JP4529218B2 - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形時にシリンダー内で滞留させても良流動性で、ウエルド強度、高温雰囲気下での剛性および成形品のヒケなどの表面外観不良を低減させたポリアミド樹脂組成物および成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ナイロン6、ナイロン66に代表されるポリアミド樹脂は優れた機械特性を始めとして、耐摩耗性、電気的特性、耐薬品性及び加工性を有するため、エンジニアリングプラスチックとして自動車分野、電気・電子分野、その他建築・雑貨分野などで幅広く使用されている。
【0003】
近年、各分野において高度化かつ多様化し、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、例えば、自動車分野においては排ガスなどによる環境破壊をいくらかでも抑制するために自動車を形成している部品の小型化および薄肉化による軽量化が行われている。また電気・電子分野ではパソコンが最近携帯されるようになってきているため、パソコン筐体の軽量化が望まれている。しかし、これらの用途に用いるポリアミド樹脂は、更なる薄肉化の要求に対し、流動性の改良が望まれているのが現状である。
【0004】
そこで種々の新規特性を有するポリマーが数多く開発され、市場に供されているが、なかでも分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性ポリマーが優れた流動性と機械的性質を有する点で注目され、特に高い強度、剛性を有することから電気・電子分野や事務機器分野などで小型成形品としての需要が大きくなってきている。これら2種の材料の特性を付与しようと液晶性樹脂と熱可塑性樹脂のブレンドが注目されており、特開昭56−115357号公報、特開平1−259062号公報、特開平3−54222号公報、特開平5−86286号公報、特開平9−12875号公報などが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、両ポリマーを単純にブレンドしても相溶性が十分でないことから、大きな物性向上が見られず、相溶性が悪いと異物となり衝撃強度の低下が起こる。あるいは大型成形機など滞留時間の長いもの等では、アミド・エステル交換反応が起こり、本来流動性を向上させる目的のものが逆に流動性が低下することがわかった。例えば、特開平9−12875号公報に開示されているように交換反応を抑制するためにポリアミドの重合時に末端封鎖を行ったのち、液晶性樹脂との単純なブレンドを行っても両ポリマーの相溶性が十分とは言えず、物性低下を招くばかりでなく、例えば大型成形品を取得するために大型成形機などを用いる場合には、必然的にシリンダー内で滞留が起こり、このような場合、アミド・エステル交換反応のためと推察されるが、分解発泡あるいは増粘し、ポリアミド単独より流動性が低下することがわかった。
【0006】
よって本発明は、上述の問題を解消し、従来のポリアミド樹脂の加工温度で加工可能であり、かつポリアミド樹脂の従来の特性を損なうことなく、特異的なモルホロジーを形成させるため、成形時にシリンダー内で滞留させても良流動性で、新たにウエルド強度、高温雰囲気下での剛性および成形品のヒケなどの表面外観を不良を低減させたポリアミド樹脂組成物の取得を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は
(1)(A)(a1)結晶融解熱量が1cal/g(4.186J/g)以上のポリアミド樹脂99〜50重量%と(a2)結晶融解熱量が1cal/g(4.186J/g)未満のポリアミド樹脂50〜1重量%からなるポリアミド樹脂100重量部、(B)液晶性樹脂0.01〜100重量部および(C)酸無水物0.01〜5重量部を配合し、ポリアミド樹脂(A)および液晶性樹脂(B)の合計100重量部に対し、炭素繊維0.5〜300重量部をさらに添加してなるポリアミド樹脂組成物、
(2)液晶性樹脂(B)の液晶開始温度がポリアミド樹脂(a1)の融点以下であることを特徴とする上記(1)記載のポリアミド樹脂組成物、
(3)酸無水物(C)が無水コハク酸、無水1,8−ナフタル酸、無水フタル酸から選ばれた1種以上である上記(1)または2記載のポリアミド樹脂組成物、
(4)上記(1)〜(3)いずれか記載のポリアミド樹脂組成物で構成してなる成形品であって、成形品が厚み1.0mm以下の薄肉部を有する箱形成形品である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
【0009】
本発明で用いられる結晶融解熱量が1cal/g(4.186J/g)以上のポリアミド樹脂(a1)とは、示差走査熱量計(DSC)で1cal/g(4.186J/g)以上の結晶融解熱量を示すポリアミドであり、通常、結晶性のポリアミドとして知られ、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−アミノカプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から、結晶融解熱量が1cal/g(4.186J/g)以上となるよう1種または2種以上を選択し、(共)重合して得られるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0010】
本発明において、特に有用な結晶融解熱量が1cal/g(4.186J/g)以上のポリアミド樹脂は、200℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れたナイロン樹脂であり、具体的な例としてはポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリドデカミド/ポリヘキサメチレンテレフタラミドコポリマー(ナイロン12/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2ーメチルペンタメチレンテレフタルアミド)コポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリキシレンアジパミド(ナイロンXD6)およびこれらの混合物ないし共重合体などが挙げられる。
