JP2020158669A - 半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents

半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびその成形体 Download PDF

Info

Publication number
JP2020158669A
JP2020158669A JP2019060668A JP2019060668A JP2020158669A JP 2020158669 A JP2020158669 A JP 2020158669A JP 2019060668 A JP2019060668 A JP 2019060668A JP 2019060668 A JP2019060668 A JP 2019060668A JP 2020158669 A JP2020158669 A JP 2020158669A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
semi
polyamide resin
aromatic polyamide
component unit
resin composition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2019060668A
Other languages
English (en)
Inventor
翔平 小泉
Shohei Koizumi
翔平 小泉
功 鷲尾
Isao Washio
功 鷲尾
馨 皆川
Kaoru Minagawa
馨 皆川
晶規 天野
Akinori Amano
晶規 天野
洋平 宝谷
Yohei Takaraya
洋平 宝谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsui Chemicals Inc filed Critical Mitsui Chemicals Inc
Priority to JP2019060668A priority Critical patent/JP2020158669A/ja
Publication of JP2020158669A publication Critical patent/JP2020158669A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
  • Polyamides (AREA)

Abstract

【課題】長期間にわたる高温条件下での使用に耐える高い耐熱老化性を有する半芳香族ポリアミド樹脂組成物、および当該樹脂組成物の成形品を提供すること。【解決手段】示差走査熱量計で測定した融点が290℃以上340℃以下である半芳香族ポリアミド樹脂(A)44〜84.99質量部と、銅系安定剤(B)0.01〜3質量部と、ガラス繊維(C)15〜50質量部と、他の成分(D)0〜3質量部とを含有し(ただし、(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100質量部とする)、前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基量が100mmol/kg以上220mmol/kg以下であり、且つ末端カルボン酸基量が100mmol/kg以上220mmol/kg以下である、半芳香族ポリアミド樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびその成形体に関する。
ポリアミド樹脂は、優れた耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性および難燃性を有することから、電気部品、電子部品、自動車部品などの幅広い分野に利用されている。
例えば、自動車用エンジンルーム内部品には、高温条件下での耐熱老化性(「長期耐熱性」、「良好な長期強度維持率」ともいう)が求められることから、そのような用途の樹脂材料として、ポリアミド樹脂、結晶核剤、銅化合物およびハロゲン化アルカリ金属塩を含むポリアミド組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、熱可塑性ポリアミド樹脂に多価アルコール、補強材、エラストマーなどの高分子強化材を加えた、耐熱老化性のポリアミド樹脂組成物も知られている(特許文献2)。
特開2000−198922号公報 特表2011−529991号公報
しかしながら、近年、エンジンは、停止と駆動を繰り返す際の温度変化が大きいだけでなく、エンジンルームもコンパクト化されているため、これまで以上に高い耐熱老化性も求められている。そのため、自動車用エンジンルーム内部品などの成形体を構成する樹脂が高温雰囲気に晒されて劣化すると、成形体の剛性が不十分となり、長期の使用が不可能となることも懸念される。
特許文献1のポリアミド樹脂組成物は、近年の使用環境温度の高温化のため、十分な耐熱老化性を得ることができないという問題があった。また、特許文献2のポリアミド樹脂組成物も、210℃で500時間の条件下では耐熱老化性を示すものの、1000時間を超える長期にわたり耐熱老化性を保持することには問題があると考えられる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、長期間にわたる高温条件下での使用に耐える高い耐熱老化性を有するポリアミド樹脂組成物およびこれを用いた成形体を提供することを目的とする。
本発明の第一は、以下の半芳香族ポリアミド樹脂組成物に関する。
[1] 示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が290℃以上340℃以下である半芳香族ポリアミド樹脂(A)44〜84.99質量部と、銅系安定剤(B)0.01〜3質量部と、ガラス繊維(C)15〜50質量部と、他の成分(D)0〜3質量部とを含有し(ただし、(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100質量部とする)、
前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の末端基構造が下記要件(1)および(2)を同時に満たす、半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
(1)末端アミノ基量が100mmol/kg以上220mmol/kg以下であり、且つ
(2)末端カルボン酸基量が100mmol/kg以上220mmol/kg以下である。
[2] 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の末端基構造が、下記要件(3)さらに満たす、[1]に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
(3)前記末端アミノ基量および前記末端カルボン酸基量の合計が、250mmol/kg以上420mmol/kg以下である。
[3] 前記ガラス繊維(C)が、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)が2.0〜4.0の範囲内である扁平断面を有する、[1]または[2]に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[4] 前記他の成分(D)が核剤である、[1]〜[3]のいずれかに記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[5] 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)が、テレフタル酸成分単位を少なくとも含むジカルボン酸成分単位(a1)と、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位を少なくとも含むジアミン成分単位(a2)とを含み、且つ前記ジカルボン酸成分単位(a1)の総量に対して、テレフタル酸成分単位を20〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を0〜80モル%、および炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位を0〜60モル%を含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[6] 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)が、前記ジカルボン酸成分単位(a1)の合計量に対して、テレフタル酸成分単位を30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を0〜70モル%、および炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位を0〜60モル%含み、前記ジアミン成分単位(a2)の合計量に対して、炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミン成分単位を30〜100モル%含む、[5]に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[7] 前記炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミン成分単位が、炭素原子数4〜8の直鎖状脂肪族ジアミン成分単位を含む、[6]に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[8] 前記炭素原子数4〜8の直鎖状脂肪族ジアミン成分単位が、炭素原子数4〜8のアルキレンジアミン成分単位である、[7]に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[9] 前記炭素原子数4〜8のアルキレンジアミン成分単位が、1,6−ジアミノヘキサン成分単位である、[8]に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
[10] 前記ジカルボン酸成分単位(a1)が、イソフタル酸成分単位をさらに含む、[5]〜[9]のいずれかに記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
本発明の第二は、以下の成形体に関する。
[11] [1]〜[10]のいずれかに記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を成形してなる、成形体。
本発明によれば、長期間にわたる高温条件下での使用に耐える高い耐熱老化性を有する半芳香族ポリアミド樹脂組成物、および当該樹脂組成物の成形品を提供することができる。
1.半芳香族ポリアミド樹脂組成物
本発明者らは、特定の半芳香族ポリアミド樹脂(A)と、銅系安定剤(B)と、ガラス繊維(C)とを含む半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、優れた耐熱老化性を発現しうることを見出した。本発明に係わる半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、その末端アミノ基量が100mmol/kg以上220mmol/kg以下であり、且つ末端カルボン酸基量が100mmol/kg以上220mmol/kg以下である。このような量の末端基を有すると、未反応の末端基が存在する。よって、高温条件下で半芳香族ポリアミド樹脂のポリマー鎖が酸化劣化によって分解されても、当該分解と同時に未反応末端基同士の重合反応が進行するため、分子量の低下は抑制されると考えられる。
