WO2014041804A1 - ポリアミド樹脂組成物、成形品 - Google Patents
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Abstract
耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観に優れる成形品を得ることのできるポリアミド樹脂組成物を提供する。(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(b)水酸基およびカルボキシル基を有し、13C-NMRスペクトルにおける総ピーク面積に対するカルボキシル基由来ピーク面積の割合(百分率)と、1H-NMRスペクトルにおける総ピーク面積に対する水酸基由来ピーク面積の割合(百分率)との比(COOH/OH)が、0.01~5.0であり、分岐度が0.05~0.35である化合物0.1~10重量部を配合してなるポリアミド樹脂組成物。
Description
東レ株式会社による日本特許出願、特願2012-202205号の開示内容は、参考のために、この明細書に組み込まれる。
本発明は、ポリアミド樹脂と、水酸基およびカルボキシル基を有する化合物を含有するポリアミド樹脂組成物、およびそれを成形してなる成形品に関する。
ポリアミド樹脂は、優れた機械特性、耐熱性、耐薬品性を有するため、自動車や電気・電子部品用途へ好ましく用いられている。例えば、ポリアミド樹脂は、自動車のアンダーフード部品や、自動車や電気・電子部品のギア等の摺動部品に好適に用いられている。しかし、近年、アンダーフード部品には、より優れた耐熱老化性や耐薬品性が求められている。また、摺動部品には、より優れた耐摩耗性や耐疲労特性が求められている。また、成形品の小型化、薄肉化に対する需要の高まりから、成形時の流動性についても高いレベルが求められている。これらの特性を兼ね備えた樹脂材料が望まれている。
ポリアミド樹脂組成物の流動性を改良する手法としては、例えば、ポリアミド樹脂と融点が150~280℃である多価アルコールとからなるポリアミド樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、耐熱老化特性を改良する手法としては、例えば、ポリアミド樹脂と、2000未満の数平均分子量を有する多価アルコールと、銅安定剤などの補助安定剤やポリマー強化剤を含むポリアミド樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2~3参照)。一方、機械的強度や耐湿性を改良する手法としては、例えば、水酸基とカルボキシル基を有する多価カルボン酸グルコースを用いた吸水性セルロース樹脂が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、前記特許文献2~3に記載されたポリアミド樹脂組成物は、150℃~230℃の温度域で高い耐熱老化性を発現するものの、150℃未満の温度域では耐熱老化性が不十分である。このため、前記特許文献2~3に記載されたポリアミド樹脂組成物は、耐熱老化性について改善の余地があった。また、前記特許文献2~3に記載されたポリアミド樹脂組成物は、多価アルコールの成形品表層へのブリードアウトなどの表面外観上の課題もあり、さらには、耐摩耗性、耐疲労特性、耐薬品性もなお十分ではなかった。また、特許文献1,4に記載された樹脂組成物は、耐摩耗性、耐疲労特性、耐薬品性および表面外観がなお十分ではなかった。本発明は、これら従来技術の課題に鑑み、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観に優れる成形品を得ることのできるポリアミド樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明は、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、水酸基とカルボキシル基を有する特定分岐度の化合物を特定量含むポリアミド樹脂組成物により、上記課題の少なくとも一部を解決できることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用することができる。
(1)(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(b)水酸基およびカルボキシル基を有し、13C-NMRスペクトルにおける総ピーク面積に対するカルボキシル基由来ピーク面積の割合(百分率)と、1H-NMRスペクトルにおける総ピーク面積に対する水酸基由来ピーク面積の割合(百分率)との比(COOH/OH)が、0.01~5.0であり、分岐度が0.05~0.35である水酸基およびカルボキシル基含有化合物0.1~10重量部を配合してなる、ポリアミド樹脂組成物。
(2)(1)に記載のポリアミド樹脂組成物であって、前記(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の、13C-NMRスペクトルにおける総ピーク面積に対するカルボキシル基由来ピーク面積の割合(百分率)と、1H-NMRスペクトルにおける総ピーク面積に対する水酸基由来ピーク面積の割合(百分率)との比(COOH/OH)が、0.01~2.5であり、分岐度が0.05~0.31である、ポリアミド樹脂組成物。
(3)(1)または(2)に記載のポリアミド樹脂組成物であって、(c)銅化合物をさらに含有し、原子吸光分光法で決定されるポリアミド樹脂組成物中の銅含有量が25~200ppmである、ポリアミド樹脂組成物。
(4)(1)から(3)のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物であって、前記(a)ポリアミド樹脂の融点が240~330℃である、ポリアミド樹脂組成物。
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物であって、
前記(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物が、下記一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物である、ポリアミド樹脂組成物。
(ここで、上記一般式(1)中のR1~R6は、それぞれ独立にCH2OH、COOHまたはCH2CH3であり、nは0~4の範囲を表す。)
前記(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物が、下記一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物である、ポリアミド樹脂組成物。
(6)(5)に記載のポリアミド樹脂組成物であって、
前記一般式(1)におけるnが1~4の範囲である、ポリアミド樹脂組成物。
前記一般式(1)におけるnが1~4の範囲である、ポリアミド樹脂組成物。
(7)(1)から(6)のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物であって、
前記(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の分子量が2800以下である、ポリアミド樹脂組成物。
前記(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の分子量が2800以下である、ポリアミド樹脂組成物。
(8)(1)から(7)のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物であって、前記(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(d)無機充填材1~150重量部をさらに含有する、ポリアミド樹脂組成物。
(9)(1)から(8)のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明のポリアミド樹脂組成物によれば、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観に優れる成形品を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(a)ポリアミド樹脂、特定の(b)水酸基およびカルボキシル基を有する化合物(以下、水酸基およびカルボキシル基含有化合物という)を配合してなる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(a)ポリアミド樹脂は、そのカルボキシル末端基とアミノ末端基が、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物中の水酸基およびカルボキシル基と脱水縮合反応すると考えられる。このため、(a)ポリアミド樹脂は、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物との相溶性に優れると考えられる。
本発明の実施形態で用いられる(a)ポリアミド樹脂とは、(i)アミノ酸、(ii)ラクタムあるいは(iii)ジアミンとジカルボン酸を主たる原料とするポリアミドである。(a)ポリアミド樹脂の原料の代表例としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂環族ジアミン、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。本発明の実施形態において、(a)ポリアミド樹脂の原料として、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを2種以上配合してもよい。
ポリアミド樹脂の具体的な例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン106)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリウンデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/11)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリキシリレンセバカミド(ナイロンXD10)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ-2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリデカメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン5T/10T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン12T)などが挙げられる。また、ポリアミド樹脂の具体的な例としては、これらの混合物や共重合体なども挙げられる。ここで、「/」は共重合体を示す。以下、同様とする。
とりわけ好ましいポリアミド樹脂は、240℃~330℃の融点を有するポリアミド樹脂である。240℃~330℃の融点を有するポリアミド樹脂は、耐熱性や強度に優れている。240℃以上の融点を有するポリアミド樹脂は、高温条件下において、樹脂圧力の高い状態で溶融混練することができる。このため、240℃以上の融点を有するポリアミド樹脂は、後述する(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物と反応性を高めることができる。よって、240℃以上の融点を有するポリアミド樹脂は、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性をより向上させることができる。ポリアミド樹脂の融点は、250℃以上がより好ましい。
一方、330℃以下の融点を有するポリアミド樹脂は、溶融混練温度を適度に抑えることができる。このため、ポリアミド樹脂の分解を抑制することができ、ポリアミド樹脂組成物から得られる成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性をより向上させることができる。
ここで、本発明の実施形態におけるポリアミド樹脂の融点は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、ポリアミド樹脂を、溶融状態から20℃/分の降温速度で30℃まで降温した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温した場合に現れる吸熱ピークの温度と定義する。ただし、吸熱ピークが2つ以上検出される場合には、ピーク強度の最も大きい吸熱ピークの温度を、ポリアミド樹脂の融点とする。
240℃~330℃の融点を有するポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン410、ナイロン56、ナイロン6T/66、ナイロン6T/6I、ナイロン6T/12、ナイロン6T/5T、ナイロン6T/M5T、ナイロン6T/6などのヘキサメチレテレフタルアミド単位を有する共重合体や、ナイロン5T/10T、ナイロン9T、ナイロン10T、ナイロン12Tなどを挙げることができる。これらのポリアミド樹脂を、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性などの必要特性に応じて2種以上配合することも実用上好適である。
本発明の実施形態において、ポリアミド樹脂のガラス転移温度は、特に制限はないが、80℃~150℃であることが好ましい。ガラス転移温度が80℃以上であれば、成形品の耐疲労特性をより向上させることができる。ポリアミド樹脂のガラス転移温度は、より好ましくは100℃以上である。
一方、ポリアミド樹脂のガラス転移温度が150℃以下であれば、成形時の結晶化速度を適度に抑えることができるため、成形加工に適したポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
本発明の実施形態におけるポリアミド樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて、不活性ガス雰囲気下、ポリアミド樹脂を、液体窒素にて150℃/分の降温速度で急冷した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる中間点ガラス転移温度とする。中間点ガラス転移温度とは、JIS K7121-1987に定められている方法に準拠して求められ、低温側ベースラインと高温側ベースラインをそれぞれ延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度である。
また、(a)ポリアミド樹脂は、アミド基濃度が8.10mmol/g以下であることが、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性がより向上する観点から好ましい。
ここで、アミド基濃度は、式(2)により表される。
アミド基濃度(mmol/g)=(1/構造単位の分子量) (2)
式(2)において、「構造単位の分子量」とは、ポリアミド樹脂を構成する繰り返し構造単位に相当する分子量を指す。アミノ酸を原料とするポリアミド樹脂の場合、「構造単位の分子量」は、アミノ酸の分子量から水分子1つ分の分子量を差し引いた値に等しい。ラクタムを原料とするポリアミド樹脂の場合、「構造単位の分子量」は、ラクタムの分子量に等しい。ジアミンとジカルボン酸を原料とするポリアミド樹脂の場合、「構造単位の分子量」は、ジカルボン酸の分子量とジアミンの分子量の和から水分子2つ分の分子量を差し引いた値を2で割った値に等しい。
アミド基濃度(mmol/g)=(1/構造単位の分子量) (2)
式(2)において、「構造単位の分子量」とは、ポリアミド樹脂を構成する繰り返し構造単位に相当する分子量を指す。アミノ酸を原料とするポリアミド樹脂の場合、「構造単位の分子量」は、アミノ酸の分子量から水分子1つ分の分子量を差し引いた値に等しい。ラクタムを原料とするポリアミド樹脂の場合、「構造単位の分子量」は、ラクタムの分子量に等しい。ジアミンとジカルボン酸を原料とするポリアミド樹脂の場合、「構造単位の分子量」は、ジカルボン酸の分子量とジアミンの分子量の和から水分子2つ分の分子量を差し引いた値を2で割った値に等しい。
ポリアミド樹脂のアミド基濃度は、原料であるアミノ酸やラクタム、ジアミン、ジカルボン酸に由来する構造単位の構造式を、通常の分析方法(例えば、NMR,FT-IR,GC-MS等の組み合わせ)により特定した後、その分子量を算出し、式(2)を用いて求めることができる。
理由は定かではないが、(a)ポリアミド樹脂のアミド基濃度が8.10mmol/g以下の場合、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の水酸基およびカルボキシル基と、(a)ポリアミド樹脂のアミド基との双極子-双極子相互作用による反応を抑制できる。このため、アミド基間における水素結合力を高く保つことができる。また、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の水酸基およびカルボキシル基と、(a)ポリアミド樹脂のアミノ末端基およびカルボキシル末端基との脱水縮合反応を促進させることができる。このため、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性を向上させることができると考えている。さらに、(a)ポリアミド樹脂のアミド基間における水素結合力を高く保持できることにより、(a)ポリアミド樹脂のアミド結合の分解を抑制し、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性が向上するものと考えている。
