JP4506114B2 - ポリエステル樹脂成形体およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形時の成形収縮率、熱処理後の加熱収縮率が小さく成形品の寸法安定性が改善され、かつ流動性等の射出成形性に優れ、低比重のポリエステル樹脂組成物からなる成形体を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)は機械的性質や耐熱性に優れることから、電気・電子機器部品、自動車部品および機械機構部品などの用途に対して広く展開されている。さらにコネクターなどの分野においては、コネクター結合時の密着性を高めるために高い寸法精度が要求されている。また電気・電子機器部品においては、近年集積化に伴い使用温度が上昇することから、また自動車部品においても車内での実用温度での信頼性が要求されることから、これらの実際の使用条件における実用温度での寸法変化を改良することが要求されている。
【0003】
特許文献1には、PBTの耐衝撃性や寸法安定性改良を目的に、PBTにグリシジル化合物により変性されたポリオレフィンおよび特定の第4級有機塩化合物を配合する方法が記載されている。しかしながら上記コネクター等の電気・電子機器部品では、近年、製品の小型化、軽量化に伴い、部品の薄肉化、複雑化が進み、精密成形が可能な高い流動性を求められており、これらの点からかかる方法では充分満足するものではなかった。
【0004】
特許文献2には、PBT、ポリカーボネート(PC)、アクリル系グラフト(共)重合体粒子からなる組成物を溶融混練して相互侵入の編目構造を形成した成形体が記載されている。しかしながら同法は、特殊なアクリル系グラフト(共)重合体粒子を添加することにより相互侵入の編目構造を形成させたものであり、より汎用的な方法が望まれていた。また同特許文献記載の発明は、同法により相互侵入の編目構造が得られ、機械特性が改良されるとの記載があるものの、その編目構造のサイズ、周期性、均一性については言及がなく、また成形品の寸法安定性改良に関する示唆も一切されていない。
【0005】
これまでには優れた規則性を有し、かつその構造が微細であり、さらにはその構造が均一に分散したポリエステル樹脂組成物からなる成形体については知られていなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−172623号公報([0003]〜[0007])
【特許文献2】
特開平5−156141号公報(第2頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリエステル樹脂成形体の成形時の成形収縮率、熱処理後の加熱収縮率を低減し成形品の寸法安定性を改良し、低比重のポリエステル樹脂組成物を得ることを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、射出成形時の成形収縮率や、熱処理後の加熱収縮率を低減したたポリエステル樹脂成形体を提供すべく鋭意検討した結果、PBTとPCを溶融混練し構造周期0.01〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.01〜1μmの分散構造に構造制御することによって、著しく改良されることを見いだし本発明を完成させるに到った。
【0009】
すなわち本発明は、
(1)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂を溶融混練して配合したポリエステル樹脂組成物からなる成形体であって、前記成形体が構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成したものであり、かつ成形時の成形収縮率が1%以下であり、60℃で2時間熱処理後の加熱収縮率が0.1%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂成形体。
【0010】
(2)前記成形体が前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂相および前記(B)ポリカーボネート樹脂相が相溶化した構造または構造周期0.4μm以下の両相連続構造の樹脂ペレットを溶融成形したものであることを特徴とする上記(1)記載のポリエステル樹脂成形体。
【0011】
(3)前記両相連続構造または分散構造が、スピノーダル分解によって形成されたものであることを特徴とする上記(1)または(2)記載のポリエステル樹脂成形体。
【0012】
(4)前記スピノーダル分解が、溶融混練時の剪断下で一旦相溶し、その後相分離するものであることを特徴とする上記(3)記載のポリエステル樹脂成形体。
【0013】
(5)前記成形体が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して(B)ポリカーボネート樹脂10〜100重量部を配合されてなることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル樹脂成形体。
(6)前記成形体が、さらにエステル交換反応抑制剤を配合してなることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリエステル樹脂成形体。
