JP2019019305A - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)、湿熱環境下におけるブリードアウト性、より高い温度における耐ブリスター性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性に優れるポリアミド樹脂組成物の提供。
【解決手段】ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、1分子中に少なくとも3つの水酸基を含む水酸基含有化合物(B)を0.1〜20質量部、および下記式[1]で表される環状化合物(C)0.001〜1質量部、を含むポリアミド樹脂組成物。QX[1](式[1]中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す)
【選択図】なし
【解決手段】ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、1分子中に少なくとも3つの水酸基を含む水酸基含有化合物(B)を0.1〜20質量部、および下記式[1]で表される環状化合物(C)0.001〜1質量部、を含むポリアミド樹脂組成物。QX[1](式[1]中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す)
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品に関するものである。
ポリアミド樹脂は、優れた機械特性、耐熱性、耐薬品性を有するため、自動車や電気・電子部品用途へ好ましく用いられている。自動車用途においては、ポリアミド樹脂は耐熱老化性に優れることから、エンジンカバー等の極めて高い温度の熱がかかる部品に使用されている。近年、自動車のエンジンルーム内部品の高密度化やエンジン出力の増加に伴い、エンジンルーム内の環境温度は増々高くなっており、より高温条件下での機械特性や耐熱老化性が求められている。一方で、成形加工性、実用性の観点からは連続成形に耐えうる離型性、金型汚れ性(低ガス性)、湿熱環境下におけるブリードアウト性も又、重要な要素として位置づけられている。
ポリアミド樹脂の耐熱老化性改良技術としては、例えば、ポリアミド樹脂に、銅化合物とハロゲン化合物を配合したポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献1)が知られている。しかし、特許文献1のポリアミド樹脂組成物は、近年の使用環境温度の高温化のため、十分な耐熱老化性を得ることができなくなってきた。
これに応えて、高温での耐熱老化性をさらに改良する技術として、これまで数々の技術的な改良が試みられてきた。例えば、ポリアミド樹脂と、2000未満の数平均分子量を有する多価アルコールと、銅安定剤やヒンダードフェノールなどの補助安定剤と、補強剤とを含むポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献2)やポリアミド樹脂に、水酸基と、エポキシ基またはカルボジイミド基とを有する特定構造の化合物および/またはその縮合物を配合してなるポリアミド樹脂組成物(特許文献3)が開示されている。
坂道などの急斜面においてアクセルを踏み込んだ際には、エンジンの回転数が大きく増加し、瞬間温度250℃以上となる可能性があるため、より高温域の熱老化性と熱老化後の実用特性を兼ね備えた材料が求められている。
しかしながら、特許文献2、3に記載の技術を用いて得られる樹脂組成物や成形品は、150℃〜230℃の温度域にて優れた耐熱老化性を有するものの、より高い温度域においては分解ガスの多量発生、耐熱老化性(熱処理後の高温溶着バースト強度、熱処理後の高温クリープひずみ)、および熱老化後の表面平滑性に劣るという課題がある。
また、前記特許文献2や前記特許文献3のポリアミド樹脂組成物は、連続成形時の離型性や金型汚れ性(低ガス性)、さらに湿熱環境下における成形品表層への多価アルコールなどのブリードアウトや、銅イオンの遊離による着色といった表面外観上の課題があった。
本発明は、これら従来技術の課題に鑑み、成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)に優れ、湿熱環境下におけるブリードアウト性、より高い温度における耐ブリスター性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性に優れる成形品を得ることのできるポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、主として以下の構成を有する。
[1]ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、1分子中に少なくとも3つの水酸基を含む水酸基含有化合物(B)0.1〜20質量部、および下記式[1]で表される環状化合物(C)0.001〜1質量部、を含むポリアミド樹脂組成物。
QX [1]
(式[1]中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す)
[2]さらに金属および/またはその塩(D)を含有し、前記(D)が銅、鉄、亜鉛、ニッケル、マンガン、コバルト、クロムおよびスズからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属および/またはその塩である[1]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[3]環状化合物(C)が2-メルカプトベンズイミダゾールおよび/または2-メルカプトベンズチアゾールである[1]または[2]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[4]前記金属および/またはその塩(D)が銅含有化合物であり、組成物中の原子吸光分光法で決定される銅含有量が25〜500ppmである[1]〜[3]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[5]前記水酸基含有化合物(B)が、さらに、エポキシ基および/またはカルボジイミド基を有し、1分子中の水酸基の数の和が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多い[1]〜[4]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[6]前記水酸基含有化合物(B)が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物である[1]〜[5]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[1]ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、1分子中に少なくとも3つの水酸基を含む水酸基含有化合物(B)0.1〜20質量部、および下記式[1]で表される環状化合物(C)0.001〜1質量部、を含むポリアミド樹脂組成物。
QX [1]
(式[1]中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す)
[2]さらに金属および/またはその塩(D)を含有し、前記(D)が銅、鉄、亜鉛、ニッケル、マンガン、コバルト、クロムおよびスズからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属および/またはその塩である[1]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[3]環状化合物(C)が2-メルカプトベンズイミダゾールおよび/または2-メルカプトベンズチアゾールである[1]または[2]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[4]前記金属および/またはその塩(D)が銅含有化合物であり、組成物中の原子吸光分光法で決定される銅含有量が25〜500ppmである[1]〜[3]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[5]前記水酸基含有化合物(B)が、さらに、エポキシ基および/またはカルボジイミド基を有し、1分子中の水酸基の数の和が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多い[1]〜[4]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
[6]前記水酸基含有化合物(B)が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物である[1]〜[5]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(上記一般式(1)中、X1〜X6はそれぞれ同一でも異なってもよく、OH、CH3またはORを表す。ただし、OHとORの数の和は3以上である。また、Rはエポキシ基またはカルボジイミド基を有する有機基を表し、nは0〜20の範囲を表す。)
[7][1]〜[6]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)に優れる。さらに本発明のポリアミド樹脂組成物によれば、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)ならびに熱老化後の表面平滑性に優れる成形品を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、1分子中に少なくとも3つの水酸基を含む水酸基含有化合物(B)(以下、単に水酸基含有化合物(B)と記すこともある)を0.1〜20質量部および下記式[1]で表される環状化合物(C)(以下、単に環状化合物(C)と記すこともある)0.001〜1質量部を含むポリアミド樹脂組成物である。
QX [1]
(式[1]中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す)
QX [1]
(式[1]中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す)
以下、ポリアミド樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
[ポリアミド樹脂(A)]
本発明に用いられるポリアミド樹脂(A)とは、(i)アミノ酸、(ii)ラクタムあるいは(iii)ジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。ポリアミド樹脂(A)の原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。
本発明に用いられるポリアミド樹脂(A)とは、(i)アミノ酸、(ii)ラクタムあるいは(iii)ジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。ポリアミド樹脂(A)の原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)の原料として、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはポリアミドコポリマーを2種以上配合してもよい。
ポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリウンデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシリレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン5T/10T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンドデカンアミドコポリマー(ナイロン10T/612)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン10T/66)ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)などが挙げられる。また、ポリアミド樹脂の具体例としては、これらの混合物や共重合体なども挙げられる。ここで、「/」は共重合体を示す。以下、同様とする。
とりわけ好ましいポリアミド樹脂(A)は、200℃〜330℃の融点を有するポリアミド樹脂である。200℃〜330℃の融点を有するポリアミド樹脂は、耐熱性や強度に優れている。200℃以上の融点を有するポリアミド樹脂は、高温条件下において、樹脂圧力の高い状態で溶融混練することができ、後述の水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)との反応性を高めることができる。このため、ポリアミド樹脂組成物中における水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)の分散性をより高め、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。ポリアミド樹脂の融点は、220℃以上であることがより好ましい態様である。
一方、330℃以下の融点を有するポリアミド樹脂を用いることにより、溶融混練時の温度を適度に抑え、ポリアミド樹脂(A)、後述の水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)の分解を抑制することができ、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)がより向上する。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)ならびに熱老化後の表面平滑性、をより向上させることができる。
ここで、本発明の実施形態におけるポリアミド樹脂の融点は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、ポリアミド樹脂を溶融状態から20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度と定義する。ただし、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、ピーク強度の最も大きい吸熱ピークの温度を融点とする。
200℃〜330℃の融点を有するポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン410、ナイロン610、ナイロン56、ナイロン6T/66、ナイロン6T/6I、ナイロン6T/12、ナイロン6T/5T、ナイロン6T/M5T、ナイロン6T/6などのヘキサメチレテレフタルアミド単位を有する共重合体や、ナイロン5T/10T、ナイロン9T、ナイロン10T、およびナイロン12Tなどを挙げることができる。これらの中でも、後述の水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)との相溶性、反応性に優れる、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610がより好ましく用いられる。これら脂肪族ポリアミド樹脂は、機械特性、溶着特性、成形性のバランスに優れ、かつ熱安定性も高いことから耐熱老化性に優れる。中でもポリアミド66は、比較的融点が高いため樹脂圧力の高い状態で溶融混練することができる。このため、後述の水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)との反応性をより高めることができ、ポリアミド樹脂組成物中における水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)の分散性をより向上させることができ、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)を向上させることができる。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)ならびに熱老化後の表面平滑性がより向上する。これらのポリアミド樹脂を、必要特性に応じて、2種以上配合することも実用上好適である。
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度(ηr)が1.5〜5.0の範囲であることが好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、成形性と溶着特性、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)に優れ、得られる成形品の湿熱環境下のブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。相対粘度は、2.0以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。一方、相対粘度が5.0以下であれば、成形加工性に優れ溶融混練時のせん断発熱を適度に抑えることができ、熱分解等によるポリアミド樹脂および後述の水酸基含有化合物(B)、ならびに環状化合物(C)の劣化を抑制することができることから、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)がより向上する。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
本発明で用いられるポリアミド樹脂組成物は、1分子中に少なくとも3つの水酸基を含む水酸基含有化合物(B)(水酸基含有化合物(B))を含有する。水酸基含有化合物(B)は、ポリアミド樹脂(A)との脱水縮合反応により、ポリアミド樹脂組成物中に架橋構造を形成させることができるが、ポリアミド樹脂と水酸基含有化合物のみでは(言い換えると、本願発明で規定する環状化合物(C)を含まない場合は)、150℃〜230℃程度の温度での耐熱老化性しか向上しない。一方で、少なくともポリアミド樹脂(A)と水酸基含有化合物(B)と、環状化合物(C)を含む本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品は、250℃以上のより高温領域の耐熱性老化性を有する。
[1分子中に少なくとも3つの水酸基を含む水酸基含有化合物(B)(水酸基含有化合物(B))]
本発明の実施形態で使用される水酸基含有化合物(B)は、1分子中に3つ以上の水酸基を有する化合物である。1分子中に2つ以下の水酸基を有する化合物は、ポリアミド樹脂組成物中に架橋構造を十分に形成させることができず、金型汚れ性(低ガス性)が悪化する。また得られる成形品に関しても、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性が低下する。1分子中の水酸基の数は後述の環状化合物(C)との水素結合性の観点から、4つ以上が好ましく、6つ以上がさらに好ましい態様である。水酸基含有化合物(B)は、低分子化合物であってもよく、重合体も用いられる。
本発明の実施形態で使用される水酸基含有化合物(B)は、1分子中に3つ以上の水酸基を有する化合物である。1分子中に2つ以下の水酸基を有する化合物は、ポリアミド樹脂組成物中に架橋構造を十分に形成させることができず、金型汚れ性(低ガス性)が悪化する。また得られる成形品に関しても、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性が低下する。1分子中の水酸基の数は後述の環状化合物(C)との水素結合性の観点から、4つ以上が好ましく、6つ以上がさらに好ましい態様である。水酸基含有化合物(B)は、低分子化合物であってもよく、重合体も用いられる。
水酸基含有化合物(B)の1分子中の水酸基の数は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、縮合物の場合、水酸基の数は、水酸基含有化合物(B)の数平均分子量と水酸基価を算出し、下記式(2)により求めることができる。
1分子中の水酸基の数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (2)
1分子中の水酸基の数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (2)
水酸基含有化合物(B)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、算出することができる。具体的には、以下の方法により算出することができる。化合物(B)が溶解する溶媒、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準物質として用いる。カラムは溶媒に合わせ、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを使用する場合には、島津ジーエルシー(株)製の「Shodex GPC HFIP−806M」および/または「Shodex GPC HFIP−LG」を用いて、検出器として示差屈折率計を用いて数平均分子量の測定を行うことができる。
水酸基含有化合物(B)の水酸基価は、水酸基含有化合物(B)を、無水酢酸と無水ピリジンの混合溶液でアセチル化して、それをエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定することにより求めることができる。
本発明で用いられるポリアミド樹脂組成物において、水酸基含有化合物(B)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0.1〜20質量部(0.1質量部以上20質量部以下)である。水酸基含有化合物(B)の含有量が0.1質量部未満であると、得られる成形品の耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、熱老化後の表面平滑性が低下する。水酸基含有化合物(B)の含有量は、後述の環状化合物(C)との水素結合性の観点からポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい態様である。
一方、水酸基含有化合物(B)の含有量が20質量部を超えると、水酸基化合物(B)が成形品表層へブリードアウトしやすく、またポリアミド樹脂の可塑化と分解が促進されることから、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)が悪化する。また得られる成形品に関しても、湿熱環境下のブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性が低下する。化合物(B)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、7.5質量部以下であることが好ましく、6質量部以下であることがさらに好ましい態様である。
