JPWO2009069725A1 - ポリアミド樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Abstract
本発明は、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂およびポリフェニレンスルフィド樹脂を含むポリアミド樹脂組成物であって、各成分の配合量が、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(b)変性ポリオレフィン樹脂5〜40重量部、(c)未変性ポリオレフィン樹脂0〜30重量部、(d)フェノール樹脂1〜20重量部、(e)ポリフェニレンスルフィド樹脂1〜10重量部であるポリアミド樹脂組成物である。本発明は、熱老化性、靱性およびバリア性のバランスに優れたポリアミド樹脂組成物を提供する。
Description
本発明は、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂およびポリフェニレンスルフィド樹脂を配合してなるポリアミド樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、熱老化性、靱性、および、バリア性にバランス良く優れるポリアミド樹脂組成物に関するものである。
ポリアミド樹脂は、機械的特性、靭性および熱的性質に優れ、エンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有していることから、射出成形用を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などの用途に広く使用されている。また、近年、安全性、保存安定性、および環境汚染防止性を確保するために、内容物の漏洩防止、外気の混入防止等の目的で、樹脂成形品のガスバリア性が要求されることが増加してきている。ポリアミド樹脂は、優れたガスバリア性を有することから、様々な成形品として用いられてきている。しかしながら、ポリアミド樹脂は、吸湿しやすい特性のために、水やアルコールなどの極性が高い溶媒に対するバリア性が低く、その使用範囲を制約されることが多い。また、これらバリア性が要求される材料の中でも、特に自動車部品用途に使用される材料では、使用環境の多様性から、低温から高温までの靱性が要求される。
このようなポリアミド樹脂の欠点を補うために、フェノール樹脂をポリアミド樹脂に配合した樹脂組成物が数多く提案されている。例えば、特許文献1には、ポリアミド樹脂にフェノール樹脂を配合することで燃料透過バリア性が改善することが提案されている。しかしながら燃料透過バリア性を改善するために靭性に劣るフェノール樹脂を大量に配合すると、ポリアミド樹脂の長所である靭性が低下し、特に高温での熱処理後の靱性低下が著しく、自動車エンジン周りなど高温にさらされる用途への適用が困難である。そのため、靱性とバリア性の両方が改善されたポリアミド樹脂組成物が望まれている。
また、特許文献2には、ポリアミド樹脂中にポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂)がナノメートルオーダーで分散した、低温での耐衝撃性に優れ、かつ、耐薬品性およびバリア性が改善されたポリアミド樹脂組成物が提案されている。しかし、該樹脂組成物の特性は、靱性とバリア性の両方を必要とする場合には必ずしも十分ではなかった。
特表2007−502358号公報(特許請求の範囲)
特開2007−161963公報(特許請求の範囲)
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであり、バリア性、靱性および熱老化性のバランスに優れるポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とする。ここで、熱老化性とは、高温での熱処理後の物性保持である。
すなわち、本発明は、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂およびポリフェニレンスルフィド樹脂を含むポリアミド樹脂組成物であって、各成分の配合量が、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(b)変性ポリオレフィン樹脂5〜40重量部、(c)未変性ポリオレフィン樹脂0〜30重量部、(d)フェノール樹脂1〜20重量部、(e)ポリフェニレンスルフィド樹脂1〜10重量部であるポリアミド樹脂組成物である。
また、本発明は、上記のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品を提供するものである。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、バリア性、靱性および熱老化性のバランスに優れるため、幅広い環境下で薬液およびガスのバリア性が必要とされる用途に使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂およびPPS樹脂を含む樹脂組成物である。
本発明は、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂およびPPS樹脂を含む樹脂組成物である。
本発明のポリアミド樹脂組成物においては、ポリオレフィン樹脂として、(b)変性ポリオレフィン樹脂を用いることが必須である。(b)変性ポリオレフィン樹脂の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して5〜40重量部であり、好ましくは10〜30重量部である。変性ポリオレフィン樹脂の配合量が40重量部を超えるとバリア性の低下を引き起こすため好ましくない。また変性ポリオレフィン樹脂の配合量が5重量部未満になると本発明の特徴である靭性が低下するため好ましくない。
(c)未変性ポリオレフィン樹脂の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して0〜30重量部である。(c)未変性ポリオレフィン樹脂は、本発明のポリアミド樹脂組成物において、必ずしも必須の成分ではないが、(c)未変性ポリオレフィン樹脂を(b)変性ポリオレフィン樹脂と併用して用いる方が、本発明の特徴であるバリア性と靱性のバランスから好ましい。そのため、(c)未変性ポリオレフィン樹脂をポリアミド樹脂100重量部に対して5重量部以上配合することが好ましく、より好ましい配合量は5〜20重量部である。未変性ポリオレフィン樹脂の配合量が30重量部を超えるとバリア性の低下を引き起こすため好ましくない。