アミド基濃度が8.10mmol/g以下のポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロン410、ナイロン510、ナイロン610、ナイロン412、ナイロン512、ナイロン612、ナイロン106、ナイロン1010、ナイロン1012、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン5T/10T、ナイロン9T、ナイロン10T、ナイロン12Tなどを挙げることができる。これらの中でも、240℃~330℃の融点を有するポリアミド樹脂がより好ましい。アミド基濃度が8.10mmol/g以下であり、240℃~330℃の融点を有するポリアミド樹脂として、ナイロン410、ナイロン5T/10T、ナイロン9T、ナイロン10T、ナイロン12Tなどを挙げることができる。これらのポリアミド樹脂を、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性などの必要特性に応じて2種以上配合することも実用上好適である。
ポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、ポリアミド樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が1.5~5.0の範囲であることが好ましい。相対粘度が1.5以上であれば、得られる成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性をより向上させることができる。相対粘度は、2.0以上がより好ましい。一方、相対粘度が5.0以下であれば、流動性に優れるため、成形加工性に優れる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、特定の(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物を含有する。(a)ポリアミド樹脂のカルボキシル末端基とアミノ末端基とが、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物中の水酸基およびカルボキシル基とそれぞれ脱水縮合反応すると考えられるため、ポリアミド樹脂との相溶性に優れる。とりわけ(a)ポリアミド樹脂中のアミノ基と、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物中のカルボキシル基との反応性が高いため、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、カルボキシル基を有さない水酸基含有化合物よりも(a)ポリアミド樹脂との相溶性に優れる。
本発明の実施形態で使用される(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物とは、分岐度(DB)が0.05~0.35であることを特徴とする。分岐度は、化合物中の分岐の程度を表す数値である。直鎖状の化合物が分岐度0であり、完全に分岐したデンドリマーは分岐度が1である。分岐度の値が大きいほど、ポリアミド樹脂組成物中に架橋構造を導入できるため、成形品の機械特性を向上させることができる。(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の分岐度が0.05未満であると、ポリアミド樹脂組成物中の架橋構造が不十分となり、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性が低下する。(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の分岐度は、0.10以上が好ましい。一方、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の分岐度が0.35を超えると、ポリアミド樹脂組成物中の架橋構造が過剰になり、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性が低下する。(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の分岐度は、0.31以下が好ましい。
分岐度は式(3)により定義される。
分岐度=(D+T)/(D+T+L) (3)
式(3)中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す。なお、上記D、T、Lは13C-NMRにより測定したピークシフトの積分値から算出することができる。Dは第3級または第4級炭素原子に由来し、Tは第1級炭素原子の中で、メチル基であるものに由来し、Lは第1級または第2級炭素原子の中で、Tを除くものに由来する。
カルボキシル基は、ポリアミド樹脂組成物とする前の原料としての(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物中に含まれていることを条件とする。配合原料としての(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、アニーリング処理などによってカルボキシル基を生成したものであってもよい。例えば、水酸基を有する化合物をアニーリング処理することにより、水酸基は、酸化し、アルデヒド基を経由してカルボキシル基に変換される。
一方、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の代わりに、水酸基を有し、カルボキシル基を有しない化合物を、ポリアミド樹脂に配合してなるポリアミド樹脂組成物を、アニーリング処理した場合、アニーリング処理の初期段階において、成形品表層に水酸基を有する化合物がブリードアウトする。このため、水酸基を有し、カルボキシル基を有しない化合物を、ポリアミド樹脂に配合してなるポリアミド樹脂組成物は、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性、表面外観が低下する。
水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、13C-NMRスペクトルにおける総ピーク面積に対するカルボキシル基由来ピーク面積の割合(百分率)と、1H-NMRスペクトルにおける総ピーク面積に対する水酸基由来ピーク面積の割合(百分率)との比(COOH/OH)(以下、ピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)という)が、0.01~5.0であることを特徴とする。
ピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)は、ポリアミド樹脂との反応性、相溶性を示す指標である。この値が0.01以上の水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、ポリアミド樹脂との相溶性に優れ、ポリアミド樹脂組成物の分子鎖パッキング性および結晶性が向上し、かつ適度に架橋構造を形成することができる。一方、この値が5.0以下の水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、過剰な架橋構造の形成による脆化や、強酸雰囲気下による(a)ポリアミド樹脂の分解を抑制することができる。かかるピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)を0.01~5.0とすることにより、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観をより向上させることができる。ピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)のより好ましい範囲は、0.01~2.5である。
水酸基およびカルボキシル基含有化合物の13C-NMRスペクトルおよび1H-NMRスペクトルは、例えば、以下の方法により測定することができる。水酸基およびカルボキシル基含有化合物を、重水素化ジメチルスルホキシドなどの溶媒に溶解した後、核磁気共鳴装置によりスペクトル測定を行う。スペクトル測定に用いるサンプル量および溶媒量は、特に限定されないが、サンプル量は0.05gとし、溶媒量は0.75mlとすることが一般的である。
次に、得られたスペクトルから、ピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)を算出する。一例として、3,5-ジヒドロキシ安息香酸の13C-NMRスペクトルを図1に、1H-NMRスペクトルを図2に示す。
図1に示す13C-NMRスペクトルから、167ppm付近に現れるカルボキシル基由来ピークの面積を求めた後、総ピーク面積に対する割合(百分率)を算出する。また、図2に示す1H-NMRスペクトルより、9.6ppm付近に現れる水酸基由来ピークの面積を求めた後、総ピーク面積に対する割合(百分率)を算出する。ここで、図2における2.5ppmのピークは溶媒ピークのため、総ピーク面積には含めない。
(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、水酸基およびカルボキシル基を有し、ピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)が0.01~5.0であり、かつ分岐度が0.05~0.35であれば特に限定されない。(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、低分子化合物であってもよいし、重合体であってもよい。
ピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)が0.01~5.0であり、かつ分岐度が0.05~0.35である(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の具体例としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、酒石酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、ジヒドロキシメチル酢酸、3、4-ジヒドロキシフェニル酢酸、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、2,5-ジヒドロキシフェニル酢酸、ジメチロール吉草酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシル基含有ポリエステルポリオール類、多価カルボン酸と多価アルコールからなるエステル化合物や、水酸基を有する化合物の水酸基をカルボキシル基に変性したものなどを挙げることができ、2つ以上の水酸基および1つ以上のカルボキシル基を有する化合物を挙げることができる。
カルボキシル基含有ポリエステルポリオール類は、例えば、ジメチロールアルカン酸を用いたラクトン類の開環重合により得ることができる。この方法によって得られるカルボキシル基含有ポリエステルポリオール類の分岐度やピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)は、ジメチロールアルカン酸の配合量を適宜変えることで調整可能である。
多価カルボン酸と多価アルコールからなるエステル化合物としては、例えば、ジオールとジカルボン酸と、3価以上の多価アルコールまたは3価以上の多価カルボン酸とを反応させて得られる、分岐構造を有するポリエステルが挙げられる。原料となる酸成分とアルコール成分との混合比を適宜変えることにより、ピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)を調整可能である。また、3価以上の多価アルコールまたは3価以上の多価カルボン酸の配合量を適宜変えることにより、分岐度を調整可能である。
水酸基を有する化合物の水酸基をカルボキシル基に変性させる方法としては、例えば、(i)水酸基を有する化合物を、アニーリング処理して変性させる方法や、(ii)常圧、窒素雰囲気下において、水酸基を有する分岐状化合物に無水トリメリット酸などの酸無水物を付加することにより変性させる方法などが挙げられる。また、水酸基を有する化合物の水酸基をカルボキシル基に変性させる方法としては、(iii)アルカリ条件下において水酸基を有する分岐状化合物を、モノクロロアルキルカルボン酸ナトリウムと反応させることにより、水酸基をナトリウム塩型のカルボキシル基に変性させた後、塩酸、硝酸などの無機酸で処理し、その後、水洗処理を行うことにより、水酸基をカルボキシル基に変性させる方法が挙げられる。
なお、アニーリング処理して水酸基をカルボキシル基に変性する場合のアニーリング処理条件は、カルボキシル基を生成する条件であれば特に制限はないが、カルボキシル基生成をより効果的に進めるために、アニーリング処理温度は140℃以上が好ましい。一方、アニーリング処理を行う化合物の熱劣化を抑制する観点から、アニーリング処理温度は250℃以下が好ましい。また、カルボキシル基生成をより効果的に進めるため、アニーリング処理時間は10時間以上が好ましい。一方、カルボキシル基生成を適度に抑える観点から、アニーリング処理時間は10000時間以下が好ましい。なお、アニーリング処理や酸変性処理により水酸基をカルボキシル基に変性させる場合、分岐度の変化は小さいため、水酸基を有する化合物の分岐度は0.05~0.35であることが好ましい。
また、アニーリング処理や酸変性処理によりカルボキシル基を形成する、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の前駆体の好ましい例としては、3個以上の水酸基を有する多価アルコール類を挙げることができる。3個以上の水酸基を有する多価アルコール類としては、例えば、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、メチルグルコシド、ソルビトール、グルコース、マンニトール、スクロース、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2-メチルプロパントリオール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、2-メチル-1,2,4-ブタントリオールなどを挙げることができる。
また、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の前駆体としては、繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物も挙げることができ、例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、メチレン結合、ビニル結合、イミン結合、シロキサン結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、ケイ素-ケイ素結合、カーボネート結合、スルホニル結合、イミド結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物が挙げられ、これらの結合を2種以上含む繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物も挙げることができる。(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の前駆体として、より好ましくは、エステル結合、エーテル結合および/またはアミド結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物である。
エステル結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物は、例えば、水酸基を1個以上有する化合物に、カルボキシル基に隣接する炭素原子が飽和炭素原子であり、かつ該炭素原子上の水素原子がすべて置換され、かつ水酸基を2個以上有するモノカルボン酸を反応させることにより得ることができる。
エーテル結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物は、例えば、水酸基を1個以上有する化合物と、水酸基を1個以上有する環状エーテル化合物との開環重合により得ることができる。エステル結合とアミド結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物は、例えば、アミノジオールと環状酸無水物との重縮合反応により得ることができる。アミノ基を含むエーテル結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物は、例えば、トリアルカノールアミンの分子間縮合により得ることができる。カーボネート結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物は、例えば、トリスフェノールのアリールカーボネート誘導体を用いて重縮合反応を行うことにより得ることができる。