なお、後述するように、水酸基含有化合物(B)は、化合物(B’)であることが好ましく、化合物(B’)は、一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物であることが好ましい。つまり、水酸基含有化合物(B)は、一般式(1)で表される構造を有する化合物およびその縮合物から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。そして、その場合の水酸基含有化合物(B)の配合量は、一般式(1)で表される構造を有する化合物およびその縮合物の合計量が0.1〜20質量部であることが好ましい。
本発明の実施形態で用いられる水酸基含有化合物(B)は、25℃の温度において固形であるか、または25℃の温度において200mPa・s以上の粘度を有する液状であることが好ましい。その場合、溶融混練時に所望の粘度にすることが容易となり、ポリアミド樹脂(A)および後述の環状化合物(C)との相溶性がより向上し、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
水酸基含有化合物(B)の具体例としては、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、グルコース、マンニトール、スクロース、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2−メチルプロパントリオール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、および2−メチル−1,2,4−ブタントリオールなどを挙げることができる。
また、水酸基含有化合物(B)として、繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物も挙げることができ、例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、メチレン結合、ビニル結合、イミン結合、シロキサン結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、ケイ素−ケイ素結合、カーボネート結合、スルホニル結合、およびイミド結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物が挙げられる。
水酸基含有化合物は、これらの結合を2種以上含む繰り返し構造単位を含有することができる。繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物として、エステル結合、カーボネート結合、エーテル結合および/またはアミド結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物が好ましく用いられる。
エステル結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物は、例えば、水酸基を1個以上有する化合物に、カルボキシル基に隣接する炭素原子が飽和炭素原子であり、かつその炭素原子上の水素原子がすべて置換され、かつ水酸基を2個以上有するモノカルボン酸を反応させることにより得ることができる。
また、エーテル結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物は、例えば、水酸基を1個以上有する化合物と水酸基を1個以上有する環状エーテル化合物の開環重合により得ることができる。エステル結合とアミド結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物は、例えば、アミノジオールと環状酸無水物との重縮合反応により得ることができる。アミノ基を含むエーテル結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基含有化合物は、例えば、トリアルカノールアミンの分子間縮合により得ることができる。カーボネート結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物は、例えば、トリスフェノールのアリールカーボネート誘導体の重縮合反応により得ることができる。
水酸基含有化合物(B)の中でも、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールが好ましく用いられる。
本発明の実施形態において、水酸基含有化合物(B)は、さらに、エポキシ基および/またはカルボジイミド基を有し、1分子中の水酸基の数が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多い化合物(以下、区別するために「化合物(B’)」と記載する場合がある。)であることが好ましい。ポリアミド樹脂(A)のアミノ末端基とカルボキシル末端基が、化合物(B’)の水酸基、エポキシ基および/またはカルボジイミド基と反応すること、さらに後述の環状化合物(C)の窒素原子および/または硫黄原子が化合物(B’)の水酸基と水素結合性の相互作用を生じ分岐構造を形成することで、ポリアミド樹脂(A)と、水酸基含有化合物(B’)の反応性をより高め、ポリアミド樹脂組成物中における化合物(B’)の分散性をより向上させることができ、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)が向上する。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
また、1分子中の水酸基の数を、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多い化合物(B’)とすることにより、過剰な架橋構造の形成による脆化を抑制し、連続成形時の離型性をより向上させることができる。さらに、得られる成形品の耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。この原因については定かではないが、本発明のポリアミド樹脂組成物からなる成形品が大気下で熱を加えられることにより、ポリアミド樹脂(A)が低分子量化するが、その際に増加するポリアミド樹脂(A)のカルボキシル末端基と、化合物(B’)の水酸基と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基とが反応し、ポリアミド樹脂(A)の低分子量化を抑制し、耐熱老化性を保持できるものと考える。
化合物(B’)1分子中の水酸基の数は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、縮合物の場合、水酸基の数は、化合物(B’)の数平均分子量と水酸基価を算出し、下記式(3)により求めることができる。化合物(B’)の数平均分子量と水酸基価は、先述した方法により算出することができる。
1分子中の水酸基の数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (3)
1分子中の水酸基の数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (3)
化合物(B’)の1分子中のエポキシ基またはカルボジイミド基の数は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、縮合物の場合、エポキシ基またはカルボジイミド基の数は、化合物(B’)の数平均分子量をエポキシ当量またはカルボジイミド当量で割った値により算出することができる。
エポキシ当量は、化合物(B’)を、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させた後、酢酸、テトラエチルアンモニウムブロミド/酢酸溶液を加え、滴定液として0.1Nの過塩素酸および指示薬としてクリスタルバイオレットを用い、溶解液の色が紫色から青緑色に変化した際の滴定量より、下記式(4)により算出できる。
エポキシ当量[g/eq]=W/((F−G)×0.1×f×0.001) (4)
但し、F:滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、G:ブランクの滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、f:0.1Nの過塩素酸のファクター、W:試料の質量[g]
エポキシ当量[g/eq]=W/((F−G)×0.1×f×0.001) (4)
但し、F:滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、G:ブランクの滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、f:0.1Nの過塩素酸のファクター、W:試料の質量[g]
カルボジイミド当量は、以下の方法で算出できる。化合物(B’)と、内部標準物質としてフェロシアン化カリウムをドライブレンドし、約200℃で1分間熱プレスを行い、シートを作製する。その後、赤外分光光度計を用いて、透過法で、シートの赤外吸収スペクトルを測定する。測定条件は、分解能4cm−1、積算回数32回とし、透過法での赤外吸収スペクトルは、吸光度がシート厚みに反比例するため、内部標準ピークを用いて、カルボジイミド基のピーク強度を規格化する必要がある。2140cm−1付近に現れるカルボジイミド基由来ピークの吸光度を、2100cm−1付近に現れるフェロシアン化カリウムのCN基の吸収ピークの吸光度で割った値を算出する。この値からカルボジイミド当量を算出するために、あらかじめカルボジイミド当量が既知のサンプルを用いてIR測定を行い、カルボジイミド基由来ピークの吸光度と内部標準ピークの吸光度の比を用いて検量線を作成し、化合物(B’)の吸光度比を検量線に代入し、カルボジイミド当量を算出する。なお、カルボジイミド当量が既知のサンプルとして、脂肪族ポリカルボジイミド(日清紡製、“カルボジライト”(登録商標)LA−1、カルボジイミド当量247g/mol)、芳香族ポリカルボジイミド(ラインケミー製、“スタバクゾール”(登録商標)P、カルボジイミド当量360g/mol)を用いることができる。
ポリアミド樹脂組成物中において化合物(B’)として含有されていればよく、例えば、水酸基含有化合物(B)と後述のエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)((以下、化合物(b)と称することがある。)を個別にポリアミド樹脂(A)に配合し、ポリアミド樹脂組成物中において化合物(B’)を形成してもよく、あらかじめこれらを反応させた化合物(B’)をポリアミド樹脂(A)に配合することもできる。
あらかじめこれらを反応させた化合物(B’)をポリアミド樹脂(A)と後述の環状化合物(C)とともに配合することが好ましく、環状化合物(C)を供することで、水酸基含有化合物(B’)とポリアミド樹脂(A)との相溶性により優れ、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
この要因については定かではないが、次のように考えられる。すなわち、水酸基含有化合物(B)と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)をあらかじめ反応させることにより、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)を連結点とした多分岐構造を有する化合物(B’)が形成される。このような化合物(B’)は、多分岐構造を有することにより自己凝集力がより小さくなり、ポリアミド樹脂(A)との反応性および相溶性が向上するためと考えられる。また、多分岐構造を有する化合物の溶融粘度が向上することから、ポリアミド樹脂組成物中における化合物(B’)の分散性がより向上するためと考えられる。また、さらに後述の環状化合物(C)を供することで、水酸基含有化合物(B’)の水酸基と環状化合物(C)の窒素原子および/または硫黄原子との水素結合性の相互作用により、分岐度がより高まることでポリアミド樹脂(A)との反応性および相溶解性がさらに向上するためと考える。
本発明の実施形態において、化合物(B’)が、水酸基含有化合物(B)と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)との反応物の場合、水酸基とエポキシ基またはカルボジイミド基との反応率は3〜95%(3%以上95%以下)であることが好ましい。反応率が3%以上の場合、化合物(B’)の分岐度を高め、自己凝集力を低下させることができ、ポリアミド樹脂(A)および後述の環状化合物(C)との反応性を高めることができ、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性がより向上する。反応率は10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。
一方、反応率が95%以下の場合、エポキシ基またはカルボジイミド基を適度に残存させることができ、ポリアミド樹脂(A)および後述の環状化合物(C)との反応性を高めることができる。反応率は90%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましい態様である。
水酸基と、エポキシ基またはカルボジイミド基の反応率は、化合物(B’)を、溶媒(例えば、重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールなど)に溶解し、エポキシ基の場合は、1H−NMR測定によりエポキシ環由来ピークについて、水酸基含有化合物(B)との反応前後の減少量を求めることにより、また、カルボジイミド基の場合は13C−NMR測定によりカルボジイミド基由来ピークについて、水酸基含有化合物(B)との反応前後の減少量を求めることにより、算出することができる。反応率は、下記式(5)により求めることができる。
・反応率(%)={1−(e/d)}×100 (5)
(上記式(5)中、dは、(B)化合物と、(b)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物をドライブレンドしたもののピーク面積を表し、eは化合物(B’)のピーク面積を表す。)
・反応率(%)={1−(e/d)}×100 (5)
(上記式(5)中、dは、(B)化合物と、(b)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物をドライブレンドしたもののピーク面積を表し、eは化合物(B’)のピーク面積を表す。)
一例として、ジペンタエリスリトールとビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004)を、3:1の質量比でドライブレンドしたものの1H−NMRスペクトルを、図1に示す。また、後述する参考例5により得られた(B’−4)化合物および/またはその縮合物の1H−NMRスペクトルを、図2に示す。重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒に用い、サンプル量は0.035gで、溶媒量は0.70mlとした。符号1は、溶媒ピークを示す。
図1に示される1H−NMRスペクトルから、2.60ppmと2.80ppm付近に現れるエポキシ環由来ピーク面積の合計を求め、同様に図2に示すピーク面積の合計を求め、反応率の算出式(5)により反応率を算出する。この際、ピーク面積は、反応に寄与しないエポキシ樹脂のベンゼン環のピークの面積で規格化する。
水酸基と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基との反応を促進する触媒を添加することもできる。触媒の添加量は、水酸基含有化合物(B)と、(b)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の合計100質量部に対し、0〜1質量部であることが好ましく、0.01〜0.3質量部であることがより好ましい態様である。
水酸基とエポキシ基の反応を促進する触媒としては、ホスフィン類、イミダゾール類、アミン類、およびジアザビシクロ類などの触媒が挙げられる。ホスフィン類の触媒の具体例としては、トリフェニルホスフィン(TPP)などが挙げられる。イミダゾール類の触媒の具体例としては、2−ヘプタデシルイミダゾール(HDI)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、および1−イソブチル−2−メチルイミダゾールなどが挙げられる。アミン類の触媒の具体例としては、N−ヘキサデシルモルホリン(HDM)、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、トリブチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5(DBN)、トリスジメチルアミノメチルフェノール、テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、および1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン(DABCO)などが挙げられる。
水酸基とカルボジイミド基の反応を促進する触媒としては、例えば、トリアルキル鉛アルコキシド、ホウフッ化水素酸、塩化亜鉛およびナトリウムアルコキシドなどが挙げられる。
本発明の実施形態で好ましく使用されるエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)は、1分子中にエポキシ基およびカルボジイミド基を有する場合は、エポキシ基とカルボジイミド基の合計2つ以上有することが好ましく、4つ以上することがさらに好ましく、6つ以上することがより好ましい。1分子中にエポキシ基またはカルボジイミド基を有する場合は、いずれかの官能基を2つ以上有することが好ましく、4つ以上有することがさらに好ましく、6つ以上有することがさらに好ましい態様である。
エポキシ基およびカルボジイミド基は、ポリアミド樹脂(A)との相溶性に優れているため、1分子中にエポキシおよび/またはカルボジイミド基を2つ以上有する化合物は、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B’)の相溶性を高める効果があると考えられる。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)は、低分子化合物であってもよく、重合体でとしても用いられる。
エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の1分子中のエポキシ基またはカルボジイミド基の数は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、縮合物の場合は、エポキシ基またはカルボジイミド基の数は、(b)エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物の数平均分子量をエポキシ当量またはカルボジイミド当量で割った値により算出することができる。エポキシ当量およびカルボジイミド当量は、先述した方法により算出することができる。
エポキシ基含有化合物の具体例として、エピクロロヒドリン、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、およびグリシジル基含有ビニル系重合体等を例示することができる。これらを2種以上用いることもできる。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンとビスフェノールAから製造される樹脂、エピクロロヒドリンとビスフェノールFから製造される樹脂、ノボラック樹脂にエピクロロヒドリンを反応させたフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロロヒドリンとテトラブロモビスフェノールAから誘導されるいわゆる臭素化エポキシ樹脂、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、およびペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどが例示される。
また、グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンと、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、p−オキシ安息香酸またはダイマー酸から製造されるエポキシ樹脂、トリメシン酸トリグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、およびピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが例示される。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンと、アニリン、ジアミノジフェニルメタン、p−アミノフェノール、メタキシリレンジアミンまたは1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから製造されるエポキシ樹脂、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−パラアミノフェノール、トリグリシジル−メタアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、トリグリシジルシアヌレート、およびトリグリシジルイソシアヌレートなどが例示される。
脂環式エポキシ樹脂としては、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基およびシクロペンテンオキサイド基を有する化合物などが例示される。
複素環式エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンと、ヒダントインまたはイソシアヌル酸から製造されるエポキシ樹脂などが例示される。
グリシジル基含有ビニル系重合体としては、グリシジル基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーをラジカル重合した重合体が挙げられる。グリシジル基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジルや、p−スチリルカルボン酸グリシジルなどの不飽和モノカルボン酸のグリシジルエステル、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ポリカルボン酸のモノグリシジルエステルまたはポリグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、およびスチレン−4−グリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテルなどが挙げられる。