【0014】
(7)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂を溶融混練して前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂相および前記(B)ポリカーボネート樹脂相が相溶化した構造または構造周期0.4μm以下の両相連続構造の樹脂ペレットを製造し、該樹脂ペレットを射出成形し、射出成形の過程においてスピノーダル分解を進行させ、構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成することを特徴とするポリエステル樹脂成形体の製造方法。
(8)さらにエステル交換反応抑制剤を溶融混練することを特徴とする上記(7)記載のポリエステル樹脂成形体の製造方法を提供するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂とは、テレフタル酸あるいはそのエステル形成性誘導体と1,4−ブタンジオールあるいはそのエステル形成性誘導体とを主成分とし重縮合反応によって得られる重合体であって、特性を損なわない範囲において共重合成分を含んでも良い。
【0016】
これら重合体および共重合体の好ましい例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレン(テレフタレート/ナフタレート)ポリ(ブチレン/エチレン)テレフタレート等が挙げられ、単独で用いても2種以上混合して用いても良い。
【0017】
またこれら重合体および共重合体は、成形性、機械的特性の観点からo−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36〜1.60、特に0.52〜1.25の範囲にあるものが好適であり、さらには0.6〜1.0の範囲にあるものが最も好ましい。
【0018】
本発明で用いる(B)ポリカーボネート樹脂とは、ビスフェノールA、つまり2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた1種以上を主原料とするものが好ましく挙げられ、なかでもビスフェノールA、つまり2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを主原料として製造されたものが好ましい。具体的には、上記ビスフェノールAなどをジヒドロキシ成分として用い、エステル交換法あるいはホスゲン法により得られたポリカーボネート樹脂であることが好ましい。さらに、ビスフェノールAの一部、好ましくは10モル%以下を、4,4’−ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどで置換したものも好ましく用いられる。
【0019】
本発明で用いる(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)ポリカーボネート樹脂の配合量には特に制限がないが、通常(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(B)ポリカーボネート樹脂10〜1000重量部である。好ましくは、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(B)ポリカーボネート樹脂10〜100重量部である。長尺ものの成形体や精密成形体を得る場合には、(B)ポリカーボネート樹脂の配合量を100重量部以下とし、射出成形時の流動性を低下させないようにすることが好ましい。また(B)ポリカーボネート樹脂の配合量が10重量部未満の場合、寸法安定性の改良効果が低下するため好ましくない。これらの流動性と寸法安定性のバランスから、より好ましい配合量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(B)ポリカーボネート樹脂20〜50重量部である。
【0020】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、特定の構造周期を有する両相連続構造または特定の粒子間距離を有する分散構造を有するものである。
【0021】
かかる構造を有するポリエステル樹脂組成物は、スピノーダル分解による相分離を用いることにより得ることができる。
【0022】
一般に、2成分の樹脂からなるポリマーアロイには、これらの組成に対して、ガラス転移温度以上、熱分解温度以下の実用的な全領域において相溶する相溶系や、逆に全領域で非相溶となる非相溶系や、ある領域で相溶し、別の領域で相分離状態となる、部分相溶系があり、さらにこの部分相溶系には、その相分離状態の条件によってスピノーダル分解によって相分離するものと、核生成と成長によって相分離するものがある。
【0023】
スピノーダル分解による相分離とは、異なる2成分の樹脂組成および温度に対する相図においてスピノーダル曲線の内側の不安定状態で生じる相分離のことを指し、また核生成と成長による相分離とは、該相図においてバイノーダル曲線の内側であり、かつスピノーダル曲線の外側の準安定状態で生じる相分離のことを指す。
