JP2020019861A - ポリアミド樹脂組成物およびそれを含む成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリアミド樹脂が有する機械特性を低下させることなく、耐熱老化性、表面外観、耐トラッキング性、流動性、および難燃性に優れるポリアミド樹脂組成物、およびその成形品を提供する。【解決手段】(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物および(b−2)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を反応させてなる(B)化合物を0.1〜20重量部、(E)難燃剤を0.1〜50重量部含有するポリアミド樹脂組成物であって、前記(b−2)化合物の分子量/1分子中のエポキシ基の数が300以上であって、さらに(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物の水酸基と、(b−2)2つ以上のエポキシ基を有する化合物のエポキシ基との反応率が1〜50%であるポリアミド樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、耐熱老化性、表面外観、耐トラッキング性、流動性、および難燃性に優れたポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品に関するものである。
ポリアミド樹脂は、優れた機械特性、耐熱性、耐薬品性を有するため、自動車や電気・電子部品用途へ好ましく用いられている。自動車用途においては、ポリアミド樹脂は耐熱老化性に優れることから、エンジンカバー等の極めて高い温度の熱がかかる部品に使用されている。近年、自動車のエンジンルーム内部品の高密度化やエンジン出力の増加に伴い、エンジンルーム内の環境温度は増々高くなっており、より高温条件下での機械特性や耐熱老化性、表面外観が求められている。また電気・電子部品用途においても、軽量化や省スペース化、また大容量化が進み、部品の一部を担う樹脂成形品への特性向上の要求が高まりつつある。軽量化や省スペース化により、樹脂成形品の肉厚が従来比薄くなるため、樹脂自体の機械的物性、流動性の向上が必要とされている。また大容量化により、発熱が促進されて高温環境下となるため、高温に対する電気特性が樹脂成形品に求められている。特に高電圧が印加される部品については、高い難燃性、耐トラッキング性が求められている。
ポリアミド樹脂の耐熱老化性改良技術としては、例えば、ポリアミド樹脂に、水酸基と、エポキシ基またはカルボジイミド基とを有する多分岐型の化合物および/またはその縮合物を配合したポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、ポリアミド樹脂に、ポリエーテルオール化合物、補強剤を配合した熱可塑性溶融混合組成物(例えば、特許文献2参照)が開示されている。
また、ポリアミド樹脂の難燃化技術としては、臭素系難燃剤などのハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤などの非ハロゲン系難燃剤を用いた難燃化方法が多数提案されている。例えば、ポリアミド樹脂に、難燃剤、金属および/またはその塩、環含有化合物を配合してなるポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
また、難燃性、高温時の絶縁破壊電圧を向上させる技術として、例えば、半芳香族ポリアミド樹脂に、難燃剤、強化剤を配合してなる耐絶縁破壊部位用ポリアミド樹脂組成物(例えば特許文献4参照)が開示されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載の技術を用いて得られる樹脂組成物や成形品は、高温条件下での耐熱老化性や流動性が向上するものの、電気・電子部品用途において要求される成形品の絶縁破壊に関する記載はなく、近年の材料に対する要求に応じるには、更なる耐熱老化後の表面外観保持や耐トラッキング性など長期信頼性の向上が求められている。
また、特許文献4に記載の樹脂組成物や成形品は、高温での絶縁破壊強度に優れるが、長期の耐熱老化性について記載はなく、近年の材料に対する要求に応じるには、更なる耐熱老化性、表面外観や耐トラッキング性などの長期信頼性に加え、流動性の向上が期待されている。
本発明は、ポリアミド樹脂が有する機械特性を低下させることなく、耐熱老化性(より具体的には熱処理後の強度保持)、表面外観、耐トラッキング性、流動性、難燃性に優れるポリアミド樹脂組成物、およびその成形品を提供することを目的とするものである。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアミド樹脂に特定の多分岐構造の化合物および/または縮合物を含有してなるポリアミド樹脂組成物が、耐熱老化性、表面外観、耐トラッキング性、流動性、および難燃性に優れることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、本発明の実施形態は、以下に挙げる構成の少なくとも一部を含み得る。
(1)(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物および(b−2)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を反応させてなる(B)化合物を0.1〜20重量部、(E)難燃剤を0.1〜50重量部含有するポリアミド樹脂組成物であって、前記(b−2)化合物の分子量/1分子中のエポキシ基の数が300以上であって、さらに(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物の水酸基と、(b−2)2つ以上のエポキシ基を有する化合物のエポキシ基との反応率が1〜50%であるポリアミド樹脂組成物。
(2)前記ポリアミド樹脂組成物が、さらに(C)金属および/またはその塩を、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.001〜1重量部含有する(1)記載のポリアミド樹脂組成物。
(3)前記ポリアミド樹脂組成物が、さらに(D)下記式(5)で表される化合物を、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.001〜1重量部含有する(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
QX (5)
(式(5)中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す)
(4)前記ポリアミド樹脂組成物が、(C)金属および/またはその塩の含有量の(D)化合物の含有量に対する重量比((C)/(D))が1.0以下である(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品であって、国際電気標準会議規格IEC−60112/3に準拠して測定した比較トラッキング指数(CTI)が500ボルト以上である成形品。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品と金属との接点部を有する成形部品。
(1)(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物および(b−2)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を反応させてなる(B)化合物を0.1〜20重量部、(E)難燃剤を0.1〜50重量部含有するポリアミド樹脂組成物であって、前記(b−2)化合物の分子量/1分子中のエポキシ基の数が300以上であって、さらに(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物の水酸基と、(b−2)2つ以上のエポキシ基を有する化合物のエポキシ基との反応率が1〜50%であるポリアミド樹脂組成物。
(2)前記ポリアミド樹脂組成物が、さらに(C)金属および/またはその塩を、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.001〜1重量部含有する(1)記載のポリアミド樹脂組成物。
(3)前記ポリアミド樹脂組成物が、さらに(D)下記式(5)で表される化合物を、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.001〜1重量部含有する(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
QX (5)
(式(5)中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す)
(4)前記ポリアミド樹脂組成物が、(C)金属および/またはその塩の含有量の(D)化合物の含有量に対する重量比((C)/(D))が1.0以下である(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品であって、国際電気標準会議規格IEC−60112/3に準拠して測定した比較トラッキング指数(CTI)が500ボルト以上である成形品。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品と金属との接点部を有する成形部品。
本発明によって、ポリアミド樹脂が有する機械特性を低下させることなく、耐熱老化性、表面外観、耐トラッキング性、流動性、および難燃性に優れるポリアミド樹脂組成物を得ることができる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、優れた耐熱老化性、表面外観、耐トラッキング性、流動性、難燃性を有するため、電気・電子部品や自動車部品などに有用である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物および(b−2)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を反応させてなる(B)化合物を0.1〜20重量部、(E)難燃剤を0.1〜50重量部含有するポリアミド樹脂組成物であって、前記(b−2)化合物の分子量/1分子中のエポキシ基の数が300以上であって、さらに(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物の水酸基と、(b−2)2つ以上のエポキシ基を有する化合物のエポキシ基との反応率が1〜50%であるポリアミド樹脂組成物。
以下、ポリアミド樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂とは、(i)アミノ酸、(ii)ラクタムあるいは(iii)ジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。(A)ポリアミド樹脂の原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。 本発明において、(A)ポリアミド樹脂の原料として、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはポリアミドコポリマーを2種以上配合してもよい。
ポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリウンデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシリレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン5T/10T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンドデカンアミドコポリマー(ナイロン10T/612)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン10T/66)ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)などが挙げられる。また、ポリアミド樹脂の具体例としては、これらの混合物や共重合体なども挙げられる。ここで、「/」は共重合体を示す。以下、同様とする。