(d)フェノール樹脂の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して1〜20重量部であり、好ましくは1〜4.5重量部である。フェノール樹脂の配合量が20重量部を超えると靱性の低下、特に熱老化時の靱性低下を引き起こすため好ましくない。またフェノール樹脂の配合量が1重量部未満になると、本発明の特徴であるバリア性が低下するため好ましくない。
(e)PPS樹脂の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して1〜10重量部であり、好ましくは2〜5重量部である。PPS樹脂を配合すると、バリア性を向上することができる。また、PPS樹脂をフェノール樹脂と併用することで、フェノール樹脂配合時の弱点である熱老化時の靱性低下を抑制することができる。PPS樹脂の配合量が1重量部未満ではバリア性の改良効果が得にくい。また、PPS樹脂の配合量が10重量部より大きいと、靭性が低下するため好ましくない。
本発明で用いられる(a)ポリアミド樹脂とは、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる構成成分とするポリアミドである。その主要構成成分の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸;ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム;ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、あるいは芳香族のジアミン;およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、あるいは芳香族のジカルボン酸が挙げられる。本発明においては、これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
本発明において、特に有用なポリアミド樹脂は、150℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたポリアミド樹脂である。具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの混合物などが挙げられる。
とりわけ好ましいポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66コポリマー、またナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/12、およびナイロン6T/6コポリマーなどのヘキサメチレテレフタルアミド単位を有する共重合体を挙げることができる。これらのポリアミド樹脂の複数を、耐衝撃性、成形加工性などの必要特性に応じて、混合物として用いることも好適である。
これらポリアミド樹脂の重合度には、特に制限がないが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として、1.5〜7.0の範囲のポリアミド樹脂が好ましく、特に2.0〜6.0の範囲のポリアミド樹脂が好ましい。
また、ポリアミド樹脂には、長期耐熱性を向上させるために銅化合物を添加することも好ましい。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの錯化合物などが挙げられる。なかでも1価の銅化合物、とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましい。酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などが特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。配合量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることがある。銅化合物と併用してハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができる。ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
本発明で使用される(b)変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリアミド樹脂に対して親和性を有する官能性基をその分子中に含むポリオレフィンであり、特にエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、およびカルボン酸金属塩基の中から選ばれた少なくとも1種をポリマー分子鎖中に含むポリオレフィンであり、特に好ましくは不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたエチレン・α−オレフィン共重合体である。
(b)変性ポリオレフィン樹脂の成分として好ましく用いられる不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたエチレン・α−オレフィン共重合体とは、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンの少なくとも1種以上との共重合体と変性した樹脂であり、前記の炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも、炭素数3〜12のα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上の点から好ましい。このエチレン・α−オレフィン系共重合体は、α−オレフィン含量が好ましくは1〜30モル%、より好ましくは2〜25モル%、さらに好ましくは3〜20モル%である。さらに1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエン、5−エチリデンノルボルネン、5−エチル−2,5−ノルボルナジエン、5−(1’−プロペニル)−2−ノルボルネンなどの非共役ジエンの少なくとも1種が共重合されていてもよい。
酸変性に用いられる変性剤としては、不飽和カルボン酸またはその誘導体が挙げられ、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メチルマレイン酸、メチルフマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸およびこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸水素メチル、イタコン酸水素メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ−(2,2,1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル、および5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸などである。これらの中では、不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸や無水マレイン酸が好適である。