エポキシ基含有化合物の市販品としては、低分子の多官能エポキシ化合物であるポリグリシジルエーテル化合物(例えば、阪本薬品工業(株)製「SR−TMP」、ナガセケムテックス(株)製「“デナコール”(登録商標)EX−521」など)、ポリエチレンを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、住友化学(株)製「“ボンドファスト”(登録商標)E」)、アクリルを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、東亞合成(株)製「“レゼダ”(登録商標)GP−301」、東亞合成(株)製「“ARUFON”(登録商標)UG−4000」、三菱レイヨン(株)製「“メタブレン”(登録商標)KP−7653」など)、アクリル・スチレン共重合体を主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、BASF社製「“Joncryl”(登録商標)−ADR−4368」、東亞合成(株)製「“ARUFON”(登録商標)UG−4040」など)、シリコーン・アクリル共重合体を主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、「“メタブレン”(登録商標)S−2200」など)、ポリエチレングリコールを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、日油(株)製“エピオール”(登録商標)「E−1000」など)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、三菱化学(株)製“jER”(登録商標)「1004」など)、およびノボラックフェノール型変性エポキシ樹脂(例えば、日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)「201」)などが挙げられる。
カルボジイミド基含有化合物としては、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどのジカルボジイミドや、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフタレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、およびポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどを挙げることができる。
カルボジイミド基含有化合物の市販品としては、日清紡ホールディングス(株)製“カルボジライト”(登録商標)とラインケミー製“スタバクゾール(登録商標)”などを挙げることができる。
本発明の実施形態で好ましく用いられるエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の分子量は、800〜10000の範囲であることが好ましい。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の分子量を800以上とすることにより、溶融混練時に揮発しにくくなるため、加工性に優れ、連続成形時の金型汚れ性(低ガス性)に優れる。また、得られる化合物(B’)の溶融混練時の粘度を高めることができるため、ポリアミド樹脂(A)および後述の環状化合物(C)との相溶性がより高くなり、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)がより向上する。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性がより向上する。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の分子量は1000以上であることがより好ましく、2000以上がさらに好ましい。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の分子量を2000以上とすることにより、湿熱処理時、例えば80℃、95%RHの環境に設定された恒温恒湿槽で200時間湿熱処理を行った際に、成形品表層への化合物(B’)のブリードアウトをより抑制し、連続成形時の離型性および金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。
一方、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の分子量を10000以下とすることにより、得られる化合物(B’)の溶融混練時の粘度を適度に抑えることができるため、加工性に優れる。また、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B’)および後述の環状化合物(C)との相溶性を高く保持することができる。エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の分子量は、8000以下であることがより好ましい。
エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の分子量は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物が縮合物の場合の分子量は、分子量として重量平均分子量を用いる。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて算出することができる。具体的には、化合物が溶解する溶媒、例えばヘキサフルオロイソプロパノールを移動相として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準物質として用い、カラムは溶媒に合わせ、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを使用した場合には、島津ジーエルシー(株)製の「Shodex GPC HFIP−806M」および/または「Shodex GPC HFIP−LG」を用いて、検出器として示差屈折率計を用いて重量平均分子量を測定することができる。
本発明の実施形態で好ましく用いられるエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)は、25℃の温度において固形であるか、または25℃の温度において200mPa・s以上の粘度を有する液状であることが好ましい。その場合、得られる化合物(B’)の溶融混練時の粘度を所望の範囲にすることが容易となり、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B’)および後述の環状化合物(C)との相溶性がより高くなり、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
本発明の実施形態で好ましく用いられるエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の官能基濃度を示す指標となる、分子量を1分子中の官能基の数で割った値は、50〜3000であることが好ましい。ここで、官能基の数とは、エポキシ基およびカルボジイミド基の合計数を指す。この値は小さいほど官能基濃度が高いことを表すが、50以上とすることにより、過剰な反応による化合物(B’)のゲル化を抑制でき、また、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B’)および後述の環状化合物(C)との反応がほどよく高まるため、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の分子量を1分子中の官能基の数で割った値は、100以上であることがより好ましく、1100以上がさらに好ましい。特に、1100以上とすることにより、湿熱環境下における、成形品表層への水酸基含有化合物(B)および/または(B’)のブリードアウト性をより抑制することができる。
一方、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の分子量を1分子中の官能基の数で割った値を3000以下とすることにより、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B’)および環状化合物(C)との反応を十分に確保することができ、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。 エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の分子量を1分子中の官能基の数で割った値は、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることがより好ましく、300以下がさらに好ましい態様である。
水酸基含有化合物(B)と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)を反応させて化合物(B’)を作製する場合、これらの配合比は、化合物(B’)の1分子中の水酸基の数が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多くなるようにこれら化合物を配合することが好ましい。エポキシ基およびカルボジイミド基は、水酸基と比較して、ポリアミド樹脂(A)の末端基との反応性に優れる。このため、化合物(B’)の1分子中の水酸基の数を、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多くすることにより、ポリアミド樹脂(A)との過剰な架橋構造の形成による脆化を抑制し、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、および熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
本発明の実施態様において、化合物(B’)は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物であることが好ましい。
(上記一般式(1)中、X1〜X6はそれぞれ同一でも異なってもよく、OH、CH3またはORを表す。ただし、OHとORの数の和は3以上であり、かつOHの数は3以上である。また、Rはエポキシ基またはカルボジイミド基を有する有機基を表し、nは0〜20の範囲を表す。)
上記の一般式(1)中におけるRは、エポキシ基を有する有機基またはカルボジイミド基を有する有機基を表す。エポキシ基を有する有機基としては、例えば、エポキシ基、グリシジル基、グリシジルエーテル型エポキシ基、グリシジルエステル型エポキシ基、グリシジルアミン型エポキシ基、エポキシ基またはグリシジル基で置換された炭化水素基、およびエポキシ基またはグリシジル基で置換された複素環基などが挙げられる。カルボジイミド基を有する有機基としては、例えば、アルキルカルボジイミド基、シクロアルキルカルボジイミド基およびアリールアルキルカルボジイミド基などが挙げられる。
上記の一般式(1)におけるnは、0〜20の範囲を表す。nが20以下である場合、ポリアミド樹脂(A)の可塑化が抑制され、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
一方、nは1以上であることがより好ましく、化合物(B’)の分子運動性を高めることができ、後述の環状化合物(C)の窒素原子および/または硫黄原子と適度に相互作用することで、ポリアミド樹脂(A)との相溶性をさらに向上させることができる。
一般式(1)中のOHとORの数の和は、3以上であることが好ましい。それにより、後述の環状化合物(C)の窒素原子および/または硫黄原子と適度に相互作用し、ポリアミド樹脂(A)との相溶性に優れ、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
ここで、OHとORの数の和は、低分子化合物の場合は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。
また、縮合物の場合、OHの数は、一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物の数平均分子量と水酸基価を算出し、下記式(6)により求めることができる。
一般式(1)中のOHの数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (6)
一般式(1)中のOHの数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (6)
また、縮合物の場合、ORの数は、上記の一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物の数平均分子量を、エポキシ当量またはカルボジイミド当量で割った値により算出することができる。上記の一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、算出することができる。具体的には、次の方法により算出することができる。一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物が溶解する溶媒、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準物質として用いる。カラムは溶媒に合わせ、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノールを使用する場合には、島津ジーエルシー(株)製の「Shodex GPC HFIP−806M」および/または「Shodex GPC HFIP−LG」を用いて、検出器として示差屈折率計を用いて数平均分子量の測定を行うことができる。
一般式(1)で表される構造を有する化合物(B’)は、適度に架橋構造を導入でき、かつ自己凝集力がより小さくなること、また後述の環状化合物(C)の窒素原子および/または硫黄原子と適度に相互作用することでポリアミド樹脂(A)との反応性および相溶性がより向上し、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
に優れる。
に優れる。
本発明の実施形態で用いられる水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の水酸基価は、100〜2000mgKOH/gが好ましい。水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の水酸基価を100mgKOH/g以上とすることにより、後述の環状化合物(C)と水素結合性の相互作用を形成し、ポリアミド樹脂(A)と、水酸基含有化合物(B)または化合物(B’)との反応量を十分に確保することが容易となるため、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の水酸基価は300mgKOH/g以上がより好ましく、600mgKOH/g以上がさらに好ましい。一方、水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の水酸基価を2000mgKOH/g以下とすることにより、後述の環状化合物(C)の窒素および/または硫黄原子との水素結合性の相互作用が高まり、ポリアミド樹脂(A)と水酸基含有化合物(B)または化合物(B’)との反応性がより向上することで、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
また、水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の水酸基価を2000mgKOH/g以下とすることにより、過剰反応によるゲル化を抑制することができる。水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の水酸基価は1800mgKOH/g以下がより好ましい。ここで、水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の水酸基価は、水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)を、無水酢酸と無水ピリジンの混合溶液でアセチル化して、それをエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定することにより求めることができる。
本発明の実施形態において、水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の分岐度は、0.05〜0.70であることが好ましい。分岐度は、化合物中の分岐の程度を表す数値であり、直鎖状の化合物が分岐度0であり、完全に分岐したデンドリマーが分岐度1である。この値が大きいほど、後述の環状化合物(C)との相互作用も高まり、ポリアミド樹脂組成物中により高度に架橋構造を導入することができ、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
分岐度を0.05以上とすることにより、後述の環状化合物(C)との相互作用も高まり、ポリアミド樹脂組成物中の架橋構造が十分に形成され、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。分岐度は、より好ましくは0.10以上である。
一方、分岐度を0.70以下とすることにより、後述の環状化合物(C)との相互作用を適度に抑え、ポリアミド樹脂組成物中の架橋構造を導入することで、水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の分散性をより高め、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることができる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、および熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。分岐度は、より好ましくは0.35以下である。分岐度は、下記式(7)により定義される。
・分岐度=(D+T)/(D+T+L) (7)
(上記式(7)中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す。上記D、T、Lは、13C−NMRにより測定したピークシフトの積分値から算出することができる。Dは第3級または第4級炭素原子に由来し、Tは第1級炭素原子の中で、メチル基であるものに由来し、Lは第1級または第2級炭素原子の中で、Tを除くものに由来する)。
・分岐度=(D+T)/(D+T+L) (7)
(上記式(7)中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す。上記D、T、Lは、13C−NMRにより測定したピークシフトの積分値から算出することができる。Dは第3級または第4級炭素原子に由来し、Tは第1級炭素原子の中で、メチル基であるものに由来し、Lは第1級または第2級炭素原子の中で、Tを除くものに由来する)。
本発明の実施形態で用いられる水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)は、水酸基とともに、他の反応性官能基を含有することができる。他の官能基としては、例えば、アルデヒド基、スルホ基、イソシアネート基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基およびシリルエーテル基などが挙げられる。
本発明の実施形態で用いられる水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の分子量は、50〜10000の範囲であることが好ましい。水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の分子量が50以上であれば、溶融混練時に揮発しにくいことから、加工性に優れる。水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の分子量は150以上であることが好ましく、より好ましくは200以上である。
一方、水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の分子量が10000以下であれば、水酸基含有化合物(B)または化合物(B’)と、後述の環状化合物(C)との相溶性が向上し、ポリアミド樹脂(A)との相溶性がより高くなるため、本発明の効果がより顕著に奏される。水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の分子量は、6000以下であることが好ましく、より好ましくは4000以下であり、さらに好ましくは800以下である。
水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)の分子量は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。また、水酸基含有化合物(B)および化合物(B’)が縮合物の場合の分子量は、分子量として重量平均分子量を用いる。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて算出することができる。具体的には、化合物が溶解する溶媒、例えばヘキサフルオロイソプロパノールを移動相として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準物質として用い、カラムは溶媒に合わせ、例えばヘキサフルオロイソプロパノールを使用した場合には、島津ジーエルシー(株)製の「Shodex GPC HFIP−806M」および/または「Shodex GPC HFIP−LG」を用いて、検出器として示差屈折率計を用いて重量平均分子量を測定することができる。
[環状化合物(C)]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、下記式[1]で表される環状化合物(C)0.001〜1質量部含有することを特徴とする。
QX [1]
(式[1]中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す)また、式[1]中QXは、炭素、窒素、硫黄間で結合していてもよく、縮合環を形成していてもよい。)
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、下記式[1]で表される環状化合物(C)0.001〜1質量部含有することを特徴とする。
QX [1]
(式[1]中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す)また、式[1]中QXは、炭素、窒素、硫黄間で結合していてもよく、縮合環を形成していてもよい。)
環状化合物(C)は、従来よりゴム炭化水素の過酸化物分解に基づく劣化を防止する耐熱剤として知られている。さらに、ヨウ化第一銅と併用することにより、比較的銅含有量が多い場合においても銅の析出を抑える効果があり、ポリアミド繊維の紡糸性を改善でき、また口金汚れの低減効果を奏する事が知られている。