とりわけ好ましいものとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド56、ポリアミド610、ポリアミド510、ポリアミド410、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/66、ポリアミド66/6T、ポリアミド6T/6I、ポリアミド66/6I/6、ポリアミド6T/5T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド12Tなどを挙げることができる。これらのポリアミド樹脂を、成形性、耐熱性、靭性などの必要特性に応じて2種以上配合することも実用上好適である。
これらの中でも、後述する(B)化合物の分散性に優れることから脂肪族ポリアミドが好ましく、中でもポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド410が好ましい。上記した好ましいポリアミド樹脂は分子運動性が良いため、後述する(B)化合物の組成物中での拡散性がよい。そのため、得られる樹脂組成物の耐熱老化性が向上する。
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度(ηr)が1.5〜5.0の範囲であることが好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、強度と靭性のバランスに優れ、熱老化後の強度保持率、耐トラッキング性をより向上させることができる。相対粘度は、2.0以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。一方、相対粘度が5.0以下であれば、成形加工性に優れる。溶融混練時のせん断発熱を適度に抑えることができ、ポリマー劣化を抑制することができることから、耐熱老化性、耐トラッキング性、流動性をより向上させることができる。相対粘度は、4.5以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましい。
本発明に用いられる(B)化合物は、(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物および(b−2)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を反応させてなる、化合物および/または縮合物である。
まず、(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物(以下、水酸基含有化合物ということもある)および(b−2)2つ以上のエポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物ということもある)について説明する。
本発明の(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物とは、1分子中に3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物をいう。水酸基含有化合物は、流動性等の成形加工性や耐熱老化性、耐トラッキング性を向上させる効果がある。水酸基含有化合物としては、脂肪族化合物が好ましく、脂肪族化合物は、芳香族化合物および脂環族化合物に比べて立体障害性が低く、(b−2)エポキシ化合物のエポキシ基との反応性に優れることから、耐熱老化性、流動性をより向上させることができる。また、水酸基含有化合物の1分子中の水酸基数は、4以上が好ましく、6以上がさらに好ましい。水酸基含有化合物は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよいし、縮合物であってもよい。
1分子中の水酸基の数は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、ポリマーの場合は、水酸基含有化合物の数平均分子量と水酸基価を算出し、下記式(1)により求めることができる。
OH数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (1)
OH数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (1)
水酸基含有化合物の数平均分子量は、水酸基含有化合物が溶解する溶媒、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準物質として用いる。カラムは溶媒に合わせ、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを使用する場合には、島津ジーエルシー(株)製の「Shodex GPC HFIP−806M」および/または「Shodex GPC HFIP−LG」を用いて、検出器として示差屈折率計を用いて数平均分子量の測定を行うことができる。
水酸基含有化合物の水酸基価は、水酸基含有化合物を、無水酢酸と無水ピリジンの混合溶液でアセチル化して、それをエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定することにより求めることができる。
(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物の具体例としては、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチルプロパントリオール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、2−メチル−1,2,4−ブタントリオールなどを挙げることができる。また、3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物として、繰り返し構造単位を有する水酸基含有脂肪族化合物も挙げることができ、例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、メチレン結合、ビニル結合、イミン結合、シロキサン結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、ケイ素−ケイ素結合、カーボネート結合、スルホニル結合、イミド結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有脂肪族化合物が挙げられる。(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物は、これらの結合を2種以上含む繰り返し構造単位を含有してもよい。3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物として、エステル結合、エーテル結合および/またはアミド結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有脂肪族化合物がより好ましい。
エステル結合を有する繰り返し構造単位を有する3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物は、例えば、水酸基を1個以上有する脂肪族化合物に、カルボキシル基に隣接する炭素原子が飽和炭素原子であり、かつ該炭素原子上の水素原子がすべて置換され、かつ水酸基を2個以上有するモノカルボン酸を反応させることにより得ることができる。エーテル結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有脂肪族化合物は、例えば、水酸基を1個以上有する脂肪族化合物と水酸基を1個以上有する環状エーテル化合物の開環重合により得ることができる。エステル結合とアミド結合を有する繰り返し構造単位を有する3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物は、例えば、脂肪族アミノジオールと環状酸無水物との重縮合反応により得ることができる。アミノ基を含むエーテル結合を有する繰り返し構造単位を有する3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物は、例えば、トリアルカノールアミンの分子間縮合により得ることができる。カーボネート結合を有する繰り返し構造単位からなる3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物は、例えば、脂肪族多価アルコールのアリールカーボネート誘導体の重縮合反応により得ることができる。
3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物の中でも、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールが好ましい。
本発明に用いられる(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物は、水酸基とともに他の官能基を有していてもよい。他の官能基として例えば、アミノ基、アルデヒド基、スルホ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基、シリルエーテル基などが挙げられる。
次に、本発明に用いられる(b−2)エポキシ化合物について説明する。(b−2)エポキシ化合物は、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物をいう。(b−2)エポキシ化合物のエポキシ基は、(b−1)水酸基含有化合物の水酸基と反応することで(B)化合物を得ることができる。かかる(B)化合物により、耐熱老化性、耐トラッキング性、流動性をより向上させることができる。この理由については定かではないが、以下のように考えられる。つまり、水酸基含有化合物と、エポキシ化合物をあらかじめ反応させることにより、エポキシ化合物を連結点とした多分岐構造を有する(B)化合物が形成される。かかる(B)化合物は、多分岐構造を有することにより自己凝集力がより小さくなり、(A)ポリアミド樹脂との反応性および相溶性がより向上する。また、多分岐構造を有する(B)化合物の溶融粘度が向上することから、ポリアミド樹脂組成物中における(B)化合物の分散性がより向上する。このため、ポリアミド樹脂組成物中において微細な分散構造を形成させることができ、耐熱老化性、流動性をより向上させることができると考えられる。
(b−2)エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を2つ以上有することが好ましい。エポキシ基は(A)ポリアミド樹脂との相溶性に優れるため、1分子中にエポキシ基を2つ以上有する化合物は、(A)ポリアミド樹脂と(B)化合物の相溶性を高める効果があると考えられる。一方で、後述する(b−2)エポキシ化合物の分子量/1分子中のエポキシ基の数は300以上であり、300未満となるような(b−2)エポキシ化合物では、エポキシ基が過剰に存在する。そのため、架橋構造の形成が進行しやすくなるため、耐トラッキング性や流動性が低下することから、1分子中のエポキシ基は6つ以下が好ましく、4つ以下がさらに好ましい。エポキシ化合物は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよい。
1分子中のエポキシ基の数は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、ポリマーの場合は、エポキシ化合物の数平均分子量を、エポキシ当量で割ることにより求めることができる。
エポキシ化合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、算出することができる。エポキシ当量は、エポキシ化合物をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させた後、酢酸、テトラエチルアンモニウムブロミド/酢酸溶液を加え、滴定液として0.1Nの過塩素酸および指示薬としてクリスタルバイオレットを用い、溶解液の色が紫色から青緑色に変化した際の滴定量より、下記式(2)により算出できる。
エポキシ当量[g/eq]=W/((F−G)×0.1×f×0.001) (2)
但し、F:滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、G:ブランクの滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、f:0.1Nの過塩素酸のファクター、W:試料の質量[g]
エポキシ当量[g/eq]=W/((F−G)×0.1×f×0.001) (2)
但し、F:滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、G:ブランクの滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、f:0.1Nの過塩素酸のファクター、W:試料の質量[g]
