JP2020023607A - ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品 - Google Patents

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信博 森岡
Nobuhiro Morioka
信博 森岡
玉井 晃義
Akiyoshi Tamai
晃義 玉井
真吾 西田
Shingo Nishida
真吾 西田
健太郎 土川
Kentaro Tsuchikawa
健太郎 土川
梅津 秀之
Hideyuki Umezu
秀之 梅津
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Abstract

【課題】流動性に優れ、機械強度、金属密着性、耐金属変色性に優れる成形品を得ることのできるポリアミド樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】
ポリアミド樹脂(A)および化合物(B)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、化合物(B)を0.1重量部以上20重量部以下含有し、
化合物(B)が、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)とエポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の反応物であり、
化合物(B)の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多く、
化合物(B)の酸価/水酸基価の比が0.15以上3.0以下である、ポリアミド樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物およびそれを成形してなる成形品に関するものである。
エンジニアリングプラスチックの一種であるポリアミド樹脂は、機械特性と靱性のバランスに優れることから、射出成形用途を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などの用途に使用されている。更に近年では、自動車大型部品のモジュール化・軽量化に伴う成形品の薄肉化、電気・電子部品の小型・精密化が進んでおり、このような設計の自由度の要求に応えるためには、使用される材料にも流動性の向上が求められている。これに対し、流動性を改良する技術として、ポリアミド樹脂と融点が150℃〜280℃である多価アルコールからなるポリアミド樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)や、高官能性高分岐又は超分岐ポリエステル(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
加えて、近年、電気・電子部品の高性能化の流れから、樹脂部材と金属部材との複合による部品設計が主流となっている。このような複合材料においては、防水性、封止性を得るために樹脂・金属間の高い密着性、および短絡を防ぐために樹脂部材と金属部材との複合部における耐金属変色性が重要となる。樹脂と金属との密着性向上の手法として、例えば、無機質繊維を分散させた樹脂を用いることにより、熱処理時の樹脂部材の膨張収縮を抑えた樹脂金属複合体(例えば、特許文献3参照)、金属表面の化学的なエッチングにより表面改質したアルミを用いたアルミ・樹脂射出一体成形品など(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
特開2008−274305号公報 特開2012−111963号公報 特開2010―274456号公報 国際公開第2009/151099号
しかしながら、上記特許文献1または2に開示されたような技術を用いて、樹脂部材と金属部材との複合成形品を成形すると、金属密着性や耐金属変色性が不十分であるという課題があった。一方、特許文献3または4に開示された技術は、無機繊維の添加による膨張収縮の抑制、または金属の表面改質によるものであり、ポリアミド樹脂組成物の流動性が不十分である課題があった。
本発明は、これら従来技術の課題に鑑み、流動性に優れ、機械強度、金属密着性、耐金属変色性に優れる成形品を得ることのできるポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、主として以下の構成を有する。
[1]ポリアミド樹脂(A)および化合物(B)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、化合物(B)を0.1重量部以上20重量部以下含有し、
化合物(B)が、水酸基およびカルボキシル基を含有する化合物(b)と、エポキシ基またはカルボジイミド基を含有する化合物(b’)の反応物であり、
化合物(B)の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多く、
化合物(B)の酸価/水酸基価の比が0.15以上3.0以下である、ポリアミド樹脂組成物。
[2]前記化合物(B)が、一分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和が3以上のヒドロキシ酸由来の構造を有する、[1]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[3]前記化合物(B)が、脂肪族ヒドロキシ酸由来の構造を有する、[1]または[2]に記載のポリアミド樹脂組成物。
[4]前記化合物(B)が下記一般式(1)で表される化合物由来の構造を有する、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
(上記一般式(1)中、Rは、水素または炭素数1〜20の有機基。前記有機基は、置換されていてもよく、置換されている場合の置換基は、カルボキシル基と水酸基のいずれか一方または双方を含む。Rは炭素数1〜20の有機基。前記有機基は置換されていてもよく、置換されている場合の置換基はカルボキシル基と水酸基のいずれか一方または双方を含む。nは0以上5以下の整数である。)
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法であって、前記ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、前記化合物(B)10〜250重量部を溶融混練し、高濃度予備反応物を作製する工程1と、該高濃度予備反応物をさらにポリアミド樹脂(A)と溶融混練する工程2を少なくとも有する、ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、流動性に優れ、機械強度、金属密着性、耐金属変色性に優れた成形品を提供することができる。
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とビスフェノールA型エポキシ樹脂のドライブレンド品のH−NMRスペクトル。 参考例1で得られたB−1化合物のH−NMRスペクトル。 耐金属変色性評価の概略図。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)および化合物(B)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、化合物(B)が、水酸基およびカルボキシル基を含有する化合物(b)と、エポキシ基またはカルボジイミド基を含有する化合物(b’)の反応物であり、化合物(B)の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多く、化合物(B)の酸価/水酸基価の比が0.15以上3.0以下である。以下、各成分について説明する。
<ポリアミド樹脂(A)>
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド樹脂(A)のカルボキシル末端基は、後述する化合物(B)中の水酸基、エポキシ基またはカルボジイミド基と反応すると考えられる。さらに、本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物において、ポリアミド樹脂(A)のアミノ末端基は、化合物(B)中のカルボキシル基、エポキシ基と反応すると考えられる。このため、ポリアミド樹脂(A)は、化合物(B)との相溶性に優れると考えられる。
本発明に用いられるポリアミド樹脂(A)とは、(i)アミノ酸、(ii)ラクタムあるいは(iii)ジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。ポリアミド樹脂(A)の原料の代表例としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)の原料として、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはポリアミドコポリマーを2種以上配合してもよい。
ポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリウンデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシリレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン5T/10T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンドデカンアミドコポリマー(ナイロン10T/612)、ポリデカメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン10T/66)ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)などが挙げられる。また、ポリアミド樹脂の具体例としては、これらの混合物や共重合体なども挙げられる。ここで、「/」は共重合体を示す。以下、同様とする。
とりわけ好ましいポリアミド樹脂(A)は、200℃〜330℃の融点を有するポリアミド樹脂である。200℃〜330℃の融点を有するポリアミド樹脂は、耐熱性や強度に優れている。200℃以上の融点を有するポリアミド樹脂は、高温条件下において、樹脂圧力の高い状態で溶融混練することができ、ポリアミド(A)と後述の水酸基と、カルボキシル基と、エポキシ基またはカルボジイミド基を含有する化合物(B)との反応性を高めることができる。このため、ポリアミド樹脂組成物中における化合物(B)の分散性をより高めることができ、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。ポリアミド樹脂の融点は、220℃以上であることがより好ましい態様である。
一方、330℃以下の融点を有するポリアミド樹脂を用いることにより、溶融混練時の温度を適度に抑え、ポリアミド樹脂(A)および化合物(B)の分解を抑制することができ、ポリアミド樹脂組成物の流動性、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性の低下を防ぐことができる。ポリアミド樹脂の融点は、300℃以下がより好ましい。
ここで、本発明の実施形態におけるポリアミド樹脂の融点は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、ポリアミド樹脂を溶融状態から20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度と定義する。ただし、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、ピーク強度の最も大きい吸熱ピークの温度を融点とする。
200℃〜330℃の融点を有するポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン410、ナイロン610、ナイロン56、ナイロン6T/66、ナイロン6T/6I、ナイロン6T/12、ナイロン6T/5T、ナイロン6T/M5T、ナイロン6T/6などのヘキサメチレテレフタルアミド単位を有する共重合体や、ナイロン5T/10T、ナイロン9T、ナイロン10T、およびナイロン12Tなどを挙げることができる。これらの中でも、化合物(B)との相溶性、反応性に優れる、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610がより好ましく用いられる。これら脂肪族ポリアミド樹脂は、機械特性、成形性のバランスに優れる。中でもポリアミド66は、比較的融点が高いため樹脂圧力の高い状態で溶融混練することができる。このため、化合物(B)との反応性をより高めることができ、ポリアミド樹脂組成物中における化合物(B)の分散性をより向上させることができ、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。これらのポリアミド樹脂を、必要特性に応じて、2種以上配合することも実用上好適である。
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度(ηr)が1.5〜8.0の範囲であることが好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、機械特性、成形性のバランスに優れるとともに、化合物(B)の分散性が向上し、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。相対粘度は、2.0以上がより好ましく、2.4以上がさらに好ましい。一方、相対粘度が8.0以下の場合、剪断発熱による化合物(B)の熱分解が起こりにくく、ポリアミド樹脂組成物の流動性、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性の低下を防ぐことができる。相対粘度は、7.0以下がより好ましく、6.0以下がさらに好ましい。
<化合物(B)>
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、化合物(B)を含有する。化合物(B)は、水酸基およびカルボキシル基を含有する化合物(b)(以下、「水酸基およびカルボキシル基含有化合物」や、単に化合物(b)ということもある)と、エポキシ基またはカルボジイミド基を含有する化合物(b’)(以下、「エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物」や、単に化合物(b’)ということもある)の反応物である。化合物(B)は化合物(b)由来の構造を有している。化合物(B)の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和は、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多い。
水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)のみを含有するポリアミド樹脂組成物は、化合物(b)中の水酸基とポリアミド樹脂(A)のカルボキシル基とが反応し、または化合物(b)のカルボキシル基と、ポリアミド樹脂(A)のアミノ基とが反応するため、ある程度化合物(b)は分散すると推測されるが、依然として近年の高流動化の要求には不十分である。また、ポリアミド樹脂と水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の分散性が十分とは言い難いため、化合物(b)の含有量増量に伴い、ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品の機械特性が低下する課題もある。加えて、化合物(b)に含有される水酸基やカルボキシル基は、金属密着性を向上させる効果があるものの、化合物(b)を単独でポリアミド樹脂(A)に配合した場合は、化合物(b)が比較的分解しやすいことに加え、上記のように化合物(b)は依然として分散性に乏しいため、成形品表面から揮発しやすい。そのため、分解・揮発した化合物(b)が金属-樹脂界面に浸入し、金属密着性や耐金属変色性を低下させるという課題もある。
一方、本発明のように、化合物(B)を有するポリアミド樹脂組成物は以下の効果を奏する。具体的には、本発明における化合物(B)は、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)とエポキシ基またはカルボジイミド基を含有する化合物(b’)とを反応させてなるため、化合物(B)は水酸基、カルボキシル基およびエポキシ基を有する、あるいは、化合物(B)は、水酸基、カルボキシル基、およびカルボジイミド基を有する。
化合物(B)の水酸基またはカルボジイミド基がポリアミド樹脂(A)のカルボキシル末端基と脱水縮合反応すると考えられることや、化合物(B)のカルボキシル基、エポキシ基がポリアミド樹脂(A)のアミノ末端基と反応すると考えられることから、化合物(B)はポリアミド樹脂(A)との相溶性に優れ、ポリアミド樹脂組成物中において微細な分散相を形成し、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度を向上させることができる。