【0011】
とりわけ好ましいものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン46、ナイロン9T、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン6/12コポリマー、ナイロン6T/6コポリマー、ナイロン66/6Tコポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン66/6T/6I、ナイロン12/6T、ナイロン6T/M5Tコポリマーなどの例を挙げることができ、更にこれらのナイロン樹脂を成形性、耐熱性、低吸水性などのその他の必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
【0012】
本発明に用いる結晶融解熱量1cal/g(4.186J/g)以上のポリアミド樹脂のアミノ末端基濃度は、特に限定しないが、100×10-6当量/g以下が好ましく、70×10-6当量/g以下がより好ましくは、50×10-6当量/g以下が特に好ましい。
【0013】
本発明の結晶融解熱量1cal/g(4.186J/g)以上のポリアミド樹脂のアミノ末端基濃度の測定方法は、例えば、試料20mgをNMR試料管にはかりとり、溶媒(ヘキサフロロイソプロパノール-d2)を0.6ml加え溶解し、観測周波数599.9MHzのNMR装置を用いて測定を行う。
【0014】
これら結晶融解熱量1cal/g(4.186J/g)以上のポリアミド樹脂の重合度にはとくに制限がなく、1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
【0015】
本発明に用いる結晶融解熱量が1cal/g(4.186J/g)未満のポリアミド樹脂とは、示差走査熱量計(DSC)で1cal/g(4.186J/g)未満の結晶融解熱量を示すポリアミドであり、通常、非晶性ポリアミドとして知られ、アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。その原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−アミノカプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルプロパン、イソホロンジアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸などの脂肪族、脂環族、芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、これらの原料から結晶融解熱量が1cal/g(4.186J/g)未満となるように1種または2種以上を選択し、(共)重合して得られるナイロンホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0016】
本発明において特に有用な1cal/g(4.186J/g)未満の結晶融解熱量を示すポリアミドの具体例としてテレフタル酸から生成した構造単位および2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンから生成した構造単位からなるポリアミド樹脂、イソフタル酸から生成した構造単位、イソホロンジアミンから生成した構造単位およびラウロラクタムから生成した構造単位からなるポリアミド樹脂、イソフタル酸から生成した構造単位、アジピン酸から生成した構造単位およびヘキサメチレンジアミンから生成した構造単位からなるポリアミド樹脂、イソフタル酸から生成した構造単位、アジピン酸から生成した構造単位、ヘキサメチレンジアミンから生成した構造単位およびビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンから生成した構造単位からなるポリアミド樹脂、イソフタル酸から生成した構造単位、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンから生成した構造単位およびラウロラクタムから生成した構造単位からなるポリアミド樹脂、イソフタル酸から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位、アジピン酸から生成した構造単位、ヘキサメチレンジアミンから生成した構造単位および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから生成した構造単位からなるポリアミド樹脂、テレフタル酸から生成した構造単位およびビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンから生成した構造単位からなるポリアミド樹脂、イソフタル酸から生成した構造単位、アジピン酸から生成した構造単位、ヘキサメチレンジアミンから生成した構造単位およびビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンから生成した構造単位からなるポリアミド樹脂、アジピン酸から生成した構造単位、アゼライン酸から生成した構造単位および4,4’−ジアミノジシクロヘキシルプロパンから生成した構造単位からなるポリアミド樹脂、イソフタル酸から生成した構造単位およびヘキサメチレンジアミンから生成した構造単位からなるポリアミド樹脂等であり、これらのナイロン樹脂を成形性、耐熱性、低吸水性などのその他の必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
【0017】
これらポリアミド樹脂の重合度にはとくに制限がなく、1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が、1.5〜5.0の範囲、特に2.0〜4.0の範囲のものが好ましい。
【0018】
本発明に用いる結晶融解熱量が1cal/g(4.186J/g)未満のポリアミド樹脂のアミノ末端基濃度は、特に限定しないが、100×10-6当量/g以下が好ましく、70×10-6当量/g以下がより好ましくは、50×10-6当量/g以下が特に好ましい。
【0019】
