以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウムおよび(C)ガラス繊維を配合してなる。
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂とは、アミド結合を有する高分子からなる樹脂のことであり、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするものである。本発明のポリアミド樹脂組成物にポリアミド樹脂を配合することにより、射出成形時の流動性に優れ、成形品の機械強度に優れたポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
ポリアミド樹脂の原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム;エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、テトラメチレンジアミン(1,4−ジアミノブタン)、ペンタメチレンジアミン(1,5−ジアミノペンタン)、ヘキサメチレンジアミン(1,6−ジアミノヘキサン)、ヘプタメチレンジアミン(1,7−ジアミノヘプタン)、オクタメチレンジアミン(1,8−ジアミノオクタン)、ノナメチレンジアミン(1,9−ジアミノノナン)、デカメチレンジアミン(1,10−ジアミノデカン)、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを2種以上配合してもよい。
ポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリテトラメチレンピメラミド(ナイロン47)、ポリテトラメチレンスベラミド(ポリアミド48)、ポリテトラメチレンアゼラミド(ポリアミド49)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリテトラメチレンウンデカアミド(ポリアミド411)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリテトラメチレントリデカンアミド(ポリアミド413)、ポリテトラメチレンテトラデカンアミド(ポリアミド414)、ポリテトラメチレンペンタデカンアミド(ポリアミド415)、ポリテトラメチレンヘキサデカンアミド(ポリアミド416)、ポリテトラメチレンヘプタデカンアミド(ポリアミド417)、ポリテトラメチレンオクタデカンアミド(ポリアミド418)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリデカンアミドコポリマー(ポリアミド6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/5T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンアジパミドコポリマー(5T/56)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド/ポリ2−メチル−1,8−オクタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド9T/M8T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ポリアミド10T/66)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンドデカミドコポリマー(ポリアミド10T/612)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)およびこれらの共重合体などが挙げられる。ここで「/」は共重合体を示し、以下同じである。これらのポリアミド樹脂を、熱伝導率、流動性、機械強度などの必要特性に応じて2種以上配合することも実用上好適である。
本発明において、特に有用なポリアミド樹脂は、テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする単量体を重縮合して得られるポリアミド樹脂である。かかるポリアミド樹脂は、絶乾時の機械強度により優れることに加え、低吸水性であるため、大気平衡吸水時の機械強度にも優れる。また融点も適度に低いために、水酸化マグネシウムおよびガラス繊維を配合してなるポリアミド樹脂組成物においても、溶融加工時の溶融温度をより低くすることができ、溶融滞留させた際でも、ポリアミド樹脂および水酸化マグネシウムの熱分解を抑制することができるため、より高い滞留安定性を付与することができる。ここで、「テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする」とは、ポリアミド樹脂の原料である単量体全量中、テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を合計70重量%以上含むことを意味する。75重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましい。テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分として、さらに他の成分を共重合したものであってもよい。
炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、1、2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。これらを2種以上併用してもよい。特に、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸は、ポリアミド樹脂組成物の熱伝導率、溶融滞留安定性と、成形品の機械強度をよりバランス良く向上させることができるため好ましい。
テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする単量体を重縮合して得られるポリアミド樹脂の具体例としては、ポリテトラメチレンピメラミド(ナイロン47)、ポリテトラメチレンスベラミド(ポリアミド48)、ポリテトラメチレンアゼラミド(ポリアミド49)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリテトラメチレンウンデカアミド(ポリアミド411)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリテトラメチレントリデカンアミド(ポリアミド413)、ポリテトラメチレンテトラデカンアミド(ポリアミド414)、ポリテトラメチレンペンタデカンアミド(ポリアミド415)、ポリテトラメチレンヘキサデカンアミド(ポリアミド416)、ポリテトラメチレンヘプタデカンアミド(ポリアミド417)、ポリテトラメチレンオクタデカンアミド(ポリアミド418)およびこれらの共重合体などが挙げられる。これらのポリアミド樹脂を、熱伝導率、流動性、機械強度などの必要特性に応じて2種以上配合することも実用上好適である。
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃における相対粘度が1.6以上2.2未満である。相対粘度は重合度と相関があり、相対粘度が1.6以上であれば、ポリアミド樹脂自体の強度が高いため、水酸化マグネシウムおよびガラス繊維を配合してなるポリアミド樹脂組成物においても、成形品の機械強度をより高くすることができる。相対粘度は1.7以上が好ましい。一方、相対粘度が2.2未満であれば、ポリアミド樹脂自体の溶融粘度が低いため、水酸化マグネシウムおよびガラス繊維を配合してなるポリアミド樹脂組成物においても、射出成形時の流動性がより良好となり、かつガラス繊維の折損やせん断発熱による樹脂分解も抑制できるため、成形品の機械強度もより高くすることができる。また、相対粘度が2.2未満のポリアミド樹脂は末端基の総量が多く、重合方法によってはガラス繊維との密着性に寄与するアミノ末端基量も多くすることが可能となるため、成形品の機械強度をより高めることができる。相対粘度は2.1以下が好ましい。
相対粘度を1.6以上にする手法としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする単量体を重縮合して得られるポリアミド樹脂であれば、後述するポリアミド樹脂の製造方法において、溶融1段重合法で系内の水量を調整する方法、原料であるジアミンの過剰添加量を適度に大きくする方法、重合時間(特に、重合の最終段階において、融点以上の温度で、不活性ガス雰囲気下または減圧下で重合を行う時間)を長くする方法などが挙げられる。一方、相対粘度を2.2未満にする手法としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする単量体を重縮合して得られるポリアミド樹脂であれば、後述するポリアミド樹脂の製造方法において、原料であるジアミンの過剰添加量を適度に小さくする方法、原料であるジカルボン酸またはジアミンの過剰添加量を適度に大きくする方法、重合時間(特に、重合の最終段階において、融点以上の温度で、不活性ガス雰囲気下または減圧下で重合を行う時間)を短くする方法などが挙げられる。
ここで、ポリアミド樹脂の相対粘度は、樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液を作製し、25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定することができる。
本発明に用いられるポリアミド樹脂のうち、テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする単量体を重縮合して得られるポリアミド樹脂においては、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比が1.5以上であることが好ましい。テトラメチレンジアミンは、例えば高温下では環化反応(脱アンモニア反応)によりピロリジン(モノアミン)を生成し、これがポリアミド樹脂の末端封鎖剤として作用し、ピロリジン末端を形成する。ピロリジン末端は反応性の低い環構造を形成するため、ガラス繊維との相互作用が小さい。一方、アミノ末端は、極性が大きく反応性が高いため、ガラス繊維との相互作用が大きい。本発明のポリアミド樹脂組成物においては、ガラス繊維との相互作用が小さいピロリジン末端基よりも、これらとの相互作用の大きいアミノ末端基を1.5倍量以上有するポリアミド樹脂を使用することにより、成形品の機械強度をより向上させることができる。また、相対粘度が1.6以上2.2未満であるポリアミド樹脂においては、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比を1.5以上とすることにより、流動性と溶融滞留安定性もより良好となる。アミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比は、2.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、4.0以上がさらに好ましい。
アミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比を1.5以上にする手法としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする単量体を重縮合して得られるポリアミド樹脂であれば、後述するポリアミド樹脂の製造方法において、後述する溶融1段重合法により製造する方法、系内の水量を調整する方法(例えば、201℃未満の温度で原料中の水含有量を30重量%以下に濃縮する工程を経る方法や、201℃以上で水を留出させる工程を経る方法)などが挙げられる。