これらの不飽和カルボン酸またはその誘導体成分をポリオレフィン樹脂に導入する方法は特に制限なく、予め主成分であるオレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体化合物を共重合せしめたり、未変性ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸またはその誘導体化合物をラジカル開始剤を用いてグラフト化処理を行って導入するなどの方法を用いることができる。不飽和カルボン酸またはその誘導体成分の導入量は変性ポリオレフィン中のオレフィンモノマ全体に対して好ましくは0.001〜40モル%、より好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であることが適当である。
(b)変性ポリオレフィン樹脂のMFR(ASTM D 1238、190℃、2160g荷重)は0.01〜70g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは0.03〜60g/10分である。MFRが0.01g/10分未満の場合は流動性が悪くなる。一方、MFRが70g/10分を超える場合は成形品の形状によっては衝撃強度が低くなる場合もある。
本発明で使用される(c)未変性ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ1−ブテン、ポリ1−ペンテン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体、未変性のエチレン・α−オレフィン共重合体、ビニルアルコールエステル単独重合体、ビニルアルコールエステル単独重合体の少なくとも一部を加水分解して得られる重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)とビニルアルコールエステルとの共重合体の少なくとも一部を加水分解して得られる重合体]、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化した共重合体]、共役ジエンとビニル芳香族炭化水素とのブロック共重合体、および、そのブロック共重合体の水素化物などが用いられる。
なかでも、未変性のエチレン・α−オレフィン共重合体、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体]、[(エチレンおよび/またはプロピレン)と(不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸エステル)との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属塩化した共重合体]が好ましく、特に好ましくは、エチレン・α−オレフィン共重合体である。
本発明で使用される(c)未変性ポリオレフィン樹脂の成分として用いられる好ましいエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンからなるエチレン・α−オレフィン系共重合体は、エチレンおよび炭素数3〜20を有する少なくとも1種以上のα−オレフィンを構成成分とする共重合体である。上記の炭素数3〜20のα−オレフィンとして、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、 4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも炭素数6から12であるα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上、改質効果の一層の向上が見られるためより好ましい。
本発明の(c)未変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(以下MFRと略す。:ASTM D 1238、190℃、2160g荷重)は0.01〜70g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは0.03〜60g/10分である。MFRが0.01g/10分未満の場合は流動性が悪く、70g/10分を超える場合は成形品の形状によっては衝撃強度が低くなる場合もあるので注意が必要である。
本発明で用いられる(d)フェノール樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、メチロール型レゾール樹脂、ジメチレンエーテル型レゾール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で溶融した油溶融レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でも熱老化性と靱性、バリア性のバランスの点からフェノールノボラック樹脂およびクレゾールノボラック樹脂が好ましく、特にクレゾールノボラック樹脂が好ましい。
本発明で使用される(e)PPS樹脂としては、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体を用いることができる。
耐熱性の観点からは前記構造式で示される繰り返し単位を70モル%以上、さらには90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記のいずれかの構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。なかでもp−フェニレンスルフィド/m−フェニレンスルフィド共重合体(m−フェニレンスルフィド単位20%以下)などは、成形加工性とバリア性を兼備する点で好ましく用いられる。
かかるPPS樹脂は、ポリハロゲン芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で反応させて得られるPPS樹脂を回収および後処理することで、高収率で製造することができる。具体的には特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによっても製造できる。前記のように得られたPPS樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することもできる。