本発明の実施形態の(b−2)エポキシ化合物のエポキシ基濃度を示す指標となる、分子量を1分子中のエポキシ基の数で割った値は、300以上であることを特徴とする。ここでいう「分子量」とは、先述した「数平均分子量」をいい、この値は小さいほどエポキシ基濃度が高いことを表す。エポキシ化合物の分子量を1分子中のエポキシ基の数で割った値が300未満の場合、(b−1)の水酸基含有化合物との過剰な反応によるゲル化(架橋)を促進し、得られる成形品の耐熱老化性、表面外観、耐トラッキング性、流動性が低下する。耐トラッキング性においては、(b−2)エポキシ化合物の分子量を1分子中のエポキシ基の数で割った値を300以上とすることで、電圧をかけた際の表面の炭化を遅延させることができるため好ましい。(b−2)エポキシ化合物の分子量を1分子中のエポキシ基の数で割った値は、500以上がより好ましく、800以上がさらに好ましい。(b−2)エポキシ化合物の分子量を1分子中のエポキシ基の数で割った値を800以上とすることにより、表面外観、耐トラッキング性をより向上させることができる。また、(b−2)エポキシ化合物の分子量を1分子中のエポキシ基の数で割った値が3000を超える場合、(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物の水酸基との反応を十分に確保することができず、得られる成形品の耐熱老化性、表面外観、耐トラッキング性が低下する。かかる観点からは、(b−2)エポキシ化合物の分子量を1分子中のエポキシ基の数で割った値は、3000以下が好ましく、2500以下が好ましく、2000以下がより好ましい。
本発明に用いられる(b−2)エポキシ化合物は、25℃において固形であるか、または25℃において200mPa・s以上の粘度を有する液状であることが好ましい。その場合、溶融混練時に所望の粘度にすることが容易となり、(b−2)エポキシ化合物と(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物の水酸基との反応性がより高くなる。このため、得られる成形品の耐熱老化性、表面外観がより向上する。(b−2)エポキシ化合物の具体例として、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジル基含有ビニル系重合体等を例示できる。これらを2種以上用いてもよい。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンとビスフェノールAから製造されるもの、エピクロロヒドリンとビスフェノールFから製造されるもの、エピクロロヒドリンとテトラブロモビスフェノールAから誘導されるいわゆる臭素化エポキシ樹脂、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどが例示される。
脂環式エポキシ樹脂としては、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基、シクロペンテンオキサイド基を有する化合物などが例示される。
グリシジル基含有ビニル系重合体としては、グリシジル基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーをラジカル重合したものが挙げられる。グリシジル基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、p−スチリルカルボン酸グリシジルなどの不飽和モノカルボン酸のグリシジルエステル、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ポリカルボン酸のモノグリシジルエステルまたはポリグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテルなどが挙げられる。
その他、エチレン、アクリル、スチレン、シリコーン、エチレングリコールなどの高分子量体を主成分とする多官能エポキシ化合物なども挙げられる。
(b−2)エポキシ化合物の市販品としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、三菱化学(株)製“jER”(登録商標)「1004」など)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(例えば、三菱化学(株)製“jER”(登録商標)「4004P」など)、ポリエチレンを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、住友化学(株)製「“ボンドファスト”(登録商標)E」)、アクリルを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、東亞合成(株)製「“レゼダ”(登録商標)GP−301」、東亞合成(株)製「“ARUFON”(登録商標)UG−4000」、三菱レイヨン(株)製「“メタブレン”(登録商標)KP−7653」など)、アクリル・スチレン共重合体を主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、BASF社製「“Joncryl”(登録商標)−ADR−4368」、東亞合成(株)製「“ARUFON”(登録商標)UG−4040」など)、シリコーン・アクリル共重合体を主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、「“メタブレン”(登録商標)S−2200」など)、ポリエチレングリコールを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、日油(株)製“エピオール”(登録商標)「E−1000」など)などが挙げられる。
次に、本発明における(B)化合物について説明する。本発明における(B)化合物は(b−1)水酸基含有化合物および(b−2)エポキシ化合物を反応させてなる、化合物および/または縮合物である。
本発明のより好ましい実施態様において、(B)化合物は、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物が好ましい。
上記一般式(3)中、X1〜X6はそれぞれ同一でも異なってもよく、OH、CH3またはORを表す。ただし、OHとORの数の和は3以上であり、かつ、OHの数は3以上である。また、Rはエポキシ基を有する有機基を表し、nは0〜20の範囲を表す。
一般式(3)中におけるRは、エポキシ基を有する有機基を表す。エポキシ基を有する有機基としては、上述の(b−2)エポキシ化合物の具体例として列挙したエポキシ化合物が挙げられる。一般式(3)におけるnは0〜20の範囲を表す。nが20以下とすることで、耐熱老化性、耐トラッキング性、流動性をより向上させることができる。nは4以下がより好ましい。一方、nは1以上がより好ましく、(B)化合物の分子運動性を高めることができ、(A)ポリアミド樹脂との相溶性をさらに向上させることができる。
一般式(3)中のOHとORの数の和は3以上であることが好ましい。それにより、(A)ポリアミド樹脂との相溶性に優れ、耐熱老化性、耐トラッキング性をより向上させることができる。ここで、OHとORの数の和は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。
また、縮合物の場合、OH数は、一般式(3)で表される構造を有する縮合物の数平均分子量と水酸基価を算出し、下記式(1)により求めることができる。
OH数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (1)
OH数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (1)
また、縮合物の場合、ORの数は、一般式(3)で表される構造を有する縮合物の数平均分子量をエポキシ当量で割った値により算出することができる。一般式(3)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、算出することができる。具体的には、以下の方法により算出することができる。一般式(3)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物が溶解する溶媒、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準物質として用いる。カラムは溶媒に合わせ、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを使用する場合には、島津ジーエルシー(株)製の「Shodex GPC HFIP−806M」および/または「Shodex GPC HFIP−LG」を用いて、検出器として示差屈折率計を用いて数平均分子量の測定を行うことができる。OH数、エポキシ当量は、先述した方法を用いることができる。
本発明に用いられるポリアミド樹脂組成物において、(B)化合物の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部(0.1重量部以上20重量部以下)である。(B)水酸基含有化合物の含有量が0.1重量部未満であると、耐熱老化性、表面外観、流動性が低下する。(B)化合物の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上がより好ましく、2.5重量部以上がさらに好ましい。一方、(B)化合物の配合量が20重量部を超える場合、ポリアミド樹脂組成物中における(B)化合物の分散性が低下するため、耐熱老化性が低下する。(B)化合物の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、7.5重量部以下がより好ましく、6重量部以下がさらに好ましい。
本発明に用いられるポリアミド樹脂組成物において、(B)化合物は、(b−1)水酸基含有化合物と(b−2)エポキシ化合物とを反応させて得られることは先に説明した通りだが、その製造方法は特に限定されない。(b−1)水酸基含有化合物と、(b−2)エポキシ化合物をドライブレンドし、両成分の融点よりも高い温度で溶融混練する方法が好ましい。
水酸基と、エポキシ基との反応を促進するために、触媒を添加することも好ましい。触媒の添加量は特に限定されず、3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物と、エポキシ化合物の合計100重量部に対し、0〜1重量部が好ましく、0.01〜0.3重量部がより好ましい。
水酸基とエポキシ基の反応を促進する触媒としては、ホスフィン類、イミダゾール類、アミン類、ジアザビシクロ類などが挙げられる。ホスフィン類の具体例としては、トリフェニルホスフィン(TPP)などが挙げられる。イミダゾール類の具体例としては、2−ヘプタデシルイミダゾール(HDI)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾールなどが挙げられる。アミン類の具体例としては、N−ヘキサデシルモルホリン(HDM)、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、トリブチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5(DBN)、トリスジメチルアミノメチルフェノール、テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン(DABCO)などが挙げられる。
(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化物と、(b−2)エポキシ化合物とを溶融混練することにより、水酸基と、エポキシ基が反応する。また、3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物間で脱水縮合反応も生じる。このようにして多分岐構造の(B)水酸基含有化合物を得ることができる。
(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物と、(b−2)エポキシ化合物を反応させて(B)化合物を作製する場合、これらの配合比は特に限定されないが、(b−1)水酸基含有化合物の1分子中の水酸基の数の和が、(b−2)エポキシ化合物の1分子中のエポキシ基の数の和よりも多くなるようにこれら化合物を配合することが好ましい。エポキシ基は、水酸基と比較して、(A)ポリアミド樹脂の末端基との反応性に優れる。このため、(b−1)水酸基含有化合物の1分子中の水酸基の数の和を、(b−2)エポキシ化合物の1分子中のエポキシ基の数の和よりも多くすることにより、過剰な架橋構造の形成による脆化を抑制し、耐トラッキング性をより向上させることができる。