(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の中でも、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、3、4-ジヒドロキシフェニル酢酸、2,5-ジヒドロキシフェニル酢酸、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の前駆体の中でも、トリエタノールアミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2-メチルプロパントリオール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、エステル結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物(ポリエステルポリオール)、エーテル結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物(ポリエーテルポリオール)、エステル結合とアミド結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物(ポリエステルアミドポリオール)、アミノ基を含むエーテル結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基含有化合物(ポリエーテルアミンポリオール)が好ましい。
(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、下記一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物であることが好ましい。ここで、R1~R6は、それぞれ独立にCH2OH、COOHまたはCH2CH3であり、nは0~4の範囲を表す。n=0の場合、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、R1―C(R2)(R3)―R5で表される。
一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物を配合した場合、(a)ポリアミド樹脂との相溶性に優れ、得られる成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性をより向上させることができる。その理由としては、分岐度を好ましい範囲にすることができる点と、芳香族環を含まないために立体障害が小さい構造である点が考えられる。一般式におけるnは1~4の範囲が好ましい。nが1以上の場合、(a)ポリアミド樹脂との相溶性がさらに優れ、得られる成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性をさらに向上させることができる。その理由としては、一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物の分子運動性が向上する点が考えられる。水酸基およびカルボキシル基含有化合物の構造は、通常の分析方法(例えば、NMR,FT-IR,GC-MS等の組み合わせ)により特定することができる。
一般式(1)で表される化合物および/またはその縮合物の代表的なものとしては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸や、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなどの水酸基の一部をカルボキシル基に変換した化合物などが挙げられる。
(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の分子量は、特に制限はないが、2800以下であることが好ましい。分子量が2800以下の水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、ポリアミド樹脂組成物中における分散性に優れることから、ポリアミド樹脂との反応性に優れ、得られる成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性をより向上させることができる。
分子量の算出方法としては、通常の分析方法(例えば、NMR,FT-IR,GC-MS等の組み合わせ)により化合物の構造式を特定し、その分子量を算出することにより求めることができる。また、縮合反応によって得られる化合物の場合には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、数平均分子量を算出し、その値を本発明の実施形態で言う分子量とする。GPCによる測定方法としては、化合物が溶解する溶媒(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール)を移動相として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を標準物質として用いる。カラムは溶媒に合わせて選択する。例えば、溶媒にヘキサフルオロイソプロパノールを使用した場合、カラムは島津ジーエルシー株式会社製の「shodex GPC HPIP-806M」を用いる。検出器としては、示差屈折率計を用いて測定を行うことができる。
また、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、水酸基およびカルボキシル基とともに他の官能基を有していてもよく、水酸基の一部が他の官能基で置換されていてもよい。他の官能基としては、例えば、アミノ基、アルデヒド基、スルホ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基、シリルエーテル基などが挙げられる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の含有量は、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して0.1~10重量部である。(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の含有量が0.1重量部未満の場合、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性が低下する。(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の含有量は、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して0.5重量部以上が好ましく、2.0重量部以上がより好ましい。
一方、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の含有量が、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して10重量部を越える場合、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の成形品表層へのブリードアウトが生じやすいため、表面外観が低下する。また、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の含有量が、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して10重量部を越える場合、ポリアミド樹脂の可塑化や、分解が促進されるため、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性が低下する。(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の含有量は、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して7.5重量部以下が好ましく、6.0重量部以下がより好ましい。
水酸基含有化合物が流動性等の成形加工性や耐熱老化性に向上効果があることは公知であるが、さらに、(a)ポリアミド樹脂との反応性により優れるカルボキシル基を含有する化合物を用いることにより、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、水酸基含有化合物と比較して(a)ポリアミド樹脂との相溶性に優れ、ポリアミド樹脂組成物中に適度に架橋構造を形成することができると考えられる。このため、本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、可塑化を抑制しつつ、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観に優れる成形品を得られるのではないかと考えている。また、分岐度が0.05~0.35である(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物を使用することにより、より好ましい範囲で架橋構造を形成できるため、さらに耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性に優れる成形品を得られるのではないかと考えている。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、さらに(c)銅化合物を含有することができる。(c)銅化合物は、ポリアミド樹脂のアミド基に配位することに加え、水酸基およびカルボキシル基含有化合物の水酸基や水酸化物イオンとも配位結合すると考えられる。このため、(c)銅化合物は、ポリアミド樹脂と水酸基およびカルボキシル基含有化合物の相溶性を高める効果があると考えられる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、さらに、カリウム化合物を含有することができる。カリウム化合物は、銅の遊離や析出を抑制するため、銅化合物と水酸基およびカルボキシル基含有化合物およびポリアミド樹脂との反応を促進する効果があると考えられる。
銅化合物としては、例えば、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅、酢酸銅、銅アセチルアセトナート、炭酸銅、ほうふっ化銅、クエン酸銅、水酸化銅、硝酸銅、硫酸銅、蓚酸銅などが挙げられる。銅化合物として、これらを2種以上含有してもよい。これら銅化合物の中でも、工業的に入手できるものが好ましく、ハロゲン化銅が好適である。ハロゲン化銅としては、例えば、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅などが挙げられる。銅化合物として、より好ましくはヨウ化銅である。
カリウム化合物としては、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、フッ化カリウム、酢酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、硝酸カリウムなどが挙げられる。カリウム化合物として、これらを2種以上含有してもよい。これらカリウム化合物の中でも、ヨウ化カリウムが好ましい。カリウム化合物を含むことにより、成形品の表面外観、耐候性および耐金型腐食性を向上させることができる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量(重量基準)は、25~200ppmであることが好ましい。なお、銅元素の含有量は、原子吸光分光法で決定される。銅元素の含有量を25ppm以上とすることにより、ポリアミド樹脂と水酸基およびカルボキシル基含有化合物の相溶性が向上し、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性をより向上させることができる。銅元素の含有量は、80ppm以上が好ましい。
一方、銅元素の含有量を200ppm以下とすることにより、銅化合物の析出や遊離による着色を抑制できるため、成形品の表面外観をより向上させることができる。また、ポリアミド樹脂と銅の過剰な配位結合に起因するアミド基の水素結合力の低下を抑制し、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性をより向上させることができる。銅元素の含有は、190ppm以下が好ましい。なお、ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量は、銅化合物の配合量を適宜調節することにより前述の所望の範囲にすることができる。
ポリアミド樹脂組成物中の銅元素の含有量は、以下の方法により求めることができる。まず、ポリアミド樹脂組成物のペレットを減圧乾燥する。そのペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解した後、分解液を希釈する。その希釈液を原子吸光分析(検量線法)することにより、銅含有量を求めることができる。
ポリアミド樹脂組成物中におけるカリウム元素の含有量に対する銅元素の含有量の比Cu/Kは、0.21~0.43であることが好ましい。Cu/Kは、銅の析出や遊離の抑制の程度を表す指標であり、この値が小さいほど、銅の析出や遊離を抑制して、銅化合物と水酸基およびカルボキシル基含有化合物およびポリアミド樹脂との反応を促進することができる。Cu/Kを0.43以下とすることにより、銅の析出や遊離を抑制し、成形品の表面外観をより向上させることができる。また、Cu/Kを0.43以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物との相溶性も向上することから、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性をより向上させることができる。
一方、Cu/Kを0.21以上とすることにより、カリウムを含む化合物の分散性を向上させることができる。Cu/Kを0.21以上とすることにより、特に、潮解性のヨウ化カリウムであっても塊状となりにくい。このため、銅の析出や遊離の抑制効果が向上することから、銅化合物と水酸基およびカルボキシル基含有化合物およびポリアミド樹脂との反応が十分に促進され、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観がより向上する。ここで、ポリアミド樹脂組成物中のカリウム元素含有量は、上記の銅含有量と同様の方法にて求めることができる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、さらに(d)充填材を含有することができる。充填材としては、有機充填材、無機充填材のいずれを用いてもよいし、繊維状充填材、非繊維状充填材のいずれを用いてもよく、繊維状充填材が好ましい。
繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)系またはピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化珪素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカー、窒化珪素ウィスカーなどの繊維状またはウィスカー状充填材が挙げられる。
繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維が特に好ましい。ガラス繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものであれば特に限定はなく、例えば、ミルドファイバーや、長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランドなどから選択して用いることができる。また、ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂により被膜あるいは集束されていてもよい。さらに、ガラス繊維の断面は、円形、扁平状のひょうたん型、まゆ型、長円型、楕円型、矩形またはこれらの類似品など限定されるものではない。しかし、ガラス繊維配合ポリアミド樹脂組成物において生じやすい成形品の特有の反りを低減する観点から、扁平状の繊維は、長径/短径の比が1.5~10のものが好ましい。長径/短径の比は、2.0以上のものがさらに好ましい。一方、長径/短径の比は、6.0以下のものがさらに好ましい。長径/短径の比が1.5未満では断面を扁平状にした効果が少なく、10を超えるものはガラス繊維自体の製造が困難である。