本発明のポリアミド樹脂のアミノ末端基濃度の測定方法は、例えば、試料20mgをNMR試料管にはかりとり、溶媒(ヘキサフロロイソプロパノール-d2)を0.6ml加え溶解し、観測周波数599.9MHzのNMR装置を用いて測定を行うか、フェノールエタノール混液(PEA)25mlに試料0.5g計りとり、0.02Nの塩酸で中和滴定する方法などが挙げられる。
【0020】
本発明のポリアミド樹脂(A)である結晶融解熱量が1cal/g(4.186J/g)以上のポリアミド樹脂(a1)と結晶融解熱量が1cal/g(4.186J/g)未満のポリアミド樹脂(a2)の両ポリアミド樹脂((a1)と(a2)の合計)100重量%に対する混合比は、流動性、ウエルド強度、高温雰囲気下での剛性、成形品表面のヒケなどの表面外観改良などの点から、(a1)成分99〜50重量%、(a2)成分のポリアミド樹脂1〜50重量%であり、好ましくは、(a1)成分97〜55重量%、(a2)成分3〜45重量%、より好ましくは(a1)成分95〜70重量%、(a2)成分5〜30重量%である。
【0021】
ここで、結晶融解熱量とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2)の結晶融解熱量(ΔHcal/g)を指す。また、Tm2を融点とする。
【0022】
本発明の液晶性樹脂(B)は、異方性溶融相を形成し得る樹脂であり、例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル、あるいは、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミドなどが挙げられる。
【0023】
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位、芳香族ジオキシ単位としては、例えば、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどから生成した構造単位、芳香族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸などから生成した構造単位、芳香族イミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールなどから生成した構造単位が挙げられる。
【0024】
液晶性ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位ならびに、芳香族ジヒドロキシ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸およびアジピン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよびハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位ならびに、テレフタル酸および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位およびテレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位ならびに、テレフタル酸および/またはセバシン酸から生成した構造単位から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位および、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0025】
異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルの好ましい例としては、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶ポリエステル、または、(I)、(III) および(IV)の構造単位からなる異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0026】
【化1】
【0027】
(ただし式中のR1は
【0028】
【化2】
【0029】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【0030】
【化3】
【0031】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。
【0032】
これらのうちR1としては
【0033】
【化4】
【0034】
が好ましい。また、R2としては
【0035】
【化5】
【0036】
であるものが特に好ましい。
【0037】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記構造単位(I)、(III)、(IV)からなる共重合体および/または上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体であり、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0038】
すなわち、上記構造単位(I)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は上記構造単位(I)が構造単位(I)および(III)の合計に対して30〜80モル%が好ましく、45〜75モル%がより好ましい。また、構造単位(III)と構造単位(IV)は実質的に等モルであることが好ましい。
【0039】
また、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜85モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜15モル%がより好ましい。また、構造単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0040】
ここで実質的に等モルとは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットが等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0041】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I)〜(IV)以外にp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0042】