本発明のポリアミド樹脂組成物においては、前述の水酸基含有化合物(B)と環状化合物(C)を併用することにより、連続成形時の離型性、金型汚れ(低ガス性)に優れ、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性が向上するとともに、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性が向上するという特異的な効果を発現することを見出した。
これは水酸基含有化合物(B)の水酸基と環状化合物(C)の窒素原子および/または硫黄原子が水素結合性の相互作用を生じることで、水酸基含有化合物(B)の分岐度を高めることができ、(B)化合物の自己凝集力を低減することでポリアミド樹脂(A)との反応性が高まり、分散性が向上する。分岐構造形成により(B)化合物の耐熱性が向上するとともに、ポリアミド樹脂(A)中に均質に分散することで溶融成形時に核剤として機能すると考える。また、分子量増加により揮発性が低減し、金型汚れ性(低ガス性)が向上するとともに湿熱環境下におけるブリードアウト性も向上するものと考えられる。さらに、ポリアミド樹脂との反応性、相溶性が向上することで、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性が向上すると考えられる。
本発明に用いられる環状化合物(C)は、式[1]中のQが芳香環、脂環化合物から選ばれる1種であり、芳香環では、炭素数6から14が好ましく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンを好ましくあげることができる。脂環化合物は、炭素数5から14の脂環化合物が好ましく、シクロアルカン、ポリシクロアルカン、それらの不飽和化合物などが挙げられ、中でもシクロヘキサンが好ましい。
本発明に用いられる環状化合物(C)は、式[1]中のXが5員環または6員環の複素環化合物であり、例えば、フラン、ピロール、ピリジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、およびピラゾールなどが挙げられる。水酸基含有化合物との相互作用の観点から(B)イミダゾール、オキサゾール、およびチアゾールから選ばれた化合物であることが好ましい。
本発明に用いられる環状化合物(C)は、式[1]中のXが置換基を有していることが好ましく、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、カルボキシル基、スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基が好ましく挙げられ、水酸基含有化合物(B)および後述の(D)金属および/またはその塩との相互作用の観点から特にチオール基が好ましい。
但し、本発明に用いられる環状化合物(C)は、水酸基含有化合物(B)との水素結合性の相互作用を形成することで本発明の効果を奏する観点から、後述の金属および/またはその塩(D)に例示される金属に、あらかじめ上記環状化合物(C)が配位した錯塩は含まない。
本発明に用いられる環状化合物(C)として、2−メルカプトベンゾイミダゾールおよび/または2−メルカプトベンゾチアゾールを好ましく選択することができ、これら化合物を使用することで水酸基含有化合物(B)の分岐度をより高めることができ、(B)化合物の自己凝集力を低減することでポリアミド樹脂(A)との反応性が高まり、分散性が向上することで、熱老化後の表面平滑性と高温クリープ特性の面から好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、環状化合物(C)の配合量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、0.001〜1質量部(0.001質量部以上1質量部以下)である。なお、環状化合物(C)の配合量は、前記した環状化合物の合計量が、0.001〜1質量部であることを意味する。より具体的には、環状化合物(C)は、2−メルカプトベンゾイミダゾールおよび2−メルカプトベンゾチアゾールから選ばれる少なくとも1種であり、かつ2−メルカプトベンゾイミダゾールおよび2−メルカプトベンゾチアゾールの合計が、0.001〜1質量部であることが好ましい。環状化合物(C)の配合量が0.001質量部に満たない場合には、(B)化合物中の水酸基との相互作用に劣り、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)に劣る。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性が低下する。0.01質量部以上が好ましく、0.03以上がより好ましく、さらに好ましくは0.04以上である。また、環状化合物(C)の配合量が1質量部を越える場合には、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)低下が生じる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性低下を起こす。0.5質量部以下が好ましく、0.2質量部以下がより好ましく、0.1質量部以下がさらに好ましい。
[金属および/またはその塩(D)(金属含有化合物(D))]
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(D)金属および/またはその塩(以下、金属含有化合物(D)と記すこともある)と水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)を併用して配合することが好ましい。金属含有化合物(D)と水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)を併用して配合することにより、従来の銅化合物のみの配合に比べ、本願の特徴である連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)により優れる。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、(D)金属および/またはその塩(以下、金属含有化合物(D)と記すこともある)と水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)を併用して配合することが好ましい。金属含有化合物(D)と水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)を併用して配合することにより、従来の銅化合物のみの配合に比べ、本願の特徴である連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)により優れる。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
前記特性向上の理由は定かではないが、水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)と金属含有化合物(D)を併用することで、金属含有化合物(D)の高温条件下における安定性が向上すること、またポリアミド樹脂(A)中における金属含有化合物(D)に由来する金属イオンの拡散速度が向上し、金属含有化合物(D)のラジカル捕捉能が向上するため、ポリアミド樹脂(A)の熱分解により生じるラジカルを半永久的かつ効率的に捕捉することができるためと推定される。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、環状化合物(C)と金属含有化合物(D)のモル比((C)/(D))は、0.1〜10(0.1以上、10.0以下)であることが好ましい。モル比((C)/(D))を0.1以上とすることにより、金属含有化合物(D)の分散性を向上させ、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)がより向上する。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性がより向上する。0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。一方、重量比((C)/(D))を10.0以下とすることにより、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)の低下を抑えることができる。2.1以下がより好ましい。
また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性がより向上する。8.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂(A)の熱分解によって生じるラジカルを補足できること、入手が容易であることから、金属含有化合物(D)の金属は、銅、鉄、亜鉛、ニッケル、マンガン、コバルト、クロムおよびスズからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
金属含有化合物(D)の塩の形態としては、金属単体、または塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン化物、酸化物、硫化物、窒化物などが挙げられ、特にハロゲン化物が好ましい。
金属含有化合物(D)の塩としては、以下に限定されるものではないが、例えば塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、酸化銅、硫化銅、窒化銅などの銅塩類、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、酸化鉄、硫化鉄、窒化鉄などの鉄塩類、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、窒化亜鉛などの亜鉛塩類、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル、酸化ニッケル、硫化ニッケル、窒化ニッケルなどのニッケル塩類、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、酸化マンガン、硫化マンガン、窒化マンガンなどのマンガン塩類、塩化コバルト、臭化コバルト、ヨウ化コバルト、酸化コバルト、硫化コバルト、窒化コバルトなどのコバルト塩類、塩化クロム、臭化クロム、ヨウ化クロム、酸化クロム、硫化クロム、窒化クロムなどのクロム塩類、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、酸化スズ、硫化スズ、窒化スズなどのスズ塩類、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
中でも、金属含有化合物(D)は銅含有化合物が好ましい。銅含有化合物を配合することにより、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)がより向上し、また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性、熱老化後の表面平滑性をさらに向上させるために、本発明のポリアミド樹脂組成物は、金属含有化合物(D)を配合した場合に、さらに、リチウム、ナトリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の塩を配合することが好ましい。
塩の形態としては、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン化物であることが好ましい。例えば、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムなどのリチウム塩類、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムなどのナトリウム塩類、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウムなどのセシウム塩類、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウムなどのマグネシウム塩類、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウムなどのカルシウム塩類、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウムなどのバリウム塩類、ならびにこれらの混合物が挙げられる。金属含有化合物(D)として、ヨウ化銅を配合する場合は、塩化リチウムをさらに配合すること、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性、熱老化後の表面平滑性をさらに向上させることができるため、好ましい。
なお、金属含有化合物(D)を配合した場合に、さらにハロゲン化カリウムを配合すると、熱処理後の成形品においてブリスター発生の原因となるため、ヨウ化カリウム等のハロゲン化カリウムは配合しないことが好ましい。
本発明において、金属含有化合物(D)は銅含有化合物が好ましく、その場合、本発明のポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量(重量基準)は、25〜500ppmであることが好ましい。銅元素の含有量を25ppm以上とすることにより、ポリアミド(A)樹脂と水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)との相溶性がより向上し、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)がより向上する。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性がより向上する。ポリアミド樹脂組成物中の金属元素の含有量(重量基準)は、80ppm以上が好ましい。さらに好ましくは120ppm以上である。一方、銅元素の含有量を250ppm以下とすることにより、銅化合物の析出や遊離による着色を抑制し、成形品のブリードアウト性をより向上させることができる。また、銅元素の含有量を220ppm以下とすることにより、ポリアミド樹脂と銅の過剰な配位結合に起因するアミド基の水素結合力の低下を抑制し、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)がより向上する。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性がより向上する。
ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量(重量基準)は、200ppm以下が好ましい。なお、ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量は、銅化合物の配合量を適宜調節することにより前述の所望の範囲にすることができる。
ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量は、以下の方法により求めることができる。まず、ポリアミド樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解し、分解液を希釈する。その希釈液を原子吸光分析(検量線法)することにより、銅含有量を求めることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、アセトンで抽出される(C)化合物のモル数を[N]、(D) 金属および/またはその塩に含まれる金属のモル数を[M]としたとき、[N]/[M]が0.1以上3.0以下であることが好ましい。さらに好ましくは2.0以下である。[N]/[M]を前述の範囲とすることで、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)がより向上する。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性がより向上する。なお、ポリアミド樹脂組成物の[N]/[M]は、(C)化合物と(D)金属および/またはその塩のモル比(配合量)を適宜調節することにより前述の所望の範囲にすることができる。
ポリアミド樹脂組成物中の(D)金属および/またはその塩に含まれる金属のモル数は、以下の方法により求めることができる。まず、樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解し、分解液を希釈する。その希釈液を原子吸光分析(検量線法)することにより、金属含有量を求めることができる。
一方、ポリアミド樹脂組成物のアセトンで抽出される(C)化合物のモル数[N]は、以下の方法により求めることができる。まず、樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットに10倍量のアセトンを加え、60℃で4時間環流抽出処理を行う。抽出後のアセトン溶液は冷却した後に回収し、エバポレーターにてアセトンを蒸発乾固させ抽出物を得た。次いで得られた抽出物と定量用の標準物質とを溶媒に溶かした後、1H−NMRを用いて、(C)化合物に由来するピーク強度と標準物質のピーク強度の比より(C)化合物のモル数[N]を求めることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物中の有機成分(無機充填剤を除く成分を指す)中のカルボン酸濃度が13.0×10−5mol/g以下が好ましい。13.0×10−5mol/g以下とすることで、ポリアミド樹脂組成物の高温時の安定性が向上し、熱分解による低分子量化が抑制されることで連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)がより向上する。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性がより向上する。ポリアミド樹脂組成物中の有機成分のカルボン酸濃度は、好ましくは12×10−5mol/g以下が、より好ましくは10×10−5mol/g以下、さらに好ましくは8.0×10−5mol/g以下である。一方、0.1×10−5mol/g以上が好ましい。さらに好ましくは、1.0×10−5mol/g以上である。
ポリアミド樹脂組成物中のカルボン酸濃度を13×10−5mol/g以下にする手法としては、特に限定されないが、例えば、前述の好ましい(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸基含有化合物、(C)環状化合物を使用すること、溶融混練時の過剰な発熱を抑制し、低発熱条件にて溶融混練を行うこと等が挙げられる。ポリアミド樹脂組成物中のカルボン酸濃度は溶融混練時の過剰な発熱による(A)ポリアミド樹脂自体の熱分解および/または(B)水酸基含有化合物の水酸基が酸化反応により一部カルボン酸に変性されることが主要因と考えられ、組成物中のカルボン酸濃度が増加することで、高温環境下においてポリアミド樹脂組成物の熱分解が促進されると考えられる。これに対し、本発明の(A)ポリアミド樹脂、(B)水酸基含有化合物、(C)環状化合物を使用すること、溶融混練時の過剰な発熱を抑制し、低発熱条件にて溶融混練を行うことで、ポリアミド樹脂組成物中のカルボン酸濃度を所定量に制御することができ、本発明の効果をよりいっそう奏することが可能となる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、さらにリン含有化合物を配合することができる。ここで、本発明の実施形態において、「リン含有化合物」とは、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの金属塩を指し、これらを2種以上配合してもよい。従来より、次亜リン酸ナトリウムなどのリン含有化合物は、ポリアミドを重縮合する際の重縮合触媒として用いられており、重合時間の短縮化、黄変抑制効果が知られているが、本発明の実施形態においては、リン含有化合物を含有することにより、耐熱老化性(熱処理後の高温におけるバースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)および熱老化後の表面平滑性により優れる成形品を得ることができる。
亜リン酸または次亜リン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カルシウムが好ましい。
亜リン酸または次亜リン酸の金属塩としては、次亜リン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウムなどのナトリウム金属塩や、亜リン酸カルシウム、次亜リン酸カルシウムなどのカルシウム金属塩がより好ましい。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物において、リン含有化合物の配合量は、特に限定はないが、リン原子換算でポリアミド樹脂(A)含有量に対して180〜3500ppmであることが好ましい。リン原子換算濃度が180ppm以上であると、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。一方、リン原子換算濃度が3500ppm以下であると、ポリアミド樹脂(A)の増粘を抑制でき、せん断発熱によるリン含有化合物の分解により発生するガスによるポリアミド樹脂(A)および水酸基含有化合物(B)、環状化合物(C)の分解を抑え、連続成形時の金型汚れ性(低ガス性)をより向上させることがでる。また得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性をより向上させることができる。
なお、ここでいうポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂含有量に対するリン含有化合物由来のリン原子換算濃度は、以下の方法により求めることができる。まずポリアミド樹脂組成物またはその成形品を減圧乾燥した後、550℃の電気炉で24時間加熱して灰化させ、ポリアミド樹脂組成物またはその成形品中の無機物の含有量を求める。また、衝撃改良材などのポリアミド樹脂(A)以外の樹脂成分や、水酸基含有化合物(B)、環状化合物およびリン含有化合物ならびにその他の添加剤を含有する場合は、有機溶媒による抽出分離によりポリアミド樹脂(A)またはポリアミド樹脂(A)以外の成分の重量を測定し、ポリアミド樹脂組成物またはその成形品中のポリアミド樹脂(A)含有量を算出する。一方、ポリアミド樹脂組成物またはその成形品を炭酸ソーダ共存下において乾式灰化分解するか、硫酸・硝酸・過塩素酸系または硫酸・過酸化水素水系において湿式分解することにより、リンを正リン酸とする。次いで、正リン酸を1mol/L硫酸溶液中においてモリブデン酸塩と反応させて、リンモリブデン酸とし、これを硫酸ヒドラジンで還元して、生成するヘテロポリブルーの830nmの吸光度を吸光光度計(検量線法)で測定して比色定量することにより、ポリアミド樹脂組成物中のリン含有量を算出する。比色定量により算出したリン量を、先に算出したポリアミド樹脂量で割ることにより、ポリアミド樹脂に対するリン原子濃度を求めることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに充填材を配合させることができる。充填材としては、例えば、繊維状、板状、粉末状、粒状などの充填材を挙げることができる。具体的には、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維や液晶性ポリエステル繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、針状酸化チタンなどの繊維状またはウィスカー状充填材、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、ガラスビーズ、ガラスフレーク、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウムおよび黒鉛などの粉状、粒状あるいは板状の充填材が挙げられる。本発明に使用される上記の充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理されていてもよい。
