好ましく、特に2.0〜5.0MPaの範囲であれば、両相連続構造がより安定して得られやすく、樹脂の劣化が小さいため好ましく用いられる。上記樹脂圧力は、例えば、押出機を用いて溶融混練する際には、フルフライト部、ニーディングブロック部、吐出口手前部など任意のバレル部分に設けられた樹脂圧力計のゲージ圧で示される値である。
溶融混練時の樹脂圧力を調整する方法としては、特に制限はないが、例えば(イ)溶融混練温度の低下による樹脂粘度の向上、(ロ)目的の樹脂圧力になるような分子量のポリマーを選択する、(ハ)逆フルフライト、ニーディングブロック導入などのスクリューアレンジ変更による樹脂滞留、(ニ)バレル内のポリマー充満率を上げる、(ホ)スクリュー回転数を上げる、(へ)任意の添加剤を混合することによる樹脂粘度の向上、(ト)炭酸ガス導入などの超臨界状態などが挙げられる。
本発明のスチレン系樹脂組成物を溶融混練する際は、樹脂圧力が2.0MPa以上、好ましくは2.0〜10.0MPaの範囲となるように、バレル温度、スクリュー回転数、原料供給速度(充満率)、樹脂温度とのバランスを見ながら調整することにより製造することが好ましい。
さらに本発明においては、強度及び寸法安定性等を向上させるため、必要に応じて充填材を用いてもよい。充填材の形状としては繊維状であっても非繊維状であってもよく、繊維状の充填材と非繊維状充填材を組み合わせて用いてもよい。かかる充填材としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状および/または非繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
強度及び寸法安定性等を向上させるため、かかる充填材を用いる場合、その配合量は特に制限はないが、通常(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0.1〜200重量部配合されることが好ましい。
本発明のスチレン系樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物、などの離型剤、防食剤、着色防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱安定剤、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
これらの添加剤は、本発明のスチレン系樹脂組成物を製造する任意の段階で配合することが可能であり、例えば、少なくとも2成分の樹脂を配合する際に同時に添加する方法や、予め2成分の樹脂を溶融混練した後に添加する方法や、始めに片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法が挙げられる。
本発明から得られるスチレン系樹脂組成物の成形方法は、任意の方法が可能であり、成形形状は、任意の形状が可能である。成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などを挙げることができるが、中でも射出成形は射出後、金型内で熱処理と構造固定化が同時にできることから好ましく、またフィルムおよび/またはシート押出成形であれば、フィルムおよび/またはシート延伸時に熱処理し、その後の巻き取り前の自然冷却時に構造固定ができることから好ましい。もちろん上記成形品を別途熱処理し構造形成させることも可能である。
本発明におけるスチレン系樹脂組成物は、優れた機械特性、流動、および耐薬品性をいかして、構造材料として有用に用いることができ、例えば電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、雑貨などに好適に使用することができる。
本発明のスチレン系樹脂組成物の成形体は、例えば、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電機部品キャビネット、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスク、DVDなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、携帯電話関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、エアフローメーター、エアポンプ、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、サーモスタットハウジング、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブ−スター部品、各種ケース、燃料関係・排気系・吸気系等の各種チューブ、各種タンク、燃料関係・排気系・吸気系等の各種ホース、各種クリップ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、各種パイプ、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、ブレーキパッド摩耗センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコンパネルスイッチ基板、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ステップモーターローター、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、スタータースイッチ、スターターリレー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、デュストリビューター、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、ホーンターミナル、ウィンドウォッシャーノズル、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、ラジエターグリル、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプソケット、ランプハウジング、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車外装材、センターコンソール、インストルメントパネル、インパネコア、インパネパッド、グローブボックス、ハンドルコラム、アームレスト、レバーパーキング、フロントピラートリム、ドアトリム、ピラートリム、コンソールボックスなどの自動車内装材、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター、ヒューズ用コネクターなどの各種コネクターなどの自動車部品;パソコン、プリンター、ディスプレイ、CRTディスプレイ、ファックス、コピー、ワープロ、ノートパソコン、携帯電話、PHS、DVDドライブ、PDドライブ、フレキシブルディスクドライブなどの記憶装置のハウジング、シャーシ、リレー、スイッチ、ケース部材、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子機器部品、機械部品、その他各種用途に有用である。