PPS樹脂を加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において、希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常、170〜280℃が選択され、好ましくは200〜270℃である。また、加熱処理時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間である。この両者をコントロールすることにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でも、また回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくより均一に処理するためには、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いることが好ましい。
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は、通常の熱風乾燥機でも、また回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくもより均一に処理するためには、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明で用いられる(e)PPS樹脂は、洗浄処理を施されたPPS樹脂であることが好ましい。かかる洗浄処理の具体的方法としては、酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶媒洗浄処理などが例示できる。これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いても良い。
PPS樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はないが、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド、スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール、フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましい。これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上を混合して使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。また有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
PPS樹脂を熱水で洗浄処理する場合の具体的方法としては、以下の方法が例示できる。すなわち、熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
また、熱水で洗浄処理する場合、周期表の第2族の金属元素を含有する水溶液で処理することが好ましく用いられる。周期表の第2族の金属元素を含む水溶液とは、上記水に、周期表の第2族の金属元素を有する水溶性塩を添加したものである。水に対する周期表の第2族の金属元素を有する水溶性塩の濃度は、0.001〜5重量%程度の範囲が好ましい。
ここで使用する周期表の第2族の金属元素の中でも好ましい金属元素としては、Ca、Mg、BaおよびZnなどが例示でき、その対アニオンとしては、酢酸イオン、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオンおよび炭酸イオンなどが挙げられる。より具体的で好適な化合物としては、酢酸Ca、酢酸Mg、酢酸Zn、CaCl2、CaBr2、ZnCl2、CaCO3、Ca(OH)2およびCaOなどが例示でき、特に好ましくは、酢酸Caである。
周期表の第2族の金属元素を含有する水溶液の温度は130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。洗浄温度の上限については特に制限はないが、通常のオートクレーブを用いる場合には250℃程度が限界である。
かかる周期表の第2族の金属元素を含む水溶液の浴比は、重量比で乾燥ポリマー1に対し、2〜100の範囲が好ましく選択され、4〜50の範囲がより好ましく、5〜15の範囲であることがさらに好ましい。
PPS樹脂を酸水溶液で洗浄処理する場合の具体的方法としては、以下の方法が例示できる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はPPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などがあげられる。中でも酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は、残留している酸や塩などを除去するために、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。
PPS樹脂の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に制限はないが、メルトフローレート(MFR)が10〜10000g/10分(315.5℃、5kg荷重)のものが好ましく使用され、50〜1000g/10分の範囲のものがより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、(a)ポリアミド樹脂と(d)フェノール樹脂および(e)PPS樹脂の相溶性を向上させる目的で、(f)相溶化剤をさらに添加することが好ましい。(f)相溶化剤の添加により、ポリアミド樹脂中における、フェノール樹脂およびPPS樹脂の分散粒径を細かく、かつ、界面相を厚くでき、本発明の課題である靱性とバリア性のバランスを改良することができる。
(f)相溶化剤の具体的な例としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランなどの有機シラン化合物、および多官能エポキシ化合物などが挙げられる。これらは2種以上同時に使用することもできる。
ここで、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物としては、一分子中にアミノ基を1個以上有し、アルコキシ基を2個あるいは3個有するシラン化合物が好ましく用いられる。例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物としては、一分子中にエポキシ基を1個以上有し、アルコキシ基を2個あるいは3個有するシラン化合物が好ましく用いられる。例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物としては、一分子中にイソシアネート基を1個以上有し、アルコキシ基を2個あるいは3個有するシラン化合物が好ましく用いられる。例えば、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシランなどが挙げられる。中でも安定した高い靱性向上効果を得る上で、エポキシシクロヘキシル基またはイソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物が好ましく、さらにイソシアネート基を含有するアルコキシシラン化合物がより好ましい。