【0024】
かかるスピノーダル曲線とは、組成および温度に対して、異なる2成分の樹脂を混合した場合、相溶した場合の自由エネルギーと相溶しない2相における自由エネルギーの合計との差(ΔGmix)を濃度(φ)で二回偏微分したもの(∂2ΔGmix/∂φ2)が0となる曲線のことであり、またスピノーダル曲線の内側では、∂2ΔGmix/∂φ2<0の不安定状態であり、外側では∂2ΔGmix/∂φ2>0である。
【0025】
またかかるバイノーダル曲線とは、組成および温度に対して、系が相溶する領域と相分離する領域の境界の曲線のことである。
【0026】
ここで本発明における相溶する場合とは、分子レベルで均一に混合している状態のことであり、具体的には異なる2成分の樹脂を主成分とする相がいずれも0.001μm以上の相構造を形成していない場合を指し、また、非相溶の場合とは、相溶状態でない場合のことであり、すなわち異なる2成分の樹脂を主成分とする相が互いに0.001μm以上の相構造を形成している状態のことを指す。相溶するか否かは、例えばPolymer Alloys and Blends, Leszek A Utracki, hanser Publishers,Munich Viema New York,P64,に記載の様に、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。
【0027】
詳細な理論によると、スピノーダル分解では、一旦相溶領域の温度で均一に相溶した混合系の温度を、不安定領域の温度まで急速に変化させた場合、系は共存組成に向けて急速に相分離を開始する。その際濃度は一定の波長に単色化され、構造周期(Λm)で両分離相が共に連続して規則正しく絡み合った両相連続構造を形成する。この両相連続構造形成後、その構造周期を一定に保ったまま、両相の濃度差のみが増大する過程をスピノーダル分解の初期過程と呼ぶ。
【0028】
さらに上述のスピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λm)は熱力学的に下式のような関係がある。
Λm〜[│Ts−T│/Ts]-1/2
(ここでTsはスピノーダル曲線上の温度)
ここで本発明でいうところの両相連続構造とは、混合する樹脂の両成分がそれぞれ連続相を形成し、互いに三次元的に絡み合った構造を指す。この両相連続構造の模式図は、例えば「ポリマーアロイ 基礎と応用(第2版)(第10.1章)」(高分子学会編:東京化学同人)に記載されている。
【0029】
スピノーダル分解では、この様な初期過程を経た後、波長の増大と濃度差の増大が同時に生じる中期過程、濃度差が共存組成に達した後、波長の増大が自己相似的に生じる後期過程を経て、最終的には巨視的な2相に分離するまで進行するが、本発明においては、最終的に巨視的な2相に分離する前の所望の構造周期に到達した段階で構造を固定すればよい。また中期過程から後期過程にかける波長の増大過程において、組成や界面張力の影響によっては、片方の相の連続性が途切れ、上述の両相連続構造から分散構造に変化する場合もある。この場合には所望の粒子間距離に到達した段階で構造を固定すればよい。
【0030】
ここで本発明にいうところの分散構造とは、片方の樹脂成分が主成分であるマトリックスの中に、もう片方の樹脂成分が主成分である粒子が点在している、いわゆる海島構造のことをさす。
【0031】
さらにかかるスピノーダル分解の初期過程の構造周期を0.001〜0.1μmの範囲に制御することで、上述の中期過程以降で波長および濃度差が増大しても、構造周期0.001〜1μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの範囲の分散構造に構造制御することができる。より優れた寸法安定性を得るためには、構造発展させた後、構造周期0.002〜0.5μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.002〜0.5μmの範囲の分散構造に制御することが好ましく、さらには、構造周期0.003〜0.3μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.003〜0.3μmの範囲の分散構造に制御することがより好ましい。
【0032】
一方、上述の準安定領域での相分離である核生成と成長では、その初期から海島構造である分散構造が形成されてしまい、それが成長するため、本発明の様な規則正しく並んだ構造周期0.001〜1μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの範囲の分散構造を形成させることは困難である。
【0033】
またこれらのスピノーダル分解による両相連続構造、もしくは分散構造を確認するためには、規則的な周期構造が確認されることが重要である。これは例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、両相連続構造が形成されることの確認に加えて、光散乱装置や小角X線散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れることの確認が有効である。なお、光散乱装置、小角X線散乱装置は最適測定領域が異なるため、構造周期の大きさに応じて適宜選択して用いられる。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造を持つ証明であり、その周期Λm は、両相連続構造の場合構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。またその値は、散乱光の散乱体内での波長λ、散乱極大を与える散乱角θm を用いて次式