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0043】
本発明において使用する上記液晶性樹脂の基本的な製造方法は、特に制限がなく、基本的には公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0044】
例えば、上記液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−ヒドロキシ安息香酸を除く成分のみから得られたポリエステルとp−アセトキシ安息香酸とを乾燥窒素気流下で加熱溶融し、アシドリシス反応によって共重合ポリエステルフラグメントを生成させ、次いで減圧し増粘させ、液晶性ポリエステルを製造する方法
(2)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(5)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(6)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(2)または(3)の方法により液晶ポリエステルを製造する方法。
【0045】
液晶性樹脂の重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0046】
本発明で用いる液晶性樹脂(B)は、ペンタフルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能なものもあり、その際には0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で0.03g/dl以上が好ましく、0.05〜10.0dl/gが特に好ましい。
【0047】
本発明で用いる液晶性樹脂(B)の液晶開始温度は、好ましくは混合するポリアミド樹脂(a1)の融点以下であり、より好ましくはポリアミド樹脂(a1)の融点−10℃以下、さらに好ましくはポリアミド樹脂(a1)の融点−20℃以下である。液晶開始温度が混合するポリアミド樹脂(a1)の融点より低い方がポリアミド樹脂(A)中に均一分散し、本発明の効果がより鮮明に発現する。
【0048】
ここでいう液晶開始温度の測定方法は、液晶性樹脂の薄い切片を切り出し、偏光顕微鏡の試料台に乗せて昇温加熱し、剪断応力下で乳白色光を発する時の温度であり、本発明の好ましい液晶性樹脂においては液晶開始温度が融点よりも20℃程度低い温度であることが多い。
【0049】
また、本発明の液晶性樹脂(B)の溶融粘度は、本発明の効果をより発揮するために、用いるポリアミド樹脂(a1)の融点+25℃で測定した値が50Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜30Pa・sであり、最も好ましくは0.5〜25Pa・sである。なお、ここで溶融粘度は、剪断速度1,000(1/秒)の条件下でノズル径0.5mmφ、ノズル長10mmのノズルを用い高化式フローテスターによって測定した値である。
【0050】
本発明の液晶性樹脂(B)のポリアミド樹脂(A)((a1)成分と(a2)成分の合計)に対する配合量は、ポリアミド樹脂の従来の特性を損なうことなく、さらに流動性、ウエルド強度、高温雰囲気下での剛性およびひけなどの表面外観不良などの特性を付与する点からポリアミド樹脂(A)100重量部に対して0.01〜100重量部、好ましくは0.05〜80重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。
【0051】
本発明に用いる酸無水物(C)は例えば、無水安息香酸、無水イソ酪酸、無水イタコン酸、無水オクタン酸、無水グルタル酸、無水コハク酸、無水酢酸、無水ジメチルマレイン酸、無水デカン酸、無水トリメリト酸、無水1,8−ナフタル酸、無水フタル酸、無水マレイン酸などが挙げられ、中でも無水コハク酸、無水1,8−ナフタル酸、無水フタル酸などが好ましく用いられ、特に無水コハク酸、無水フタル酸が好ましく用いられる。
【0052】
本発明の酸無水物のポリアミド樹脂(A)((a1)成分と(a2)成分の合計)100重量部に対する配合量は0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、より好ましくは0.1〜2重量部である。酸無水物量が少なすぎると、流動性をはじめとする本発明の効果が発現されず、添加量が多すぎると、コンパウンド時および成形時にガス発生が発生し、噛み込み不良、成形品のガス焼けおよびボイド発生の原因となり、得られた成形品も表面外観のみならず、機械特性も低下する傾向にある。
【0053】
本発明において用いる酸無水物のポリアミド樹脂組成物中での存在状態は特に限定されず、酸無水物、水あるいはポリアミド樹脂(a1)、ポリアミド樹脂(a2)、液晶性樹脂(B)およびそれらのモノマー・オリゴマーとの反応物のいずれの状態で存在していてもかまわない。
【0054】
本発明のポリアミド樹脂(a1)、ポリアミド樹脂(a2)、液晶性樹脂(B)および酸無水物(C)の配合方法は、通常溶融混練することが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、180〜380℃の温度で溶融混練して組成物とすることができる。好ましくは押出機を用い、配合順序は、ポリアミド樹脂(a1)、ポリアミド樹脂(a2)と酸無水物(C)は同時に混練することが好ましく、例えば、(a1)成分と(a2)成分と酸無水物(C)をブレンドし、次いで液晶性樹脂(B)を2段押し出しおよびサイドフィーダー備え付けの押出機の場合、サイドより投入するか、あるいは(a1)成分と(a2)成分、液晶性樹脂(B)、酸無水物(C)を同時にブレンドする方法が好ましく用いられる。
【0055】
本発明においてポリアミド樹脂組成物の機械強度その他の特性を付与するために充填剤を使用することが可能であり、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填剤を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられる。上記充填剤中、ガラス繊維およびPAN系の炭素繊維が好ましく使用され、本発明においては低寸法変化の点あるいは導電性の点から炭素繊維が使用される。ガラス繊維および炭素繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えばロービングタイプ、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0056】