また、化合物(b)と化合物(b’)の反応物を化合物(B)とすることにより、化合物(B)の揮発を抑制し、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。これは、化合物(b)に比べて化合物(B)の分子量は大きいため、分解・揮発が抑制されるためと推測される。そのため、化合物(B)の分散性が向上する。また、金属-樹脂界面で発生する分解・揮発ガスが抑制されるため、ポリアミド樹脂組成物の金属密着性および耐金属変色性も向上すると推測される。
さらに、化合物(B)1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和を、エポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多くすることにより、適度にポリアミド樹脂(A)と化合物(B)が架橋構造を形成するため、機械強度を向上することができる。また、化合物(B)1分子中の特定官能基を上記のようにすることにより、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)の過剰な架橋構造の形成による脆化を抑制することで、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。
水酸基またはカルボキシル基の数は、化合物(B)の数平均分子量と水酸基価または酸価を算出し、下記式(1−1)および(1−2)により算出することができる。
化合物(B)中の水酸基の数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (1−1)
化合物(B)中のカルボキシル基の数=(数平均分子量×酸価)/56110 (1−2)
上記(1−1)および(1−2)の和を、化合物(B)の水酸基とカルボキシル基の数の和として求めることができる。
ここで、化合物(B)の水酸基価は、化合物(B)を、無水酢酸と無水ピリジンの混合溶液でアセチル化して、それをエタノール性水酸化カリウム溶液で滴定することにより求めることができる。化合物(B)の酸価は、化合物(B)をクロロホルム溶液に溶解させ、エタノール性水酸化カリウム溶液で中和滴定することにより求めることができる。
また、エポキシ基またはカルボジイミド基の数は、化合物(B)の数平均分子量をエポキシ当量またはカルボジイミド当量で割った値により算出できる。
エポキシ当量は、化合物(B)をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解させた後、酢酸、テトラエチルアンモニウムブロミド/酢酸溶液を加え、過塩素酸で滴定することにより算出できる。
カルボジイミド当量は、内部標準物質としてフェロシアン化カリウムを添加した化合物(B)の赤外吸収スペクトル測定を行い、2140cm−1付近に現れるカルボジイミド基由来ピークの吸光度を、2100cm−1付近に現れるフェロシアン化カリウムのCN基の吸収ピークの吸光度で規格化することにより算出できる。
化合物(B)の分子量は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、算出することができる。より具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、数平均分子量(Mn)を算出することができる。GPCによる測定方法としては、化合物が溶解する溶媒、例えばヘキサフルオロイソプロパノールを移動相として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準物質として用い、カラムは溶媒に合わせ、例えばヘキサフルオロイソプロパノールを使用した場合には、島津ジーエルシー(株)製の「Shodex GPC HFIP−806M」および/または「Shodex GPC HFIP−LG」を用いて、検出器として示差屈折率計を用いて数平均分子量を測定することができる。
本発明の実施形態において、あらかじめ水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)とエポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)を反応させた化合物(B)をポリアミド樹脂(A)に配合することで、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)の相溶性により優れ、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。この要因については定かではないが、以下のように考えられる。つまり、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)と、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)をあらかじめ反応させることにより、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)を連結点とした多分岐構造を有する化合物(B)が形成される。かかる化合物(B)は、多分岐構造を有することにより自己凝集力がより小さくなり、ポリアミド樹脂(A)との反応性および相溶性が向上するためと考えられる。
本発明の実施形態において、化合物(B)としては、例えば、後述する水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)とエポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)との反応物が挙げられる。化合物(B)は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよいし、縮合物であってもよい。化合物(B)の構造は、通常の分析方法(例えば、NMR、FT−IR、GC−MS等の組み合わせ)により特定することができる。
なお、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)として、後述する、一分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和が3以上であるヒドロキシ酸を用いる場合は、化合物(B)一分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和も3以上となる。言い換えると、化合物(B)は、一分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和も3以上のヒドロキシ酸由来の構造を有する。
また、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)として、後述する、脂肪族ヒドロキシ酸を用いる場合は、化合物(B)は、脂肪族ヒドロキシ酸由来の構造を有する。
また、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)として、後述する、一般式(1)で表される化合物を用いる場合は、化合物(B)は、前記一般式(1)で表される構造由来の構造を有する。
本発明の実施形態において、化合物(B)の分岐度は、特に制限はないが、0.05〜0.70であることが好ましい。分岐度は、化合物中の分岐の程度を表す数値であり、直鎖状の化合物が分岐度0であり、完全に分岐したデンドリマーが分岐度1である。この値が大きいほど、ポリアミド樹脂組成物中に架橋構造を導入でき、成形品の機械特性を向上させることができる。分岐度を0.05以上とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。分岐度は、0.10以上がより好ましい。一方、分岐度を0.70以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物中の架橋構造を適度に抑え、ポリアミド樹脂組成物中における化合物(B)の分散性をより高め、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。分岐度は、0.35以下がより好ましい。なお、分岐度は、下記式(2)により定義される。
分岐度=(D+T)/(D+T+L) (2)
上記式(2)中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す。なお、上記D、T、Lは13C−NMRにより測定したピークシフトの積分値から算出することができる。Dは第3級または第4級炭素原子に由来し、Tは第1級炭素原子の中で、メチル基であるものに由来し、Lは第1級または第2級炭素原子の中で、Tを除くものに由来する。
本発明の好ましい実施形態で用いられる化合物(B)の水酸基価は、100〜2000mgKOH/gが好ましい。化合物(B)の水酸基価を100mgKOH/g以上とすることにより、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)との反応量を十分に確保することが容易となるため、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。化合物(B)の水酸基価は300mgKOH/g以上がより好ましい。一方、化合物(B)の水酸基価を2000mgKOH/g以下とすることにより、過剰反応によるゲル化を抑制することができる。化合物(B)の水酸基価は1800mgKOH/g以下がより好ましい。ここで、化合物(B)の水酸基価は、上述の方法により求めることができる。
本発明の実施形態で用いられる化合物(B)の酸価は、100〜2000mgKOH/gが好ましい。化合物(B)の酸価を100mgKOH/g以上とすることにより、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)との反応量を十分に確保することが容易となるため、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。化合物(B)の酸価は200mgKOH/g以上がより好ましい。一方、化合物(B)の酸価を2000mgKOH/g以下とすることにより、化合物(B)の酸価を2000mgKOH/g以下とすることにより、過剰反応によるポリアミド樹脂組成物のゲル化を抑制することができる。化合物(B)の酸価は1600mgKOH/g以下がより好ましい。ここで、化合物(B)の酸価は、上述の方法により求めることができる。
本発明の実施形態で用いられる化合物(B)の酸価/水酸基価の比は、0.15以上3.0以下であることが好ましい。酸価/水酸基価の比が0.15未満である場合、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)の相溶性に劣るため、ポリアミド樹脂組成物の流動性を低下するとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性が低下する。また、酸価/水酸基価の比が3.0を超える場合、化合物(B)中のエポキシ基またはカルボジイミド基の過剰な反応および架橋構造形成による脆化や、強酸性雰囲気となりポリアミド樹脂(A)が分解するため、機械強度、金属密着性、耐金属変色性が低下する。化合物(B)の酸価/水酸基価の比は、1.0以下がより好ましい。
本発明の実施形態で用いられる化合物(B)は、25℃において固形であるか、または25℃において200mPa・s以上の粘度を有する液状であることが好ましい。その場合、溶融混練時に所望の粘度にすることが容易となり、ポリアミド樹脂(A)との相溶性をより向上させ、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。
<水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)>
本発明の実施形態で使用される、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)としては、1分子中に1つ以上の水酸基および1つ以上のカルボキシル基を有し、水酸基およびカルボキシル基の数の和が3以上であるヒドロキシ酸が好ましい。前記ヒドロキシ酸は、後述するエポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)との反応性も優れ、ポリアミド樹脂(A)との相溶性に優れるため、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。中でも、後述するエポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)との反応率を制御し、ポリアミド樹脂(A)との過剰な架橋構造の形成による脆化を抑制するという観点から1分子中に2つ以上の水酸基および1つのカルボキシル基を有しているヒドロキシ酸がさらに好ましい。
芳香族化合物または脂環族化合物に比べて立体障害性が低く、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)との反応性に優れ、ポリアミド樹脂(A)との相溶性に優れるため、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)は、前記ヒドロキシ酸の中でも、脂肪族ヒドロキシ酸が好ましい。また、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよい。
1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数は、化合物(B)と同様に求めることができる。
水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の具体例としては、グリセリン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)酪酸、3,5−ジヒドロキシ−3−メチルペンタン酸、2,3−ジヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、2,3−ジヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、5,6−ジヒドロキシヘプタン酸、2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブタン酸、4,5−ジヒドロキシ−2,2−ジメチルペンタン酸、2,3−ジヒドロキシ−2−(プロパン−2−イル)ブタン酸、2−エチル−4,5−ジヒドロキシペンタン酸、2−ヒドロキシプロパン二酸、2−ヒドロキシブタン二酸、2,3−ジヒドロキシブタン二酸、ムチン酸、1−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、キナ酸、10−ヒドロキシデカン酸などの脂肪族ヒドロキシ酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、2,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、ジフェノール酸、シキミ酸、オルセリン酸、3,4−ジヒドロキシ桂皮酸、などの芳香族ヒドロキシ酸をあげることができる。
また、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)として、繰り返し構造単位を有する水酸基およびカルボキシル基含有化合物も挙げることができ、例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、メチレン結合、ビニル結合、イミン結合、シロキサン結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、ケイ素−ケイ素結合、カーボネート結合、スルホニル結合、イミド結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基およびカルボキシル基含有化合物が挙げられる。水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、これらの結合を2種以上含む繰り返し構造単位を含有してもよい。繰り返し構造単位を有する水酸基およびカルボキシル基含有化合物として、エステル結合、カーボネート結合、エーテル結合および/またはアミド結合を有する繰り返し構造単位を有する水酸基およびカルボキシル基含有化合物がより好ましい。