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)
により計算することができる。
【0034】
かかるスピノーダル分解は、2成分以上からなる樹脂を相溶状態とした後、スピノーダル曲線の内側の不安定状態とすることにより生じる。この2成分以上からなる樹脂で相溶状態を実現する方法としては、共通溶媒に溶解後、この溶液から噴霧乾燥、凍結乾燥、非溶媒物質中の凝固、溶媒蒸発によるフィルム生成等の方法により得られる溶媒キャスト法や、部分相溶系を、相溶条件下で溶融混練することによる溶融混練法が挙げられるが、中でも溶媒を用いないドライプロセスである溶融混練による相溶化が、実用上好ましく用いられる。
【0035】
かかる部分相溶系には、同一組成において低温側で相溶しやすくなる低温相溶型相図を有するものや、逆に高温側で相溶しやすくなる高温相溶型相図を有するものが知られている。この低温相溶型相図における相溶と非相溶の分岐温度で最も低い温度を、下限臨界共溶温度(lower critical solution temperature略してLCST)と呼び、高温相溶型相図における相溶と非相溶の分岐温度で最も高い温度を、上限臨界共溶温度(upper critical solution temperature略してUCST)と呼ぶ。
【0036】
部分相溶系を用いて相溶状態となった2成分以上の樹脂は、低温相溶型相図の場合、LCST以上の温度かつスピノーダル曲線の内側の温度にすることで、また高温相溶型相図の場合、UCST以下の温度かつスピノーダル曲線の内側の温度にすることでスピノーダル分解を行わせることができる。
【0037】
またこの部分相溶系によるスピノーダル分解の他に、非相溶系においても溶融混練によってスピノーダル分解を誘発すること、例えば溶融混練時等の剪断下で一旦相溶し、非剪断下で再度不安定状態となり相分解するいわゆる剪断場依存型相溶解・相分解によってもスピノーダル分解による相分離が可能である。この場合においても、スピノーダル分解様式で分解が進行し規則的な両相連続構造を有する。さらにこの剪断場依存型相溶解・相分解は、スピノーダル曲線が剪断場により変化し、不安定状態領域が拡大するため、スピノーダル曲線が変化しない部分相溶系の温度変化による方法に比べて、その同じ温度変化幅においても実質的な過冷却度(│Ts−T│)が大きくなり、その結果、上述の関係式におけるスピノーダル分解の初期過程における構造周期を小さくすることが容易となるためより好ましい。
【0038】
かかる溶融混練時の剪断下により相溶化させるには、通常の押出機が用いられるが、2軸押出機を用いることが好ましい。相溶化のための剪断条件、温度条件件は、樹脂の分子量によっても異なり一概にはいえないが、種々の剪断条件下での相図に基づき、簡単な予備実験をすることにより条件を設定することができる。また上記射出成形機の可塑化工程での相溶化を確実に実現させる方法として、予め2軸押出機で溶融混練し相溶化させ、吐出後水中などで急冷し相溶化状態で構造を固定させたペレットを用いて射出成形する方法などが好ましい例として挙げられる。
【0039】
なお、本発明のポリエステル樹脂成形体を構成するポリエステル樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲でさらに各種の添加剤を含有せしめることもできる。これらの添加剤としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、セリサイト、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、岩綿、炭酸カルシウム、ケイ砂、ワラステナイト、硫酸バリウム、ガラスビーズ、酸化チタンなどの強化材、非板状充填材、あるいは酸化防止剤(リン系、硫黄系など)、紫外線吸収剤、熱安定剤(ヒンダードフェノール系など)、エステル交換反応抑制剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、染料および顔料を含む着色剤、難燃剤(ハロゲン系、リン系など)、難燃助剤(三酸化アンチモンに代表されるアンチモン化合物、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンなど)、発泡剤、カップリング剤(エポキシ基、アミノ基メルカプト基、ビニル基、イソシアネート基を一種以上含むシランカップリング剤やチタンカップリング剤)、抗菌剤等が挙げられる。
【0040】
これらの添加剤は、本発明のポリエステル樹脂成形体を構成するポリエステル樹脂組成物を製造する任意の段階で配合することが可能であり、例えば、PBTとPCを配合する際に同時に添加する方法や、予めPBTとPCを溶融混練した後に添加する方法や、始めにPBT、PCのいずれか片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法等が挙げられる。