ここで、ポリアミド樹脂中のアミノ末端基量は、ポリアミド樹脂をフェノール・エタノール混合溶媒(体積比83.5:16.5)に溶解し、0.02N塩酸水溶液を用いて滴定することにより求めることができる。また、ピロリジン末端基量は、ポリアミド樹脂を臭化水素酸水溶液により150℃で3時間加水分解を行って得られた処理液に、40%水酸化ナトリウム水溶液、トルエンを加え、次いでクロロギ酸エチルを添加して撹拌し、上澄みのトルエン溶液を抽出して、ガスクロマトグラフ分析することにより求めることができる。
本発明に用いられるポリアミド樹脂のうち、テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする単量体を重縮合して得られるポリアミド樹脂においては、ピロリジン末端基量が6×10−5mol/g以下であることが好ましい。ピロリジン末端基量が6×10−5mol/g以下であれば、前述のアミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比をより大きくし、前述の効果をより向上させることができる。5×10−5mol/g以下がより好ましい。
ピロリジン末端基量を6×10−5mol/g以下にする手法としては、特に限定されないが、例えば、後述するポリアミド樹脂の製造方法において、後述する溶融1段重合法により製造する方法、系内の水量を調整する方法(例えば、201℃未満の温度で原料中の水含有量を30重量%以下に濃縮する工程を経る方法や、201℃以上で水を留出させる工程を経る方法)などが挙げられる。
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、アミノ末端基量がカルボキシル末端基量よりも多いことが好ましい。アミノ末端基量がカルボキシル末端基量よりも多ければ、溶融混練時および射出成形などの溶融滞留時に、ポリアミド樹脂のカルボキシル末端基と水酸化マグネシウムの反応を抑制することができ、流動性、溶融滞留安定性、機械強度をより高くすることができる。
アミノ末端基量をカルボキシル末端基量よりも多くする手法としては、特に限定されないが、例えば、テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする単量体を重縮合して得られるポリアミド樹脂であれば、後述するポリアミド樹脂の製造方法において、後述する溶融1段重合法により製造する方法、系内の水量を調整する方法(例えば、201℃未満の温度で原料中の水含有量を30重量%以下に濃縮する工程を経る方法や、201℃以上で水を留出させる工程を経る方法)、原料であるジアミンをジアミンとジカルボン酸の塩に対して大過剰に添加して重縮合する方法などが挙げられる。
ここで、ポリアミド樹脂中のカルボキシル末端基量は、ポリアミド樹脂をベンジルアルコールに溶解し、0.02N水酸化カリウム・エタノール溶液を用いて滴定することにより求めることができる。
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、融点+35℃で5分間溶融滞留させた後の1216sec−1における溶融粘度をa、融点+35℃で30分間溶融滞留させた後の1216sec−1における溶融粘度をbとしたとき、b/aが0.7〜1.2であることが好ましい。なお、本発明においては、溶融滞留安定性の指標として、一般的な射出成形時のせん断速度に近い1216sec−1における溶融粘度の変化に着目した。b/aが0.7〜1.2であれば、水酸化マグネシウムおよびガラス繊維を配合してなるポリアミド樹脂組成物でも、後述する溶融粘度比B/Aを後述する所望の範囲に調整することができる。b/aは0.8以上がより好ましく、また、1.15以下がより好ましい。
b/aを0.7〜1.2にする手法としては、特に限定されないが、例えば、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量やカルボキシル末端基量が前述の範囲にある、ポリアミド樹脂を用いる方法などが挙げられる。
本発明に用いられるポリアミド樹脂は、融点+35℃で5分間溶融滞留させた後の1216sec−1における溶融粘度が、25Pa・s以下であることが好ましい。25Pa・s以下であれば、水酸化マグネシウムおよびガラス繊維を配合してなるポリアミド樹脂組成物の成形などの射出成形時の流動性をより向上させ、またガラス繊維の折損やせん断発熱による樹脂分解を抑制し、成形品の機械強度をより向上させることができる。20Pa・s以下がより好ましく、15Pa・s以下がさらに好ましい。
ここで、ポリアミド樹脂の溶融粘度は、キャピログラフ1C(東洋精機(株)製)を用い、長さ10mm、直径1mmのキャピラリーを用いて測定することができる。
本発明に用いられるポリアミド樹脂の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミド樹脂の場合、ジアミンとジカルボン酸、またはその塩を加熱重縮合し、融点以上の温度で溶融重合する方法が好ましい。ここで、加熱重縮合とは、製造時の最高到達温度を201℃以上に上昇させる製造プロセスと定義する。以下、ポリアミド樹脂の製造方法として、テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする単量体を重縮合して得られるポリアミド樹脂を例に挙げて説明する。
ポリアミド樹脂の製造方法としては、主に、低次縮合物(オリゴマー)を作製して一旦取り出し、これを融点未満の温度で固相重合する2段重合法や、テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸、またはその塩を加熱重縮合し、オリゴマー段階で一旦取り出すことなく、融点以上の温度で溶融重合する溶融1段重合法が挙げられる。2段重合法を用いる場合、テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする単量体から、相対粘度が1.6以上2.2未満、かつアミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比が1.5以上であるポリアミド樹脂を作製することは困難であるが、溶融1段重合法を用いて、その重合条件・原料仕込み量などを調整することにより、相対粘度が1.6以上2.2未満、かつアミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比が1.5以上であるポリアミド樹脂を容易に作製することができる。また、ポリアミド樹脂のピロリジン末端基量を6.0×10−5mol/g以下に容易に調整することができる。
前述のとおり、テトラメチレンジアミンは、高温下での環化反応(脱アンモニア反応)によりピロリジン(モノアミン)を生成し、これが末端封鎖剤として作用し、ピロリジン末端を形成する。テトラメチレンジアミンの環化反応は、系内に存在する水量が増大するに従い促進される傾向があるため、この環化反応を抑制するためには、系内の水量を調整することが有効である。テトラメチレンジアミンの環化反応は、201℃以上で著しく進行するので、原料に含まれる水を201℃未満の温度で除去しておくことが有効である。本発明においては、201℃未満の温度で、原料中の水含有量を30重量%以下に濃縮する工程を有することが好ましい。より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。ただし、201℃未満での原料中の水含有量は、縮合水を除いた値とする。この濃縮工程は、テトラメチレンジアミンの揮発を抑制するため、0.049〜0.49MPaの加圧下で行うことが好ましい。より好ましくは0.098〜0.392MPaである。上記方法で系内の水量を調整することにより、ポリアミド樹脂のアミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比およびピロリジン末端基量を前述の所望の範囲に容易に調整することができる。なお、201℃未満の温度において、原料に含まれる水の含有量は、仕込み時の水の添加量から、201℃未満で留出した水の量を差し引くことにより求めることができる。
また、原料に含まれる水に加え、ポリアミド樹脂の製造過程で発生する縮合水を効率的に除去することが、上記環化反応を抑制するためには好ましい。縮合反応は201℃以上で促進されるため、本発明においては、201℃以上で水を留出させる工程を経由することが好ましい。より好ましくは210℃以上である。上記方法で系内の水量を調整することにより、ポリアミド樹脂のアミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比およびピロリジン末端基量を前述の所望の範囲に容易に調整することができる。
系内の温度が上昇すると、原料に含まれる水や縮合水の揮発により系内の圧力が上昇するので、本発明においては、2.45MPa以下の圧力下で水を留出させる工程を経由することが好ましい。2.45MPa以下の圧力下で水を留出させることにより、水を効率的に除去し、テトラメチレンジアミンの環化副反応をより抑制することができる。より好ましくは1.764MPa以下、さらに好ましくは0.98MPa以下、さらに好ましくは0.49MPa以下である。
本発明においては、重合の最終段階において、融点以上の温度で、不活性ガス雰囲気下または減圧下で、高重合度化を行うことが好ましい。特に減圧下で行うことが、ポリアミド樹脂の製造過程で発生する縮合水を効率的に除去することができ、重合時間を短縮できるため、より好ましい。
本発明においては、高温で重合反応を行うため、テトラメチレンジアミンやその環化反応により生成するピロリジンが揮発したり、ピロリジンが末端封鎖剤となるなどの理由で、重合の進行に伴い、重合系内において、全カルボキシル基量に対する全アミノ基量が少なくなり、重合速度が遅延する傾向がある。テトラメチレンジアミンの揮発を抑制するためには、重合系内の圧力が高い方が好ましいが、反面、縮合水の揮発が抑制され、テトラメチレンジアミンの環化反応が促進されるので、重合系内の最高圧力を0.098〜2.45MPaとすることが好ましい。圧力が0.098MPa以上であると、テトラメチレンジアミンの揮発を十分に抑制し、アミノ基、カルボキシル基のモルバランスを維持することができる。0.196MPa以上がより好ましく、0.294MPa以上がさらに好ましい。一方、圧力が2.45MPa以下であると、重縮合による水の脱離を促進し、重合度を容易に高くすることができる。1.47MPa以下がより好ましく、0.98MPa以下がさらに好ましい。縮合反応の進行により、縮合水が生成し、系内の圧力は上昇するので、重合開始時の圧力はゼロでもよいが、テトラメチレンジアミンの揮発を最小限に抑制する場合には、原料にあらかじめ水を添加する方法、重合開始時にあらかじめ不活性ガスで加圧する方法などにより、系内の圧力が高くなるよう調整することができる。
また、原料を仕込む段階で、あらかじめ特定量のテトラメチレンジアミンを過剰に添加して、重合系内のジアミン量を増加させておくことが好ましく、相対粘度および末端基量を前述の所望の範囲に容易に調整することができる。テトラメチレンジアミンと炭素数7以上のジカルボン酸の塩1000molに対し、テトラメチレンジアミンを10〜100mol過剰に添加することが好ましい。過剰のテトラメチレンジアミン量は20mol以上がより好ましく、30mol以上がさらに好ましい。一方、過剰のテトラメチレンジアミン量は90mol以下がより好ましく、80mol以下がさらに好ましい。