さらに、半芳香族ポリアミド樹脂組成物に含まれる銅系安定剤(B)は、Cuが半芳香族ポリアミド樹脂中のアミド基と相互作用して分子中に分散することで、半芳香族ポリアミド樹脂(A)を熱に劣化されにくくし、耐熱老化性を向上させるものと考えられる。また、適量のガラス繊維(C)を含有させることで、成形体の機械強度を損なわない程度に、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の成形時の溶融流動性を向上させ、成形時の剪断熱を少なくすることができる。その結果、得られる成形体の機械強度を損なうことなく、高温下での耐熱老化性を高めることができると考えられる。
よって、特定の量の末端基を有する半芳香族ポリアミド樹脂(A)、銅系安定剤(B)およびガラス繊維(C)の相互作用によって、高い耐熱老化性を有する半芳香族ポリアミド樹脂組成物が得られた。
1−1.半芳香族ポリアミド樹脂(A)
本発明において半芳香族ポリアミド樹脂とは、芳香環を有する構造単位と、脂肪族鎖を有する構造単位とを含むポリアミド樹脂である。半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が290℃以上340℃以下である。半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)が290℃以上であると、成形体に高い耐熱性を付与しやすく、340℃以下であると、成形温度を過剰に高くする必要がないため、溶融重合や成形時における樹脂や他の成分の熱分解を抑制できる。半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点は、290〜320℃であることがより好ましく、290〜310℃であることがより好ましい。本発明においては、半芳香族ポリアミド樹脂(A)のポリマー末端をコントロールし、さらに融点を上記範囲内とすることによって、未反応の末端基が残りやすくなる。よって、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の耐熱老化性を向上させるという観点からは、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点は低い方が好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の示差走査熱量計(DSC)により測定されるガラス転移温度(Tg)は、70〜150℃であることが好ましく、75〜135℃であることがより好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(例えばDSC220C型、セイコーインスツル社製)にて測定することができる。具体的な測定条件は、後述の実施例と同様としうる。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)やガラス転移温度(Tg)は、例えば後述するジカルボン酸成分単位(a1)の組成によって調整されうる。半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点を高めるためには、例えばテレフタル酸成分単位の含有比率を多くすればよい。
さらに半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、その末端基構造が下記要件(1)および(2)を同時に満たし、さらに下記要件(3)も満たすことが好ましい。
(1)末端アミノ基量が100mmol/kg以上220mmol/kg以下であり、
(2)末端カルボン酸基量が100mmol/kg以上220mmol/kg以下であり、
(3)末端アミノ基量および末端カルボン酸基量の合計が、250mmol/kg以上420mmol/kg以下である。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基量(要件(1))は、100mmol/kg以上220mmol/kg以下であり、好ましくは130mmol/kg以上200mmol/kg以下であり、より好ましくは160mmol/kg以上180mmol/kg以下である。末端アミノ基量が100mmol/kg以上であると、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の耐熱老化性を高めやすいため好ましい。さらに220mmol/kg以下であると、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の機械強度(特に初期曲げ強度)が高めやすいため好ましい。
さらに半芳香族ポリアミド樹脂(A)の末端カルボン酸基量(要件(2))は、100mmol/kg以上220mmol/kg以下であり、好ましくは130mmol/kg以上200mmol/kg以下であり、より好ましくは160mmol/kg以上180mmol/kg以下である。末端カルボン酸基量が100mmol/kg以上であると、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の耐熱老化性を高めやすいため好ましい。さらに220mmol/kg以下であると、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の機械強度(特に初期曲げ強度)が高めやすいため好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物においては、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の未反応の末端アミノ基と未反応の末端カルボン酸基とが熱老化時に反応するため、耐熱老化性が向上する。よって、末端アミノ基および末端カルボン酸基の両方が耐熱老化性の向上に寄与している。よって、半芳香族ポリアミド樹脂(A)における末端アミノ基量および末端カルボン酸基量は、それぞれが上記要件(1)および(2)を満たす限り、それらの量比等には特に限定はない。
しかし、上記末端アミノ基量および上記末端カルボン酸基量の合計(要件(3))が、250mmol/kg以上420mmol/kg以下であると、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の機械強度(特に初期曲げ強度)が高めやすいため好ましい。末端アミノ基量および末端カルボン酸基量の合計は、より好ましくは270mmol/kg以上400mmol/kg以下であり、さらに好ましくは320mmol/kg以上360mmol/kg以下である。
末端アミノ基量および末端カルボン酸基量は、NMRによって測定することができる。例えば、半芳香族ポリアミド樹脂を重水素化ヘキサフロロイソプロパノール(HFIP)に溶解してNMR測定用サンプルとし、NMR測定を行い、NMRスペクトルを得る。得られたスペクトル中の、末端カルボン酸構造に隣接するメチレン基水素のピーク面積と、アミド構造に隣接するメチレン基水素のピーク面積との比率から、末端カルボン酸構造量(μeq/g)を、半芳香族ポリアミド樹脂の質量部あたりの数値で得ることができる。また、末端アミン構造に由来するピーク面積と、アミド構造を構成するカルボン酸成分のメチレン基水素のピーク面積から、末端アミン構造量(μeq/g)を、半芳香族ポリアミド樹脂質量部あたりの数値で得た。得られた数値は、mmol/kgに換算することができる。
末端アミノ基量は、滴定法によっても測定することができる。例えば、半芳香族ポリアミド樹脂1gをフェノール35mLに溶解させ、メタノールを2mL混合し、試料溶液とする。そして、チモールブルーを指示薬として、当該試料溶液に対して0.01規定のHCl水溶液を使用して青色から黄色になるまで滴定を実施し、末端アミノ基量([NH]、単位:mmol/kg)を測定する。
本発明において、要件(1)〜(3)は、NMR法で測定した末端アミノ基量および末端カルボン酸基量を基準とするものである。しかし、末端アミノ基量を滴定で測定した場合、得られた値をNMR法で測定した値に換算し、要件(1)を満たすか否かを判断することもできる。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基量および末端カルボン酸基量は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)を合成する際に使用するモノマーの種類や量、および半芳香族ポリアミド樹脂の分子量を制御することで調整することができる。また、後述する末端封止剤(分子量調整剤)の使用によっても、末端アミノ基の量を調整することができる。
さらに半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、下記のジカルボン酸成分単位(a1)と、ジアミン成分単位(a2)とを含む構造であることが好ましい。
[ジカルボン酸成分単位(a1)]
ジカルボン酸成分単位(a1)(即ち、ジカルボン酸に由来する成分単位)は、少なくともテレフタル酸成分単位(即ち、テレフタル酸に由来する成分単位)を含むことが好ましい。テレフタル酸成分単位を含む半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、結晶性が高く、成形体に良好な耐熱老化性(引張強度保持)を付与しうる。
具体的には、ジカルボン酸成分単位(a1)は、テレフタル酸成分単位を20〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を0〜80モル%と、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位を0〜60モル%とを含む。ジカルボン酸成分単位(a1)は、テレフタル酸成分単位30〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%および炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位0〜30モル%とを含むことがより好ましく、テレフタル酸成分単位55〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜45モル%とを含むことがさらに好ましい。ただし、ジカルボン酸成分単位(a1)の合計量を100モル%とする。
テレフタル酸の例には、テレフタル酸やテレフタル酸エステル(テレフタル酸の炭素数1〜4のアルキルエステル)が含まれる。
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸の例には、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびこれらのエステルが含まれ、好ましくはイソフタル酸でありうる。
炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸は、炭素原子数6〜12の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、その例には、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などが含まれ、好ましくはアジピン酸でありうる。
ジカルボン酸成分単位(a1)における、テレフタル酸成分単位とテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(好ましくはイソフタル酸)成分単位とのモル比は、テレフタル酸成分単位/テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(好ましくはイソフタル酸)成分単位が、55/45〜80/20であることが好ましく、60/40〜80/20であることがより好ましい。テレフタル酸成分単位の量が上記範囲であると、得られる成形体の耐熱老化性(引張強度保持)を高めやすい。
ジカルボン酸成分単位(a1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、脂環族ジカルボン酸成分単位をさらに含んでもよい。脂環族ジカルボン酸の例には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などが含まれる。
[ジアミン成分単位(a2)]
ジアミン成分単位(a2)(即ち、ジアミンに由来する成分単位)は、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位(即ち、脂肪族ジアミンに由来する成分単位)を少なくとも含む。
炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位は、炭素原子数4〜8の直鎖状脂肪族ジアミン成分単位を含むことが好ましい。
炭素原子数4〜8の直鎖状脂肪族ジアミンは、炭素原子数6〜8の直鎖状脂肪族ジアミンであることがより好ましい。炭素原子数4〜8の直鎖状脂肪族ジアミンの例には、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−オクタンジアミンなどの炭素原子数4〜8の直鎖状アルキレンジアミンが含まれる。これらの中でも、1,6−ジアミノヘキサンが好ましい。炭素原子数4〜8の直鎖状脂肪族ジアミン成分単位は、1種のみ含まれてもよいし、2種以上含まれてもよい。
炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位は、炭素原子数4〜15の分岐状脂肪族ジアミン成分単位をさらに含んでいてもよい。炭素原子数4〜15の分岐状脂肪族ジアミンの例には、2−メチル−1,8−オクタンジアミンや2−メチル−1,5−ペンタンジアミンなどが含まれる。
炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位と他の成分単位の合計含有量(好ましくは炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミン成分単位の含有量)は、ジアミン成分単位(a2)の合計量に対して30〜100モル%であることが好ましい。ただし、ジアミン成分単位(a2)の合計量を100モル%とする。
ジアミン成分単位(a2)は、本発明の効果を損なわない範囲で、他のジアミン成分単位をさらに含んでもよい。他のジアミンの例には、脂環族ジアミンや芳香族ジアミンが含まれる。
脂環族ジアミンの例には、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルプロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−5,5’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−5,5’−ジメチルジシクロヘキシルプロパン、α,α’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)−p−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)−1,4−シクロヘキサン、α,α’−ビス(4−アミノシクロヘキシル)−1,3−シクロヘキサンなどが含まれる。芳香族ジアミンの例には、メタキシリレンジアミンなどが含まれる。他のジアミンに由来する成分単位の含有量は、ジアミンに由来する成分単位(a2)の合計量に対して50モル%以下であり、好ましくは40モル%以下でありうる。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の具体例には、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)がテレフタル酸に由来する成分単位およびイソフタル酸に由来する成分単位であり、直鎖状脂肪族ジアミンに由来する成分単位が1,6−ジアミノヘキサンである樹脂や;ジカルボン酸成分単位(a1)がテレフタル酸成分単位およびアジピン酸成分単位であり、直鎖状脂肪族ジアミン成分単位が1,6−ジアミノヘキサンである樹脂などが含まれる。半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、1種のみ含まれてもよいし、2種以上含まれてもよい。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の、温度25℃、96.5%硫酸中で測定される極限粘度[η]は、0.7〜1.6dl/gであることが好ましく、0.8〜1.2dl/gであることがより好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]が一定以上であると、成形体の強度が十分に高まりやすい。極限粘度[η]が一定以下であると、樹脂組成物の成形時の流動性が損なわれにくい。極限粘度[η]は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の分子量によって調整される。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の極限粘度は、以下の方法で測定することができる。半芳香族ポリアミド樹脂(A)0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解して試料溶液とする。この試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して、25±0.05℃の条件下で測定し、得られた値を下記式に当てはめて算出することができる。
[η]=ηSP/[C(1+0.205ηSP)]
上記式において、各代数または変数は、以下を表す。
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
ηSPは、以下の式によって求められる。
ηSP=(t−t0)/t0
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
半芳香族ポリアミド樹脂(A)は、公知の半芳香族ポリアミド樹脂と同様の方法で製造することができ、例えばジカルボン酸とジアミンとを均一溶液中で重縮合させて製造することができる。具体的には、ジカルボン酸とジアミンとを、国際公開第03/085029号に記載されているように、触媒の存在下で加熱することにより低次縮合物を得て、次いでこの低次縮合物の溶融物にせん断応力を付与して重縮合させることで製造することができる。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の極限粘度を調整する場合は、反応系に末端封止剤(分子量調整剤)を添加することが好ましい。末端封止剤は、例えばモノカルボン酸またはモノアミンでありうる。モノカルボン酸の例には、炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸が含まれる。これらの末端封止剤は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の分子量を調整すると共に、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基の量を調整することができる。芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。
脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノール酸が含まれる。芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸が含まれる。脂環族モノカルボン酸の例には、シクロヘキサンカルボン酸が含まれる。
末端封止剤は、ジカルボン酸とジアミンとの反応系に添加される。添加量はジカルボン酸の合計量1モルに対して、0.07モル以下であることが好ましく、0.05モル以下であることがより好ましい。このような量で分子量調整剤を使用することにより、少なくともその一部が半芳香族ポリアミド中に取り込まれ、これにより半芳香族ポリアミド樹脂(A)の極限粘度[η]が、所望の範囲内に調整されやすくなる。
半芳香族ポリアミド樹脂(A)の含有量は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)、銅系安定剤(B)、ガラス繊維(C)および他の成分(D)の合計を100質量部としたとき、44〜84.99質量部であり、44〜79.99質量部であることが好ましく、49〜64.99質量部であることがより好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂(A)の含有量が44質量部以上であると、成形体の機械強度や耐熱性を高めやすく、84.99質量部以下であると、成形体の耐熱老化性を高めやすい。
1−2.銅系安定剤(B)
銅系安定剤(B)は、(i)ハロゲンと元素周期律表の1族又は2族金属元素との塩(ハロゲン金属塩)と、(ii)銅化合物とを含み、必要に応じて(iii)高級脂肪酸金属塩をさらに含みうる。銅系安定剤(B)は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物に、例えば150℃以上の高温にも耐える耐熱性(耐熱老化性)を付与しうる。
(i)ハロゲン金属塩の例には、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム及び塩化ナトリウムが含まれる。中でも、ヨウ化カリウム及び臭化カリウムが好ましい。ハロゲン金属塩は、1種類のみ含まれてもよいし、2種類以上が含まれてもよい。
(ii)銅化合物の例には、銅のハロゲン化物;銅の硫酸塩、酢酸塩、プロピオオン酸塩、安息香酸塩、アジピン酸塩、テレフタル酸塩、サルチル酸塩、ニコチン酸塩、ステアリン酸塩;銅のキレート化合物(銅とエチレンジアミン又はエチレンジアミン四酢酸等との化合物)が含まれる。中でも、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅、及び酢酸銅が好ましい。銅化合物は、1種類のみ含まれてもよいし、2種類以上が含まれてもよい。
(i)ハロゲン金属塩と(ii)銅化合物との含有質量比は、成形体の耐熱性や製造時の腐食性を改善しやすくする観点から、ハロゲンと銅とのモル比が、0.1/1〜200/1、好ましくは0.5/1〜100/1、より好ましくは2/1〜40/1となるように調整されうる。