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中の部数および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
[参考例1] (A)スチレン系樹脂
<ST−1>ビニル系共重合体の調製
以下にビニル系共重合体の調製方法を示す。なお得られたポリマーを、70℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml濃度のメチルエチルケトン溶液を調製し、30℃の温度条件下でウベローデ粘度計を用いて極限粘度を測定した。
また得られたビニル系共重合体中の各単量体単位の含有率について、30μm程度のフィルム状の試料をプレス成形により作成し、FT−IR分析により測定した。
<ST−1−1>
スチレン−アクリロニトリル共重合体“トヨラック”1050B(東レ(株)製)を使用した。メチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.39dl/g、各単量体単位の含有率は、スチレン単位77重量%、アクリロニトリル単位23重量%であった。
<ST−1−2>
スチレン70%、アクリロニトリル30%からなる単量体混合物を懸濁重合してビニル系共重合体を調製した。得られたビニル系共重合体のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.53dl/g、各単量体単位の含有率は、スチレン単位71重量%、アクリロニトリル単位29重量%であった。
<ST−1−3>
スチレン65%、アクリロニトリル35%からなる単量体混合物を懸濁重合してビニル系共重合体を調製した。得られたビニル系共重合体のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.54dl/g、各単量体単位の含有率は、スチレン単位66重量%、アクリロニトリル単位34重量%であった。
<ST−1−4>
スチレン60%、アクリロニトリル40%からなる単量体混合物を懸濁重合してビニル系共重合体を調製した。得られたビニル系共重合体のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.51dl/g、各単量体単位の含有率は、スチレン単位61重量%、アクリロニトリル単位39重量%であった。
<ST−1−5>
スチレン40%、アクリロニトリル30%、α−メチルスチレン30%からなる単量体混合物を懸濁重合してビニル系共重合体を調製した。得られたビニル系共重合体のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.52dl/g、各単量体単位の含有率は、スチレン単位40重量%、アクリロニトリル単位31重量%、α−メチルスチレン単位29重量%であった。
<ST−1−6>
スチレン69.7%、アクリロニトリル30%、グリシジルメタクリレート0.3%からなる単量体混合物を懸濁重合して変性ビニル系共重合体を調製した。得られた変性ビニル系共重合体のメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.53dl/g、各単量体単位の含有率は、スチレン単位70.6重量%、アクリロニトリル単位29重量%、グリシジルメタクリレート単位0.4重量%であった。
<ST−1−7>
スチレン67%、アクリロニトリル30%、無水マレイン酸3%からなる単量体混合物をメチルエチルケトン溶媒中で溶液重合してビニル系共重合体を調製した。得られたビニル系共重合体はメチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.53dl/g、各単量体単位の含有率は、スチレン単位67重量%、アクリロニトリル単位30重量%、無水マレイン酸単位3重量%であった。
<ST−2>ゴム含有グラフト共重合体
以下にゴム含有グラフト共重合体の調製方法を示す。なおグラフト率は次の方法で求めたものである。グラフト共重合体の所定量(m)にアセトンを加え4時間還流した。この溶液を8000rpm(遠心力10,000G(約100×103 m/s2 ))30分遠心分離後、不溶分を濾過した。この不溶分を70℃で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。
グラフト率=[(n)−(m)×L]/[(m)×L]×100
ここでLはグラフト共重合体のゴム含有率を意味する。
上記アセトン溶液の濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を得た。この可溶分を、70℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml濃度のメチルエチルケトン溶液を調製し、30℃の温度条件下でウベローデ粘度計を用いて極限粘度を測定した。
また得られたグラフト共重合体中の各単量体単位の含有率について、30μm程度のフィルム状の試料をプレス成形により作成し、FT−IR分析により測定した。
<ST−2−1>
ポリブタジエンラテックス(平均ゴム粒子径0.3μm)50部(固形分換算)の存在下でスチレン70%、アクリロニトリル30%からなる単量体混合物50部を加えて乳化重合した。得られたグラフト共重合体は硫酸で凝固した後、洗浄、乾燥してパウダー状として得た。
得られたグラフト共重合体のグラフト率は42%、メチルエチルケトン可溶分の極限粘度は0.37dl/g、各単量体単位の含有率は、ブタジエン単位50重量%、スチレン単位35重量%、アクリロニトリル単位15重量%であった。
[参考例2] (B)スチレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂
<PC−1>芳香族ポリカーボネート“ユーピロン”S3000(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製)(2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの重合体)を使用した。