これら充填材のなかで、特にガラス繊維が好ましく、ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものならば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランドおよびミルドファイバーなどから選択して用いることができる。本発明で使用されるガラス繊維としては、弱アルカリ性のものが機械的強度の点で好ましい。特に酸化ケイ素含有量が50〜80重量%のガラス繊維が好ましく用いられ、より好ましくは酸化ケイ素含有量が65〜77重量%のガラス繊維である。また、ガラス繊維はエポキシ系、ウレタン系、アクリル系などの被覆あるいは収束剤で処理されていることが好ましく、エポキシ系が特に好ましい。またシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で処理されていることが好ましく、エポキシシラン、アミノシラン系のカップリング剤が特に好ましい。なおガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。また上記充填材は2種以上を併用してもよい。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、充填材の配合量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、1〜150質量部が好ましい。充填材の配合量が1質量部以上の場合には、機械特性の向上効果が得られる。10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましい。また、充填材の配合量が150質量部以下の場合には、機械特性、流動性低下が起こりにくい。100質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましい。
さらに、本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアミド樹脂以外の樹脂や、目的に応じて各種添加剤を含有することが可能である。ポリアミド樹脂以外の樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。これら樹脂を配合する場合、その含有量は、ポリアミド樹脂の特徴を十分に活かすため、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
また、各種添加剤の具体例としては、本発明の金属含有化合物(D)以外の熱安定剤、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物などの可塑剤、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、耐衝撃改良剤、発泡剤などを挙げることができる。これら添加剤を含有する場合、その含有量は、ポリアミド樹脂の特徴を十分に活かすため、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して10質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
本発明の金属含有化合物(D)以外の熱安定剤としては、フェノール系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。銅化合物以外の熱安定剤としては、これらを2種以上用いてもよい。
フェノール系化合物としては、ヒンダードフェノール系化合物が好ましく用いられ、N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが好ましく用いられる。
リン系化合物としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビスフェニレンホスファイト、ジ−ステアリルペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリフェニルホスファイト、3,5−ジ−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスフォネートジエチルエステル、などが挙げられる。リン系化合物の中でも、ポリアミド樹脂のコンパウンド中に耐熱材の揮発や分解を少なくするために、融点が高いものが好ましく用いられる。
硫黄系化合物としては、有機チオ酸系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物等が挙げられる。これら硫黄系化合物の中でも、有機チオ酸系化合物が好ましい。特に、チオエーテル構造を有するチオエーテル系化合物は、酸化された物質から酸素を受け取って還元するため、熱安定剤として好適に使用することができる。チオエーテル系化合物としては、具体的には、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)がより好ましい。硫黄系化合物の分子量は、通常200以上、好ましくは500以上であり、その上限は通常3,000である。
アミン系化合物としては、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物およびジナフチルアミン骨格を有する化合物が好ましく、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物がさらに好ましい。これらアミン系化合物の中でも4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンおよびN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましく、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが特に好ましい。
硫黄系化合物またはアミン系化合物の組み合わせとしては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)と4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンの組み合わせがより好ましい。
本発明の実施形態に用いられるポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はないが、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が使用でき、反応性向上の点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機による溶融混練やニーダーによる溶融混練等が使用できるが、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましい。押出機による溶融混練については、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等の押出機を1台以上使用できるが、混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく、二軸押出機を用いた溶融混練による方法が最も好ましい。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)に、水酸基含有化合物(B)、環状化合物(C)を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、ドライブレンドや溶液配合法、ポリアミド樹脂(A)の重合時添加、溶融混練などが用いることができ、なかでも溶融混練が好ましい。溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、ポリアミド樹脂(A)の融点以上であって、融点+50℃以下で溶融混練して樹脂組成物とすることができる。なかでも二軸押出機が好ましい。
混練方法としては、1)ポリアミド樹脂(A)、水酸基含有化合物(B)、環状化合物(C)、金属含有化合物(D)およびその他の添加剤を元込めフィーダーから一括で投入して混練する方法(一括混練法)、2)ポリアミド樹脂(A)、水酸基含有化合物(B)、環状化合物(C)、金属含有化合物(D)を元込めフィーダーから投入して混練した後、充填材および必要であればその他の添加剤をサイドフィーダーから添加して混練する方法(サイドフィード法)、3)ポリアミド樹脂(A)と水酸基含有化合物(B)および/または環状化合物(C)およびその他の添加剤(金属含有化合物(D)等)を高濃度に含む熱可塑性樹脂組成物(マスターペレット)を作製し、次いで規定の濃度になるようにマスターペレットをポリアミド樹脂(A)およびその他の添加剤、充填材を混練する方法(マスターペレット法)など、どの方法を用いてもかまわない。
また、(D)金属および/またはその塩は、ポリアミド樹脂(A)のアミド基に配位してアミド基を保護する役割を果たすとともに、ポリアミド樹脂(A)と水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)の相溶化剤としての役割も果たすと考えられることから、(D)金属および/またはその塩を配合する場合には、ポリアミド樹脂(A)とともに二軸押出機に供給し、金属化合物を十分に反応させることが好ましい。
二軸押出機の全スクリュー長さLとスクリュー径Dの比(L/D)は、25以上が好ましく、30を超えることがより好ましい。L/Dを25以上とすることにより、(ポリアミド樹脂(A)と必要により(D)金属および/またはその塩を十分に混練した後に、水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)、必要によりその他成分を供給することが容易になる。その結果、ポリアミド樹脂(A)の分解を抑制することができる。また、ポリアミド樹脂(A)と、水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)の分散性をより向上させ、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)がより向上する。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性がより向上する。
本発明の実施形態においては、少なくともポリアミド樹脂(A)と、必要により(D)金属および/またはその塩を、スクリュー長さの1/2より上流側から二軸押出機に供給して溶融混練することが好ましく、スクリューセグメントの上流側の端部から供給することがより好ましい。ここでいうスクリュー長とは、スクリュー根本のポリアミド樹脂(A)が供給される位置(フィード口)にあるスクリューセグメントの上流側の端部から、スクリュー先端部までの長さである。スクリューセグメントの上流側の端部とは、押出機に連結するスクリューセグメントの最も上流側の端に位置するスクリューピースの位置のことを示す。
水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)は、スクリュー長さの1/2より下流側から二軸押出機に供給して溶融混練することが好ましい。
水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)をスクリュー長の1/2より下流側から供給することにより、ポリアミド樹脂(A)と、必要により(D)金属および/またはその塩が十分に混練された状態とした後に、水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)を供給することが容易になる。その結果、ポリアミド樹脂(A)の分解を抑制しつつ、水酸基化合物(B)および環状化合物(C)と、ポリアミド樹脂(A)との相溶性が向上し、分散性をより向上させることができる。
本発明の効果をより顕著に発現させるためには、水酸基含有化合物(B)のポリアミド樹脂組成物中における分散性を高めることが好ましい。具体的には、水酸基含有化合物(B)中の水酸基とポリアミド樹脂(A)のカルボキシル末端基と脱水縮合反応をより促進させる方法が好ましく、ポリアミド樹脂組成物中において微細な分散構造を形成させることにより、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)がより向上する。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性がより向上する。
水酸基含有化合物(B)のポリアミド樹脂組成物中における分散性を高める手段としては、例えば、混練温度やスクリューアレンジの選択により溶融混練時の樹脂圧力を高める方法、複数回押出機を通して溶融混練する方法、ポリアミド樹脂(A)と、水酸基含有化合物(B)および/または環状化合物(C)の高濃度予備混合物を作製し、これをポリアミド樹脂(A)と溶融混練する方法などを好ましく挙げることができる。
二軸押出機を使用して本発明の実施形態に用いられるポリアミド樹脂組成物を製造する場合、混練性、反応性向上の点から、複数のフルフライトゾーンおよび複数のニーディングゾーンを有する二軸押出機を用いることが好ましい。フルフライトゾーンは1個以上のフルフライトより構成され、ニーディングゾーンは1個以上のニーディングディスクより構成される。
水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)の供給位置の上流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn1とした場合、Ln1/Lは0.02以上であることが好ましく、0.03以上であることがさらに好ましい。一方Ln1/Lは、0.40以下であることが好ましく、0.20以下であることがさらに好ましい。Ln1/Lを0.02以上とすることにより、ポリアミド樹脂(A)の反応性および混練性を高めることができ、0.40以下とすることにより、剪断発熱を適度に抑えて樹脂の熱劣化を抑制することができる。ポリアミド樹脂(A)の溶融温度に特に制限はないが、ポリアミド樹脂(A)の熱劣化による分子量低下を抑制するため、340℃以下が好ましい。
水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)の供給位置の下流側でのニーディングゾーンの合計長さをLn2とした場合、Ln2/Lは0.02〜0.30であることが好ましい。Ln2/Lを0.02以上とすることにより、水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)の反応性をより高めることができる。Ln2/Lは0.04以上がより好ましい。一方、Ln2/Lを0.30以下とすることにより、ポリアミド樹脂(A)の分解をより抑制することができる。Ln2/Lは0.16以下がより好ましい。
また、ポリアミド樹脂(A)と、水酸基含有化合物(B)および環状化合物(C)を溶融混練し、得られた樹脂組成物を繰り返し押出機に通して複数回溶融混練を繰り返し、ポリアミド樹脂組成物中における水酸基化合物(B)の分散性を向上させる方法も挙げることができる。
ポリアミド樹脂(A)、水酸基含有化合物(B)または、水酸基含有化合物(B)と環状化合物(C)の高濃度予備混合物を作製し、これをポリアミド樹脂(A)と溶融混練する方法によりポリアミド樹脂組成物を製造する場合、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、水酸基含有化合物(B)10〜250質量部を溶融混練して高濃度予備混合物を作製し、その高濃度予備混合物をさらにポリアミド樹脂(A)と環状化合物(C)、必要により金属化合物(D)、およびその他成分とともに、二軸押出機により溶融混練することがより好ましい。高濃度予備混合物を作製しない場合と比較して、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)がより向上する。また、得られる成形品の湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐ブリスター性および耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、ならびに熱老化後の表面平滑性がより向上する。
この要因については定かではないが、あらかじめポリアミド樹脂(A)に対して、高濃度で水酸基含有化合物(B)を溶融混練することにより、ポリアミド樹脂(A)と、水酸基含有化合物(B)の相溶性向上に寄与する成分、すなわち相溶化剤が多数生成し、ポリアミド樹脂(A)と水酸基含有化合物(B)間の相溶性がよりいっそう向上するためと考えられる。
一方、高濃度予備混合物を作製する際、ポリアミド樹脂(A)と水酸基含有化合物(B)の含有量が多くなる。滞留安定性の低下を抑制するため、二軸押出機での溶融混練時に、水酸基含有化合物(B)をポリアミド樹脂供給位置よりも下流側より供給し、ポリアミド樹脂(A)、と化合物(B)の混練時間を短くすることが好ましい。高濃度予備混合物に用いるポリアミド樹脂(A)と、高濃度予備混合物へさらに配合するポリアミド樹脂(A)は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
かくして得られるポリアミド樹脂組成物は、公知の方法で各種成形品を得ることができる。成形方法としては、例えば、射出成形、射出圧縮成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、プレス成形などが挙げられる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、その優れた特性を活かし、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、とりわけ、機械特性、耐熱老化性、難燃性、プレスフィット性が要求される自動車エンジン周辺部品、自動車アンダーフード部品、自動車ギア部品、自動車内装部品、自動車外装部品、吸排気系部品、エンジン冷却水系部品や、自動車電装部品、電気・電子部品用途に特に好ましく用いられる。具体的には、本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、エンジンカバー、エアインテークパイプ、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、フィラーキャップ、スロットルボディ、クーリングファンなどの自動車エンジン周辺部品、クーリングファン、ラジエータータンクのトップおよびベース、シリンダーヘッドカバー、オイルパン、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、廃ガス系統部品などの自動車アンダーフード部品、ギア、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、ベアリングケージ、チェーンガイド、チェーンテンショナなどの自動車ギア部品、シフトレバーブラケット、ステアリングロックブラケット、キーシリンダー、ドアインナーハンドル、ドアハンドルカウル、室内ミラーブラケット、エアコンスイッチ、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、トリムなどの自動車内装部品、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、シリンダーヘッドカバー、ドアミラーステイ、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、リアガーニッシュ、リアスポイラー、トランクリッド、ロッカーモール、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの自動車外装部品、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、ターボチャージャ、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、レゾネーター、及びスロットルボディなどの吸排気系部品、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター、及びデリバリーパイプなどのエンジン冷却水系部品、コネクタやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、コンビネーションスイッチなどの自動車電装部品、電気・電子部品としては、例えば、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、抵抗器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、スイッチ、ナイフスイッチ、他極ロッド、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、ICやLED対応ハウジング、コンデンサー座板、ヒューズホルダー、各種ギヤー、各種ケース、キャビネットなどの電気部品、コネクター、SMT対応のコネクタ、カードコネクタ、ジャック、コイル、コイルボビン、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレー、リレーケース、リフレクター、小型スイッチ、電源部品、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップシャーシ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、SiパワーモジュールやSiCパワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などの電子部品、クリップ、クランプ、バンドなどの配線、コード、チューブ、各種部品を連結あるいは束ねる部品などに好ましく用いられる。
次に、実施例を挙げて本発明のポリアミド樹脂組成物と成形品について、さらに具体的に説明する。特性評価は、下記の方法に従って行った。
[ポリアミド樹脂の融点]