本発明の実施形態に用いられる水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の水酸基価は、化合物(B)とポリアミド樹脂(A)との相溶性の観点から、100〜2000mgKOH/gが好ましい。水酸基含有化合物の水酸基価を100mgKOH/g以上とすることにより、ポリアミド樹脂(A)と水酸基およびカルボキシル基含有化合物との反応量を十分に確保することが容易となるため、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。水酸基およびカルボキシル基含有化合物の水酸基価は300mgKOH/g以上がより好ましい。一方、水酸基およびカルボキシル基含有化合物の水酸基価を2000mgKOH/g以下とすることにより、ポリアミド樹脂(A)と水酸基およびカルボキシル基含有化合物との反応性がほどよく高まり、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。さらに、水酸基およびカルボキシル基含有化合物の水酸基価を2000mgKOH/g以下とすることにより過剰反応によるゲル化も抑制することができる。水酸基およびカルボキシル基含有化合物の水酸基価は1800mgKOH/g以下がより好ましい。水酸基価は、化合物(B)と同様に求めることができる。
本発明の実施形態に用いられる水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の酸価は、化合物(B)とポリアミド樹脂(A)との相溶性の観点から、100〜2000mgKOH/gが好ましい。水酸基およびカルボキシル基含有化合物の酸価を100mgKOH/g以上とすることにより、ポリアミド樹脂(A)と水酸基およびカルボキシル基含有化合物間の反応量を十分に確保することが容易となるため、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。水酸基およびカルボキシル基含有化合物の酸価は200mgKOH/g以上がより好ましい。一方、水酸基およびカルボキシル基含有化合物の酸価を2000mgKOH/g以下とすることにより、ポリアミド樹脂(A)と水酸基およびカルボキシル基含有化合物の反応性がほどよく高まるため、流動性、機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。さらに、水酸基およびカルボキシル基含有化合物の酸価を2000mgKOH/g以下とすることにより、過剰反応によるポリアミド樹脂組成物のゲル化を抑制することができる。水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の酸価は1600mgKOH/g以下がより好ましい。なお、酸価は、化合物(B)と同様に求めることができる。 本発明の実施形態で用いられる水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)は、水酸基およびカルボキシル基とともに、他の反応性官能基を有していてもよい。他の官能基として例えば、チオール基、アルデヒド基、スルホ基、イソシアネート基、オキサゾリン基、オキサジン基、シラノール基、シリルエーテル基などが挙げられる。
本発明の実施形態で用いられる水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の分子量は、特に制限はないが、50〜10000の範囲が好ましい。水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の分子量が50以上であれば、溶融混練時に揮発しにくいことから、加工性に優れる。水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の分子量は150以上が好ましく、200以上がより好ましい。一方、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の分子量が10000以下であれば、化合物(B)とポリアミド樹脂(A)との相溶性がより高くなるため、本発明の効果がより顕著に奏される。水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の分子量は6000以下が好ましく、4000以下がより好ましく、800以下がさらに好ましい。
本発明の実施態様において、化合物(b)は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物およびその縮合物が好ましい。
(上記一般式Rは、水素原子または炭素数1〜20の有機基。前記有機基は、置換されていてもよく、置換されている場合の置換基は、カルボキシル基と水酸基のいずれか一方または双方を含む。Rは炭素数1〜20の有機基。前記有機基は置換されていてもよく、置換されている場合の置換基はカルボキシル基と水酸基のいずれか一方または双方を含む。nは0以上5以下の整数である。)
炭素数1〜20の有機基としては、例えば、置換基を有してもよい、アルキル基やアルキレンオキサイド基などが挙げられる。置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基、スルホ基、イソシアネート基、オキサゾリン基、オキサジン基、シラノール基、シリルエーテル基などが挙げられる。
一般式(1)中の水酸基とカルボキシル基の数の和は3以上であることが好ましい。それにより、化合物(B)とポリアミド樹脂(A)との相溶性に優れ、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。ここで水酸基とカルボキシル基の数の和は、化合物(B)と同様に求めることができる。
一般式(1)で表される化合物(b)としては、グリセリン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)酪酸、3,5−ジヒドロキシ−3−メチルペンタン酸、2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブタン酸、2,3−ジヒドロキシ−2−(プロパン−2−イル)ブタン酸、2−ヒドロキシプロパン二酸、2−ヒドロキシブタン二酸、2,3−ジヒドロキシブタン二酸、ムチン酸、1−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、2−ヒドロキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸等が挙げられる。中でも、ポリアミド樹脂(A)との相溶性により優れることから、グリセリン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2,2−ビス(ヒドロキシエチル)酪酸、3,5−ジヒドロキシ−3−メチルペンタン酸、2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブタン酸、2,3−ジヒドロキシ−2−(プロパン−2−イル)ブタン酸がより好ましい。
化合物(b)の分子量は、化合物(B)と同様に求めることができる。
<エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)>
本発明の実施形態で使用されるエポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)は、1分子中にエポキシまたはカルボジイミド基を2つ以上有することが好ましい。化合物(b’)は、化合物(b)と反応して化合物(B)となるが、化合物(B)のエポキシ基およびカルボジイミド基はポリアミド樹脂(A)との反応性および相溶性に優れるため、1分子中にエポキシまたはカルボジイミド基を2つ以上有する化合物(b’)を用いると、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)の相溶性を高める効果があると考えられる。エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよい。1分子中のエポキシ基またはカルボジイミド基の数は、化合物(B)と同様に求めることができる。
エポキシ基含有化合物の具体例として、エピクロロヒドリン、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジル基含有ビニル系重合体等を例示できる。これらを2種以上用いてもよい。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンとビスフェノールAから製造されるもの、エピクロロヒドリンとビスフェノールFから製造されるもの、ノボラック樹脂にエピクロロヒドリンを反応させたフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロロヒドリンとテトラブロモビスフェノールAから誘導されるいわゆる臭素化エポキシ樹脂、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどが例示される。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンと、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、p−オキシ安息香酸またはダイマー酸から製造されるエポキシ樹脂、トリメシン酸トリグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどが例示される。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンと、アニリン、ジアミノジフェニルメタン、p−アミノフェノール、メタキシリレンジアミンまたは1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから製造されるエポキシ樹脂、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−パラアミノフェノール、トリグリシジル−メタアミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、トリグリシジルシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレートなどが例示される。
脂環式エポキシ樹脂としては、シクロヘキセンオキサイド基、トリシクロデセンオキサイド基、シクロペンテンオキサイド基を有する化合物などが例示される。複素環式エポキシ樹脂としては、エピクロロヒドリンと、ヒダントインまたはイソシアヌル酸から製造されるエポキシ樹脂などが例示される。
グリシジル基含有ビニル系重合体としては、グリシジル基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーをラジカル重合したものが挙げられる。グリシジル基含有ビニル系単位を形成する原料モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、p−スチリルカルボン酸グリシジルなどの不飽和モノカルボン酸のグリシジルエステル、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ポリカルボン酸のモノグリシジルエステルまたはポリグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−4−グリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテルなどが挙げられる。
エポキシ基含有化合物の市販品としては、低分子の多官能エポキシ化合物であるポリグリシジルエーテル化合物(例えば、阪本薬品工業(株)製「SR−TMP」、ナガセケムテックス(株)製「“デナコール”(登録商標)EX−521」など)、ポリエチレンを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、住友化学(株)製「“ボンドファスト”(登録商標)E」)、アクリルを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、東亞合成(株)製「“レゼダ”(登録商標)GP−301」、東亞合成(株)製「“ARUFON”(登録商標)UG−4000」、三菱レイヨン(株)製「“メタブレン”(登録商標)KP−7653」など)、アクリル・スチレン共重合体を主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、BASF社製「“Joncryl”(登録商標)−ADR−4368」、東亞合成(株)製「“ARUFON”(登録商標)UG−4040」など)、シリコーン・アクリル共重合体を主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、「“メタブレン”(登録商標)S−2200」など)、ポリエチレングリコールを主成分とする多官能エポキシ化合物(例えば、日油(株)製“エピオール”(登録商標)「E−1000」など)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、三菱化学(株)製“jER”(登録商標)「1004」など)、ノボラックフェノール型変性エポキシ樹脂(例えば、日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)「201」)などが挙げられる。
カルボジイミド基含有化合物としては、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどのジカルボジイミドや、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフタレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどを挙げることができる。
カルボジイミド基含有化合物の市販品として、日清紡ホールディングス(株)製“カルボジライト”(登録商標)、ラインケミー製“スタバクゾール(登録商標)”などを挙げることができる。
本発明の実施形態のエポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の分子量は、特に限定はないが、500〜10000の範囲が好ましい。エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の分子量を500以上とすることにより、溶融混練時に揮発しにくくなるため、加工性に優れる。また、溶融混練時の粘度を高めることができるため、ポリアミド樹脂(A)と、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)や化合物(B)との相溶性がより高くなり、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の分子量は800以上がより好ましい。一方、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の分子量を10000以下とすることにより、溶融混練時の粘度を適度に抑えることができるため、加工性に優れる。また、ポリアミド樹脂(A)と、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)や化合物(B)との相溶性を高く保持することができる。エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の分子量は8000以下がより好ましい。
エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の分子量は、化合物(B)と同様に求めることができる。
本発明の実施形態で用いられるエポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)は、25℃において固形であるか、または25℃において200mPa・s以上の粘度を有する液状であることが好ましい。その場合、溶融混練時に所望の粘度にすることが容易となり、化合物(b)との反応性が向上し、結果的にポリアミド樹脂(A)と、化合物(B)との相溶性がより高くなり、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。
本発明の実施形態におけるエポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の官能基濃度を示す指標となる、分子量を1分子中の官能基の数で割った値は、50〜2000であることが好ましい。ここで、官能基の数とは、エポキシ基およびカルボジイミド基の合計数を指す。この値は小さいほど官能基濃度が高いことを表すが、50以上とすることにより、過剰な反応によるゲル化を抑制でき、また、ポリアミド樹脂(A)および水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)との反応がほどよく高まるため、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の分子量を、1分子中の官能基の数で割った値は、100以上がより好ましい。一方、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合(b’)物の分子量を、1分子中の官能基の数で割った値を、2000以下とすることにより、ポリアミド樹脂(A)および水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)との反応を十分に確保することができ、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の分子量を、1分子中の官能基の数で割った値は、1000以下がより好ましく、300以下がさらに好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、化合物(B)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して0.1〜20重量部である。化合物(B)の含有量が0.1重量部未満であると、ポリアミド樹脂組成物の流動性、得られる成形品の金属密着性、耐金属変色性が低下する。化合物(B)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、0.5重量部以上が好ましく、2重量部以上がさらに好ましい。一方、化合物(B)の配合量が20重量部を超えると、ポリアミド樹脂組成物中における化合物(B)の分散性が低下するとともに、ポリアミド樹脂の可塑化、分解が促進され、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性が低下する。化合物(B)の配合量は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、7.5重量部以下が好ましく、6重量部以下がさらに好ましい。