【0041】
また、本発明のポリエステル樹脂成形体を構成するポリエステル樹脂組成物には、本発明の構造を損なわない範囲でさらに他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含有せしめることもできる。これらの熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリエステル、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられ、熱硬化性樹脂としては、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0042】
これらの他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂は、本発明のポリエステル樹脂成形体を構成するポリエステル樹脂組成物を製造する任意の段階で配合することが可能であり、例えば、PBTとPCを配合する際に同時に添加する方法や、予めPBTとPCを溶融混練した後に添加する方法や、始めにPBT、PCのいずれか片方の樹脂に添加し溶融混練後、残りの樹脂を配合する方法等が挙げられる。
【0043】
本発明から得られるポリエステル樹脂成形体の成形方法は、任意の方法が可能であり、成形形状は、任意の形状が可能である。成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形などを挙げることができるが、中でも射出成形は射出後、金型内で構造固定化ができることから好ましく用いられる。
【0044】
本発明のポリエステル樹脂成形体を製造する好ましい方法は、高剪断を付与することのできる2軸押出機内で、PBTとPCを一旦相溶化させ、それを押出機から吐出後直ぐに冷却することによって、PBT相とPC相が相溶化した状態で構造が固定されたペレットか、あるいはスピノーダル分解の初期状態である構造周期が0.4μm以下の両相連続構造のペレットを製造した後、このペレットを射出成形し、その射出成形の過程においてスピノーダル分解をさらに進行させ、構造周期が0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの範囲の分散構造を有するポリエステル樹脂成形品を形成せしめる方法である。
【0045】
本発明から得られる特定構造を有するポリエステル樹脂成形体は、成形時の成形収縮率、熱処理後の加熱収縮率が良好で成形品の寸法安定性を改良することが可能であるが、中でも成形時の成形収縮率が1%以下であり、かつ60℃で2時間熱処理後の加熱収縮率が0.1%以下となることが必要である。成形時の成形収縮率が1%を超す場合、長尺ものの成形体を成形する際、成形体によってはソリを発生させたりするため好ましくない。さらにここでは実用温度として60℃を代表温度とし、60℃で2時間熱処理後の加熱収縮率を測定することで実用温度での寸法変化の指標とした。かかる加熱収縮率が0.1%を超す場合、成形体をこれらの実用温度で使用する際に寸法変化が生じ、例えばコネクタ結合部の密着性が低下する等の障害が生じるため好ましくない。
【0046】
ここで上記成形時の成形収縮率を1%以下とし、かつ60℃で2時間熱処理後の加熱収縮率が0.1%以下とするためには、構造周期0.001〜1μmの範囲の両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの範囲の分散構造に構造制御することが有効であり、これらの構造を実現するためには、上記成形方法の中でも射出成形を用い、金型内で急冷することにより成形体中の構造を固定する方法が好ましく用いられる。
【0047】
かかる寸法安定性を高めたポリエステル樹脂成形体は、例えば自動車部品や電機部品などに好適に使用することができる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂に対して比重が低くなる効果も有するため、自動車部品や電機部品の軽量化の観点からも好ましい。
【0048】
自動車部品の例としては、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、エアフローメーター、エアポンプ、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、サーモスタットハウジング、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブ−スター部品、各種ケース、燃料関係・排気系・吸気系等の各種チューブ、各種タンク、燃料関係・排気系・吸気系等の各種ホース、各種クリップ、排気ガスバルブ等の各種バルブ、各種パイプ、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、ブレーキパッド摩耗センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアコン用サーモスタットベース、エアコンパネルスイッチ基板、