また、(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物に対する、(b−2)エポキシ化合物の重量比((エポキシ基含有化合物)/(水酸基含有化合物))は、0.01以上1未満が好ましい。
重量比を0.01以上とすることで、(b−1)水酸基含有化合物の水酸基と(b−2)エポキシ化合物のエポキシ基との反応による多分岐構造を形成することができるため、(B)化合物の自己凝集力が小さく、(A)ポリアミド樹脂との反応性および相溶性が向上し、耐熱老化性、流動性を向上させることができる。重量比は、0.05以上がより好ましく、0.1以上がさらに好ましい。一方、重量比が1未満とすることで、(b−1)水酸基含有化合物の水酸基と(b−2)エポキシ化合物のエポキシ基との過剰な反応による架橋の生成を抑制し、耐トラッキング性、流動性を向上させることができる。重量比は、0.7以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましい。
(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物と、(b−2)エポキシ化合物を反応させて(B)化合物を作製する場合、水酸基と、エポキシ基の反応率は、1〜50%であることを特徴とする。反応率が1%未満の場合、(B)化合物は、多分岐構造を形成することが難しく自己凝集力が大きくなってしまうため、(A)ポリアミド樹脂との反応性および相溶性が低下する。そのため、耐熱老化性、流動性を向上させることができない。反応率は10%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。一方、反応率が50%を超える場合、架橋構造の形成が進行しやすくなるため、耐トラッキング性、流動性、難燃性が低下する。特に電圧をかけた際の表面の炭化を遅延させる観点から、反応率は45%以下がより好ましく、40%以下がさらに好ましい。
水酸基と、エポキシ基の反応率は、反応により得られた(B)化合物を、溶媒(例えば重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールなど)に溶解し、エポキシ基の場合は1H−NMR測定によりエポキシ環由来ピークについて、原料として用いた水酸基含有化合物との反応前後の減少量を求めることにより、算出することができる。反応率は、下記式(4)により求めることができる。
反応率(%)={1−(e/d)}×100 (4)
反応率(%)={1−(e/d)}×100 (4)
上記式(4)中、dは、原料として用いた3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物と、エポキシ化合物をドライブレンドしたもののピーク面積を表し、eは反応により得られた(B)化合物のピーク面積を表す。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、(C)金属および/またはその塩を0.001〜1重量部(0.001重量部以上1重量部以下)含有することが好ましい。本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂を大気下で熱処理または溶融させた際に分解によって生じるラジカルを補足すること、入手が容易であることから、(C)金属および/またはその塩の金属は、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、マンガン、コバルト、クロムおよびスズからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
(C)金属および/またはその塩の形態としては、金属単体、または塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン化物、酸化物、硫化物、窒化物などの無機金属塩、または有機化合物を含む有機金属塩が挙げられ、特にハロゲン化物が好ましい。
(C)金属および/またはその塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、酸化銅、硫化銅、窒化銅などの銅塩類、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、酸化鉄、硫化鉄、窒化鉄などの鉄塩類、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、窒化亜鉛などの亜鉛塩類、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、酸化ニッケル、硫化ニッケル、窒化ニッケルなどのニッケル塩類、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、酸化マンガン、硫化マンガン、窒化マンガンなどのマンガン塩類、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、酸化コバルト、硫化コバルト、窒化コバルトなどのコバルト塩類、塩化クロム、臭化クロム、ヨウ化クロム、酸化クロム、硫化クロム、窒化クロムなどのクロム塩類、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、酸化スズ、硫化スズ、窒化スズなどのスズ塩類、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、(C)金属および/またはその塩の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部が好ましい。(C)金属および/またはその塩の配合量が0.001重量部以上の場合には、耐熱老化性、表面外観をよりの向上させることができる。0.005重量部以上が好ましく、0.01重量部以上がより好ましい。また、(C)金属および/またはその塩の配合量が1重量部以下の場合には、(C)金属および/またはその塩の溶出に伴うポリアミド樹脂組成物の表面外観、耐トラッキング性の低下を抑制することができる。0.5重量部以下が好ましく、0.3重量部以下がより好ましく、0.2重量部以下がさらに好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、(D)下記式(5)で表される化合物0.001〜1重量部含有することが好ましい。
QX (5)
(式(5)中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す)また、式(5)中QXは、炭素、窒素、硫黄間で結合していてもよく、縮合環を形成していてもよい。
QX (5)
(式(5)中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す)また、式(5)中QXは、炭素、窒素、硫黄間で結合していてもよく、縮合環を形成していてもよい。
本発明に用いられる(D)化合物は、式(5)中のQが芳香環、脂環化合物から選ばれる1種であり、芳香環では、炭素数6から14が好ましく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンが挙げられ、特に耐熱老化性、難燃性の面からベンゼンであることが好ましい。脂環化合物は、炭素数5から14の脂環化合物が好ましく、シクロアルカン、ポリシクロアルカン、それらの不飽和化合物などが挙げられ、特に耐熱老化性、難燃性の面からシクロヘキサンが好ましい。
本発明に用いられる(D)化合物は、式(5)中のXが5員環または6員環の複素環化合物であり、例えば、フラン、ピロール、ピリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、およびピラゾールなどが挙げられる。特に耐熱老化性、難燃性、耐トラッキング性の面からイミダゾール、オキサゾール、およびチアゾールから選ばれた化合物であることが好ましい。
本発明に用いられる(D)化合物は、式(5)中のXが置換基を有していることが好ましく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、カルボキシル基、スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基が好ましく挙げられ、反応性の観点から特にチオール基が好ましい。
本発明に用いられる(D)化合物は、2−メルカプトベンゾイミダゾールおよび/または2−メルカプトベンゾチアゾールであることが、耐熱老化性、難燃性、耐トラッキング性の面から好ましい。2−メルカプトベンゾイミダゾールが、耐熱老化性、耐トラッキング性の面から好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、(D)化合物の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部(0.001重量以上1重量部以下)である。(D)化合物の配合量が0.001重量部以上の場合には、(C)金属および/またはその塩の分散性が向上し、耐熱老化性、難燃性、耐トラッキング性の向上効果が十分得られない。0.005重量部以上が好ましく、0.01重量部以上がより好ましい。また、(D)化合物の配合量が1重量部を越える場合には、難燃性の低下を起こす。0.5重量部以下が好ましく、0.2重量部以下がより好ましく、0.1重量部以下がさらに好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(C)金属および/またはその塩と(D)化合物を併用して配合することが好ましい。従来の銅化合物のみの配合の場合には、(A)ポリアミド樹脂表面で銅化合物が導電性経路を生成し耐トラッキング性が低下する課題があった。しかし(C)金属および/またはその塩と(D)化合物を併用して配合することにより、銅化合物に(D)化合物が配位し、(A)ポリアミド樹脂中での(C)金属および/またはその塩の分散性が向上し、(C)金属および/またはその塩のラジカル捕捉能が向上することで熱老化性が向上する効果に加え、銅化合物による、(A)ポリアミド樹脂表面での導電性経路の生成を抑制することができるため、本願の特徴である耐熱老化性、難燃性を向上するばかりか、耐トラッキング性も改善することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、(C)金属および/またはその塩と(D)化合物の重量比((C)/(D))は、1.0以下が好ましい。重量比((C)/(D))を1.0以下とすることにより、(C)金属および/またはその塩へ(D)化合物が十分配位し、耐熱老化性、耐トラッキング性をより向上させることができる。0.8以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。一方、重量比((C)/(D))の下限に関して特に制限はないが、0.05以上とすることにより、表面外観、難燃性の低下を抑えることができる。0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、さらに(E)難燃剤を、0.1〜50重量部含有することを特徴とする。本発明に用いられる(E)難燃剤は、本発明のポリアミド樹脂組成物に難燃性を付与できる物であれば特に限定されない。具体的には、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、水酸化マグネシウムなどのハロゲン原子を含まない非ハロゲン系難燃剤や、臭素系難燃剤などのハロゲン系難燃剤などを挙げることができ、これらの難燃剤を2種以上配合してもよい。中でも、環境面や、少量でも難燃性効果が得られることからハロゲン系難燃剤よりも、非ハロゲン系難燃剤が好ましく、窒素系難燃剤がより好ましい。
リン系難燃剤としては、リン元素を含有する化合物であり、具体的には、赤燐、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミンなどのポリリン酸系化合物、(ジ)ホスフィン酸金属塩、ホスファゼン化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステルなどが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。これらの中でも、(ジ)ホスフィン酸金属塩、ホスファゼン化合物、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、ハロゲン化リン酸エステルが好ましい。