ポリアミド樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下で、セイコーインスツル製ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用いて、次の条件でポリアミド樹脂(A)の融点を測定した。ポリアミド樹脂(A)の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃の温度まで降温し、30℃の温度で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。
ポリアミド樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下で、セイコーインスツル製ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用いて、次の条件でポリアミド樹脂(A)の融点を測定した。ポリアミド樹脂(A)の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃の温度まで降温し、30℃の温度で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。
[重量平均分子量および数平均分子量]
化合物(B)、化合物(B’)、およびエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)2.5mgを、それぞれヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)4mlに溶解し、0.45μmのフィルターでろ過して得られた溶液を測定に用いた。測定条件を、次に示す。
・装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters製)
・検出器:示差屈折率計Waters410(Waters製)
・カラム:Shodex GPC HFIP−806M(2本)+HFIP−LG(島津ジーエルシー(株))
・流速:0.5ml/min
・試料注入量:0.1ml
・温度:30℃
・分子量校正:ポリメチルメタクリレート。
化合物(B)、化合物(B’)、およびエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)2.5mgを、それぞれヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)4mlに溶解し、0.45μmのフィルターでろ過して得られた溶液を測定に用いた。測定条件を、次に示す。
・装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters製)
・検出器:示差屈折率計Waters410(Waters製)
・カラム:Shodex GPC HFIP−806M(2本)+HFIP−LG(島津ジーエルシー(株))
・流速:0.5ml/min
・試料注入量:0.1ml
・温度:30℃
・分子量校正:ポリメチルメタクリレート。
[水酸基価]
化合物(B)と化合物(B’)を0.5g採取し、それぞれ250ml三角フラスコに加え、次いで、無水酢酸と無水ピリジンを1:10(質量比)に調整・混合した溶液20.00mlを採取し、前記の三角フラスコに入れ、還流冷却器を取り付けて、100℃の温度に温調したオイルバス下で20分間、撹拌しながら還流させた後、30℃まで冷却した。さらに、前記の三角フラスコ内に、冷却器を通じてアセトン20mlと蒸留水20mlを加えた。これにフェノールフタレイン指示薬を入れて、0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液により滴定した。別途測定したブランク(試料を含まない)の測定結果を差し引き、下記式(8)により水酸基価を算出した。
水酸基価[mgKOH/g]=[((B−C)×f×28.05)/S]+E (8)
(上記式中、Bは滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]を表し、Cはブランクの滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]を表し、fは0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクターを表し、Sは試料の質量[g]を表し、Eは酸価を表す。)。
化合物(B)と化合物(B’)を0.5g採取し、それぞれ250ml三角フラスコに加え、次いで、無水酢酸と無水ピリジンを1:10(質量比)に調整・混合した溶液20.00mlを採取し、前記の三角フラスコに入れ、還流冷却器を取り付けて、100℃の温度に温調したオイルバス下で20分間、撹拌しながら還流させた後、30℃まで冷却した。さらに、前記の三角フラスコ内に、冷却器を通じてアセトン20mlと蒸留水20mlを加えた。これにフェノールフタレイン指示薬を入れて、0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液により滴定した。別途測定したブランク(試料を含まない)の測定結果を差し引き、下記式(8)により水酸基価を算出した。
水酸基価[mgKOH/g]=[((B−C)×f×28.05)/S]+E (8)
(上記式中、Bは滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]を表し、Cはブランクの滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]を表し、fは0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクターを表し、Sは試料の質量[g]を表し、Eは酸価を表す。)。
[水酸基と、エポキシ基またはカルボジイミド基との反応率]
化合物(B’)0.035gを重水素化ジメチルスルホキシド0.7mlに溶解し、エポキシ基の場合は1H−NMR測定を行い、カルボジイミド基の場合は13C−NMR測定を行った。各分析条件は、下記のとおりである。
化合物(B’)0.035gを重水素化ジメチルスルホキシド0.7mlに溶解し、エポキシ基の場合は1H−NMR測定を行い、カルボジイミド基の場合は13C−NMR測定を行った。各分析条件は、下記のとおりである。
(1)1H−NMR
・装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
・溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
・観測周波数:OBFRQ399.65MHz、OBSET124.00KHz、O・BFIN10500.00Hz
・積算回数:256回。
・装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
・溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
・観測周波数:OBFRQ399.65MHz、OBSET124.00KHz、O・BFIN10500.00Hz
・積算回数:256回。
(2)13C−NMR
・装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
・溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
・観測周波数:OBFRQ100.40MHz、OBSET125.00KHz、OBFIN10500.00Hz
・積算回数:512回。
・装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
・溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
・観測周波数:OBFRQ100.40MHz、OBSET125.00KHz、OBFIN10500.00Hz
・積算回数:512回。
得られた1H−NMRスペクトルから、エポキシ環由来ピークの面積を求めた。また、得られた13C−NMRスペクトルから、カルボジイミド基由来ピークの面積を求めた。ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。1分子中に3つ以上の水酸基含有化合物と、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)をドライブレンドしたもののピーク面積をdとし、化合物(b)のピーク面積をeとし、反応率は、下記式(9)により算出した。
・反応率(%)={1−(e/d)}×100 (9)
・反応率(%)={1−(e/d)}×100 (9)
一例として、ジペンタエリスリトールとビスフェノールA型エポキシ樹脂である「三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004を、3:1の質量比でドライブレンドしたものの1H−NMRスペクトルを、図1に示す。また、参考例5により得られた(B’−4)化合物の1H−NMRスペクトルを、図2に示す。図1に示す1H−NMRスペクトルから、2.60ppmと2.80ppm付近に現れるエポキシ環由来ピーク面積の合計を求め、同様に図2に示すピーク面積の合計を求め、反応率の算出式(9)により、反応率を算出した。この際、ピーク面積は、反応に寄与しないエポキシ樹脂のベンゼン環のピークの面積で規格化した。
[分岐度]
化合物(B)と化合物(B’)を、下記の条件で13C−NMR分析した後、下記式(10)により分岐度(DB)を算出した。
分岐度=(D+T)/(D+T+L) (10)
(上記式(10)中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す。)
化合物(B)と化合物(B’)を、下記の条件で13C−NMR分析した後、下記式(10)により分岐度(DB)を算出した。
分岐度=(D+T)/(D+T+L) (10)
(上記式(10)中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す。)
上記のD、T、Lは、13C−NMRにより測定したピーク面積から算出した。Dは第3級または第4級炭素原子に由来し、Tは第1級炭素原子の中で、メチル基であるものに由来し、Lは第1級または第2級炭素原子の中で、Tを除くものに由来する。ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。測定条件は、下記のとおりである。
(1)13C−NMR
・装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
・溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
・測定サンプル量/溶媒量:0.035g/0.70ml
・観測周波数:OBFRQ100.40MHz、OBSET125.00KHz、OBFIN10500.00Hz
・積算回数:512回。
・装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
・溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
・測定サンプル量/溶媒量:0.035g/0.70ml
・観測周波数:OBFRQ100.40MHz、OBSET125.00KHz、OBFIN10500.00Hz
・積算回数:512回。
[化合物(B)と化合物(B’)の1分子中の水酸基数]
水酸基の数は、化合物(B)と化合物(B’)の数平均分子量と水酸基価を算出し、下記式(11)により算出した。
・水酸基の数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (11)
水酸基の数は、化合物(B)と化合物(B’)の数平均分子量と水酸基価を算出し、下記式(11)により算出した。
・水酸基の数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (11)
[化合物(B’)の1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和]
エポキシ基またはカルボジイミド基の数は、化合物(B’)の数平均分子量をエポキシ当量またはカルボジイミド当量で割った値により算出した。
エポキシ基またはカルボジイミド基の数は、化合物(B’)の数平均分子量をエポキシ当量またはカルボジイミド当量で割った値により算出した。
化合物(B)と、化合物(B’)の数平均分子量と水酸基価は、前述の方法で測定した。エポキシ当量は、化合物(B’)400mgを、ヘキサフルオロイソプロパノール30mlに溶解させた後、酢酸20ml、テトラエチルアンモニウムブロミド/酢酸溶液(=50g/200ml)を加え、滴定液として0.1Nの過塩素酸および指示薬としてクリスタルバイオレットを用い、溶解液の色が紫色から青緑色に変化した際の滴定量より、下記式(12)により算出した。
エポキシ当量[g/eq]=W/((F−G)×0.1×f×0.001) (12)
(上記式中、Fは滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]を表し、Gはブランクの滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]を表し、fは0.1Nの過塩素酸のファクターを表し、Wは試料の質量[g]を表す。)
エポキシ当量[g/eq]=W/((F−G)×0.1×f×0.001) (12)
(上記式中、Fは滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]を表し、Gはブランクの滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]を表し、fは0.1Nの過塩素酸のファクターを表し、Wは試料の質量[g]を表す。)
カルボジイミド当量は、次の方法で算出した。化合物(B’)100質量部と、内部標準物質としてフェロシアン化カリウム(東京化成工業(株)製)30質量部をドライブレンドし、約200℃の温度で1分間熱プレスを行い、シートを作製した。その後、赤外分光光度計((株)島津製作所製、IR Prestige−21/AIM8800)を用いて、透過法で、シートの赤外吸収スペクトルを測定した。測定条件は、分解能4cm−1、積算回数32回とした。透過法での赤外吸収スペクトルは、吸光度がシート厚みに反比例するため、内部標準ピークを用いて、カルボジイミド基のピーク強度を規格化する必要がある。2140cm−1付近に現れるカルボジイミド基由来ピークの吸光度を、2100cm−1付近に現れるフェロシアン化カリウムのCN基の吸収ピークの吸光度で割った値を算出した。この値からカルボジイミド当量を算出するために、あらかじめカルボジイミド当量が既知のサンプルを用いてIR測定を行い、カルボジイミド基由来ピークの吸光度と内部標準ピークの吸光度の比を用いて検量線を作成し、化合物(B’)の吸光度比を検量線に代入し、カルボジイミド当量を算出した。カルボジイミド当量が既知のサンプルとして、脂肪族ポリカルボジイミド(日清紡製、“カルボジライト”(登録商標)LA−1、カルボジイミド当量247g/mol)、芳香族ポリカルボジイミド(ラインケミー製、“スタバクゾール”(登録商標)P、およびカルボジイミド当量360g/mol)を用いた。
[銅含有量]
ポリアミド樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解し、分解液を希釈する。その希釈液を原子吸光分析(検量線法)することにより、銅含有量を求めることができる。
ポリアミド樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解し、分解液を希釈する。その希釈液を原子吸光分析(検量線法)することにより、銅含有量を求めることができる。
[離型性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(ファナック(株)製ROBOSHOTS−2000i5A)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+20℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:5/10秒、スクリュー回転数:100rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:100mm/秒の条件で、長さ100mm×幅60mm×高さ25mm、肉厚2mmの箱型成形品を成形し、離型性を評価した。離型性の評価は、圧力センサーを突き出しピン(直径2mm)の後ろに配置し、金型から箱型成形品を取り出す際の突出し応力を測定することにより行った。30ショットの突出し応力の平均値を離型力として示した。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(ファナック(株)製ROBOSHOTS−2000i5A)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+20℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:5/10秒、スクリュー回転数:100rpm、射出圧力:100MPa、射出速度:100mm/秒の条件で、長さ100mm×幅60mm×高さ25mm、肉厚2mmの箱型成形品を成形し、離型性を評価した。離型性の評価は、圧力センサーを突き出しピン(直径2mm)の後ろに配置し、金型から箱型成形品を取り出す際の突出し応力を測定することにより行った。30ショットの突出し応力の平均値を離型力として示した。
[ガス発生量]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、アルミカップにペレット10gを計量した。ポリアミド樹脂の融点300℃の熱風オーブン中で1時間静置した後、ペレットの重量を計量し、重量減少分をガス発生量とした。発生ガス量が少ないほど、連続成形時の金型汚れがすくなくなるとことを意味する。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、アルミカップにペレット10gを計量した。ポリアミド樹脂の融点300℃の熱風オーブン中で1時間静置した後、ペレットの重量を計量し、重量減少分をガス発生量とした。発生ガス量が少ないほど、連続成形時の金型汚れがすくなくなるとことを意味する。
[ブリードアウト性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、乾燥後のペレットに対し、1.5重量%の割合で黒色染料マスター(F100B2:842P80/カーボンブラック顔料/安定剤=40.9/50/9.1(質量部))をドライブレンドした。その後、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+20℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:100rpm、最大射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、70mm×70mm×2mm厚の角板(フィルムゲート)を射出成形した。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、乾燥後のペレットに対し、1.5重量%の割合で黒色染料マスター(F100B2:842P80/カーボンブラック顔料/安定剤=40.9/50/9.1(質量部))をドライブレンドした。その後、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+20℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:100rpm、最大射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、70mm×70mm×2mm厚の角板(フィルムゲート)を射出成形した。
射出成形により得られた試験片をスガ試験機(株)製SMカラーコンピューター 型式SM−3を用い、前記試験片のL*値を測定した。L*値は、前面と裏面の両方で角板上の任意の5箇所にて測定した平均値L*(処理前)値とした。ついで、前記試験片を相対湿度95%および80℃の条件下の恒温恒湿槽に静置し、200h後に取り出し、L*(処理後)値を測定した。湿熱処理後の試験片の任意の5つの測定値の平均から、未処理試験片の5つのL*測定値の平均を引くことによって、ΔL*値を決定した。ΔL*値が小さい程ブリードアウト性に優れ、ΔL*値が大きいほどブリードアウト性に劣る。
[熱老化処理後の耐ブリスター性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、乾燥後のペレットを射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+20℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:100rpm、最大射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、70mm×70mm×2mm厚の角板(フィルムゲート)を射出成形した。射出成形により得られた試験片を255℃熱風オーブン中に1000時間静置した。その後、熱風オーブンから成形品を取り出しブリスターの有無を確認した。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、乾燥後のペレットを射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+20℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:100rpm、最大射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、70mm×70mm×2mm厚の角板(フィルムゲート)を射出成形した。射出成形により得られた試験片を255℃熱風オーブン中に1000時間静置した。その後、熱風オーブンから成形品を取り出しブリスターの有無を確認した。
以下、ブリスターの生じなかった実施例および比較例に関して行った試験について示す。
[熱老化処理後の表面平滑性]
各実施例および比較例で得られたペレットを、80℃で12時間減圧乾燥し、乾燥後のペレットを射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+20℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:100rpm、最大射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、70mm×70mm×2mm厚の角板(フィルムゲート)を射出成形した。射出成形により得られた試験片を255℃熱風オーブン中に1000時間静置した。その後、熱風オーブンから試験片を取り出し、試験片の無作為に選択した10部分について、表面平滑性測定器((株)小坂研究所製、サーフコーダSE−3400)を用いて、表面の平均平滑性(Ra)を測定した。表面の平均平滑性が小さいほど、熱老化処理後の表面平滑性に優れる。