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、ステップモーターローター、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、スタータースイッチ、スターターリレー、安全ベルト部品、ドアロックハウジング、ドアロックプロテクター等のドアロック部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、デュストリビューター、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、ホーンターミナル、ウィンドウォッシャーノズル、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプソケット、ランプハウジング、ランプベゼル、ドアハンドル、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター、ヒューズ用コネクターなどの各種コネクターなどが挙げられる。
【0049】
また電気部品の例としては、コネクター、コイル、各種センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレーケース、小型スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネット、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスク・DVD等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、携帯電話関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライター関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等の光学機器/精密機械関連部品などが挙げられる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに説明する。
実施例、比較例では以下の評価方法を用いた。
【0051】
(1)ガラス転移点の測定
セイコー電子工業製RDC−220型DSCを用い、窒素雰囲気下で昇温速度20℃/分により測定した。
【0052】
(2)相構造の評価
▲1▼電子顕微鏡による観察
ペレットをヨウ素染色法によりポリカーボネートを染色後、ウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出したサンプルについて、日立製作所製H−7100型透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して相構造の観察を行った。
【0053】
▲2▼両相連続構造の構造周期
次に示す小角X線散乱により測定した。X線発生装置は理学電機社製RU−200で、CuKα線を線源とし、出力50KV/150mA、スリット径0.5mm、カメラ半径405mm、露出時間120分、フィルムKodak DEF−5にて散乱写真を撮影した。小角X線散乱においてピーク位置(θm)から下式で構造周期(Λm)を計算した。
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)。
【0054】
(3)寸法安定性
▲1▼成形収縮率
80mm四方で厚さ1mmの角板(フィルムゲート)を金型温度80℃、保圧10秒、冷却時間10秒の成形サイクルで成形した際に得られた角板の樹脂流動長方向(MD方向)および樹脂流動長と直角方向(TD方向)の寸法を測定し、その寸法の金型の寸法に対する収縮率を求めた。
【0055】
▲2▼加熱収縮率
上記で得られた、80mm四方で厚さ1mmの角板を60℃に温調された熱風オーブンの中で2時間熱処理し、この熱処理後の成形品のMD方向およびTD方向の寸法変化を測定し、熱処理前の寸法に対する収縮率として求めた。
【0056】
▲3▼総収縮率収縮率
上記の成形収縮率と加熱収縮率の和として算出した。
【0057】
[実施例1〜7]
表1記載の組成からなる原料を、押出温度260℃に設定し、ニーディングゾーンを2つ設けたスクリューアレンジとし、実施例1〜3、及び実施例5〜7はスクリュー回転数300rpmとし、実施例4はスクリュー回転数100rpmとした2軸スクリュー押出機(池貝工業社製PCM−30)に供給し、ダイから吐出後のガットを、20℃の水100リットルを満たした冷却バス中を15秒間かけて通過させることで急冷し構造を固定した。本ガットはいずれも透明であり、また該ガットをヨウ素染色法によりポリカーボネートを染色後、超薄切片を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行ったが、いずれのサンプルについても0.001μm以上の構造物がみられず相溶化していることを確認した。このことから、本系は、押出温度260℃の押出機中で相溶化することがわかる。また該ガットから10mg切り出したサンプルのガラス転移温度を、DSCにて20℃/分の昇温速度で測定した結果を、表1に記した。
【0058】