窒素系難燃剤としては、例えば、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物との塩などが挙げられる。シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物との塩とは、シアヌール酸またはイソシアヌール酸とトリアジン系化合物との付加物であり、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の付加物である。トリアジン系化合物としては、例えば、メラミン、モノ(ヒドロキシメチル)メラミン、ジ(ヒドロキシメチル)メラミン、トリ(ヒドロキシメチル)メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、2−アミド−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジンなどが挙げられ、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンが好ましい。トリアジン系化合物とシアヌール酸またはイソシアヌール酸との塩の具体例としては、メラミンシアヌレート、モノ(β−シアノエチル)イソシアヌレート、ビス(β−シアノエチル)イソシアヌレート、トリス(β−シアノエチル)イソシアヌレートなどが挙げられ、とりわけメラミンシアヌレートが好ましい。
窒素系難燃剤の平均粒径は、50μm以下が好ましい。より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。窒素系難燃剤の平均粒径を50μm以下とすることで、耐熱老化性、耐トラッキング性、難燃性をより向上させることができる。窒素系難燃剤の平均粒径は0.3μm以上が好ましい。より好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは1.0μm以上である。窒素系難燃剤の平均粒径を0.3μm以上とすることで、流動性をより向上させることができる。平均粒径(D50)は、特に限定されるものではないが、例えば、レーザー回折散乱法によって測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱法により、横軸に粒子径を縦軸に頻度(質量)をとってプロットし、該頻度の累積質量の総和を100%とした時に累積質量が50%となる粒子径として測定することができる。
水酸化マグネシウムは通常市販されているものであり、粒子径、形状など特に限定されるものではないが、粒子径が0.1〜20μmで、球状、針状または小板状のものが好ましい。水酸化マグネシウムは、表面処理が施されていてもいなくてもよい。表面処理方法としては、例えば、シランカップリング剤、アニオン界面活性剤、多官能性有機酸、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂により被覆する方法などが挙げられる。
臭素系難燃剤としては、化学構造中に臭素を含有する化合物であれば特に制限はなく、通常公知の難燃剤を使用することができる。例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールAなどのモノマー系有機臭素化合物、臭素化ポリカーボネート(例えば、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマーあるいはそのビスフェノールAとの共重合物)、臭素化エポキシ化合物(例えば、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物や臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物)、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌールおよび臭素化フェノールの縮合物、臭素化ポリスチレン、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレンなどの臭素化ポリスチレン、架橋または非架橋臭素化ポリα−メチルスチレンなどのハロゲン化されたポリマー系臭素化合物などが挙げられる。なかでもエチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルおよび臭素化ポリカーボネートが好ましく、臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテルおよび臭素化ポリカーボネートがより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、上記難燃剤と相乗的に難燃性を向上させる難燃助剤を配合してもよい。難燃助剤の配合量は、難燃性をより向上させる観点から、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.2〜30重量部が好ましい。難燃助剤としては、三酸化アンチモン好ましい。
ここで、本発明における(E)難燃剤は、上記したように(E)として例示列挙したものを指し、前述の(C)金属および/またはその塩、および(D)は除くものとする。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、(E)難燃剤の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部(0.1重量部以上50重量部以下)である。(B)難燃剤の配合量が0.1重量部に満たない場合には、成形品の難燃性が低下する。0.5重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましい。また、(E)難燃剤の配合量が50重量部を超える場合には、ポリアミド樹脂組成物の表面外観、流動性が著しく低下する。30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下がさらに好ましい。
本発明に用いられる(E)難燃剤としては、成形品の耐熱老化性、耐トラッキング性、難燃性をより向上させる観点から、特に窒素系難燃剤が好ましく用いられる。前記特性向上の理由は定かではないが、耐トラッキング低下の要因となる炭化層が形成しがたいためと推定する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに充填材を配合させることができる。充填材としては、例えば、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を挙げることができる。具体的には、ガラス繊維、、芳香族ポリアミド繊維や液晶性ポリエステル繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、針状酸化チタンなどの繊維状またはウィスカー状充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、ガラスビーズ、ガラスフレーク、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウムおよび黒鉛などの粉状、粒状あるいは板状の充填材が挙げられる。本発明に使用される上記の充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理されていてもよい。
これら充填材のなかで、特にガラス繊維が好ましく、ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものならば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランドおよびミルドファイバーなどから選択して用いることができる。本発明で使用されるガラス繊維としては、弱アルカリ性のものが機械的強度の点で好ましい。特に酸化ケイ素含有量が50〜80重量%のガラス繊維が好ましく用いられ、より好ましくは酸化ケイ素含有量が65〜77重量%のガラス繊維である。また、ガラス繊維はエポキシ系、ウレタン系、アクリル系などの被覆あるいは収束剤で処理されていることが好ましく、エポキシ系が特に好ましい。またシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で処理されていることが好ましく、エポキシシラン、アミノシラン系のカップリング剤が特に好ましい。なおガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。また上記充填材は2種以上を併用してもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、充填材の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、1〜150重量部が好ましい。充填材の配合量が1重量部以上の場合には、機械特性の向上効果が得られる。10重量部以上が好ましく、20重量部以上がより好ましい。また、充填材の配合量が150重量部以下の場合には、機械特性、流動性低下が起こりにくい。100重量部以下が好ましく、70重量部以下がより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲でさらに酸化防止剤、熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(例えば、レゾルシノール、サリシレート)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料または顔料を含む着色剤、あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、および可塑剤から選択される通常の添加剤を配合することが出来る。あるいは、ポリアミド樹脂以外の重合体を配合して、所定の特性をさらに付与することができる。
本発明において、(A)ポリアミド樹脂に、(B)化合物、(E)難燃剤、およびその他の添加剤を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、ドライブレンドや溶液配合法、(A)ポリアミド樹脂の重合時添加、溶融混練などが用いることができ、なかでも溶融混練が好ましい。溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、(A)ポリアミド樹脂の融点以上であって、融点+50℃以下で溶融混練して樹脂組成物とすることができる。なかでも二軸押出機が好ましい。
かくして得られるポリアミド樹脂組成物は、射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形などの公知の溶融成形を行うことによって、優れた耐熱老化性、表面外観、耐トラッキング性、流動性、難燃性を有する成形品に加工することが可能である。ここでいう成形品としては、射出成形品、押出成形品、プレス成形品、シート、パイプ、未延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムなどの各種フィルム、未延伸糸、超延伸糸などの各種繊維などが挙げられる。特に射出成形とした場合に本発明の効果が顕著に得られ好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、高温環境下での耐トラッキング性に優れる。トラッキング性とは、絶縁物の表面での微小放電が繰り返されることによって絶縁物表面に導電性の経路が生成され、絶縁破壊に至る現象である。絶縁物のトラッキングの起こしにくさを示す値として、一般的に耐トラッキング性(Comparative Tracking Index:CTI)が用いられている。