非繊維状充填材としては、例えば、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、珪酸カルシウムなどの非膨潤性珪酸塩、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母の膨潤性雲母に代表される膨潤性層状珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、珪藻土、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化アンチモンなどの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドロマイト、ハイドロタルサイトなどの金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウムなどの金属水酸化物、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、セラミックビーズ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化珪素、燐酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛などが挙げられる。上記の膨潤性層状珪酸塩は、層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換されていてもよく、有機オニウムイオンとしては、例えば、アンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられる。また、これら充填材を2種以上含有してもよい。
なお、上記充填材は、その表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)などにより処理されていてもよい。カップリング剤などにより処理することにより、成形品の機械的強度や表面外観をより向上させることができる。例えば、常法に従って予め充填材をカップリング剤により表面処理し、ついでポリアミド樹脂と溶融混練する方法が好ましく用いられる。しかし、予め充填材の表面処理を行わずに、充填材とポリアミド樹脂を溶融混練する際に、カップリング剤を添加するインテグラブルブレンド法を用いてもよい。カップリング剤の処理量は、充填材100重量部に対して0.05重量部以上が好ましく、0.5重量部以上がより好ましい。一方、カップリング剤の処理量は、充填材100重量部に対して10重量部以下が好ましく、3重量部以下がより好ましい。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(d)充填材の含有量は、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、1~150重量部が好ましい。(d)充填材の含有量が1重量部以上であれば、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性をより向上させることができる。(d)充填材の含有量は、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、10重量部以上がより好ましく、20重量部以上がさらに好ましい。一方、(d)充填材の含有量が150重量部以下であれば、成形品表面への充填材の浮きを抑制し、表面外観に優れる成形品が得られる。(d)充填材の含有量は、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、100重量部以下がより好ましく、80重量部以下がさらに好ましい。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアミド樹脂以外の樹脂や、目的に応じて各種添加剤を含有することが可能である。
ポリアミド樹脂以外の樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。これら樹脂を配合する場合、その含有量は、ポリアミド樹脂の特徴を十分に活かすため、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましい。
また、各種添加剤の具体例としては、銅化合物以外の熱安定剤、イソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などを挙げることができる。これら添加剤を含有する場合、その含有量は、ポリアミド樹脂の特徴を十分に活かすため、(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して10重量部以下が好ましく、1重量部以下がより好ましい。
(e)銅化合物以外の熱安定剤としては、フェノール系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物、アミン系化合物などが挙げられる。(e)銅化合物以外の熱安定剤としては、これらを2種以上用いてもよい。
フェノール系化合物としては、ヒンダードフェノール系化合物が好ましく用いられ、N、N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナミド)、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが好ましく用いられる。
リン系化合物としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、ビス(2,4-ジ-クミルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビスフェニレンホスファイト、ジ-ステアリルペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、トリフェニルホスファイト、3,5-ジ-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスフォネートジエチルエステルなどが挙げられる。リン系化合物の中でも、ポリアミド樹脂のコンパウンド中に耐熱材の揮発や分解を少なくするために、融点が高いものが好ましく用いられる。
硫黄系化合物としては、有機チオ酸系化合物、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸系化合物、チオウレア系化合物等が挙げられる。これら硫黄系化合物の中でも、メルカプトベンゾイミダゾール系化合物および有機チオ酸系化合物が好ましい。特に、チオエーテル構造を有するチオエーテル系化合物は、酸化された物質から酸素を受け取って還元するため、熱安定剤として好適に使用することができる。チオエーテル系化合物としては、具体的には、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトメチルベンゾイミダゾール、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)がより好ましく、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)がより好ましい。硫黄系化合物の分子量は、通常200以上、好ましくは500以上であり、その上限は通常3,000である。
アミン系化合物としては、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物およびジナフチルアミン骨格を有する化合物が好ましく、ジフェニルアミン骨格を有する化合物、フェニルナフチルアミン骨格を有する化合物がさらに好ましい。これらアミン系化合物の中でも、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンおよびN,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミンがより好ましく、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミンおよび4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが特に好ましい。
硫黄系化合物またはアミン系化合物の組み合わせとしては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)と4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンの組み合わせがより好ましい。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はないが、溶融状態における製造や溶液状態における製造等が採用でき、反応性向上の点から、溶融状態における製造が好ましい。溶融状態における製造については、押出機による溶融混練やニーダーによる溶融混練等が採用できるが、生産性の点から、連続的に製造可能な押出機による溶融混練が好ましい。押出機による溶融混練については、単軸押出機、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機、二軸単軸複合押出機等の押出機を1台以上使用する方法があるが、混練性、反応性、生産性の向上の点から、二軸押出機、四軸押出機等の多軸押出機を使用する方法が好ましく、二軸押出機を用いた溶融混練による方法が最も好ましい。
二軸押出機を使用して溶融混練する場合、二軸押出機への原料供給方法についても特に制限はない。しかし、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、ポリアミド樹脂の融点よりも高い温度域において、ポリアミド樹脂の分解を促進しやすい。このため、原料供給方法としては、水酸基およびカルボキシル基含有化合物をポリアミド樹脂供給位置よりも下流側において供給し、(a)ポリアミド樹脂と(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の混練時間を短くする方法が好ましい。ここで、二軸押出機の原料が供給される側を上流、溶融樹脂が吐出される側を下流と定義する。
また、(c)銅化合物は、ポリアミド樹脂のアミド基に配位してアミド基を保護する役割を果たすとともに、ポリアミド樹脂と水酸基およびカルボキシル基含有化合物の相溶化剤としての役割も果たすと考えられる。このため、(c)銅化合物を配合する場合、(c)銅化合物は、ポリアミド樹脂とともに二軸押出機に供給し、ポリアミド樹脂と銅化合物を十分に反応させることが好ましい。
二軸押出機の全スクリュー長さLとスクリュー径Dの比(L/D)は、25以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。L/Dが25以上であると、ポリアミド樹脂を十分に混練した後に、水酸基およびカルボキシル基含有化合物を供給することが容易になる。また、(c)銅化合物を配合する場合、ポリアミド樹脂と銅化合物とを十分に混練した後に、水酸基およびカルボキシル基含有化合物を供給することが容易になる。その結果、ポリアミド樹脂の分解を抑制でき、また、ポリアミド樹脂と(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の相溶性が増すと考えられるため、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性をより向上させることができる。
本発明の実施形態においては、少なくとも(a)ポリアミド樹脂および必要により(c)銅化合物を、スクリュー長さの1/2より上流側から二軸押出機に供給して溶融混練することが好ましく、スクリューセグメントの上流側の端部から供給することがより好ましい。ここでいうスクリュー長とは、スクリュー根本の(a)ポリアミド樹脂が供給される位置(フィード口)にあるスクリューセグメントの上流側の端部から、スクリュー先端部までの長さである。スクリューセグメントの上流側の端部とは、押出機に連結するスクリューセグメントのうち、最も上流側の端に位置するスクリューピースの位置のことを示す。
(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物は、スクリュー長さの1/2より下流側から二軸押出機に供給して溶融混練することが好ましい。水酸基およびカルボキシル基含有化合物をスクリュー長の1/2より下流側から供給することにより、ポリアミド樹脂と必要により銅化合物が十分に混練された状態とした後に、水酸基およびカルボキシル基含有化合物を供給することが容易になる。その結果、ポリアミド樹脂の分解を抑制でき、また、ポリアミド樹脂と(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の相溶性が増すと考えられるため、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観をより向上させることができる。
二軸押出機を使用して本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物を製造する場合、混練性および反応性の向上の点から、複数のフルフライトゾーンおよび複数のニーディングゾーンを有する二軸押出機を用いることが好ましい。フルフライトゾーンは1個以上のフルフライトより構成される。ニーディングゾーンは1個以上のニーディングディスクより構成される。
さらに、複数ヶ所のニーディングゾーンの樹脂圧力のうち、最大となる樹脂圧力をPkmax(MPa)とし、複数ヶ所のフルフライトゾーンの樹脂圧力のうち、最小となる樹脂圧力をPfmin(MPa)とすると、
Pkmax≧Pfmin+0.3
となる条件において溶融混練することが好ましく、
Pkmax≧Pfmin+0.5
となる条件において溶融混練することがより好ましい。なお、ニーディングゾーンおよびフルフライトゾーンの樹脂圧力とは、各々のゾーンに設置された樹脂圧力計の示す樹脂圧力を指す。
Pkmax≧Pfmin+0.3
となる条件において溶融混練することが好ましく、
Pkmax≧Pfmin+0.5
となる条件において溶融混練することがより好ましい。なお、ニーディングゾーンおよびフルフライトゾーンの樹脂圧力とは、各々のゾーンに設置された樹脂圧力計の示す樹脂圧力を指す。
ニーディングゾーンは、フルフライトゾーンに比べて、溶融樹脂の混練性および反応性に優れる。ニーディングゾーンに溶融樹脂を充満することにより、混練性および反応性が飛躍的に向上する。溶融樹脂の充満状態を示す一つの指標として、樹脂圧力の値があり、樹脂圧力が大きいほど、溶融樹脂が充満していることを表す一つの目安となる。すなわち二軸押出機を使用する場合、ニーディングゾーンの樹脂圧力を、フルフライトゾーンの樹脂圧力より、所定の範囲で高めることにより、反応を効果的に促進させることが可能となる。この結果、ポリアミド樹脂と(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の相溶性が増すと考えられ、成形品の耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観をより向上させることができる。
ニーディングゾーンにおける樹脂圧力を高める方法として、特に制限はないが、例えば、ニーディングゾーンの間やニーディングゾーンの下流側に、溶融樹脂を上流側に押し戻す効果のある逆スクリューゾーンや、溶融樹脂を溜める効果のあるシールリングゾーン等を導入する方法が好ましく使用できる。逆スクリューゾーンやシールリングゾーンは、1個以上の逆スクリューや1個以上のシールリングから形成され、それらを組み合わせることも可能である。
(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の供給位置の上流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn1とした場合、Ln1/Lは0.02以上であることが好ましく、0.03以上であることがさらに好ましい。Ln1/Lを0.02以上とすることにより、ポリアミド樹脂の反応性を高めることができる。一方、Ln1/Lは0.40以下であることが好ましく、0.20以下であることがさらに好ましい。Ln1/Lを0.40以下とすることにより、剪断発熱を適度に抑えて樹脂の熱劣化を抑制することができる。ポリアミド樹脂の溶融温度に特に制限はないが、ポリアミド樹脂の熱劣化による分子量低下を抑制するため、340℃以下が好ましい。
(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の供給位置の下流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn2とした場合、Ln2/Lは0.02~0.30であることが好ましい。Ln2/Lを0.02以上とすることにより、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の反応性をより高めることができる。Ln2/Lは0.04以上がより好ましい。一方、Ln2/Lを0.30以下とすることにより、ポリアミド樹脂の分解をより抑制することができる。Ln2/Lは0.16以下がより好ましい。