本発明の実施形態で用いられる化合物(B)の製造方法は特に限定されないが、前述の水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)と、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)をドライブレンドし、両成分の融点よりも高い温度で溶融混練する方法が好ましい。
水酸基およびカルボキシル基と、エポキシ基またはカルボジイミド基との反応を促進するために、触媒を添加することも好ましい。触媒の添加量は特に限定されず、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)と、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の合計100重量部に対し、0〜1重量部が好ましく、0.01〜0.3重量部がより好ましい。
水酸基およびカルボキシル基と、エポキシ基の反応を促進する触媒としては、ホスフィン類、イミダゾール類、アミン類、ジアザビシクロ類などが挙げられる。ホスフィン類の具体例としては、トリフェニルホスフィン(TPP)などが挙げられる。イミダゾール類の具体例としては、2−ヘプタデシルイミダゾール(HDI)、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾールなどが挙げられる。アミン類の具体例としては、N−ヘキサデシルモルホリン(HDM)、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、トリブチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−ノネン−5(DBN)、トリスジメチルアミノメチルフェノール、テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン(DABCO)などが挙げられる。
水酸基およびカルボキシル基と、カルボジイミド基の反応を促進する触媒としては、例えば、トリアルキル鉛アルコキシド、ホウフッ化水素酸、塩化亜鉛、ナトリウムアルコキシドなどが挙げられる。
水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)と、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)とを溶融混練することにより、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)中の水酸基およびカルボキシル基と、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)中のエポキシ基またはカルボジイミド基が反応する。また、(b)の水酸基間および/または水酸基とカルボキシル基間で脱水縮合反応も生じる。このようにして多分岐構造の化合物(B)を得ることができる。
水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)と、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)を反応させて化合物(B)を作製する場合、これらの配合比は特に限定されないが、化合物(B)の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和が、化合物(B)およびその縮合物の1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多くなるようにこれら化合物を配合することが好ましい。エポキシ基およびカルボジイミド基は、水酸基やカルボキシル基と比較して、ポリアミド樹脂(A)の末端基との反応性に優れる。このため、化合物(B)の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和を、化合物(B)の1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多くすることにより、過剰な架橋構造の形成による脆化を抑制し、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。
また、反応させるエポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)に対する水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の重量比((b)/(b’))は、0.3以上10000未満であることが好ましい。ポリアミド樹脂(A)とエポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の反応性、ならびに水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)とエポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)の反応性は、ポリアミド樹脂(A)と水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の反応性よりも高い。このため、前記重量比((b)/(b’))が0.3以上の場合、過剰な反応によるゲルの生成を抑制し、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。
水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)と、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)を反応させて化合物(B)を作製する場合、水酸基およびカルボキシル基と、エポキシ基またはカルボジイミド基の反応率は、1〜95%であることが好ましい。反応率が1%以上の場合、化合物(B)の分岐度を高め、自己凝集力を低下させることができ、ポリアミド樹脂(A)との反応性を高めることができ、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。反応率は10%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。一方、反応率が95%以下の場合、エポキシ基またはカルボジイミド基を適度に残存させることができ、ポリアミド樹脂(A)との反応性を高めることができる。反応率は70%以下がより好ましい。
水酸基およびカルボキシル基と、エポキシ基またはカルボジイミド基の反応率は、化合物(B)を、溶媒(例えば重水素化ジメチルスルホキシド、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールなど)に溶解し、エポキシ基の場合はH−NMR測定によりエポキシ環由来ピークについて、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)との反応前後の減少量を求めることにより、カルボジイミド基の場合は13C−NMR測定によりカルボジイミド基由来ピークについて、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)との反応前後の減少量を求めることにより、算出することができる。反応率は、下記式(3)により求めることができる。
反応率(%)={1−(e/d)}×100 (3)
上記式(3)中、dは、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)と、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)をドライブレンドしたもののピーク面積を表し、eは化合物(B)のピーク面積を表す。
一例として、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004)を3:1の重量比でドライブレンドしたもののH−NMRスペクトルを図1に示す。また、後述する参考例1により得た(B−1)化合物のH−NMRスペクトルを図2に示す。重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒に用い、サンプル量は0.035g、溶媒量は0.70mlとした。符号1は溶媒ピークを示す。
図1に示すH−NMRスペクトルから、2.60ppmと2.80ppm付近に現れるエポキシ環由来ピーク面積の合計を求め、同様に図2に示すピーク面積の合計を求め、反応率の算出式(3)より反応率を算出する。この際、ピーク面積は反応に寄与しないエポキシ樹脂のベンゼン環のピークの面積で規格化する。
<繊維充填剤(C)>
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、さらに充填材(C)を含有することができる。充填材(C)としては、有機充填材、無機充填材のいずれを用いてもよく、繊維状充填材、非繊維状充填材のいずれを用いてもよい。充填材(C)としては、繊維状充填材が好ましい。
繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)系またはピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化珪素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカー、窒化珪素ウィスカーなどの繊維状またはウィスカー状充填材が挙げられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維や、炭素繊維が特に好ましい。
ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものであれば特に限定はなく、例えば、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂により被膜あるいは集束されていてもよい。さらに、ガラス繊維の断面は、円形、扁平状のひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型、矩形またはこれらの類似品など限定されるものではない。ガラス繊維配合ポリアミド樹脂組成物において生じやすい成形品の特有の反りを低減する観点から、長径/短径の比が1.5以上の扁平状の繊維が好ましく、2.0以上のものがさらに好ましく、10以下のものが好ましく、6.0以下のものがさらに好ましい。長径/短径の比が1.5未満では断面を扁平状にした効果が少なく、10より大きいものはガラス繊維自体の製造が困難である。
非繊維状充填材としては、例えば、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、珪酸カルシウムなどの非膨潤性珪酸塩、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母の膨潤性雲母に代表される膨潤性層状珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、珪藻土、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化アンチモンなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドロマイト、ハイドロタルサイトなどの金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの金属水酸化物、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、セラミックビーズ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化珪素、燐酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛などが挙げられる。上記の膨潤性層状珪酸塩は、層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換されていてもよく、有機オニウムイオンとしては、例えば、アンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。また、これら充填材を2種以上含有してもよい。
なお、上記充填材(C)は、その表面を公知のカップリング剤などの集束材により処理されていてもよく、ポリアミド樹脂組成物の流動性、成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。例えば、常法に従って予め充填材を集束材により表面処理し、ついでポリアミド樹脂と溶融混練する方法が好ましく用いられるが、予め充填材の表面処理を行わずに、充填材とポリアミド樹脂を溶融混練する際に、集束材を添加するインテグラブルブレンド法を用いてもよい。
集束材として好適に用いられるカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤などが挙げられる。シラン系カップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン系カップリング剤;γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤;γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシシラン系カップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン系カップリング剤;等が挙げられる。これらシラン系カップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種類以上併用することもできる。その中でも、ポリアミド樹脂(A)および水酸基およびカルボキシル基含有化合物(B)との親和性が高く、ポリアミド樹脂組成物の流動性、成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができることから、アミノシラン系カップリング剤およびエポキシシラン系カップリング剤が好ましく、アミノシラン系カップリング剤が更に好ましい。
また、集束剤は、機械的特性向上の観点から、上記カップリング剤に加えて、さらに、エポキシ化合物や無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体を含有していることも好ましい。集束剤に含有されるエポキシ化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、エピクロロヒドリン、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジル基含有ビニル系重合体が好ましく、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。中でもグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が特に好ましい。これらの単量体は2種以上併用してもよい。
集束剤に含有される無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン等の不飽和単量体と無水マレイン酸との共重合体が挙げられる。その中でも、ブタジエン又はスチレンと、無水マレイン酸との共重合体が特に好ましい。これらの単量体は2種以上併用してもよい。 前記集束剤に含有される無水マレイン酸と不飽和単量体との共重合体は、平均分子量が2,000以上であることが好ましい。また、無水マレイン酸と不飽和単量体との割合は特に制限されない。