多官能エポキシ化合物は、エポキシ基を分子中に2個以上含む化合物であり、液体または固体状のものを使用することができる。例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのα−オレフィンとアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジルなどのα,β−不飽和酸グリシジルエステルとの共重合体;ビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロカテコール、ビスフェノールF、サリゲニン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールS、トリヒドロキシ−ジフェニルジメチルメタン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,5−ジヒドロキシナフタレン、カシューフェノール、2,2,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン等を構成単位として含むビスフェノール−グリシジルエーテル系エポキシ化合物;フタル酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ化合物;N−グリシジルアニリン等のグリシジルアミン系エポキシ化合物;ノボラック型フェノール樹脂にエピクロルヒドリンを反応させたノボラック型エポキシ樹脂等が例示される。
(f)相溶化剤としては、ポリアミド樹脂およびPPS樹脂の両方と反応性の高い化合物が好ましい。具体的には、ビスフェノール−グリシジルエーテル系エポキシ化合物、エポキシ基を有する有機シラン化合物およびイソシアネート基を有する有機シラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく用いられる。
(f)相溶化剤の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、さらに好ましくは0.1〜5重量部である。0.01重量部以下の配合量においては十分な相溶性向上効果が得られない場合がある。また、配合量が10重量部を超える場合は、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が著しく増加し、流動性が低下する場合がある。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、高い耐熱性および熱安定性を保持するために、フェノール系およびリン系化合物の中から選ばれた1種以上の(g)酸化防止剤をさらに配合することが好ましい。酸化防止剤の配合量は、耐熱改良効果の観点から、ポリアミド樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、特に0.02重量部以上であることが好ましい。成形時に発生するガス成分の観点からは、酸化防止剤の配合量は、5重量部以下、特に1重量部以下であることが好ましい。また、フェノール系およびリン系酸化防止剤を併用して使用することは、耐熱性、熱安定性および流動性保持効果が大きく好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物が好ましく用いられる。具体例としては、トリエチレングリコール−ビス[3−t−ブチル−(5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。
中でも、エステル型高分子ヒンダードフェノールタイプが好ましい。具体的には、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが好ましく用いられる。
次にリン系酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールージ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビスフェニレンホスファイト、ジ−ステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリフェニルホスファイト、3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォネートジエチルエステルなどが挙げられる。中でも、コンパウンド中に酸化防止剤の揮発や分解を少なくするために、酸化防止剤の融点が高いものが好ましく用いられる。
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂およびPPS樹脂以外の樹脂を添加することが可能である。該その他の樹脂の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して30重量部以下が好ましく、特に20重量部以下が好ましい。
樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
また、改質を目的として、以下のような化合物の添加が可能である。イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤;ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤;タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤;モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤;次亜リン酸塩などの着色防止剤;滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。上記化合物は、何れも本発明の効果を損なわない範囲において添加することが好ましい。これらの添加剤の配合量は、ポリアミド樹脂100重量部に対して、20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下がより好ましく、1重量部以下がさらに好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で充填材を配合して使用することも可能である。