(iii)高級脂肪酸金属塩の例には、高級飽和脂肪酸金属塩及び高級不飽和脂肪酸金属塩が含まれる。
高級飽和脂肪酸金属塩は、炭素原子数6〜22の飽和脂肪酸と、元素周期律表の1、2、3族元素、亜鉛、及びアルミニウム等の金属元素(M1)との金属塩であることが好ましい。そのような高級飽和脂肪酸金属塩は、下記式(1)で示される。
CH(CHCOO(M1) ...(1)
(式(1)中、金属元素(M1)は、元素周期律表の1、2、3族元素、亜鉛又はアルミニウムであり、nは、8〜30でありうる。)
高級飽和脂肪酸金属塩の例には、カプリン酸、ウラデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸のリチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩及びアルミニウム塩が含まれる。
高級不飽和脂肪酸金属塩は、炭素原子数6〜22の不飽和脂肪酸と、元素周期律表の1、2、3族元素、亜鉛、及びアルミニウム等の金属元素(M1)との金属塩であることが好ましい。
高級不飽和脂肪酸金属塩の例には、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビル酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ステアロール酸、2−ヘキサデセン酸、7−ヘキサデセン酸、9−ヘキサデセン酸、ガドレイン酸、ガドエライジン酸、11−エイコセン酸のリチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩及びアルミニウム塩が含まれる。
銅系安定剤(B)の例には、10質量%のヨウ化銅(I)と90質量%のヨウ化カリウムの混合物や、14.3質量%のヨウ化銅(I)と85.7質量%のヨウ化カリウム/ジステアリン酸カルシウム(98:2質量比)との混合物等が含まれる。
半芳香族ポリアミド樹脂組成物中の銅系安定剤(B)の含有量は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)、銅系安定剤(B)、ガラス繊維(C)および他の成分(D)の合計を100質量部としたとき、0.01〜3質量部であり、好ましくは0.1〜3質量部、より好ましくは0.5〜2質量部である。銅系安定剤(B)の配合量が半芳香族ポリアミド樹脂組成物100質量部に対し0.01質量部以上であると、長期耐熱性の向上に対する効果が十分に発揮され、また、3質量部以下であると、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の機械強度が損なわれる恐れがない。
1−3.ガラス繊維(C)
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物に含まれるガラス繊維(C)は、得られる成形体に強度、剛性および靭性などを付与する。特に、ガラス繊維(C)が細いほど、成形体に十分な機械物性、特に薄肉曲げ強度を付与することができる。また、成形体の収縮を抑制することができる。
ここで、ガラス繊維(C)の断面形状は特に制限されず、真円形、長円形、まゆ形、長方形等、いずれの形状でもありうる。ガラス繊維(C)の断面とは、ガラス繊維の長さ方向に対して垂直方向に繊維を切断したときの断面とする。半芳香族ポリアミド樹脂組成物の流動性の観点から、ガラス繊維(C)は、断面形状がまゆ形または長円形である扁平断面のものが好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂組成物に含まれるガラス繊維(C)の断面の短径は、3μm〜8μmであることが好ましい。短径が8μm以下であると、成形体に十分な機械物性を付与することができる。また、短径が3μm以上であると、ガラス繊維自体の強度が確保され、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の樹脂成形プロセス中にガラス繊維(C)が折れにくくなる。
ここで、ガラス繊維(C)の断面の長径及び短径は、以下のように求められる。ガラス繊維(C)を含む半芳香族ポリアミド樹脂組成物や、ガラス繊維(C)を含む成形体から、樹脂成分を溶媒によって溶解して除去するか、または組成物や成形体を焼成することにより、ガラス繊維(C)を分離する。分離されたガラス繊維(C)を光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いて、ガラス繊維(C)の断面形状を観察する。
そして、上記光学顕微鏡等で観察されるガラス繊維(C)の断面の外周のうち、任意の1点を選択し、当該点に外接する外接線を引く。そして、当該外接線と平行な外接線を引き、これらの外接線同士の距離を測定する。ガラス繊維(C)の断面の外周全てについて当該作業を行い、2つの外接線同士の最短距離を最小径(短径(R)ともいう)、最長距離を最大径(長径(R)ともいう)とする。
ここで、半芳香族ポリアミド樹脂組成物に含まれるガラス繊維(C)の繊維断面の異形比は2.0〜4.0であることが好ましい。異形比とは、ガラス繊維断面の長径(R)と短径(R)との比(R/R)である。ガラス繊維(C)の繊維断面の異形比が2.0以上であると、成形体の収縮が効果的に抑制されるため好ましい。ガラス繊維(C)の繊維断面の異形比が4.0以下であると、樹脂組成物を二軸押出機などによる混練りや造粒などのコンパウンド工程において、溶融時の粘度が低く抑えられることができる。その結果、せん断発熱が小さくなり、樹脂の熱履歴が抑えられ、安定性が向上するため好ましい。
また、ガラス繊維(C)の断面形状(短径)や異形比は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の成形時の熱等によって変化しないことが好ましい。つまり成形体においても上記範囲であることが好ましい。具体的には、繊維断面の短径が3μm〜20μmであることが好ましく、異形比は2.0〜4.0であることがより好ましく、3.0〜4.0であることがさらに好ましい。成形体において、ガラス繊維(C)の短径が過剰に小さいと、成形体の剛性が不足する。
半芳香族ポリアミド樹脂組成物の成形体に含まれるガラス繊維(C)の長径及び短径は、例えば、成形体の一部をビーム加工にて切り出し、走査型電子顕微鏡(日立社製S−4800)を用いて観察することにより測定される。なお、上記短径や異形比の測定方法の一例として、例えば樹脂組成物を射出成形し、厚み0.5mm、幅30mm、長さ30mmの成形体を観察すること等により、測定する方法が挙げられる。
ここで、半芳香族ポリアミド樹脂組成物に含まれるガラス繊維(C)の平均長さは、通常は0.1〜20mm、好ましくは0.3〜6mmの範囲内である。0.1mm以上であれば、成形体に十分な機械物性が付与することができるので好ましい。
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は成形用材料としてコンパウンド化されていることがある。コンパウンド化は、通常、樹脂組成物を混練押出しすることにより行う。ところが、ガラス繊維を含有する樹脂組成物を混練押出しすると、ガラス繊維が折れてしまうことがある。特に、本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物が含むガラス繊維(C)は、繊維断面の短径が3μm〜8μmである。すなわち、繊維断面の短径が比較的小さいガラス繊維(C)を含有する。そのため、樹脂組成物のコンパウンド化において、ガラス繊維(C)が折れる恐れがあった。ガラス繊維(C)が折れてしまうと、成形体の機械強度が十分に高まらない。
ガラス繊維(C)は、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤などで処理されていてもよい。たとえばガラス繊維(C)は、ビニルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系化合物で表面処理されていてもよい。
ガラス繊維(C)には、公知のガラス繊維の製造方法により製造され、樹脂との密着性、均一分散性の向上のため集束剤が塗布されていてもよい。集束剤の好ましい例には、アクリル系、アクリル/マレイン酸変性系、エポキシ系、ウレタン系、ウレタン/マレイン酸変性系、ウレタン/エポキシ変性系の化合物が含まれる。集束剤は一種単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
さらに、ガラス繊維(C)は、表面処理剤と集束剤とを併用して処理されていてもよい。表面処理剤と集束剤との併用により本発明の組成物中のガラス繊維(C)と、組成物中の他の成分との結合性が向上し、外観および強度特性が向上する。
ガラス繊維(C)は、半芳香族ポリアミド樹脂組成物中に均一に分散されていることが好ましく、また成形体にも均一に分散されていることが好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂組成物中にガラス繊維(C)が均一に分散されていると造粒性が高まり、成形体の機械的特性も向上する。
半芳香族ポリアミド樹脂組成物中のガラス繊維(C)の含有量は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)、銅系安定剤(B)、ガラス繊維(C)、および他の成分(D)の合計を100質量部としたとき、15〜50質量部であり、20〜50質量部であることが好ましく、35〜50質量部であることがより好ましい。ガラス繊維(C)の含有量が上記範囲内であると、成形性を確保しつつ、機械強度を高めることができるため好ましい。
1−4.他の成分(D)
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、必要に応じて半芳香族ポリアミド樹脂(A)、銅系安定剤(B)、ガラス繊維(C)以外の他の成分(D)をさらに含んでいてもよい。
他の成分(D)の例には、核剤、エラストマー(ゴム)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系および無機系など)、流動性向上剤、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類およびリン類など)、耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅およびヨウ素化合物など)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類およびオギザニリド類など)、他の重合体(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂およびLCP)などが含まれる。中でも、本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、核剤を含むことが好ましい。
核剤は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の結晶化を促進するものであればよく、板状、粉状または粒状の充填材でありうる。