<PC−2>芳香族ポリカーボネート“ユーピロン”S2000(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製)(2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの重合体)を使用した。
<PC−3>2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン24.3%、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン30.6%、およびジフェニルカーボネート45.1%とを撹拌槽に仕込み窒素置換後150℃で溶融した。ここにテトラメチルアンモニウムヒドロキシドおよび水酸化ナトリウムを添加し150℃で1時間撹拌により反応を行った。次いで220℃まで昇温した後、 27kPa(200mmHg)まで減圧して1時間撹拌、さらに温度を250℃まで昇温した後、2kPa(15mmHg)まで減圧し1時間撹拌により反応を進行させた。得られた反応物を遠心薄膜型蒸発装置に送入し反応を進行させた後、横型撹拌重合装置へ送入し290℃で30分滞留により重合を完結させた。横型撹拌装置よりダイを通してストランド状とし、カッターにてペレット化した共重合芳香族ポリカーボネートを使用した。
[参考例3] 添加剤
<TZ−1>ホスファイト系酸化防止剤“アデカスタブ”PEP−8(旭電化工業(株)製)を使用した。
[実施例1〜15]
表1記載の実施例1〜15の組成からなる原料を、ニーディングブロック部を有する2軸スクリュー押出機(池貝工業社製PCM−30)に供給した。押出機による押出しは、溶融混練時のニーディングブロック部の樹脂圧力が表1記載の値となるように、バレル温度を220〜250℃の間で調整した。ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定したのちペレタイズしてペレットを製造した。なお、樹脂圧力は押出機バレルのニーディング部分に設けられた樹脂圧力計のゲージ圧で示される値である。その値を表1に示した。得られたペレットを用い、射出成形機(住友重機社製、プロマット40/25)により、射出圧を下限圧+1MPaでそれぞれの試験片を成形し、次の条件で物性を測定した。
[組成物中のシアン化ビニル系単量体単位の含有量]得られた組成物中のシアン化ビニル化合物の含有率は、30μm程度のフィルム状の試料をプレス成形により作成し、FT−IR分析により測定した
[耐衝撃性]:ASTM D256−56Aに従い耐衝撃性を評価した。
[耐熱性]:ASTM D648(荷重:1.82MPa)に従い耐熱性を評価した。
[流動性]:スパイラルフロー(断面形状:幅10mm×厚み2mm)の流動長(スパイラルフロー長)を、シリンダー温度240℃、金型温度60℃、射出圧力50MPaで測定した。
[耐薬品性]1/8“(約3.2mm)厚曲げ試験片を以下に示す薬液中に23℃で7日間放置(24時間ごとに容器ごと手で緩やかに回し、中の薬液をかき混ぜる)する。その後薬液より取り出した試験片を流水洗浄後、23℃、50%RHの空気中にて7日間コンディショニングし、薬液が除かれた状態でASTM D790に従い曲げ試験を評価し、薬液浸漬前後での曲げ弾性率保持率を求めた。
(1)10%硫酸水溶液
(2)30%水酸化ナトリウム水溶液
(3)メタノール
(4)シンナー
さらに上記氷水中にて急冷し、構造を固定したガットおよび射出成形により得られた成形品から厚み100μmの切片を切り出したサンプルについて、ヨウ素染色法によりポリカーボネートを染色後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行った。
また上記氷水中にて急冷し、構造を固定したガットおよび射出成形により得られた成形品から厚み100μmの切片を切り出したサンプルについて、両相連続構造の場合の構造周期または分散構造の場合の粒子間距離を小角X線散乱(0.4μ未満の構造周期または粒子間距離の場合)もしくは光散乱(0.4μ以上の構造周期または粒子間距離の場合)にて測定した。いずれのサンプルもピークが観察され、該ピーク位置(θm)から下式で計算した構造周期または粒子間距離(Λm)を記した。
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)
各サンプルの透過型電子顕微鏡写真から構造の状態、小角X線散乱もしくは光散乱から構造周期または粒子間距離、さらには耐衝撃性、耐熱性、流動性、および耐薬品性の測定結果をそれぞれ表1に示す。
実施例1〜15より、シアン化ビニル単量体量が多いスチレン系樹脂を用いた本発明のスチレン系樹脂組成物において、1μm以下の両相連続構造、分散構造である微細な相構造を実用的な射出成形において安定して得ることができ、耐衝撃性、耐熱性、流動性、さらには耐薬品性を飛躍的に改良する事ができた。特に実施例10のとおり、ポリカーボネート含有量が増量する事による組成物中のシアン化ビニル量が比較例2に比べて少ない領域においても、特異的な相構造に起因して高い耐薬品性を有することがわかる。
さらに<ST−2−1>ゴム含有グラフト共重合体を添加した場合は、耐衝撃性が向上するばかりでなく、耐薬品性の低下も見られないことから、実用的な組成が設計できる。
[比較例1〜4]
表2記載の比較例1、2の組成からなる原料を、バレル温度を250℃に設定した2軸スクリュー押出機(池貝工業社製PCM−30)に供給した。ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定したのちペレット状のポリマーを製造した(この時の比較例2における樹脂圧力は1.5MPa)。また比較例3、4の組成からなる原料は押出温度280℃に設定した単軸スクリュー押出機(田辺プラスチックス機械(株)製VS40−32)へ供給し、ダイから吐出後のガットをすぐに氷水中に急冷し、構造を固定したのちペレット状のポリマーを製造した(この時の比較例3における樹脂圧力は1.0MPa、比較例4における樹脂圧力は1.2MPa)。なお単軸押出機における樹脂圧力はシリンダーの中間ダルメージ部分に設けた樹脂圧力計のゲージ圧で示される値である。その後上記実施例と同様に射出成形を行い、構造の状態、構造周期または粒子間距離、機械特性、耐薬品性の測定を行った。結果をそれぞれ表2に示す。
比較例1、2より、ポリカーボネート単体や本発明のシアン化ビニル単量体量が少ない場合には、耐薬品性が大幅に低下した。さらに比較例3、4のように単軸スクリュー押出機を用いるなど十分な剪断を付与できず、かつ溶融混練時の混練温度が高すぎる場合には、本発明の所望の相構造が得られないため機械特性は低いものとなった。