ポリアミド樹脂組成物は、通常公知の方法で成形することができ、ポリアミド樹脂組成物からシートや、フィルムなどの各種成形品を得ることができる。成形方法としては、例えば、射出成形、射出圧縮成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、プレス成形などが挙げられる。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、その優れた特性を活かし、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観が要求される自動車エンジン周辺部品、自動車アンダーフード部品、自動車ギア部品、自動車内装部品、自動車外装部品、吸排気系部品、エンジン冷却水系部品や、自動車電装部品、電気、電子部品用途に特に好ましく用いられる。具体的には、本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、エンジンカバー、エアインテークパイプ、タイミングベルトカバー、インテークマニホールド、フィラーキャップ、スロットルボディ、クーリングファンなどの自動車エンジン周辺部品、クーリングファン、ラジエータータンクのトップおよびベース、シリンダーヘッドカバー、オイルパン、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、廃ガス系統部品などの自動車アンダーフード部品、ギア、アクチュエーター、ベアリングリテーナー、ベアリングケージ、チェーンガイド、チェーンテンショナなどの自動車ギア部品、シフトレバーブラケット、ステアリングロックブラケット、キーシリンダー、ドアインナーハンドル、ドアハンドルカウル、室内ミラーブラケット、エアコンスイッチ、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、トリムなどの自動車内装部品、フロントフェンダー、リアフェンダー、フューエルリッド、ドアパネル、シリンダーヘッドカバー、ドアミラーステイ、テールゲートパネル、ライセンスガーニッシュ、ルーフレール、エンジンマウントブラケット、リアガーニッシュ、リアスポイラー、トランクリッド、ロッカーモール、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパーなどの自動車外装部品、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、ターボチャージャ、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、及びスロットルボディなどの吸排気系部品、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オイルネーター、及びデリバリーパイプなどのエンジン冷却水系部品、コネクタやワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、コンビネーションスイッチなどの自動車電装部品、SMT対応のコネクタ、ソケット、カードコネクタ、ジャック、電源部品、スイッチ、センサー、コンデンサー座板、リレー、抵抗器、ヒューズホルダー、コイルボビン、ICやLED対応ハウジング、リフレクタ、SiパワーモジュールやSiCパワーモジュールなどの電気、電子部品に好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態を更に具体的に説明する。特性評価は下記の方法に従って行った。
[ポリアミド樹脂の融点]
ポリアミド樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツル製 ロボットDSC(示差走査熱量計) RDC220を用い、次の条件で(a)ポリアミド樹脂の融点を測定した。ポリアミド樹脂をポリアミド樹脂の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃まで降温し、これに続いて、30℃で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。
ポリアミド樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツル製 ロボットDSC(示差走査熱量計) RDC220を用い、次の条件で(a)ポリアミド樹脂の融点を測定した。ポリアミド樹脂をポリアミド樹脂の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、20℃/分の降温速度で30℃まで降温し、これに続いて、30℃で3分間保持した後、20℃/分の昇温速度で融点+40℃まで昇温したときに観測される吸熱ピークの温度(融点)を求めた。
[ポリアミド樹脂のガラス転移温度]
ポリアミド樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツル製 ロボットDSC(示差走査熱量計) RDC220を用い、次の条件で(a)ポリアミド樹脂のガラス転移温度を測定した。ポリアミド樹脂をポリアミド樹脂の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、液体窒素にて150℃/分の降温速度で急冷した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる中間点ガラス転移温度を求めた。中間点ガラス転移温度とは、JIS K7121-1987に定められている方法に準拠して、低温側ベースラインと高温側ベースラインのそれぞれ延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度である。
ポリアミド樹脂を約5mg採取し、窒素雰囲気下、セイコーインスツル製 ロボットDSC(示差走査熱量計) RDC220を用い、次の条件で(a)ポリアミド樹脂のガラス転移温度を測定した。ポリアミド樹脂をポリアミド樹脂の融点+40℃に昇温して溶融状態とした後、液体窒素にて150℃/分の降温速度で急冷した後、20℃/分の昇温速度で昇温した場合に現れる中間点ガラス転移温度を求めた。中間点ガラス転移温度とは、JIS K7121-1987に定められている方法に準拠して、低温側ベースラインと高温側ベースラインのそれぞれ延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度である。
[ポリアミド樹脂の相対粘度]
ポリアミド樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸中、25℃でオストワルド式粘度計を用いて相対粘度(ηr)を測定した。
ポリアミド樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸中、25℃でオストワルド式粘度計を用いて相対粘度(ηr)を測定した。
[ポリアミド樹脂のアミド基濃度]
アミド基濃度は、式(2)により算出した。
アミド基濃度(mmol/g)=(1/構造単位の分子量) (2)
既知の構造を有するポリアミド樹脂についての構造単位の分子量は、構造式から計算により算出した。
アミド基濃度は、式(2)により算出した。
アミド基濃度(mmol/g)=(1/構造単位の分子量) (2)
既知の構造を有するポリアミド樹脂についての構造単位の分子量は、構造式から計算により算出した。
[ポリアミド樹脂組成物中の銅含有量およびカリウム含有量]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃(実施例24,25,27,29は120℃)で12時間減圧乾燥した。そのペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解した後、分解液を希釈した。その希釈液を原子吸光分析(検量線法)することにより、銅含有量およびカリウム含有量を求めた。原子吸光分析計は島津製作所社製AA-6300を使用した。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃(実施例24,25,27,29は120℃)で12時間減圧乾燥した。そのペレットを550℃の電気炉で24時間灰化させ、その灰化物に濃硫酸を加えて加熱して湿式分解した後、分解液を希釈した。その希釈液を原子吸光分析(検量線法)することにより、銅含有量およびカリウム含有量を求めた。原子吸光分析計は島津製作所社製AA-6300を使用した。
[水酸基およびカルボキシル基含有化合物のピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)]
(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物を、下記条件で1H-NMR、13C-NMR分析することにより、ピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)を算出した。各分析条件は下記の通りである。
(1)13C-NMR
装置:日本電子製核磁気共鳴装置(JNM-AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(ただし実施例6、11は重水を使用)
測定サンプル量/溶媒量:0.05g/0.75ml
観測周波数:OBFRQ100.40MHz,OBSET125.00KHz,OBFIN10500.00Hz
積算回数:64回
(2)1H-NMR
装置:日本電子製核磁気共鳴装置(JNM-AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(ただし実施例6、11は重水を使用)
測定サンプル量/溶媒量:0.05g/0.75ml
観測周波数:OBFRQ399.65MHz,OBSET124.00KHz,OBFIN10500.00Hz
積算回数:16回
(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物を、下記条件で1H-NMR、13C-NMR分析することにより、ピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)を算出した。各分析条件は下記の通りである。
(1)13C-NMR
装置:日本電子製核磁気共鳴装置(JNM-AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(ただし実施例6、11は重水を使用)
測定サンプル量/溶媒量:0.05g/0.75ml
観測周波数:OBFRQ100.40MHz,OBSET125.00KHz,OBFIN10500.00Hz
積算回数:64回
(2)1H-NMR
装置:日本電子製核磁気共鳴装置(JNM-AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(ただし実施例6、11は重水を使用)
測定サンプル量/溶媒量:0.05g/0.75ml
観測周波数:OBFRQ399.65MHz,OBSET124.00KHz,OBFIN10500.00Hz
積算回数:16回
得られた13C-NMRスペクトルにおいて、カルボキシル基由来ピークの面積を求めた後、総ピーク面積に対するカルボキシル基由来ピーク面積の割合(百分率)を算出した。また、得られた1H-NMRスペクトルにおいて、水酸基由来ピークの面積を求めた後、総ピーク面積に対する水酸基由来ピーク面積の割合(百分率)を算出した。ただし、2.5ppmのピークは溶媒ピークのため、総ピーク面積には含めない。算出した数値に基づき、水酸基およびカルボキシル基含有化合物のピーク面積の割合(百分率)の比(COOH/OH)を求めた。なお、ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。
[水酸基およびカルボキシル基含有化合物の分岐度]
(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物を、下記条件で13C-NMR分析した後、式(3)を用いて分岐度(DB)を算出した。分岐度は式(3)により定義される。
(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物を、下記条件で13C-NMR分析した後、式(3)を用いて分岐度(DB)を算出した。分岐度は式(3)により定義される。
分岐度=(D+T)/(D+T+L) (3)
式(3)中、Dはデンドリックユニットの数、Lは線状ユニットの数、Tは末端ユニットの数を表す。なお、上記D、T、Lは13C-NMRにより測定したピーク面積から算出することができ、Dは第3級または第4級炭素原子に由来し、Tは第1級炭素原子の中で、メチル基であるものに由来し、Lは第1級または第2級炭素原子の中で、Tを除くものに由来する。なお、ピーク面積は、NMR装置付属の解析ソフトを用い、ベースラインとピークで囲まれた部分の面積を積分することにより算出した。
例えば、図1に示す3,5-ジヒドロキシ安息香酸の場合、Dはカルボキシル基と結合するベンゼン環の炭素原子に由来する132ppm付近のピークの面積値を表し、Tに由来するピークはなく、Lは、D以外の炭素原子全てであり、167ppmと158ppmと108ppmと107ppmのピーク面積の合計で表す。測定条件は下記の通りである。
(1)13C-NMR
装置:日本電子製核磁気共鳴装置(JNM-AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(ただし実施例6、11は重水を使用)
測定サンプル量/溶媒量:0.05g/0.75ml
観測周波数:OBFRQ100.40MHz,OBSET125.00KHz,OBFIN10500.00Hz
積算回数:64回
(1)13C-NMR
装置:日本電子製核磁気共鳴装置(JNM-AL400)
溶媒:重水素化ジメチルスルホキシド(ただし実施例6、11は重水を使用)
測定サンプル量/溶媒量:0.05g/0.75ml
観測周波数:OBFRQ100.40MHz,OBSET125.00KHz,OBFIN10500.00Hz
積算回数:64回
[耐摩耗性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃(実施例24,25,27,29は120℃)で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:(a)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃(実施例24は150℃、実施例25は120℃、実施例27は160℃、実施例29は140℃)の条件で射出成形することにより、30mm×30mm×3mm厚の角板を得た。ORIENTEC製鈴木式摩擦・摩耗試験機にて下記条件で動摩擦係数を測定した。測定は5回行い、その平均値を求めた。動摩擦係数が小さいほど、耐摩耗性に優れている。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃(実施例24,25,27,29は120℃)で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:(a)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃(実施例24は150℃、実施例25は120℃、実施例27は160℃、実施例29は140℃)の条件で射出成形することにより、30mm×30mm×3mm厚の角板を得た。ORIENTEC製鈴木式摩擦・摩耗試験機にて下記条件で動摩擦係数を測定した。測定は5回行い、その平均値を求めた。動摩擦係数が小さいほど、耐摩耗性に優れている。
<試験条件>
周速:10cm/秒
荷重:40kg/cm2(0.4MPa)
相手材:S45Cリング(外径25.6mm
、内径20.0mm)
潤滑:無潤滑
時間:24時間
周速:10cm/秒
荷重:40kg/cm2(0.4MPa)
相手材:S45Cリング(外径25.6mm
、内径20.0mm)
潤滑:無潤滑
時間:24時間
[耐疲労特性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃(実施例24,25,27,29は120℃)で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:(a)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃(実施例24は150℃、実施例25は120℃、実施例27は160℃、実施例29は140℃)の条件で射出成形することにより、厚さ4mmのISOダンベル状試験片を作製した。この試験片について、JISK7119に従い、油圧サーボ式疲労試験機(島津社製TB-10B)を用いて、温度130℃、周波数30Hzの正弦波にて引張荷重を負荷し、1000万回(107回)荷重を負荷した後の破壊応力を求めた。破壊応力が大きいほど、耐疲労特性に優れている。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃(実施例24,25,27,29は120℃)で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:(a)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃(実施例24は150℃、実施例25は120℃、実施例27は160℃、実施例29は140℃)の条件で射出成形することにより、厚さ4mmのISOダンベル状試験片を作製した。この試験片について、JISK7119に従い、油圧サーボ式疲労試験機(島津社製TB-10B)を用いて、温度130℃、周波数30Hzの正弦波にて引張荷重を負荷し、1000万回(107回)荷重を負荷した後の破壊応力を求めた。破壊応力が大きいほど、耐疲労特性に優れている。