また、ガラス繊維および炭素繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0057】
上記の炭素繊維の添加量は、ポリアミド樹脂(A)、液晶性樹脂(B)の合計100重量部に対し0.5〜300重量部であり、好ましくは10〜250重量部、より好ましくは20〜150重量部である。
【0058】
本発明のポリアミド樹脂組成物に長期耐熱性を向上させるために銅化合物が好ましく用いられる。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの錯化合物などが挙げられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、通常ポリアミド樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。本発明では銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0059】
また本発明の樹脂組成物にアルコキシシラン、好ましくはエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランの添加は、機械的強度、靱性などの向上に有効である。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。
【0060】
本発明のポリアミド樹脂組成物の難燃性を付加するために赤燐を添加せしめることができるが、かかる赤燐は、そのままでは不安定であり、また、水に徐々に溶解したりする性質を有するので、これを防止する処理を施したものが好ましく用いられる。このような赤燐の処理方法としては、赤燐に水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを微量添加して赤燐の酸化を触媒的に抑制する方法、赤リンをパラフィンやワックスで被覆し、水分との接触を抑制する方法、ε−カプロラクタムやトリオキサンと混合することにより安定化させる方法、赤燐をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法、赤燐を銅、ニッケル、銀、鉄、アルミニウムおよびチタンなどの金属塩の水溶液で処理して、赤燐表面に金属リン化合物を析出させて安定化させる方法、赤燐を水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物あるいは水酸化チタン、水酸化亜鉛等のその他の金属の水酸化物などで被覆する方法、赤燐表面に鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、スズなどで無電解メッキ被覆することにより安定化させる方法およびこれらを組合せた方法が挙げられるが、好ましくは、赤燐をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法や赤燐を水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆することにより安定化させる方法である。特にフェノール系および水酸化チタンによる被覆が好ましく用いられる。
【0061】
また、樹脂組成物に配合される前の赤燐の平均粒径は、成形品の難燃性、機械的強度や表面外観性およびリサイクル使用時の粉砕による赤燐の科学的・物理的劣化を抑える点からの点から50〜0.01μmのものが好ましく、さらに好ましくは、45〜0.1μmのものである。
【0062】
なお赤燐の平均粒径は、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することが可能である。粒度分布測定装置には、湿式法と乾式法があるが、いずれを用いてもかまわない。湿式法の場合は、赤リンの分散溶媒として、水を使用することができる。この時アルコールや中性洗剤により赤リン表面処理を行ってもよい。また分散剤として、ヘキサメタ燐酸ナトリウムやピロ燐酸ナトリウムなどの燐酸塩を使用することも可能である。また分散装置として超音波バスを使用することも可能である。
【0063】
また、本発明で使用される赤リンの平均粒径は上記のごとくであるが、赤リン中に含有される粒径の大きな赤リン、すなわち粒径が75μm以上の赤リンは、難燃性、機械的特性、耐湿熱性、リサイクル性を著しく低下させるため、粒径が75μm以上の赤リンは分級とうにより除去することが好ましい。粒径が75μm以上の赤リン含量は、難燃性、機械的特性、耐湿熱性、リサイクル性の面から、10重量%以下が好ましく、さらに好ましくは8重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。下限に特に制限はないが、0に近いほど好ましい。
【0064】
ここで赤リンに含有される粒径が75μm以上の赤リン含量は、75μmのメッシュにより分級することで測定することができる。すなわち赤リン100gを75μmのメッシュで分級した時の残さ量Z(g)より、粒径が75μm以上の赤リン含量は(Z/100)×100(%)より算出することができる。
【0065】
また、本発明で使用される赤燐の熱水中で抽出処理した時の導電率(ここで導電率は赤燐5gに純水100mLを加え、オートクレーブ中、121℃で100時間抽出処理し、赤燐ろ過後のろ液を250mLに希釈して測定することができる)は、得られる成形品の、難燃性、耐湿性、機械的強度、耐トラッキング性および非着色性の点から通常0.1〜1000μS/cmであり、好ましくは0.1〜800μS/cm、さらに好ましくは0.1〜500μS/cmである。
【0066】