核剤の例には、タルク、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイトなどの珪酸塩、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスフレーク、ガラス粉、ガラスバルーン、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材、およびモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、N(A)型フッ素テニオライト、N(A)型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母などの膨潤性雲母に代表される層状珪酸塩が含まれる。層状珪酸塩は、層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩であってもよく、有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが含まれる。これらの核剤は、一種類で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。中でも、タルク、マイカ、カオリン、クレー、ガラスフレーク、カーボンブラック、黒鉛、モンモリロナイトなどの板状充填材が好ましく、タルク、マイカ、ガラスフレークがより好ましい。
核剤は、シラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤でさらに処理されていてもよい。中でも、エポキシシラン、アミノシラン系のカップリング剤で処理された核剤は、樹脂成分中に良好に分散しやすく、半芳香族ポリアミド樹脂(A)の結晶化を促進しうるため、得られる成形体に良好な機械強度を付与しうる。
核剤の平均粒子径は、0.1〜30μmであることが好ましい。核剤の平均粒子径が0.1μm以上であると、得られる成形体の球晶を微細化しやすく、平均粒子径が30μm以下であると、成形体の表面の外観が低下しにくい。核剤の平均粒子径は、0.5〜25μmであることがより好ましく、1.0〜23μmであることがさらに好ましい。核剤の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定して得られる算術平均径であり、体積平均粒子径(MV)である。
他の成分(D)の含有量は、半芳香族ポリアミド樹脂(A)、銅系安定剤(B)、ガラス繊維(C)、および他の成分(D)の合計を100質量部としたとき、0〜3質量部であり、0.5〜2.5質量部であることが好ましく、1〜2質量部であることがより好ましい。尚、複数の化合物を他の成分(D)として含有する場合には、複数の化合物の合計量が上記範囲であるものとする。
他の成分(D)が核剤の場合、その含有量は0.01〜3質量%であることが好ましく、0.1〜2質量%であることがより好ましい。核剤の含有量が0.01質量%以上であると、半芳香族ポリアミド樹脂の結晶化を十分に促進しうるので、得られる成形体の球晶を微細化しやすく、3質量%以下であると、成形性や表面外観が損なわれにくい。
2.半芳香族ポリアミド樹脂組成物の製造方法
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、前述の半芳香族ポリアミド樹脂(A)、銅系安定剤(B)およびガラス繊維(C)、さらに必要に応じて他の成分(D)を、公知の樹脂混練方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合する方法、或いは混合後、さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練した後、造粒又は粉砕する方法で製造することができる。
3.半芳香族ポリアミド樹脂組成物の用途
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、圧縮成形法、射出成形法、押出成形法等の公知の成形法で成形することにより、各種成形体として用いられる。
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物の成形体は、各種用途に用いることができる。本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物の成形体の例には、ラジエータグリル、リアスポイラー、ホイールカバー、ホイールキャップ、カウルベント・グリル、エアアウトレット・ルーバー、エアスクープ、フードバルジ、サンルーフ、サンルーフ・レール、フェンダー及びバックドア等の自動車用外装部品;シリンダーヘッド・カバー、エンジンマウント、エアインテーク・マニホールド、スロットルボディ、エアインテーク・パイプ、ラジエータタンク、ラジエータサポート、ウォーターポンプ、ウォーターポンプ・インレット、ウォーターポンプ・アウトレット、サーモスタットハウジング、クーリングファン、ファンシュラウド、オイルパン、オイルフィルター・ハウジング、オイルフィラー・キャップ、オイルレベル・ゲージ、オイルポンプ、タイミング・ベルト、タイミング・ベルトカバー及びエンジン・カバー等の自動車用エンジンルーム内部品;フューエルキャップ、フューエルフィラー・チューブ、自動車用燃料タンク、フューエルセンダー・モジュール、フューエルカットオフ・バルブ、クイックコネクタ、キャニスター、フューエルデリバリー・パイプ及びフューエルフィラーネック等の自動車用燃料系部品;シフトレバー・ハウジング及びプロペラシャフト等の自動車用駆動系部品;スタビライザーバー・リンケージロッド、エンジンマウントブラケット等の自動車用シャシー部品;ウインドーレギュレータ、ドアロック、ドアハンドル、アウトサイド・ドアミラー・ステー、ワイパー及びその部品、アクセルペダル、ペダル・モジュール、継手、樹脂ネジ、ナット、ブッシュ、シールリング、軸受、ベアリングリテーナー、ギア及びアクチュエーター等の自動車用機能部品;ワイヤーハーネス・コネクター、リレーブロック、センサーハウジング、ヒューズ部品、エンキャプシュレーション、イグニッションコイル及びディストリビューター・キャップ等の自動車用エレクトロニクス部品;汎用機器(刈り払い機、芝刈り機及びチェーンソー等)用燃料タンク等の汎用機器用燃料系部品;並びにコネクタ及びLEDリフレクタ等の電気電子部品;建材部品;産業用機器部品;小型筐体(パソコンや携帯電話等の筐体を含む)、外装成形体等の各種筐体又は外装部品が含まれる。
本発明の半芳香族ポリアミド樹脂組成物の成形体は、高い強度(剛性)を有し、且つ耐衝撃性や耐熱性、低吸水性等にも優れることから、自動車用燃料タンク、クイックコネクタ、ベアリングリテーナー、汎用機器用燃料タンク、フューエルキャップ、フューエルフィラーネック、フューエルセンダー・モジュール、ホイールキャップ、フェンダー又はバックドア等の自動車用部品に特に好適である。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定して解釈されない。
1.半芳香族ポリアミド樹脂組成物の材料
1−1.半芳香族ポリアミド樹脂(A)
<合成例1:半芳香族ポリアミド樹脂(A−1)(PA6T66)の調製>
テレフタル酸1720g(10.4モル)、1,6−ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、アジピン酸1849g(12.7モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物5.7g及び蒸留水554gを内容量13.6Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。190℃から攪拌を開始し、3時間かけて内部温度を250℃まで昇温した。このとき、オートクレーブの内圧を3.01MPaまで昇圧した。このまま1時間反応を続けた後、オートクレーブ下部に設置したスプレーノズルから大気放出して低次縮合物を抜き出した。その後、室温まで冷却後、粉砕機で1.5mm以下の粒径まで粉砕し、110℃で24時間乾燥した。得られた低次縮合物の水分量は3600ppm、極限粘度[η]は0.14dl/gであった。
この低次縮合物を棚段式固相重合装置にいれ、窒素置換後、約1時間30分かけて220℃まで昇温した。その後、1時間反応し、室温まで降温した。得られた半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度[η]は0.48dl/gであった。その後、スクリュー径30mm、L/D=36の二軸押出機にて、バレル設定温度330℃、スクリュー回転数200rpm、6kg/hの樹脂供給速度で溶融重合して、半芳香族ポリアミド樹脂を調製した。
得られた半芳香族ポリアミド樹脂(A−1)の極限粘度[η]は0.7dl/g、融点Tmは295℃、ガラス転移温度Tgは75℃、末端アミノ基量は170mmol/kg、末端カルボン酸基量は170mmol/kgであった。
<合成例2:半芳香族ポリアミド樹脂(A−2)(PA6T66)の調製>
原料を、テレフタル酸1787g(10.8モル)、1,6−ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、アジピン酸1921g(13.1モル)、に変えたこと以外は合成例1と同様にして、半芳香族ポリアミド樹脂を調製した。得られた半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点Tmは295℃、ガラス転移温度Tgは75℃、末端アミノ基量は130mmol/kg、末端カルボン酸基量は140mmol/kgであった。
<合成例3:半芳香族ポリアミド樹脂(A−3)(PA6T66)の調製>
原料を、テレフタル酸1724g(10.4モル)、1,6−ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、アジピン酸1853g(12.7モル)、に変えたこと以外は合成例1と同様にして、半芳香族ポリアミド樹脂を調製した。得られた半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度[η]は0.8dl/g、融点Tmは295℃、ガラス転移温度Tgは75℃、末端アミノ基量は200mmol/kg、末端カルボン酸基量は200mmol/kgであった。
<合成例4:半芳香族ポリアミド樹脂(A−4)(PA6T66)の調製>
原料を、テレフタル酸2184g(13.1モル)、1,6−ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、アジピン酸1572g(10.8モル)、に変えたこと以外は合成例1と同様にして、半芳香族ポリアミド樹脂を調製した。得られた半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点Tmは310℃、ガラス転移温度Tgは85℃、末端アミノ基量は140mmol/kg、末端カルボン酸基量は140mmol/kgであった。
<合成例5:半芳香族ポリアミド樹脂(A−5)(PA6T6I)の調製>
原料を、テレフタル酸2780g(16.7モル)、1,6−ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、イソフタル酸1191g(7.2モル)、に変えたこと以外は合成例1と同様にして、半芳香族ポリアミド樹脂を調製した。得られた半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点Tmは330℃、ガラス転移温度Tgは125℃、末端アミノ基量は160mmol/kg、末端カルボン酸基量は170mmol/kgであった。