集束剤の処理量は、充填材100重量部に対して0.05重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましい。一方、集束剤の処理量は、充填材100重量部に対して10重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましい。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物において、充填材(C)の含有量は、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、1〜150重量部が好ましい。充填材の含有量が1重量部以上であれば、成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。充填材の含有量は、10重量部以上がより好ましく、20重量部以上がさらに好ましい。一方、充填材の含有量が300重量部以下であれば、ポリアミド樹脂の流動性に優れると共に、成形品の機械強度に優れる。充填材(C)の含有量は、200重量部以下がより好ましく、100重量部以下がさらに好ましい。
<その他添加剤>
本発明の実施形態に用いられる樹脂組成物は、さらにリン系化合物(D)を含有することが好ましい。従来、次亜リン酸ナトリウムなどのリン系化合物は、ポリアミドを重縮合する際の重縮合触媒として用いられており、重合時間の短縮化、黄変抑制効果が知られている。本発明の実施形態においては、化合物(B)とともにリン系化合物(D)を含有することにより、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。これは、リン系化合物(D)は、ポリアミド樹脂(A)の自己縮合よりも、化合物(B)とポリアミド樹脂(A)の反応性および相溶性をよりいっそう向上させ、ポリアミド樹脂組成物中における化合物(B)の分散性をより向上させることができるためであり、その結果、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。
リン系化合物としては、例えば、ホスファイト化合物、ホスフェート化合物、ホスホナイト化合物、ホスホネート化合物、ホスフィナイト化合物、ホスフィネート化合物などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
ホスファイト化合物としては、例えば、亜リン酸、亜リン酸アルキルエステル、亜リン酸アリールエステル、およびそれらの金属塩などが挙げられる。アルキルエステルやアリールエステルは、モノエステルであってもよいし、ジエステルやトリエステルなど複数のエステル結合を有してもよく、以下同様である。具体的には、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、およびこれらの金属塩等が挙げられる。金属塩については後述する。
ホスフェート化合物としては、例えば、リン酸、リン酸アルキルエステル、リン酸アリールエステル、およびそれらの金属塩などが挙げられる。具体的には、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、およびこれらの金属塩等が挙げられる。
ホスホナイト化合物としては、例えば、亜ホスホン酸、亜ホスホン酸アルキルエステル、亜ホスホン酸アリールエステル、アルキル化亜ホスホン酸、アリール化亜ホスホン酸、それらのアルキルエステルまたはアリールエステル、およびそれらの金属塩などが挙げられる。具体的には、亜ホスホン酸、亜ホスホン酸ジメチル、亜ホスホン酸ジエチル、亜ホスホン酸ジフェニル、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、プロピル亜ホスホン酸、イソプロピル亜ホスホン酸、ブチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイト、これらのアルキルエステルまたはアリールエステル、およびこれらの金属塩等が挙げられる。
ホスホネート化合物としては、例えば、ホスホン酸、ホスホン酸アルキルエステル、ホスホン酸アリールエステル、アルキル化ホスホン酸またはアリール化ホスホン酸、それらのアルキルエステルまたはアリールエステル、およびそれらの金属塩などが挙げられる。具体的には、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸ジフェニル、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、トリルホスホン酸、キシリルホスホン酸、ビフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アントリルホスホン酸、これらのアルキルエステルまたはアリールエステル、およびこれらの金属塩等が挙げられる。
ホスフィナイト化合物としては、例えば、亜ホスフィン酸、亜ホスフィン酸アルキルエステル、亜ホスフィン酸アリールエステル、アルキル化亜ホスフィン酸、アリール化亜ホスフィン酸、それらのアルキルまたはアリールエステル、およびそれらの金属塩などが挙げられる。具体的には、亜ホスフィン酸、亜ホスフィン酸メチル、亜ホスフィン酸エチル、亜ホスフィン酸フェニル、メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、プロピル亜ホスフィン酸、イソプロピル亜ホスフィン酸、ブチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸、ジメチル亜ホスフィン酸、ジエチル亜ホスフィン酸、ジプロピル亜ホスフィン酸、ジイソプロピル亜ホスフィン酸、ジブチル亜ホスフィン酸、ジフェニル亜ホスフィン酸、これらのアルキルエステルまたはアリールエステル、およびこれらの金属塩が等が挙げられる。
ホスフィネート化合物としては、例えば、次亜リン酸、次亜リン酸アルキルエステル、次亜リン酸アリールエステル、アルキル化次亜リン酸、アリール化次亜リン酸、それらのアルキルエステルまたはアリールエステル、およびそれらの金属塩などが挙げられる。具体的には、ホスフィン酸メチル、ホスフィン酸エチル、ホスフィン酸フェニル、メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、プロピルホスフィン酸、イソプロピルホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、トリルホスフィン酸、キシリルホスフィン酸、ビフェニリルホスフィン酸、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジプロピルホスフィン酸、ジイソプロピルホスフィン酸、ジブチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ジトリルホスフィン酸、ジキシリルホスフィン酸、ジビフェニリルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アントリルホスフィン酸、2−カルボキシフェニルホスフィン酸、これらのアルキルエステルまたはアリールエステル、およびこれらの金属塩などが挙げられる。
これらの中でもホスファイト化合物、ホスフィネート化合物が好ましく、またこれらは水和物であっても構わない。亜リン酸、次亜リン酸およびそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することがさらに好ましい。かかる化合物を含有することにより、ポリアミド樹脂(A)の増粘を抑制しながら、化合物(B)の反応性および相溶性をより高めることができ、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。
本発明のより好ましい実施形態のポリアミド樹脂組成物において、リン系化合物の含有量は、リン原子換算でポリアミド樹脂(A)含有量に対して、200〜3500ppmである。ここでリン原子含有量とは、後述する吸光光度分析法により求められるリン元素の濃度を示す。リン原子換算濃度が200ppm以上であると、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。リン系化合物のリン原子換算濃度は、ポリアミド樹脂(A)含有量に対して、300ppm以上が好ましく、800ppm以上がより好ましく、1000ppm以上が。さらに好ましい。一方、リン原子換算濃度が3500ppmを超えると、ポリアミド樹脂(A)の増粘が顕著となり、剪断発熱による化合物(B)の熱分解が起こり、ポリアミド樹脂組成物の流動性、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性が低下する。
なお、ここでいうポリアミド樹脂組成物中のポリアミド樹脂含有量に対するリン系化合物由来のリン原子換算濃度は、以下の方法により求めることができる。まずポリアミド樹脂組成物またはその成形品を減圧乾燥した後、550℃の電気炉で24時間加熱して灰化させ、ポリアミド樹脂組成物またはその成形品中の無機物の含有量を求める。また、衝撃改良剤などのポリアミド樹脂(A)以外の樹脂成分や、化合物(B)、充填剤(C)およびリン系化合物およびその他の添加剤を含有する場合は、有機溶媒による抽出分離によりポリアミド樹脂(A)またはポリアミド樹脂(A)以外の成分の重量を測定し、ポリアミド樹脂組成物またはその成形品中のポリアミド樹脂(A)含有量を算出する。一方、ポリアミド樹脂組成物またはその成形品を炭酸ソーダ共存下において乾式灰化分解するか、硫酸・硝酸・過塩素酸系または硫酸・過酸化水素水系において湿式分解することにより、リンを正リン酸とする。次いで、正リン酸を1mol/L硫酸溶液中においてモリブデン酸塩と反応させて、リンモリブデン酸とし、これを硫酸ヒドラジンで還元して、生成するヘテロポリブルーの830nmの吸光度を吸光光度計(検量線法)で測定して比色定量することにより、ポリアミド樹脂組成物中のリン含有量を算出する。比色定量により算出したリン量を、先に算出したポリアミド樹脂量で割ることにより、ポリアミド樹脂に対するリン原子濃度を求めることができる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、さらに銅化合物を含有することができる。銅化合物は、ポリアミド樹脂(A)のアミド基に配位することに加え、化合物(B)の水酸基やカルボキシル基とも配位結合すると考えられる。このため、銅化合物は、ポリアミド樹脂(A)と、化合物(B)との相溶性を高める効果があると考えられる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、さらに、カリウム化合物を含有することができる。カリウム化合物は銅の遊離や析出を抑制する。このため、カリウム化合物は、銅化合物と、化合物(B)と、ポリアミド樹脂(A)との反応を促進する効果があると考えられる。
銅化合物としては、例えば、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、炭酸銅、ほうふっ化銅、クエン酸銅、水酸化銅、硝酸銅、硫酸銅、蓚酸銅などが挙げられる。銅化合物として、これらを2種以上含有してもよい。これら銅化合物の中でも、工業的に入手できるものが好ましく、ハロゲン化銅が好適である。ハロゲン化銅としては、例えば、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅などが挙げられる。ハロゲン化銅としては、ヨウ化銅がより好ましい。
カリウム化合物としては、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、フッ化カリウム、酢酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、硝酸カリウムなどが挙げられる。カリウム化合物として、これらを2種以上含有してもよい。これらカリウム化合物の中でも、ヨウ化カリウムが好ましい。カリウム化合物を含むことにより、成形安定性、成形品の金型密着性を向上させることもできる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量(重量基準)は、25〜200ppmであることが好ましい。銅元素の含有量を25ppm以上とすることにより、ポリアミド樹脂(A)と、化合物(B)との相溶性がより向上し、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量(重量基準)は、80ppm以上が好ましい。一方、銅元素の含有量を200ppm以下とすることにより、銅化合物の析出や遊離による着色を抑制し、成形品の金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。また、銅元素の含有量を200ppm以下とすることにより、ポリアミド樹脂と銅の過剰な配位結合に起因するアミド基の水素結合力の低下を抑制し、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量(重量基準)は、190ppm以下が好ましい。なお、ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量は、銅化合物の配合量を適宜調節することにより前述の所望の範囲にすることができる。
ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量は、以下の方法により求めることができる。まず、ポリアミド樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解し、分解液を希釈する。その希釈液を原子吸光分析(検量線法)することにより、銅含有量を求めることができる。
ポリアミド樹脂組成物中のカリウム元素の含有量に対する銅元素の含有量の比Cu/Kは、0.21〜0.43であることが好ましい。Cu/Kは、銅の析出や遊離の抑制の程度を表す指標であり、この値が小さいほど、銅の析出や遊離を抑制して、銅化合物と、化合物(B)と、ポリアミド樹脂(A)との反応を促進することができる。Cu/Kを0.43以下とすることにより、銅の析出や遊離を抑制し、湿熱環境下におけるブリードアウト性をより向上させることができる。また、Cu/Kを0.43以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の相溶性も向上することから、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。一方、Cu/Kを0.21以上とすることにより、カリウムを含む化合物の分散性を向上させ、特に潮解性のヨウ化カリウムであっても塊状となりにくく、銅の析出や遊離の抑制効果が向上することから、銅化合物と、化合物(B)と、ポリアミド樹脂(A)との反応が十分に促進され、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。ポリアミド樹脂組成物中のカリウム元素含有量は、上記の銅含有量と同様の方法にて求めることができる。
さらに、本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアミド樹脂以外の樹脂や、目的に応じて各種添加剤を含有することが可能である。ポリアミド樹脂以外の樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィンエラストマー、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これら樹脂を配合する場合、その含有量は、ポリアミド樹脂の特徴を十分に活かすため、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましい。
また、各種添加剤の具体例としては、銅化合物以外の熱安定剤、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物などの可塑剤、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、耐衝撃改良剤、発泡剤などを挙げることができる。これら添加剤を含有する場合、その含有量は、ポリアミド樹脂の特徴を十分に活かすため、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して10重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。
銅化合物以外の熱安定剤としては、フェノール系化合物、硫黄系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。銅化合物以外の熱安定剤としては、これらを2種以上用いてもよい。
フェノール系化合物としては、ヒンダードフェノール系化合物が好ましく用いられ、N、N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが好ましく用いられる。