また、本発明で使用される赤燐のホスフィン発生量(ここでホスフィン発生量は、赤燐5gを窒素置換した内容量500mLの例えば試験管などの容器に入れ、10mmHgに減圧後、280℃で10分間加熱処理し、25℃に冷却し、窒素ガスで試験管内のガスを希釈して760mmHgに戻したのちホスフィン(リン化水素)検知管を用いて測定し、つぎの計算式で求める。ホスフィン発生量(ppm)=検知管指示値(ppm)×希釈倍率)は、得られる組成物の発生ガス量、押出し、成形時の安定性、溶融滞留時機械的強度、成形品の表面外観性、成形品による端子腐食などの点から通常100ppm以下のものが用いられ、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。
【0067】
このような好ましい赤燐粒径、導電率およびホスフィン発生量を示す市販品の赤燐としては、燐化学工業社製“ノーバエクセル”140、“ノーバエクセル”F5が挙げられる。
【0068】
本発明における赤燐の添加量は、ポリアミド樹脂(A)および液晶性樹脂(B)の合計100重量部に対して通常0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.06〜10重量部、さらに好ましくは0.08〜5重量部である。赤燐添加量が少なすぎると難燃性向上効果が発現せず、多すぎると物性低下するとともに難燃効果とは逆に燃焼促進剤として働く傾向にある。
【0069】
本発明のポリアミド樹脂組成物はさらに赤燐の安定剤として金属酸化物を添加することにより、押出し、成形時の安定性や強度、耐熱性、成形品の端子腐食性などを向上させることができる。このような金属酸化物の具体例としては、酸化カドミウム、酸化亜鉛、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化スズおよび酸化チタンなどが挙げられる。金属酸化物としては、I族の金属および/またはII族の金属酸化物であってもよいが、I族の金属、II族の金属以外の金属酸化物が好ましい。I族の金属、II族の金属以外の金属酸化物のなかでも酸化カドミウム、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化チタンなどが好ましく、特に酸化第一銅、酸化第二銅、酸化チタンが好ましい。押出し、成形時の安定性や強度、耐熱性、成形品の端子腐食性の他に、非着色性をさらに向上させるためには酸化チタンが最も好ましい。
【0070】
金属酸化物の添加量は機械物性、成形性の面からポリアミド樹脂(A)および液晶性樹脂(B)の合計100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、特に好ましくは0.1〜10重量部である。
【0071】
さらに難燃性効果を向上させるためにII族の金属の水酸化物および/またはIII族の金属の水酸化物(以下金属水酸化物と称する場合がある)を併用することが可能である。II族の金属の水酸化物および/またはIII族の金属の水酸化物とは、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛などのII族の金属の水酸化物、アルミニウムなどのIII族の金属の水酸化物から選択される1種以上であり、具体的には水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウムなどが挙げられ、好ましくは水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が用いられる。
【0072】
本発明における上記金属水酸化物の添加量は、ポリアミド樹脂(A)および液晶性樹脂(B)からなる樹脂組成物100重量部に対して通常0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部である。
【0073】
さらに、本発明のポリアミド樹脂組成物には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(たとえばニグロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤として赤燐あるいは赤燐と金属水酸化物の併用が好適であるが、その他の難燃剤(例えば、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩、臭素化ポリスチレン、ポリ臭素化スチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリカーボネートなど)、難燃助剤(アンチモン化合物、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン樹脂等)、帯電防止剤などの通常の添加剤を添加して、所定の特性をさらに付与することができる。
【0074】
上記のような無機充填材、難燃剤、その他の添加剤(以下添加剤等という)を添加する場合の方法は溶融混練することが好ましく、溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、180〜380℃の温度で溶融混練して組成物とすることができる。その際、前記したポリアミド樹脂(a1)、ポリアミド樹脂(a2)、酸無水物(C)および液晶性樹脂(B)の好ましい混練方法におけるいずれの段階で添加してもよい。具体的には、(a1)成分、(a2)成分および酸無水物(C)を溶融混練した後、液晶性樹脂(B)、添加剤等と混練する方法、全ての成分を一括混練する方法、一度(a1)成分、(a2)成分、酸無水物(C)、液晶性樹脂(B)とを混練した後に添加剤等を混練する方法、一度(a1)成分、(a2)成分と酸無水物(C)、液晶性樹脂(B)とを混練し樹脂組成物とした後、得られた樹脂組成物を用いて添加剤等の高濃度組成物(マスター)(M)を作成し(複数種の添加剤等を添加する場合は、必要に応じそれぞれについてマスターを作成することも勿論可能である)、所定の割合となるよう残りの成分とマスターを溶融混練する方法、また、これらを組み合わせた方法等が挙げられ、いずれの方法でもかまわない。
【0075】
また、マスターを作成する場合のマトリクスとしては、必ずしも上記したような樹脂組成物である必要はなく、最終的に配合すべき樹脂成分の一部、具体的にはポリアミド樹脂(A)、液晶性樹脂(B)の一部もしくは全部(例えば(A)の一部もしくは全部、(B)成分の一部もしくは全部、(A)及び(B)成分の一部もしくは全部)または最終的に含有せしめる(A)および(B)成分の一部を用いることができる。
【0076】