<合成例6:半芳香族ポリアミド樹脂(A−6)(PA6TDT)の調製>
原料を、テレフタル酸3971g(23.9モル)、1,6−ヘキサンジアミン1400g(12.0モル)、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン1400g(12.0モル)、に変えたこと以外は合成例1と同様にして、半芳香族ポリアミド樹脂を調製した。得られた半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点Tmは300℃、ガラス転移温度Tgは100℃、末端アミノ基量は160mmol/kg、末端カルボン酸基量は170mmol/kgであった。
<合成例7:半芳香族ポリアミド樹脂(A−7)(PA6T66)の調製>
原料を、テレフタル酸1787g(10.8モル)、1,6−ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、アジピン酸1921g(13.1モル)、安息香酸36.5g(0.3モル)、に変えたこと以外は合成例1と同様にして、半芳香族ポリアミド樹脂を調製した。得られた半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点Tmは295℃、ガラス転移温度Tgは75℃、末端アミノ基量は40mmol/kg、末端カルボン酸基量は100mmol/kgであった。
<合成例8:半芳香族ポリアミド樹脂(A−8)(PA6T6I)の調製>
原料を、テレフタル酸2780g(16.7モル)、1,6−ヘキサンジアミン2800g(24.1モル)、イソフタル酸1191g(7.2モル)、安息香酸36.5g(0.3モル)、に変えたこと以外は合成例1と同様にして、半芳香族ポリアミド樹脂を調製した。得られた半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点Tmは330℃、ガラス転移温度Tgは125℃、末端アミノ基量は20mmol/kg、末端カルボン酸基量は140mmol/kgであった。
<合成例9:半芳香族ポリアミド樹脂(A−9)(PA6TDT)の調製>
原料を、テレフタル酸3971g(23.9モル)、1,6−ヘキサンジアミン1400g(12.0モル)、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン1400g(12.0モル)、安息香酸36.5g(0.3モル)、に変えたこと以外は合成例1と同様にして、半芳香族ポリアミド樹脂を調製した。得られた半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度[η]は1.0dl/g、融点Tmは300℃、ガラス転移温度Tgは100℃、末端アミノ基量は30mmol/kg、末端カルボン酸基量は100mmol/kgであった。
尚、上記半芳香族ポリアミド樹脂(A−1)〜(A−9)のモノマー仕込み比を表1に示した。
Figure 2020158669
尚、表中の略称は下記の通りである。
DA:ジアミン(ヘキサメチレンジアミン)
DC:ジカルボン酸(テレフタル酸(T)、イソフタル酸(I)、アジピン酸(6)、または2−メチルペンタンジアミン(D))
BA:安息香酸
各半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、および末端基量は、以下の方法で測定した。
<極限粘度[η]>
JIS K6810−1977に準拠して、半芳香族ポリアミド樹脂0.5gを96.5%硫酸溶液50mlに溶解させて、試料溶液とした。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を使用して25±0.05℃の条件下で測定した。測定結果を下記式に当てはめて、半芳香族ポリアミド樹脂の極限粘度[η]を算出した。
[η]=ηSP/[C(1+0.205ηSP)]
ηSP=(t−t0)/t0
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
<融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)>
半芳香族ポリアミド樹脂の融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル社製)を用いて測定した。具体的には、約5mgの半芳香族ポリアミド樹脂を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで350℃まで加熱した。当該樹脂を完全融解させるために、350℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで30℃まで冷却した。30℃で5分間置いた後、10℃/minで350℃まで2度目の加熱を行なった。この2度目の加熱における吸熱ピークの温度(℃)を半芳香族ポリアミド樹脂の融点(Tm)とし、ガラス転移に相当する変位点をガラス転移温度(Tg)とした。
<末端基量の測定方法>
上述した各半芳香族ポリアミド樹脂の末端アミノ基量および末端カルボン酸基量をNMR法で測定し、さらに末端アミノ基量は滴定法でも測定した。
(NMR法)
半芳香族ポリアミド樹脂30mgを重水素化ヘキサフロロイソプロパノール(HFIP)0.5mLに溶解し、NMR測定用サンプルとした。
サンプルについて、ECA−500型核磁気共鳴装置(500MHz−NMR)(日本電子製(株))でNMR測定を行い、得られたスペクトル中の、末端カルボン酸構造に隣接するメチレン基水素のピーク面積と、アミド構造に隣接するメチレン基水素のピーク面積との比率から、末端カルボン酸構造量(μeq/g)を、半芳香族ポリアミド樹脂質量部あたりの数値で得た。末端アミンの定量は、末端アミン構造に由来するピーク面積と、アミド構造を構成するカルボン酸成分のメチレン基水素のピーク面積から、末端アミン構造量(μeq/g)を、半芳香族ポリアミド樹脂質量部あたりの数値で得た。
次に、得られた値をmmol/kgに換算した。
(滴定法)
半芳香族ポリアミド樹脂1gをフェノール35mLに溶解させ、メタノールを2mL混合し、試料溶液とした。
チモールブルーを指示薬として、当該試料溶液に対して0.01規定のHCl水溶液を使用して青色から黄色になるまで滴定を実施し、末端アミノ基量([NH]、単位:mmol/kg)を測定した。
下記表2に、調製した半芳香族ポリアミド樹脂(A−1)〜(A−9)の特性をまとめた。
Figure 2020158669
1−2.銅系安定剤(B)
10質量%のヨウ化銅(I)と90質量%のヨウ化カリウムの混合物
1−3.ガラス繊維(C)
<ガラス繊維(C−1)>
円形のガラス繊維: オーウェンスコーニング社製FT756D(平均繊維径10μm、カット長3mm、アスペクト比300)
<ガラス繊維(C−2)>
扁平なガラス繊維: 日東紡績(株)社製CSG 3PA−830(カット長3mm、繊維断面の短径:7μm、繊維断面の長径:28μm、異形比(長径/短径):4、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径):430)
<ガラス繊維の平均繊維長および平均繊維径の測定>
ガラス繊維の平均繊維長および平均繊維径は、以下のように測定した。
ガラス繊維のうち任意の100本の繊維長と繊維径を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて50倍でそれぞれ計測した。そして、得られた繊維長の平均値を平均繊維長とし、得られた繊維径の平均値を平均繊維径とした。アスペクト比は、平均繊維長/平均繊維径とした。
1−4.他の成分(D)
核剤: タルク(平均粒子径1.6μm)
滑剤: 12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム
2.半芳香族ポリアミド樹脂組成物の調製
表3に示される組成比で、半芳香族ポリアミド樹脂(A)、銅系安定剤(B)、ガラス繊維(C)、および他の成分(D)(核剤および滑剤)を、タンブラーブレンダーにて混合し、二軸押出機(日本製鋼所社製TEX30α)にて、シリンダー温度(半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点(Tm)+15)℃で溶融混練した。その後、ストランド状に押出し、水槽で冷却した。その後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットすることで、ペレット状の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を得た。
3.評価
各半芳香族ポリアミド樹脂組成物を以下の条件で射出成形して、1/8インチ厚の短冊片を、下記評価用の試験片として得た。
成形機:(株)ソディック プラスティック、ツパールTR40S3A
成形機シリンダー温度:半芳香族ポリアミド樹脂(A)の融点+10℃
金型温度:半芳香族ポリアミド樹脂(A)のTg+20℃
<初期曲げ強度>
試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下で24時間放置した。次いで、温度25℃、100℃、相対湿度50%の雰囲気下で、曲げ試験機(NTESCO社製 AB5)を使用し、スパン51mm、曲げ速度12.7mm/分の条件で曲げ試験を行い、初期曲げ強度(加熱処理前の曲げ強度)を測定した。
<耐熱老化試験後の曲げ強度保持率>
試験片を、温度200℃の条件下、空気循環炉中で1000時間の熱処理に付した。試験片を炉から取り出し、23℃まで冷却した。次いで、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で、上記と同様に曲げ試験を行い、加熱処理後の曲げ強度を測定した。そして、得られた値を下記式に当てはめて、曲げ強度の保持率を算出した。
曲げ強度保持率(%)=(加熱処理後の曲げ強度/初期曲げ強度)×100
上記評価結果を、半芳香族ポリアミド樹脂組成物の組成と共に、下記表3にまとめた。
Figure 2020158669
表3の結果から明らかなように、末端アミノ基量が100mmol/kg以上220mmol/kg以下であり、且つ末端カルボン酸基量が100mmol/kg以上220mmol/kg以下である半芳香族ポリアミド樹脂(A)を、銅系安定剤(B)およびガラス繊維(C)と共に含有する実施例1〜6の半芳香族ポリアミド樹脂組成物は、初期の曲げ強度が320MPa以上と良好であった。さらに200℃において1000時間の耐熱老化試験後にも、初期曲げ強度の78%以上を保持していた。特に扁平なガラス繊維を使用した実施例7の樹脂組成物は、ガラス繊維が円形であること以外は同じ組成の実施例1の樹脂組成物と比べて、熱処理後の曲げ強度保持率が高かった。
一方、末端アミノ基量が100mmol/kg未満の半芳香族ポリアミド(A−7)、(A−8)および(A−9)を用いた比較例1〜3は、いずれも初期の曲げ強度は実施例と同様に良好であった。しかし、耐熱老化試験後には、曲げ強度が初期値の61%以下に低下した。
本発明によれば、長期間にわたる高温条件下での使用に耐える高い耐熱老化性を有する半芳香族ポリアミド樹脂組成物、および当該樹脂組成物の成形品を提供することができる。