本発明において、テトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸の塩の作製方法としては、例えば、水または水/アルコール混合中で塩反応を行った後、溶媒を揮発させる方法、アルコール中で塩反応を行った後、析出した塩を回収する方法などが挙げられる。アルコール溶媒としては、メタノール、エタノールなどが好適に用いられる。なお、水中で塩反応を行った後、得られる塩の水溶液をそのまま原料として用いてもよい。
本発明において、テトラメチレンジアミンの揮発や、脱アンモニア反応による環化の抑制に加え、分解による着色を防止するためには、重合工程全体でポリマーが受ける熱履歴を極力小さくすることが有効であり、その手段として、重合系内の最高到達温度を低くすることが好ましい。本発明において、重合系内の最高到達温度は、ポリアミド樹脂の融点以上、300℃未満にすることが好ましい。重合系内の最高到達温度を300℃未満にすることにより、テトラメチレンジアミンの環化をより抑制することができる。融点+40℃以下がより好ましい。
ポリアミド樹脂の製造方法においては、必要に応じて、重合促進剤を添加することができる。重合促進剤としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの無機系リン化合物挙げられる。これらを2種以上併用してもよい。特に、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウムが好適に用いられる。重合促進剤の添加量は、ポリアミド樹脂の原料100重量部に対して、0.001〜1重量部が好ましい。
本発明に用いられる(B)水酸化マグネシウムとしては、化学式Mg(OH)2で示される無機物を80重量%以上含む純度の高い水酸化マグネシウムが好ましい。本発明のポリアミド樹脂組成物に水酸化マグネシウムを配合することにより、ポリアミド樹脂組成物に熱伝導率、難燃性を付与することができる。熱伝導率、難燃性をより向上させる点から、Mg(OH)2で示される無機物を80重量%以上含み、CaO含量5重量%以下、塩素含量1重量%以下である高純度水酸化マグネシウムがより好ましく、Mg(OH)2を98重量%以上含み、CaO含量0.1重量%以下、塩素含量0.1重量%以下である高純度水酸化マグネシウムがさらに好ましい。
本発明に用いられる水酸化マグネシウムの形状は、粒子状、フレーク状、繊維状いずれでもよいが、押出溶融混練時のフィード性、分散性などの観点から、粒子状、フレーク状が好ましい。また、その粒子径に関して特に限定はないが、ポリアミド樹脂組成物の機械強度、熱伝導率、難燃性をより向上させる点から、レーザー回折法によって測定した平均粒子径が0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、0.3〜4μmの範囲のものがより好ましい。
水酸化マグネシウムは、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシランなどのビニルシラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン化合物、ステアリン酸、オレイン酸、モンタン酸、ステアリルアルコールなどの長鎖脂肪酸または長鎖脂肪族アルコールなどにより表面処理が施されていてもよい。特に、エポキシシラン化合物および/またはアミノシラン化合物により表面処理が施された水酸化マグネシウムは、ポリアミド樹脂組成物から得られる成形品の機械強度をより高めることができるため、好ましく使用される。
また水酸化マグネシウムは、特殊表面処理により、耐酸性が付与されたものが好ましい。耐酸性が付与された水酸化マグネシウムであれば、溶融混練時および射出成形などの溶融滞留時に、ポリアミド樹脂のカルボキシル末端基と水酸化マグネシウムの反応を抑制することができ、ポリアミド樹脂組成物の流動性、溶融滞留安定性、成形品の機械強度をより高くすることができる。耐酸性水酸化マグネシウムとしては、ポリエチレン樹脂50重量%と耐酸性水酸化マグネシウム50重量%を単軸押出機で200℃で溶融混練した樹脂組成物からなる1mm厚テストピース(ASTM4号)を、30重量%硫酸に24時間浸漬した場合の重量減少率が、30重量%以下となるものが好ましく、10重量%以下となるものがより好ましく、1重量%未満となるものがさらに好ましい。
本発明に用いられる(C)ガラス繊維は、特に制限はなく、公知のものが使用できる。本発明のポリアミド樹脂組成物にガラス繊維を配合することにより、成形品の機械強度を高めることができる。ガラス繊維は、所定長さにカットしたチョップドストランド、ロービングストランド、ミルドファイバーなどの形状のものがあり、いずれを使用してもよい。繊維径は特に制限はないが、4〜11μmのものが好ましい。繊維径が4μm以上であれば、成形品薄肉部への充填率を高めることができる。一方、11μm以下であれば、ポリアミド樹脂組成物中のガラス繊維の本数を多くすることができ、ガラス繊維による補強効果が得られやすくなることから、機械強度を高めることができる。ここで、ガラス繊維の繊維径とは、各ガラス繊維の繊維径の数平均値を指し、以下の方法により求めることができる。SEM(走査型電子顕微鏡)を使用してガラス繊維の断面(繊維の長さ方向に対して直角な面)を観察し、最大径と最小径を測定し、その平均値を各ガラス繊維の繊維径とする。無作為に選んだ10本のガラス繊維の繊維径の数平均値を算出することにより、ガラス繊維の繊維径を求めることができる。チョップドストランドを使用する場合、繊維長に特に制限はないが、押出混練作業性の高いストランド長3mmのガラス繊維が好ましく使用される。ロービングストランドを使用する場合、押出機にロービングストランドを直接投入する公知の技術により複合することができる。これらのガラス繊維を2種以上併用してもよい。
ガラス繊維は、公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤を用いて表面処理することが好ましく、成形品の機械強度をより向上させることができる。シラン系カップリング剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシラン、アクリルシランなどが挙げられる。
また、ガラス繊維は、集束剤(結束剤)で被覆されていることが好ましく、溶融混練する際の作業性を向上させることができる。さらに、成形品の機械強度をより向上させる効果を発現する場合もある。集束剤(結束剤)としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル酸系樹脂、アミノ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物における、(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウム、(C)ガラス繊維の配合量は、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、(A)ポリアミド樹脂25〜45重量部、(B)水酸化マグネシウム25〜74重量部、(C)ガラス繊維1〜40重量部である。
(A)ポリアミド樹脂の配合量が25重量部より少ないと、得られるポリアミド樹脂組成物の射出成形時の流動性、成形品の機械強度が低くなる。30重量部以上が好ましい。一方、ポリアミド樹脂の配合量が45重量部より多いと、得られるポリアミド樹脂組成物の熱伝導率が小さくなる。40重量部以下がより好ましい。
(B)水酸化マグネシウムの配合量が25重量部より少ないと、得られるポリアミド樹脂組成物の熱伝導率が小さくなる。30重量部以上がより好ましい。一方、水酸化マグネシウムの配合量が74重量部より多いと、射出成形時の流動性、成形品の機械強度が低くなる。60重量部以下がより好ましい。
(C)ガラス繊維配合量が1重量部より少ないと、得られる成形品の機械強度が低くなる。10重量部以上がより好ましい。一方、ガラス繊維の配合量が40重量部より多いと、得られるポリアミド樹脂組成物の熱伝導率が悪くなる。35重量部以下がより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、下記(I)〜(III)の全てを満足する必要がある。
(I)熱流計法で測定した熱伝導率が0.8W/m・K以上。
(II)融点+35℃で5分間溶融滞留させた後の1216sec−1における溶融粘度が20〜200Pa・s。
(III)融点+35℃で5分間溶融滞留させた後の1216sec−1における溶融粘度をA、融点+35℃で30分間溶融滞留させた後の1216sec−1における溶融粘度をBとしたとき、B/Aが0.7〜1.2。
(I)に関して、ポリアミド樹脂組成物の熱伝導率が0.8W/m・K未満であると、例えば、本発明のポリアミド樹脂組成物からなるコネクター等の電気・電子部品に電極をつけて電気を流した場合、発生する熱はポリアミド樹脂組成物を伝わって空気中に放熱されにくいため、電気・電子部品が熱劣化する。このため、長時間使用後には、例えば落下させたときの割れなどが発生しやすくなり、落下耐性が低減する。ここで、ポリアミド樹脂組成物の熱伝導率とは、ポリアミド樹脂組成物を射出成形することにより角板成形品(50mm×50mm×厚み3mm、フィルムゲート)を作製し、この成形品の両表面を深さ0.5mm切削して厚さ2mmの試験片としたものを用いて、熱流計法熱伝導率測定装置(リガク株式会社製、GH−1S)により測定して得られる熱伝導率を指す。熱伝導率は1.0W/m・K以上であることがより好ましく、1.1W/m・K以上であることがさらに好ましい。例えば、(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウムおよび(C)ガラス繊維を前述のように特定量配合することにより、上記の熱伝導率を満足するポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
(II)に関して、融点+35℃で5分間溶融滞留させた後の1216sec−1における溶融粘度が20Pa・s未満であると、成形品の機械強度が低下する。30Pa・s以上が好ましく、40Pa・s以上がより好ましい。また、融点+35℃で5分間溶融滞留させた後の1216sec−1における溶融粘度が200Pa・sを超えると、射出成形時の流動性が低下し、またガラス繊維の折損やせん断発熱による樹脂分解が起こって成形品の機械強度が低下する。190Pa・s以下が好ましく、180Pa・s以下がより好ましい。ここで、融点とはポリアミド樹脂組成物に配合されるポリアミド樹脂の融点を指す。例えば、(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウムおよび(C)ガラス繊維を前述のように特定量配合すること、(A)ポリアミド樹脂の相対粘度を前述の好ましい範囲に調整すること、(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基量とカルボキシル末端基量を前述の好ましい範囲に調整すること、(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比を前述の好ましい範囲に調整すること、(B)水酸化マグネシウムに耐酸性水酸化マグネシウムを使用すること等により、上記の溶融粘度を満足するポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