かかる充填材の具体例としてはガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカ、ワラステナイトウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはタルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が用いられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これらの充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物の融点は、(a)ポリアミド樹脂の融点よりも0.5〜10℃低いことが好ましく、さらに0.6℃〜2.5℃低いことがより好ましい。ポリアミド樹脂組成物の融点が(a)ポリアミド樹脂の融点より0.5℃以上低下することで溶融成形温度を低くでき、成形サイクルを短くできるので好ましい。一方、ポリアミド樹脂組成物の融点が(a)ポリアミド樹脂の融点より、10℃を超えて低下すると、ポリアミド樹脂組成物の耐熱性および熱安定性が低下するため好ましくない。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、単軸または2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなど、公知の溶融混練機に材料を供給して、ポリアミド樹脂の融点以上の加工温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。本発明のバリア性と靱性を上述の如くコントロールするためには、押出時の混練エネルギー(吐出量あたりの押出機仕事量(kWh/kg))を大きくすることが好ましい。これによってポリオレフィン樹脂およびフェノール樹脂を、ポリアミド樹脂中に微分散できる。好ましい混練エネルギーは、0.15以上であり、特に好ましくは0.20以上である。しかしながら、通常、混練エネルギーを大きくすると、せん断による発熱で樹脂温度が上昇し、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂およびフェノール樹脂の熱分解を引き起こし、目的の物性を発現することが困難となる。そのため押出時の樹脂温度は240℃〜320℃にすることが好ましい。このように混練エネルギーと樹脂温度を制御することにより、目的の物性を発現することが可能となる。具体的には、2軸押出機を使用する場合、通常2軸押出機のシリンダー構成は、投入された樹脂を可塑化する可塑化部と可塑化された溶融樹脂を溶融混練する混練部に分けることができる。2軸押出機を使用して溶融混練する際のシリンダー温度について、可塑化部の温度は、ポリアミド樹脂の融点〜融点+80℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは融点〜融点+30℃である。一方、混練部のシリンダー温度は、発熱を抑えるために100〜290℃の範囲とすることが好ましい。この際、原料の混合順序には特に制限はなく、全ての原材料を配合後、上記の方法により溶融混練する方法;一部の原材料を配合後、上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法;あるいは一部の原材料を配合後、単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。バリア性と靱性のバランスの観点からは、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂を十分に混練した後、フェノール樹脂およびPPS樹脂をサイドフィーダーを用いて途中添加することが好ましい。また、少量添加剤成分については、成形前に添加することも可能である。具体的には、他の成分を上記の方法などで混練し、ペレット化した後、成形前に、該ペレットに少量添加剤成分をドライブレンドするなどすればよい。
かくして得られるポリアミド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、圧縮成形などの通常公知の方法を用いて、射出成形品、押出成形品、圧縮成形品、シート、フィルムなどの成形品とすることができる。本発明のポリアミド樹脂組成物は、その優れた特性を活かし、自動車・車両関連部品、電気・電子関連部品、家庭・事務用電気製品関連部品、コンピューター関連部品、機械関連部品などの幅広い用途に有用に用いることができる。特に、自動車・車両関連部品として、インテークマニホールド、ヒンジ付きクリップ、結束バンド、レゾネーター、エアークリーナー、エンジンカバー、ロッカーカバー、シリンダーヘッドカバー、タイミングベルトカバー、ガソリンタンク、ガソリンサブタンク、ラジエータータンク、インタークーラータンク、オイルリザーバータンク、オイルパン、電動パワステギヤ、オイルストレーナー、エンジンマウント、ジャンクションブロック、リレーブロック、コネクター、コルゲートチューブ、プロテクター等の自動車用アンダーフード部品用途に好適である。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。材料特性評価については下記の方法に従って行った。
[成形下限圧]サンプルを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV、(シリンダー温度290℃、金型温度80℃)を用いて射出成形した。射出圧力を変えながら、ASTM1号ダンベルを成形し、充填不良を起こすことなく成形することができる最低充填圧力を成形下限圧とした。成形下限圧が低いほど、材料の流動性が優れていることを意味する。
[成形性]サンプルを、示差走査型熱量計(セイコーインスツル(株)製RDC220)に用いて測定した。室温から20℃/分の昇温条件で300℃まで昇温させて5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで冷却した際に観察される発熱ピーク温度(Tc)とピーク面積(ΔHc)を測定した。Tcが高く、ΔHcの絶対値が大きいほど、材料が結晶性に優れ、かつ、固化し易く、射出成形時の成形性が優れることを意味する。
[融点]サンプルを、示差走査型熱量計(セイコーインスツル(株)製RDC220)を用いて測定した。室温から20℃/分の昇温条件で300℃まで昇温させて5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で300℃まで昇温した際に観察される吸熱ピーク温度(Tm)を融点とした。
[引張強度]ASTM−D638(1997年改訂)に従って引張試験を行い、強度および破断伸びを測定した。
[靭性]ASTM−D256(1997年改訂)に従って23℃でのノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