尚、本系はLCST型相図を有する系であり、押出機の剪断下で相溶領域が拡大し相溶化したものである。
【0059】
さらに上記水中に急冷し、構造を固定したガットから厚み100μmの切片を切り出し、260℃でそれぞれ熱処理を行い、この熱処理中の構造形成過程を小角X線散乱及び光散乱を用いて追跡した。いずれのサンプルも、熱処理開始から0.5分後以降にピークが出現し、またこのピークは、そのピーク位置を変化させずに強度を増加させる様子が観測された。この小角X線散乱及び光散乱においてピーク位置を変化させずに強度を増加させる過程はスピノーダル分解の初期過程に対応する。表1には該ピーク位置(θm)から下式で計算した、構造周期(Λm)を記した。
Λm =(λ/2)/sin(θm /2)
また、この小角X線散乱測定及び光散乱測定中初期過程の切片については、一部をすぐに水中に急冷し構造を固定し、ヨウ素染色法によりポリカーボネートを染色後、超薄切片を切り出したサンプルについて透過型電子顕微鏡にて10万倍に拡大して観察を行ったところ、いずれのサンプルも両相連続構造が観察された。
【0060】
さらに上記小角X線散乱及び光散乱を測定した切片は、初期過程において構造を形成させた後、さらにそれぞれ上記記載の温度で計2分間熱処理を続け、構造形成を行った。該サンプルについても、上記初期過程同様に小角X線散乱及び光散乱から構造周期、及び透過型電子顕微鏡写真から構造の状態を観察した結果を表1に記載した。なお、分散構造を有する場合の粒子間距離も両相連続構造における構造周期と同じ方法で算出される。
【0061】
また、上記ダイから吐出後、水中に急冷し構造を固定したガットは、ペレタイザーでペレタイズを行い、射出成形用のペレットを得た。かかるペレットを用いて、ホッパ下から先端に向かって、240℃−250℃−260℃−260℃に設定した日精樹脂工業社製射出成形機(PS−60E9DSE)で、80mm四方で厚さ1mmの角板形状を有する金型を金型温度80℃とし、保圧10秒、冷却時間10秒の成形サイクルで成形を行った。
【0062】
上記射出成形条件で成形を行った成形品から厚み100μmの切片を切り出し、上記ガットからの切り出しサンプルと同様に、小角X線散乱及び光散乱から構造周期または粒子間距離を求めた結果、及び透過型電子顕微鏡写真から構造の状態を観察した結果を表1に記載した。本結果から、射出成形時によっても、上記ガットからの切り出しサンプルの熱処理と同様に構造が形成されていることがわかる。
【0063】
また射出成形性の指標としての流動性は、上述の80mm四方で厚さ1mmの角板形状を有する金型を用いて、樹脂が先端まで充填する最低射出圧力を求め、成形下限圧とし表1に記載した。また、上述の角板を用いて水中置換法により射出成形品の比重を求めた。
【0064】
なお、使用樹脂、添加剤は、以下に示すものを使用した
PBT−1:ポリブチレンテレフタレート(東レ(株)製“トレコン”1050S、ガラス転移温度32℃、結晶融解温度220℃)。
【0065】
PC−1:芳香族ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製“ユーピロン”H4000、ガラス転移温度151℃)
PC−2:芳香族ポリカーボネート(出光石油化学(株)製“タフロン”A1900、ガラス転移温度151℃)
E−1:エステル交換防止剤(旭電化工業社製“アデカスタブ”AX−71)
X−1:スチレン含有アクリル系グラフト共重合体(呉羽化学(株)製“パラロイド”EXL2615平均粒径0.1〜0.6μm)
W−1:離型剤(エチレングリコールモンタン酸エステル、クラリアントジャパン社製、Licowax E)。
【0066】
実施例3と4の比較から明らかな様に、溶融混練時の剪断を上げることにより、より微細な構造を形成することが可能であり、より射出成形性と寸法安定性に優れた成形体を得ることができる。
【0067】
[比較例1]
表2の通り、使用樹脂をPBTのみとした以外は、実施例1と同様に溶融混練後ペレタイズし、射出成形を行った。本系についても、実施例1と同様に射出成形性及び寸法安定性を測定した結果、射出成形性には優れるものの、寸法安定性に劣るものしか得られなかった。結果は、表2に記した。
【0068】
[比較例2]
PBT100重量部に対し、PCを8重量部配合した以外は、実施例1と同様に溶融混練後ペレタイズし、射出成形を行った。本系についても、実施例1と同様に射出成形性及び寸法安定性を測定した結果、射出成形性には優れるものの、寸法安定性に劣るものしか得られなかった。結果は、表2に記した。
【0069】
[比較例3]
溶融混練をスクリュー回転数を100rpmに設定した単軸押出機(田辺VS40−32)で行う以外は、実施例3と同様に溶融混練後ペレタイズし、射出成形を行った。本系についても、実施例1と同様に射出成形性及び寸法安定性を測定した結果、寸法安定性に劣るものしか得られなかった。結果は、表2に記した。
【0070】
[比較例4]