硫黄系化合物としては、有機チオ酸系化合物、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物等が挙げられる。これら硫黄系化合物の中でも、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物および有機チオ酸系化合物が好ましい。特に、チオエーテル構造を有するチオエーテル系化合物は、酸化された物質から酸素を受け取って還元するため、熱安定剤として好適に使用することができる。チオエーテル系化合物としては、具体的には、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)が好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)がより好ましい。硫黄系化合物の分子量は、通常200以上、好ましくは500以上であり、その上限は通常3,000である。
本発明のポリアミド樹脂組成物において、硫黄系化合物と銅および/またはその塩の重量比((硫黄系化合物)/(銅および/またはその塩))は、0.1〜10.0(0.1以上10.0以下)であることが好ましい。重量比((硫黄系化合物)/(銅および/またはその塩))を0.1以上とすることにより、金属および/またはその塩の分散性を向上させ、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。一方、重量比((硫黄系化合物)/(銅および/またはその塩))を10.0以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。8.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。
アミン系化合物としては、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物およびジナフチルアミン骨格を有する化合物が好ましく、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物がさらに好ましい。これらアミン系化合物の中でも4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンおよびN,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミンがより好ましく、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンおよび4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが特に好ましい。
硫黄系化合物またはアミン系化合物の組み合わせとしては、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)と4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンの組み合わせがより好ましい。
<製造法>
本発明の実施形態に用いられるポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はないが、溶融状態での製造や溶液状態での製造等が使用でき、反応性向上の点から、溶融状態での製造が好ましく使用できる。溶融状態での製造については、押出機による溶融混練やニーダーによる溶融混練等が使用できるが、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましい。押出機による溶融混練については、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等の押出機を1台以上使用できるが、混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機が好ましく、二軸押出機を用いた溶融混練による方法が最も好ましい。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)に化合物(B)を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、ドライブレンドや溶液配合法、ポリアミド樹脂(A)の重合時添加、溶融混練などが用いることができ、中でも溶融混練が好ましい。溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単軸もしくは二軸押出機などを用い、ポリアミド樹脂(A)の融点以上であって、融点+50℃以下で溶融混練して樹脂組成物とすることができる。中でも二軸押出機が好ましい。
混練方法としては、1)ポリアミド樹脂(A)に、化合物(B)、およびその他の添加剤を元込めフィーダーから一括で投入して混練する方法(一括混練法)、2)ポリアミド樹脂(A)に、化合物(B)およびその他の添加剤を元込めフィーダーから投入して混練した後、充填材(C)および必要であればその他の添加剤をサイドフィーダーから添加して混練する方法(サイドフィード法)、3)ポリアミド樹脂(A)に、化合物(B)およびその他の添加剤を高濃度に含む熱可塑性樹脂組成物(マスターペレット)を作製し、次いで規定の濃度になるようにマスターペレットをポリアミド樹脂(A)およびその他の添加剤、充填材を混練する方法(マスターペレット法)など、どの方法を用いてもかまわない。
二軸押出機の全スクリュー長さLとスクリュー径Dの比(L/D)は、25以上が好ましく、30を超えることがより好ましい。L/Dを25以上とすることにより、ポリアミド樹脂(A)を十分に混練した後に、化合物(B)、必要によりその他成分を供給することが容易になる。その結果、ポリアミド樹脂(A)の分解を抑制することができる。また、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)の分散性をより向上させ、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。
本発明の実施形態においては、少なくともポリアミド樹脂(A)を、スクリュー長さの1/2より上流側から二軸押出機に供給して溶融混練することが好ましく、スクリューセグメントの上流側の端部から供給することがより好ましい。ここでいうスクリュー長とは、スクリュー根本のポリアミド樹脂(A)が供給される位置(フィード口)にあるスクリューセグメントの上流側の端部から、スクリュー先端部までの長さである。スクリューセグメントの上流側の端部とは、押出機に連結するスクリューセグメントの最も上流側の端に位置するスクリューピースの位置のことを示す。
化合物(B)は、スクリュー長さの1/2より下流側から二軸押出機に供給して溶融混練することが好ましい。化合物(B)をスクリュー長の1/2より下流側から供給することにより、ポリアミド樹脂(A)が十分に混練された状態とした後に、化合物(B)を供給することが容易になる。その結果、ポリアミド樹脂(A)の分解を抑制しつつ、化合物(B)とポリアミド樹脂(A)との相溶性が向上し、分散性をより向上させることができる。
本発明の効果をより顕著に発現させるためには、化合物(B)のポリアミド樹脂組成物中における分散性を高めることが好ましい。具体的には、化合物(B)中のエポキシ基またはカルボジイミド基と、ポリアミド樹脂(A)のカルボキシル末端基またはアミノ末端基の反応をより促進させる方法が好ましく、ポリアミド樹脂組成物中において微細な分散構造を形成させることにより、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。
化合物(B)のポリアミド樹脂組成物中における分散性を高める手段としては、例えば、混練温度やスクリューアレンジの選択により溶融混練時の樹脂圧力を高める方法、複数回押出機を通して溶融混練する方法、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)の高濃度予備混合物を作製し、これをポリアミド樹脂(A)と溶融混練する方法などを好ましく挙げることができる。
二軸押出機を使用して本発明の実施形態に用いられるポリアミド樹脂組成物を製造する場合、混練性、反応性向上の点から、複数のフルフライトゾーンおよび複数のニーディングゾーンを有する二軸押出機を用いることが好ましい。フルフライトゾーンは1個以上のフルフライトより構成され、ニーディングゾーンは1個以上のニーディングディスクより構成される。
さらに、複数ヶ所のニーディングゾーンの樹脂圧力のうち、最大となる樹脂圧力をPkmax(MPa)とし、複数ヶ所のフルフライトゾーンの樹脂圧力のうち、最小となる樹脂圧力をPfmin(MPa)とすると、
Pkmax≧Pfmin+0.3
となる条件において溶融混練することが好ましく、
Pkmax≧Pfmin+0.5
となる条件において溶融混練することがより好ましい。なお、ニーディングゾーンおよびフルフライトゾーンの樹脂圧力とは、各々のゾーンに設置された樹脂圧力計の示す樹脂圧力を指す。
ニーディングゾーンは、フルフライトゾーンに比べて、溶融樹脂の混練性および反応性に優れる。ニーディングゾーンに溶融樹脂を充満させることにより、混練性および反応性が飛躍的に向上する。溶融樹脂の充満状態を示す一つの指標として、樹脂圧力の値があり、樹脂圧力が大きいほど、溶融樹脂が充満していることを表す一つの目安となる。すなわち二軸押出機を使用する場合、ニーディングゾーンの樹脂圧力を、フルフライトゾーンの樹脂圧力より、所定の範囲で高めることにより、混練性および反応性をより高めることが可能となり、ポリアミド樹脂組成物中における化合物(B)の分散性をより高めることができ、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。
ニーディングゾーンにおける樹脂圧力を高める方法として、特に制限はないが、例えば、一般的には、溶融混練時のシリンダー設定温度は樹脂の融点以上とすることが知られているが、第一ニーディングゾーン、すなわち第一可塑部は融点以上とし、第一ニーディングゾーンより下流側のシリンダー温度を融点あるいはそれ以下とし、溶融樹脂の粘度を増加させることにより樹脂圧力を高める方法、ニーディングゾーンの間やニーディングゾーンの下流側に、溶融樹脂を上流側に押し戻す効果のある逆スクリューゾーンや、溶融樹脂を溜める効果のあるシールリングゾーン等を導入する方法などが好ましく使用できる。逆スクリューゾーンやシールリングゾーンは、1個以上の逆スクリューや1個以上のシールリングから形成され、それらを組み合わせることも可能である。
化合物(B)の供給位置の上流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn1とした場合、Ln1/Lは0.02以上であることが好ましく、0.03以上であることがさらに好ましい。一方Ln1/Lは、0.40以下であることが好ましく、0.20以下であることがさらに好ましい。Ln1/Lを0.02以上とすることにより、ポリアミド樹脂(A)の反応性および混練性を高めることができ、0.40以下とすることにより、剪断発熱を適度に抑えて樹脂の熱劣化を抑制することができる。ポリアミド樹脂(A)の溶融温度に特に制限はないが、ポリアミド樹脂(A)の熱劣化による分子量低下を抑制するため、340℃以下が好ましい。
化合物(B)の供給位置の下流側でのニーディングゾーンの合計長さをLn2とした場合、Ln2/Lは0.02〜0.30であることが好ましい。Ln2/Lを0.02以上とすることにより、化合物(B)の反応性をより高めることができる。Ln2/Lは0.04以上がより好ましい。一方、Ln2/Lを0.30以下とすることにより、ポリアミド樹脂(A)の分解をより抑制することができる。Ln2/Lは0.16以下がより好ましい。
また、ポリアミド樹脂(A)と、化合物(B)を溶融混練し、得られた樹脂組成物を繰り返し押出機に通して複数回溶融混練を繰り返し、ポリアミド樹脂組成物中における化合物(B)の分散性を向上させる方法も挙げることができる。
ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)の高濃度予備混合物を作製し、これをポリアミド樹脂(A)と溶融混練する方法によりポリアミド樹脂組成物を製造する場合、ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、化合物(B)10〜250重量部を溶融混練して高濃度予備混合物を作製し、その高濃度予備混合物をさらにポリアミド樹脂(A)およびその他成分とともに、二軸押出機により溶融混練することがより好ましい。高濃度予備混合物を作製しない場合と比較して、ポリアミド樹脂組成物の流動性を向上させるとともに、得られる成形品の機械強度、金属密着性、耐金属変色性をより向上させることができる。
この要因については定かではないが、あらかじめポリアミド樹脂(A)に対して、高濃度で化合物(B)を溶融混練することにより、ポリアミド樹脂(A)と、化合物(B)の相溶性向上に寄与する成分、すなわち相溶化剤が多数生成し、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)間の相溶性がよりいっそう向上するためと考えられる。
一方、高濃度予備混合物を作製する際、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)の含有量が多くなる。滞留安定性の低下を抑制するため、二軸押出機での溶融混練時に、化合物(B)をポリアミド樹脂供給位置よりも下流側より供給し、ポリアミド樹脂(A)、と化合物(B)の混練時間を短くすることが好ましい。高濃度予備混合物に用いるポリアミド樹脂(A)と、高濃度予備混合物へさらに配合するポリアミド樹脂(A)は、同一であってもよく、異なっていてもよい。高濃度予備混合物に用いられるポリアミド樹脂(A)は、成形品の金属密着性をより向上させる観点から、ナイロン6、ナイロン11および/またはナイロン12が好ましい。
かくして得られるポリアミド樹脂組成物は、公知の方法で各種成形品を得ることができる。成形方法としては、例えば、射出成形、射出圧縮成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、プレス成形などが挙げられる。
<用途>
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、その優れた特性を活かし、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、とりわけ、流動性、機械強度、金属密着性、耐金属変色性が要求される自動車電装部品、電気・電子部品用途に特に好ましく用いられる。具体的には、本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、エンジンカバー、エアインテークパイプ、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、フィラーキャップ、スロットルボディ、クーリングファンなどの自動車エンジン周辺部品、クーリングファン、ラジエータータンクのトップおよびベース、シリンダーヘッドカバー、オイルパン、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、廃ガス系統部品などの自動車アンダーフード部品、ギア、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、ベアリングケージ、チェーンガイド、チェーンテンショナなどの自動車ギア部品、シフトレバーブラケット、ステアリングロックブラケット、キーシリンダー、ドアインナーハンドル、ドアハンドルカウル、室内ミラーブラケット、エアコンスイッチ、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、トリムなどの自動車内装部品、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、シリンダーヘッドカバー、ドアミラーステイ、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、リアガーニッシュ、リアスポイラー、トランクリッド、ロッカーモール、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの自動車外装部品、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、ターボチャージャ、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディなどの吸排気系部品、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター、及びデリバリーパイプなどのエンジン冷却水系部品、コネクタやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、コンビネーションスイッチなどの自動車電装部品、電気・電子部品としては、例えば、発電機、電動機、変圧器、変流器、電圧調整器、整流器、抵抗器、インバーター、継電器、電力用接点、開閉器、遮断機、スイッチ、ナイフスイッチ、他極ロッド、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、ICやLED対応ハウジング、コンデンサー座板、ヒューズホルダー、各種ギヤー、各種ケース、キャビネットなどの電気部品、コネクター、SMT対応のコネクタ、カードコネクタ、ジャック、コイル、コイルボビン、センサー、LEDランプ、ソケット、抵抗器、リレー、リレーケース、リフレクター、小型スイッチ、電源部品、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップシャーシ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、SiパワーモジュールやSiCパワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などの電子部品などに好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。特性評価は下記の方法に従って行った。