[耐熱老化性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃(実施例24,25,27,29は120℃)で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:(a)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃(実施例24は150℃、実施例25は120℃、実施例27は160℃、実施例29は140℃)の条件で射出成形することにより、厚さ3.2mmのASTM1号ダンベルを作製した。この試験片について、ASTM D638に従って引張試験機テンシロンUTA2.5T(オリエンテック社製)により、クロスヘッド速度10mm/分で引張試験を行った。3回測定を行い、その平均値を耐熱老化性試験処理前引張強度として算出した。ついで、ASTM1号ダンベル試験片について、大気圧下のギアオーブンで、(i)135℃、2000時間の熱処理(耐熱老化性試験処理)および(ii)120℃、1000時間の熱処理(耐熱老化性試験処理)を行った。各処理後の試験片についても、同様の引張試験を行い、3回の測定値の平均値を耐熱老化性試験処理後の引張強度として算出した。耐熱老化性試験処理前の引張強度に対する処理後の引張強度の比を、引張強度保持率として算出した。引張強度保持率が大きいほど、耐熱老化性に優れている。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃(実施例24,25,27,29は120℃)で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:(a)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃(実施例24は150℃、実施例25は120℃、実施例27は160℃、実施例29は140℃)の条件で射出成形することにより、厚さ3.2mmのASTM1号ダンベルを作製した。この試験片について、ASTM D638に従って引張試験機テンシロンUTA2.5T(オリエンテック社製)により、クロスヘッド速度10mm/分で引張試験を行った。3回測定を行い、その平均値を耐熱老化性試験処理前引張強度として算出した。ついで、ASTM1号ダンベル試験片について、大気圧下のギアオーブンで、(i)135℃、2000時間の熱処理(耐熱老化性試験処理)および(ii)120℃、1000時間の熱処理(耐熱老化性試験処理)を行った。各処理後の試験片についても、同様の引張試験を行い、3回の測定値の平均値を耐熱老化性試験処理後の引張強度として算出した。耐熱老化性試験処理前の引張強度に対する処理後の引張強度の比を、引張強度保持率として算出した。引張強度保持率が大きいほど、耐熱老化性に優れている。
[耐薬品性]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃(実施例24,25,27,29は120℃)で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:(a)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃(実施例24は150℃、実施例25は120℃、実施例27は160℃、実施例29は140℃)の条件で射出成形することにより、厚さ3.2mmのASTM1号ダンベルを作製した。この試験片について、エチレングリコール含有量が88重量%であるトヨタ株式会社製純正スーパーロングライフクーラント(LLC)50体積%水溶液中で130℃×1000時間加熱処理した後、引張強度を上記耐熱老化性と同様に測定した。処理前の引張強度に対する処理後の引張強度の比を、引張強度保持率として算出し、耐薬品性の目安とした。引張強度保持率が大きいほど、耐薬品性に優れている。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃(実施例24,25,27,29は120℃)で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:(a)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃(実施例24は150℃、実施例25は120℃、実施例27は160℃、実施例29は140℃)の条件で射出成形することにより、厚さ3.2mmのASTM1号ダンベルを作製した。この試験片について、エチレングリコール含有量が88重量%であるトヨタ株式会社製純正スーパーロングライフクーラント(LLC)50体積%水溶液中で130℃×1000時間加熱処理した後、引張強度を上記耐熱老化性と同様に測定した。処理前の引張強度に対する処理後の引張強度の比を、引張強度保持率として算出し、耐薬品性の目安とした。引張強度保持率が大きいほど、耐薬品性に優れている。
[表面外観]
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃(実施例24,25,27,29は120℃)で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:(a)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃(実施例24は150℃、実施例25は120℃、実施例27は160℃、実施例29は140℃)、射出/冷却時間=10/10秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力100MPa、射出速度:100mm/秒の条件で、80×80×3mm厚の角板(フィルムゲート)を射出成形した。得られた角板は140℃の大気下で1時間熱処理し、処理後の角板表面の状態を目視観察し、次の基準により評価した。
A:成形品の色調は白色であり、かつ表面にブリード物は認められない。
B:成形品の色調がうっすら青白色または赤褐色であり、かつ表面にブリード物は認められない。
C1:成形品の色調が青白色または赤褐色であり、かつ表面にブリード物は認められない。
C2:成形品の色調は白色であり、かつ表面にブリード物が認められる。
各実施例および比較例により得られたペレットを80℃(実施例24,25,27,29は120℃)で12時間減圧乾燥し、射出成形機(住友重機社製SG75H-MIV)を用いて、シリンダー温度:(a)ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度:80℃(実施例24は150℃、実施例25は120℃、実施例27は160℃、実施例29は140℃)、射出/冷却時間=10/10秒、スクリュー回転数:150rpm、射出圧力100MPa、射出速度:100mm/秒の条件で、80×80×3mm厚の角板(フィルムゲート)を射出成形した。得られた角板は140℃の大気下で1時間熱処理し、処理後の角板表面の状態を目視観察し、次の基準により評価した。
A:成形品の色調は白色であり、かつ表面にブリード物は認められない。
B:成形品の色調がうっすら青白色または赤褐色であり、かつ表面にブリード物は認められない。
C1:成形品の色調が青白色または赤褐色であり、かつ表面にブリード物は認められない。
C2:成形品の色調は白色であり、かつ表面にブリード物が認められる。
なお、ブリード物とは成形品表面に浮き出たものを示し、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物が室温において固体状の場合は、粉ふきのようなものであり、(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物が室温において液体状の場合は、粘性の液状のようなものとなる。
(ポリアミド樹脂の合成)
参考例1((a-2)ナイロン410の合成)
テトラメチレンジアミンとセバシン酸の等モル塩である410塩700g、テトラメチレンジアミン10重量%水溶液21.2g(410塩に対して1.00mol%)、次亜リン酸ナトリウム0.3065g(生成ポリマー重量に対して0.05重量%)を3L重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。その後、重合缶の加熱を開始して、缶内圧力が0.5MPaに到達した後、水分を系外に放出させながら缶内圧力を0.5MPaで1.5時間保持した。その後10分間かけて缶内圧力を常圧に戻し、更に窒素フロー下で1.5時間反応させ重合を完了した。その後、重合缶からポリマーをガット状に吐出してペレタイズし、これを80℃で24時間真空乾燥して、ηr=2.84のナイロン410を得た。
テトラメチレンジアミンとセバシン酸の等モル塩である410塩700g、テトラメチレンジアミン10重量%水溶液21.2g(410塩に対して1.00mol%)、次亜リン酸ナトリウム0.3065g(生成ポリマー重量に対して0.05重量%)を3L重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。その後、重合缶の加熱を開始して、缶内圧力が0.5MPaに到達した後、水分を系外に放出させながら缶内圧力を0.5MPaで1.5時間保持した。その後10分間かけて缶内圧力を常圧に戻し、更に窒素フロー下で1.5時間反応させ重合を完了した。その後、重合缶からポリマーをガット状に吐出してペレタイズし、これを80℃で24時間真空乾燥して、ηr=2.84のナイロン410を得た。
参考例2((a-3)ナイロン5T/6T=50/50(重量比)の合成)
ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である5T塩と、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である6T塩を、重量比が50対50となるように配合した。全脂肪族ジアミンに対して0.5mol%のペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンをそれぞれ過剰に添加した。さらに、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。その後、重合缶の加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2.5時間保持した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.47のナイロン5T/6T=50/50を得た。
ペンタメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である5T塩と、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である6T塩を、重量比が50対50となるように配合した。全脂肪族ジアミンに対して0.5mol%のペンタメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンをそれぞれ過剰に添加した。さらに、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。その後、重合缶の加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2.5時間保持した。その後、反応容器から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.47のナイロン5T/6T=50/50を得た。
参考例3((a-4)ナイロン6T/66=55/45(重量比)の合成)
ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である6T塩と、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩である66塩を、重量比が55対45となるように配合した。全脂肪族ジアミンに対して0.5mol%のヘキサメチレンジアミンを過剰に添加した。さらに、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。その後、重合缶の加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、重合缶から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.48のナイロン6T/66=55/45を得た。
ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である6T塩と、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の等モル塩である66塩を、重量比が55対45となるように配合した。全脂肪族ジアミンに対して0.5mol%のヘキサメチレンジアミンを過剰に添加した。さらに、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。その後、重合缶の加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、重合缶から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.48のナイロン6T/66=55/45を得た。
参考例4((a-6)ナイロン4T/6T=40/60(重量比)の合成)
テトラメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である4T塩と、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である6T塩を、重量比が40対60となるように配合した。全脂肪族ジアミンに対して0.5mol%のテトラメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンをそれぞれ過剰に添加した。さらに、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。その後、重合缶の加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、重合缶から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.48のナイロン4T/6T=40/60を得た。
テトラメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である4T塩と、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である6T塩を、重量比が40対60となるように配合した。全脂肪族ジアミンに対して0.5mol%のテトラメチレンジアミンとヘキサメチレンジアミンをそれぞれ過剰に添加した。さらに、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。その後、重合缶の加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、重合缶から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.48のナイロン4T/6T=40/60を得た。
参考例5((a-7)ナイロン46の合成)
ナイロン46塩700g、テトラメチレンジアミン5.27g、次亜リン酸ナトリウム1水和物0.2962g、イオン交換水70gを、撹拌翼付きの内容積3Lの重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。この重合缶を密閉したまま加熱を開始し、内温225℃、15.0kg/cm2に到達後、水分を系外に放出させながら缶内圧力を15.0kg/cm2で30分間保持した。その後、重合缶から内容物をクーリングベルト上に吐出した。これを80℃で24時間真空乾燥して得られた低次縮合物を260℃、100Paで20時間固相重合し、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46、ηr=3.10)を得た。アミノ末端基濃度は2.4×10-5mol/gであった。
ナイロン46塩700g、テトラメチレンジアミン5.27g、次亜リン酸ナトリウム1水和物0.2962g、イオン交換水70gを、撹拌翼付きの内容積3Lの重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。この重合缶を密閉したまま加熱を開始し、内温225℃、15.0kg/cm2に到達後、水分を系外に放出させながら缶内圧力を15.0kg/cm2で30分間保持した。その後、重合缶から内容物をクーリングベルト上に吐出した。これを80℃で24時間真空乾燥して得られた低次縮合物を260℃、100Paで20時間固相重合し、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46、ηr=3.10)を得た。アミノ末端基濃度は2.4×10-5mol/gであった。
参考例6((a-8)ナイロン10Tの合成)
デカメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である10T塩と、デカメチレンジアミン全量に対して0.5mol%のデカメチレンジアミンを過剰に添加した。さらに、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。その後、重合缶の加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、重合缶から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.31、融点318℃のナイロン10Tを得た。