PBT100重量部に対し、PCを27重量部、スチレン含有アクリル系グラフト共重合体6.7重量部配合し、一般的に溶融混練する条件であるスクリュー回転数100rpmとした以外は、実施例1と同様に溶融混練後ペレタイズし、射出成形を行った。本系についても実施例1と同様に、押出ガットを観察した結果、2つの相に相分離した構造が観察された。また該ガットから10mg切り出したサンプルのガラス転移温度を、DSCにて20℃/分の昇温速度で測定すると、上記実施例1〜7で相溶系の特徴である単一のガラス転移温度が測定されたのと対照的に、2つの相に起因した2つのガラス転移温度が測定される。これらのことから、本系は溶融混練時に非相溶であることがわかる。次に上記押出ガットを、実施例1と同様に熱処理時の構造を観察した結果、光散乱からは、ピークが出現せず、また透過型電子顕微鏡写真からは、2つの相に相分離した相が非規則的な網状に分散している構造となっていた。本系についても、実施例1と同様に射出成形性及び寸法安定性を測定した結果、射出成形性には優れるものの、寸法安定性に劣るものしか得られなかった。結果は、表2に記した。
【0071】
[比較例5]
使用樹脂をPCのみとした以外は、実施例1と同様に溶融混練後ペレタイズし、射出成形を行った。本系についても、実施例1と同様に射出成形性及び寸法安定性を測定した結果、寸法安定性には優れるものの、射出成形性の指標である流動性が著しく低下したものしか得られなかった。結果は、表2に記した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
本発明のPBTとPCを溶融混練し構造周期0.01〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.01〜1μmの分散構造に構造制御せしめたサンプルにおいて、射出成形時の成形収縮率や、熱処理後の加熱収縮率が低減され、また成形性にも優れたサンプルが得られることがわかる。
【0075】
【発明の効果】
以上説明した様に、本発明のPBTとPCを溶融混練し構造周期0.01〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.01〜1μmの分散構造に構造制御せしめたサンプルは、射出成形時の成形収縮率や、熱処理後の加熱収縮率が低減され、また成形性にも優れた特性を有するものであり、さらに低比重である。これらの特性を活かして電気・電子機器部品、自動車部品および機械機構部品などの用途、特にコネクター用途に有用に用いることができる。
Claims (8)
- (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂を溶融混練して配合したポリエステル樹脂組成物からなる成形体であって、前記成形体が構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成したものであり、かつ成形時の成形収縮率が1%以下であり、60℃で2時間熱処理後の加熱収縮率が0.1%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂成形体。
- 前記成形体が前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂相および前記(B)ポリカーボネート樹脂相が相溶化した構造または構造周期0.4μm以下の両相連続構造の樹脂ペレットを溶融成形したものであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂成形体。
- 前記両相連続構造または分散構造が、スピノーダル分解によって形成されたものであることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル樹脂成形体。
- 前記スピノーダル分解が、溶融混練時の剪断下で一旦相溶し、その後相分離するものであることを特徴とする請求項3記載のポリエステル樹脂成形体。
- 前記成形体が(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して(B)ポリカーボネート樹脂10〜100重量部を配合されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂成形体。
- 前記成形体が、さらにエステル交換反応抑制剤を配合してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂成形体。
- (A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)ポリカーボネート樹脂を溶融混練して前記(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂相および前記(B)ポリカーボネート樹脂相が相溶化した構造または構造周期0.4μm以下の両相連続構造の樹脂ペレットを製造し、該樹脂ペレットを射出成形し、射出成形の過程においてスピノーダル分解を進行させることにより構造周期0.001〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離0.001〜1μmの分散構造を形成することを特徴とするポリエステル樹脂成形体の製造方法。
- さらにエステル交換反応抑制剤を溶融混練することを特徴とする請求項7記載のポリエステル樹脂成形体の製造方法。
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