本発明のポリアミド樹脂組成物からなる成形品(80mm×80mm×3mm厚の角板)を国際電気標準会議規格IEC−60112/3に準拠して測定した比較トラッキング指数(CTI)が500ボルト以上であることが好ましい。500ボルト未満の場合には、高温下での難燃性や絶縁信頼性が低下する。550ボルト以上が好ましく、600ボルト以上がより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、その優れた特性を活かし、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器など各種用途に利用することができる。本発明のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、耐熱老化性、耐トラッキング性、難燃性が要求される自動車エンジン周辺部品、自動車アンダーフード部品、自動車ギア部品、自動車内装部品、自動車外装部品、吸排気系部品、エンジン冷却水系部品や、自動車電装部品、電気・電子部品用途に特に好ましく用いられる。具体的には、本発明のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、エンジンカバー、エアインテークパイプ、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、フィラーキャップ、スロットルボディ、クーリングファンなどの自動車エンジン周辺部品、クーリングファン、ラジエータータンクのトップおよびベース、シリンダーヘッドカバー、オイルパン、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、廃ガス系統部品などの自動車アンダーフード部品、ギア、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、ベアリングケージ、チェーンガイド、チェーンテンショナなどの自動車ギア部品、シフトレバーブラケット、ステアリングロックブラケット、キーシリンダー、ドアインナーハンドル、ドアハンドルカウル、室内ミラーブラケット、エアコンスイッチ、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、トリムなどの自動車内装部品、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、シリンダーヘッドカバー、ドアミラーステイ、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、リアガーニッシュ、リアスポイラー、トランクリッド、ロッカーモール、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの自動車外装部品、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、ターボチャージャ、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディなどの吸排気系部品、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター、及びデリバリーパイプなどのエンジン冷却水系部品、コネクタやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、コンビネーションスイッチ、HEV・EV駆動、パワーステアリング関連などの自動車電装部品、電気・電子部品としては、例えば、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、抵抗器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、スイッチ、ナイフスイッチ、他極ロッド、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、ICやLED対応ハウジング、コンデンサー座板、ヒューズホルダー、各種ギア、各種ケース、キャビネットなどの電気部品、コネクター、SMT対応のコネクタ、カードコネクタ、ジャック、コイル、コイルボビン、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレー、リレーケース、リフレクター、小型スイッチ、電源部品、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップシャーシ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、SiパワーモジュールやSiCパワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などの電子部品、太陽電池、風力等の新エネルギー関連部品、電鉄用部品、クリップ、クランプ、バンドなどの配線、コード、チューブ、各種部品を連結あるいは束ねる部品などに好ましく用いられる。とりわけ高温環境下で高電圧が印加される部品に利用することができ、例えば、コネクター、基盤、スイッチ、プラグ、電磁開閉器、電気ブレーカー筐体、トランジスタやインバーターのケース等の各種電気・電子部品、HEV・EV駆動、パワーステアリング関連等の自動車部品、太陽電池、風力等の新エネルギー関連部品、電鉄用部品、各種家電製品の部品や、それらの周辺の基盤や筐体、ケース、モジュール部品等の金属との接点部を有する成形部品が好ましく利用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。特性評価は下記の方法に従って行った。
[(b−1)中のOHの数の測定方法]
1分子中の水酸基の数は、(b−1)水酸基含有化合物の数平均分子量と水酸基価を算出し、下記式(1)により求めることができる。
OH数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (1)
1分子中の水酸基の数は、(b−1)水酸基含有化合物の数平均分子量と水酸基価を算出し、下記式(1)により求めることができる。
OH数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (1)
(b−1)水酸基含有化合物の数平均分子量は、(b−1)水酸基含有化合物2.5mgを、ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)4mlに溶解し、0.45μmのフィルターでろ過して得られた溶液を測定に用いた。測定条件を以下に示す。
装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters製)
検出器:示差屈折率計Waters410(Waters製)
カラム:Shodex GPC HFIP−806M(2本)+HFIP−LG(島津ジーエルシー(株))
流速:0.5ml/min
試料注入量:0.1ml
温度:30℃
分子量校正:ポリメチルメタクリレート
装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters製)
検出器:示差屈折率計Waters410(Waters製)
カラム:Shodex GPC HFIP−806M(2本)+HFIP−LG(島津ジーエルシー(株))
流速:0.5ml/min
試料注入量:0.1ml
温度:30℃
分子量校正:ポリメチルメタクリレート
水酸基含有化合物の水酸基価は、(b−1)水酸基含有化合物を0.5g採取し、250ml三角フラスコに加え、次いで、無水酢酸と無水ピリジンを1:10(質量比)に調整・混合した溶液20.00mlを採取し、前記三角フラスコに入れ、還流冷却器を取り付けて、100℃に温調したオイルバス下で20分間、撹拌しながら還流させた後、室温まで冷却した。さらに、前記三角フラスコ内に冷却器を通じてアセトン20ml、蒸留水20mlを加えた。これにフェノールフタレイン指示薬を入れて、0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液により滴定した。なお、別途測定したブランク(試料を含まない)の測定結果を差し引き、下記式(6)により水酸基価を算出した。
水酸基価[mgKOH/g]=[((B−C)×f×28.05)/S]+E (6)但し、B:滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、C:ブランクの滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、f:0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量[g]、E:酸価を表す。
水酸基価[mgKOH/g]=[((B−C)×f×28.05)/S]+E (6)但し、B:滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、C:ブランクの滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、f:0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量[g]、E:酸価を表す。
[(b−2)中のエポキシ基の数の測定方法]
1分子中のエポキシ基の数は、エポキシ化合物の数平均分子量を、エポキシ当量で割ることにより求めることができる。
1分子中のエポキシ基の数は、エポキシ化合物の数平均分子量を、エポキシ当量で割ることにより求めることができる。
エポキシ化合物の数平均分子量は、(b−2)エポキシ化合物2.5mgを、ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)4mlに溶解し、0.45μmのフィルターでろ過して得られた溶液を測定に用いた。測定条件を以下に示す。
装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters製)
検出器:示差屈折率計Waters410(Waters製)
カラム:Shodex GPC HFIP−806M(2本)+HFIP−LG(島津ジーエルシー(株))
流速:0.5ml/min
試料注入量:0.1ml
温度:30℃
分子量校正:ポリメチルメタクリレート
装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters製)
検出器:示差屈折率計Waters410(Waters製)
カラム:Shodex GPC HFIP−806M(2本)+HFIP−LG(島津ジーエルシー(株))
流速:0.5ml/min
試料注入量:0.1ml
温度:30℃
分子量校正:ポリメチルメタクリレート
エポキシ当量は、エポキシ化合物400mgを、ヘキサフルオロイソプロパノール30mlに溶解させた後、酢酸20ml、テトラエチルアンモニウムブロミド/酢酸溶液(=50g/200ml)を加え、滴定液として0.1Nの過塩素酸および指示薬としてクリスタルバイオレットを用い、溶解液の色が紫色から青緑色に変化した際の滴定量より、下記式(2)により算出した。
エポキシ当量[g/eq]=W/((F−G)×0.1×f×0.001) (2)
但し、F:滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、G:ブランクの滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、f:0.1Nの過塩素酸のファクター、W:試料の質量[g]
エポキシ当量[g/eq]=W/((F−G)×0.1×f×0.001) (2)
但し、F:滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、G:ブランクの滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、f:0.1Nの過塩素酸のファクター、W:試料の質量[g]
[(B)化合物の反応率]
(B)化合物0.035gを重水素化ジメチルスルホキシド0.7mlに溶解し、を1H−NMRで測定した。分析条件は下記の通りである。(1)1H−NMR
装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
観測周波数:OBFRQ399.65MHz、OBSET124.00KHz、OBFIN10500.00Hz
積算回数:256回
(B)化合物0.035gを重水素化ジメチルスルホキシド0.7mlに溶解し、を1H−NMRで測定した。分析条件は下記の通りである。(1)1H−NMR
装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
観測周波数:OBFRQ399.65MHz、OBSET124.00KHz、OBFIN10500.00Hz
積算回数:256回
得られた1H−NMRスペクトルより、エポキシ環由来ピークの面積を求めた。なお、ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。(b−1)水酸基含有化合物と、(b−2)エポキシ化合物をドライブレンドしたもののピーク面積をdとし、(B)化合物のピーク面積をeとし、反応率は、下記式(4)により算出した。
反応率(%)={1−(e/d)}×100 (4)。
反応率(%)={1−(e/d)}×100 (4)。