[低温での靭性]温度雰囲気を−20℃にした以外はASTM−D256に従ってノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定した。
[熱老化性]引張試験片およびアイゾット衝撃試験片について、上記のようにして、引張伸びおよびアイゾット衝撃強度を測定し、初期物性とした。引張試験片およびアイゾット衝撃試験片を高温槽で120℃、1000時間放置して熱老化させた後、高湿恒温槽で60℃、95%RH、24時間放置した。試験片を取り出した後、初期物性と同様の方法で引張伸びおよびアイゾット衝撃強度を測定した。熱老化後の数値が高いほど、材料が熱老化性に優れることを意味する。
[バリア性]サンプルを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV、シリンダー温度290℃、金型温度80℃)を用いて射出成形し、1mm厚の円盤状試験片(直径6cm)を作成した。得られた試験片をGTR−30XATK(ヤナコ分析工業(株)製)に取り付けて、試験片上部のセルにモデルガソリン((A)トルエンとイソオクタンの体積比50/50の混合物と(B)エタノールを90対10体積比に混合したアルコールガソリン混合物)を仕込み、JIS K7126 A法(差圧法、2006年改訂)に従って、測定温度60℃で透過係数を測定した。透過係数が小さいほど、材料のバリア性が優れることを意味する。
[実施例1、2]、[比較例1〜4]
下に示す各成分を表1〜4に記載の各割合でドライブレンドした後、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:35)で、シリンダー温度、スクリュー回転数を表1および表2に示した条件に設定して溶融混練し、ストランドとして押出した後、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃で一晩真空乾燥したペレットを用い、射出成形(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV、シリンダー温度290℃、金型温度80℃)により各種試験片を調製した。前記のようにして各サンプルの成形性、引張特性、靭性、熱老化性およびバリア性を評価した結果は、表1〜4に示すとおりである。実施例1、2では比較例1〜4と比較して、成形性、靱性、熱老化性およびバリア性がバランス良く優れるものであった。
下に示す各成分を表1〜4に記載の各割合でドライブレンドした後、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:35)で、シリンダー温度、スクリュー回転数を表1および表2に示した条件に設定して溶融混練し、ストランドとして押出した後、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃で一晩真空乾燥したペレットを用い、射出成形(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV、シリンダー温度290℃、金型温度80℃)により各種試験片を調製した。前記のようにして各サンプルの成形性、引張特性、靭性、熱老化性およびバリア性を評価した結果は、表1〜4に示すとおりである。実施例1、2では比較例1〜4と比較して、成形性、靱性、熱老化性およびバリア性がバランス良く優れるものであった。
[実施例3〜15]、[比較例5〜7]
下に示す各成分を表1〜4に記載の各割合で、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)を用いて溶融混練した。各成分のうち、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤は、ドライブレンドしたものを押出機の根本の供給口から添加し、フェノール樹脂、PPS樹脂および相溶化剤はドライブレンドしたものを押出機の途中(L/D:20付近)に設けた供給口から添加した以外は、実施例1と同様に樹脂組成物のペレットを製造し、評価を行った。評価結果を表1〜4に示す。実施例3〜15では、比較例1〜7と比較して、成形性、靱性、熱老化性およびバリア性がバランス良く優れるものであった。
下に示す各成分を表1〜4に記載の各割合で、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)を用いて溶融混練した。各成分のうち、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂および酸化防止剤は、ドライブレンドしたものを押出機の根本の供給口から添加し、フェノール樹脂、PPS樹脂および相溶化剤はドライブレンドしたものを押出機の途中(L/D:20付近)に設けた供給口から添加した以外は、実施例1と同様に樹脂組成物のペレットを製造し、評価を行った。評価結果を表1〜4に示す。実施例3〜15では、比較例1〜7と比較して、成形性、靱性、熱老化性およびバリア性がバランス良く優れるものであった。
本実施例および比較例に用いた(a)ポリアミド樹脂は以下の通りである。
(a−1):融点262℃のナイロン66樹脂(東レ(株)製“アミラン(R)”CM3001−N)
(a−2):融点262℃のナイロン66樹脂(東レ(株)製“アミラン(R)”CM3006、耐熱剤入り)
(a−3):融点225℃のナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン(R)”CM1010)。
(b)変性ポリオレフィン樹脂は以下の通りである。
(b−1):無水マレイン酸でグラフトしたエチレン・プロピレン・ジエンポリオレフィン(デュポン(株)製“フサボンド(R)”N MN―416D)
(b−2):酸変性エチレン・1−ブテン共重合体(三井化学(株)製“タフマー(R)”MH7020)
(c)未変性ポリオレフィン樹脂は以下の通りである。
(c−1):線状低密度ポリエチレン(LLDPE:三井化学(株)製“エボリュー(R)”SP0540)
(c−2):エチレン・1−ブテン共重合体(三井化学(株)製“タフマー(R)”TX−610)
(d)フェノール樹脂は以下の通りである。
(d−1):フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製PR−50731)
(d−2):クレゾールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製PR−53662)
(d−3):キシレン変性フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製PR−51992)
(e)PPS樹脂は以下の通りである。
(e−1):融点280℃、MFR=100g/10分(315.5℃、5kg荷重)のPPS樹脂(東レ(株)製M2088)