また、特に任意に用いることができる添加剤の中でも、赤燐およびその安定剤として使用される金属酸化物、特に酸化チタンを添加する場合、酸化チタンは赤燐のマスター(M)を製造する段階で配合することが好ましく、さらにあらかじめ赤燐と酸化チタンをヘンシェルミキサー等の機械的な混合装置を用いて混合しておくと、赤燐の安定性、赤燐の分散性や得られる樹脂組成物の非着色性を向上することができる。
【0077】
このような添加剤等のマスター(M)の、樹脂成分((a1)成分、(a2)成分および液晶性樹脂(B)の合計)に対する配合量は、添加物等のマスター製造時の製造性の面、添加剤等の分散性の面、および最終的に得られる樹脂組成物の機械物性、成形性、耐熱性等の特性の面から、0.5〜200重量部が好ましく、さらに好ましくは1〜180重量部、より好ましくは1〜150重量部である。
【0078】
かかるマスター(M)は、いわゆるマスターペレットの形態で好ましく用いられるが、それに限定されず、いわゆるチップ状、粉末状、あるいはそれらの混合物の形態であってもよい。またかかる(M)成分と配合する(a1)成分、(a2)成分および液晶性樹脂(B)はペレット状であることが好ましいが、それに限定されず、いわゆるチップ状、粉末状あるいは、チップ状と粉末状の混合物であってもよいが、(a1)成分、(a2)成分および液晶性樹脂(B)の形態、大きさ、形状はほぼ同等、あるいは互いに似通っていることが均一に混合し得る点で好ましい。樹脂組成物を製造するに際し、例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いて180〜350℃で溶融混練して組成物とすることができる。
【0079】
また、成形品を成形するにあたっての成形方法は通常の成形方法(射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)により、三次元成形品、シート、容器パイプなどに加工することができ、特にその優れた流動性を生かし、薄肉部を有する成形品(例えば板状成形品あるいは箱形成形品が挙げられ、なかでも箱形成形品が好ましい)、特に1.0mm以下の薄肉部を有する成形品に好ましく適用できる。具体的には厚みが1.0mm以下の部分を成形品の全表面積に対して、10%以上有する成形品、より好ましくは1.0mm以下の部分を15%以上有する成形品に、さらに好ましくは0.8mm以下の部分を有する成形品、特に0.8mm以下の部分を10%以上有する成形品に有効である。また、成形方法としては射出成形あるいはインジェクションプレス成形等が好ましい。
【0080】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、従来のポリアミド樹脂の加工温度で加工可能であり、かつポリアミド樹脂の従来の特性を損なうことなく、特異的なモルホロジーを形成させるため、成形時にシリンダー内で滞留させても良流動性で、新たにウエルド強度および成形品のヒケなどの表面外観を不良を低減させることを可能としたため、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、パワーシートギアハウジング、イグニッションコイル用部品、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品、その他各種用途に有用であり、箱形成形品、特に、軽量性を要求されるCD、DVDなどのオーディオ用トレー、携帯電話用ハウジング、ポケベル基盤枠、パソコン用ハウジング等、各種機器の筐体(ハウジング)として好ましい。特に上述したような薄肉部を有する成形品に有用であり、特に厚み1.0mm以下の部分を有する箱形成形品、特にパソコン、携帯電話用ハウジング等に有用である。
【0081】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
参考例
A−1:
ε−カプロラクタムを常法により重合して、ナイロン6のペレットを得た。このポリアミドの1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度を測定したところ2.70、融点222℃、融解熱量14cal/g(58.6J/g)、アミノ末端基濃度4.0×10-6当量/gであった。
A−2:
ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸の等モル塩を常法により重合して、ナイロン66のペレットを得た。このポリアミドの1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度を測定したところ2.75、融解熱量17cal/g(71.2J/g)、融点262℃、アミノ末端基濃度4.9×10-6当量/gであった。
A−3:
ヘキサメチレンジアミン/ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン=50/50重量比とテレフタル酸/イソフタル酸=50/50重量比の混合水溶液(固形原料濃度60重量%)を加圧重合缶に仕込み、攪拌下に昇温し、水蒸気圧17.5kg/cm2 で1.5時間反応させた後約2時間かけて徐々に放圧し、更に常圧窒素気流下で約30分反応し、1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度2.55、融点は観測されず(すなわち結晶融解熱量は1cal/g(4.186J/g)未満)、アミノ末端基濃度4.5×10-6当量/gのポリアミド樹脂を得た。
A−4:
ヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸の等モル塩を加圧重合缶に仕込み、攪拌下に昇温し、水蒸気圧17.5kg/cm2 で1.5時間反応させた後約2時間かけて徐々に放圧し、更に常圧窒素気流下で約30分反応し、1%の濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度2.75、融点は観測されず、アミノ末端基濃度4.0×10-6当量/gのポリアミド樹脂を得た。
【0082】
なお、アミノ末端基濃度は、フェノールエタノール混液(PEA)を溶媒として2%濃度でチモールブルーを指示薬として0.02N−塩酸で滴定を行った。
【0083】