[耐熱老化試験(引張強度保持率)]
各実施例および比較例により得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−DUZ)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、ISOダンベル片を射出成形した。この試験片について、ISO527に従い23℃で引張強度を評価した。3回測定を行いその平均値を引張強度として算出した。
各実施例および比較例により得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−DUZ)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、ISOダンベル片を射出成形した。この試験片について、ISO527に従い23℃で引張強度を評価した。3回測定を行いその平均値を引張強度として算出した。
さらに、前記引張試験で作成したISOダンベル片を、190℃の熱風オーブンで1000時間熱処理(耐熱老化処理)し、処理後の試験片について、前記同様の引張試験を行い、3回の測定値の平均値を耐熱老化処理後の引張強度として算出した。耐熱老化処理前の引張強度に対する処理後の引張強度の比を、引張強度保持率として算出した。引張強度保持率が大きいほど、耐熱老化性に優れる。
[表面外観(未処理品の表面粗さ(Ra)と熱処理前後の表面粗さ変化(ΔRa)]
各実施例および比較例により得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−DUZ)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、80mm×80mm×3mm厚の角板(フィルムゲート)を射出成形した。得られた角板表面の任意の3点において、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ10mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で算術平均粗さ(Ra)値を測定し、その平均値を算出した。
各実施例および比較例により得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−DUZ)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、80mm×80mm×3mm厚の角板(フィルムゲート)を射出成形した。得られた角板表面の任意の3点において、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ10mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で算術平均粗さ(Ra)値を測定し、その平均値を算出した。
さらに、前記表面粗さで作成した角板を190℃の熱風オーブンで1000時間熱処理(耐熱老化処理)し、処理後の角板について、前記同様の表面粗さ測定を行い、耐熱老化処理後の表面粗さ値として算出した。耐熱老化処理後の表面粗さ値から処理前の表面粗さ値を引いたものを表面粗さ変化(ΔRa)として算出した。表面粗さ変化が小さいほど、表面外観に優れる。
[耐トラッキング性(Comparative Tracking Index:CTI)]
上記表面粗さで作成した190℃の熱風オーブンで1000時間熱処理(耐熱老化処理)した角板を使用し、IEC60112(1996年)に従い、電解液を滴下しながら電圧を加え、トラッキング破壊電圧を測定した。また破壊電圧より6段階のクラス(Performance Level Category:PLC)に分類した。CTI値が高いほど、耐トラッキング性に優れる。
上記表面粗さで作成した190℃の熱風オーブンで1000時間熱処理(耐熱老化処理)した角板を使用し、IEC60112(1996年)に従い、電解液を滴下しながら電圧を加え、トラッキング破壊電圧を測定した。また破壊電圧より6段階のクラス(Performance Level Category:PLC)に分類した。CTI値が高いほど、耐トラッキング性に優れる。
[難燃性]
各実施例および比較例により得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−DUZ)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、1/32インチ(約0.75mm)厚みの燃焼試験片を射出成形した。この試験片について、UL94に従って垂直燃焼試験を行った。難燃性レベルは、V−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
各実施例および比較例により得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−DUZ)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、1/32インチ(約0.75mm)厚みの燃焼試験片を射出成形した。この試験片について、UL94に従って垂直燃焼試験を行った。難燃性レベルは、V−0>V−1>V−2>HBの順に低下する。
[流動性]
各実施例および比較例により得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−DUZ)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、200mm長×10mm幅×0.5mm厚の金型を用いて射出成形し、10mm幅×0.5mm厚の棒流動試験片を作製した。各5サンプルについて保圧0における棒流動長を測定し、その平均値を求め、流動性を評価した。流動長が長いほど流動性に優れることを示している。
各実施例および比較例により得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−DUZ)を用いて、シリンダー温度:(A)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、200mm長×10mm幅×0.5mm厚の金型を用いて射出成形し、10mm幅×0.5mm厚の棒流動試験片を作製した。各5サンプルについて保圧0における棒流動長を測定し、その平均値を求め、流動性を評価した。流動長が長いほど流動性に優れることを示している。
参考例1(B−1)化合物
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中のエポキシ基の数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度180℃、スクリュー回転数300rpmの条件で0.9分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットの反応率は0.4%であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中のエポキシ基の数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度180℃、スクリュー回転数300rpmの条件で0.9分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットの反応率は0.4%であった。
参考例2(B−2)化合物
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中のエポキシ基の数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数300rpmの条件で0.9分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は5%であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中のエポキシ基の数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数300rpmの条件で0.9分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は5%であった。
参考例3(B−3)化合物
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中のエポキシ基の数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件で2.4分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は30%であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中のエポキシ基の数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件で2.4分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は30%であった。
参考例4(B−4)化合物
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中のエポキシ基の数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpmの条件で3.0分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は45%であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中のエポキシ基の数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpmの条件で3.0分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は45%であった。
参考例5(B−5)化合物
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中のエポキシ基の数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は56%であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中のエポキシ基の数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は56%であった。
参考例6(B−6)化合物
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1007、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量2900、分子量/1分子中のエポキシ基の数1450)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件で2.4分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は29%であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1007、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量2900、分子量/1分子中のエポキシ基の数1450)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件で2.4分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は29%であった。
参考例7(B−7)化合物
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1010、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量5500、分子量/1分子中のエポキシ基の数2750)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件で2.4分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は27%であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1010、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量5500、分子量/1分子中のエポキシ基の数2750)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件で2.4分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は27%であった。