各実施例および比較例で得られたペレットを、80℃で12時間減圧乾燥し、乾燥後のペレットを射出成形機(住友重機械工業株式会社製、SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+20℃、金型温度:80℃、射出/冷却時間:10/15秒、スクリュー回転数:100rpm、最大射出圧力:100MPa、射出速度:50mm/秒の条件で、70mm×70mm×2mm厚の角板(フィルムゲート)を射出成形した。射出成形により得られた試験片を255℃熱風オーブン中に1000時間静置した。その後、熱風オーブンから試験片を取り出し、試験片の無作為に選択した10部分について、表面平滑性測定器((株)小坂研究所製、サーフコーダSE−3400)を用いて、表面の平均平滑性(Ra)を測定した。表面の平均平滑性が小さいほど、熱老化処理後の表面平滑性に優れる。
[熱老化処理後のバースト強度]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+20℃、金型温度:80℃の条件で射出成形することにより、図3に示す試験片1、および図4に示す試験片2を作製した。なお、試験片1および2の、横の長さ(図3の(1))は148mmであり、縦の長さ(図3の(2))は60mmである。これらの成形品について、試験片1を振動溶着機の上部に、試験片2を下部に固定し、重ね合わせて振動で摩擦することにより、溶融して接合させて図5に示す成形品3を作製した。具体的には、ブランソン社製2850型振動溶着装置を用いて、次の条件で溶着した。
・振動数:240Hz
・加圧力:0.7MPa
・振幅:1.5mm
・溶着代:1.5mm
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+20℃、金型温度:80℃の条件で射出成形することにより、図3に示す試験片1、および図4に示す試験片2を作製した。なお、試験片1および2の、横の長さ(図3の(1))は148mmであり、縦の長さ(図3の(2))は60mmである。これらの成形品について、試験片1を振動溶着機の上部に、試験片2を下部に固定し、重ね合わせて振動で摩擦することにより、溶融して接合させて図5に示す成形品3を作製した。具体的には、ブランソン社製2850型振動溶着装置を用いて、次の条件で溶着した。
・振動数:240Hz
・加圧力:0.7MPa
・振幅:1.5mm
・溶着代:1.5mm
溶着した成形品3について、255℃熱風オーブン中に1000時間静置した。その後、180℃の恒温槽に10分静置した後、恒温槽から成形品を取り出して10秒後にイワキポンプ社製バースト強度試験機を用いて図5のAに示す(3)の注入口より速度1.13g/秒の水圧を加え、破裂する際の平均圧力を180℃のバースト強度とした。
[熱老化処理後の高温クリープ特性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+20℃、金型温度:80℃の条件で射出成形することにより、図6に示す表面形状で厚さ10mmの試験片4を射出成形法で成形した。なお、図6における試験片4の(1)は5cmであり、(2)は5cmであり、(3)は3cmである。その試験片4を振動溶着機に上下に固定し、X部(端部)を重ね合わせ振動で摩擦することにより溶融して接合させた。具体的に、ブランソン社製2850型振動溶着装置を用いて、次の条件で溶着した。
・振動数:240Hz
・加圧力:2.3MPa
・振幅:1.5mm
・溶着代:1.5mm
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+20℃、金型温度:80℃の条件で射出成形することにより、図6に示す表面形状で厚さ10mmの試験片4を射出成形法で成形した。なお、図6における試験片4の(1)は5cmであり、(2)は5cmであり、(3)は3cmである。その試験片4を振動溶着機に上下に固定し、X部(端部)を重ね合わせ振動で摩擦することにより溶融して接合させた。具体的に、ブランソン社製2850型振動溶着装置を用いて、次の条件で溶着した。
・振動数:240Hz
・加圧力:2.3MPa
・振幅:1.5mm
・溶着代:1.5mm
溶着した成形品図7の中央部を幅6mm(図8の(4))のように切削加工し、この試験片を、255℃熱風オーブン中に1000時間静置した。熱老化処理後の試験片を6本掛けクリープ試験機CP6−L−10kN(オリエンテック製)にセットし、180℃、10MPa荷重にて400時間処理した後の歪み量を測定した。歪み量が小さいほど耐クリープ性に優れる。
[ポリアミド樹脂組成物中のカルボン酸濃度]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、無機充填剤を除いた有機成分が0.15gとなるように20mLのスクリュー管に採取し、O−クレゾールを10mL加えた。次いで、該ペレットを70℃にて加熱しつつ溶解させた。次に、50mLビーカーにホルマリン0.1mL、ベンジルアルコール7mLを採取した。ペレットの溶解後、ガラスフィルター(規格3G)を用い、溶液全量の濾過を行い、無機充填材を除去した。スクリュー管に付着のポリアミド樹脂組成物を共洗いにより除去した。共洗いは合計2回行い、1回目はo−クレゾール3mL、2回目はo−クレゾール2mLを加え、所定時間攪拌後、濾過を行った。濾液を前記50mLビーカーに供した。pH電極を備えた電位差滴定装置(京都電子工業(株)製、AT−200)を用いて、この溶液を、濃度0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液により中和滴定した。pH曲線の変曲点を滴定終点とし、下記式によりカルボン酸濃度を算出した。
カルボン酸濃度=((A−B)×N×f×10−3)/W [10−5mol/g]
(上記式中、A:滴定に用いた0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、B:ブランクの滴定に用いた0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、N:0.02mol/L、f:0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクター、W:試料の質量[g])。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、無機充填剤を除いた有機成分が0.15gとなるように20mLのスクリュー管に採取し、O−クレゾールを10mL加えた。次いで、該ペレットを70℃にて加熱しつつ溶解させた。次に、50mLビーカーにホルマリン0.1mL、ベンジルアルコール7mLを採取した。ペレットの溶解後、ガラスフィルター(規格3G)を用い、溶液全量の濾過を行い、無機充填材を除去した。スクリュー管に付着のポリアミド樹脂組成物を共洗いにより除去した。共洗いは合計2回行い、1回目はo−クレゾール3mL、2回目はo−クレゾール2mLを加え、所定時間攪拌後、濾過を行った。濾液を前記50mLビーカーに供した。pH電極を備えた電位差滴定装置(京都電子工業(株)製、AT−200)を用いて、この溶液を、濃度0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液により中和滴定した。pH曲線の変曲点を滴定終点とし、下記式によりカルボン酸濃度を算出した。
カルボン酸濃度=((A−B)×N×f×10−3)/W [10−5mol/g]
(上記式中、A:滴定に用いた0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、B:ブランクの滴定に用いた0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、N:0.02mol/L、f:0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクター、W:試料の質量[g])。
[[N]/[M]]
組成物中の金属含有量[M]の定量は上記同様に行った。一方、組成物中の(C)環状化合物の定量は、乾燥したペレットを10倍量のアセトンで60℃で4時間環流抽出処理を行った。抽出後のアセトン溶液は冷却した後に回収し、エバポレーターにてアセトンを蒸発乾固させ抽出物を得た。次いで得られた抽出物と定量用の標準物質(エチルベンゼン)とを溶媒に溶かした後、1H−NMRを用いて、(C)環状化合物に由来するピーク強度と標準物質のピーク強度の比より(C)環状化合物のモル数[N]を求めた。
組成物中の金属含有量[M]の定量は上記同様に行った。一方、組成物中の(C)環状化合物の定量は、乾燥したペレットを10倍量のアセトンで60℃で4時間環流抽出処理を行った。抽出後のアセトン溶液は冷却した後に回収し、エバポレーターにてアセトンを蒸発乾固させ抽出物を得た。次いで得られた抽出物と定量用の標準物質(エチルベンゼン)とを溶媒に溶かした後、1H−NMRを用いて、(C)環状化合物に由来するピーク強度と標準物質のピーク強度の比より(C)環状化合物のモル数[N]を求めた。
<参考例>
・参考例1(F−1:Cu/K(質量比)=0.23の割合で含むナイロン66マスターバッチ)
ナイロン66(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3001−N)100質量部に対して、ヨウ化銅2.0質量部、ヨウ化カリウム40%水溶液21.7質量部を予備混合した後、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)を用いて、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃の温度で8時間真空乾燥し、銅含有量が0.60質量%のマスターバッチペレットを作製した。
・参考例1(F−1:Cu/K(質量比)=0.23の割合で含むナイロン66マスターバッチ)
ナイロン66(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3001−N)100質量部に対して、ヨウ化銅2.0質量部、ヨウ化カリウム40%水溶液21.7質量部を予備混合した後、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)を用いて、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃の温度で8時間真空乾燥し、銅含有量が0.60質量%のマスターバッチペレットを作製した。
(B−1):ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)、分子量254、水酸基価1325mgKOH/g。1分子中に6つの水酸基を有する。
(B−2):トリメチロールプロパン(東京化成(株)製)、分子量は134、水酸基価は1256mgKOH/g。1分子中に3つの水酸基を有する。
(B−3):ペンタエリスリトール(東京化成(株)製)、分子量は136、水酸基価は1645mgKOH/g。1分子中に4つの水酸基を有する。
(B−4):2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール(東京化成(株)製)、分子量146、水酸基価765mgKOH/g。1分子中に2つの水酸基を有する。
・参考例2(B’−1)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、分子量/1分子中の官能基数42)100質量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数=190)10質量部を予備混合した後、池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、前記の一般式(1)で表される化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は53%、分岐度は0.29で、水酸基価は1280mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製、分子量/1分子中の官能基数42)100質量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数=190)10質量部を予備混合した後、池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、前記の一般式(1)で表される化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は53%、分岐度は0.29で、水酸基価は1280mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
・参考例3(B’−2)
2軸押出機のスクリュー回転数を300rpmに変更し、溶融混練時間を0.9分間に変更したこと以外は、参考例2と同様にして、前記の一般式(1)で表される化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は2%、分岐度は0.15で、水酸基価は1350mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
2軸押出機のスクリュー回転数を300rpmに変更し、溶融混練時間を0.9分間に変更したこと以外は、参考例2と同様にして、前記の一般式(1)で表される化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は2%、分岐度は0.15で、水酸基価は1350mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
・参考例4(B’−3)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100質量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数=190)10質量部、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(東京化成工業(株)製)0.3質量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを押出機に供給し、再溶融混練工程をさらに6回行い、前記の一般式(1)で表される化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は96%、分岐度は0.39で、水酸基価は1170mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100質量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数=190)10質量部、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(東京化成工業(株)製)0.3質量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを押出機に供給し、再溶融混練工程をさらに6回行い、前記の一般式(1)で表される化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は96%、分岐度は0.39で、水酸基価は1170mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
・参考例5(B’−4)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100質量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中の官能基数825)33.3質量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、前記の一般式(1)で表される化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は56%、分岐度は0.34、水酸基価は1200mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100質量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中の官能基数825)33.3質量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、前記の一般式(1)で表される化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は56%、分岐度は0.34、水酸基価は1200mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
・参考例6(B’−5)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100質量部に対して、脂肪族ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル(株)製“カルボジライト”(登録商標)LA−1)、1分子中のカルボジイミド基の平均個数24個、分子量6000、分子量/1分子中の官能基数250)10質量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.0分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、一般式(1)で表される化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は68%、分岐度は0.37で、水酸基価は1110mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のカルボジイミド基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100質量部に対して、脂肪族ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル(株)製“カルボジライト”(登録商標)LA−1)、1分子中のカルボジイミド基の平均個数24個、分子量6000、分子量/1分子中の官能基数250)10質量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.0分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、一般式(1)で表される化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は68%、分岐度は0.37で、水酸基価は1110mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のカルボジイミド基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
・参考例7(B’−6)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100質量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数=190)500質量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化し、一般式(1)で表される化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は33%、分岐度は0.23で、水酸基価は540mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも少なく、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100質量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数=190)500質量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化し、一般式(1)で表される化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は33%、分岐度は0.23で、水酸基価は540mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも少なく、一般式(1)におけるOHとORの数の和は3以上であった。
・参考例8(B’−7)
ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製)100質量部に対して、ノボラックフェノール型変性エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数=190)10質量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度100℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度、押出機に供給し上記同様の条件で溶融混練しペレット化し、4級炭素を有さず、前記の一般式(1)で表される構造を有しない化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は38%、分岐度は0.02で、水酸基価は1240mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、1分子中に3つ以上の水酸基を有する。
ジグリセリン(阪本薬品工業(株)製)100質量部に対して、ノボラックフェノール型変性エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数=190)10質量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度100℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度、押出機に供給し上記同様の条件で溶融混練しペレット化し、4級炭素を有さず、前記の一般式(1)で表される構造を有しない化合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は38%、分岐度は0.02で、水酸基価は1240mgKOH/gであった。1分子中に3つ以上の水酸基を有し、1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、1分子中に3つ以上の水酸基を有する。
参考例9(B’−8)