[ポリアミド樹脂の融点]
ポリアミド樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツル製 ロボットDSC(示差走査熱量計)RDC220を用い、次の条件でポリアミド樹脂(A)の融点を測定した。ポリアミド樹脂の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃まで降温し、30℃で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。
[ポリアミド樹脂の相対粘度]
ポリアミド樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸中、25℃でオストワルド式粘度計を用いて相対粘度(ηr)を測定した。
[数平均分子量]
化合物(B)、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)2.5mgを、それぞれヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)4mlに溶解し、0.45μmのフィルターでろ過して得られた溶液を測定に用いた。測定条件を以下に示す。
装置:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(Waters製)
検出器:示差屈折率計Waters410(Waters製)
カラム:Shodex GPC HFIP−806M(2本)+HFIP−LG(島津ジーエルシー(株))
流速:0.5ml/min
試料注入量:0.1ml
温度:30℃
分子量校正:ポリメチルメタクリレート
[水酸基価および酸価]
250ml三角フラスコに、化合物(B)または水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)を約0.2g採取し、重量を測定した。20mlのクロロホルムに溶解し、指示薬としてフェノールフタレインを用いて、0.1N(規定)の水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、酸価E(mgKOH/g)を算出した。
化合物(B)または水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)を0.5g採取し、それぞれ250ml三角フラスコに加え、次いで、無水酢酸と無水ピリジンを1:10(質量比)に調整・混合した溶液20.00mlを採取し、前記三角フラスコに入れ、還流冷却器を取り付けて、100℃に温調したオイルバス下で20分間、撹拌しながら還流させた後、室温まで冷却した。さらに、前記三角フラスコ内に冷却器を通じてアセトン20ml、蒸留水20mlを加えた。これにフェノールフタレイン指示薬を入れて、0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液により滴定した。なお、別途測定したブランク(試料を含まない)の測定結果を差し引き、下記式(4)により水酸基価を算出した。
水酸基価[mgKOH/g]=[((B−C)×f×28.05)/S]+E (4)
但し、B:滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、C:ブランクの滴定に用いた0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液の量[ml]、f:0.5mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料の質量[g]、E:酸価を表す。
[化合物(B)の反応率]
化合物(B)0.035gを重水素化ジメチルスルホキシド0.7mlに溶解し、エポキシ基の場合はH−NMR測定、カルボジイミド基の場合は13C−NMR測定を行った。各分析条件は下記の通りである。
(1)H−NMR
装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
観測周波数:OBFRQ399.65MHz、OBSET124.00KHz、OBFIN10500.00Hz
積算回数:256回
(2)13C−NMR
装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
観測周波数:OBFRQ100.40MHz、OBSET125.00KHz、OBFIN10500.00Hz
積算回数:512回
得られたH−NMRスペクトルより、エポキシ環由来ピークの面積を求めた。また得られた13C−NMRスペクトルより、カルボジイミド基由来ピークの面積を求めた。なお、ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)と、’エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)をドライブレンドしたもののピーク面積をdとし、化合物(B)のピーク面積をeとし、反応率は、下記式(3)により算出した。
反応率(%)={1−(e/d)}×100 (3)
一例として、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸とビスフェノールA型エポキシ樹脂である「三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004を3:1の重量比でドライブレンドしたもののH−NMRスペクトルを図1に示す。また参考例1により得た(B−1)化合物のH−NMRスペクトルを図2に示す。図1に示すH−NMRスペクトルから、2.60ppmと2.80ppm付近に現れるエポキシ環由来ピーク面積の合計を求め、同様に図2に示すピーク面積の合計を求め、反応率の算出式(4)より反応率を算出した。この際、ピーク面積は反応に寄与しないエポキシ樹脂のベンゼン環のピークの面積で規格化した。
[分岐度]
化合物(B)を、下記条件で13C−NMR分析した後、下記式(2)により分岐度(DB)を算出した。
分岐度=(D+T)/(D+T+L) (2)
上記式(2)中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す。上記D、T、Lは13C−NMRにより測定したピーク面積から算出した。Dは第3級または第4級炭素原子に由来し、Tは第1級炭素原子の中で、メチル基であるものに由来し、Lは第1級または第2級炭素原子の中で、Tを除くものに由来する。なお、ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。測定条件は下記の通りである。
(1)13C−NMR
装置:日本電子(株)製核磁気共鳴装置(JNM−AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド
測定サンプル量/溶媒量:0.035g/0.70ml
観測周波数:OBFRQ100.40MHz、OBSET125.00KHz、OBFIN10500.00Hz
積算回数:512回
[化合物(B)の水酸基およびカルボキシル基の数の和と、エポキシ基およびカルボジイミド基の数の和]
水酸基またはカルボキシル基の数は、化合物(B)の数平均分子量と水酸基価または酸価を算出し、下記式(1−1)および(1−2)により算出した。
化合物(B)中の水酸基の数=(数平均分子量×水酸基価)/56110 (1−1)
化合物(B)中のカルボキシル基の数=(数平均分子量×酸価)/56110(1−2)
上記(1−1)および(1−2)の和を、化合物(B)の水酸基とカルボキシル基の数の和とした。
化合物(B)の数平均分子量と水酸基価、酸価は前述の方法で測定した。
また、エポキシ基またはカルボジイミド基の数は、化合物(B)の数平均分子量をエポキシ当量またはカルボジイミド当量で割った値により算出した。
エポキシ当量は、化合物(B)400mgを、ヘキサフルオロイソプロパノール30mlに溶解させた後、酢酸20ml、テトラエチルアンモニウムブロミド/酢酸溶液(=50g/200ml)を加え、滴定液として0.1Nの過塩素酸および指示薬としてクリスタルバイオレットを用い、溶解液の色が紫色から青緑色に変化した際の滴定量より、下記式(5)により算出した。
エポキシ当量[g/eq]=W/((F−G)×0.1×f×0.001) (5)
但し、F:滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、G:ブランクの滴定に用いた0.1Nの過塩素酸の量[ml]、f:0.1Nの過塩素酸のファクター、W:試料の質量[g]
カルボジイミド当量は、以下の方法で算出した。化合物(B)100重量部と、内部標準物質としてフェロシアン化カリウム(東京化成工業(株)製)30重量部をドライブレンドし、約200℃で1分間熱プレスを行い、シートを作製した。その後、赤外分光光度計((株)島津製作所製、IR Prestige−21/AIM8800)を用いて、透過法で、シートの赤外吸収スペクトルを測定した。測定条件は、分解能4cm−1、積算回数32回とした。透過法での赤外吸収スペクトルは、吸光度がシート厚みに反比例するため、内部標準ピークを用いて、カルボジイミド基のピーク強度を規格化する必要がある。2140cm−1付近に現れるカルボジイミド基由来ピークの吸光度を、2100cm−1付近に現れるフェロシアン化カリウムのCN基の吸収ピークの吸光度で割った値を算出した。この値からカルボジイミド当量を算出するために、あらかじめカルボジイミド当量が既知のサンプルを用いてIR測定を行い、カルボジイミド基由来ピークの吸光度と内部標準ピークの吸光度の比を用いて検量線を作成し、化合物(B)の吸光度比を検量線に代入し、カルボジイミド当量を算出した。なお、カルボジイミド当量が既知のサンプルとして、脂肪族ポリカルボジイミド(日清紡製、“カルボジライト”(登録商標)LA−1、カルボジイミド当量247g/mol)、芳香族ポリカルボジイミド(ラインケミー製、“スタバクゾール”(登録商標)P、カルボジイミド当量360g/mol)を用いた。
[引張破断強度]
各実施例、比較例により得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを80℃で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+15℃、金型温度:80℃の条件で射出成形することにより、厚さ3.2mmASTM1号ダンベル試験片を作製した。この試験片について、ASTM D638に従って引張試験機テンシロンUTA2.5T(オリエンテック社製)により、クロスヘッド速度10mm/分で引張試験を行った。3回測定を行い、その平均値を引張破断強度として算出した。引張強度が大きいほど、機械特性に優れる。
[流動性]
各実施例、比較例により得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを80℃で12時間真空乾燥し、射出成形機(ファナック社製(株)ROBOSHOTα−30C)を用いて、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+15℃、金型温度:80℃、射出圧力:98MPaの条件で、150mm長×13mm幅×0.5mm厚の金型を用いて射出成形し、13mm幅×0.5mm厚の棒流動試験片を作製した。各5サンプルについて保圧0における棒流動長を測定し、その平均値を求め、流動性を評価した。流動長が長いほど流動性に優れることを示している。
[吸湿熱乾燥処理後の樹脂・金属密着性]
各実施例、比較例により得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを、射出成形機UH1000(80t)(日精樹脂工業社製)を用い、シリンダー温度:ポリアミド樹脂(A)の融点+15℃、金型温度:80℃で、5mm×5mm×50mm長さのアルミ製角柱の両端10mmから、厚さ5mmで長さ30mmを覆うように成形し(成形部外径寸法は、15mm×15mm×30mm長さ)、吸湿乾燥サイクル金属密着試験片を20個作製した。次いで得られた試験片を恒温恒湿機にて65℃/90%RHで48時間吸湿処理した後、熱風乾燥機にて110℃で24時間乾燥した。上記吸湿乾燥処理後、試験片を赤インクに浸漬し、水洗、乾燥したものを実体顕微鏡で観察し、クラックの有無を評価した(浸透深傷法)。樹脂と金属の密着部位から、インクの浸み出しが認められた試験片の個数を計数した。個数が少ないほど密着性に優れる。
[耐金属変色性]
各実施例、比較例により得られたポリアミド樹脂組成物ペレットを80℃で12時間真空乾燥した。ペレット中のポリアミド樹脂分が2.4gになるようにアルミカップ(図3に示す符号3参照)に計量した(サンプルは、図3に示す符号2参照)、図3のようにスライドガラス(符号4)、銅板(符号5)を順にのせ、シャーレ(符号6)で蓋をした。熱風オーブンにて,180℃で60分加熱処理を行った。加熱処理後の銅板につき、JIS−8741に準拠した鏡面光沢度の測定を行い、加熱処理のみ行った銅板の光沢度と比較した光沢度の保持率により、耐金属変色性の評価を行った。光沢度の保持率が高いほど耐金属変色性に優れることを示している。
参考例1(B−1)
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成工業(株)製、1分子中の水酸基の個数2個、カルボキシル基の個数1個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中の官能基数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で2.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化し、B−1を得た。得られた化合物の反応率は62%、分岐度は0.31、水酸基価は798mgKOH/g、酸価は280mgKOH/gであった。B−1の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多かった。酸価/水酸基価の比は0.35であった。
参考例2(B−2)
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成工業(株)製、1分子中の水酸基の個数2個、カルボキシル基の個数1個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中の官能基数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で2.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、B−2を得た。得られた化合物の反応率は93%、分岐度は0.34、水酸基価は763mgKOH/g、酸価は241mgKOH/gであった。B−2の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多かった。酸価/水酸基価の比は0.32であった。
参考例3(B−3)
2軸押出機のスクリュー回転数を300rpmに変更し、溶融混練時間を0.8分間に変更したこと以外は参考例1と同様にして、B−3を得た。得られた化合物の反応率は2%、分岐度は0.16、水酸基価は828mgKOH/g、酸価は385mgKOH/gであった。B−3の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多かった。酸価/水酸基価の比は0.46であった。
参考例4(B−4)
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成工業(株)製、1分子中の水酸基の個数2個、カルボキシル基の個数1個)100重量部に対して、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製“EPPN”(登録商標)201、1分子中のエポキシ基の個数7個、分子量1330、分子量/1分子中の官能基数190)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で2.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化し、B−4を得た。得られた化合物の反応率は58%、分岐度は0.34、水酸基価は808mgKOH/g、酸価は255mgKOH/gであった。B−4の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多かった。酸価/水酸基価の比は0.32であった。