デカメチレンジアミンとテレフタル酸の等モル塩である10T塩と、デカメチレンジアミン全量に対して0.5mol%のデカメチレンジアミンを過剰に添加した。さらに、これら原料の合計70重量部に対して、水30重量部を添加して混合した。これを、重合缶に仕込んで密閉し、窒素置換した。その後、重合缶の加熱を開始して、缶内圧力が2.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力2.0MPa、缶内温度240℃で2時間保持した。その後、重合缶から内容物をクーリングベルト上に吐出し、これを100℃で24時間真空乾燥してポリアミド樹脂オリゴマーを得た。得られたポリアミド樹脂オリゴマーを粉砕、乾燥し、50Pa、240℃で固相重合し、ηr=2.31、融点318℃のナイロン10Tを得た。
(銅化合物およびカリウム化合物を含むマスターバッチの製造)
(c-1:CuI/KI(重量比)=0.14の割合で含むナイロン66マスターバッチ)
ナイロン66(東レ製“アミラン”(登録商標)CM3001-N)100重量部に対して、ヨウ化銅2.0重量部、ヨウ化カリウム40%水溶液35.7重量部の割合で予備混合した後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)で、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmにて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃で8時間真空乾燥し、銅含有量0.57重量%のマスターバッチペレットを作製した。
ナイロン66(東レ製“アミラン”(登録商標)CM3001-N)100重量部に対して、ヨウ化銅2.0重量部、ヨウ化カリウム40%水溶液35.7重量部の割合で予備混合した後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)で、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmにて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃で8時間真空乾燥し、銅含有量0.57重量%のマスターバッチペレットを作製した。
(c-2:CuI/KI(重量比)=0.16の割合で含むナイロン66マスターバッチ)
ナイロン66(東レ製“アミラン”(登録商標)CM3001-N)100重量部に対して、ヨウ化銅2.0重量部、ヨウ化カリウム40%水溶液31.3重量部の割合で予備混合した後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)で、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmにて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃で8時間真空乾燥し、銅含有量0.58重量%のマスターバッチペレットを作製した。
ナイロン66(東レ製“アミラン”(登録商標)CM3001-N)100重量部に対して、ヨウ化銅2.0重量部、ヨウ化カリウム40%水溶液31.3重量部の割合で予備混合した後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)で、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmにて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃で8時間真空乾燥し、銅含有量0.58重量%のマスターバッチペレットを作製した。
(c-3:CuI/KI(重量比)=0.23の割合で含むナイロン66マスターバッチ)
ヨウ化カリウム40%水溶液をナイロン66(東レ製“アミラン”(登録商標)CM3001-N)100重量部に対して、ヨウ化銅2.0重量部、ヨウ化カリウム40%水溶液21.7重量部の割合で予備混合した後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)で、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmにて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃で8時間真空乾燥し、銅含有量0.60重量%のマスターバッチペレットを作製した。
ヨウ化カリウム40%水溶液をナイロン66(東レ製“アミラン”(登録商標)CM3001-N)100重量部に対して、ヨウ化銅2.0重量部、ヨウ化カリウム40%水溶液21.7重量部の割合で予備混合した後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)で、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmにて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃で8時間真空乾燥し、銅含有量0.60重量%のマスターバッチペレットを作製した。
(c-4:CuI/KI(重量比)=0.31の割合で含むナイロン66マスターバッチ)
ナイロン66(東レ製“アミラン”(登録商標)CM3001-N)100重量部に対して、ヨウ化銅2.0重量部、ヨウ化カリウム40%水溶液16.1重量部の割合で予備混合した後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)で、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmにて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃で8時間真空乾燥し、銅含有量0.61重量%のマスターバッチペレットを作製した。
ナイロン66(東レ製“アミラン”(登録商標)CM3001-N)100重量部に対して、ヨウ化銅2.0重量部、ヨウ化カリウム40%水溶液16.1重量部の割合で予備混合した後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)で、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmにて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃で8時間真空乾燥し、銅含有量0.61重量%のマスターバッチペレットを作製した。
その他、本実施例および比較例に用いた(a)ポリアミド樹脂、(b)水酸基およびカルボキシル基を有する化合物、(d)充填材、(e)熱安定剤、(f)水酸基を有する化合物は以下の通りである。
(a-1):融点260℃のナイロン66樹脂(東レ製“アミラン”(登録商標)CM3001-N)、ηr=2.78。
(a-5):融点225℃のナイロン6樹脂(東レ製“アミラン”(登録商標)CM1010)、ηr=2.70。
(a-1):融点260℃のナイロン66樹脂(東レ製“アミラン”(登録商標)CM3001-N)、ηr=2.78。
(a-5):融点225℃のナイロン6樹脂(東レ製“アミラン”(登録商標)CM1010)、ηr=2.70。
(b-1):2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸(東京化成製)
ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.68。分岐度は0.31。
(b-2):3,5-ジヒドロキシ安息香酸(東京化成製)
ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.60。分岐度は0.11。
(b-3):2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成製)
ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.65。分岐度は0.31。
(b-4):3、4-ジヒドロキシフェニル酢酸(東京化成製)
ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.56。分岐度は0.13。
ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.68。分岐度は0.31。
(b-2):3,5-ジヒドロキシ安息香酸(東京化成製)
ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.60。分岐度は0.11。
(b-3):2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸(東京化成製)
ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.65。分岐度は0.31。
(b-4):3、4-ジヒドロキシフェニル酢酸(東京化成製)
ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.56。分岐度は0.13。
(b-5):ペンタエリスリトールのカルボキシル化物
ペンタエリスリトール(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている175℃のギアオーブン中で24時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.05。分岐度は0.20。
(b-6):ペンタエリスリトールのカルボキシル化物
ペンタエリスリトール(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている175℃のギアオーブン中で300時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.34。分岐度は0.18。
(b-7):ペンタエリスリトールのカルボキシル化物
ペンタエリスリトール(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている175℃のギアオーブン中で3000時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は2.73。分岐度は0.16。
(b-8):ペンタエリスリトールのカルボキシル化物
ペンタエリスリトール(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている175℃のギアオーブン中で12000時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は5.10。分岐度は0.12。
(b-9):ジペンタエリスリトールのカルボキシル化物
ジペンタエリスリトール(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている180℃のギアオーブン中で300時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.23。分岐度は0.18。
(b-10):トリスヒドロキシメチルアミノメタンのカルボキシル化物
トリスヒドロキシメチルアミノメタン(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている160℃のギアオーブン中で800時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.27。分岐度は0.28。
ペンタエリスリトール(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている175℃のギアオーブン中で24時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.05。分岐度は0.20。
(b-6):ペンタエリスリトールのカルボキシル化物
ペンタエリスリトール(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている175℃のギアオーブン中で300時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.34。分岐度は0.18。
(b-7):ペンタエリスリトールのカルボキシル化物
ペンタエリスリトール(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている175℃のギアオーブン中で3000時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は2.73。分岐度は0.16。
(b-8):ペンタエリスリトールのカルボキシル化物
ペンタエリスリトール(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている175℃のギアオーブン中で12000時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は5.10。分岐度は0.12。
(b-9):ジペンタエリスリトールのカルボキシル化物
ジペンタエリスリトール(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている180℃のギアオーブン中で300時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.23。分岐度は0.18。
(b-10):トリスヒドロキシメチルアミノメタンのカルボキシル化物
トリスヒドロキシメチルアミノメタン(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている160℃のギアオーブン中で800時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.27。分岐度は0.28。
(b-11):キシロースのカルボキシル化物
キシロース(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている140℃のギアオーブン中で2000時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.12。分岐度は0.0。
キシロース(東京化成製)の白色粉末を、住電オプコム株式会社製の乾燥空気供給装置(HAR-15C6-P)を用いて熱処理を行った。熱処理は、乾燥空気を1L/分の流量でパージを行っている140℃のギアオーブン中で2000時間行った。ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.12。分岐度は0.0。
(b-12):エステル化合物(参考例7)
566.7g(4.8モル)のコハク酸、522.4g(3.62モル)の1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび487.5g(3.58モル)のペンタエリスリトールを、撹拌器、内部温度計、ガス注入チューブ、還流冷却器および冷却トラップとの真空接続を装備した3000mlの4つ口ガラスフラスコに充填した。ガラスフラスコに窒素ガスを供給し、1.11gのジ-n-ブチルスズ酸化物の添加後に、この混合物を油浴を用いて内部温度125℃まで加熱した。0.02MPaの減圧下で、反応時生成水を分離した。反応混合物を、上記温度および圧力で3.5時間保持した後、冷却することにより、エステル結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基およびカルボキシル基含有化合物を得た。重量平均分子量は2550であり、ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.39、分岐度は0.47であった。
566.7g(4.8モル)のコハク酸、522.4g(3.62モル)の1,4-シクロヘキサンジメタノールおよび487.5g(3.58モル)のペンタエリスリトールを、撹拌器、内部温度計、ガス注入チューブ、還流冷却器および冷却トラップとの真空接続を装備した3000mlの4つ口ガラスフラスコに充填した。ガラスフラスコに窒素ガスを供給し、1.11gのジ-n-ブチルスズ酸化物の添加後に、この混合物を油浴を用いて内部温度125℃まで加熱した。0.02MPaの減圧下で、反応時生成水を分離した。反応混合物を、上記温度および圧力で3.5時間保持した後、冷却することにより、エステル結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基およびカルボキシル基含有化合物を得た。重量平均分子量は2550であり、ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.39、分岐度は0.47であった。
(b-13):エステル化合物(参考例8)