また、融点および結晶融解熱量の測定は、Perkin Elmer(株)DSC7を用いてポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )および結晶融解熱量(ΔHcal/g)を測定した指す。
B−1:
p−ヒドロキシ安息香酸528重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト864重量部及び無水酢酸586重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った。芳香族オキシカルボニル単位42.5モル%、芳香族ジオキシ単位7.5モル%、エチレンジオキシ単位50モル%、芳香族ジカルボン酸単位57.5モル%からなる液晶開始温度184℃の液晶性樹脂が得られた。各温度の溶融粘度は、247℃で30Pa・s、287℃で15Pa・s(オリフィス0.5φ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))であった。
B−2:
p−ヒドロキシ安息香酸777重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト519重量部及び無水酢酸816重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った。芳香族オキシカルボニル単位62.5モル%、芳香族ジオキシ単位7.5モル%、エチレンジオキシ単位30モル%、芳香族ジカルボン酸単位37.5モル%からなる液晶開始温度205℃の液晶性樹脂が得られた。各温度の溶融粘度は、247℃で35Pa・s、287℃で20Pa・s(オリフィス0.5φ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))であった。
【0084】
なお、液晶開始温度(TN)は微量融点測定装置(ヤナコ製)を用いて測定した。
【0085】
実施例1〜7、比較例1〜7
参考例で得たポリアミド樹脂(A-1〜A-4)、液晶性樹脂(B-1〜B-2)と酸無水物および平均繊維長6mm炭素繊維を表1に示す割合でそれぞれ所定量秤量し、ドライブレンドした。30mmφの単軸押出機でシリンダー温度は表1のように設定し、スクリュー回転を30〜100r.p.mの条件で溶融混練してペレットとした。真空乾燥後、このペレットを住友SG−75MIII射出成形機(住友重機械工業(株)製)に供し、シリンダ−温度、金型温度を表1のように設定し、以下に示す測定用テストピースを射出成形して得た。測定方法を以下に示す。
【0086】
(1)滞留時の流動性
上記の成形機を用いてシリンダー内で20分滞留した後、射出速度99%、射出圧力49MPa(500kgf/cm2)の条件で0.5mm厚×12.7mm巾の試験片の流動長(棒流動長)を測定した。
【0087】
(2)ウエルド強度保持率
長軸方向の両端部にゲートを設け、中央部に会合部(ウエルド部)を有するASTM 1号(3.2mm厚(1/8インチ厚))成形品(ウエルド成形品)および、長軸方向の片端部にゲートを設けウエルド部を有しないASTM 1号(3.2mm厚(1/8インチ厚))成形品(ウエルドのない成形品)とを成形し、それぞれについてASTM D790にしたがい、曲げ強度を測定し、下式でウエルド強度保持率を算出した。
ウエルド強度保持率(%)
=(ウエルド成形品の曲げ強度/ウエルドのない成形品の曲げ強度)×100(%)
(3)高温剛性
60℃の雰囲気下中でASTM D790に従い、曲げ強度の測定を行った。
【0088】
(4)表面外観
50×70×20mm(厚み1mm)の箱形で成形品裏側の各辺に2個づつリブのついた成形品において表面から成形品を観察した場合、リブ部分が凹んでいるかいなかについて観察した。
【0089】
評価は、○:リブ部分に凹み無し、×:リブ部分に凹みありとした。
【0090】
(5)寸法安定性(線膨張係数)
角形成形品(80mm×80mm×3mm厚)を成形し、中心部を流れ方向に幅1mm×長さ10mm×厚み3mmの円柱状に切削し、得た試験片をTMA(セイコー電子工業SSC−5020)を用い、30℃→5℃/分→70℃の条件で測定を行い、線膨張係数を求めた。
【0091】
【表1】
【0092】
表1の結果から本発明のポリアミド樹脂組成物は、滞留しても流動性に優れるため、大型成形機を用いてシリンダー内に滞留させた場合でも良流動性を確保し、ウエルド強度および高温剛性に優れ、かつ低線膨張率で、表面外観に優れた成形品を得ることができる。
【0093】
【発明の効果】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形機のシリンダー内で滞留させても良流動性で、ウエルド強度、高温剛性に優れ、得られた成形品は、表面外観が良好であることから、電気・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車・車両関連部品など、特に流動性、良表面外観を生かし、ハウジング等の薄肉部を有する成形品、その他各種用途に好適である。
Claims (4)
- (A)(a1)結晶融解熱量が1cal/g(4.186J/g)以上のポリアミド樹脂99〜50重量%と(a2)結晶融解熱量が1cal/g(4.186J/g)未満のポリアミド樹脂50〜1重量%からなるポリアミド樹脂100重量部、(B)液晶性樹脂0.01〜100重量部および(C)酸無水物0.01〜5重量部を配合し、ポリアミド樹脂(A)および液晶性樹脂(B)の合計100重量部に対し、炭素繊維0.5〜300重量部をさらに添加してなるポリアミド樹脂組成物。
- 液晶性樹脂(B)の液晶開始温度がポリアミド樹脂(a1)の融点以下であることを特徴とする請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
- 酸無水物(C)が無水コハク酸、無水1,8−ナフタル酸、無水フタル酸から選ばれた1種以上である請求項1または2記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜3いずれか記載のポリアミド樹脂組成物で構成してなる成形品であって、成形品が厚み1.0mm以下の薄肉部を有する箱形成形品。
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