Claims (11)

  1. 示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が290℃以上340℃以下である半芳香族ポリアミド樹脂(A)44〜84.99質量部と、
    銅系安定剤(B)0.01〜3質量部と、
    ガラス繊維(C)15〜50質量部と、
    他の成分(D)0〜3質量部と
    を含有し(ただし、(A)、(B)、(C)および(D)の合計を100質量部とする)、
    前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の末端基構造が下記要件(1)および(2)を同時に満たす、半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
    (1)末端アミノ基量が100mmol/kg以上220mmol/kg以下であり、且つ
    (2)末端カルボン酸基量が100mmol/kg以上220mmol/kg以下である。
  2. 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)の末端基構造が、下記要件(3)さらに満たす、請求項1に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
    (3)前記末端アミノ基量および前記末端カルボン酸基量の合計が、250mmol/kg以上420mmol/kg以下である。
  3. 前記ガラス繊維(C)が、断面形状の短径に対する長径の比(長径/短径)が2.0〜4.0の範囲内である扁平断面を有する、請求項1または2に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  4. 前記他の成分(D)が核剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)が、
    テレフタル酸成分単位を少なくとも含むジカルボン酸成分単位(a1)と、炭素原子数4〜20の脂肪族ジアミン成分単位を少なくとも含むジアミン成分単位(a2)とを含み、且つ
    前記ジカルボン酸成分単位(a1)の合計量に対して、テレフタル酸成分単位を20〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を0〜80モル%、および炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位を0〜60モル%を含む、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  6. 前記半芳香族ポリアミド樹脂(A)が、
    前記ジカルボン酸成分単位(a1)の合計量に対して、テレフタル酸成分単位を30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位を0〜70モル%、および炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位を0〜60モル%含み、
    前記ジアミン成分単位(a2)の合計量に対して、炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミン成分単位を30〜100モル%含む、
    請求項5に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  7. 前記炭素原子数4〜15の脂肪族ジアミン成分単位が、炭素原子数4〜8の直鎖状脂肪族ジアミン成分単位を含む、請求項6に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  8. 前記炭素原子数4〜8の直鎖状脂肪族ジアミン成分単位が、炭素原子数4〜8のアルキレンジアミン成分単位である、請求項7に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  9. 前記炭素原子数4〜8のアルキレンジアミン成分単位が、1,6−ジアミノヘキサン成分単位である、請求項8に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  10. 前記ジカルボン酸成分単位(a1)が、イソフタル酸成分単位をさらに含む、請求項5〜9のいずれか一項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の半芳香族ポリアミド樹脂組成物を成形してなる、成形体。
JP2019060668A 2019-03-27 2019-03-27 半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびその成形体 Pending JP2020158669A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019060668A JP2020158669A (ja) 2019-03-27 2019-03-27 半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびその成形体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019060668A JP2020158669A (ja) 2019-03-27 2019-03-27 半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびその成形体