(III)に関して、B/Aが0.7未満であると、成形などの溶融加工時に滞留させると樹脂の分解が著しく、例えば、溶融滞留時間を短くして成形した場合と長くして成形した場合での成形品のロット間バラツキ(不良品)が多くなる。B/Aは0.75以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。またB/Aが1.2を超えると、成形などの溶融加工時に滞留させると樹脂の増粘が著しく、こちらも溶融滞留時間を短くして成形した場合と長くして成形した場合での成形品のロット間バラツキ(不良品)が多くなる。B/Aは1.15以下が好ましく、1.1以下がより好ましい。なお、本発明においては、滞留安定性の指標として、一般的な射出成形時のせん断速度に近い1216sec−1における溶融粘度の変化に着目した。例えば、(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウムおよび(C)ガラス繊維を前述のように特定量配合すること、(A)ポリアミド樹脂の相対粘度を前述の好ましい範囲に調整すること、(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基量とカルボキシル末端基量を前述の好ましい範囲に調整すること、(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比を前述の好ましい範囲に調整すること、(B)水酸化マグネシウムに耐酸性水酸化マグネシウムを使用すること等により、上記のB/Aを満足するポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(A)(B)(C)の配合量規定と、(A)ポリアミド樹脂の相対粘度調整、(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基量とカルボキシル末端基量調整、(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比の調整、(B)水酸化マグネシウムに耐酸性水酸化マグネシウムを使用すること等により、(I)(II)(III)を満足する、熱伝導率、射出成形時の流動性、溶融滞留安定性、成形品の機械強度のバランスに優れるポリアミド樹脂組成物を発現させている。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、(D)難燃剤を配合することが好ましい。難燃剤としては、メラミンシアヌレート、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、ホスフィン酸アルミニウム、ポリリン酸メラミン、ホウ酸亜鉛、赤リン、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせなどが好ましく使用される。かかる難燃剤を2種以上配合することも可能である。かかる難燃剤を用いる場合、その配合量は、特に制限はないが、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、1〜50重量部が好ましい。
中でも、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの組み合わせを難燃剤として配合し、かつ(A)ポリアミド樹脂の相対粘度調整、(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基量とカルボキシル末端基量調整、(A)ポリアミド樹脂のアミノ末端基量/ピロリジン末端基量の比の調整、(B)水酸化マグネシウムに耐酸性水酸化マグネシウムを使用すること等により、(I)(II)(III)を満足させると、水酸化マグネシウムの水酸基による本来の冷却効果と難燃剤による難燃効果が相乗的に作用し、一般にポリアミド樹脂を難燃化する量未満の難燃剤量でも高度な難燃性を付与することができるため、好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、前記(A)(B)(C)(D)以外の成分を配合しても構わない。
例えば、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、(A)ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合してもよい。(A)ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂やABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリアルキレンオキサイド樹脂等が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂を2種以上配合することも可能である。かかる熱可塑性樹脂を用いる場合、その配合量は、特に制限はないが、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、0.1〜400重量部が好ましい。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、ゴム質重合体を配合してもよい。ゴム質重合体とは、ガラス転移温度が室温より低い重合体であって、分子間の一部が共有結合・イオン結合・ファンデルワールス力・絡み合い等により、互いに拘束されている重合体を指す。ゴム質重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、該ブロック共重合体の水素添加物、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体、ブタジエン/イソプレン共重合体などのジエン系ゴム、エチレン/プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン/ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン/α−オレフィンの共重合体、エチレン/アクリル酸エステル、エチレン/メタクリル酸エステルなどのエチレン/不飽和カルボン酸エステル共重合体、ブチルアクリレート/ブタジエン共重合体などのアクリル酸エステル/ブタジエン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのエチレン/脂肪酸ビニル共重合体、エチレン/プロピレン/エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン/プロピレン/ヘキサジエン共重合体などのエチレン/プロピレン/非共役ジエン3元共重合体、ブチレン/イソプレン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、(A)ポリアミド樹脂との相溶性の観点から、エチレン/不飽和カルボン酸エステル共重合体が好ましく用いられる。不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸とアルコールとのエステルである。(メタ)アクリル酸エステルの具体的な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
前記ゴム質重合体は、(A)ポリアミド樹脂との反応性の観点から、反応性官能基を有することが好ましい。反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、オキサゾリン基、水酸基、イソシアネート基、メルカプト基、スルホン酸基等が挙げられる。これらを2種以上有してもよい。これらの中でも、エポキシ基、酸無水物基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、オキサゾリン基は反応性が高く、しかも分解、架橋などの副反応が少ないため好ましく用いられる。反応性官能基をゴム質重合体に導入する方法としては、通常公知の技術が挙げられ、特に制限はないが、例えば、反応性官能基を有する単量体とゴム質重合体の原料である単量体とを共重合する方法、反応性官能基を有する化合物をゴム質重合体にグラフトさせる方法などを用いることができる。
かかるゴム質重合体を2種類以上配合することも可能である。かかるゴム質重合体を用いる場合、その配合量は、特に制限はないが、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、0.1〜400重量部が好ましい。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、(C)ガラス繊維以外の無機充填材を配合してもよい。(C)ガラス繊維以外の無機充填材としては、例えば、炭素繊維、酸化チタン、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状無機充填材、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミナシリケートなどの金属珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素および炭化珪素などの非繊維状無機充填材が挙げられ、これらは中空であってもよい。また、これら無機充填材は、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理されていてもよい。かかる無機充填材は2種類以上併用することも可能である。かかる無機充填材を用いる場合、その配合量は、特に制限はないが、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、0.1〜400重量部配合が好ましい。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、その特性を損なわない範囲で、必要に応じて、各種添加剤を配合してもよい。各種添加剤としては、例えば、結晶核剤、着色防止剤、酸化防止剤(熱安定剤)、耐候剤、離型剤、可塑剤、滑剤、染料系着色剤、顔料系着色剤、帯電防止剤、発泡剤などを挙げることができる。これらを2種以上配合してもよい。その配合量に特に制限はないが、(A)と(B)と(C)の合計100重量部に対して、0.01〜20重量部配合されることが好ましい。
酸化防止剤(熱安定剤)としては、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ヒドロキノン系化合物、リン系化合物およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ化化合物などが好ましく使用される。特にヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物が好ましく用いられる。
ヒンダードフェノール系化合物の具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−t−ブチル−(5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。中でも、アミド型高分子ヒンダードフェノールタイプが好ましく、具体的には、N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]が好ましく用いられる。
リン系化合物の具体例としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビスフェニレンホスファイト、ジ−ステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリフェニルホスファイトなどのホスファイト系化合物;3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォネートジエチルエステルなどが挙げられる。