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100質量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1007FS、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量2400、分子量/1分子中の官能基数1200)33.3質量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は52%、分岐度は0.32、水酸基価は1160mgKOH/gであった。1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとNH2とORの数の和は3以上であった。
ジペンタエリスリトール(広栄化学工業(株)製)100質量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1007FS、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量2400、分子量/1分子中の官能基数1200)33.3質量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で3.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物のペレットを得た。得られた化合物の反応率は52%、分岐度は0.32、水酸基価は1160mgKOH/gであった。1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多く、一般式(1)におけるOHとNH2とORの数の和は3以上であった。
参考例10(F−2)
ナイロン6(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1010)100質量部に対して、(B'−1)化合物26.7質量部を予備混合した後、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)を用いて、シリンダー温度245℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃の温度で8時間真空乾燥し、高濃度予備混合物ペレットを作製した。
ナイロン6(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1010)100質量部に対して、(B'−1)化合物26.7質量部を予備混合した後、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)を用いて、シリンダー温度245℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃の温度で8時間真空乾燥し、高濃度予備混合物ペレットを作製した。
その他、実施例および比較例に用いたポリアミド樹脂(A)、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)、環含有化合物(C)、金属化合物および/またはその塩(D)、充填材(E)、次のとおりである。
(A−1):融点260℃のナイロン66樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3001−N)。
(b−1):フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN“(登録商標)201)、1分子中のエポキシ基の平均個数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数190。
(C−1)2−メルカプトベンゾイミダゾール(東京化成工業製)、分子量150.20g/mol
(C−2)2−メルカプトベンゾチアゾール(東京化成工業製)、分子量167.25g/mol
(D−1)ヨウ化銅(I)(関東化学製)、分子量190.45g/mol
(D−2)塩化リチウム(I)(関東化学製)、分子量42.39g/mol
(E−1):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子(株)製T−717H)、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤、集束剤:エポキシ系、繊維長3mm。
(A−1):融点260℃のナイロン66樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3001−N)。
(b−1):フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN“(登録商標)201)、1分子中のエポキシ基の平均個数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数190。
(C−1)2−メルカプトベンゾイミダゾール(東京化成工業製)、分子量150.20g/mol
(C−2)2−メルカプトベンゾチアゾール(東京化成工業製)、分子量167.25g/mol
(D−1)ヨウ化銅(I)(関東化学製)、分子量190.45g/mol
(D−2)塩化リチウム(I)(関東化学製)、分子量42.39g/mol
(E−1):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子(株)製T−717H)、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤、集束剤:エポキシ系、繊維長3mm。
(実施例1〜25、比較例1〜8)
表1〜4に示すポリアミド樹脂(A)、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)、金属および/またはその塩(D)を予備混合した後、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。
表1〜4に示すポリアミド樹脂(A)、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)、金属および/またはその塩(D)を予備混合した後、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。
このメインフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、すなわちスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されていた。続いて、表に示す水酸基含有化合物水酸基含有化合物(B)(B’)、環状化合物(C)、および充填材(E)を、サイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。
このサイドフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0.65の位置、つまりスクリュー長の1/2より下流側の位置に接続されていた。2軸押出機のスクリュー構成は、化合物(B)等の供給位置の上流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn1、化合物(B)等の供給位置の下流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn2とした場合、Ln1/Lが0.14、Ln2/Lが0.07となるように構成した。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。実施例および比較例の評価結果を、表1〜4に示す。
(実施例26,27、比較例9)
表3、4に示すポリアミド樹脂(A)、環状化合物(C)、金属および/またはその塩(D)、高濃度予備混合物(F)、を予備混合した後、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このメインフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、すなわちスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されていた。表に示す充填材(E)およびその他添加剤を、サイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このサイドフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0.65の位置、すなわちスクリュー長の1/2より下流側の位置に接続されていた。シリンダー温度、スクリュー回転数およびスクリュー構成は実施例18と同様であり、これにより、実施例26の組成比は、実施例18と同様となる。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。実施例および比較例の評価結果を、表3、4に示す。
表3、4に示すポリアミド樹脂(A)、環状化合物(C)、金属および/またはその塩(D)、高濃度予備混合物(F)、を予備混合した後、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このメインフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、すなわちスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されていた。表に示す充填材(E)およびその他添加剤を、サイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このサイドフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0.65の位置、すなわちスクリュー長の1/2より下流側の位置に接続されていた。シリンダー温度、スクリュー回転数およびスクリュー構成は実施例18と同様であり、これにより、実施例26の組成比は、実施例18と同様となる。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。実施例および比較例の評価結果を、表3、4に示す。
(実施例28、29、30)
表5に示すポリアミド樹脂(A)、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)、金属および/またはその塩(D)を予備混合した後、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+30℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。
表5に示すポリアミド樹脂(A)、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)、金属および/またはその塩(D)を予備混合した後、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+30℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。
このメインフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、すなわちスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されていた。続いて、表に示す水酸基含有化合物水酸基含有化合物(B)(B’)、環状化合物(C)、および充填材(E)を、サイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。
このサイドフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0.65の位置、つまりスクリュー長の1/2より下流側の位置に接続されていた。2軸押出機のスクリュー構成は、化合物(B)等の供給位置の上流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn1、化合物(B)等の供給位置の下流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn2とした場合、Ln1/Lが0.14、Ln2/Lが0.07となるように構成した。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。評価結果を、表5に示す。
(比較例10)
ヨウ化銅と2−メルカプトベンズイミダゾールをあらかじめ反応させ、ヨウ化銅(I)と2−メルカプトベンズイミダゾールの錯体を使用したこと以外は実施例13と同様にしてポリアミド樹脂組成物を作製した。評価結果を表5に示す。
ヨウ化銅と2−メルカプトベンズイミダゾールをあらかじめ反応させ、ヨウ化銅(I)と2−メルカプトベンズイミダゾールの錯体を使用したこと以外は実施例13と同様にしてポリアミド樹脂組成物を作製した。評価結果を表5に示す。
実施例1〜30は、比較例1〜10と比較して、特定量の水酸基含有化合物(B)または(B’)と、環状化合物(C)を含有することで、水酸基含有化合物(B)または(B’)のポリアミド樹脂(A)に対する相溶性がより向上し、その結果、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)に優れ、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、熱老化後の表面平滑性に優れる成形品を得ることができた。また、実施例13の[N]/[M]の比は0.15、比較例10の[N]/[M]の比は0.04であった。
実施例4と実施例2、3、5、6の比較により、環状化合物(C)の含有量好ましい範囲とすることで水酸基含有化合物(B)のポリアミド樹脂に対する相溶性がより向上し、その結果、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)に優れ、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、熱老化後の表面平滑性に優れる成形品を得ることができた。
実施例4と実施例1および7の比較により、水酸基含有化合物(B)の含有量を好ましい範囲とすることで水酸基含有化合物(B)のポリアミド樹脂に対する相溶性がより向上し、その結果、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)に優れ、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、熱老化後の表面平滑性に優れる成形品を得ることができた。
実施例4と実施例8、9の比較より、1分子中の水酸基の数が好ましい範囲の水酸基含有化合物(B)を含有することで、環状化合物(C)との水素結合性が向上し、水酸基含有化合物(B)のポリアミド樹脂に対する相溶性がより向上し、その結果、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)に優れ、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、熱老化後の表面平滑性およびに優れる成形品を得ることができた。
実施例4と実施例11の比較より、特定構造の水酸基含有化合物(B’)を含有することにより、水酸基含有化合物(B’)を用いることで、環状化合物(C)との水素結合性がより向上し、水酸基含有化合物(B’)のポリアミド樹脂に対する相溶性がより向上し、その結果、耐熱老化性(熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、および熱老化後の表面平滑性に優れる成形品を得ることができた。
実施例4と、実施例14の比較より金属含有化合物(D)としてヨウ化銅(I)をさらに含有すること、本発明の効果がより顕著になることを確認できた。さらに、実施例14と、実施例12、16の比較より銅含有量を本発明の好ましい範囲とすることで、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)に優れ、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、熱老化後の表面平滑性に優れる成形品を得ることができた。
実施例14と実施例13、15の比較より、環状化合物(C)と金属含有化合物(D)のモル比を特定範囲とすることで、本名発明の効果をより顕著に奏することがわかる。
実施例18と実施例17の比較より、あらかじめ水酸基含有化合物(B)とエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)反応させて得られた反応物を用いることで、環状化合物(C)との水素結合性がより向上し、水酸基含有化合物(B’)のポリアミド樹脂に対する相溶性がより向上し、その結果、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)に優れ、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、および熱老化後の表面平滑性に優れる成形品を得ることができた。
実施例18、21は実施例19、20の比較より、水酸基含有化合物(B’)の反応率を好ましい範囲かつ特定構造とすることで、環状化合物(C)との水素結合性がより向上し、水酸基含有化合物(B’)のポリアミド樹脂に対する相溶性がより向上し、その結果、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)に優れ、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(高温における溶着バースト強度、高温におけるクリープひずみ)、熱老化後の表面平滑性に優れる成形品を得ることができた。
実施例18と実施例23の比較より、水酸基含有化合物(B’)が1分子中の水酸基の数を、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多い化合物(B’)とすることにより、過剰な架橋構造の形成による脆化を抑制し、連続成形時の離型性をより向上させることができた。さらに、金型汚れ性(低ガス性)に優れ、湿熱環境下におけるブリードアウト性に優れ、得られる成形品の耐熱老化性(高温における溶着バースト強度、高温におけるクリープひずみ)、熱老化後の表面平滑性をより向上させることができた。
実施例18と実施例24の比較より、水酸基含有化合物(B’)が一般式(1)に示す特定構造を有することにより、連続成形時の離型性、金型汚れ性(低ガス性)に優れ、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(高温における溶着バースト強度、高温におけるクリープひずみ)、熱老化後の表面平滑性に優れる成形品を得ることができた。
実施例26と実施例18の比較より、水酸基含有化合物(B’)の高濃度予備混合物(F)を用いることで、ポリアミド樹脂(A)との相溶性がより向上し、本発明効果をよりいっそう顕著に奏することができる。
実施例25と実施例21の比較より、水酸基含有化合物(B’)作製時に、エポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)の官能基濃度がより好ましい範囲のエポキシ基および/またはカルボジイミド基含有化合物(b)を用いることで、湿熱環境下におけるブリードアウト性により優れる成形品を得ることができた。
実施例26と実施例27の比較より、金属および/またはその塩(D)として、ヨウ化銅(I)以外に、塩化リチウム(I)を併用することで、湿熱環境下におけるブリードアウト性、耐熱老化性(熱処理後の高温における溶着バースト強度、熱処理後の高温におけるクリープひずみ)、および熱老化後の表面平滑性がより向上することがわかる。
実施例1と実施例28、実施例13と実施例29、実施例24と実施例30の比較より、ポリアミド樹脂組成物中のカルボン酸濃度がより好ましい範囲とすることで本発明の効果をよりいっそう奏することができることがわかる。
1:溶媒ピーク
Claims (7)
- ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して、1分子中に少なくとも3つの水酸基を含む水酸基含有化合物(B)0.1〜20質量部、および下記式[1]で表される環状化合物(C)0.001〜1質量部、を含むポリアミド樹脂組成物。
QX [1]
(式[1]中、Qは芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基を表し、Xは5員環または6員環の複素環基を表す) - さらに金属および/またはその塩(D)を含有し、前記(D)が銅、鉄、亜鉛、ニッケル、マンガン、コバルト、クロムおよびスズからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属および/またはその塩である請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 環状化合物(C)が2-メルカプトベンズイミダゾールおよび/または2-メルカプトベンズチアゾールである請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記金属および/またはその塩(D)が銅含有化合物であり、組成物中の原子吸光分光法で決定される銅含有量が25〜500ppmである請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記水酸基含有化合物(B)が、さらに、エポキシ基および/またはカルボジイミド基を有し、1分子中の水酸基の数の和が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多い請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記水酸基含有化合物(B)が、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物および/またはその縮合物である請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
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WO2021225153A1 (ja) | 2020-05-07 | 2021-11-11 | 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 | ガルバノ式レーザー溶着用樹脂組成物、成形品、ガルバノ式レーザー溶着用キット、車載カメラ部品、車載カメラモジュール、紫外線暴露体、および、成形品の製造方法 |
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-
2018
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