参考例5(B−5)
ジヒドロキシフェニル酢酸(関東化学(株)製、1分子中の水酸基の個数2個、カルボキシル基の個数1個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中の官能基数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で2.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化し、B−5を得た。得られた化合物の反応率は68%、分岐度は0.32、水酸基価は621mgKOH/g、酸価は226mgKOH/gであった。B−5の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多かった。酸価/水酸基価の比は0.36であった。
参考例6(B−6)
ムチン酸(富士フイルム和光純薬工業(株)製、1分子中の水酸基の個数2個、カルボキシル基の個数2個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中の官能基数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で2.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化し、B−6を得た。得られた化合物の反応率は63%、分岐度は0.33、水酸基価は993mgKOH/g、酸価は412mgKOH/gであった。B−6の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多かった。酸価/水酸基価の比は0.41であった。
参考例7(B−7)
10−ヒドロキシデカン酸(Combi−Blocks.Inc製、1分子中の水酸基の個数1個、カルボキシル基の個数1個)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中の官能基数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpmの条件で2.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化し、B−7を得た。得られた化合物の反応率は59%、分岐度は0.13、水酸基価は303mgKOH/g、酸価は260mgKOH/gであった。B−7の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多かった。酸価/水酸基価の比は0.86であった。
参考例8(B’−8)
ペンタエリスリトール(関東化学(株)製、1分子中の水酸基の個数4個、カルボキシル基なし)100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中の官能基数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数100rpmの条件で2.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化した。得られたペレットを再度押出機に供給し、再溶融混練工程を1回行い、B’−8のペレットを得た。得られた化合物の反応率は49%、分岐度は0.28、水酸基価は1196mgKOH/gであった。B’−8の1分子中の水酸基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多かった。
参考例9(B’−9)
ジペンタエリスリトール(東京化成工業(株)製)の白色粉末を、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている180℃のギアオーブン中にて250時間熱処理を行った。熱処理後の粉末100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中の官能基数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数100rpmの条件で2.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化し、B’−9を得た。得られた化合物の反応率は70%、分岐度は0.33、水酸基価は201mgKOH/g、酸価は976mgKOH/gであった。B’−9の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多かった。酸価/水酸基価の比は4.86であった。
参考例10(B’−10)
ジペンタエリスリトール(東京化成工業(株)製)の白色粉末を、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている180℃のギアオーブン中で24時間熱処理を行った。熱処理後の粉末100重量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中の官能基数825)33.3重量部を予備混合した後、(株)池貝製PCM30型2軸押出機を用いて、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数100rpmの条件で2.5分間溶融混練し、ホットカッターによりペレット化し、B’−10を得た。得られた化合物の反応率は38%、分岐度は0.25、水酸基価は1029mgKOH/g、酸価は132mgKOH/gであった。B’−10の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数は、1分子中のエポキシ基の数よりも多かった。酸価/水酸基価の比は0.13であった。
参考例11(E−1)
ナイロン6(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1010)100重量部に対して、(B−1)化合物30重量部を予備混合した後、(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)を用いて、シリンダー温度245℃、スクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃の温度で8時間真空乾燥し、高濃度予備混合物ペレットE−1を作製した。
その他、本実施例および比較例に用いたポリアミド樹脂(A)、水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)、エポキシ基またはカルボジイミド基含有化合物(b’)、充填材(C)は以下の通りである。
(A−1):融点260℃のナイロン66樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM3001−N)、ηr=2.78
(A−2):融点225℃のナイロン6樹脂(東レ(株)製“アミラン”(登録商標)CM1010)、ηr=2.70
(b−1):2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成工業(株)製、1分子中の水酸基の個数2個、カルボキシル基の個数1個)、分子量134、水酸基価837mgKOH/g、酸価419mgKOH/g
(b−2)ペンタエリスリトール(関東化学(株)製、1分子中の水酸基の個数4個、カルボキシル基なし)、分子量136、水酸基価1650mgKOH/g
(b’−1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製“jER”(登録商標)1004、1分子中のエポキシ基の個数2個、分子量1650、分子量/1分子中の官能基数825
(C−1):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子(株)製T−717H)、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤およびノボラックエポキシ系樹脂、繊維長3mm
(C−2):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子(株)製T−275H)、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤およびウレタン系樹脂、繊維長3mm
(実施例1〜11、比較例1〜9)
表1、2に示すポリアミド樹脂(A)、化合物(B)、および水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)を、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。
このメインフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、すなわちスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されていた。続いて、表に示す化合物(B)、水酸基およびカルボキシル基含有化合物( b)、充填材(C)を、サイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。
このサイドフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0.65の位置、つまりスクリュー長の1/2より下流側の位置に接続されていた。2軸押出機のスクリュー構成は、化合物(B)等の供給位置の上流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn1、化合物(B)等の供給位置の下流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn2とした場合、Ln1/Lが0.14、Ln2/Lが0.07となるように構成した。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
(実施例12)
表1、2に示すポリアミド樹脂(A)および高濃度予備混合物(E)を予備混合した後、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した(株)日本製鋼所製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このメインフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、すなわちスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されていた。表に示す充填材(C)を、サイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このサイドフィーダーは、スクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0.65の位置、すなわちスクリュー長の1/2より下流側の位置に接続されていた。シリンダー温度、スクリュー回転数およびスクリュー構成は実施例2と同様であり、これにより、実施例12の組成比は、実施例2と同様となる。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
なお、流動性や機械特性の差を明確にするため、ポリアミド樹脂組成物中の充填材(C)の含有量が等しくなるように各実施例および比較例のポリアミド樹脂組成物を作製した。
各実施例および比較例の評価結果を表1および2に示す。
実施例1〜12は比較例1〜9と比較して、化合物(B)を特定量含有することにより、ポリアミド樹脂(A)との相溶性がより向上し、その結果、流動性に優れ、機械強度、金属密着性および耐金属変色性に優れる成形品を得ることができた。
実施例2は、実施例4,5と比較して、化合物(B)の反応率がより好ましい範囲にあるため、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)との相溶性がより向上し、その結果、流動性に優れ、機械強度、金属密着性および耐金属変色性に優れる成形品を得ることができた。
実施例2は、実施例7と比較して、化合物(B)を構成してなる水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の化学構造がより好ましい構造であったため、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)との相溶性がより向上させることができ、その結果、流動性に優れ、機械強度、金属密着性および耐金属変色性に優れる成形品を得ることができた。
実施例2は、実施例8と比較して、化合物(B)を構成してなる水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の化学構造がより好ましい構造であったため、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)との相溶性がより向上させることができ、その結果、流動性に優れ、機械強度、金属密着性および耐金属変色性に優れる成形品を得ることができた。
実施例2は、実施例9と比較して、化合物(B)を構成してなる水酸基およびカルボキシル基含有化合物(b)の化学構造がより好ましい構造であったため、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)との相溶性がより向上させることができ、その結果、流動性に優れ、機械強度、金属密着性および耐金属変色性に優れる成形品を得ることができた。
実施例2は、実施例10と比較して、充填剤(C)のガラス繊維の集束材がより好ましい構造であったため、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)との相溶性がより向上させることができ、その結果、流動性に優れ、機械強度、金属密着性および耐金属変色性に優れる成形品を得ることができた。
実施例12は、実施例2と比較して、高濃度予備混合物を作製し、2度溶融混練したため、ポリアミド樹脂(A)と化合物(B)との相溶性がさらに向上し、その結果、流動性に優れ、機械強度、金属密着性および耐金属変色性に優れる成形品を得ることができた。
1 溶媒ピーク
2 ポリアミド樹脂組成物
3 アルミカップ
4 スライドガラス
5 銅板
6 シャーレ

Claims (6)

  1. ポリアミド樹脂(A)および化合物(B)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
    ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、化合物(B)を0.1重量部以上20重量部以下含有し、
    化合物(B)が、水酸基およびカルボキシル基を含有する化合物(b)と、エポキシ基またはカルボジイミド基を含有する化合物(b’)の反応物であり、
    化合物(B)の1分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和が、1分子中のエポキシ基およびカルボジイミド基の数の和よりも多く、
    化合物(B)の酸価/水酸基価の比が0.15以上3.0以下である、ポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記化合物(B)が、一分子中の水酸基およびカルボキシル基の数の和が3以上のヒドロキシ酸由来の構造を有する、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. 前記化合物(B)が、脂肪族ヒドロキシ酸由来の構造を有する、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 前記化合物(B)が下記一般式(1)で表される化合物由来の構造を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
    (上記一般式(1)中、Rは、水素または炭素数1〜20の有機基。前記有機基は、置換されていてもよく、置換されている場合の置換基は、カルボキシル基と水酸基のいずれか一方または双方を含む。Rは炭素数1〜20の有機基。前記有機基は置換されていてもよく、置換されている場合の置換基はカルボキシル基と水酸基のいずれか一方または双方を含む。nは0以上5以下の整数である。)
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法であって、前記ポリアミド樹脂(A)100重量部に対して、前記化合物(B)10〜250重量部を溶融混練し、高濃度予備反応物を作製する工程1と、該高濃度予備反応物をさらにポリアミド樹脂(A)と溶融混練する工程2を少なくとも有する、ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
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