耐候剤としては、レゾルシノール系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒンダードアミン系化合物などが好ましく使用される。
離型剤としては、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビスアミド、エチレンビスステアリルアミドや高級脂肪酸エステルなどが好ましく使用される。
可塑剤としては、p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミドなどが好ましく使用される。
染料系着色剤としては、ニグロシン、アニリンブラックなどが好ましく使用される。
顔料系着色剤としては、硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなどが好ましく使用される。
帯電防止剤としては、アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどの非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤などが好ましく使用される。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が挙げられる。生産性の観点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールによる溶融混練等が使用でき、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましく使用できる。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等が挙げられる。これらの押出機を複数組み合わせてもよい。混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく、二軸押出機がより好ましい。
二軸押出機を用いた溶融混練方法としては、例えば、(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウム、(C)ガラス繊維および必要に応じて(A)(B)(C)以外の成分を予備混合して、シリンダー温度が(A)ポリアミド樹脂の融点以上に設定された二軸押出機に供給して溶融混練する手法が挙げられる。原料の混合順序に特に制限はなく、全ての原料を上記の方法により溶融混練する方法、一部の原料を上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原料を配合して溶融混練する方法、あるいは一部の原料を溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸化マグネシウムおよび必要により(A)(B)(C)以外のその他成分を押出機根元(原材料が供給される側を上流、溶融樹脂が吐出される側を下流とし、スクリューの上流側端部の位置)から投入して溶融混練後、サイドフィーダーを用いて(C)ガラス繊維を押出機途中から投入し、溶融混練する方法が好ましい。また押出機途中で真空状態に曝して発生するガスを除去する方法も好ましく使用される。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、通常の成形方法(射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、インジェクションプレス成形など)により、溶融成形することが可能である。なかでも量産性の点から射出成形、インジェクションプレス成形により成形することが好ましく、射出成形により成形することが最も好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、放熱性電気・電子部品用途に好ましく使用される。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、射出成形時の流動性に優れるため、薄肉かつ複雑形状の電気・電子部品を成形する場合でも、充填率を高くすることが可能であり、成形不良を低減できる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、溶融滞留安定性に優れるため、
溶融滞留時間を変えて成形加工した場合でも成形品のロット間バラツキ(不良品)を低減できる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形品の機械強度に優れるため、薄肉かつ複雑形状の電気・電子部品に用いても、成形品の強度が高く、落下させたときの割れも抑制でき落下耐性を付与できる。また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、熱伝導率に優れるため、例えば、本発明のポリアミド樹脂組成物からなる電気・電子部品に電極をつないで電気を流しても、発生する熱がポリアミド樹脂組成物を伝わって空気中に放熱されるため、成形品の熱劣化が抑制され、長時間使用後に落下させたときの割れも抑制できる。さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物からなる電気・電子部品に電極を複数回抜き差ししても、スクラッチ耐性に優れるため削れ量を抑制できる。
本発明の放熱性電気・電子部品としては、例えば、コネクター、リレーケース、リレーベース、リレー用スプール、スイッチ、コイル、センサー、各種ギヤー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、サーマルプロテクター、コンピューター関連部品などに代表される電子部品、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、ナイフスイッチ、他極ロッド、電気部品キャビネットなどの電気機器部品、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、パソコン部品、パソコン筐体、携帯電話部品、携帯電話筐体、スマートフォン部品、スマートフォン筐体、電池部品、電池筐体などに代表される家庭・事務用電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連電気部品、顕微鏡部品、双眼鏡部品、カメラ部品、時計部品などに代表される光学機器・精密機械関連電気部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディマー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ周辺の電気部品、燃料関係・冷却系・ブレーキ系・ワイパー系・排気系・吸気系各種パイプ・ホース・チューブ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、燃料タンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、電池周辺部品、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、トランスミッション用オイルパン、トランスミッション用オイルフィルター、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクター、ヒューズ用コネクター等の各種コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルパン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウォッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、インストルメントパネル、エアバッグ周辺部品、ドアパッド、ピラー、コンソールボックス、各種モーターハウジング、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、ルーフパネル、フードパネル、トランクリッド、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプベゼル、ドアハンドル、ドアモール、リアフィニッシャー、ワイパーなどの自動車・車両関連周辺の電気部品などに用いることができ、特にコネクター、リレー、スイッチ、パソコン筐体、携帯電話筐体、電池筐体などに有用である。
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例に用いたポリアミド樹脂(A)は以下の通りである。
(A−1):参考例4。
(A−2):参考例5。
(A−3):参考例6。
(A−4):参考例7。
(A−5):参考例8。
(A−6):参考例9。
(A−7):参考例10。
(A−8):参考例11。
(A−9):参考例12。
(A−10):参考例13。
(A−11):参考例14。
(A−12):参考例15。
(A−13):参考例16。
(A−14):参考例17。
(A−15):参考例18。
実施例および比較例に用いた水酸化マグネシウム(B)は以下の通りである。
(B−1):Mg(OH)2で示される無機物含有量が99.7重量%、レーザー回折法によって測定した平均粒子径が0.83μm、ポリエチレン樹脂50重量%に対し50重量%を単軸押出機で200℃で複合した樹脂組成物からなる1mm厚テストピース(ASTM4号)を、30重量%硫酸に24時間浸漬した場合の重量減少率が48重量%の、水酸化マグネシウム「“KISUMA”(登録商標)5EU」(協和化学工業株式会社製)。
(B−2):Mg(OH)2で示される無機物含有量が99.5重量%、レーザー回折法によって測定した平均粒子径が1.5μm、ポリエチレン樹脂50重量%に対し50重量%を単軸押出機で200℃で複合した樹脂組成物からなる1mm厚テストピース(ASTM4号)を、30重量%硫酸に24時間浸漬した場合の重量減少率が0.2重量%の、特殊表面処理された耐酸性水酸化マグネシウム「MGZ−6R」(堺化学工業株式会社製)。
実施例および比較例に用いたガラス繊維(C)は以下の通りである。
(C−1):繊維径10.5μm、密度2.55g/cm3のガラス繊維「T−275H」(日本電気硝子株式会社製)。
実施例および比較例に用いた(A)(B)(C)以外の成分は以下の通りである。
(D−1):臭素化ポリフェニレンエーテル「“ピロガード”(登録商標)SR−460B」(第一工業製薬株式会社製)。
(D−2):三酸化アンチモン「PATOX−MK」(日本精鉱株式会社製)。
(E−1):熱安定剤「IR1098」(N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド])(BASF製)。
次に実施例および比較例における評価方法について説明する。
(1)相対粘度
参考例により得られたポリアミド樹脂のペレットを98%硫酸に溶解して樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液を作製した。得られた硫酸溶液を用いて、25℃でオストワルド式粘度計を用いて、相対粘度を測定した。
(2)アミノ末端基量
参考例により得られたポリアミド樹脂のペレット約0.5gを精秤し、フェノール・エタノール混合溶媒(体積比83.5:16.5)25mlに溶解した後、0.02N塩酸水溶液を用いて滴定し、アミノ末端基量を測定した。
(3)カルボキシル末端基量
参考例により得られたポリアミド樹脂のペレット約0.5gを精秤し、ベンジルアルコール20mlを加えて190℃で溶解した後、0.02N水酸化カリウム・エタノール溶液を用いて滴定し、カルボキシル末端基量を測定した。
(4)ピロリジン末端基量