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2020158669A true JP2020158669A (ja) 2020-10-01

Family

ID=72641934

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019060668A Pending JP2020158669A (ja) 2019-03-27 2019-03-27 半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびその成形体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2020158669A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023282154A1 (ja) * 2021-07-08 2023-01-12 株式会社クラレ ポリアミド組成物
CN116903849A (zh) * 2023-09-12 2023-10-20 中国天辰工程有限公司 一种高温尼龙pa6t共聚物的制备方法及高温尼龙pa6t共聚物

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20140187703A1 (en) * 2012-12-28 2014-07-03 Cheil Industries Inc. Polyamide Resin Compositions and Articles Including the Same
JP2017518428A (ja) * 2014-06-20 2017-07-06 ローディア オペレーションズ ポリアミド成形組成物、それらから得られる成形品、およびそれらの使用

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20140187703A1 (en) * 2012-12-28 2014-07-03 Cheil Industries Inc. Polyamide Resin Compositions and Articles Including the Same
JP2017518428A (ja) * 2014-06-20 2017-07-06 ローディア オペレーションズ ポリアミド成形組成物、それらから得られる成形品、およびそれらの使用

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023282154A1 (ja) * 2021-07-08 2023-01-12 株式会社クラレ ポリアミド組成物
CN116903849A (zh) * 2023-09-12 2023-10-20 中国天辰工程有限公司 一种高温尼龙pa6t共聚物的制备方法及高温尼龙pa6t共聚物

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US9493611B2 (en) Polyamide resin composition and molded product
JP5497921B2 (ja) 共重合ポリアミド
KR101644200B1 (ko) 내열성의 성형 또는 압출된 열가소성 용품
JP5964964B2 (ja) ポリアミド、ポリアミド組成物及び成形品
WO2022014390A1 (ja) 結晶性ポリアミド樹脂、樹脂組成物および成形体
JP2020158669A (ja) 半芳香族ポリアミド樹脂組成物およびその成形体
JP2014148560A (ja) ポリアミド樹脂組成物
JP2010084111A (ja) 長繊維強化ポリアミド組成物
JP5942109B2 (ja) ポリアミド組成物及びポリアミド組成物を成形した成形体
JP5490648B2 (ja) ポリアミド組成物を含む自動車部品
JP2015129243A (ja) ポリアミド組成物及び成形品
WO2022210019A1 (ja) ポリアミド樹脂組成物およびポリアミド成形体
WO2022196715A1 (ja) ポリアミド樹脂組成物およびポリアミド成形体
JP2018145292A (ja) ポリアミド樹脂組成物及びその成形品
JP7040975B2 (ja) ガラス繊維強化樹脂組成物およびその成形体
JP6067254B2 (ja) 共重合ポリアミド
JP2019178231A (ja) ポリアミド樹脂組成物の製造方法および成形体の製造方法
WO2022196711A1 (ja) ポリアミド樹脂組成物およびポリアミド成形体
JP2022144113A (ja) ポリアミド樹脂組成物およびポリアミド成形体
WO2023136207A1 (ja) ポリアミド樹脂組成物及びポリアミド成形体
JP6042114B2 (ja) 共重合ポリアミド及び共重合ポリアミド組成物
JP7370452B2 (ja) 結晶性ポリアミド樹脂、樹脂組成物および成形体
WO2023136205A1 (ja) ポリアミド樹脂組成物及びポリアミド成形体
JP2023142848A (ja) 半芳香族ポリアミド樹脂組成物及び成形体
JP2012136643A (ja) 共重合ポリアミド

Legal Events

Date Code Title Description
RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20190621

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20191105

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20211209

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20221013

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221108

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20230509