(e−2):融点280℃、MFR=75g/10分(315.5℃、5kg荷重)のPPS樹脂(東レ(株)製M1900)
(f)相溶化剤は以下の通りである。
(f−1):エポキシ当量875〜975、分子量1600のビスフェノールA型エポキシ樹脂
(f−2):β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−303)
(g)酸化防止剤は以下の化合物を用いた。
(g−1):ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](東レ・ファインケミカル(株)製TTHP)
(g−2):N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(東レ・ファインケミカル(株)製TTAD)
(g−3):ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト((株)ADEKA製アデカスタブPEP−36)。
(a−1):融点262℃のナイロン66樹脂(東レ(株)製“アミラン(R)”CM3001−N)
(a−2):融点262℃のナイロン66樹脂(東レ(株)製“アミラン(R)”CM3006、耐熱剤入り)
(a−3):融点225℃のナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン(R)”CM1010)。
(b)変性ポリオレフィン樹脂は以下の通りである。
(b−1):無水マレイン酸でグラフトしたエチレン・プロピレン・ジエンポリオレフィン(デュポン(株)製“フサボンド(R)”N MN―416D)
(b−2):酸変性エチレン・1−ブテン共重合体(三井化学(株)製“タフマー(R)”MH7020)
(c)未変性ポリオレフィン樹脂は以下の通りである。
(c−1):線状低密度ポリエチレン(LLDPE:三井化学(株)製“エボリュー(R)”SP0540)
(c−2):エチレン・1−ブテン共重合体(三井化学(株)製“タフマー(R)”TX−610)
(d)フェノール樹脂は以下の通りである。
(d−1):フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製PR−50731)
(d−2):クレゾールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製PR−53662)
(d−3):キシレン変性フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト(株)製PR−51992)
(e)PPS樹脂は以下の通りである。
(e−1):融点280℃、MFR=100g/10分(315.5℃、5kg荷重)のPPS樹脂(東レ(株)製M2088)
(e−2):融点280℃、MFR=75g/10分(315.5℃、5kg荷重)のPPS樹脂(東レ(株)製M1900)
(f)相溶化剤は以下の通りである。
(f−1):エポキシ当量875〜975、分子量1600のビスフェノールA型エポキシ樹脂
(f−2):β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製KBM−303)
(g)酸化防止剤は以下の化合物を用いた。
(g−1):ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](東レ・ファインケミカル(株)製TTHP)
(g−2):N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(東レ・ファインケミカル(株)製TTAD)
(g−3):ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト((株)ADEKA製アデカスタブPEP−36)。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、バリア性、低温から高温までの靱性および熱老化性のバランスに優れるため、幅広い環境下で薬液およびガスのバリア性が必要とされる用途において使用することができる。また成形性にも優れ、前記の特徴を活かして、一般機器、自動車用部品、電気電子用部品などへの使用にも適している。
Claims (8)
- ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂およびポリフェニレンスルフィド樹脂を含むポリアミド樹脂組成物であって、各成分の配合量が、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(b)変性ポリオレフィン樹脂5〜40重量部、(c)未変性ポリオレフィン樹脂0〜30重量部、(d)フェノール樹脂1〜20重量部、(e)ポリフェニレンスルフィド樹脂1〜10重量部であるポリアミド樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂組成物の融点が、(a)ポリアミド樹脂の融点よりも0.5〜10℃低い請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記(c)未変性ポリオレフィン樹脂の配合量が、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、5〜30重量部である請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記(d)フェノール樹脂の配合量が、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、1〜4.5重量部である請求項1〜3のいずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記(d)フェノール樹脂がクレゾールノボラック樹脂である請求項1〜4いずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
- ポリアミド樹脂100重量部に対して、(f)相溶化剤を0.01〜10重量部さらに配合してなる請求項1〜5いずれか記載のポリアミド樹脂組成物。
- (f)相溶化剤がビスフェノール−グリシジルエーテル系エポキシ化合物、エポキシ基を有する有機シラン化合物およびイソシアネート基を有する有機シラン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項6記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜7いずれか記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
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