参考例により得られたポリアミド樹脂のペレット約0.06gを精秤し、臭化水素酸水溶液にて150℃で3時間加水分解を行った。得られた処理液に、40%水酸化ナトリウム水溶液、トルエンを加え、次いでクロロギ酸エチルを添加して撹拌した。上澄みのトルエン溶液を抽出し測定溶液とし、ガスクロマトグラフ分析によりピロリジン末端基量を測定した。定量はピロリジン標準溶液を用いた。測定条件を以下に示した。
装置:島津GC−2010 Plus AF/AOC
カラム:NB−1(GLサイエンス社製)60m×0.25mm
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
オーブン温度:150℃から330℃まで10℃/分で昇温
試料注入部温度:250℃
検出部温度:330℃
キャリアガス:He
試料注入量:3.0μl 。
(5)融点
各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレット約5mg採取し、SIIナノテクノロジー社製ロボットDSC RDC220を用いて、窒素雰囲気下、次の条件で融点を測定した。350℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で50℃まで降温して5分間保持した後、20℃/分の昇温速度で350℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。吸熱ピークが2つ以上観測される場合には、温度が高いピークを融点とした。
(6)溶融粘度
キャピログラフ1C(東洋精機株式会社製)を用い、融点+35℃に温度設定し、長さ10mm、直径1mmのキャピラリーを用いて、各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、5分間および30分間溶融滞留させた後の、1216sec−1における溶融粘度を測定した。この値が低いほど、射出成形時の流動性が良好であることを示す。
(7)溶融滞留安定性
(6)で測定した5分間溶融滞留させた後の溶融粘度をA、30分間溶融滞留させた後の溶融粘度をBとし、B/Aにより溶融滞留安定性を評価した。
(8)熱伝導率
各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、表1〜2に記載のシリンダー温度、金型温度に設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)に投入し、下限圧(最低充填圧力)+1MPaの条件で射出成形して角板成形品(50mm×50mm×厚み3mm、フィルムゲート)を作製し、この成形品の両表面を深さ0.5mm切削して厚さ2mmの試験片としたものを用いて、熱流計法熱伝導率測定装置(リガク株式会社製、GH−1S)により熱伝導率を測定した。この値が高いほど、熱伝導性に優れることを示す。
(9)曲げ強度、曲げ弾性率(絶乾時)
各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、表1〜2に記載のシリンダー温度、金型温度に設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)に投入し、下限圧(最低充填圧力)+1MPaの条件で射出成形してASTM1号ダンベル試験片を作製した。得られた試験片について、テンシロンRTA1T(株式会社オリエンテック製)を用いて、ASTM−D790に従い、23℃、50%RHの雰囲気下で曲げ試験を行い、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。尚、測定は3本行い、その平均値を曲げ強度、曲げ弾性率とした。
(10)衝撃強度(絶乾時)
各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、表1〜2に記載のシリンダー温度、金型温度に設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)に投入し、下限圧(最低充填圧力)+1MPaの条件で射出成形して1/8インチノッチ付きIzod衝撃試験片を作製した。得られた試験片について、ASTM−D256に従い、23℃、50%RHの雰囲気下でIzod衝撃試験を行い、衝撃強度を測定した。尚、測定は3本行い、その平均値を衝撃強度とした。
(11)曲げ強度、曲げ弾性率(大気平衡吸水時)
前記(9)に記載の方法で得られたASTM1号ダンベル試験片を、23℃、50%RHの環境で1年間処理した後、テンシロンRTA1T(株式会社オリエンテック製)を用いて、ASTM−D790に従い、23℃、50%RHの雰囲気下で曲げ試験を行い、曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。尚、測定は3本行い、その平均値を曲げ強度、曲げ弾性率とした。
(12)難燃性
各実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、表1〜2に記載のシリンダー温度、金型温度に設定した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)に投入し、下限圧(最低充填圧力)+0.5MPaの条件で射出成形して1/64インチ(0.4mm)厚みの燃焼試験片を得た。前記の燃焼試験片を用いて、UL94垂直試験に定められている評価基準に従い、難燃性を評価した。難燃性はV−0>V−1>V−2の順に低下しランク付けされる。また、燃焼性に劣り上記のV−2に達せず、上記の難燃性ランクに該当しなかった材料は規格外とした。
参考例1(ナイロン410塩の作製)
エタノール15000gにセバシン酸(東京化成)1500g(7.42mol)を添加し、60℃のウォーターバスに浸漬して溶解させた。ここに、あらかじめ調製したテトラメチレンジアミン(関東化学)654g(7.42mol)をエタノール8000gに溶解した溶液を1時間かけて滴下した。3時間撹拌を続けた後、静置下で室温に放置し、析出した塩を沈降させた。その後、ろ過、エタノール洗浄を行い、50℃で24時間真空乾燥して、ナイロン410塩を得た。
参考例2(ナイロン49塩の作製)
メタノール10000mlにアゼライン酸(コグニス製Emerox1144)2000g(10.6mol)を添加し、60℃のウォーターバスに浸漬して溶解させた。ここに、あらかじめ調製したテトラメチレンジアミン(関東化学)937g(10.6mol)をメタノール20mlに溶解した溶液を1時間かけて滴下した。3時間撹拌を続けた後、エバポレーターで濃縮し、塩を析出させた。その後、ろ過、メタノール洗浄を行い、50℃で24時間真空乾燥して、ナイロン49塩を得た。
参考例3(ナイロン412塩の作製)
メタノール20000mlにドデカン二酸(宇部興産)2000g(8.68mol)を添加し、60℃のウォーターバスに浸漬して溶解させた。ここに、あらかじめ調製したテトラメチレンジアミン(関東化学)766g(8.68mol)をメタノール2000mlに溶解した溶液を1時間かけて滴下した。3時間撹拌を続けた後、静置下で室温に放置し、析出した塩を沈降させた。その後、ろ過、メタノール洗浄を行い、50℃で24時間真空乾燥して、ナイロン412塩を得た。
参考例4
参考例1で作製したナイロン410塩700g、テトラメチレンジアミン13.11g(ナイロン410塩に対して61.7mol/1000mol塩)を撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を260℃に設定して加熱を開始した。1時間2分後に、缶内温度は213℃、缶内圧力は0.490MPaに到達した。放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を0.490MPaで88分間保持した。このとき缶内温度は248℃に到達した。続いて、ヒーター設定温度を270℃に変更し、放圧を開始して、水を留出させながら、10分間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は253℃であった。さらに、−0.021MPaの減圧下で120分間保持することにより、缶内温度は268℃に到達した。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン410を得た。得られたナイロン410を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=1.93、アミノ末端基量=22.60×10−5mol/g、カルボキシル末端基量0.88×10−5mol/g、ピロリジン末端基量=4.41×10−5mol/g、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量=5.12であった。
参考例5
参考例1で作製したナイロン410塩700g、テトラメチレンジアミン13.11g(ナイロン410塩に対して61.7mol/1000mol塩)を撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を260℃に設定して加熱を開始した。1時間2分後に、缶内温度は213℃、缶内圧力は0.490MPaに到達した。放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を0.490MPaで88分間保持した。このとき缶内温度は248℃に到達した。続いて、ヒーター設定温度を270℃に変更し、放圧を開始して、水を留出させながら、10分間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は253℃であった。さらに、−0.021MPaの減圧下で5分間保持することにより、缶内温度は267℃に到達した。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン410を得た。得られたナイロン410を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=1.69、アミノ末端基量=24.01×10−5mol/g、カルボキシル末端基量2.45×10−5mol/g、ピロリジン末端基量=4.73×10−5mol/g、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量=5.08であった。
参考例6
参考例1で作製したナイロン410塩700g、テトラメチレンジアミン9.56g(ナイロン410塩に対して45.0mol/1000mol塩)を撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を260℃に設定して加熱を開始した。1時間5分後に、缶内温度は216℃、缶内圧力は0.490MPaに到達した。放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を0.490MPaで88分間保持した。このとき缶内温度は250℃に到達した。続いて、ヒーター設定温度を270℃に変更し、放圧を開始して、水を留出させながら、10分間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は254℃であった。さらに、−0.021MPaの減圧下で120分間保持することにより、缶内温度は270℃に到達した。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン410を得た。得られたナイロン410を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=2.15、アミノ末端基量=17.02×10−5mol/g、カルボキシル末端基量0.81×10−5mol/g、ピロリジン末端基量=4.25×10−5mol/g、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量=4.00であった。