389.4g(3.3モル)のコハク酸、121.5g(1.32モル)のグリセロールおよび380.7g(2.64モル)の1,4-シクロヘキサンジメタノールを、撹拌器、内部温度計、ガス注入チューブ、還流冷却器および冷却トラップとの真空接続を装備した3000mlの4つ口ガラスフラスコに充填した。ガラスフラスコに窒素ガスを供給し、1.08gのジ-n-ブチルスズ酸化物の添加後に、この混合物を油浴を用いて130℃の内部温度まで加熱した。0.02MPaの減圧下で、反応時生成水を分離した。反応混合物を、上記温度および圧力で14時間保持した後、冷却することにより、エステル結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基およびカルボキシル基含有化合物を得た。数平均分子量は3400であり、ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.42、分岐度は0.29であった。
389.4g(3.3モル)のコハク酸、121.5g(1.32モル)のグリセロールおよび380.7g(2.64モル)の1,4-シクロヘキサンジメタノールを、撹拌器、内部温度計、ガス注入チューブ、還流冷却器および冷却トラップとの真空接続を装備した3000mlの4つ口ガラスフラスコに充填した。ガラスフラスコに窒素ガスを供給し、1.08gのジ-n-ブチルスズ酸化物の添加後に、この混合物を油浴を用いて130℃の内部温度まで加熱した。0.02MPaの減圧下で、反応時生成水を分離した。反応混合物を、上記温度および圧力で14時間保持した後、冷却することにより、エステル結合を有する繰り返し構造単位からなる水酸基およびカルボキシル基含有化合物を得た。数平均分子量は3400であり、ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0.42、分岐度は0.29であった。
(d-1):円形断面ガラス繊維(日本電気硝子製T-275H、断面の直径10.5μm、表面処理剤:シラン系カップリング剤、繊維長3mm)
(e-1):ヒンダードフェノール系熱安定剤
BASF株式会社製“irganox”(登録商標)1010(テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)
(e-2):リン系熱安定剤
BASF株式会社製“irgafos”(登録商標)168(トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト)
(e-3):硫黄系酸化防止剤
ADEKA株式会社製“アデカスタブ”(登録商標)AO412S(ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート))
(e-4):アミン系酸化防止剤
Crompton株式会社製“Naugard”(登録商標)445(4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン)
BASF株式会社製“irganox”(登録商標)1010(テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)
(e-2):リン系熱安定剤
BASF株式会社製“irgafos”(登録商標)168(トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト)
(e-3):硫黄系酸化防止剤
ADEKA株式会社製“アデカスタブ”(登録商標)AO412S(ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート))
(e-4):アミン系酸化防止剤
Crompton株式会社製“Naugard”(登録商標)445(4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン)
(f-1):ペンタエリスリトール(東京化成製)
ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0。分岐度は0.20。
(f-2):ジペンタエリスリトール(東京化成製)
ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0。分岐度は0.20。
ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0。分岐度は0.20。
(f-2):ジペンタエリスリトール(東京化成製)
ピーク面積値の割合(百分率)の比(COOH/OH)は0。分岐度は0.20。
(実施例1~20、実施例23~29、比較例1~8)
表1~8に示すポリアミド樹脂および必要に応じて銅化合物、熱安定剤を予備混合した後、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このメインフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、つまりスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されている。続いて、表1~8に示す水酸基およびカルボキシル基含有化合物、水酸基含有化合物、ガラス繊維をサイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このサイドフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0.65の位置、つまりスクリュー長の1/2より下流側の位置に接続されている。
表1~8に示すポリアミド樹脂および必要に応じて銅化合物、熱安定剤を予備混合した後、シリンダー設定温度をポリアミド樹脂の融点+15℃、スクリュー回転数を200rpmに設定した日本製鉄所社製TEX30型2軸押出機(L/D=45)のメインフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このメインフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0の位置、つまりスクリューセグメントの上流側の端部の位置に接続されている。続いて、表1~8に示す水酸基およびカルボキシル基含有化合物、水酸基含有化合物、ガラス繊維をサイドフィーダーから2軸押出機に供給し、溶融混練した。このサイドフィーダーはスクリューの全長を1.0としたときの上流側より見て0.65の位置、つまりスクリュー長の1/2より下流側の位置に接続されている。
2軸押出機のスクリュー構成は、水酸基およびカルボキシル基含有化合物の供給位置の上流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn1、水酸基およびカルボキシル基含有化合物の供給位置の下流側にあるニーディングゾーンの合計長さをLn2とした場合、Ln1/Lは0.14、Ln2/Lは0.07となるよう構成した。また、複数ヶ所のフルフライトゾーンに設置された樹脂圧力計が示す樹脂圧力のうち、最小となる樹脂圧力Pfminと、複数ヶ所のニーディングゾーンに設置された樹脂圧力計が示す樹脂圧力のうち、最大となる樹脂圧力Pkmaxとの差(Pkmax-Pfmin)は、表1~8に示すとおりであった。ダイから吐出されるガットを即座に水浴にて冷却し、ストランドカッターによりペレット化した。
(実施例21)
水酸基およびカルボキシル基含有化合物をポリアミド樹脂および銅化合物とともにメインフィーダーから2軸押出機に供給したこと以外は、実施例14と同様の方法により、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。PfminとPkmaxとの差(Pkmax-Pfmin)は表5に示すとおりであった。
水酸基およびカルボキシル基含有化合物をポリアミド樹脂および銅化合物とともにメインフィーダーから2軸押出機に供給したこと以外は、実施例14と同様の方法により、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。PfminとPkmaxとの差(Pkmax-Pfmin)は表5に示すとおりであった。
(実施例22)
2軸押出機のスクリュー構成を、Ln1/Lが0.01であり、Ln2/Lが0.01となるよう変更した以外は実施例14と同様の方法により、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。PfminとPkmaxとの差(Pkmax-Pfmin)は表5に示すとおりであった。
2軸押出機のスクリュー構成を、Ln1/Lが0.01であり、Ln2/Lが0.01となるよう変更した以外は実施例14と同様の方法により、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。PfminとPkmaxとの差(Pkmax-Pfmin)は表5に示すとおりであった。
各実施例および比較例の評価結果を表1~8に示す。
実施例1~29は比較例1,4,5,6と比較して、水酸基およびカルボキシル基含有化合物を含むことで、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観に優れる成形品を得ることができた。
実施例7~10は、比較例3、5,6と比較して、水酸基を有する化合物を所定時間熱処理することにより、ピーク面積値の割合(百分率)の比が好ましい範囲である水酸基およびカルボキシル基含有化合物を用いたため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観に優れる成形品を得ることができた。とりわけ実施例7、8は実施例9と比較して、ピーク面積値の割合(百分率)の比がより好ましい範囲である水酸基およびカルボキシル基含有化合物を用いたため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性に優れる成形品を得ることができた。
比較例5,6は、熱老化性試験時にポリアミド樹脂組成物中の水酸基含有化合物の水酸基がカルボキシル基に一部変性するが、熱老化性試験時初期に成形品表層に水酸基含有化合物がブリードアウトする。このため、水酸基含有化合物は、ポリアミド樹脂との反応が阻害される。このため、表面外観に劣るだけでなく、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性に優れる成形品を得ることができず、好ましくない。
実施例1~11は、比較例7、8と比較して、水酸基およびカルボキシル基含有化合物の分岐度が好ましい範囲であったため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性および耐薬品性に優れる成形品を得ることができた。
実施例13~16は、実施例2と比較して、水酸基およびカルボキシル基含有化合物と銅化合物を併用したため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性および耐薬品性により優れる成形品を得ることができた。とりわけ実施例14、15は、実施例13、16と比較して、ポリアミド樹脂組成物中の銅含有量とカリウム含有量の比が好ましい範囲であったため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観により優れる成形品を得ることができた。
また実施例14は、実施例17,18と比較して、ポリアミド樹脂組成物中の銅含有量が好ましい範囲であったため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観により優れる成形品を得ることができた。実施例14は実施例26と比較して、好ましい範囲の融点を有するポリアミド樹脂を用いたため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性により優れる成形品を得ることができた。
実施例24,25は、実施例27と比較して、好ましい範囲の融点を有するポリアミド樹脂を用いたため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性により優れる成形品を得ることができた。実施例29は、実施例14、23~28と比較して、融点、ガラス転移温度、アミド基濃度において好ましい範囲のポリアミド樹脂を用いたため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性により優れる成形品を得ることができた。
実施例2,8,10は、実施例4,5、6、11、12と比較して、一般式(1)に示す構造を有する水酸基およびカルボキシル基含有化合物を用いたため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性により優れる成形品を得ることができた。
とりわけ実施例10は、実施例2,8と比較して、一般式(1)中のnが1以上の構造を有する水酸基およびカルボキシル基含有化合物を用いたため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性により優れる成形品を得ることができた。
実施例2,4,5,6,8,10,11は実施例12と比較して、水酸基およびカルボキシル基含有化合物の分子量が好ましい範囲であったため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性により優れる成形品を得ることができた。実施例14は、実施例21と比較して、水酸基およびカルボキシル基含有化合物を押出機内の好ましい位置から供給したため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性により優れる成形品を得ることができた。
実施例14は実施例22と比較して、押出機内のニーディングゾーンの割合を好ましい範囲に設定したため、PfminとPkmaxとの差を好ましい範囲にでき、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性により優れる成形品を得ることができた。実施例1~3は比較例2と比較して、水酸基とカルボキシル基を有する化合物を好ましい配合量で使用したため、耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観に優れる成形品を得ることができた。
本発明の実施形態のポリアミド樹脂組成物は、通常公知の射出成形、射出圧縮成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形などの任意の方法で成形することができ、各種成形品に加工し利用することができる。成形品としては、射出成形品、押出成形品、ブロー成形品などとして利用することができる。特に、本発明の実施形態においては耐摩耗性、耐疲労特性、耐熱老化性、耐薬品性および表面外観に優れる成形品を得ることができる点を活かし、自動車エンジン周辺部品、自動車アンダーフード部品、自動車ギア部品、自動車内装部品、自動車外装部品、吸排気系部品、エンジン冷却水系部品、自動車電装部品などの自動車用途、LEDリフレクタやSMTコネクタなどの電気、電子部品用途などに加工することが有効である。
Claims (9)
- (a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(b)水酸基およびカルボキシル基を有し、13C-NMRスペクトルにおける総ピーク面積に対するカルボキシル基由来ピーク面積の割合(百分率)と、1H-NMRスペクトルにおける総ピーク面積に対する水酸基由来ピーク面積の割合(百分率)との比(COOH/OH)が、0.01~5.0であり、分岐度が0.05~0.35である水酸基およびカルボキシル基含有化合物0.1~10重量部を配合してなる、ポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物であって、
前記(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の、13C-NMRスペクトルにおける総ピーク面積に対するカルボキシル基由来ピーク面積の割合(百分率)と、1H-NMRスペクトルにおける総ピーク面積に対する水酸基由来ピーク面積の割合(百分率)との比(COOH/OH)が、0.01~2.5であり、分岐度が0.05~0.31である、ポリアミド樹脂組成物。 - 請求項1または請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物であって、
(c)銅化合物をさらに含有し、原子吸光分光法で決定されるポリアミド樹脂組成物中の銅含有量が25~200ppmである、ポリアミド樹脂組成物。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物であって、
前記(a)ポリアミド樹脂の融点が240~330℃である、ポリアミド樹脂組成物。 - 請求項5に記載のポリアミド樹脂組成物であって、
前記一般式(1)におけるnが1~4の範囲である、ポリアミド樹脂組成物。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物であって、
前記(b)水酸基およびカルボキシル基含有化合物の分子量が2800以下である、ポリアミド樹脂組成物。 - 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物であって、
前記(a)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(d)無機充填材1~150重量部をさらに含有する、ポリアミド樹脂組成物。 - 請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形品。
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