参考例8(B−8)化合物
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1001、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量850、分子量/1分子中のエポキシ基の数425)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件で2.4分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は32%であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1001、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量850、分子量/1分子中のエポキシ基の数425)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件で2.4分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は32%であった。
参考例9(B−9)化合物
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)825、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量340、分子量/1分子中のエポキシ基の数170)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件で2.4分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は35%であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)825、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量340、分子量/1分子中のエポキシ基の数170)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件で2.4分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は35%であった。
参考例10(B−10)化合物
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の個数7個、分子量1330、分子量/1分子中のエポキシ基の数190)10重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数300rpmの条件で0.9分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は2%であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の個数7個、分子量1330、分子量/1分子中のエポキシ基の数190)10重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数300rpmの条件で0.9分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は2%であった。
参考例11(B−11)化合物
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の個数7個、分子量1330、分子量/1分子中のエポキシ基の数190)10重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件で2.4分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は32%であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の個数7個、分子量1330、分子量/1分子中のエポキシ基の数190)10重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数200rpmの条件で2.4分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は32%であった。
参考例12(B−12)化合物
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の個数7個、分子量1330、分子量/1分子中のエポキシ基の数190)10重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は55%であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、1分子中の水酸基の個数6個)100重量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の個数7個、分子量1330、分子量/1分子中のエポキシ基の数190)10重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行いペレットを得た。得られた化合物の反応率は55%であった。
その他、本実施例および比較例に用いた(A)ポリアミド樹脂、(B)化合物、(C)金属および/またはその塩、(D)環含有化合物、(E)難燃剤、(F)ガラス繊維は以下の通りである。
(A)ポリアミド樹脂
(A−1):融点225℃のナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1017)
(A−2):融点260℃のナイロン66樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3001−N)。
(A−1):融点225℃のナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1017)
(A−2):融点260℃のナイロン66樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3001−N)。
(C)金属および/またはその塩
(C−1)ヨウ化銅(I)(関東化学製)。
(C−1)ヨウ化銅(I)(関東化学製)。
(D)環含有化合物
(D−1)2−メルカプトベンゾイミダゾール(東京化成工業製)。
(D−1)2−メルカプトベンゾイミダゾール(東京化成工業製)。
(E)難燃剤
(E−1):メラミンシアヌレート(日産化学工業製MC−6000、平均粒径2μm)
(E−2):ホスフィン酸アルミニウム(クラリアント(株)製Exolit OP1230)
(E−3):臭素化ポリフェニレンエーテル(第一工業製薬(株)製ピロガードSR−460B)
(E−4):三酸化アンチモン(日本精鉱社製KSS−1000)。
(E−1):メラミンシアヌレート(日産化学工業製MC−6000、平均粒径2μm)
(E−2):ホスフィン酸アルミニウム(クラリアント(株)製Exolit OP1230)
(E−3):臭素化ポリフェニレンエーテル(第一工業製薬(株)製ピロガードSR−460B)
(E−4):三酸化アンチモン(日本精鉱社製KSS−1000)。
(F)ガラス繊維
(F−1):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子(株)製T−275H)、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤、集束剤:カルボン酸系、繊維長3mm。
(F−1):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子(株)製T−275H)、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤、集束剤:カルボン酸系、繊維長3mm。
(実施例1〜12、比較例1〜12)
表に示す(A)ポリアミド樹脂の融点+20℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)を用い、表に示す(A)ポリアミド樹脂、(B)化合物、(C)金属および/またはその塩、(D)環含有化合物、(E)難燃剤、および必要に応じてその他の添加剤をメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。続いて表に示す(F)ガラス繊維をサイドフィーダーから2軸押出機に供給した。ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを80℃で24時間真空乾燥後、前記評価を行った。結果を表1、表2、表3に示す。
表に示す(A)ポリアミド樹脂の融点+20℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)を用い、表に示す(A)ポリアミド樹脂、(B)化合物、(C)金属および/またはその塩、(D)環含有化合物、(E)難燃剤、および必要に応じてその他の添加剤をメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。続いて表に示す(F)ガラス繊維をサイドフィーダーから2軸押出機に供給した。ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを80℃で24時間真空乾燥後、前記評価を行った。結果を表1、表2、表3に示す。
表1〜3の結果から、本発明のポリアミド樹脂組成物は、熱老化処理後の引張強度保持率、表面粗さ変化抑制、耐トラッキング性に優れることが分かる。また、難燃性、流動性にも優れている。そのため、電気・電子部品や自動車用途において幅広い使用環境下においても優れた特性を発現する成形品であることがわかる。一方、本発明のポリアミド樹脂組成物の範囲から外れた場合には、耐熱老化性、耐熱老化処理後の耐トラッキング性、難燃性、流動性などの特性が低下する。
Claims (6)
- (A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物および(b−2)2つ以上のエポキシ基を有する化合物を反応させてなる(B)化合物を0.1〜20重量部、(E)難燃剤を0.1〜50重量部含有するポリアミド樹脂組成物であって、前記(b−2)化合物の分子量/1分子中のエポキシ基の数が300以上であって、さらに(b−1)3つ以上の水酸基を有する脂肪族化合物の水酸基と、(b−2)2つ以上のエポキシ基を有する化合物のエポキシ基との反応率が1〜50%であるポリアミド樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂組成物が、さらに(C)金属および/またはその塩を、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.001〜1重量部含有する請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂組成物が、さらに(D)下記式(5)で表される化合物を、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.001〜1重量部含有する請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
QX (5)
(式(5)中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す) - 前記ポリアミド樹脂組成物が、(C)金属および/またはその塩の含有量の(D)化合物の含有量に対する重量比((C)/(D))が1.0以下である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品であって、国際電気標準会議規格IEC−60112/3に準拠して測定した比較トラッキング指数(CTI)が500ボルト以上である成形品。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品と金属との接点部を有する成形部品。
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