参考例7
参考例1で作製したナイロン410塩700g、テトラメチレンジアミン8.07g(ナイロン410塩に対して38.0mol/1000mol塩)を撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を260℃に設定して加熱を開始した。1時間6分後に、缶内温度は216℃、缶内圧力は0.490MPaに到達した。放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を0.490MPaで88分間保持した。このとき缶内温度は251℃に到達した。続いて、ヒーター設定温度を270℃に変更し、放圧を開始して、水を留出させながら、10分間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は254℃であった。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン410を得た。得られたナイロン410を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=1.94、アミノ末端基量=15.19×10−5mol/g、カルボキシル末端基量4.68×10−5mol/g、ピロリジン末端基量=4.20×10−5mol/g、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量=3.62であった。
参考例8
参考例1で作製したナイロン410塩700g、テトラメチレンジアミン8.07g(ナイロン410塩に対して38.0mol/1000mol塩)、イオン交換水467gを撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を170℃に設定して加熱を開始した。45分後に、缶内温度は140℃、缶内圧力は0.196MPaに到達した。放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を0.196MPaで1時間45分保持した。このとき缶内温度は173℃に到達した。続いて、ヒーター設定温度を260℃に変更し、一旦放圧弁を閉じた(この段階で留出した水は367gであった)。5分後に缶内圧力が0.294MPa、缶内温度が177℃に到達し、放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を0.294MPaで1時間20分間保持した。このとき、缶内温度は250℃に上昇した。続いて、ヒーター設定温度を270℃に変更し、放圧を開始して、水を留出させながら、10分間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は258℃であった。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン410を得た。得られたナイロン410を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=1.94、アミノ末端基量=12.30×10−5mol/g、カルボキシル末端基量5.02×10−5mol/g、ピロリジン末端基量=6.10×10−5mol/g、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量=2.02であった。
参考例9
参考例1で作製したナイロン410塩700g、テトラメチレンジアミン6.37g(ナイロン410塩に対して30mol/1000mol塩)を撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を260℃に設定して加熱を開始した。1時間2分後に、缶内温度は213℃、缶内圧力は0.490MPaに到達した。放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を0.490MPaで60分間保持した。このとき缶内温度は246℃に到達した。続いて、ヒーター設定温度を270℃に変更し、放圧を開始して、水を留出させながら、5分間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は252℃であった。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン410を得た。得られたナイロン410を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=1.70、アミノ末端基量=12.43×10−5mol/g、カルボキシル末端基量13.98×10−5mol/g、ピロリジン末端基量=4.78×10−5mol/g、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量=2.60であった。
参考例10
参考例1で作製したナイロン410塩700g、テトラメチレンジアミン1.70g(ナイロン410塩に対して8.0mol/1000mol塩)を撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を260℃に設定して加熱を開始した。1時間6分後に、缶内温度は216℃、缶内圧力は0.490MPaに到達した。放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を0.490MPaで88分間保持した。このとき缶内温度は251℃に到達した。続いて、ヒーター設定温度を270℃に変更し、放圧を開始して、水を留出させながら、10分間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は254℃であった。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン410を得た。得られたナイロン410を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=1.92、アミノ末端基量=3.80×10−5mol/g、カルボキシル末端基量17.23×10−5mol/g、ピロリジン末端基量=2.56×10−5mol/g、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量=1.48であった。
参考例11
参考例1で作製したナイロン410塩700g、テトラメチレンジアミン4.84g(ナイロン410塩に対して22.8mol/1000mol塩)を撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を260℃に設定して加熱を開始した。1時間2分後に、缶内温度は213℃、缶内圧力は0.490MPaに到達した。放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を0.490MPaで88分間保持した。このとき缶内温度は248℃に到達した。続いて、ヒーター設定温度を270℃に変更し、放圧を開始して、水を留出させながら、10分間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は253℃であった。さらに、−0.021MPaの減圧下で20分間保持することにより、缶内温度は269℃に到達した。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン410を得た。得られたナイロン410を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=2.35、アミノ末端基量=5.72×10−5mol/g、カルボキシル末端基量7.10×10−5mol/g、ピロリジン末端基量=4.20×10−5mol/g、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量=1.36であった。
参考例12
参考例1で作製したナイロン410塩700g、テトラメチレンジアミン9.56g(ナイロン410塩に対して45.0mol/1000mol塩)、イオン交換水70gを、撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで密閉し、窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を260℃に設定して加熱を開始した。100分後に、内温221℃、1.470MPaに到達した。放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を1.470MPaで30分間保持した。このとき缶内温度は238℃に到達した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出した。これを80℃で24時間真空乾燥し、得られた低次縮合物を、220℃、100Paで24時間固相重合し、ナイロン410を得た。得られたナイロン410を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=2.11、アミノ末端基量=9.34×10−5mol/g、カルボキシル末端基量3.52×10−5mol/g、ピロリジン末端基量=7.30×10−5mol/g、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量=1.28であった。
参考例13
参考例2で作製したナイロン49塩700g、テトラメチレンジアミン13.77g(ナイロン49塩に対して61.7mol/1000mol塩)を撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を260℃に設定して加熱を開始した。1時間後に、缶内温度は210℃、缶内圧力は0.490MPaに到達した。放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を0.490MPaで88分間保持した。このとき缶内温度は247℃に到達した。続いて、ヒーター設定温度を270℃に変更し、放圧を開始して、水を留出させながら、10分間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は252℃であった。さらに、−0.021MPaの減圧下で120分間保持することにより、缶内温度は266℃に到達した。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン49を得た。得られたナイロン49を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=1.93、アミノ末端基量=21.52×10−5mol/g、カルボキシル末端基量0.91×10−5mol/g、ピロリジン末端基量=4.44×10−5mol/g、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量=4.85であった。
参考例14
参考例3で作製したナイロン412塩700g、テトラメチレンジアミン11.96g(ナイロン412塩に対して61.7mol/1000mol塩)を撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を260℃に設定して加熱を開始した。1時間1分後に、缶内温度は212℃、缶内圧力は0.490MPaに到達した。放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を0.490MPaで88分間保持した。このとき缶内温度は247℃に到達した。続いて、ヒーター設定温度を270℃に変更し、放圧を開始して、水を留出させながら、10分間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は251℃であった。さらに、−0.021MPaの減圧下で120分間保持することにより、缶内温度は266℃に到達した。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン412を得た。得られたナイロン412を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=1.91、アミノ末端基量=21.02×10−5mol/g、カルボキシル末端基量0.85×10−5mol/g、ピロリジン末端基量=4.30×10−5mol/g、アミノ末端基量/ピロリジン末端基量=4.89であった。
参考例15
ナイロン66塩700g、ヘキサメチレンジアミン7.13g(ナイロン66塩に対して23.0mol/1000mol塩)、イオン交換水467gを撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を295℃に設定して加熱を開始した。50分後に、缶内温度は223℃、缶内圧力は1.715MPaに到達した。ヒーター温度を280℃に変更して、放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を1.715MPaで1時間10分保持した。このとき缶内温度は250℃に到達した。続いて、1時間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は276℃であった。さらに、−0.021MPaの減圧下で15分保持することにより、缶内温度は280℃に到達した。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン66を得た。得られたナイロン66を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=1.94、アミノ末端基量=19.30×10−5mol/g、カルボキシル末端基量4.83×10−5mol/gであった。
参考例16
ナイロン66塩700g、アジピン酸3.82g(ナイロン66塩に対して9.8mol/1000mol塩)、イオン交換水467gを撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を295℃に設定して加熱を開始した。50分後に、缶内温度は223℃、缶内圧力は1.715MPaに到達した。ヒーター温度を280℃に変更して、放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を1.715MPaで1時間10分保持した。このとき缶内温度は250℃に到達した。続いて、1時間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は276℃であった。さらに、−0.021MPaの減圧下で15分保持することにより、缶内温度は280℃に到達した。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン66を得た。得られたナイロン66を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=1.96、アミノ末端基量=4.85×10−5mol/g、カルボキシル末端基量19.21×10−5mol/gであった。
参考例17
ナイロン610塩700g、ヘキサメチレンジアミン6.13g(ナイロン610塩に対して24.0mol/1000mol塩)、イオン交換水467gを撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を275℃に設定して加熱を開始した。50分後に、缶内温度は202℃、缶内圧力は1.715MPaに到達した。ヒーター温度を260℃に変更して、放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を1.715MPaで1時間10分保持した。このとき缶内温度は230℃に到達した。続いて、1時間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は255℃であった。さらに、−0.021MPaの減圧下で15分間保持することにより、缶内温度は261℃に到達した。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン610を得た。得られたナイロン610を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=1.95、アミノ末端基量=18.93×10−5mol/g、カルボキシル末端基量4.93×10−5mol/gであった。
参考例18
ナイロン610塩700g、セバシン酸6.67g(ナイロン610塩に対して15.0mol/1000mol塩)、イオン交換水467gを撹拌翼付きの内容積が3Lの圧力容器に仕込んで窒素置換した後、窒素で缶内圧力を0.049MPaに加圧した。この圧力容器を密閉したまま、ヒーター温度を275℃に設定して加熱を開始した。50分後に、缶内温度は202℃、缶内圧力は1.715MPaに到達した。ヒーター温度を260℃に変更して、放圧弁を操作して水分を系外へ留出させながら、缶内圧力を1.715MPaで1時間10分保持した。このとき缶内温度は230℃に到達した。続いて、1時間かけて缶内圧力をゼロにした。このとき、缶内温度は255℃であった。さらに、−0.021MPaの減圧下で15分間保持することにより、缶内温度は261℃に到達した。圧力容器底部の吐出口から内容物をガット状にして取り出し、ペレタイズすることによりナイロン610を得た。得られたナイロン610を80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(1)〜(4)の評価を行ったところ、相対粘度=1.95、アミノ末端基量=5.01×10−5mol/g、カルボキシル末端基量18.99×10−5mol/gであった。
実施例1〜4、7、9〜15、比較例1〜12
表1〜2に示す配合組成で(C)ガラス繊維を除く全ての原料を予備混合し、スクリュー径が30mm、スクリューが2条ネジの2本のスクリューである、L/D=35の同方向回転完全噛み合い型二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX−30α)を使用し、窒素フローを行いながら、表1〜2に示すシリンダー温度に設定して、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hの条件で溶融混練を行い、吐出口(L/D=35)よりストランド状の溶融樹脂を吐出した。その際のスクリュー構成は、L/D=7、16、25の位置から始まる3箇所のニーディングゾーンを設け、各ニーディングゾーンの長さLk/Dは、順番にLk/D=3.0、3.0、3.0とした。さらに各ニーディングゾーンの下流側に、逆スクリューゾーンを設け、各逆スクリューゾーンの長さLr/Dは、順番にLr/D=0.5、0.5、0.5とした。L/D=23の位置にサイドフィーダーを設置し、予備混合した(C)ガラス繊維を除く全ての原料を押出機根元(L/D=1の位置)から投入し、(C)ガラス繊維を押出機途中(L/D=23の位置)から投入した。ベント真空ゾーンをL/D=30の位置に設け、ゲージ圧力−0.1MPaで揮発成分の除去を行った。ダイヘッドを通過して4mmφ×2ホールから吐出された溶融樹脂組成物をストランド状に引いて冷却バスを通過させて冷却し、ペレタイザーにより引取りながら裁断することにより、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。該ペレットは80℃で24時間以上真空乾燥した後、前記(5)〜(12)の評価に供した。評価結果を表1〜2に示す。
実施例1〜4、7、9〜15のポリアミド樹脂組成物は、熱伝導率を0.8W/mK以上発現させるために水酸化マグネシウムとガラス繊維を高充填させているが、射出成形時のせん断速度に相当する1216sec−1における溶融粘度が低いため、射出成形時の流動性に優れることがわかる。また溶融滞留安定性にも優れることがわかる。さらに絶乾時、吸水時の曲げ強度、曲げ弾性率も高いこともわかる。
特にテトラメチレンジアミンと炭素数7以上の脂肪族ジカルボン酸を主要成分とする単量体の重縮合により得られるポリアミド樹脂を使用した実施例1〜4、7、9〜13ではこれらのバランスがより良好であることがわかる。
また、実施例1〜4は比較例11と比較して、アミノ末端基量がカルボキシル末端基量よりも多いポリアミド樹脂を使用しているため、射出成形時の流動性、溶融滞留安定性、機械強度のバランスがより良好であることがわかる。またアミノ末端基量とカルボキシル末端基量の差が大きいほど、射出成形時の流動性、溶融滞留安定性、機械強度のバランスがより良好であることがわかる。
実施例1〜4は比較例10と比較して、アミノ末端基量/ピロリジン末端基の比が大きいポリアミド樹脂を使用しているため、射出成形時の流動性、溶融滞留安定性、機械強度のバランスがより良好であることがわかる。またアミノ末端基量/ピロリジン末端基の比が大きいほど、射出成形時の流動性、溶融滞留安定性、機械強度のバランスがより良好であることがわかる。
実施例7では、耐酸性の表面処理が施された水酸化マグネシウムを使用しているため、射出成形時の流動性、溶融滞留安定性、機械強度のバランスがより良好であることがわかる。
比較例12では、アミノ末端基量がカルボキシル末端基量よりも少なく、アミノ末端基量/ピロリジン末端基の比も小さいポリアミド樹脂を使用している。耐酸性の表面処理が施された水酸化マグネシウムを使用しているが、実施例1〜4と比較して、射出成形時の流動性、溶融滞留安定性、機械強度のバランスに劣る。
相対粘度が高いポリアミド410を使用した比較例1は、射出成形時の流動性が悪く、またB/Aが小さいため溶融滞留安定性が低いことがわかる。
末端基量を調整していないポリアミド樹脂および耐酸性の表面処理を施していない水酸化マグネシウムを使用した比較例2、3、8、9は、射出成形時の流動性が悪く、またB/Aが小さいため溶融滞留安定性が低いことがわかる。
比較例4は、ポリアミド410の配合量が少なく、水酸化マグネシウムの配合量が多いため、得られるポリアミド樹脂組成物の流動性が低く、また曲げ強度、衝撃強度も低くなることがわかる。
比較例5は、ポリアミド410の配合量が多く、水酸化マグネシウムの配合量が少なく、ガラス繊維の配合量が多いため、熱伝導率が低いことがわかる。また、絶乾時の曲げ強度に比べて大気平衡吸水時の曲げ強度が大きく低下することがわかる。
比較例6は、ガラス繊維を配合していないため、曲げ強度、衝撃強度が低いことがわかる。
相対粘度が高いポリアミド410を使用した比較例7は、射出成形時の流動性が悪く、またB/Aが小さいため溶融滞留安定性が低いことがわかる。また、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が高くなるため、溶融混練時にガラス繊維が折損して強度も低くなることがわかる。さらに、難燃剤に実施例11と同量の臭素化ポリフェニレンエーテルと三酸化アンチモンを使用しているが、0.4mm厚の難燃性を付与することができないことがわかる。